説明

薄膜送り出しのため液体を蒸発させる蒸発装置及びその方法

蒸発装置10は、液体の入口12と、ガスの出口14と、蒸発装置10の出口14へのガスの流れを制御するガス弁16と、液体の入口12とガス弁16との間を流れる液体を加熱する手段20とを備えている。蒸発装置10は、また、液体の入口とガス弁との間を流れる液体に対する熱伝達量を増す手段18を備え、液体の圧力は、ガス弁に到達したとき、液体の蒸気転移圧力以下に降下するよう液体にて圧力降下を生じさせる。圧力降下は、等温状態下にて生じ、弁16が開いたときにのみ、液体は、需要に応じて蒸発する。熱伝達量を増し且つ圧力降下を生じさせる手段18は、多孔性媒質の栓とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、薄膜を形成するため前駆体ガスを蒸発させる蒸発装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造又は組み立ては、極めて複雑であり、例えば、何十種ものガスの処理室への送り出しを慎重に同期化し且つ正確に測定することを多々、必要とする。製造過程にて色々な所定の手順が使用され、また、半導体デバイスに対して、清浄化、ポリシング、酸化、マスキング、エッチング、ドーピング及び金属被覆のような多くの別個の加工ステップが要求される。使用されるステップ、それらの順序及び関係する材料は、全て特定のデバイスの製造に寄与する。
【0003】
デバイスの寸法が90nm以下へと小型化を続けるに伴い、半導体の指針は、銅相互接続部に対する障壁の堆積及びタングステン核形成層の形成といったような多岐に亙る適用例に対し原子層成長法、すなわちALD法が必要とされることを暗示する。ALD法において、処理室内でウェハ表面の上方における2つ又はより多くの前駆体ガスの流れは、真空下状態に維持される。2つ又はより多くの前駆体ガスは、交番的な態様にて流れる、すなわちパルス動作し、このため、ガスは、ウェハ表面における箇所すなわち機能群と反応する。利用可能な箇所の全てが前駆体ガスの1つ(例えば、ガスA)にて飽和されたとき、反応は停止し、除去用ガスを使用して余剰な前駆体分子を処理室から一掃する。次の前駆体ガス(すなわち、ガスB)がウェハ表面上を流れるとき、過程は繰り返される。1つのサイクルは、前駆体Aの1回のパルス、除去、前駆体Bの1回のパルス、及び除去として規定される。この順序は、最終厚さに達する迄、繰り返される。これらの順序的な自己制限式の表面反応の結果、サイクル毎に単一層の堆積膜が形成される。
【0004】
処理室内への前駆体ガスのパルスは、通常、所望の量の前駆体ガスを加熱した保持容器から処理室へ送り出す所定の期間、単に開くオン/オフ型ガス弁を使用して制御される。これと代替的に、変換器と、ガス制御弁と、制御及び信号処理電子機器とから成る自己充足型の装置であるガス質量流量コントローラを使用して、短い時間間隔にて反復可能なガス流量を送り出す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くの場合、前駆体ガスは、液体及び固体を蒸発させることにより形成される。液体を蒸発させる現在の標準的な技術は、別個の蒸発装置を有する液体質量流れコントローラを使用し又は複合型液体質量流れコントローラ及び蒸発装置を使用して、蒸発した前駆体ガスを加熱した保持容器まで送り出す。液体は、最初、液体質量流れコントローラにより供給源容器から計量供給し、次に、蒸発装置により蒸発させ、その後、加熱した保持容器に送り出す。次に、オン/オフ型ガス弁又はガス流れコントローラを使用して所望の量の前駆体ガスを加熱した保持容器から処理室まで送り出す。しかし、この技術の不利益な点は、コストである。液体質量流れコントローラ及び蒸発装置の価格は、数千ドルもする。更に、ALD前駆体の多くは、かなり多量の加熱量を必要とし、凝縮のため流量を正確に制御することが困難であり且つ、使用前、望ましくない態様にて分解し易い。
【0006】
ALD前駆体は、適用例に依存して著しく相違するであろう。新たな前駆体が依然、開発され且つ、異なる基板及び堆積膜の必要条件に対し試験されている。3つの極めて一般的な前駆体は、Al(CH(Al堆積膜)、HfCl(HfO堆積膜)、及びZrCl(ZrO堆積膜)である。これらのガスの各々に対する酸素前駆体は、典型的に、HO、又はO又はOである。ALD又はCVD技術を介して堆積させることのできるその他の膜の型式は、Ni、W、SiO、Ta、TaN、TiO、WN、ZnO、ZrO、WCN、Ru、Ir、Pt、RuTiN、Ti、Mo.ZnS、WN、HfSiO、LaCaMnO、CuInS、In、HfN、TiN、Cu、V、及びSiNを含む。しかし、本発明は、任意の特定の前駆体又は過程と共に使用することに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0007】
依然、望まれるのは、原子層成長(ALD)法におけるように、薄い膜を形成するため前駆体材料を蒸発させる新規且つ改良された蒸発装置及びその方法である。好ましくは、前駆体ガスを蒸発させる新規且つ改良された蒸発装置及びその方法は、前駆体材料を蒸発させる既存の方法及び装置と比較して、比較的簡単な設計であり且つ比較的低コストである。更に、新規且つ改良された蒸発装置及び蒸発方法は、使用前に蒸気を形成し且つ蒸気を貯蔵する場合と相違して、蒸気が実際に計量供給される箇所にて需要に応じて蒸気を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を受け入れる入口と、ガスを送り出す出口とを有する蒸発装置と、蒸発装置の出口へのガスの流れを制御するガス弁と、液体入口とガス弁との間を流れる液体を加熱する手段とを提供する。蒸発装置は、また、液体の入口とガス弁との間を流れる液体に対する熱伝達量を増し且つ、液体の入口とガス弁との間を流れる液体にて圧力降下を生じさせ、液体の圧力は、ガス弁に到達したとき、液体の蒸気転移圧力以下であるようにする手段も備えている。
【0009】
本発明の1つの形態に従い、流体の入口とガス弁との間にて圧力降下を生じさせ且つ、流体の入口とガス弁との間を流れる液体に対する熱伝達量を増す手段は、流体の入口をガス弁と接続する多孔性の栓から成る。
【0010】
本発明の別の形態に従い、前駆体ガスのパルス状の質量流量を半導体処理室内に送り出すシステム内に蒸発装置が組み込まれており、システムは、実際に、処理室内に流れる材料の質量を測定し且つ、極めて反復可能で且つ正確な量のガスを送り出す。
【0011】
その他の形態及び有利な効果の内、本発明は、原子層成長(ALD)法及びその他の化学的気相成長(CVD)法におけるように、前駆体ガスを蒸発させて薄膜を形成する新規且つ改良された蒸発装置及びその方法を提供するものである。前駆体ガスを蒸発させる新規且つ改良された蒸発装置及びその方法は、比較的簡単な設計であり且つ比較的低コストである。更に、新規且つ改良された蒸発装置は、計量供給したとき(すなわち、ガス弁のみが開いているとき)、液体を需要に応じて蒸発させることを許容する。
【0012】
単に一例として、本発明の一例としての実施の形態を示し且つ説明する以下の詳細な説明から、当該技術の当業者には、本発明の追加の形態及び有利な効果が容易に明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、その他の異なる実施の形態が可能であり、また、その幾つかの詳細は、全て本発明から逸脱せずに、色々な明確な点にて改変することが可能である。従って、図面及び説明は、性質上、単に一例であり、限定的なものとみなすべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
最初に、図1及び図2を参照すると、本発明は、原子層成長(ALD)法又はその他の化学的気相成長(CVD)法におけるように、薄い膜を形成すべく前駆体ガスを蒸発させる新規且つ改良された蒸発装置10及びその方法を開示するものである。その他の形態及び有利な効果の内、本発明に従って、前駆体ガスを蒸発させる新規且つ改良された蒸発装置及びその方法は、比較的簡単な設計であり且つ比較的低コストである。
【0014】
図1及び図2に図示するように、蒸発装置10は、液体の入口12と、ガスの出口14と、出口14へのガスの流れを制御するガス弁16とを有する。蒸発装置10は、液体の入口12とガス弁16との間にて滑らかな圧力降下を生じさせ且つ、液体の入口とガス弁との間の流れる液体に対する熱伝達量を増す手段18も有している。蒸発装置10は、液体の入口12とガス弁16との間を流れる液体を加熱して、圧力が蒸気曲線よりも降下する間、温度が一定のままであるか又は増大するようにする手段20を更に有する。液体の入口に入る液体の圧力は、圧力降下手段18によって十分に且つ迅速に降下して液体の圧力が蒸気の転移圧力以下に降下し且つガス弁に到達したとき、蒸発されるようにする。図示していないが、蒸発装置10は、圧力降下手段18の温度を監視するセンサと、温度に基づいて加熱手段20を制御するコントローラ回路とを有することもできる。
【0015】
蒸気圧力は、蒸気の圧力である(蒸気がその他のガスと混合されるならば、部分圧力である)。特定の物質に対し任意の所定の温度のとき、その物質の蒸気がその液体又は固体の形態にて平衡状態となるときの圧力が存在する。これは、その温度におけるその物質の飽和蒸気圧力である。蒸気圧力という語は、飽和蒸気圧力を意味するものとしばしば理解される。任意の液体の圧力がその飽和した蒸気圧力に等しいとき、液体は部分的に蒸発する。すなわち、液体及び蒸気は平衡状態にある。温度が一定であるならば、圧力が降下したとき、平衡状態は変化して物質の気相となる。液体は最終的に、完全に蒸発される。
【0016】
本発明の一例としての実施の形態に従い、圧力降下を生じさせ且つ熱伝達量を増す手段は、多孔性媒質の栓18から成っている。弁の出口における圧力は液体の蒸気圧力以下でなければならないことを理解することが重要である。さもなければ、液体は、多孔性媒質から出てしまい、また、ガス弁は閉じることができないであろう。蒸発する液体はヒートシンクを形成するから、一定の温度を保証すべく高熱伝達量である必要がある。多孔性媒質の栓18の局所的温度が降下すると、これと共に、局所的な飽和した蒸気圧力は降下し、出口における圧力以下となることもある。その場合、多孔性媒質の栓18内にて全く蒸発しないであろう。
【0017】
適した多孔性媒質は、例えば、コネチカット州、ファーミントンのモットコーポレーション(Mott Corporation)(http://www.mottcorp.com)から入手可能である。一例としての実施の形態に従い、多孔性媒質は焼結金属にて出来ている。焼結金属は、20μ以下の焼結前の平均粒子寸法を有する金属粉体にて形成することができる。別の実施の形態に従い、焼結要素の平均粒子寸法は10μ以下であり、焼結金属は、少なくとも5g/ccの密度を有する。栓18を形成するのに使用される金属は、温度及び腐食抵抗性がより大きいといったような特殊な必要条件に適合するよう、ステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金及びチタンから成る群から選ばれるが、これらにのみ限定されるものではない。特に、金属及び合金は、ステンレス鋼316L、304L、310、347及び430、ハステロイ(Hastelloy)C−276、C−22、X、N、B及びB2、インコネル(Inconel)600、625及び690、ニッケル(Nickel)200及びモネル(Monel)(登録商標名)400(70Ni−30Cu)、チタン、及び合金20を含むが、これらにのみ限定されるものではない。
【0018】
本発明の更なる一例としての実施の形態に従い、多孔性媒質の栓18は、ステンレス鋼316Lにて出来ており、また、30psig(0基準値として大気圧力を使用するゲージ圧力)の圧力にて10sccm(分当たり標準立方センチメートル)の窒素の流量を提供し得るようにされている。その他の一例としての実施の形態に従い、多孔性媒質の栓18はステンレス鋼316Lにて出来ており且つ、30psigにて50sccmのNの流量、また、ステンレス鋼316Lにて出来ており且つ、30psigにて250sccmのNの流量、又はニッケル200にて出来ており且つ、30psigにて50sccmのNの流量をそれぞれ提供し得るようにされている。本発明の一例としての実施の形態に従い、多孔性媒質の栓18は、円筒状で且つ細長であり、また、単一の細長い多孔性媒質片から成るものとすることができ、又は多孔性媒質の細長い組立体を形成し得るよう積層させた個別の挿入体であるものとすることができる。
【0019】
多孔性媒質の栓18は、また、外側スリーブ内に同軸状に受け入れられた内側円筒体にて組み立てることができ、内側円筒体及び外側スリーブは異なる多孔性媒質から成るものとすることもできる。かかる組立体は、並行な蒸気の流れを提供する。
【0020】
多孔性媒質の栓18の多孔度又は孔寸法が圧力の降下程度を制御する。一例としての実施の形態に従い、多孔性媒質の栓18は、1つの部分を2つの異なるフリット寸法のものから焼結することにより形成された1つの挿入体から成っている。フリット寸法の各々は、異なる孔寸法又は多孔度に相応する。
【0021】
多孔性媒質の栓18は、石英、セラミック(サファイア、アルミナ、窒化アルミニウム等)、及びテフロン(登録商標)、PFA、PTFA等を含む重合系材料のような、金属以外の材料から成るものとすることができる。
【0022】
圧力降下を生じさせ且つ熱伝達量を増す手段18は、これと代替的に、長く薄い、直線状のキャピラリチューブ、長く細いコイル状キャピラリチューブ、細いキャピラリチューブの束又は層状流れ要素のようなその他の形態をとることもできるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0023】
図2に図示するように、図1の蒸発装置10は、原子層成長(ALD)法及びその他の化学的気相成長(CVD)法におけるように、薄膜を形成するため処理室60に対し蒸発したガス前駆体を提供すべく使用することができる。図1の蒸発装置10を含む原子層成長システム11の一例としての実施の形態が図2に示されており、液体前駆体の供給源30と、送り出し室40と、送り出し室40を処理室60と接続するガス弁50とを更に有する。図示するように、蒸発装置10の入口12は、液体供給源30と接続される一方、蒸発装置の出口14は送り出し室40と接続される。液体供給源30からの液体前駆体を蒸発させ且つ蒸発した液体又は前駆体ガスを送り出し室40に送り出すべく蒸発装置10が使用される。図示しないが、送り出し室40は加熱することができる。次に、ガス弁50を開き且つ閉じて処理室内にて薄膜を形成するため望まれるように、送り出し室40からの前駆体ガスを処理室60まで送り出すことができる。
【0024】
図3を参照すると、本発明に従った構造とされた質量流量送り出しシステム100の一例としての実施の形態が示されており、このシステムは、図1の蒸発装置10を有する。図4には、質量流量(マスフロー)を送り出す方法200の一例としての実施の形態が示されており、この場合、図3のパルス状の質量流量の送り出しシステムを作動させるため、この方法を使用することができる。システム100及び方法200は、ALD又はCVD装置の処理室のような半導体処理室への汚染物質無しの正確に計量された量の処理ガスを送り出すことを特に目的とする。質量流量送り出しシステム100及び方法200は、実際上、処理室に流れる材料の質量を測定する。更に、システム100及び方法200は、ALD又はCVD法のような半導体製造過程にて使用される極めて反復可能で且つ正確な量のガスを提供する。
【0025】
図3を参照すると、質量流量送り出しシステム100は、蒸発装置10と接続された保持容積140と、保持容積140から出る質量流量を制御する弁150とを有する。本発明の一例としての実施の形態に従い、弁150は、約1ないし5ミリ秒の比較的極めて迅速な応答時間を有するオン/オフ型弁である。質量流量送り出しシステム100はまた、保持容積140内の圧力を測定する圧力変換器104と、保持容積140にて又は保持容積140内にて温度を測定する温度センサ106とを有している。圧力変換器104はまた、約1ないし5ミリ秒の比較的極めて迅速な応答時間も有する。本発明の一例としての実施の形態に従い、温度センサ106は、保持容積140の壁と接触しており且つ、該壁の温度の測定値を提供する。本発明の送り出しシステム100と共に使用するのに適した圧力変換器104の例は、本発明の譲受人であるマサチューセッツ州、ウィルミントンのMKSインスツルメンツ(Instruments)(http://www.mksinst.com)から入手可能なバラトラン(Baratron)(登録商標名)圧力変換器である。適した弁150は、例えば、オハイオ州、ソロンのスウェージロックカンパニー(Swagelok Company)(www.swagelok.com)から入手可能な原子層成長用ダイヤフラム弁である。
【0026】
質量流量送り出しシステム100の入力/出力装置108は、所望の質量流量を受け取り(人間の操作者から直接的に又はウェハ加工コンピュータコントローラを介して間接的に)、また、コンピュータコントローラ(すなわち、コンピュータ処理ユニットすなわち「CPU」)102は、圧力変換器104、温度センサ106、出口弁150及び入力/出力装置108と接続される。入力/出力装置108は、その他の処理命令を入力するため使用することもでき、また、システム100によって送り出された質量の表示を提供する(人間の操作者に対して直接的に又はウェハ加工コンピュータコントローラを通じて間接的に)ため使用することができる。入力/出力装置108は、例えば、キーボード、マウス及びモニタ装置を有するパーソナルコンピュータとすることができる。
【0027】
本発明の一例としての実施の形態に従い、図3の質量流量送り出しシステム100のコントローラ102は、図4の方法200を実行する。図3及び図4を参照すると、コントローラ102は、図4にて参照番号202で示したように、入力/出力装置108を通じて所望の質量流量(すなわち設定点)を受け取り、図4にて参照番号204で示したように、出口弁150を閉じ、図4にて参照番号206で示したように、蒸発装置14の弁16を開き、図4にて参照番号208で示したように、圧力変換器104を使用して保持容積140内の圧力を測定し、図4にて参照番号210で示したように、保持容積140内の圧力が所定のレベルに達したとき、入口弁16を閉じるようプログラム化されている。所定の圧力レベルは、ユーザによって規定され且つ、入力/出力装置108を通じて提供することができる。所定の圧力レベルは、例えば、26.66kPa(200トル)とすることができる。
【0028】
保持容積140内のガスが平衡状態に近づくことができる、所定の待機期間の後、出口弁150を開いて、図4にて参照番号212で示したように、ガスを保持容積140から排出する。所定の待機期間は、ユーザによって規定され且つ、入力/出力装置108を通じて提供することができる。所定の待機期間は、例えば、3秒とすることができる。次に、排出されたガスの質量が図4にて参照番号214で示したように、ユーザが規定した所望の質量流量に等しくなったとき、出口弁150を閉じる。出口弁150は、極めて短い期間のみ(例えば、100ないし500ミリ秒)開く。次に、コントローラ102は、入力/出力装置108に対し排出されたガスの質量を提供する。
【0029】
代替的な作動モードが可能である。例えば、一部の場合、保持容積140を所定の圧力まで充填し、保持容積が再充填される前に、保持容積内のガスの多数の供給分を出口弁を通じて送り出すことができるようにすることが望ましいことがある。その他の場合、ガスの供給分を遥かに長い時間に渡って送り出し、この場合、出口弁はより長時間(例えば0.5ないし30秒)開くようにすることが望ましいことがある。更に、弁の作動寿命は、入口又は出口に多数の弁を使用することにより延長することができる。2つの弁の一方のみを同時にパルス状に作動させ、また、その第一の弁が故障したとき、第二の弁がその弁の作用を引き受けるようにする。開いた又は閉じたモードの何れかにて弁の故障に対応するには、4つの弁が必要とされよう。すなわち、直列の2つの弁、別の対に対して並列の弁である。「パルス状質量流量送り出しシステム及びその方法(Pulsed Mass Flow Deliver System and Method」という名称であり且つ本発明の譲受人に譲渡された2004年12月17日付けで出願された米国特許出願明細書11/015,465号には、かかる装置が開示されており、その内容の全体は参考として引用し、本明細書に含めてある。
【0030】
高圧力の適用例に対し、システム100の保持容積140内のガスの温度を、温度探針106を使用して測定することができる。しかし、低圧力の適用例及び急速な温度転移の場合、探針を使用して温度を測定することは、正確な測定値を得るのに十分、迅速ではない。低圧力の適用例及び急速な温度転移の場合、以下に説明するように、ガスの温度を推定するリアルタイムの物理的モデルが使用される。
【0031】
一部の前駆体物質に対し、該物質を単に加熱することで物質の十分な蒸気圧力を実現することは困難であろう。例えば、一部の物質は、送り出しのため十分な蒸気圧力となるよう加熱されたとき、過剰に分解し、堆積過程の効率を低下させる可能性がある。その他の場合、十分に蒸発させるのに必要な温度が望ましくない程、高くなるであろう。かかる場合、前駆体物質は、適当な溶媒中にて融解し、その後に蒸発する。溶媒物質の例は、色々なアルコール、エーテル、アセトン及び油を含む。特定の適用例に依存して有機質又は無基質溶媒の何れかが適するであろう。超臨界COは、色々な物質に対する効果的な溶媒として機能することができる。
【0032】
理想気体法則に基づいた保持容積140内の全質量mは、次式の通りである。
【0033】
m=ρV=(P/RT)V (1)
ここで、ρは密度、Vは容積、Pは絶対圧力、Tは絶対温度及びRは気体定数である。
【0034】
保持容積140内の動的密度は次式の通りである。
【0035】
dρ/dt=−(QoutρSTP/V) (2)
ここで、QOUTは保持容積140から出る流れ、ρSTPは標準温度及び圧力(STP)条件下にてガスの密度である。
【0036】
保持容積140内の温度力学は次式の通りである。
【0037】
dT/dt=(ρSTP/ρV)QOUT(γ−1)T+(Nuκ/l)(A/VCνρ)(T−T) (3)
ここで、γは比熱の比、Nuはヌッセルト数(Nusslet number)、κはガスの熱伝導率、Cνは一定容積下の比熱、lは送り出し室の特徴的長さ、Tは温度探針106により提供された保持容積140の壁の温度である。
【0038】
出口流れQOUTは次式のように推定することができる。
【0039】
OUT=−(V/ρSTP)[(l/RT)(dρ/dt)−(P/RT)(dT/dt)] (4)
保持容積140から送り出された全質量Δmを計算するため、図3におけるように温度探針106を使用する場合と相違して、保持容積140内の時間=tにおけるガスの温度T(t)を計算すべく等式(3)におけるQOUTに代えて等式(4)を使用する。圧力変換器104は、保持容積140内の時間=tにおける圧力P(t)を提供する。
【0040】
時間tと時間tとの間にて保持容積140から送り出された全質量Δmは次式の通りである。
【0041】
Δm=m(t)−m(t)=V/R[(P(t)/T(t))−(P(t)/T(t))] (5)
その他の形態及び有利な効果の内、図3及び図4に示した一例としての実施の形態のような質量流量送り出しシステム及びその方法は、処理室内に流れ込む材料の質量を実際に測定する。更に、システム及び方法は、原子層成長(ALD)法のような半導体製造過程にて使用される極めて反復可能で且つ正確な量のガス質量を提供する。
【0042】
図5ないし図9には、本発明に従った構造とされた蒸発装置300の別の一例としての実施の形態が示されており、この場合、蒸発装置300は、多孔性栓組立体318を保持する弁体350を有する。蒸発装置300は、図1の蒸発装置10と同様であり、このため、同様の構成要素は、「3」を前に加えた同一の参照番号で表示されている。
【0043】
図5ないし図9の蒸発装置300は、原子層成長のためのダイヤフラム弁316を利用する。弁体350を含む、原子層成長に適したダイヤフラム弁316は、オハイオ州、ソロンのスウェージロックカンパニー(www.swagelok.com)から入手可能である。
【0044】
図5ないし図9に示した一例としての実施の形態において、弁体350は、入口312及び出口314に雌型コネクタを有する。図7ないし図9に最も良く示すように、弁体350は、弁座352と、入口312から弁座352まで伸びる入口通路354と、弁座352から出口314まで伸びる出口通路356とを画成する。図7に最も良く示すように、弁体350はまた、ヒータ320を受け入れる穴360も画成する。図8及び図9に最も良く示すように、弁体350はまた、温度モニタ装置321を受け入れる穴370も画成する。
【0045】
多孔性栓組立体318は、弁体350の入口通路354内に配置される。図示した一例としての実施の形態において、多孔性栓組立体318は、円筒状で且つ細長であり、中実な金属スリーブ内に受け入れられた単一の多孔性媒質の単一の細長い片を備えている。これと代替的に、多孔性栓組立体は、細長の組立体を形成し得るよう積層された個別の挿入体であり、また、挿入体は、異なる多孔性媒質(すなわち、同一の圧力にて異なる流量を提供するもの)から成るものとしてもよい。
【0046】
図10は、色々な孔寸法K1、K2を有する4つの多孔性栓組立体を通る一定温度の仮想液体に対する圧力対多孔性栓の長さを示すグラフである。図示した例において、組立体は、約0.014mの全長を有し、また、組立体は、孔寸法K1の第一の部分と、孔寸法K2の第二の部分とも有している。多孔性栓組立体の1つはK1=K2=2.8e−13mである。別の組立体はK1=5.6e−14m及びK2=5.5e−13mである。追加的な組立体はK1=3.0e−14m及びK2=2.8e−12mである。更なる組立体は、K1=5.6e−14m及びK2=1.4e−12mである。グラフには、多孔性栓組立体の各々により、液体は組立体を通過する前に蒸発することが示されている。
【0047】
本明細書に説明した一例としての実施の形態は、限定的ではなく単に一例として掲げたものであり、その広い形態及び特許請求の範囲に記載された本発明から精神及び範囲の何れの点にても逸脱せずに、当該技術の当業者により色々な改変、組み合わせ及び置換を為すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に従った構造とされた蒸発装置の一例としての実施の形態を示す概略図である。
【図2】図1の蒸発装置を含む原子層成長システムの一例としての実施の形態を示す概略図である。
【図3】図1の蒸発装置を含むパルス状質量流量送り出しシステムの一例としての実施の形態を示す概略図である。
【図4】図3のパルス状質量流量システムを作動させるため使用することのできる、パルス状流れを送り出す方法の一例としての実施の形態を示すフローチャートである。
【図5】本発明に従った構造とされた蒸発装置の一例としての実施の形態を示す側面図である。
【図6】図5の蒸発装置の端面図である。
【図7】図5の線7−7に沿った蒸発装置の断面図である。
【図8】図6の線8−8に沿った蒸発装置の断面図である。
【図9】図5の蒸発装置の一部分の拡大断面図であり、入口を通って蒸発装置の多孔性栓内に入る液体の流れ、また、弁組立体及び蒸発装置の出口を通って多孔性栓から出るガスの流れが示されている。
【図10】異なる孔寸法の4つの多孔性栓を通って進む水に対する圧力対多孔性栓の長さのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の入口と、
ガスの出口と、
ガス出口へのガスの流れを制御するガス弁と、
液体入口とガス弁との間を流れる液体を加熱する手段と、
液体の入口とガス弁との間を流れる液体にて圧力降下を生じさせると共に、液体の入口とガス弁との間を流れる液体の熱伝達量を増して、ガス弁に到達したとき、液体の圧力が液体の蒸気転移圧力以下に降下するようにする手段とを備える、蒸発装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸発装置において、圧力降下を生じさせると共に、熱伝達量を増す手段は多孔性媒質の栓である、蒸発装置。
【請求項3】
請求項2に記載の蒸発装置において、多孔性媒質は焼結金属からから成る、蒸発装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蒸発装置において、焼結金属は、20μ以下の焼結前の平均粒子寸法を有する金属粉体から形成される、蒸発装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蒸発装置において、焼結要素の平均粒子寸法は10μ以下である、蒸発装置。
【請求項6】
請求項3に記載の蒸発装置において、焼結金属は、少なくとも5g/ccの密度を有する、蒸発装置。
【請求項7】
請求項3に記載の蒸発装置において、金属は、ステンレス鋼、ニッケル及びニッケル合金及びチタンから成る群から選ばれる、蒸発装置。
【請求項8】
請求項3に記載の蒸発装置において、多孔性媒質の栓は、直列にて、第一の孔寸法の第一の部分と、第二の孔寸法の第二の部分とを有する、蒸発装置。
【請求項9】
請求項3に記載の蒸発装置において、多孔性媒質の栓は、円筒状で且つ細長であり且つ、単一の多孔性媒質の細長い片から成る、蒸発装置。
【請求項10】
請求項3に記載の蒸発装置において、多孔性媒質の栓は、多孔性媒質の細長の組立体を形成し得るよう積層された個別の挿入体から成る、蒸発装置。
【請求項11】
請求項3に記載の蒸発装置において、多孔性媒質の栓は、円筒状で且つ細長であり且つ、外側スリーブ内に同軸状に受け入れられた内側円筒体から成り、内側円筒体及び外側スリーブは異なる多孔性媒質から成る、蒸発装置。
【請求項12】
請求項3に記載の蒸発装置において、弁は弁体を含み、弁体は弁座と蒸発装置の入口から弁座まで伸びる入口通路と、弁座から蒸発装置の出口まで伸びる出口通路とを有し、多孔性の栓は、入口通路内に配置される、蒸発装置。
【請求項13】
請求項1に記載の蒸発装置において、加熱手段は電気ヒータコイルであり、蒸発装置は温度センサを更に含む、蒸発装置。
【請求項14】
請求項1に記載の蒸発装置において、弁はダイヤフラム弁である、蒸発装置。
【請求項15】
請求項1に記載の蒸発装置を備える原子層成長システムにおいて、
保持容積であって、蒸発装置の入口が液体全体の供給源と接続可能である一方、蒸発装置の出口は保持容積と接続される前記保持容積と、
保持容積を処理室と接続するガス弁とを更に備える、原子層成長システム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムにおいて、ガス弁を通じて保持容積と接続された処理室を更に備える、システム。
【請求項17】
請求項1に記載の蒸発装置を備える所望の量のガスを送り出すシステムにおいて、
蒸発装置の出口と接続された保持容積と、
保持容積から出るガスの流れを制御する出口弁と、
保持容積内の圧力を測定する圧力変換器と、
システムから送り出される所望の量のガスを提供する入力装置と、
弁、圧力変換器及び入力装置と接続されたコントローラであって、
入力装置を通じて所望の量のガスを受け取り、
出口弁を閉じ、
蒸発装置の弁を開き、
圧力変換器から保持容積の圧力測定値を受け取り、
保持容積内の圧力が所定のレベルに達したとき、蒸発装置の弁を閉じ、
保持容積内のガスが平衡状態に近付くのを許容する所定の待機期間、待機し、
時間=tにて出口弁を開き、
排出されたガスの量が所望の量と等しくなる時間=tにて出口弁を閉じるようプログラム化された前記コントローラとを更に備える、所望の量のガスを送り出すシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムにおいて、所定の待機期間は、3秒である、システム。
【請求項19】
請求項17に記載のシステムにおいて、t=100ないし500ミリ秒である、システム。
【請求項20】
請求項17に記載のシステムにおいて、t=0.5ないし30ミリ秒である、システム。
【請求項21】
請求項17に記載のシステムにおいて、保持容積内の所定の圧力レベルは、保持容積の再充填が要求される前に、保持容積内のガスの所定数の供給量を出口弁を通って送り出すことを許容する、システム。
【請求項22】
請求項17に記載のシステムにおいて、液体は、蒸発装置の入口に送り出される前に、適宜な溶媒中にて溶解する、システム。
【請求項23】
請求項17に記載のシステムにおいて、出口弁を通じて保持容積と接続された処理室を更に備える、システム。
【請求項24】
液体を蒸発させる方法において、
液体を入口を通して受け取る段階と、
ガス弁を入口と接続する段階と、
液体の圧力が降下したときでさえ、液体の温度の降下が防止されるように液体の入口とガス弁との間を流れる液体を加熱する段階と、
液体の入口とガス弁との間を流れる液体の熱伝達量を増す段階と、
ガス弁に到達したとき、液体の圧力が液体の蒸気転移温度以下に降下するように液体の入口とガス弁との間の流れる液体にて圧力降下を生じさせる段階とを備える、液体を蒸発させる方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、液体の入口とガス弁との間を流れる液体にて圧力降下を生じさせ且つ液体の熱伝達量を増すように、多孔質媒質の栓が使用される、方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、液体は、入口を通って受け入れられる前に適宜な溶媒中にて溶解する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−536006(P2008−536006A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501909(P2008−501909)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/007752
【国際公開番号】WO2006/101697
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】