説明

薄膜形成用マスキング装置

【課題】意匠面の薄膜形成領域だけに、薄膜を安定的に且つ確実に形成可能とされた薄膜形成用マスキング装置を提供する。
【解決手段】第一のマスキング部34にて、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域をマスキングすると共に、第二のマスキング部38にて、基板16の非意匠面18の少なくとも一部をマスキングした状態下で、それら第一及び第二のマスキング部34,38に設けられた第一及び第二の板状突出部32,36が、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域の周囲において、互いに非接触な状態でオーバーラップして配置されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成用マスキング装置に係り、特に、基板の一方の板面からなる意匠面の一部に物理蒸着法や化学蒸着法により薄膜を形成する際に、意匠面の薄膜非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた樹脂成形品からなる基板の意匠面に対して、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーディング法等の物理蒸着法(PVC法)や、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等の化学蒸着法(CVD法)を利用して、金属薄膜等を形成することにより、金属表面を擬似的に表現する、所謂金属調の加飾が施されてなる加飾製品が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。そして、この加飾製品は、本物の金属製品に比して、軽量で、成形性や加工性に優れ、しかも防錆加工も不要であるところから、例えば、自動車内装部品や家具、建築材、家電製品、携帯電子機器等の様々な製品や物品の表皮材や部品等として、多く利用されてきている。また、樹脂材料や樹脂材料以外の材料を用いて得られた基板の一方の板面からなる意匠面に対して、各種の薄膜を、物理蒸着法や化学蒸着法により、加飾以外の目的で形成してなる積層製品も、知られている。
【0003】
ところで、そのような加飾製品や積層製品には、基板の意匠面の一部だけに薄膜が形成されてなるものがあり、それらの製品を得る際には、一般に、薄膜形成用マスキング装置にて意匠面の一部をマスキングしつつ、薄膜の形成操作が実施される。また、上記の如き加飾製品や積層製品の大量生産を可能とする装置として、基板を一軸回りに回転させつつ、意匠面に薄膜を形成する装置(例えば、特許文献2参照)が知られている。そして、そのような装置を使用して、基板の意匠面に薄膜が部分的に形成された製品を得る場合には、例えば、図22に示される如き構造を有する薄膜形成用マスキング装置が、好適に用いられている。
【0004】
すなわち、図22から明らかなように、かかる薄膜形成用マスキング装置は、長手矩形状のベースフレーム100と、略長手矩形平板状の第一のマスキング部102と、略長手矩形平板状の第二のマスキング部104とを有している。第二のマスキング部104は、ベースフレーム100に対して位置固定に取り付けられている。第一のマスキング部102は、長さ方向の一端部において、ヒンジ部106を介して、ベースフレーム100に連結されている。また、第一のマスキング部102は、ヒンジ部106に設けられた回動軸回りに回動可能とされており、かかる回動によって、第二のマスキング部104と所定距離を隔てて対向配置されるようになっている。そして、そのような第一のマスキング部102と第二のマスキング部104との対向配置状態下において、第一のマスキング部102に設けられた係合爪108,108が、ベースフレーム100に設けられた係合棒110に係合することにより、第一のマスキング部102と第二のマスキング部104との対向配置状態が、任意に解消可能に固定されるようになっている。
【0005】
また、第一のマスキング部102には、その周縁部のうちの一部を除いた部位に、第一の板状突出部112が、板厚方向の一方側に向かって突出し、且つかかる周縁部に沿って延びるように一体的に立設(周設)されている。更に、第二のマスキング部104の周縁部のうちの一部を除いた部位にも、第二の板状突出部114が、板厚方向の一方側に向かって突出し、且つかかる周縁部に沿って延びるように一体的に立設(周設)されている。なお、図22中、116は、後述する如く、基板に突設された係合突起(図示せず)が挿入されて係合する係合孔であり、この係合孔に基板の係合突起が挿通されることによって、基板が、第二のマスキング部104に取り外し可能に取り付けられるようになっている。
【0006】
そして、かかる薄膜形成用マスキング装置を用いる場合には、図23に示されるように、第一のマスキング部102が、第一の板状突出部112が設けられていない周縁部部位を、基板118の意匠面120に対して薄膜形成領域:Aと薄膜非形成領域Bとの境界線上設けられた溝状の見切り部122に沿って延びるように位置させた状態で、薄膜非形成領域:Bの全体をマスキングして配置される。また、第二のマスキング部104が、基板118の非意匠面124のうち、意匠面120の薄膜非形成領域:Bの裏面側部分をマスキングして配置される。そうして、第一のマスキング部102と第二のマスキング部104とが、基板118を間に挟んで両側に位置し、且つ基板118を介して互いに対向配置される。
【0007】
なお、図23に明示されてはいないものの、第一のマスキング部102と第二のマスキング部104との互いの対向配置状態において、第二のマスキング部104の係合爪108,108が、ベースフレーム100の係合棒110に係合することにより、第一のマスキング部102と第二のマスキング部104との対向配置状態が固定される。また、基板118は、それに設けられた係合突起が、第二のマスキング部104の係合孔116に挿入されることで、第二のマスキング部104に取り付けられる。
【0008】
そして、上記の如き第一のマスキング部102と第二のマスキング部104との互いの対向配置状態において、第一の板状突出部112と第二の板状突出部114とが、意匠面120の薄膜非形成領域:Bの周囲において、それぞれの突出先端面同士を突き合わせた状態で配置される。これにより、意匠面120の薄膜非形成領域:Bが、第一及び第二のマスキング部102,104と第一及び第二の板状突出部112,114とにて囲繞された状態となる。
【0009】
従って、かくの如き構造とされた従来の薄膜形成用マスキング装置においては、例えば、基板118を回転させつつスパッタリングを行う装置内での基板118の回転状態下において、意匠面120の正面側から飛来するスパッタリング粒子の薄膜非形成領域:Bへの付着が防止されるだけでなく、意匠面120の側方側や非意匠面124側からスパッタリング粒子が回り込んで、意匠面120の薄膜非形成領域:Bに付着することも阻止される。その結果、意匠面120の薄膜非形成領域:Bには薄膜を形成することなく、薄膜形成領域:Aだけに、薄膜を形成することが可能となるのである。
【0010】
ところが、従来の薄膜形成用マスキング装置においては、第一の板状突出部112と第二の板状突出部114とが、突出先端面同士において互いに突き合わされた状態で、意匠面120の薄膜非形成領域:Bを第一のマスキング部102にてマスキングするようになっている。そのため、図23に二点鎖線で示されるように、第一及び第二の板状突出部112,114のそれぞれの突出高さや、それら各板状突出部112,114の突出先端面の面精度等において設計上の誤差等が存在していると、第一及び第二の板状突出部112,114のそれぞれの突出先端面同士の突合せによって、第一のマスキング部102の周縁部のうちの第一の板状突出部112が設けられていない周縁部部位126と意匠面120の見切り部122との間で位置ズレが発生することがあった。そして、そうなった場合には、薄膜形成領域:Aに薄膜が形成されない部分が発生したり、意匠面120の薄膜非形成領域:Bに薄膜が形成されたりして、最終的に得られる加飾製品や積層製品の品質が低下するといった問題が惹起される可能性が極めて高かったのである。
【0011】
なお、第一及び第二の板状突出部112,114のそれぞれの突出先端面同士の突合せに起因した見切り精度の低下を解消するためには、例えば、第一の板状突出部112と第二の板状突出部114との間に隙間を形成したり、或いは、第一の板状突出部112の高さを増大させる等の対策を講ずることが考えられる。しかしながら、前者の対策を採用する場合には、第一の板状突出部112と第二の板状突出部114との間の隙間からスパッタリング粒子が侵入し、それが、薄膜非形成領域:Bに付着するといった問題が生ずる。また、後者の対策を採用する場合には、第一の板状突出部112の高さを増大させた分だけマスキング装置全体が大型化してしまうといった不具合が生ずることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−45841号公報
【特許文献2】特開2009−167521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここにおいて、本発明は、上記した事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、基板の一方の板面からなる意匠面の一部に物理蒸着法や化学蒸着法により薄膜を形成する際に、意匠面の薄膜非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置において、装置全体を大型化することなく、意匠面の薄膜非形成領域のみを確実にマスキングすることができ、それによって、意匠面の薄膜形成領域だけに、薄膜を安定的に且つ確実に形成し得るように改良された構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた基板の該意匠面の一部に物理蒸着法又は化学蒸着法により薄膜を形成する際に、該意匠面における該薄膜の非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置であって、(a)前記基板の前記意匠面の薄膜非形成領域をマスキングする第一のマスキング部と、(b)前記基板の前記非意匠面の少なくとも一部をマスキングする第二のマスキング部と、(c)前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部が、前記意匠面の薄膜非形成領域と前記非意匠面の少なくとも一部をそれぞれマスキングしつつ、前記基板を間に挟んで両側に位置し、且つ該基板を介して互いに対向配置された状態において、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と該基板が取り付けられると共に、少なくとも該基板が任意に取り外し可能とされた取付手段と、(d)前記第一のマスキング部の周縁部うち、前記意匠面の前記薄膜の非形成領域と形成領域の境界線に沿って延びる部位を除く周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、該意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第一の板状突出部と、(e)前記第二のマスキング部の周縁部うち、前記第一の板状突出部が突設される前記第一のマスキング部の周縁部部位に対応する周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第二の板状突出部とを有するものにおいて、前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記第一の板状突出部と前記第二の板状突出部とが、互いに非接触な状態でオーバーラップして配置されるように構成されていることを特徴とする薄膜形成用マスキング装置を、その要旨とするものである。
【0015】
また、本発明は、一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた基板の該意匠面の一部に物理蒸着法又は化学蒸着法により薄膜を形成する際に、該意匠面における該薄膜の非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置であって、(a)前記基板の前記意匠面の薄膜非形成領域をマスキングする第一のマスキング部と、(b)前記基板の前記非意匠面の少なくとも一部をマスキングする第二のマスキング部と、(c)前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部が、前記意匠面の薄膜非形成領域と前記非意匠面の少なくとも一部をそれぞれマスキングしつつ、前記基板を間に挟んで両側に位置し、且つ該基板を介して互いに対向配置された状態において、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と該基板が取り付けられると共に、少なくとも該基板が任意に取り外し可能とされた取付手段と、(d)前記第一のマスキング部の周縁部うち、前記意匠面の前記薄膜の非形成領域と形成領域の境界線に沿って延びる部位を除く周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、該意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第一の板状突出部と、(e)前記第二のマスキング部の周縁部うち、前記第一の板状突出部が突設される前記第一のマスキング部の周縁部部位に対応する周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第二の板状突出部とを有するものにおいて、前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記第一の板状突出部と前記第二の板状突出部のうちの何れか一方の板状突出部が、それらのうちの何れか他方の板状突出部の内側に、該他方の板状突出部と非接触な状態で配置されると共に、該一方の板状突出部の突出先端面が、該他方の板状突出部が設けられる該第一のマスキング部又は該第二のマスキング部に対して、前記意匠面の薄膜非形成領域よりも近接配置され、更に、該第一の板状突出部の突出先端面と該第二の板状突出部の突出先端面とが、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部の互いの対向方向において同一の位置に配置されるように構成されていることを特徴とする薄膜形成用マスキング装置をも、その要旨とするものである。
【0016】
さらに、本発明は、一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた基板の該意匠面の一部に物理蒸着法又は化学蒸着法により薄膜を形成する際に、該意匠面における該薄膜の非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置であって、(a)前記基板の前記意匠面の薄膜非形成領域をマスキングする第一のマスキング部と、(b)前記基板の前記非意匠面の少なくとも一部をマスキングする第二のマスキング部と、(c)前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部が、前記意匠面の薄膜非形成領域と前記非意匠面の少なくとも一部をそれぞれマスキングしつつ、前記基板を間に挟んで両側に位置し、且つ該基板を介して互いに対向配置された状態において、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と該基板が取り付けられると共に、少なくとも該基板が任意に取り外し可能とされた取付手段と、(d)前記第一のマスキング部の周縁部うち、前記意匠面の前記薄膜の非形成領域と形成領域の境界線に沿って延びる部位を除く周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、該意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第一の板状突出部と、(e)前記第二のマスキング部の周縁部うち、前記第一の板状突出部が突設される前記第一のマスキング部の周縁部部位に対応する周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第二の板状突出部とを有するものにおいて、前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記第一の板状突出部が、前記第二の板状突出部の内側に、該第二の板状突出部と非接触な状態で配置されると共に、前記意匠面の薄膜非形成領域における該第一のマスキング部と該第二のマスキング部の互いの対向方向での該第二のマスキング部側の端縁と、該第一の板状突出部の突出先端面と、該第二の板状突出部の突出先端面とが、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部の互いの対向方向において同一の位置に配置されるように構成されていることを特徴とする薄膜形成用マスキング装置をも、また、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従う薄膜形成用マスキング装置にあっては、第一の板状突出部と第二の板状突出部とが、互いに非接触な状態で、意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置されている。そのため、第一の板状突出部と第二の板状突出部のそれぞれの突出先端面同士の当接(突合せ)によって、第一のマスキング部の周縁部のうちの第一の板状突出部が設けられていない周縁部部位と、意匠面の薄膜非形成領域と薄膜形成領域との境界線との間で位置ズレが生ずるようなことが効果的に回避され得る。
【0018】
しかも、本発明に係る薄膜形成用マスキング装置では、物理蒸着法又は化学蒸着法による薄膜の形成時に、薄膜を形成する粒子(材料)が、第一の板状突出部と第二の板状突出部との間から意匠面の薄膜非形成領域と第一のマスキング部との間に侵入することが、第一の板状突出部と第二の板状突出部とが互いにオーバーラップするように配置されていることによって、確実に防止される。或いは、第一の板状突出部と第二の板状突出部とが、第一のマスキング部と第二のマスキング部の互いの対向方向において同一の位置に配置された状態において、第一の板状突出部と第二の板状突出部のうちの内側に配置される板状突出部の突出先端面が、外側に配置される板状突出部が設けられるマスキング部に対して、意匠面の薄膜非形成領域よりも近接配置されていることによって、意匠面の薄膜非形成領域と第一のマスキング部との間への薄膜形成粒子の侵入が、確実に防止される。若しくは、意匠面の薄膜非形成領域における第一のマスキング部と第二のマスキング部の互いの対向方向での第二のマスキング部側の端縁と、第二の板状突出部の突出先端面と、第二の板状突出部の内側に配置された第一の板状突出部の突出先端面とが、第一のマスキング部と第二のマスキング部の互いの対向方向において同一の位置に配置されていることによって、意匠面の薄膜非形成領域と第一のマスキング部との間への薄膜形成粒子の侵入が、確実に防止される。
【0019】
従って、かくの如き本発明に従う薄膜形成用マスキング装置によれば、第一の板状突出部の高さの増大による装置全体の大型化を招くことなしに、意匠面の薄膜非形成領域のみを確実にマスキングすることができ、それによって、意匠面の薄膜形成領域だけに、薄膜を安定的に且つ確実に形成することが可能となる。そして、その結果として、基板の意匠面の一部に薄膜が形成されてなる製品の品質を飛躍的に高めることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置を用いて、意匠面の一部に薄膜が形成されてなる加飾製品を示す斜視説明図である。
【図2】図1のII−II断面拡大説明図である。
【図3】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図4】図3に示された薄膜形成用マスキング装置の使用状態を説明するための図であって、薄膜形成用マスキング装置に基板をセットした状態を示す縦断面の端面説明図である。
【図5】図4におけるV−V断面の端面説明図である。
【図6】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の別の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図7】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の更に別の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図8】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の他の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図9】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の更に他の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図10】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の別の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図11】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の更に別の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図12】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の他の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図13】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の更に他の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図14】本発明に従う薄膜形成用マスキング装置の別の実施形態の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図15】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の一例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図16】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の別の例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図17】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の更に別の例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図18】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の他の例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図19】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の更に他の例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図20】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の別の例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図21】本発明に従う構造とは異なる構造を有する薄膜形成用マスキング装置の更に別の例の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【図22】従来構造を有する薄膜形成用マスキング装置を示す斜視説明図である。
【図23】図22に示された薄膜形成用マスキング装置の使用状態を説明する、図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する薄膜形成用マスキング装置を用いて、金属薄膜がスパッタリング法により意匠面の一部に形成されてなる加飾製品の一例が、その斜視形態と横断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それら図1及び図2から明らかなように、加飾製品10は、樹脂成形品からなる基板12を有し、この基板12の一方の板面の一部に金属薄膜14が積層形成されて、構成されている。なお、この加飾製品10は、例えば、自動車の内装部品として使用されるものである。
【0023】
より具体的には、基板12は、全体として、長手矩形の薄肉平板形状を呈し、長さ方向に延びる二つの側面(端面)15a,15bと幅方向に延びる二つの側面(端面)15c,15dとを有している。そして、厚さ方向一方の板面が意匠面16とされている一方、その他方の板面が非意匠面18とされている。また、この基板12の幅方向の中央部には、二つの矩形の窓部20,22が、長さ方向に並んで形成されている。
【0024】
かかる基板12の長さ方向に延びる端面15a側となる、意匠面16の幅方向一方側の端部には、見切り部24が形成されている。この見切り部24は、基板12の全長に亘って連続して延びる、狭幅の凹溝形態を有している。そして、基板12の意匠面16のうち、その幅方向における見切り部24を間に挟んで、2個の窓部20,22の形成側とは反対の端部側の領域の全域に対して、スパッタリング膜からなる金属薄膜14が、積層形成されている。即ち、加飾製品10においては、見切り部24を境界線として、意匠面16の幅方向一方側(図1及び図2の左側)の領域が、薄膜形成領域:Aとされており、また、かかる薄膜形成領域:Aを除く、意匠面16の幅方向他方側(図1及び図2の右側)の全領域が、薄膜非形成領域:Bとされている。
【0025】
また、基板12の非意匠面18における長さ方向の両端部と中央部とには、係合突起26が、それぞれ2個ずつ、互いに幅方向に間隔を隔てて、一体的に突設されている。それら各係合突起26は、薄肉で矩形平板状の小片からなり、非意匠面18に対して直角に突出している。
【0026】
かくの如き構造とされた加飾製品10は、例えば、特開2009−167521号公報等に記載されるようなスパッタリング装置を用いて、基材12を一軸回りに回転させつつ、基材12の意匠面16の薄膜形成領域:Aに対して、金属薄膜14が、スパッタリング法により形成されることにより製造される。そして、その際には、例えば、図3に示されるような本発明に従う構造を備えた薄膜形成用マスキング装置28(以下、単にマスキング装置28と言う)が使用される。
【0027】
図3から明らかなように、本実施形態のマスキング装置28は、ベースフレーム30と、第一の板状突出部32が一体形成された第一のマスキング部34と、第二の板状突出部36が一体形成された第二のマスキング部38とを備えた、従来のマスキング装置と同様な基本構造を有している。
【0028】
より詳細には、ベースフレーム30は、アルミニウム等の金属製の4個の柱状部材40a,40b,40c,40dが相互に組み付けられて構成された、全体として、加飾製品10よりも一周り大きな長手矩形の枠体からなっている。かかるベースフレーム30の幅方向に延びる各柱状部材40c,40dの延出方向の両端には、連結突起42が、それぞれ2個ずつ、一体的に突設されている。そして、柱状部材40cに突設された2個の連結突起42,42には、係合棒44が、また、柱状部材40dに突設された2個の連結突起42,42には、取付棒46が、それぞれ架設されている。それら係合棒44と取付棒46は、何れも、柱状部材40c,40dと平行に延びる、アルミニウム等の金属製の丸棒からなっている。
【0029】
また、ベースフレーム30の幅方向に延びる2個の柱状部材40c,40dの間には、2個の柱状支持部48,48が、各柱状部材40c,40dと平行に延びるように配置されて、長さ方向に延びる2個の柱状部材40a,40bの間に架設されている。更に、それら各柱状支持部48,48の延出方向の両端には、支持突起50が、それぞれ1個ずつ突設されている。
【0030】
一方、図3と、マスキング装置28の使用状態での断面形態をそれぞれ示す図4及び図5から明らかなように、第一のマスキング部34は、アルミニウム等の金属製で略長手矩形状を呈する平板材からなっている。かかる第一のマスキング部34では、一方の板面が第一のマスキング面52とされている。この第一のマスキング面52は、その長さ方向に延びる二つの辺縁部54a,54bと、幅方向に延びる二つの辺縁部54c,54dとを有する長手矩形状を呈し、その大きさが、加飾製品10の基板12における意匠面16の薄膜非形成領域:Bよりも一周り大きな大きさとされている。
【0031】
また、第一のマスキング部34の幅方向一端部には、段差部56が設けられている。この段差部56は、第一のマスキング面52の四つの辺縁部54a,54b,54c,54dのうちの長さ方向に延びる一つの辺縁部54aを含んでいる。即ち、段差部56は、第一のマスキング部34の周縁部のうち、幅方向の一方側において長さ方向に延びる周縁部部位に沿って延びるように形成されているのである。
【0032】
そして、本実施形態では、第一のマスキング部34の周縁部のうち、段差部56が設けられる周縁部部位を除く周縁部部位に対して、第一の板状突出部32が、一体的に周設されている。この第一の板状突出部32は、第一のマスキング部34と略同一厚さの平板からなり、第一のマスキング面52から直角に突出している。
【0033】
すなわち、第一の板状突出部32は、第一のマスキング面52の四つの辺縁部54a,54b,54c,54dのうち、段差部56が設けられる辺縁部54aを除いた三つの辺縁部54b,54c,54dに沿って延びるコ字形状を呈している。そして、そのような第一の板状突出部32において、第一のマスキング面52の長さ方向に延びる辺縁部54bに沿って真っ直ぐに延出する部分が、縦板部58とされ、また、その幅方向に延びる二つの辺縁部54c,54dに沿って真っ直ぐに延出する部分が、それぞれ、横板部60,60とされている。なお、各横板部60,60は、段差部56における二つの辺縁部54c,54d部位には形成されていない。
【0034】
また、第一のマスキング部34には、二つの透孔62,64が、長さ方向に並んで形成されている。それら二つの透孔62,64は、加飾製品10の基板12に設けられた二つの窓部20,22よりも、それぞれ一周り小さな矩形形状を有している。そして、それら各透孔62,64における第一のマスキング面52の開口周縁部には、第三の板状突出部66と第四の板状突出部68とが、それぞれ一体的に周設されている。それら第三の板状突出部66と第四の板状突出部68は、二つの透孔62,64にそれぞれ対応した矩形の枠体形態を有している。また、そのような第三及び第四の板状突出部66,68は、第一の板状突出部32と略同一厚さの平板からなり、第一のマスキング面52から、第一の板状突出部32と略同一の高さで直角に突出している。
【0035】
さらに、第一のマスキング部34の幅方向に延びる二つの辺縁部54c,54dのそれぞれの長さ方向両端には、取付突起70が、それぞれ一つずつ、一体的に突設されている。そして、それら二つの辺縁部54c,54dのうちの一方の辺縁部54dに突設された二つの取付突起70,70には、丸棒状の支持棒72と把持棒74とが、辺縁部54dと平行に延びる状態で、それぞれ、架設されている。支持棒72の長さ方向両端には、係合爪76が、それぞれ一つずつ固設されて、支持されている。
【0036】
そして、他方の辺縁部54cに突設された二つの取付突起70,70が、ベースフレーム30の前記取付棒46に対して、各取付突起70,70の先端に固着された取付スリーブ78,78を摺動可能に外挿させた状態で取り付けられている。これにより、第一のマスキング部34が、ベースフレーム30に対して、取付棒46の中心軸回りに回動可能に取り付けられている。
【0037】
かくして、第一のマスキング部34にあっては、例えば、作業者にて把持棒74が把持されて、取付棒46の中心軸回りに回動させられることにより、第一のマスキング部34の第一のマスキング面52をベースフレーム30側に向けて、ベースフレーム30と平行に延びるように配置されるようになっている。つまり、第一のマスキング部34を取付棒46の中心軸回りに回動させることによって、マスキング装置28が二つに折り畳まれて、ベースフレーム30と第一のマスキング部34とが互いに平行に延びるように配置されるようになっている。そして、そのような状態下で、二つの係合爪76,76が、ベースフレーム30の係合棒44に係合させられることによって、ベースフレーム30と第一のマスキング部34とが互いに平行に延びる配置状態、換言すれば、マスキング装置28が二つに折り畳まれた状態が維持されるように構成されている。なお、そのようなマスキング装置28の折り畳み状態は、二つの係合爪76,76の係合棒44に対する係合を解除することによって、容易に解消されることとなる。
【0038】
一方、第二のマスキング部38も、第一のマスキング部34と同様に、アルミニウム等の金属製で略長手矩形状を呈する平板材からなっている。そして、かかる第二のマスキング部38では、一方の板面が第二のマスキング面80とされている。この第二のマスキング面80は、その長さ方向に延びる二つの辺縁部82a,82bと、幅方向に延びる二つの辺縁部82c,82dとを有する長手矩形状を呈し、その大きさが、第一のマスキング部34における第一のマスキング面52よりも一周り大きな大きさとされている。
【0039】
そして、そのような第二のマスキング部38の周縁部のうちの一部を除く周縁部部位に対して、第二の板状突出部36が、一体的に周設されている。この第二の板状突出部36は、第一の板状突出部32と略同一厚さの平板からなり、かかる第一の板状突出部32と同様な形態で、第二のマスキング面80から直角に突出している。
【0040】
すなわち、第二の板状突出部36は、第二のマスキング面80の長さ方向に延びる辺縁部82bと、その幅方向に延びる二つの辺縁部82c,82dに沿って延びるコ字形状を呈している。そして、そのような第二の板状突出部36において、第二のマスキング面80の長さ方向に延びる辺縁部82bに沿って真っ直ぐに延出する部分が、縦板部84とされ、また、その幅方向に延びる二つの辺縁部82c,82dに沿って真っ直ぐに延出する部分が、それぞれ、横板部86,86とされている。なお、かかる第二の板状突出部36の高さは、第一のマスキング部34に設けられた第一の板状突出部32と同一の高さとされている。
【0041】
第二のマスキング部38にも、第一のマスキング部34と同様に、二つの透孔88,90が、長さ方向に並んで形成されている。それら二つの透孔88,90は、第一のマスキング部34に設けられた二つの透孔62,64よりも、それぞれ一周り小さな矩形形状を有している。そして、それら各透孔88,90における第二のマスキング面80の開口周縁部には、第五の板状突出部92と第六の板状突出部94とが、それぞれ一体的に周設されている。それら第五の板状突出部92と第六の板状突出部94は、二つの透孔88,90にそれぞれ対応した矩形の枠体形態を有している。また、そのような第五及び第六の板状突出部92,94は、第二の板状突出部36と略同一厚さの平板からなり、第二のマスキング面80から、第二の板状突出部36と略同一の高さで直角に突出している。それら第五及び第六の板状突出部92,94の高さは、第一のマスキング部34に設けられた第三及び第四の板状突出部66,68と同一の高さとされている。
【0042】
さらに、第二のマスキング部38の長さ方向両端部と中間部には、係合孔96が、それぞれ、二つずつ、幅方向に間隔をおいて形成されている。それら各係合孔96は、加飾製品10の基板12の非意匠面18に一体的に突設された前記係合突起26が突入して、係合する矩形の貫通孔にて構成されている。
【0043】
そして、そのような第二のマスキング部38が、第二のマスキング面80とは反対側の面の四隅において、ベースフレーム30の前記柱状支持部48,48に一体形成された四つの支持突起50,50,50,50に対して、それぞれ固着されている。これにより、第二のマスキング部38が、第二のマスキング面80をベースフレーム30側とは反対側に向けて、ベースフレーム30と平行に延びるように配置された状態で、ベースフレーム30に対して、位置固定に取り付けられている。また、第二のマスキング部38は、ベースフレーム30への取付下で、第二の板状突出部36が形成されていない辺縁部82aが、取付棒46に回動可能に取り付けられた第一のマスキング部34の第一の板状突出部32が形成されていない辺縁部54aに対応位置するように配置されている。
【0044】
そして、本実施形態では、特に、第二のマスキング部38の第二の板状突出部36における二つの横板部86,86のそれぞれの内面間の距離(図3及び図4にL1 にて示される寸法)が、第一のマスキング部34の第一の板状突出部32における二つの横板部60,60のそれぞれの外面間の距離(図3及び図4にL2 にて示される寸法)よりも所定寸法だけ大きくされている。また、第二の板状突出部36が形成されていない第二のマスキング面80の辺縁部82aと、第二の板状突出部36における縦板部84の内面との間の距離(図3及び図5にL3 にて示される寸法)が、段差部56が設けられる第一のマスキング面52の辺縁部54aと、第一の板状突出部32における縦板部58の外面との間の距離(図3及び図5にL4 にて示される寸法)よりも所定寸法だけ大きくされている。
【0045】
さらに、第二のマスキング部38の矩形枠体形態を呈する第五の板状突出部92が、その全体を、第一のマスキング部34の矩形枠体形態を呈する第三の板状突出部66の内側に非接触で突入可能な大きさとされている。また、第二のマスキング部38の矩形枠体形態を呈する第六の板状突出部94が、その全体を、第一のマスキング部34の矩形枠体形態を呈する第四の板状突出部68の内側に非接触で突入可能な大きさとされている。
【0046】
かくして、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34を取付棒46の中心軸回りに回動させて、二つに折り畳まれることにより、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが、互いに平行に延びるように配置されて、第一のマスキング面52と第二のマスキング面80とが互いに対向配置されるようになっている。また、そのような配置状態下において、第五の板状突出部92が、第三の板状突出部66の内側に非接触で突入されると共に、第六の板状突出部94が、第四の板状突出部68の内側に非接触で突入されるようになっている。更に、第一の板状突出部32が、第二の板状突出部36と非接触な状態で、その内側に位置して、それら第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いにオーバーラップして配置されるようになっている。
【0047】
そして、かくの如き構造とされた本実施形態のマスキング装置28を用いて、基板12の意匠面16の薄膜形成領域:Aだけに金属薄膜14を形成する際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められる。
【0048】
すなわち、図4及び図5に示されるように、先ず、基板12の非意匠面18が、第二のマスキング部38の第二のマスキング面80に対して平行に位置し、且つかかる第二のマスキング面80と所定距離を隔てて対向するように、基板12を配置する。これにより、基板12の非意匠面18の大部分、具体的には、意匠面16の薄膜形成領域:Aの反対側に位置する部分を除いた非意匠面18部分を、第二のマスキング部38の第二のマスキング面80にてマスキングする。
【0049】
また、そのような第二のマスキング部38による基板12の非意匠面18のマスキング状態下において、第二の板状突出部36を、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bを取り囲む三つの側面15b,15c,15dの周囲に、それらの側面15b,15c,15dに沿って延びるように配置する。
【0050】
つまり、図4に示されるように、第二の板状突出部36の二つの横板部86,86を、基板12を間に挟んで、その長さ方向の両側に位置させる。これにより、各横板部86,86の互いの対向面たる内側面を、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bの幅方向に延びる二つの側面15c,15dに対して所定距離を隔てて対向配置させる。換言すれば、各横板部86,86を、基板12の側面15c,15dに対してオーバーラップした状態で配置する。このとき、各横板部86,86の突出先端面が、基板12の意匠面16(薄膜非形成領域:B)から、非意匠面18側とは反対側に突出して、配置される。つまり、基板12の意匠面16からの横板部86の突出量(図4にD1 にて示される寸法)が、ゼロよりも大きな値とされる。
【0051】
また、図5に示されるように、第二の板状突出部36の縦板部84を、その内側面が、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bの長さ方向に延びる側面15bに対して所定距離を隔てて対向位置させられるように、配置する。換言すれば、縦板部84を、基板12の側面15bに対してオーバーラップした状態で配置する。このとき、縦板部84の突出先端面も、横板部76の突出先端面と同様に、基板12の意匠面16(薄膜非形成領域:B)から、非意匠面18側とは反対側に突出して、配置される。つまり、基板12の意匠面16からの縦板部84の突出量(図5にD1 にて示される寸法)が、ゼロよりも大きな値とされる。
【0052】
さらに、図4に示されるように、第二のマスキング部38による基板12の非意匠面18のマスキング状態下において、基板12の二つの窓部20,22と第二のマスキング部38の二つの透孔88,90とを、それぞれ、互いに対応位置させる。それと共に、二つの透孔88,90の各周縁部に一体形成された第五及び第六の板状突出部92,94を、各窓部20,22内に、それらの内周面と非接触の状態、つまり、各窓部20,22の内周面との間に隙間を形成させた状態で、それぞれ突入させる。このとき、各窓部20,22内に突入した第五及び第六の板状突出部92,94のそれぞれの先端部位が、各窓部20,22の意匠面16側の開口部から突出させられる。
【0053】
そして、図示されてはいないものの、上記の如き第二のマスキング部38と基板12の配置状態下において、基板12の各係合突起26を、第二のマスキング部38の各係合孔96内に挿入して、係合させる。これによって、基板12を、ベースフレーム30に対して、第二のマスキング部38を介して取り外し可能に固定する。
【0054】
なお、第二のマスキング面80にてマスキングされた基板12の非意匠面18と第二のマスキング面80との間の距離(図4にS1 にて示される寸法)は、特に限定されるものではないもの、一般的には5mm以下とされる。また、第二のマスキング面80によりマスキングされた非意匠面18部分の幅(図5にWにて示される寸法)は、好ましくは5mm以上とされる。これによって、後述するスパッタリングの実施時に、スパッタリング粒子が、基板12の非意匠面18と第二のマスキング面80との間に侵入することが可及的に抑制される。また、それらの間からスパッタリング粒子が侵入したときにあっても、スパッタリング粒子が基板12の意匠面16側に回り込むことが、可及的に防止される。
【0055】
次に、第一のマスキング部34を、ベースフレーム30の取付棒46の中心軸回りに回動させて、マスキング装置28を二つに折り畳むことにより、図4及び図5に示されるように、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とを、基板12を間に挟んだ両側において、基板12と所定距離を隔てた位置で互いに平行に延びるように配置する。これにより、基板12の意匠面18の薄膜非形成領域:Bの全体を、第一のマスキング部34の第一のマスキング面52にてマスキングする。
【0056】
このとき、第一のマスキング部34の段差部56が、それ以外の部分よりも、基板12の意匠面18の薄膜非形成領域:Bに近接位置させられる。また、段差部56に設けられる第一のマスキング部34の辺縁部54aが、基板12の意匠面16に形成された見切り部24に沿って、その全長に亘って延びるように配置される。なお、第一のマスキング面52にてマスキングされた基板12の意匠面16と段差部56の第二のマスキング面52部分との間の距離(図5にS2 にて示される寸法)は、特に限定されるものではないもの、一般的には0.1mm以下とされる。これによって、後述するスパッタリングの実施時に、スパッタリング粒子が、基板12の意匠面16と段差部56との間に侵入することが、より効果的に防止される。
【0057】
そして、そのような第一のマスキング部34による基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bのマスキング状態下において、第一の板状突出部32を、意匠面16の薄膜非形成領域:Bを取り囲む三つの側面15b,15c,15dの周囲に、それらの側面15b,15c,15dに沿って延びるように配置する。
【0058】
すなわち、図4に示されるように、第一の板状突出部32の二つの横板部60,60を、基板12を間に挟んで、その長さ方向の両側に位置させて、それら各横板部60,60の互いの対向面たる内側面を、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bの幅方向に延びる二つの側面15c,15dに対して所定距離を隔てて対向配置させる。また、図5に示されるように、第一の板状突出部32の縦板部58を、その内側面が、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bの長さ方向に延びる側面15bに対して所定距離を隔てて対向位置させられるように配置する。
【0059】
なお、前記したように、ここでは、第二の板状突出部36における二つの横板部86,86のそれぞれの内面間の距離:L1 が、第一の板状突出部32における二つの横板部60,60のそれぞれの外面間の距離:L2 よりも大きくされている。また、第二のマスキング面80の辺縁部82aと第二の板状突出部36における縦板部84の内面との間の距離:L3 が、第一のマスキング面52の辺縁部54aと第一の板状突出部32における縦板部58の外面との間の距離:L4 よりも大きくされている。
【0060】
それ故、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下では、基板12の二つの側面15c,15dに対向配置される、第二の板状突出部36の二つの横板部86,86の内側において、第一の板状突出部32の二つの横板部60,60が、それら二つの側面15c,15dに対して対向配置される。また、基板12の側面15bに対向配置される、第二の板状突出部36の縦板部84の内側において、第一の板状突出部32の縦板部58が、基板12の側面15bに対して対向配置される。つまり、第一の板状突出部32の二つの横板部60,60が、基板12の各側面15c,15dと第二の板状突出部36の各横板部86,86との間に、それらに対して非接触で配置される一方、第一の板状突出部32の縦板部58が、基板12の側面15bと第二の板状突出部36の縦板部84との間に、それらに対して非接触で配置されるのである。
【0061】
また、上記の如きマスキング状態下では、第一の板状突出部32の各横板部60,60を、その突出先端面が、基板12の意匠面16(薄膜非形成領域:B)から、非意匠面18側に突出するように配置される。また、縦板部58も、その突出先端面が、基板12の意匠面16(薄膜非形成領域:B)から非意匠面18側に突出するように配置される。つまり、基板12の意匠面16から非意匠面18側への横板部60の突出量(図4にD2 にて示される寸法)と、基板12の意匠面16から非意匠面18側への縦板部58の突出量(図5にD2 にて示される寸法)とが、それぞれ、ゼロよりも大きな値となる。換言すれば、第一の板状突出部32の各横板部60,60が、基板12の側面15c,15dにオーバーラップした状態で配置され、また、第一の板状突出部32の縦板部58が、基板12の側面15bにオーバーラップした状態で配置される。
【0062】
かくして、ここでは、第二のマスキング部38を介してベースフレーム30に取り付けられた基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bを、第一のマスキング部34にてマスキングすると同時に、第一の板状突出部32を、第二の板状突出部36の内側において、第二の板状突出部36と非接触な状態でオーバーラップさせつつ、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲に、それらに沿って延びるように配置するのである。このとき、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量(図4及び図5にD3 にて示される寸法)は、第二の板状突出部36の横板部86と縦板部84の意匠面16からのそれぞれの突出量:D1 と、第一の板状突出部32の横板部60と縦板部58の意匠面16から非意匠面18側へのそれぞれの突出量:D2 との合計値:D1+D2となる。
【0063】
なお、そのような第一のマスキング部34による基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bのマスキング状態下において、第一の板状突出部32の各横板部60,60と基板12の側面15c,15dとの間の距離(図4にK1 にて示される寸法)や、それら各横板部60,60と第二の板状突出部36の各横板部86,86との対向面間距離(図4にK2 にて示される寸法)は、特に限定されるものではないものの、一般的には5mm以下とされる。また、第一の板状突出部32の縦板部58と基板12の側面15bとの間の距離(図5にK1 にて示される寸法)や、かかる縦板部58と第二の板状突出部36の縦板部84との対向面間距離(図5にK2 にて示される寸法)も、何等限定されるものではなく、好適には5mm以下とされる。これによって、後述するスパッタリングの実施時に、スパッタリング粒子が、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36との間や、第一の板状突出部32と基板12の各側面15b,15c,15dとの間に侵入することが可及的に抑制される。
【0064】
また、図4に示されるように、第一のマスキング部34にて基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bをマスキングしたときに、基板12の二つの窓部20,22と第一のマスキング部34の二つの透孔62,64とを、それぞれ、互いに対応位置させる。そして、それと共に、二つの透孔62,64の各周縁部に一体形成された第三及び第四の板状突出部66,68を、各窓部20,22内に、それらの内周面と非接触の状態、つまり、各窓部20,22の内周面との間に隙間を形成させた状態で、それぞれ突入させる。
【0065】
このとき、各窓部20,22内に突入した第三及び第四の板状突出部66,68のそれぞれの先端部位が、各窓部20,22の非意匠面18側の開口部から突出させられる。また、前記したように、第三及び第四の板状突出部66,68は、第五及び第六の板状突出部92,94よりも大きな枠状形態を有している。
【0066】
このため、第三の板状突出部66は、基板12の窓部20への突入状態下で、窓部20の内周面と第五の板状突出部92との間に、それら窓部20の内周面と第五の板状突出部92の外周面とに対して、それぞれ、所定距離を隔てて対向し、且つ第五の板状突出部92とオーバーラップして、配置される。また、第四の板状突出部68は、基板12の窓部22への突入状態下で、窓部22の内周面と第六の板状突出部94との間に、それら窓部22の内周面と第六の板状突出部94の外周面とに対して、それぞれ、所定距離を隔てて対向し、且つ第六の板状突出部94とオーバーラップして、配置される。
【0067】
そして、図示されてはいないものの、上記の如き第一のマスキング部34による基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bのマスキング状態下において、第一のマスキング部34の係合爪76,76を、ベースフレーム30の係合棒44に係合させる。これにより、基板12が第一のマスキング部34と第二のマスキング部38との間に挟まれて配置されると共に、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18の一部とが第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とにてマスキングされた状態において、基板12をマスキング装置28にセットするのである。これらのことから明らかなように、本実施形態では、ベースフレーム30と、第一のマスキング部34に設けられた係合爪76,76と第二のマスキング部38に設けられた係合孔96とにて、取付手段が構成されている。
【0068】
次に、かくしてマスキング装置28にセットされた基板12を、図示しない公知のスパッタリング装置のチャンバ内の回転ステージに立設された支持装置に対して、マスキング装置28と共に支持させる。その後、基板12を、マスキング装置28と共に、互いに平行に延びる回転ステージの中心軸回りと支持装置の支持軸回りとにそれぞれ回転させながら、従来と同様にして、スパッタリング法を実施する。これにより、基板12の意匠面16の薄膜形成領域:Aに対して、スパッタリング膜からなる金属薄膜14を積層形成する。
【0069】
このとき、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bが、第一のマスキング部34にてマスキングされているため、意匠面16の正面側から飛来するスパッタリング粒子の薄膜非形成領域:Bへの付着が有効に防止される。
【0070】
また、基板12が、マスキング装置28と共に、回転ステージの中心軸回りと支持装置の支持軸回りとにそれぞれ回転させられているため、基板12に対して、非意匠面18側や側方側からもスパッタリング粒子が飛来する。しかしながら、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bの裏側となる非意匠面18部分が第二のマスキング部38にてマスキングされていると共に、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bを取り囲む三つの側面15b,15c,15dの周囲に、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが互いにオーバーラップした状態で配置されている。そのため、非意匠面18側や側方側から飛来したスパッタリング粒子が、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38との間に侵入することが効果的に阻止され、それによって、スパッタリング粒子が、基板12の非意匠面18側や側面15b,15c,15d側から回り込んで、意匠面16の薄膜非形成領域:Bに付着することも、極めて有利に防止される。そして、そのような回り込みによる意匠面16の薄膜非形成領域:Bへのスパッタリング粒子の付着防止は、第一の板状突出部32の高さを必要以上に高くすることなしに、確実に実現され得る。
【0071】
しかも、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、基板12の側面15b,15c,15dの周囲に、互いに非接触な状態でオーバーラップして配置される。それ故、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、突出先端面同士において互いに突き合わされた状態、或いは側面同士が互いに接触した状態で、基板12の側面15b,15c,15dの周囲に配置される場合とは異なって、第一のマスキング部34の辺縁部54aを、基板12の見切り部24に沿って延びる状態で確実に配置することができる。即ち、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のうちの少なくとも何れか一方の高さや厚さの寸法誤差が、多少発生していても、第一のマスキング部34の第二のマスキング部38との接触により、第一のマスキング部34の意匠面16上での位置がずれてしまうようなことがない。それ故、そのような第一のマスキング部34の意匠面16上での位置ズレにより、第一のマスキング部34の辺縁部54aが、基板12の見切り部24を超えて、意匠面16の薄膜形成領域:Aにはみ出して位置したり、見切り部24よりも薄膜非形成領域:B側に偏倚して位置することが、効果的に回避され得る。
【0072】
従って、かくの如き本実施形態のマスキング装置28によれば、第一の板状突出部32の高さの増大による大型化を招くことなしに、意匠面16の薄膜非形成領域:Bのみを確実にマスキングすることが可能となって、意匠面16の薄膜形成領域:Aだけに、金属薄膜14を、極めて安定的に且つ確実に形成することができる。そして、その結果として、基板12の意匠面16の薄膜形成領域:Aに限って金属薄膜14が形成されてなる加飾製品10の品質を、飛躍的に高めることが可能となるのである。
【0073】
次に、図6乃至図14には、本発明に従う構造を有するマスキング装置28の別の実施形態が、それぞれ示されている。それらの図に示されたマスキング装置28は、前記第一の実施形態のマスキング装置28とは、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のみが異なる構造とされている。それ故、それら図6乃至図14に示された各実施形態に関しては、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36の構造について詳述し、それら以外の部分については、図3乃至図5と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0074】
すなわち、図6に示されたマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第二の板状突出部36(図6には、縦板部84のみを示し、図7乃至図21についても同様とする)が、基板12の三つの側面15b,15c,15d(図6には、側面15bのみを示し、図7乃至図20についても同様とする)の周囲において、第一の板状突出部32(図6には、縦板部58のみを示し、図7乃至図21についても同様とする)の内側に配置される。また、かかる第二の板状突出部36は、第一の板状突出部32の内面と三つの側面15b,15c,15dとに対して、それぞれ、非接触な状態で対向配置される。
【0075】
そして、そのような配置状態下で、第二の板状突出部36が、基板12の意匠面16から非意匠面18側とは反対側に所定の突出量:D1 で突出している。また、第一の板状突出部32は、基板12の意匠面16から非意匠面18側に所定の突出量:D2 で突出している。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、何れも、基板12の三つの側面15b,15c,15dに対してオーバーラップした状態で配置される。
【0076】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態でオーバーラップしつつ、基板12の薄膜非形成領域:Bの周囲に配置される。このときの第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量:D3 は、第二の板状突出部36の意匠面16から非正面18側とは反対側への突出量:D1 と、第一の板状突出部32の意匠面16から非意匠面18側への突出量:D2 の合計値:D1+D2となる。
【0077】
また、図7に示されたマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第一の板状突出部32が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に配置される。また、第一の板状突出部32は、第二の板状突出部36の内面と三つの側面15b,15c,15dとに対して、それぞれ、非接触な状態で対向配置されて、基板12の意匠面16から非意匠面18側に所定の突出量:D2 で突出している。
【0078】
一方、第二の板状突出部36は、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、それらの側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなく、意匠面16に対して、非意匠面18側に、図7にD1 にて示される寸法だけ離間して配置される。この第二の板状突出部36の意匠面16からの離間量:D1 は、第一の板状突出部32の意匠面16からの突出量:D2 よりも小さくされている。
【0079】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第一の板状突出部32の外側に位置する第二の板状突出部36が、基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップしてはいないものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態でオーバーラップして、基板12の薄膜非形成領域:Bの周囲に配置される。このときの第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量:D3 は、第一の板状突出部32の意匠面16から非意匠面18側への突出量:D2 から、第二の板状突出部36の意匠面16からの離間量:D1 を差し引いた値:D2−D1となる。
【0080】
さらに、図8に示されたマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第一の板状突出部32が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に、第二の板状突出部36と非接触な状態で対向配置される。また、第一の板状突出部32は、三つの側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなく、基板12の意匠面16に対して、非意匠面18側とは反対側に、図8にD2 にて示される寸法だけ離間して配置される。
【0081】
一方、第二の板状突出部36は、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、それらの側面15b,15c,15dとオーバーラップした状態で、非接触に対向配置される。また、かかる第二の板状突出部36は、基板12の意匠面16から非意匠面18側とは反対に所定の突出量:D1 で突出している。この第二の板状突出部36の意匠面16からの突出量:D1 は、第一の板状突出部32の意匠面16からの離間量:D2 よりも大きくされている。
【0082】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第二の板状突出部36の内側に位置する第一の板状突出部32が、基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップしてはいないものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態でオーバーラップして、基板12の薄膜非形成領域:Bの周囲に配置される。このときの第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量:D3 は、第二の板状突出部36の意匠面16からの離間量:D1 から、第一の板状突出部32の意匠面16から非意匠面18側への突出量:D2 を差し引いた値:D1−D2となる。
【0083】
また、図9に示されたマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第二の板状突出部36が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に、第一の板状突出部32と非接触な状態で対向配置される。また、第二の板状突出部36は、三つの側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなく、基板12の意匠面16に対して、非意匠面18側に、図9にD1 にて示される寸法だけ離間して配置される。
【0084】
一方、第一の板状突出部32は、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、それらの側面15b,15c,15dとオーバーラップした状態で、非接触に対向配置される。また、かかる第一の板状突出部32は、基板12の意匠面16から非意匠面18側に所定の突出量:D2 突出している。この第一の板状突出部32の意匠面16からの突出量:D2 は、第二の板状突出部36の意匠面16からの離間量:D1 よりも大きくされている。
【0085】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第一の板状突出部32の内側に位置する第二の板状突出部36が、基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップしてはいないものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態でオーバーラップして、基板12の薄膜非形成領域:Bの周囲に配置される。このときの第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量:D3 は、第一の板状突出部32の意匠面16から非意匠面18側への突出量:D2 から、第二の板状突出部36の意匠面16からの離間量:D1 を差し引いた値:D2−D1となる。
【0086】
さらに、図10に示されるマスキング装置28においては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第二の板状突出部36が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に配置される。また、第二の板状突出部36は、第二の板状突出部36の内面と三つの側面15b,15c,15dとに対して、それぞれ、非接触な状態で対向配置されて、基板12の意匠面16から非意匠面18側に所定の突出量:D1 で突出している。
【0087】
一方、第一の板状突出部32は、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、それらの側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなく、意匠面16に対して、非意匠面18側とは反対側に、図10にD2 にて示される寸法だけ離間して配置される。この第一の板状突出部32の意匠面16からの離間量:D2 は、第二の板状突出部36の意匠面16からの突出量:D1 よりも小さくされている。
【0088】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第二の板状突出部36の外側に位置する第一の板状突出部32が、基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップしてはいないものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態でオーバーラップして、基板12の薄膜非形成領域:Bの周囲に配置される。このときの第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量:D3 は、第二の板状突出部36の意匠面16からの突出量:D1 から、第一の板状突出部32の意匠面16からの離間量:D2 を差し引いた値:D1−D2となる。
【0089】
このように、図6乃至図10に示される各マスキング装置28においては、何れも、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをマスキングした状態下において、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態でオーバーラップしつつ、基板12の薄膜非形成領域:Bの周囲に配置されている。
【0090】
従って、それら図6乃至図10に示される各マスキング装置28にあっては、図3乃至図5に示される前記第一の実施形態に係るマスキング装置28において奏される作用・効果と同一の作用・効果が、有効に享受され得る。
【0091】
また、図11に示されたマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部36とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第一の板状突出部32が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に配置される。また、第一の板状突出部32は、基板12の三つの側面15b,15c,15dに対して、非接触な状態で対向配置されて、基板12の意匠面16から非意匠面18側に所定の突出量:D2 で突出している。
【0092】
一方、第二の板状突出部36は、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、それらの側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなく、意匠面16に対して、非意匠面18側に、図11にD1 にて示される寸法だけ離間して配置される。そして、ここでは、かかる第二の板状突出部36の意匠面16からの離間量:D1 と、第一の板状突出部32の意匠面16からの突出量:D2 とが、同一の大きさとされている。
【0093】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第二の板状突出部36の内側に、かかる第二の板状突出部36と非接触に位置する第一の板状突出部32の突出先端面が、第二のマスキング部38の第二のマスキング面80に対して、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bよりも近接して、配置される。つまり、第一の板状突出部32が、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bから非意匠面18側に突出した状態で、かかる意匠面16の薄膜非形成領域:Bを取り囲んで配置される。そして、それと共に、第一の板状突出部32の突出先端面と第二の板状突出部36の突出先端面とが、第一のマスキング部34(第一のマスキング面52)と第二のマスキング部38(第二のマスキング面80)の互いの対向方向において同一の位置に配置される。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされる。
【0094】
さらに、図12に示されたマスキング装置28においては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第二の板状突出部36が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に配置される。また、第二の板状突出部36は、基板12の三つの側面15b,15c,15dに対して非接触な状態で対向配置されて、基板12の意匠面16から非意匠面18側に所定の突出量:D1 で突出している。
【0095】
一方、第一の板状突出部32は、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、それらの側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなく、意匠面16に対して、非意匠面18側とは反対側に、図12にD2 にて示される寸法だけ離間して配置される。そして、ここでは、かかる第一の板状突出部32の意匠面16からの離間量:D2 と、第二の板状突出部36の意匠面16からの突出量:D1 とが、同一の大きさとされている。
【0096】
これにより、本実施形態のマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下において、第一の板状突出部32の内側に、かかる第一の板状突出部32と非接触に位置する第二の板状突出部36の突出先端面が、第一のマスキング部34の第一のマスキング面52に対して、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bよりも近接して、配置される。つまり、第二の板状突出部36が、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bから非意匠面18側とは反対側に突出した状態で、かかる意匠面16の薄膜非形成領域:Bを取り囲んで配置される。そして、それと共に、第一の板状突出部32の突出先端面と第二の板状突出部36の突出先端面とが、第一のマスキング部34(第一のマスキング面52)と第二のマスキング部38(第二のマスキング面80)の互いの対向方向において同一の位置に配置される。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされる。
【0097】
このように、図11及び図12に示されるマスキング装置28においては、何れも、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とによる基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18のマスキング状態下で、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とが、互いに非接触な状態で、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲に互いに離間して配置される。また、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のうち、内側に位置するものが、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bを取り囲んで配置され、更に、それら第一の板状突出部32の突出先端面と第二の板状突出部36の突出先端面とが、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38の互いの対向方向において同一の位置に配置される。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされる。
【0098】
それ故、かくの如き図11及び図12に示されるマスキング装置28にあっては、スパッタリング法により基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Aに金属薄膜14を形成する際に、基板12の意匠面16の正面側や非意匠面18側からマスキング装置28内へのスパッタリング粒子の侵入が阻止されることは勿論、意匠面16の側方からマスキング装置28内へのスパッタリング粒子の侵入が、有効に阻止される。また、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36との接触に起因した、第一のマスキング部34の基板12上での位置ズレの発生も、未然に防止される。
【0099】
従って、それらのマスキング装置28においても、図3乃至図5に示される前記第一の実施形態に係るマスキング装置28において奏される作用・効果と同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得る。
【0100】
また、図13に示されたマスキング装置28にあっては、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと非意匠面18とをそれぞれマスキングした状態下で、第一の板状突出部32が、基板12の三つの側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に配置される。
【0101】
そして、ここでは、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のそれぞれの突出先端面が、第一のマスキング部34(第一のマスキング面52)と第二のマスキング部38(第二のマスキング面80)の互いの対向方向において、基板12の意匠面16の薄膜非形成領域:Bと同一の位置に配置される。即ち、第一の板状突出部32の意匠面16からの突出乃至離間量:D2 と第一の板状突出部32の意匠面16からの突出乃至離間量:D1 とが何れもゼロとされ、また、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のオーバーラップ量:D3 もゼロとされている。
【0102】
このような構造とされた図13に示されるマスキング装置28にあっても、図3乃至図5に示される前記第一の実施形態に係るマスキング装置28において奏される作用・効果と同一の作用・効果が、極めて有効に享受され得る。
【0103】
なお、図14に示されるように、例えば、基板12端部に、厚さ方向の一方側に突出する突出部98が設けられて、この突出部98の側面15bも意匠面16に含まれる場合には、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のそれぞれの突出先端面が、非意匠面18に含まれる、突出部98の突出先端面100と側面15bとの境界部位となる、側面15bと突出先端面100とのなす角の頂点部位102に対して、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38の互いの対向方向において同一の位置に配置されることとなる。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされると共に、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のそれぞれの突出先端面が、意匠面16の薄膜非形成領域:Bにおける第一のマスキング部34と第二のマスキング部38の互いの対向方向での第二のマスキング部38側の端縁に対して、かかる対向方向において同一の位置に配置されるのである。
【0104】
ここにおいて、本発明に従うマスキング装置が、上記の如き優れた特徴を発揮するものであることを確認するために、本発明者によって実施された試験について、以下に詳述する。
【0105】
すなわち、先ず、図3乃至図5に示される構造を有するマスキング装置を製造して、準備した。このマスキング装置の材料は、全て、アルミニウムとした。そして、かくして得られたマスキング装置を試験例1とした。
【0106】
また、そのような試験例1のマスキング装置とは別に、図6乃至図13に示される構造を有するアルミニウム製の8個のマスキング装置を、それぞれ製造して、準備した。それら8個のマスキング装置を、図番の小さいものから順に試験例2〜9とした。
【0107】
また、比較のために、本発明とは異なる構造とされた図15乃至図21に示される7個のマスキング装置を製造して、準備した。それら7個のマスキング装置を、図番の小さいものから順に試験例10〜16とした。なお、図15乃至図21に示されるマスキング装置28については、図3乃至図14に示される本発明に従う構造を備えたマスキング装置28と同様な構造とされた部材及び部位について、図3乃至図14と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明が省略されていることが理解されるべきである。
【0108】
すなわち、図15に示されるように、試験例10のマスキング装置28は、第一の板状突出部32が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に、各側面15b,15c,15dと離間して対向配置される。そして、第一の板状突出部32が基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップするものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とがオーバーラップしない構造とされている。
【0109】
図16に示されるように、試験例11のマスキング装置28は、第一の板状突出部32が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に、各側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなしに離間して、配置される。そして、第二の板状突出部36が基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップするものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とがオーバーラップしない構造とされている。
【0110】
図17に示されるように、試験例12のマスキング装置28は、第二の板状突出部36が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に、各側面15b,15c,15dとオーバーラップすることなしに離間して、配置される。そして、第一の板状突出部32が基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップするものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とがオーバーラップしない構造とされている。
【0111】
図18に示されるように、試験例13のマスキング装置28は、第二の板状突出部36が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に、各側面15b,15c,15dと離間して対向配置される。そして、第二の板状突出部36が基板12の側面15b,15c,15dとオーバーラップするものの、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36とがオーバーラップしない構造とされている。
【0112】
図19に示されるように、試験例14のマスキング装置28は、第一の板状突出部32が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第二の板状突出部36の内側に、各側面15b,15c,15dと離間して、配置される。また、第一の板状突出部32の突出先端面が、基板12の意匠面16から非意匠面18側に突出することなしに配置される。そして、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のそれぞれの突出先端面が、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38との対向方向において同一の位置に配置される構造とされている。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされている。
【0113】
図20に示されるように、試験例15のマスキング装置28は、第二の板状突出部36が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に、各側面15b,15c,15dと離間して、配置される。また、第二の板状突出部36の突出先端面が、基板12の意匠面16から非意匠面18側とは反対側に突出することなしに配置される。そして、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のそれぞれの突出先端面が、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38との対向方向において同一の位置に配置される構造とされている。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされている。
【0114】
図21に示されるように、試験例16のマスキング装置28は、第二の板状突出部36が、基板12の側面15b,15c,15dの周囲において、第一の板状突出部32の内側に、各側面15b,15c,15dと離間して、配置される。また、第二の板状突出部36の突出先端面が、基板12の意匠面16から非意匠面18側とは反対側に突出することなしに配置される。そして、第一の板状突出部32と第二の板状突出部36のそれぞれの突出先端面と意匠面16とが、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38との対向方向において同一の位置に配置される構造とされている。つまり、第一の板状突出部32と第二の板状突出部のオーバーラップ量:D3 がゼロとされている。
【0115】
また、上記の如き構造を有する試験例1〜16のマスキング装置とは別に、図1及び図2に示される如き構造を有する樹脂製の16個の基板を作製して、準備した。
【0116】
そして、試験例1のマスキング装置と1個の基板とを用いて、図4及び図5に示されるように、基板の意匠面の薄膜非形成領域と非意匠面とを第一のマスキング部と第二のマスキング部とにてマスキングした状態で、基板をマスキング装置にセットした。次いで、公知の構造を有するスパッタリング装置を用いて、基板とマスキング装置とを一軸回りに回転させつつ、スパッタリングを公知の手法によって実施し、基板の意匠面の薄膜形成領域に対して、スパッタリング膜からなる金属薄膜を形成して、加飾製品を得た。
【0117】
また、試験例2〜16のマスキング装置と15個の基板とスパッタリング装置とをそれぞれ用いて、上記と同様な操作を行うことにより、15個の加飾製品を得た。その後、かくして得られた16個の加飾製品を用い、それらの加飾製品の意匠面の薄膜非形成領域に金属薄膜が形成されているか否かを目視により調べた。
【0118】
その結果、本発明に従う構造を有する試験例1〜9のマスキング装置を用いて得られた9個の加飾製品においては、意匠面の薄膜非形成領域に、金属薄膜が、何等形成されていなかった。これに対して、本発明とは異なる構造を有する試験例10〜16のマスキング装置を用いて得られた7個の加飾製品においては、意匠面の薄膜非形成領域への金属薄膜の形成が認められた。このことから、本発明に従う構造を有するマスキング装置を用いることによって、金属薄膜が、意匠面の薄膜形成領域のみに確実に形成されることが、明確に認識され得る。
【0119】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0120】
例えば、前記幾つかの実施形態では、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とが、取付手段を構成するベースフレーム30に取り付けられて、マスキング装置28が、第一のマスキング部34と第二のマスキング部38とベースフレーム30の一体組付品として構成されていた。しかしながら、例えば、互いに独立した別部材からなる第一のマスキング部と第二のマスキング部とが、それらとは更に別部材の取付手段に対して、基板と共に、取り外し可能に取り付けられるようにされてなる別体構造により、マスキング装置を構成することも可能である。また、マスキング装置は、第一のマスキング部と第二のマスキング部のうちの何れか一方が、取付手段に固定されてなる構造とされていても良い。
【0121】
さらに、基板や第一及び第二のマスキング部の取付手段への取付構造も、例示されたものに、何等限定されるものではない。
【0122】
また、第一の板状突出部や第二の板状突出部の形状や大きさ、或いは第一のマスキング部や第二のマスキング部に対する形成位置は、基板の形状や大きさ等によって、適宜に変更されるものである。
【0123】
加えて、前記実施形態では、本発明を、基板の意匠面の一部にスパッタリング法により金属薄膜を形成する際に用いられる薄膜形成用マスキング装置に適用した例が示されていたが、本発明は、基板の意匠面の一部に、スパッタリング法以外の物理蒸着法又は化学蒸着法により、金属薄膜、或いは金属薄膜以外の薄膜を形成する際に用いられる薄膜形成用マスキング装置の何れに対しても有利に適用され得ることは勿論である。
【0124】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0125】
10 加飾製品 12 基板
14 金属薄膜 16 意匠面
18 非意匠面 24 見切り部
28 マスキング装置 30 ベースフレーム
32 第一の板状突出部 34 第一のマスキング部
36 第二の板状突出部 38 第二のマスキング部
44 係合棒 52 第一のマスキング面
76 係合爪 80 第二のマスキング面
96 係合孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた基板の該意匠面の一部に物理蒸着法又は化学蒸着法により薄膜を形成する際に、該意匠面における該薄膜の非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置であって、(a)前記基板の前記意匠面の薄膜非形成領域をマスキングする第一のマスキング部と、(b)前記基板の前記非意匠面の少なくとも一部をマスキングする第二のマスキング部と、(c)前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部が、前記意匠面の薄膜非形成領域と前記非意匠面の少なくとも一部をそれぞれマスキングしつつ、前記基板を間に挟んで両側に位置し、且つ該基板を介して互いに対向配置された状態において、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と該基板が取り付けられると共に、少なくとも該基板が任意に取り外し可能とされた取付手段と、(d)前記第一のマスキング部の周縁部うち、前記意匠面の前記薄膜の非形成領域と形成領域の境界線に沿って延びる部位を除く周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、該意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第一の板状突出部と、(e)前記第二のマスキング部の周縁部うち、前記第一の板状突出部が突設される前記第一のマスキング部の周縁部部位に対応する周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第二の板状突出部とを有するものにおいて、
前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記第一の板状突出部と前記第二の板状突出部とが、互いに非接触な状態でオーバーラップして配置されるように構成されていることを特徴とする薄膜形成用マスキング装置。
【請求項2】
一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた基板の該意匠面の一部に物理蒸着法又は化学蒸着法により薄膜を形成する際に、該意匠面における該薄膜の非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置であって、(a)前記基板の前記意匠面の薄膜非形成領域をマスキングする第一のマスキング部と、(b)前記基板の前記非意匠面の少なくとも一部をマスキングする第二のマスキング部と、(c)前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部が、前記意匠面の薄膜非形成領域と前記非意匠面の少なくとも一部をそれぞれマスキングしつつ、前記基板を間に挟んで両側に位置し、且つ該基板を介して互いに対向配置された状態において、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と該基板が取り付けられると共に、少なくとも該基板が任意に取り外し可能とされた取付手段と、(d)前記第一のマスキング部の周縁部うち、前記意匠面の前記薄膜の非形成領域と形成領域の境界線に沿って延びる部位を除く周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、該意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第一の板状突出部と、(e)前記第二のマスキング部の周縁部うち、前記第一の板状突出部が突設される前記第一のマスキング部の周縁部部位に対応する周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第二の板状突出部とを有するものにおいて、
前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記第一の板状突出部と前記第二の板状突出部のうちの何れか一方の板状突出部が、それらのうちの何れか他方の板状突出部の内側に、該他方の板状突出部と非接触な状態で配置されると共に、該一方の板状突出部の突出先端面が、該他方の板状突出部が設けられる該第一のマスキング部又は該第二のマスキング部に対して、前記意匠面の薄膜非形成領域よりも近接配置され、更に、該第一の板状突出部の突出先端面と該第二の板状突出部の突出先端面とが、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部の互いの対向方向において同一の位置に配置されるように構成されていることを特徴とする薄膜形成用マスキング装置。
【請求項3】
一方の板面が意匠面とされる一方、他方の板面が非意匠面とされた基板の該意匠面の一部に物理蒸着法又は化学蒸着法により薄膜を形成する際に、該意匠面における該薄膜の非形成領域をマスキングするのに用いられる薄膜形成用マスキング装置であって、(a)前記基板の前記意匠面の薄膜非形成領域をマスキングする第一のマスキング部と、(b)前記基板の前記非意匠面の少なくとも一部をマスキングする第二のマスキング部と、(c)前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部が、前記意匠面の薄膜非形成領域と前記非意匠面の少なくとも一部をそれぞれマスキングしつつ、前記基板を間に挟んで両側に位置し、且つ該基板を介して互いに対向配置された状態において、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と該基板が取り付けられると共に、少なくとも該基板が任意に取り外し可能とされた取付手段と、(d)前記第一のマスキング部の周縁部うち、前記意匠面の前記薄膜の非形成領域と形成領域の境界線に沿って延びる部位を除く周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、該意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第一の板状突出部と、(e)前記第二のマスキング部の周縁部うち、前記第一の板状突出部が突設される前記第一のマスキング部の周縁部部位に対応する周縁部部位に対して、該周縁部位に沿って延びるように一体的に突設された板状の突出部からなり、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記意匠面の薄膜非形成領域の周囲に配置される第二の板状突出部とを有するものにおいて、
前記第一のマスキング部と前記第二のマスキング部と前記基板の前記取付手段への取付状態下で、前記第一の板状突出部が、前記第二の板状突出部の内側に、該第二の板状突出部と非接触な状態で配置されると共に、前記意匠面の薄膜非形成領域における該第一のマスキング部と該第二のマスキング部の互いの対向方向での該第二のマスキング部側の端縁と、該第一の板状突出部の突出先端面と、該第二の板状突出部の突出先端面とが、該第一のマスキング部と該第二のマスキング部の互いの対向方向において同一の位置に配置されるように構成されていることを特徴とする薄膜形成用マスキング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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