説明

薄膜抵抗層付き導電性基材、薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法及び薄膜抵抗層付き回路基板

【課題】シート抵抗値のばらつきが小さい薄膜抵抗層付き導電性基材を安価に提供すること、及び抵抗素子を安定に残してプリント抵抗回路基板を製造することができる抵抗層付き導電性基材を提供することである。
【解決手段】 表面に抵抗層が形成されている導電性基材であって、前記抵抗層がアモルファスと結晶質が混在するPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材である。
また、表面に抵抗層が形成されている導電性基材であって、前記抵抗層が結晶質のPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント抵抗回路板等の作成に有用な薄膜抵抗層付き導電性基材、該薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法、並びに該薄膜抵抗層付き導電性基材を接合した薄膜抵抗層付き回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抵抗体を内蔵するプリント回路基板材料(以下抵抗層付き回路基板材料という)は、一般に絶縁基板と、導電性基板等の上に接合された抵抗層及び該抵抗層に接合された銅箔等の良導電性基材からなる抵抗層付き導電性基材との積層体の形態で提供される。
【0003】
抵抗層付き回路基板材料を使用した抵抗回路は、目的とする回路のパターンに従って絶縁領域(絶縁基板上の全ての抵抗層付き導電性基材が除去される)、抵抗領域(良導電性基材が除去される)、並びに導体領域(全て残す)が、サブトラクティブ法(マスクエッチング法)により形成される。
【0004】
従来、抵抗層を形成する材料としてはカーボン系の抵抗材料が一般的であるが、その他に金属薄膜を利用したものとして、リンを含む電気Niめっき(例えば特許文献1,2参照)、Snを含む電気Niめっき(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭48−73762号公報
【特許文献2】特公表S63−500133号公報
【特許文献3】特開昭54−72468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の薄膜抵抗層付き導電性基材の製造は、導電性基材上に薄膜抵抗層を電気めっき法で形成し、薄膜抵抗層の膜厚でシート抵抗値を制御している。しかし、膜厚を薄くすることでシート抵抗の高い膜を得ることは可能であるが、一般に膜厚を薄くすると金属膜の均一性が失われ、一定のシート抵抗が得られないため、その薄さには限界がある。
また、膜厚を厚くすることでシート抵抗値の低い膜を得ることは可能であるが、めっきによる抵抗層の形成時に割れや、めっき応力による導電性基材のカールが発生する等の障害で、その厚さにも限界があった。
【0007】
また、抵抗回路基板材料としての使用時に導電性基材の層をエッチング除去するのに、一部抵抗層が溶解することが避けられず、Ni−Pめっき抵抗層の厚さが薄すぎると導電性基材の層を完全に除去するには、抵抗層も一部欠落する欠点があり、抵抗素子を安定に残してプリント抵抗回路板を製造することは極めて困難であった。
【0008】
特に、前記Ni−P合金による抵抗層においては、抵抗層を形成するめっき浴が、ニッケルイオンと亜リン酸イオンおよびリン酸イオンを必須とし、さらに硫酸イオンと塩素イオンをも含む浴である。このような浴で導電性基材上にめっきされた抵抗層付き導電性基材は、めっき時に色むらが発生し、ミクロ的にもバラツキがあり、更に量産時での幅広の材料(例えば>300mm)においては、巾方向にめっき厚やP含有量にバラツキが生じやすい欠点がり、抵抗回路としての抵抗値のバラツキも大きくなっていた。
【0009】
また、前記Ni−Sn合金による抵抗層の場合では、絶縁領域形成での抵抗層エッチング(Ni−Sn溶解)において、絶縁基板に錫の酸化物又は水酸化物が残存し、絶縁不良を発生させる問題があった。
また、抵抗層の形成を、蒸着法によりNi−CrやNi−Cr−Al−Si等の層を設ける技術が開発されているが、蒸着法はコスト、生産性の問題の他、絶縁材料との密着強度が低いという問題が指摘されている。
【0010】
本発明は、上記した従来の課題、問題点に鑑み、シート抵抗値のばらつきが小さい薄膜抵抗層付き導電性基材を安価に提供することを目的とする。また、抵抗素子を安定に残してプリント抵抗回路板を製造することができる抵抗層付き導電性基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1は、表面に抵抗層が形成されている導電性基材であって、前記抵抗層がアモルファスと結晶質が混在するPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材である。
【0012】
本発明の第2は、表面に抵抗層が形成されている導電性基材であって、前記抵抗層が結晶質のPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材である。
【0013】
本発明の第3は、導電性基材の少なくとも片側表面にPを含有するNiめっき薄膜層を形成し、該薄膜層を熱処理することによりアモルファスと結晶質が混在する薄膜抵抗層とする薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法である。
【0014】
本発明の第4は、導電性基材の少なくとも片側表面にPを含有するNiめっき薄膜層を形成し、該薄膜層を熱処理することにより結晶質の薄膜抵抗層とする薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法である。
【0015】
好ましくは前記抵抗層がPを含有するNiのめっき層からなり、該めっき層は熱処理されることでアモルファスと結晶質が混在する抵抗層である。
また、好ましくは、前記抵抗層がPを含有するNiのめっき層からなり、該めっき層は熱処理されることで結晶質の抵抗層となる。
【0016】
好ましくは、前記熱処理は100℃〜700℃である。
前記Pを含有するNi抵抗層のP含有率は1%〜30%が好適である。
【0017】
本発明の第5は、絶縁基板の少なくとも片面に薄膜抵抗層付き導電性基材が抵抗層を内側にして接合されている薄膜抵抗層付き回路基板において、前記薄膜層付き導電性基材が、表面に抵抗層が形成されている導電性基材からなり、前記抵抗層がアモルファスと結晶質が混在するPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き回路基板である。
【0018】
本発明の第6は、絶縁基板の少なくとも片面に薄膜抵抗層付き導電性基材が抵抗層を内側にして接合されている薄膜抵抗層付き回路基板において、前記薄膜層付き導電性基材が、表面に抵抗層が形成されている導電性基材からなり、前記抵抗層が結晶質のPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、シート抵抗値のばらつきが小さい薄膜抵抗層付き導電性基材を安価に提供することができる。また、抵抗素子を安定に残してプリント抵抗回路板を製造することができる抵抗層付き導電性基材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は導電性基板の表面にPを含有するNiめっきにより抵抗層をアモルファスと結晶質とが混在するように形成し、あるいは結晶質のみからなる抵抗層を形成する。抵抗層の抵抗値は熱処理することにより制御する。抵抗値を熱処理をすることにより制御することで、従来の欠点であった抵抗値のばらつきを改良でき、抵抗値の安定性が向上する。
【0021】
本発明の導電性基材に抵抗層をめっきするめっき浴、めっき条件は、硫酸めっき浴、スルファミン酸めっき浴等の公知のNiめっき浴を採用できる。しかし、コスト面からは硫酸浴が優れ、均一電着性からはスルファミン酸浴が優れる。したがって要求される薄膜抵抗層の性質によりめっき浴を選択する。
めっき浴組成としては、
硫酸Niとして;100〜200g/l、
スルファミン酸Niとして;300〜600g/l
の範囲が好適である。
【0022】
前記めっき浴に添加するリン酸、亜リン酸、次亜リン酸はそのままでもよいが、これらに替えてNa塩等を使用してもよい。
Pの濃度としては、20〜150g/lの範囲が好ましい。しかし、設備の不稼動時等液温低下時での結晶化防止等を考慮すると、20〜100g/lの範囲が望ましい。
【0023】
上記めっき浴はNa等との塩を用いることによりpHの調整を行なうか、または、
NaOH等のアルカリ、あるいはスルファミン酸、硫酸等を添加してpHを調整してもよい。pHは高いほどめっき膜の均一性が劣化するため6以下とすることが望ましく、さらには4以下にすると、pH変動が少なくなるためより好ましい。
また、めっき浴としては、ホウ酸等のpH緩衝剤を含ませることによりpHの安定性が増し、より薄膜組成、電流効率の安定化を図ることができる。
【0024】
また、めっき浴に硫酸や塩酸又はこれらの塩類を添加することで、めっき膜の平滑性と加工性を向上することができ、その濃度としては、0.1〜30g/lが適当である。これを超えると、硬さや内部応力が上昇するため好ましくない。
浴温度は、30〜80℃が電流効率、P含有量の安定性から好ましい。ただし、70℃を超えると、スルファミン酸の加水分解が除除に進むため浴寿命の点からは70℃以下がより望ましい。また、電流効率は、低温ほど低下するため45℃以上がより望ましい。
電流密度は、1〜30A/dm2が良好であり、これを超えると電流効率の低下や平滑性の劣化が起き易い。
【0025】
アノードとしては、NiやNi−P合金、Ni−Cu−P合金等の溶解性アノードを用いることも可能である。しかし、溶解性アノードは長時間のめっき時に溶解消耗されてカソード(導電性基材)との距離の変化が生じてマクロなめっき厚分布が劣化するため、また、電流効率のアノードとカソードとの差から浴中のNi濃度が増加するため液抜きの必要が生じて、コスト高となる等の理由により不溶解性アノードの使用が望ましい。
不溶解性アノードとしては、白金めっきチタン板、酸化イリジウム被覆板等公知の材料が使用できる。
なお、不溶解性アノードを使用すると、めっき浴中のNiの量が減少するため、Niを補給する必要があり、これの補給には炭酸Ni等のNi塩を添加することが望ましい。
また、不溶解性アノードの使用では、次亜リン酸は電解反応で亜リン酸やリン酸に変化するため、析出膜の安定化には次亜リン酸よりも亜リン酸やリン酸を用いる方が好ましい。
【0026】
本発明の導電性基材に抵抗層をめっきする方法は、電気めっきのみによらず、無電解めっき法によって形成することもできる。下記に代表的な無電解めっき浴を示す。
酸性Ni―Pめっき浴
硫酸ニッケル 20〜50g/l
ホスフィン酸ナトリウム 10〜50g/l
酢酸ナトリウム 5〜20g/l
クエン酸ナトリウム 5〜20g/l
pH 3〜6
浴温 70〜90℃
【0027】
アルカリ性Ni―Pめっき浴
硫酸ニッケル 20〜50g/l
ホスフィン酸ナトリウム 10〜50g/l
塩化アンモニウム 20〜50g/l
クエン酸ナトリウム 10〜80g/l、またはピロリン酸ナトリウム 20〜70g/l
pH 3〜6
浴温 40〜80℃
【0028】
形成される抵抗層の薄膜としては、Pが1〜30wt%にて高抵抗が得られ、かつエッチング性もよい。特には、8〜18wt%であると、さらに抵抗、エッチング性が安定して、導電性基材(例えば銅箔)エッチング後の溶解による抵抗バラツキも少ない。厚みは、重量換算で0.1mg/dm〜50mg/dmの範囲、より好ましくは0.1mg/dm〜20mg/dmの範囲がよく、Pの濃度と層の厚みにより、所望の抵抗値を得るように調整することができる。
なお、薄膜抵抗層形成後にて、Zn、クロメート、シラン処理等の表面処理を適宜行っても良い。
【0029】
熱処理条件としては、上記薄膜抵抗層厚み及びP含有率の範囲内において100〜700℃で熱処理することにより、アモルファス及び結晶質が存在するようになる。100℃以下だと複合体となり、700℃以上だと薄膜抵抗層がもろくなり、抵抗形成がしにくくなる。なお、熱処理を、150℃〜400℃で熱処理することにより、より抵抗バラツキが少なくなる。ここでの熱処理とは、プレス工程等のプリント配線板製造時にかかる熱履歴も含む。
熱処理した後の薄膜抵抗層のシート抵抗値としては、10Ω/□〜1,000Ω/□にて抵抗安定性が良い。特に、10Ω/□〜500Ω/□であるとさらに抵抗、エッチング性が安定する。
また、熱処理した後の薄膜抵抗層のビッカーズ硬さ(Hv)については、200〜
1,000の範囲でめっきが安定する。
【0030】
また、めっき前の導電性基材の表面粗度が粗すぎると、その上に形成される抵抗層の表面粗度も粗くなり、抵抗層を均一につけ難く、めっき厚にバラツキが生じやすくなる。また、抵抗回路基板材料として使用した時に、該基板材料をエッチングした後の加熱プレス加工時等において、凹凸のため薄膜抵抗層に応力集中が生じ易くなって割れが発生し易くなるため、めっき前の導電性基材の表面粗度は3.5μm以下が好ましく、特には加工性から2.5μm以下がより好ましい。
しかし、樹脂基材との密着性を考慮すると0.3μm以上とすることが好ましい。
【0031】
本発明による抵抗回路基板材料の製造方法の一実施形態は次のとおりである。
まず、導電性基材として、例えば銅箔の片面全面をマスキング用接着シートあるいはインク等により被覆する。次いで、他面に抵抗層として上記合金めっき層を形成する。この後、マスキング用接着シート等を剥離し、抵抗層側に絶縁基板を熱圧着、接着剤等で接合する。
この抵抗回路基板材料からのプリント抵抗回路板の形成は、例えば、溶解法により、絶縁領域(絶縁基板上の全てが溶解除去される)、抵抗領域(高導電性基材が溶解除去される)、ならびに導体領域(すべて残す)が形成される。回路形成後必要により抵抗領域、導体領域の表面を液状、或いはフィルム状のカバーコートにより保護層を形成する。
【0032】
上記加工において、エッチング液としては、公知のものを使用することができる。例えば、銅箔の場合では、塩化第2鉄、塩化第2銅、過硫酸アンモニウム、クロム酸―硫酸混合液、およびアンモニアキレート系のエッチング液等が使用される。
Ni合金抵抗層のエッチング液としては、硫酸銅―硫酸液や硫酸第2鉄―硫酸液、過硫酸アンモニウム―硫酸液等公知の液が使用できる。
【0033】
本発明の抵抗層付き導電性基材を構成する導電性材料としては、電解又は圧延による銅箔或いは銅合金箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、鉄合金箔等の高導電性を有する箔が好ましく、エッチング除去やリサイクル性から銅箔が最も優れている。
絶縁基板としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびこれらとガラスクロス複合材や、フェノール樹脂―紙およびエポキシ樹脂―紙等の積層板等いずれを用いても良い。また、さらにヒートシンクとしてアルミニウムや鉄板を接合した(抵抗層を設ける面とは反対面に接合される)上記の各種絶縁性の積層板、シート又はフィルム類が用いられる。
また、絶縁基板として、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドイミド、ポリイミドおよびゴム等の樹脂やゴム類を接着剤層として用いたセラミックス板、ガラス板等の無機質の材料も使用することができる。
【0034】
以下、本発明を実施例により、より具体的に説明する。
【実施例】
【0035】
導電性基材として厚さ18μm、マット面が粗化処理された電解銅箔を用い、シャイニー面を全面、マット面を10×10cmを残してマスキングした。対極(アノード)としては、1.5dmの表面積を持つ白金めっきチタン板を用い、前述の硫酸めっき浴、スルファミン酸めっき浴等の公知のNiめっき浴にてマット面に抵抗層をめっきした。熱処理は窒素雰囲気中で行い、材料温度が各実施例の熱処理温度に到達してからの処理時間とした。めっき厚としてNi電着量(mg/dm)、P含有率(%)、および回路形成後1mm□でのシート抵抗値(Ω/□)、シート抵抗値ばらつき(%)、ビッカーズ硬度:Hvを測定した。結果を表1に示す。
【0036】
実施例1
導電性基材に下記Ni厚、P含有率になるようにめっきをし、その後、下記の熱処理条件で熱処理を行った。
Ni厚 :0.1mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0037】
実施例2
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :1.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0038】
実施例3
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :5.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0039】
実施例4
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :1%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0040】
実施例5
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :5%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0041】
実施例6
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :100℃×1hr
【0042】
実施例7
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :150℃×1hr
【0043】
実施例8
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0044】
実施例9
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :700℃×1hr
【0045】
実施例10
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :17%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0046】
実施例11
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :30%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0047】
実施例12
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :15.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0048】
実施例13
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :30.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0049】
実施例14
実施例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :50.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0050】
比較例1
実施例と同様に、導電性基材に下記Ni厚、P含有率になるようにめっきをし、その後、下記の熱処理条件で熱処理を行った。
Ni厚 :0.01mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0051】
比較例2
比較例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :0.1%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0052】
比較例3
比較例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :70.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0053】
比較例4
比較例1と同様に、下記条件になるようにめっきをし、熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :熱処理なし
【0054】
比較例5
導電性基材に下記Ni厚、P含有率になるようにスパッタリングをし、その後、下記の熱処理条件で熱処理を行った。
Ni厚 :10.0mg/dm
P含有率 :11%
熱処理条件 :400℃×1hr
【0055】
結果を下記表1に示す。表1において、
めっき厚については、表面を溶解して、Ni及びPの付着量を出し、これをもとに蛍光X線での検量線を作成して測定している。よって、見た目の表面積に対する値で、Niの場合は、89mg/dmが概略1μmに対応する。
【0056】
【表1】

【0057】
銅箔のエッチングは、実施例、比較例で作成した薄膜抵抗層付き導電性基材の薄膜抵抗層面側にエポキシ樹脂含浸ガラスクロスを重ね合わせ、ラミネーション用プレスにより加熱加圧して接合することにより、抵抗層つきプリント基板を作成し、シップレイ社製ニュートラエッチV−1により52℃で銅色が見えなくなるまでエッチング(約1〜2分)を行い、また、抵抗層のエッチング除去は、硫酸銅250g/l、硫酸5ml/lで90℃で行った。
シート抵抗値の単位は、Ω/□である。シート抵抗値は、三菱化学(株)製「ロレスターGP」を用いて測定した。シート抵抗値のばらつきはn=20で測定した平均値より算出した。
【0058】
ビッカーズ硬度の値は、JIS Z 2244で規定されているビッカーズ硬度の試験方法にて測定した。
【0059】
薄膜抵抗層結晶状態の観察は、実施例、比較例で作製した薄膜抵抗層付き導電性基材のCuを全て溶解除去し、Ni―Pの粉末を採取して粉末X線回折を行うことにより観察した。具体的には、実施例、比較例において、薄膜抵抗層付き導電性基材を200×300mmの大きさになるように切り出し、次の溶液を用いて導電性基材のみを溶解した。
硫酸 60ml/l
過酸化水素水 30〜100ml/l
その後、溶液に残った薄膜抵抗層をろ紙を通して粉末状態にして収集し、粉末X線回折法によって結晶状態を調べた。リガク Geigerflex型式RAD―Bを用いて、X線加速電圧 40kV 20mAの条件にてθ―2θ法によって測定した。X線回折の結果、アモルファスであれば、Ni(111)及びNi(200)にブロードなピークが出現するが、熱処理によって、Ni(111)のピークの半値幅が小さくなると共に、NiP(321)及び、NiP(411)のピークが出現する。
本発明では、NiPのピークの出現をもってアモルファスの一部が結晶化したとみなし、結果を表1に記載した。
NiPのd値
NiP(321) 2.161Å
NiP(411) 1.947Å
【0060】
表1より明らかなように、熱処理を行わない抵抗膜(比較例4)ではシート抵抗値のばらつきが大きいが、熱処理を行った抵抗膜ではばらつきを小さく抑えられる結果となった。
【0061】
また、比較例1においてはNi厚が薄すぎる、比較例2においてはP含有率が低すぎる、比較例3においてはNi厚が厚すぎる為に、抵抗層の結晶状態が複合体となり、シート抵抗値のばらつきが大きくなった。
比較例5については、めっきではなく、スパッタリングによって薄膜抵抗層を形成しているため、抵抗層の結晶状態が複合体となり、シート抵抗値のばらつきが大きくなった。
【0062】
以上の結果から、本発明では、シート抵抗値のばらつきが小さい薄膜抵抗層を作成し、提供することができる。
【0063】
以上は、絶縁基板の片面に薄膜抵抗層付き導電性基材が接合されている構造につき説明したが、本発明に係る薄膜抵抗層付き回路基板は、構造的改良・変更が可能であって、例えば絶縁基板の両面に薄膜抵抗層付き導電性基材がそれぞれ接合された構造、絶縁基板の片面に薄膜抵抗層付き導電性基材が接合され、他面に高導電層(エッチングにより導体および/又は電極を形成するため)を接合した構造のものであってもよい。また、これら回路基板を多層に積層した多層回路基板としてもよいことは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に抵抗層が形成されている導電性基材であって、前記抵抗層がアモルファスと結晶質が混在するPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材。
【請求項2】
表面に抵抗層が形成されている導電性基材であって、前記抵抗層が結晶質のPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材。
【請求項3】
前記抵抗層がPを含有するNiのめっき層からなり、該めっき層は熱処理されることでアモルファスと結晶質が混在する抵抗層となる請求項1に記載の薄膜抵抗層付き導電性基材。
【請求項4】
前記抵抗層がPを含有するNiのめっき層からなり、該めっき層は熱処理されることで結晶質の抵抗層となる請求項1又は2に記載の薄膜抵抗層付き導電性基材。
【請求項5】
前記熱処理は100℃〜700℃である請求項3又は4に記載の薄膜抵抗層付き導電性基材。
【請求項6】
前記Pを含有するNi抵抗層のP含有率が1%〜30%である請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜抵抗層付き導電性基材。
【請求項7】
導電性基材の少なくとも片側表面にPを含有するNiめっき薄膜層を形成し、該薄膜層を熱処理することによりアモルファスと結晶質が混在する薄膜抵抗層とする薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法。
【請求項8】
導電性基材の少なくとも片側表面にPを含有するNiめっき薄膜層を形成し、該薄膜層を熱処理することにより結晶質の薄膜抵抗層とする薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理は100℃〜700℃である請求項7又は8に記載の薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法。
【請求項10】
前記Pを含有するNi抵抗層のP含有率が1%〜30%である請求項7乃至9のいずれかに記載の薄膜抵抗層付き導電性基材の製造方法。
【請求項11】
絶縁基板の少なくとも片面に薄膜抵抗層付き導電性基材が抵抗層を内側にして接合されている薄膜抵抗層付き回路基板において、前記薄膜層付き導電性基材が、表面に抵抗層が形成されている導電性基材からなり、前記抵抗層がアモルファスと結晶質が混在するPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き回路基板。
【請求項12】
絶縁基板の少なくとも片面に薄膜抵抗層付き導電性基材が抵抗層を内側にして接合されている薄膜抵抗層付き回路基板において、前記薄膜層付き導電性基材が、表面に抵抗層が形成されている導電性基材からなり、前記抵抗層が結晶質のPを含有するNiからなる薄膜抵抗層である薄膜抵抗層付き導電性基材。

【公開番号】特開2007−266431(P2007−266431A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91356(P2006−91356)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(591056710)古河サーキットフォイル株式会社 (43)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】