説明

薬剤処分システム

未使用の薬剤及び期限切れの薬剤の環境放出の可能性は、処分手順の一部として、未使用の薬剤又は期限切れの薬剤をある量の活性炭と結合させるためのシステム及び方法の提供によって削減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、参照により全体が本明細書に組み込まれると見なされる、2004年1月23日に出願された特許出願第10/763,628号の一部継続出願である。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載)
該当なし。
【0003】
本発明は、概して未使用の薬剤又は期限切れの薬剤の処分システムに関する。より詳細には、本発明は、薬剤を不動化し、乱用者の体内への、又は環境への薬剤の放出を妨げるために結合剤を使用することを含む。
【背景技術】
【0004】
特に睡眠薬及び他の規制薬物の摂取、注射等による処方薬乱用の誘惑及び可能性は周知である。この一般に広くはびこる乱用の問題は、モルヒネ、オキシコンチン、フェンタニル、及び多くの他のものに関連する現在の問題によって例示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
残念なことに、薬剤にまつわる問題は乱用可能な睡眠薬に限られていない。AP通信社による最新の調査報告書によれば、アメリカ人は、毎年、2億5千ポンドの調合薬を配水管に流している(参考資料:Living on Earth.org online interview with EPA(地球に生きる、EPAとのオンラインインタビュー)、10/3/08)。さらに、これは、全米の多数の主要都市の飲料水源の汚染を生じさせている(参考資料Air Force Print News Today(空軍印刷ニュース)、3/24/08)。
【0006】
これらの汚染は環境に危険を呈し、人間、魚、及び野生生物に影響を及ぼしている。潜在的な問題は、異常な生理学的過程、生殖障害、癌の証拠の増加、及び抗菌薬耐性生物の増殖を含む(参考資料:Kansas Dept of Health and Environment(カンサス健康発達部、3/22/07)。
【0007】
調合薬の環境汚染の大きな源は、未使用の薬剤又は期限切れの薬剤の処分にある(参考資料eMedicineHealth、3/21/08)。歴史的に、これらの薬物はトイレに流されたり、又はゴミ箱に投げ捨てられ、最終的に地下水源にたどり着く結果となる可能性がある。FDA(食品医薬品局)がトイレに流すのを容認している薬剤は、乱用の可能性がある規制薬物だけである。したがって、多くの人々が、未使用の薬剤及び期限切れの薬剤をどのように処分するのかというジレンマに直面している。
【0008】
特に興味深いのは、経皮貼布技術に含まれる薬剤に関連する乱用又は環境放出の可能性である。残念なことに、経皮パッチでは、患者が処方された期間パッチを付けた後に、多大な量の薬品成分がパッチに残っている。この過剰な量の薬品に対するニーズは周知である。つまり、完全使用期間の間の経皮投与での適切な推進力を確実にすることが求められている。例えば、72時間の完全使用期間使用されたDuragesic(登録済)(Johnson&Johnsonの商標)パッチの公開試験では、フェンタニルの最初の荷重の28から84.4%が依然としてパッチの中に残っていた。研究の著者は、この残留調剤が乱用と誤使用に十分な量を表し、潜在的に死さえ招くと結論付けた(Marquardtら、Ann Pharmacother、1995年、29:969−71)。
【0009】
公開された研究の研究者は、経皮パッチの使用後に残留フェンタニルを失活させる必要性を認識し、使用済みのパッチを加熱した塩酸又は硫酸に浸浸することを勧めた(Zambauxら、Ann Pharm Fr 2000、58:176−179)。この方法は、加水分解化学反応によって残留フェンタニルを失活させることが判明した。この方法の大きな不利な点は、この方法が、非常に危険な物質の取り扱い及び処方薬の大部分の使用者にとっては一般的ではない手順を必要とするという点である。
【0010】
乱用の可能性の削減に対するもう1つの手法は、米国特許第5,236,714号に記載されている。その文書は、薬品と、調剤の形では放出できない形で存在する同時配合される拮抗剤であるが、他の特定の投与ルートによる組成物の乱用を防ぐために放出する同時配合される拮抗剤とを組み合わせることを開示している。したがって、この同時配合された拮抗薬は経皮的には浸透しないが、溶剤を使用することによって、又はその組み合わせを除去し、取り込むことによって乱用物質を抽出しようとする間に同時抽出されるだろう。この手法の1つの不利な点は、経皮パッチ内での2つの医薬品有効成分の同時調合に関連する保存可能期間の複雑な状態である。この手法の別の重大な制限は、使用済みのパッチが依然として経皮的な使用で乱用されることがあるという点である。最後に、この手法は、環境インパクト問題に対処していない。
【0011】
米国特許第5,804,215号(「Cubbage」)では、カプセル化システムとしての機能を果たすパウチを有する経皮パッチの処分システムが記載されている。この手法の1つの制限は、それを破ることができ、カプセル材料物質の裂け目によって乱用物質に到達できるようになるという点である。米国出願公報第2004/0146547号(「Marcenyac“」では、経皮パッチを入れるために使用される商品が、作用物質又は調剤が誤用されると放出される探知剤及び/又は失活剤をさらに含むことがある処分システムが記載されている。探知剤は、消去できない染料を含む。失活剤の例は、残留オピオイドを不溶性のリガンド受容体複合体の中に結合するオピオイド受容体、オピオイド受容体拮抗薬、物理金属イオン封鎖剤、もしくはつらい又は不快な特性のある非オピオイド薬を含む。この手法に関連する多数の制限がある。例えば、多くの失活剤はある特定の薬品成分に特有であり、他の薬品との使用時には効果がない。多くの手法は、乱用保護に制限され、追加の医学的に有効な化合物を含むことによる環境放出問題を悪化させている。さらに、失活剤層のフィルム(固形)形態は、薬剤の表面含有物にしか接触しない。パッチ又は薬剤容器が「乾燥」している場合、表面層の下に含まれる薬剤は失活剤に接触しない。この手法のさらなる重大な制限は、探知剤及び/又は失活剤が、商品が誤使用されたときにだけ放出され、したがって製品が適切に使用され、廃棄されるときには活性化されない点である。
【0012】
環境上の問題及び乱用の問題は、確実に経皮パッチ形態に限られるわけではない。実際、薬剤は、最も頻繁に経口錠剤又は溶液の形をとる。いったん、未使用の経口薬剤又は期限切れの経口薬剤が廃棄されると、これらの薬剤は他者によってゴミから回収され、乱用される可能性がある。さらに、大量の破棄された薬剤からの化合物が経時的に地下水源に放出されるのは不可避である。
【0013】
したがって、錠剤、液体、及び経皮パッチの形を含む多様な形をとる、未使用の薬剤又は期限切れの薬剤の乱用及び/又は環境汚染を防止するより汎用的で安全、且つより効果的な手段の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によって、未使用の薬剤及び期限切れの薬剤からの物質乱用又は環境汚染の可能性を削減するためのシステム及び方法が提供される。本発明は、接触時に薬剤を不動化し、失活させ、それによって乱用又は環境汚染の可能性を削減するように薬剤を処理する吸着物質であることがある、又は吸着物質を含む別個の結合剤を使用することを含む。本発明は、概して、経皮パッチ、経口錠剤、又は液体調剤の形態の未使用薬剤及び期限切れ薬剤の除去及び処分に関連している。
【0015】
本明細書に使用される用語「結合剤」は、接触時に薬剤を不動化する、又は別の方法で失活させる物質又は物質の組み合わせを意味する。結合剤は、吸着する吸着物質、又は化学的に吸着する物質、つまり対象の薬剤に化学的に結合する物質を含む。用語「活性」は、物質が、薬剤と接触すると直ちに不動化又は他の失活を実行し始めることを意味する。また、結合剤は、結合剤の一部で事前に吸着された、拮抗薬、酸化化合物、又は刺激性化合物を含むこともある。
【0016】
考えられる結合剤は、制限なく、ゼオライト、粘土、シリカゲル、酸化アルミニウム、及び活性炭を含む。好ましい結合組成物は、薬剤の吸着剤又は化学吸着剤であってよいそれらの結合剤を含む。これらの作用物質は薬剤を不動化し、通常使用可能な手段による将来の分離を不可能にする。活性炭は、フェンタニル等の合成オピオイドを含む薬剤化合物の吸着又は化学吸着に特に適していることが判明している。したがって、これらの化合物を適切な結合剤に接触させることは、その後、乱用状況での、又は環境汚染のための地下水源での通常の溶剤による抽出を防止することが判明している。
【0017】
活性炭は、薬剤処分目的で、結合剤の中の好ましい吸着物質として有用であることが判明しているが、活性炭には乗り越える必要のある特定の制限がある。かかる1つの制限は保存性に関する。
【0018】
活性炭は多くの化合物に対してほぼ汎用な吸着剤であることが知られているが、その使用は、一般に、水源又は空気源のろ過ユニットの中に入れることによる微量の汚染の除去に制限されている。さらに、活性炭の吸着容量は有限である。いったん飽和すると、活性炭は効果を失ってしまう。活性炭は、保存庫で通常大気に露呈されると、空気中に見られるガス状の不純物の吸着のために最終的には失活してしまう。したがって、本発明に従って使用される活性炭は、保存可能期間を保ち、延長するために、保存状態の間の汚染による失活から保護される必要がある。
【0019】
結合剤中の吸着物質として活性炭を使用するには、対象とする薬剤との直接的な接触が必要である。活性炭及び失活が所望される種類が、ともに固形である場合、結合剤と薬剤の接触が完全ではない場合、失活は完全に達成され得ない。さらに、活性炭は水に不溶であるので、活性炭は水溶液中に均一に存在しない。
【0020】
接触強化技法を提供することは、本発明の一態様である。これらの技法は、固形である薬物を溶解させるための物質又は媒質、及び溶液中で活性炭を懸濁し、対象とする薬剤との接触を改善し、完全な失活を実現する物質を含む。
【0021】
本発明に従って未使用の薬剤又は期限切れの薬剤を失活させるためのシステムの実施形態の1つの形は、対象とする薬剤を受け入れるための使い捨ての容器を含むキットである。使い捨て容器は、薬剤のラベル表示されている容量を吸着又は化学吸着するために十分なある量の活性炭を含む。任意選択で、この容器は、活性炭及び薬剤を、粘性スラリーの中に懸濁し、スラリー全体で活性炭と、溶解した薬剤の密接な接触を達成できるようにするある量のゲル化剤も含む。これは、非常に効率的であることが判明している。好ましい1つのゲル化剤は、ある量の水と混合されたときの0.5から5.0%(w/w)の重量濃度でのHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)である。粘着性ゲルが、容器の中に、溶解した形の薬剤を含む混合物を保持するのに役立つため、ゲル化剤を使用するプロセスは、例えば、粘着性ゲルが、万一容器に裂け目があった場合に粘性ではない溶液が漏れ出すように容易に漏れ出さない等、追加の利点を有する。
【0022】
他の有用な添加物は、融和性のある酸化剤を含む。これらの作用物質は、一般に、吸着プロセスが起こっている間に、未使用の薬剤又は期限切れの薬剤を非活性な形又はあまり活性ではない形に分解するのに役立つ。かかる酸化剤の例は、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過酸化物、及び塩酸塩を含む。
【0023】
本発明の追加の態様では、使い捨て容器は、使用前の保管中は密封され、活性炭がその吸着能力を保持するようにガス状の有機化合物に対して実質的には不浸透性に保たれる。各容器には、開放時に、未使用の薬剤又は期限切れの薬剤を処分するためにアクセスできるようにする、密封可能な開口部(好ましくは再び閉じることのできる)が備えられる。未使用の薬剤又は期限切れの薬剤が固形(錠剤、パッチ等)である場合では、薬剤を溶解するために十分なある量の水が容器に付加される。一般に、付加される水のその量は、失活する薬剤の量の約20倍である。水とともに装置に付加される薬剤は、液体の中にゆっくりと溶解し、液体(又はゲル化したスラリー)内での拡散を通して、薬剤は活性炭と接触し、吸着される(失活される)。
【0024】
容器又はパウチを閉じるための密封可能なクロージャ装置も、使用済み薬剤の処分のためのクロージャシステムを提供する。本クロージャシステムは、容器内の失活した薬剤を密封するための、登録商標Ziploc(登録済)と関連するもの等の接着シール又はプラスチック容器再シール装置を含んでよい。1つの好ましい容器システムは、開放し、薬剤及び水を受け入れるための切り口が付いた、ラミネート加工したシール、並びに薬剤及び水の挿入後にパウチ内部の内容物を再び閉じる役割を果たすジップ再使用可能シールを有する、ラミネートフォイル起立式パウチを含む。許容できる起立式パウチの例は、5“(12.7cm)x8”(20.3cm)x3“(7.6cm)のパウチであり、パーツ番号BBB03Zとしてカリフォルニア州ロサンジェルスのインパック社(Impak Corporation)から入手できる。未使用の薬剤又は期限切れの薬剤が液体の形状をとる場合、水の付加は必要とされない。
【0025】
使い捨てキットの内容物の乱用さらに防ぐために利用可能にできる追加オプションは、活性炭素の一部に事前に吸着される拮抗薬又は刺激性化合物のどちらかを取り込むことである。この場合、乱用者が結合剤から薬品を除去しようと試みると、拮抗薬及び/又は刺激剤は、薬品とともに同時抽出される。適切な防護薬剤の例は、拮抗薬としてナロキソン又はナルトレキソン、及び刺激剤としてカプサイシン又はイペカックを含む。
【0026】
図中、類似する数詞は、同図中全体で類似するパーツを示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1及び図2は、明確にするためにパーツが省略された容器システムを示す、本発明の一実施形態の簡略化された概略前面図及び側面図である。
【図2】図1及び図2は、明確にするためにパーツが省略された容器システムを示す、本発明の一実施形態の簡略化された概略前面図及び側面図である。
【図3】200〜240nmの吸収を示すクエン酸フェンタニルの37.7mg/lの溶液のUV/VIS分光測光走査を示す図である。
【図4】活性炭と接触してから5分後の、図2の溶液のUV/VIS分光測光走査図である。
【図5】図3のクエン酸フェンタニルを吸着するために使用された活性炭から吸着されたクエン酸フェンタニルを抽出しようと試みるために活用された50%のエタノール溶液のUV/VIS分光測光走査図である。
【図6A】図6A及び図6Bは、モデル化合物として未処理の、及び処理済みの塩酸リドカインのUV/VIS分光測光走査を示す図である。
【図6B】図6A及び図6Bは、モデル化合物として未処理の、及び処理済みの塩酸リドカインのUV/VIS分光測光走査を示す図である。
【図6C】処理されたリドカイン対未処理のリドカインの図による抽出比較である。
【図7A】図7A及び図7Bは、モデル化合物としての未処理の、及び処理済みのジクロフェナクカリウムのUV/VIS分光測光走査図である。
【図7B】図7A及び図7Bは、モデル化合物としての未処理の、及び処理済みのジクロフェナクカリウムのUV/VIS分光測光走査図である。
【図7C】処理されたジクロフェナク対未処理のジクロフェナクの図による抽出比較である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1及び図2は、水及び有機蒸気を実質的に通さない外側障壁を有し、内部に活性結合剤が組み込まれている使い捨てパウチの形をとる薬剤処分キットのそれぞれ前面図及び側面図を示す。一般に、パウチは10で示され、切り口14を使用して開放できるシール層12を含む。さらに、パウチは、廃棄薬剤を挿入後に再度閉じることができるように再使用可能なジップロックシール16を含む。パウチは、アルミニウムフォイル等の有機蒸気に実質的に不浸透性の材料からできている外側障壁18を有する。ある量の活性炭及びゲル化剤がパウチの内部の20で示され、ラベルは22で示される。
【0029】
切れ目16は、使用前にパウチの封を切り、水、及び錠剤又は他の固体、液体又はスキンパッチの形態をとる廃棄薬剤を挿入するための開放量を露呈するために使用される。かかる挿入の後、パウチはジップシール16を使用することで再び閉じられる。パウチが示されているが、プラスチック又はガラスのビン等の他の容器も効果的な格納システムを提供できることが認識され、理解される。水は廃棄固形薬剤を溶解するか、又は液体と混合し、その後、活性炭が吸着又は化学吸着のプロセスを通してそれらを結合する。次に、吸着された又は化学吸着された種は、それが医学的に非活性な状態に留まり、環境の中に溶解する又溶け出すのを抑制する、固形基板の上に実質的に保持されるようになる。
【0030】
活性炭が、用途に応じて、微粉化から粒状まで多岐に渡る網目サイズのどれであってよいことが理解される。粉末サイズの活性炭を使用できるが、好ましい範囲は約8メッシュから約325メッシュである。特定の好ましい平均網目サイズは、処分システム、又はキットの特定の用途次第であり、多岐に渡る平均網目サイズを有する複数のキットが考えられる。
【0031】
代替実施形態は、薬剤が粘性の高い水分含有量の溶液の中に溶解され、ゲル化剤が混合物全体で活性炭を懸濁するのを助け、混合物がパウチから漏れ出すのを防ぐ働きをするように、微粒化した活性炭素とともにゲル化剤を含んでよい。
0.5から5%(w/w)のヒドロキシプロピルメチルセルロース又は類似したゲル化剤は、吸着/化学吸着のプロセスを加速しつつも、薬剤混合物中の活性炭の懸濁を促進し、このようにしてそれをより効果的にする役割を果たす。吸着/化学吸着プロセスの前に薬剤を不活性な形に分解する役割を果たす酸化剤等の他の化合物も有用である場合がある。過炭酸塩、過ホウ酸塩等の酸化剤は、この目的に役立ち、活性炭とともに同梱できる。
【0032】
未使用の薬剤及び期限切れの薬剤を本発明のキットを用いて処分するには、以下のステップが含まれる。1)キット内容物を露呈するために不浸透性シールを開く、2)(薬剤が固形経口の形又はパッチの形をとる場合)大量の水を加える、3)キットラベルに示されたおおよその薬剤容量以下のある量の薬剤を加える、4)パウチを再び閉じ、化合物を静かに混合する、及び5)パウチを通常のごみ箱に処分する。パウチの体積及びパウチに含まれる活性炭の量が、おおよその薬剤処理容量を決定する。最適な結果のためには、付加される水の体積及びパウチに入れられる活性炭の量がともに重量ベースでおおよその薬剤容量の約3倍以上でなければならないことが判明している。
【0033】
いくつかの場合、排気薬剤は、明確に乱用可能と示される薬剤である場合がある。これは、フェンタニル、モルヒネ、ヒドロモルホン等のオピオイドを含む。この状況では、本概念は、薬剤が、乱用目的で他社によって使用済みのキットから後に便利に回収できないシステムを提供する。図3は、クエン酸フェンタニルの37.7mg/l溶液のUV/VIS分光測光走査の図を示す。200〜240nmの吸収は、溶液中にクエン酸フェンタニルが存在するためであり、吸収度の大きさはその化合物の溶解濃度に直接関係している。薬品の濃度が重要であることは容易に分かる。図4は、活性炭との接触から5分後の図3の溶液の第2のUV/VIS分光測光走査の図を表す。200〜240nmの吸収量の劇的な削減が見られる。このデータは、活性炭との5分の接触によってクエン酸フェンタニルの推定97%が溶液から除去されたことを示す。クエン酸フェンタニルの377マイクログラムという元の含有量から11マイクログラムだけが溶液中に残っていた。
【0034】
次に、クエン酸フェンタニルが、その後、乱用可能な形態に回収できるかどうかを測定するために、クエン酸フェンタニルを図3の溶液から吸着するために活用された活性炭が、採取され、吸着されたクエン酸フェンタニルを再溶解しようとして50%のエタノール/水溶液中に置かれた。図5の図は、その50%のエタノール溶液中のクエン酸フェンタニルの回収がきわめて少ない、つまりこの薬品の5%未満が回収されたと考えられる、50%のエタノール溶液の別のUV/VIS分光測光走査を表す。これは、活性炭上への薬品の吸着がほぼ完了していただけではなく、非常に粘り強かったことを示している。結合された366マイクログラムのクエン酸フェンタニルの内、13マイクログラムだけが、抽出を試みたプロセスでうまく分離された。
【0035】
別の態様では、ある状況下では、処分された薬剤の乱用をさらに阻止するために、拮抗薬及び/又は刺激性化合物が、活性炭とともにパッケージの中に入れ込まれる可能性があることも考えられる。拮抗薬化合物の例はナロキソンを含み、刺激性化合物の例はカプサイシンを含む。この場合、結合剤の一部の上にこれらの作用物質を事前に吸着することが有効である場合がある。このようにすることによって、適切に薬剤をキットの中に挿入したユーザは、危険な形態の化合物にさらされることはないが、それらは、乱用者が溶媒を使用して活性薬品を抽出しようと試みる場合に、薬品と同時放出されるだろう。
【0036】
(例I)
モデル化合物の試験として、本発明による薬剤キットが、リドカインを「失活させる」ために使用された。リドカインは麻酔薬であり、液体、ゲル、クリーム及びパッチの形で共通の成分である。手順は以下の通りであった。
1.20グラムの活性炭及び2グラムのHPMCの混合物に、100mlの水が加えられ、活性炭の懸濁ゲルスラリーが生じた。2.5グラムのリドカインHClが添加され、この溶液が混合された。
2.対象(未処理)溶液が、同量のリドカインHClを水と混合することによって調製された。
3.両方の溶液とも、7日間平衡化させた。
4.各溶液はナイロンフィルタ膜でろ過され、重量1:100の比率で蒸留水で希釈され、この希釈された溶液は環境への流出を表す。
5.両方の溶液ともUV/VIS分光測光で200nmと300nmの間で走査された。
【0037】
未処理溶液は、リドカイン吸収度に相当する、265nmで0.368のピーク吸収度を示した。処理済みの溶液は、類似波長で0.036のピーク吸収度を示した。したがって、活性炭スラリーは、リドカインHClを隔離する上で90%以上効果的であった。図6Aは、未処理リドカイン溶液のUV/VIS分光測光走査であり、図6Bは処理済みリドカインのUV/VIS分光測光走査であり、図6Cは、未処理グループの回収と処理済みグループの回収を比較したグラフである。
【0038】
(例II)
別のモデル化合物の試験として、本発明の薬剤キットが、ジクロフェナクを「失活させる」ために使用された。ジクロフェナクは、抗炎症薬であり、経口、ゲル、及びパッチの形で共通の成分である。手順は以下の通りであった。
1.20グラムの活性炭(1500)と2グラムのHPMCの混合物に、100mlの水が加えられ、活性炭の懸濁ゲルスラリーが生じた。2.5グラムのジクロフェナクカリウム及び該溶液が混合された。
2.(未処理の)対象溶液が、同量のジクロフェナクカリウムを水と混合することによって調製された。
3.両方の溶液とも、7日間平衡化させた。
4.各溶液はナイロンフィルタ膜でろ過され、重量1:1000の比率で蒸留水で希釈され、この希釈された溶液は環境への流出を表す。
5.両方の溶液ともUV/VIS分光測光で200nmと300nmの間で走査された。
未処理の溶液は、ジクロフェナク吸収度に相当する、277nmで0.757のピーク吸収度を示した。処理済み溶液は、類似波長で0.014というピーク吸収度を示した。したがって、この活性炭スラリーは、ジクロフェナクを隔離する上で98.2%効果的であった。図7Aは、未処理ジクロフェナク溶液のUV/VIS分光測光走査であり、図7Bは処理済みジクロフェナクのUV/VIS分光測光走査であり、図7Cは、未処理グループの回収と処理済みグループの回収を比較したグラフである。
【0039】
本発明は、特許制定法に準拠するため、及び新規原則を適用し、必要されるようにかかる特殊成分を構築し、使用するために必要とされる情報を当業者に提供する目的で、本明細書にかなり詳しく説明された。しかしながら、本発明は明確に異なる設備及び装置によって実施することができ、ともに設備及び操作手順に関して、多様な変型を、本発明自体の範囲から逸脱することなく達成できることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未使用の薬剤からの物質の乱用又は環境汚染を削減するための使い捨て処分システムであって、
(a)開放できる使い捨ての密封可能な容器又はパウチの中に、ある量の未使用の薬剤物質を受け入れるために開放できる使い捨ての密封可能な容器又はパウチと、
(b)接触時に前記薬剤を処理するための、前記容器内のある量の活性結合剤であって、前記結合剤が、一般に前記薬剤の後の独立した抽出を妨げる、吸着剤及び化学吸着剤並びにそれらの組み合わせから成るグループから選択されるある量の物質を含み、前記薬剤の前記容器内への挿入が、前記薬剤を前記結合剤に接触させるように、前記結合剤が保持されるある量の活性結合剤と、
(c)前記容器を密封するためのクロージャを含み、それによって処理済みの薬剤を捕捉する前記容器と、
を含むシステム。
【請求項2】
前記活性結合剤が、活性炭を懸濁し、それによって前記薬剤との接触を改善するための懸濁物質の中に含まれる前記活性炭を含む、請求項2に記載の処分システム。
【請求項3】
前記懸濁物質が、ゲル化剤をさらに含む、請求項2に記載の処分システム。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項3に記載の処分システム。
【請求項5】
前記容器が有機蒸気を通さない、請求項1に記載の処分システム。
【請求項6】
前記クロージャが接着シール及びプラスチック容器ジップ再使用可能クロージャ装置から選択される、請求項1に記載の処分システム。
【請求項7】
前記容器が、金属箔の層を含むパウチの形をとる、請求項1に記載の処分システム。
【請求項8】
前記活性炭が、一般に約8メッシュと約325メッシュの間の粒径である、請求項2に記載の処分システム。
【請求項9】
前記クロージャが再密閉可能な、請求項1に記載の処分システム。
【請求項10】
前記クロージャが再密閉可能な、請求項4に記載の処分システム。
【請求項11】
前記クロージャが再密閉可能な、請求項5に記載の処分システム。
【請求項12】
未使用の薬剤を処分するためのパーツのキットであって、
(a)ある量の未使用の薬剤を収容するための使い捨ての密封可能な容器又はパウチと、
(b)前記容器内で使用される、接触時に前記薬剤を処理するためのある量の活性結合剤と、
(c)前記活性結合剤を懸濁し、前記薬剤との接触を促進するためのある量の懸濁物質と、
を含むキット。
【請求項13】
前記活性結合剤が活性炭を含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記活性炭が、一般に約8メッシュと約325メッシュの間の粒径である、請求項13に記載の処分システム。
【請求項15】
前記懸濁物質がさらにゲル化剤を含む、請求項12に記載の処分システム。
【請求項16】
前記結合剤の一部に事前に吸着される、オキシダント、拮抗薬、及び刺激性化合物から成るグループから選択される物質をさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項17】
前記活性炭が、一般に約8メッシュと約325メッシュの間の粒径である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
未使用の薬剤からの物質の乱用又は環境汚染を削減するための使い捨ての処分システムであって、
(a)ソフトパウチの形の使い捨ての密封可能な容器の中に、ある量の未使用の薬剤を受け入れるためにアクセスできるようにするための開口部の提供を含む、ソフトパウチの形の使い捨ての密封可能な容器と、
(b)前記薬剤の後の独立した抽出を阻止するために、接触時に前記未使用の薬剤を処理するためのある量の活性炭を含む、前記容器内のある量の活性結合剤と、
(c)前記活性炭を懸濁するための、ゲル化剤を含む前記容器内の懸濁物質と、
(d)前記使い捨て容器を密封し、それによって処理済みの薬剤を捕捉するためのクロージャと、
を含むシステム。
【請求項19】
前記活性炭の一部の上に事前に吸着される、拮抗薬、オキシダント、及び刺激性化合物、又はそれらの組み合わせから成るグループから選択される成分をさらに含む、請求項18に記載の処分システム。
【請求項20】
前記活性炭が、一般に約8メッシュと約325メッシュの間の粒径である、請求項18に記載の処分システム。
【請求項21】
前記活性炭が、一般に約8メッシュと約325メッシュの間の粒径である、請求項19に記載の処分システム。
【請求項22】
前記活性炭の一部の上に事前に吸着される、拮抗薬、オキシダント、及び刺激性化合物、又はそれらの組み合わせから成るグループから選択される成分をさらに含む、請求項2に記載の処分システム。
【請求項23】
前記クロージャが再密閉可能である、請求項18に記載の処分システム。
【請求項24】
未使用の薬剤を処分する方法であって、
(a)処理済みの未使用の薬剤を入れるための使い捨ての密封可能な容器又はパウチを提供することと、
(b)前記未使用の薬剤を処理するための活性炭を含むある量の活性結合剤を提供することと、
(c)前記容器を開放し、前記未使用の薬剤を挿入することと、
(d)前記活性炭のための懸濁物質、及び前記容器内の固形の薬剤を溶解するための物質から成るグループから選択されるある量の物質を提供することと、
(e)前記未使用の薬剤を、前記容器内の前記結合剤に接触させることと、
(f)前記容器を密封することと、
を含む方法。
【請求項25】
(c)が、前記薬剤を溶解させるため、又は前記薬剤を、パッチと接触させるために、前記容器に、ある量の水を付加することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記結合剤がゲルに含有される、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2012−521263(P2012−521263A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501988(P2012−501988)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/000552
【国際公開番号】WO2010/110837
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【Fターム(参考)】