説明

薬剤を送り出すための装置及び方法

【課題】短時間で投射距離の長い材料の放出を可能にする。
【解決手段】薬剤支持材料を放出するための方法および装置で、蒸気爆発装置は、蒸気爆発チャンバ1901と、入り口バルブ1902と排出バルブ1903とリターンバルブ1904とバッテリー1905、及び、ユーザー制御インターフェース1911と制御回路1910を備え、蒸気爆発チャンバ1901は、過熱要素で加熱されると供に、薬剤リザーバ1906を介し流体が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標材料を放出するための方法および装置に関する。特に本発明は、ある量の液体が収容されている放出チャンバから、比較的長い距離にわたって、液体または液体の蒸気を迅速に放出できる高速材料放出装置のための方法および装置を提供するものであるが、これら方法および装置に限定されるものではない。また本発明は、かかる放出システムの多数の用途にも関する。更に、本発明は、薬剤をユーザーに送り込むことができる吸入器またはネブライザまたは針なし注射器にも関するが、これらだけに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
多くの業界においては、材料放出装置のニーズがある。すなわち、望ましい距離にわたって、固定レートまたは可変レートで、液体および液体の蒸気のスプレーを送り出す装置が求められている。長い距離にわたって、高速レートで液体および液体の蒸気のスプレーを発生させるニーズもある。かかるシステムでは、投射なる用語は、スプレーの1つの特性と称されることが多く、材料の投射率は、スプレーを放出するチャンバの長さで、移動距離を割った値で定義される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
消火器、インクジェットプリンタ、エアバッグ点火器、自動車エンジン、およびガスタービンのための燃料噴射器、呼吸器用薬剤送り出し(デリバリー)システムなどのような材料放出装置の種々の例が知られている。しかしながら、これらの各例では、当該装置に関連する固有の問題が存在し、各応用分野においては、長い距離にわたって、液体および液体蒸気を迅速に放出できるようにしたいというニーズが存在している。
【0004】
材料放出システムを実施する上での固有の問題を検討するにあたり、ガスタービン再点火器を例とする。ガスタービンの点火器において、燃焼室内のガスを再点火するための従来の解決方法は、再点火器の2つの電極の間に電流を流し、短期間、帯電したラジカルの混合物を形成する方法である。
【0005】
図1には、このことが明瞭に示されている。図1では、内側にペレット12が存在する、ほぼ円筒形の外側電極11を備える公知の再点火器10が示されている。ペレット内には、中心電極13が位置し、2つの電極11と13の間に電流を流すことにより、帯電したラジカルの混合物を形成するようになっている(すなわち、ガス分子をプラズマと称される帯電した成分に一時的に分割するときに、これらラジカルの混合物が生じる)。このプラズマは、再結合し、電荷を失う前の1秒の何分の1の間しか存在しない。
【0006】
次に、主エンジンの主燃焼室内の燃焼を点火するのに、電荷を使用する。公知の再点火器の問題は、出口オリフィス14を介して、十分遠くに混合物を放出材料として放出し、目標とする機能を奏するのに、どれだけ十分長く帯電状態を維持できるかということである。従来、ケロシンまたは他の通常のガスタービンエンジン燃料に点火するのに、放出材料15が使用されている。
【0007】
材料放出システムを実施する上での固有の問題を検討するに際し、呼吸器用薬剤送り出しシステムを例とする。呼吸器疾患、例えばぜんそく、膿胞性繊維症、慢性閉塞肺疾患(COPD)、およびその他の疾患を治療するために、呼吸器系へ直接薬剤を送り出すために、呼吸器用薬剤送り出しシステムが使用されている。更に、最近では、システマチックな薬剤治療のための入口門として、肺を使用できることが認識された。例えば吸入インシュリンを吸入させることによって、インシュリンを投与することが可能となり、このような投与方法は、糖尿病の治療におけるインシュリン注入に対する別の日常の治療となる可能性が高い。
【0008】
現在、呼吸器用薬剤送り出しシステムとして、主に3つのタイプが存在する。これらのシステムとして、投与量計量吸入器、乾式粉末吸入器およびネブライザを挙げることができる。
【0009】
加圧式投与量計量吸入器は、計量された容積の加圧流体を、患者の気道内に放出するものであり、放出時に流体は、高速で蒸発し、吸入に適した乾燥した状態で、薬剤を残すようになっている。
【0010】
乾式粉末吸入器は、乾燥した粉末を含み、この粉末は患者が吸入器を通して空気を吸入する際に移動するようになっており、患者の吸入力によって、乾燥した粉末が患者の肺の中に送り込むことができるようになっている。投与量計量吸入器と乾燥粉末吸入器の双方は、1回の吸入で所定量の薬剤を送り出すようになっており、患者は1日のうちに所定量の投与量を取り込むようになっている。
【0011】
第3のタイプの呼吸器用薬剤送り出しシステムはネブライザであり、このネブライザは、液状の形態で保管されている薬剤をエアゾールまたはミストとして知られる薬剤粒子のガス状サスペンジョンに変換するものである。患者がこのミストを吸入すると、薬剤が呼吸器系に送り込まれることになる。
【0012】
ネブライザには、主に2つのタイプ、すなわち、ジェット式ネブライザと超音波ネブライザがある。ジェットネブライザは、薬剤リザーバで負圧を発生させるよう、狭い開口部を通して加圧されたガスを加え、リザーバから薬剤の溶液の粒子を引き寄せ、患者が吸入するミストを形成することによって作動する。
【0013】
一方、超音波ネブライザは、高速で振動するピエゾ電気結晶体を使用でき、振動するピエゾ電気結晶体は液体源を形成し、この液体源からミストが生じるようになっている。ネブライザは、約15分間にわたり、薬剤のリザーバをミストに低速で変換し、この間、ユーザーは、ミスト状の薬剤を連続的に吸入することになる。ネブライザは、他のタイプの薬剤送り出し方法よりも、より効力の高い投与量の薬剤を送り込むことができるので、深刻な問題を抱える患者に対して使用されることが多い。
【0014】
公知の呼吸器用薬剤送り出しシステムの主な問題は、薬剤が重要な場所に到達できるよう呼吸系へ薬剤を十分に吸入させることができるようにすることである。呼吸器用薬剤送り出しシステムは、アクティブな成分を放出する際に、薬剤を投射率および分散量を最大にしなければならない。別の問題は、薬剤を粒子化、すなわち噴霧するときに、薬剤粒子が過度に大きくなる場合があり、この場合、口腔内に付着しやすくなることである。逆に、過度に小さい場合、アクティブな成分が付着しにくくなり、患者によっては、排出されてしまうことになる。
【0015】
本発明の目的は、上記の問題を少なくとも緩和することである。
【0016】
本発明のある実施例の目的は、薬剤をユーザーに送り出すための方法および装置を提供することである。
【0017】
本発明のある実施例の目的は、ネブライザまたは投与量計量吸入器、または針なし注射器を提供することである。
【0018】
本発明のある実施例の目的は、チャンバから液体および液体蒸気を放出し、放出される材料が望ましい特性、例えば望ましい放出速度および移動距離を有するように、材料を放出するための装置および方法を提供することである。
【0019】
本発明のある実施例の目的は、高速材料放出器を提供するための装置および方法を提供することにある。かかる高速材料放出器は、燃料噴射器およびガスタービン再点火器などの用途に固有の問題を解消できる。
【0020】
本発明のある実施例の目的は、パイロット火炎点火器を提供するための装置、および方法を提供することである。
【0021】
本発明のある実施例の目的は、輸送体を推進するのに使用できる推進ユニットを提供するための装置および方法を提供することである。
【0022】
本発明のある実施例の目的は、消火器を提供するための装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の特徴によれば、ユーザーに薬剤を送り出すための装置において、
少なくとも1つの薬剤を含むある容積の選択された液体を貯蔵するようになっている貯蔵チャンバと、
前記選択された液体の一部を保持するようになっている放出チャンバと、
前記貯蔵チャンバからの液体を、前記放出チャンバに送ることができるよう選択的に開くようになっている入口バルブと、
前記放出チャンバに関連するパラメータが、所定の条件を満たしたときに、前記放出チャンバから薬剤を放出するよう選択的に開くようになっている出口バルブとを備え、
前記放出チャンバから、前記液体の蒸気または液体を放出し、薬剤を送り出すようになっている、ユーザーに薬剤を送り出すための装置が提供される。
【0024】
この装置は、ハンドヘルドネブライザを備えていることが好ましい。
【0025】
この装置は、デスクトップネブライザを備えていることが好ましい。
【0026】
この装置は、投与量が固定された吸入器を備えていることが好ましい。
【0027】
この装置は、針なし注射器を備えていることが好ましい。
【0028】
本発明の第2の特徴によれば、少なくとも1つの薬剤を含む、ある容積の選択された液体を貯蔵チャンバに貯蔵するステップと、
入口バルブを選択的に開け、もって、前記貯蔵チャンバから放出貯蔵チャンバに液体の一部を移動させるステップと、
前記放出チャンバに関連するパラメータが所定の条件を満たしたときに、前記放出チャンバの出口バルブを選択的に開けるステップと、
前記出口バルブを介して、前記放出チャンバから液体の蒸気または液体を放出することによってユーザーに薬剤を送り出すステップとを備える、薬剤をユーザーに送り出す方法が提供される。
【0029】
本発明の第3の特徴によれば、ある容積の選択された液体を保持するためのチャンバと、
前記選択された液体を通過させ、前記チャンバに導入することができる入口バルブと、
あるパラメータが所定の条件を満たすときに、前記チャンバからの内容物を放出できるように開くようになっている出口バルブと、
前記チャンバ内の前記液体の圧力を高める手段とを備え、
前記出口バルブを介して、前記チャンバから、液体または液体の蒸気を放出するようになっている、物質を放出するための装置が提供される。
【0030】
圧力を高めるための前記手段は、前記チャンバ内にある液体を加熱するようになっている加熱要素を備えていることが好ましい。
【0031】
前記出口バルブは、前記チャンバ内の圧力が所定の値に達したときに開くようになっていることが好ましい。
【0032】
前記出口バルブの開口部を介して、あらかじめ前記チャンバの内容物を放出した後に液体を前記チャンバ内に導入できるように、前記入口バルブが開くようになっていることが好ましい。
【0033】
前記チャンバは、狭いネック領域を更に備え、このネック領域を通って、液体および蒸気を放出するようになっていることが好ましい。
【0034】
前記出口バルブが開くと、蒸気爆発方法により、前記液体および蒸気を放出するようになっていることが好ましい。
【0035】
前記液体は、水であることが好ましい。
【0036】
前記液体は、引火性液体、例えばケロシン、または石油であることが好ましい。
【0037】
前記出口バルブは、1.1バールの圧力で開くように設定されていることが好ましい。
【0038】
圧力を高めるための前記手段は、大気圧において、沸点よりも高く液体を加熱するための手段を備えていることが好ましい。
【0039】
前記チャンバの直径は、1mm〜1mの範囲内にあることが好ましい。
【0040】
前記チャンバは、球形であることが好ましい。
【0041】
前記チャンバは、ハート形であることが好ましい。
【0042】
前記出口バルブは、前記ハート形チャンバの頂点の領域に位置していることが好ましい。
【0043】
前記チャンバの、形状は、実質的に円筒であることが好ましい。
【0044】
本発明第4の特徴によれば、
入口バルブを介して、チャンバ内に選択された液体を導入するステップと、
前記チャンバ内の液体の圧力を高めるステップと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、出口バルブを開けるステップと、
前記出口バルブを介して、前記チャンバから、液体または液体の蒸気を放出するステップとを備える、チャンバから物質を放出するための方法が提供される。
【0045】
この方法は、前記出口バルブを開けるステップの前に、加熱要素により、前記チャンバ内にある液体を加熱するステップを更に備えていることが好ましい。
【0046】
この方法は、所定のパラメータが満たされたときを判断するステップと、これに応答して、前記出口バルブを開けるステップとを更に備えることが好ましい。
【0047】
この方法は、前記出口バルブから下流側位置にあるガスの圧力における沸点よりも高い温度に、前記チャンバ内の前記液体を加熱するステップを更に備えることが好ましい。
【0048】
本発明の第5の特徴によれば、噴射すべきある量の選択された液体を保持するための放出チャンバと、
前記選択された液体を通過させ、前記チャンバに導入することができる入口バルブと、
あるパラメータが所定の条件を満たすときに、前記チャンバからの内容物を放出できるように開くようになっている出口バルブと、
前記チャンバ内の前記液体の圧力を高める手段とを備え、
前記出口バルブを介して、前記チャンバから液体または液体の蒸気を放出するようになっている、燃料を下流側の燃焼ゾーンに噴射するための装置が提供される。
【0049】
蒸気爆発方法により、前記液体と液体の蒸気を噴射させることが好ましい。
【0050】
20よりも長い投射距離を有するスプレーとして、前記液体および液体の蒸気を放出することが好ましい。
【0051】
100よりも長い投射距離を有するスプレーとして、前記液体および液体の蒸気を放出することが好ましい。
【0052】
前記液体は、ケロシンを含むことが好ましい。
【0053】
前記液体は、石油を含むことが好ましい。
【0054】
前記チャンバは、金属材料で製造することが好ましい。
【0055】
圧力を高めるための前記手段は、前記チャンバ内に位置する加熱要素を含むことが好ましい。
【0056】
前記装置は、前記加熱要素のための電源を更に備えていることが好ましい。
【0057】
前記チャンバは、形状が実質的に円筒形であり、出口端部にネック領域を有し、このネック領域に、出口バルブが位置していることが好ましい。
【0058】
前記ネック領域は、狭い放出オリフィスを備え、このオリフィスを介して、液体燃料および液体燃料の蒸気が、前記燃焼ゾーンに放出されるようになっていることが好ましい。
【0059】
前記オリフィスの断面は、前記ネック領域の横断面未満の直径を有することが好ましい。
【0060】
この装置は、前記噴射装置により、前記燃焼ゾーンに放出された前記液体燃料および前記液体燃料の蒸気に点火するための、前記燃焼ゾーンに位置する点火ソースを更に含むことが好ましい。
【0061】
本発明の第6の特徴によれば、
入口バルブを介して、チャンバ内に選択された液体を導入するステップと、
前記チャンバ内の液体の圧力を高めるステップと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、出口バルブを開けるステップと、
前記出口バルブを介して、前記チャンバから、液体または液体の蒸気を放出するステップとを備える、燃料を下流側の燃焼ゾーンに噴射するための方法が提供される。
【0062】
この方法は、前記出口バルブを開けるステップに先立ち、加熱要素により、前記チャンバ内に位置する液体を加熱するステップを更に含むことが好ましい。
【0063】
本発明の第7の特徴によれば、ある容積の選択された液体燃料を保持するための燃料放出チャンバと、
選択された液体を通過させ、前記放出チャンバに導入できる入口バルブと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、前記放出チャンバからの内容物を放出できるように開くようになっている出口バルブと、
前記放出チャンバ内の前記液体の圧力を高める手段と、
前記放出チャンバから放出された液体または液体の蒸気を受け入れるように位置し、前記放出チャンバから放出される前記液体および液体の蒸気に点火するための点火要素を含む燃焼チャンバとを備える、輸送体に対して推進力を提供するための装置が提供される。
【0064】
前記燃焼チャンバは、更に出口を備え、この出口を通って、前記燃焼チャンバから火炎および高温ガスが逃れることができ、前記火炎および高温ガスの逃れにより、輸送体に対し反対方向の押圧力が発生されることが好ましい。
【0065】
前記点火要素は、スパーク点火器を備えることが好ましい。
【0066】
前記放出チャンバから放出される液体および液体の蒸気を、所望の方向に向けるよう、放出される材料を向けるためのノズルが、前記出口バルブに対して、下流側に向いていることが好ましい。
【0067】
この装置は、前記燃焼チャンバ内に空気を提供するための、少なくとも1つの空気吸入部を更に備えていることが好ましい。
【0068】
前記少なくとも1つの空気吸入部は、輸送体の外部から、前記推進システムに空気を吸入する1つ以上の空気吸入通路を備えていることが好ましい。
【0069】
前記輸送体は、無人の航空機(UAV)を備えていることが好ましい。
【0070】
圧力を高める前記手段は、前記放出チャンバ内に位置する液体を加熱するようになっている加熱要素を備えていることが好ましい。
【0071】
前記出口バルブは、前記放出チャンバ内の圧力が所定の値に達したときに開くようになっていることが好ましい。
【0072】
本発明の第8の特徴によれば、
入口バルブを介して、前記輸送体の放出チャンバに選択された液体燃料を導入するステップと、
前記放出チャンバ内の前記液体の圧力を高めるステップと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに出口バルブを開けるステップと、
前記出口バルブを介して、前記放出チャンバから液体または液体の蒸気を放出するステップと、
前記放出チャンバからの放出された液体および液体の蒸気を受けるように位置する燃焼チャンバ内において、空気と共に前記放出された液体および液体の蒸気に点火するステップと、
第1の方向に実質的に反対の方向に、前記輸送体に対する推進力を発生するよう、前記燃焼チャンバから前記燃焼方法の結果生じる火炎および高温ガスを前記第1の方向に向けるステップとを備える、輸送体のための推進力を発生するための方法が提供される。
【0073】
この方法は、前記燃焼チャンバ内に位置する点火要素を介して、空気と共に前記放出された液体と液体の蒸気との混合物に点火するステップを更に備えていることが好ましい。
【0074】
この方法は、前記出口バルブから下流側に位置する位置にあるノズル要素を介し、燃焼チャンバにおいて、前記放出チャンバからの放出された液体および液体の蒸気を、所望する方向に向けるステップを更に備えていることが好ましい。
【0075】
この方法は、少なくとも1つの空気吸入部を介して、前記燃焼チャンバ内に空気を供給するステップを更に備えていることが好ましい。
【0076】
この方法は、前記出口バルブを開けるステップの前に、加熱要素を介して、前記放出チャンバ内に位置する液体を加熱するステップを更に備えていることが好ましい。
【0077】
本発明によると、本発明の装置を備える輸送体が提供される。
【0078】
前記輸送体は、無人航空機(UAV)であることが好ましい。
【0079】
本発明の第9の特徴によれば、ある容積の選択された消火液を保持するための放出チャンバと、
選択された液体を通過させ、前記放出チャンバに導入できる入口バルブと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、放出すべき前記チャンバ内の材料を放出できるように開くようになっている出口バルブと、
前記放出チャンバ内の圧力を高める手段とを備え、
前記出口バルブを介して、消火液および消火液の蒸気を放出するようになっている消火用装置が提供される。
【0080】
蒸気爆発方法により、前記液体と液体の蒸気を噴射することが好ましい。
【0081】
20よりも長い投射率を有するスプレーとして、前記液体および液体の蒸気を放出することが好ましい。
【0082】
100よりも長い投射率を有するスプレーとして、前記液体および液体の蒸気を放出することが好ましい。
【0083】
前記液体は、水を含むことが好ましい。
【0084】
この装置は、前記入口バルブを介して、前記放出チャンバに消火液を供給するための液体リザーバを更に含むことが好ましい。
【0085】
前記リザーバは、ポータブルであり、前記装置は、前記液体リザーバを保持するためのハンドルを更に備えていることが好ましい。
【0086】
前記液体リザーバは、配管装置を介して、前記チャンバに接続されており、前記配管装置は、別のチャンバに接続され、各チャンバは、それぞれの出口バルブを介して、消火液および消火液の蒸気を放出するようになっていることが好ましい。
【0087】
前記チャンバは、100mlの容量を有することが好ましい。
【0088】
本発明の第10の特徴によれば、
入口バルブを介して、チャンバに消火液を導入するステップと、
前記チャンバ内の液体の圧力を高めるステップと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、出口バルブを開けるステップと、
前記出口バルブを介して、前記チャンバから消火液または消火液の蒸気を放出するステップとを備え、
前記放出された液体および液体の蒸気を火に向けることにより、消火する消火方法が提供される。
【0089】
この方法は、前記出口バルブを開けるステップの前に加熱要素を介し、前記チャンバ内にある液体を加熱するステップを更に備えることが好ましい。
【0090】
この方法は、火災が存在することを示す所定の条件が満たされているかどうかを判断し、
前記判断ステップの結果に応答し、前記チャンバから、液体および液体の蒸気を放出するステップを更に備えていることが好ましい。
【0091】
この方法は、前記チャンバが固定されている液体リザーバを、火災の発生が識別された場所まで、ユーザーが搬送するステップを更に備えていることが好ましい。
【0092】
この方法は、火災の発生が識別されたときに、前記出口バルブから液体および液体の蒸気を自動的に放出するステップを更に備えていることが好ましい。
【0093】
本発明の第11の特徴によれば、ある容積の選択された引火性液体を保持するための放出チャンバと、
選択された液体を通過させ、前記放出チャンバに導入できる入口バルブと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、放出すべき前記チャンバ内の材料を放出できるように開くようになっている出口バルブと、
前記放出チャンバ内の圧力を高める手段とを備え、
前記出口バルブを介して、前記液体および前記液体の蒸気を放出するようになっている、パイロット火炎点火器を提供するための装置が提供される。
【0094】
前記液体と液体の蒸気を、蒸気爆発方法により、噴射することが好ましい。
【0095】
前記選択された液体は、液体燃料、例えばケロシンまたは石油を含むことが好ましい。
【0096】
この装置は、1回の出口バルブが開口する作動中に、出口バルブを介して放出される前記液体および液体の蒸気を燃焼するのにかかる時間よりも短いデッド時間を、連続する放出の間に有することが好ましい。
【0097】
前記放出チャンバは、前記パイロット火炎点火器のための短いデッド時間を提供するべく定められた内部容量を有することが好ましい。
【0098】
この装置は、前記入口バルブを介して、前記チャンバ内に液体燃料をポンピングするようになっているポンプを更に備えていることが好ましい。
【0099】
本発明の第12の特徴によれば、放出するべき、ある容積の選択された液体を保持するための放出チャンバと、
選択された液体を通過させ、前記放出チャンバに導入できる入口バルブと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、放出するべき前記チャンバ内の内容物を放出できるように開くようになっている出口バルブと、
前記放出チャンバ内の圧力を高める手段とを備え、
前記出口バルブを介して、前記液体および前記液体の蒸気を燃焼室に放出するようになっている、ガスタービンの燃焼室内の燃料を再点火するための装置が提供される。
【0100】
前記ガスタービン再点火装置は、蒸気爆発方法により、液体および液体の蒸気を放出するようになっていることが好ましい。
【0101】
この装置は、ガスタービンの燃焼チャンバ内に、複数が配置されていることが好ましい。
【0102】
この装置は、燃料を前記燃焼チャンバ内に噴射するようになっている複数の燃料噴射器を更に備えていることが好ましい。
【0103】
本発明の第13の特徴によれば、
放出チャンバ内に選択された液体を貯蔵するステップと、
前記チャンバ内の圧力を高めるステップと、
出口バルブを介して、前記燃料室に液体または液体の蒸気を放出するステップとを備え、
前記放出された材料は、前記燃料室内の燃料を再点火するようになっている、ガスタービンの燃料室内の燃料を再点火する方法が提供される。
【0104】
この方法は、燃料を前記燃焼チャンバ内に噴射するようになっている燃料噴射器のサイクル内の所定のポイントに一致するよう、前記放出チャンバからの液体、および液体蒸気の放出のタイミングを定めるステップを更に備えていることが好ましい。
【0105】
選択された前記液体は、液体燃料、例えば石油またはケロシンを含むことが好ましい。
【0106】
この方法は、蒸気爆発方法により、前記燃焼チャンバ内に液体および液体の蒸気を放出するステップを、更に備えていることが好ましい。
【0107】
本発明の第14の特徴によれば、少なくとも1つの薬剤成分を含む、ある容積の選択された液体を保持するようになっている放出チャンバと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、前記チャンバの内容物を放出できるように、開くようになっている出口バルブと、
前記チャンバ内の圧力を高める手段と、
所望の位置に本装置の出口オリフィスを位置決めする手段とを備え、
前記所望する位置において、前記チャンバから、液体または液体蒸気を放出し、よって薬剤をその位置に送り出すようになっている、薬剤を患者に送り出すための装置が提供される。
【0108】
この装置は、それが、前記患者内のどこに位置するかを判断するための手段を更に備えていることが好ましい。
【0109】
前記選択された液体は、液体の薬剤であることが好ましい。
【0110】
前記選択された液体は、溶液に溶解された薬剤を含むキャリア液であることが好ましい。
【0111】
本装置は、ターゲット位置に遠方端を位置決めできる可撓性シャフトを、更に備えていることが好ましい。
【0112】
この装置は、カメラを備えていることが好ましい。
【0113】
この装置は、光源を備えていることが好ましい。
【0114】
この装置は、チューブ状本体部分内に位置決めされるようになっており、本体の方法に応答して、チューブ状部分を移動させるようになっている本体部分を備えていることが好ましい。
【0115】
この装置は、前記装置が所望する位置にあるときに、無線信号を受信するための無線通信リンク受信機を備えていることが好ましい。
【0116】
この装置は、前記無線信号の受信に応答して、前記出口バルブを開けるための手段を備えていることが好ましい。
【0117】
本発明の第15の特徴によれば、放出チャンバ内に、少なくとも1つの薬剤成分を含む選択された液体を貯蔵するステップと、
前記チャンバの出口オリフィスを、所望の位置に位置決めするステップと、
前記チャンバ内の圧力を高めるステップと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、出口オリフィスを介して、前記チャンバの内容物を放出できるよう、出口バルブを開けるステップと、
所望する位置において、液体または液体蒸気を放出し、その場所に、薬剤を送り出すステップとを備える、薬剤を患者に送り出すための方法が提供される。
【0118】
本発明の第16の特徴によれば、
少なくとも1つの薬剤成分を含む、ある容積の選択された液体を保持するようになっている放出チャンバと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、前記チャンバの内容物を放出できるように、開くようになっている出口バルブと、
前記チャンバ内の圧力を高める手段と、
所望する位置に本装置の出口オリフィスを位置決めする手段とを備え、
前記所望する位置にて、前記チャンバから液体または液体蒸気を放出し、よって、閉塞部を開けるようになっている、患者内の管状要素の閉塞をクリアするための装置が提供される。
【0119】
前記管状要素により、前記液体および液体の蒸気を実質的に軸方向に放出するようになっていることが好ましい。
【0120】
前記装置の前記出口オリフィスは、前記装置の他の部分に対して、移動自在となっていることが好ましい。
【0121】
前記管状要素は、前記患者の動脈または静脈を含むことが好ましい。
【0122】
本発明の第17の特徴によれば、
放出チャンバ内に、ある容積の選択された液体を保持するステップと、
患者内の所望する位置に、前記チャンバの出口オリフィスを位置決めするステップと、
前記チャンバ内の圧力を高めるステップと、
あるパラメータが所定の条件を満たしたときに、出口バルブを介して、前記チャンバ内の内容物を放出できるようにするステップとを備え、前記チャンバから、液体または液体の蒸気を放出し、もって、前記患者内の管状要素の閉塞をクリアにする、患者内の管状要素の閉塞を解消するための方法が提供される。
【0123】
本発明の実施例によると、薬剤をユーザーに送り出すことができる方法および装置が提供される。1つ以上の薬剤成分を含むか、これら薬剤成分から成る液状の薬剤を、少なくとも部分的に蒸発させ、ユーザーの呼吸器内に進入できる蒸気および微細な液体粒子の形態で、この薬剤を放出する。
【0124】
本発明の実施例は、ハンドヘルドまたはデスクトップネブライザを提供するものであり、 このネブライザは、所定の時間にわたり、または所定の量の薬剤が送り出されるまで、薬剤の微細な粒子または蒸気を、自動的に送り出すことができる。本発明の別の実施例は、ユーザーのボタンが操作されると、ユーザーに対し、固定された投与量を送り出すのに使用できる。更に別の実施例は、針なし注射器を提供するものである。
【0125】
本発明のある実施例は、液体および液体の蒸気を、出口オリフィスから爆発させる放出チャンバを提供するものである。この蒸気爆発は、従来、公知の技術では得られなかった距離にわたり、極めて高速で、放出チャンバから目標物質をブラストアウトさせる効果を有する。
【0126】
蒸気爆発を使用すると、古典的な燃料噴射器よりも投射距離を、より長くできる。例えば本発明の実施例による液体および液体の蒸気の爆発の投射距離は、対応するチャンバの長さの約200〜300倍以上となり得る。古典的な燃料噴射器の場合、同様な値は、噴射チャンバのサイズの10〜2倍のオーダーとなる。その理由は、放射チャンバ内の液体の大きな圧力が発生し、次に、この圧力が解放される際に生じる蒸気爆発のダイナミックスによるものである。
【0127】
本発明の実施例によると、材料を放出するのに使用される蒸気爆発チャンバを使って、(液体として使用される)燃料を燃焼チャンバに噴射する燃料点火システムが提供される。噴射された燃料は、噴射器のノズルから出る前に、ほとんどが蒸気にされる(噴射される材料の約70%以上が燃料蒸気となる)。液体燃料は、空気(酸素)と反応できるように、まず蒸発させなければならないので、このことには大きな利点がある。公知の燃料噴射器を用いる場合、液体燃料をまず最初に噴霧し、その蒸発を促進しなければならない。
【0128】
本発明の実施例にかかわる噴射器は、容易に蒸発されるか、または既に蒸発した燃料を噴射するので、このステップは不要である。このことは、点火および燃焼方法を大幅に促進する。
【0129】
燃料噴射器として使用される本発明の実施例は、新しい噴射器は、ある量の燃料を噴射する公知の噴射器と比較し、同じ量の燃料を噴射するのに、かなり低い圧力しか必要としないという利点も有する。例えば、ディーゼルエンジンよりもかなり低い圧力で作動する従来の石油エンジンでは、噴射圧力は約100バールである。
【0130】
本発明の実施例によると、わずか10〜15バールの圧力しか必要としない燃料噴射器を提供できる。これによって、システムの製造および維持がより安価となる。
【0131】
本発明の実施例では、公知の従来の燃料噴射器よりも投射距離が長い燃料噴射器が提供される。これには、燃料の混合および蒸発がより高速で、かつ良好となるという利点がある。
【0132】
本発明の実施例では、これまで知られていた技術を用いた場合可能であったよりも、より高速かつより制御可能な状態でガスタービンの燃焼チャンバ内の燃料を再点火できるガスタービン再点火器が提供される。
【0133】
本発明の実施例では、点火装置のサイズおよび使用される燃料の量に対し、より高速かつより長い距離にわたって、ターゲットとなる燃料を点火できるパイロット火炎点火器が提供される。放出チャンバから燃料を繰り返し放出することによって、パイロット点火器を点火状態に維持できる。
【0134】
本発明の実施例では、輸送体に対して使用できる推進ユニットが提供される。この推進ユニットは、小さなスケール、更にナノスケールにさえもでき、更に公知の推進ユニットよりも軽量にできる。その理由は、輸送体を推進するのに使用される放射は、極めて強力であり、高速で、かつ長い距離にわたって、高いエネルギーで生じるからである。
【0135】
本発明の実施例では、ビルまたは輸送体の内部で使用するよう、ポータブルまたは固定とすることができる消火システムが提供される。この消火システムは、一旦トリガーされると、極めて高速で作動し、火災の中心に火災抑制剤を放出できる。火災を消火する際には、スプレーを使用すると有利であることが判っている。
【0136】
以下、添付図面を参照し、単なる例としての、本発明の実施例について、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】従来のガスタービン再点火器を示す。
【図2】材料を放出するための装置を示す。
【図3】材料を放出するための装置の別の実施例を示す。
【図4】材料を放出するための装置の更に別の実施例を示す。
【図5A】本発明の一実施例による装置を用いた内燃エンジンの吸入ステージを示す概略図である。
【図5B】本発明の一実施例による装置を用いた内燃エンジンの排出ステージを示す概略図である。
【図6】燃料噴射器を示す。
【図7】ガスタービンを示す。
【図8】ガスタービン再点火器を示す。
【図9】パイロット点火器を示す。
【図10】輸送体用推進システムを示す。
【図11A】燃焼チャンバ内での燃焼状況の経時変化を示すグラフである。
【図11B】燃焼チャンバ内での燃焼状況の経時変化を更に示すグラフである。
【図12】空気の入口を示す。
【図13】ハンドヘルドの消火器を示す。
【図14】スプリンクラータイプの消火器を示す。
【図15】ホースタイプの消火器を示す。
【図16】薬剤を送り出すために、本発明の一実施例をどのように使用できるかを示す。
【図17】内視鏡の一端を示す。
【図18】薬剤をどのように送り出しできるかを示す。
【図19】本発明の一実施例をポータブルネブライザとしてどのように使用できるかを示す。
【図20】説明した種々の実施例のチャンバをどのような形状にできるかを示す。
【図21】本発明の一実施例による投与量計量吸入器を示す概略図である。
【図22】本発明の装置に使用するチャンバの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
図面において、同様の符号は同様の要素を示す。
【0139】
図2は、本発明の一実施例に係わる蒸気爆発方法により、液体および液体蒸気を放出するための放出システム20を示す。相当の圧力および温度の変化に耐えることができる材料、例えば鋼鉄または他の剛性材料から、ほぼ円筒形状に放出チャンバ21が形成されている。本発明の実施例は、このような特定の形状を有する燃焼チャンバだけに限定されるものではなく、また、鋼鉄から形成された燃焼室だけに限定されるものではない。
【0140】
22で示すチャンバ21の第1端部領域には、選択された液体、例えば水が、関連する入口パイプ25を介して、チャンバの中心領域24に進入できるようにする入口バルブ23が設けられている。中心21の別の端部領域26には、出口バルブ27が設けられており、この出口バルブ22は、開放されると、ノズル領域28を介して、チャンバ領域24から材料を放出できる。
【0141】
放出チャンバ内に位置する電気ヒーターによって、加熱要素29が形成されている。この電気ヒーターは、オンにされるとヒーターが作動し、チャンバの領域24内に位置する液体材料を加熱するよう、電源(図示せず)に接続されている。
【0142】
本発明の別の実施例(その一部は後述する)として、放出チャンバ内の液体の圧力および温度を上昇させるのに、他の方法を適用することが可能であることは理解されると思う。
【0143】
図2に示すように、チャンバの中心領域24内の液体の圧力は、中心領域内の液体を加熱することによって上昇される。入口バルブ23は、開状態となると、中心領域が満杯となるか、または所定量の液体を含むまで、液状の水がチャンバに進入できる。
【0144】
入口バルブが閉状態となると、チャンバ内の液体部分をシールする。次に、加熱要素が液体を加熱するように作動する。その結果、熱膨張により液体は膨張し、チャンバ内の液体の圧力を上昇させる。この加熱は、加熱要素によって実行できるが、当然ながら、チャンバへの入口にある余熱された液体供給部を高圧にすることも可能である。この技術を採用する場合、入口バルブを通してチャンバ内に液体を供給するポンプ(図示せず)により、チャンバ内での圧力上昇を実行する。従って、水を加熱することによって、チャンバ内の圧力が上昇する。更に、温度も上昇する。
【0145】
出口バルブは、所定の圧力でブロー作動し、開状態となるように制御されている。圧力は、チャンバ内に位置するか、またはチャンバに近い1つ以上の圧力センサ、例えば圧力トランスジューサによってモニタできる。こうして、チャンバ内の水または他の液体は、(電気湯沸かし器のように)電気要素によって加熱され、大気圧における沸点よりも十分高い沸騰温度まで上昇する。沸点は飽和点を示し、この沸点は、使用する特定の液体の圧力と温度との関係によって決定される。放出チャンバ内の液体は、チャンバの出口バルブの下流側の圧力である圧力において、飽和点に近いか、それ以上にあることが望ましい。
【0146】
水を加熱する前に閉状態にある入口バルブと、システムが特定の圧力に達した場合にしか、圧力の解放を可能にできない出口バルブの双方によって、チャンバ内に水が維持されるので、温度は大気圧にて沸点よりも高く上昇する。トリガー圧力およびトリガー温度と、それぞれ称すことができるこの圧力および温度において、バルブは、圧力鍋と同じようにブロー作動する。
【0147】
次に、蒸気爆発が生じ、この爆発によって液体の蒸気(液体が水である場合、液体の蒸気は水蒸気となる)がチャンバから排出される。出口バルブが開状態となっていると、水蒸気と水の混合物が、開口部28を介して放出される。
【0148】
出口バルブが最初に開状態となると、放出すべき第1の相は、スプレー内の粉状化けされた液状の液相である。この放出は、出口バルブが開状態となった後、マイクロ秒の単位で生じる。液体を、このように極端に短い時間で放出することには、特定の利点がある。数マイクロ秒後で、液体と液体の蒸気との混合物が放出され、その数マイクロ秒後に、若干少ない液体と、より多くの蒸気を含む混合物が放出される。
【0149】
しかしながら、同じ周辺圧力に対する、より高いトリガー温度を使用すると、このような初期の液体の放出を変わったり、または全く排出がなくなったりすることがある。他方、トリガー温度を下げると、噴霧化された液体だけが放出されるような状況が生じ得る。このように、放出チャンバに関連する1つ以上のパラメータを変えることにより、液体と蒸気との比率を選択することができる。温度または圧力のような1つ以上のパラメータを選択的に変えても、放出される材料内の粒径を選択的に制御できる。
【0150】
放出チャンバから材料が放出されるにつれて、圧力は低下する。圧力が閉鎖圧力と称すことができる周辺の圧力、すなわち第2の所定の圧力まで圧力が低下すると、出口バルブが閉じられ、入口バルブが再び開けられ、新しい液体材料がチャンバ内に導入される。このことは、サイクルを再スタートさせる。従って、新しく供給された液状の水を加熱することによって、一旦十分な圧力が発生すると、出口からの水蒸気/水の混合物、または他の液体/液体の蒸気の繰り返しサイクルが終了する。
【0151】
チャンバのサイズは異なっていてもよいし、例えば直径が1cm未満でもよい。例えばチャンバはナノサイズからミリの大きさの直径でもよい。これとは異なり、チャンバは、直径が1m以上でもよい。直径のサイズが大きくなるにつれ、圧力を増すのにかかる時間も適当に長くなるので、ブラスト(爆発的吹き出し)の頻度も少なくなる。特定の用途に従って、チャンバのサイズを大きくするにつれ、より大きいポンプまたはバルブが必要となることは分かると思う。
【0152】
チャンバから放出される液体の比率を最大にするように、入口バルブを制御できることが好ましい。この比率は、入口ポートの直径を、出口ポートまたは排出ポートの直径にほとんど等しいか、または全く等しくなるように選択することによって達成できるが、このことは、過度に大量の液体がチャンバ内に進入しないようにしなければならない。
【0153】
図3は、図2に示した実施例と共通する多くの特徴を合わせ持つ放出装置の別の実施例を示す。図3に示す本発明の実施例は、熱交換器30を使用しており、この熱交換器は、チャンバ内の液体を加熱するよう、チャンバの側壁部分を囲んでいる。このように、液体を加熱する方法は、放出する液体が水ではなく、後に燃焼される燃料であるときに特に有利である。出口バルブの下流側位置において、このように熱を発生し、熱交換器を加熱し、よって、チャンバ内の液体を加熱することが可能である。
【0154】
チャンバ内に、液体をより高速で再充填できるようにするために、図4に示すように、チャンバにリターンポートおよびバルブを追加できる。入口バルブ404が補充のために開とすると、このリターンバルブとバルブ401により、チャンバ402内の液体および蒸気の一部が、リザーバ403に戻ることが可能となる。
【0155】
リターンポートおよびバルブ401を追加することは、チャンバ402に十分な新しい液体を追加し、放出される材料を補償し、連続して放出した後に、チャンバ402内の液体の不足の解消を助けることができるはずである。リザーバとして(消火スプリンクラーのような)パイプラインを使用する場合、リターンバルブ401に接続されるリターンポート406を供給パイプライン403の低い圧力の別のパイプラインに接続してもよいし、周辺圧力にしてもよい。
【0156】
本発明の一実施例では、内径が250mmであり、長さが32mmであるチャンバが使用される。このチャンバ内に、2つ以上の別個のヒーターを挿入できる。まず最初に、チャンバの壁の近くに位置する螺旋コイルは28mmの長さ、21mmの外径、15mmの内径、および500Wのパワーを有する。第2に、チャンバの中心近くに位置するカートリッジヒーターは、長さが25mmであり、直径が1cmであり、200Wのパワーを有する。
【0157】
この仕様では、500Hzまでの水蒸気/水スプレーの反復放出が可能である。より高い周波数になると、純粋な液体の噴霧化されないジェットが生じる。その理由は、ブラストごとに、再充填のためにチャンバへ送られる低温水を熱により沸点まで加熱するのに十分な時間がないからである。例えば、放出の間のチャンバ内の加熱時間を短くするのに、より高い温度、例えば約75℃にリザーバを維持でき、その後、放出の頻度を多くすることが可能となる。
【0158】
図5は、燃料噴射ユニット50としての本発明の別の実施例の用途を示す。ここでは(図5Aに示される)吸入ステージと、(図5Bに示される)排出ステージにある燃焼エンジン51が示されている。この燃焼エンジンは、円筒形の燃焼チャンバ52を備え、この燃焼チャンバは、チャンバに密に嵌合し、チャンバ内でスライドするようになっているピストン53によって、第1端部が閉じられている。ピストンが運動すると、チャンバの平坦部54とピストンの燃焼表面55との間で、ピストン52内の容積が変わる。ピストンの反対側は、ピストンロッド57を介して、クランクシャフト56に接続されており、このクランクシャフトは、ピストンの往復運動を回転運動に変換するようになっている。
【0159】
図5に示す燃焼エンジンは、4ストロークの内燃エンジンであるが、本発明の実施例は、かかるタイプのエンジンのための燃料噴射器の用途だけに限定されない。4ストローク内燃エンジンは、本明細書では、単なる例として示したにすぎない。ピストンが第1の下方へ移動するストローク時に、燃料噴射器50を介して燃料チャンバ52内に燃料が噴射される。
【0160】
従来の燃料噴射器は、微細に噴霧化されたスプレーを発生するのに、電子機械式ノズルおよびあらかじめ加熱された燃料を使用している。燃料は、チャンバ内で加圧され、電子−磁気コイルは、そのシールの針を上昇させ、吸入バルブを介して、ノズルの開口部から燃料を圧縮できる。
【0161】
このような加圧された液体を解放するタイミングは、電子回路によって制御される。このような制御は、エラーが生じやすく、多数の作動部品を必要とする材料のコストが高くなり、かつ複雑になるという欠点を有する。
【0162】
本発明の実施例では、公知の燃料噴射システムを本発明の放出チャンバ50に置き換えることによって、この欠点を解消しており、この放出チャンバ50は、上に述べたように、液体燃料の蒸気を燃焼室52に放出するようになっている。蒸気にされた燃料および液体燃料は、スパークプラグ58のような点火要素によって点火される。
【0163】
図6は、本発明の一実施例に係わる燃料噴射システムを、より詳細に示している。燃料噴射器50は、スペース24を構成する放出チャンバ21を備え、このスペース24内に、入口バルブ23を介して液体燃料を入力できるようになっている。本発明のこの実施例では、リターンポートとバルブとを一体化し、チャンバ内への液体の再充填をより高速にできるようになっている。本明細書に説明した任意の実施例では、かかるリターンポートとバルブとを使用できることが分かると思う。
【0164】
入口バルブを通して液体を導入した後、放出チャンバ内の液体を加熱するのに、加熱要素29が使用されている。所定の圧力に達するまで、チャンバ内の液体を出口バルブ27が制限するようになっている。この圧力は、大気圧または放出された材料の下流側(すなわち図6に示される左側)で生じる圧力よりも高くなっている。このように、出口バルブが開とされるときに生じる沸点の温度よりも高くなるよう、チャンバ内の液体を加熱できる。
【0165】
出口バルブが解放状態とされると、圧力は低下し、放出チャンバ内の液体は、自然の沸点よりも高い温度となることに起因し、急激かつ爆発状態で沸騰する。所定の液体、例えばケロシンおよびガソリンでは、流体自身は異なる炭化水素を含む多成分燃料であることが理解できると思う。
【0166】
例えばガソリンの場合、沸点は(最も揮発性の高い成分の場合)117℃から(最も揮発性の低い成分の場合)200℃の範囲となり、ケロシンの場合、沸点は150℃〜300℃の範囲となる。性能を最適にするには、温度を、より高い沸点よりも高く維持し、すべての成分が確実に蒸発するようにしなければならない。当然ながら、このようにすることは不要である。
【0167】
例えば、どの成分が主要な濃度を有しているかが判かっている場合、燃料の他の部分が沸騰することを保証する温度に固定するのに、その成分の沸点を使用できる。所定の同じ圧力に対し、温度がより高くなる場合、スプレーはより微細となり、放出される材料のうちの蒸気の比率は、より大きくなることが理解できると思う。
【0168】
ここに示した温度は、大気圧における対応する沸点(飽和点)の例にすぎない。これら値は、より高い温度では、極めて異なることになり、作動圧力を得るのに、材料の熱物理学的特性の既知のデータベースを参考にできる。ノズル60は、ネック領域28を狭くし、開口部61を通って、燃焼エンジンの燃焼室52内に、液体および液体の蒸気が放出される。
【0169】
燃料を指定された温度にするのに必要な熱の一部または全部を、エンジンから発生される熱から得ることができる。作動時に極めて高温となるエンジンの燃焼室内、またはその近くに燃料噴射器を設けることができるので、蒸気爆発チャンバがエンジンから、必要な多くの熱を吸収するように、蒸気燃焼室を設計できる。この熱または熱エネルギーは、チャンバ内まで延びる熱交換器により、噴射器のチャンバの壁を通して、またはこれら技術の組み合わせにより得ることができる。
【0170】
更に、入口燃料パイプは、エンジン本体の高温部品を貫通または隣接し、燃料を、指定された温度近くまで加熱できる。しかしながら、パイプライン内の望ましくないキャビテーションが発生することを防止するために、この温度は、燃料の最高温度成分の飽和温度より低く維持することが好ましい。
【0171】
燃料噴射システムに、上で述べた蒸気爆発技術を適用する利点は、装置の放出量を大幅に高め、従って、高いパワー出力に対するエンジンの応答を大幅に高めることができることにある。従来技術によれば、平均的なサイズのファミリーカーに対する、正常な作動レンジは、2000〜6000rpmであり、フォーミュラIの自動車では、恐らく17000rpmに達する。
【0172】
本発明の実施例によれば、短い放出段階と、その次に、より長い再充填、および再加圧段階が続く燃料噴射器の1サイクルにかかる時間は、約4ミリ秒以下となり得る。従って、燃料噴射レートは、毎秒約12000回である。
【0173】
一般的な4ストロークエンジンでは、1回の噴射につき、一般に2回の回転が生じ、従って、理論的には、24000rpmに達し得る。従って、エンジンが分解することを防止するために、放出方法を低速にするよう、ある形態の制限条件を利用できる。
【0174】
放出方法の1つのパラメータまたは多数のパラメータ、例えば排出バルブが開状態となっている時間、燃料噴射チャンバの温度および圧力、およびエンジンの燃焼室の圧力を選択することにより、放出器のチャンバから、燃料が放出される過程を制御できる。所望する結果を得るのに、他のパラメータを制御することも可能であることが理解できると思う。
【0175】
燃料噴射目的のために、蒸気爆発技術を応用する別の利点として、次のことを挙げることができる。
1.ノズルから生じた直後に、燃料蒸気により、燃料スプレー容積のうちのかなりの部分を取り込むことができる。これにより、燃料の点火および燃焼レートが促進されるので、エンジンの加速をより高くすることができる。
【0176】
2.従来のほとんどの噴霧器と比較して、燃料スプレーの粒径を容易により小さくすることができる。そのため、点火および燃焼速度を高め、更にエンジンの加速を促進できる。粒径がより小さくなったことにより、燃焼をより完全にし、汚染物の量をより少なくし、燃料の経済性をより良好にすることもできる。
【0177】
3.蒸気の爆発を使用するため、装置の放出量を大幅に高め、したがって高いパワー出力に対するエンジンの応答を大幅に高めることができる。
【0178】
4.ノズル内部の容積の多くの部分は、燃料の蒸気であり、蒸気の密度がより小さいことに起因し、より低い圧力を使って、同じ放出速度で燃料を移動させることができるので、従来の噴霧器よりも低い圧力で仕事を実行できる。液体を噴霧化する際に、気化エネルギーに対する熱エネルギーの比が高いことを活用することにより、これらより低い圧力での放出を実際に達成できる。そのため、次に、エンジン効率を高めることができる。その理由は、ほとんどのケースにおける熱エネルギーを燃焼自体から容易に得ることができ、かつ冷却システムによる損失として、通常排出されており、このことは、純粋に機械的エネルギーを利用することと比較し、エネルギー損失をより少なくできるからである。
【0179】
5.極めて簡単なノズル構造、例えば平面オリフィスを用いた場合でも、スプレーに対する極めて広い角度を利用できる。このような広角のスプレーは、空気との混合をより良好にし、燃焼レートをより大きくすることができるので、ほとんどの燃焼システムにおいて極めて望ましい。
【0180】
6.燃料の熱膨張単独、またはこれと燃料ポンプの供給圧力との組み合わせにより、噴霧器内で圧力を発生できる。従って、より低い機械エネルギーで済む。
【0181】
図7は、ガスタービン再点火器を設けるのに、本発明の一実施例をどのように使用できるかを示している。図7は、3つのメインセクションを含むガスタービン70を示す。これらメインセクションは、コンプレッサ71と、燃焼器72と、タービン73である。
【0182】
コンプレッサの作用により、エンジン内に外気が吸入され、この空気は、コンプレッサのブレードの運動により機械式に圧縮されるので、空気の圧力および温度は、容積の対応する減少と共に高まる。従って、空気を圧縮するのに使用される機械エネルギーは、圧縮された空気の形態をした運動エネルギーに変換される。
【0183】
次に、燃焼セクション内に圧縮空気が移動され、燃料が燃料噴射器74を介してこの燃焼セクションに噴射される。この燃料噴射器は、従来タイプのものでもよいし、または上で述べたタイプのものでもよい。
【0184】
次に、本発明に係わる燃料再点火器75を使用し、燃料に点火し、化学エネルギーを、高温膨張ガスの形態をした熱エネルギーに変換する。連続した燃焼を保証するために燃焼セクションには燃料が繰り返し噴射される。噴射を繰り返す代わりに、常に燃料を噴射してもよい。
【0185】
燃焼チャンバ66により、圧力が実質的に一定に維持される間、ガスの容積が増加市、温度は高くなる。高温の膨張ガスの熱エネルギーは、タービンのフィン77に作用するガスにより、タービン73が回転される際に、機械エネルギーに変換される。
【0186】
次に、ガスタービンの前方端部78から高温排出ガスが排出される。出力タービンはコンプレッサのブレードに接続されているので、空気の圧縮パワーを供給するのに役立つことができる。
【0187】
上記のように、(例えば図1に示されるような)公知の再点火装置は、ガスタービンの燃焼チャンバ76内の材料を再点火するための複雑なプラズマ装置を含んでいる。この燃焼チャンバは、有利な態様で、チャンバ全体に分散した多数の燃料噴射器を含むことができ、噴射器の各々が噴射する燃料を再点火するのに、1つ以上の燃料再点火器を設けてもよい。
【0188】
これとは異なり、噴射器ごとに1つの再点火器が必要となることがないよう、燃料噴射器の位置を注意深く設計することができる。ガスタービンは、多くの用途、例えば宇宙/航空機業界におけるジェットエンジン、地上車両用エンジンだけでなく、地上をベースとするガスタービンを使用する発電用タービンとして使用できる。地上をベースとするガスタービンの一部は、低窒素酸化物(NOx)条件でのタービンの稼働を助けるための点火技術を使用できる。これによって、タービン内での燃焼の安定性を助けることができる。
【0189】
図8は、ガスタービン再点火器80を、より詳細に示す。概ね円筒形状となっている外側電極81は、放出チャンバのための側壁を形成しており、第1端部領域82では液体燃料の入口が入口バルブ83を通して、チャンバに進入している。入力燃料は、中心チャンバ領域84に進入し、内側電極85内の孔を通過するように流れる。
【0190】
本明細書で説明する他の実施例と同じように、チャンバへの液体の再充填をより高速にできるよう、本発明のこの実施例では、リターンポートとバルブとを一体にできることに留意することが重要である。放出チャンバの別の端部86には、入力液体燃料の流出を防止する出口バルブ87が設けられている。
【0191】
この出口バルブ87が開にされると、ノズル88を介して、液体および液体の上記が放出される。外側電極と内側電極とを中心半導体ペレットが分離しており、このペレット要素89は、チャンバ内の液体燃料を加熱するよう、帯電粒子を形成するのに使用されている。1つ以上の圧力センサが、チャンバ内の圧力が所定の値に達したことを検出すると、センサに電流が流れる。
【0192】
本発明の再点火装置は、連続的に発生される短い火炎ではなく、長い火炎が、短時間のシャープなバーストとして発生されるので、従来の再点火装置よりも有利であり、短い火炎を連続的に発生することは無駄であり、かつ効率的でない。更に、スプレー内の極めて微細な粒子および燃料蒸気の高い濃度によって、再点火し、火炎をオン状態に維持することがより容易となる。
【0193】
図9は、パイロット火炎点火器が設けられている本発明の別の実施例に係わる蒸気爆発技術の一応用例を示す。図9は、パイロット火炎点火放出システム90を示す。ボイラーまたは炉、または家庭用機器または家庭用ガス用途のような多くの用途で、火炎点火システムが必要である。従来の点火システムは、燃料に点火するスパークを発生させる電子回路から一般に構成されている。
【0194】
パイロット火炎点火器90は、入口バルブ23を通して導入された液体を貯蔵するための燃料チャンバを備え、電気ヒーター29のような加熱要素は、上記のように流体を加熱し、加熱された流体は、チャンバ内で所定のスレッショルド圧力に達したとき、出口バルブ27を通って出ることが可能となっている。蒸気爆発プロセスが短時間で繰り返されたときに、液体燃料および液体燃料の蒸気は、ノズル91を通して繰り返し放出される。蒸気爆発により燃料蒸気と液体燃料とは長い投射距離、すなわち、ノズル91から長い距離にわたって放出される。
【0195】
点火可能な材料を更に点火するために火炎92が常に生じるよう、まず点火要素(図示せず)によりこの燃料に点火できる。パイロット火炎のための放出システム90は、繰り返し放出方法を実行することが理解できよう。出口バルブが開にされた直後の初期段階の間、放出される材料は実質的に粉状にされた液体の形態となっている。
【0196】
その後、数十マイクロ秒だけ、放出材料は、液体および液体の蒸気の混合物となっている。その後、放出材料のほとんどは、圧倒的に蒸気となる。出口バルブが閉じられ、放出チャンバへの再充填が可能となると、火炎は落ち着いた状態とはならない。出口バルブが閉じられることによって生じるデッドタイムは、放出チャンバの再充填を可能にするのに十分長く、火炎がすべての燃料を燃焼させ、火炎がなくなる程度には長くならないよう選択されている。その結果、パイロット点火器の火炎は上下に揺らぐことが認識できるような状態となり得るが、火炎は消えることはない。
【0197】
図10は、輸送体10を推進するのに放出チャンバ10を使用する本発明の別の実施例を示す。輸送体10は、無人の航空機(UAV)として示されており、カメラ、センサ、通信機器、または他の貨物を搭載できる遠隔パイロット操作または自動パイロット操作の航空機である。本発明の実施例は、他のタイプの輸送体を推進するのにも使用できることは理解できると思う。
【0198】
UAVは、輸送体のための上昇力を発生させる2つの翼セクション10を備える輸送体本体10を備えている。燃焼室10内の放出チャンバシステム10から放出される液体燃料および燃料の蒸気を燃焼させることによって、推進力が得られるようになっている。UAVのタイプは多数あり、その一部のタイプは、サイズが小型の飛行機であり大量の情報を記憶し、基地局に中継できる高い高度を飛行するものである。
【0199】
人ひとりで運ぶことができ、手で発射するのに十分軽量となっている航空機もある。マイクロ飛行機とは、15cm(6インチ)よりも大きい寸法を有しない飛行機のことである。本発明の実施例は、このマイクロ飛行機またはそれより小さい飛行機にも適用できる。
【0200】
材料放出チャンバ10は、上に説明したように、ノズル10から液体燃料および液体燃料の蒸気を放出する。空気吸入部96内に空気が吸入され、入口通路10を通過し、この通路において、この空気は燃料と混合され、混合気は、点火要素10、例えばスパーク点火器によって点火される。燃焼室10は、燃焼方法を制限し、少なくとも1つの出口オリフィス10を有し、この出口オリフィスを通って、燃焼した燃焼ガスおよび火炎が出ることができるようになっている。高温排出ガスの膨張によって推進力が得られる。蒸気爆発チャンバ10は、装置の全体の長さが、5〜10cmのオーダーとなるように、小さい寸法となっている。
【0201】
加熱要素のためのエネルギー源を提供し、必要な場合に点火要素10を制御するためのソーラーパネル1100が設けられている。これとは異なり、搭載軽量バッテリーを、電源とすることができる。更に別の例では、排ガスからの連続的な熱交換により、入力燃料を加熱するためのエネルギーを提供するようになっている。
【0202】
図11は、図10に示した蒸気爆発チャンバ内での1サイクルを示す。この例では、蒸気爆発チャンバ10および燃焼チャンバは、直径が、それぞれ330ミクロンおよび370ミクロンであり、長さが、それぞれ300ミクロンおよび700ミクロンとなっている。蒸気爆発チャンバ内で、炭化水素の液体燃料を蒸発させ、ノズルを通し、チャンバから燃焼室へ蒸気を噴射し、燃焼室にて、空気と混合する。
【0203】
図12に、より明瞭に示されているように、別の入口を通して空気が導入される。図示のように、前のサイクルからの熱、または火炎とすることができる点火装置を介し、またはスパーク点火器のような別個の点火要素を介して、燃焼をトリガーし、数マイクロ秒の間で火炎が燃焼チャンバを満たす。図では、時間に対する火炎の発生および対応する温度変化を示すよう、温度のカラー/シェード輪郭が異なる時間にて示されている。
【0204】
燃焼チャンバ内の安定した火炎を維持するために、燃料を補充するための各サイクルの間の数ミリ秒の間、圧力解放出口バルブを閉じなければならないので、燃焼チャンバ内に燃料を放出するのに、2つ以上、ほとんどは3〜10個とすることが好ましい蒸気爆発装置を使用することが望ましい。この蒸気爆発装置は、噴射時間の開始時に空間内の同一ポイントまたは同一ポイントに近いポイントにおいて、同一方向に、かつ互いに同じ時間または互いに選択された遅延時間で噴射するようにされている。
【0205】
図13は、本発明の別の実施例に係わる蒸気爆発方法により、火災抑制液および火災抑制液の蒸気を放出するための放出システム1300を示す。消火器1300のネック領域1302には、放出チャンバ1301が形成されており、大量の液体燃料抑制剤、例えば水が、流体リザーバ1303に設けられている。火災が生じたと判断されたとき、ユーザーにより、消火器を起動するのにハンドル1304が使用される。ハンドルが起動されると、入口バルブ1306および出口バルブ1307の開閉を制御するためのドライブユニットを起動させるように、制御ユニット1305をスタートさせる。
【0206】
チャンバへの液体の高速再充填を可能にするよう、リターンポートとバルブとを、このシステムに組み込むこともできる。図13における矢印Aが示す方向に、チャンバ1301から液体および液体蒸気が放出される。チャンバ1301内の電気ヒーターを制御する電源1308を制御するのに、制御ボックス1305からのドライブ信号も使用される。
【0207】
上記のように、放出チャンバ1301内の液体の圧力を増すのにヒーターを使用できる。チャンバ内で液体を短時間で補充するように、液体リザーバ1303も加圧される。この圧力は、放出チャンバ内の液体の圧力を大気圧よりも高くするために、リザーバ内の圧力を高くすることができる。
【0208】
図14および図15は、火災抑制液および火災抑制蒸気を放出するために、蒸気爆発装置を使用する本発明の別の2つの実施例を示す。図14は、スチームスプリンクラータイプの消火器として具現化された蒸気爆発装置を示す。1つ以上の蒸気爆発装置を使用した火災抑制/消火スプリンクラーが、ビル内に固定され、このスプリンクラーは、火災検出システムによってトリガーされるようになっている。
【0209】
ビル内のすべてのスプリンクラーに対して、1つの中央火災検出システムを使用してもよいし、各スプリンクラーが個々のセンサを有し、火災が存在する場所に限って火災抑制剤を解放できるようにしてもよい。このシステムは、ゾーンごとに設けてもよい。火災が検出され、消火液が水であるとき、スプリンクラーは、所定の周波数の繰り返しパルスにて、スチームと水粒子のミストを環境内に放出する。この周波数の値は、設計および特定の応用例に応じて、0.5〜5Hz、またはそれ以上の大きさにすることができる。
【0210】
図14に示されているように、スプリンクラーはリザーバ1401と、前に概略を述べたチャンバに従った蒸気爆発チャンバ1402と、必要な周波数のブラストに対して、十分迅速にチャンバを再充填するのに役立つよう、火災抑制液に圧力を加えるためのオプションとしての小型ポンプとから成っている。単数または複数のスプリンクラーが設けられた環境内のスプリンクラーのすべて、または特定のグループに、単一のリザーバを接続してもよい。更にかかるリザーバを加圧水タイプとし、可能な場合には各スプリンクラー用のポンプを不要にできる。
【0211】
図15は、火災抑制液を放出するためのシステムを示す。この実施例では、ホースタイプの消火器内で蒸気爆発装置が使用されている。ホースパイプ1502の先端には、蒸気爆発チャンバ1501が取り付けられており、このホースパイプ1502は、加圧リザーバとして作動すると共に、火災抑制液を蒸気爆発チャンバ1501に供給し、チャンバは、スチームを繰り返し送り出すように、ブラスト動作する。蒸気爆発装置に取り付けられたバッテリーまたはホースに沿って、並列に取り付けできる給電ライン接続部のいずれかにより、蒸気爆発装置に給電できる。
【0212】
火災抑制液を放出するためのシステムとして開示されている本発明の3つのすべての実施例では、火災抑制液を水としてもよいし、火災を抑制するための他の任意の適当な液体とすることもできる。
【0213】
この蒸気爆発装置は、従来の水を使った火災抑制装置よりも、多くの点で有利である。まず第1に、蒸気は等価的な量の水よりも、表面積がより広く、従って蒸気は、より多くの熱を吸収でき、火災をより良好に抑制できる。更に蒸気は、ミストのように、火災を包み込むことができ、火災への酸素流を制限し、火災を更に抑制できる。これとは対照的に、水は、火災の上を直線状に流れるだけで、極めて短時間しか酸素流を制限できない。
【0214】
更に別の利点として、水ではなく、蒸気爆発装置が発生する水蒸気によって、火災を消すには、少ない量の水を使用するだけでよいということを挙げることができる。少ない量の水しか使用しないことは、経済的かつ環境的に有利であるだけでなく、火災が生じた環境への破壊を少なくできることも意味する。
【0215】
図16は、医療薬剤の送り出し装置および方法、または患者内の閉塞部を開けるための装置および方法を提供するために、本発明の別の実施例に従って、蒸気爆発技術をどのように使用できるかを示している。図16は、可撓性で、操作可能なシャフト1601を有する内視鏡1600を示しており、このシャフトは、人体のうちの腸内路、または呼吸器系または心臓血管系内に挿入することができる。
【0216】
可撓性シャフト1601の遠方端領域1602は、可撓性先端1603を含んでいる。この先端により、端部ストッパー装置1700(図17には、より明瞭に示されている)を患者の体に対して操作することが可能となると共に、外科医によってシャフトの端部を位置決めできるようになっている。シャフト1601の近接端部1604は、内視鏡本体部分1605として終端しており、この本体部分1605は、アイピース1606と、補助機器のための開口部1607とを備えている。
【0217】
別のケーブル1608が、内視鏡の本体1605を入力接続部1609に接続されており、この接続部は、内視鏡に必要な光、空気、水または他の必要な有用物を供給するようになっている。
【0218】
図17に、より明瞭に示されているように、内視鏡1700の端部は、外科医のために内視鏡の端部を囲む領域を照明するためのライト1701と、患者の領域の可視画像を提供するためのカメラ1702とを備えている。カメラ1702からの信号は、アイピース1606へ提供されるか、またはLCDスクリーンのようなディスプレイに画像をディスプレイするよう、接続部1069または開口部1607を介して、信号を出力できるようになっている。
【0219】
内視鏡1600の端部1700は、図18から、より明瞭に判るような薬剤送り出しチャンバ1800も備えている。コントローラ1703を介して、薬剤送り出しチャンバ1800に、電力および制御信号が供給される。多くの方法により、チャンバ1801から放出される液体蒸気材料を使用できる。
【0220】
これら方法のうちの1つとして、特定場所に薬剤を分配すべき位置へ内視鏡を操作できる。次に、入口バルブ1802を開け、次に、液体薬剤の温度および圧力まで上昇させるように附勢されたヒーターユニット1803により、液体をチャンバ1801に入力してもよい(または既に挿入されていてもよい)。次に、圧力または温度が所定の値に達すると、薬剤を小出しし、蒸発した薬剤および液体薬剤を、所望する場所へ放出できる。上記実施例のいずれにおいても、同じように、所望すれば放出サイクルを何回も繰り返すことができる。
【0221】
別の例として、動脈または静脈などにおける閉塞部を開けるのに、液体および液体蒸気の放出された材料を使用できる。この点に関し、閉塞部(例えば動脈壁への付着物に起因する血流障害のような)閉塞部での血流内で、本発明の実施例を使用できる。この場合、上記技術により放出される水をベースとする溶液、または他の天然溶液を閉塞した静脈/動脈のラインに沿って長手方向に加え、よって閉塞部の閉塞を解消できる。
【0222】
この方法は、閉塞通路を開けるため、膨張チューブ/バルーンを使用する現在の方法の代わりに使用できるし、このような現在の方法と共に使用することもできる。
【0223】
図16に示す本発明の実施例によれば、医者によって操作されるカメラが、ナノ蒸気爆発装置に取り付けられ、病気が生じている正しい場所に薬剤を正確に挿入するのに使用できる。
【0224】
本発明は、腸内の使用だけに限定されるものではなく、主気管の呼吸器系および血液環境でも使用でき、更に心臓血管系でも使用できる。
【0225】
以上、内視鏡に類似した装置の使用に関連し、図16〜図18に示した本発明の実施例について説明したが、本発明の実施例は、これらだけに限定されるものではない。本発明の実施例は、ピル状の装置の形態をした装置を挿入し、例えば血流内または腸管路を通して自ら移動し、ピル状装置を染料および走査システムと共にX線装置によりトラッキングし、装置がどこを移動しているかをオペレータがスクリーンで見るようにすることによって、薬剤を所望する場所へ送り込むのに、適用できる。
【0226】
次に、装置が所望する場所に位置しているかどうかを、医者が判断するときに、人体内の装置に無線信号を送ってもよい。薬剤を放出するか、または単に液体を放出し、所望する場所で薬剤を送り込むか、または閉塞した通路を開けるようにする。
【0227】
本発明の蒸気爆発装置の別の応用例を、呼吸器用薬剤送り出しシステムの一部とすることができる。この場合、多数の呼吸器疾患、例えばぜんそく、膿胞性繊維症、慢性閉塞肺疾患(COPD)を治療するために、呼吸器系に直接薬剤を送り出すのに、呼吸器用薬剤送り出しシステムを使用する。
【0228】
更に、最近では、システマチックな薬剤治療のための入口門として肺を使用できることが認識された。例えば吸入インシュリンを吸入させることによって、インシュリンを投与でき、このような投与方法は、糖尿病の治療におけるインシュリン注入に対する日常的な別の治療となる可能性が高い。
【0229】
現在、呼吸器用薬剤送り出しシステムの主なタイプは3つ存在する。これらのシステムとして、投与量計量吸入器、乾式粉末吸入器およびネブライザがある。加圧式投与量計量吸入器は、計量された容積の加圧流体を患者の気道内に解放するものであり、解放時に流体は、高速で蒸発し、吸入に適した乾燥した状態で、薬剤を残すようになっている。
【0230】
乾式粉末吸入器は、乾燥した粉末を含み、患者が吸入器を通して空気を吸入する際にこの粉末が、移動するようになっており、患者の吸入力によって乾燥した粉末が患者の肺の中に送り込まれるようになっている。投与量計量吸入器と乾燥粉末吸入器の双方は、1回の吸入で所定量の薬剤を送り出すようになっており、患者は、1日のうちに所定量の投与量を取り込むようになっている。
【0231】
第3のタイプの呼吸器用薬剤送り出しシステムは、ネブライザである。このネブライザは、液状の形態で保管されている薬剤を、エアゾールまたはミストとして知られる薬剤粒子のガス状サスペンジョンに変換するものである。患者がこのミストを吸入すると、薬剤が呼吸器系に送り込まれる。ネブライザには、主に2つのタイプ、すなわちジェット式ネブライザと超音波ネブライザがある。
【0232】
ジェットネブライザは、薬剤リザーバで負圧を発生させるよう、狭い開口部を通して加圧されたガスを加え、リザーバから薬剤の溶液の粒子を引き寄せ、患者が吸入するミストを形成することによって作動する。一方、超音波ネブライザは、高速で振動するピエゾ電気結晶体を使用でき、振動するピエゾ電気結晶体は液体源を形成し、この液体源からミストが生じるようになっている。
【0233】
ネブライザは、約15分間にわたり、リザーバの薬剤をミストに低速で変換し、この間、ユーザーはミスト状の薬剤を連続的に吸入することになる。ネブライザは、他のタイプの薬剤送り出し方法よりも、より強力な投与量の薬剤を送り込むことができるので、深刻な問題を抱える患者に対して使用されることが多い。
【0234】
本発明の一実施例によれば、蒸気爆発装置は、リザーバから液体を取り込み、蒸気ミストを出力する。リザーバは、薬剤を含むので、薬剤を吸入に適したミストの形態で投与できる。爆発装置は、短時間のシャープなバースト状態で、蒸気(またはミスト)を放出する。解放される蒸気の容積は、蒸気爆発チャンバに入れられる液体の量に対応する。従って、投与量計量吸入器と同じように、蒸気の形態の薬剤の1つ単位を投与するのに、本装置を使用できる。
【0235】
本発明の一実施例の別の特徴は、この実施例が極めて迅速に連続しながら、蒸気のバーストを連続的に放出できることである。従って、ネブライザのような固定された時間、薬剤を連続的に投与するのに、本発明の実施例を使用できる。更に、蒸気爆発装置は、これらタイプの呼吸器薬剤の送り出しの双方の機能を奏することができるので、薬剤の蒸気の1つの単位と、薬剤蒸気の連続バーストの双方を送り出すことができる多機能システムを提供できる。
【0236】
本発明の蒸気爆発装置に基づく呼吸器用薬剤送り出しシステムは、投射距離が極めて長く、広い角度のスプレーを生じさせ、このシステムが形成するスプレーは粒径は極めて小さいという点で、従来の呼吸器用薬剤送り出しシステムよりも有利である。投射距離が長く、広角のスプレーによって薬剤は、呼吸器系内に更に進入でき、従って良好に広がり、患者の吸入により良好に運ばれやすくなる。
【0237】
更に、粒径が小さいことにより、呼吸器系による薬剤の吸収がより良好となる。1〜5μmの粒径よりも大きい粒径の場合、気道の近くに付着することが多いので、1〜5μmの粒径が理想的であり、他方、これより小さい粒子は付着が不良であり、多くが排出されてしまう。
【0238】
図19は、本発明の蒸気爆発装置を、ポータブルネブライザとしてどのように具現化できるかを示している。本発明のこのポータブルネブライザの実施例は、蒸気爆発チャンバと、入口バルブ1902と、排出バルブ1903と、オプションのリターンバルブ1904とを備えている。チャンバは、バッテリー1905または他のかかる電源によって給電される加熱要素によって加熱されると共に、薬剤リザーバ1906を介してチャンバには適当な流体が供給される。
【0239】
バッテリーの代わりに幹線からの電源により、更にバッテリーと共に幹線からの電源により、ポータブルネブライザに給電することも可能である。リザーバ1906は、内部に固定された量の液体を有することができ、蒸気爆発チャンバ1901を迅速に再充填できるよう、リザーバ1906に圧力を加えるのに、スプリング1907および移動ピストン1908を使用できる。これとは異なり、あらかじめ加圧された貯蔵装置内に薬剤を貯蔵し、貯蔵装置をネブライザから取り外し、貯蔵装置を交換することにより、薬剤を容易に補充することも可能である。
【0240】
リザーバ内の液体は純粋な薬剤でもよいし、またはキャリア液内に懸架された薬剤でもよい。ユーザー制御インターフェース1911により、ユーザーはネブライザを制御することが可能となり、次に制御回路1910は、ユーザー制御インターフェースからの入力信号を処理し、これに応答してネブライザを制御できる。
【0241】
図19のポータンブルネブライザにより、薬剤を蒸発させる方法は、薬剤リザーバ1906から入口バルブ1902を通して薬剤を移動させ、チャンバ1901を充填することによってスタートする。チャンバ内に所定量の薬剤が充填されると、すべてのバルブを閉じ、排出バルブを開にできるようなトリガー温度および圧力に達するまで、ヒーターによりチャンバを加熱する。次に、排出バルブを開け、マウスピース1909に沿って蒸気またはミストを放出する。出口バルブ1903とマウスピースの間の距離は、ミストがマウスピースの端部に到達する前に低温となり、次に患者が薬剤を吸入できるよう十分長くされている。
【0242】
この放出方法は所定の時間の間、または所定量の薬剤が蒸発するまで、特定の頻度で繰り返される。チャンバ1901のサイズ、またはチャンバに充填される液体の量は、スプレーの各バーストによって放出するのに必要な液体の量に関連している。
【0243】
図20は、3つの主要構成部品、すなわちネブライザの本体2001と、蒸気爆発装置2002と、前記2つの構成部品を共に接続する薬剤運搬パイプ2003とを含むデスクトップネブライザを示す。このネブライザの本体は、薬剤リザーバ2040を備え、このリザーバは、蒸気爆発装置が必要とする温度に近いが、それよりも低い温度に薬剤を維持するための加熱要素2005を含むことができ、加熱要素には、電源2006から給電される。リザーバは、薬剤をリザーバに再充填できるようにするためのリザーバの入口、およびリザーバから薬剤をポンプ出力するためのリザーバポンプ2008を有する。このポンプは、加圧された薬剤を薬剤運搬パイプ2003に供給し、蒸気爆発装置の高速充填を可能にする。
【0244】
図20に示す蒸気爆発装置は、入口バルブ2009、排出バルブ2010、蒸気爆発チャンバ2011、ヒーター2012およびヒーター電源2013と共に、蒸気爆発装置の前の実施例に従って作動し、薬剤は、マウスピース2014から蒸気の形態で解放される。チャンバの、より高速での再充填を助けるため、この実施例では、リターンポートおよびバルブを組み込むことができる。ユーザーがネブライザを制御できるようにするために、ネブライザの本体2001に、ユーザー制御インターフェースを取り付けてもよい。
【0245】
ユーザー制御インターフェース2015からの入力信号を処理し、それに応答して、ネブライザを制御するための制御回路2016が、ネブライザの本体内に設けられている。この制御回路2016を蒸気爆発装置に接続するよう、薬剤運搬パイプ2003と平行に、制御ライン2017を設けることができる。ヒーター電源2013は、ネブライザの本体からの電力ラインを介して、電力が給電される幹線からの電源またはバッテリーとすることができる。
【0246】
図20は、薬剤リザーバ2004を再充填可能なリザーバとして示す。この実施例では、リザーバ内に患者が必要とする量の薬剤を入れることができ、すべての薬剤が放出されるまで、ネブライザは作動できる。これとは異なり、最大量の薬剤をリザーバに充填し、次にネブライザが所定量の薬剤を放出できるようにしてもよい。
【0247】
本発明の実施例によれば、再充填可能なリザ−バを使用せず、その代わりに薬剤をあらかじめパックした容器を使用してもよいことが理解できるはずである。更に、加圧された容器を使用することも可能であり、この場合、ポンプは不要となる。
【0248】
図21は、本発明の一実施例に係わる投与量計量吸入器を示す。この実施例は、蒸気爆発チャンバ2101を有し、この蒸気爆発チャンバは、入口バルブ2103を介して、薬剤リザ−バ2102から薬剤を受ける。蒸気爆発チャンバ内の薬剤量は、ユーザーが必要とする投与量に対応する。ユーザーが制御ボタン2104を押すと、制御回路2105は、入口バルブ2103および排出バルブ2107と共に、加熱要素2106を制御し、ユーザーが吸入できるよう、マウスピース2108を通して、蒸気状の薬剤を放出する。この加熱要素2016は、バッテリーまたは幹線からの電源への接続部とすることができる電源2109により給電される。
【0249】
図21の薬剤リザーバ2102は、入口バルブ2103へ加圧された液体を供給し、蒸気爆発チャンバ2101を高速再充填できるようにするための加圧容器として示されている。これとは異なり、再充填可能な薬剤リザーバを使用することができる。この場合、リザーバは加圧されていない容器となる。図12には、リターンポートは示されていないが、リターンポートを組み込んでもよい。
【0250】
針なし注射器を提供するために、本発明の実施例も利用できることが理解できると思う。
【0251】
呼吸器用薬剤送り出しシステムの一部として使用される蒸気爆発装置のすべての応用例では、患者は、口の内部に入れるマウスピースを通すか、または口または鼻を覆うように、顔面に載せる顔面マスクのいずれかを通して薬剤を取り込むことができる。患者の呼吸器系の任意の他の部分に、直接薬剤を送り出すこともできる。
【0252】
呼吸器薬剤送り出し用途のすべてに対し、チャンバからの液体の最大爆発を保証するために、チャンバ1901に対するトリガー温度を、チャンバ内の液体の沸点よりも高くしなければならない。このトリガー温度は、用途に最も適した極めて微細なスプレーを発生することを保証するために、最高沸点と共に、チャンバ内の液体の沸点よりも、約20〜30℃高くすることが推奨される。トリガー圧力は、この装置が他の圧力でも作動するので、4〜6バール程度に低くできる。排出ノズルの直径は、0.05〜0.5mmの範囲内であれば、この用途に適したものとなる。
【0253】
蒸気爆発装置をベースとするネブライザにおける薬剤の送り出しを最大にすると共に、薬剤の無駄を最小にするために、呼吸によって作動する送り出しシステムを実施できる。このシステムでは、電子検出システムまたは機械式バルブシステムを使用し、ユーザーがいつ吸入するかを判断し、ユーザーが吸入しているときに限り、薬剤を放出し、よって、空気を吐き出す間に、薬剤が無駄にならないようにしている。かかる機能は、マニュアルで達成できるが、多くの人は、自分の呼吸とネブライザの切り換えを同期化することは困難である。薬剤の放出と、吸入とを調和させることは困難であることが多いので、かかる検出は、投与量計量システムでも実施できることに留意されたい。
【0254】
放出チャンバ内において、液体の温度を、飽和点よりも上に上昇させる加熱要素を、性質上、化学的なものすることができる。すなわち、2つの成分を設け、これら成分を組み合わせると、液体を沸騰させるのに十分な量の熱を発生させるような発熱反応を生じさせることができる。ユーザーは、使用直前に、2つの成分を活性化し、熱放出の準備が完了するまで待つ。このような状態は、ユーザーがディスプレイ照明を見るか、または音を発するか、材料を目で見えるように放出するか、または所定時間の経過によって行うよう、多くの方法で識別できる。
【0255】
特定の呼吸器用薬剤送り出しシステムに関連して、図19〜図21を参照して、本発明の実施例について説明したが、本発明のこれら実施例は、このようなシステムだけに限定されるものではない。
【0256】
図22は、上記の実施例のうちのいずれかに従って利用できる液体および液体蒸気爆発チャンバ2200を示す。本発明の実施例は、概ね円筒形の放出チャンバと共に使用するように限定されているわけではないことが理解できると思う。通常でない形状または球形状、もしくは図22の場合のように、入口バルブ2201、出口バルブ2202およびヒーター要素2203を有するハート形のチャンバも使用できる。
【0257】
本発明の各実施例は、上記した方法によって、目標材料を放出する放出チャンバの使用に関する基本的技術を提供するものである。爆発により材料を放出することにより、公知の放出システムよりも、液体および液体蒸気のスプレーが横断する距離を、大幅に長くできる。この放出は、数十μ秒のオーダーで、小さなチャンバを使って、極めて短時間でも行われる。
【0258】
本発明の実施例によれば、チャンバ内の液体を加熱することによって、チャンバ内の圧力を高める。熱膨張に起因して液体が膨張するので、これによってより高い圧力が発生する。加熱は、電気加熱要素または局部的熱源から、液体に熱を伝達する熱交換器のような他の手段によって行われる。
【0259】
上に説明した本発明のすべての実施例は、放出チャンバ内の液体を加熱する代わりに、チャンバへの入口に予熱された液体を、高圧で供給するように変形することも可能である。予熱された液体を、チャンバ内にポンピングし続けることにより、チャンバ内で圧力を累積できる。このことは、高圧でポンピングできる外部ポンプにより行うことができる。放出される材料を放出するべき圧力よりも高い所定の圧力において、入口バルブを閉じ、出口バルブを開ける。沸点に対する高温による液体の蒸発方法を研究することにより、圧力の瞬間的な低下量を計算できる。
【0260】
作用液体として水を使用する場合、1.1バールのチャンバ圧を有し、サイズが1mm以下のチャンバから、大気、例えば大気圧(1.0バール)へ放出する毎秒20mまでの速度を得ることができる。炭化水素液体燃料を使用する場合、6バールの燃焼室へ10バールの圧力を噴出する、サイズが約2cmのチャンバ(換言すれば、放出チャンバと隣接する燃焼チャンバとの間の圧力差は1バールである)から、毎秒100mまでの速度を得ることができる。
【0261】
1つ以上のセンサ、例えば圧力トランスジューサにより、容易にモニタし、測定できる種々の容器内の圧力に基づき、入口バルブおよび出口バルブを、電子的に制御することもできる。容器内の所定の圧力に達すると、出口バルブは開にされ、圧力が所定の値よりも低くなると、出口バルブを閉じる。入口バルブに対しては、チャンバ内で、所定の、より高い限界圧、およびより低い限界圧に達したときに、このバルブを開けるか、または閉じることができる。すなわち、出口バルブと逆に開閉できる。出口バルブが開状態のとき、入口バルブは閉状態となるように制御され、出口バルブが閉状態のとき、入口バルブは開状態とされる。
【0262】
本明細書の詳細な説明および請求項における、「含む」、「備える」およびそれらの用語の変形例は、〜を含むが、これらに限定されないことを意味し、他の成分、添加物、成分、整数またはステップを含むことを排除するものではない。
【0263】
本明細書の詳細な説明および請求項における、「単一」の表現は、特に文脈が必要としない限り、複数を含むものである。また、不定詞を使用する場合、本明細書では、複数だけでなく、文脈が必要としない限り、単数も含むものである。
【0264】
本発明の特定の特徴、実施例または例に関連して説明した特徴、整数、特性、化合物、化学的成分または族は、特に両立しない限り、本発明に説明した他の任意の様相、実施例または例に適用できるものである。
【符号の説明】
【0265】
10 放出チャンバ
20 放出システム
21 放出チャンバ
22 第1端部領域
23 入口バルブ
24 中心領域
25 入口パイプ
26 別の端部領域
27 出口バルブ
28 ノズル領域
29 加熱要素
30 熱交換器
50 燃料噴射ユニット
51 内燃エンジン
52 燃焼チャンバ
53 密に嵌合されたピストン
54 チャンバ
55 燃焼表面
56 クランクシャフト
57 ピストンロッド
70 ガスタービン
71 コンプレッサ
72 燃焼器
73 タービン
74 燃料噴射器
76 燃料チャンバ
77 フィン
78 前方端部
80 ガスタービン再点火器
81 外側電極
82 第1端部領域
83 入口バルブ
84 中心チャンバ領域
85 内側電極
86 別の端部
87 出口バルブ
88 ノズル
90 パイロット火炎点火放出システム
91 ノズル
92 火炎
401 リターンポートおよびバルブ
402 チャンバ
403 リザーバ
404 入口バルブ
1100 ソーラーパネル
1300 消火器
1301 放射チャンバ
1302 ネック領域
1303 流体リザーバ
1304 ハンドル
1305 制御ユニット
1306 入口バルブ
1307 出口バルブ
1308 電源
1401 リザーバ
1402 蒸気爆発チャンバ
1501 蒸気爆発チャンバ
1502 ホースパイプ
1600 内視鏡
1601 操作自在なシャフト
1602 遠方端部領域
1603 可撓性先端
1604 遠方端部
1605 内視鏡本体部分
1606 アイピース
1607 開口部
1608 ケーブル
1609 入力接続部
1700 内視鏡
1701 ライト
1702 カメラ
1703 コントローラ
1800 薬剤送り出しチャンバ
1801 チャンバ
1802 入口バルブ
1803 ヒーターユニット
1902 入口バルブ
1903 排出バルブ
1904 リターンバルブ
1905 バッテリー
1906 薬剤リザーバ
1907 スプリング
1908 ピストン
1910 制御回路
1911 ユーザー制御インターフェース
2001 ネブライザの使用本体
2002 蒸気爆発装置
2003 薬剤運搬パイプ
2004 薬剤リザーバ
2005 加熱要素
2006 電源
2008 リザーバポンプ
2009 入口バルブ
2010 排出バルブ
2011 蒸気爆発チャンバ
2012 ヒーター
2013 ヒーター電源
2014 マウスピース
2015 ユーザー制御インターフェース
2016 制御回路
2017 制御ライン
2101 蒸気爆発チャンバ
2102 薬剤リザーバ
2103 入口バルブ
2104 制御ボタン
2105 制御回路
2106 加熱要素
2107 排出バルブ
2108 マウスピース
2109 電源
2200 液体および液体蒸気爆発チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を放出するための装置であって、
ある量の選択された液体を保持するための放出チャンバと、
前記液体を前記放出チャンバに送るために選択的に開くようになっている入口バルブと、
液体及び/又はその蒸気の形態で物質を放出するために選択的に開くようになっている出口バルブとを有し、
前記放出チャンバ内の液体の温度が、前記出口バルブの下流側の位置での圧力における前記液体の飽和温度と実質的に等しいか、それより高いときに、前記出口バルブ及びネック領域を通して、前記放出チャンバから、前記液体を液体及び/又はその蒸気の形態で放出することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記放出チャンバ内の液体の温度を上昇させるよう、前記放出チャンバ内、またはその近くに配置されたヒーター部材を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記放出チャンバ内の液体の圧力を上昇させるよう、前記放出チャンバ内、または前記放出チャンバの近くに配置されたポンプ部材を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記飽和温度に到達したことを検出するための少なくとも一つのセンサを更に有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つのセンサは圧力センサである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
先に前記出口バルブを開くことにより前記放出チャンバから前記物質を放出した後、引き続いて前記入口バルブが選択的に開いて、前記液体を前記放出チャンバに導入するようになっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記放出チャンバから前記物質をリザーバに移すためのリターンポート及びバルブを更に有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記液体及び/又はその蒸気は蒸気爆発プロセスにより放出される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記放出チャンバ中の液体は、前記出口バルブを開く前に、大気圧での沸点超に加熱される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
物質を放出する方法であって、
ある量の選択された液体を保持するための放出チャンバを配置し、
入口バルブを選択的に開いて、前記ある量の選択された液体を前記放出チャンバに送り、
前記放出チャンバ内の液体の温度が、前記出口バルブの下流側の位置での圧力における前記液体の飽和温度と実質的に等しいか、それより高いときに、前記放出チャンバの出口バルブを選択的に開き、前記出口バルブ及びネック領域を通して、前記放出チャンバから液体及び/又はその蒸気を放出することを特徴とする方法。
【請求項11】
前記放出チャンバ内、またはその近くに配置されたヒーター部材により、前記放出チャンバ内の液体の温度が上昇するように加熱する工程を更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記放出チャンバ内、または前記放出チャンバの近くに配置されたポンプ部材により、前記放出チャンバ内の液体の圧力を上昇させる工程を更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つのセンサを用いて、前記放出チャンバ中の前記飽和温度をモニタリングする工程を更に有する、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つのセンサは圧力センサである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記放出チャンバから前記液体及び/又はその蒸気を放出した後、選択的に前記出口バルブを閉じ、選択的に前記入口バルブを開いて前記液体を前記放出チャンバに導入する、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
リターンポート及びバルブを介して、前記放出チャンバから前記物質をリザーバに移す工程を更に有する、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記放出チャンバに前記液体を導入する際、前記液体を予め加熱した上で入口バルブに供給する、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体及び/又はその蒸気を蒸気爆発プロセスにより前記放出チャンバから放出する、請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記出口バルブを開く前に、前記放出チャンバ中の液体を、大気圧での前記液体の沸点超に加熱する、請求項10〜18のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−232296(P2012−232296A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129075(P2012−129075)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2008−532860(P2008−532860)の分割
【原出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(508091030)ユニバーシティ オブ リーズ (4)
【Fターム(参考)】