説明

薄膜積層体とその製造方法及び酸化物超電導導体とその製造方法

【課題】本発明は、良好な結晶配向性を維持しつつも中間層を薄膜化し、製造も容易とすることができる薄膜積層体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、金属基材11上に、イオンビームアシスト法(IBAD法)により形成された面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)において11〜13°の範囲に結晶配向可能な材料からなる中間層12と、該中間層上に成膜法により直に形成された蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造とされて100nm以上の膜厚で前記中間層の結晶配向性よりも優れたΔφ=8゜以下、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下となる結晶配向性とされたキャップ層13とが積層されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜積層体とその製造方法及び酸化物超電導導体とその製造方法に係り、より詳細には、積層数を少なくして各層の膜厚を薄くしても良好な結晶配向性を維持しつつ、製造効率化を図ることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年になって発見されたRE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはYを含む希土類元素)は、液体窒素温度以上で超電導性を示すことから実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体として用いることが強く要望されている。
そして、この種の酸化物超電導体を得るために、金属基板上に熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が基板と超電導体との中間的な値を示すYSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SrTiO、MgO等の材料から成る中間層(バッファー層)を形成し、この中間層の上に酸化物超電導層を形成することが行われている。
しかし、一般的な成膜法により基板上に得られた中間層は、その結晶を構成するa軸、b軸、c軸を個別に見ると、基板面に対して直角にc軸は配向するものの、基板面内でa軸(又はb軸)がほぼ同一の方向には面内配向しないため、この上に形成される酸化物超電導層もa軸(又はb軸)がほぼ同一の方向に面内配向せず、結果的に臨界電流密度Jcが向上しないという問題があった。
【0003】
従来から、結晶配向制御を行うための方法として、金属テープを圧延熱処理することにより配向させるRabits法(Rolling Assisted Biaxially textured substrate)とイオンビームアシスト法(IBAD法:Ion Beam Assisted Deposition)が知られている。
イオンビームアシスト法は、結晶配向の問題を解決する有力な技術であり、スパッタリング法によりターゲットから叩き出した構成粒子を基材上に堆積させる際に、イオン銃から発生されたアルゴンイオンと酸素イオン等を同時に斜め方向(例えば基板法線に対し45°や55°方向)から照射しながら粒子堆積させるもので、この方法によれば、基材上の成膜面に対して、高いc軸配向性及びa軸面内配向性を有する中間層が得られる。
図8及び図9は、前記IBAD法により、中間層をなす多結晶薄膜を基材上に形成した一例を示すものであり、図8において100は板状の基材、110は基材100の上面に形成された中間層を示している。
前記中間層110は微細な結晶粒120の集合体であり、各結晶粒120の結晶軸のc軸は基材100の上面(成膜面)に対して直角に向けられ、各結晶粒120の結晶軸のa軸どうしおよびb軸どうしは、互いに同一方向に向けられて面内配向されている。そして、各結晶粒120のa軸(あるいはb軸)どうしは、それらのなす角度(図7に示す粒界傾角K)を30度以内にして配向制御されている。
【0004】
IBAD法は、線材の機械的特性が優れるとともに安定した高特性が得られ易い等、実用性の高い製法であると言われているが、従来、IBAD法によって成膜された中間層(以下、「IBAD中間層」ともいう。)は、1000nm程度の膜厚がないと良好な配向性が得られないとされていた。一方、無配向の金属テープ上でイオンビーム衝撃によって結晶配向制御を行う関係で、IBAD法は成膜速度が3nm/分程度と遅いため、成膜に時間が掛かり、生産性の点で問題があった。
これらの問題を解決する方法として、YSZ、GdZr(以下、GZOと略記する)等の蛍石系結晶構造の酸化物を用いる場合と、MgO等の岩塩系結晶構造の酸化物を用いる場合があり、精力的に開発研究が進められている。更に、これらの中でも岩塩系結晶構造の酸化物は、YSZやGZO等の蛍石系結晶構造の酸化物とは異なり、更に第3の層を介在させて積層した薄膜構造であっても十分な配向性を示すとされ、種々の研究開発がなされている。
【0005】
前記GZO等の蛍石系結晶構造の酸化物を用いる場合、IBAD−GZO層/CeO層/超電導層の積層構造が研究され、MgO等の岩塩系結晶構造の酸化物を用いる場合、IBAD−MgO層/エピタキシャル成長MgO層/LaMnO層/超電導層の積層構造、IBAD−MgO層/LaMnO/超電導層の積層構造、IBAD−MgO層/LaMnO層/CeO層/超電導層の積層構造が研究されている。
例えば、特許文献1には、金属基板上に2000nm以下の厚さの中間層を形成後、50nm以上の厚さのCeOのキャップ層を形成することが開示され、特許文献1の実施例にはハステロイ金属基板上にGZO膜とCeO層を積層した構造が開示されている。
特許文献2には、IBAD−MgO層/エピタキシャル成長MgO層上に、HfO層あるいは、CeO、Y、LaO、ScO、CaO、MgOのいずれかを含むHfO層を積層した構造が開示されている。
【0006】
特許文献3には、IBAD−MgO層/エピタキシャル成長MgO層の上に、CeO、YSZ、SrTiO、SrRuO、LaMnO、Y、EuCuO、NdCuO、YCuO、RECuO等が並列的に表記されている。
特許文献4には、IBAD−MgO層/YSZ層/CeO層の積層構造が開示され、特許文献5には、IBAD−MgO層/SrRuO層/CeO層の積層構造が開示され、特許文献6、7には、IBAD−MgO層/YSZ層/CeO層の積層構造が開示され、特許文献8には、IBAD−MgO層/Ln層MnO層/CeO層の積層構造が開示されている。
また、非特許文献1には、単結晶MgOの上に、CeO層を生成する場合、MgOとCeO層との間にBaSnO等の膜を介在させた方が、結晶性が良好となると記載され、非特許文献2には、IBAD−MgO層/LaMnO層/CeO層/超電導層の積層構造が開示されている。
【特許文献1】特許第3854551号公報
【特許文献2】米国特許第7258927号明細書
【特許文献3】米国特許第6921741号明細書
【特許文献4】米国特許第6843898号明細書
【特許文献5】米国特許第6800591号明細書
【特許文献6】米国特許第6716545号明細書
【特許文献7】米国特許第6312819号明細書
【非特許文献1】M.Mukaida et al. “Hetero-Epitaxial Growth of CeO2 Film on MgO Substrates ”JJAP vol.44 No.10 (2005) ppL318-321
【非特許文献2】2008年度春季低温工学学会予稿集 pp.109-112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、蛍石系結晶構造の酸化物を用いる前者の技術においては積層の構造が単純で成膜条件が広く、長尺化が先行して進んだが、中間層膜厚を厚くする必要があるために、生産速度が遅くなるほか、膜の内部応力が大きくなって基材が反り返るという問題があった。
また、岩塩系結晶構造の酸化物を用いる後者の方法は、前述の問題を抜本的に解決するものとして期待されているが、これらの方法は、前述の特許文献にも開示されている通り、数10nm以下の非常に薄い膜を多数積層する方法であるため、長尺にわたって同一の狭い成膜条件を維持するために多くのノウハウを要し、生産効率が悪く、生産コストが上昇し易いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、良好な結晶配向性を維持しつつも中間層を薄膜化し、製造も容易とすることができる薄膜積層体を提供することを1つの目的とする。
また、本発明は、良好な結晶配向性を維持しつつも中間層を薄膜化し、製造も容易として生産性に優れ、結晶配向性が良好で、臨界電流密度が高く超電導特性の良好な酸化物超電導導体を提供することを他の1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため本発明は、金属基材上に、イオンビームアシスト法(IBAD法)により形成された面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)において15°以下に結晶配向可能な材料からなる中間層と、該中間層上に成膜法により直に形成された蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造とされて100nm以上の膜厚で前記中間層の結晶配向性よりも優れたΔφ=8゜以下となり、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下となる結晶配向性とされたキャップ層とが積層されてなることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記蛍石系およびそれに準じる結晶構造とされたキャップ層が、CeOあるいはPrOの何れからなることを特徴とするものでも良い。
本発明において、前記中間層が、膜厚50nm以下であり、MgO、NiO、CoO、FeO、MnO、CdO、CaO、SrO、BaO、CrN、TiN、HfN、ZrN、YbN、DyN、CeN、LaN、SrN、SnO、TiOのいずれかからなるものでも良い。
本発明において、前記キャップ層の膜厚が100〜600nmの範囲とされてなるものでも良い。
本発明の酸化物超電導導体は、先のいずれかに記載の薄膜積層体のキャップ層の上に、酸化物超電導層が積層されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の薄膜積層体の製造方法は、金属基材上に中間層とキャップ層が積層されてなり、該キャップ層上に酸化物超電導層が積層されて酸化物超電導導体とされる薄膜積層体の製造方法において、金属基材上に、イオンビームアシスト法(IBAD法)により面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)において15°以下に結晶配向するように中間層を形成し、この後に、該中間層上に成膜法により蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造を有し、100nm以上の膜厚で前記中間層の結晶配向性よりも優れたΔφ=8゜以下の結晶配向性となり、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下となる結晶配向性となるように自己配向するキャップ層を形成することを特徴とする。
本発明の薄膜積層体の製造方法は、前記蛍石系およびそれに準じる結晶構造のキャップ層として、CeOあるいはPrOの何れかを用いることを特徴とする。
【0012】
本発明の薄膜積層体の製造方法は、前記中間層が、膜厚50nm以下であり、MgO、NiO、CoO、FeO、MnO、CdO、CaO、SrO、BaO、CrN、TiN、HfN、ZrN、YbN、DyN、CeN、LaN、SrN、SnO、TiOのいずれかを用いることを特徴とする。
本発明の薄膜積層体の製造方法は、前記キャップ層の膜厚を100〜600nmの範囲とすることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体の製造方法は、先のいずれかに記載の製造方法により薄膜積層体を製造した後、薄膜積層体のキャップ層の上に、酸化物超電導層を積層することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
金属基材上に、IBAD法による面内方向結晶軸分散半値幅Δφが15°以下の中間層と、該中間層上に成膜法により直に形成された100nm以上の膜厚でΔφ=8゜以下となり、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下となる蛍石系結晶構造のキャップ層が積層されてなるので、従来提供されていたIBAD法による中間層と、エピタキシャル成長MgO層、LaMnO層などを介して更にキャップ層を設けた3層以上の構造の薄膜積層体に比べ、中間層とキャップ層の2層構造でキャップ層のΔφ=8゜以下となる薄膜積層体を提供できる。
更に、IBAD−GZO層/CeO層の層構造の従来構造に比較すると、中間層と、100nm以上でΔφ=8゜以下のキャップ層との組み合わせの2層構造によって、従来構造より薄い積層構造であっても優れた結晶配向性の薄膜積層体を実現できる。
【0014】
また、100nm以上の膜厚でΔφ=8゜以下となり、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下となる蛍石系結晶構造のキャップ層の材料として、CeOを選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第一の実施形態>
図1は、本発明に係る薄膜積層体10の一実施形態を模式的に示す図である。
この実施形態の薄膜積層体10は、テープ状の金属基材11上に順に、IBAD法により結晶配向制御した中間層12と、その上に直に成膜法により形成されたキャップ層13を積層して構成されている。そして、この構造の薄膜積層体10のキャップ層13上に図2に示す如く酸化物超電導層15を積層することで酸化物超電導導体16が構成されている。
【0016】
前記薄膜積層体10において、金属基材11は、本実施形態ではテープ状のものを用いているが、これに限定されず、例えば板材、線材、条体等の種々の形状のものを用いることができ、例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ等のニッケル合金等の各種金属材料、もしくは各種金属材料上に各種セラミックスを配したもの、等が挙げられる。
【0017】
本実施形態において適用するIBAD法により配向制御ができる中間層12を構成する材料は、MgO、NiO、CoO、FeO、MnO、CdO、CaO、SrO、BaO、CrN、TiN、HfN、ZrN、YbN、DyN、CeN、LaN、SrN、SnO、TiOのいずれかであることが好ましく、これらの中でもMgOが好ましい。
本実施形態において、蛍石系およびそれに準じる結晶構造とされたキャップ層13を構成する材料は、CeOあるいはPrOであることが好ましく、これらの中でもCeOが好ましい。
【0018】
また、IBAD法により形成される岩塩系結晶構造を有するMgOなどからなる中間層12においては、面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)において15°以下、例えば4°〜15°の範囲、一例を示すと11〜13°の範囲に結晶配向が可能なものから構成されている。ここで中間層12の岩塩系結晶構造を構成するa軸、b軸、c軸を個別に見ると、基材11の成膜面に対して直角にc軸は配向し、成膜面内でa軸(又はb軸)がほぼ同一の方向(面内方向結晶軸分散半値幅Δφが15°以下、例えば、11〜13°の範囲)に面内配向されている。
このIBAD法による中間層12の膜厚は、100nm未満、好ましくは、50nm以下、より好ましくは30nm以下である。これは、MgOの中間層12の場合、膜厚20〜30nmを超えると配向性が低下し始めるためである。
そして、中間層12の上に直に形成された蛍石系およびそれに準じる結晶構造とされたキャップ層13は、100nm以上の膜厚で前記中間層の結晶配向性よりも優れたΔφ=8゜以下となり、300nm以上の膜厚〜1300nmの膜厚でΔφ=5゜以下、より好ましくは4°以下となる結晶配向性が得られたものである。
【0019】
このようなΔφ=8゜以下、あるいは、Δφ=5゜以下の結晶配向性のキャップ層13の上に酸化物超電導層(例えば、YBCO)15をレーザ蒸着等の成膜法により形成する場合、酸化物超電導層15において良好な配向性、高特性を得ることができ、安定した歩留りを得ることができる。
前記キャップ層13をCeO層で構成する場合、CeO層は、全てがCeOからなる必要はなく、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで一部置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいてもよい。このCeO層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが望ましい。PLD法によるCeO層の成膜条件としては、基材温度約500〜900℃、約0.6〜40Paの酸素ガス雰囲気中で、レーザーエネルギー密度が1〜5J/cmで行うことができる。
【0020】
前記CeO層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性(例えば、Δφ=8゜以下)を得るには100nm以上が好ましく、300nm以上であれば更に好ましいが、逆に、膜厚を必要以上に厚くし過ぎると成膜時間が増大するので、600nm以下の膜厚とすることが好ましい。
【0021】
酸化物超電導層15の材料としては、RE−123系酸化物超電導体(REBaCu7−X:REはY、La、Nd、Sm、Eu、Gd等の希土類元素)を用いることができる。RE−123系酸化物超電導体として好ましいのは、Y123(YBaCu7−X:以下では「YBCO」という。)又はSm123(SmBaCu7−X、以下では「SmBCO」という。)である。
【0022】
酸化物超電導層15は、通常の成膜法によって成膜することができるが、生産性の点から、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)、PLD法又はCVD法を用いることが好ましい。
前記MOD法は、金属有機酸塩を塗布後熱分解させるもので、金属成分の有機化合物を均一に溶解した溶液を基材上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基材上に薄膜を形成する方法であり、真空プロセスを必要とせず、低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導導体の製造に適している。
【0023】
ここで前述のように、良好な配向性を有するキャップ層13上に酸化物超電導層15を形成すると、このキャップ層13上に積層される酸化物超電導層15もキャップ層13の結晶配向性に整合し、しかも自己配向整合現象により、より優れた結晶配向度を呈するように結晶化する。よって前記キャップ層13上に形成された酸化物超電導層15は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層15を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、金属基材11の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、金属基材11の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導層15は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、金属基材2の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の構造では、薄膜積層体10において、結晶配向度を示すΔφを15°以下、例えば、11〜13゜としたIBAD法の中間層12上に成膜法により100nm以上の膜厚でΔφが8゜以下を示すキャップ層13を積層することによって、配向性の良好なキャップ層13をより薄く形成することができる。
更に、従来では1000nm以上の厚さが必要であった蛍石構造を有するGZOからなる中間層に対し、Δφを11〜13゜とした中間層12と蛍石系結晶構造を有して100nm以上の膜厚でΔφ8゜以下を示すキャップ層13を積層することによって、結晶配向性の良好な薄膜積層体10をより薄く形成できるので、中間層12とキャップ層13を含めた膜の内部応力を低減することができ、金属基材11の反り返りを防止することができる。
【0025】
以上、本実施形態の薄膜積層体及び酸化物超電導導体について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、薄膜積層体10を酸化物超電導導体16に適用した場合について説明したが、これに限定されず、本発明の薄膜積層体10を、光学薄膜、光磁気ディスクの磁性薄膜、集積回路用微細配線用薄膜、高周波導波路や高周波フィルタ及び空洞共振器等に用いられる誘電体薄膜のいずれにも適用することができる。
【0026】
即ち、結晶配向性の良好な薄膜積層体10上に、これらの薄膜をスパッタリング、レーザ蒸着、真空蒸着、CVD(化学蒸着)等の成膜法で形成するならば、薄膜積層体10と良好な整合性でこれらの薄膜が堆積または成長するので、配向性が良好になる。
これらの薄膜は、配向性の良好な高品質の薄膜が得られるので、光学薄膜においては光学特性に優れ、磁性薄膜においては磁気特性に優れ、配線用薄膜においてはマイグレーションの生じない、誘電体薄膜においては誘電特性の良好な薄膜が得られる。
【実施例】
【0027】
まず、本実施例で用いたIBAD法を実施するための成膜装置について説明する。
図3は、IBAD法を実施して薄膜積層体を製造するための装置の一例を示すものであり、この例の装置は、スパッタ装置にイオンビームアシスト用のイオンガンを設けた構成となっている。
この成膜装置は、基材Aを水平に保持する基材ホルダ51と、この基材ホルダ51の斜め上方に所定間隔をもって対向配置された板状のターゲット52と、前記基材ホルダ51の斜め上方に所定間隔をもって対向され、かつ、ターゲット52と離間して配置されたイオンガン53と、前記ターゲット52の下方においてターゲット52の下面に向けて配置されたスパッタビーム照射装置54を主体として構成されている。また、図中符号55は、ターゲット52を保持したターゲットホルダを示している。
また、前記装置は図示略の真空容器に収納されていて、基材Aの周囲を真空雰囲気に保持できるようになっている。更に前記真空容器には、ガスボンベ等の雰囲気ガス供給源が接続されていて、真空容器の内部を真空等の低圧状態で、かつ、アルゴンガスあるいはその他の不活性ガス雰囲気または酸素を含む不活性ガス雰囲気にすることができるようになっている。
【0028】
なお、基材Aとして長尺の金属テープを用いる場合は、真空容器の内部に金属テープの送出装置と巻取装置を設け、送出装置から連続的に基材ホルダ51に基材Aを送り出し、続いて巻取装置で巻き取ることでテープ状の基材上に多結晶薄膜を連続成膜することができるように構成することが好ましい。
前記基材ホルダ51は内部に加熱ヒータを備え、基材ホルダ51の上に位置された基材Aを所用の温度に加熱できるようになっている。また、基材ホルダ51の底部には、基材ホルダ51の水平角度を調整できる角度調整機構が付設されている。なお、角度調整機構をイオンガン53に取り付けてイオンガン53の傾斜角度を調整し、イオンの照射角度を調整するようにしても良い。
【0029】
前記ターゲット52は、目的とする薄膜積層体10を形成するためのものであり、目的の組成の薄膜積層体10の中間層12あるいはキャップ層13と同一組成あるいは近似組成のもの等を用いる。ターゲット52として具体的に、MgOの中間層12を形成する場合はMgOあるいはMg等を用いるがこれに限るものではなく、形成しようとする中間層12に見合うターゲットを用いれば良い。また、キャップ層13としてCeO層を成膜する場合はCeOあるいはCeを用い、必要に応じて成膜雰囲気中に酸素ガスを供給して成膜すればよい。
前記イオンガン53は、容器の内部に、イオン化させるガスを導入し、正面に引き出し電極を備えて構成されている。そして、ガスの原子または分子の一部をイオン化し、そのイオン化した粒子を引き出し電極で発生させた電界で制御してイオンビームとして照射する装置である。ガスをイオン化するには高周波励起方式、フィラメント式等の種々のものがある。フィラメント式はタングステン製のフィラメントに通電加熱して熱電子を発生させ、高真空中でガス分子と衝突させてイオン化する方法である。また、高周波励起方式は、高真空中のガス分子を高周波電界で分極させてイオン化するものである。
本実施例において例えば、図4に示す構成の内部構造のイオンガン53を用いる。このイオンガン53は、筒状の容器56の内部に、引出電極57とフィラメント58とArガス等の導入管59とを備えて構成され、容器56の先端からイオンをビーム状に平行に照射できるものである。
【0030】
前記イオンガン53は、図3に示すようにその中心軸を基材Aの上面(成膜面)に対して傾斜角度θでもって傾斜させて対向されている。この傾斜角度θは30〜60度の範囲が好ましいが、MgOの場合に特に45度前後が好ましい。従ってイオンガン53は基材Aの上面に対して傾斜角θでもってイオンを照射できるように配置されている。なお、イオンガン53によって基材Aに照射するイオンは、He+、Ne+、Ar+、Xe+、Kr+ 等の希ガスのイオン、あるいは、それらと酸素イオンの混合イオン等で良い。
前記スパッタビーム照射装置54は、イオンガン53と同等の構成をなし、ターゲット52に対してイオンを照射してターゲット52の構成粒子を叩き出すことができるものである。なお、本発明装置ではターゲット53の構成粒子を叩き出すことができることが重要であるので、ターゲット52に高周波コイル等で電圧を印加してターゲット52の構成粒子を叩き出し可能なように構成し、スパッタビーム照射装置54を省略しても良い。
【0031】
次に前記構成の装置を用いて基材A上に多結晶薄膜を形成する場合について説明する。
基材A上に多結晶薄膜を形成するには、所定のターゲットを用いるとともに、角度調整機構を調節してイオンガン53から照射されるイオンを基材ホルダ51の上面に45度前後の角度で照射できるようにする。次に基材を収納している容器の内部を真空引きして減圧雰囲気とする。そして、イオンガン53とスパッタビーム照射装置54を作動させる。
【0032】
スパッタビーム照射装置54からターゲット52にイオンを照射すると、ターゲット52の構成粒子が叩き出されて基材A上に飛来する。そして、基材A上に、ターゲット52から叩き出した構成粒子を堆積させると同時に、イオンガン53からArイオンと酸素イオンの混合イオンを照射する。このイオン照射する際の照射角度θは、たとえばMgOを形成する際には、約45°が好適である。
【0033】
「製造例1」
金属基材として、表面を研磨した10mm幅のハステロイテープを使用した。この金属基材上に、中間層としてIBAD法によってMgO膜(約5〜10nm)を形成した。
このときMgO膜は、200℃以下の基材温度で、Ar等の希ガスイオンビームによるイオンビームアシストを行いながら作製した。
更に、MgO膜上に、PLD法(パルスレーザ蒸着法)によってCeO膜を(膜厚600nm)積層形成した。このようにして得られたMgO膜およびCeO膜について、面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)を測定した。その結果を以下の表1に示す。
次に、比較のために、前述と同等の条件で金属基材上に形成したMgO膜上に、LaMnO膜(膜厚100nm)を形成した薄膜積層体試料を作製し、更に、この薄膜積層体試料の上にCeO膜を(膜厚600nm)積層形成した薄膜積層体試料を作製し、各試料におけるMgO膜の面内方向結晶軸分散半値幅Δφと、LaMnO膜の面内方向結晶軸分散半値幅Δφと、CeO膜の面内方向結晶軸分散半値幅Δφを測定した。それらの結果を以下の表1に纏めて示す。
【0034】
「表1」
試料 IBAD−MgO(Δφ) LaMnO膜(Δφ) CeO膜(Δφ)
1 11.3〜12.7 12.6〜12.7 −
2 11.3〜12.7 12.6〜12.7 4.9
3 11.3〜12.7 − 4.6
【0035】
表1に示す如く、試料1の構造では、LaMnO膜を成膜した時点では、IBAD−MgOの結晶配向性に則したほぼ同等範囲の結晶配向性しか得られていない。従ってこの積層構造では、IBAD−MgO自体の結晶配向性を改善しない限り、LaMnO膜の配向性を良好にすることが不可能であることが判る。
試料2の構造では、LaMnO膜上のCeO膜は自己配向効果が発現され、面内配向性が下地のLaMnO膜よりも良好になっていることが明らかである。
これらに対し、試料3の構造では、LaMnO膜を成膜しなくとも、LaMnO膜上にCeO膜を成膜した場合と同等、あるいは、それ以上に優れた面内配向した結晶配向性が発現されており、自己配向効果が発現されていることが判る。この試料3の構造では、LaMnO膜の成膜工程が無くなる分、製造コストの面で多大なメリットがある。
なお、臨界電流特性などにおいて高特性の酸化物超電導層を得るためには、キャップ層の結晶配向性において、基板に垂直に超電導層のc軸が配向し、しかも、面内結晶軸の半値幅を10度以内とする必要がある。
【0036】
「製造例2」
比較のために、先の例と同等のハステロイテープ上にIBAD法によりGdZr膜(GZO膜)を種々の膜厚で蒸着した基板を複数用意した。この上にPLD法により、CeO層を厚さ500nm蒸着した。PLD法によるCeO層の蒸着は、温度約650℃、約4PaのOガス雰囲気中で、レーザー密度3J/cm、レーザー周波数17Hzの条件で行った。まず、CeOの直径3cmのペレットを真空チャンバーに取り付け、これを真空排気し、その後、上記Oガスを流し、圧力を調整した。KrFエキシマレーザーをペレット上に照射し、それにより、ペレットに対向して設置されたIBAD基板上にCeO層を蒸着した。YBCO超電導体膜は、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)により厚さ250nmで成膜した。
【0037】
図5は、9種類のCeO膜の厚さ20nm、50nm、100nm、300nm、600nm、1000nm、300nm、5000nm、7000nmに対しての各CeO膜のΔΦの値を示したものである。ΔΦの値は小さいほど結晶配向性が良いことを示すが、図5に示された結果によると、7000nmでは(すなわち5000nmを超えると)、結晶配向性がやや悪くなる。厚さ100〜5000nmの間ではΔΦは10度より小さくなる。この試料の上に超電導層のYBCOを実施例1と同様にTFA−MOD法で成膜し、臨界電流を測定したところ、77K、0Tで、CeO膜の厚さ50nm〜7000nmで1MA/cm以上のJcが得られ、特に100nm〜5000nmの間では2MA/cm以上のJcが得られ、最高で3MA/cmの高い臨界電流密度が得られた。
図5に示す結果の如く、GZO膜の上にCeO膜を積層して中間層とキャップ層とした場合、CeO膜の膜厚に応じて配向性が良好であることが分かる。
【0038】
「製造例3」
前記GZO膜を形成した複数の基材に代えて、先の製造例1で用いたMgO膜を用いた複数の基材を用い、この基材上にPLD法によりCeO膜を膜厚、300nm、600nm、900nm、1300nmでそれぞれ形成した複数の薄膜積層体を作製し、MgO膜の面内配向性Δφを測定した結果を図6に示す。また、図6には先の図5に示したGZO膜上のCeO膜の面内配向性と対比して記載した。
更に、MgO膜上のCeO膜の面内配向性について、膜厚の大小に応じた測定した結果を図7に示す。なお、極めて薄い膜厚では、X線の測定において、CeO膜の表面情報を正確に得ることは難しいため、CeO膜上にGdBCO膜(膜厚1000nm)成膜し、その面内配向状態を測定することにより、CeO膜の表面の配向状態を把握することができる。
【0039】
図6と図7に示す結果から、CeO膜/MgOのデータから200nm程度の膜厚でCeO膜の配向が完了していないようにも見受けられるが、CeO膜上に形成したGdBCO膜の配向状態を見ると、膜厚100nm程度で既にCeO膜の結晶配向は終了していることが分かる。
これにより、先の製造例2のデータに比べ、即ち、GZO膜の上にCeO膜を積層して中間層とキャップ層とした場合に比べ、MgO膜の上にCeO膜を積層して中間層とキャップ層とした場合の方が、より薄い膜厚で結晶配向が終了していることが明らかであり、MgO膜の上に直にCeO膜を積層してキャップ層を構成する構造の優位性が明らかである。
【0040】
上述した通り、製造例1、3で作製した多結晶薄膜は、従来より優れたレベルのΔψを従来よりも薄い中間層とキャップ層の積層構造で実現できることが確認された。即ち、本発明の構成によれば、薄膜積層体をなす中間層とキャップ層の積層体を薄型化することができるので、膜の内部応力が低減され、基材の反り返りという従来の問題を解決することができる。更に、中間層とキャップ層の膜厚が薄くなったことで製造速度を飛躍的に高めることができ、また製造コストの低減を図ることもできる。
【0041】
また、先の膜厚400nmのCeO膜上にGdBCO超電導層をPLD法によって1000nmの厚さに形成した。このGdBCO超電導層には、成膜後500℃5時間の酸素雰囲気中熱処理を施している。その特性を評価した結果、液体窒素温度にて、臨界電流密度Jc=3.6MA/cm、臨界電流Ic=360Aの高特性が得られていることが確認された。
【0042】
次に、Δφの異なる種々のMgO基板を用意し、それら基板上にCeO膜(膜厚300nm)をPLD法により成膜した場合、MgO基板の配向度Δφに応じて得られるΔφの値を以下の表2に示す。
「表2」
Δφ(MgO基板) Δφ(CeO膜)
試料A 〜20° 〜7°
試料B 〜15° 〜5°
試料C 〜10° 〜4°
試料D 〜 8° 〜3°
試料E 〜 6° 〜2°
試料F 〜 4° 〜1°
表2に示す結果の如く、MgO基板上にCeO膜を成膜する場合の目安として、15°以下とすることを採用することができる。本願発明では優れた酸化物超電導導体を得ることを1つの目的とするので、その場合に下地としてのCeO膜のΔφを5°程度以下とする場合に優れた酸化物超電導層を成膜できるので、その場合はMgO膜のΔφは15°以下とするのが好ましいと考えられる。
【0043】
なお、本発明で用いるIBAD法MgO膜+CeO膜の積層構造と、従来公知のIBAD法GZO膜+CeO膜の積層構造との対比について考察すると、GZOとCeOに関してはGZO(222)面とCeO(111)面を共有した結晶成長をしており、格子定数のミスマッチが約3.1%である。一方、上述の試料の分析の結果、MgOとCeOに関してはMgO(200)面とCeO(200)面を共有した結晶成長をしており、格子定数は28.5%と非常に離れている。このことが、GZO上のCeOと比較してMgO上のCeOが異なるメカニズムにより結晶成長し、薄膜として高配向を示している原因と思われる。このように、IBAD法による薄いMgO膜の上に直にCeO膜を形成した場合にCeOが自己配合成長して10°以下のΔψを示すことは、今回の試験により始めて見出された結果であって、薄いMgO膜に薄いCeO膜を積層し、その上に酸化物超電導層を積層することにより、優れた酸化物超電導導体を得られることは、長尺の導体を安価に製造する課題がある超電導導体の技術分野において、極めて優れた効果とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る薄膜積層体の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る酸化物超電導導体の一例を模式的に示す図である。
【図3】IBAD法による成膜装置を模式的に示す図である。
【図4】図3に示す成膜装置が備えるイオンガンを模式的に示す図である。
【図5】製造例において作製したIBAD法GZO膜上のCeO膜における膜厚に応じた面内配向性を示す図である。
【図6】製造例において作製したIBAD法MgO膜上のCeO膜における膜厚に応じた面内配向性とIBAD法GZO膜上のCeO膜における膜厚に応じた面内配向性を比較して示す図である。
【図7】製造例において作製したIBAD法MgO膜上のCeO膜における膜厚に応じた面内配向性と、該CeO膜上に更にGdBCO膜を積層した場合のGdBCO膜における膜厚に応じた面内配向性とを比較して示す図である。
【図8】基材上にIBAD法により中間層を成膜した場合の中間層の結晶配向性について示す説明図である。
【図9】図8に示す中間層において面内配向性の指標の粒界傾角を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10…薄膜積層体、11…金属基材、12…中間層、13…キャップ層、15…酸化物超電導層、16…酸化物超電導導体、A…基材、52…ターゲット、53…イオンガン、54…スパッタビーム照射装置、55…ターゲットホルダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材上に、イオンビームアシスト法(IBAD法)により形成された面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)において15°以下に結晶配向可能な材料からなる中間層と、該中間層上に成膜法により直に形成された蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造とされて100nm以上の膜厚で前記中間層の結晶配向性よりも優れたΔφ=8゜以下、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下となる結晶配向性とされたキャップ層とが積層されてなることを特徴とする薄膜積層体。
【請求項2】
前記蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造とされたキャップ層が、CeOあるいはPrOの何れからなることを特徴とする請求項1に記載の薄膜積層体。
【請求項3】
前記中間層が、膜厚50nm以下であり、MgO、NiO、CoO、FeO、MnO、CdO、CaO、SrO、BaO、CrN、TiN、HfN、ZrN、YbN、DyN、CeN、LaN、SrN、SnO、TiOのいずれかからなることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜積層体。
【請求項4】
前記キャップ層の膜厚が100〜600nmの範囲とされてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜積層体のキャップ層の上に、酸化物超電導層が積層されてなることを特徴とする酸化物超電導導体。
【請求項6】
金属基材上に中間層とキャップ層が積層されてなり、該キャップ層上に酸化物超電導層が積層されて酸化物超電導導体とされる薄膜積層体の製造方法において、
金属基材上に、イオンビームアシスト法(IBAD法)により面内方向の結晶軸分散の半値幅(Δφ)において15°以下に結晶配向するように中間層を形成し、この後に、該中間層上に成膜法により蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造を有し、100nm以上の膜厚で前記中間層の結晶配向性よりも優れたΔφ=8゜以下となり、300nm以上の膜厚でΔφ=5゜以下の結晶配向性となるように自己配向するキャップ層を形成することを特徴とする薄膜積層体の製造方法。
【請求項7】
前記蛍石系結晶構造およびそれに準じる結晶構造のキャップ層として、CeOあるいはPrOの何れかを用いることを特徴とする請求項6に記載の薄膜積層体の製造方法。
【請求項8】
前記中間層が、膜厚50nm以下であり、MgO、NiO、CoO、FeO、MnO、CdO、CaO、SrO、BaO、CrN、TiN、HfN、ZrN、YbN、DyN、CeN、LaN、SrN、SnO、TiOのいずれかを用いることを特徴とする請求項6または7に記載の薄膜積層体の製造方法。
【請求項9】
前記キャップ層の膜厚を100〜600nmの範囲とすることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の薄膜積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法により薄膜積層体を製造した後、薄膜積層体のキャップ層の上に、酸化物超電導層を積層することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−103021(P2010−103021A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274814(P2008−274814)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】