説明

薄葉紙

【課題】感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用などとして特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙を提供する。
【解決手段】繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径Dが100〜2000nmかつ該繊径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内である短繊維(好ましくは延伸繊維および未延伸繊維)を、薄葉紙の全重量に対し80重量%以上用いて目付が1〜50g/mの薄葉紙を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用として特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱孔版印刷原紙用などの薄葉紙としては、マニラ麻等の天然繊維で構成された物(例えば特許文献1参照)、太さや長さが不均一なアクリル系繊維で構成されたもの(例えば特許文献2参照)、天然繊維とポリエステル繊維とで構成されかつ樹脂加工を施したもの(例えば特許文献3参照)、ポリエチレンテレフタレート繊維とポリエチレンナフタレート未延伸繊維とで構成されたもの(例えば特許文献4参照)などが提案されている。
【0003】
しかしながら、天然繊維を用いた薄葉紙では、繊度のバラツキが大きいため、感熱孔版印刷原紙として用いた際に、薄葉紙の空隙に斑が生じやすいため印刷の安定性が不十分であるという問題があった。また、太さや長さが不均一なアクリル系繊維を用いた薄葉紙でも同様の問題があった。また、樹脂加工を施した薄葉紙では、インク通過性が不安定であるため均一な印刷ができないという問題があった。また、バインダー繊維としてポリエチレンナフタレート繊維を用いた薄葉紙では、薄葉紙を製造する際の熱処理条件の設定が難しいという問題があった。
なお、最近では、繊度が小さい繊維を用いた薄葉紙が提案されているが、地合いの均一性の点でまだ満足とはいえなかった(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−315456号公報
【特許文献2】特開平11−301134号公報
【特許文献3】特開平9−39429号公報
【特許文献4】特開2000−118162号公報
【特許文献5】国際公開第2008/130020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用などとして特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、主体繊維だけでなくバインダー繊維にも極めて繊度が小さい繊維を用いて薄葉紙を構成することにより、極めて地合いが均一な薄葉紙が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「目付が1〜50g/mの薄葉紙であって、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径Dが100〜2000nmかつ該繊径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内である短繊維を、薄葉紙の全重量に対し80重量%以上含むことを特徴とする薄葉紙。」が提供される。
【0008】
その際、前記短繊維に、延伸繊維と未延伸繊維とが含まれることが好ましい。また、前記延伸繊維と未延伸繊維との重量比が(延伸繊維/未延伸繊維)90/10〜50/50の範囲内であることが好ましい。また、前記短繊維が、易溶解成分を海成分、難溶解成分を島成分とする海島型複合繊維から、海成分を溶出除去することにより得られた繊維であることが好ましい。
【0009】
本発明の薄葉紙において、薄葉紙にカレンダー加工が施されていることが好ましい。また、薄葉紙の密度が0.4〜1.2g/cmであることが好ましい。また、薄葉紙が感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用などとして特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、短繊維は繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径D(単繊維の直径)が100〜2000nm(好ましくは300〜1800nm、特に好ましくは550〜1600nm)かつ該繊径D(nm)に対する繊維長L(nm)の比L/Dが500〜2500(好ましくは500〜1500)の範囲内となるようにカットされていることが肝要である。
【0012】
前記繊径Dが2000nmよりも大きいと薄葉紙の表面に現れる孔の孔径が不均一(すなわち、平均孔径と最大孔径との比が大きい。)となるため好ましくない。逆に、該繊径Dが100nmよりも小さいと抄紙の際に網から脱落しやすくなり好ましくない。また、前記の比(L/D)が2500よりも大きいと、抄紙の際に繊維同士が絡みを発生し分散不良となるため、地合いの均一な薄葉紙が得られにくいため好ましくない。逆に、前記の比L/Dが500よりも小さいと、繊維と繊維とのつながりが極めて弱くなり、抄紙工程の際にワイヤーパートから毛布への移行が困難となり工程安定性が低下し好ましくない。
【0013】
前記の繊径Dは,透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し測定することができる。その際、測長機能を有するTEMでは、測長機能を活用して測定することができる。また、測長機能の無いTEMでは、撮った写真を拡大コピーして、縮尺を考慮した上で定規にて測定すればよい。
その際、単繊維の横断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には、繊径Dは、単繊維の横断面の外接円の直径を用いるものとする。なお、100〜1000nmの範囲の繊径は、繊度に換算すると0.0001〜0.01dtexとなる。
【0014】
前記のような短繊維の製造方法としては特に限定されないが、国際公開第2005/095686号パンフレットに開示された方法が好ましい。すなわち、繊径およびその均一性の点で、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなりかつその島径Dが100〜2000nmである島成分と、前記の繊維形成性熱可塑性ポリマーよりもアルカリ水溶液に溶解しやすいポリマー(以下、「易溶解性ポリマー」ということもある。)からなる海成分とを有する複合繊維をカットした後にアルカリ減量加工を施し(または、複合繊維にアルカリ減量加工を施した後、カットを施し)、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。なお、前記島径は、透過型電子顕微鏡で複合繊維の単繊維横断面を撮影することにより測定が可能である。なお、島の形状が丸断面以外の異型断面である場合には、前記の島径Dは、その外接円の直径を用いる。
【0015】
ここで、海成分を形成するアルカリ水溶液易溶解性ポリマーの、島成分を形成する繊維形成性熱可塑性ポリマーに対する溶解速度比が200以上(好ましくは300〜3000)であると、島の分離性が良好となり好ましい。溶解速度が200倍未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解する間に、分離した繊維断面表層部の島成分が、繊径が小さいために溶解されるため、海相当分が減量されているにもかかわらず、繊維断面中央部の海成分を完全に溶解除去できず、島成分の太さ斑や島成分自体の溶剤侵食につながり、均一な繊径の短繊維が得ることができないおそれがある。
【0016】
海成分を形成する易溶解性ポリマーとしては、特に繊維形成性の良いポリエステル類、脂肪族ポリアミド類、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン類を好ましい例としてあげることができる。更に具体例を挙げれば、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリアルキレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルが、アルカリ水溶液に対して溶解しやすく好ましい。ここでアルカリ水溶液とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液などを言う。これ以外にも、海成分と、該海成分を溶解する溶液の組合せとしては、ナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドに対するギ酸、ポリスチレンに対するトリクロロエチレン等やポリエチレン(特に高圧法低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン)に対する熱トルエンやキシレン等の炭化水素系溶剤、ポリビニルアルコールやエチレン変性ビニルアルコール系ポリマーに対する熱水を例として挙げることができる。
【0017】
ポリエステル系ポリマーの中でも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。また、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加作用があるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性や紡糸安定性の面で問題が生じる可能性がある。また、共重合量が10重量%以上になると、溶融粘度低下作用があるので、好ましくない。
【0018】
一方、島成分を形成する難溶解性ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類などが好適な例として挙げられる。具体的には、機械的強度や耐熱性を要求される用途では、ポリエステル類では、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と称することもある。)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、これらを主たる繰返し単位とする、イソフタル酸や5−スルホイソフタル酸金属塩等の芳香族ジカルボン酸やアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸やε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸縮合物、ジエチレングリコールやトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のグリコール成分等との共重合体が好ましい。また、ポリアミド類では、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が好ましい。一方、ポリオレフィン類は酸やアルカリ等に侵され難いことや、比較的低い融点のために極細繊維として取り出した後のバインダー成分として使える等の特徴があり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、無水マレイン酸などのビニルモノマーのエチレン共重合体等を好ましい例としてあげることができる。さらに島成分は丸断面に限らず、異型断面であってもよい。特にポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合率が20モル%以下のポリエチレンテレフタレートイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、等のポリエステル類、あるいは、ナイロン6、ナイロン66等の脂肪族ポリアミド類が、高い融点による耐熱性や力学的特性を備えているので、ポリビニルアルコール/ポリアクリロニトリル混合紡糸繊維からなる極細フィブリル化繊維に比べ、耐熱性や強度を要求される用途へ適用でき、好ましい。
【0019】
前記の海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、製糸性および抽出後の極細繊維の物性に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤、等の各種添加剤を含んでいても差しつかえない。
【0020】
前記の海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と少なくなっても、島同士が接合したり、島成分の大部分が接合して海島型複合繊維とは異なるものになり難い。
【0021】
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなり、一方2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすい。
【0022】
次に島数は、100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。また、その海島複合重量比率(海:島)は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方20%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
【0023】
溶融紡糸に用いられる口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面が形成されるといった紡糸口金でもよい。吐出された海島型複合繊維は冷却風により固化され、所定の引き取り速度に設定した回転ローラーあるいはエジェクターにより引き取られ、未延伸糸を得る。この引き取り速度は特に限定されないが、200〜5000m/分であることが望ましい。200m/分以下では生産性が悪い。また、5000m/分以上では紡糸安定性が悪い。
【0024】
得られた未延伸糸は、海成分を抽出後に得られる極細繊維の用途・目的に応じて、強度・伸度・熱収縮特性に合わせるために、必要に応じて延伸工程や熱処理工程を経由して、カット工程あるいはその後の抽出工程に供することができる。延伸工程は紡糸と延伸を別ステップで行う別延方式でもよいし、一工程内で紡糸後直ちに延伸を行う直延方式を用いてもかまわない。もちろん、未延伸糸の状態で(すなわち、延伸工程を経ずに)次のカット工程に進んでもよい。
【0025】
次に、かかる複合繊維を、島径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内となるようにカットする。かかるカットは、未延伸糸または延伸糸をそのまま、または数十本〜数百万本単位に束ねたトウにしてギロチンカッターやロータリーカッターなどでカットすることが好ましい。
【0026】
前記の繊径Dを有する短繊維は、カットされた前記複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより得られる。その際、アルカリ減量加工において、繊維とアルカリ液の比率(浴比)は0.1〜5%である事が好ましく、さらには0.4〜3%である事が好ましい。0.1%未満では繊維とアルカリ液の接触は多いものの、排水等の工程性が困難となるおそれがある。一方、5%以上では繊維量が多過ぎるため、アルカリ減量加工時に繊維同士の絡み合いが発生するおそれがある。なお、浴比は下記式にて定義する。
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
【0027】
また、アルカリ減量加工の処理時間は5〜60分である事が好ましく、さらには10〜30分である事が好ましい。5分未満ではアルカリ減量が不十分となるおそれがある。一方、60分以上では島成分までも減量されるおそれがある。
また、アルカリ減量加工において、アルカリ濃度は2%〜10%である事が好ましい。2%未満では、アルカリ不足となり、減量速度が極めて遅くなるおそれがある。一方、10%を越えるとアルカリ減量が進みすぎ、島部分まで減量されるおそれがある。
【0028】
アルカリ減量の方法としては、カットされた複合繊維をアルカリ液に投入し、所定の条件、時間で処理した後に一度、脱水工程を経てから、再度、水中に投入し酢酸、シュウ酸などの有機酸を使用して中和、希釈を進め最終的脱水する方法や、または、所定の時間処理した後に、先に中和処理を施し、更に水を注入し希釈を進めその後脱水をする方法等が挙げられる。前者は、バッチ式に処理する為、少量での製造(加工)を行える事ができる反面、中和処理に時間を要す為、若干生産性が悪い。後者は半連続生産が可能であるが、中和処理時に多くの酸系水溶液及び希釈に多くの水を必要とする点がある。処理設備は何ら制限されるものではないが、脱水時に繊維脱落を防止する観点から、特許第3678511号公報に開示されているような開口率(単位面積当たりの開口部分の面積のこと)が10〜50%であるメッシュ状物(例えば非アルカリ加水分解性袋など)を適応する事が好ましい。該開口率が10%未満では水分の抜けが極めて悪く、50%を超えると、繊維の脱落が発生するおそれがある。
【0029】
さらには、アルカリ減量加工の後、分散性を高めるために分散剤(例えば、高松油脂(株)製の型式YM−81)を繊維表面に、繊維重量に対して0.1〜5.0重量%付着させることが好ましい。
なお、前記のアルカリ減量加工は、前記カット工程の前の工程で行ってもさしつかえない。
【0030】
本発明の薄葉紙において、前記の短繊維が、薄葉紙の全重量に対し80重量%以上(より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%)含まれることが肝要である。前記短繊維の含有量が80重量%未満の場合、地合いの均一性が損なわれるおそれがあり、好ましくない。
【0031】
ここで、前記短繊維に、延伸繊維と未延伸繊維とが含まれていると、未延伸繊維(以後、「バインダー繊維」と称することもある。)がバインダー繊維としての役割をはたすこととなり好ましい。その際、前記延伸繊維と未延伸繊維との重量比が(延伸繊維/未延伸繊維)90/10〜50/50の範囲内であることが好ましい。前記延伸繊維の重量比率が該範囲よりも小さいと、薄葉紙表面に現れる孔の孔径が不均一となり、均一な地合いが得られないおそれがある。逆に、前記延伸繊維の重量比率が該範囲よりも大きいとバインダー力を形成する接着成分の量が極めて少なくなるため、得られたシート(薄葉紙)の物理的な強度が不足し、毛羽発生や工程性に問題が生じるおそれがある。
【0032】
また、前記延伸繊維と未延伸繊維との繊径比は、(延伸繊維の繊径/未延伸繊維の繊径)0.33〜3(好ましくは、0.4〜2.5、特に好ましくは0.4〜0.9)である事が好ましい。この比率が小さい(未延伸繊維(バインダー繊維)の繊径が大きい)と、不織布としての構造を維持するには接着点の点数が少なかったり、構成本数が少ない為、不織布としては弱くなったり、工程性として紙切れの可能が増すおそれがある。逆にこの比率が大きい((未延伸繊維(バインダー繊維)の繊径が小さい)と、不織布としては接着点が増してくる為強度アップとなり安定性が増す傾向が見れる一方で、融着成分が細かく配置している事から、不織布表面が膜状になりフィルムライクとなる可能性が高くなるおそれがある。
【0033】
なお、延伸繊維は、吐出された海島型複合繊維(未延伸糸)をカット工程に供する前に延伸(好ましくは2.0倍以上に延伸、より好ましくは3.0倍以上に延伸)することにより得られる。一方、未延伸繊維は、吐出された海島型複合繊維(未延伸糸)を延伸することなくカット工程に供することにより得られる。
【0034】
また、延伸繊維の密度法による結晶化度Xcが20%より大であることが好ましく、一方、未延伸繊維の密度法による結晶化度Xcが20%以下であることが好ましい。
なお、かかる結晶化度Xcは以下の方法により、測定するものとする。すなわち、硝酸カルシウムからなる密度勾配管を作成し、極細繊維の密度をn=3で測定しその平均値をρとする。この値、および極細繊維を構成する熱可塑性樹脂の非晶密度(ρa)、および結晶密度(ρc)を用いて結晶化度(Xc)を次式により算出する。
Xc(%)=(ρc/ρ)×(ρ−ρa)/(ρc−ρa)×100
ここで、ρa、ρcは、Polymer handbookなどに記載の公知の値を用いる。例えばポリエチレンテレフタレートでは、ρa=1.335、ρc=1.455、ナイロン6では、ρa=1.08、ρ=1.23、ポリプロピレンではρa=0.850、ρc=0.936、ポリエチレンではρa=0.85、ρc=1.00、ポリエチレンナフタレートではρa=1.32、ρc=1.41、ポリフェニレンスルフィドではρa=1.32、ρc=1.43を用いるものとし、記載のない場合は、Propertires of Polymers(D.W. Van Krevelen 著)のChapter 4に記載の方法により計算した値とする。
【0035】
本発明の薄葉紙を製造する方法としては、前記の短繊維を用いて、通常の長網抄紙機、短網抄紙機、丸網抄紙機、あるいはこれらを複数台組み合わせて多層抄きなどとして、抄紙した後、熱処理する製造方法が好ましい。その際、熱処理工程としては、抄紙工程後、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤーのどちらでも可能である。また、熱処理の後、金属/金属ローラー、金属/ペーパーローラー、金属/弾性ローラーなどのカレンダー/エンボスを施しても良い。特に、本発明の薄葉紙にカレンダー加工またはエンボス加工を施すと、表面平滑性の向上(厚みの均一化)、接着点を形成することによる強度アップという効果を奏する。また、未延伸繊維からなるバインダー繊維を用いる場合は、熱圧着工程が好ましく、カレンダー加工またはエンボス加工を施すことが好ましい。
【0036】
また、本発明の薄葉紙は前記短繊維(好ましくは、(延伸繊維/未延伸繊維)90/10〜50/50の範囲内)だけで構成されることが好ましいが、薄葉紙全重量の20重量%未満であれば、前記短繊維以外の繊維として、各種合成繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、オレフィン系、アラミド系、共重合ポリエステルが鞘部に配された複合繊維)、木材パルプやリンターパルプなどの天然パルプ、アラミドやポリエチレンを主成分とする合成パルプなどが含まれていてもさしつかえない。
【0037】
かくして得られた薄葉紙において、薄葉紙の目付が1〜50g/m(より好ましくは3〜40g/m、特に好ましくは、5〜30g/m)の範囲内であること肝要である。該目付けが1g/m未満では、抄紙工程の安定性が悪く、製造時に紙切れを発生したり、得られた不織布の強度が弱くなりすぎるため好ましくない。逆に、該目付けが50g/mよりも大きい場合は、感熱孔版印刷原紙用としては大き過ぎたり、そもそも濾水が悪く生産性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0038】
本発明の薄葉紙は、前記のような極細の短繊維が多く含まれるので、極めて均一な地合いを呈する。本発明の薄葉紙は極めて均一な地合いを呈するので、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用などとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0040】
(1)溶融粘度
乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットした。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見た。
【0041】
(2)溶解速度測定
海成分および島成分のポリマーを、各々、径0.3mm、長さ0.6mmのキャピラリーを24孔もつ口金から吐出し、1000〜2000m/分の紡糸速度で引き取って得た未延伸糸を残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、83dtex/24フィラメントのマルチフィラメントを作製した。これを所定の溶剤および溶解温度で浴比100として、溶解時間と溶解量から減量速度を算出した。
【0042】
(3)繊径D
透過型電子顕微鏡TEM(測長機能付)を使用し、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し繊径Dを測定した。ただし、繊径Dは、単繊維横断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
【0043】
(4)繊維長L
走査型電子顕微鏡(SEM)により、海成分溶解除去前の短繊維を基盤上に寝かせた状態とし、20〜500倍で繊維長を測定した(n数5の平均値)。その際、SEMの測長機能を活用して繊維長Lを測定した。
【0044】
(5)引張り強度
JIS P8113(紙及び板紙の引張強さ試験方法)に基づいて引張り強度(裂断長)を測定した。
【0045】
(6)孔径
西華産業(株)製PMIパームポロメーター(ASTM E1294−89準拠)を用いて、最大孔径Ma(μm)と平均孔径Av(μm)の測定を実施した。最大孔径Maと平均孔径Avとの比Ma/Avが2以下のものを合格とする。
【0046】
(7)伸度
JIS P8132(紙及び板紙の伸び試験方法)に基づいて伸度を測定した。
【0047】
(8)目付
JIS P8124(紙のメートル坪量測定方法)に基づいて目付を測定した。
【0048】
(9)厚み
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に基づいて厚みを測定した。
【0049】
(10)密度
JIS P8118(紙及び板紙の厚さと密度の試験方法)に基づいて密度を測定した。
【0050】
(11)融点
Du Pont社製、熱示差分析計990型を使用し、昇温20℃/分で測定し、融解ピークをもとめた。融解温度が明確に観測されない場合には、微量融点測定装置(柳本製作所製)を用い、ポリマーが軟化して流動を始めた温度(軟化点)を融点とした。なお、n数5でその平均値を求めた。
【0051】
(12)地合い
出来上がったサンプルの表面の状態を目視にて地合いを5段階に判定した。地合いが良いものから順に、5級、4級、3級、2級、1級とした。
【0052】
(13)結晶化度Xc
硝酸カルシウムからなる密度勾配管を作成し、極細繊維の密度をn=3で測定しその平均値をρとした。この値、および極細繊維を構成する熱可塑性樹脂の非晶密度(ρa)、および結晶密度(ρc)を用いて結晶化度(Xc)を次式により算出した。
Xc(%)=(ρc/ρ)×(ρ−ρa)/(ρc−ρa)×100
ここで、ρa、ρcは、Polymer handbookなどに記載の公知の値を用いた。例えばポリエチレンテレフタレートでは、ρa=1.335、ρc=1.455、ナイロン6では、ρa=1.08、ρ=1.23、ポリプロピレンではρa=0.850、ρc=0.936、ポリエチレンではρa=0.85、ρc=1.00、ポリエチレンナフタレートではρa=1.32、ρc=1.41、ポリフェニレンスルフィドではρa=1.32、ρc=1.43を用いるものとし、記載のない場合は、Propertires of Polymers(D.W. Van Krevelen 著)のChapter 4に記載の方法により計算した値とした。
【0053】
(14)繊維伸度
JIS L 1013 7.5(伸び率)により繊維伸度を算出した。
【0054】
[実施例1]
島成分に285℃での溶融粘度が120Pa・secのポリエチレンテレフタレート、海成分に285℃での溶融粘度が135Pa・secである平均分子量4000のポリエチレングリコールを4重量%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を9mol%共重合した改質ポリエチレンテレフタレートを使用し、海:島=10:90の重量比率で島数400の口金を用いて紡糸し、紡糸速度1500m/minで引き取った。アルカリ減量速度差は1000倍であった。これを3.9倍に延伸した後、ギロチンカッターで800μmにカットして、短繊維A(延伸繊維)用複合繊維を得た。これを4%NaOH水溶液で75℃にて10%減量したところ、繊径と繊維長が比較的均一である極細短繊維が生成していることを確認した(繊径750nm、繊維長0.8mm、アスペクト比(L/D)=1067、丸断面、結晶化度35%、繊維伸度25%)。
【0055】
一方、島成分に285℃での溶融粘度が120Pa・secのポリエチレンテレフタレート、海成分に285℃での溶融粘度が135Pa・secである平均分子量4000のポリエチレングリコールを4重量%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を9mol%共重合した改質ポリエチレンテレフタレートを使用し、海:島=10:90の重量比率で島数800の口金を用いて紡糸し、紡糸速度1500m/minで引き取った。アルカリ減量速度差は1000倍であった。これをギロチンカッターで1600μmにカットして、未延伸繊維からなる短繊維B(バインダー繊維)を得た。これを4%NaOH水溶液で75℃にて10%減量したところ、繊径と繊維長が比較的均一である極細短繊維が生成していることを確認した(繊径1500nm、繊維長1.6mm、アスペクト比(L/D)=1067、丸断面、密度1.342g/cm、結晶化度6.3%、繊維伸度320%)。
【0056】
次いで、前記短繊維Aと短繊維B(バインダー繊維)とを(短繊維A/短繊維B)60/40の割合で試験用パルパーにて撹拌した後、角型抄紙マシンを用いて手抄きを実施し、ロータリードライヤー(120℃×2分)を用いて乾燥処理を実施する事でサンプルシートを得た。その後、カレンダー機加工(金属ローラー/金属ローラー、線圧120kg/cm、温度160℃、速度2m/min)を施して薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
次いで、該薄葉紙を用いて、感熱孔版印刷原紙および電池用セパレータおよびコンデンサ用ペーパーを得たところ、地合いが均一なため高品質であった。
【0057】
[実施例2]
実施例1において、短繊維A、短繊維Bの島成分として固有粘度0.62のポリエチレンナフタレートを用いること以外は同様の方法で、各々の繊維を得た(短繊維C、短繊維D)後、ロータリードライヤー(145℃×2分)、カレンダー加工機(金属ローラー/金属ローラー、線圧160kg/cm、温度180kg/cm、速度2m/min)を施し、薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
実施例1で用いた短繊維A、短繊維Bに、短繊維E(帝人ファイバー製、テピルス TA04PN SD0.1dtex×3mm)を加えて、短繊維A/短繊維B/短繊維E=50/40/10の比率に変えること以外は実施例1と同様の方法で加工を施し、薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
実施例1で用いた短繊維A、短繊維Bに、短繊維F(帝人ファイバー製、テピルス TK08PN SD0.2dtex×3mm)を加えて、短繊維A/短繊維B/短繊維F=60/30/10の比率に変えること以外は実施例1と同様の方法で加工を施し、薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0060】
[実施例5]
実施例1で用いた繊維の比率のみ変更(短繊維A/短繊維B=40/60)すること以外は実施例1と同様の方法で薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0061】
[比較例1]
実施例3で用いた短繊維E/短繊維Bのみを用いて短繊維E/短繊維B=60/40とすること以外は実施例3と同様の方法で薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0062】
[比較例2]
実施例4で用いた、短繊維A/短繊維Fのみを用いて、短繊維A/短繊維F=60/40とする以外は実施例4と同様の方法で薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
実施例1で用いた短繊維Bを製造する際に、口金数を変更(400→200)して短繊維G(6000nm、繊維長6.0mm、アスペクト比(L/D)=1000、丸断面)を得た。短繊維Aと短繊維Gを用いて、短繊維A/短繊維G=60/40とすること以外は実施例1と同様の方法で薄葉紙を得た。該薄葉紙の物性を表1に示す。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用として特に好適に使用することのできる、地合いが均一な薄葉紙が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付が1〜50g/mの薄葉紙であって、繊維形成性熱可塑性ポリマーからなり繊径Dが100〜2000nmかつ該繊径Dに対する繊維長Lの比L/Dが500〜2500の範囲内である短繊維を、薄葉紙の全重量に対し80重量%以上含むことを特徴とする薄葉紙。
【請求項2】
前記短繊維に、延伸繊維と未延伸繊維とが含まれる、請求項1に記載の薄葉紙。
【請求項3】
前記延伸繊維と未延伸繊維との重量比が(延伸繊維/未延伸繊維)90/10〜50/50の範囲内である、請求項1または請求項2に記載の薄葉紙。
【請求項4】
前記短繊維が、易溶解成分を海成分、難溶解成分を島成分とする海島型複合繊維から、海成分を溶出除去することにより得られた繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の薄葉紙。
【請求項5】
薄葉紙にカレンダー加工が施されてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の薄葉紙。
【請求項6】
薄葉紙の密度が0.4〜1.2g/cmである、請求項1〜5のいずれかに記載の薄葉紙。
【請求項7】
薄葉紙が感熱孔版印刷原紙用または電池用セパレータ用またはコンデンサ用ペーパー用である、請求項1〜6のいずれかに記載の薄葉紙。

【公開番号】特開2012−92461(P2012−92461A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241006(P2010−241006)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】