説明

薄膜電子デバイスを有するマイクロ流体デバイス

サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)。本マイクロ流体デバイスは、サンプルを収容するためのチャンバ(102)を少なくとも部分的に画定する基板部分(94)を含む。基板部分(94)は、表面(96)を有する基板(98)を含む。基板部分(94)は、表面(96)に隣接して基板(98)上に形成される複数の薄膜層(110)も含む。薄膜層(110)は、複数の電子デバイスを形成する。電子デバイスの少なくとも2つはそれぞれ、異なる組の薄膜層(110)により形成される。少なくとも2つの電子デバイスは、1)チャンバ(102)内の流体の温度を制御するための温度制御デバイスと、2)チャンバ(102)内の流体の特性を感知または変更するように構成される他の電子デバイスとを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
ゲノミクス、プロテオミクスおよび細胞分析の急速な進歩によって、バイオテクノロジ分野において、生物学的サンプルを分析するための、より高速で、より効率的なデバイスの開発が推し進められてきた。したがって、バイオテクノロジ分野では、ラボ・オン・チップと呼ばれることが多い、サンプル操作および分析用の小型のマイクロ流体デバイスの開発に向けて大きな力が注がれている。そのようなデバイスは、少量の流体のサンプルを分析することができ、試薬およびサンプルをより経済的に使用できるようにするとともに、場合によっては、検定の速度を著しく速めることができる。これらのデバイスを利用することによって、人体の健康状態の判定、遺伝子検査、病原体検出は、将来に、臨床環境または現場において非常に速やかに実行されるルーチン化された比較的低コストの手順となる可能性がある。さらに、これらのデバイスは、非生物学的サンプルを操作しかつ/または分析するための多くの他の用途を有する。
【0002】
いくつかのマイクロ流体デバイスは、電気回路部を用いてマイクロ流体チャンバ内のサンプルを処理するように構成される。このようなマイクロ流体デバイスは、電気回路部によって提供される電気デバイスがチャンバ内の試料を処理するように構成することができる。場合によっては、電気デバイスは、たとえば化学反応または酵素反応の速度を加速するために、チャンバ内の流体を加熱するヒータを含んでいてもよい。他の場合には、電気デバイスは、電界を形成してチャンバ内の荷電分子および/または流体を移動させるために用いられる電極を含んでいてもよい。しかしながら、非常に小さい流体チャンバの場合、電気デバイスのための空間が制限される可能性があり、電気デバイスの独立制御が不可能であるかもしれない。したがって、利用可能な制限された空間を占めるために、別のタイプのデバイスよりも或るタイプのデバイスを選択する必要があることにより、流体チャンバ内の処理能力が低くなる場合がある。
【0003】
制限された空間に関連する問題は、熱制御に関して特に明らかであり得る。たとえば、マイクロ流体デバイス内の1つのチャンバまたは狭い間隔で配置された1組のチャンバ内で、異なる温度で2つ以上の反応を行うことが望ましい場合がある。利用可能な空間に十分な数の熱制御デバイスを配置することに関連する問題があるのに加えて、反応間の断熱が不十分であることにより、1つの反応の温度が、他の狭い間隔の反応(複数可)に望ましい温度を維持することを阻止し得る。この断熱問題は、反応の温度が全く異なる場合により深刻になり得る。反応間の距離を空間的に大きく離すことにより、反応間の断熱性を高めることができるが、その犠牲として、チャンバの密度が減り、したがってマイクロ流体デバイスの能力も低下する。
【0004】
[概要]
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイスが提供される。本マイクロ流体デバイスは、サンプルを収容するためのチャンバを少なくとも部分的に画定する基板部分を含む。基板部分は、表面を有する基板を含む。基板部分は、表面に隣接して基板上に形成される複数の薄膜層も含む。薄膜層は、複数の電子デバイスを形成する。電子デバイスのうちの少なくとも2つはそれぞれ、異なる組の薄膜層により形成される。上記少なくとも2つの電子デバイスは、1)チャンバ内の流体の温度を制御するための温度制御デバイスと、2)チャンバ内の流体の特性を感知または変更するように構成される他の電子デバイスとを含む。
【0005】
[詳細な説明]
薄膜電子デバイスのアレイを有するマイクロ流体デバイスを用いたサンプルのマイクロ流体処理のための、方法および装置を含むシステムが提供される。アレイは、マイクロ流体デバイスの流体区画を少なくとも部分的に画定する基板部分に含まれ得る。電子デバイスのアレイは、電子デバイスが流体区画内のサンプル処理および/または監視に関与することができるように配置され得る。基板部分は、基板と、基板上に形成される複数の薄膜層とを含むことができる。薄膜層は、各デバイスに対して異なる組の層を用いて、薄膜電子デバイスの少なくとも2つを形成することができる。この少なくとも2つの薄膜電子デバイスは、少なくとも1つの電子デバイスが別の電子デバイス上に配置されるように、基板の表面に対してほぼ積み重ね関係で配置することができる。たとえば、ヒータまたは温度センサ等の熱制御デバイスを、特に、別の熱制御デバイス、電極またはトランスデューサ等、少なくとも1つの他のデバイスの下に配置してもよい。場合によっては、アレイの2つ以上の電子デバイスが、基板の表面に対してほぼ垂直に延びるラインと交わるようにしてもよい。したがって、電子デバイスは、マイクロ流体処理チャンバに関してより効率的に配置することができるため、サンプルを操作する方法にさらなる柔軟性を持たせることができる。さらに、ヒータ/冷却器および温度センサ等、マイクロ流体処理の関連態様に関与するデバイスは、より協働的な空間関係で配置されることにより、ほぼ同じ流体容積の温度を変更および感知することができる。
【0006】
熱制御のための独立してアドレス可能な電子デバイスも提供される。これらの熱制御デバイスは、基板部分上で異なる熱ゾーンまたは領域を画定することを容易にすることができる。いくつかの実施形態では、ヒータ/冷却器および温度センサは、閉ループ温度制御を行うように協働する。したがって、基板部分は、基板部分の外部から、基板部分の種々の領域にとって望ましい温度設定点に対応するデジタルワードを受け取る、制御用電子回路を含むことができる。制御用電子回路は、複数組のヒータ/冷却器およびセンサにより閉ループで機能することにより、所望の設定点を達成および維持することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、異なる熱ゾーンは、熱制御形態、すなわち、熱伝導体および/または断熱体により熱的に分離することができる。熱制御形態は、基板により、かつ/または基板上に形成される薄膜層により画定することができる。たとえば、熱伝導体としては、下のヒータから上の流体チャンバへの熱の伝導を促進する、分離されたヒート拡散部が挙げられ得る。例示的な断熱体としては、1)下の基板とその上に形成される薄膜電子デバイスとの間に配置される断熱層、または2)隣接する流体区画または熱ゾーンとの間に概ね配置される基板または薄膜不連続体が挙げられ得る。したがって、熱制御デバイスおよび形態は、サンプル処理中のチャンバ温度をより柔軟に制御するように、任意の適当な関係で組み合わせることができる。
【0008】
以下に記載される(I)電子デバイスの制御および配置、(II)一体型カートリッジを用いるマイクロ流体分析、(III)マイクロ流体システム、(IV)サンプルおよび(V)検定の各セクションにおいて、さらに別の態様が提供される。
【0009】
I.電子デバイスの制御および配置
本セクションは、サンプル処理および/または分析のための薄膜電子デバイスのアレイを含むマイクロ流体システムを説明する(図1〜図12を参照)。アレイは、ほぼ1次元、2次元または3次元であり得る。さらに、アレイは、アレイに隣接して配置され、流体の狭い間隔を空けた領域を独立して温度制御することを可能にする、熱制御デバイスおよびそれと関連する熱制御形態の配列を含み得る。
【0010】
図1は、サンプル分析のためのマイクロ流体システム50の概略図を示す。システム50は、マイクロ流体デバイスまたはバイオチップ54に電気的に結合されるコントローラまたは制御装置52を含むことができる。コントローラは、ユーザから、または事前設定された命令に基づいて、マイクロ流体デバイスに命令を与えることができる。マイクロ流体デバイスは、サンプル(複数可)(またはサンプルを部分的に処理したもの)を受け取り、次に、マイクロ流体チャンバ(複数可)においてサンプル(複数可)を処理および分析して、分析物の存在等、サンプルの一側面を検定することができる。
【0011】
コントローラ52は、電源、プロセッサおよびユーザインタフェースを含むことができる。コントローラ52は、58で示されるように、バイオチップ54(FET等)のオンボード電力デバイス56に電力を送ることができる。さらに、コントローラ52は、I/O線(複数可)60を用いて、バイオチップ54との間で情報を送受信することができる。さらに、コントローラ52は、クロック線62を通してクロック信号を送ることによって、デバイス54により行われる電子的動作を調整することができる。
【0012】
バイオチップ54は、薄膜電子デバイス66のアレイと、流体を保持するように構成されるとともに電子デバイスに隣接して配置される1つまたは複数のチャンバ(図示せず)とを有する、サンプル処理部64を含む。したがって、電子デバイス66は流体チャンバ(複数可)付近に配置され得るため、各電子デバイスは流体チャンバ(複数可)内のサンプル/流体の特性を感知または変更することができ、すなわち、サンプル/流体と相互作用することができる。感知または変更することができる適した特性としては、限定はしないが、温度、流量(流速)、圧力、流体/サンプル(または分析物)の存在/非存在、濃度、量、移動度もしくは分布、光学的特性、磁気的特性、電界強度、配置もしくは極性、光学的特性、電気的特性および/または磁気的特性が挙げられる。
【0013】
薄膜電子デバイスは、概して、基板上に形成される1つまたは複数の薄膜層により提供される任意の電子デバイスを含む。デバイスは、電子スイッチング素子を有する電子回路部に含まれるため、電子的である。各薄膜電子デバイスは、1組の薄膜層により画定することができる。組は1つまたは複数の層を有する。いくつかの実施形態では、2つ以上の薄膜電子デバイスのそれぞれが、異なる組の薄膜層により画定される。異なる組は、重複していなくてもよい、すなわち共通の層を有さなくてもよく、または1つまたは複数の層を共有していてもよい。適した薄膜電子デバイスとしては、特に、電界を印加するための電極、センサ、トランスデューサ、光学系デバイス、音響系デバイス(超音波エネルギーを加えるための圧電利用(piezo-based)発振器等)、電界利用デバイスおよび磁界利用デバイスを挙げることができる。センサは、特に、温度センサ(熱電対、サーミスタ(抵抗加熱デバイス)、p−n接合、変性バンドギャップセンサ(degenerative band-gap sensors)等)、光センサ(たとえば、フォトダイオードまたは他の光電子デバイス)、圧力センサ(たとえば、圧電素子)、流体流量センサ(たとえば、加熱素子からの圧力または熱損失の速度の感知に基づく)および電気センサであり得る。この場合、バイオチップ54は、熱制御デバイス、すなわち、ヒータ68および温度センサ70のアレイを含む。ヒータ68(または冷却器)および温度センサ70は、図示のように交互の行で配列さることができる。しかしながら、以下でより詳細に説明するように、任意の1次元、2次元または3次元で電子デバイスを配置することが適している場合もある。
【0014】
バイオチップ54は、電力デバイス56および電子デバイス66に電気的に結合される制御用電子回路72を含んでいてもよい。制御用電子回路は、コントローラ52からの命令と、74で示されるように、温度センサ70から等、電子デバイス66からの出力信号とを受け取ることができる。さらに、制御用電子回路は、76で示されるように入力信号を電力デバイス56に送ることができる。入力信号によって、ヒータ68等の電子デバイス66に供給される(78で示す)電力のタイミング、持続時間および/または大きさを決定することができる。したがって、制御用電子回路72は、制御用電子回路が1組の感知用および変更用の電子デバイス66と結合して所望の設定点を得る、1つの閉ループ(または複数の閉ループ)79を形成することができる。たとえば、バイオチップ54は、閉ループ温度制御を有していてもよく、その場合、サンプル処理部64の或るゾーンまたは領域にとって望ましい温度または設定点が制御用電子回路72に伝えられ、制御用電子回路72は、対応するデジタルワードをコントローラ52からI/O線60を通して受け取る。この場合、制御用電子回路72は、関連する温度センサ(複数可)から受け取った信号にある程度基づいて、適切な時間および持続時間でバイオチップヒータ(複数可)をオンにする。これにより、温度が設定点付近に維持される。別法では、バイオチップの制御用電子回路72は、コントローラ52に少なくとも部分的または完全に含まれてもよい。
【0015】
図2は、バイオチップの熱制御ゾーンにおける閉ループ温度制御のための方法80の一実施形態を示す。この方法は、バイオチップ内の温度センサに密接して配置されるヒータを用いて当該センサが過熱されることに関連する問題を回避することができる。ヒータにエネルギーを加えた後の平衡に全く遅延がないと、センサは、急速な温度上昇を感知し、ヒータを過度に急速にオフにする。しかしながら、方法80を用いることにより、システムは安定して徐々に目標温度に近づくことができる。
【0016】
方法80は、熱制御ゾーンの目標温度と、目標温度未満の閾値温度とを用いて行うことができる。閾値温度は、加熱を開始させる感知温度を定義する。閾値温度は、事前設定されてもよい、すなわち、ユーザが入力してもよく、または他の方法で事前定義されてもよい。最初に、82で示すように、温度センサが熱制御ゾーンの温度を感知することができる。次に、84で示すように、感知された温度が閾値温度と比較され、感知された温度が閾値温度未満であるか否かが判定される。感知された温度が閾値温度未満ではない場合、82で示すように、通常は任意のまたは事前定義された遅延期間後に、温度を再び感知することができる。別法では、温度が閾値温度未満である場合、86で示すように、感知された温度を目標温度まで上昇させるのに必要なエネルギーを計算することができる。次に、88で示すように、計算されたエネルギーに相当する量のエネルギーを、熱制御ゾーンに配置された抵抗等の加熱デバイス(複数可)に加えることができる。89で示すように、適当な遅延時間の停止後、方法を、82で示すように、温度を感知することにより循環させることができる。いくつかの実施形態では、加熱デバイスに加えられるエネルギーの量は、感知された温度と目標温度との差とは無関係であり得る。
【0017】
図3は、熱制御デバイスのアレイにより画定される熱制御ゾーン92を有するバイオチップ90の一実施形態の概略図を示す。熱制御ゾーン92は、各ゾーンがT1、T2、T3等で表される異なる温度に独立して調整され得るように分離される。熱制御ゾーンは、熱制御デバイスが形成される基板98の表面96とほぼ平行なアレイで、バイオチップ90の基板部分94内に配列させることができる。熱制御ゾーン92は、種々の流体チャンバの下の領域および/または1つの流体チャンバの下の種々の領域に対応することができる。
【0018】
図4は、図3のバイオチップ90の熱ゾーン92の拡大図を示す。各熱ゾーン92は、流体障壁106および基板部分94により画定される流体チャンバ102、104の下にあり得る。各流体チャンバは、別個のプロセスを順次または同時に行うように構成することができる。流体チャンバの使用の一例では、各チャンバは、独立制御された温度で核酸(複数可)(DNA等)を検定するために用いることができる。たとえば、核酸を、種々の温度で同時に検定し、種々の程度の選択性を達成することができる。チャンバ102、104は、互いに分離されていてもよく、または流路108を用いて流体連通していてもよい。流路は、基板98内に、または基板98を貫通して延在してもよく、かつ/または流体障壁106により画定されてもよい。
【0019】
各熱ゾーンは、少なくとも部分的には、基板98上に形成される薄膜110により基板部分に画定することができる。薄膜110は、熱ゾーンの温度を制御するためのヒータおよび温度センサを形成することができる。チャンバ内に電界を形成するための1つまたは複数の電極112が、チャンバの下かつ熱ゾーンの上にある薄膜により形成されてもよい。電極を用いて、たとえば、DNA等の帯電分子を移動または集束させて(focus)、検定プロセスを向上させることができる。電極は、独立してアドレス可能かつ通電可能であり得る。
【0020】
図5は、バイオチップ90からの、熱制御ゾーン92およびその上方のチャンバ102の断面図を示す。熱ゾーン92の薄膜110は、ゾーン92内のヒータを画定することができる。たとえば、導電層116を用いて抵抗性層(resistive layer)114を熱制御回路に含めることにより、チャンバ102内の流体を抵抗加熱するための薄膜抵抗118を提供することができる。温度センサ120を、抵抗118に密接して配置してもよい。センサ120は、基板98の表面96の上方でヒータの下または上に配置される1つまたは複数の個別の薄膜層により形成することができ、これは以下でより詳細に説明する。別法では、またはそれに加えて、センサは、ここで示すように、たとえば半導体基板をドープしてp−n接合を形成することにより、基板内に配置することができる。(位置し得る場所の融通性を示すために、センサ120は点線で示す。)電極112は、薄膜抵抗118の上方に概ね配置することができる。電極は、電極112を導電性トレース122に導電接続する電気バイア124を用いて、導電性トレース122から電圧信号を受け取ることができる。絶縁層126が任意の適当な層(複数可)の下または上にあることにより、特に熱的、化学的および/または電気的絶縁を提供することができる。絶縁層は以下でより詳細に説明する。
【0021】
図6は、バイオチップの熱ゾーン130の熱制御領域の若干概略的な断面図を示す。制御ゾーン130は、基板部分132と基板部分に接続される流体障壁134とを含む。基板部分および流体障壁はそれぞれ、流体が収容されるとともにサンプルが処理されるチャンバ136を少なくとも部分的に画定することができる。
【0022】
基板部分132は、基板98上に、すなわち表面96の上に隣接して形成される複数の薄膜層138を含むことができる。薄膜層は、それぞれ1つまたは複数の薄膜層を用いて、異なる熱制御デバイスおよび形態を画定する。たとえば、基板部分132は、基板98に隣接して形成される下の絶縁層または熱障壁140を含むことができる。この熱障壁または熱層は、基板98よりも効率的に断熱を行うことが可能な任意の他の適した追加層によって形成されてもよい。別法では、熱障壁は、薄膜層でなくてもよく、たとえば基板がシリコンである場合、基板から形成されるフィールド酸化膜であってもよい。基板部分132は、熱制御のための電子デバイスのデバイス層142(すなわち、ヒータ、冷却器および/または温度センサ)を含んでもよい。デバイス層142は、基板および絶縁層140の表面の上にあり得る。別の絶縁層であるパッシベーション層144をデバイス層142の上に置くことにより、流体チャンバ136の流体内容物からデバイス層を電気的および/または化学的に保護してもよい。さらに、熱伝導層146が他の層の上にあってもよい。伝導層146は、デバイス層142と流体チャンバ136との間のより効率的な熱の伝導を促すことができる。いくつかの実施形態では、伝導層146は、金、白金、アルミニウム、銅等の導電性金属または合金から形成することができる。さらに、導電性トレース(図5を参照)を用いて伝導層146を回路に含めることにより、少なくとも1つの電極112を提供することができる。
【0023】
本明細書において用いられるとき、用語「上にある(上の)」および「下にある(下の)」は、一般的に基板に対して画定される空間関係を表す。したがって、薄膜層および薄膜電子デバイスは、基板および基板表面の上にある。さらに、個々の薄膜層は、それぞれが基板に近接した状態で、互いの上または下にあり得る。上のデバイスまたは薄膜層は、対応する下のデバイスおよび層よりも基板から離れており、デバイスの上にある流体チャンバからは近い。
【0024】
図7は、バイオチップの熱制御ゾーン150の一実施形態の断面図を示す。熱制御ゾーン150は、図6の熱制御ゾーン130に関して上述した熱制御デバイスを含む。特に、デバイス層142は、上および下の熱制御デバイス、ヒータ152ならびに温度センサ154を含む。この場合、熱制御デバイスは、「垂直」または積み重ね構成で配置され、すなわち、基板98の表面96に対してほぼ垂直な線がデバイスそれぞれと交わる。より一般的には、基板部分は、上述の、または後にセクションIIおよびセクションIIIにおいて説明されるデバイスのいずれかを含む、任意の適当な電子デバイスの垂直または積み重ね構成を有し得る。たとえば、熱伝導層146は、これはヒータ152および温度センサ154それぞれの上にもある電極112を含む。
【0025】
ヒータ152および温度センサ154は、薄膜層を共有することができる。ヒータ152は、電気抵抗性薄膜層158により画定することができる。抵抗性薄膜層158は、上の熱電対層160との熱電対接合部を形成することにより、温度センサ154の一部を画定することもできる。抵抗性薄膜層158および熱電対層160は、層158、160が熱電対接合部165を形成するよう接触する開口部164を伴って形成される電気絶縁層162により部分的に分離され得る。熱電対接合部165において特徴的な温度依存電圧を発生させるために、層158、160は、異なる金属または合金等の異なる材料で形成され得る。熱電対接合部165において発生する電圧の温度依存は、既知であるか、または経験的に決定され得る。(図示を簡略化するために、ヒータおよび熱電対に、かつ/またはヒータおよび熱電対から延びる電気導体は、図7または図8では示していない)。
【0026】
図8は、熱制御ゾーン170の別の実施形態の断面図を示す。図7の熱制御ゾーン150とは対照的に、熱制御ゾーン170は、薄膜層が下のヒータ174と上の温度センサ176との間で共有されていないデバイス層172を含む。この場合、ヒータ174は、抵抗性層178により画定され、絶縁層180によりセンサ176から隔てられる。温度センサの熱電対接合部182は、上記の熱電対接合部165に関して説明したように、2つの異なる層184、186を用いて形成することができる。
【0027】
上述の一次温度センサ154または176は、二次温度センサ(図示せず)に結合することができる。二次温度センサは、一次センサの温度を既知のまたはあまり変動しない温度と比較するために補償回路としての機能を果たすことができる。このような補償回路は、「冷接点」とも呼ばれ、一次温度センサまたは熱電対接合部に寄与する層に電気的に結合されることにより、熱電対接合部および補償回路が直列に接合される。この構成では、熱電対接合部および補償回路にわたって発生する合成電圧が、これら2つのセンサ間の温度の差に比例する。二次温度センサは、限定はしないが、別の熱電対、サーミスタ(抵抗温度センサ)、変性バンドギャップセンサ、p−n接合等を含むことができる。補償回路は、バイオチップの周囲温度または別の温度制御された領域を感知することができる。
【0028】
ヒータおよびセンサの垂直構成を用いた熱制御ゾーン150および170はいずれも、他のヒータ/センサ構成に勝る利点を提供することができる。たとえば、基板表面と平行に配列されるヒータおよびセンサは、種々の流体容積を加熱および感知することができる。したがって、温度制御はあまり正確ではない。他の場合では、ヒータおよびセンサを組み合わせて、抵抗加熱素子およびサーミスタとしての機能を果たす単一の抵抗性層にしてもよい。しかしながら、これは、応答性が小さく精度が低い温度調節手法となる。概して、熱制御ゾーン150、170は、熱制御デバイスの直接的な電力調節を可能にすることができ、これにより特に、1)バイオチップ上の可変寄生電気抵抗、2)温度、環境および/または組成に基づいた材料特性の変化、および/または3)他の発生源からの雑音、が補償される。さらに、熱制御ゾーン150、170は、過剰な電力入力、したがって高すぎる抵抗温度を回避することにより、抵抗ヒータの寿命を延ばすことができる。さらに、ゾーン150、170は、たとえばバブルバルブ(bubble valve)を形成するために所定の期間に気泡を生成および維持するのに効果的に用いることができる。ヒータは、即座に気泡を形成し、次に、慎重に制御しながらさらに加熱することにより気泡を維持することができ、その際にヒータに無駄な電力入力が行われることがない。
【0029】
図9は、異なる熱ゾーン192、194を画定する熱分離形態を有するバイオチップ190の一領域の概略断面図を示す。各熱ゾーン192、194は、たとえばそれぞれ抵抗性層200および電気導体202、204により画定される、独立してアドレス可能なヒータ196、198(または冷却器)を含むことができる。導体は、各熱ゾーン192、194の抵抗性層とともに個別の回路を形成して、各ヒータ上に配置される流体チャンバ136の個別の領域を加熱することができる。熱ゾーン192、194間の熱分離は、熱伝導体および断熱体としての役割を果たす形態により促され得る。熱伝導は、熱拡散部206、208により提供することができる。熱拡散部は、図6の熱ゾーン130の熱拡散部146に関して上述したように、熱(および電気)伝導性の材料で形成することができる。さらに、210で示すように、熱拡散部を互いに離間して配置することができるため、熱が基板表面に対して垂直方向には効率的に伝わるが、熱ゾーン192、194間において水平方向にはあまり効率的に伝わらない。パッシベーション層212、抵抗性層196および他の薄膜層は、必要に応じて、熱ゾーン間に延在していてもよく、またはゾーン間に断続的に延在していてもよい。熱ゾーン192、194と基板98との間の垂直方向の絶縁は、図6の絶縁層140に関して上述したように、絶縁層214により制御されることができる。絶縁層は、各熱ゾーンの平均動作温度に基づいて、かつ/または熱ゾーン間の平均温度差により、構成することができる。たとえば、熱ゾーン192を高温ゾーンとして、熱ゾーン194を低温ゾーンとして構成してもよい。この場合、より大量の熱をチャンバ136に導くために、熱ゾーン192の下の方が絶縁性が高いことが有利であり得る。したがって、絶縁層214がこの熱ゾーンの基板98とヒータ196との間にある。これとは反対に、隣接する熱ゾーン194は、ヒータ198の下に絶縁層214がなくてもよく、または絶縁層がより薄くてもよい。その結果、熱ゾーン192から熱ゾーン194に伝達される熱は、より効率的に基板98へ逸れて、ゾーン194の過熱が回避される。
【0030】
図10は、別のタイプの熱分離形態を有するバイオチップ220の断面部を示す。流体チャンバ222、224は、流体招障壁134により画定される壁226によって分離されるが、下の基板98を通してチャンバ間で熱が伝達されることができる。したがって、熱分離は、薄膜層138および基板98それぞれに形成される開口部228、229により提供され得る。開口部は流体チャンバ間で流体を誘導することもできる。基板および薄膜層により画定される流体誘導路のさらなる態様は、後にセクションIIにおいて説明される。
【0031】
図11は、サンプル分析用のバイオチップを形成する方法230を示す。
【0032】
232において基板が設けられる。基板は、シリコン等の半導体(たとえば、単結晶シリコン)であってもよく、またはガラスまたはセラミック等の絶縁体であってもよい。適当であり得る基板のさらなる例は、後にセクションIIIで提供される。
【0033】
234で示されるように、基板ドープデバイスを、基板内に形成することができる。基板ドープデバイスは、一般的に、拡散プロセス、たとえばpドープおよびnドープにより形成される半導体デバイスである。半導体デバイスとしては、トランジスタ、FET、ダイオードまたは他の半導電性デバイスが挙げられ得る。これらの半導体デバイスは、通常、スイッチング素子、信号処理デバイス、アナログデバイス、論理デバイスおよび/または抵抗等、より高いレベルのデバイスを形成する。別法では、後に説明されるように、半導体デバイスは、基板内ではなく基板上に形成される薄膜層をドープすることにより形成することができる。
【0034】
次に、236で示すように、薄膜電子デバイス(および形態)を、基板表面および基板ドープデバイスの上で、基板上に形成することができる。薄膜デバイスは、238で示すように、まず下のデバイスが形成され、240で示すように、続いて上のデバイスが形成されるように、順次形成することができる。たとえば、ヒータ抵抗等の下の薄膜デバイスをまず形成することができる。このヒータ抵抗は、基板の一部を加熱して、基板のその部分(および流体/サンプルを保持している上のチャンバ)の温度を定義するように構成することができる。240で形成される上の薄膜デバイスは、処理すべきサンプルに隣接して配置される任意のデバイス、たとえば、上述のように、電気的、磁気的、音響的または熱的設計に基づいたデバイスであることができる。ステップ238、240で作製される電子デバイスは、図7の層158等の薄膜層を共有してもよい。いくつかの実施形態では、薄膜電子デバイスは半導体デバイスを含み得る。たとえば、ポリシリコンの層が基板(ガラス基板等)上に形成され、選択的にドープされてもよい。本明細書において用いられるとき、薄膜電子デバイスは、薄膜電子デバイスと繋がって延在する導電層等、これらのデバイスが機能する電子回路の他の部分を含まない。
【0035】
242で示されるように、バイオチップの流体チャンバ間で流体を誘導する流体給送経路が、基板および薄膜層に形成され得る。いくつかの実施形態では、流体給送経路は、薄膜デバイスと同時に形成することができる。流体を誘導するための流体給送経路の形成のさらなる態様は、後にセクションIIにおいて説明される。
【0036】
図12は、下および上の電子デバイスを用いてバイオチップの一連のチャンバ内で分子(またはサンプル)を温度制御式に処理する方法250を示す。252で示すように、DNAの分子または他の核酸分子等の分子を、第1のチャンバに搬送することができる。254で示すように、下のヒータを含む第1の閉ループ温度制御システムが起動されて、第1のチャンバを第1の温度にする。この第1の温度は、第1のプログラム可能な温度プロフィール、さらには一連の異なる温度のシーケンス(DNA増幅に利用されるシーケンス等)であってもよい。この温度シーケンス決定(temperature sequencing)の間または後に、256で示すように、上の電極の第1のアレイが、分子を集束させるために起動され得る。この集束により、分子をチャンバ内に配置するか、またはチャンバから移動させることができる。別法では、集束により、分子を、第1のアレイの電極により画定されるチャンバ内の種々の領域に順次移動させることができる。それぞれ258、260および262で示すように、ステップ252、254および256は、第2のチャンバで繰り返されて、チャンバそれぞれで分子が連続的に処理され得る。
【0037】
II.一体型カートリッジを用いるマイクロ流体分析
本セクションは、サンプルを処理し、かつ/または分析するための、カートリッジの形をとる一体型マイクロ流体デバイスを含むマイクロ流体システムを説明する。また本セクションは、そのデバイスを使用する方法も含む。カートリッジおよび方法のさらに別の態様は、後にセクションIIIにおいて説明される。さらに、後に説明されるカートリッジおよび方法の態様は、セクションIVにおいて説明されるサンプルのうちの任意のものに関して用いられることができ、かつ/またはセクションVにおいて説明される検定のうちの任意のものを用いることができる。
【0038】
図13〜図15は、サンプル、特に核酸を含むサンプルを処理および分析するためのマイクロ流体システム310の一実施形態を示す。図13および図14はそれぞれ、そのシステムの等角図および断面図を示す。図15は、そのシステムの選択された態様を示す、システム310の概略図である。システム310は、制御装置312と、制御装置312に電気的に結合されるように構成される一体型カートリッジ314とを備える。図13および図14では、制御装置によって収容され、それゆえ制御装置内に取り付けられるように位置合わせされ、配置されるカートリッジ314が示される。本明細書において用いられるとき、用語「カートリッジ」は、より大きな制御装置内に取り付けられるように設計された小型のモジュール式ユニットを表す。本明細書において用いられるとき、用語「取り付けられる」は、一般的にカートリッジを制御装置に少なくとも部分的に挿入することによって、カートリッジが制御装置と適当に係合していることを表す。したがって、制御装置312は凹部316を含むことができ、たとえば、カートリッジ314上にある電気的なコンタクトパッド318と凹部316内に配置される対応するコンタクト構造320との間の接触によって形成される電気インタフェースを介して結合することにより、凹部316は、カートリッジ314を係合するように収容する(図14を参照)。別法では、制御装置312は、任意の他の適当な構造を用いて、導電性結合、容量性結合および/または誘導性結合によって、カートリッジ314と電気的に接続することができる。制御装置312は任意の適当なサイズを有することができ、たとえば、手持ちできるほど十分に小さくすることができるか、または作業台または床に置いて用いるためにさらに大きくすることができる。
【0039】
制御装置312は、カートリッジ314内の処理を制御するために、カートリッジ314との間で制御信号を送受信するように構成される。いくつかの実施形態では、カートリッジ314は検出用電子回路を含む。そのような電子回路を備える場合、制御装置は、検定結果を判定するために制御装置312によって用いられる信号をカートリッジ314から受信する。制御装置は、カートリッジ内の電子デバイスとの電気的なリンクを介して、および/またはカートリッジとのインターフェースを有するセンサを介して、カートリッジ内の状態(たとえば、温度、流量、圧力等)を監視し、制御することができる。別法では、またはそれに加えて、制御装置312は、カートリッジ上の情報記憶デバイスから情報を読み出し(後に示される)、カートリッジによって収容される試薬、カートリッジによって実行される検定、許容可能なサンプル量またはタイプ等のカートリッジについての情報を確認することができる。したがって、制御装置312は一般的に、特に電源/グランド線、データ入力線、発射パルス線、データ出力線および/またはクロック線を含む、セクションIIIにおいて後に説明される入力線および出力線のうちのいくつかまたは全てを提供する。
【0040】
制御装置312は、検定データの最終的な処理に関与することができるか、または検定データを別の装置に転送することができる。制御装置312は、複数のデータポイント(たとえば、テスト核酸と受容体のアレイとの結合による(後に示される))の分析、ならびに/あるいはデータの数学的および/または統計的な分析のような結果を解釈することができる。別法では、またはそれに加えて、制御装置312は、検定データを、集中管理される装置のような別の装置に転送することができる。したがって、制御装置312は、転送する前に検定データを符号化することができる。
【0041】
制御装置312は、デジタル情報を処理するコントローラ322を備える(図15を参照)。コントローラは一般的に、324、326、328において双方向の矢印によって示される、制御装置312およびカートリッジ314によって実行される電気的、機械的および/または光学的な活動を調整するための電気信号を送受信する。
【0042】
制御装置312は、図15の326において示されるように、ユーザインターフェース330を介してユーザと通信することができる。ユーザインターフェースは、キーパッド332(図13を参照)、画面334、キーボード、タッチパッド、マウス等を含むことができる。通常、ユーザインターフェースによって、ユーザはデータを入力および/または出力できるようになる。入力されるデータは、たとえば、サンプル処理の開始を指示するために、サンプル処理を中止するために、種々の処理パラメータ(たとえば、回数、温度、実行されるべき検定等)のための値を入力するため等に用いることができる。処理の段階、カートリッジパラメータ、測定結果等のような出力されるデータは、画面334上に表示され、印刷装置(図示せず)に送出され、装置上にあるメモリに記憶され、かつ/または特にパーソナルコンピュータのような別のデジタル装置に送信されることができる。
【0043】
また制御装置312は、カートリッジ314との1つまたは複数の光学的、機械的および/または流体インターフェースも備えることができる(図14および図15を参照)。光学インタフェース336は、カートリッジ314に光を送信し、かつ/またはカートリッジ314から光を受信することができる。光学インタフェース336は、カートリッジが制御装置312と係合する際に、カートリッジ314の光学的に透明な領域338と位置合わせされることができる(図14および後の説明を参照)。したがって、光学インタフェース336は、1つまたは複数の放出器と、カートリッジから光学的な情報を受信するための1つまたは複数の検出器とを備える検出機構としての役割を果たすことができる。そのような光学的情報は、カートリッジ内で処理することによって生成される検定結果に関連付けることができる。別法では、またはそれに加えて、光学インタフェース336はサンプル処理の態様に関与することができ、たとえば、光触媒化学反応、サンプル破壊、サンプル加熱等のための光源を与えることができる。いずれの場合でも、光学インタフェース336の動作はコントローラ322によって指示されることができ、図15において324で示されるように、対応する測定値がコントローラ322によって受信され、それにより光学インタフェース336からの測定値が電子的に処理されるとともに記憶されることができる。制御装置312は、たとえば、カートリッジに圧力を加えるか、または加える圧力を調節するために、1つまたは複数の電子制御された機械インタフェース(図示せず)を備えることができる。制御装置312の例示的な機械インタフェースは、特に、1つまたは複数のバルブアクチュエータ、バルブアクチュエータを制御するバルブレギュレータ、シリンジポンプ、ソニケータおよび/または空気圧力源を含むことができる。いくつかの実施形態では、制御装置は、制御装置をカートリッジに流体連通するように接続する1つまたは複数の流体インターフェースを備えることができる。たとえば、制御装置は、流体を格納し、その流体をカートリッジに搬送する流体貯蔵室を含むことができる。しかしながら、ここに示される制御装置312は、カートリッジ314と流体連通するように結合するようには構成されない。代わりに、本実施形態では、カートリッジ314は、動作中に閉じたまたは分離された流体システムであり、すなわちサンプルが収容された後には、流体がネットワークに追加されたり、ネットワークから除去されたりすることが概ねない流体ネットワークである。マイクロ流体システム内の光検出、ならびに機械的および流体インターフェースのさらに別の態様はセクションIIIにおいて後に説明される。
【0044】
カートリッジ314は必要に応じた構成および寸法を有することができる。いくつかの実施形態では、カートリッジ314は使い捨てであり、すなわち1つのサンプルまたは1組のサンプルを(一般的に同時に)分析するために一度だけ使用することを目的とする。カートリッジ314のサイズは、実行されるべき検定、操作されるべき流量、カートリッジの流体以外の容積等によって決定することができる。しかしながら、カートリッジ314は通常、片手で容易に掴むことができ、かつ操作することができるほど十分に小さい(またはさらに小さい)。
【0045】
カートリッジ314は通常、少なくとも2つの構造的および機能的に異なる構成要素、すなわち流体操作部342と検定(またはチップ)部344とを備える。流体操作部は、たとえばバルブおよびポンプを動作させるために、制御装置との機械的な外部インターフェースを形成するハウジング345を備えることができる。ハウジングは内部の流体区画の構造を画定することができる。またハウジング345は、カートリッジの外部構造を概ね画定することもでき、それゆえ、ユーザが手持ちするための掴み面を提供することができる。検定部344は、流体操作部342に、たとえば流体操作部342の外部または内部表面上に固定することができる。たとえば、光学インタフェース336を用いる場合のように、結果が光学的に測定されるときには、検定部344を外部に取り付けることが好ましい場合もある。結果が電気的に測定されるとき、または流体操作部342が光学的に透明であるときには、内部および/または外部に取り付けることが好ましい場合がある。後に説明されるように、検定部344も通常流体操作部342に流体連通するように接続されており、これらの2つの部分間で流体が行き来できるようにする。
【0046】
このように、流体操作部342は、カートリッジの外部から流体を受け取り、その流体を収容し、たとえば、機械的に流体を流動させることによって、流体操作部342および検定部344の両方の流体区画にその流体を供給するように構成されることができる。したがって、流体操作部は、検定部344の対応する流体ネットワーク(または流体空間)348よりもはるかに大きな流体容量(容積)を有する流体ネットワーク346を画定することができる。各流体ネットワークは1つの流体区画を有することができるか、より典型的には、複数の流体連通するように接続されている流体区画、一般的には流体導管によって接続されるチャンバを有することができる。
【0047】
流体操作部342は、サンプル入力場所またはポート350を備える。サンプル入力場所350は一般に外部からアクセス可能であるが、サンプルがその場所に導入された後に封止することができる。1つのサンプル入力場所350を含むカートリッジ314が示されるが、任意の適当な数のサンプル入力場所を流体操作部342に収容することができる。
【0048】
また流体操作部342は、支援試薬を収容するための1つまたは複数の試薬貯蔵室(または流体貯蔵チャンバ)352も備える(図15を参照)。試薬貯蔵室352はそれぞれ外部からアクセス可能であり、それにより流体操作部が製造された後に、試薬を取り込むことができるようにする。別法では、試薬貯蔵室352のうちのいくつかまたは全てが、製造中に試薬を取り込むことができる。支援試薬は一般的に、サンプル処理、分析および/またはカートリッジ314の全般的な動作に関与する任意の流体溶液または混合物を含む。
【0049】
また流体操作部342は、予備処理チャンバ(複数可)354および/または廃棄物チャンバ(複数可)356のような、1つまたは複数のさらに別のチャンバを備えることもできる。予備処理チャンバ(複数可)354および廃棄物チャンバ(複数可)356は、たとえば、サンプル入力場所350および/または試薬貯蔵室352を介して内部だけからアクセス可能な場合があるか、またはそれらチャンバの1つまたは複数が、外部からユーザによってアクセス可能な場合がある。予備処理チャンバ(複数可)は、一般的に流体が流れるのに応じて、サンプルの組成を変更するように構成される流路である。たとえば、そのような流路は、分析物(たとえば核酸)を、入力されるサンプルから単離することができ、すなわち、以下に記載されるように、分析物を廃棄物またはそのサンプルの廃棄部分から少なくともある程度分離することができる。流体操作部のさらに別の態様は、セクションIIIにおいて後に説明される。
【0050】
好ましい一実施形態では、流体操作部342、そして実際にはカートリッジ314の全ての流体区画は、サンプル入力350を除いて、顧客がアクセスできないように封止される。この封止は、試薬が汚染される可能性を回避し、安全性を確保し、かつ/または流体操作部342からの流体の損失を防ぐための役割を果たすことができる。試薬のうちのいくつか、および/または予備処理および/またはさらに別の処理の結果として生成される処理副生成物は有毒な場合があるか、そうでなくても、それら試薬または副生成物が漏出し、かつ/またはユーザに触れる場合には、ユーザにとって有害な場合がある。さらに、試薬のうちのいくつかは非常に高価であり、それゆえ、カートリッジ314内の供給量が最小限に抑えられる場合がある。したがって、カートリッジ314の好ましい実装形態は、サンプル入力350のみのための流体インターフェース(複数可)と、電気インタフェース318と、オプションで機械的、光学的および/または音響的インターフェースとを有する、一体型で、封止された、使い捨てのカートリッジである。
【0051】
検定部344は、流体操作部342において核酸が単離された後に、流体ネットワーク348内の核酸をさらに処理するように構成される。したがって、検定部344は電子回路または電子回路部358を基にし、それは、流体操作部342から受け取られる核酸を制御しながら処理するのを容易にするために、薄膜電子デバイスを含むことができる。それに対して、検定部344内の大量の流体の流れは、流体操作部342から機械的に流動させた流体によって媒介され、検定部344を通って、流体操作部342に戻ることができる。
【0052】
検定部の電子回路部358は、流体および/または分析物の特性を変更および/または感知するための薄膜電子デバイスを含むことができる。そのような薄膜デバイスの例示的な役割は、単離された核酸を濃縮すること、その核酸を種々の反応チャンバおよび/または検定場所に移送すること、反応条件を制御すること(たとえば、増幅、受容体へのハイブリダイゼーション、二本鎖核酸の変性等において)等を含むことができる(セクションIIIも参照されたい)。薄膜デバイスは流体ネットワーク348の任意の領域に動作可能に接続されることができる。動作可能な結合は、たとえば、電極によって流体と直に接触させること、または1つまたは複数の絶縁性薄膜層によって流体から離隔して配置されることを含むことができる(以下の説明を参照)。いずれの場合でも、動作可能に配置されるデバイスは、基板の表面付近に配置されることができる(以下の説明を参照)。電子回路部、薄膜層および基板のさらに別の態様は、このセクションおよびセクションIIIにおいて後に説明されるであろう。
【0053】
検定部344の電子回路部358は、制御装置312と電気的に接続することによって、少なくとも部分的に制御される。たとえば図15に示されるように、コントローラ322が、コンタクト構造320を介して、328で示されるように、カートリッジ314の流体操作部342上に配置されるコンタクトパッド318と結合することができる。コンタクトパッド318はさらに、360で示されるように、電子回路部358と電気的に接続することができる。回路部358をさらに複雑にし、かつ/またはカートリッジ314上にある個別のコンタクトパッド(または場所)の数を最小限に抑えるために、1つまたは複数の付加的な集積回路またはインターフェース回路が、たとえば回路部358への中間にあるコンタクトパッド318に電気的に接続されることもできる。こうして、コンタクトパッドは単体で、またはインターフェース回路と組み合わせて、カートリッジが制御装置内に取り付けられるときに、電子回路をコントローラに電気的に結合する相互接続回路を形成する。またコンタクトパッドは、カートリッジ314内、たとえば図に示されるように流体操作部342内に支持される電子情報記憶デバイス362に接続することもできる。情報記憶デバイスは、流体ネットワーク構成、貯蔵室内容量、検定能力、検定パラメータ等のような、カートリッジに関連する情報を記憶することができる。別の実施形態では、コンタクトパッド318または他の電気的な結合構造を、流体操作部342内に収容する代わりに、またはそれに加えて、検定部344上に配置することができる。
【0054】
検定部344は通常、少なくとも部分的に回路部358の動作によって、流体ネットワーク348において核酸処理を実行するように構成される。ここでは、流体ネットワーク348は3つの機能的な領域、すなわち濃縮器364と、増幅チャンバ366と、検定チャンバ368とを備えるように示される。以下にさらに詳細に説明されるように、これらの機能領域はそれぞれ、核酸の保持および遊離(それゆえ濃縮)を容易にし、かつ/または電極のサブセットに向けて核酸を誘導するのを容易にするために、複数の電極を含むことができる。濃縮器364およびチャンバ366、368は、図示されるように、異なる区画/流路によって、たとえば、一連の区画のアレイとして画定されることができる。別法では、これらの機能領域は部分的に、または完全に重複することができ、たとえば全て1つのチャンバによって設けられることができる。
【0055】
各チャンバ(または各チャンバ内の領域)の温度は、独立して制御することができる(上記のセクションIを参照)。したがって、各チャンバまたはチャンバ領域は、たとえば各チャンバまたは領域において最適なサンプル処理を行うために、異なる温度にすることができる。温度は、核酸ハイブリダイゼーション反応等のために一定であってもよく、または核酸増幅中の熱サイクル等のために可変であってもよい。
【0056】
濃縮器364は、予備処理チャンバ354から受け取られた核酸を濃縮するように構成される。濃縮器364の電極には電気的に正にバイアスをかけることができ、一方、流体は流体操作部342から、濃縮器を通って、流体操作部342内の廃棄物チャンバ356に戻ることができる。したがって、濃縮器364は、複数の個別の場所において流体操作部342に流体連通するように接続することができ(図17〜図23を参照)、それにより濃縮器は導管としての役割を果たすことができるようになる。その導管によって、濃縮器の流体容量よりもはるかに大きな流量を(2つの流体操作部の貯蔵室間で)移送できるようになる。この処理ステップは流体を除去し、かつ、特に、正に帯電しているか、帯電していないか、または弱く負に帯電している物質を除去することによって核酸をある程度精製することができる。
【0057】
増幅チャンバ366は、増幅反応を用いて検定感度を上げることにより、濃縮された核酸の中から1つまたは複数の標的核酸を複製するために用いることができる。増幅反応は一般的に、標的核酸の分子の全数(または標的種内に含まれる或る領域)を増加させる任意の反応を含み、結果として一般的に、核酸全体に対して、標的核酸が濃縮される。DNAを複製する酵素、DNAからRNAを転写する酵素および/またはテンプレートによって誘導されるプライマーの連結を実行する酵素が、増幅反応を媒介することができる。用いられる方法および酵素によって、増幅は、熱サイクルによるもの(たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリガーゼ連鎖反応(LCR))を含む場合があるか、または等温性のもの(たとえば、鎖置換増幅(SDA)または核酸配列に基づく増幅(NASBA))を用いることができる。これらの方法のうちの任意の方法の場合に、チャンバ366内の温度制御は、回路部358に収容される薄膜ヒータのようなヒータによって行うことができる。核酸は、たとえば、標識されたプライマーまたはヌクレオチドを取り込むことにより、増幅中に検出を容易にするように標識されることができる。プライマーまたはヌクレオチドは、セクションIIIにおいて後に説明され、表1に列挙されるように、色素、放射性同位元素または特異結合部材で標識されることができる。別法では、核酸は、別個の処理ステップにおいて(たとえば、末端転移酵素、プライマー伸長、親和性試薬、核酸色素等)またはサンプルを入力する前に標識されることができる。そのような別個の標識は、たとえば、十分な量の標的核酸が入力されたサンプルに含まれているので増幅ステップが省略される際に適している場合がある。
【0058】
検定チャンバ368は、特定の配列、長さおよび/または配列モチーフの存在によって核酸を分離または識別する処理ステップを実行することができる。いくつかの実施形態では、検定チャンバは、核酸のための1つまたは複数の特定の受容体を含む。受容体は、標的核酸に特異的に結合する任意の試薬を含むことができる。例示的な受容体は、一本鎖核酸、ペプチド核酸、抗体、化合物、ポリマー等を含むことができる。受容体はアレイ内に配置され、一般的には所定の位置に固定化することができ、標的核酸を受容体のうちの1つに結合することによって、検定チャンバ内の所定の位置(複数可)において検出可能な信号が生成されるようにする。したがって、増幅が用いられるとき、増幅された核酸(標的)は、結合を検査するために各受容体と接触する。受容体アレイは、以下にさらに詳細に説明されるように、アレイの受容体上に電気的に標的を集める電極に隣接して配置されることができる。別の実施形態では、検定チャンバは、たとえば、電気泳動および/またはクロマトグラフィを用いて、サイズに応じて標的核酸を分離することができる。別法では、またはそれに加えて、検定チャンバは、分子ビーコンプローブのような、固定化されない受容体を設けることができ、かつ/または受容体を用いない検出用の場所を設けることができる。
【0059】
光学インタフェース336は、検定部344の任意の適当な場所においてサンプル処理を測定することができる。たとえば、上記のように、光学インタフェースは、増幅チャンバ366内の核酸の増幅を監視するための放出器−検出器対と、検定チャンバ368において処理した後の増幅された核酸の結合および/または場所を検出するための放出器−検出器対とを別々に備えることができる。別法では、またはそれに加えて、光学インタフェースは、チップ流体ネットワーク348の中の流体の動きを監視することができる。
【0060】
図15は、370で示されるような、太い矢印によって示される、サンプル処理中に流体ネットワーク346および348の中を流れる流体の動き(試薬および/またはサンプル)の例示的な方向を示す。一般的に、流体は、試薬貯蔵室352から、サンプル入力場所350および予備処理チャンバ(複数可)354を通って、廃棄物チャンバ(複数可)356および検定部344まで流れる(以下の説明を参照)。流体操作部342から検定部344に入る流体は、廃棄物チャンバ(複数可)356に戻されるか、または検定部内の他の流体区画に移されることができる。
【0061】
図16は、制御装置312を用いてカートリッジ314を操作し、サンプル内の標的核酸(複数可)を分析するための例示的な方法380の流れ図を示す。最初に、382で示されるように、たとえば注入によって、サンプルをカートリッジ314のサンプル入力場所350において導入する(取り込む)ことができる。次に、384で示されるように、たとえば、導電接触させるためにカートリッジを凹部316と係合させることにより、そのサンプルを含むカートリッジを制御装置314に電気的に結合することができる。386で示されるように、そのような取込みおよび接続は逆の順序で実行されることもでき、すなわち、カートリッジを制御装置に接続した後に、サンプルをカートリッジに導入することもできる。その後、388で示されるように、処理を開始するためにカートリッジを起動することができる。カートリッジは、ユーザインターフェース330を介してユーザからの入力によって、カートリッジを制御装置に結合することによって、サンプルを導入することによって、かつ/または他の行為によって起動することができる。起動された後に、390で示されるように、サンプルは予備処理される。予備処理は通常、以下にさらに説明されるように、サンプルを予備処理チャンバ354に移し、必要に応じて、サンプルを処理して核酸を遊離および単離する。単離された核酸は、一般的に流体を機械的に流動させることにより、検定部344内の濃縮器364に移され、392に示されるように濃縮される。濃縮された核酸は、対象の核酸を標的とするプライマーを用いて、394に示されるように、必要に応じて選択的に増幅することができる。次に、増幅された核酸は、396に示されるように、たとえば、受容体または受容体アレイを増幅された核酸と接触させることによって検定することができる。その後、398に示されるように、検定結果を光学的におよび/または電気的に検出することができる。
【0062】
図17は、カートリッジ314の流体操作部342および検定部344においてそれぞれ相互に接続される流体ネットワーク346、348によって形成される1つの例示的な自給式流体ネットワーク402のさらに詳細な図を示す。チャンバは長方形として、または円によって表される。チャンバを相互に接続するチャネル404は平行な線によって表される。図示されるように、チャネル404は、流体操作部342と検定部344と間の接合部405を横切る場所において、その2つの部分を流体連通するように接続する。バルブ406は、塗り潰した「ボータイ」(閉じたバルブ)または白抜きのボータイ(開いたバルブ;以下の説明を参照)によって表される。バルブは通常電気的に起動されるので、制御装置312に電気的に接続されることができる(図示せず)。別法では、またはそれに加えて、バルブは、制御装置312上の電気作動式のバルブアクチュエータ/レギュレータによって機械的に操作することができる。例示的なバルブは、ソレノイドバルブおよび1回使用のバルブを含む。ガス選択通気口408は、終端されたチャネル上にある細い長方形によって表される(たとえば、検定チャンバ368上の通気口を参照)。適当なバルブおよび通気口はセクションIIIにおいてさらに説明される。
【0063】
図17は、サンプルを収容し、起動される準備がなされたカートリッジを示す。したがって、カートリッジは、流体を表すための点描によって示されるように、試薬貯蔵室352内に試薬を予め取り込んでいる。試薬を予め取り込んでいる試薬貯蔵室352は、適当なpH、緩衝能力、イオン強度、溶媒組成等を有する洗浄液410、412を収容することができる。また、1つまたは複数の貯蔵室352は溶解試薬414を収容することもでき、溶解試薬414はたとえば、カオトロピック剤、高いまたは低いイオン強度の緩衝剤、1つまたは複数のイオンまたは非イオン洗浄剤、有機溶媒(複数可)等を含むことができる。さらに、1つまたは複数の貯蔵室352は、PCR混合物416のような増幅混合物、または1つまたは複数の増幅試薬を含む任意の他の混合物を含むことができる。一般的には、対象の核酸(複数可)に選択的にハイブリダイズする任意の核酸(複数可)を増幅試薬として用いることができる。
【0064】
PCR混合物416は一般的に、適当な緩衝剤、Mg+2、標的核酸(複数可)を選択的に増幅するために特異なプライマー、dNTP、熱安定ポリメラーゼ等を含む。1つまたは複数のプライマーおよび/またはdNTPは、上記のように、たとえば色素またはビオチンで標識することができる。PCR混合物416の代わりに、カートリッジによって実施される増幅方法に基づいて、任意の他の適当な増幅混合物を用いることもできる。さらに、RNAを分析するために、PCR混合物は逆転写酵素を含むことができる。別法では、個別の貯蔵室が、一般的には増幅前に、RNAをテンプレートとして用いて相補DNAの合成を実行するための試薬を供給することができる。
【0065】
試薬貯蔵室352は、流体を機械的に流動させることにより、流体を移送するように構成されることができる。たとえば、試薬貯蔵室352は折り畳み式バッグの構造をとることができ、ばねまたは他の弾性構造体が各バッグに正圧をかけることができる。別法では、試薬貯蔵室352はガスで加圧されることができる。どのような加圧機構であっても、バルブ406を操作して、各貯蔵室からの試薬の移送を選択的に制御することができる。セクションIIIは、機械的に流体を流動させるための、さらに別の例示的な機構を説明する。
【0066】
カートリッジ314は種々の機能を実行するための内部チャンバを備える。内部チャンバは廃棄物チャンバ356、この場合には、AおよびBで示される2つの廃棄物チャンバを含む。廃棄物チャンバ356は、試薬貯蔵室352(およびサンプル入力350)から流体を受け取り、それゆえ通気口408を含み、ガスが廃棄物チャンバから排気されるようにすることができる。内部チャンバ(流路)は、サンプルチャンバ418と、フィルタスタック420と、チップチャンバ364、366、368とを備えることができる。サンプルチャンバ418およびフィルタスタック420はそれぞれ、以下にさらに説明されるように、サンプルを受け取り、それを予備処理するように構成される。検定チャンバ368は、調整通気口422によって、すなわち通気口408を制御するバルブ406によって排気されることができる。内部チャンバおよび/またはチャネル404のうちのいくつかまたは全てを、たとえば、カートリッジ製造の一部として、適当な流体で下塗りすることができる。詳細には、検定部344のチャンバ/チャネルを下塗りすることができる。それに対して、いくつかのチャンバおよび/またはチャネルは、カートリッジ起動前に下塗りされなくてもよい。
【0067】
図18は、サンプルを取り込んでいる最中のカートリッジ314内の流体の動きに関する活動している領域を示す。この図、および図19〜図22では、濃い点描は活動している領域を示すのに対して、薄い点描はカートリッジ内の他の場所にある貯蔵室内の試薬または廃棄物を示す。液状サンプルのようなサンプルが、サンプル入力場所350において取り込まれ、424で示される経路に概ね従って、サンプルチャンバ418によって受け取られる。取り込まれることができるサンプルの量は、ここでは、サンプルチャンバ418上にある通気口408と、サンプルチャンバ418の容量とによって制限される。一旦、サンプルチャンバ418が満たされたなら、通気口408は、それ以上のサンプルの導入を制限する逆圧を与えることができる。別法では、またはそれに加えて、サンプル容量に達した時点を知らせるために、サンプルチャンバ418内に、またはその周囲に、電気的または光学的な流体センサ(図示せず)を配置することができる。サンプルチャンバ418から下流にあるバルブ426が、この時点でサンプルがフィルタスタック420に流れるのを防ぐことができるか、または、たとえば、廃棄物チャンバAを通して排出することにより、サンプルをサンプル入力場所350からフィルタスタック上にそのまま取り込むことができる。
【0068】
サンプルは任意の適当な形態をとることができ、たとえばセクションIVにおいて後に説明されるサンプルの任意のものを用いることができる。しかしながら、ここで説明されるカートリッジの実施形態は、核酸427を分析するように構成されるので、サンプルは一般的に核酸、すなわちDNAおよび/またはRNAを含有するか、または核酸を搬送するように懸濁される。核酸427は組織または生物学的粒子内で保持され、そのような組織または粒子からの抽出物内に存在し、かつ/または部分的にまたは完全に精製することができる。細胞428、ウイルスおよび細胞小器官が例示的な生物学的粒子である。取り込まれるサンプルの量は、サンプルの利用能、少量でも容易に取り扱うことができること、サンプル内の標的核酸存在量および/またはカートリッジ容量等に基づいて、任意の適当な量にすることができる。
【0069】
図19は、サンプルを予備処理している最中のカートリッジ314内の流体の動きに関する活動している領域を示す。溶解試薬314は、バルブ430、432、434を開くことにより、経路429に沿って導入することができる。こうして、溶解試薬は通常、その核酸427を含むサンプルを、サンプルチャンバ418からフィルタスタック420まで搬送する。余分な流体は廃棄物チャンバAに搬送することができる。フィルタスタックは一般的に、核酸の単離を実行する、すなわちサンプル廃棄物から核酸を少なくともある程度分離するように構成され、それは少なくとも3つの機能、すなわち粒子濾過、核酸のサンプルからの遊離および遊離された核酸の保持のうちの任意の機能または全ての機能によって実行される。ここでは、廃棄物は、中でも、対象の核酸に相当しない、任意のサンプル由来の成分、合成物、凝集物または微粒子と定義される。例示的な廃棄物は、細胞片またはウイルス片、壊れていない細胞またはウイルス粒子、細胞膜、細胞質成分、核酸以外の可溶性物質、核酸以外の不溶性物質、対象としない核酸等を含む場合がある。また廃棄物は、核酸を濃縮するために除去される、サンプル由来の流体を含む場合もある。
【0070】
濾過は、細胞、粒子、細片等を機械的に保持するフィルタによって実行される任意のサイズ選択過程である。したがって、フィルタスタックは、処理を中断するためにサンプル粒子(細胞、ウイルス等)を局在化させることができ、カートリッジ流体ネットワーク402内の下流の処理および/または流体の流れを妨害する恐れがある微粒子を除去することもできる。この第1の機能のために適したフィルタは小細孔膜、繊維フィルタ、縮径されたチャネル等を含むことができる。1つまたは複数のフィルタをフィルタスタックに含むことができる。いくつかの実施形態では、フィルタスタックは、流体が流れる方向に沿って排除限界が減少していく一連のフィルタを含む。そのような一連の配列は、フィルタが粒子で目詰まりを起こす度合いを低減することができる。
【0071】
フィルタスタック420上に保持されるサンプルは、サンプル内の未処理の、および/または利用しにくい形態から核酸427を遊離する処理にかけられることができる。別法では、またはそれに加えて、遊離処理は、フィルタスタック上にサンプルを保持する前に実行される場合もある。その処理は細胞表面、核および/またはミトコンドリア膜の完全性を変更することができ、かつ/または特に細胞下構造を脱凝集させることができる。例示的な遊離処理は、圧力の変化(たとえば、音波または超音波/パルスまたはフレンチプレスの場合のようなチャネル縮径によって生成される圧力降下)、温度の変化(加熱および/または冷却)、電圧パルスのような電気的処理、洗浄剤、カオトロピック剤、有機溶媒、高塩または低塩等を用いる化学的処理、流体区画内の突起(スパイクまたは鋭いエッジ等)等を含むことができる。ここでは、核酸を搬送する細胞428から遊離された後の核酸427が示される。
【0072】
核酸保持は一般的にフィルタの下流で実施される。核酸保持は、核酸427を可逆的に結合する保持マトリクスによって実施することができる。この第2の機能のために適した保持マトリクスは、中でもビーズ、粒子および/または膜を含むことができる。例示的な保持マトリクスは、正に帯電している樹脂(イオン交換樹脂)、活性シリカ等を含むことができる。一旦、核酸427が保持されたなら、保持された核酸427に、さらに別の溶解試薬または洗浄液を流し、保持されない夾雑物を除去することができる。
【0073】
図20は、フィルタスタック420から核酸427を遊離し、検定部344の濃縮チャンバ364において、遊離された核酸427を濃縮する際のカートリッジ314内の流体の動きに関する活動している領域を示す。流体は、410で示される洗浄液Aから、サンプルチャンバ418およびフィルタスタック420を通って、流体経路436に沿って、異なる廃棄物チャンバ、すなわち廃棄物チャンバBまで流動する。経路436に沿って流動を開始するために、バルブ430および434が閉じられ、バルブ432は開いた状態のまま、バルブ438および440が開けられる。洗浄液Aは、フィルタスタック420内に保持された核酸427を遊離するように構成されることができる(図19を参照)。したがって、洗浄液Aは、核酸427がフィルタスタック内の保持マトリクスによって保持される仕組みに基づいて配合されることができる。保持された核酸を遊離するための洗浄液は、たとえば、流体のpH、イオン強度および/または誘電率を変化させることができる。例示的な洗浄液は、高または低pH、高または低イオン強度、有機溶媒等を含むことができる。予備処理は、サンプルに由来する核酸の第1のステップの濃縮および精製を実現することができる。
【0074】
遊離された核酸427は、濃縮チャンバ364においてさらに濃縮(および精製)することができる。濃縮チャンバ364は通常検定部344内に形成され、1つまたは通常複数の電極を備える。その電極のうちの少なくとも1つは、遊離された核酸が濃縮チャンバ364に入る前に、または入る際に、電気的に(正に)バイアスをかけられることができる。結果として、濃縮チャンバ364中を流れる核酸427は正にバイアスをかけられた電極(複数可)に引き付けられ、それにより保持されることができる。核酸427を搬送する大量の流体と、それに加えられる洗浄液Aは、廃棄物チャンバBまで流れ続けることができる。したがって、核酸427は濃縮され、濃縮チャンバ364内に保持することによってさらに精製されることができる。このように核酸427を濃縮することによって、検定部344は、非常に小さな容積の流体区画、たとえば、約1マイクロリットル未満の流体容積を有し、処理が行われる区画を有することができるようになる。電極の構造、数、配置およびコーティングのさらなる態様が後に説明される。
【0075】
図21は、濃縮された核酸を検定部344の増幅チャンバ366に移送する最中のカートリッジ314内の流体の動きに関する活動している領域を示す。図示されるように、通常流体は、PCR混合物416を保持しているチャンバ352から、流体経路442に沿って、増幅チャンバ366まで流れる。経路442に沿って流体を流動させるために、濃縮チャンバ364において保持用の正のバイアスが電極(複数可)から除去されるときに、バルブ438および440が閉じられ、バルブ444および通気バルブ422が開けられる。PCR混合物416は、流体を流動させることにより核酸427を搬送することができる。別法では、増幅チャンバ366内の電極に正のバイアスがかけられ(以下の説明を参照)、PCR混合物416が予め取り込まれている増幅チャンバ366に、核酸427を電気泳動によって移送することができる。いずれの場合でも、増幅チャンバ366からの、および検定チャンバ368への余分な流体の流れは、たとえば、接続用のチャネル446内の流体レベルを監視し、通気バルブ422を閉じる適当なタイミングを知らせる電気または光センサ(図示せず)によって制限することができる。いくつかの実施形態では、核酸427を増幅チャンバ366に移動させる前には、濃縮チャンバ364は最初にPCR混合物416と平衡状態にされることができる。たとえば、PCR混合物416は、濃縮チャンバ364内の保持用の正のバイアスを除去し、通気バルブ422を開ける前に、開けられたバルブ440を通って廃棄物チャンバBに誘導されることができる。増幅チャンバ366内に存在する核酸427は、たとえば、核酸427の中の対象の核酸標的(または標的領域)447の量を選択的に増加させるために、等温インキュベーションまたは熱サイクルによって増幅されることができるか、場合によっては、増幅されないままにされることができる。
【0076】
図22は、増幅された核酸447を検定部344の検定チャンバ368に移送する最中のカートリッジ314内の流体の流れに関する活動している領域を示す。流体は、洗浄液Bを保持するチャンバ352から検定チャンバ368まで流体経路448に沿って流れる。流体経路448は、バルブ450および通気バルブ422を開くことにより開通させることができる。検定チャンバ368は、たとえば、通気バルブ422の通気口408によって、または、たとえば流体の位置を監視し、バルブ450が閉じる信号を送出するセンサによって、溢れないように制限することができる。上記のように、核酸427および増幅された標的核酸447は、流体の流れによって、かつ/または検定チャンバ368内に配置される電極を用いて電気泳動させることによって移送することができる(以下の説明を参照)。いくつかの実施形態では、通気バルブ422を閉じ、バルブ440、450を開き、それにより洗浄液Bを増幅チャンバ366および濃縮チャンバ364を通って廃棄物チャンバBに誘導することにより、増幅チャンバ366は最初に洗浄液Bと平衡状態にされることができる。別法では、またはそれに加えて、増幅された核酸(複数可)447は、検定溶液が予め取り込まれている検定チャンバ368に電気泳動によって移送することができる。
【0077】
増幅された標的核酸(複数可)447(および単離された核酸427)は、検定チャンバ368において検定することができる。たとえば、検定チャンバ368は、セクションIIIにおいて説明されるように、核酸を同定および/または定量するために配置される1つまたは複数の受容体(位置アレイ)を備えることができる。増幅された核酸447の受容体へのハイブリダイゼーションは、検定チャンバ368内の受容体付近に配置される電極によって支援されることができる。その電極は、増幅された核酸をアレイの個々のメンバ(またはサブグループ)に誘導するように、順に正のバイアスをかけられることができる。特異結合またはハイブリダイゼーションを可能にするために、増幅された標的核酸(複数可)447をアレイの多くの、または全ての場所に電気泳動によって移動させた後に、結合されないか、またはハイブリダイズされない核酸(複数可)は電気泳動によって、および/または流体の流れによって除去することができる(ここでは示されない)。
【0078】
図23および図24は、検定部344の選択された態様を示しており、それぞれ外部カートリッジ314から見た平面図および断面図を示す。検定部344は基板部分458を含む。基板部分458は、検定部の流体区画を少なくとも部分的に画定する。基板部分は基板460を含むことができる。また基板部分は、基板上に形成され、基板の表面462付近に配置される電子回路部358および/または薄膜層を含むこともできる。回路部の薄膜電子デバイスおよびネットワーク348の流体区画はそれぞれ、基板の共通の表面付近に配置されることができ、それにより、電子デバイスが流体ネットワークの領域に近接して並置され、かつ/または流体連通するように接触する。したがって、薄膜デバイスは、流体ネットワーク348内の流体(またはサンプル/分析物)の特性を変更し、かつ/または感知するように構成されることができる。基板460のための例示的な材料はシリコンであり、通常単結晶シリコンである。他の適当な基板材料および特性はセクションIIIにおいて後に説明される。
【0079】
流体ネットワーク348、または1つまたは複数の流体区画からなる流体連通するように接続される流体空間は、基板部分458および流体障壁463を用いて、基板の表面462付近に共同的に画定されることができる。流体空間は、基板部分と流体障壁との間に流体を保持するための全流体容量を決定することができる。用語「共同的に画定される」は、流体空間またはその流体区画が、概ね(または完全に)基板部分458と流体障壁463との間に配置されることを意味する。流体障壁463には、流体ネットワーク348またはその区画から障壁を通って、流体がデバイスの外部に実質的に漏出または流出するのを防ぐ任意の構造を用いることができる。流体がカートリッジから実質的に流出するのを防ぐことは、流体の液滴、小滴または液流が流体障壁を通ってデバイスから離れることがないことを意味する。したがって、流体障壁は、流体ネットワーク348をデバイスの外部にある領域に流体連通するように接続する開口部を有さない。また流体障壁は、流体障壁と基板部分との間の接合部に画定される周辺部を流体連通しないように封止して、その接合部において流体がカートリッジから実質的に流出するのを防ぐこともできる。通常、流体障壁は流体ネットワーク348から流体が蒸発して失われるのも制限する。
【0080】
流体ネットワーク348は以下のように形成されることができる。基板460および/または回路部358の表面462は、流体ネットワーク348の底壁464を画定することができる。パターニングされたチャネル層466が表面462および底壁464上に配置され、側壁468を画定することができる。チャネル層466は、限定はしないが、ネガまたはポジフォトレジスト(たとえば、SU−8またはPLP)、ポリイミド、ドライフィルム(たとえば、デュポン リストン)および/またはガラスを含む、任意の適当な材料から形成されることができる。チャネル層466をパターニングするための方法は、フォトリソグラフィ、微細機械加工、成形、スタンピング、レーザエッチング等を含むことができる。カバー470が底壁464から離隔してチャネル層466上に配置され、電子回路部358から離隔して流体ネットワーク348の上側領域を封止することができる(図24を参照)。カバー470には、チャネル層466に結合されるか、他の方法で取り付けられる層のような、チャネル層466から分離している構成要素を用いることができるか、またはカバー470はチャネル層466と一体に形成することができる。いずれの場合でも、流体障壁463は、流体が流れて、カートリッジから流出しないように封止される反対側の壁部471を備えることができる。カバー470は、検定がカバーを通して光学的に検出されるときには透明であり、たとえば、ガラスまたは透明なプラスチックを用いることができる。別法では、カバー470は、たとえば検定が電気的に検出されるときには、光学的に不透明にすることができる。流体ネットワーク348は、上記のように、空間的に個別のチャンバ364、366、368を含み、個別のプロセスを実行することができ、かつ/または個別のプロセスを共用の流体区画において実行することができる。
【0081】
回路部358の少なくとも1つの薄膜部分は、基板460の表面462上に形成され、かつその表面によって支持されることができる。その回路部は通常、1つまたは複数の電子回路を少なくとも部分的に画定する薄膜層を含む。その回路部は、流体ネットワーク348内の流体と接触する電極472を備えることができる。電極および他の薄膜デバイス(セクションIIIを参照)は、一般的に、基板上に形成される、すなわち表面462の上および/または下に形成される半導体回路部(信号処理回路部を含む)を通して、電気的コンタクトパッド474(図23を参照)に電気的に結合されることができる。所与の数のコンタクトパッド474が、それよりもはるかの多くの数の電極および/または他の薄膜デバイスを制御することができる。好ましい実施形態では、コンタクトパッド474は、フレキシブル回路の場合のように、コンタクト318に電気的に結合される。
【0082】
電極472は、任意の適当な組成、分布およびコーティングを有することができる。電極472のために適した材料は、金属、合金または金属誘導体のような導電性材料である。例示的な電極材料は、金、プラチナ、銅、アルミニウム、チタン、タングステン、金属シリサイド等を含む。回路部358は、流体ネットワーク348の底壁464に沿った1つまたは複数の場所において電極を備えることができる。たとえば、ここで示されるように、電極は、複数の個別ユニットとして、濃縮器364と同様に、チャネル/チャンバに沿った1つの列に、および/またはチャンバ366、368と同様に、2次元のアレイに配列されることができる。別法では、またはそれに加えて、電極472は細長くすることができるか、または任意の他の適当な形状(複数可)を有することができる。各電極472は、個々に正、負のいずれかに電気的にバイアスをかけられ、核酸が電極に引き付けられるか、電極から反発されるようにすることができるか、または電極は電気的にバイアスをかけられない場合もある。電気的にバイアスをかけることは、核酸を保持することが望ましいか、かつ/または或る方向に流動させることが望ましいかに基づいて、制御装置312および/またはカートリッジ314によって、適当に空間を置いて、かつ時間を調整して実行されることができる。電極472は浸透層をコーティングされることができ、流体およびイオンが流体区画内の電極に到達できるようにするが、より大きな分子(たとえば核酸)が電極と直に接触しないようにすることができる。そのように直に接触することにより、核酸が化学的に損傷を受ける場合がある。適当な電極コーティングは、たとえば、ヒドロゲルおよび/またはソル・ゲルを含むことができ、スパッタリング、スピン・コーティング等のような任意の適当な方法によって被着されることができる。コーティングのための例示的な材料は、たとえば、ポリアクリルアミド、アガロースおよび/または合成ポリマーを含むことができる。
【0083】
検定部344は、流体操作部342に流体連通するように接続される。この接続のために、任意の適当な接合流路(または単一の流路)を用いて、カートリッジの流体ネットワーク346、348を接合することができる。そのような流体連通させる接続によって、流体が、流体区画に対して、すなわち流体区画内に、および/または流体区画外に出入りできるようになる。
【0084】
流体ネットワーク346、348は、基板460および/または流体障壁463によって空間的に分離されることができる。基板460によって分離される際に、接合流路は、一般的に基板460の表面462と反対側の表面476との間に基板460を貫通して延在し、流体ネットワークを接合することができる。接合流路は、流体が移動するための経路を画定する給送構造として示されることができる。別法では、またはそれに加えて、1つまたは複数の接合チャネルが基板460のエッジ478を迂回して延在し(図23)、流体ネットワーク346に接続することができる(図17〜図22)。たとえば、接合チャネルは、チャネル層466および/またはカバー470を貫通して延在することができるが、カートリッジから大量の流体が流出しないように封止されることができる。別の実施形態では、流体ネットワーク346、348は、基板460によってではなく、流体障壁463によって空間的に分離されることができ、いくつかの、または全ての接合チャネルが同様に流体障壁463を貫通して延在し、流体ネットワーク346と流体連通するように接続する。
【0085】
図示される実施形態では、480a〜480eを付された接合流路は、基板の両側の表面の間に基板460を貫通して延在する(図22〜図24を参照)。接合流路480は、流体操作部の任意の流体区画を流体ネットワーク348の1つの流体区画に、一般的にその2つの部分の流体導管またはチャンバに直に結合することによって流体連通するように接続することができる。たとえば、接合流路480は、たとえば、試薬貯蔵室352を検定部344のチャンバ(364〜368)に、検定部のチャンバを廃棄物チャンバに、予備処理チャンバ420を検定部のチャンバに、検定部の2つ以上のチャンバを互いに(図示せず)、サンプル入力場所350を検定部のチャンバに直に(同じく図示せず)、および/または検定部のチャンバをバルブおよび/または通気口(たとえばバルブ通気口422)に接続することができる。検定部の個々の区画はそれぞれ、任意の適当な数の接合流路480に直に接続されることができる。ここでは、濃縮チャンバ364は480a〜480cの3つを有し、増幅チャンバ366および検定チャンバ368はそれぞれ480dおよび480eの1つを有する。
【0086】
図24は、接合流路480eが、検定部344を流体操作部342に如何に流体連通するように接続するかを示す。接合流路480eは、流体を、流体経路482に沿って、検定チャンバ368からバルブ通気口422まで搬送するように構成される(図22を参照)。接合流路は、流体を、流体操作部342の1つのチャネル(または複数のチャネル)404に搬送することができる。各チャネル404は、流体を流体操作部342内の1つまたは複数のチャネル404に誘導し、かつ検定部344内の1つまたは複数の流体区画に誘導する流体マニホルド484を通して、接合流路480に接続されることができる。したがって、検定部344は、たとえば、接着剤486を用いて、流体マニホルド484に固定することができる。
【0087】
接合流路は、その長さ(流体が流れる方向に対して概ね平行に測定される)に沿って変化する直径を有することができる。たとえば、接合流路480eの直径は、基板460によって画定される中間領域内よりも、基板460の表面462に隣接するチャネルの端部領域において小さくなり、流体を誘導するための開口部488を形成することができる。開口部は、流体区画に、および/または流体区画から流体を誘導することにより流体を誘導する。開口部488は通常流体区画に隣接する。流体区画は流体障壁によって少なくとも部分的に画定され、流体が、その区画から局部的にマイクロ流体デバイスを出ることができないように、すなわち流体障壁を通って直に外部に出ることができないように構成されることができる。流体区画は、基板部分と流体障壁との間で共同的に画定されることができる。開口部は、薄膜層490が基板460と接触しないオーバーハング(または棚状部)492を形成する周辺領域を備えることができる。開口部488は、任意の適当な直径、すなわち約1μm〜100μmの直径を有することができる。開口部または穴は、接合流路の基板によって画定される領域そのものよりも、さらに制限された流量を供給することができる。開口部488は、基板460の表面462上に形成される1つまたは複数の薄膜層490内に形成される開口部によって画定されることができる。薄膜層490は通常薄く、すなわち基板460の厚みよりも著しく薄く、セクションIIIにおいて説明されるような厚みおよび/または機能的な役割を有することができる。
【0088】
図25〜図31は、検定部を製造するための例示的な方法を用いて、検定部344内の接合流路480e、開口部488および検定チャンバ368を形成することを段階的に示す。その方法は、薄膜堆積およびパターニングステップを含む。ここでは、パターニングは概ね、たとえば、薄膜層の種々の領域を選択的に露光した後に、その薄膜層のパターニングされた部分を除去する工程を指している。
【0089】
図25は、検定部のために適した開始材料、すなわち反対側に位置する表面462、476を有する概ね平坦な基板460を示す。ここで説明される方法は、薄く、たとえば約0.1〜2mm、または0.2〜1mmの厚みを有するシリコン基板を用いて実行することができる。基板は、薄膜層490の追加中および/または追加後に、しかしながら通常は追加前に、表面462において、トランジスタ、FET、バイポーラデバイスおよび/または他の半導体電子デバイス(図示せず)を形成するnおよびpドープ領域を含むように変更されることができる。
【0090】
図26は、基板460の表面462上に薄膜層490を被着し、パターニングした後の検定部を示す。薄膜層490は、回路部358の導電性の部分を形成し、かつ/または保護するために用いられる任意の適当な薄膜を含むことができる。薄膜層は導電性材料(たとえば、電極、およびデバイス間の導電性接続を形成するため)、半導体材料(たとえば、nおよびpドープ材料を用いてトランジスタを形成するため)および/または絶縁性材料(たとえば、パッシベーション層)から形成することができる。薄膜層は従来の方法によって被着され、パターニングすることができる。薄膜層490のうちの少なくとも1つは、開口部488の周辺部494を画定するようにパターニングされることができる。
【0091】
図27は、パターニングされていないチャネル層496が薄膜層490および開口部488上に堆積された後の検定部を示す。チャネル層496は、適当な厚み、通常は約1〜200μm、さらに通常は2〜100μmで、さらには5〜50μmの厚みで被着されることができる。チャネル層496(および流体障壁)のための例示的な材料は既に説明されている。
【0092】
図28は、エッチマスク498が基板460の反対側の表面476に加えられた後の検定部を示す。エッチマスクは適当な厚みの層として被着され、局部的な領域(複数可)において選択的に除去されて、開口部500を画定することができる。開口部500は、任意の適当な直径を有することができるが、通常開口部488の直径よりも大きな直径を有することができる。開口部500は開口部488の反対側に配置されることができ、開口部500を薄膜層490に突出させることにより、基板内に、開口部488の周囲を包囲することができる対応するチャネルまたはスルーホール501が形成されるようになる。
【0093】
図29は、接合流路480eの基板領域を形成し、エッチマスク498を除去した後の検定部を示す。基板460は、開口部500(図28を参照)によって画定される容積に沿って表面476から概ね直交する方向にエッチングされ、チャネル501を形成することができる。任意の適当なエッチング手順を用いて、接合流路480eの基板部分を形成することができる。しかしながら、通常、深い反応性イオンエッチング(DRIE)が用いられる。薄膜層490のうちの1つまたは複数の層がエッチストップとしての役割を果たすことができ、結果として、オーバーハング領域492が形成される。エッチング後、マスクは反対側の表面476から剥離されるか、またはその表面上に残されることができる。
【0094】
図30は、パターニングされていないチャネル層496の種々の領域が選択的に除去され、パターニングされたチャネル層466が形成された後の検定部を示す。選択的な除去は任意の適当な工程、たとえば、層496を露光してパターニングし、その後、露光されてパターニングされた層を現像することによって、またはレーザアブレーションを行うことによって実行されることができる。
【0095】
図31は、カバー470を取り付けた後の、かつマニホルド484を通して検定部を流体操作部342に固定する前の完成した検定部344を示す。カバー470は、接着、加熱および加圧、陽極結合、音波溶接および/または従来の方法等の任意の適当な方法によって、流体障壁466に取り付けられることができる。
【0096】
図32は、検定部504内に形成されるチップ内流路502の若干概略的な図を示す。チップ内流路502は開口部488を通って、基板462から基板460に入り、基板460から出ることができ、反対側の表面476までは延在しない。それゆえ、チップ内流路502は、カートリッジ部分342と344との間に延在する接合流路480とは異なる。チップ内流路(複数可)502を用いて、基板部分458および流体障壁508によって共同的に画定されるチャンバ506間で流体を誘導することができる。別法では、またはそれに加えて、チップ内流路を用いて、流体を混合し(以下の説明を参照)、反応または検定等を実行することができる。
【0097】
図33〜図35は、例示的な方法を用いて、検定部504内にチップ内流路502を形成することを段階的に示す。材料および工程ステップは、概ね図24〜図31の場合に説明されたのと同じである。図33は、薄膜層490が基板460の表面462上に形成され、パターニングされて、複数の開口部488が形成された後の製造段階を示す。図34は、開口部488の下側にある基板460を異方性エッチングし、基板の窪みまたは溝510を形成した後の検定部を示す。別法では、溝510は等方性エッチングによって形成することもできる。いずれの場合でも、エッチャントは開口部488を通って基板460に到達し、薄膜層490をアンダーカットし、それにより各開口部488の下に配置される局部的な窪み512を合体して1つにすることによって、溝510を形成することができる。したがって、開口部488は通常、基板460のエッチング中に窪み512が流体連通するように接続されるほど十分に近接して配置される。図35は、流体障壁508を用いてチャンバ506を形成した後の検定部504を示す。ここでは、流体障壁508は、チャンバ側壁を画定するためにチャネル層466を含み、またチャンバ506の上側を封止するためにカバー470を含む。薄膜層490によって画定され、溝510を形成するために用いられる開口部488のうちの1つまたは複数の開口部は、チャネル層466によって塞ぐことができる。たとえば、ここでは、中央の開口部が、514で示されるように、チャネル層466によって封止されている。
【0098】
図36は、マニホルドチャネル518を有する検定部516を示す。マニホルドチャネル518は、薄膜490内の2つまたは3つ以上の開口部488に流体連通するように接続する基板貫通流路である。ここでは、開口部488は、マニホルドチャネル518を2つのチャンバ506に流体連通するように接続する。しかしながら、マニホルドチャネル518は、検定部の流体ネットワーク内にある任意の適当な数の区画に流体連通するように接続することができる。マニホルドチャネル518を用いて、たとえば、流体操作部342から流体を受け取る(または流体操作部342に流体を供給する)ことができ、たとえば、チャンバ506の一方または両方に流体を供給する(またはチャンバ506の一方または両方から流体を受け取る)ことができる。またマニホルドチャネル518を用いて、図32に示されるように、チャンバ506間で流体を誘導することもできる。マニホルドチャネル518を形成するための例示的な方法は、図34において溝510を形成した後の、図27〜図34に概説される手順に従う。
【0099】
図37は、混合チャンバ532を含む検定部530の部分平面図である。混合チャンバ532は、複数の開口部536(ここでは、6つの入口開口部と1つの出口開口部とが示される)において薄膜層の下側に形成される、図34の溝510に類似の溝534を有する。溝534は、複数の入口チャネル538、540によって検定部530の流体ネットワークから流体を供給され、入口チャネルは矢印によって示される経路に沿って流体を入口開口部に搬送する。各チャネルは流体、一般的には異なる流体を溝534に誘導し、溝に沿った交互配置の幾何学的形状を用いて溝内で複数のチャネルからの流体を混合できるようにする。混合された流体は、542で示されるように、出口開口部536において溝534から流出し、その流体は検定部530の流体ネットワークの出口チャネル544に戻される。別の実施形態では、任意の適当な数の入口および出口チャネルを、任意の適当な数の開口部536を通して、混合チャンバ532に接続することができる。
【0100】
図38は、検定部344の選択された部分、特に薄膜層490をさらに詳細に示す。例示的な薄膜は、基板460から形成されるフィールド酸化(FOX)層552と、FOX層552上に配置されるPSG(phosho−silicate glass)層554とを含むことができる。FOX層552は、加熱作用を断熱するための熱障壁を提供することができる。PSG層554は、555で示されるように、開口部488から後退し、PSG層が腐蝕作用を有する可能性がある流体と接触するのを避けることができる。したがって、PSG層554は、流体と接触する開口部488よりも大きな直径を有する、保護された開口部を画定する。また薄膜は、タンタルアルミニウム(TaAl)のような任意の適当な抵抗性材料から形成される抵抗層556も含むことができる。電流は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(図示せず)のような任意の適当な導電性材料から形成される、接続された導体から抵抗層556内に流れる。抵抗層は熱を生成し、その熱は、特にFOX層552によって基板460から断熱されることができる。1つまたは複数のパッシベーション層558がこれらの薄膜を覆うことができる。パッシベーション層のために適した材料は、たとえば窒化シリコン(Si34)または炭化シリコン(SiC)を含むことができる。電極、トランジスタおよびダイオードのような、基板の表面上および/または下に配置されることができる、さらに別の電子回路部構造はここには示されない。
【0101】
III.マイクロ流体システム
サンプルを操作し、かつ/または分析するためにマイクロ流体システムが提供される。マイクロ流体システムは包括的には、ごく少量の流体(液体および/または気体)のサンプルを収容し、操作し、かつ分析するための装置および方法を含む。少量の流体は1つまたは複数の流路によって搬送され、その流路のうちの少なくとも1つは約0.1〜500μm、さらに通常は約100μmまたは50μm未満の断面寸法または深さを有する。マイクロ流体デバイスは、任意の適当な全流体容積を有することができる。したがって、マイクロ流体デバイス内の1つまたは複数の領域における流体は、一般的に低レイノルズ数によって特徴付けられる、乱流が最小限の層流になることができる。
【0102】
流体区画は、マイクロ流体デバイス内に流体連通するように接続されることができる。「流体連通するように接続される」、または「流体連通するように結合される」は一般的に、区画の間を流体が流れるようにする経路がデバイス内に存在することを意味する。その経路は常に開いていることができるか、または開閉するバルブによって制御することができる(以下の説明を参照)。
【0103】
種々の流体区画は、マイクロ流体デバイス内で流体を搬送し、かつ/または保持することができ、デバイスによって密封される。流体を搬送する区画が流路である。流路は、たとえば、チャネル、処理チャンバ、開口部または表面(たとえば、親水性、帯電等)のような、マイクロ流体デバイス内の流体が移動する経路を決定する任意の所定の経路または導管を含むことができる。流路に向かって搬送し、または流路から受け取るための流体を保持する区画は、チャンバまたは貯蔵室と呼ばれる。多くの場合に、チャンバおよび貯蔵室は流路でもあり、流体がチャンバまたは貯蔵室を通って流れることができる。流体連通するように接続されるマイクロ流体デバイス内の流体区画は、流体ネットワークまたは流体空間を形成し、それらは分岐される場合も、分岐されない場合もある。ここで説明されるようなマイクロ流体デバイスは、1つの流体連通するように接続される流体ネットワーク、または複数の個別の接続されない流体ネットワークを含むことができる。複数の個別の流体ネットワークを用いる場合、そのデバイスは、同時におよび/または順次に、複数のサンプルを受け取り、かつ操作するように構成されることができる。
【0104】
チャンバは大きく末端および中間チャンバとして分類されることができる。末端チャンバは一般的に、流体ネットワークにおいて流体を移動させるための始点または終点と定義することができる。そのようなチャンバは、たとえば、デバイスの製造または準備中に試薬を受け取る、外部環境とのインターフェースとして機能することができるか、またはマイクロ流体デバイス内の流路からのみ流体を受け取ることができる。例示的な末端チャンバは処理されたサンプル、試薬および/または廃棄物を受け取り、かつ/または格納する貯蔵室としての役割を果たすことができる。末端チャンバは、サンプル分析前に、かつ/またはサンプル分析中に流体を取り込むことができる。中間チャンバは、流体ネットワーク内の中間的な場所にあり、それゆえ、サンプル分析中に処理、反応、測定、混合等のための流路としての役割を果たすことができる。
【0105】
マイクロ流体デバイスは、流体ネットワーク内の流体または流体成分を押し出し、かつ/または吸い込むための1つまたは複数のポンプを備えることができる。各ポンプには、たとえば機械駆動式(圧力媒介)ポンプまたは動電ポンプを用いることができる。機械駆動式ポンプは、正圧によってネットワークの中に流体を押し出すように動作することができる。その圧力はばね、加圧された気体(システムの内部または外部から供給される)、モータ、シリンジポンプ、空気ポンプ、蠕動ポンプ等によって与えることができる。別法では、またはそれに加えて、圧力駆動式ポンプは、負圧によって、すなわち、減圧された領域に向かって流体を吸い込むことによって動作することができる。動電または電気駆動式ポンプは、電界を用いて、電気泳動、電気浸透、電気毛管現象等によって流体および/または流体成分を流動させることができる。いくつかの実施形態では、ポンプとして、微細機械加工によって製造されるマイクロポンプ、たとえば、中でも圧電の動力によって流動させるダイヤフラムポンプを用いることができる。
【0106】
ここで説明されるマイクロ流体デバイスはバルブも含むことができる。バルブは一般的に、流体ネットワーク内を流れる流体を調整するための任意の機構を含み、たとえば、双方向バルブ、チェックバルブおよび/または通気口が用いられる場合がある。たとえば、バルブは、流体が流路内に流れるのを阻止したり、可能にしたりするために、すなわち二極スイッチとして、および/または流速を調整するために用いることができる。したがって、バルブの動作は、たとえば、流体ネットワークの活動させる部分を選択することができ、流体ネットワークの1つまたは複数の部分を隔離することができ、かつ/または実施される処理ステップを選択することができる。それゆえ、バルブは、流体、試薬および/またはサンプル(複数可)を、或る流体区画から流体ネットワークの所望の領域に搬送するように配置され、操作されることができる。適当なバルブは、たとえば、可動ダイヤフラムまたは薄膜、圧縮性または可動性の流路壁、ボールバルブ、スライドバルブ、フラップバルブ、バブルバルブおよび/または不混和流体を含むことができる。そのようなバルブは、ソレノイド、モータ、圧力(上記の説明を参照)、ヒータ等によって操作することができる。
【0107】
適当なバルブとして、従来の製造方法によって薄膜電子デバイス(以下の説明を参照)とともに基板上(または基板内)に形成されるマイクロバルブを用いることができる。マイクロバルブは、たとえば、静電力、圧電力および/または熱膨張力によって駆動されることができ、内部または外部にアクチュエータを有することができる。静電バルブは、たとえば、基板内に形成される穴を覆うように動作することができるポリシリコン膜またはポリイミドカンチレバーを含むことができる。圧電バルブは、バルブアクチュエータに逆らって膨張する外部(または内部)の圧電ディスクまたは圧電ビームを含むことができる。熱膨張バルブは、ダイヤフラムによって仕切られる、封止された圧力チャンバを含むことができる。チャンバを加熱することにより、ダイヤフラムがバルブシートに逆らって膨張する。別法では、熱膨張バルブはバブルバルブを含むことができる。バブルバルブは、流体を加熱するヒータ素子によって形成されることができ、流路内に気泡を形成して、その気泡が流路の中を流体が流れないように阻止することができる。加熱を中断することにより、気泡が潰れ、流体が流れるようになる。マイクロバルブは可逆的に、すなわち開閉することができるか、概ね不可逆的に、すなわち開閉のいずれかのみが可能な1回使用のバルブにすることができる。例示的な1回使用のバルブは、流路、たとえばポリイミド層内にある感熱性の障害物である。そのような障害物は、加熱する際に破壊または変更され、流体を流すことができる。
【0108】
通気口は、たとえば、流体が或る流体区画に入る結果として生じる排気を放出できるようにするために用いられる。適当な通気口は、ガスが通過できるようにするが、親水性の液体の通過を制限する疎水性膜を備えることができる。例示的な通気口はゴアテックス膜である。
【0109】
ここで説明されるようなマイクロ流体デバイスは、3つのステップ、すなわち入力、処理および出力を実行または調整するように構成されることができる。これらのステップは一般的に、所与のサンプルの場合に順番に実行されるが、複数のサンプルがデバイスに入力されるときには非同期に実行されることもできる。
【0110】
入力は、マイクロ流体デバイスのユーザが外界からマイクロ流体デバイスにサンプル(複数可)を導入できるようにする。したがって、入力は外界とデバイスとの間のインターフェース(複数可)を必要とする。それゆえ、そのインターフェースは通常ポートとしての役割を果たし、そのインターフェースとして隔膜、バルブ等を用いることができる。別法では、またはそれに加えて、サンプル(複数可)をデバイス内で試薬から合成することもできる。試薬は、ユーザによって、またはデバイスの製造中に導入することができる。好ましい実施形態では、試薬は製造中に導入され、デバイスまたはカートリッジ内に密封される。
【0111】
その後、入力されたサンプル(複数可)は処理される。処理は、サンプル組成、濃度および/または温度のようなサンプルの物理的または化学的特性を変更する任意のサンプル操作または処理を含むことができる。処理は、入力されたサンプルを、サンプル内の分析物(複数可)を分析するのにより適した形態に変更することができ、反応を通してサンプルの態様を確認することができ、サンプルを濃縮することができ、信号強度を高めることができ、かつ/またはサンプルを検出可能な形態に変換することができる。たとえば、処理は、入力されたサンプルからの1つまたは複数の分析物を(たとえば、細胞またはウイルスから)抽出または遊離し、分離し、精製し、濃縮し、かつ/または、さらに濃縮(たとえば、増幅による)することができる。別法では、またはそれに加えて、処理は、サンプルまたはその分析物(複数可)を物理的、化学的および/または生物学的に変更するために、サンプルまたはその分析物(複数可)を処理することができる。たとえば、処理は、色素で標識することによって、または酵素または基質、検査試薬または他の反応性材料と反応させることによって、サンプル/分析物を化学的に変更することを含むことができる。同様に、または別法では、処理は生物学的、物理的または化学的条件または媒介物でサンプル/分析物(複数可)を処理することを含むことができる。例示的な条件または媒介物は、たとえば、ホルモン、ウイルス、核酸(たとえば、形質移入による)、熱、放射線、超音波、光、電圧パルス(複数可)、電界、粒子照射、洗浄剤、pHおよび/またはイオン強度を含む。別法では、またはそれに加えて、処理は分析物選択のための位置決めを含むことができる。分析物を選択的に配置する例示的な処理ステップは、毛管電気泳動、クロマトグラフィ、親和マトリクスへの吸着、1つまたは複数の配置された受容体への特異結合(たとえば、ハイブリダイゼーション、受容体−リガンド相互作用等による)、選別(たとえば、測定された信号に基づく)等を含むことができる。
【0112】
出力はサンプル処理後に実行することができる。マイクロ流体デバイスは、分析および/または調製の目的で用いられることができる。したがって、出力のステップは包括的には、マイクロ流体デバイスから任意のサンプルに関連する信号または物質を得ることを含む。
【0113】
サンプルに関連する信号は、処理されるサンプルに直接的および/または間接的に関連付けられ、マイクロ流体デバイスから、またはマイクロ流体デバイスによって測定される、検出可能な信号を含むことができる。検出可能な信号として、たとえば、アナログ値および/またはデジタル値、単一の値または複数の値、時間に依存する値または時間に依存しない値(たとえば、定常値または終点値)および/または平均値または分布値(たとえば、時間的および/または空間的)を用いることができる。
【0114】
検出可能な信号は、数ある検出方法の中でも、光学的および/または電気的に検出することができる。検出可能な信号には、たとえば、吸光度、ルミネセンス(蛍光、エレクトロルミネセンス、生物発光、化学発光)、回折、反射、散乱、円偏光二色性および/または旋光性のような光学信号(複数可)を用いることができる。適当な蛍光方法は、たとえば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、蛍光寿命(FLT)、蛍光強度(FLINT)、蛍光偏光(FP)、内部全反射蛍光(TIRF)、蛍光相関分光(FCS)、光退色後の蛍光再生(FRAP)および/または蛍光標示式細胞分取(FACS)を含むことができる。光学信号は、非位置値として、または1組の値として測定されることができ、および/または、たとえば、電荷結合素子の場合のように、イメージング方法を用いて測定されるような空間的情報を有することができる。いくつかの実施形態では、検出可能な信号として、たとえば、搭載されるフォトダイオード(複数可)によって生成される光電信号を用いることができる。他の検出可能な信号は、表面プラズモン共鳴、核磁気共鳴、電子スピン共鳴、質量分析等によって測定することができる。別法では、またはそれに加えて、検出可能な信号として、電気信号(複数可)、すなわち測定される電圧、抵抗、コンダクタンス、キャパシタンス、電力等を用いることができる。例示的な電気信号は、たとえば、分子結合事象(複数可)(たとえば、核酸二本鎖形成、受容体−リガンド相互作用等)等として、細胞膜を越えて測定されることができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスは、サンプルを調製するために用いることができる。出力されることができるサンプルに関連する物質は、処理後にデバイスを出る1つまたは複数の任意の化学的または生物学的化合物、ポリマー、凝集物、混合物、集合物および/または生物を含む。そのようなサンプルに関連する物質は、たとえば、化学的に変更(合成)され、生物学的に変更され、精製され、かつ/または選別された、入力されたサンプルの誘導体であり得る。
【0116】
マイクロ流体デバイスは、セクションIIにおいて例示されるように、流体をハンドリング(かつ格納)するための部分、および検定を行うための部分として個別の構造的な部分を備えることができる。これらの部分は、個別の処理および/または操作ステップを実行するように構成されることができる。流体操作部は、検定部から離隔して形成されることができ、検定部の流体ネットワークまたは流体空間よりも大きな3次元寸法の流体ネットワークまたは流体空間を有することができる。流体操作部は、数十または数百マイクロリットルから約5ミリリットル以上までの流体容積を有する1つまたは複数のチャンバを含む、任意の適当な容積の流体チャンバを有することができる。
【0117】
流体操作部は、サンプルを受け取るためのサンプル入力場所(ポート)(複数可)と、試薬を保持および搬送し、かつ/または廃棄物を受け取るための複数の流体貯蔵室とを含むことができる。流体操作部は、多少大きな流体容積、場合によっては、1マイクロリットルまたは1ミリリットルよりも大きな容積を収容するだけの寸法を有することができる。さらに、流体操作部は、廃棄物から対象の分析物(複数可)を分離するために、たとえば1つまたは複数の細胞を含むサンプルから分析物(たとえば核酸)を単離するために、1つまたは複数の流路によって形成される予備処理場(複数可)を備えることができる。流体操作部は、全体として平坦ではない流体ネットワークまたは流体空間を画定することができる。平坦ではない、すなわち3次元の流体ネットワークでは、流体ネットワークの1つまたは複数の部分を、任意の共通の平面から2ミリメートル以上離して配置することができる。
【0118】
検定部は、最終的なサンプル処理が行われ、かつ/または検定信号が測定される場所を提供することができる。検定部は、一般的には約50マイクロリットル未満、好ましくは約10マイクロリットル未満、さらに好ましくは約1マイクロリットル未満の流体チャンバを有し、より小さなサンプル量を操作し、分析するように構成されることができる。
【0119】
検定部は、流体操作部とは別にすることができ、すなわち流体操作部と共有されない個別の構成要素から形成することができる。したがって、検定部は、流体操作部とは別々に形成することができ、その後、流体操作部の流体区画と流体連通するように接続するように流体操作部に取り付けられることができる。
【0120】
検定部は基板部分と流体障壁とを含むことができる。電子回路部を、基板部分と流体障壁との間に少なくとも部分的に、または少なくともその大部分を配置することができる。基板部分は、基板部分の表面付近にある流体障壁と共同的に流体空間を画定することができる。電子回路部は、薄膜部分または電子回路(複数可)の層を含むことができ、薄膜層も基板の表面付近に配置される。表面に近接または隣接する構造体は、その基板の反対側の表面よりも、その基板の表面の近くに存在する。
【0121】
基板の電気的特性によって、電子回路部、特に固体電子スイッチング素子が基板および流体障壁に対して配置される場所を決定することができる。基板として半導体を用いて、電子回路部のいくつかの部分が、たとえばnおよびpドープによって基板内に形成されるようにすることができる。別法では、基板として絶縁体を用いることができる。この場合には、全ての電子回路部が基板の外側に支持されることができる。適当な基板は一対の相対する表面において概ね平坦または平面的であり、たとえば薄膜の堆積を容易にすることができる。基板には、シリコン、ガリウム、ヒ素、ゲルマニウム、ガラス、セラミック、アルミナ等を含む、少なくとも概ね無機物の基板を用いることができる。
【0122】
薄膜電子回路部は複数の薄膜または薄膜層を含む。電子回路部の各薄膜層は、回路部の動作において直接的なまたは補助的な役割、すなわち、たとえば、導電性、絶縁性、抵抗性、容量性、ゲーティングおよび/または保護の役割を果たすことができる。保護および/または絶縁性の役割は、電気的な絶縁、流体が媒介する腐蝕を防ぐための化学的隔離等を果たすことができる。薄膜層は、約100μm、50μmまたは20μm未満の厚みを有することができる。別法では、またはそれに加えて、薄膜層は、約10nm、20nmまたは50nmよりも厚くすることができる。そのような薄膜は電子デバイスを形成し、それらのデバイスは、検定部の電子回路部によって電子制御されるために電子デバイスと呼ばれる。電子デバイスは、検定部の流体区画内の流体の特性を変更し、かつ/または感知するように構成される。したがって、電子デバイスおよび薄膜層の種々の部分が、基板と、検定部の流体ネットワークまたは区画との間に配置されることができる。例示的な変更用のデバイスは、電極、ヒータ(たとえば抵抗体)、冷却器、ポンプ、バルブ等を含む。したがって、変更される特性は、たとえば、流体または流体区画内の分析物の分布または位置、分析物の移動度、分析物の濃度、関連するサンプル成分に対する分析物の存在量、流体の流速、流体の単離、または流体/分析物の温度を含むことができる。別法では、またはそれに加えて、薄膜デバイスは流体および/または分析物の条件または位置を監視するか、または感知することができる。例示的な感知用のデバイスは、温度センサ、流速センサ、pHセンサ、圧力センサ、流体センサ、光センサ、電流センサ、電圧センサ、分析物センサ等を含むことができる。変更用のデバイスおよび感知用のデバイスの組み合わせによって、フィードバック制御、たとえば、検定部内の流体領域の閉ループ温度制御が可能になる。
【0123】
検定部に収容される電子回路部は、線形に応答する電子回路とは対照的に柔軟である。電子回路は半導体デバイス(トランジスタ、ダイオード等)および固体電子スイッチングを用いて、より少ない数の入力−出力線で非常に多くの電子デバイスに電気的に接続できるようにする。したがって、電子回路部は、たとえば、電源/グランド線、データ入力線、発射パルス線、データ出力線および/またはクロック線を含む、入力および出力線の任意の適当な組み合わせに接続され、かつ/または含むことができる。電源/グランド線は変更用および感知用デバイスに電源を供給することができる。データ入力線は、オンに切り替えられるべきデバイス(たとえば、ヒータ(複数可)、電極(複数可))を指示するデータを与えることができる。発射パルス線は外部から、または内部からチップに供給されることができる。これらの線は、変更用および/または感知用デバイスを起動するための特定の1組のデータをアクティブにするように構成されることができる。データ出力線は、検定部の回路部からデータを、たとえば感知用デバイスからデジタルデータを受信することができる。データ入力および出力の速度に基づいて、1つのデータ入力/出力線または複数のデータ入力/出力線を設けることができる。低データ速度の場合、1つのデータ入力/出力線で十分な場合があるが、より高いデータ速度で、たとえば並列に複数の薄膜デバイスを駆動するためには、1つまたは複数のデータ入力線および個別のデータ入力/出力線が必要になる場合もある。クロック線は、コントローラからのデータを送受信すること等の複数の過程のタイミングを与えることができる(以下の説明を参照)。
【0124】
マイクロ流体デバイスは、制御装置またはコントローラによって制御されるように構成されることができる。したがって、マイクロ流体デバイスは、たとえば、導電性、容量性および/または誘導性結合によって、コントローラに電気的に接続される。コントローラは、上記の入力線および/または出力線のうちの任意の線を提供することができる。さらに、コントローラは、ユーザインターフェースを提供することができ、データを格納することができ、1つまたは複数の検出器を提供することができ、かつ/または機械インタフェースを提供することができる。コントローラの例示的な機能は、マイクロ流体デバイス内の流体、サンプルおよび/または分析物を変更および/または感知するために、バルブ、ポンプ、ソニケータ、光源、ヒータ、冷却器等を操作し、かつ/または提供することを含む。
【0125】
特にマイクロ流体デバイス、流体操作部、検定部およびコントローラのさらに別の態様は、セクションIIにおいて既に説明されている。
【0126】
IV.サンプル
本明細書で説明されるようなマイクロ流体システムは、サンプルを処理するように構成される。サンプルは包括的には、対象の物質(または分析物)を分析するか、または調製するためにそれを変更するかのいずれかのために、マイクロ流体システムによって受け取られ、かつ処理される任意の対象の物質を含む。サンプルは一般的に、システムによって測定されることになるか、またはシステムによって都合よく変更される(たとえば、精製される、選別される、誘導される、培養される等)ことになる1つまたは複数の対象となる特性を有する。サンプルは、1つまたは複数の任意の化合物、ポリマー、凝集物、混合物、抽出物、合成物、粒子、ウイルス、細胞および/またはそれらの組み合わせを含むことができる。対象の分析物および/または物質は、サンプルの任意の部分、たとえば、サンプル内の主成分、副成分または微量成分を形成することができる。
【0127】
サンプル、それゆえその中に含まれる分析物として生物学的サンプルを用いることができる。生物学的サンプルは一般的に、細胞、ウイルス、細胞抽出物、細胞から生成されるか、または細胞に関連する物質、候補または既知の細胞修飾因子、および/またはその人為的な変異体を含む。細胞は、任意の単細胞または多細胞生物からの真核細胞および/または原核細胞を含むことができ、任意の種類または1組の種類からなることができる。細胞から生成される物質または細胞に関連する物質は、特に、核酸(DNAまたはRNA)、タンパク質(たとえば、酵素、受容体、制御因子、リガンド、構造タンパク質等)、ホルモン(たとえば、核ホルモン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、一酸化窒素、環状ヌクレオチド、ペプチドホルモン等)、炭水化物(たとえば、単糖類、二糖類または多糖類、グリカン、糖タンパク質等)、イオン(たとえば、カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物、リチウム、鉄等)および/または他の代謝生成物または細胞移入物質を含むことができる。
【0128】
生物学的サンプルには、たとえば、臨床サンプル、研究サンプル、環境サンプル、法医学的サンプルおよび/または工業サンプルを用いることができる。臨床サンプルは、診断および/または予後徴候を目的として得られた任意のヒトまたは動物サンプルを含むことができる。例示的な臨床サンプルは、血液(血清、全血または細胞)、リンパ液、尿、大便、胃内容物、胆汁、精液、粘液、膣垢、脳脊髄液、唾液、汗、涙、皮膚、毛髪、組織生体、吸引液、外科的サンプル、腫瘍等を含むことができる。研究サンプルは、培養された細胞またはウイルス(たとえば、野生型、遺伝子操作されたものおよび/または突然変異体)、その抽出物、部分的または完全に精製された細胞物質、細胞から分泌された物質、薬剤スクリーニングに関連する物質等のような、生物学的および/または生物医学的研究に関連する任意のサンプルを含むことができる。環境サンプルは、たとえば、生物学的な側面に基づいて分析または操作される土壌、空気、水、植物および/または人為的な構造体からのサンプルを含むことができる。
【0129】
サンプルは非生物的な場合もある。非生物学的サンプルは一般的に、生物学的サンプルと定義されない任意のサンプルを含む。非生物学的サンプルは、任意の適当な無機または有機化合物、ポリマーおよび/または混合物の存否、レベル、サイズおよび/または構造を得るために分析されることができる。適当な非生物学的サンプルは、環境サンプル(たとえば、土壌、空気、水等からのサンプル)、合成された物質、工業生産により生成された生成物または廃棄物等を含むことができる。
【0130】
サンプルは固体、液体および/または気体の場合がある。サンプルは、マイクロ流体システムに導入される前に予備処理されることができるか、またはそのまま導入されることができる。システムの外部の予備処理は、化学的処理、生物学的処理(培養、ホルモン処理等)および/または物理的処理(たとえば、加熱、圧力、放射線、超音波破壊、流体との混合等)を含むことができる。固体サンプル(たとえば、組織、土壌等)は、マイクロ流体デバイスに導入される前または導入された後に流体内に溶解または分散されることができ、および/または対象の分析物は、固体サンプルからマイクロ流体システム内の流体に放出されることができる。液体および/または気体サンプルは、システムの外部で予備処理されることができ、かつ/またはそのまま導入されることができる。
【0131】
V.検定
マイクロ流体システムを用いて、入力されたサンプルの或る態様を検定(分析/検査)することができる。生物学的または非生物学的サンプルの任意の適当な態様をマイクロ流体システムによって分析することができる。適当な態様はサンプルによって搬送される1つまたは複数の分析物の特性に関係する場合がある。そのような特性は、存否、レベル(たとえば、細胞内のRNAまたはタンパク質の発現のレベル)、サイズ、構造、活性(たとえば酵素または生物学的活性)、細胞内の場所、細胞の表現型等を含むことができる。構造は、一次構造(たとえば、ヌクレオチドまたはタンパク質の配列、ポリマー構造、異性体構造(複数可)または化学的修飾)、二次または三次構造(たとえば、局部的折畳み構造または高次の折畳み構造)、および/または四次構造(たとえば、分子間相互作用)を含むことができる。細胞の表現型は、細胞状態、電気的活性、細胞形態、細胞移動、細胞同一性、レポータ遺伝子活性等に関係する場合がある。
【0132】
マイクロ流体検定は、1つまたは複数の核酸の存否またはレベルを測定することができる。分析される各核酸は単一の分子として存在することができるか、より一般的には複数の分子として存在することができる。複数の分子は同一または概ね同一の場合があり、かつ/または一般的に、同一である20以上の連続した塩基からなる領域を共有することができる。本明細書において用いられるような核酸(核酸種)は一般的に、共有結合された単量体サブユニットの連鎖として形成される、核酸ポリマーまたはポリヌクレオチドを含む。単量体サブユニットは、塩基アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミン、ヒポキサンチン、キサンチンまたはイノシンのうちの任意のものまたは全てを含むポリリボ核酸(RNA)および/またはポリデオキシリボ核酸(DNA)を形成することができる。別法では、またはそれに加えて、核酸は、たとえば、メチル化塩基、ペプチド核酸、硫黄置換型バックボーン等を含む、天然または合成誘導体の場合がある。核酸は、一本鎖、二本鎖および/または三本鎖の場合があり、野生型または組換え型、欠失、挿入、反転、再配列および/またはその点変異体の場合がある。
【0133】
核酸分析は、サンプル内の1つまたは複数の核酸種(DNAおよび/またはRNA)の存否、量、サイズ、一次配列、完全性、修飾および/または鎖構造を測定するためにサンプルを検査することを含むことができる。そのような分析は、遺伝子型同定情報を提供することができ、かつ/または、たとえば、特定の遺伝子(複数可)または遺伝領域(複数可)からの遺伝子発現を測定することができる。
【0134】
遺伝子型同定情報は、サンプル内の、病原体種のような微生物の同定および/または定量のために用いられることができる。例示的な病原性生物は、限定はしないが、HIV、肝炎ウイルス、狂犬病、インフルエンザ、CMV、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス、ライノウイルスのようなウイルスと、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌、腸炎ビブリオ菌、ネズミチフス菌、炭疽菌、ボツリヌス菌、大腸菌等のような細菌と、たとえば、属名で、カンジダ症、コクシジウム症、ブラストミセス、ヒストプラスマ、アスペルギルス、接合菌、フザリウムおよび毛芽胞菌に含まれるような菌類と、たとえば、マラリア原虫(たとえば、三日熱、熱帯熱、マラリア等)、ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバ、クリプトスポリジウム、アメーバのような原虫とを含むことができる。その分析は、たとえばヒト、動物、植物、食物、土壌または水が或る特定の微生物(複数可)で感染するか、またはそれを保有するか否かを判定することができる。場合によっては、その分析は、存在する特定の菌株(複数可)についての特有の情報を提供することもできる。
【0135】
遺伝子型同定分析は、たとえば、特定の遺伝領域の存否、複製数および/または配列を判定するために、臨床的または法医学的に分析するための遺伝子スクリーニングを含むことができる。遺伝子スクリーニングは、たとえば、出生欠陥をスクリーニングするために、遺伝子疾患および/または一塩基多型を特定するために、または腫瘍を特徴付けるために、出生前または出生後診断に適している場合がある。遺伝子スクリーニングを用いて、患者治療、たとえば指針に基づく薬剤の選択、患者カウンセリング等において医師を支援することもできる。法医学的分析は、たとえば、遺伝子型分析を用いて、たとえば人を識別したり、犯行現場において人の存在を判定したり、または親子関係を判定したりすることができる。いくつかの実施形態では、核酸は一塩基多型を保有することができ、かつ/または一塩基多型のために分析することができる。
【0136】
マイクロ流体システムは、遺伝子発現を分析するために、定量的(発現の量)に、または定性的(発現の存否)に用いられることができる。遺伝子発現の分析は、RNA上で直に行うことができるか、またはサンプルRNAをテンプレートとして用いて、たとえば逆転写酵素を用いて合成された相補DNA上で行うことができる。相補DNAは、セクションIIに記載される実施形態のようなマイクロ流体デバイス内、たとえば検定部内で、またはデバイスの外部で、すなわちサンプル入力前に合成されることができる。
【0137】
発現分析は、特に医療用または研究用として利益をもたらすことができる。たとえば、個々の遺伝子または遺伝子の組の発現分析(プロファイリング)を用いて、人の健康状態、指針に基づく薬剤(複数可)の選択または他の処置等を判定または予測することができる。別法では、またはそれに加えて、発現は、レポータ遺伝子分析、スクリーニングライブラリ(たとえば、化合物、ペプチド、抗体、ファージ、細菌等のライブラリ)等のような研究の応用形態においても有用な場合がある。
【0138】
検定は、分析物の特性を測定できるようにする処理ステップを含むことができる。そのような処理ステップは、標識、増幅、受容体(複数可)への結合等を含むことができる。
【0139】
標識は分析物の検出能を高めるために実行することができる。適当な標識は分析物に共有結合または非共有結合することができ、光学的に検出可能な色素(蛍光団、発色団、エネルギー移動群等)、特異的結合対のメンバ(ビオチン、ジゴキシゲニン、エピトープタグのようなSBP等、表1を参照)等を含むことができる。標識の結合は酵素反応、たとえば、核酸テンプレートによる複製(または連結)、タンパク質リン酸化および/またはメチル化によって行うことができるか、または化学的、生物学的または物理的に行うことができる(たとえば、中でも光または熱触媒)。
【0140】
核酸分析の場合、核酸検出の感度を高めるために増幅を行うことができる。増幅は、標的核酸種または標的種内の領域の存在量(分子の数)を選択的に増加させる任意の過程である。増幅は、熱サイクル処理(たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応等)を含むことができるか、または等温処理(たとえば、鎖置換増幅)を用いることができる。増幅のさらに詳しい態様はセクションIIにおいて既に説明されている。
【0141】
受容体結合は、分析物(または、分析物の存在によって鋳型にされたか、または分析物の存在に由来する反応生成物)と、分析物に特異的に結合する受容体とを接触させることを含むことができる。受容体(複数可)は、たとえばアレイのマイクロ流体区画に取り付けられるか、またはマイクロ流体区画内の場所に固定されるか、区画の全体にわたって分布させることができる。「特異的に結合する」は、混合物内の他の成分に概ね結合しないようにして、混合物内の意図した相手に対して高い選択性で結合することを意味する。特異結合は、約10-4M未満の結合係数によって特徴付けることができ、好ましい特異結合係数は約10-5M、10-7Mまたは10-9M未満である。受容体−分析物相互作用のために適している例示的な特異的結合対が以下の表1に列挙される。
【0142】
【表1】

【0143】
サンプル検定、詳細にはサンプル内の核酸分析物の検定のさらに詳しい態様は、セクションIIおいて既に説明されている。
【0144】
上記の開示は本発明の複数の異なる実施形態を含むものと考えられる。これらの実施形態はそれぞれ特定の形態において開示されてきたが、本明細書に開示および例示されるようなその特定の実施形態は限定するものとみなされるべきではなく、いくつかの変形形態が実現可能である。それゆえ、本開示が対象とするものには、本明細書に開示される種々の要素、機構、機能および/または特性の全ての新規で、自明でない組み合わせ、およびその下位の組み合わせが含まれる。同様に、請求項が「1つの」または「第1の」要素またはそれと同等のものを記載する場合、そのような請求項は、1つまたは複数のそのような要素を包含することを含み、2つ以上のそのような要素を要求も、除外もしないことは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】コントローラにより制御される、熱制御デバイスのアレイを含むバイオチップの一実施形態の概略図である。
【図2】バイオチップの閉ループ温度制御の方法の一実施形態を示す概略図である。
【図3】熱制御デバイスのアレイにより画定される分離された熱制御ゾーンを有するバイオチップの一実施形態の若干概略的な平面図である。
【図4】図3のバイオチップからの熱制御ゾーンのうちの2つの部分図である。
【図5】概ね図4の線5−5に沿った、図3のバイオチップからの熱制御ゾーンの断面図である。
【図6】バイオチップに含まれ得る熱制御ゾーンの若干概略的な断面図である。
【図7】加熱デバイスおよびその上の温度センサが薄膜層を共有する、図6の熱制御ゾーンの一実施形態の断面図である。
【図8】加熱デバイスおよびその上の温度センサが別個の薄膜層により形成される、図6の熱制御ゾーンの別の実施形態の断面図である。
【図9】異なる熱ゾーンを画定する熱分離形態を有するバイオチップの一実施形態の部分断面図である。
【図10】基板部分に延在するチャネルにより画定される熱分離形態の一実施形態の部分断面図である。
【図11】下および上の薄膜電子デバイスを有する基板部分を形成する方法の一実施形態を示す流れ図である。
【図12】上および下の電子デバイスを用いて複数のチャンバ内のサンプルを温度制御式に処理する方法の一実施形態を示す流れ図である。
【図13】一体型マイクロ流体カートリッジが1つの例示的な制御装置と係合するように位置合わせされ、制御装置がサンプル処理および/または分析中に、係合したカートリッジに電源を供給し、かつその動作を制御するように構成される、本発明の一実施形態によるマイクロ流体システムの等角図である。
【図14】図13のカートリッジおよび制御装置の選択された態様を示す部分断面図である。
【図15】本発明の一実施形態による、流体、サンプル、電気、デジタル情報および検出された信号の動きを示す、図13のカートリッジおよび制御装置の概略図である。
【図16】本発明の一実施形態による、図13のカートリッジおよび制御装置の動作の1つの例示的な方法を示す流れ図である。
【図17】図16の方法を実行するための流体ネットワークを示す、図13および図15のカートリッジのさらに詳細な概略図である。
【図18】サンプルを取り込んでいる最中の図17のカートリッジの活動している領域を強調した概略図である。
【図19】フィルタスタック上で核酸を単離するためにサンプルを処理している最中の図17のカートリッジの活動している領域を強調した概略図である。
【図20】フィルタスタックから核酸を遊離し、遊離された核酸をカートリッジの検定部において濃縮している最中の図137のカートリッジの活動している領域を強調した概略図である。
【図21】濃縮された核酸と増幅試薬とを平衡にし、検定部の増幅チャンバに移送している最中の図17のカートリッジの活動している領域を強調した概略図である。
【図22】選択増幅後に、核酸を検定部の検定チャンバに移送している最中の図17のカートリッジの活動している領域を強調した概略図である。
【図23】本発明の一実施形態による、検定部の選択された態様を示す、カートリッジの外側から見た、図13および図17のカートリッジに含まれる検定部の平面図である。
【図24】本発明の一実施形態による、図13および図17のカートリッジの流体操作部に取り付けられた状態を示す、概ね図23の線24−24に沿って見た、図23の検定部の部分断面図である。
【図25】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図26】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図27】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図28】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図29】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図30】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図31】図24に示される検定部を製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図32】本発明の一実施形態による、基板表面に隣接して形成される2つの流体区画を流体連通するように接続するチャネルを示し、そのチャネルが基板の反対側の表面と通じることなく、その表面において基板に出入りすることを示す概略図である。
【図33】図32のチャネルを製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図34】図32のチャネルを製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図35】図32のチャネルを製造するための変更過程にある基板の部分断面図である。
【図36】図35のチャネルの変更形態の部分断面図である。
【図37】図33ないし図35に示される基板変更の1つの変形形態を用いて検定部内に形成することができる混合チャンバの一実施形態の平面図である。
【図38】本発明の一実施形態による、検定チャンバ、および基板によって画定されるチャネルに対する、選択された薄膜層の配置を示す、図24の選択された態様のより詳細な図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記サンプルを収容するためのチャンバ(102)を少なくとも部分的に画定する基板部分(94)を備え、
前記基板部分(94)は、表面(96)を有する基板(98)と、前記表面(96)に隣接して前記基板(98)上に形成される複数の薄膜層(110)とを含み、
前記薄膜層(110)は複数の電子デバイスを形成し、該電子デバイスのうちの少なくとも2つはそれぞれ、異なる組の前記薄膜層(110)により形成され、
前記少なくとも2つの電子デバイスは、1)前記チャンバ(102)内の流体の温度を制御するための温度制御デバイスと、2)前記チャンバ(102)内の流体の特性を感知または変更するように構成される他の電子デバイスとを含むことを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記他の電子デバイスは、電極(112)、センサ(120)、トランスデューサ、光学系デバイス、音響系デバイス、電界利用デバイスおよび磁界利用デバイスから成る群から選択され、
前記他のデバイスは、前記チャンバ(102)の或る領域(92)内の流体の特性を変更または感知するようにそれぞれが構成される、複数の電子デバイスを含み、
前記温度制御デバイスは、前記領域(92)内の流体の温度を制御するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記温度制御デバイスは、前記チャンバ(102)の種々の領域(92)の温度を独立して制御するように配置される複数の電子デバイスを含み、
前記複数の温度制御デバイスはそれぞれ、薄膜抵抗ヒータ(118)および温度センサ(120)を含み、
前記薄膜抵抗ヒータ(118)および前記温度センサ(120)は異なるデバイスであることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
流体を保持するための区画(102)を少なくとも部分的に画定する基板部分(94)を備え、
前記基板部分(94)は、表面(96)を有するとともに該表面(96)に対してほぼ垂直なラインを画定する基板(98)と、前記表面(96)に隣接して前記基板(98)上に形成される複数の薄膜電子デバイスとを含み、
前記電子デバイスはそれぞれ、前記区画(102)内の流体の特性を感知または変更するように構成され、前記電子デバイスの少なくとも2つは前記ラインと交わることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記少なくとも2つの電子デバイスの少なくとも1つは電極(112)であり、
前記少なくとも2つの電子デバイスのうちの少なくとも1つは薄膜抵抗ヒータ(118)であり、
前記少なくとも2つの電子デバイスのうちの別のデバイスは温度センサ(120)であることを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記温度センサ(120)は熱電対接合部(165)を含むことを特徴とする、請求項5に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記少なくとも2つの電子デバイスは、別個のヒータ(118)および温度センサ(120)を含むことを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記薄膜電子デバイスは、複数の薄膜層(110)により形成され、
前記薄膜層の少なくとも1つは、前記少なくとも2つの電子デバイスの2つ以上に含まれることを特徴とする、請求項4に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記少なくとも1つの薄膜層は、前記少なくとも2つの電子デバイスのヒータ(118)と温度センサ(120)の一部とを形成することを特徴とする、請求項8に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
流体を保持するための区画(102)を少なくとも部分的に画定する基板部分(94)を備え、
前記基板部分(94)は、表面(96)を有するとともに、前記基板部分(94)は、該表面(96)に対してほぼ垂直に延びるラインを画定する基板(98)と、前記表面(96)に隣接して前記基板(98)上に形成される複数の薄膜層(110)であって、異なる組の該薄膜層(110)を各電子デバイスに対して用いて一対の電子デバイスを画定する、複数の薄膜層(110)とを含み、
前記電子デバイスはそれぞれ、前記区画(102)内の前記サンプルの特性を感知または変更するように動作可能であり、前記ラインは前記一対の電子デバイスと交わることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記基板部分(94)に取り付けられるとともに前記流体区画(102)を部分的に画定する流体障壁(106)をさらに備えることを特徴とする、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項12】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記電子デバイスは、電極(112)、センサ(120)、トランスデューサ、光学系デバイス、音響系デバイス、電界利用デバイスおよび磁界利用デバイスから選択されることを特徴とする、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項13】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記特性は、温度、光学的特性、電気的特性、磁気的特性、速度、量、濃度、分布および移動度から成る群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項14】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)を製造する方法であって、
基板(98)の表面(96)に隣接して、前記基板(98)上に複数の薄膜層(110)を形成することであって、該複数の薄膜層(110)は複数の薄膜電子デバイスを形成し、前記電子デバイスの少なくとも2つはそれぞれ、異なる組の前記薄膜層(110)から形成される、形成すること、および
流体を保持するための区画(102)を形成するため流体障壁(106)を前記基板(98)に取り付けることであって、前記少なくとも2つの電子デバイスはそれぞれ、前記区画(102)内の流体の特性を感知または変更するように構成される、取り付けること
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)を製造する方法であって、
前記流体障壁(106)は、該流体障壁(106)を通して前記区画(102)から前記マイクロ流体デバイス(90)の外へ流体が出るのを防止するように構成されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロ流体デバイス(90)の外部からアクセス可能な電気インタフェースを作製するステップをさらに含み、
該電気インタフェースは、前記複数の薄膜電子デバイスに電気的に結合されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記表面(96)は、該表面(96)に対してほぼ垂直に延びるラインを画定し、前記少なくとも2つの電子デバイスは前記ラインと交わることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
マイクロ流体デバイス(90)を用いてサンプルを分析する方法であって、
前記サンプルを区画(102)に導入すること、および
複数の異なる薄膜電子デバイスを動作させることであって、それにより、該電子デバイスそれぞれが前記区画(102)内の前記サンプルの特性を感知または変更する、動作させることを含み、
前記電子デバイスは、基板(98)上に形成される複数の薄膜層(110)により提供され、前記電子デバイスの少なくとも2つはそれぞれ、異なる組の前記薄膜層(110)により提供されることを特徴とする方法。
【請求項19】
マイクロ流体デバイス(90)を用いてサンプルを分析する方法であって、
前記基板(98)は、前記薄膜層(110)が隣接して形成される表面(96)を有し、
前記表面(96)は、該表面(96)に対してほぼ垂直に延びて前記少なくとも2つの電子デバイスと交わるラインを画定し、
前記異なる組は重複しないことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
サンプルを分析するためのマイクロ流体デバイス(90)であって、
前記サンプルを処理するための複数の領域を有するチャンバ(102)を少なくとも部分的に画定する基板部分(94)を備え、
前記基板部分(94)は、表面(96)を有する基板(98)と、該表面(96)に隣接して前記基板(98)上に形成される複数の薄膜層(110)とを含み、
前記薄膜層(110)は、前記チャンバ(102)内の流体の温度を制御するための複数の温度制御デバイスを提供し、
前記制御デバイスは、前記チャンバ(102)の各領域に隣接する少なくとも1つの温度センサ(120)および少なくとも1つのヒータ(118)を含み、
前記温度制御デバイスはそれぞれ、前記チャンバ(102)の各領域に異なる熱ゾーン(92)を提供するように独立して調節されるように構成され、前記温度制御デバイスはそれぞれ閉ループ(79)に含まれ、
前記閉ループ(79)は、温度設定点を受け取るように構成される制御用電子回路と、 該制御用電子回路の制御下で前記温度制御デバイスに電力供給するように構成される電力デバイスとを含むことを特徴とするマイクロ流体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公表番号】特表2006−517024(P2006−517024A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518856(P2005−518856)
【出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/002435
【国際公開番号】WO2004/069412
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】