薄膜形成装置及び薄膜形成方法
【課題】 薄手の基材に対するヤラレを防止して、薄手の基材であっても安定した薄膜形成を可能とする。
【解決手段】 この薄膜形成装置には、互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置された一対の電極と、基材を支持する支持体とが備えられている。また、薄膜形成装置には、基材が放電空間内で一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように、支持体を電極に密着させて保持する保持機構と、薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とが備えられている。そして、基材及び支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着している。
【解決手段】 この薄膜形成装置には、互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置された一対の電極と、基材を支持する支持体とが備えられている。また、薄膜形成装置には、基材が放電空間内で一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように、支持体を電極に密着させて保持する保持機構と、薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とが備えられている。そして、基材及び支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特に、大気圧プラズマ放電処理を用いて薄膜を基材上に形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSI、半導体、表示デバイス、磁気記録デバイス、光電変換デバイス、太陽電池、ジョセフソンデバイス、光熱変換デバイス等の各種製品には、基材上に高性能性の薄膜を設けた材料が用いられている。薄膜を基材上に形成する手法には、塗布に代表される湿式製膜方法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に代表される乾式製膜方法、あるいは大気圧プラズマ放電処理を利用した大気圧プラズマ製膜方法等が挙げられるが、近年では、高い生産性を維持しつつ高品質な薄膜を形成できる大気圧プラズマ製膜方法の使用が特に望まれている。
【0003】
大気圧プラズマ製膜方法は、対向する電極間に基材を配置させた状態で、薄膜形成ガスを供給し、両電極に電界を印加する。これにより、放電プラズマが発生し、基材を放電プラズマに晒すことで薄膜が形成される。大気圧プラズマ製膜方法を実現する薄膜形成装置として、例えば、特許文献1に記載される薄膜形成装置が挙げられる。この薄膜形成装置には、対向する2つの電極と、これらの電極に電界を印加する電源と、2つの電極の放電面に対して、それぞれ基材を密着するように搬送するフィルム用搬送装置と、電極間に薄膜形成ガスを供給する薄膜形成ガス供給部とが備わっている。そして、この薄膜形成装置は、電極間に薄膜形成ガスを供給してから、電界を印加することにより放電プラズマを発生させて、2つの電極に密着した基材に薄膜を形成するようになっている。
【特許文献1】特開2000−212753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年においては、例えば厚みが100μm以下の基材に薄膜を形成することが望まれているが、薄手の基材であると放電空間内での熱に反応しやすいために、特許文献1に記載される薄膜形成装置で薄手の基材に薄膜形成を行ったとしても、基材自体にツレや熱収縮、破断といった現象(ヤラレ)が生じてしまう。このように基材にヤラレが発生していると、薄膜形成が不安定になってしまう。
【0005】
本発明の課題は、薄手の基材に対するヤラレを防止して、薄手の基材であっても安定した薄膜形成を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明における薄膜形成装置は、
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
基材を支持する支持体と、
前記基材が前記放電空間内で前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように、前記支持体を前記電極に密着させて保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴している。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、再剥離性を有する粘着剤によって基材と支持体とが密着しているので、放電空間内においては両者が一体的に固定されることになり、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。特に、厚みが100μm以下の基材の場合、放電空間内で支持体に接触しているだけでは、熱によるヤラレが発生しやすい状態であるが、上述したように支持体と一体的に固定されていれば、支持体によって熱による変形が抑制されることになる。したがって、薄手の基材に対するヤラレを防止でき、薄手の基材であっても安定した薄膜形成が可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材と前記支持体とを一緒に搬送する搬送装置であることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、保持機構が基材と支持体とを一緒に搬送する搬送装置であるので、広範囲にわたって薄膜を形成することが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴としている。
【0011】
ここで、基材や支持体に皺やツレが発生していると、放電空間内の均一性が乱れてしまい、不均一な製膜としまう。この皺やツレが発生する原因は、基材や支持体が放電空間に支えのない状態で進入することにより、熱影響を受けて収縮してしまうことにある。しかしながら、この請求項3記載の発明であると、放電空間に進入する以前に、基材は支持体に密着し、支持体は電極に密着しているために、放電空間内では基材は支持体により支持され、支持体は電極に支持されていることになる。これにより、基材及び支持体が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。したがって、放電空間内の均一性を維持することができ、高品質な薄膜の形成が可能となる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、前記搬送装置による搬送が行われる以前に予め密着していて、
前記搬送装置は、前記放電空間の通過後に前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、基材及び支持体が搬送される以前に予め密着しているので、搬送時に基材と支持体とを密着させる工程を省略することができ、装置自体の構成を簡略化することが可能となる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材及び前記支持体が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、放電空間に進入する以前に搬送装置によって基材及び支持体が密着させられているので、基材及び支持体が予め分離していたとしても、搬送経路上で密着させることができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は環状に形成されていて、
前記搬送装置は、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように、前記支持体を回転させて、前記基材を搬送することを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、搬送装置が、支持体に対する基材の密着及び剥離が繰り返されるように、環状の支持体を回転させて基材を搬送するので、基材の長さと同一長さの支持体を用意しなくても、基材を搬送することができ、結果として製造コストを低減できる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、複数の前記放電空間を通過するように搬送することを特徴としている。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、搬送装置が、前記基材及び前記支持体を複数の前記放電空間を通過するように搬送しているので、基材が削られることを防止しながら、基材上に対する製膜を複数回繰り返すことが可能になる。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項2〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面に対して、前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側には、前記基材及び前記支持体を加熱する加熱部材が設けられていることを特徴としている。
【0021】
ここで、放電空間内に基材及び支持体が進入すると、放電プラズマによる熱影響を受けてしまうが、この請求項8記載の発明のように、電極の放電面に対して基材及び支持体の搬送方向の上流側で、加熱部材が基材及び支持体を加熱していれば、電極の放電面に接触する以前、つまり放電空間に進入する以前に予め基材及び支持体を加熱できる。このため、放電プラズマによる熱が急激かつ過剰に基材及び支持体に影響することを防止でき、基材及び支持体の熱収縮を抑制できる。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の薄膜形成装置において、
前記加熱部材は、前記基材及び前記支持体が前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱することを特徴としている。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、加熱部材によって基材及び支持体が放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱されているので、加熱部材においても急激に加熱されることはなく、さらに熱収縮を抑制することができる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項2〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、電極の放電面と放電面以外の表面との連続角部が、円弧状に形成されているので、支持体が放電面以外の表面から放電面までに移動する際に引っかかることを防止でき、スムーズに搬送することができる。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴としている。
【0027】
請求項11記載の発明によれば、基材及び支持体の材質若しくは熱的物性が同等であるので、両者の熱変形量が同等となって、熱変形量の異なりによる皺やツレの発生をも低減することができる。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴としている。
【0029】
一般的な薄膜形成装置に用いられる電極は、誘電体によってその表面が形成されている。しかしながら、請求項12記載の発明のように支持体が誘電体から形成されていれば、表面が誘電体でない電極であっても、放電空間内では支持体が電極の表面に密着しているために、支持体が電極の誘電体として機能する。表面が誘電体でない電極は、表面が誘電体からなる電極と比べて廉価であるために製造コストを低減できる。
【0030】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴としている。
【0031】
基材の表面上に均一な製膜を行うには、少なくとも基材の全体が放電空間内に収まっていることが好ましいが、こうしてしまうと基材の外側にも薄膜の原料が飛散してしまう。しかしながら請求項13のように、支持体の幅が基材よりも長ければ、支持体が基材の外側まで電極を覆うことになり、原料が電極に付着することを防止できる。
【0032】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0033】
請求項14記載の発明によれば、前記一対の電極の放電面が、放電空間に向けて凸となる曲面であるので、電極の放電面と支持体との密着性を高めることができる。
【0034】
請求項15記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0035】
請求項15記載の発明によれば、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
【0036】
請求項16記載の発明は、請求項1〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0037】
請求項16記載の発明によれば、ガス中に窒素が50%以上含まれているので、他のガスを使用した場合よりも比較的安価にすることができる。
【0038】
請求項17記載の発明は、請求項1〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0039】
請求項17記載の発明によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0040】
請求項18記載の発明における薄膜形成方法は、
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、基材を支持する支持体を、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように前記電極に密着させて保持することで、前記基材を活性化した前記ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴としている。
【0041】
請求項18記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0042】
請求項19記載の発明は、請求項18記載の薄膜形成方法において、
前記基材と前記支持体とは、前記放電空間を通過するように一緒に搬送されることを特徴としている。
【0043】
請求項19記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0044】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴としている。
【0045】
請求項20記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0046】
請求項21記載の発明は、請求項19又は請求項20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、搬送される以前に予め密着していて、前記放電空間の通過後に剥離させられることを特徴としている。
【0047】
請求項21記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0048】
請求項22記載の発明は、請求項19又は20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離させることを特徴としている。
【0049】
請求項22記載の発明によれば、請求項5記載の発明と藤堂の作用、効果を得ることができる。
【0050】
請求項23記載の発明は、請求項22記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、環状に形成されていて、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように回転されて、前記基材を搬送することを特徴としている。
【0051】
請求項23記載の発明によれば、請求項6記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0052】
請求項24記載の発明は、請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記基材及び前記支持体は、複数の前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴としている。
【0053】
請求項24記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0054】
請求項25記載の発明は、請求項19〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面に対して前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側で、前記基材及び前記支持体は加熱されることを特徴としている。
【0055】
請求項25記載の発明によれば、請求項8記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0056】
請求項26記載の発明は、請求項25記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱されることを特徴としている。
【0057】
請求項26記載の発明によれば、請求項9記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0058】
請求項27記載の発明は、請求項19〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0059】
請求項27記載の発明によれば、請求項10記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0060】
請求項28記載の発明は、請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴としている。
【0061】
請求項28記載の発明によれば、請求項11記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0062】
請求項29記載の発明は、請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴としている。
【0063】
請求項29記載の発明によれば、請求項12記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0064】
請求項30記載の発明は、請求項18〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴としている。
【0065】
請求項30記載の発明によれば、請求項13記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0066】
請求項31記載の発明は、請求項18〜30のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0067】
請求項31記載の発明によれば、請求項14記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0068】
請求項32記載の発明は、請求項18〜31のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0069】
請求項32記載の発明によれば、請求項15記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0070】
請求項33記載の発明は、請求項18〜32のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0071】
請求項33記載の発明によれば、請求項16記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0072】
請求項34記載の発明は、請求項18〜33のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0073】
請求項34記載の発明によれば、請求項17記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、放電空間内においては両者が一体的に固定されることになり、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。特に、厚みが100μm以下の基材であっても、支持体によって熱による変形が抑制されるので、薄手の基材に対するヤラレを防止でき、薄手の基材であっても安定した薄膜形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
[第1の実施の形態]
以下、添付図面を参照しつつ本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表す正面図である。
【0076】
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置1には、図1に示す通り、放電プラズマを発生させるための一対の電極2,3が間隔を空けて対向するように固定されている。この間隔が放電空間Hとなり、この放電空間Hを成す電極2,3の対向する面をそれぞれ放電面2a,3aとする。
【0077】
図2は、電極2,3の概略構成を表す斜視図である。図2に示すように、電極2,3には、導電性の金属質母材21,31の表面に誘電体22,32が被覆された棒状電極である。電極2,3の角部(連続角部)23,33は、電極2,3の表面を滑らかに連続させるために円弧状に形成されている。つまり、電極2,3の放電面2a,3aと、放電面2a,3aに連なる放電面2a,3a以外の表面とは角部23,33によって滑らかに連続されることになる。そして、電極2,3には、図1に示すように電源4が接続されている。
【0078】
薄膜形成装置1には、図1に示すように、基材5と当該基材5を支持する支持体6とを、少なくとも放電空間H内で保持されるように重ねて搬送する搬送装置(保持機構)7が設けられている。
搬送装置7について具体的に説明すると、一方の電極2の外側(図1の左側)上方には、基材5の元巻を回転自在に保持する基材用保持ローラ71が、電極2,3と平行となるように配置されている。この基材用保持ローラ71と電極2との上下方向における間には、支持体6の元巻を回転自在に保持する支持体用保持ローラ72が基材用保持ローラ71に対して平行になるように配置されている。支持体用保持ローラ72に保持される支持体6にはその表面上に再剥離性を有する粘着剤61(図3参照)が塗布されている。
基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72と、一方の電極2との間には、基材5及び支持体6を一方の電極2まで案内する第1ガイドローラ73が、一方の電極2の右上端部と、支持体用保持ローラ72から支持体6が引き出される部分とを結ぶ線(図1における補助線S1)よりも下方に配置されている。これにより、支持体用保持ローラ72から引き出された支持体6が、基材用保持ローラ71から引き出された基材5の裏面に粘着剤61を介して密着してから、電極2の上面(図1における点P1)に接触することになる。
【0079】
また、一対の電極2,3の下方には、一方の電極2に沿って放電空間Hを通過した基材5及び支持体6を密着させたまま、他方の電極3に案内する案内路(図示省略)が形成されている。案内路は、基材5及び支持体6のうち、支持体6が他方の電極3の下面(図1における点P2)に接触するように形成されている。
【0080】
そして、他方の電極3の外側(図1の右側)上方には、基材5を巻き取る基材用巻取ローラ74が、電極2,3に平行となるように配置されている。この基材用巻取ローラ74と電極3との上下方向における間には、支持体6を巻き取る支持体用巻取ローラ75が基材用巻取ローラ74に対して平行になるように配置されている。基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75と、他方の電極3との間には、基材5及び支持体6をそれぞれ基材用巻取ローラ74、支持体用巻取ローラ75に案内する第2ガイドローラ76が、他方の電極3の左端部と、基材用巻取ローラ74に支持体6が巻き取られ始める部分とを結ぶ線(図1における補助線S2)よりも下方に配置されている。
【0081】
つまり、搬送装置7は、基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75が回転することによって、基材5及び支持体6のそれぞれを基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72から引き出すようになっている。引き出された基材5及び支持体6は、第1ガイドローラ73で粘着剤61により密着し、一方の電極2の上面、放電面2a、下面の順に電極2に沿い、案内路を介して、他方の電極3の下面、放電面3a、上面の順に電極3に沿ってから、電極3から離間して、第2ガイドローラ76で互いに剥離し、それぞれ基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75に巻き取られるようになっている。
【0082】
図3は、図1におけるA−A断面図であり、放電空間H内における電極2,3、基材5、支持体6の位置関係を表している。この図3に示すように、放電空間H内においては、支持体6が電極2,3と基材5との間に介在されていて、なおかつ支持体6と基材5とが粘着剤61を介して密着されて固定されることになる。
【0083】
また、図1に示すように放電空間Hの上方には、薄膜形成ガスを含有するガスを放電空間Hに供給するガス供給部8が設けられている。このガス供給部8には、薄膜形成ガスを含有したガスを貯留する第1ガスタンク9が、配管91及びガス調整部92(図6参照)を介して接続されているとともに、薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを貯留する第2ガスタンク10が、配管11及び無原料ガス調整部12(図6参照)を介して接続されている。ここで、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12は、配管91,11内部を流れるガス及び無原料ガスの流量や流速、ガス組成、濃度などを調整するものである。
図4は、ガス供給部8を表す斜視図であり、図5はガス供給部8の断面図である。図4に示すように、ガス供給部8の後端部中央には、配管91が連結されるガス管81が設けられている。また、ガス供給部8の後端部には、配管11が連結される4つの無原料ガス用ガス管82が、それぞれガス管81の前後左右に配置されている。
【0084】
また、ガス供給部8の内部には、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入するガス及び無原料ガスの流路を形成する4枚の仕切板83が設けられている。4枚の仕切板83のうち、2枚の仕切板83は、前後に位置する無原料ガス用ガス管82と、左右に位置する無原料ガス用ガス管82及びガス管81との間で、上下左右方向に沿うように配置されている。これら2枚の仕切板83にわたって、残りの2枚の仕切板83が、左右に位置する無原料ガス用ガス管82とガス管81との間で、上下前後方向に沿うように配置されている(図5参照)。これらの仕切板83によって、ガス供給部8の先端の開口が分割されている。分割された開口のうち、ガスを噴出する開口を第1ガス噴出口84、無原料ガスを噴出する開口を第2ガス噴出口85とすると、第1ガス噴出口84は各第2ガス噴出口85によって前後左右が囲まれることになる。これによって、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入したガス及び無原料ガスを個別に噴出するようになっている。ここで、図5に示すように、左右方向に位置する一対の第2ガス噴出口85は、第1ガス噴出口84を挟むように左右方向(搬送方向)に沿って配列されている。同様に、図4に示すように前後方向に位置する一対の第2ガス噴出口85も、第1ガス噴出口84を挟むように前後方向に沿って配列されている。このため、ガス及び無原料ガスの噴出時においては、ガスが無原料ガスによって遮られることになり、放電空間H外へガスが流出することを防止できるようになっている。
【0085】
また、図1に示すように放電空間Hの下方には、放電空間Hから流出したガス及び無原料ガスを吸引する吸引部13が設けられている。この吸引部13には、放電空間Hにわたって延在する吸引口部14が備えられており、この吸引口部14には配管15を介して吸引ポンプ16が接続されている。
【0086】
そして、一対の電極2,3の放電面2a,3aの反対側には、支持体6が電極2,3に接触することで発生した削りカスを吸引する複数のカス用吸引部17が、支持体6と電極2,3の接点付近を吸引するように配置されている。
【0087】
図6は、薄膜形成装置1における主制御構成を表すブロック図である。この図6に示すように、薄膜形成装置1には、各駆動部を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40には、電極2,3の温度を調節する温度調節装置44、記憶部41、電源4、ガス調整部92、無原料ガス調整部12、吸引ポンプ16、カス用吸引部17、基材用巻取ローラ74の駆動源42、支持体用巻取ローラ75の駆動源43、が電気的に接続されている。なお、制御装置40には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置40は、記憶部41中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
【0088】
次に、ガス供給部8から供給されるガスについて説明する。
このガスは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことのできる放電ガスと、薄膜の原料を含有する薄膜形成ガスとが混合されたものである。
放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本実施形態では、比較的安価な窒素を用いている。ここで薄膜形成ガスと混合した際に、窒素の濃度が50%以上になることが好ましい。さらに窒素に混合させるガスとして希ガスを使用した場合には、放電ガスの50%未満を含有させることが好ましい。
【0089】
薄膜形成ガスに含まれる原料としては、例えば、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等が挙げられる。
有機金属化合物としては、以下の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等が挙げられる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等が挙げられ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等が挙げられ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等が挙げられ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0090】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機金属化合物が好ましい。
【0091】
また、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物の金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
【0092】
無原料ガスとしては、薄膜の原料となる薄膜形成性ガスに含有される化合物を含まないガスが使用される。具体的には、上記した放電ガスや酸素、一酸化炭素、空気などが挙げられる。未原料ガスとして放電ガスを使用した場合には、放電空間H内で発生する放電プラズマを均一にすることができる。
【0093】
次に、基材5について説明する。基材5としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材5が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態のガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材5の形態または材質には制限ない。材質的には、例えばガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラス板や、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等が挙げられる。
【0094】
樹脂フィルムは本発明に係る薄膜形成装置1の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0095】
樹脂からなる基材5の材質としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
【0096】
また、本発明に用いられる基材5は、厚さが200μm以下、より好ましくは5〜50μmのフィルム状のものが使用されている
【0097】
次に、支持体6について説明する。支持体6としては、基材5及び電極2,3の間に介在するようにフィルム状に形成されたものが使用される。ここで、基材5の表面上に均一な製膜を行うには、少なくとも基材5の全体が放電空間H内に収まっていることが好ましいが、こうしてしまうと基材5の外側にも薄膜の原料が飛散してしまうために、支持体6の幅を、図3に示すように基材5の幅よりも長くすれば、支持体6が基材5の外側まで電極2,3を覆うことになり、原料が電極2,3に付着することを防止でき、好ましい。
また、支持体6の材質は、基材5と同一材質若しくは熱的物性が同等であることが好ましい。これにより、基材5と支持体6との熱変形量が同等となって、熱変形量の異なりによる皺やツレの発生をも低減することができる。
【0098】
次に、再剥離性を有する粘着剤61について説明する。粘着剤61は、基材5及び支持体6が放電空間H内で放電プラズマに晒されたとしても、その粘着性及び再剥離性が劣化しない耐熱性に優れたものが好ましい。このような粘着剤61としては例えばアクリル系粘着剤が挙げられる。そして、一般には、支持体6に予め粘着剤61がコーティングされたものが市販されているので、例えばPETからなる支持体6に、粘着剤61としてのアクリル系粘着剤がコーティングされた日東電工(株)製の「耐熱性表面保護接着テープ(型番E−MASK TP300)」を用いることが好ましい。
【0099】
次に、電極2,3を形成する金属質母材21,31及び誘電体22,32について説明する。
金属質母材21,31と誘電体22,32と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材21,31と誘電体22,32との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0100】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、5)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、6)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、7)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、8)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記1)または2)および5)〜8)が好ましく、特に1)が好ましい。
【0101】
そして、金属質母材21,31は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材21,31をチタンまたはチタン合金とし、誘電体22,32を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
【0102】
本発明に有用な電極の金属質母材21,31は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材21,31としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体22,32との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0103】
一方、誘電体22,32としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体22,32が好ましい。
【0104】
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体22,32の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体22,32の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0105】
次に、本実施形態の薄膜形成装置1の作用について説明する。
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置40は、吸引ポンプ16及びカス用吸引部17を駆動させてから、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御し、ガス供給部8から放電空間Hにガス及び無原料ガスを供給する。放電空間Hにガスが供給されると、制御装置40は、基材用巻取ローラ74の駆動源42と、支持体用巻取ローラ75の駆動源43とを制御して、基材5及び支持体6を搬送させる。
【0106】
基材5及び支持体6の搬送が開始されると、制御装置40は、電源4をONにする。これにより、一方の電極2には、周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加され、他方の電極3には、周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
【0107】
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
【0108】
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0109】
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0110】
このように、一方の電極2による第1高周波電界及び他方の電極3による第2高周波電界が発生されると、放電空間Hには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。基材5及び支持体6は、放電空間Hに進入する以前に、粘着剤61によって密着されていて、さらに電極2,3の放電面2a,3aに連続する放電面2a,3a以外の表面(一方の電極2の上面や、他方の電極3の下面)に密着されるために、放電面2a,3a以外の表面によって支えられた状態でプラズマ空間に進入する。これにより、基材5及び支持体6が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。
【0111】
さらに、一対の電極2,3は、それぞれ温度調節装置44によってその表面温度が制御されているために、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に、放電面2a,3a以外の表面によって予め加熱されることとなる。このため、放電空間Hに基材5及び支持体6が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、基材5及び支持体6に皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。特に、電極2、3においては、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に接触する、放電面2a,3a以外の表面が所定の面積を確保しているので、放電面2a,3aに至るまでに、基材5及び支持体6を加熱することができ、放電空間Hに進入することによる急激な加熱を緩和でき、皺やツレの発生をさらに抑制できる。そして、加熱を連続的或いは段階的に行えば、基材5及び支持体6の皺やツレをより一層抑制することが可能になる。ここで、連続的な加熱としては、図7に示す実線L1,L2のように、直線的或いは滑らかに温度上昇することであり、段階的な加熱としては、図7に示す実線L3のように、ステップをおいて温度上昇することである。
その後、薄膜が形成された基材5は、基材用巻取ローラ74によって巻き取られ、支持体6も基材5から剥離して支持体用巻取ローラ75によって巻き取られる。
【0112】
以上のように、この第1の実施の形態の薄膜形成装置1によれば、再剥離性を有する粘着剤61によって基材5と支持体6とが密着しているので、放電空間H内においては両者が一体的に固定されることになり、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。特に、厚みが100μm以下の基材5の場合、放電空間H内で支持体6に接触しているだけでは、熱によるヤラレが発生しやすい状態であるが、上述したように支持体6と一体的に固定されていれば、支持体6によって熱による変形が抑制されることになる。したがって、薄手の基材5に対するヤラレを防止でき、薄手の基材5であっても安定した薄膜形成が可能となる。
また、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
また、本実施形態によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜が行われているので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
また、支持体6においても皺やツレの発生が防止されているので、支持体用巻取ローラ75で巻き取られた支持体6を再利用することも可能である。
そして、本実施形態の薄膜形成装置1では、基材5が放電空間Hを出てから、基材5及び支持体6、支持体6及び電極2,3が剥離されているので、放電空間H内で基材5及び支持体6、支持体6及び電極2,3を離間させることなく、基材5や支持体6に対するツレや皺の発生を防止できる。
【0113】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態に係る薄膜形成装置について図8を参照に説明する。図8は第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。なお、上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、一対の電極2,3で薄膜を形成する場合を例示して説明したが、この第2の実施の形態では、少なくとも3以上の電極によって薄膜を形成する場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0114】
図8に示すように薄膜形成装置100には、放電プラズマを発生させるための4つの電極51,52,53,54がそれぞれ間隔を空けて対向するように固定されている。この間隔が放電空間H1,H2,H3となり、この放電空間H1,H2,H3のそれぞれを成す電極51,52,53,54の対向する面をそれぞれ放電面51a,52a,52b,53a,53b,54aとする。
各放電空間H1,H2,H3の上方には、それぞれガス供給部8A,8B,8Cが設けられている。一方、各放電空間H1,H2,H3の下方には、それぞれ吸引部13A,13B,13Cが設けられている。
【0115】
また、薄膜形成装置100には、基材5と当該基材5を支持する環状の支持体6Aとを、各放電空間H1,H2,H3内で重ねて搬送する搬送装置7Aが設けられている。搬送装置7Aについて具体的に説明すると、最も左側に位置する電極51の外側上方には、基材5の元巻を回転自在に保持する基材用保持ローラ(図示省略)が、電極51と平行となるように配置されている。一方、最も右側に位置する電極54の外側上方には、基材5を巻き取る基材用巻取ローラ(図示省略)が、電極54と平行となるように配置されている。
また、この搬送装置7Aには、支持体6Aに対する基材5の密着及び剥離が繰り返されるように、環状の支持体6Aを回転させる複数の回転ローラ60が設けられている。これらの複数の回転ローラ60は、基材用保持ローラから引き出されて、最左方の電極51に接触する以前の基材5に対して支持体6Aが密着するとともに、最右方の電極54から離間し、基材用巻取ローラに巻き取られる以前の基材5に対して支持体6Aが剥離するように、支持体6Aを張設して支持体6Aの搬送経路を形成している。
【0116】
また、各放電空間H1,H2,H3の下方には、対向する一方の電極51,52,53に沿って放電空間H1,H2,H3を通過した基材5及び支持体6Aを密着させたまま、他方の電極52,53,54に案内するガイドローラ55,56,57が設けられている。また、左から2番目の電極52の上方には、電極52における一方の放電面52aに沿って放電空間H1を通過した基材5及び支持体6Aを密着させたまま、放電空間H2に案内するガイドローラ58が設けられている。同様に、右から2番目の電極53の上方には、電極53における一方の放電面53aに沿って放電空間H2を通過した基材5及び支持体6Aを密着させたまま、放電空間H3に案内するガイドローラ59が設けられている。
【0117】
つまり、搬送装置7Aは、基材用巻取ローラが回転することによって、基材5を基材用保持ローラから引き出すようになっている。引き出された基材5が支持体6Aに密着すると、放電空間H1を形成する一方の電極51の放電面51aに密着してから、放電空間H1下方のガイドローラ55を介して、他方の電極52の放電面52aに密着する。その後、放電空間H1を通過すると、基材5及び支持体6Aは、電極52上方のガイドローラ58によって、放電空間H2を形成する一方の電極52の放電面52bに密着してから、放電空間H2下方のガイドローラ56を介して、他方の電極53の放電面53aに密着する。さらに、放電空間H2を通過すると、基材5及び支持体6Aは、電極53上方のガイドローラ59によって、放電空間H3を形成する一方の電極53の放電面53bに密着してから、放電空間H3下方のガイドローラ57を介して、他方の電極54の放電面54aに密着する。放電空間H3を通過すると、基材5は支持体6Aから剥離して、基材用巻取ローラに巻き取られる。一方、支持体6Aは回転されて再度基材5に密着する。これにより、支持体6Aに対しては基材5の密着、剥離が繰り返されることになる。そして、支持体6Aの表面上には、再剥離性を有する粘着剤61が塗布されているために、粘着剤61の粘着性が保たれている限り、密着、剥離を繰り返すことが可能である。
【0118】
以上のように、この第2の実施の形態の薄膜形成装置100によれば、基材5が複数の放電空間H1,H2,H3を通過して、その表面に複数層の薄膜が形成される場合においても、搬送装置7Aは基材5と一緒に支持体6Aを搬送しているので、基材5と電極51,52,53,54との接触を防止して、基材5が削られることを防止できる。
また、搬送装置7Aが、支持体6Aに対する基材5の密着及び剥離が繰り返されるように、環状の支持体6Aを回転させて基材5を搬送するので、基材5の長さと同一長さの支持体を用意しなくても、基材5を搬送することができ、結果として製造コストを低減できる。
【0119】
なお、この第2の実施の形態では、N個の電極51,52,53,54がそれぞれ間隔を空けて水平方向に沿うように配列され、両端に配置された電極51,54以外の電極52,53の両側面で複数の放電空間H1,H2,H3を形成することで、(N−1)個の放電空間H1,H2,H3を形成していたが、複数の放電空間が形成されるのであれば複数の電極の配置はこれに限られるものではない。
例えば、図9では複数の放電空間H1,H2,H3が、水平方向に沿って配列された複数対の電極62,63,64,65,66,67によって形成される場合を表している。また、図10では、複数の放電空間H1,H2,H3が垂直方向に沿って配列されるように、各対毎に垂直方向に沿って配列された複数対の電極62,63,64,65,66,67によって形成されている。この図10の場合においても、搬送装置7Bは、基材5及び支持体6を複数の放電空間H1,H2,H3を通過するように搬送している。詳細に説明すると、搬送装置7Bには、最上位に位置する一対の電極62,63のうち、左方の電極62に基材5及び支持体6を案内するガイドローラ86と、ガイドローラ86により案内された基材5及び支持体6を左方に配置された電極62,64,66の放電面62a,64a,66aに接触させる張設ローラ87aとが設けられている。搬送装置7Bには、最下位に位置する一対の電極66,67の下方で、一方の電極66に沿って放電空間H3を通過した基材5及び支持体6を密着させたまま、他方の電極67に案内するガイドローラ88と、ガイドローラ88により案内された基材5及び支持体6を右方に配置された電極63,65,67の放電面63a,65a,67aに接触させる張設ローラ87bとが設けられている。また、搬送装置7Aには、最上位に位置する一対の電極62,63のうち、右方の電極62に沿って放電空間H1を通過した基材5及び支持体6を、図示しない巻取ローラまで案内するガイドローラ89が設けられている。
このように、図9、図10で示した例では、N個の電極で、(N/2)個の放電空間が形成されることになる。
【0120】
[第3の実施の形態]
以下、第3の実施の形態に係る薄膜形成装置について図11を参照に説明する。図11は第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。なお、上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、一対の電極2,3として略角柱状の棒状電極を用いる場合を例示して説明したが、この第3の実施の形態では、一対の電極としてロール電極を用いた場合について説明する。また、第1の実施の形態では、電極2、3が、本発明における基材5及び支持体6を加熱する加熱部材として機能しているが、電極2,3の放電面2a,3aに対して、基材5及び支持体6の搬送方向の上流側で加熱できるのであれば、加熱部材は如何なるものでもよいために、この第3の実施の形態では、ロール電極の放電面に対して搬送方向の上流側に、ロール電極とは別体の加熱部材を配置している。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0121】
この第3の実施の形態に係る薄膜形成装置300には、互いに対向して放電空間Hを形成する回転自在な一対のロール電極25,35が設けられている。これらのロール電極25,35は、金属質母材からなる電極である。
そして、支持体303は、誘電体によって形成されている。一般的な薄膜形成装置に用いられる電極は、誘電体によってその表面が形成されている。しかしながら、上記したようにロール電極25,35は金属質母材からなる電極であるが、支持体303が誘電体から形成されていれば、放電空間H内では支持体303がロール電極25,35の表面に密着することになり、結果として支持体303がロール電極25,35の誘電体として機能する。表面が誘電体でないロール電極25,35は、表面が誘電体からなる電極2,3と比べて廉価であるために製造コストを低減できる。
支持体を形成する誘電体として好ましいものは、例えば支持体303のように、フィルム、シート状の可撓性を有する支持体である場合にはポリテトラフルオロチレン、ポリエチレンテレフテレート、シリコンゴム等の樹脂が挙げられる。また、板状で剛性を有する支持体である場合にはポリテトラフルオロチレン、ポリエチレンテレフテレート、シリコンゴム等の樹脂や、アルミナセラミックス、窒化珪素等のセラミックス、ケイ酸塩化系ガラス、ホウ酸塩化系ガラス等が挙げられる。
【0122】
また、各ロール電極25,35の放電面25a,35aに対して、搬送方向における上流側には、基材5及び支持体303を加熱する加熱部材28が設けられている。この加熱部材28により、基材5及び支持体303が放電空間Hに進入する以前に加熱されているので、放電空間Hに基材5及び支持体303が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。
【0123】
なお、図12に示すように各電極25,35の上流側に配置された、表面温度の異なる複数の搬送ローラ36A,36B,36Cを本発明に係る加熱部材としてもよい。これらの搬送ローラ36A,36B,37Cは、基材5及び支持体303の搬送経路が千鳥状となるように、その表面に基材5及び支持体303を密着させながら放電空間Hまで搬送する。この搬送時においては、搬送ローラ36A,36B,36Cの熱が基材5及び支持体303に伝導されるために、放電空間Hに進入する以前に基材5及び支持体303を加熱することが可能になる。ここで、各搬送ローラ36A,36B,36Cの表面温度は、最上流に位置する搬送ローラ36Aが最も低く、最下流に位置する搬送ローラ36Cが最も高くなるように設定されている。これによって、基材5及び支持体303を段階的に加熱することが可能になっている。
【0124】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、第1及び第2の実施の形態では、電極2,3の放電面2a,3aが平面であるが、この放電面2a,3aを、放電空間Hにむけて凸となる曲面に形成してもよい。フィルム状の支持体6のように一定以上の可撓性があれば、放電空間Hにむけて凸となる曲面に密着しやすいために、電極2,3と支持体6との密着性をさらに高めることができる。
【0125】
また、上記実施形態では、搬送経路上で基材5と支持体6とが密着する構成であったが、搬送装置による搬送が行われる以前に基材と支持体とを予め密着させておいてもよい。こうした場合、搬送装置は、予め搬送以前に密着させられた基材及び支持体を搬送して、基材の表面上に薄膜が形成された後に、基材及び支持体を剥離する。つまり、基材と支持体とを密着させる装置を搭載する必要がなくなって、薄膜形成装置自体を簡略化することができる。
【0126】
また、第2の実施の形態で例示された単一の支持体6Aだけでなく、例えば、放電空間を成す一対の電極のそれぞれと対となるように、環状の支持体を複数設けてもよい。例えば、図13は一対の電極2,3が略角柱状の棒状電極である場合を示し、図14はロール電極25,35である場合を示している。図13、図14のいずれにおいても、各電極2,3,25,35に対となる環状の支持部材6B,6Cが設けられている。この支持部材6B,6Cは、各電極2,3,25,35の外側方で上下方向に配置された一対の張設ローラ29a,29bによって、各電極2,3,25,35の放電面2a,3a,25a,35aに密着するように張設されている。ここで、一対の張設ローラ29a,29bのうち、一方の張設ローラ29aが回転駆動して、他方の張設ローラ29bが回転自在であるために、張設ローラ29aの回転駆動に伴って、支持部材6B,6C及び張設ローラ29bが回転することになる。このように支持部材6B,6Cが回転することにより、支持部材6B,6Cに密着した基材5は放電空間Hを通過するように搬送されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】第1の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。
【図2】図1の薄膜形成装置に備わる電極の概略構成を表す斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1の薄膜形成装置に備わるガス供給部を表す斜視図である。
【図5】図4のガス供給部の断面図である。
【図6】図1の薄膜形成装置における主制御構成を表すブロック図である。
【図7】加熱部材の温度上昇の例を表す温度−時間線図である。
【図8】第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表すの正面図である。
【図9】図8の薄膜形成装置の変形例を表す説明図である。
【図10】図8の薄膜形成装置の変形例を表す説明図である。
【図11】第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。
【図12】図11の薄膜形成装置の変形例を表す説明図である。
【図13】図8の薄膜形成装置に備わる支持体の変形例を表す説明図である。
【図14】図8の薄膜形成装置に備わる支持体の変形例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0128】
1 薄膜形成装置
2,3 電極
2a,3a 放電面
5 基材
6 支持体
7 搬送装置
8 ガス供給部
23,33 角部(連続角部)
28 加熱部材
61 粘着剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に係り、特に、大気圧プラズマ放電処理を用いて薄膜を基材上に形成する薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LSI、半導体、表示デバイス、磁気記録デバイス、光電変換デバイス、太陽電池、ジョセフソンデバイス、光熱変換デバイス等の各種製品には、基材上に高性能性の薄膜を設けた材料が用いられている。薄膜を基材上に形成する手法には、塗布に代表される湿式製膜方法や、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に代表される乾式製膜方法、あるいは大気圧プラズマ放電処理を利用した大気圧プラズマ製膜方法等が挙げられるが、近年では、高い生産性を維持しつつ高品質な薄膜を形成できる大気圧プラズマ製膜方法の使用が特に望まれている。
【0003】
大気圧プラズマ製膜方法は、対向する電極間に基材を配置させた状態で、薄膜形成ガスを供給し、両電極に電界を印加する。これにより、放電プラズマが発生し、基材を放電プラズマに晒すことで薄膜が形成される。大気圧プラズマ製膜方法を実現する薄膜形成装置として、例えば、特許文献1に記載される薄膜形成装置が挙げられる。この薄膜形成装置には、対向する2つの電極と、これらの電極に電界を印加する電源と、2つの電極の放電面に対して、それぞれ基材を密着するように搬送するフィルム用搬送装置と、電極間に薄膜形成ガスを供給する薄膜形成ガス供給部とが備わっている。そして、この薄膜形成装置は、電極間に薄膜形成ガスを供給してから、電界を印加することにより放電プラズマを発生させて、2つの電極に密着した基材に薄膜を形成するようになっている。
【特許文献1】特開2000−212753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年においては、例えば厚みが100μm以下の基材に薄膜を形成することが望まれているが、薄手の基材であると放電空間内での熱に反応しやすいために、特許文献1に記載される薄膜形成装置で薄手の基材に薄膜形成を行ったとしても、基材自体にツレや熱収縮、破断といった現象(ヤラレ)が生じてしまう。このように基材にヤラレが発生していると、薄膜形成が不安定になってしまう。
【0005】
本発明の課題は、薄手の基材に対するヤラレを防止して、薄手の基材であっても安定した薄膜形成を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明における薄膜形成装置は、
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
基材を支持する支持体と、
前記基材が前記放電空間内で前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように、前記支持体を前記電極に密着させて保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴している。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、再剥離性を有する粘着剤によって基材と支持体とが密着しているので、放電空間内においては両者が一体的に固定されることになり、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。特に、厚みが100μm以下の基材の場合、放電空間内で支持体に接触しているだけでは、熱によるヤラレが発生しやすい状態であるが、上述したように支持体と一体的に固定されていれば、支持体によって熱による変形が抑制されることになる。したがって、薄手の基材に対するヤラレを防止でき、薄手の基材であっても安定した薄膜形成が可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材と前記支持体とを一緒に搬送する搬送装置であることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、保持機構が基材と支持体とを一緒に搬送する搬送装置であるので、広範囲にわたって薄膜を形成することが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴としている。
【0011】
ここで、基材や支持体に皺やツレが発生していると、放電空間内の均一性が乱れてしまい、不均一な製膜としまう。この皺やツレが発生する原因は、基材や支持体が放電空間に支えのない状態で進入することにより、熱影響を受けて収縮してしまうことにある。しかしながら、この請求項3記載の発明であると、放電空間に進入する以前に、基材は支持体に密着し、支持体は電極に密着しているために、放電空間内では基材は支持体により支持され、支持体は電極に支持されていることになる。これにより、基材及び支持体が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。したがって、放電空間内の均一性を維持することができ、高品質な薄膜の形成が可能となる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、前記搬送装置による搬送が行われる以前に予め密着していて、
前記搬送装置は、前記放電空間の通過後に前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、基材及び支持体が搬送される以前に予め密着しているので、搬送時に基材と支持体とを密着させる工程を省略することができ、装置自体の構成を簡略化することが可能となる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材及び前記支持体が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、放電空間に進入する以前に搬送装置によって基材及び支持体が密着させられているので、基材及び支持体が予め分離していたとしても、搬送経路上で密着させることができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は環状に形成されていて、
前記搬送装置は、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように、前記支持体を回転させて、前記基材を搬送することを特徴としている。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、搬送装置が、支持体に対する基材の密着及び剥離が繰り返されるように、環状の支持体を回転させて基材を搬送するので、基材の長さと同一長さの支持体を用意しなくても、基材を搬送することができ、結果として製造コストを低減できる。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項2〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、複数の前記放電空間を通過するように搬送することを特徴としている。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、搬送装置が、前記基材及び前記支持体を複数の前記放電空間を通過するように搬送しているので、基材が削られることを防止しながら、基材上に対する製膜を複数回繰り返すことが可能になる。
【0020】
請求項8記載の発明は、請求項2〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面に対して、前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側には、前記基材及び前記支持体を加熱する加熱部材が設けられていることを特徴としている。
【0021】
ここで、放電空間内に基材及び支持体が進入すると、放電プラズマによる熱影響を受けてしまうが、この請求項8記載の発明のように、電極の放電面に対して基材及び支持体の搬送方向の上流側で、加熱部材が基材及び支持体を加熱していれば、電極の放電面に接触する以前、つまり放電空間に進入する以前に予め基材及び支持体を加熱できる。このため、放電プラズマによる熱が急激かつ過剰に基材及び支持体に影響することを防止でき、基材及び支持体の熱収縮を抑制できる。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の薄膜形成装置において、
前記加熱部材は、前記基材及び前記支持体が前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱することを特徴としている。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、加熱部材によって基材及び支持体が放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱されているので、加熱部材においても急激に加熱されることはなく、さらに熱収縮を抑制することができる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項2〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、電極の放電面と放電面以外の表面との連続角部が、円弧状に形成されているので、支持体が放電面以外の表面から放電面までに移動する際に引っかかることを防止でき、スムーズに搬送することができる。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴としている。
【0027】
請求項11記載の発明によれば、基材及び支持体の材質若しくは熱的物性が同等であるので、両者の熱変形量が同等となって、熱変形量の異なりによる皺やツレの発生をも低減することができる。
【0028】
請求項12記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴としている。
【0029】
一般的な薄膜形成装置に用いられる電極は、誘電体によってその表面が形成されている。しかしながら、請求項12記載の発明のように支持体が誘電体から形成されていれば、表面が誘電体でない電極であっても、放電空間内では支持体が電極の表面に密着しているために、支持体が電極の誘電体として機能する。表面が誘電体でない電極は、表面が誘電体からなる電極と比べて廉価であるために製造コストを低減できる。
【0030】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴としている。
【0031】
基材の表面上に均一な製膜を行うには、少なくとも基材の全体が放電空間内に収まっていることが好ましいが、こうしてしまうと基材の外側にも薄膜の原料が飛散してしまう。しかしながら請求項13のように、支持体の幅が基材よりも長ければ、支持体が基材の外側まで電極を覆うことになり、原料が電極に付着することを防止できる。
【0032】
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0033】
請求項14記載の発明によれば、前記一対の電極の放電面が、放電空間に向けて凸となる曲面であるので、電極の放電面と支持体との密着性を高めることができる。
【0034】
請求項15記載の発明は、請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0035】
請求項15記載の発明によれば、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
【0036】
請求項16記載の発明は、請求項1〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0037】
請求項16記載の発明によれば、ガス中に窒素が50%以上含まれているので、他のガスを使用した場合よりも比較的安価にすることができる。
【0038】
請求項17記載の発明は、請求項1〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0039】
請求項17記載の発明によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜を行うことができるので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
【0040】
請求項18記載の発明における薄膜形成方法は、
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、基材を支持する支持体を、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように前記電極に密着させて保持することで、前記基材を活性化した前記ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴としている。
【0041】
請求項18記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0042】
請求項19記載の発明は、請求項18記載の薄膜形成方法において、
前記基材と前記支持体とは、前記放電空間を通過するように一緒に搬送されることを特徴としている。
【0043】
請求項19記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0044】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴としている。
【0045】
請求項20記載の発明によれば、請求項3記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0046】
請求項21記載の発明は、請求項19又は請求項20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、搬送される以前に予め密着していて、前記放電空間の通過後に剥離させられることを特徴としている。
【0047】
請求項21記載の発明によれば、請求項4記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0048】
請求項22記載の発明は、請求項19又は20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離させることを特徴としている。
【0049】
請求項22記載の発明によれば、請求項5記載の発明と藤堂の作用、効果を得ることができる。
【0050】
請求項23記載の発明は、請求項22記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、環状に形成されていて、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように回転されて、前記基材を搬送することを特徴としている。
【0051】
請求項23記載の発明によれば、請求項6記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0052】
請求項24記載の発明は、請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記基材及び前記支持体は、複数の前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴としている。
【0053】
請求項24記載の発明によれば、請求項7記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0054】
請求項25記載の発明は、請求項19〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面に対して前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側で、前記基材及び前記支持体は加熱されることを特徴としている。
【0055】
請求項25記載の発明によれば、請求項8記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0056】
請求項26記載の発明は、請求項25記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱されることを特徴としている。
【0057】
請求項26記載の発明によれば、請求項9記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0058】
請求項27記載の発明は、請求項19〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴としている。
【0059】
請求項27記載の発明によれば、請求項10記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0060】
請求項28記載の発明は、請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴としている。
【0061】
請求項28記載の発明によれば、請求項11記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0062】
請求項29記載の発明は、請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴としている。
【0063】
請求項29記載の発明によれば、請求項12記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0064】
請求項30記載の発明は、請求項18〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴としている。
【0065】
請求項30記載の発明によれば、請求項13記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0066】
請求項31記載の発明は、請求項18〜30のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴としている。
【0067】
請求項31記載の発明によれば、請求項14記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0068】
請求項32記載の発明は、請求項18〜31のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴としている。
【0069】
請求項32記載の発明によれば、請求項15記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0070】
請求項33記載の発明は、請求項18〜32のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴としている。
【0071】
請求項33記載の発明によれば、請求項16記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【0072】
請求項34記載の発明は、請求項18〜33のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴としている。
【0073】
請求項34記載の発明によれば、請求項17記載の発明と同等の作用、効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、放電空間内においては両者が一体的に固定されることになり、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。特に、厚みが100μm以下の基材であっても、支持体によって熱による変形が抑制されるので、薄手の基材に対するヤラレを防止でき、薄手の基材であっても安定した薄膜形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
[第1の実施の形態]
以下、添付図面を参照しつつ本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、薄膜形成装置1の概略構成を表す正面図である。
【0076】
この薄膜形成装置1は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置1には、図1に示す通り、放電プラズマを発生させるための一対の電極2,3が間隔を空けて対向するように固定されている。この間隔が放電空間Hとなり、この放電空間Hを成す電極2,3の対向する面をそれぞれ放電面2a,3aとする。
【0077】
図2は、電極2,3の概略構成を表す斜視図である。図2に示すように、電極2,3には、導電性の金属質母材21,31の表面に誘電体22,32が被覆された棒状電極である。電極2,3の角部(連続角部)23,33は、電極2,3の表面を滑らかに連続させるために円弧状に形成されている。つまり、電極2,3の放電面2a,3aと、放電面2a,3aに連なる放電面2a,3a以外の表面とは角部23,33によって滑らかに連続されることになる。そして、電極2,3には、図1に示すように電源4が接続されている。
【0078】
薄膜形成装置1には、図1に示すように、基材5と当該基材5を支持する支持体6とを、少なくとも放電空間H内で保持されるように重ねて搬送する搬送装置(保持機構)7が設けられている。
搬送装置7について具体的に説明すると、一方の電極2の外側(図1の左側)上方には、基材5の元巻を回転自在に保持する基材用保持ローラ71が、電極2,3と平行となるように配置されている。この基材用保持ローラ71と電極2との上下方向における間には、支持体6の元巻を回転自在に保持する支持体用保持ローラ72が基材用保持ローラ71に対して平行になるように配置されている。支持体用保持ローラ72に保持される支持体6にはその表面上に再剥離性を有する粘着剤61(図3参照)が塗布されている。
基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72と、一方の電極2との間には、基材5及び支持体6を一方の電極2まで案内する第1ガイドローラ73が、一方の電極2の右上端部と、支持体用保持ローラ72から支持体6が引き出される部分とを結ぶ線(図1における補助線S1)よりも下方に配置されている。これにより、支持体用保持ローラ72から引き出された支持体6が、基材用保持ローラ71から引き出された基材5の裏面に粘着剤61を介して密着してから、電極2の上面(図1における点P1)に接触することになる。
【0079】
また、一対の電極2,3の下方には、一方の電極2に沿って放電空間Hを通過した基材5及び支持体6を密着させたまま、他方の電極3に案内する案内路(図示省略)が形成されている。案内路は、基材5及び支持体6のうち、支持体6が他方の電極3の下面(図1における点P2)に接触するように形成されている。
【0080】
そして、他方の電極3の外側(図1の右側)上方には、基材5を巻き取る基材用巻取ローラ74が、電極2,3に平行となるように配置されている。この基材用巻取ローラ74と電極3との上下方向における間には、支持体6を巻き取る支持体用巻取ローラ75が基材用巻取ローラ74に対して平行になるように配置されている。基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75と、他方の電極3との間には、基材5及び支持体6をそれぞれ基材用巻取ローラ74、支持体用巻取ローラ75に案内する第2ガイドローラ76が、他方の電極3の左端部と、基材用巻取ローラ74に支持体6が巻き取られ始める部分とを結ぶ線(図1における補助線S2)よりも下方に配置されている。
【0081】
つまり、搬送装置7は、基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75が回転することによって、基材5及び支持体6のそれぞれを基材用保持ローラ71及び支持体用保持ローラ72から引き出すようになっている。引き出された基材5及び支持体6は、第1ガイドローラ73で粘着剤61により密着し、一方の電極2の上面、放電面2a、下面の順に電極2に沿い、案内路を介して、他方の電極3の下面、放電面3a、上面の順に電極3に沿ってから、電極3から離間して、第2ガイドローラ76で互いに剥離し、それぞれ基材用巻取ローラ74及び支持体用巻取ローラ75に巻き取られるようになっている。
【0082】
図3は、図1におけるA−A断面図であり、放電空間H内における電極2,3、基材5、支持体6の位置関係を表している。この図3に示すように、放電空間H内においては、支持体6が電極2,3と基材5との間に介在されていて、なおかつ支持体6と基材5とが粘着剤61を介して密着されて固定されることになる。
【0083】
また、図1に示すように放電空間Hの上方には、薄膜形成ガスを含有するガスを放電空間Hに供給するガス供給部8が設けられている。このガス供給部8には、薄膜形成ガスを含有したガスを貯留する第1ガスタンク9が、配管91及びガス調整部92(図6参照)を介して接続されているとともに、薄膜形成ガスを含まない無原料ガスを貯留する第2ガスタンク10が、配管11及び無原料ガス調整部12(図6参照)を介して接続されている。ここで、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12は、配管91,11内部を流れるガス及び無原料ガスの流量や流速、ガス組成、濃度などを調整するものである。
図4は、ガス供給部8を表す斜視図であり、図5はガス供給部8の断面図である。図4に示すように、ガス供給部8の後端部中央には、配管91が連結されるガス管81が設けられている。また、ガス供給部8の後端部には、配管11が連結される4つの無原料ガス用ガス管82が、それぞれガス管81の前後左右に配置されている。
【0084】
また、ガス供給部8の内部には、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入するガス及び無原料ガスの流路を形成する4枚の仕切板83が設けられている。4枚の仕切板83のうち、2枚の仕切板83は、前後に位置する無原料ガス用ガス管82と、左右に位置する無原料ガス用ガス管82及びガス管81との間で、上下左右方向に沿うように配置されている。これら2枚の仕切板83にわたって、残りの2枚の仕切板83が、左右に位置する無原料ガス用ガス管82とガス管81との間で、上下前後方向に沿うように配置されている(図5参照)。これらの仕切板83によって、ガス供給部8の先端の開口が分割されている。分割された開口のうち、ガスを噴出する開口を第1ガス噴出口84、無原料ガスを噴出する開口を第2ガス噴出口85とすると、第1ガス噴出口84は各第2ガス噴出口85によって前後左右が囲まれることになる。これによって、ガス管81及び各無原料ガス用ガス管82から流入したガス及び無原料ガスを個別に噴出するようになっている。ここで、図5に示すように、左右方向に位置する一対の第2ガス噴出口85は、第1ガス噴出口84を挟むように左右方向(搬送方向)に沿って配列されている。同様に、図4に示すように前後方向に位置する一対の第2ガス噴出口85も、第1ガス噴出口84を挟むように前後方向に沿って配列されている。このため、ガス及び無原料ガスの噴出時においては、ガスが無原料ガスによって遮られることになり、放電空間H外へガスが流出することを防止できるようになっている。
【0085】
また、図1に示すように放電空間Hの下方には、放電空間Hから流出したガス及び無原料ガスを吸引する吸引部13が設けられている。この吸引部13には、放電空間Hにわたって延在する吸引口部14が備えられており、この吸引口部14には配管15を介して吸引ポンプ16が接続されている。
【0086】
そして、一対の電極2,3の放電面2a,3aの反対側には、支持体6が電極2,3に接触することで発生した削りカスを吸引する複数のカス用吸引部17が、支持体6と電極2,3の接点付近を吸引するように配置されている。
【0087】
図6は、薄膜形成装置1における主制御構成を表すブロック図である。この図6に示すように、薄膜形成装置1には、各駆動部を制御する制御装置40が設けられている。制御装置40には、電極2,3の温度を調節する温度調節装置44、記憶部41、電源4、ガス調整部92、無原料ガス調整部12、吸引ポンプ16、カス用吸引部17、基材用巻取ローラ74の駆動源42、支持体用巻取ローラ75の駆動源43、が電気的に接続されている。なお、制御装置40には、これら以外にも薄膜形成装置1の各駆動部などが接続されている。そして、制御装置40は、記憶部41中に書き込まれている制御プログラムや制御データに従い各種機器を制御するようになっている。
【0088】
次に、ガス供給部8から供給されるガスについて説明する。
このガスは、薄膜形成可能なグロー放電を起こすことのできる放電ガスと、薄膜の原料を含有する薄膜形成ガスとが混合されたものである。
放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素などがあり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本実施形態では、比較的安価な窒素を用いている。ここで薄膜形成ガスと混合した際に、窒素の濃度が50%以上になることが好ましい。さらに窒素に混合させるガスとして希ガスを使用した場合には、放電ガスの50%未満を含有させることが好ましい。
【0089】
薄膜形成ガスに含まれる原料としては、例えば、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等が挙げられる。
有機金属化合物としては、以下の一般式(I)で示すものが好ましい。
一般式(I) R1xMR2yR3z式中、Mは金属、R1はアルキル基、R2はアルコキシ基、R3はβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、いずれも0または正の整数である。R1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。R2のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等が挙げられる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。R3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等が挙げられ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等が挙げられ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等が挙げられ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。これらの基の炭素原子数は、上記例有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0090】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてR2のアルコキシ基を少なくとも1つを含有する有機金属化合物、またR3のβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する有機金属化合物が好ましい。
【0091】
また、薄膜形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物の金属として、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が挙げられる。
【0092】
無原料ガスとしては、薄膜の原料となる薄膜形成性ガスに含有される化合物を含まないガスが使用される。具体的には、上記した放電ガスや酸素、一酸化炭素、空気などが挙げられる。未原料ガスとして放電ガスを使用した場合には、放電空間H内で発生する放電プラズマを均一にすることができる。
【0093】
次に、基材5について説明する。基材5としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの等の薄膜をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材5が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態のガスに晒され、均一の薄膜が形成されるものであれば基材5の形態または材質には制限ない。材質的には、例えばガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラス板や、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等が挙げられる。
【0094】
樹脂フィルムは本発明に係る薄膜形成装置1の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0095】
樹脂からなる基材5の材質としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられる。
【0096】
また、本発明に用いられる基材5は、厚さが200μm以下、より好ましくは5〜50μmのフィルム状のものが使用されている
【0097】
次に、支持体6について説明する。支持体6としては、基材5及び電極2,3の間に介在するようにフィルム状に形成されたものが使用される。ここで、基材5の表面上に均一な製膜を行うには、少なくとも基材5の全体が放電空間H内に収まっていることが好ましいが、こうしてしまうと基材5の外側にも薄膜の原料が飛散してしまうために、支持体6の幅を、図3に示すように基材5の幅よりも長くすれば、支持体6が基材5の外側まで電極2,3を覆うことになり、原料が電極2,3に付着することを防止でき、好ましい。
また、支持体6の材質は、基材5と同一材質若しくは熱的物性が同等であることが好ましい。これにより、基材5と支持体6との熱変形量が同等となって、熱変形量の異なりによる皺やツレの発生をも低減することができる。
【0098】
次に、再剥離性を有する粘着剤61について説明する。粘着剤61は、基材5及び支持体6が放電空間H内で放電プラズマに晒されたとしても、その粘着性及び再剥離性が劣化しない耐熱性に優れたものが好ましい。このような粘着剤61としては例えばアクリル系粘着剤が挙げられる。そして、一般には、支持体6に予め粘着剤61がコーティングされたものが市販されているので、例えばPETからなる支持体6に、粘着剤61としてのアクリル系粘着剤がコーティングされた日東電工(株)製の「耐熱性表面保護接着テープ(型番E−MASK TP300)」を用いることが好ましい。
【0099】
次に、電極2,3を形成する金属質母材21,31及び誘電体22,32について説明する。
金属質母材21,31と誘電体22,32と組み合わせとしては、両者の間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材21,31と誘電体22,32との線熱膨張係数の差が10×10-6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10-6/℃以下、更に好ましくは5×10-6/℃以下、更に好ましくは2×10-6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは、周知の材料特有の物性値である。
【0100】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、例えば、1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜、2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング、3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜、4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング、5)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜、6)金属質母材がセラミックスおよび鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング、7)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜、8)金属質母材がセラミックスおよびアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング、等が挙げられる。線熱膨張係数の差という観点では、上記1)または2)および5)〜8)が好ましく、特に1)が好ましい。
【0101】
そして、金属質母材21,31は、チタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材21,31をチタンまたはチタン合金とし、誘電体22,32を上記組み合わせに応じる素材とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることが可能となる。
【0102】
本発明に有用な電極の金属質母材21,31は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、例えばTIA、TIB、TIC、TID等が挙げられ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているものであり、チタンの含有量は99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他に、例えば、アルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量としては、85質量%以上を含有しているものである。これらのチタン合金またはチタン金属はステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材21,31としてチタン合金またはチタン金属の上に施された誘電体22,32との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0103】
一方、誘電体22,32としては、例えば、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等が挙げられる。この中では、セラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体22,32が好ましい。
【0104】
または、大電力に耐えうる仕様の一つとして、誘電体22,32の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。また、大電力に耐えうる別の好ましい仕様としては、誘電体22,32の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0105】
次に、本実施形態の薄膜形成装置1の作用について説明する。
先ず、薄膜形成の開始に伴って、制御装置40は、吸引ポンプ16及びカス用吸引部17を駆動させてから、ガス調整部92及び無原料ガス調整部12を制御し、ガス供給部8から放電空間Hにガス及び無原料ガスを供給する。放電空間Hにガスが供給されると、制御装置40は、基材用巻取ローラ74の駆動源42と、支持体用巻取ローラ75の駆動源43とを制御して、基材5及び支持体6を搬送させる。
【0106】
基材5及び支持体6の搬送が開始されると、制御装置40は、電源4をONにする。これにより、一方の電極2には、周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1高周波電界が印加され、他方の電極3には、周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2高周波電界が印加される。ここで、周波数ω1より周波数ω2の方が高く設定されている。
【0107】
具体的には、周波数ω1は、200kHz以下であることが好ましく、下限は1kHzである。この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。一方、周波数ω2は、800kHz以上であることが好ましく、高ければ高いほどプラズマ密度が高くなるものの、上限は200MHz程度である。
【0108】
また、電極間に放電ガスを供給し、この電極間の電界強度を増大させていき、放電が始まる電界強度を放電開始電界強度IVと定義すると、電界強度V1、V2及び放電開始電界強度IVの関係は、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすように設定されている。例えば、放電ガスを窒素とした場合には、その放電開始電界強度IVは3.7kV/mm程度であるので、上記の関係により電界強度V1を、V1≧3.7kV/mm、電界強度V2を、V2<3.7kV/mmとして印加すると、窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0109】
そして、電流I1、I2の関係はI1<I2となることが好ましい。第1高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3mA/cm2〜20mA/cm2、さらに好ましくは1.0mA/cm2〜20mA/cm2である。また、第2高周波電界の電流I2は、好ましくは10mA/cm2〜100mA/cm2、さらに好ましくは20mA/cm2〜100mA/cm2である。
【0110】
このように、一方の電極2による第1高周波電界及び他方の電極3による第2高周波電界が発生されると、放電空間Hには、第1高周波電解と第2高周波電界とが重畳された高周波電界が発生して、ガスと反応し放電プラズマが発生する。基材5及び支持体6は、放電空間Hに進入する以前に、粘着剤61によって密着されていて、さらに電極2,3の放電面2a,3aに連続する放電面2a,3a以外の表面(一方の電極2の上面や、他方の電極3の下面)に密着されるために、放電面2a,3a以外の表面によって支えられた状態でプラズマ空間に進入する。これにより、基材5及び支持体6が熱影響を受けたとしても均されるため、皺やツレが発生することを防止できる。
【0111】
さらに、一対の電極2,3は、それぞれ温度調節装置44によってその表面温度が制御されているために、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に、放電面2a,3a以外の表面によって予め加熱されることとなる。このため、放電空間Hに基材5及び支持体6が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、基材5及び支持体6に皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。特に、電極2、3においては、基材5及び支持体6が放電空間Hに進入する以前に接触する、放電面2a,3a以外の表面が所定の面積を確保しているので、放電面2a,3aに至るまでに、基材5及び支持体6を加熱することができ、放電空間Hに進入することによる急激な加熱を緩和でき、皺やツレの発生をさらに抑制できる。そして、加熱を連続的或いは段階的に行えば、基材5及び支持体6の皺やツレをより一層抑制することが可能になる。ここで、連続的な加熱としては、図7に示す実線L1,L2のように、直線的或いは滑らかに温度上昇することであり、段階的な加熱としては、図7に示す実線L3のように、ステップをおいて温度上昇することである。
その後、薄膜が形成された基材5は、基材用巻取ローラ74によって巻き取られ、支持体6も基材5から剥離して支持体用巻取ローラ75によって巻き取られる。
【0112】
以上のように、この第1の実施の形態の薄膜形成装置1によれば、再剥離性を有する粘着剤61によって基材5と支持体6とが密着しているので、放電空間H内においては両者が一体的に固定されることになり、熱影響を抑制して皺やツレの発生をさらに防止することができる。特に、厚みが100μm以下の基材5の場合、放電空間H内で支持体6に接触しているだけでは、熱によるヤラレが発生しやすい状態であるが、上述したように支持体6と一体的に固定されていれば、支持体6によって熱による変形が抑制されることになる。したがって、薄手の基材5に対するヤラレを防止でき、薄手の基材5であっても安定した薄膜形成が可能となる。
また、高周波電界が、第1高周波電界及び第2高周波電界を重畳したものであり、第1高周波電界の周波数ω1より第2高周波電界の周波数ω2が高く、第1高周波電界の電界強度V1、第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たしているので、窒素等の安価なガスを用いた場合においても、薄膜形成可能な放電を起こし、高品位な薄膜形成に必要な高密度プラズマを発生することができる。
また、本実施形態によれば、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で製膜が行われているので、真空で製膜を行う場合に比べて、高速製膜が可能となるとともに連続生産が可能となる。そして、真空にするための装置等も必要でないために、設備費を削減できる。
また、支持体6においても皺やツレの発生が防止されているので、支持体用巻取ローラ75で巻き取られた支持体6を再利用することも可能である。
そして、本実施形態の薄膜形成装置1では、基材5が放電空間Hを出てから、基材5及び支持体6、支持体6及び電極2,3が剥離されているので、放電空間H内で基材5及び支持体6、支持体6及び電極2,3を離間させることなく、基材5や支持体6に対するツレや皺の発生を防止できる。
【0113】
[第2の実施の形態]
以下、第2の実施の形態に係る薄膜形成装置について図8を参照に説明する。図8は第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。なお、上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、一対の電極2,3で薄膜を形成する場合を例示して説明したが、この第2の実施の形態では、少なくとも3以上の電極によって薄膜を形成する場合について説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0114】
図8に示すように薄膜形成装置100には、放電プラズマを発生させるための4つの電極51,52,53,54がそれぞれ間隔を空けて対向するように固定されている。この間隔が放電空間H1,H2,H3となり、この放電空間H1,H2,H3のそれぞれを成す電極51,52,53,54の対向する面をそれぞれ放電面51a,52a,52b,53a,53b,54aとする。
各放電空間H1,H2,H3の上方には、それぞれガス供給部8A,8B,8Cが設けられている。一方、各放電空間H1,H2,H3の下方には、それぞれ吸引部13A,13B,13Cが設けられている。
【0115】
また、薄膜形成装置100には、基材5と当該基材5を支持する環状の支持体6Aとを、各放電空間H1,H2,H3内で重ねて搬送する搬送装置7Aが設けられている。搬送装置7Aについて具体的に説明すると、最も左側に位置する電極51の外側上方には、基材5の元巻を回転自在に保持する基材用保持ローラ(図示省略)が、電極51と平行となるように配置されている。一方、最も右側に位置する電極54の外側上方には、基材5を巻き取る基材用巻取ローラ(図示省略)が、電極54と平行となるように配置されている。
また、この搬送装置7Aには、支持体6Aに対する基材5の密着及び剥離が繰り返されるように、環状の支持体6Aを回転させる複数の回転ローラ60が設けられている。これらの複数の回転ローラ60は、基材用保持ローラから引き出されて、最左方の電極51に接触する以前の基材5に対して支持体6Aが密着するとともに、最右方の電極54から離間し、基材用巻取ローラに巻き取られる以前の基材5に対して支持体6Aが剥離するように、支持体6Aを張設して支持体6Aの搬送経路を形成している。
【0116】
また、各放電空間H1,H2,H3の下方には、対向する一方の電極51,52,53に沿って放電空間H1,H2,H3を通過した基材5及び支持体6Aを密着させたまま、他方の電極52,53,54に案内するガイドローラ55,56,57が設けられている。また、左から2番目の電極52の上方には、電極52における一方の放電面52aに沿って放電空間H1を通過した基材5及び支持体6Aを密着させたまま、放電空間H2に案内するガイドローラ58が設けられている。同様に、右から2番目の電極53の上方には、電極53における一方の放電面53aに沿って放電空間H2を通過した基材5及び支持体6Aを密着させたまま、放電空間H3に案内するガイドローラ59が設けられている。
【0117】
つまり、搬送装置7Aは、基材用巻取ローラが回転することによって、基材5を基材用保持ローラから引き出すようになっている。引き出された基材5が支持体6Aに密着すると、放電空間H1を形成する一方の電極51の放電面51aに密着してから、放電空間H1下方のガイドローラ55を介して、他方の電極52の放電面52aに密着する。その後、放電空間H1を通過すると、基材5及び支持体6Aは、電極52上方のガイドローラ58によって、放電空間H2を形成する一方の電極52の放電面52bに密着してから、放電空間H2下方のガイドローラ56を介して、他方の電極53の放電面53aに密着する。さらに、放電空間H2を通過すると、基材5及び支持体6Aは、電極53上方のガイドローラ59によって、放電空間H3を形成する一方の電極53の放電面53bに密着してから、放電空間H3下方のガイドローラ57を介して、他方の電極54の放電面54aに密着する。放電空間H3を通過すると、基材5は支持体6Aから剥離して、基材用巻取ローラに巻き取られる。一方、支持体6Aは回転されて再度基材5に密着する。これにより、支持体6Aに対しては基材5の密着、剥離が繰り返されることになる。そして、支持体6Aの表面上には、再剥離性を有する粘着剤61が塗布されているために、粘着剤61の粘着性が保たれている限り、密着、剥離を繰り返すことが可能である。
【0118】
以上のように、この第2の実施の形態の薄膜形成装置100によれば、基材5が複数の放電空間H1,H2,H3を通過して、その表面に複数層の薄膜が形成される場合においても、搬送装置7Aは基材5と一緒に支持体6Aを搬送しているので、基材5と電極51,52,53,54との接触を防止して、基材5が削られることを防止できる。
また、搬送装置7Aが、支持体6Aに対する基材5の密着及び剥離が繰り返されるように、環状の支持体6Aを回転させて基材5を搬送するので、基材5の長さと同一長さの支持体を用意しなくても、基材5を搬送することができ、結果として製造コストを低減できる。
【0119】
なお、この第2の実施の形態では、N個の電極51,52,53,54がそれぞれ間隔を空けて水平方向に沿うように配列され、両端に配置された電極51,54以外の電極52,53の両側面で複数の放電空間H1,H2,H3を形成することで、(N−1)個の放電空間H1,H2,H3を形成していたが、複数の放電空間が形成されるのであれば複数の電極の配置はこれに限られるものではない。
例えば、図9では複数の放電空間H1,H2,H3が、水平方向に沿って配列された複数対の電極62,63,64,65,66,67によって形成される場合を表している。また、図10では、複数の放電空間H1,H2,H3が垂直方向に沿って配列されるように、各対毎に垂直方向に沿って配列された複数対の電極62,63,64,65,66,67によって形成されている。この図10の場合においても、搬送装置7Bは、基材5及び支持体6を複数の放電空間H1,H2,H3を通過するように搬送している。詳細に説明すると、搬送装置7Bには、最上位に位置する一対の電極62,63のうち、左方の電極62に基材5及び支持体6を案内するガイドローラ86と、ガイドローラ86により案内された基材5及び支持体6を左方に配置された電極62,64,66の放電面62a,64a,66aに接触させる張設ローラ87aとが設けられている。搬送装置7Bには、最下位に位置する一対の電極66,67の下方で、一方の電極66に沿って放電空間H3を通過した基材5及び支持体6を密着させたまま、他方の電極67に案内するガイドローラ88と、ガイドローラ88により案内された基材5及び支持体6を右方に配置された電極63,65,67の放電面63a,65a,67aに接触させる張設ローラ87bとが設けられている。また、搬送装置7Aには、最上位に位置する一対の電極62,63のうち、右方の電極62に沿って放電空間H1を通過した基材5及び支持体6を、図示しない巻取ローラまで案内するガイドローラ89が設けられている。
このように、図9、図10で示した例では、N個の電極で、(N/2)個の放電空間が形成されることになる。
【0120】
[第3の実施の形態]
以下、第3の実施の形態に係る薄膜形成装置について図11を参照に説明する。図11は第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。なお、上記した第1の実施の形態に係る薄膜形成装置1においては、一対の電極2,3として略角柱状の棒状電極を用いる場合を例示して説明したが、この第3の実施の形態では、一対の電極としてロール電極を用いた場合について説明する。また、第1の実施の形態では、電極2、3が、本発明における基材5及び支持体6を加熱する加熱部材として機能しているが、電極2,3の放電面2a,3aに対して、基材5及び支持体6の搬送方向の上流側で加熱できるのであれば、加熱部材は如何なるものでもよいために、この第3の実施の形態では、ロール電極の放電面に対して搬送方向の上流側に、ロール電極とは別体の加熱部材を配置している。以下の説明において、第1の実施の形態と同一部分においては同一符号を付してその説明を省略する。
【0121】
この第3の実施の形態に係る薄膜形成装置300には、互いに対向して放電空間Hを形成する回転自在な一対のロール電極25,35が設けられている。これらのロール電極25,35は、金属質母材からなる電極である。
そして、支持体303は、誘電体によって形成されている。一般的な薄膜形成装置に用いられる電極は、誘電体によってその表面が形成されている。しかしながら、上記したようにロール電極25,35は金属質母材からなる電極であるが、支持体303が誘電体から形成されていれば、放電空間H内では支持体303がロール電極25,35の表面に密着することになり、結果として支持体303がロール電極25,35の誘電体として機能する。表面が誘電体でないロール電極25,35は、表面が誘電体からなる電極2,3と比べて廉価であるために製造コストを低減できる。
支持体を形成する誘電体として好ましいものは、例えば支持体303のように、フィルム、シート状の可撓性を有する支持体である場合にはポリテトラフルオロチレン、ポリエチレンテレフテレート、シリコンゴム等の樹脂が挙げられる。また、板状で剛性を有する支持体である場合にはポリテトラフルオロチレン、ポリエチレンテレフテレート、シリコンゴム等の樹脂や、アルミナセラミックス、窒化珪素等のセラミックス、ケイ酸塩化系ガラス、ホウ酸塩化系ガラス等が挙げられる。
【0122】
また、各ロール電極25,35の放電面25a,35aに対して、搬送方向における上流側には、基材5及び支持体303を加熱する加熱部材28が設けられている。この加熱部材28により、基材5及び支持体303が放電空間Hに進入する以前に加熱されているので、放電空間Hに基材5及び支持体303が進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。
【0123】
なお、図12に示すように各電極25,35の上流側に配置された、表面温度の異なる複数の搬送ローラ36A,36B,36Cを本発明に係る加熱部材としてもよい。これらの搬送ローラ36A,36B,37Cは、基材5及び支持体303の搬送経路が千鳥状となるように、その表面に基材5及び支持体303を密着させながら放電空間Hまで搬送する。この搬送時においては、搬送ローラ36A,36B,36Cの熱が基材5及び支持体303に伝導されるために、放電空間Hに進入する以前に基材5及び支持体303を加熱することが可能になる。ここで、各搬送ローラ36A,36B,36Cの表面温度は、最上流に位置する搬送ローラ36Aが最も低く、最下流に位置する搬送ローラ36Cが最も高くなるように設定されている。これによって、基材5及び支持体303を段階的に加熱することが可能になっている。
【0124】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
例えば、第1及び第2の実施の形態では、電極2,3の放電面2a,3aが平面であるが、この放電面2a,3aを、放電空間Hにむけて凸となる曲面に形成してもよい。フィルム状の支持体6のように一定以上の可撓性があれば、放電空間Hにむけて凸となる曲面に密着しやすいために、電極2,3と支持体6との密着性をさらに高めることができる。
【0125】
また、上記実施形態では、搬送経路上で基材5と支持体6とが密着する構成であったが、搬送装置による搬送が行われる以前に基材と支持体とを予め密着させておいてもよい。こうした場合、搬送装置は、予め搬送以前に密着させられた基材及び支持体を搬送して、基材の表面上に薄膜が形成された後に、基材及び支持体を剥離する。つまり、基材と支持体とを密着させる装置を搭載する必要がなくなって、薄膜形成装置自体を簡略化することができる。
【0126】
また、第2の実施の形態で例示された単一の支持体6Aだけでなく、例えば、放電空間を成す一対の電極のそれぞれと対となるように、環状の支持体を複数設けてもよい。例えば、図13は一対の電極2,3が略角柱状の棒状電極である場合を示し、図14はロール電極25,35である場合を示している。図13、図14のいずれにおいても、各電極2,3,25,35に対となる環状の支持部材6B,6Cが設けられている。この支持部材6B,6Cは、各電極2,3,25,35の外側方で上下方向に配置された一対の張設ローラ29a,29bによって、各電極2,3,25,35の放電面2a,3a,25a,35aに密着するように張設されている。ここで、一対の張設ローラ29a,29bのうち、一方の張設ローラ29aが回転駆動して、他方の張設ローラ29bが回転自在であるために、張設ローラ29aの回転駆動に伴って、支持部材6B,6C及び張設ローラ29bが回転することになる。このように支持部材6B,6Cが回転することにより、支持部材6B,6Cに密着した基材5は放電空間Hを通過するように搬送されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】第1の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。
【図2】図1の薄膜形成装置に備わる電極の概略構成を表す斜視図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図1の薄膜形成装置に備わるガス供給部を表す斜視図である。
【図5】図4のガス供給部の断面図である。
【図6】図1の薄膜形成装置における主制御構成を表すブロック図である。
【図7】加熱部材の温度上昇の例を表す温度−時間線図である。
【図8】第2の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表すの正面図である。
【図9】図8の薄膜形成装置の変形例を表す説明図である。
【図10】図8の薄膜形成装置の変形例を表す説明図である。
【図11】第3の実施の形態に係る薄膜形成装置の概略構成を表す正面図である。
【図12】図11の薄膜形成装置の変形例を表す説明図である。
【図13】図8の薄膜形成装置に備わる支持体の変形例を表す説明図である。
【図14】図8の薄膜形成装置に備わる支持体の変形例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0128】
1 薄膜形成装置
2,3 電極
2a,3a 放電面
5 基材
6 支持体
7 搬送装置
8 ガス供給部
23,33 角部(連続角部)
28 加熱部材
61 粘着剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
基材を支持する支持体と、
前記基材が前記放電空間内で前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように、前記支持体を前記電極に密着させて保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材と前記支持体とを一緒に搬送する搬送装置であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、前記搬送装置による搬送が行われる以前に予め密着していて、
前記搬送装置は、前記放電空間の通過後に前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材及び前記支持体が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は環状に形成されていて、
前記搬送装置は、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように、前記支持体を回転させて、前記基材を搬送することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、複数の前記放電空間を通過するように搬送することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面に対して、前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側には、前記基材及び前記支持体を加熱する加熱部材が設けられていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の薄膜形成装置において、
前記加熱部材は、前記基材及び前記支持体が前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項18】
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、基材を支持する支持体を、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように前記電極に密着させて保持することで、前記基材を活性化した前記ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項19】
請求項18記載の薄膜形成方法において、
前記基材と前記支持体とは、前記放電空間を通過するように一緒に搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項20】
請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項21】
請求項19又は請求項20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、搬送される以前に予め密着していて、前記放電空間の通過後に剥離させられることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項22】
請求項19又は20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材及び前記支持体が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離させることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項23】
請求項22記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、環状に形成されていて、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように回転されて、前記基材を搬送することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記基材及び前記支持体は、複数の前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面に対して前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側で、前記基材及び前記支持体は加熱されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項26】
請求項25記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項27】
請求項19〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項28】
請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項29】
請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項30】
請求項18〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項31】
請求項18〜30のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項32】
請求項18〜31のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項33】
請求項18〜32のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項34】
請求項18〜33のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項1】
互いの放電面が対向されて放電空間を形成するように配置され、前記放電空間内に高周波電界を発生させる一対の電極と、
基材を支持する支持体と、
前記基材が前記放電空間内で前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように、前記支持体を前記電極に密着させて保持する保持機構と、
薄膜形成ガスを含有するガスが高周波電界によって活性化されるように前記放電空間に前記ガスを供給し、活性化された前記ガスで前記基材を晒すことで、前記基材の表面上に薄膜を形成するためのガス供給部とを備え、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の薄膜形成装置において、
前記保持機構は、前記基材と前記支持体とを一緒に搬送する搬送装置であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、前記搬送装置による搬送が行われる以前に予め密着していて、
前記搬送装置は、前記放電空間の通過後に前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項5】
請求項2又は3記載の薄膜形成装置において、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材及び前記支持体が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は環状に形成されていて、
前記搬送装置は、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように、前記支持体を回転させて、前記基材を搬送することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記搬送装置は、前記基材及び前記支持体を、複数の前記放電空間を通過するように搬送することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面に対して、前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側には、前記基材及び前記支持体を加熱する加熱部材が設けられていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項9】
請求項8記載の薄膜形成装置において、
前記加熱部材は、前記基材及び前記支持体が前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱することを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の薄膜形成装置において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項18】
互いの放電面が対向された一対の電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを含有するガスをガス供給部から供給し、前記放電空間に高周波電界を発生させることで前記ガスを活性化し、基材を支持する支持体を、前記一対の電極のうち、少なくとも一方の電極に沿うように前記電極に密着させて保持することで、前記基材を活性化した前記ガスに晒して前記基材上に薄膜を形成する際に、
記基材及び前記支持体は、再剥離性を有する粘着剤によって密着していることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項19】
請求項18記載の薄膜形成方法において、
前記基材と前記支持体とは、前記放電空間を通過するように一緒に搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項20】
請求項19記載の薄膜形成方法において、
前記放電空間に進入する以前に前記基材及び前記支持体を前記粘着剤によって密着させ、かつ前記支持体及び前記電極を密着させるように、前記基材及び前記支持体を搬送することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項21】
請求項19又は請求項20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、搬送される以前に予め密着していて、前記放電空間の通過後に剥離させられることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項22】
請求項19又は20記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体を、前記放電空間に進入する以前に密着させるように搬送し、前記基材及び前記支持体が前記放電空間を出てから前記基材及び前記支持体を剥離させることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項23】
請求項22記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、環状に形成されていて、前記支持体に対する前記基材の密着及び剥離が繰り返されるように回転されて、前記基材を搬送することを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項24】
請求項19〜23のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
少なくとも3以上の前記電極によって前記放電空間は複数形成されていて、
前記ガス供給部は複数の前記放電空間に対応するように複数設けられ、
前記基材及び前記支持体は、複数の前記放電空間を通過するように搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項25】
請求項19〜24のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面に対して前記基材及び前記支持体の搬送方向の上流側で、前記基材及び前記支持体は加熱されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項26】
請求項25記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、前記放電面に達するまでに段階的或いは連続的に加熱されることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項27】
請求項19〜26のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記電極の放電面と前記放電面以外の表面との連続角部は、円弧状に形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項28】
請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記基材及び前記支持体は、材質若しくは熱的物性が同等であることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項29】
請求項18〜27のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、誘電体から形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項30】
請求項18〜29のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記支持体は、前記基材よりも幅が長いことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項31】
請求項18〜30のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極の放電面は、前記放電空間に向けて凸となる曲面に形成されていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項32】
請求項18〜31のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記高周波電界が、前記一対の電極のうち一方の電極による第1高周波電界及び他方の電極による第2高周波電界を重畳したものであり、
前記第1高周波電界の周波数ω1より前記第2高周波電界の周波数ω2が高く、
前記第1高周波電界の電界強度V1、前記第2高周波電界の電界強度V2及び放電開始電界強度IVの関係が、
V1≧IV>V2又はV1>IV≧V2を満たすことを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項33】
請求項18〜32のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記ガス中には窒素が50%以上含まれていることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項34】
請求項18〜33のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、
前記一対の電極が、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で前記放電空間内に高周波電界を発生させることを特徴とする薄膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−28609(P2006−28609A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211278(P2004−211278)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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