説明

薄膜形成用組成物及び薄膜形成方法

【課題】経時による粘度上昇が生じ難く、薄膜形成に際しての塗工厚みのばらつきが生じ難く、従って、均一な厚みの薄膜を確実にかつ安定に得ることを可能とする薄膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】重量平均分子量が500〜5000のアルコキシシラン縮合物と、重量平均分子量が10000〜500000の範囲にあり、下記の式(1)で示される骨格を有する直鎖状ポリシロキサンからなる粘度調整剤(B)と、前記アルコキシシラン縮合物(A)及び前記粘度調整剤(B)を溶解する溶媒とを含むことを特徴とする薄膜形成用組成物。
【化1】


式(1)中、R,Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、RとRは同一でも、異なっていてもよく、nは整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシランの縮合物を用いており、かつ半導体装置などの電子デバイスにおいて絶縁膜等に用いられる薄膜を形成するための薄膜形成用組成物及び薄膜形成方法に関し、特に、膜厚の均一化を図ることが可能な薄膜形成用組成物及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの電子デバイスでは、小型化及び薄型化を図るために、絶縁性に優れた薄膜を形成することが必要である。また、半導体装置のパッシベーション膜やゲート絶縁膜などでは、微細パターン形状の絶縁膜を形成することが必要である。そこで、パターニング可能な薄膜形成用の感光性樹脂組成物として、アルコキシシラン縮合物を用いた薄膜形成用組成物が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、1)アルカリ可溶性シロキサンポリマー、2)光により反応促進剤を発生する化合物及び3)溶剤を主成分とする薄膜形成用感光性組成物が開示されている。この1)アルカリ可溶性シロキサンポリマーは、アルコキシシランに水及び触媒を加えて加水分解縮合させた反応溶液から、水及び触媒を除去して得られたアルコキシシラン縮合物である。
【0004】
上記のようなアルコキシシラン縮合物と溶剤とを含む薄膜形成用組成物を用いて薄膜を形成するに際しては、該薄膜形成用組成物をまず基板上に所定の厚みに塗布する。次に、乾燥し、さらに加熱することにより焼成し、硬質でかつ緻密な薄膜が形成されている。また、特許文献1に記載のようなパターニングが求められる薄膜形成用組成物の場合には、薄膜形成用感光性組成物を基板上に塗布した後、乾燥し、マスクを介して選択的に露光する。しかる後、露光された組成物層をアルカリ溶液により現像する。次に、現像後に、残存している組成物層を加熱することにより、硬質で緻密な微細パターン状の薄膜を得る。
【特許文献1】特開平6−148895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の薄膜形成用感光性組成物を用いた微細パターン状薄膜の形成、並びにパターニングを必要としない前述したアルコキシシラン縮合物を用いた薄膜形成方法のいずれにおいても、薄膜形成に際して塗工される薄膜形成用組成物中のアルコキシシラン縮合物中には比較的多くのシラノール基(SiOH基)が残存しがちであった。そのため、塗工に先立ち、保管中などにおいて、空気中の水分や環境温度により縮合がさらに進行し、アルコキシシラン縮合物の分子量が増大し、薄膜形成用組成物の粘度が上昇しがちであった。その結果、薄膜形成に際し、基板上に薄膜形成用組成物を所定の厚みに塗布しようとしても、塗布厚みが変動し、最終的に得られた薄膜や微細パターン状薄膜において、膜厚がばらつくという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、アルコキシシラン縮合物を用いた薄膜形成用組成物であって、経時による粘度の上昇が生じ難く、従って、薄膜形成に際しての塗布厚みのばらつきが生じ難く、よって均一な厚みの薄膜を高精度に形成することを可能とする薄膜形成用組成物及び薄膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薄膜形成用組成物は、重量平均分子量が500〜5000のアルコキシシラン縮合物と、重量平均分子量が10000〜500000の範囲にあり、下記の式(1)で示される骨格を有する直鎖状ポリシロキサンからなる粘度調整剤(B)と、前記アルコキシシラン縮合物(A)及び前記粘度調整剤(B)を溶解する溶媒とを含むことを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1)中、R,Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、RとRは同一でも、異なっていてもよく、nは整数である。
【0010】
本発明に係る薄膜形成用組成物では、上記アルコキシシラン縮合物としては、様々なアルコキシシラン縮合物を用いることができるが、好ましくは、前記アルコキシシラン縮合物(A)が、下記の式(2)で表わされるアルコキシシランの縮合物である。
【0011】
Si(R(R(R4−p−q・・・式(2)
上述した式(2)中、Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を表し、Rはアルコキシ基を表し、Rはアルコキシ基以外の加水分解性基を表し、pは0〜3の整数を表し、qは1〜4の整数を表し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0012】
本発明に係る薄膜形成用組成物では、上記アルコキシシラン縮合物(A)100重量部に対し、上記粘度調整剤(B)は、5〜100の重量部の割合で配合されることが好ましい。5重量部未満では、粘度の上昇を抑制する効果が十分でないことがあり、100重量部を越えると、粘度の上昇は抑制され得るものの、得られた薄膜中に粘度調整剤が多く含有され、薄膜の特性や電気的特性が低下するおそれがある。
【0013】
本発明に係る薄膜形成方法は、本発明の薄膜形成用組成物を基板上に塗工し、薄膜形成用組成物層を形成する工程と、前記薄膜形成用組成物層を乾燥する工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る薄膜形成方法では、好ましくは、上記乾燥に際し、あるいは乾燥後に薄膜形成用組成物層が加熱され、それによって、より一層緻密な薄膜を得ることができる。
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0016】
(アルコキシシラン縮合物(A))
本発明で用いられるアルコキシシラン縮合物(A)は、重量平均分子量が500〜5000の範囲にある比較的低分子量のアルコキシシラン縮合物である。アルコキシシラン縮合物(A)を溶媒で希釈してなるアルコキシシラン縮合物溶液を基板上などに塗布し、加熱等の方法で焼成することにより、硬質の薄膜を形成することができる。上記アルコキシシラン縮合物(A)については、特に限定されないが、重量平均分子量は500〜5000の範囲であることが必要である。重量平均分子量が500未満の場合には硬質で緻密な薄膜を形成することは困難であり、5000を越えると、ゲル化しやすくなる。
【0017】
なお、本明細書において、アルコキシシラン縮合物及び粘度調整剤(B)の重量平均分子量は、いずれも、ポリスチレン換算による重量平均分子量である。
【0018】
上記アルコキシシラン縮合物(A)としては、特に限定されないが、好ましくは、下記の式(2)で表わされるアルコキシシランの縮合物が用いられる。
【0019】
Si(R(R(R4−p−q・・・式(2)
上述した式(2)中、Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を表し、Rはアルコキシ基を表し、Rはアルコキシ基以外の加水分解性基を表し、pは0〜3の整数を表し、qは1〜4の整数を表し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0020】
上記アルコキシ基R及びアルコキシ基以外の加水分解性基Rは、通常、過剰の水の共存下、無触媒で、室温(25℃)〜100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基、またはさらに縮合してシロキサン結合を形成することができる基である。
【0021】
上記アルコキシ基Rとしては、特に限定されないが、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
【0022】
上記アルコキシ基以外の加水分解性基Rとしては、特に限定されないが、具体的には、塩素、臭素等のハロゲノ基、アミノ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基等が挙げられる。
【0023】
上記非加水分解性の有機基Rとしては、特に限定されないが、加水分解を起こし難く、安定な疎水基である炭素数1〜30の有機基が挙げられる。安定な疎水基である炭素数1〜30の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ペンチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びエイコシル基等の炭素数1〜30のアルキル基、アルキル基のフッ素化物、塩素化物、臭素化物等のハロゲン化アルキル基(例えば、3−クロロプロピル基、6−クロロプロピル基、6−クロロヘキシル基および、6,6,6−トリフルオロヘキシル基等)、ハロゲン置換ベンジル基等の芳香族置換アルキル基(例えば、ベンジル基、4−クロロベンジル基及び4−ブロモベンジル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、メシチル基、ナフチル基等)、ビニル基やエポキシ基を含む有機基、アミノ基を含む有機基、チオール基を含む有機基等が挙げられる。
【0024】
上記アルコキシシランの具体例としては、例えば、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、エチルジメチルメトキシシラン、メチルジエチルメトキシシラン、エチルジメチルエトキシシラン、メチルジエチルエトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジエチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、フェニルジエチルエトキシシラン、メチルジフェニルメトキシシラン、エチルジフェニルメトキシシラン、メチルジフェニルエトキシシラン、エチルジフェニルエトキシシラン、tert−ブトキシトリメチルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、ジフェニルジエトキシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、3−クロロポロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル−トリ−n−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチル−トリ−n−プロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピル−トリ−n−プロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリプロポキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリプロポキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリプロポキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリプロポキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリプロポキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリプロポキシシラン、エイコシルデシルトリメトキシシラン、エイコシルトリエトキシシラン、エイコシルトリプロポキシシラン、6−クロロヘキシルトリメトキシシラン、6,6,6−トリフルオロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、4−クロロベンジルトリメトキシシラン、4−ブロモベンジルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、N−β−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラアセトキシシラン等が挙げられる。これらのアルコキシシランを縮合させて得られたアルコキシシランの縮合物がより好ましく用いられる。アルコキシシランの縮合物(A)を構成するに際しては、少なくとも1種のアルコキシシランが用いられていればよく、従って2種以上のアルコキシシランが用いられていてもよい。
【0025】
(粘度調整剤(B))
本発明において用いられる粘度調整剤(B)は、重量平均分子量が10000〜500000の範囲にあり、下記の式(1)で示す骨格を有する直鎖状ポリシロキサンからなる。
【0026】
【化2】

【0027】
式(1)中、R,Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、RとRは同一でも、異なっていてもよく、nは整数である。
【0028】
なお、炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基としては、前述した式(2)に示したRとして例示した非加水分解性有機基を同様に用いることができる。すなわち、非加水分解性の有機基R,Rとしては、特に限定されないが、前述した加水分解を起こし難く、安定な組成基である炭素数1〜30の有機基として例示した有機基を同様に用いることができる。
【0029】
重量平均分子量が、10000未満の場合には、薄膜形成用組成物の粘度の変化を抑制する効果が小さくなり、500000を越えると、薄膜形成用組成物において、溶媒に粘度調整剤(B)が溶解し難くなり、加工性が大幅に低下する。粘度上昇抑制効果を高め、さらに加工性の低下をより一層抑制するには、重量平均分子量は、20000〜100000の範囲がより好ましい。
【0030】
上記のように、式(1)で示す直鎖状ポリシロキサンを用いるのは、例えばトリアルコキシシランやテトラアルコキシシランの縮合物であるポリシロキサンを粘度調整剤として用いた場合には、粘度調整剤自体において架橋構造が形成され易くなる。そのため、薄膜形成用組成物中における溶解性が低下し、粘度上昇抑制効果が得られ難くなる。また、トリアルコキシシランやテトラアルコキシシランのポリシロキサンを用いた場合には、残留するシラノール基も多くなるため、それによっても、経時により分子量が増大することとなる。
【0031】
従って、本発明では、上記のように、ジアルコキシシランの縮合物である、式(1)に示す骨格を有する直鎖状ポリシロキサンが粘度調整剤(B)として用いられており、それによって、経時による粘度の上昇が効果的に抑制される。
【0032】
上記式(1)で示す骨格を有する直鎖状ポリシロキサンからなる粘度調整剤(B)は、ジアルコキシシランの加水分解縮合物である。このようなジアルコキシシランとしては、特に限定されないが、ジフェニルジエトキシラン、フェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアセトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、3−クロロポロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジアセトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシランなどが挙げられる。上記粘度調整剤(B)を得るに際しては、これらの少なくとも1種のアルコキシシランが用いられるが、2種以上のジアルコキシシランを用いてもよい。
【0033】
上記粘度調整剤(B)を得るにあたっては、アルコキシシラン縮合物(A)を得る場合と同様に、少なくとも1種のジアルコキシシランと、加水分解縮合反応の触媒と、水と、適宜の溶剤とを混合し、加熱下で反応させ、しかる後、水との縮合反応で生成したアルコールと残留水を除去すればよい。上記触媒としては、シュウ酸、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p − アミノ安息香酸、p − トルエンスルホン酸、フタル酸、スルホン酸、酒石酸、トリフルオロメタンスルフォン酸等の有機酸、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等の無機酸等などの適宜の酸などを用いることができる。また、上記溶媒としても、後述の溶剤(C)として挙げられている適宜の溶媒を用いることができる。
【0034】
上記粘度調整剤(B)の配合割合については、アルコキシシラン縮合物(A)100重量部に対し、5〜100重量部の割合とすることが望ましい。5重量部未満では、粘度上昇抑制効果を得ることができないことがあり、100重量部を越えると、粘度が高くなりすぎ、かつ粘度調整剤(B)の含有割合が高くなりすぎて、得られる薄膜の品質が劣化することがある。
【0035】
(溶剤(C))
本発明において、薄膜形成用組成物に用いられる溶剤(C)としては、薄膜形成用組成物に配合される成分を溶解し得る適宜の溶媒を用いることができる。すなわち、アルコキシシラン縮合物(A)及び粘度調整剤(B)を溶解し、さらに必要に応じて、添加される他の成分を溶解し得る適宜の溶媒を用いることができる。
【0036】
このような溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、スチレン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物;シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジペンテン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、テトラヒドロナフタレン、スクワランなどの飽和または不飽和炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソアミル、ステアリン酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
上記溶剤(C)の配合割合については、薄膜形成に際し、基板上などに塗工し、所定の厚みの薄膜形成用組成物層を形成し得る限り、適宜の割合とすることができるが、好ましくは、固形分濃度が0.5〜60重量%、より好ましくは2〜40重量%程度とされるように溶剤を配合することが望ましい。
【0038】
(添加される好ましい化合物)
本発明に係る薄膜形成用組成物では、好ましくは、上記アルコキシシラン縮合物(A)と反応して残存SiOH基を低減し得る化合物(D)が添加されることが望ましい。このような化合物(D)としては、単官能のアルコキシシラン化合物、単官能のシラノール化合物、単官能のエポキシ化合物及び単官能のエポキシ化合物及び単官能のイソシアネート化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0039】
化合物(D)を添加することにより、残存しているSiOH基を少なくすることができ、それによって、保管時の粘度上昇をより効果的に抑制することができる。
【0040】
上記単官能のアルコキシシラン化合物としては、特に限定されないが、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルエトキシシラン、エチルメトキシシラン、エチルエトキシシラン、ジイソプロピルエトキシシラン、ジメチルアミノメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルエトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニルエチルメトキシシラン、ジフェニルエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、オクチルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン等を挙げることができる。なかでも、成分(X)においてSiOH基の存在割合をより一層低減することができるので、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルエトキシシラン、エチルメトキシシラン、エチルエトキシシランが好ましく用いられる。
【0041】
上記単官能のシラノール化合物としては、特に限定されないが、トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール、t−ブチルジメチルシラノール等を挙げることができる。なかでも、成分(X)においてSiOH基の存在割合をより一層低減することができるので、トリメチルシラノール、トリエチルシラノールが好ましく用いられる。
【0042】
上記単官能のエポキシ化合物としては、特に限定されないが、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、フェニル−2−メチルグリシジルエーテル、セチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、メタパタクレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、イソプロピルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。上記単官能エポキシ化合物の市販品としては、日本油脂社製の商品名「エピオールM」(メチルグリシジルエーテル)、商品名「エピオールEH」(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)等が挙げられる。なかでも、成分(X)においてSiOH基の存在割合をより一層低減することができるので、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテルが好ましく用いられる。
【0043】
上記単官能のイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、トリメチルシリルイソシアネート、トリエチルシリルイソシアネート等を挙げることができる。なかでも、成分(X)においてSiOH基の存在割合をより一層低減することができるので、トリメチルシリルイソシアネートが好ましく用いられる。
【0044】
上記化合物(D)を用いる場合、その配合割合は、アルコキシシラン縮合物(A)において残存しているSiOH基の存在割合により適宜設定すればよい。好ましくは、アルコキシシラン縮合物(A)100重量部に対し、化合物(D)を、1.0〜150重量部程度の割合で配合することが望ましい。1.0重量部未満では、SiOH基の存在割合を十分に低くできないことがあり、150重量部を越えると、化合物(D)が過剰となり、薄膜の絶縁性能などが低下するおそれがある。
【0045】
(添加され得る他の成分)
本発明に係る薄膜形成用組成物には、必要に応じて、他の添加剤をさらに添加してもよい。
【0046】
このような添加剤としては、充填剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、可塑促進剤、タレ防止剤などが挙げられる。
【0047】
(光の照射により酸または塩基を発生する化合物(E))
また、好ましくは、本発明に係る薄膜形成用組成物は、薄膜パターンの形成に用いられるものであってもよい。その場合には、薄膜形成用組成物には、好ましくは、光の照射により酸または塩基を発生する化合物(E)を添加することが望ましい。このような化合物(E)としては、適宜の光酸発生剤及び光塩基発生剤を用いることができる。
【0048】
上記光酸発生剤としては、例えば、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル等が挙げられる。これらの光酸発生剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えばコバルトアミン錯体、o−アシルオキシム、カルバミン酸誘導体、ホルムアミド誘導体、第4級アンモニウム塩、トシルアミン、カルバメート、アミンイミド化合物などを挙げることができる。具体的には、2−ニトロベンジルカルバメート、2,5−ジニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、N−シクロヘキシル−4−メチルフェニルスルホンアミド、1,1−ジメチル−2−フェニルエチル−N−イソプロピルカルバメート等が挙げられる。これらの光塩基発生剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
上記光酸発生剤や光塩基発生剤に加え、より感度を高めるために、さらに増感剤を加えてもよい。好適な増感剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、p,p′−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、p,p′−テトラエチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、アントロン、9−エトキシアントラセン、アントラセン、ピレン、ペリレン、フェノチアジン、ベンジル、アクリジンオレンジ、ベンゾフラビン、セトフラビン−T、9,10−ジフェニルアントラセン、9−フルオレノン、アセトフェノン、フェナントレン、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、N−アセチル−p−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、N−アセチル−4−ニトロ−1−ナフチルアミン、ピクラミド、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロン、ジベンザルアセトン、1,2−ナフトキノン、3,3′−カルボニル−ビス(5,7−ジメトキシカルボニルクマリン)及びコロネン等であるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
(薄膜形成方法)
本発明に係る薄膜形成用組成物を用いて薄膜を形成するに際しては、先ず、本発明の薄膜形成用組成物を基板上に所定の厚みに塗工する。この塗工方法は特に限定されず、スピンコーティング、スリットコーティング、ダイコーティング、スクリーン印刷などの適宜の方法を用いることができる。いずれにしても、本発明の薄膜形成用組成物では、保管時に、上記粘度調整剤(B)の作用により、粘度の上昇が抑制されるので、均一な厚みにかつ安定に薄膜形成用組成物層を容易に塗工することができる。
【0052】
次に、薄膜形成用組成物層を乾燥し、必要に応じて、乾燥するに際し、あるいは乾燥後に加熱する。それによって、緻密でかつ硬質の薄膜を得ることができる。上記加熱に際しては、特に限定されないが、例えば、200〜500の温度に30分〜2時間程度維持すればよい。
【0053】
また、上述した光酸発生剤及び光塩基発生剤を用いてパターニングを行う場合には、加熱に先立って、露光及びアルカリ溶液を用いた現像工程を実施すればよく、それによって、微細なパターン状の薄膜を形成することができる。その場合においても、薄膜形成用組成物の保管時の粘度の上昇が抑制されているので、薄膜形成用組成物の塗工厚みのばらつきを低減でき、厚みばらつきの少ない微細パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0054】
本発明に係る薄膜形成用組成物では、重量平均分子量500〜5000の比較的低分子量のアルコキシシラン縮合物中にシラノール基が残存していたとしても、上記のように、重量平均分子量が10000〜500000と比較的大きく、しかも、上記アルコキシシラン縮合物と同様の骨格を有する上記特定の直鎖状ポリシロキサンからなる粘度調整剤(B)が配合されているので、薄膜形成用組成物全体の粘度にアルコキシシラン縮合物(A)が寄与する割合が相対的に低くされている。従って、薄膜形成用組成物の保管中の粘度変化が抑制される。それによって、薄膜形成用組成物を塗工して薄膜を形成するに際し、塗工厚みがばらつき難くなり、均一な厚みの薄膜を高精度に形成することができる。
【0055】
よって、経時による粘度上昇が少ないため、長期間保管したとしても、例えば半導体装置の層間絶縁膜のように膜厚が高精度に制御されていることが求められる。絶縁膜等を形成するのに最適な薄膜形成用組成物及び薄膜形成方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明をより明らかにする。
【0057】
(1)アルコキシシラン縮合物
アルコキシシラン縮合物(A)として、下記のアルコキシシラン縮合物A1〜A3を用意した。
【0058】
アルコキシシラン縮合物A1
冷却管をつけた100mlのフラスコに、フェニルトリエトキシシラン15g、トリエトキシシラン10g、シュウ酸0.5g、水7ml及びジエチレングリコールジエチルエーテル17mlを加えた。半円形型のメカニカルスターラーを用いて溶液を攪拌し、マントルヒーターで70℃・3時間反応させた。その後、エバポレーターを用いて水との縮合反応で生成したエタノールと残留水を除去した。反応終了後、フラスコを室温になるまで放置し、シリコン含有ポリマー混合物である成分(A1)を調製した。A1のポリスチレン換算による重量平均分子量は1500、固形分濃度は40重量%であった。
【0059】
(アルコキシシラン縮合物A2)
トリエトキシシランをメチルトリエトキシシランに変更したことを除いては、上記アルコキシシラン縮合物A1の調製と同様にして重量平均分子量が1200であるアルコキシシラン縮合物A2を得た。なお、固形分濃度は40重量%であった。
【0060】
(アルコキシシラン縮合物A3)
フェニルトリエトキシシランをメチルトリエトキシシランに変更したことを除いては、上記アルコキシシラン縮合物A1の調製と同様にして重量平均分子量が1500であるアルコキシシラン縮合物A3を得た。なお、固形分濃度は40重量%であった。
【0061】
(2)粘度調整剤(B)
粘度調整剤(B)として、下記の粘度調整剤B1a〜B1d、B2a〜B2d及びB3a〜B3dを調製した。
【0062】
(粘度調整剤B1a)
冷却管をつけた100mlのフラスコに、ジメチルジエトキシシラン25g、シュウ酸1.5g、水10ml及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)20mlを加えた。半円形型のメカニカルスターラーを用いて溶液を攪拌し、マントルヒーターで120℃・6時間反応させた。その後、エバポレーターを用いて水との縮合反応で生成したエタノールと残留水を除去した。反応終了後、フラスコを室温になるまで放置し、シリコン含有ポリマー混合物である成分(B1)を調製した。B1のポリスチレン換算による重量平均分子量は55000、固形分濃度は30重量%であった。
【0063】
(粘度調整剤B1b〜B2d)
粘度調整剤B1aの調製と同様にして、ただし、それぞれ、反応温度を60℃、80℃及び100℃に変更し、粘度調整剤B1b〜粘度調整剤B1dを得た。粘度調整剤B1b〜B1dの重量平均分子量及び固形分濃度はそれぞれ、以下の通りである。
【0064】
粘度調整剤B1b:重量平均分子量=6000、固形分濃度=30重量%
粘度調整剤B1c:重量平均分子量=18000、固形分濃度=30重量%
粘度調整剤B1d:重量平均分子量=30000、固形分濃度=30重量%
【0065】
(粘度調整剤B2a)
ジメチルジエトキシシランをジエチルジエトキシシランに変更したことを除いては、粘度調整剤B1aの調製と同様にして、粘度調整剤B2aを調製した。粘度調整剤B2aの重量平均分子量は33000、固形分濃度は30重量%であった。
【0066】
(粘度調整剤B2b〜B2d)
粘度調整剤B2aの調製と同様にして、ただし、それぞれ、反応温度を60℃、80℃及び100℃に変更し、粘度調整剤B2b〜粘度調整剤B2dを得た。粘度調整剤B2b〜B2dの重量平均分子量及び固形分濃度はそれぞれ、以下の通りである。
【0067】
粘度調整剤B2b:重量平均分子量=5500、固形分濃度=30重量%
粘度調整剤B2c:重量平均分子量=15000、固形分濃度=30重量%
粘度調整剤B2d:重量平均分子量=24000、固形分濃度=30重量%
【0068】
(粘度調整剤B3a)
ジメチルジエトキシシランをジメチルジメトキシシランに変更したことを除いては、粘度調整剤B1aの調製と同様にして、粘度調整剤B3aを調製した。粘度調整剤B3aの重量平均分子量は80000、固形分濃度は30重量%であった。
【0069】
(粘度調整剤B3b〜B3d)
粘度調整剤B3aの調製と同様にして、ただし、それぞれ、反応温度を60℃、80℃及び100℃に変更し、粘度調整剤B3b〜粘度調整剤B3dを得た。粘度調整剤B3b〜B3dの重量平均分子量及び固形分濃度はそれぞれ、以下の通りである。
【0070】
粘度調整剤B3b:重量平均分子量=12000、固形分濃度=30重量%
粘度調整剤B3c:重量平均分子量=25000、固形分濃度=30重量%
粘度調整剤B3d:重量平均分子量=55000、固形分濃度=30重量%
【0071】
(粘度調整剤B4)
東亞合成社製、ポリアクリル酸系増粘剤粉末、商品名アロンA−20P(重量平均分子量=500万)を比較のための粘度調整剤B4として用意した。
【0072】
(粘度調整剤B5)
冷却管をつけた100mlのフラスコに、トリメチルエトキシシラン25g、シュウ酸1.5g、水10ml及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)20mlを加えた。半円形型のメカニカルスターラーを用いて溶液を攪拌し、マントルヒーターで120℃で反応を開始したが、すぐにゲル化が生じた。すなわち、アルコキシ基を3つ有するトリメチルエトキシシランを使用したため、直鎖状とならず、縮合反応による分子量の増加とともに大きく緻密な3次元の網目構造を形成して溶媒に不溶となり、ゲル化が生じた。ゲル化物の分子量は、ゲル化物が溶媒に溶けないため測定できなかった。
【0073】
(実施例1)
下記の表1に示すように、アルコキシシラン縮合物A1を100重量部に対し、粘度調整剤B1aを30重量部と、溶媒としてのジエチレングリコール(DEDG)33重量部とを混練し、薄膜形成用組成物を得た。
【0074】
(実施例2〜実施例30及び比較例1〜比較例9)
実施例1と同様に、下記の表1、表2、表3または表4に示すように各アルコキシシラン縮合物A1、A2またはA3と、粘度調整剤B1a〜B3dまたはB4のいずれか1種とを下記の表1、表2、表3または表4に示す割合で配合し、混練し、それぞれ薄膜形成用組成物を得た。なお、比較例9では、粘度調整剤B5を使用することを試みたが、上述の通り、粘度調整剤B5の製造時にゲル化が生じ、薄膜形成用組成物は用意できなかった。
【0075】
評価
上記各薄膜形成用組成物を形成した直後の粘度である初期粘度を23℃の温度で回転式粘度計(トキメック社製TVE20L)により測定した。また、上記薄膜形成用組成物を、23℃の温度に1週間放置した後、同様に23℃の温度による粘度を測定した。結果を下記の表1〜表4に示す。
また、上記のようにした薄膜形成用組成物を用い、以下の要領で体積抵抗を測定した。
【0076】
体積抵抗の測定:薄膜形成用組成物をシリコンウエハーからなる基板上に2ミクロンの厚みとなるようにスピンコーター法により塗工した。このようにして塗工された薄膜形成用組成物を100の温度で5分間維持して乾燥し、さらに300℃の温度で1時間維持して加熱することにより、2μの厚みの薄膜を形成した。このようにして得られた薄膜の体積抵抗について、R8252(エレクトロメーター)、R12704(モジュール)(アドバンテスト社製)を用いて、JIS K 6911の方法にしたがい求めた。結果を下記の表1〜表4に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
表4から明らかなように、比較例1では、粘度調整剤が添加されていなかったため、生成直後の初期粘度は12mPa・sと低かったが、1週間放置した後に、粘度が150mPa・sと大幅に上昇した。
【0082】
他方、比較例2では、ポリアクリル酸系の粘度調整剤B4を用いたため、1週間放置後の粘度はさほど上昇しなかったが、カルボン酸系のポリマーのため、得られた薄膜の体積抵抗は2.5×10−9Ω・cmと低く、絶縁性が十分でなかった。
【0083】
これに対して、実施例1〜30では、生成直後の初期粘度が低いだけでなく、23℃に1週間放置した後の粘度上昇が十分に抑制されており、しかも得られた薄膜の体積抵抗も十分高く、従って、厚みが均一であり、絶縁性に優れた薄膜を安定に提供し得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が500〜5000のアルコキシシラン縮合物と、
重量平均分子量が10000〜500000の範囲にあり、下記の式(1)で示される骨格を有する直鎖状ポリシロキサンからなる粘度調整剤(B)と、
前記アルコキシシラン縮合物(A)及び前記粘度調整剤(B)を溶解する溶媒とを含むことを特徴とする薄膜形成用組成物。
【化1】

式(1)中、R,Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を示し、RとRは同一でも、異なっていてもよく、nは整数である。
【請求項2】
前記アルコキシシラン縮合物(A)が、下記の式(2)で表わされるアルコキシシランの縮合物である、請求項1に記載の薄膜形成用組成物。
Si(R(R(R4−p−q・・・式(2)
式(2)中、Rは水素又は炭素数が1〜30である非加水分解性の有機基を表し、Rはアルコキシ基を表し、Rはアルコキシ基以外の加水分解性基を表し、pは0〜3の整数を表し、qは1〜4の整数を表し、p+q≦4である。pが2又は3であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。qが2〜4であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。p+q≦2であるとき、複数のRは同一であってもよく異なっていてもよい。
【請求項3】
前記アルコキシシラン縮合物(A)100重量部に対し、前記粘度調整剤(B)5〜100重量部の割合で配合されている、請求項1または2に記載の薄膜形成用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜形成用組成物を基板上に塗工し、薄膜形成用組成物層を形成する工程と、
前記薄膜形成用組成物層を乾燥する工程とを備えることを特徴とする、薄膜形成方法。
【請求項5】
前記乾燥に際し、あるいは乾燥後に前記薄膜形成用組成物を加熱する工程を備える、請求項4に記載の薄膜形成方法。

【公開番号】特開2008−280413(P2008−280413A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124772(P2007−124772)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】