説明

薬剤付き支持体及びその製造方法

【課題】製造コストを削減しつつ、前眼部に薬剤を適切に投与することができる薬剤付き支持体を提供する。
【解決手段】基板3の長手方向中途部に、前眼部に投与する薬物成分を含有する薬剤層2を備え、基板3に基板3を薬剤層2が設けられた面とは反対の側へ折曲げ可能な折り曲げ部4が設けられ、基板3を折り曲げ部4にて折り曲げることにより、薬剤層2の基板3との対向面のうちの少なくとも一部が基板3から露出するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前眼部に投与する薬剤付き支持体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前眼部に投与する眼科用剤として、従来から点眼剤が広く知られている。点眼剤を用いた投与の場合、点眼容器に収納された液体状の薬剤を滴下して投与することから、点眼容器の押圧力によって滴下量が異なる場合があり、必ずしも投与量が意図していた量とならない場合があった。
【0003】
一方、前眼部に薬剤を一定量投与する手段としては、眼科用剤として固形組成物を用い、それを挿入する方法が知られている。この種の眼科用剤では、1つの固形組成物に1回の投与に必要な薬物成分が含有されており、一定量を投与することができる。しかしながら、直接手にとって投与するため、滅菌状態を維持することは容易ではない。
【0004】
上述の課題を解決する眼科用剤として、特許文献1には、湿潤した生体表面に薬剤を投与するためのアプリケータが開示されている。つまり、このアプリケータにおいて、溶解性マトリックス中に薬物成分を含有させた薬剤が、長細い帯形状を有した使い捨てのアプリケータの一端に設けられている。薬剤とアプリケータとは、溶解性の薄膜からなる分離部を介して接続されている(特許請求の範囲、図1を参照)。このアプリケータでは、アプリケータの薬剤本体とは反対側の他端部を持って、薬剤本体を投与部位である生体表面に接触させることにより、分離部分が溶解して薬剤本体がアプリケータから分離し、薬剤本体が投与される。このように、使い捨てのアプリケータを用いることから、薬剤を投与する際の滅菌状態の維持が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4−11229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のアプリケータでは、長手方向に沿って、アプリケータ、分離部、薬剤本体が設けられることになる。一般的に、溶解性マトリックス等で形成された薬剤本体及び分離部は強度が小さく、上述の構成のアプリケータでは、分離部若しくは薬剤本体で破損が起こりやすく、製造や取り扱いが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、製造コストを削減しつつ、前眼部に薬剤を適切に投与することができる薬剤付き支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る薬剤付き支持体は、基板の長手方向中途部に、前眼部に投与する薬物成分を含有する薬剤層を備え、前記基板に当該基板を前記薬剤層が設けられた面とは反対の側へ折曲げ可能な折り曲げ部が設けられ、前記基板を前記折り曲げ部にて折り曲げることにより、前記薬剤層のうち前記基板と対向する面の少なくとも一部が前記基板から露出するように構成してある。
【0009】
本構成によれば、薬剤層が基板に設けられることから、一般的に強度の小さい薬剤層が基板に保護されることとなる。このため、薬剤層の破損を防止することができ、製造や取り扱いが容易になる。
また、基板を折り曲げ部にて折り曲げることにより、薬剤層のうち前記基板と対向する面が基板から露出するので、折り曲げた基板を上述したアプリケータとして利用することができる。このため、滅菌状態を維持して薬剤を投与することができる。
また、アプリケータとしての基板の薬剤層側の先端部には、基板の折り曲げ部が位置する。一般的に折り曲げ部は、丸みを帯びた滑らかな形状を有するので、基板に特段の加工を施さずともアプリケータの先端部を滑らかな形状にすることができる。このため、薬剤層を投与する際に、前眼部を傷付けることを防止できる。
即ち、上述した特許文献1に記載のアプリケータの場合、投与箇所である生体表面を傷つけることを防止するためにはアプリケータの先端を滑らかにする必要があり、加工のためのコストが発生するが、上記のとおり、一般的に折り曲げ部は、丸みを帯びた滑らかな形状を有するので、基板に特段の加工を施さずともアプリケータの先端部を滑らかな形状にすることができ、アプリケータの加工のコストを削減することができる。
上述の結果、製造コストを削減しつつ、前眼部に薬剤を適切に投与することができる薬剤付き支持体を提供することができる。
【0010】
上述の実施形態において、薬剤層のうち基板と対向する面の少なくとも一部を基板から露出するように構成する態様としては種々考えられるが、例えば、前記薬剤層が前記基板の前記折り曲げ部が形成された部位の両側に亘って形成され、前記基板を前記折り曲げ部にて折り曲げた際に、前記薬剤層のうち前記折り曲げ部を境界として一方の部分が前記基板と対向した状態を維持するとともに、前記折り曲げ部を境界として他方の部分が前記基板から露出して前記折り曲げ部から突出するように構成することができる。また、前記薬剤層が前記基板の前記折り曲げ部が形成された部位の両側に亘って形成され、前記基板を前記折り曲げ部にて折り曲げた際に、前記薬剤層のうち折り曲げ部に対応する部分を含む所定の部分が前記基板と対向した状態を維持するとともに、前記所定の部分を挟む両側の部分が前記基板から露出するように構成することができる。
【0011】
また、前記基板に複数の折り曲げ部が設けられ、前記基板のうち一つの折り曲げ部が形成された部位に前記薬剤層が形成されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、基板をそれぞれの折り曲げ部で折り曲げることにより、基板を略多角形形状にすることができ、折り曲げ後の基板の強度を高めることができる。また、多角形の形状を変形させることにより、薬剤層の姿勢を変更することができるので、薬剤層を投与しやすい姿勢に姿勢変更することができる。
【0013】
上述の構成において、前記基板と前記薬剤層との粘着部のうち前記基板を折り曲げた際に剥離する部分の粘着力を他の部分の粘着力よりも小さくなるように構成してあると好適である。
【0014】
本構成によれば、基板を折り曲げた際、基板と薬剤層と粘着力の差により、粘着力の弱い部分の薬剤層が確実に基板から剥離する。このため、薬剤をより的確に投与することができる。
【0015】
上述の構成において、前記薬剤層と前記基板との間に粘着層が設けられていると好適である。
【0016】
薬剤層としては或る程度粘着力を有するものが用いられる場合もある。しかしながら、薬剤層の種類等の条件によっては、粘着力が充分でない場合がある。この場合、薬剤層と基板との間に粘着層を設けることにより、基板上に薬剤層を確実に形成することができる。
【0017】
本発明に係る薬剤付き支持体において、基板に薬剤層を設ける構成としては、基板に薬剤層を粘着させる構成に限られるものではない。例えば、基板に前記薬剤層を保持する保
持部材が設けられ、前記基板と前記保持部材とで前記薬剤層を挟持することにより、前記基板に前記薬剤層を設けることができる。
【0018】
上述の構成において、前記薬剤層の上面に、前記薬剤層を覆うカバー層が形成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、基板とカバー層とによって薬剤層を確実に保護することができ、取り扱いがより容易になる。
【0020】
上述の構成において、前記折り曲げ部に、前記基板の他の部分より曲げ強度の弱い脆弱部が形成されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、基板を折り曲げた際に、他の部分より曲げ強度の弱い脆弱部で確実に折り曲げることができる。
【0022】
上述の構成において、前記折り曲げ部に、折り曲げ箇所を示す目印が形成されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、使用者の目視により、折り曲げ箇所が確実に分かるため、基板を適切な位置で折り曲げることができる。
【0024】
本発明に係る薬剤付き支持体の製造方法は、前記基板の原反の長手方向に沿って前記薬剤層を形成する薬剤層形成工程と、前記基板の原反の長手方向に沿って前記折り曲げ部を形成する折り曲げ部形成工程と、前記薬剤層形成工程及び前記折り曲げ部形成工程を行った後に前記基板の原反を長手方向に垂直な方向に所定間隔ごとに切断する切断工程とを備える。
【0025】
本発明に係る薬剤付き支持体は、基板の長手方向中途部に他の部分よりも強度の低い脆弱部が形成され、前眼部に投与する薬物成分を含有する薬剤層を前記基板上の一方の面に前記脆弱部を跨いで備え、前記基板の前記一方の面に設けられ前記薬剤層の前記長手方向における一端側から前記基板とともに薬剤層を挟持する挟持体と、前記長手方向における他端側から前記薬剤層の上面を超えて前記挟持体の上面の少なくとも一部に亘って設けられる保護体とを備える。
【0026】
本構成によれば、薬剤層が基板に設けられることから、一般的に強度の小さい薬剤層が基板上に設けられ、当該基盤と挟持体とで挟持され、薬剤層の上面に保護体が設けられることとなる。このため、薬剤層を保護して、薬剤層の破損を防止することができ、製造や取り扱いが容易になる。
また、薬剤層が基板の長手方向中途部に形成された脆弱部を跨いで設けられているので、薬剤層を保護体から露出させた後、基板を脆弱部に沿って切り離す若しくは折り曲げることにより、薬剤層が基板から露出するので、基板を上述したアプリケータとして利用することができる。このため、滅菌状態を維持して薬剤を投与することができる。
上述の結果、製造コストを削減しつつ、前眼部に薬剤を適切に投与することができる薬剤付き支持体を提供することができる。
【0027】
上述の構成において、前記基板及び前記挟持体のうち前記一端側から中途部までの領域が互いに接着され、前記基板及び前記挟持体のうちの互いに接着されていない部分において前記薬剤層が挟持され、前記保護体が前記基板の他端側の領域及び前記挟持体の少なくとも長手方向中途部に亘って接着されていると好適である。
【0028】
本構成によれば、基板及び挟持体のうちの互いに接着されていない部分に薬剤層を確実に挟持することができる。また、保護体が基板の他端側の領域及び挟持体の少なくとも長手方向中途部に亘って接着されているので確実に薬剤層の上面に位置することとなり、薬剤層を確実に保護することができる。
【0029】
上述の構成において、前記挟持体が前記基板の前記一端側の端部から前記脆弱部の間の領域に亘って設けられ、前記保護体が前記基板の前記他端側の端部から前記挟持体の中途部に亘って設けられていると好適である。
【0030】
本構成によれば、挟持体が基板の一端側の端部から脆弱部の間の領域に亘って設けられるので基板のうち、アプリケータとして作用する部分の全域に亘って挟持体が設けられることとなる。このため、挟持体により、基板を補強することができ、基板としてそれほど強度がない材質を用いた場合であっても確実にアプリケータとして使用することができる。
【0031】
上述の構成において、前記保護体の前記挟持体側の端部から所定の領域に亘って前記挟持体に接着されない非接着部が形成されていると好適である。
【0032】
本構成によれば、薬剤層を保護体から露出させる際に、非接着部から保護体を剥離することができる。この結果、薬剤を投与する際の薬剤付き支持体の扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す上面図
【図2】本発明の第1実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す側面図
【図3】本発明の第1実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す下面図
【図4】基板の一例を示す上面図
【図5】本発明に係る薬剤付き支持体の使用方法の一例を示す図
【図6】本発明に係る薬剤付き支持体の製造方法の一例を示す図
【図7】密封包装後の薬剤付き支持体を示す図
【図8】基板の一例を示す上面図
【図9】本発明の第2実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す側面図
【図10】本発明の第3実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す側面図
【図11】本発明の第4実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す図
【図12】本発明の第4実施形態に係る薬剤付き支持体の一例を示す側面図
【図13】本発明に係る薬剤付き支持体の使用方法の一例を示す図
【図14】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【図15】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【図16】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【図17】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【図18】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【図19】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【図20】別実施形態に係る薬剤付き支持体を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明に係る薬剤付き支持体1の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
[第1実施形態]
本発明に係る薬剤付き支持体1の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1から図3に示すように、この薬剤付き支持体1は、基板3と基板3の一方側の面に設けられた薬剤層2とを備える。
【0035】
基板3は、例えば長細い長方形状を有する。基板3の材質は特に限定されないが、紙製、プラスチック製、アルミニウム箔製等、適宜適用可能である。また、これらの複数の層を積層して基板3を形成してもよい。
【0036】
図2及び図3に示すように、基板3の長手方向中央部には、当該部分で基板を折り曲げ可能な折り曲げ部4が設けられている。本実施形態では、折り曲げ部にミシン目41が形成されている。ミシン目41は、基板3の薬剤層2が設けられた側の面とは反対の側の面に、基板3の長手方向と垂直な方向に沿って設けられている。ミシン目41のミシン孔は、完全に貫通することなく、厚み方向の中途部まで形成されている。このように折り曲げ部4にミシン目41を形成することにより、折り曲げ部4の曲げ強度が基板3の他の部位よりも弱くなるように構成している。これにより、基板3を折り曲げた際に、確実に折り曲げ部4で折り曲げることができる(図5(b)を参照)。ミシン目41は本発明の脆弱部に相当する。
【0037】
図1及び図2に示すように、基板3のミシン目41が設けられた側の面と反対側の面には、薬剤層2が形成されている。薬剤層2は基板3の長手方向中途部に形成されている。つまり、基板3の長手方向において、両側の端部から中途部に向けて薬剤層2が形成されていない領域が設けられ、中途部に薬剤層2が形成された領域が設けられている。本実施形態では、薬剤層2は、基板3の長手方向における略中央部に形成され、ミシン目41が薬剤層2の長手方向における略中央部に位置する。薬剤層2は、例えば、薬物成分を含有する固形組成物により形成されている。固形組成物としては、例えば水溶性ポリマー等を用いることができる。投与後に薬剤層2の固形組成物が溶解することにより、薬物成分が投与部位側に吸収される。薬剤層2は、複数の層から構成されていてもよく、またそれぞれの層に同じ薬物成分を含有してもよく、異なる薬物成分を含有してもよい。この薬剤層2は、前眼部に投与される。
【0038】
薬剤層2は、固形組成物の粘着力により、基板3に粘着している。本実施形態においては、基板に対する薬剤層2(固形組成物)の粘着力が折り曲げ部4を境界として異なるよう構成してある。具体的には、例えば基板3の薬剤層2が形成される側の面の表面の材質を異ならせることにより、折り曲げ部を境界として一方側の剥離性を高め、基板3と薬剤層2との粘着力が弱くなるように構成されている。本実施形態では、図4に示すように、折り曲げ部4から基板3の一方の端部に向けての所定の領域(薬剤層の端部よりもやや基板の端部側までの領域)に剥離性の高い剥離膜層31が形成されている。このため、基板を折り曲げた際に、薬剤層のうち基板の剥離性の高い部分に付着していた部分が剥離して、折り曲げ部から突出する(図5(b)、図5(c)を参照)。このように、薬剤層2のうち基板3と対向する面の少なくとも一部が基板3から露出する。なお、折り曲げ部4から基板3の一方の端部までの全領域において剥離膜層31を形成してもよい。
【0039】
次に、この薬剤付き支持体1の使用方法について説明する。なお、薬剤層2を眼表面に投与する場合を例に説明するが、例えば、角膜、眼瞼結膜又は結膜襄等の前眼部に投与するものであってもよい。図5(a)及び図5(b)に示すように、使用者は、基板3の両側の端部近傍を指で摘み、基板3を薬剤層2が形成された側の面とは反対の側へ折り曲げる。即ち、両側の端部近傍のうち薬剤層2とは反対側の面同士が対向する側に基板3を折り曲げる。これにより、図5(c)に示すように、基板3が折り曲げ部4に形成されたミシン目41の部分で折り曲げられるとともに、薬剤層2とは反対側の面同士が当接して、
基板3が二重に折りたたまれる。また、この際、上述したように薬剤層2の一部が基板3から露出して前記折り曲げ部から突出する。
【0040】
図5(c)に示すように、使用者は、折りたたまれた基板3のうち薬剤層2が存在する側とは反対側の端部近傍部位、すなわち、折りたたむ前の基板3の両端部近傍部位を指で摘み、薬剤層2を投与部位に近づける。本実施形態では、図5(d)に示すように、一方の手の指で下眼瞼を引き下げて結膜を露出させるとともに、他方の手の指で折りたたまれた基板3のうち薬剤層2が存在する側とは反対側の端部近傍部位を摘んで、薬剤層2を眼表面に近づける。薬剤層2のうち基板3から突出した部分を眼表面に接触させ、薬剤層2を基板3から完全に剥離させ、薬剤層2が眼表面に投与される。上述のように、折りたたまれた基板3が、薬剤層2を投与する際に、当該薬剤層2を投与部位まで運ぶ支持体として機能する。上述の構成により、基板3が支持体として機能する際には、基板3が折りたたまれて二重になっているとともに、折り曲げられた部位の存在により基板3の強度が増加する。このため、基板3が支持体として機能する際に基板3が不意に変形することを防止して、薬剤層2を的確に投与部位まで運ぶことができる。
なお、上記の実施形態において、例えば薬剤フィルム等の薬剤層2自体にも基板3のミシン目41と対応する位置又はその近傍にミシン目等の分離部を設けても良い。この実施形態においては、使用者が基板を折りたたむと(図5(c)を参照)、薬剤層2の一部が基板3から露出して前記折り曲げ部から突出するとともに、薬剤層2の折り曲げ部又はその近傍の部分にミシン目等の分離部が位置することとなる。そして、使用者が薬剤層2を眼表面等の投与部位に投与するために(図5(d)を参照)投与部位に接触させると、薬剤層2が分離部で分離し、薬剤層2の折り曲げ部から突出した部分が投与部位に投与される。一方、薬剤層2の他の部分は基板3上に残存する。このように、薬剤層2に分離部を設ける実施形態においても、薬剤層2を的確に投与部位に投与することができる。
【0041】
次に、この薬剤付き支持体1の製造方法の一例について説明する。
図6に示すように、基板3の原反100は、例えば長尺帯状の原反100をロール状に巻いたロール状原反である。この原反100が先端部から順次、折り曲げ部形成部200に供給される。折り曲げ部形成部200において、原反100の薬剤層2が形成される側の面とは反対側の面にミシン目41が形成される。ミシン目41は、原反100の幅方向中央部に、長手方向(原反の搬送方向)に沿って連続的に形成される。ミシン孔41は原反100を完全に貫通するのではなく、原反の厚さ方向の中途部まで形成される。折り曲げ部形成部200は、特に限定されないが、折り曲げ部4にミシン目41を形成する場合、例えば針部材やミシン目カッター等のミシン孔41を連続的に形成可能な部材を備える。
【0042】
ミシン目41が形成された原反100は、搬送方向下流側の薬剤層形成部201に搬送される。薬剤層形成部201において、原反100のミシン目41が形成された側の面とは反対側の面に薬剤層2が形成される。薬剤層2は、原反の幅方向の中途部に形成される。薬剤層2としては、例えば、薬物成分を含有した固形組成物で構成された長尺帯状の薬剤フィルム101が用いられる。なお、薬物成分を含有した固形組成物を原反100に塗布する等、薬剤フィルム101以外であってもよい。図6に示すように、原反100の搬送に伴って、この薬剤フィルム101が原反100の幅方向中途部に粘着されていき、原反100の長手方向、つまり、搬送方向に沿って連続的に薬剤層2が形成される。また、薬物成分を溶解させた溶液を原反100にキャストして薬剤層2である薬剤フィルム101を形成してもよい。
【0043】
薬剤層2が形成された原反100は、薬剤層形成部201の下流に設けられた切断部202に搬送される。切断部202において、原反100は長手方向に垂直な方向において、所定のピッチごとに切断される。切断部202は特に限定はされないが、例えば、原反100を切断可能なカッター等を備える。これにより、原反100の幅方向を長手方向とする薬剤付き支持体1が形成される。
【0044】
その後、図7に示すように、薬剤付き支持体1は、一つずつ密封包装される。密封包装後の薬剤付き支持体1は、例えば紫外線、γ線又は電子線等を照射することにより、滅菌が行われる。これにより、薬剤付き支持体1が滅菌状態で密封包装される。
【0045】
[第2実施形態]
本発明に係る薬剤付き支持体1の第2実施形態について、図面に基づいて説明する。
この実施形態では、基板3に対する薬剤層2(固形組成物)の粘着力が折り曲げ部4を含む所定の領域とその他の領域とで異なるように構成してある。具体的には、例えば図8に示すように、基板3の長手方向において、折り曲げ部4及び折り曲げ部4の両側の所定領域(折り曲げ部近傍領域)と、折り曲げ部近傍領域よりも端部側の領域とで、薬剤層2が形成される側の面の表面の材質を異ならせることにより、折り曲げ部近傍領域よりも端部側の領域の剥離性を高め、基板3と薬剤層2との粘着力が弱くなるように構成されている。具体的には、折り曲げ部4近傍の所定領域を除く両側の所定の領域(薬剤層の端部よりもやや基板の端部側までの領域)に剥離性の高い剥離膜層31が形成されている。このため、基板3を折り曲げた際に、薬剤層2のうち基板の剥離性の高い部分(剥離膜層31)に付着していた部分が剥離する。従って、図9に示すように、薬剤層2のうち折り曲げ部近傍領域に対応する部分(つまり、薬剤層2の長手方向中央部近傍の部分)のみが基板3に付着した状態で、薬剤層2の両端部側の領域が基板3から剥離して露出する。なお、剥離膜層31は、基板3の端部まで設けてもよい。
【0046】
上述のように、第2実施形態に係る薬剤付き支持体1では、薬剤層2の長手方向中央部近傍の部分以外が基板3から突き出た状態となる。その為、薬剤層2を投与する際に、基板3が投与部位である前眼部に接触することを防止することができ、さらに、薬剤層2を前眼部に接触させた後、薬剤層2を基板3から容易に剥離させることができる。また、基板3に対して略垂直突出した薬剤層2を前眼部に接触させることから、前眼部の正面から薬剤付き支持体1を近づけることになる。このため、例えば、持ち手とは反対側の前眼部に薬剤層2を投与する場合、横方から薬剤付き支持体1を近づける場合と比較して、鼻が邪魔になり難い。上述の結果、薬剤層2の投与が一層容易になる。
【0047】
[第3実施形態]
本発明に係る薬剤付き支持体1の第3実施形態について、図面に基づいて説明する。
図10に示す例では、基板の2箇所に折り曲げ部4a、4bが形成されている。一方の折り曲げ部4aが薬剤層2の長手方向における略中央部に位置する。また、薬剤層2が形成されない側の折り曲げ部4bは、基板3の長手方向中央部よりも一方の端部側よりに設けられている。薬剤層2が形成される側の折り曲げ部4aは、折り曲げ部4bを境界として基板3の端部までの距離が大きい側の領域に形成されている。この実施形態においては、第2実施形態と同様に、折り曲げ部4a及び折り曲げ部4aの両側の所定領域(折り曲げ部近傍領域)と、折り曲げ部近傍領域よりも端部側の領域とで、基板の薬剤層2が形成される側の面の表面の材質を異ならせることにより、折り曲げ部近傍領域よりも端部側の領域の剥離性を高め、基板3と薬剤層2との粘着力が弱くなるように構成されている。基板を折り曲げた際は、第2実施形態と同様に、薬剤層2のうち折り曲げ部近傍領域に対応する部分(つまり、薬剤層2の長手方向中央部近傍の部分)のみが基板3に付着した状態で、薬剤層2の両端部側の領域が基板3から剥離して露出する(図10(c)を参照)。
【0048】
上述のように、第3実施形態に係る薬剤付き支持体1では、薬剤層2の長手方向中央部近傍の部分以外が基板3から突き出た状態となる。その為、薬剤層2を投与する際に、基板3が投与部位である前眼部に接触することを防止することができ、さらに、薬剤層2を前眼部に接触させた後、薬剤層2を基板3から容易に剥離させることができる。上述の結果、薬剤層2の投与が一層容易になる。
【0049】
なお、上述の第1実施形態と同様に、折り曲げ部4aを境界として、基板の薬剤層2が形成される側の面の表面の材質を異ならせてもよい。この場合、第1実施形態と同様に、基板を折り曲げた際に、薬剤層2のうち基板3の剥離性の高い部分に付着していた部分が剥離して、折り曲げ部から突出する。
【0050】
次に、この薬剤付き支持体1の使用方法について説明する。図10(a)に示すように、基板3を薬剤層2が形成されていない折り曲げ部4bで折り曲げる。このとき、図10(b)に示すように、折り曲げ部4bを境界として薬剤層2及び折り曲げ部4aが形成された側の端部が、他方の端部より突出している。使用者は、図10(b)に示すように、前記基板3の両端部近傍の部分を端部同士が近接する方向に相対移動させることにより、基板3を折り曲げ部前記基板の両端部近傍の部分を折り曲げ部4aで基板3を薬剤層2が形成された側の面とは反対の側へ折り曲げる。これにより、図10(c)に示すように、基板3が略三角形形状に折り曲げられ、三角形の一つの頂点に薬剤層2が位置する。薬剤層2は、中央部近傍部分のみが基板3に付着し、両端部側が基板3から剥離して露出した状態である。使用者は、折りたたむ前の基板3の両端部近傍部位を指で摘み、薬剤層2を投与部位に投与する。この際、基板3の端部同士を相対移動させて三角形形状を変化させることにより、薬剤層2を投与部位に投与しやすい姿勢に姿勢変更することができる。また、基板3で略三角形形状を形成することにより、基板3の強度が増加する。このため、基板3が支持体として機能する際に基板3が不意に変形することを防止して、薬剤層2を的確に投与部位まで運ぶことができる。
【0051】
[第4実施形態]
本発明に係る薬剤付き支持体1の第4実施形態について、図面に基づいて説明する。
図11,12に示すように、この薬剤付き支持体1は、基板3と基板3に設けられた薬剤層2と、基板3との間で薬剤層2の一部を挟持する挟持体8と、基板3上の薬剤層2を保護する保護体9とを備える。
【0052】
基板3は、例えば長細い長方形状を有する。基板3の材質は特に限定されないが、紙製、プラスチック製、アルミニウム箔製等、適宜適用可能である。また、これらの複数の層を積層して基板3を形成してもよい。また、薬剤を投与する際の基板3からの薬剤層2の剥離性等を考慮して適宜、表面処理等を施してもよい。
【0053】
保護体9は特に限定されないが、例えば細長い長方形状を有する。保護体9の材質は特に限定されないが、例えば樹脂製のフィルムを用いることができ、透明フィルムが特に好ましい。また、挟持体8は特に限定されないが、例えば細長い長方形状を有する。挟持体8の材質は特に限定はされないが、例えばアルミニウム箔を用いることができる。
なお、保護体9及び挟持体8の材質は、上記のものに限定されず、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着透明フィルム、シリカ蒸着透明フィルム、紙製、プラスチック製、アルミニウム箔製等、適宜適用可能である。
【0054】
図11,12に示すように、基板3の長手方向中途部には、当該部分で基板を折り曲げ又は切り離しが可能なように、他の部分より強度が低い脆弱部が設けられている。本実施形態では、脆弱部にミシン目41が形成されている。本実施形態ではミシン目41は、基板3を貫通して形成されている。このように脆弱部はミシン目41を形成することにより、強度が基板3の他の部位よりも弱くなるように構成している。これにより、基板3を確実に脆弱部で折り曲げ又は切取ることができる。なお、ミシン目41は基板3の厚み方向に貫通するものでなく、厚み方向中途部まで形成されたものであっても良い。また、脆弱部はミシン目41に限られるものではなく、例えば、厚み方向の中途部まで形成した切り込み、他の部分より厚みを薄くする、基板に予め折り目を形成して他の部分より強度を低くするなど、ミシン目以外のものであっても良い。
【0055】
図12に示すように、基板3の一方の面上には、薬剤層2が形成されている。薬剤層2は脆弱部を跨いで(薬剤層2の長手方向中途部が脆弱部上に位置するように)配置されている。つまり、基板3の長手方向において、両側の端部から中途部に向けて薬剤層2が形成されていない領域が設けられ、中途部のミシン目41を含む領域に薬剤層2が形成された領域が設けられている。薬剤層2は、例えば、薬物成分を含有する固形組成物により形成されている。固形組成物としては、例えば水溶性ポリマー等を用いることができる。投与後に薬剤層2の固形組成物が溶解することにより、薬物成分が投与部位側に吸収される。薬剤層2は、複数の層から構成されていてもよく、またそれぞれの層に同じ薬物成分を含有してもよく、異なる薬物成分を含有してもよい。この薬剤層2は、前眼部に投与される。
【0056】
本実施形態において、挟持体8は、基板3の薬剤層2が設けられた面の長手方向における一方の端部からミシン目41が形成された部分に渡って設けられる。これにより、薬剤層2の一部が挟持体8と基板3とにより挟持される。本実施形態においては基板3の薬剤層2が設けられる側の面にはヒートシール層が設けられており、ヒートシールにより基板と挟持体8とが一体化される。ここで、挟持体8のうちミシン目41側の端部近傍の部分は、基板3とヒートシールされず、この部分が、薬剤層2を挟持する挟持空間81となる(図11及び12を参照)。なお、本実施形態では、ミシン目41の位置と挟持体8の端部とが一致しているが、ミシン目41の位置と挟持体8の端部とは必ずしも一致させる必要はなく、例えば、挟持体8の端部をミシン目41よりも若干手前に設定してもよく、ミシン目41を若干越えた位置に設定しても良い。
【0057】
本実施形態において、保護体9は、基板3の薬剤層2が設けられた側の面上の他端(挟持体8が設けられた側とは反対の端部)から挟持体8上の長手方向中途部に亘って設けられている。これにより、薬剤層2上に保護体9が設けられる。上述のとおり、基板3にはヒートシール層が設けられており、保護体9と基板3とがヒートシールにより接着される。また、挟持体8と保護体9とについても、ヒートシールにより接着されている。
【0058】
本実施形態では、保護体9の挟持体8側の端部は挟持体8に接着されない非接着部91が形成されている。具体的には、保護体9の挟持体8側の端部の一部を折り返して融着することにより他の部分より強度を大きくすると共に、この部分を挟持体8に接着しないようにしている。なお、非接着部91は上述の形態に限られるものではなく、例えば、折り返して融着することなく、単に保護体9の挟持体8側の端部を挟持体8に接着しないものであっても良い。非接着部91は薬剤付き支持体1の使用時に保護体9を剥離する際のつまみ部として作用する。
なお、非接着部91は必ずしも設けなくてもよい。
【0059】
次に、この薬剤付き支持体1の使用方法について図13に基づいて説明する。なお、薬剤層2を眼表面に投与する場合を例に説明するが、例えば、角膜、眼瞼結膜又は結膜襄等の前眼部に投与するものであってもよい。図13(a)に示すように、使用者は、保護部9に形成されたつまみ部(非接着部91)をつまみ、保護体9を挟持体8側から剥離する。この際、必ずしも保護体9を完全に基板3から剥離する必要はなく、ミシン目41を越えて剥離すればよい。その後、図13(b)に示すように、ミシン目41に沿って、基板3を破断し、保護部9及び挟持体8が設けられていない側の基板3を取り除く。この結果、薬剤層2の一部が基板3及び挟持体8により形成される挟持空間81に挟まれ、薬剤層2の他の部分が基板3及び挟持体8から露出した状態となる図13(c)。
【0060】
図13(c)に示すように、使用者は切り離した基板3及び挟持体8のうち薬剤層2が設けられた側とは反対の端部近傍部位を指で摘み、薬剤層2を投与部位に近づける。本実施形態では、図13(d)に示すように、一方の手の指で下眼瞼を引き下げて結膜を露出させるとともに、他方の手の指で基板3及び挟持体8の端部近傍部位を摘んで、薬剤層2を眼表面に近づける。薬剤層2のうち基板3から突出した部分を眼表面に接触させ、薬剤層2を基板3から完全に剥離させ、薬剤層2が眼表面に投与される。上述のように、基板3及び挟持体8が、薬剤層2を投与する際に、当該薬剤層2を投与部位まで運ぶ支持体として機能する。
【0061】
[別実施形態]
(1)上述の実施形態において、基板3上に直接薬剤層2を設ける場合を例に説明したが、基板3と薬剤層2との間に粘着層5を設けてもよい。
この場合、図14に示すように、単一の粘着層5を薬剤層2の全領域に亘って設けてもよい。
また、図15に示すように、折り曲げ部4(ミシン目41)を境界として、粘着層5の種類を異ならせて、粘着力の高い高粘着層51と高粘着層51よりも粘着力の低い低粘着層52とを形成してもよい。なお、本実施形態を第2実施形態又は第3実施形態と同様の実施形態に適用する場合には、折り曲げ部4(4a)の近傍部位に高粘着層51を形成し、その両側の領域に低粘着層52を形成してもよい。
また、図16に示すように、折り曲げ部4(ミシン目41)を境界として、一方側のみに粘着層5を設けてもよい。なお、本実施形態を第2実施形態又は第3実施形態と同様の実施形態に適用する場合には、折り曲げ部4(4a)の近傍部位のみに粘着層5を設けてもよい。
【0062】
(2)上述の実施形態では、基板3の表面の材質を異ならせることにより、粘着力に差を設ける場合を例に説明したが、材質を異ならせることなく、基板の表面粗さ等、表面状態を変化させることにより、粘着力に差を設けてもよい。また、必ずしも粘着力に差を設けなくてもよい。
【0063】
(3)上述の実施形態では、脆弱部として、ミシン目41を形成する場合を例に説明したがこれに限られるものではない。例えば、脆弱部は、基板3の厚み方向に設けた切り込みや、溝部、基板の厚みが他の部分より薄い部分等、基板3の他の領域に比べて曲げ強度を弱く設定可能な構成であれば何れの構成であってもよい。なお、上述したように、脆弱部は、基板3の薬剤層2を設ける側の面とは反対側の面に設けるほうが好ましいが、これに限定されるものではなく、薬剤層2を設ける側の面に設けてもよい。また、両面に設けてもよい。
【0064】
(4)上述の脆弱部は必ずしも設けなくてもよい。但し、脆弱部を設けない場合、使用者に折り曲げ部が分かるように、基板に折り曲げ箇所を示す目印を設けることが好ましい。目印としては、特に限定はされないが、破線、実線等が挙げられる。なお、上述した脆弱部と目印の双方を設けてもよい。
【0065】
(5)また、図17に示すように、薬剤層2の上面にカバー層6を設けてもよい。カバー層6の材質は、特に限定されないが、例えば、生分解性ポリマー、水溶性ポリマー等、適
宜適用可能である。なお、薬剤層2を投与部位に的確に投与できるよう、前記カバー層は、投与部位への付着性を有していてもよい。図14に示す例では、折り曲げ部4を境界として一方側に薬剤層2が設けられ、他方側に粘着層5が設けられ、薬剤層2の上面と粘着層5の上面とに亘ってカバー層6が設けられる。
【0066】
(6)また、上述の実施形態では折り曲げ部4を一本のミシン目41の線で構成する場合を例に説明したが、折り曲げ部4を複数の隣接するミシン目41の線で構成してもよい。例えば、上述の第2実施形態を例に説明すると、図18(a)に示すように、折り曲げ部4が2本の隣接するミシン目41a、41bの線で構成されている。なお、折り曲げ部4は、3本以上のミシン目41の線で構成してもよい。この実施形態において、上述の実施形態と同様に、使用者が、基板3の両側の端部近傍を指で摘み、基板3を薬剤層2が形成された側の面とは反対の側へ折り曲げると、図18(b)に示すように、基板3がそれぞれのミシン目41a、41bの部分で折り曲げられる。この結果、図18(c)に示すように、薬剤層2のうち基板3の二つのミシン目41aとミシン目41bとの間の領域に形成された部分以外が基板3から剥離して露出する。つまり、薬剤層2のうち長手方向の中央部近傍の領域が、基板3のミシン目41aとミシン目41bとの間の領域に付着した状態で、薬剤層2のうち長手方向外側の領域が基板3から剥離して露出する。
【0067】
他の実施形態においても折り曲げ部4を複数の隣接するミシン目41の線で構成することができる。図19は、第3実施形態において、折り曲げ部4a,4bを複数の隣接するミシン目41の線で構成した例である。この実施形態では、それぞれの折り曲げ部4a,4bが2本の隣接するミシン目41a,41bの線で構成されている。なお、その他のいずれの実施形態においても、同様に折り曲げ部4を複数の隣接するミシン目41の線で構成することができる。
【0068】
(7)上述の実施形態では、基板3上に薬剤層2を形成する際に、基板3上に薬剤層2を粘着させる場合を例に説明したが上述に限られるものではない。例えば、薬剤層2を基板3上に物理的に保持してもよい。この実施形態では、基板の中央部近傍に二つの保持部材7(7a、7b)が設けられている。図20(a)および図20(b)に示すように、それぞれの保持部材7a、7bは、基板3の長手方向外側の端部が基板3に固定された固定端となっており、長手方向外側内側の端部が基板3に固定されない自由端となっている。保持部材7a、7bと基板3との間に薬剤層2が挟持されることにより、基板3上に薬剤層2が保持される。このように、基板3上に薬剤層2が設けられる。なお、上述の例では、二つの保持部材7a、7bを設ける例を示したが、保持部材7は一つでもよく、また、三つ以上でもよい。
【0069】
保持部材7(7a、7b)は、特に限定されないが、可撓性を有するものが好ましく、例えば、プラスチック、紙、フィルムなどで構成することができる。また、保持部材7(7a、7b)は、薬物層2を目視可能なように、透明若しくは半透明の部材で構成されていると好ましい。保持部材7a、7bを撓ませることにより、基板3と保持部材7a、7bとの間に薬剤層2が挿入される。
【0070】
上述の実施形態と同様に、使用者が基板3の両側の端部近傍を指で摘み、基板3を薬剤層2が形成された側の面とは反対の側へ折り曲げると、保持部材7a、7bのうちの一方の保持部材7aが撓み、保持部材7aと基板3による薬剤層2に対する挟持が解除される。この結果、図20(c)に示すように、薬剤層2の一端側のみが基板3および保持部材7bに挟持され状態となり、薬剤層2の他端つまり基板3および保持部材7aに挟持されていた部分が、基板3から突出する。このように、薬剤層2の一部が基板3から露出する。使用者は、上述の実施形態と同様に、折り曲げた基板3を支持体として、薬剤層2を投与部位まで運ぶことができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、前眼部に投与する薬剤付き支持体及びその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 薬剤付き支持体
2 薬剤層
3 基板
31 剥離膜層
4 折り曲げ部(脆弱部)
41 ミシン目又はミシン孔
5 粘着層
51 高粘着層
52 低粘着層
6 カバー層
7 保持部材
8 挟持体
81 挟持空間
9 保護体
91 非接着部
100 原反
101 薬剤フィルム
200 折り曲げ部形成部
201 薬剤層形成部
202 切断部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の長手方向中途部に、前眼部に投与する薬物成分を含有する薬剤層を備え、前記基板に当該基板を前記薬剤層が設けられた面とは反対の側へ折曲げ可能な折り曲げ部が設けられ、前記基板を前記折り曲げ部にて折り曲げることにより、前記薬剤層のうち前記基板と対向する面の少なくとも一部が前記基板から露出するように構成してある薬剤付き支持体。
【請求項2】
前記薬剤層が前記基板の前記折り曲げ部が形成された部位の両側に亘って形成され、前記基板を前記折り曲げ部にて折り曲げた際に、前記薬剤層のうち前記折り曲げ部を境界として一方の部分が前記基板と対向した状態を維持するとともに、前記折り曲げ部を境界として他方の部分が前記基板から露出して前記折り曲げ部から突出するように構成してある請求項1に記載の薬剤付き支持体。
【請求項3】
前記薬剤層が前記基板の前記折り曲げ部が形成された部位の両側に亘って形成され、前記基板を前記折り曲げ部にて折り曲げた際に、前記薬剤層のうち折り曲げ部に対応する部分を含む所定の部分が前記基板と対向した状態を維持するとともに、前記所定の部分を挟む両側の部分が前記基板から露出するように構成してある請求項1に記載の薬剤付き支持体。
【請求項4】
前記基板に複数の折り曲げ部が設けられ、前記基板のうち一つの折り曲げ部が形成された部位に前記薬剤層が形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項5】
前記基板と前記薬剤層との粘着部のうち前記基板を折り曲げた際に剥離する部分の粘着力を他の部分の粘着力よりも小さくなるように構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項6】
前記薬剤層と前記基板との間に粘着層が設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項7】
前記基板に前記薬剤層を保持する保持部材が設けられ、前記基板と前記保持部材とで前記薬剤層を挟持することにより、前記基板に前記薬剤層が備えられている請求項1〜6のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項8】
前記薬剤層の上面に、前記薬剤層を覆うカバー層が形成されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項9】
前記折り曲げ部に、前記基板の他の部分より曲げ強度の弱い脆弱部が形成されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項10】
前記折り曲げ部に、折り曲げ箇所を示す目印が形成されている請求項1〜9のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体の製造方法であって、
前記基板の原反の長手方向に沿って前記薬剤層を形成する薬剤層形成工程と、
前記基板の原反の長手方向に沿って前記折り曲げ部を形成する折り曲げ部形成工程と、
前記薬剤層形成工程及び前記折り曲げ部形成工程を行った後に前記基板の原反を長手方向に垂直な方向に所定間隔ごとに切断する切断工程とを備えた薬剤付き支持体の製造方法。
【請求項12】
基板の長手方向中途部に他の部分よりも強度の低い脆弱部が形成され、前眼部に投与する薬物成分を含有する薬剤層を前記基板上の一方の面に前記脆弱部を跨いで備え、前記基板の前記一方の面に設けられ前記薬剤層の前記長手方向における一端側から前記基板とともに薬剤層を挟持する挟持体と、前記長手方向における他端側から前記薬剤層の上面を超えて前記挟持体の上面の少なくとも一部に亘って設けられる保護体とを備えた薬剤付き支持体。
【請求項13】
前記基板及び前記挟持体のうち前記一端側から中途部までの領域が互いに接着され、前記基板及び前記挟持体のうちの互いに接着されていない部分において前記薬剤層が挟持され、前記保護体が前記基板の他端側の領域及び前記挟持体の少なくとも長手方向中途部に亘って接着されている請求項12に記載の薬剤付き支持体。
【請求項14】
前記挟持体が前記基板の前記一端側の端部から前記脆弱部の間の領域に亘って設けられ、前記保護体が前記基板の前記他端側の端部から前記挟持体の中途部に亘って設けられている請求項12又は13に記載の薬剤付き支持体。
【請求項15】
前記保護体の前記挟持体側の端部から所定の領域に亘って前記挟持体に接着されない非接着部が形成されている請求項12〜14のいずれか一項に記載の薬剤付き支持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−45379(P2012−45379A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165740(P2011−165740)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000177634)参天製薬株式会社 (177)
【出願人】(591091043)株式会社ツキオカ (38)
【Fターム(参考)】