説明

薬剤の組み合わせの送達

細胞を死滅させる相補的な(通常は相乗的な)活性を有する2つの異なる薬学的活性化合物を有する、ポリマーマトリックスの微小球を含む組成物。本組成物は、特に腫瘍の治療において有用性を有する。有用な組み合わせは、ドキソルビシンとラパマイシン、イリノテカンとイブプロフェン、イブプロフェンとドキソルビシン、及びイリノテカンとドキソルビシンである。ポリマーマトリックスは、好ましくは架橋ポリビニルアルコールである。薬剤を同一の微小球に含めてもよいし、それぞれ個別の薬剤を有する微小球を一緒に混合してもよい。微小球は、好ましくは腫瘍の化学塞栓形成に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達製品に関するものであり、本製品は、通常は微小球であって、ポリマーマトリックス及び少なくとも2つの薬剤から形成され、薬剤がポリマーマトリックスから放出可能である。薬剤は、癌、特に固形腫瘍の治療のためのものである。
【背景技術】
【0002】
組み合わせ治療は、癌治療において最も成功した話の基になっており、このことは、組み合わせの構成成分が好ましい薬理学的相互作用(同じ標的であるが、異なる大型臓器毒性)を有する場合には理解できる。複数の薬剤による組み合わせ治療は、腫瘍治療において臨床的に一般的な手順である。卵巣、前立腺又は子宮の癌にとって最も一般的な治療レジメンは、2つの抗腫瘍薬の組み合わせに基づいている。この種類の療法は、腫瘍破壊性の効能を増加し、高用量の単一薬剤により引き起こされる副作用を低減する利点をもたらすことができる。イリノテカンは、進行性結腸直腸癌の患者を治療する5−FUと組み合わせて使用することとされ、エピルビシン、マイトマイシン又はカペシタビンのような他の作用物質と組み合わせて、乳癌(Becerra 2004, Oncology, 18, 46-48)、卵巣癌(Nishino et al. 2005, Gynecol Oncol, 97, 893-897)又は胃癌(Baek et al. 2006, Br J Cancer, 25, 312-320)をそれぞれ治療するのに成功裏に使用されてきた。
【0003】
より最近の幾つかの癌治療の成功の基礎には、薬剤の組み合わせを使用して異なる分子標的に影響を与えて抵抗性を回避する基本機構が関わる。しかし組み合わせ治療の主な利点に対する障壁は、重要なシグナル伝達経路の相互作用に関する理解が欠如していることである。相乗作用は、同じ経路、また平行する経路に対する薬剤の効果を介して誘発されうる。薬剤の組み合わせの数が無限であるので、最も有望な組み合わせ及びその評価の優先順位を決定する戦略が重要である。
【0004】
数学的モデル及びコンピューターシミュレーションが、どのような化学療法的組み合わせを臨床的に使用できるかについてより良く理解することを目指して、異なる薬剤の組み合わせの予測される効果を計算するために使用される。インビボにおいて、好ましい相乗効果のある薬剤の組み合わせは、効能の増加、投与量の減少、毒性の低減及び抵抗性発生の最小化をもたらすことができる。半有効方程式(Chou J. Biol. Chem. 1977, 252(18), 6438-6442)及び組み合わせ指数方程式(Chou-Talalay T. I. P. S. Nov. 1983 450-454)は、2つのそのような処理であり、生成されたアイソボログラム曲線は、異なる薬剤組み合わせにより引き起こされる追加的、相乗的又は拮抗的相互作用を表す。表面反応モデルの背後にある概念及び適用は、三次元反応表面として見ることができる2つの活性剤の連合効果を包含する。連合作用を評価するこれらのモデルは最も包括的であるが、非常に複雑であり、作成するのが困難でもある。事実、経験的な相乗作用と、基礎をなす生化学、分子及び生理学的機構との真の結びつきを発見するのは、非常に困難であることが認識されている。
【0005】
デジタル画像顕微鏡検査法に基づいた細胞毒性アッセイ(DIMSCAN)と呼ばれる、細胞増殖抑制又は細胞毒性の薬剤組み合わせのインビトロ試験のための、蛍光に基づいたハイスループット系がある。この種の試験には5つの原則がある:(a)アッセイ系は、広いダイナミックレンジ、理想的には細胞死滅の3〜4logを有すること;(b)細胞株パネルは、薬剤耐性株を含む複数の細胞株を用いること;(c)抵抗性の主な機構を同定し、細胞株パネルの構築に使用すること;(d)薬剤への暴露は、臨床的に達成可能な濃度及びスケジュールであること;並びに(e)低酸素状態は薬剤作用に拮抗しうるので、低酸素の条件下で試験することが必須であること。評価のために薬剤組み合わせを選択する最良の手法は、分子標的に基づいたものであり、研究は、最初にインビトロで実施されるべきであり、次に薬剤の組み合わせを臨床的に試験する前にインビボモデルにおいて確認するべきである。薬剤拮抗作用も薬剤の組み合わせを除外するのに頻繁に使用される。
【0006】
新規シグナル伝達モジュレーターと、確立された細胞毒性作用物質、細胞周期インヒビター及び分化インデューサーとの間に、既知の相乗的相互作用がある。第1の種類の薬剤組み合わせは、穏やかな強化作用をインビトロで生じる細胞毒性作用物質の毒性濃縮を伴い、第2及び第3の種類は、両方の作用物質が個別に与えられたときに非毒性(無効性)である濃度で、高い程度の相乗作用を誘発する。細胞周期インヒビター又はこれら作用物質と分化インデューサーとの薬剤組み合わせも、有意な相乗的活性をインビトロで生じることが示されている。細胞死の相乗的相互作用に関連するシグナル伝達モジュレーターの組み合わせの数は、実質的に無限である。これらの組み合わせが従来の細胞毒性作用物質の組み合わせ又は従来の作用物質と新規作用物質との組み合わせよりも治療上優れているかどうか、そしてこれらが組み合わせ治療の新たなパラダイムを表すかどうかは、依然として確定されていない。
【0007】
カナダのCelator Technologies社は、診療所に効果的な薬剤組み合わせもたらす商業的な解決法を報告している、Celator社は、薬剤の組み合わせが相乗的に作用して腫瘍細胞を死滅させる臨界比の同定に取り組み、目的は、静脈注射後に腫瘍を標的にするように設計されたリポソームに基づく送達ビヒクル(CombiPlex)においてこの相乗作用比を固定することである。ここで、インビトロでの相乗作用活性は、特定の薬剤比に依存している一方で、インビボでの活性は、これらの相乗作用比を維持することに依存している。薬剤は、リポソームの中に一緒に組み込まれている。これらの系は、WO2003028696、WO2004087115、WO2004087105、WO2004093795、WO2006055903のような特許公報及びTardi, P. G. et al, (2007) Biochim. Biophys. Acta 1768, 678-587に記載されている。
【0008】
微小球は、薬剤の組み合わせを送達するための極めて多用途のプラットフォームを提供する。Sharmaらは、結核を治療する薬剤組み合わせの吸入用微小球を研究した(Sharma R, et al, 2001, Pharm Research, 18, 1405-1410)。結核(TB)の薬剤療法は、治癒のため、並びに多剤耐性を防ぐ及び/又はそれと戦うため、長期の経口投与を必要とする。抗TB薬の長期間の経口投与によってもたらされる持続的な高い血中濃度の抗結核薬は、マクロファージ(Mφ)に存在するマイコバクテリアを死滅させるために必要でもなく、十分でもない。第一線の抗TB薬のうちの2つ、イソニアジド(H)及びリファンピシン(R)を含有する吸入用生分解性微粒子が調製され、(i)マウスのMφによる食菌作用、(ii)乾燥粉末吸入としてラットへの投与及び(iii)ラットへ投与したときの高薬剤用量による肺胞Mφの標的化について試験された。結果は、複数の薬剤を有するそのような微小球は、用量及び投与頻度の低減、毒性の緩和及びMφ常在残留性マイコバクテリアの標的化にとって有望であることを示した。
【0009】
別の研究(Gupte A & Ciftci K, 2004, Int. J. Pharm., 276(1 -2):93-106)において、組み合わせ(パクリタキセル+5−FU微小球)を、転移性乳癌細胞株(MDA−MB435S)に対して、単一薬剤の化学療法(パクリタキセル及び5−FU微小球)と比較した。微小球の物理化学的特性(すなわち、封入効率、粒径分布、インビトロ放出、熱特性)を研究した。結果は、薬剤を5−フルオロウラシル(5−FU)あり又はなしでポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)微粒子により封入したとき、パクリタキセルの封入効率が高い(90%)ことを実証した。しかし、5−FUの封入効率は低く(19%)、薬剤をパクリタキセルと共に封入したときに30%に増加した。微小球の平均粒径は、2.5μmであり、球状であった。微小球からの5−Fuとパクリタキセルの両方のインビトロ放出は、最初は比較的速く、続いてより遅く、より制御された放出になった。パクリタキセル微小球の細胞毒性活性は、5−FU+パクリタキセル又は5−FU単独を含有する微小球のいずれよりもはるかに大きいものであった。全体的な結果は、微小球へのパクリタキセル又は5−FUの組み込みは、遊離薬剤と比較してより制御された方法で細胞毒性を増強すること、また、細胞周期の異なる段階に作用する薬剤を組み合わせるとき熟慮が必要であることを実証した。
【0010】
他の人々は、再狭窄を標的にする微小球における薬剤の組み合わせを研究した(Chandy et al, 2001, Development of Poly(Lactic Acid)/Chitosan Co-Matrix Microspheres: Controlled Release of Taxol-Heparin for Preventing Restenosis, Drug delivery, 8, 77-86)。平滑筋細胞繁殖は、血管形成術又は血管損傷後の再狭窄の発生において主要な役割を果たす。適切な薬剤の単独及び組み合わせの制御放出は、冠動脈閉塞、バルーン血管形成、血栓症に関連する再狭窄及び石灰化を治療する一つの手法である。Chadyらは、持続性放出コマトリックス形態を開発するために、タキソール装填ポリ乳酸(PLA)微小球をヘパリン−キトサン球内に封入する可能性を実証した。このコマトリックス系からのタキソール及びヘパリンのインビトロ放出プロフィールを、紫外線分光光度計を使用してpH7.4のリン酸緩衝食塩水においてモニタリングした。タキソール/ヘパリン放出の量は、最初はかなり高く、続いて長期間の一定の徐放性プロフィールであった。コマトリックスからのタキソール(15.8%)及びヘパリン(32.7%)の最初の突発的放出は、ポリエチレングリコール被覆により変更された(24時間でそれぞれ13.4%及び25.4%)。走査電子顕微鏡法研究によると、これらの薬剤は、コマトリックスの微細孔を通して溶解媒質にゆっくりと拡散するように見える。しかし、表面微細孔は、一定の徐放性プロフィールのためにポリエチレングリコール(PEG)被覆で改質されていた。かれらは、このPEG被覆PLA/キトサンコマトリックスが、再狭窄を治療する長期間の相乗的効果を有する薬剤組み合わせを標的にすることができる、と結論付けた。
【0011】
薬剤の組み合わせで被覆されている冠動脈ステントが、再狭窄率を低減するために記載されている。再狭窄は、過剰増殖性疾患である。例えば、EP−A−551162は、ラパマイシンと抗増殖性作用物質であるミコフェノール酸との組み合わせを開示するが、ステントをどのようにして活性化合物で含浸するかについて詳細を提示していない。EP−A−0568130では、ラパマイシン及びヘパリンを、例えば含浸ステントから送達することにより投与して、平滑筋過形成を防止する。含浸方法についての詳細は、提示されていない。
【0012】
WO−A−2003022807は、ポリマーで被覆されたステントからラパマイシン類似体を投与することを記載する。薬剤は、ポリマー被覆ステントを、薬剤の溶液に浸し、乾燥することにより装填される。加えて、抗縮瞳性、抗増殖性又は抗炎症性の作用物質のような更なる薬剤をステントから投与することができる。ポリマーには、とりわけ、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、並びにホスホリルコリンメタクリレートのコポリマー(MPC)、非イオン性コモノマー及び架橋モノマーが含まれ、最後に記述されたコポリマーは、ラパマイシン類似体単独によるインビトロ試験において例示されている。WO2004/022124において、ラパマイシン類似体及びデキサメタゾンは、一緒に、ステント上の非イオン性コモノマーを有する架橋MPCコポリマーに装填される。この明細書において使用されるポリマーは、約50%の水膨張性を有する。
【0013】
ロイコボリン(LV)と組み合わせた5−フルオロウラシル(5−FU)は、現在、結腸癌の標準的治療である。Lamprechtら(Eur J Pharm and Biopharm, 2005, 59, 367-371)は、Eudragit P-4135F又はEudragit RS100を別々に使用して、5−FU及びLVを同時に捕捉する油/油乳化法により微小球を調製した。走査電子顕微鏡法は構造分析を可能にし、プロセスパラメーターが分析され、薬剤装填及び放出プロフィールが記録された。粒径は、123(RS100)から146μm(P-4135F)まで変わった。一般に、P-4135F(5−FU 48.3±2.0%;LV 55.4±2.7%)と比較して、高い封入率がRS100(5−FU 60.3±9.7%;LV 81.4±8.6%)において見出された。これらのEudragitポリマーは、アクリルメタクリレートモノマーを含有する第四級アンモニウム基を含むアクリルコポリマーである。これらは架橋されていない。Eudragit RS100から作製される微粒子は、8時間以内に組み込み薬剤組み合わせを放出した。P-4135Fは、pH6.8では4時間以内に25%未満の望ましくない5−FU放出しか維持しないことが見出された一方、pH7.4ではほぼ即時の放出(15分以内)が観察された。放出はpH7.4でも同様であったが、pH6.8では、LVは、約60%の明確な初期薬剤損失を示し、2時間以内に完全な放出を示した。SEM分析は、LVの明確な突発効果を引き起こす、粒子表面における相当量のLV結晶の存在を明らかにした。これらの観察は、調製過程におけるP-4135FとLVの分離を引き起こす、P-4135Fの高い親油性に関連すると結論付けられた。
【0014】
Liuら(J. Pharm. Pharmacol., 55, 1063-1073, 2003)及びWO9850018は、腫瘍内注入のための生分解性スルホプロピルデキストラン微小球の使用を記載する。この方法において、ドキソルビシンを含有する微小球は、ベラパミルを含有する微小球と共に投与される。ドキソルビシン装填微小球単独又はベラパミル装填微小球との組み合わせでのマウスへの腫瘍内注入の後、腫瘍の直径を治療効果の指標として連続して測定し、一方、マウスの体重、外観及び挙動を一般的な毒性の指標としてモニタリングした。ドキソルビシン装填微小球の腫瘍内注入は、同等の薬剤濃度の全身投与よりもはるかに良好に許容された。処置を受けなかった群又はブランク微小球を受けた群と比較して、腫瘍増殖の小幅(34%まで)の遅延があった。ベラパミル微小球とドキソルビシン微小球の共注入は、毒性の中程度な増加を生じたが、腫瘍増殖に更なる遅延を生じなかった。腫瘍内に投与された抗癌剤の制御放出微小球製剤は、高用量の薬剤を腫瘍に送達し、全身毒性がほとんどない効率的な方法として記載された。使用されたスルホプロピル化デキストラン微小球は、イオン交換媒質(Sephadex SP25)として供給された。これらは生分解性である。これらは、蒸留水において膨張性であり、膨張状態と乾燥状態の微小球の容量比は約12を示す。微小球は、pH7で約2.5meq/gのイオン交換容量を有する。
【0015】
Liuらは、(2000) J. Pharm. Sci: 8-9(6) 807-817において、疎水性部分又はカチオン性ポリマーによりスルホプロピル化微小球の表面を改質する方法も記載している。カチオン性ポリマー改質は、膨張比及びイオン交換容量を低減する。疎水性基の表面結合は、水中の膨張比に影響を与えるが、より高速でポリマー処理微小球に装填されたベラパミルと平衡の膨張の程度を低減しない。
【0016】
ドキソルビシン溶出ビーズは、化学塞栓形成によるHCCの治療に有効であることが示されている(Varela et al., 2007, J Hepatology, 46, 474-81)。化学塞栓形成による固形腫瘍にドキソルビシンを送達する微小球は、WO2004071495に記載されている。微小球は、水膨張性のアニオン性荷電架橋ポリビニルアルコールのマトリックスで形成され、水で膨張したとき40〜1500μmの範囲の直径を有する。
【0017】
イブプロフェン溶出ビーズは、動物モデルにおいて塞栓形成後の抗炎症効果を実証した(Borovac T, et al, 2006, J Control Release, 115, 266-74)。イブプロフェンを装填した子宮筋腫の治療に使用される微小球は、WO2004073688に記載されている。改善された装填方法は、WO2007085615に記載されている。
【0018】
イブプロフェンは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり、酵素のシクロオキシゲナーゼI及びIIを阻害するように作用する。多くの著者が癌の危険性を治療及び予防するためのNSAIDの使用について研究している(Sawaoka et al. 1998, J Clin Gastroenterol, 27, 47-52; Shen et al. 1998, Cancer Research, 58, 362-366)。COX−2選択的NSAIDは、また、癌細胞侵入及び肝臓転移の低減を実証し(Yamauchi et al. 2003, Anticancer Res, 23, 245-249; Yao et al. 2004, Br J Cancer, 90, 712-719)、COX−2の阻害は、腫瘍サイズの低減及び生存率の増加をもたらした(Cui et al. 2005, Clin Cancer Res, 1 1 , 8213-8221 ; Murata et al. 2005, Dig Dis Sci, 50, 70-75)。イブプロフェンは、多数の腫瘍の治療及び予防において調査されている。WO2006013376において、本発明者らは、腫瘍形成において効果が示されることを予測させる溶出率及び局在化を示す、塞栓形成に対する多様なCOXインヒビターが装填された微小球の使用を記載している。
【0019】
WO2007090897において、本発明者らは、薬剤の溶媒系溶液を、実質的に乾燥しているポリマーマトリックスと、薬剤溶液中のマトリックスの膨張が生じるように接触させ、続いて薬剤を、殿剤(通常は水)と接触させてポリマーのマトリックスに沈殿させる工程を含む、微小球のような水膨張性ポリマーに、非常に低い可溶性を有するが有機溶媒に可溶性である薬剤を装填する方法を記載している。この方法は、パクリタキセル、デキサメタゾン又はラパマイシンを装填するのに適している。ポリマーのマトリックスは、架橋されたポリビニルアルコールに基づいた物質であり、通常、スルホネート基のような側鎖アニオン性基を有する。
【0020】
WO2006027567において、本発明者らは、pH7でアニオン性に荷電されている水膨張性ポリマー及びそのポリマーに放出可能な形態で静電気的に結合する、イリノテカンのようなカチオン性荷電カンプトテシン化合物を含む、固形腫瘍の化学塞栓形成における微小球を記載している。結腸直腸癌からの肝臓転移の治療のためにこれらのビーズを使用した化学塞栓形成は、腫瘍容量の低減をもたらすことを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1態様によると、微小球の集団を含む組成物であって、それぞれの微小球が、ポリマーマトリックスと、一緒にマトリックスに組み込まれている第1及び第2の薬学的に活性な化合物とを有し、ポリマーが、水不溶性で水膨張性のアニオン性に荷電したポリマーであり、第1活性化合物がカチオン性に荷電され、一方の活性化合物が細胞毒性化合物であり、他方の活性化合物が、腫瘍治療において細胞毒性化合物に相補的な活性を有する、組成物が提供される。
【0022】
本発明のこの態様において、第1のカチオン性荷電活性化合物は、細胞毒性化合物であることができる。あるいは、第2活性化合物は、細胞毒性化合物であることができ、一方、第1活性化合物は、腫瘍治療において細胞毒性化合物に相補的な活性を有する。第2活性化合物は、カチオン性に荷電されていることができるか又は中性であることができる。いくつかの実施態様において、アニオン性荷電作用物質を利用することも可能であるが、これらはあまり好ましくない。イオン性荷電活性化合物は、比較的高い濃度、例えば少なくとも50g/l、好ましくは少なくとも100g/lの濃度で水溶性である傾向がある。第2活性化合物は、中性化合物である場合、水溶性が低くてもよく、例えば室温で10g/l未満の水中における低い可溶性を有する。本発明者らは、カチオン性及び非イオン性薬剤の組み合わせにおいて、それぞれの活性化合物の装填又は放出率に対する他の活性化合物による干渉がほとんど又は全くないことを見出した。この結果は、驚くべきことであり、効能が最適化された組成物の適切な投与量及び比率の容易な決定を可能にする。組成物は、投与量の不確定性をもたらす分離の問題を回避するように単一型の粒子を含有する。
【0023】
第2活性化合物は、腫瘍治療において細胞毒性化合物に相補的な活性を有する。この化合物は、それ自体腫瘍の治療に効果的であってもよく、例えば局所的に又は全身的に送達されたとき、例えば腫瘍の増殖を防止する及びサイズを低減することができてもよい。活性化合物は、代替的に、第1活性化合物の活性に対して腫瘍を感作する化合物であることができる。一般に、化合物の組み合わせは、Chou-Talalay指標(1983年、前掲書中)に基づいた組み合わせ指数が0.90未満、より好ましくは0.5未満、例えば0.3未満、さらには0.1の低さ又はそれ以下であるものとして同定することができる。
【0024】
組み合わせ指数の値は、ソフトウエアパッケージCalcusyn(Biosoft)を使用して都合良く決定できるが、これは、Chouにより誘導された用量効果関係の一般方程式を利用した用量効果分析プログラムである:
/f=(D/D 方程式1。
式中、
D:薬剤の用量である。
:効力を示す半有効用量である。半有効用プロットの×切片から決定する。
:用量により影響を受けた画分である。
:影響を受けなかった画分であり、f=1−fである。
m:用量効果曲線のS字(形状)を示すべき指数である。半有効プロットのスロープから決定する。
【0025】
半有効方程式の代替形態は、下記である:
=1/〔1+(D/D)〕 方程式2。
D=D〔f/(1−f)〕1/m 方程式3。
【0026】
方程式2では、D及びmが既知である場合、効果(f)は、任意の用量(D)について決定することができる。
【0027】
方程式3では、D及びmが既知である場合、用量(D)又は(D)は、任意の効果(f)について決定することができる。したがって、効力及び形状をそれぞれ表すD及びmのパラメーターは、全体的な用量効果曲線を決定する。
【0028】
半有効プロットは、Chouにより1976年に導入された(Chou J. Th. Biol. 59, 253-276)、x=log(D)対y=log(f/f)のプロットである。CHouの半有効方程式〔方程式1〕の対数形式に基づいている:
log(f/f)=mlog(D)−mlog(D) 方程式4
【0029】
方程式4は、直線の形態を有し、y=mx+bである。
【0030】
したがって、スロープはm値を生じ、x切片は、log(D)値、すなわちD値を生じる。Dは、D=10-(y-intercept)/m)により決定することもできる。
【0031】
/f=f/(1−f)=(f−1−1=〔(f−1−1〕−1であることに留意すること。半有効方程式へのデータの適合度は、半有効プロットの直線相関係数rにより表される。通常、酵素又はレセプター系の実験データは、r>0.96を有し、組織培養はr>0.90を有し、動物系はr>0.85を有する。
【0032】
組み合わせ指数(CI)方程式は、酵素動態モデルから誘導されるChou-Talalayの多剤効果方程式に基づいている。方程式は、相乗作用又は拮抗作用ではなく付加効果しか決定しない。しかし本発明者らは、相乗作用を、予測を超える付加効果として定義し、拮抗作用を、予測を下回る付加効果として定義する。Chou and Talalayは1983年において(前掲書中)、CI=1を付加効果として指定することを提案しており、したがって2つの薬剤の多剤効果方程式から、下記が得られる:
古典的:同一又は同様の作用様式を有する相互排他的薬剤;
CI=(D)/(D+(D)/(D 方程式5
保守的:完全に独立した作用様式を有する相互非排他的薬剤:
CI=(D)/(D+(D)/(D+(D)(D)/(D(D 方程式6
【0033】
方程式5又は方程式6は、薬剤1、(D)及び薬剤2、(D)(分子)の組み合わせが、実際の実験においてx%阻害することを決定する。したがって、実験で観察されたx%阻害は、概数ではなく、最も頻繁には小数を有する。方程式5又は6の(D及び(D(分母)は、x%阻害する単独の薬剤1及び薬剤2それぞれの用量である。Dは、方程式3から容易に計算することができる。
【0034】
単独の薬剤がそれぞれ用量効果関係を有するはずであることに注目するべきである。効力(D)及び形状(m)パラメーターは、両方とも、相乗作用又は拮抗作用を決定するために必須である。2つの薬剤のうちの1つにそれ自体有効性がない場合、相乗作用/拮抗作用を決定することはできない。その代わりに、強化作用(増強、亢進)又は阻害作用(抑制)を決定することができる。
【0035】
Calcusynは、それぞれの薬剤の、次に組み合わせの用量効果関係を必要とする。組み合わせ研究の実験データは、好ましくは一定比率で収集されるが、それにもかかわらず、組み合わせ指数を、2つの構成成分の非一定比率によって決定することができる。
【0036】
組み合わせ指数は、任意のインビトロ又はインビボ試験方法において決定することができる。本発明において、組み合わせ指数は、例えば、インビボ効能を決定する有用なインビトロ試験を表す細胞の細胞株に対する細胞培養に基づいた試験を使用して、インビトロにおいて決定することが最も好都合である。例えば、試験は、個別の薬剤の細胞毒性、次に組み合わせの細胞毒性、そして組み合わせ指数の計算に使用するデータを決定することができる。試験において、薬剤を溶媒中の又は他の形態の細胞と接触させることができる。測定される効果は、24又は48時間のような所定の時間の後、対照と比較して生存細胞数に50%の低減をもたらすような細胞毒性である。実験を実施するために、薬剤を例えば微小球の形態のポリマーマトリックスに組み込む必要はない。しかし、組み合わせ指数は、薬剤が、例えば本請求項に定義されている微小球の形態のポリマーマトリックスから送達されるとき、1未満であると決定されることが好ましい。この場合、試験される薬剤の組み合わせは、個別の粒子を含み、それぞれ薬剤のうちの1つが装填されているか又はそれぞれの粒子には両方の薬剤を一緒に装填することができる。適切な試験は、下記の実施例6及び7に記載されている。個別の粒子にそれぞれ薬剤のうちの1つが装填されているとき、共装填粒子では、決定されたCI値が共装填製品に適用されると想定される場合、それぞれの薬剤の溶出率は、他により有意に影響を受けないことを確認するべきである。本発明のこの態様において、薬学的に活性な化合物の組み合わせは、組成物における比率が5の倍数(両方向)以内の比率での腫瘍細胞株のインビトロ細胞毒性試験において、1.0未満のCIを有するものである。組成物が肝細胞癌の治療用である場合、CIを決定するのに使用される細胞株は、好ましくは肝細胞癌細胞株である。組成物が膵癌を治療するものである場合、細胞株は、好ましくは膵癌細胞株である。CIは、好ましくは、活性化合物が組成物における比率が2の倍数(両方向)以内の比率で試験される場合、低い値に定義されるべきである。
【0037】
細胞毒性剤は、細胞に対して直接的に毒性があるものであり、その再生又は増殖を防止する。適切な細胞毒性剤は、例えば、ドキソルビシン及びWO04071495に開示されている他の化合物のようなアントラサイクリン化合物、WO2006027567に記載されているカンプトテシン誘導体、タキサン、5−FUのような白金に基づく新生物代謝拮抗物質、メルカプトプリン、カペシタビン、アクチノマイシンDのような他の細胞毒性抗生物質、並びにビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンを含むビンカアルカロイドである。シタラビン、ゲムシタビン、シクロホスファミド、フルダラビン、カンプトテシン化合物、例えばトポテカン及びイリノテカン、クロラムブシル、ブスルファン、ミトキサントロン、レチノイド、アナグレリドなどである。
【0038】
相補的活性を提供する活性化合物は、細胞増殖抑制化合物であることができる。細胞増殖抑制化合物は、細胞増殖又は再生を阻害又は抑制する化合物と定義することができる。薬剤の細胞毒性及び細胞増殖抑制効果は、細胞株に基づくような適切な試験を使用して当業者により決定することができる。
【0039】
適切な細胞増殖抑制化合物は、ラパマイシン及びその類似体である。
【0040】
適切なカチオン性荷電化合物は、ドキソルビシン及びWO04071495に開示されているアミン基を有する他のアントラサイクリン化合物、又はミトキサントロン、WO2006027567(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているイリノテカンのようなカチオン性カンプトテシン誘導体、又はトポテカン又はベラパミルである。
【0041】
使用することができる細胞毒性又は細胞増殖抑制化合物の一つの種類は、mTORを標的にするラパマイシン及びラパマイシン類似体を含む。そのような化合物には、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、バイオリムス、ABT−578及びAP23573が含まれる。WO−A−2003022807(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているラパマイシン類似体の範囲内に包含される化合物のいずれかを、ラパマイシン類似体として使用することができる。
【0042】
細胞毒性活性化合物がラパマイシン又はラパマイシン誘導体/類似体である場合、他の活性化合物は、一つの好ましい実施態様では、ドキソルビシン又はWO04071495に記載されているアミン基を有する他のアントラサイクリン化合物である。
【0043】
抗癌薬のラパマイシンとドキソルビシンの組み合わせは、ラパマイシン感作によるリンパ種の化学抵抗性の逆転及びドキソルビシンによるアポトーシスの誘発を介する、B細胞リンパ腫のマウスモデルの完全寛解を実証した(Wendel,H-G, et al, 2004, Nature 428, 332-337)。白血病の治療において、ラパマイシンは、ドキソルビシン誘発アポトーシスの亢進を示した(Avellino,R. et al, 2005, Blood 106(4), 1400-1406)。ラパマイシン又はその類似体と、少なくとも1つのアミン基を有するアントラサイクリン化合物との組み合わせは、低い組み合わせ指数を有し、本発明において極めて有効である。
【0044】
本発明のこの態様の別の実施態様において、細胞毒性化合物は、ラパマイシン及びその類似体であり、カチオン性活性化合物は、WO2006027567又はEP−A−0321122に開示されているように、カチオン性置換基を有するカンプトテシン誘導体である。好ましくは、活性化合物は、請求項13において定義されている通りである。好ましくは、AはCOOである。好ましくは、ARは10位で置換されている。
【0045】
本発明の別の態様(以下、更なる又は第2の態様)において、医薬製品は、第1ポリマーマトリックス及び第1治療活性薬剤を含む微小球の第1集団と、第2ポリマーマトリックス及び第2治療活性薬剤を含む微小球の第2集団とを含み、前記第1及び/又は第2ポリマーマトリックスは、架橋された水膨張性ポリマーであり、第1治療活性薬剤及び第2治療活性薬剤は、微小球に組み込まれており、各集団は、製品の単位用量当たり、本明細書前記において定義された組み合わせ指数が0.1未満であるような量で存在する。
【0046】
本発明のこの態様において、本発明の第1態様に関して記載され、かつ定義された組み合わせ指数を有する、上記の細胞毒性剤と細胞増殖抑制剤の組み合わせを使用することができる。組成物は、腫瘍、好ましくは固形腫瘍の治療方法に使用される。この態様では、CIは、対応する微小球に装填されている、すなわち場合によって一緒に又は別々に装填されている活性化合物を有する系、すなわち本発明のこの態様の組成物の系について決定されるべきである。
【0047】
本発明のこの態様において、薬剤を、微小球のそれぞれ別々の集団に組み込むことができる。しかし、好ましくは、各集団は同一であり、換言すれば、2つの薬剤は共に同一の微小球に装填されている。細胞毒性化合物がラパマイシン又はその類似体である場合、相補的活性を有する活性化合物を、シスプラチン又は他の白金に基づいた抗癌薬、ゲムシタビン、タモキシフェン又は他の抗エストロゲン、インターフェロンアルファ、上皮増殖因子レセプターインヒビター、血管内皮増殖因子インヒビター、VEGFRとEGFRの両方のインヒビター及びGlivecから代替的に選択することができる。あるいは更なる薬剤は、パクリタキセル若しくはその類似体、又は他の微小管インヒビター、トポイソメラーゼインヒビターであるであることができる。
【0048】
ラパマイシンと他の抗癌剤との組み合わせも既知であり、下記に開示されている既知の組み合わせを本発明のこの態様に使用することができる。シスプラチン、ゲムシタビン、タモキシフェン、インターフェロンアルファ、EGFRインヒビター、VEGFR/EGFRインヒビター及びGleevecは、全て前臨床及び臨床試験においてラパマイシン類似体と組み合わされており、これらの組み合わせを本発明の更なる態様に使用することができる。
【0049】
ラパマイシンと、乳癌に対して第一線及び第二線作用物質として使用される化学療法剤との相互作用が調査されてきた。インビトロにおいて、相乗的相互作用が、パクリタキセル、カルボプラチン及びビノレルビンの組み合わせにおいて観察された。付加的効果が、ドキソルビシン及びゲムシタビンの組み合わせにおいて観察された。ラパマイシンは、パクリタキセル誘発性及びカルボプラチン誘発性アポトーシスを著しく亢進させた。この効果は配列依存性であり、少なくとも部分的にはカスパーゼ活性化により仲介された。更に、ラパマイシンは、HER2/neu−過剰発現細胞において、パクリタキセル及びカルボプラチンへの化学受容性を亢進し、挙動のよくない腫瘍に対する潜在的な手法を示唆している。インビボにおいて、パクリタキセルと組み合わせたラパマイシンは、ラパマイシン感受性腫瘍において、いずれかの作用物質の単独の場合と比較して、腫瘍容量に有意な低減をもたらした。(Mondesire WH, et al., 2004, Clinical Cancer Research, 10, 7031-7042)。ラパマイシン又はその類似体とタキサンとの組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0050】
RAD001は、シスプラチン誘発アポトーシスをwt p53において著しく亢進するが、突然変異p53腫瘍細胞では亢進しない。RAD001は、p58誘発p21発現を阻害することによって、細胞をシスプラチンに対して感作する。これらの知見は、白金毒性剤のようなDNA傷害剤をRAD001と組み合わせることについての分子濃度の合理性を支持し、一般的な主要タンパク質同化プロセスが、固形腫瘍の患者の治療において確立された薬剤プロトコールの効能を高めうることを示す(Beuvink I et al 2005, Cell, 120:747-759)。ラパマイシン又はその類似体と白金抗新生物化合物との組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0051】
CCI−779及びタモキシフェン又は別の抗エストロゲンを、組み合わせて投与する場合に使用することができる。PI3K/AKY/mTOR経路は、乳癌におけるタモキシフェン抵抗性の発生において重要な役割を果たす場合がある。エストロゲンレセプターの活性化は、PI3K経路を駆動することができる。erb−1とERの間のクロストークは、この経路を活性化することが示されており、これはエストロゲン非依存性転写活性と関連しており、活性化AKTを有する乳癌細胞株は、タモキシフェンの増殖阻害効果に抵抗性がある。ラパマイシン又はその類似体と抗エストロゲンとの組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0052】
経口投与テムシロリムス(CCI−779)+レトロゾール(アロマターゼインヒビター)を、進行性乳癌を有するおよそ1200人の閉経後の女性における第一線治療として、レトロゾール単独と比較した進行中の第III相試験が存在する。ラパマイシン又はその類似体とアロマターゼインヒビターとの組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0053】
CCI−779及びインターフェロンアルファは、腎細胞癌(RCC)の治療において一緒に使用されている。大規模第3相試験が進行中である。ラパマイシン又はその類似体とアルファインターフェロンとの組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0054】
ラパマイシンと上皮増殖因子レセプター(EGFR)インヒビターEKI−785は、相乗的な増殖阻害をもたらした。同様の結果が、RAD−001及びVEGFR/EGFRインヒビターAEE788によって達成された。ラパマイシンとGlivecは、CML細胞株の相乗的な増殖阻害をもたらした。ラパマイシン又はその類似体と増殖因子レセプターとの又はGlivecとの組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0055】
本発明の更なる態様に使用される他の組み合わせには、細胞毒性剤とP−糖タンパク質インヒビターとのものが含まれる。およそ50%の癌患者は化学療法を受け、これらの患者のうちの75%もが、広範囲の化学療法剤に対して内因的又は後天的な抵抗性を経験する。この現象は、多剤耐性(MDR)と呼ばれ、化学療法が失敗する最も一般的な原因である。大多数の腫瘍が、薬剤流出ポンプP−糖タンパク質(P−gp)の過剰発現を介してMDRを発生することが、十分に確立されている。P−gpの阻害がMDRを逆転する実行可能な方法であることは認められているが、現存するP−gpインヒビターは、今まで、効力及び特異性における制限に起因して限定された成功しか実証してこなかった。カルシウムチャンネルブロッカーであるベラパミルは、上室性不整脈、冠状動脈性心疾患及び動脈性高血圧症の治療に一般的に使用されている。更に、ベラパミルは、P−糖タンパク質仲介輸送の強力なインヒビターであり、インビトロ実験において癌の化学療法におけるMDRを修飾することが実証されている(Toffoli G, et al. 1995, Biochem Pharmacol, 50, 1245-55; Pauli-Magnus C, et al. 2000, J Pharmacol Exp Ther, 293, 376-82)。したがって、共装填薬剤溶出ビーズからのドキソルビシン及びベラパミルの局所送達は、相乗的な利益をもたらし、あらゆるMDR効果を克服する高局所用量の細胞毒性剤及びP−gp阻害を可能にする。したがって、細胞毒性抗生物質とP−gpインヒビターとの組み合わせは、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0056】
他の組み合わせには、テカン類のようなトポイソメラーゼインヒビターと、低い組み合わせ指数を有する他の活性化合物とのものが含まれる。
【0057】
WO2003028696、WO2004087115、WO2004087105、WO2004093795、WO2006055903及びTardi, P. G. et al., (2007) Biochim. Biophys. Acta 1768, 678-587(これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)のいずれかにおいてCelatorにより記載されている他の組み合わせを、本発明の更なる態様に使用することができる。
【0058】
パクリタキセル及び5−FUのような、タキサン及び代謝拮抗物質を組み合わせて使用することができる。5−FU及びロイコボリンを使用することができる。
【0059】
活性化合物がカンプトテシン誘導体を含む場合、カチオン性置換基を有する誘導体の使用が特に効果的であり、例えば一般式I:
【化1】

〔式中、Rは、H、ハロゲン、ヒドロキシル及び、場合によりヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル又はアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり、そして
Rは、NRであり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
ここで基−A−Rは、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合しており、Rは、A又はB環で置換されている〕
で示される化合物、又はその塩である。
【0060】
一つの実施態様において、カンプトテシン誘導体は、式IA:
【化2】

〔式中、Rは、H、場合によりヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル若しくはアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキル、又はハロゲンであり;そして
Rは、NRであり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
ここで基−O−CO−Rは、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合している〕
を有するか、又はその塩である。
【0061】
基−O−CO−Rは10位で結合していることが、好ましい。
【0062】
は、好ましくはC1−4アルキル、最も好ましくはエチルであり、そしてmは、好ましくは1である。
【0063】
ハロゲン原子Rは、例えば、F、Cl、Br又はI、好ましくはF又はClである。R〜Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びt−ブチル、好ましくはメチルであることができる。
【0064】
R及びRの置換基は、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1−4アルコキシ、フェノキシ、COOR、SO及びPO(R、アリール、
【化3】

、NR及びCONR、QAOR、QANR及びQAQRから選択され、ここで、Rは、C1−4アルキル又はアリールであり;Rは、水素、ハロゲンC1−4アルキル又はC1−4アルコキシであり;Rは、水素、ハロゲン又はC1−4アルキルであり;R及びRは、同一又は異なって、それぞれH又はC1−4アルキルであるか、或いはR及びRは、共にC3−6アルカンジイルを表し;
Qは、OCO又は−COO−であり、そしてAは、C2−4アルカンジイルである。
【0065】
好ましくは、Rは、NRであり、ここでR及びRは、窒素原子と一緒になって、5又は6員環、好ましくは、場合により置換基を有する飽和環を形成する。置換基は、好ましくは−NRである。そのような置換基において、R及びRは好ましくは共にC4−5アルカンジイルである。そのような基は、塩基性であり、pH7でカチオン性に荷電される傾向がある。最も好ましくは、Rは、
【化4】

である。
【0066】
適切な化合物の別のファミリーは、一般式II:
【化5】

〔式中、R20及びR23は、それぞれヒドロキシ若しくは水素であるか、又は共にCHOCHであり;
21及びR22のうちの一方はHであり、他方はCHNR2425であり、ここで、R23及びR24は、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR23及びR24は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基である〕
を有し、その塩及び第四級誘導体も含まれる。この請求に適した化合物の一つの例は、トポテカンであり、この場合、R20はヒドロキシであり、R22及びR23は水素であり、R21はCHNR2425であり、そしてR24及びR25は両方ともメチルである。
【0067】
上記の本発明の態様の両方において、第1活性化合物の第2活性化合物との比率は、好ましくは100:1〜1:100の範囲、好ましくは5:1〜1:5の範囲である。適切な比率は、例えば組み合わせ指数決定の利用可能な情報を使用して、当業者により決定することができる。一般に、比率は、相乗効果を最適化するように選択されるべきである。
【0068】
好ましくは、ポリマーにおけるアニオンの同等物と、第1活性化合物、及びカチオン性に荷電されている場合は第2活性化合物、におけるカチオンの同等物との比率は、2:1〜1:1の範囲、好ましくはおよそ1:1であるべきである。これらの比率を選択することによって、最適な装填が達成され、同時に初期投与時の初回効果を最小限にし、最適化された延長放出をもたらすことができる。
【0069】
本発明の第1及び第2態様に使用される第2活性化合物は、代替的にCOXインヒビターであることができる。COXインヒビター、例えばNSAIDは、抗炎症及び鎮痛剤として作用することができ、化学塞栓形成手法に関連する炎症及び疼痛を標的にする。更に、腫瘍における細胞の50%までが炎症性細胞でありうる。また、炎症を血管形成及び腫瘍進行に関連づける多数の研究が存在している。したがって、ドキソルビシンのような細胞毒性剤とCOXインヒビターとの組み合わせは、極めて望ましい効果を有する場合がある。上記に示されているように、イブプロフェンは、癌細胞侵入及び肝臓転移を低減する有用な効果を有するものとして提案されてもいる。
【0070】
ポリマーは水不溶性物質である。表面から薬剤を放出するポリマーマトリックスの浸食により薬剤を実質的に放出できるように、生分解性であってもよいが、好ましくは、ポリマーは実質的に生物安定性(すなわち、非生物分解性)である。
【0071】
ポリマーは水膨張性である。本発明に有用な水膨張性ポリマーは、37℃で水により膨張したとき、重量分析により測定すると、40〜99重量%、好ましくは75〜95重量%の範囲の平衡含水量を有する。
【0072】
一般に、ポリマーは共有結合で架橋されているが、少なくとも部分的にイオン結合により架橋されているか又は疎水結合により架橋されていることが、ポリマーにとって適している場合がある。幾つかの実施態様において、アルブミン、アルギン酸塩、ゼラチン、デンプン、キトサン又はコラーゲンのような天然供給源から誘導されるポリマーを使用することが適している場合があり、これらは全て塞栓性作用物質として使用されてきた。他の実施態様において、ポリマーは、天然に生じるポリマー又はその誘導体を実質的に含有しない。好ましくは、ポリマーは、エチレン性不飽和モノマーを二官能又はより多官能の架橋モノマーの存在下で重合することにより形成される。エチレン性不飽和モノマーには、イオン性(双性イオン性を含む)モノマーが含まれうる。
【0073】
ヒドロキシエチルメタクリレートと、アクリル酸と、エタフィルコンA系のコンタクトレンズに使用されるエチレングリコールジメタクリレート又はメチレンビスアクリルアミドのような架橋モノマーとのコポリマーを使用することができる。N−アクロイル−2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3−ジオール及びN,N−ビスアクリルアミドのコポリマーも使用することができる。
【0074】
他の適切な合成ポリマーは、例えば、分離媒体又はイオン交換媒体として使用される種類の、イオン置換基と架橋されたスチレンポリマーである。
【0075】
水膨張性で水不溶性のマトリックスを形成するのに使用できる別の種類の合成ポリマーは、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド型架橋剤を使用して架橋されたポリビニルアルコールである。そのような製品では、ポリビニルアルコール(PVA)を、イオン性官能基含有化合物とヒドロキシル基との反応によりイオン性側基をもたらすことによって、イオン性にすることができる。ヒドロキシル基との反応に適した官能基の例は、カルボン酸若しくはその誘導体又はエステルを形成することができる他の酸性基のようなアクリル化剤である。
【0076】
本発明は、ポリマーマトリックスが、エチレン性基のラジカル重合により、分子1つあたり2個以上のエチレン性不飽和側基を有するポリビニルアルコールマクロモノマーから形成される場合、特に価値がある。好ましくは、PVAマクロマーは、例えば、非イオン性モノマー及び/又はアニオン性モノマーを含むイオン性モノマーを含む、エチレン性不飽和モノマーと共重合される。
【0077】
PVAマクロマーは、例えば、1000〜500,000D、好ましくは10,000〜100,000Dの範囲のような適切な分子量のPVAポリマーに、ビニル側基又はアクリル側基をもたらすことによって形成することができる。アクリル側基は、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸とPVAとを反応させて、幾つかのヒドロキシル基の間にエステル結合を形成することによってもたらすことができる。ポリビニルアルコールと重合することができるビニル基を付与する他の方法は、例えば、US4,978,713、並びに好ましくはUS5,508,317及び5,583,163に記載されている。したがって、好ましいマクロマーは、(アルク)アクリルアミノアルキル部分が環状アセタール結合を介して結合しているポリビニルアルコールの主鎖を含む。実施例1は、一般名ネルフィコンBとして知られているようなマクロマーの合成例を記載している。好ましくは、PVAマクロマーは、分子1つあたり、約2〜20個、例えば5〜10個のエチレン性側基を有する。
【0078】
PVAマクロマーが、イオン性モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーと共重合される場合、イオン性モノマーは、好ましくは、一般式II:
BQ II
〔式中、Yは、
【化6】

、CH=C(R10)−CH−O−、CH=C(R10)−CHOC(O)−、CH=C(R10)OC(O)−、CH=C(R10)−O−、CH=C(R10)CHOC(O)N(R11)−、R12OOCCR10=CR10C(O)−O−、R10CH=CHC(O)O−、R10CH=C(COOR12)CH−C(O)−O−、
【化7】

から選択され;
ここで、
10は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
11は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
12は、水素又はC1−4アルキル基、又はBQであり、ここでB及びQは、下記に定義されているとおりであり;
は、−O−又は−NR11−であり;
は、基−(CHOC(O)−、−(CHC(O)O−、−(CHOC(O)O−、−(CHNR13−、−(CHNR13C(O)−、−(CHC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)O−、−(CHOC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)NR13−(ここで基R13は同一又は異なっている)、−(CHO−、−(CHSO−、又は、場合によりBと組み合わせて、原子価結合であり、rは、1〜12であり、R13は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
Bは、場合により、ペルフルオロ化鎖までを含む1個以上のフッ素原子を含有する、直鎖若しくは分岐鎖のアルカンジイル、オキサアルキレン、アルカンジイルオキサアルカンジイル若しくはアルカンジイルオリゴ(オキサアルカンジイル)鎖であるか、又はQ若しくはYが、Bに結合している末端炭素原子を含有する場合、原子価結合であり;そして
は、アニオン性基である〕
を有する。
【0079】
アニオン性基Qは、例えば、カルボン酸塩、炭酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ホスホン酸塩又はリン酸塩基であることができる。モノマーを遊離酸として又は塩形態で重合することができる。好ましくは、共役酸のpKは5未満である。本発明の更なる態様において、Qは、カチオン性基、双性イオン性基又は非イオン性基であることができる。
【0080】
本発明の更なる態様において、Qは、カチオン性基、双性イオン性基又は非イオン性基であることができる。
【0081】
適切なカチオン性基Qは、好ましくは基N14、P15又はS15であり、ここで、複数の基R14は、同一又は異なって、それぞれ水素、C1−4アルキル又はアリール(好ましくはフェニル)であるか、或いは複数の基R14のうちの2つは、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、5〜7個の原子を含有する飽和又は不飽和複素環を形成し、基R15は、それぞれOR14又はR14である。好ましくは、カチオン性基は、永久的にカチオン性であり、すなわちR14のそれぞれは、水素以外である。好ましくは、カチオン性基QはN14であり、ここでR14のそれぞれは、C1−4アルキル、好ましくはメチルである。
【0082】
双性イオン性基Qは全電荷を有することができ、それは、例えば1つの二価アニオン性電荷中心及び1つの一価カチオン性電荷中心を有すること若しくはその逆を有することによるか、又は、2つのカチオン性電荷中心及び1つのアニオン性電荷中心を有すること若しくはその逆を有することによってでもよい。しかし、好ましくは、双性イオンは、全電荷を有さず、最も好ましくは、一価カチオン性電荷の1つの中心及び一価アニオン性電荷の1つの中心を有する。
【0083】
本発明においてQとして使用することができる双性イオン性基の例は、WO−A−0029481に開示されている。
【0084】
例えば、エチレン性不飽和モノマーが双性イオン性モノマーを含む場合、このことは、粒子の親水性、潤滑性、生体適合性及び/又は血液適合性を増大することができる。適切な双性イオン性モノマーは、本発明者らの先行公報WO−A−9207885、WO−A−9416748、WO−A−9416749及びWO−A−9520407に記載されている。好ましくは、双性イオン性モノマーは、2−メタクリロイルオキシ−2′−トリメチルアンモニウムエチルホスフェート内塩(MPC)である。
【0085】
一般式Iのモノマーにおいて、好ましくは、Yは基CH=CR10COA−であり、ここで、R10は、H又はメチル、好ましくはメチルであり、そしてAは、好ましくはNHである。Bは、好ましくは、炭素原子1〜12個、好ましくは2〜6個のアルカンジイル基である。そのようなモノマーは、アクリルモノマーである。
【0086】
エチレン性不飽和モノマーに、希釈剤モノマー、例えば非イオン性モノマーを含めることができる。そのようなモノマーは、酸性基のpKを制御するため、製品の親水性又は疎水性を制御するため、ポリマーに疎水性領域をもたらすため、又は、単に不活性希釈剤として作用するために有用でありうる。非イオン性希釈剤モノマーの例は、例えば、アルキル(アルク)アクリレート及び(アルク)アクリルアミドであり、特に、炭素原子1〜12個のアルキル基を有するような化合物、ヒドロキシ及びジ−ヒドロキシ置換アルキル(アルク)アクリレート及び−(アルク)アクリルアミド、ビニルラクタム、スチレン、並びに他の芳香族モノマーである。
【0087】
本発明の第1態様及び本発明の更なる態様の好ましい実施態様のポリマーマトリックスにおいて、アニオンの濃度は、好ましくは0.1〜10meq g−1の範囲、好ましくは少なくとも1.0meq g−1である。好ましいアニオンは、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩及びホスホン酸塩のように、強酸から誘導される。
【0088】
PVAマクロマーを他のエチレン性不飽和モノマーと共重合する場合、PVAマクロマーと他のモノマーの重量比は、好ましくは50:1〜1:5の範囲、より好ましくは20:1〜1:2の範囲である。エチレン性不飽和モノマーにおいて、アニオン性モノマーは、好ましくは、10〜100mol%の範囲、好ましくは少なくとも25mol%の量で存在する。
【0089】
架橋ポリマーは、例えば、連続不混和性担体の分散相においてモノマーの液滴を重合することによって、微小球形態のままで形成される。膨張しているときに、所望のサイズを有する粒子を生成するのに適している油中水重合の例は、知られている。例えば、US4,224,427は、水溶性モノマーを、懸濁剤の存在下で連続溶媒相に分散することによる、直径が5mmまでの均一球状ビーズ(微小球)を形成する方法を記載する。分散相粒子のサイズに制御をもたらすための、安定剤及び界面活性剤が存在してもよい。重合した後、架橋微小球を、既知の方法で回収し、洗浄し、場合により滅菌する。好ましくは、粒子、例えば微小球を、水性液体で膨張させ、サイズに従って分類する。
【0090】
2つの活性化合物を微小球に装填する方法は、活性剤の性質及び必要とされる装填濃度に従って選択される。両方の活性化合物がカチオン性に荷電されおり、マトリックスがアニオン性である場合、2つの活性化合物を、順次、又は同時に装填することができる。同時に装填される場合、これは、両方の活性化合物を互いに組み合わせて含有する溶液にとって適している。順次装填する方法の場合は、水性溶液中の活性物質のうちの1つを、一定割合のポリマーのアニオン性基がカチオン性活性化合物と結合しない状態を保つような程度に、ポリマーマトリックス内のイオン交換が生じる濃度又は時間で、ポリマーと接触させる工程を含むことができる。第2工程において、場合により、非吸収性の第1活性化合物を除去した後、第2活性化合物の溶液(通常は水溶液)を、イオン交換が生じて、第2薬剤がポリマーに装填するのを可能にするだけの時間、部分的に装填された微小球と接触させる。
【0091】
活性化合物のうちの1つが低い水溶性を有する化合物である場合、異なる技術が使用される。例えば、活性化合物を、例えば微小球と適切な溶媒中のそれぞれの薬剤の溶液とを接触させて、微小球を膨張させ活性化合物をポリマーマトリックスに吸収させるようにすることによって、順次装填することが可能である。一つの実施態様において、低い水溶性の活性化合物を最初にポリマーに装填する。別の実施態様では、カチオン性荷電活性化合物を最初に装填する。
【0092】
カチオン性荷電活性化合物及び低い水溶性を有する中性の活性化合物の両方が可溶性である溶媒又は溶媒系を選択することが可能である場合があり、溶媒はポリマーを膨張するように作用するものである。例えば、活性化合物が両方とも選択されたアルコールに可溶性である場合、アルコールは、活性化合物を一緒に溶解するため及び選択されたアルコーにおいて膨張しうるポリマーマトリックスを膨張させるために使用することができる。
【0093】
好ましくは、装填方法は、
実質的に乾燥形態の水不溶性で水膨張性のアニオン性荷電架橋ポリマーのマトリックスを含む微小球を、第1有機溶媒中の室温で10g/l未満の水溶性を有する薬剤の溶液と接触させ、それにより溶媒中の薬剤の溶液が微小球に含浸される工程;
微小球に含浸されなかった薬剤溶液を分離する工程;
含浸微小球を水性液体と接触させ、それにより薬剤を微小球のコア内に沈殿させる工程;
沈殿した薬剤を含有する微小球を、ポリマーと反対の電荷を有するイオン性薬剤の水溶液と接触させて、装填のイオン交換を可能にする工程;及び
二重装填微小球を回収する工程、を含み、
薬剤は、本発明の第1又は更なる態様において選択されたものである。
【0094】
本発明者らは、この方法において、水不溶性薬剤とカチオン性薬剤の両方の高い濃度での装填を達成できることを見出した。カチオン性薬剤の装填濃度は、未装填微小球と同等である。装填方法が、イオン性薬剤を最初に装填し、中性の水不溶性薬剤を2番目に装填するように実施される場合、2番目の中性薬剤により達成可能な装填濃度は、未装填微小球よりも低い。この効果は、下記の実施例4において更に示されている。
【0095】
本発明者らは、水膨張性のイオン性荷電薬剤送達ポリマーに、水不溶性の薬剤及びポリマーと反対の電荷を有する薬剤の組み合わせが装填されたのはこれが初めてである、と考える。本発明のなお更なる態様(以下、第3態様と呼ぶ)によると、
ポリマー+水に対し40〜99重量%の範囲の平衡含水量に至るまで室温で水の中で膨張しうる、水不溶性で水膨張性のイオン性荷電ポリマーを含む、薬剤送達マトリックスを、室温で10g/l未満の水溶性を有する薬剤の、ポリマーを膨張することができる有機溶媒中の溶液と接触させ、それにより、溶液がマトリックスに含浸され;
ポリマーマトリックスに含浸されなかったあらゆる薬剤溶液を分離し;
含浸マトリックスを水と接触させ、それにより薬剤がマトリックス内で沈殿し;
沈殿した水不溶性薬剤を有するマトリックスを、イオン性荷電薬剤の水溶液と接触させ、それによりマトリックスを膨張させ、ポリマーと結合する対イオンとのイオン交換が生じ、荷電薬剤がポリマーマトリックスと静電気的に結合する。
【0096】
場合により、低い可溶性の薬剤が装填されたマトリックスを、続いてすすぎ洗いをする及び/又は乾燥する。イオン性荷電薬剤の水溶液による接触までの後工程は、WO2007090897の記載と同様であることができ(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)、その明細書に記載されている好ましい構成成分(薬剤を含む)及び条件をこの実施態様の方法における第1工程に使用することができる。マトリックスは、本発明の第1態様の微小球の形態であることができる。あるいは、マトリックスは、ポリマーの針、スラブ、ディスク、糸又はフィルムの形態を有する移植片のような薬剤送達装置であることができる。あるいは、マトリックスは、ステント、カテーテル、針、管、グラフト、弁、ワイヤなどのような移植された装置の被覆である。
【0097】
ポリマーは、上記に記載された本発明の第1態様に使用されるアニオン性ポリマーであることができる。あるいは、例えば、WO0152915(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、双性イオン性側基も有するカチオン性ポリマーであることができる。あるいは、Liu et al., (2003)(前掲書中)に記載されているデキストランスルフェート系物質のような薬剤送達装置に使用される別のイオン性ヒドロゲルポリマーであることができる。
【0098】
ポリマーは、好ましくは合成品であるが、代替的には、コラーゲン、ヒアルロン酸、デキストラン硫酸、アルギン酸塩、セルロースポリマー又はアルブミンのような、タンパク質又は多糖類に基づいた天然系のポリマーであることができる。
【0099】
本発明の第3態様の方法において、第1薬剤が装填されているマトリックスを、第2薬剤の水溶液と接触させる前に乾燥することができる。第2薬剤とのイオン交換の後、過剰薬剤溶液を、すすぎ洗いをする前に除去することができる。本発明のこの態様は、水不溶性薬剤が上記に記載されたラパマイシン若しくはその類似体、又はパクリタキセルのようなタキサン、又はデキサメタゾンである場合に特に価値がある。
【0100】
本発明の第1又は更なる(第2)様態の製品を生じる装填方法の代替的な実施態様において、荷電されていない活性化合物は、室温で結晶である物質であることができるが、結晶状態であることをを避けるのが望ましい。そのような薬剤には、例えばイブプロフェンが含まれる。これらの薬剤では、油、例えば鉱油又は植物油、場合により画像化剤として作用する油、例えばリピドール又は別のヨード化油のような結晶化阻害剤を組み込むことより、薬剤の結晶化を阻害することができる。好適には、本方法は、水不溶性で水膨張性のイオン性荷電架橋ポリマーのマトリックスを含む微小球を、微小球に浸透できる有機溶媒中の結晶性薬剤の溶液(この溶液は更に薬剤の結晶化を阻害する結晶改質剤を含有する)と接触させる工程と、続く工程において、結晶性薬剤が装填された微小球を、ポリマーマトリックスと反対の電荷を有するイオン性薬剤の水溶液と、イオン交換により薬剤を装填するのに適した量及び時間で接触させる工程を含む。好ましくは、この方法において、結晶性薬剤の装填の後、ビーズを水又は水溶液で洗浄して、吸収されなかった結晶性薬剤を除去する。
【0101】
本発明の第1の又は更なる(第2又は第3の)態様の本発明において、微小球は、塞栓形成法における投与に適切でありうる。したがって、微小球は、処置される動物及び腫瘍の位置に応じて、したがって供給血管のサイズに応じて、塞栓形成における使用に適するようなサイズにされる。例えば、塞栓用の微小球は、好ましくは脱イオン水に室温で膨張したとき(無希釈)、40μmから1500μmまで、好ましくは100μmから1200μmまでの範囲のサイズを有する。あるいは、微小球は、デポー剤としての投与に適していてもよく、例えば薬剤を周囲組織に、場合により循環の中に長期間放出することができてもよい。別の実施態様において、微小球は腫瘍内注入に適している。塞栓形成のために上記に記述された範囲のサイズを有する微小球は、腫瘍内投与又は腫瘍切除後の切除周辺部への投与にも適している場合がある。
【0102】
微小球の使用について上記に記載されている、水不溶性のカチオン性荷電活性化合物をアニオン性マトリックスポリマーに装填する方法は、そのような薬剤の種類を他のヒドロゲルに基づく薬剤送達製品に装填することにも適用できる。したがって、本発明の第4態様において、水不溶性で水膨張性のイオン性荷電ポリマーから形成される水膨張性マトリックスと、マトリックスに組み込まれた、反対に荷電されている第1活性化合物と、結晶性化合物である第2作用物質とを含む、新たな薬剤送達製品が提供されるが、ここでは、マトリックスを、マトリックスを膨張させることができる揮発性有機溶媒中の結晶性薬剤の溶液(薬剤の結晶化を阻害することができる結晶改質剤を更に含有する)と接触させ、マトリックスを乾燥して揮発性溶媒を除去し、結晶性薬剤及び結晶改質剤が装填されているマトリックスをイオン性薬剤の水溶液と接触させ、それによりマトリックスを膨張させ、ポリマーと結合する対イオンとのイオン交換を生じ、薬剤をポリマーマトリックスに静電気的に結合させる。
【0103】
溶媒を除去するための乾燥に続く工程は、本発明の第3の方法態様において上記に記載されている通りであってもよい。適しているポリマーも、第3の方法態様、またこの態様を使用することができる薬剤送達製品に関して上記に記載されている。本方法の第1工程、並びに溶媒及び条件は、WO2007073688において更に記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。この明細書は、本発明のこの態様が結晶性化合物として適している薬剤についても記載している。
【0104】
本発明のこの(第4)態様の薬剤送達製品は、例えば腫瘍治療に使用される微小球、特に化学塞栓形成の方法に使用される微小球であることができる。あるいは、本製品は、好ましくは、例えば針を介する、好ましくはカテーテルを介する注入により投与することができる、針、ディスク、スラブ又は他の形状の形態の、マイクロ移植片であることができる。本製品は、被覆としてポリマーを備えてもよく、ガラス、プラスチック又は金属材料から形成される基材を含んでもよい。例えば、本製品は、カテーテル又は移植片、例えば人工器官装置、冠動脈ステント又は本発明の第2態様に関連して上記に記載されている装置のいずれかであることができる。
【0105】
本発明の第3及び第4態様において、2つの薬剤は、好ましくは、腫瘍治療に治療上効果のあるように選択され、好ましくは、0.9未満、好ましくは0.7未満、例えば0.5未満、好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.1未満の、前記に定義された組み合わせ指数を有する。
【0106】
本発明の第3及び第4態様のイオン性薬剤は、WO04071495(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているカチオン性アントラサイクリン又はWO2006027567に記載されているようなカンプトテシン誘導体であることができる。あるいは、薬剤は、WO0152915に記載されているようなアニオン性であることができ、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、実施例2に記載されている、第2薬剤を飽和濃度で装填した後、ビーズの25mg.ml−1の濃度でドキソルビシン(試料1)又はイリノテカン(試料2)を装填したビーズの、装填プロフィールを示す(n=1)。
【図2】図2は、ビーズへのイリノテカンとドキソルビシンの組み合わせの装填プロフィールを示す。実施例2に記載されている、25mgのイリノテカンを1時間、次に25mgのドキソルビシンを装填したビーズ(試料3)、又は25mgのドキソルビシンを1時間、次に25mgのイリノテカンを装填したビーズ(試料4)の装填プロフィール、及び、25mgのドキソルビシンと25mgのイリノテカンの混合物を装填したビーズ(試料5)の装填プロフィール(n=1)。
【図3】図3は、実施例2に記載されている、ドキソルビシンとイリノテカンの組み合わせを、異なる方法で装填した試料のサイズを示す(n=1)。
【図4】図4は、同じビーズから室温でPBSに溶出したドキソルビシンとイリノテカンの溶出プロフィールを示す。試料1は、イリノテカンを飽和濃度で装填した後、ビーズあたり25mg.ml−1の濃度でドキソルビシンを装填したビーズであり、試料2は、ドキソルビシンを飽和濃度で装填した後、ビーズあたり25mg.ml−1の濃度でイリノテカンを装填したビーズである。実施例2に記載されているように、試料3は、25mgのイリノテカンを1時間、次に25mgのドキソルビシンを装填したビーズであり、試料4は、25mgのドキソルビシンを1時間、次に25mgのイリノテカンを装填したビーズであり、試料5は、25mgのドキソルビシンと25mgのイリノテカンの混合物を装填したビーズである(n=1)。
【図5】図5は、実施例3に記載されている、ドキソルビシン及びイブプロフェンを装填した微小球の、室温での24時間のローラーミキサーによる200mlのPBSへの放出プロフィールを示す(n=1)。
【図6】図6は、実施例4に記載されている、ラパマイシン及びドキソルビシンをビーズに装填する2つの方法を示す流れ図である。
【図7】図7は、実施例4に記載されている、未装填及び薬剤装填ビーズのサイズ分布を示す。
【図8】図8A〜Dは、装填ビーズから200mLのPBSへの25℃でのドキソルビシン及びラパマイシンの溶出を示す。(A)方法1により作製したビーズからの薬剤溶出。(B)百分率で表した(A)の溶出データ。(C)方法2により作製したビーズからの薬剤溶出。(D)百分率で表した(C)の溶出データ。(A)及び(C)において、実施例4に記載されているように、溶出した薬剤の量は薬剤なしのビーズの容量で補正した。
【図9】図9は、実施例5に記載されている、イブプロフェン−イリノテカンビーズ調製の手順を示す。
【図10】図10は、実施例5に記載されている、イブプロフェン装填及びイブプロフェン−イリノテカン装填ビーズのサイズ分布を示す。
【図11】図11は、実施例5に記載されている、イブプロフェンとイリノテカンの組み合わせを有するビーズからのイリノテカンの溶出を示す。溶出条件:0.24mlのビーズ(装填)、200mLのPBS、25℃。
【図12】図12は、実施例5に記載されている、イブプロフェンとイリノテカンの組み合わせを有するビーズからのイブプロフェンの溶出を示す。溶出条件:0.24mLのビーズ(装填)、200mlのPBS、25℃。
【図13】図13は、実施例6に記載されている、ビーズからのドキソルビシンの溶出に対する溶出時間を示す(エラーバー:1SD、n=6)。
【図14】図14は、実施例6に記載されている、LDHアッセイにおける暴露時間及びビーズ数に関連する未処理細胞と比較した生存HepG2細胞の率を示す(エラーバー:1SD、n=6)。
【図15】図15は、実施例7に記載されている、LDHアッセイの結果における、ラパマイシン、ドキソルビシン及びそれらの組み合わせによる生存HepG2細胞の率を示す(エラーバー:1SD、n=5)。
【図16】図16は、実施例7に記載されている、LDHアッセイの結果における、ラパマイシン、ドキソルビシン及びそれらの組み合わせによる生存HepG2細胞の率を示す−尺度拡大(エラーバー:1SD、n=5)。
【図17】図17は、実施例7に記載されている、MTSアッセイの結果における、ラパマイシン、ドキソルビシン及びそれらの組み合わせによる生存HepG2細胞の率を示す(エラーバー:1SEM、n=3)。
【図18】図18は、実施例7に記載されている、MTSアッセイの結果における、ラパマイシン、ドキソルビシン及びそれらの組み合わせによる生存HepG2細胞の率を示す−尺度拡大(エラーバー:1SEM、n=3)。
【図19】図19は、実施例8に記載されている、薬剤装填微小球の組み合わせへの暴露の72時間後のHepG2細胞の細胞生存率(対数尺度)を示す(MTSアッセイ、n=6±SD)。
【図20】図20は、実施例9に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、PSN1細胞の生存率を示す(n=7±SD)。
【図21】図21は、実施例9に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、PSN1細胞の生存率を示す(n=7±SD)。
【図22】図22は、実施例9に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、PSN1細胞の生存率を示す(n=7±SD)。
【図23】図23は、実施例9に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、HepG2細胞の生存率を示す(n=4±SD)。
【図24】図24は、実施例9に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、HepG2細胞の生存率を示す(n=4±SD)。
【図25】図25は、実施例9に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、HepG2細胞の生存率を示す(n=4±SD)。
【図26】図26は、実施例10に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、HepG2細胞の生存率を示す(n=4±SD)。
【図27】図27は、実施例10に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、HepG2細胞の生存率を示す(n=4±SD)。
【図28】図28は、実施例10に記載されている、単一及び二重装填薬剤溶出ビーズへの24、48及び72時間(それぞれ)の暴露の後の、HepG2細胞の生存率を示す(n=4±SD)。
【発明を実施するための形態】
【0108】
本発明を添付の実施例において例示する。実施例は、以下の結果に簡潔に関連する多様な図面を参照する。
【0109】
<実施例1:薬剤溶質ビーズの調製>
微小球を、低AMPS及び高AMPS製剤の製造のため、WO2006027567の参照実施例に記載されているように合成する。
【0110】
<実施例2:イリノテカン及びドキソルビシンの組み合わせの装填及び溶出>
実施例1の高AMPSビーズ500〜700μmの5つの試料に、異なる手法に従ってドキソルビシン及びイリノテカンを装填した。
試料1:3.5mLのイリノテカン溶液(Campto, Pfizer、20mg.mL−1=70mg)を、1mLのビーズに48時間装填して、全てのスルホネート基を飽和した。次に、枯渇溶液を除去し、装填ビーズを既知の容量の脱イオン水で洗浄して、非結合薬剤を除去した。ビーズに装填されたイリノテカンの量を枯渇法により計算したが、この枯渇は、UVにより369nmの波長で測定した枯渇溶液及び全ての洗浄液における初期量及び最終量の差とした。その後、1mLのドキソルビシン(Dabur Oncology、25mg.mL−1)を同じビーズに添加し、装填プロフィールを決定した。
試料2:試料1と同様であるが、第1工程においてイリノテカン溶液の代わりに2.8mLのドキソルビシン溶液(25mg.ml−1=70mg)をビーズに添加し、全てのスルホネート基を飽和した。全ての溶液をUVにより483nmの波長で測定し、ビーズへの薬剤送達の量を枯渇により決定した。ビーズを装填し、脱イオン水で洗浄したあと、第2工程において、1.25mlのイリノテカン溶液(20mg.mL−1=25mg)を同じビーズに添加し、装填プロフィールを決定した。
試料3:1.25mLのイリノテカン溶液(20mg.ml−1=25mg)を1mlのビーズに装填し、1時間後、1mlのドキソルビシン(25mg.ml−1)を同じビーズに添加した。合間の洗浄は、この試料又は以下の試料に対しては実施しなかった。
試料4:1mlのドキソルビシン(25mg.ml−1)を1mlのビーズに装填し、1時間後、1.25mLのイリノテカン溶液(20mg.ml−1=25mg)を同じビーズに添加した。
試料5:1.25mlのイリノテカン溶液(20mg.ml−1=25mg)を1mlのドキソルビシン(25mg.ml−1)と混合し、次に1mlのビーズに添加した。
【0111】
全ての試料の装填プロフィールを決定するために、50μlのアリコートをそれぞれのバイアルから、それぞれの薬剤を添加した5、15、30、45分後に取り出し、必要であれば希釈して、UVにより483及び369nmで読み取った。それぞれの時点の装填量を、対応する標準曲線を使用して枯渇により決定した。
【0112】
両方の薬剤を装填した後、Colorview IIIカムコーダーを使用して、全ての試料を装填溶液中でサイズにより分類し、写真を撮った。そのため、少なくとも100個のビーズを測定した。これらのデータを標準化し、対応するヒストグラムを生成した。
【0113】
サイズで分類した後、全ての試料を溶出させた。ここで、残りの装填溶液を、パスツールピペットを使用して除去し、装填ビーズを、200mlのPBS(Inverclyde Biologicals)を含有する褐色フラスコに移した。5、15、30、45、60、90分、2時間、4時間及び24時間の時点で、溶出媒質のアリコート(4ml)を取り出し、4mLの新たなPBSに交換して容量を維持した。全ての試料をUVにより483及び369nmの波長で読み取り、対応する標準曲線を使用して、それぞれの時点での溶出量を計算した。
【0114】
<計算>:
両方の薬剤の同じビーズへの装填及びそれからの溶出を計算するために、以下の前提を設けた:
483nmでの吸光度=483nmでのドキソルビシンの吸光度。
【0115】
この薬剤はこの波長では吸収しないことが、イリノテカン溶液のUV走査において観察されている。
369nmでの吸光度=369nmでのドキソルビシンの吸光度+369nmでのイリノテカンの吸光度。
【0116】
ドキソルビシンの走査は、369nmの波長でいくらかの吸光を示し、ここで、同時に測定したとき、ドキソルビシンとイリノテカンとの吸光度の間に相互作用はないことが考えられる。混合物の走査は、両方の薬剤の吸光度スペクトルの間に顕著な相互作用を何も示さない。
【0117】
これらの2つの前提は全ての計算について設けられた。全ての試料を483nm及び369nmの両方の波長で読み取った。483nmでのドキソルビシンの吸光度及び標準曲線を使用して、それぞれの試料におけるドキソルビシン濃度を計算し、これらの濃度及び369nmでのドキソルビシンの標準曲線を使用して、この波長でのドキソルビシンの吸光度を計算した。次に、369nmでの総吸光度からこの値を差し引いて、369nmでの吸光度、したがって、イリノテカンの濃度を計算した。
【0118】
<同じビーズへのイリノテカン及びドキソルビシンの装填>
これらの実験の目的は、ビーズとの相互作用の機構を決定し、薬剤間の可能な相互作用を評価するために、ドキソルビシンとイリノテカンの異なる組み合わせの装填及び溶出挙動を評価し、比較することであった。両方の薬剤が同じビーズに成功裏に組み込まれた場合、必要であれば、両方の抗腫瘍剤の同時局所送達を達成することは簡単である。
【0119】
ドキソルビシン及びイリノテカンを、上記に詳述された異なる手法に従って装填し、結果を下記に示す。
【0120】
図1に示されているように、イリノテカンを最大結合容量で最初に装填し、次にドキソルビシンを系に添加する場合(試料1)、いくらかのイリノテカン(約17%)は置換されるが、大部分の薬剤はビーズに保持される。ドキソルビシンを最大結合容量で最初に装填し、次にイリノテカンを系に添加する場合(試料2)、より小さい率(<8%)のドキソルビシンがイリノテカンにより置換される。これらのデータは、ドキソルビシンのK値がイリノテカンで計算されたものよりも僅かに高く(Gonzalez et al 2006)、ドキソルビシンの方が同じ容量の溶液においてイリノテカンよりもはるかに遅く低い程度でしか放出されないという事実と一致する。しかし、両方の場合において、置換された薬剤の量は少なく、両方の相互作用は第2薬剤の添加後でも安定していることを示している。このことは、容易に飽和する少量の溶液が装填プロセスに使用される及び初期結合嵩高薬剤分子が結合部位への第2薬剤の接近を立体的に妨害し、この現象はNa又はKのような小型イオンでは経験されない、という結果から説明することができるかもしれない。これらの2つの要因が、添加された第2薬剤により置換された薬剤の割合が少ないことに寄与するであろう。
【0121】
図2の試料3及び4は、ビーズに最初に25mgの一方の薬剤を装填し、次に25mgの他方の薬剤を添加した場合、順番に関係なく、非常に僅かの結合薬剤(<5%)しか第2薬剤の添加時に置換されないことを示す。これらの結果は予想通りであったが、その理由は、ビーズの最大装填容量がドキソルビシン及びイリノテカンでそれぞれ約40mg及び52mgであり、ビーズの結合部位は、第2薬剤が添加される(最初に25mgの薬剤がビーズに添加され、次に25mgの他方の薬剤が添加される)ときに飽和されていないことである。
【0122】
図2の試料5は、両方の薬剤が同時に装填された場合、装填速度及び総装填量は、イリノテカンよりもドキソルビシンのほうが僅かに高いことを示す(2時間後、添加された総ドキソルビシン(25mg)の94%が装填され、一方、添加された総イリノテカン(25mg)の91%が装填される)。この小さな差は、これらのK値によって説明することができ、ドキソルビシンのK値(5.5810〜1.0210)は、イリノテカン(8.7310〜3.6210)よりも僅かに高い。
【0123】
<同じビーズに装填されたイリノテカン及びドキソルビシンのサイズ分類>
異なる手法により両方の薬剤が装填されたビーズの間には顕著な差は検出されなかった(図3)。
【0124】
<同じビーズに装填されたイリノテカン及びドキソルビシンの溶出>
図4は、全ての試料が同様の溶出傾向を示し、200mlのPBSに溶出されたとき、ドキソルビシンは、イリノテカン(<4時間に>99%のmg)と比較して非常にゆっくりと(24時間で<25%)放出される。
【0125】
一方の薬剤を他方の薬剤が添加される前に飽和濃度まで装填した試料1及び2では、装填される第2薬剤は、両方の薬剤をビーズに飽和濃度未満で同時に装填した試料3及び4よりも速く放出された。このことは、全てのスルホネート基が飽和されることによって引き起こされる(試料1及び2)、装填される第2薬剤が部分的に結合するという特性により説明することができる。少量の装填された第2薬剤が、大部分が結合している第1薬剤を置換してビーズに結合する。大部分の装填薬剤は、ビーズ内で遊離しており(非結合であり)、結合薬剤よりも速く溶出する。
【0126】
結論として、ドキソルビシン及びイリノテカンが同時に又は順次ビーズに装填されるとき、他方の薬剤の放出挙動に変化は観察されない。追加の薬剤の存在は、他の薬剤の装填挙動を妨げない又は放出挙動を変更しない。それぞれの薬剤は、それぞれ薬剤単独で生成される、個々の薬剤溶出プロフィールから予測されるように溶出する。
【0127】
溶出溶液のUVプロフィールを実施し、ドキソルビシン及びイリノテカンの未装填混合物と比較した。ピーク及び最大値の形状には変化がなく、ビーズの内部でいずれかの薬剤の明確な相互作用又は修飾が生じていないことを確認した。
【0128】
これらの実験は、両方の薬剤を同じビーズに同時に装填し、それから溶出させることが可能であることを実証している。この製品からの2つの薬剤の持続的放出が期待される。これらの2つの抗腫瘍薬の組み合わせは、高用量の単一薬剤による治療よりも高い治療有効性を達成すること及び両方の薬剤の有害作用を減少させることが期待される。潜在的な製品をインビボで評価して、この相乗的、付加的又は拮抗的な効果を決定する。この効果は、個々の化学療法剤の分子比率及び投与スケジュールよって左右される(Aschele et al. 1998)。インビボ研究が、2つの作用物質の異なる用量を評価して最良の比率を決定するために実施される。これらの実験は、個々の薬剤の放出プロフィールを変えることなく両方の薬剤を同じビーズに成功裏に装填し、それから溶出させることができ、ビーズに2つ以上のカチオン性薬剤を装填する可能性が示唆されることを明らかにした。
【0129】
<実施例3:同じビーズにおけるイブプロフェン及びドキソルビシンの組み合わせ>
イブプロフェン及びドキソルビシン溶液を、低AMPSビーズに同時に装填した。これを達成するために、1mlの500〜700μmのビーズの1つの試料にイブプロフェンを(WO2004073688の実施例に従って)装填した。過剰な包装溶液をパスツールピペットの使用により除去し、2mlのドキソルビシン溶液(5mg.ml−1)を添加した。24時間後、50μlのアリコートを枯渇溶液から取り出し、UVにより263nm及び483nmで測定した。ビーズへのドキソルビシン装填量を、枯渇溶液における初期及び最終量の差とした枯渇により計算した(計算は下記に説明する)。
【0130】
両方の薬剤を装填した後、枯渇装填溶液を除去し、装填ビーズを、200mLのPBSを含有する褐色フラスコに移した。5、45、90分、3、5及び24時間の時点で、2mlの溶出媒質を取り出し、2mlの新たなPBSに交換して容量を維持した。全ての試料を、UVにより263nm及び483nmで読み取り、それぞれの時点で溶出したそれぞれの薬剤の量を、対応する標準曲線を使用して計算した。
【0131】
<計算>:
両方の薬剤の同じビーズへの装填及びそれからの溶出を計算するために、以下の前提を設けた:
483nmでの吸光度=483nmでのドキソルビシンの吸光度。
【0132】
イブプロフェン及びドキソルビシン溶液のUV走査は、ドキソルビシンだけがこの波長で吸収することを示した。
263nmでの吸光度=263nmでのドキソルビシンの吸光度+263nmでのイブプロフェンの吸光度。
【0133】
ドキソルビシンのUV走査は、263nmの波長においていくらかの吸光度を示した。同時に測定されたとき、ドキソルビシンとイブプロフェンとの吸光度の間に相互作用はないという前提を設ける。
【0134】
これらの2つの前提は全ての計算について設けられた。全ての試料を両方の波長(263nm及び483nm)で読み取った。483nmでの吸光度を使用して、それぞれの試料におけるドキソルビシン濃度を計算し、次に、これらの濃度及び263nmでのドキソルビシンの標準曲線を使用して、263nmでのドキソルビシンの吸光度を計算した。この値を263nmでの総吸光度から差し引くことによって、イブプロフェン濃度を、イブプロフェン標準曲線を使用して計算した。
【0135】
<ドキソルビシン及びイブプロフェンの組み合わせのビーズへの装填及びそれからの放出>
実験の第1セットにおいて、ドキソルビシン及びイブプロフェンを同じビーズにおいて組み合わせ、これらの放出挙動を評価した。
【0136】
最初に、WO2004073688に記載されている凍結乾燥ビーズに、イブプロフェン/エタノール溶液を溶媒蒸発により装填し、次に水で再水和し、121℃で15分間オートクレーブ処理した。次に、ドキソルビシン溶液(5mg.ml−1)に24時間浸漬することによって、再水和イブプロフェン装填ビーズにドキソルビシンを装填した。この実験において、装填溶液の濃度の枯渇により計算して最大量の8.3mgのドキソルビシンがビーズに装填された。低AMPSビーズは、薬剤単独で装填したとき、約14mg.ml−1のドキソルビシン最大容量を有する。この最大量は、このビーズにおける利用可能な結合部位の数により制限される。ビーズ内のスルホネート基が全て飽和されているので、より多い量の薬剤が試料に添加されても装填されないであろう。
【0137】
同じビーズからの両方の薬剤の放出は、UV分光光度法により同時にモニタリングした。放出される両方の薬剤の溶出プロフィールを図5に表す。両方の薬剤は、一方の薬剤のみが装填されているビーズにより示されるものと同様の放出プロフィールを有し、2つの薬剤の間に相互作用は観察されなかった。この実験は、両方の薬剤を同じビーズに装填し、それから放出できることを示し、2つの薬剤の同時の持続的放出の基盤を提供する。これは、1つの製品の投与により両方の薬剤の治療効果を付加する薬剤送達装置として有益でありうる。この療法は、両方の薬剤の組み合わせにより相乗的抗腫瘍の結果が実証される場合、処置後の鎮痛薬の必要性及びより毒性のある薬剤の用量を低減することができる。
【0138】
<実施例4:同じビーズにおけるドキソルビシン及びラパマイシンの組み合わせ>
装填方法:図6に示されているように、2つの装填方法を試験した。
<方法1>
1mlの未装填高AMPSビーズスラリーに、ドキソルビシン溶液(10.07mg/mlを5ml、目標装填50mg/mlビーズ)を一晩装填した。ドキソルビシン装填ビーズを1mlのDMSOで5回洗浄して、過剰な水を除去し、1mlの60mg/mlラパマイシンDMSO溶液をドキソルビシンビーズと約30分間混合した。続いて、過剰なラパマイシンDMSO溶液を除去した後、ビーズを5mlの食塩水により、白色の薬剤粒子が観察されなくなるまで洗浄した。
【0139】
<方法2>
1mlのビーズスラリーを1mLのDMSOで5回洗浄し、1mlの60mg/mlラパマイシンDMSO溶液と30分間混合した。次に装填ビーズを5mlの食塩水により、白色の薬剤粒子がもはや観察されなくなるまで洗浄した。0.5mlのラパマイシン装填ビーズスラリーを、2.5mlの10.07mg/mlドキソルビシン溶液と一晩ローラー混合した。目標ドキソルビシン装填は50mg/mlである。
【0140】
ドキソルビシン装填試験:ドキソルビシン装填を、水又はDMSO溶液において枯渇法により測定した。装填溶液を取り出し、10倍に希釈し、UVにより483nmで測定して、溶液中の残留ドキソルビシン濃度を決定した。
【0141】
ラパマイシン装填試験:ラパマイシン単独を有するビーズでは、0.5mlのラパマイシン装填ビーズ(方法1、第1工程)を、1mlのDMSOで5回抽出し、溶液を10mlのメスフラスコに溜めた。ラパマイシンの濃度をUVにより279nmで決定した。
【0142】
ドキソルビシンとラパマイシンの組み合わせを有するビーズでは、0.26mlの薬剤装填ビーズ(方法2、第2工程)を1mlのDMSOで4回抽出し、抽出物を5mlのメスフラスコに収集し、DMSOを溶液の上に標線まで加えた。ラパマイシンの濃度は、279nmの総吸光度から279nmでのドキソルビシンの吸光度を差し引いて決定し、279nmでのドキソルビシンの吸光度は、既知の濃度の溶液の走査により483nmでの吸光度から計算した。
【0143】
ドキソルビシン損失の決定:ラパマイシンの更なる装填の前の、装填ビーズのDMSO洗浄(方法2)によるドキソルビシンの損失は、メスフラスコに溜めたDMSO洗浄溶液を483nmで測定することによって決定した。
【0144】
薬剤装填ビーズの溶出:薬剤装填ビーズの溶出は、ビーズを200mlのPBS(Inverclyde, Bellshill, UK)と混合し、ローラーミキサーでローラー混合することにより実施した。特定の時点で、溶液(100ml又は150ml)を、UVによる濃度決定のために取り出し、同じ量の新たなPBSを加えてシンク条件を保持した。ラパマイシンの濃度決定は、ラパマイシン装填試験のセクションと同じ原則に従った。
【0145】
画像分析及びサイズ分類:装填ビーズを、Olympus顕微鏡下に置き、ソフトウエア(AnalySIS 5.0 Soft Image System GmbH)によるサイズ分布のために約200個のビーズを数え、形態研究のために異なる光/コントラストの背景で写真を撮った。
【0146】
ラパマイシン及びドキソルビシン標準曲線:ラパマイシンの最大吸光度は279nmの波長のものであり、ドキソルビシンの吸光度と重複している。ドキソルビシンの最大級光度の波長である483nmでは、ラパマイシンは吸収を有さない。したがって、2構成成分系(ドキソルビシン及びラパマイシン)におけるラパマイシンの濃度は、最初に両方の波長でドキソルビシンの基準溶液を測定すること、次に混合物の吸光度からドキソルビシンの吸光度を差し引くことによって決定することができる。標準曲線は、水中及びDMSO中のドキソルビシンから279及び483nmで作成する。
ドキソルビシンの吸光度を差し引いた後のラパマイシンの濃度は、279nmで下記に提示されている関係により決定することができる:
吸光度=56.18×濃度(mg/ml)〔DMSO中〕
吸光度=44.64×濃度(mg/ml)〔水中〕
【0147】
<2つの装填手順による薬剤装填の比較>
方法1の第1工程において、ラパマイシンを28.48mg/mlで装填したところ、装填効率は約47.5%であった(表1)。方法2の第2工程におけるラパマイシン装填と比較すると、ここでは37.22mg/mlのラパマイシンが装填され、装填効率は62.0%であった。この有意に高い装填効率は、ドキソルビシン装填ビーズがより大きく膨張し、大部分のラパマイシン装填溶液がビーズに吸い込まれたという観察と一致した。機構の観点からは、ドキソルビシン装填ビーズは、より小さいサイズを有し、ドキソルビシン装填溶液又は食塩水の場合に観察されたものよりは塩効果が低いために、水及びDMSOのような極性溶媒においてより大きく膨張する傾向がある。
【0148】
ラパマイシン(28.48mg/ml)が装填されたビーズでは、ドキソルビシン装填容量は46.02mg/mlであることが見出され、ラパマイシンなしのビーズと同様であった。ドキソルビシン装填の際に、ラパマイシンの漏出は観察されなかった。この実験は、ラパマイシン前装填が後のドキソルビシン装填に影響を与えないことを示唆し、これは2つの薬剤がビーズ内の異なる部位を占有することを意味する。ドキソルビシン分子は、イオン相互作用によりスルホネート基の部位に結合する傾向があるが、ラパマイシンは、水を追い出して小さな薬剤結晶を形成することで、ヒドロゲル内の間隙空間内に留まる。
【0149】
<表1.2つの方法によるラパマイシン及びドキソルビシンの装填

表に示されたデータは、2つの重複試験の平均値である。
全ての薬剤装填データは、薬剤装填のないビーズの容量に標準化した。
ドキソルビシン装填の際にラパマイシンの損失は観察されなかったので、第1工程と同じデータを使用した。
ラパマイシンを装填する前のDMSO洗浄によるドキソルビシンの損失は、6.71mg/mlであった。ラパマイシン装填による更なるドキソルビシンの損失は無視した。
【0150】
方法2において、ラパマイシン装填の前のDMSOによるドキソルビシン装填ビーズの洗浄は、約6.71mg/mlのドキソルビシン損失を引き起こしたが、この方法は、より高いラパマイシン装填を有した。最終的なドキソルビシンとラパマイシンの比率は、方法1のビーズでは1.62であり、方法2のビーズでは1.05であった。
【0151】
操作の観点から、方法1は比較的清浄な手順であり、ラパマイシンの廃液しか生じない。方法2は、ドキソルビシン−DMSOとラパマイシンの両方の廃液を生じる。方法1のドキソルビシン装填は、ほぼ完全であり、方法1は、また、処理が比較的簡単でもある。方法2におけるより高いラパマイシン装填にも関わらず、方法1が推奨される。
【0152】
<薬剤装填ビーズの画像分析及びサイズ分布>
方法1によるラパマイシン及びラパマイシン−ドキソルビシン装填の後、写真を撮った。これらのビーズは、薬剤装填の後でも平滑表面及び球状を十分に保持しているように見える。幾つかの小さなラパマイシンの粒子が観察されたが、これらは第1工程の残留物である。ドキソルビシン装填ビーズは、僅かな球状の損失を被った。ラパマイシンの追加的な添加の後には、形状は十分に回復し、表面は平滑であった。方法1の最終ビーズと比較すると、方法2のビーズは浅赤色を有し、これは、DMSO洗浄の後のドキソルビシンに起因するのか又は後に装填されたラパマイシンの遮蔽に起因するのかもしれない。
【0153】
DCビーズ及び薬剤装填ビーズのサイズによる特徴付けを表2に提示し、サイズ分布を図7に示した。表2では、方法1のラパマイシン装填ビーズは、未装填ビーズと比較して僅かに大きいサイズを有する。ドキソルビシンを装填すると、平均サイズは約100μm減少した。方法2では、ドキソルビシン装填ビーズが最少の平均サイズを示す。ラパマイシンを装填した後、サイズは約479μm増加し、方法1の最終ビーズサイズに近くなった。一方、表2の標準偏差データは、サイズ分布の範囲が薬剤装填の際にほぼ変化がないことを示している。したがって、2つの方法は、ほぼ同じサイズ範囲を有する最終ビーズをもたらす(図7)。
【0154】
<表2.未装填及び薬剤装填ビーズのサイズの特徴付け>

【0155】
<装填ビーズからの薬剤溶出>
図8は、装填ビーズからPBSへのドキソルビシン及びラパマイシンの溶出データを示す。この実験では、溶出媒質を一定時間後に交換して、シンク条件を模倣した。図8(B)及び(D)では、異なる方法により作製されたビーズからの薬剤溶出プロフィールは、非常に類似している:ラパマイシンは、30時間の溶出の後、約33%放出し、ドキソルビシンは約41〜46%放出した。
【0156】
図8(A)と(C)を比較すると、方法1により作製されたビーズからのドキソルビシンは、方法2により製作されたビーズよりも僅かに速く溶出した。ラパマイシンの溶出では、反対の現象が観察された。これは、後から装填された薬剤が、第1薬剤溶出にも使用された最初の薬剤の経路を遮蔽したか又は阻止したことに起因するのかもしれない。
【0157】
<実施例5:同じビーズにおけるイリノテカン及びイブプロフェンの組み合わせ>
薬剤装填:薬剤装填手順を図9に示し、ここで未装填高AMPSビーズをDMSOで洗浄して、ヒドロゲル内に捕捉されている水を除去した。DMSOに可溶化したイブプロフェンと結晶化阻害剤としてのヒマシ油との混合物を、続いてビーズスラリーと混合し、約10分間保持した。装填溶液を除去した後、食塩水を使用して、薬剤粒子も大きな油滴も観察されなくなるまで、装填ビーズを洗浄した。イリノテカン装填は、イブプロフェン装填ビーズをイリノテカン溶液(10mg/mL)とローラー混合により一晩混合するだけで達成した。最終装填ビーズを製品として水溶液に保持した。
【0158】
イブプロフェン−イリノテカンビーズの試料マトリックスを表3に提示した。
【0159】
<表3.イブプロフェン−イリノテカン装填の試料マトリックス>

【0160】
<ビーズ中の薬剤含有量の決定>:
1)イブプロフェン。装填イブプロフェンの含有量をHPLC法により決定した。既知の容量の薬剤装填ビーズのスラリーをDMSO(1ml)で5〜6回抽出した。収集したDMSO溶液を10mlのメスフラスコの最上部の標線まで入れ、イブプロフェンの濃度をHPLCにより測定した。
2)イリノテカン。装填ビーズにおけるイリノテカンの含有量を枯渇法により測定した。1〜1.1mlのイブプロフェン装填ビーズを、40mg/mlビーズでの装填を目標にして、4mLの10mg/mlイリノテカン溶液と一晩ローラー混合した。装填溶液を水で希釈し、UVにより369nmで測定した。標準曲線と比較することによって、装填溶液に残ったイリノテカンの濃度を計算することができる。
【0161】
<薬剤装填ビーズの溶出>:
イブプロフェン−イリノテカン装填ビーズの溶出は、0.24mlのビーズを200mlのPBS(Inverclyde, Bellshill, UK)と混合し、ローラーミキサーでローラー混合することにより実施した。特定の時点で、溶液(5ml)を、UVによる濃度決定のために取り出し、同じ容量の新たなPBSを加えてシンク条件を保持した。
【0162】
<画像分析及びサイズ分類>:
装填ビーズを、Olympus顕微鏡に設置し、ソフトウエア(AnalySIS 5.0 Soft Image System GmbH)によるサイズ分布のために約200個のビーズを数え、形態研究のために異なる光/コントラストの背景で写真を撮った。
【0163】
<イブプロフェンとイリノテカンの組み合わせの濃度の決定>
組み合わせた薬剤溶液におけるそれぞれの構成成分の濃度を決定するため、予め決定された濃度のイブプロフェン及びイリノテカン水溶液の263、272及び369nmでの吸光度の標準曲線を測定した。原則は、最初に、イブプロフェンが吸光度を有さない369nmでの吸光度のイリノテカンの濃度を決定することである。次に、イブプロフェンの濃度を、薬剤混合物のスペクトルから272nmでのイリノテカン吸光度を差し引くことによって計算することができる。一般的に使用される263nmの代わりに272nmを使用するのは、薬剤装填に存在するDMSOより起こりうる干渉を低減するためである。しかし、イブプロフェン吸光度は、イブプロフェンの低い水溶性に起因して、イリノテカンと比較してかなり低いことが見出され、イブプロフェンのピークは、イリノテカンにより完全に覆われていた。したがって、イブプロフェン−イリノテカン混合物のイブプロフェン濃度を決定するためのUVの使用は的確ではない。この研究では、イリノテカン濃度をUVにより測定し、イブプロフェン濃度をHPLCにより測定した。
【0164】
<ビーズへのイブプロフェン及びイリノテカンの装填>
第1工程でイブプロフェンを装填した全ての試料は、その球状を保持し、イブプロフェン結晶の形成は見られなかった。イリノテカン装填の後、高イブプロフェン装填の実施例5−1では、大量のイブプロフェン結晶がビーズ表面に現れた。比較すると、同じ量のイブプロフェンを有する実施例5−4では結晶が観察されず、これはビーズ内に存在する高い含有量のヒマシ油結晶化阻害剤の効果に起因する。したがって、ヒマシ油は、結晶形成を阻害することによってイブプロフェン結晶の形成を防止する賦形剤として作用する。
【0165】
表4はそれぞれの試料における薬剤装填を提示する。全ての試料におけるイリノテカン装填は100%に近く、未装填ビーズの最大イリノテカン装填容量は、50〜60mg/mlに近く、下記の装填効率は98%超である。
【0166】
<表4.未装填ビーズの薬剤装填>

データは、処理したDMSO及びヒマシ油の総容量を約10mlとして推定した。
**ビーズ表面のイブプロフェン結晶を含む。
【0167】
イブプロフェン装填は相対的に低く、推定装填効率は29%〜58%である。イブプロフェン装填目標が低いほど、相対的により高い装填効率を得る。相対的に低いイブプロフェン装填の理由は、ビーズがヒマシ油豊富溶液と接触するとサイズが縮少するからである。したがって、薬剤装填は、ビーズの容量が少ないほど減少した。
【0168】
<薬剤装填ビーズのサイズ分布>
薬剤装填ビーズのサイズ分布を図10に示す。対応するパラメーターを表5に提示する。イブプロフェン装填ビーズは、薬剤装填のないDCビーズとほぼ同じサイズを保持し、500〜700μmの範囲である。しかし、薬剤装填ビーズの疎水性に起因して、イリノテカン装填によりサイズは有意に減少し、平均サイズ減少は、約140〜150μmである。多様なイブプロフェン装填を有するビーズがいずれもほぼ同じ平均サイズ及びサイズ分布を有することが注目される。
【0169】
<表5.薬剤装填ビーズのサイズ分布の比較>


IBU:イブプロフェン
**IRI:イリノテカン
【0170】
<薬剤装填ビーズの形態>
実施例5.1のイブプロフェン装填ビーズの顕微鏡写真は、装填ビーズの構造が、イブプロフェン及びヒマシ油を含む大きいコア領域と、薬剤及び油を含まないビーズ表面の層とから構成されることを示している。ビーズの内部に捕捉されているヒマシ油は、イブプロフェンを保持してイブプロフェン結晶の形成を防止する疎水性相を提供する。最初の装填工程でイブプロフェンを有する他の実施例5−2、5−3及び5−4は、それと同じ構造を示す。加えて、幾つかの小さい油滴がビーズの周りに観察され、これらは溶液中のヒマシ油とイブプロフェンの混合物の残留物であった。
【0171】
イリノテカンをローラー混合で一晩装填した場合、イブプロフェン結晶が実施例5.1のビーズの表面に観察され、結晶形成の結果、ビーズの凝集が生じた。結晶化は、他の試料では見出されなかった。この現象は、ビーズにおいてイブプロフェン含有量が高いこと及びイリノテカンが装填された時に結晶形成を防止するためにヒマシ油が十分ではなかったことに起因する。イリノテカンは、ビーズ中でAMPS基と相互作用するものの、依然として疎水性であり、ヒマシ油に部分的に溶解する傾向がある場合もあり、このことはイブプロフェンの可溶性を低減する可能性がある。イリノテカン装填の後で高濃度のヒマシ油及び高装填のイブプロフェンを有する実施例5.4の製品では、イブプロフェン結晶は観察されなかった。
【0172】
<薬剤装填ビーズの溶出>
図11及び12は、25℃でのビーズからPBSへのイリノテカン及びイブプロフェンの溶出プロフィールを示す。図11では、異なるヒマシ油含有量及びイブプロフェン装填での溶出速度はいずれもほぼ同じである。イリノテカン溶出速度も、イリノテカン単独と同程度であり、ほぼ100%の薬剤が5時間後に溶出した。これは、ヒマシ油及びイブプロフェン装填がイリノテカン溶出に何も影響を与えず、イブプロフェンとイリノテカンとの間に相互作用がないことを示している。図12では、イブプロフェン溶出は、PBSにおいて1〜2時間後に完了している。単一薬剤装填ビーズからのイブプロフェン溶出と比較して、溶出はここでも類似しており、薬剤−薬剤相互作用が起こっていないことを示している。
【0173】
<実施例6:ヒトHCC細胞を使用したドキソルビシン装填ビーズのインビトロ細胞毒性評価(参考)>
ドキソルビシンビーズ(500〜700μm)を、WO04071495の実施例2に概説されている方法に従って調製した。ヒト肝細胞癌(HepG2)細胞株を含む細胞培地におけるドキソルビシン装填ビーズの溶出をモニタリングした。Promegaの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイを使用して、HepG2細胞株への細胞毒性効果を24、48及び72時間の時点で評価した。
【0174】
<アッセイの準備>
無菌条件を使用して、滅菌平底96ウエルプレート(Cellstar(登録商標)、655180)に、200μlの培地中の20,000個のHepG2細胞を接種し、インキュベータ(37℃、5%CO)の中に20時間放置した。インキュベート後、培地を全てのウエルから注意深く吸引し、200μlのPRF培地をウエルに加えた。1、3及び10個の装填済ドキソルビシンビーズ(ビーズ1mlあたり37.5mg)を無菌条件下で数え、96ウエルプレートの200μlのフェノールレッド無含有細胞培地に入れた。
【0175】
<ドキソルビシン溶出アッセイ>
プレートを37℃、5%COでインキュベートした。24、48及び72時間の時点で、100μlの各ウエルを490nm(Biotek, ELX800)で走査した。吸光度を標準較正曲線と比較して、溶出を計算した。
【0176】
長時間で、ビーズの数が多いほど、より多くのドキソルビシンが細胞培地に放出された(図13)。溶出プロフィールは、異なるビーズ数により異なり、10個のビーズの場合の後半の時間でのプラトーは、ドキソルビシンによる細胞培地の飽和に起因するのかもしれない。
【0177】
<細胞生存率アッセイ>
このアッセイは、死亡細胞片を洗い流した後、残った生存細胞から放出されるLDHの量を測定する。LDHは、細胞を凍結乾燥することにより生存細胞膜を損なった後に放出される。
【0178】
それぞれの時点において、培地及びビーズを元のプレートから注意深く吸引し、200μlの滅菌PBSの添加及び除去を3回行って、あらゆる残留ドキソルビシン及び残った細胞片を洗浄した。200μlのPRF培地を加えてから、プレートを−80℃に1時間付し、これで全ての細胞膜を意図的に損ない、生存細胞から全ての乳酸デヒドロゲナーゼ酵素を放出させた。プレートを冷凍庫から取り出して、直ぐに標準条件下(37℃、5%CO)のインキュベーターの中に30分間入れた。50μlの上澄みを全てのウエルから取り出してそれぞれ新たなウエルに入れ、続いて50μlのLDHアッセイ基質ミックス(Promega)を入れた。細胞を有する元のプレートは、更なる分析のために保存した。新たなプレートを暗黒中、室温で放置した。30分後、50μlの停止液(酢酸(1M))を加えて、反応を停止させた。次にプレートを、プレートリーダー(Biotek)を490nmで使用して読み取り、読み取りが高すぎる(>3)場合、溶液を、75μlの上澄み及び75μlのPRF培地により希釈した。損なった細胞の率を計算した。
【0179】
生存細胞の数は、装填済ドキソルビシンDCビーズへの暴露及び装填済ドキソルビシンDCビーズの数が増加すると減少する(図14)。
【0180】
<実施例7:ドキソルビシンビーズとラパマイシンビーズの組み合わせ及びインビトでの細胞毒性>
LDHアッセイを使用して、異なるラパマイシン/ドキソルビシンビーズ組み合わせによる24、48及び72時間の時点でのHepG2細胞株への細胞毒性効果を評価した。
ラパマイシンビーズ(500〜700μm)を装填し、PCT/EP2007/50690に記載されているように分析した。得られた装填は、21.4mg/mlであった。
【0181】
ドキソルビシンビーズ(500〜700μm)を、WO04071495に記載されているように、ビーズ1mlあたり37.5mgで装填した。
【0182】
<アッセイの準備>
無菌条件を使用して、滅菌平底96ウエルプレート(Cellstar(登録商標)、655180)に、200μlの培地中の20,000個のHepG2細胞を接種し、インキュベータ(37℃、5%CO)の中に20時間放置した。
【0183】
インキュベート後、培地を全てのウエルから注意深く吸引し、200μlのPRF培地をウエルに加えた。
【0184】
装填済ドキソルビシンビーズ及び装填済ラパマイシンビーズを無菌条件下で数え、96ウエルプレートの200μlのフェノールレッド無含有細胞培地に入れた。各ウエルの中のそれぞれのビーズの数を表5において見ることができる(n=6)。それぞれの薬剤の種類の対照実験を本アッセイと共に実施した(1種類の薬剤のビーズのみを1〜5個)。
【0185】
<表6:ビーズの比率を示すマトリックス>

【0186】
細胞への72時間の暴露後、実施例6に記載されているLDHアッセイを対照と表6の試料で実施した。
【0187】
MTSアッセイもウエルで実施した。72時間の時点で、全てのウエルからの培地を注意深く除去し、それぞれのウエルを200μlの滅菌PBSで3回洗浄した。100μlのPRF培地をそれぞれのウエルに加えた後、20μlの調製MTS溶液(Promega)も加えた。2時間のインキュベーション(37℃、5%CO)の後、プレートをプレートリーダーを使用して490nmで読み取り、LDHアッセイと同様に、読み取りが高すぎた場合は試料を希釈した(75μlのPRF培地:75μlの試料)。
【0188】
<ラパマイシンとドキソルビシンの相乗作用>
異なる比率のラパマイシンビーズ及びドキソルビシンビーズによる細胞生存実験は、薬剤相乗作用があればその確立を可能にする。1個のラパマイシンビーズ及び1個のドキソルビシンビーズを1つのウエルに一緒にした場合、1種類の薬剤のビーズを2個いれば場合よりも少ない細胞しか生存しなかった。この傾向は、ビーズ組み合わせ試験の全体を通して見られる(図15及び16)。同様の傾向がMTSアッセイにおいて注目される(図17及び18)。
【0189】
Calcusyn v2.1(Biosoft)を使用すると、LDHアッセイのデータを使用して組み合わせ指数値をそれぞれの組み合わせについて確立することができる(表7)。組み合わせ指数の値を尺度に関連づける(表7)。これらの記載を使用すると、強力な相乗作用がこれらの条件下で注目される。
【0190】
<表6:組み合わせ指数(CI)値及び摘要。(Fa=用量により影響を受けた割合、1=100%死滅、0=死滅なし)。>

<表7:組み合わせ指数値及び摘要>

【0191】
以上から分かるように、全てのドキソルビシン−ラパマイシンの組み合わせは、2つの薬剤の間に非常に強力な相乗作用があることを示すCIをもたらした。両方のアッセイとも、両方の薬剤の間の相乗作用を示す。このデータは、好ましい比率を示すわけではないが、全ての組み合わせにおいて相乗作用があることが見られる。
【0192】
<実施例8:ラパマイシン及びドキソルビシン装填ビーズの個別及び組み合わせのインビトロ細胞毒性>
薬剤のうちの1つを装填したビーズをより幅広い数で用いて、実質的に実施例7を記載されたように繰り返した。6つの試料の平均として結論付けたMTSアッセイの結果、すなわち72時間の暴露後のHepG2細胞の細胞生存率(対数尺度)を示す結果を、図19に示す。
【0193】
<結果>
個別に溶出したとき、ドキソルビシンは、ラパマイシンよりも細胞に対して細胞毒性があった(図1)。しかし、組み合わせて使用したとき、細胞生存に更なる低減が観察される。全てのビーズ組み合わせの組み合わせ指数は、<0.1であり、このことは2つの溶出薬剤の間の強力な正の相乗作用を示している。
【0194】
<実施例9:インビトロでのヒト膵癌(PSN1)及びヒト肝癌(HepG2)細胞株に対するラパマイシンとドキソルビシンの相乗作用>
MTSアッセイを使用して、HepG2及びPSN1細胞に対する二重装填ビーズの相乗的細胞毒性効果を評価した。ラパマイシン装填ビーズ及びドキソルビシン装填ビーズは、実施例7に記載されたものと同一であった。二重装填ドキソルビシン及びラパマイシン装填ビーズを、1mlの60mg/mlラパマイシン溶液及び1mlの37.5mg/mlドキソルビシン溶液を使用して、実施例4、方法2に記載されたように装填し、分析した。二重装填ビーズで得られた装填は、ラパマイシンが21.4mg/ml及びドキソルビシンが35.5mg/mlであった。
【0195】
<アッセイの準備>
アッセイは、分析のためにHepG2細胞及び追加的なPSN1細胞のプレートを使用し、実施例7に記載されたように準備した。
【0196】
<細胞生存率>
装填済ドキソルビシンビーズ、装填済ラパマイシンビーズ及び二重ラパマイシン及びドキソルビシン装填済ビーズを数え(1、2又は3個)、細胞培地中で調製した20,000個のPSN1又はHepG2細胞に加え、インキュベーター(37℃、5%CO)に入れた。
【0197】
MTSアッセイ(実施例7に記載されている)を、暴露の24、48及び72時間後に実施した。
【0198】
二重装填ビーズ組み合わせは、PSN1細胞(図20〜22)及びHepG2細胞(図23〜25)について全ての時点で単一装填ビーズよりも多くの細胞死を示した。
【0199】
<実施例10:2個の単一装填ビーズと比較した二重装填ビーズ>
MTSアッセイを使用して、2個の単一装填ビーズ(ドキソルビシン装填を1個及びラパマイシン装填を1個)の場合と比較して、1個のドキソルビシン及びラパマイシン二重装填ビーズの細胞毒性効果に差が無かったことを実証した。
【0200】
使用した薬剤装填ビーズは、実施例9に記載されたものと同じバッチのものであった。
【0201】
アッセイは、HepG2細胞を使用して、実施例7に記載されたとおりに設定した。1〜4個の二重装填ビーズを、200μlの培地中で調製した20,000個のHepG2細胞に加え、複数の単一装填ビーズを使用した同等の用量を、別のウエルの同じ容量の培地に加えた。プレートをインキュベーター(37℃、5%CO)に入れた。
【0202】
MTSアッセイ(実施例7に記載されている)を、暴露の24、48及び72時間後に実施した。
【0203】
薬剤溶出ビーズの細胞毒性効果は、両方の薬剤を1個のビーズに装填したか又は2個の別々のビーズに装填したかには関係なく、類似していた(図26〜図28)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小球の集団を含む組成物であって、それぞれの微小球が、ポリマーマトリックスと、一緒にマトリックスに組み込まれている第1及び第2の薬学的に活性な化合物とを有し、ポリマーが、水不溶性で水膨張性のアニオン性荷電ポリマーであり、前記第1活性化合物がカチオン性に荷電され、一方の活性化合物が細胞毒性化合物であり、他方の活性化合物が、腫瘍治療において前記細胞毒性化合物に相補的な活性を有する、組成物。
【請求項2】
第1のカチオン性荷電化合物が細胞毒性剤である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
第2活性化合物がカチオン性に荷電されている、請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
第2活性化合物が静電気的に中性である、請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項5】
第2活性化合物が室温で10g/l未満の水溶性を有する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
2つの活性化合物が、0.9未満の組み合わせ指数を有し、好ましくは0.1未満の組み合わせ指数を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
第1ポリマーマトリックス及び第1治療活性剤を含む微小球の第1集団と、第2ポリマーマトリックス及び第2治療活性薬剤を含む微小球の第2集団とを含む医薬製品であって、前記第1及び/又は第2ポリマーマトリックスが架橋された水膨張性ポリマーであり、第1治療活性薬剤及び第2治療活性薬剤が微小球に組み込まれており、各集団が、製品の単位用量当たり、組み合わせ指数が0.1未満であるような量で存在する、医薬製品。
【請求項8】
両方の薬剤が同一の微小球に共に装填されている、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
第1活性化合物が細胞毒性剤である、請求項7又は請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
ポリマーマトリックスがアニオン性に荷電され、活性化合物のうちの1つがカチオン性に荷電されている、請求項7〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
細胞毒性剤が、ミトキサントロン、または、一般式IV:
【化1】

で示される、アミン基を有するアントラサイクリン化合物である、請求項1〜6のいずれか1項又は10記載の組成物。
【請求項12】
アントラサイクリンがドキソルビシンである、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
カチオン性活性化合物が、一般式I:
【化2】

〔式中、Rは、H、ハロゲン、ヒドロキシル及び、場合によりヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル又はアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり、そして
Rは、NRであり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
ここで基−A−Rは、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合しており、Rは、A又はB環で置換されている〕
で示される化合物、又はその塩である、
請求項1〜6のいずれか1項又は10記載の組成物。
【請求項14】
カチオン性活性化合物がイリノテカンである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
第2活性剤が、室温で10g/l未満の水溶性を有する化合物である、請求項7〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項16】
低水溶性化合物が、ラパマイシン又はラパマイシン類似体、好ましくはラパマイシンである、請求項15又は5記載の化合物。
【請求項17】
第2活性剤が、COXインヒビター、好ましくはイブプロフェンである、請求項1〜14のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項18】
第1ポリマーマトリックス及び第1治療活性化合物を含む微小球の第1集団と、第2ポリマーマトリックス及び第2治療活性化合物を含む微小球の第2集団とを含む医薬組成物であって、前記第1及び第2ポリマーマトリックスが、架橋された水不溶性で水膨張性のポリマーであり、第1活性化合物が、アミン置換基を有するアントラサイクリンであり、第2活性化合物が、ラパマイシン又はその類似体である、医薬組成物。
【請求項19】
第1活性化合物が、請求項11に定義された化合物であって、好ましくはドキソルビシンである、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
第1ポリマーマトリックス及び第1治療活性化合物を含む微小球の第1集団と、第2ポリマーマトリックス及び第2治療活性化合物を含む微小球の第2集団とを含む医薬組成物であって、前記第1及び第2ポリマーマトリックスが、架橋された水不溶性で水膨張性のポリマーであり、
第1活性化合物が、一般式I:
【化3】

〔式中、Rは、H、ハロゲン、ヒドロキシル及び、場合によりヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル又はアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり、そして
Rは、NRであり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
ここで基−A−Rは、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合しており、Rは、A又はB環で置換されている〕
で示される化合物、又はその塩である、
医薬組成物。
【請求項21】
第2活性化合物が、ラパマイシン又はラパマイシン類似体である、請求項18〜20のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項22】
第1ポリマーマトリックス及び第1治療活性化合物を含む微小球の第1集団と、第2ポリマーマトリックス及び第2治療活性化合物を含む微小球の第2集団とを含む医薬組成物であって、前記第1及び第2ポリマーマトリックスが、架橋された水不溶性で水膨張性のポリマーであり、
第1活性化合物が、一般式I:
【化4】

〔式中、Rは、H、ハロゲン、ヒドロキシル及び、場合によりヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル又はアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり、そして
Rは、NRであり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
ここで基−A−Rは、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合しており、Rは、A又はB環で置換されている〕
で示される化合物、又はその塩であるか、或いは
アミン置換基を有するアントラサイクリンであり、
第2化合物が、COXインヒビターである
医薬組成物。
【請求項23】
一般式Iの化合物がイリノテカンである、請求項20又は請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
COXインヒビターがイブプロフェンである、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項25】
各ポリマーが非生分解性である、請求項1〜24のいずれか1項記載の組成物。
【請求項26】
各ポリマーが、37℃で水により膨張したとき、40〜99重量%、好ましくは75〜95重量%の範囲の平衡含水量で水膨張性である、請求項1〜25のいずれか1項記載の組成物。
【請求項27】
各ポリマーが全体として合成ポリマーである、請求項1〜26のいずれか1項記載の組成物。
【請求項28】
各ポリマーが架橋ポリビニルアルコールである、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
ポリマーマトリックスが、エチレン性基のラジカル重合により、分子1つあたり2個以上のエチレン性不飽和側基を有するポリビニルアルコールマクロモノマーから形成される、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
マクロマーが、例えば、非イオン性モノマー及び/又はアニオン性モノマーを含むイオン性モノマーを含む、エチレン性不飽和モノマーと共重合される、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
エチレン性不飽和モノマーが、一般式III:
BQ III
〔式中、Yは、
【化5】

、CH=C(R10)−CH−O−、CH=C(R10)−CHOC(O)−、CH=C(R10)OC(O)−、CH=C(R10)−O−、CH=C(R10)CHOC(O)N(R11)−、R12OOCCR10=CR10C(O)−O−、R10CH=CHC(O)O−、R10CH=C(COOR12)CH−C(O)−O−、
【化6】

から選択され;
ここで、
10は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
11は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
12は、水素又はC1−4アルキル基、又はBQであり、ここでB及びQは、下記に定義されているとおりであり;
は、−O−又は−NR11−であり;
は、基−(CHOC(O)−、−(CHC(O)O−、−(CHOC(O)O−、−(CHNR13−、−(CHNR13C(O)−、−(CHC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)O−、−(CHOC(O)NR13−、−(CHNR13C(O)NR13−(ここで基R13は同一又は異なっている)、−(CHO−、−(CHSO−、又は、場合によりBと組み合わせて、原子価結合であり、rは、1〜12であり、R13は、水素又はC〜Cアルキル基であり;
Bは、場合により、ペルフルオロ化鎖までを含む1個以上のフッ素原子を含有する、直鎖若しくは分岐鎖のアルカンジイル、オキサアルキレン、アルカンジイルオキサアルカンジイル若しくはアルカンジイルオリゴ(オキサアルカンジイル)鎖であるか、又はQ若しくはYが、Bに結合している末端炭素原子を含有する場合、原子価結合であり;そして
は、イオン性基である〕
を有するイオン性モノマーを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
が、アニオン性基であって、好ましくはカルボン酸塩、炭酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ホスホン酸塩又はリン酸塩基である、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
が、カチオン性基であって、好ましくは基N14、P15又はS15であり、ここで、複数の基R14が、同一又は異なって、それぞれ水素、C1−4アルキル又はアリール(好ましくはフェニル)であるか、或いは複数の基R14のうちの2つが、それらが結合しているヘテロ原子と一緒になって、5〜7個の原子を含有する飽和又は不飽和複素環を形成し、基R15が、それぞれOR14又はR14である、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
請求項3記載の組成物を作製する方法であって、それぞれの活性化合物の水溶液を、順次又は同時に、ポリマーマトリックスの微小球と接触させ、それにより2つの活性化合物がイオン交換してポリマーマトリックスに静電気的に結合することを含む、方法。
【請求項35】
2つの活性化合物を共に微小球に装填する方法であって、
実質的に乾燥形態の水不溶性で水膨張性のアニオン性荷電架橋ポリマーのマトリックスを含む微小球を、第1有機溶媒中の室温で10g/l未満の水溶性を有する薬剤の溶液と接触させ、それにより溶媒中の薬剤の溶液が微小球に含浸される工程;
微小球に含浸されなかった薬剤溶液を分離する工程;
含浸微小球を水性液体と接触させ、それにより薬剤を微小球のコア内に沈殿させる工程;
沈殿した薬剤を含有する微小球を、ポリマーと反対の電荷を有するイオン性薬剤の水溶液と接触させて、装填のイオン交換を可能にする工程;及び
二重装填微小球を回収する工程、を含み、
各薬剤が、請求項1〜25のいずれか1項記載のものから選択される
方法。
【請求項36】
2つの薬学的活性化合物を共に薬剤送達マトリックスに装填する方法であって、
ポリマー+水に対し40〜99重量%の範囲の平衡含水量に至るまで室温で水の中で膨張しうる、水不溶性で水膨張性のイオン性荷電ポリマーを含む、薬剤送達マトリックスを、室温で10g/l未満の水溶性を有する薬剤の、ポリマーを膨張することができる有機溶媒中の溶液と接触させ、それにより、溶液がマトリックスに含浸される工程;
ポリマーマトリックスに含浸されなかったあらゆる薬剤溶液を分離する工程;
含浸マトリックスを水と接触させ、それにより薬剤がマトリックス内で沈殿する工程;
沈殿した低水溶性薬剤を有するマトリックスを、イオン性荷電薬剤の水溶液と接触させ、それによりマトリックスが膨張し、ポリマーと結合する対イオンとのイオン交換が生じ、荷電薬剤がポリマーマトリックスと静電気的に結合する工程
を含む方法。
【請求項37】
10g/l未満の水溶性を有する活性化合物が、ラパマイシン又はその類似体である、請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
水不溶性で水膨張性の、架橋されたイオン性荷電ポリマーのマトリックスを含む微小球に2つの薬学的活性化合物を共に装填する方法であって、第1活性化合物がポリマーと反対の電荷により静電気的に荷電されており、第2活性化合物が、結晶性薬剤であり、
マトリックスを、マトリックスを膨張させることができる揮発性有機溶媒中の結晶性薬剤の溶液と接触させる工程であって、該溶液は薬剤の結晶化を阻害することができる結晶改質剤を更に含有する工程と、
マトリックスを乾燥して揮発性溶媒を除去する工程と、
結晶性薬剤及び結晶改質剤が装填されているマトリックスをイオン性薬剤の水溶液と接触させ、それによりマトリックスが膨張し、ポリマーと結合する対イオンとのイオン交換を生じ、薬剤をポリマーマトリックスに静電気的に結合する工程
を含む、方法。
【請求項39】
第2薬剤が、COXインヒビター、好ましくはイブプロフェンである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
結晶改質剤が、結晶化インヒビターであり、好ましくは油である、請求項38又は39記載の方法。
【請求項41】
イオン性荷電活性化合物が、一般式I:
【化7】

〔式中、Rは、H、ハロゲン、ヒドロキシル及び、場合によりヒドロキシル、アミン、アルコキシ、ハロゲン、アシル又はアシルオキシ基で置換されている低級(C1−6)アルキルから選択され;
Aは、C(O)O又はCHであり、そして
Rは、NRであり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換の炭素環式若しくは複素環式基を表すか、或いはR及びRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、−O−、−S−若しくは>NRで中断されていてもよい、場合により置換されている複素環を形成し、Rは、水素原子、置換若しくは非置換C1−4アルキル基又は置換若しくは非置換フェニル基であり;
ここで基−A−Rは、カンプトテシン化合物のA環の9、10又は11位のいずれかに位置する炭素原子と結合しており、Rは、A又はB環で置換されている〕
で示される化合物、又はその塩である、
請求項36〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
一般式Iの化合物がイリノテカンである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
イオン性荷電活性化合物が、ミトキサントロン、又は、アミン基を有するアントラサイクリン化合物である、請求項36〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
アントラサイクリンが、請求項11に定義された化合物であって、好ましくはドキソルビシンである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
2つの活性化合物が、0.9未満の組み合わせ指数を有し、好ましくは0.1未満の組み合わせ指数を有する、請求項34〜44のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
ポリマーが、請求項27〜37のいずれか1項に定義されたものである、請求項34〜45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
請求項1〜33のいずれか1項記載の組成物を、第1及び第2活性化合物がそれぞれ標的腫瘍に送達されるような方法で、腫瘍に罹患している動物に投与する、固形腫瘍を治療する方法。
【請求項48】
組成物が腫瘍内に注入することにより投与される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
組成物を、外科手術による腫瘍の除去後に切除周辺部に注入する、請求項47記載の方法。
【請求項50】
マトリックスが、腫瘍に供給する血管の塞栓形成において、37℃で蒸留水中で膨張したとき、100〜1500μmの範囲の直径を有する微小球の形態を有する、請求項47記載の方法。
【請求項51】
腫瘍が肝腫瘍である、請求項46〜50のいずれか1項記載の方法。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公表番号】特表2010−536738(P2010−536738A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520637(P2010−520637)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050722
【国際公開番号】WO2009/022190
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】