説明

薔薇抗酸化物質

【課題】薔薇の花から抽出した薔薇油や薔薇水は、時間が経つとともに酸化しやすい、腐りやすい、香りが劣化しやすいといった欠点があった。本発明は、これらの欠点を解消することを課題とする。
【解決手段】本発明者らは、抽出した薔薇油、薔薇水の中にタンニン酸や酵母が含まれていることを新しく発見し、タンニン酸と酵母の働きを利用して薔薇油と薔薇水を発酵、熟成、精製を得て、香り、殺菌、防腐効果に優れた薔薇抗酸化物質が得られることを見出した。また、この薔薇抗酸化物質は安定性や人体への安全性が高く、化粧品、飲料、食品、医薬品、医薬部外品に抗酸化剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐剤、香料、化粧品、飲料、食品、医薬品、医薬部外品などの分野において利用可能な、薔薇の花から抽出した物質である薔薇油及び薔薇水を発酵、熟成、精製を得た組成物を有効成分とする薔薇抗酸化物質に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、化粧品や食品、医薬品や医薬部外品などの生産、加工、保存の過程において、腐敗による品質の劣化を防ぐためにパラベンを始めとする化学的に合成された防腐剤や殺菌剤が用いられていることが多い。しかし、化学合成された従来の防腐剤等は、肌や人体に入っても分解しないため、長期に渡って使用し続けると、身体のサイクルを崩し、肌や体内における機能障害や疾患などの副作用が生じるといった弊害がある。そのため、安全性の観点から使用が忌避される傾向にあり、天然物由来の防腐剤、とりわけ生体において持続的に機能する植物性の防腐剤への期待が高まっている。しかし、人間にも、地球にも優しい生分解性の防腐剤として、十分な抗酸化活性や殺菌性能を有するものはこれまで見当たらなかった。
【0003】
天然の抗酸化物質として、現在、フラボノイド、コーヒー酸誘導体、セサミノール、フィチン酸といった食物に含まれる抗酸化物質が注目され期待されているが、ポリフェノールなどのタンニン類もまた抗酸化作用の高い物質として研究開発が行われている。ポリフェノールとは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)をもつ植物成分の総称で、植物の色素成分であるフラボノイドや茶の渋み成分のカテキンおよび没食子酸、桂皮酸などのタンニン類もこの仲間であることは周知の通りである。具体的なポリフェノールの健康機能として、抗酸化作用、歯垢生成酵素阻害作用、抗菌・抗ウイルス作用、血清コレステロール上昇抑制作用、血圧調節作用、α−アミラーゼ阻害作用(血糖値の調節作用)、体脂肪の蓄積抑制、腸内細菌叢の改善、消臭作用が挙げられ、ポリフェノールは特定保健用食品としての効果を認められ、医学・栄養学的にも根拠付けられている(非特許文献1)。
【0004】
従来、薔薇油が持つ香気成分の抗菌作用の証明として、薔薇油(Rose Otto Oil)とその主成分であるシトロネロール、ゲラニオールの抗菌活性において、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus
aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、カンジダ(Candida albicans)、アスペルギルス(Aspergillus
fumigatus)を用いて、ペーパーディスク(直径8ミリ)に薔薇油の5%酢酸エチル溶液を浸し、風乾後、Muller Hinton(細菌)またはRPM1640培地(真菌)で培養して計測したところ、発育阻止円直径がブドウ球菌17mm、大腸菌0mm、カンジダ22mm、アスペルギルス37mmという測定値が証明されている(非特許文献2)。
【0005】
また、従来の薔薇油とその香気成分の殺菌効力を示す方法として、チブス菌(Bacillus
typhosus, Eberth)を用いて測定した石炭酸係数の測定値によると、薔薇油7.0、ゲラニオール(Geraniol)11.5、リナロール(Linalool)7.0、オイゲノール(Eugenol)14.4、フェニルエチルアルコール(Pheyl-ethyl-alcohol)9.0、β‐イオノン(β‐Jonone)2.2と、いずれも強い殺菌性を有していることがわかる(非特許文献3)。
【0006】
また、薔薇油の安全性においては、GRAS認定「1965年以来アメリカ医薬品局が最も安全なフレーバーとして認定していることを示す」ということも発表されており、安全性が確認されている。アブソリュートローズドメ(Rosa Centifolia)、オットーローズブルガリア(Rosa Damascena)、オットーローズモロッコ(Rosa Centilolia)、オットーローズトルコ(Rosa
Damascena)の各4品目を経口毒性LD50ラット5g/kgと経費毒性LD50ラット2.5g/kg(この内アブソリュートローズドメの試験においては経費毒性LD50ラット>8g/kg不確実)を用いて、刺激、光毒性を調べたところ、刺激においては48時間クローズドパッチテストで全ての品目が「刺激なし」と証明されている。また、光毒性においても全ての品目が「原液でなし」と証明されている。これによって、薔薇油濃度100%を肌につけても安全であるということが確認されている(非特許文献4)。
【0007】
古くから伝わる伝承医学や民間療法において、薔薇には強壮効果、精神安定効果、整腸作用、婦人病の改善、目や皮膚の粘膜のただれの修復作用があるとされており、古くからその効能が認められ、幅広く使用されてきた。しかし、その効果と裏付けにおいては未だ具体的な有効成分とその働きの関連性が実証されていない部分が多い。薔薇水は古くから飲用されたり、薔薇油においては高級香水や高級食材の原材料としても用いられていた。しかし、従来の薔薇水や薔薇油は、単一では酸化しやすく、香りも劣化しやすいため、不安定であった。
【0008】
そのため、従来、国内で一般に市販されている薔薇水(芳香蒸留水)は、既に酸化が進んだ状態であるものが多く、かび臭い、腐りやすいといった欠点があり、香りが良いものは少なく、化学合成の防腐剤で調整しているケースが多い。このように、天然の製品でありながら、酸化しない、腐らない、香りが良いという特徴をもった製品はこれまでなかった。
【非特許文献1】中川邦男著、「日本の健康機能性食品 トクホ 特定保健用食品」、ブックマン社、1999年5月発行、第143頁から第144頁
【非特許文献2】井上重治著、「微生物と香り」、フレグランスジャーナル社、2002年8月発行、第189頁、表4−1
【非特許文献3】堀口博著、「防菌防黴の化学」、三共出版、1982年1月10日発行、第4頁から第9頁
【非特許文献4】蓬田勝之・石内都著、「薔薇のパルファム」、株式会社求龍堂 2005年4月発行、第234頁、三上杏平 aromatopia No.28 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
薔薇の花から抽出した薔薇油や薔薇水は、時間が経つとともに酸化しやすい、腐りやすい、香りが劣化しやすいといった欠点があった。本発明は、これらの欠点を解消した薔薇抗酸化物質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するための手段として、薔薇の花を採取し、水蒸気蒸留法などで抽出した薔薇油及び薔薇水の中から新しく発見された組成物、タンニン酸と酵母の働きを利用して、発酵、熟成、精製して得た薔薇抗酸化物質を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薔薇抗酸化物質は香り、殺菌力、防腐効果に優れているだけでなく、安定性や人体への安全性も高いため、化粧品、飲料、食品、医薬品、医薬部外品へ添加することで抗酸化剤として提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、薔薇の花から抽出した物質の中に、新しくタンニン酸と酵母が含まれていることを発見し、確認した。その後、タンニン酸及び酵母を用いて発酵、熟成、精製を得た薔薇抗酸化物質が、強い抗酸化作用と香気成分による殺菌作用を有し、優れた防腐効果が発揮されることを見出した。タンニン酸や酵母は、従来より薔薇の花の成分中に含まれていることは知られていたが、本発明者らは、抽出した薔薇油や薔薇水の中にも、タンニン酸や酵母が含まれていることを発見した。
さらに、水蒸気蒸留の抽出過程を経ても、薔薇の中にある酵母菌が生きたままの状態で薔薇油及び薔薇水に含まれていることを確認し、これらの酵母(サッカロマイセスセルビシエ:Saccharomyces cerevisiae)によって抽出物を発酵させることで抽出物の安定性を高めることに成功した。高温を用いる水蒸気蒸留法で抽出した薔薇油や薔薇水にタンニン酸が含まれ、酵母が生きて存在してはいるということは、今まで確認されていなかった。タンニン酸を含有していることで、酵母が守られ、発酵、熟成にいたると考えられる。
【0013】
薔薇油の場合、3トン〜4トンの花からおよそ1キロのオイルが抽出でき、薔薇水は1トン〜2トン程度が抽出できる。これほど大量に薔薇の成分が凝縮されているにもかかわらず、一般には、抽出後すぐに安定性を高めるために合成防腐剤や合成香料を添加することが行われており、それでは薔薇に本来あるべき物質の働きや効果が失われていく。本発明者らは抽出物に添加剤を加えることなく発酵させることでこれらの抽出物の安定性を高めることに成功した。
そして、上記の課題を解決するための手段として、この薔薇油、薔薇水を発酵・熟成し、精製して得られた組成物が安全性の高い優れた薔薇抗酸化物質となることを見出した。
【0014】
本発明を実施するにおいては、まず薔薇油と薔薇水を薔薇の花から抽出する必要がある。以下に水蒸気抽出法を用いた蒸留法を示すが、本発明は蒸留方法によって限定されるものではなく、発酵に適した抽出物が得られるのであればその抽出方法を問わない。
薔薇の抽出は、まず薔薇の花の採集から始まる。採集の対象となる薔薇の花は、良好な自然環境の中で自然のリズムに沿って育った健康な花が望ましい。農薬は控え、有機栽培を目指し、健康な花が咲く5月〜6月までの期間に夜明けと共に花を摘みに行く。花の摘み方も、花を傷めずにすべて手作業で採取する。明け方から午前9時までに花を摘み取り、通気性の良い麻の袋にこれらを入れ、午前9時〜午前11時までに工場に運ぶ。このとき、運ばれる花も厳選しなければならない。潰れた花や熱を持った花はすでに腐敗が進んでおり、香りが酸化し劣化している。集荷した花で腐敗が進行していないものを選別し、湧水を用いて水蒸気蒸留法により抽出する。本発明における水蒸気蒸留法は、周知技術であり本発明の特徴をなすものではない。その後、3トン〜4トンの花から約1キロの薔薇油が抽出され、薔薇水は約1トン〜2トン採取できる。これら薔薇油及び薔薇水の重量の数値は、毎年の薔薇の収穫や品種によって異なり、これに限定するものではない。抽出を経た後の薔薇油及び薔薇水は従来であれば煮沸殺菌し、化学合成物質や防腐剤などを添加して出荷されるが、本発明においては精製までの過程において煮沸殺菌せずに、そのままの状態で運ぶ。このとき、アルミ容器、ペットボトル、ガラス容器で搬送するのが望ましい。
【0015】
次に薔薇油の発酵・熟成・精製法について以下に述べる。まず、水蒸気蒸留法で抽出された薔薇油を密閉容器に入れて、嫌気状態のまま25度〜35度の温度に保つと、4週間〜6週間で自然発酵する。発酵が進むとpH値が下がり、薔薇油の中にある活性酵素(タンナーゼ、ポリフェナーゼ)の働きで、アルコール、アミラーゼ、炭酸ガス、窒素化合物を分解し、薔薇油の組成が変化する。その後、薔薇油に含まれているステアロプテンなどを自然ろ過で精製し、排他する。嫌気状態のまま20度〜13度、13度〜8度、8度〜4度、4度〜0度、0度〜−5度と数回に分けながら約4週間毎に温度を徐々に下げつつ熟成させていき、その間にも自然ろ過を繰り返して精製を重ねていく。−5度まで温度を下げて熟成させていった後は自然解凍して常温に戻し、再び常温から約5度ずつ温度を下げていき、熟成と自然ろ過を繰り返して精製していく。熟成終了後は−20度まで温度を下げて発酵を止め、本発明における薔薇抗酸化物質が完成する。完成までの期間はおよそ6ヶ月〜1年を要するが、熟成終了までの温度管理や熟成期間の判断については最終的にはタンニン酸の分析値及び水素イオン濃度と官能評価により判断する。なお、本発明における発酵、熟成、精製の温度や期間は、原料となる薔薇油の状態等によってその都度異なる性質のものであり、上述の例に限るものではない。発酵、熟成、精製の過程を経て出来上がった薔薇油の組成物の形態は以下の表1に示す。
【表1】

【0016】
次に薔薇水の発酵・熟成・精製法について以下に述べる。薔薇水においては、抽出後から常温で自然発酵が始まっていくが、嫌気状態で15度〜20度に温度を設定して4週間発酵を進行させていく。その後12度〜8度に温度を下げてさらに4週間熟成させていき、常温に戻して再び13度〜12度に温度を下げて4週間熟成させていく。その間に自然ろ過をおこなって熟成と精製を繰り返していく。熟成終了後は−20度までに温度を下げて発酵を止め、本発明における薔薇抗酸化物質が完成する。完成までの期間はおよそ1ヶ月〜2ヶ月を要するが、熟成終了までの温度管理や熟成期間の判断基準については最終的には官能評価で判断する。なお、本発明における発酵、熟成、精製の温度設定及び期間はこれに限定されるものではない。精製の過程を経て出来上がった薔薇水の組成物の形態は以下の表2に示す。
【表2】

【0017】
発酵、熟成、精製が終了した後、薔薇油、薔薇水から成る組成物の中に含まれるタンニン酸の量と香気性が高まったことが分析試験及び官能評価で確認された。薔薇水においては、通常タンニン酸は微量しか検出されないが、表2の発明技術を用いてできた薔薇水の組成物にはタンニン酸が100g中に0.6g検出されたことからも本発明による発酵技術によって向上したということが確認できる。さらに、このとき乳酸が100ml中0.1ml検出されている。薔薇油においては、従来の薔薇油と発明技術を用いてできた薔薇油の組成物を比較したところ、後者から検出されるタンニン酸の量は、従来の薔薇油よりも向上した。これは、薔薇油の発酵途中でタンニン酸のもつ酸化酵素によって、薔薇油中の有機化合物と酸化重合し、重合タンニンができるからである。その後、精製を重ねることで酸化重合されたタンニン酸は縮合タンニンとなり、熟成させることで縮合タンニン酸同士の結合力と安定性が高まる。また、薔薇の香気性においても同様に、香り成分であるエステル、ゲラニオール、フェニルエチルアルコールなどが向上する効果が認められる。これは、発酵後に産生された高級アルコールが熟成時に有機酸と結合し、香気成分であるエステル類、テルペン類などが向上し、従来薔薇の香気成分であるゲラニオールやシトロネロールなどと重合して、香気性が高まるからである。本発明における薔薇抗酸化物質に含まれるタンニン酸の量は、抽出後の薔薇油及び薔薇水において薔薇の産地や毎年の収穫の品質によっても異なり、最終的な仕上がりはタンニン酸の分析値及び水素イオン濃度と官能評価により判断する。
【0018】
従来の薔薇水は数週間で香りが乱れ、酸化による腐敗臭が生じるので、品質保持のために防腐剤を入れる必要があった。一方、上記の過程を経て発酵させ精製した薔薇水は長期間に渡って香りが安定しており、pH値の推移を見ても非常に腐敗に強いことが確認できた。通常腐敗が進行することにより酸化していくが、安定したタンニン酸の抗酸化力によって腐敗を抑制し、pH値は安定を示す。
薔薇油についても同様に、発酵、熟成、精製したものは良い香りが長期に渡って安定し、腐敗に強いことが確認できた。pH値の推移の測定グラフは、実施例1、実施例2、実施例3で挙げられる処方例の化粧水、保湿クリーム、飲料水を用いて図1、図3、図5で示す。
【0019】
また、薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質の抗酸化作用を調べるために、上記薔薇抗酸化物質を添加した化粧水、保湿クリーム、飲料水を一定の期間、パネルに使用してもらい、各項目を設けてその効果を調べた。これらの処方例は実施例1、実施例2、実施例3で示す。各項目においては、上記薔薇抗酸化物質を添加した化粧水と保湿クリームを用いて、実施例4の10代から40代までの女性パネル15名によるしみ、そばかすへの効果、実施例5の10代から40代までの女性パネル15名によるニキビ、吹き出物への効果、実施例6の10代から40代までの女性パネル15名による毛穴やたるみへの効果、実施例7の10代から40代までの女性パネル10名による敏感肌やアトピーへの効果の全4項目について調べた。さらに、実施例8の上記薔薇抗酸化物質を添加した飲料水を用いて10代から40代までの女性パネル30名による便秘への効果、実施例9の10代から40代までの女性パネル30名による月経周期への効果の全2項目について調べたところ、それぞれに効果があることが明らかにされた。
【0020】
上記に記した薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を用いた試験例及び実施例を以下に示すが、この出願発明は実施例に限られるものではない。
【0021】
(試験例:温度とpH値による推移の変化)
防腐効果を調べるために、本発明の薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を添加した化粧水、保湿クリーム、飲料水を、約2ヶ月間に渡り、それらのpH値と温度変化の推移を計測したところ、図1、図3、図5に示すようにpH値が高い安定性を示し、薔薇油及び薔薇水そのものが酸化しにくいというだけでなく、添加したものに対しても防腐効果をもたらすことが明らかにされた。表6で示した保湿クリームの処方例では、発酵、熟成、精製後の薔薇油はわずか0.03%の配合で防腐剤としての効果を発揮する。これは、化学合成物の防腐剤効果に匹敵する。

(試験例:シコンエキスを用いた抗酸化作用による色素の変化)
本発明の薔薇抗酸化物質の抗酸化作用を確認するために、薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を添加した化粧水及び保湿クリームに天然着色料としてシコンエキスを添加し、それらにハロゲンランプ用タングステン線で約48時間照射し、その色素の変化の程度を調べた。化粧水及び保湿クリームの処方例は実施例1及び実施例2で表す。照射前、照射後で化粧水及び保湿クリームの色素が変化したかという官能評価を2名の専門パネルと3名の一般パネルで評価したところ、5名中全員が「変化なし」との測定結果を得ている。
【表3】


(試験例:香りの官能評価)
本発明技術実施前の薔薇油及び薔薇水と、本発明技術によって得られた薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質の香りの官能評価を2名の専門パネルと3名の一般パネルで比較評価したところ、本発明技術実施後の薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質の香りは実施前に比べて「向上した」と5名中全員が評価した。
【表4】

【実施例1】
【0022】
薔薇油0.03%、薔薇水10%、キサンタンガム1%、シコンエキス0.1%、精製水88.87%を用いて作った化粧水のpH値の測定。図1及び図2参照。尚、ここで挙げる薔薇油及び薔薇水は本発明技術で得られた薔薇抗酸化物質を表す。
【表5】

【実施例2】
【0023】
薔薇油0.03%、薔薇水10%、ミツロウ5.77%、ホホバオイル41%、オリーブオイル41%、ヒアルロン酸ナトリウム0.1%、シコンエキス0.1%、シルクエキス2%を用いて作った保湿クリームのpH値の測定。図3及び図4参照。尚、ここで挙げる薔薇油及び薔薇水は本発明技術で得られた薔薇抗酸化物質を表す。
【表6】

【実施例3】
【0024】
薔薇水25%、精製水75%を用いて作った飲料水のpH値の測定。図5及び図6参照。尚、ここで挙げる薔薇油及び薔薇水は本発明技術で得られた薔薇抗酸化物質を表す。
【表7】

【実施例4】
【0025】
しみ、そばかすに対する効果の有無を確認するために、実施例1で挙げた処方例の化粧水及び実施例2で挙げた処方例の保湿クリームを10代から40代の計15名のパネルに約3ヶ月間、朝晩の洗顔後に化粧水、保湿クリームの順で使用してもらったところ以下のような回答を得た。これは、本発明の薔薇抗酸化物質がしみ、そばかすなどのメラニン色素に吸着して還元することによる抗酸化作用によるものである。
【表8】

【実施例5】
【0026】
ニキビ、吹き出物に対する効果の有無を確認するために、実施例1で挙げた処方例の化粧水及び実施例2で挙げた処方例の保湿クリームを10代から40代の計15名の女性パネルに約3ヶ月間、朝晩の洗顔後に化粧水、保湿クリームの順で使用してもらったところ以下のような回答を得た。これは、本発明の薔薇抗酸化物質がニキビの原因となるアクネ菌などに浸透して殺菌し、余分な脂分に吸着して酸化還元することにより肌のバランスを整え、肌のターンオーバーを正常に戻す働きによるものである。
【表9】

【実施例6】
【0027】
毛穴やたるみに対する効果の有無を確認するために、実施例1で挙げた処方例の化粧水及び実施例2で挙げた処方例の保湿クリームを10代から40代の計15名の女性パネルに約3ヶ月間、朝晩の洗顔後に化粧水、保湿クリームの順で使用してもらったところ以下のような回答を得た。これは、本発明の抗酸化物質が毛穴やたるみなどに浸透することで毛穴部分の黒ずみや老廃物などに吸着し還元する力で不要な汚れを落とし、肌のバランスを整えることで毛穴や顔全体のたるみにもひきしめる働きがあるからといえる。
【表10】

【実施例7】
【0028】
敏感肌やアトピーに対する効果の有無を確認するために、実施例1で挙げた処方例の化粧水及び実施例2で挙げた処方例の保湿クリームを10代から40代の計10名のパネルに約3ヶ月間、朝晩の洗顔後に化粧水、保湿クリームの順で使用してもらったところ以下のような回答を得た。本発明の薔薇抗酸化物質は敏感肌やアトピーなどの症状にも効果を表し、非常に肌にもやさしく、アトピーの症状が改善、緩和されたという報告も挙げられている。
【表11】

【実施例8】
【0029】
生理不順や月経周期の安定に対する効果の有無を確認するために、実施例3で挙げた処方例の飲料水を10代から40代の、計30名の女性パネルに約3ヶ月間、100mlの水に対して上記飲料水を10ml添加し、朝昼晩の計3回飲用してもらい、それと同時に毎朝の基礎体温表を計測してもらってその効果を調べたところ以下のような回答を得た。これは、本発明の抗酸化物質が体内の活性酸素に吸着し、酸化還元することによって体内の血液や酸素のめぐりが良くなり、体内時計が正常に働いて生理不順や月経周期の安定にも効果があるといえる。
【表13】

【実施例9】
【0030】
便秘の改善に対する効果の有無を確認するために、実施例3で挙げた処方例の飲料水を10代から40代の、計30名の女性パネルに約3ヶ月間、100mlの水に対して上記飲料水を10ml添加し、朝昼晩の計3回飲用してもらい、それと同時に毎朝の基礎体温表を計測してもらってその効果を調べたところ以下のような回答を得た。これは、本発明の薔薇抗酸化物質がもたらす便秘の改善の効果として、腸内に溜まったガスや窒素化合物などの有害物質に吸着して還元することによって腸内を整え、便通を促す働きがあるといえる。
【表14】

【産業上の利用可能性】
【0031】
薔薇の花から抽出された物質を発酵、熟成、精製して得た安全性に優れた薔薇抗酸化物質は、化粧品、飲料、食品、医薬品、医薬部外品で使用可能であり、単一でも抗酸化剤や防腐剤としての役割を果たす。また、香りにおいても微量で薔薇の香気性を発揮するので、合成香料を使用せずとも天然の薔薇の香気を発し、高価であった天然の薔薇製品の増産や品質の向上が見込まれる点において、今後の幅広い産業上の利用の可能性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を添加した化粧水のpH値の測定グラフ(実施例1)。
【図2】薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を添加した化粧水のpH値(実施例1)。
【図3】薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を添加した保湿クリームのpH値の測定グラフ(実施例2)。
【図4】薔薇油及び薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を添加した保湿クリームのpH値(実施例2)。
【図5】薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を精製水で希釈した飲料水のpH値の測定グラフ(実施例3)。
【図6】薔薇水から成る薔薇抗酸化物質を精製水で希釈した飲料水のpH値(実施例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薔薇の花から抽出した物質の中に新しく発見された組成物、タンニン酸(Tannic acid)と酵母の働きを利用して発酵、熟成、精製を得た薔薇抗酸化物質。
【請求項2】
前記抽出した物質は薔薇油、又は薔薇水であることを特徴とする請求項1に記載の薔薇抗酸化物質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薔薇抗酸化物質が有効成分であることを特徴とする防腐剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薔薇抗酸化物質が有効成分であることを特徴とする香料。
【請求項5】
前記薔薇抗酸化物質を有効成分として含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧品。
【請求項6】
前記薔薇抗酸化物質を有効成分として含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項7】
前記薔薇抗酸化物質を有効成分として含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−150336(P2008−150336A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341719(P2006−341719)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(706001972)有限会社アンティアンティ (1)
【Fターム(参考)】