説明

薄膜形成装置

【課題】 プラズマ中のある程度の割合のイオンを薄膜に接触させて成膜の形成を行うことができる薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】 薄膜形成装置1は、真空槽11の前記開口11aに対応する位置に設けられ真空槽11内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段80と、真空槽11内で基体を保持する基体保持手段13と、プラズマ発生手段80と基体保持手段13との間に設けられたイオン消滅手段90を備える。プラズマ発生手段80から基板ホルダ13を臨んだときの、イオン消滅手段90がプラズマ発生手段80に対して基体保持手段13を遮蔽する面積は、プラズマ発生手段80から基板ホルダ13を臨む残余の面積よりも狭く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学薄膜や光学デバイス、オプトエレクトロニクス用デバイス、半導体デバイス等に用いる薄膜を製造するための薄膜形成装置に係り、特にプラズマ発生手段を備える薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から真空槽内でプラズマ化させた反応性ガスを用いて基板上への薄膜の形成、形成した薄膜の表面改質、エッチング等のプラズマ処理が行われている。例えば、スパッタ技術を用いて基板上に金属の不完全反応物からなる薄膜を形成し、この不完全反応物からなる薄膜にプラズマ化した反応性ガスを接触させ、金属化合物からなる薄膜を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この技術では、薄膜形成装置の真空槽内で反応性ガスをプラズマ化するためにプラズマ発生手段が用いられている。プラズマ発生手段でプラズマ化したガスには、イオン,電子,ラジカル等の活性種が含まれる。
【0004】
プラズマ化したガスに含まれる電子やイオンは、ときには薄膜へ悪影響を与えることがあると考えられている。特に、高エネルギー(30eV程度以上)の状態で電子やイオンが基板へ向けて飛来すると、基板に形成される薄膜に損傷を与える場合があると考えられる。一方で、電気的に中性な反応性ガスのラジカルは薄膜の形成(反応)に寄与する場合が多いと考えられる。このため、この従来の技術では、電子,イオンが基板上の薄膜へ向かうのを阻止して、ラジカルを選択的に薄膜に接触させるためにグリッドが用いられていた。
【0005】
図9は、従来のグリッドの構成を説明する説明図である。図9(A)に示すグリッド101は、金属あるいは絶縁物からなる平板に、直径0.1〜3.0mm程度の多数の穴103が設けられた構成を備える。図9(B)に示すグリッド111は、金属あるいは絶縁物からなる平板に、幅0.1〜1.0mm程度の複数のスリット113が設けられた構成を備える。
【0006】
このようなグリッド101,111を用いることで、反応性ガスのプラズマ中の電気的に中性なラジカル、原子、分子などが選択的ないし優先的に反応プロセスゾーン60に導かれ、荷電粒子である電子、イオンの大半は、グリッド101,111の通過を阻止されていた。すなわち、グリッド101,111の表面で、プラズマ中のイオンと電子との間に電荷交換が行なわれて、電子やイオンが電気的に中和され、消滅していた。このように、電子や、イオンの大半を、グリッド101,111で消滅させることで、従来は、プラズマガス中におけるラジカルの相対的な密度を向上させて、プラズマ処理の効率化を図っていた。
【0007】
【特許文献1】特開2001―234338号公報(第6−9頁、図1、図2、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、プラズマ化したガスに含まれるイオンが、薄膜の形成(反応)に寄与することも少なくない。特に、30eV程度未満の低エネルギーのイオンは、薄膜に損傷を与えることも少ないため、薄膜の形成(反応)に寄与する場合も少なくない。
【0009】
しかしながら、従来のグリッド101,111では、平板状の部材(穴103や、スリット113の面積も含む)の面積に対する穴103や、スリット113が占める割合(開口率)が小さい(例えば、開効率<0.3)ため、イオンの大半が、グリッド101,111で消滅してしまい、反応性ガスのイオンを薄膜の反応にほとんど寄与させることができなかった。
【0010】
以上の問題点に鑑みて、本発明の目的は、反応性ガスプラズマ中のラジカルの相対的な密度を高めながら、プラズマ中のある程度の割合のイオンを薄膜に接触させて成膜の形成を行うことができる薄膜形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の薄膜形成装置は、開口を有する真空槽と、該真空槽の前記開口に対応する位置に設けられ前記真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記真空槽内で基体を保持する基体保持手段と、前記プラズマ発生手段と前記基体保持手段との間に設けられ前記プラズマ発生手段で発生させたイオンを消滅させるイオン消滅手段と、を備え、前記プラズマ発生手段から前記基板ホルダを臨んだときの、前記イオン消滅手段が前記プラズマ発生手段に対して前記基体保持手段を遮蔽する面積は、前記プラズマ発生手段から前記基板ホルダを臨む残余の面積よりも狭く構成されてなることを特徴とする。
【0012】
このように、イオン消滅手段がプラズマ発生手段に対して基体保持手段を遮蔽する面積が、プラズマ発生手段から基板ホルダを臨む残余の面積よりも狭く構成されているため、イオン消滅手段で消滅させるイオンの量を抑えることが可能となる。したがって、イオン消滅手段で消滅されないイオンがプラズマ発生手段から基体保持手段の方へ移動することが可能となる。これにより、基体に形成される薄膜にイオンを接触させてイオンを膜の形成に寄与させることが可能となる。
【0013】
このとき、前記イオン消滅手段は導電体で構成され、アースされた状態で前記真空槽内に設けられていると好適である。
このように構成することで、プラズマ発生手段で発生させたイオンの一部や電子の一部を、アースされたイオン消滅手段で電気的に中和することで消滅させることが可能となる。
【0014】
また、前記イオン消滅手段は中空部材で形成されると好適である。
このように構成することで、中空部材で形成されたイオン消滅手段の内部に冷却媒を通すことが可能となり、イオン消滅手段の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記イオン消滅手段は絶縁体で構成されていると好適である。
このように構成することで、プラズマ発生手段で発生させたイオンの一部をイオン消滅手段に衝突させることで消滅させることが可能となる。
【0016】
また、前記基板保持手段は、前記真空槽と絶縁され、電位的にフローティングされた状態で前記真空槽内に設けられていると好適である。
このように基板保持手段が電位的にフローティングされた構成とすると、基板保持手段の電位状態によって、プラズマ発生手段で発生させたイオンが基板保持手段へ向けて加速されることがない。したがって、プラズマ発生手段で発生させたイオンが、高エネルギーの状態で基板保持手段へ向けて飛翔することを抑制することが可能となる。
【0017】
また、前記プラズマ発生手段は、高周波電源に接続され、同一平面上で渦を成すアンテナを有して構成され、前記アンテナに対して前記高周波電源により2kW以上4kW以下の電力が供給されると好適である。
このように構成することで、プラズマ発生手段によって発生する高エネルギーの反応性ガスのイオンや電子の量を抑制して、減衰係数の小さい薄膜を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄膜形成装置によれば、反応性ガスプラズマ中のラジカルの相対的な密度をある程度高めながら、ある程度の割合のイオンを薄膜に接触させて成膜の形成を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0020】
図1乃至図5は、スパッタ装置1について説明する説明図である。図1が理解の容易のために一部断面をとったスパッタ装置1の上面の説明図、図2が、図1の線A−B−Cに沿って一部断面をとった側面の説明図である。図3は、本発明のプラズマ発生手段及びイオン消滅手段を説明する要部説明図である。図4は、図3のD−D断面図である。スパッタ装置1は本発明の薄膜形成装置の一例である。図5は、イオン消滅手段を説明する要部説明図である。
【0021】
本実施形態では、スパッタの一例であるマグネトロンスパッタを行うスパッタ装置1を用いているが、これに限定されるものでなく、マグネトロン放電を用いない2極スパッタ等、他の公知のスパッタを行うスパッタ装置を用いることもできる。
【0022】
本実施形態のスパッタ装置1によれば、目的の膜厚よりもかなり薄い薄膜をスパッタで基板上に形成し、形成した薄膜に対するプラズマ処理を繰り返すことで目的の膜厚の薄膜を基板上に形成できる。本実施形態では、スパッタとプラズマ処理によって平均0.01〜1.5nmの膜厚の薄膜を形成する工程を繰り返すことで、目的とする数nm〜数百nm程度の膜厚の薄膜を形成する。
【0023】
本実施形態のスパッタ装置1は、真空槽11と、薄膜を形成させる基板を真空槽11内で保持するための基板ホルダ13と、基板ホルダ13を駆動するためのモータ17と、マグネトロンスパッタ電極21a,21bと、プラズマを発生するためのプラズマ発生手段80とを備えている。なお、基板は、本発明の基体に相当する。本実施形態では、基体として、板状の基板を用いているが、レンズ等を基体として用いてもよい。
【0024】
真空槽11は、公知のスパッタ装置で通常用いられるようなステンレススチール製で、アースされている。真空容器11は、略直方体形状を備える中空体である。真空槽11の形状は中空の円柱状であってもよい。
【0025】
基板ホルダ13は、真空槽11内の略中央に配置されている。基板ホルダ13の形状は円筒状であり、その外周面に複数の基板(不図示)を保持する。なお、基板ホルダ13は、本発明の基体保持手段に相当する。基体保持手段としては、本実施形態のように円筒状のものではなく、中空の多角柱状や、円錐状であってもよい。基板ホルダ13は、真空槽13に軸支された回転駆動軸17aで下方から支持されるとともに、真空槽13に軸支された回転支持軸17bで上方から回転可能に支持されている。モータ17からの回転駆動力が、回転駆動軸17aを介して基板ホルダ13へ伝達され、基板ホルダ13は、真空槽11内の真空状態を維持した状態で、中心軸線Zを中心に回転駆動される。基板ホルダ13は、円筒の筒方向の中心軸線Z(図2参照)が真空槽11の上下方向になるように真空槽11内に配設される。
【0026】
回転駆動軸17aと基板ホルダ13、回転支持軸17bと基板ホルダ13との接触部にはフッ素樹脂(テフロン(登録商標))等の絶縁体からなる絶縁部材18a,18bが被覆されている。これにより、基板ホルダ13は、真空槽11から電気的に絶縁され、電位的にフローティングされた状態となっている。このように、基板ホルダ13がフローティングされた状態に構成されることで、基板における異常放電を防止することが可能となる。また、高エネルギー(30eV程度以上)の電子やイオンが基板へ向けて飛来して、基板に形成される薄膜に悪影響を与えたり、基板ホルダ13が加熱されたりすることを抑制することができる。
【0027】
基板ホルダ13の外周面には、多数の基板(不図示)が、基板ホルダ13の中心軸線Zに沿った方向(上下方向)に所定間隔を保ちながら整列された状態で保持される。本実施形態では、基板の薄膜を形成させる面(以下「膜形成面」という)が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように、基板が基板ホルダ13に保持されている。
【0028】
仕切壁12,16は、真空槽11の側壁面から基板ホルダ13へ向けて立設する部材であり、溶接又はボルトで真空槽11に固定されている。本実施形態における仕切壁12,16は、真空槽11と同じステンレス製の部材である。仕切壁12,16は、真空槽11の側壁面から基板ホルダ13へ向けて、四方を囲んだ状態で設けられている。
【0029】
真空槽11の内壁面,仕切壁12,基板ホルダ13の外周面に囲繞されて、スパッタを行うための成膜プロセスゾーン20が形成されている。また、真空槽11の内壁面,後述のプラズマ発生手段80,仕切壁16,基板ホルダ13の外周面に囲繞されて、プラズマを発生させて基板上の薄膜に対してプラズマ処理を行うための反応プロセスゾーン60が形成されている。
【0030】
本実施形態では、真空槽11の仕切壁12が固定されている位置から、基板ホルダ13の中心軸線Zを中心にして約90度回転させた位置に仕切壁16が固定されている。このため、成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン60が、基板ホルダ13の中心軸線Zに対して約90度ずれた位置に形成される。したがって、モータ17によって基板ホルダ13が回転駆動されると、基板ホルダ13の外周面に保持された基板が、成膜プロセスゾーン20に面する位置と反応プロセスゾーン60に面する位置との間で搬送されることになる。真空槽11の成膜プロセスゾーン20と反応プロセスゾーン60との間の位置には、排気用の配管15aが接続され、この配管には真空槽11内を排気するための真空ポンプ15が接続されている。
【0031】
仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面には、絶縁体からなる保護層Pが被覆されている。さらに、真空槽11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分にも絶縁体からなる保護層Pが被覆されている。保護層Pを構成する絶縁体としては、例えば、熱分解窒化硼素(PBN:Pyrolytic Boron Nitride)や、酸化アルミニウム(Al)や、酸化ケイ素(SiO)や、窒化ホウ素(BN)を用いることができる。保護層Pは、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition)や、蒸着法、溶射法等によって、仕切壁16や真空槽11の内壁面へ被覆される。熱分解窒化硼素の場合には、化学的気相成長法を利用した熱分解法によって仕切壁16や真空容器11の内壁面へ被覆するとよい。
【0032】
成膜プロセスゾーン20には、マスフローコントローラ25,26が配管を介して連結されている。マスフローコントローラ25は、不活性ガスを貯留するスパッタガスボンベ27に接続されている。マスフローコントローラ26は、反応性ガスを貯留する反応性ガスボンベ28に接続されている。不活性ガスと反応性ガスは、マスフローコントローラ25,26で制御されて成膜プロセスゾーン20に導入される。成膜プロセスゾーン20に導入する不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスや、ヘリウムガスや、ネオンガスや、クリプトンガスや、キセノンガスを用いることができる。また、成膜プロセスゾーン20に導入する反応性ガスとしては、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等を用いることができる。
【0033】
成膜プロセスゾーン20には、基板ホルダ13の外周面に対向するように、真空槽11の壁面にマグネトロンスパッタ電極21a,21bが配置されている。このマグネトロンスパッタ電極21a,21bは、不図示の絶縁部材を介して接地電位にある真空槽11に固定されている。マグネトロンスパッタ電極21a,21bは、トランス24を介して、中周波交流電源23に接続され、交番電界が印加可能に構成されている。本実施形態の中周波交流電源23は、1k〜100kHzの交番電界を印加するものである。マグネトロンスパッタ電極21a,21bには、ターゲット29a,29bが保持される。ターゲット29a,29bの形状は平板状であり、ターゲット29a,29bの基板ホルダ13の外周面と対向する面が、基板ホルダ13の中心軸線Zと垂直な方向を向くように保持される。
【0034】
真空槽11の反応プロセスゾーン60に対応する壁面には、プラズマ発生手段80を設置するための開口11aが形成されている。また、反応プロセスゾーン60には、マスフローコントローラ75を介して不活性ガスボンベ77内の不活性ガスを導入するための配管や、マスフローコントローラ76を介して反応性ガスボンベ78内の反応性ガスを導入するための配管が接続されている。反応プロセスゾーン60に導入する不活性ガスとして、例えばアルゴンガスや、ヘリウムガスや、ネオンガスや、クリプトンガスや、キセノンガスを用いることができる。また、反応プロセスゾーン60に導入する反応性ガスとして、例えば酸素ガス,窒素ガス,弗素ガス,オゾンガス等を用いることができる。
【0035】
図1乃至図4を用いて、本実施形態のプラズマ発生手段80を説明する。
プラズマ発生手段80は、反応プロセスゾーン60に面して、前記開口11aに対応する位置に設けられている。本実施形態のプラズマ発生手段80は、蓋体としてのケース体81と、誘電体壁としての誘電体板83と、固定枠84と、アンテナ85a,85bと、固定具88と、減圧手段としての配管15a,真空ポンプ15を有して構成されている。
【0036】
ケース体81は、真空槽11の壁面に形成された開口11aを塞ぐ形状を備え、ボルト(不図示)で真空槽11の開口11aを塞ぐように固定されている。ケース体81が真空槽11の壁面に固定されることで、プラズマ発生手段80は真空槽11に接続されている。本実施形態において、ケース体81はステンレスで形成されている。誘電体板83は、板状の誘電体で形成されている。本実施形態において、誘電体板83は石英で形成されている。なお、誘電体板83は石英ではなくAl等のセラミックス材料で形成されたものでもよい。
【0037】
固定枠84は、ケース体81に誘電体板83を固定するために用いられるもので、ロの字形状を備えた枠体である。固定枠84とケース体81がボルト(不図示)で連結されることで、固定枠84とケース体81の間に誘電体板83が挟持され、これにより誘電体板83がケース体81に固定されている。誘電体板83がケース体81に固定されることで、ケース体81と誘電体板83によってアンテナ収容室80Aが形成されている。すなわち、本実施形態では、ケース体81と誘電体板83に囲まれてアンテナ収容室80Aが形成されている。
【0038】
ケース体81に固定された誘電体板83は、開口11aを介して真空槽11の内部(反応プロセスゾーン60)に臨んで設けられている。このとき、アンテナ収容室80Aは、真空槽11の内部と分離している。すなわち、アンテナ収容室80Aと真空槽11の内部とは、誘電体板83で仕切られた状態で独立した空間を形成している。また、アンテナ収容室80Aと真空槽11の外部は、ケース体81で仕切られた状態で独立の空間を形成している。本実施形態では、このように独立の空間として形成されたアンテナ収容室80Aの中に、アンテナ85a,85bが設置されている。なお、アンテナ収容室80Aと真空槽11内部の反応プロセスゾーン60、アンテナ収容室80Aと真空槽11外部との間は、Oリングで気密が保たれている。
【0039】
本実施形態では、アンテナ収容室80Aの内部を排気して真空状態にするために、アンテナ収容室80Aに排気用の配管15aが接続されている。配管15aには、真空ポンプ15が接続されている。本実施形態において、配管15aは真空槽11の内部へも連通している。配管15aには、真空ポンプ15から真空槽11の内部に連通する位置にバルブV1、V2が設けられている。また、配管15aには、真空ポンプ15からアンテナ収容室80Aの内部に連通する位置にバルブV1、V3が設けられている。バルブV2,V3のいずれかを閉じることで、アンテナ収容室80Aの内部と真空槽11の内部との間での気体の移動は阻止される。真空槽11の内部の圧力や、アンテナ収容室80Aの内部の圧力は、真空計(不図示)で測定される。
【0040】
本実施形態では、スパッタ装置1に制御装置(不図示)を備えている。この制御装置には、真空計の出力が入力される。制御装置は、入力された真空計の測定値に基づいて、真空ポンプ15による排気を制御して、真空槽11の内部やアンテナ収容室80Aの内部の真空度を調整する機能を備える。本実施形態では、制御装置がバルブV1,V2,V3の開閉を制御することで、真空槽11の内部とアンテナ収容室80Aの内部を同時に、又は独立して排気できる。
【0041】
アンテナ85aとアンテナ85bは、高周波電源89から電力の供給を受けて、真空槽11の内部(反応プロセスゾーン60)に誘導電界を発生させ、プラズマを発生させるためのものである。本実施形態のアンテナ85a,85bは、銅で形成された円管状の本体部と、本体部の表面を被覆する銀で形成された被覆層を備えている。アンテナ85aのインピーダンスを低下するためには、電気抵抗の低い材料でアンテナ85a,85bを形成するのが好ましい。そこで、高周波の電流がアンテナの表面に集中するという特性を利用して、アンテナ85a,85bの本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い銅で円管状に形成し、アンテナ85a,85bの表面を銅よりも電気抵抗の低い銀で被覆している。このように構成することで、高周波に対するアンテナ85a,85bのインピーダンスを低減して、アンテナ85aに電流を効率よく流して、プラズマを発生させる効率を高めている。
【0042】
アンテナ85a及びアンテナ85bは、平面上で渦を成した形状を備える。アンテナ85aとアンテナ85bとは、ケース体81と誘電体板83との間に形成されたアンテナ収容室80Aの中に、渦を成す面が反応プロセスゾーン60を向いた状態で誘電体板83に隣接して設置される。言い換えれば、アンテナ85a及びアンテナ85bは、アンテナ85a及びアンテナ85bの渦を成す面が板状の誘電体板83の壁面に対向した状態で、アンテナ85a及びアンテナ85bの渦の中心軸線と垂直な方向で上下(中心軸線Zと平行な方向)に隣り合って設置されている。
【0043】
すなわち、図2乃至図4に示したように、アンテナ65aとアンテナ65bの渦を成す面(誘電体壁63)に対する垂線に垂直な方向に所定の間隔Dを保って、アンテナ65aとアンテナ65bが固定されている。したがって、モータ17を作動させて、基板ホルダ13を中心軸線Z周りに回転させると、基板ホルダの外周に保持された基板は、基板の膜形成面がアンテナ85a,85bの渦を成す面と対向するように、上下に並んだアンテナ85a,85bに対して横方向に搬送される。
【0044】
アンテナ85aとアンテナ85bは、高周波電源89に対して並列に接続されている。アンテナ85a,85bは、マッチング回路を収容するマッチングボックス87を介して高周波電源89に接続されている。マッチングボックス87内には、図4に示すように、可変コンデンサ87a,87bが設けられている。本実施形態では、アンテナ85aに対してアンテナ85bが並列に接続されているため、従来のマッチング回路でマッチング用コイルが果たす役目の全部又は一部を、アンテナ85bが果たす。したがって、マッチングボックス内での電力損失を軽減し、高周波電源89から供給される電力をアンテナ85a,85bでプラズマの発生に有効に活用することができる。また、インピーダンスマッチングもとりやすくなる。
【0045】
渦状のアンテナ85a,85bは、導線部86a,86bを介してマッチングボックス87に接続されている。導線部86a,86bは、アンテナ85a,85bと同様の素材からなる。ケース体81には、導線部86a,86bを挿通するための挿通孔81aが形成されている。アンテナ収容室80A内側のアンテナ85a,85bと、アンテナ収容室80A外側のマッチングボックス87,高周波電源89とは、挿通孔81aに挿通される導線部86aを介して接続される。導線部86a,86bと挿通孔81aとの間にはシール部材81bが設けられ、アンテナ収容室80Aの内外で気密が保たれる。
【0046】
本実施形態では、導線部86a,86bの長さに余裕をもたせて、アンテナ85aとアンテナ85bとの間隔Dを調整できるようになっている。本実施形態のスパッタ装置1では、アンテナ85a,85bを固定具88によって固定する際に、アンテナ85aとアンテナ85bの上下方向の間隔Dを調整することができる。
【0047】
固定具88は、アンテナ85a,85bをアンテナ収容室80Aに設置するためのものである。本実施形態の固定具88は、固定板88a,88bと、固定ボルト88c,88dで構成される。固定板88a,88bには、アンテナ85a,85bが嵌合されている。アンテナ85a,85bが嵌合された固定板88a,88bは、固定ボルト88c,88dでケース体81に取り付けられている。ケース体81には上下方向に複数のボルト穴が形成され、固定板88a,88bは、いずれかのボルト穴を用いてケース体81に取り付けられている。すなわち、使用されるボルト穴の位置によって、アンテナ85aとアンテナ85bの上下方向の間隔Dが調整されている。なお、アンテナ85a,85bと固定板88a,88bとを絶縁するために、少なくとも、アンテナ85a,85bと固定板88a,88bとの接触面が絶縁材で形成されている。
【0048】
以上の構成を備えるプラズマ発生手段80が、真空槽11に組み付けられる手順を説明する。
まず、固定具88を用いてアンテナ85a,85bをケース体81に固定する。このとき、アンテナ85aとアンテナ85bの上下方向の間隔Dや、アンテナ85aの径Raや、アンテナ85bの径Rbに合わせた固定具88を用いる。続いて、固定枠84を用いて、ケース体81に誘電体板83を固定する。これにより、アンテナ85a,85bは、誘電体板83と固定板88a,88bとの間に挟持された状態となる。また、ケース体81、誘電体板83、アンテナ85a,85b、固定具88が一体的になる。続いて、真空槽11の開口11aを塞ぐように、ケース体81を真空槽11に対してボルト(不図示)で固定する。以上によって、プラズマ発生手段80が、真空槽11に組み付けられ、アンテナ収容室80Aと、反応プロセスゾーン60(真空槽11の内部)と、真空槽11の外側が、それぞれ独立の空間として形成され、アンテナ85a,85bがアンテナ収容室80Aに設置される。
【0049】
本実施形態では、ケース体81、誘電体板83、アンテナ85a,85b、固定具88を一体的にした状態で、ケース体81と真空槽11をボルトで固定することでプラズマ発生手段80を真空槽11と接続できるため、プラズマ発生手段80を真空槽11に着脱するのが容易である。
【0050】
さらに、本実施形態では、プラズマ発生手段80と基板ホルダ13との間に、図1乃至図3、図5に示すグリッド90が設けられている。グリッド90は、本発明のイオン消滅手段に相当するものであり、プラズマ発生手段80で発生させたイオンの一部や電子の一部を消滅させるためのものである。
【0051】
図5は、プラズマ発生手段80から基板ホルダ13を臨んだときに、開口11aを通じてみた、グリッド90の正面図である。
図5に示すように、グリッド90は、導電体からなる中空部材であり、アースされている。中空部材からなるグリッド90の内部に冷却媒(例えば冷却水)を流すために、グリッドの端部には冷却媒を供給するホース(図示せず)が接続されている。
【0052】
本実施形態のグリッド90は、縦グリッド90aと、横グリッド90bで構成されている。縦グリッド90aは、中心軸線Zと平行な方向(縦方向)の筋が複数並ぶように、中空部材を配置したものである。横グリッド90bは、基板ホルダ13の回転方向に平行な方向(横方向)の筋が複数並ぶように、中空部材を配置したものである。グリッド90を構成する導電体としては、銅や、銅合金や、アルミや、ステンレススチール等が用いられる。
【0053】
本実施形態では、図5に示すように銅管が網目状に屈曲して、縦グリッド90a,横グリッド90bが構成されている。縦グリッド90a,横グリッド90bは、真空容器11に固定される。本実施形態では、真空容器11にボルトで固定される固定板91と真空容器11との間に横グリッド90bを挟持することで、横グリッド90bを真空容器11に固定している。縦グリッド90aは、横グリッド90bと溶接又は接着剤により固定することで固定されている。縦グリッド90aを固定板91で固定するようにしてもよい。
【0054】
図5に示すように、本実施形態のグリッド90では、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨んだときの、グリッド90がプラズマ発生手段80に対して基板ホルダ13を遮蔽する面積を、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨む残余の面積よりも狭くして、縦グリッド90a,横グリッド90bを配置している。すなわち、本実施形態では、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨んだときの、グリッド90により開口11aが塞がれる面積を、開口11aの残余の面積よりも狭くして、縦グリッド90a,横グリッド90bを配置している。
【0055】
次に、本実施形態のスパッタ装置1を用いて、反応プロセスゾーン60にプラズマを発生させる手順を説明する。
まず、真空ポンプ15を作動させて、真空槽11の内部と、アンテナ収容室80Aを減圧する。このとき、制御装置は配管15aに設けられたバルブV1,V2,V3を総て開放し、真空槽11の内部と、アンテナ収容室80Aの内部を同時に排気して、真空槽11の内部及びアンテナ収容室80Aの内部を真空状態にする。制御装置は、真空計の測定値を監視して、真空槽11の内部とアンテナ収容室80Aの内部の圧力差が大きくならないように(例えば、10Pa以上の圧力差が生じないように)、バルブV1,V2,V3の開閉を適宜制御する。その後、制御装置は、真空槽11の内部が10−2Pa〜10Paになったところで一旦バルブV2を閉じる。アンテナ収容室80Aは、さらに10−3Pa以下にまで減圧される。つづいて、アンテナ収容室80A内部が10−3Pa以下になったところでバルブV3を閉じる。続いて、真空槽11の内部が10−2Pa〜10Paを保持した状態で、反応性ガスボンベ78内の反応性ガスを、マスフローコントローラ76を介して反応プロセスゾーン60へ導入する。
【0056】
真空槽11の内部とアンテナ収容室80Aの内部を上記所定の圧力に保持した状態で、高周波電源89からアンテナ85a,85bに13.56MHzの電圧を印加して、反応プロセスゾーン60に反応性ガスのプラズマを発生させる。このとき、アンテナ85aとアンテナ85bの上下方向の間隔Dや、アンテナ85aの径Raや、アンテナ85bの径Rb等に応じた分布のプラズマが発生する。
【0057】
このように発生した反応性ガスのプラズマ中のイオン,電子,ラジカル等の活性種によって、基板ホルダ13に配置された基板に形成されている薄膜のプラズマ処理が行われる。本実施形態では、プラズマ中のイオン,電子,ラジカル等の活性種のうち、イオンの一部や電子の一部の電荷は、プラズマ発生手段80と基板ホルダ13との間に設けられたグリッド90によって中和される。本実施形態では、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨んだときの、グリッド90がプラズマ発生手段80に対して基板ホルダ13を遮蔽する面積を、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨む残余の面積よりも狭くして、縦グリッド90a,横グリッド90bを配置している。このように縦グリッド90a,横グリッド90bを配置することで、プラズマ発生手段80で発生させた反応性ガスのイオンがグリッド90で電気的に中和されて消滅する量を抑えている。
【0058】
すなわち、グリッド90によって開口11aが塞がれる面積を広くし過ぎると、プラズマ発生手段80で発生させた反応性ガスのイオンの大半がグリッド90で中和され、基板に形成された薄膜へ接触するイオンの量が極めて少なくなってしまう。これに対して、本実施形態のように、グリッド90が開口11aを塞ぐ面積を、開口11aの残余の面積よりも狭くすることで、グリッド90で電気的に中和される反応性ガスのイオンの量を抑え、薄膜へ接触するイオンの量が極端に少なくなりすぎないようにしている。
【0059】
以上のように、本実施形態では、薄膜を形成または処理する空間を形成する真空槽11の内部をプラズマが発生する圧力に保持して、真空槽11の内部とは独立した空間を形成するアンテナ収容室80Aの内部を真空槽11の内部よりも低いプラズマが発生しにくい圧力に保持して、真空槽11内にプラズマを発生させている。このため、アンテナ収容室80Aにプラズマが発生することを抑制して、真空槽11の内部に効率的にプラズマを発生させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、アンテナ収容室80Aと真空槽11の内部とは、誘電体板83で仕切られた状態で独立した空間とされ、アンテナ収容室80Aの内部にアンテナ85a,85bを設け、アンテナ収容室80Aを減圧した状態で真空槽11の内部にプラズマを発生させる構成となっている。このため、大気中にアンテナ85a,85bを設置した状態でプラズマを発生させる従来の場合に比べて、アンテナ85a,85bの酸化を抑制することができる。したがって、アンテナ85a,85bの長寿命化を図ることができる。また、アンテナ85a,85bが酸化することにより、プラズマが不安定化することを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、真空槽11の内部及びアンテナ収容室80Aの内部の圧力を監視して、真空槽11の内部と、アンテナ収容室80Aの内部で大きな圧力差が生じないように減圧を行い、真空槽11の内部を10−2Pa〜10Pa程度の真空に保持し、アンテナ収容室80Aを10−3Pa以下に保持して、真空槽11の内部にプラズマを発生させる構成にしている。そして、アンテナ収容室80Aと真空槽11の内部が誘電体板83で仕切られ、アンテナ収容室80Aと真空槽11外部がケース体81で仕切られている。このため、大気中にアンテナ185を設置して、真空槽11の内部と真空槽の外部とを誘電体板183で仕切る場合に比べて、本実施形態では、アンテナ収容室80Aと真空槽11の内部の圧力差を小さく保つことができるため、誘電体板83の厚みを薄く設計することができ、効率的にプラズマを発生させることが可能となるとともに、安価な誘電体板83を使用して低コスト化を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、アンテナ85aとアンテナ85bの上下方向の間隔Dを調整することで、基板ホルダ13に配置される基板に対するプラズマの分布を調整することができる。また、アンテナ85aの径Raや、アンテナ85bの径Rb、又はアンテナ85a,85bの太さ等を独立に変更することができるため、アンテナ85aの径Raや、アンテナ85bの径Rb又は太さ等を調整することでも、プラズマの分布を調整することができる。また、本実施形態では、図4に示すように、アンテナ85aやアンテナ85bが大小の半円から構成される全体形状を備えているが、アンテナ85aやアンテナ85bの全体形状を、矩形などの形状に変更して、プラズマの分布を調整することも可能である。
【0063】
特に、横方向に搬送される基板の搬送方向と交差する上下方向にアンテナ85aとアンテナ85bを並べて、アンテナ85a,85b両者の間隔も調整することができるため、基板の搬送方向に交差する方向で広範囲にプラズマ処理を行う必要がある場合に、プラズマの密度分布を容易に調整することができる。例えば、本実施形態のようなカルーセル型のスパッタ装置1を用いてプラズマ処理を行う場合には、基板ホルダ13での基板の配置,スパッタ条件等により、基板ホルダの上方に位置する薄膜と、中間に位置する薄膜の膜厚に違いが生じている場合がある。このような場合でも、本実施形態のプラズマ発生手段80を用いれば、膜厚の違いに対応してプラズマの密度分布を適宜調整することができるという利点がある。
【0064】
また、本実施形態では、上述のように、仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面や、真空槽11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分に絶縁体を被覆することで、反応プロセスゾーン60のラジカルの相対的な密度を高く維持して、より多くのラジカルを基板上の薄膜と接触させてプラズマ処理の効率化を図っている。すなわち、仕切壁16や真空槽11の内壁面に化学的に安定な熱分解窒化硼素を被覆することで、プラズマ発生手段80によって反応プロセスゾーン60に発生したラジカル又は励起状態のラジカルが仕切壁16や真空槽11の内壁面と反応して消滅することを抑制している。また、仕切壁16で反応プロセスゾーン60に発生するラジカルが基板ホルダの方向へ向くようにコントロールできる。
【0065】
さらに、上述のようにプラズマの分布の調整と、ラジカルの相対密度の向上を行いながら、グリッド90が開口11aを塞ぐ面積を、開口11aの残余の面積よりも狭くすることで、グリッド90で電気的に中和される反応性ガスのイオンの量を抑え、薄膜へ接触するイオンの量を調整することができる。
【0066】
以下に、上述のスパッタ装置1を用いたプラズマ処理の方法として、基板上にスパッタで形成した不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))の薄膜に対してプラズマ処理を行い、その不完全酸化チタンよりも酸化が進んだ酸化チタン(TiOx2(x1<x2≦2))の薄膜を形成する方法について例示する。なお、不完全酸化チタンとは、酸化チタンTiOの構成元素である酸素が欠乏した不完全な酸化チタンTiO(x<2)のことである。
【0067】
まず、基板及びターゲット29a,29bをスパッタ装置1に配置する。基板は基板ホルダ13に保持させる。ターゲット29a,29bは、それぞれマグネトロンスパッタ電極21a,21bに保持させる。ターゲット29a,29bの材料としてチタン(Ti)を用いる。
次に、真空槽11の内部,アンテナ収容室80Aの内部を上述の所定の圧力に減圧し、モータ17を作動させて、基板ホルダ13を回転させる。その後、真空槽11の内部,アンテナ収容室80Aの内部の圧力が安定した後に、成膜プロセスゾーン20の圧力を、0.1Pa〜1.3Paに調整する。
【0068】
次に、成膜プロセスゾーン20内に、スパッタ用の不活性ガスであるアルゴンガスと、反応性ガスである酸素ガスを、スパッタガスボンベ27、反応性ガスボンベ28からマスフローコントローラ25,26で流量を調整しながら導き、成膜プロセスゾーン20のスパッタを行うための雰囲気を調整する。
【0069】
次に、中周波交流電源23からトランス24を介して、マグネトロンスパッタ電極21a,21bに周波数1〜100KHzの交流電圧を印加し、ターゲット29a,29bに、交番電界が掛かるようにする。これにより、ある時点においてはターゲット29aがカソード(マイナス極)となり、その時ターゲット29bは必ずアノード(プラス極)となる。次の時点において交流の向きが変化すると、今度はターゲット29bがカソード(マイナス極)となり、ターゲット29aがアノード(プラス極)となる。このように一対のターゲット29a,29bが、交互にアノードとカソードとなることにより、プラズマが形成され、カソード上のターゲットに対してスパッタを行う。
【0070】
スパッタを行っている最中には、アノード上には非導電性あるいは導電性の低い酸化チタン(TiO(x≦2))が付着する場合もあるが、このアノードが交番電界によりカソードに変換された時に、これら酸化チタン(TiO(x≦2))がスパッタされ、ターゲット表面は元の清浄な状態となる。そして、一対のターゲット29a,29bが、交互にアノードとカソードとなることを繰り返すことにより、常に安定なアノード電位状態が得られ、プラズマ電位(通常アノード電位とほぼ等しい)の変化が防止され、基板の膜形成面に安定してチタン或いは不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))からなる薄膜が形成される。
【0071】
なお、成膜プロセスゾーン20で形成する薄膜の組成は、成膜プロセスゾーン20に導入する酸素ガスの流量を調整することや、基板ホルダ13の回転速度を制御することで、チタン(Ti)にしたり、酸化チタン(TiO)にしたり、或いは不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))にしたりできる。
【0072】
成膜プロセスゾーン20で、基板の膜形成面にチタン或いは不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))からなる薄膜を形成させた後には、基板ホルダ13の回転駆動によって基板を、成膜プロセスゾーン20に面する位置から反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送する。反応プロセスゾーン60には、反応性ガスボンベ78から反応性ガスとして酸素ガスを導入するとともに、不活性ガスボンベ77から不活性ガス(例えばアルゴンガス)を導入する。このように、反応プロセスゾーン60に反応性ガスとしての酸素ガスだけではなく、不活性ガスを導入することで、プラズマ中における反応性ガスのラジカルの密度を向上させることができる。
【0073】
次に、アンテナ85a,85bに、13.56MHzの高周波電圧を印加して、プラズマ発生手段80によって反応プロセスゾーン60にプラズマを発生させる。反応プロセスゾーン60の圧力は、0.7Pa〜1Paに維持する。また、少なくとも反応プロセスゾーン60にプラズマを発生させている際中は、アンテナ収容室80Aの内部の圧力は、10−3Pa以下を保持する。
【0074】
次に、基板ホルダ13が回転して、チタン或いは不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))からなる薄膜が形成された基板が反応プロセスゾーン60に面する位置に搬送されてくると、反応プロセスゾーン60では、チタン或いは不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))からなる薄膜をプラズマ処理によって酸化反応させる工程を行う。すなわち、プラズマ発生手段80によって反応プロセスゾーン60に発生させた酸素ガスのプラズマでチタン或いは不完全酸化チタン(TiOx1(x1<2))を酸化反応させて、所望の組成の不完全酸化チタン(TiOx2(x1<x2<2))或いは酸化チタン(TiO)に変換させる。
【0075】
以上の工程によって、本実施形態では、所望の組成の酸化チタン(TiO(x≦2))薄膜を作成することができる。さらに、以上の工程を繰り返すことで、薄膜を積層させて所望の膜厚の薄膜を作成することができる。
【0076】
ところで、反応プロセスゾーン60では、反応性ガスのプラズマにより、二つの効果が現れていると考えられる。一つ目の効果は、反応性ガスのプラズマにより薄膜に対する酸化反応が行われ、スパッタにより形成された金属あるいは不完全酸化物からなる薄膜が、完全酸化物あるいはそれに近い不完全酸化物に変換されるという効果である。二つ目の効果は、スパッタにより形成された金属あるいは不完全酸化物からなる薄膜に、反応性ガスのプラズマの中の高エネルギーイオン又は電子が衝突し、これにより薄膜からの脱酸素が行われ、薄膜の組成に悪影響を与えるという効果である。反応プロセスゾーン60を通過してプラズマ処理が行われた薄膜の組成は、このような二つの効果の競合により決められると考えられる。
【0077】
図6は、TiO薄膜を形成した場合のアンテナ85a,85bに供給する電力と、TiO薄膜の光学定数(屈折率n及び減衰係数k)との関係を示している。図6の横軸はアンテナ85a,85bに供給する電力を示し、図6の縦軸(左側)は形成した薄膜の屈折率nを示し、図6の縦軸(右側)は形成した薄膜の減衰係数kを示している。
【0078】
図6から判るように、4kWより大きい電力を供給した場合には、減衰係数kが大きくなってしまう(例えば、5kWの電力を供給した場合には、減衰係数kが1.0×10−3を超えてしまう)のに対して、2kW以上4kW以下で電力を供給した場合には、屈折率nが2.47〜2.49で、減衰係数kが1.0×10−3以下であるTiO薄膜を形成することができる。
【0079】
アンテナ85a,85bに対して4kWより大きい電力を供給した場合に、減衰係数kが大きくなってしまう原因としては、アンテナ85a,85bに対して大きな電力を供給することで、高エネルギーの反応性ガスのイオンや電子が多く発生し、上記二つ目の効果が顕著になるためであると考えられる。
【0080】
したがって、高エネルギーの反応性ガスのイオンや電子の量を抑制して、減衰係数kを小さくするためには、アンテナ85a,85bに対する、高周波電源89からの電力の供給を、2kW以上4kW以下で行うとよい。さらに、減衰係数kを1.0×10−4程度に小さくするためには、アンテナ85a,85bに対する、高周波電源89からの電力の供給を、2kW以上3.5kW以下で行うとよい。
【0081】
以上に説明した実施の形態は、例えば、次の(a)〜(l)のように、改変することもできる。また、(a)〜(l)を適宜組合せて改変することもできる。なお、以下の説明では、上記の実施形態と同一の部材は同一の符号を用いて説明している。
【0082】
(a) 上記の実施形態では、グリッド90を、導電体からなる中空部材で構成した例を説明したが、グリッド90を、絶縁体からなる棒状部材で構成することもできる。この場合も、上記の実施形態と同様に、グリッド90を縦グリッド90aと横グリッド90bで構成するとよい。本実施形態の縦グリッド90aは、中心軸線Zと平行な方向(縦方向)の筋が複数並ぶように、棒状材を配置したものである。また、横グリッド90bは、基板ホルダ13の回転方向に平行な方向(横方向)の筋が複数並ぶように、棒状部材を配置したものである。
【0083】
そして、本実施形態においても、上記の実施形態と同様に、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨んだときの、グリッド90がプラズマ発生手段80に対して基板ホルダ13を遮蔽する面積を、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨む残余の面積よりも狭くして、縦グリッド90a,横グリッド90bを配置している。すなわち、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨んだときの、グリッド90により開口11aが塞がれる面積を、開口11aの残余の面積よりも狭くなるように、縦グリッド90a,横グリッド90bを配置している。
【0084】
このように、絶縁体からなるグリッド90を設けることで、プラズマ発生手段80で発生させたプラズマ中のイオンの一部をグリッド90に衝突させて消滅させることが可能となる。そして、上記の実施形態と同様に、プラズマ発生手段80から基体ホルダ13を臨んだときの、グリッド90により開口11aが塞がれる面積を、開口11aの残余の面積よりも狭くなるようにすることで、グリッド90で消滅する反応性ガスのイオンの量を抑え、薄膜へ接触するイオンの量が極端に少なくなりすぎないようにしている。
【0085】
なお、グリッド90を構成する絶縁体としては、熱分解窒化硼素(PBN)や、酸化アルミニウム(Al)や、酸化ケイ素(SiO)や、窒化ホウ素(BN)や、窒化アルミニウム(AlN)等を用いることができる。また、グリッド90を構成する絶縁体からなる棒状部材は、必ずしも全体が絶縁体で構成されている必要はない。中空の導電体(例えば、ステンレススチールや、銅や、銅合金や、アルミ等)の表面を、熱分解窒化硼素(PBN)や、酸化アルミニウム(Al)や、酸化ケイ素(SiO)や、窒化ホウ素(BN)や、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁体で被覆したもので、グリッド90を構成することもできる。絶縁体による導電体の被覆は、上記の保護層Pの被覆方法と同様に、化学的気相成長法や、蒸着法、溶射法等によって行うとよい。
【0086】
(b) 上記の実施形態では、薄膜形成装置の一例として、スパッタ装置について説明したが、本発明のプラズマ発生手段は、他のタイプの薄膜形成装置にも適用できる。薄膜形成装置としては、例えば、プラズマを用いたエッチングを行うエッチング装置、プラズマを用いたCVDを行うCVD装置等でもよい。また、プラスチックの表面処理をプラズマを用いて行う表面処理装置にも適用できる。
【0087】
(c) 上記の実施形態では、所謂カルーセル型のスパッタ装置を用いているが、これに限定されるものではない。本発明は、基板がプラズマを発生させる領域に面して搬送される他のスパッタ装置にも適用できる。
【0088】
(d) 上記の実施形態では、固定枠84を用いて、ケース体81に誘電体板83を固定して、ケース体81、誘電体板83、アンテナ85a,85b、固定具88を一体的にした状態で、ケース体81と真空槽11をボルトで固定することでプラズマ発生手段を真空槽11と接続していた。しかし、誘電体板83の固定の方法、プラズマ発生手段の接続の方法はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、改変することもできる。図7は、プラズマ発生手段の他の実施形態を説明する要部説明図である。図7に示した実施形態では、真空槽11と固定枠184をボルト(不図示)で連結することで、真空槽11と固定枠184との間に、本発明の誘電体壁としての誘電体板183を挟持させて、誘電体板183を真空槽11に固定している。そして、真空槽11に固定された誘電体板183を覆うように、本発明の蓋体としてのケース体181が真空槽11にボルトで固定され、プラズマ発生手段180が真空槽11に固定されている。
【0089】
そして、ケース体181と誘電体板183で囲まれてアンテナ収容室180Aが形成されている。アンテナ収容室180Aの内部を減圧できるように、アンテナ収容室180Aに配管15aが接続され、配管15aの先に真空ポンプ15が接続されている。なお、上記の実施形態においてアンテナ85a,85bが固定具88を用いてケース体81に固定されていたのと同様に、アンテナ85a,85bは、固定具188を用いてケース体181に固定されている。ケース体181を真空槽11から取り外せば、アンテナ85a,85bの着脱や、アンテナ85a,85bの形状の変更等を容易に行うことができる。
【0090】
(e) 上記の実施形態では、プラズマ発生手段として、図1乃至図4に示すような、板状の誘電体板83に対して同一平面状で渦をなすアンテナ85a,85bを固定した誘導結合型(平板型)のプラズマ発生手段を用いているが、本発明は、他のタイプのプラズマ発生手段を備えた薄膜形成装置にも適用される。すなわち、誘電体で形成された円筒形の誘電体壁の周囲に渦状に巻回させたアンテナに高周波の電力を印加して、円筒形の誘電体壁に囲まれた領域に誘導電界を発生させてプラズマを発生させる誘導結合型(円筒型)のプラズマ発生手段に対しても本発明を適用できる。
【0091】
図8は誘導結合型(円筒型)のプラズマ発生手段を説明する要部説明図である。図8に示した実施形態では、本発明の誘電体壁として誘電体板283を備える。誘電体板283は円筒形状を備えている。真空槽11と固定枠284をボルト(不図示)で連結することで、真空槽11と固定枠284との間に、本発明の誘電体壁としての誘電体板283を挟持させて、誘電体板283を真空槽11に固定している。そして、真空槽11に固定された誘電体板283を覆うように、本発明の蓋体としてのケース体281が真空槽11にボルトで固定され、プラズマ発生手段280が真空槽11に固定されている。
【0092】
そして、ケース体281と誘電体板283で囲まれてアンテナ収容室280Aが形成されている。アンテナ収容室280Aの内部を減圧できるように、アンテナ収容室280Aに配管15aが接続され、配管15aの先に真空ポンプ15が接続されている。アンテナ285は、円筒状の誘電体板の外周に巻回されている。上記の実施形態においてアンテナ85a,85bが固定具88を用いてケース体81に固定されていたのと同様に、アンテナ285は、固定具288を用いてケース体281に固定されている。ケース体281を真空槽11から取り外せば、アンテナ285の着脱や、アンテナ285の形状の変更等を容易に行うことができる。
【0093】
なお、図8に示した実施形態において、ケース体281と固定枠84の間に誘電体板283を挟持させることで、ケース体281に誘電体板283を固定して、ケース体281、誘電体板283、アンテナ285、固定具288を一体的にした構成とすることもできる。このように構成すれば、ケース体281と真空槽11をボルトで固定することでプラズマ発生手段280を真空槽11と接続できるため、プラズマ発生手段280を真空槽11に着脱するのが容易となる。
【0094】
(f) 上記の実施形態では、配管15aが真空槽11の内部と、アンテナ収容室80Aの内部と、両方に接続され、配管15aに接続された真空ポンプ15で、真空槽11の内部およびアンテナ収容室80Aの排気を行っていた。しかし、真空槽11の内部、アンテナ収容室80Aの内部それぞれに独立の配管を接続して、各配管に接続した独立の真空ポンプで、真空槽11の内部およびアンテナ収容室80Aの内部を排気するようにしてもよい。
【0095】
(g) 上記の実施形態では、固定板88a,88bに誘電体板83を嵌合し、固定ボルト88c,88dで固定板88a,88bをケース体81に固定することで、アンテナ85a,85bをアンテナ収容室80Aに設置したが、要は、間隔Dを調整してアンテナ85a,85bを固定できれば他の方法でもよい。
【0096】
(h) 上記の実施形態では、仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面や、真空槽11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面に絶縁体からなる保護層Pを形成したが、他の部分にも絶縁体からなる保護層Pを形成してもよい。例えば、仕切壁16の反応プロセスゾーン60に面する壁面だけではなく、仕切壁16の他の部分にも絶縁体を被覆してもよい。これにより、ラジカルが仕切壁16と反応して、ラジカルが減少するのを最大限回避することができる。また、例えば、真空槽11の内壁面の反応プロセスゾーン60に面する部分だけではなく、真空槽11の内壁面における他の部分、例えば内壁面の全体に絶縁体を被覆してもよい。これにより、ラジカルが真空槽11の内壁面と反応して、ラジカルが減少するのを最大限回避することができる。仕切壁12に絶縁体を被覆してもよい。
【0097】
(i) 上記の実施形態では、アンテナ85aの円管状の本体部を銅で、被覆層を銀で形成したが、本体部を安価で加工が容易な、しかも電気抵抗も低い材料で形成し、電流が集中する被覆層を本体部よりも電気抵抗の低い材料で形成すればよいため、他の材料の組合せでもよい。例えば、本体部をアルミニウム又はアルミニウム−銅合金で形成したり、被覆層を銅,金で形成したりしてもよい。アンテナ85bの本体部,被覆層も同様に改変できる。また、アンテナ85aと、アンテナ85bを、異なる材料で形成してもよい。
【0098】
(j) 上記の実施形態では、反応プロセスゾーン60に反応性ガスとして酸素を導入しているが、その他に、オゾン,一酸化二窒素(NO)等の酸化性ガス、窒素等の窒化性ガス、メタン等の炭化性ガス、弗素,四弗化炭素(CF)等の弗化性ガスなどを導入することで、本発明を酸化処理以外のプラズマ処理にも適用することができる。
【0099】
(k) 上記の実施形態では、ターゲット29a,29bの材料としてチタンを用いているが、これに限定されるものでなく、これらの酸化物を用いることもできる。また、アルミニウム(Al),ケイ素(Si),ジルコニウム(Zr),スズ(Sn),クロム(Cr),タンタル(Ta),テルル(Te),鉄(Fe),マグネシウム(Mg),ハフニウム(Hf),ニオブ(Nb),ニッケル・クロム(Ni−Cr),インジウム・スズ(In−Sn)などの金属を用いることができる。また、これらの金属の化合物,例えば、Al,SiO,ZrO,Ta,HfO等を用いることもできる。
【0100】
これらのターゲットを用いた場合、反応プロセスゾーン60におけるプラズマ処理により、Al,SiO,ZrO,Ta,SiO,Nb,HfO,MgF等の光学膜ないし絶縁膜、ITO等の導電膜、Feなどの磁性膜、TiN,CrN,TiCなどの超硬膜を作成できる。TiO,ZrO,SiO,Nb,Taのような絶縁性の金属化合物は、金属(Ti,Zr,Si)に比べスパッタ速度が極端に遅く生産性が悪いので、特に本発明の薄膜形成装置を用いてプラズマ処理すると有効である。
【0101】
(l) 上記の実施形態では、ターゲット29aとターゲット29bは同一の材料で構成されているが、異種の材料で構成してもよい。同一の金属ターゲットを用いた場合は、上述のように、スパッタを行うことによって単一金属の不完全反応物が基板に形成され、異種の金属ターゲットを用いた場合は合金の不完全反応物が基板に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の薄膜形成装置について説明する一部断面をとった上面の説明図である。
【図2】本発明の薄膜形成装置について説明する一部断面をとった側面の説明図である。
【図3】本発明のプラズマ発生手段及びイオン消滅手段を説明する要部説明図である。
【図4】本発明のプラズマ発生手段を説明する要部説明図である。
【図5】イオン消滅手段を説明する要部説明図である。
【図6】アンテナに供給する電力と、TiO薄膜の光学定数との関係を示している。
【図7】プラズマ発生手段の他の実施形態を説明する要部説明図である。
【図8】プラズマ発生手段の他の実施形態を説明する要部説明図である。
【図9】従来のグリッド(イオン消滅手段)の構成を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0103】
1・・・スパッタ装置
11・・・真空槽
11a・・・開口
12,16・・・仕切壁
13・・・基板ホルダ
15・・・真空ポンプ
15a・・・配管
17・・・モータ
17a・・・回転駆動軸
17b・・・回転支持軸
18a,18b・・・絶縁部材
20・・・成膜プロセスゾーン
21a,21b・・・マグネトロンスパッタ電極
23・・・中周波交流電源
24・・・トランス
25,26,75,76・・・マスフローコントローラ
27・・・スパッタガスボンベ
28,78・・・反応性ガスボンベ
29a,29b・・・ターゲット
60・・・反応プロセスゾーン
77・・・不活性ガスボンベ
80,180,280・・・プラズマ発生手段
80A,180A,280A・・・アンテナ収容室
81,181,281・・・ケース体、81a・・・挿通孔
81b・・・シール部材
83,183,283・・・誘電体板
84,184,284・・・固定枠
85a,85b,285・・・アンテナ
86a,86b・・・導線部
87・・・マッチングボックス
87a,87b・・・可変コンデンサ
88,188,288・・・固定具
88a,88b・・・固定板
88c,88d・・・固定ボルト
89・・・高周波電源
90・・・グリッド(イオン消滅手段)
90a・・・縦グリッド
90b・・・横グリッド
91・・・固定板
V1,V2,V3・・・バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する真空槽と、該真空槽の前記開口に対応する位置に設けられ前記真空槽内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、前記真空槽内で基体を保持する基体保持手段と、前記プラズマ発生手段と前記基体保持手段との間に設けられ前記プラズマ発生手段で発生させたイオンを消滅させるイオン消滅手段と、を備え、
前記プラズマ発生手段から前記基板ホルダを臨んだときの、前記イオン消滅手段が前記プラズマ発生手段に対して前記基体保持手段を遮蔽する面積は、前記プラズマ発生手段から前記基板ホルダを臨む残余の面積よりも狭く構成されてなることを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項2】
前記イオン消滅手段は導電体で構成され、アースされた状態で前記真空槽内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記イオン消滅手段は中空部材で形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記イオン消滅手段は絶縁体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記基板保持手段は、前記真空槽と絶縁され、電位的にフローティングされた状態で前記真空槽内に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記プラズマ発生手段は、高周波電源に接続され、同一平面上で渦を成すアンテナを有して構成され、
前記アンテナに対して前記高周波電源により2kW以上4kW以下の電力が供給されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1つに記載の薄膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−45633(P2006−45633A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229892(P2004−229892)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390007216)株式会社シンクロン (52)
【Fターム(参考)】