説明

薄葉材、その製造方法およびそれを用いた電気電子部品

【課題】高容量化・大出力化による大電流に耐えうる低抵抗かつ高耐熱性のセパレータ用材料を提供すること。
【解決手段】平衡水分率が2.5%以下のアラミド短繊維85〜95重量%と平衡水分率が0.1%以下の合成樹脂バインダー含量15〜5重量%よりなる薄葉材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子部品内において導電部材間を隔離し、電解質もしくはイオンなどのイオン種を通過させるための隔離板として有用な薄葉材に関する。特に、水酸化物イオン、アンモニウムイオンなどのアルカリ性イオンを電流のキャリアーとして使用する、電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などの電気電子部品における電極間の隔離板として有用な薄葉材、その製造方法およびそれを使用した電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機器や高速情報処理機器などの最近の進歩に象徴されるように、エレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化には目覚しいものがある。なかでも、小型、軽量、高容量で長期保存にも耐えるアルカリ電解質を使用した高性能な、電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などの電気電子部品への期待は大きく、幅広く応用が図られ、部品開発が急速に進展している。これに応えるため、部材、例えば電極間の隔壁材料であるセパレータに関しても、技術・品質開発の必要性が高まっている。セパレータに要求されるさまざまな特性の中でも次の6つの特性項目が特に重要と認識される。
1) 電解質を保持した状態での導電性が良いこと。
2) 高い電極間遮蔽性。
3) 機械的強度を有すること。
4) アルカリ電解液に対する濡れ性が良いこと。
5) アルカリ電解液に対する耐久性が良いこと。
6) 充電中に発生するガスの透過性が良いこと。
【0003】
従来、ポリオレフィン繊維の不織布、ポリアミド繊維の不織布などが電気電子部品のセパレータに広く使用されており、例えば、このようなセパレータは1層または複数層あるいはロール状に巻いて電池内に用いられる。
【0004】
これらの不織布はセパレータとして良好な物性を有しているが、近年、電気自動車用の電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などに要求されている高容量化や大出力化には必ずしも十分な対応ができていない。
【0005】
高容量、大出力が要求される電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などの電気電子部品中のセパレータには
1) 電解質を保持した状態での導電性が良いこと。
2) 高い電極間遮蔽性。
3) 機械的強度を有すること。
4) アルカリ電解液に対する濡れ性が良いこと。
5) アルカリ電解液に対する耐久性が良いこと。
6) 充電中に発生するガスの透過性が良いこと。
7) 極板のバリによるショートや極板のエッジなどによるセパレータの引き裂きを防止できること。
8) 化学的・電気化学的に安定であること(耐熱性)。
の8つの特性を同時に満たすことが必要とされている。特に、導電性と耐熱性は、大電流を使用する例えば電気自動車用の駆動電源としての電池、キャパシタのような電気電子部品において、ブレーキの回生エネルギーを効率よく蓄えるという意味で極めて重要であると考えられる。
【0006】
上記耐熱性を向上するための手段に関し、例えば、耐熱性の繊維を含ませたセパレータ
として、芳香族ポリアミド繊維の1種であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維とナイロン繊維を用いてシート化した不織布(特許文献1)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維とポリエチレン繊維を用いてシート化した不織布(特許文献2)などが開示されているが、いずれも平衡水分率が高い繊維を含むため、アルカリ電解液に浸漬し、保存すると、アルカリ電解液による膨潤により、繊維間の結合部分に応力が発生し、やがては破壊し、セパレータの強度が劣化する;高出力を達成するために、セパレータの厚みを小さくすると、極板のバリによるショートや極板のエッジなどによるセパレータの引き裂きが発生し、機械特性が低下しセパレータとしての形態保持が困難であるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−266832号公報
【特許文献2】特開平5−283054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高容量化・大出力化による大電流に耐えうる低抵抗かつ高耐熱性のセパレータ用材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を進めた結果、今回、平衡水分率の少ないアラミド短繊維と平衡水分率の少ない合成樹脂バインダーを組み合わせることにより、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、
(a)平衡水分率が2.5%以下のアラミド短繊維 85〜95重量%、および
(b)平衡水分率が0.1%以下の合成樹脂バインダー 15〜5重量%
よりなることを特徴とする薄葉材を提供するものである。
【0011】
本発明は、また、アラミド短繊維(a)および合成樹脂バインダー(b)を水中で混合し、湿式抄造法でシート化したのち、一対の金属製ロール間にて合成樹脂バインダーの融点以上の温度で高温熱圧加工することを特徴とする上記の薄葉材の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明は、さらに、上記の薄葉材を導電部材間の隔離板として使用してなる電気電子部品、特に、電池、キャパシタ、燃料電池または太陽電池を提供するものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0013】
(平衡水分率)
本発明において、「平衡水分率」とは、試料を絶乾状態にした後、温度20℃、相対湿度65%の環境に96時間暴露した試料の水分率をJIS L−1015に従って算出した値である。
【0014】
(アラミド)
本発明において、「アラミド」とは、アミド結合の60%以上が芳香環に直接結合した線状高分子化合物を意味する。このようなアラミドとしては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミドおよびメタフェニレンイソフタルアミド単位を主たる構成成分として含む共重合体、ポリパラフェニレンテレフタルアミドおよびパラフェニレンテレフタルア
ミド単位を主たる構成成分として含む共重合体、ポリ(パラフェニレン)−コポリ(3,4ジフェニルエーテル)テレフタールアミドなどが挙げられる。これらのアラミドは、例えば、イソフタル酸塩化物およびメタフェニレンジアミンを用いるそれ自体既知の界面重合法、溶液重合法などにより工業的に製造されており、市販品として入手することができるが、これに限定されるものではない。
【0015】
(アラミド短繊維)
アラミド短繊維(a)は、アラミドを材料とする繊維を切断したものであり、そのような繊維としては、例えば、帝人(株)の「テイジンコーネックス(登録商標)」、デュポン社の「ノーメックス(登録商標)」などの商品名で入手することができるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
アラミド短繊維(a)は、一般に0.3dtex以上0.9dtex未満、好ましくは0.4〜0.85dtexの範囲内の繊度を有することができる。ここで、「繊度」とは、1000mあたりの繊維重量(g)と定義される。繊度が0.3dtex未満の繊維は、湿式法での製造(後述)において凝集を招きやすいために好ましくなく、また、0.9dtex以上の繊維は、繊維直径が大きくなり過ぎるため、例えば、真円形状で密度を1.4g/cmとすると、直径10ミクロン以上である場合、高出力化のための厚みの小さい薄葉材を製造し難く、薄葉材の均一性不良などの不都合が生じる。ここで、薄葉材の均一性不良とは、空隙サイズの分布が広がり前述したイオン種移動性に不均一性を生じることを意味する。
【0017】
アラミド短繊維(a)の長さは、一般に1mm以上50mm未満、好ましくは2〜10mmの範囲内から選ぶことができる。短繊維の長さが1mmよりも小さいと、薄葉材の力学特性が低下し、他方、50mm以上のものは、やはり後述する湿式法での薄葉材の製造にあたり「からみ」、「結束」などが発生しやすく欠陥の原因となりやすい。
【0018】
アラミド短繊維(a)は、一般に5.0g/dtex以上の強度を有することが好ましく、特に20g/dtex以上の強度を有することが好ましい。アラミド短繊維(a)の強度が高いほど、極板のバリによるショートや極板のエッジなどによるセパレータの引き裂きを防止することができ、より厚みの小さい薄葉材を使用した電気電子部品の高出力化が可能となる。
【0019】
(平衡水分率が2.5%以下のアラミド短繊維)
本発明においては、アラミド短繊維(a)として、平衡水分率が2.5%以下、特に2.2%以下のアラミド短繊維が使用される。かかる平衡水分率を有するアラミド短繊維としては、例えば、帝人テクノプロダクツ(株)の「テクノーラ(登録商標)」などの商品名で入手することができるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
(合成樹脂バインダー)
本発明において、合成樹脂バインダー(b)は、後述する湿式抄造法において、上記アラミド短繊維(a)を物理的に絡めあるいは化学的に接合することにより、捕捉し、シート化する役割をはたすものであり、そのような機能を有するものであれば、その種類、材質などには特に制約はない。具体的には、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アラミドなどの合成樹脂よりなる、パルプ、ファイブリッド、ステープルファイバーなどが挙げられる。これらの合成樹脂バインダーは市販品として入手することができるが、それに限定されるものではない。
【0021】
本発明において使用される合成樹脂バインダー(b)は、一般に450℃以下、特に100〜300℃の範囲内の融点を有することが好ましい。
【0022】
(融点)
合成樹脂の融点は、一般にDSC(Differential Scanning Calorimetry)、DTA(Differential Thermal Analysis)などの熱的測定方法にて測定される。一般に、ポリマーは、単一でない分子量成分を含んでいることおよび結晶化の程度の違いなどを反映して幅広い融解挙動を示す。本発明において、合成樹脂バインダーの融点は、DSC分析による吸熱ピークに対応する温度を以って定義する。
【0023】
(平衡水分率が0.1%以下の合成樹脂バインダー)
本発明においては、合成樹脂バインダー(b)として、平衡水分率が0.1%以下、特に0.05%以下の合成樹脂バインダーが使用される。かかる平衡水分率を有する合成樹脂バインダーとしては、例えば、三井化学(株)の「SWP(登録商標)」などの商品名で入手することができるものが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0024】
(薄葉材)
本発明の薄葉材は、以上に述べたアラミド短繊維(a)と合成樹脂バインダー(b)から構成され、これら両者の合計量を基準にして、アラミド短繊維(a)を85〜95重量%、好ましくは87〜93重量%、及び合成樹脂バインダー(b)を15〜5重量%、好ましくは13〜7重量%含有するシート状物である。アラミド短繊維(a)の含量が85重量%未満であると、後述する一対の金属製ロール間にて合成樹脂バインダーの融点以上の温度で高温熱圧加工した場合に、上記金属製ロールにシート状物が張り付き、薄葉材の作製が困難となり、また、極板のバリおよび/または極板のエッジなどによる引き裂きに抵抗しがたくなり、薄葉材の厚みを小さくすることが困難となる。他方、アラミド短繊維(a)の含量が95重量%を超えると、合成樹脂バインダー(b)の量が少なくなり、後述する湿式抄造法でのアラミド短繊維間の接着が不十分となり、シート形成が困難となる。
【0025】
本発明の薄葉材は、一般に5秒/100cm以下、特に1.5秒以下、さらに特に0.1秒以下の王研式透気度を有することが好ましい。この透気度が5秒/100cmを超えると、該薄葉材を用いた電気電子部品、例えば電池の充電中に発生するガスの透過性が十分でなくなり、充放電により、ガスが蓄積し、電池の寿命が短くなるなど好ましくない。また、透気度の値が小ければ小さいほど、セパレータの破損などによる機械的な短絡を発生しない限り、電解質を保持した状態での導電性が高くなり、電気電子部品の高出力化が可能となる。
【0026】
本発明の薄葉材は、一般に5μm〜300μm、特に5〜50μmの範囲内の厚さを有していることが好ましい。厚さが5μmよりも小さいと、機械特性が低下し、セパレータとしての形態保持や製造工程での搬送などの取り扱いに問題を生じやすく、反対に、300μmを越えると、内部抵抗の増大を招きやすく、なにより小型高性能の電気電子部品を製造し難くなる。
【0027】
本発明の薄葉材は、また、一般に5〜100g/m、特に10〜80g/mの範囲内の坪量を有することができる。坪量が5g/mより小さいと、機械強度が不足するため、電解質含浸処理や巻き取りなどの部品製造工程での各種取り扱いで破断を引き起こしやすくなり、他方、100g/mより大きい坪量の薄葉材では、厚みの増大や、電解質の含浸・浸透の低下が生じる傾向がみられる。
【0028】
本発明の薄葉材の密度は坪量/厚さより算出される値であり、通常0.1〜1.2g/m、特に0.2〜0.7g/mの範囲内の値をとることができる。
【0029】
(薄葉材の製造法)
以上に述べた如き特性を有する本発明の薄葉材は、一般に、前述したアラミド短繊維(a)と合成樹脂バインダー(b)とを混合した後シート化する方法により製造することができる。具体的には、例えば、アラミド短繊維(a)と合成樹脂バインダー(b)を乾式ブレンドした後に、気流を利用してシートを形成する方法;アラミド短繊維(a)と合成樹脂バインダー(b)を液体媒体中で分散混合した後、液体透過性の支持体、例えば網またはベルト上に吐出してシート化し、液体を除いて乾燥する方法などを適用することができるが、なかでも、水を媒体として使用する、いわゆる湿式抄造法が好ましく選択される。特に、アラミド短繊維(a)および合成樹脂バインダー(b)を水中で混合し、湿式抄造法でシート化したのち、一対の金属製ロール間にて合成樹脂バインダー(b)の融点以上の温度で高温熱圧加工する方法が好適である。
【0030】
湿式抄造法では、アラミド短繊維(a)と合成樹脂バインダー(b)を含有する混合物の水性スラリーを、抄紙機に送液し分散した後、脱水、搾水および乾燥操作することによってシート化し、シートとして巻き取る方法が一般的である。抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機およびこれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などを利用することができる。コンビネーション抄紙機での製造の場合、配合比率の異なるスラリーをシート成形し合一することにより、複数の紙層からなる複合体シートを得ることができる。
【0031】
また、本発明の薄葉材には、アラミド短繊維(a)および合成樹脂バインダー(b)以外に、少なくとも1種の他の繊維状成分、例えば、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、セルロース系繊維、PVA系繊維、ポリエステル繊維、アリレート繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンナフタレート繊維などの有機繊維;ガラス繊維、ロックウール、アスベスト、ボロン繊維などの無機繊維を含ませることもできる。これらの他の繊維状成分を添加する場合、その配合量は、アラミド短繊維(a)と他の繊維成分と合成樹脂バインダー(b)の合計重量を基準にして、一般に10%以下とすることが望ましい。
【0032】
このようにして得られるシートは、例えば、一対の平板間または金属製ロール間にて高温高圧で熱圧することにより、機械強度を向上させることができる。熱圧の条件は、例えば金属製ロール使用の場合、温度50〜400℃、線圧50〜2000kg/cmの範囲内を例示することができる。特に、一対の金属製ロール間にて合成樹脂バインダー(b)の融点以上の温度で高温熱圧加工することが好ましく、合成樹脂バインダー(b)の融点よりも150℃以上高い温度で高温熱圧加工することがさらに好ましい。合成樹脂バインダーの融点以上の温度で高温熱圧加工することにより、金属ロール間での熱圧時に機械強度が向上するとともに、熱圧加工温度が高いほど溶融した合成樹脂バインダー(b)の粘度が下がり、毛細管現象によるアラミド短繊維の交絡部分への移動が速くなり、移動する合成樹脂バインダーの量も多くなり、その結果、得られる薄葉材は電極間のイオン種移動性を損なわず、電解質を保持した状態での導電性も高くなる。
【0033】
上記のようにして得られるシートは、加熱操作を加えずに、常温で単にプレスだけを行うこともでき、また、熱圧の際に複数の薄葉材を積層することもできる。さらに、上記の熱圧加工を任意の順に複数回繰り返し行うこともできる。
【0034】
本発明の薄葉材は、その強度をさらに増加するために、公知の他のセパレータ(例えば、ポリオレフィン不織布)とそれ自体既知の方法(例えば、上記の熱圧加工)で積層した状態で使用することもできる。
【0035】
本発明の薄葉材は、(1)耐熱性,難燃性などの優れた特性を備えていること、(2)熱溶融し難いアラミド短繊維を多く含み、高温熱圧加工における毛細管現象による溶融した合成樹脂バインダーのアラミド短繊維の交絡部分への移動により、電極間のイオン種移動性が損なわれないこと、(3)アラミド短繊維に存在するアミド基に由来するアルカリ電解液に対する濡れ性の良さから、電解質の保持機能に優れること、(4)アラミド短繊維の比重が1.4程度と小さく軽量であること、(5)透気度が5秒/100cm以下であり、ガスの透過性が十分であること、(6)平衡水分率が低い繊維およびバインダーを使用しているので、アルカリ電解液による膨潤により、繊維間の結合部分に応力が発生し、やがては破壊することによる、セパレータの強度劣化を防止することができるので、アルカリ電解液に対する耐性が高いこと、(7)高強度のアラミド繊維を多く含有しているため、薄くても極板のバリによるショートや極板のエッジなどによるセパレータの引き裂きを防止することができ、電気電子部品の高出力化が可能であること、などの種々の優れた特性を有しており、電気電子部品の導電部材間の隔離板として有利に用いることができる。
【0036】
かくして、本発明の薄葉材を導電部材間における隔離板として用いて製作された、電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などの電気電子部品は、電極間の遮蔽性が高く安全性が維持され、また、アラミドの本質的に高い耐熱性によって電気自動車等の大電流環境下での使用にも耐えることができるなどの顕著な効果を有する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、これらの実施例は、単なる例示であり、本発明の範囲を何ら限定するためのものではない。
【0038】
(測定方法)
(1)シートの坪量、厚みの測定
JIS C2111に準じて実施した。
(2)透気度の測定
王研式透気度計を用いて測定した。一連のシートについては、この時間が長いほど電極間の遮蔽性も高いと言える。
(3)引張強度の測定
テンシロン引張試験機を、幅15mm、チャック間隔20mm、引張速度50mm/minの条件で操作することにより行った。
(4)アルカリ電解液耐性
30%水酸化カリウム水溶液に室温で1週間浸漬した後、水洗、乾燥し、引張強度を測定し、下式により算出した。
アルカリ電解液耐性=〔浸漬後の引張強度〕/〔浸漬前の引張強度〕×100(%)
【0039】
参考例:原料の調製
(1)アラミド短繊維
・帝人テクノプロダクツ社製パラアラミド短繊維: テクノーラ(登録商標)、平衡水分率2.0%、繊度0.8dtex、長さ3mmに切断。
・Du Pont社製パラアラミド短繊維: ケブラー(登録商標)、平衡水分率4.2%、の繊度0.8dtex、長さ3mmに切断。
・帝人テクノプロダクツ社製メタアラミド短繊維: テイジンコーネックス(登録商標)、平衡水分率5.5%、繊度0.9dtex、長さ5mmに切断。
(2)合成樹脂バインダー
・ポリエチレンパルプ: 三井化学(株)製のSWP(登録商標)E620(平衡水分率0.01%、融点135℃)をミキサーを用いて水中で分散した後、カナダ標準濾水度を300mlに調節した。
・ポリプロピレンパルプ: 三井化学(株)製のSWP(登録商標)Y600(平衡水分率0.03%、融点170℃)をミキサーを用いて水中で分散した後、カナダ標準濾水度を300mlに調節した。
・メタアラミドファイブリッド: Du Pont社製NOMEX(登録商標)ファィブリッド(平衡水分率6.0%)を離解機、叩解機で処理しカナダ標準濾水度を80mlに調節した。
【0040】
実施例1〜3:薄葉材の製造
参考例で調製したアラミド短繊維と合成樹脂バインダーを各々水中で分散してスラリーを作製した。このスラリーを、下記表1に示す配合比率で混合し、タッピー式手抄き機(断面積325cm)にてシート化してシート状物を作製した。
【0041】
次いで、これを金属製カレンダーロールにより下記表1に示す条件で熱圧加工し、薄葉材を得た。
【0042】
このようにして得られた薄葉材の主要特性値を下記表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜3の薄葉紙は、透気度が低く、イオン種透過性も十分であると考えられ、また、アルカリ電解液耐性も十分であることから、大電流を要求される電気自動車用の電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などの電気電子部品における導電部材間の隔離板として有用である。
【0045】
比較例1〜3:薄葉材の製造
参考例で調製したアラミド短繊維と合成樹脂バインダーを各々水中で分散してスラリーを作製した。このスラリーを下記表2に示す配合比率で混合し、湿式抄造法にてシート化してシート状物を作製した。次いで、これを金属製カレンダーロールにより下記表2に示す条件で熱圧加工し、薄葉材を得た。
【0046】
このようにして得られた薄葉材の主要特性値を下記表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
比較例1〜3の薄葉材は、表2に示すように、透気度は低いが、アルカリ電解液耐性が低くかった。このような薄葉材は、大電流を要求される電気自動車用の電池、キャパシタ、燃料電池、太陽電池などの電気電子部品における導電部材間の隔離板としては有用ではないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の薄葉材は、透気度が十分に低く、ガス透過性が良好で、イオン種透過性も十分であると考えられ、アルカリ電解液耐性も高いことから、電気電子部品における導電部材間の隔離板として利用することができる。また、本発明の薄葉材は、強度の高いアラミド短繊維を多く含むので、極板のバリによるショートや極板のエッジなどによるセパレータの引き裂きを防止することができる。
【0050】
さらに、本発明の薄葉材を使用した電池、キャパシタなどの電気電子部品は、本質的に耐熱性の高いアラミド短繊維を多く含んでいるので、電気自動車などの大電流環境下でも十分に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平衡水分率が2.5%以下のアラミド短繊維 含量85〜95重量%、および
(b)平衡水分率が0.1%以下の合成樹脂バインダー 含量15〜5重量%
よりなることを特徴とする薄葉材。
【請求項2】
王研式透気度が5秒/100cm以下である請求項1に記載の薄葉材。
【請求項3】
アラミド短繊維(a)および合成樹脂バインダー(b)を水中で混合し、湿式抄造法でシート化したのち、一対の金属製ロール間にて合成樹脂バインダーの融点以上の温度で高温熱圧加工することを特徴とする請求項1または2に記載の薄葉材の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の薄葉材を導電部材間の隔離板として使用してなる電気電子部品。
【請求項5】
電池、キャパシタ、燃料電池または太陽電池である請求項4に記載の電気電子部品。

【公開番号】特開2011−21289(P2011−21289A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166899(P2009−166899)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(596001379)デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社 (26)
【Fターム(参考)】