説明

薬剤分配器

【課題】デバイス動作の必要な工程数を最小限にし、掃除のためマウスピースを露出できる薬剤分配器を提供する。
【解決手段】複数の個別の薬剤区分を保持している少なくとも1つの薬剤キャリアとともに使用される薬剤分配器であり、少なくとも1つの薬剤キャリアが保持している個別の薬剤区分を分配するために作動可能な分配機構340と、マウスピースと、カバー330とを備える。カバーは、マウスピースが覆われる第1の位置から少なくとも部分的に露出する第2の位置へ、また、露出する第3の位置へ移動する。カバーが第3の位置へ移動することにより、分配機構が作動する。カバーと分配機構の連結は、第1および第2の爪歯車機構を備える爪歯車装置を構成する爪歯車346を介して形成され、第1の爪歯車機構はカバーによって爪歯車装置を駆動させ、第2の爪歯車機構によって爪歯車装置は一回転方向にのみ増分される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を分配するための薬剤分配器に関し、特に、粉末または錠剤状の薬剤を分配するのに使用される分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば気管支拡張症の治療において、薬剤を投与するのに吸入器を使用することは良く知られている。そのようなデバイスは、一般に、薬剤キャリアがその中に配置された本体またはハウジングを備える。既知の吸入器としては、薬剤キャリアが粉末状薬剤の多数の個別の用量を収容したブリスタストリップであるものが挙げられる。そのようなデバイスは、通常、これらの用量にアクセスする機構を含み、この機構は通常、穿孔手段または蓋シートをベースシートから剥離する手段を備える。その結果、粉末状薬剤にアクセスし吸入することができる。そのような機構は、錠剤状の薬剤を分配するのに使用することもでき、その際、蓋シートをベースシートから剥離することによって錠剤を露出させ、取り出して摂取する。
【0003】
そのようなデバイスでは、一般的に、デバイス内のストリップを前進させ、ストリップが保持している薬剤の個別の各用量を連続して開放部に至らせることにより、連続的に各用量にアクセスすることができるようになる。GlaxoSmithKline Plcより商標名Diskus(登録商標)として販売されているものなどの既知のデバイスは、一般的に、ストリップ前進機構に連結された(例えば、歯車列を介して)、ユーザが作動させることができるレバー機構を備える。したがって、ユーザは、レバーを作動させてストリップを前進させ、それによって、薬剤の次の個別の用量が開放部において利用可能になる。
【0004】
そのようなデバイスはまた、一般的にマウスピースを備え、ユーザはそれを介して吸入を行って、個別の薬剤用量が吸入によって送達される。ごみまたはほこりの粒子によって汚染されることを防ぐため、マウスピースに保護カバーが設けられることが望ましい。使用の際、マウスピースを介して吸入する前にマウスピースを露出させるため、マウスピースカバーはユーザによって取り外される。GlaxoSmithKline PlcのDiskus(登録商標)吸入器などの特定のデバイスは、デバイスのハウジングに取り付けられ、マウスピースが覆われる位置からマウスピースが露出する位置へ可逆的に移動可能な(例えば、旋回移動によって)マウスピースカバーを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は、デバイスが動作できる状態にするのに必要な工程数を最小限に抑えるという観点から、マウスピースを露出させるためのマウスピースカバーの移動を、デバイス内のストリップを前進させるためのレバーの作動と連結させることが、場合によっては望ましいことを認識している。しかし、出願人はまた、ユーザが、掃除などのためにカバーを開いてマウスピースを露出させたいと考え、ただしその動作によって用量も前進してしまうことは望まない場合があるという、起こり得る課題を認識している。この課題を解決するため、出願人は、第1の「マウスピースが覆われた」位置から中間の「マウスピースが露出した」位置へ移動可能であり、ただしそれに次いで、ストリップ前進機構を係合してデバイス内のストリップを前進させるようにさらに連続して移動可能な、マウスピースカバーを有するデバイスを発明した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、複数の個別の薬剤区分を保持している少なくとも1つの薬剤キャリアとともに使用するための薬剤分配器であって、(a)前記少なくとも1つの薬剤キャリアが保持している個別の薬剤区分を分配するために作動可能な分配機構と、(b)マウスピースと、(c)前記マウスピースのカバーであって、前記マウスピースが覆われる第1の位置から前記マウスピースが少なくとも部分的に露出する第2の位置へ、また前記マウスピースが露出する第3の位置へ連続的に移動するように、分配器に移動可能に取り付けられたカバーとを備え、カバーが、第1の位置から第2の位置へではなく、第2の位置から第3の位置へ移動することにより分配機構が作動するように、前記カバーが前記分配機構と連結するように適合された、薬剤分配器が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、複数の個別の薬剤用量区分をそれぞれ保持している1つまたは複数の細長い形態の薬剤キャリアとともに使用するための薬剤分配器であって、(a)ハウジングと、(b)前記ハウジング内の、前記1つまたは複数の薬剤キャリアがそれぞれ保持している個別の薬剤用量を分配する分配機構であって、i)1つまたは複数の薬剤キャリアそれぞれを受け入れる受入れ部と、ii)前記受入れ部によって1つまたは複数の薬剤キャリアそれぞれが受け入れられると、そこから個別の薬剤区分を放出する放出部と、iii)前記放出部によって放出可能な1つまたは複数の薬剤キャリアそれぞれの前記個別の薬剤用量区分と連通している排出口と、iv)各薬剤キャリアの前記個別の薬剤区分を個々に割り送る(indexing)インデクサとを備える分配機構と、(c)ハウジングに設けられた、前記排出口と連通することができるマウスピースと、(d)ハウジングに移動可能に接続された、前記マウスピースが覆われる第1の位置から前記マウスピースが少なくとも部分的に露出する第2の位置へ移動可能な前記マウスピースのカバーとを備え、カバーが第2の位置から第3の位置へさらに移動することにより、分配機構が作動するように、前記カバーが前記分配機構と連結することができる、薬剤分配器が提供される。
【0008】
本発明の薬剤分配器は、好ましくは、手持ち型の手動操作が可能な分配器である。
【0009】
本発明の薬剤分配器は、好ましくは吸入器、特に乾燥粉末吸入器(DPI)である。一般的に、DPIは呼吸作動式であり、すなわち、マウスピースの位置で患者が吸入を行うことによって、DPIに入りそこを通る吸気流が生じ、それによって薬剤粉末が薬剤キャリア(1つまたは複数)から患者の気道内に運ばれる。
【0010】
本明細書の第1の実施形態では、薬剤分配器は、単一の、任意に細長い形態の薬剤キャリアを受け入れるように設計される。
【0011】
本明細書の第2の実施形態では、薬剤分配器は、複数の、任意に細長い形態の薬剤キャリアを受け入れるように設計される。好ましくは、薬剤分配器は、2〜4つのそのような薬剤キャリアを、より好ましくは2つのそのようなキャリアを受け入れるように設計される。適切には、この第2の実施形態においては、組み合わされて複数の薬剤キャリアそれぞれから放出可能な個別の薬剤用量区分は、規定用量の混合製品を含む。すなわち、互いに組み合わされたとき(例えば、放出時)、個別の活性薬剤用量区分は「多重活性(multi-active)」薬剤治療の単一用量を形成する。
【0012】
本明細書の薬剤分配器とともに使用するのに適した薬剤キャリアは、それによって保持される複数の個別の用量区分を有する。個別の用量区分は、一般的に間隔を空けて配置され、より好ましくは、各用量区分に別個にアクセス可能なように、キャリア上で漸進的に配置される(例えば、連続的漸進)。
【0013】
本明細書では、薬剤キャリアという用語は、任意の適切な形態のキャリアを規定するために使用される。適切には、細長い形態の薬剤キャリアはそれぞれストリップまたはテープ状である。1つの好ましい態様では、キャリアはブリスタパック形態を有するが、例えば、印刷、塗布、および真空吸蔵など、任意の適切なプロセスによって薬剤がその上に適用されているキャリアを含むことも可能である。
【0014】
1つの態様では、薬剤キャリアは積層体状のブリスタパックを備える。適切には、積層体は、金属フォイル、有機ポリマー材料、および紙から成る群から選択された材料を含む。適切な金属フォイルとしては、5〜100μm、好ましくは10〜50μm、例えば20〜30μmの厚さを有するアルミニウムフォイルまたはスズフォイルが挙げられる。適切な有機ポリマー材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0015】
細長いストリップ上のキャリアのポケット内に含まれる薬剤用量区分は、該当するポケットを破る、それに孔をあける、または剥がすなど、任意の適切なアクセス手段によってアクセスされる。
【0016】
1つの適切なブリスタパック状の薬剤キャリアは、剥離可能なブリスタストリップを備える。適切には、剥離可能なブリスタストリップは、個別の薬剤用量区分を収容するポケットをその中に規定する、ブリスタがその中に形成されたベースシートと、蓋シートとベースシートを剥離することができるようにして、ブリスタの領域を除いてベースシートに気密封止された蓋シートとを備える。ベースシートおよび蓋シートは、一般的に、それらが一般的に互いに全く封止されない前端部分を除いて、それらの全幅にわたって互いに封止される。したがって、別個のベースシートと蓋シートの前端部分はストリップの端部にある。ベースシートおよび蓋シートはそれぞれ、各ポケットの内容物を(例えば、別個に)放出するため、互いから剥離して分離することが可能である。
【0017】
適切には、蓋シートは少なくとも、(a)紙、(b)紙が接着されたポリエステル、(c)ポリエステルが接着されたアルミニウムフォイルの連続層を含み、ベースシートに結合するためヒートシールラッカーで被覆される。各層の厚さは、所望の性質によって選択されてもよいが、一般的には、5〜200ミクロン程度、特に10〜50ミクロンである。
【0018】
適切には、ベースシートは少なくとも、(a)延伸ポリアミド(OPA)、(b)OPAが接着されたアルミニウムフォイル、(c)アルミニウムフォイルが接着された、ポリマー材料(例えば、ポリ塩化ビニル)を含む第3の層の連続層を含む。
【0019】
様々な既知の技術を用いて、蓋シートとベースシートを接合し、したがって剥離可能なブリスタストリップのブリスタを封止することができる。そのような方法としては、接着結合、ホットメタル結合、ホットメタル溶接、高周波溶接、レーザー溶接、超音波溶接、およびホットバー封止(hot bar sealing)が挙げられる。剥離可能なブリスタの蓋シートおよびベースシートは、特に、従来のヒートシール方法よりも低温で実施される「冷間(cold form)」封止方法によって封止可能である。そのような「冷間」封止方法は、ブリスタに収容される薬剤または薬剤調合物が感熱性(例えば、加熱によって劣化または変性する)である場合に特に有用である。適切な「冷間」封止方法は、150〜250℃、より好ましくは210〜240℃の範囲の温度で実施される。
【0020】
1つの特定の態様では、第1の細長い形態の薬剤キャリアは、複数の個別の単一活性薬剤用量区分を保持し、第2の細長い形態の薬剤キャリアは、複数の個別の多重活性薬剤用量区分(特に、二重活性の、すなわち2つの活性成分を含む薬剤区分)を保持する。単一活性および多重活性の薬剤成分は、組み合わされて、規定の混合薬剤製品を含む。
【0021】
適切には、複数の個別の用量区分が均一に連続して各薬剤キャリアに提供される。具体的には、各用量区分間の間隔(すなわち、ピッチ)は系列全体にわたって均一である。ただし、他の態様では、間隔(すなわち、ピッチ)は系列全体にわたって変わってもよい(すなわち、不均一である)。特定の例では、ピッチは、系列全体にわたって徐々に減少するか、あるいは徐々に増加してもよい。
【0022】
複数の細長い形態の薬剤キャリアが薬剤分配器に提供される場合、これらは任意の適切な構成で配置されてもよい。好ましい1つの配置は「並列」構成であり、その場合、例えば、2つのキャリア(例えば、2つのコイル状のブリスタストリップ)は分配器内で互いに横に並んで位置するように配置される。別の好ましい配置は「二段」構成であり、その場合、例えば、2つのキャリア(例えば、同じらせん軸線を共有する2つのコイル状のブリスタストリップ)は分配器内で互いに上下に並んで位置するように配置される。
【0023】
ハウジングは、薬剤分配器の他の機構を収容するような、任意の適切な形状または形態を成してもよい。1つの特定の態様では、ハウジングは、接合されて全体としてシェル状のハウジングを形成する2つのシェルの片割れを備えるシェルの形状を成す。
【0024】
適切には、薬剤分配器が複数の薬剤キャリアを収容するのに適している場合、分配機構の構成要素のいくつかまたは全ては薬剤キャリアそれぞれに共通である。共通の構成要素を有することの利点は、薬剤分配器における別個の部品の数を最小限に抑えられることである。
【0025】
他の態様では、共通ではない構成要素の動作は方向の点で適切に連結されてもよい。連結は、機械的リンク機構(例えば、共歯車装置(co-gearing)、もしくは連結アーム/ロッドの使用による)、または電気機械的連結制御など、任意の適切なやり方によって達成される。連結することの利点は、各薬剤キャリアの割送り/前進を連結されたやり方で達成できることである。
【0026】
他の態様では、分配機構の構成要素のほとんど、またはさらには全てが個別である。1つの特定の態様では、分配器は、1つまたは複数の薬剤キャリアそれぞれを別個に割り送り/前進させ、それによって、複数のストリップの任意の組み合わせまたは任意の1つにアクセスしてもよい複雑な投薬パターンの条件を提供することができるようにされる。
【0027】
複数の薬剤キャリアを受け入れることができる単一の受入れ部がある実施形態と、各薬剤キャリアが個別の(すなわち、個々の)受入れ部によって受け入れられる実施形態との両方が想起される。後者の場合、個々の受入れ部は連結されていてもいなくてもよい。
【0028】
放出部は任意の適切な形態を有することができる。細長い薬剤キャリアがブリスタストリップの形態である場合、放出部は、例えば、ブリスタを破断する、破裂させる、破く、または別の方法でそれにアクセスする手段を備えてもよい。1つの特定の好ましい態様では、薬剤キャリアが剥離可能なブリスタの形態である場合、放出部はブリスタストリップを剥がす手段を備える。本明細書の1つの態様では、各ブリスタストリップは、分配器の規定のビークまたはウェッジ状の機構の周りで剥がされる。
【0029】
排出口は任意の適切な形態を有してもよいが、具体的には、放出された薬剤用量をマウスピースに案内するマニホルドの形態を成す。
【0030】
用語「マウスピース」は、本明細書では、それを介して患者が吸入を行ってもよい要素を意味するために使用される。1つの態様では、その吸入は、患者がマウスピースを口に当てる経口手段によるものである。代替の態様では、マウスピースは患者の鼻腔に挿入されるノズルを備える。
【0031】
排出口は、好ましくは、前記放出部によって1つまたは複数の個別の薬剤区分が放出されるとそれと連通する、単一の排出口である。連通は、例えば、マウスピースと連通する共通の空気導通手段(例えば、空気管またはマニホルドとして形成される)を介する。マウスピースと通信する共通の空気に水路を開く手段(例えば、空気菅かマニホルドとして形成された)によって、例えばある。したがって、患者は、マウスピースを介して吸気することができ、呼吸は次に、共通の空気導通手段を介して放出された薬剤区分(1つまたは複数)に伝達され、それによって薬剤製品を吸入することが可能になる。
【0032】
インデクサによる割送りは、一般的に連続的な形で、例えば、細長いキャリアの長さに沿って直列に連続して配置された区分にアクセスする際に発生する。複数の薬剤キャリアが存在する場合、各キャリアの割送りは、連結されたやり方で生じるように、すなわちそれぞれが同時に割り送られるようにされてもよい。
【0033】
1つの好ましい態様では、薬剤キャリアは剥離可能なブリスタストリップを備える。この態様では、放出部は、適切には、剥離可能なストリップそれぞれのベースシートと蓋シートを剥がしてポケットを開くピーラーを備える。適切には、ピーラーは、開放部において受け入れられているポケットのベースシートから蓋シートを引き離す蓋駆動部を備える。
【0034】
好ましくは、本明細書では、薬剤用量区分を収容する複数の個別のポケットをそれぞれ有する1つまたは複数のブリスタストリップ状の薬剤キャリアとともに使用するための薬剤分配器であって、前記ポケットが、互いに固定された2つの剥離可能なシートの長さに沿って間隔を空けられ、かつそれらのシートの間に規定された薬剤分配器が提供され、分配機構は、a)1つまたは複数の薬剤キャリアのポケットを受け入れる開放部と、b)前記開放部に受け入れられているポケットのベースシートと蓋シートを剥がしてポケットを開くため、前記ポケットの前記ベースシートおよび前記蓋シートを係合するように位置付けられたピーラーと、c)開かれたポケットからの薬剤用量区分にユーザがそこを通してアクセスすることができる、前記開かれたポケットと連通するように位置付けられた排出口と、d)1つまたは複数の薬剤キャリアの個別のポケットを個々に割り送るインデクサとを備える。
【0035】
適切には、複数の細長い薬剤キャリアが収容される場合、複数の薬剤キャリアそれぞれのポケットを受け入れる共通の開放部が設けられる。別の態様では、各薬剤キャリアのポケットを受け入れる個別の開放部が設けられる。適切には、個別の開放部は、連通路、または別個に放出された薬剤を一緒にすることができるようにする他の手段によって連係している。
【0036】
適切には、1つまたは複数の剥離可能なストリップ状の薬剤キャリアはピーラー(すなわち、剥離手段)によって作用するようになる。ピーラーは、ベースシートと蓋シートを剥がしてポケットを開くため、開放部(1つまたは複数)において受け入れられているポケットのベースシートと蓋シートを係合するようになる。1つの態様では、剥離可能なストリップ状の薬剤キャリアはそれぞれ、共通のピーラーによって作用するようになる。他の態様では、剥離可能なストリップはそれぞれ、それ自体の(すなわち、別個の)ピーラーによって作用するようになる。
【0037】
適切には、ピーラーは、開放部において受け入れられているポケットの蓋シートとベースシートを引き離す蓋駆動部を備える。
【0038】
1つの態様では、蓋駆動部は、蓋シートがその上に巻き上げられるホイールを備え、前記ホイールは、蓋シートの張力が増加してもほぼ一定のままである有効巻取り面を有するホイールを備える。1つの態様では、これは、蓋駆動部を「折畳み式のホイール」の形態で構築することによって達成することができ、その際、蓋シートが巻き付けられて、全体的にほぼ一定の有効巻取り直径(ホイールおよびそれに巻き付けられたストリップの直径によって規定される)がホイールに付与されると、ホイールがつぶれる(すなわち、ホイール自体の直径が減少する)。適切には、前記「折畳み式のホイール」は、そこから半径に対してある角度でそれぞれ延びる、複数の弾性的に柔軟なアームを備える。蓋シートの前端は、前記弾性的に柔軟なアームの1つを越えて巻き取られて、蓋シートが最初にホイールに固定される。
【0039】
あるいは、蓋駆動部は、蓋シートがその上に巻き上げられるホイールを備え、前記蓋シートホイールは有効巻取り面を有し、蓋シートがホイールの周りに巻き付くので、その有効直径は分配器が使用されるごとに増加する。その結果、この増加を補償する補償手段が設けられるが、これがなければ、蓋シートが受ける張力がその長さ全体にわたって変動し、結果として時間とともにその割送りが変動する。
【0040】
1つの態様では、分配器は、前記開放部と前記蓋シートホイールの間の前記蓋シートの長さを低減させて、分配器の使用中に蓋シートホイールの有効巻取り面の直径が増加した場合にそれを補償する、開放部と蓋シートホイールの間に位置付けられた補償手段を備える。
【0041】
1つの態様では、補償手段は、蓋シートにおいてもたらされる張力がブリスタストリップの長さ全体にわたってほぼ一定のままであるように蓋駆動部の捩れ力を補償する、蓋駆動部の位置に取り付けられたねじりばねの形態を成す。
【0042】
適切には、分配器は、開放部において別個の経路に沿って蓋シートおよびベースシートを案内するガイドを備える。蓋シートは、ガイド部の周りを通って蓋駆動部上に渡される。1つの態様では、ガイドはローラ機構を備える。蓋シートはローラを越えて蓋駆動部上に供給される。
【0043】
適切には、インデクサは、凹部を中に有する回転可能な割送りホイールを備え、前記割送りホイールは、薬剤分配器とともに使用する際、前記凹部がブリスタストリップのベースシートの各ポケットをそれぞれ受け入れるように、薬剤分配器とともに使用する際の薬剤キャリアと係合可能である。
【0044】
適切には、薬剤分配器のハウジングは、少なくとも1つの薬剤キャリアが最初にそれに収納され、かつそこから分配される第1のチャンバと、ベースシートの使用済み部分が割送りホイールの周りで割り送られ、蓋シートから分離された後、それを受け入れる第2のチャンバとをさらに備える。適切には、前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバは壁によって分離可能である。1つの態様では、前記壁は、前記第1および第2のチャンバのサイズを調節するように移動可能である。別の態様では、壁は旋回するように取り付けることができる。あるいは、壁は滑動するように取り付けることができる。
【0045】
適切には、カバーは、ピボット取付けなどの適切な取付けによってハウジングに取り付けられる。
【0046】
第1の位置から第2の位置へのカバーの移動は可逆的であり、マウスピースを可逆的に覆い、また少なくとも部分的に露出させることを可能にする。さらに、第1の位置から第2の位置へのそのような可逆的な移動によって、分配機構はいかなる形でも作動しない。
【0047】
カバーを第2の位置から第3の位置へ移動させると、カバーは分配機構を連結して(例えば、直接または間接的に係合する)、結果としてそれを作動させる。
【0048】
好ましくは、第1の位置から第2の位置へ、また第3の位置へのカバーの移動は、規定の経路に沿った移動によるものである。経路は、例えば、線状または弓状(例えば、回転軸線の周りで)であってもよい。
【0049】
適切には、経路の性質および方向は、カバーをハウジングに取り付ける形態によって規定される。1つの態様では、カバーに設けられたトラックフォロワを受け入れるため、トラックがハウジング内に規定され、そのトラックにしたがって適切な経路が規定される。
【0050】
あるいは、カバーは軸線の周りを回転移動するようにされる。適切には、カバーは爪歯車と相互作用し、爪歯車は次に駆動歯車と相互作用して、分配機構を駆動する。適切には、第1の位置では、爪歯車は駆動歯車から間隔を空けられており、第2の位置では、爪歯車は、そのさらなる移動によって駆動歯車が移動し(例えば第3の位置へ)、結果として分配機構が前進するように、駆動歯車を係合する。
【0051】
適切には、爪歯車および/または駆動歯車は、その逆行(すなわち、反転)回転を防ぐ戻り防止機構を備える。
【0052】
任意に、本明細書の薬剤分配器は、インデクサの作動と薬剤分配器からの用量の放出との回数を計数する、作動カウンタまたは用量カウンタを備える。用量カウンタは、まだ摂取されていない用量数または摂取された用量数を計数してもよい。用量カウンタは機械的または電子的な形態であってもよい。
【0053】
任意に、薬剤分配器は電子データ管理システムをさらに備える。電子データ管理システムは、入力/出力機能を有し、データを格納するメモリと、前記データに対する動作を行うマイクロプロセッサと、データまたはデータに対する動作の結果に関する信号を送信する送信器とを備える。電子データ管理システムは、分配器本体と結合されてもよい。あるいは、電子データ管理システムは、本体と可逆的に関連付けることができるベースユニットの一部を形成する。
【0054】
本発明の別の態様によれば、薬剤製品を分配するための、本明細書の分配器の使用法が提供される。
【0055】
本発明の他の態様および特徴は、代表的な実施形態の以下の詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。以下に、添付図面を参照して本発明が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の薬剤分配器と合わせて使用するのに適した薬剤キャリアの斜視図である。
【図2a】本明細書において使用される第1の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図2b】本明細書において使用される第1の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図2c】本明細書において使用される第1の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図2d】本明細書において使用される第1の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図2e】本明細書において使用される第1の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図3a】本明細書において使用される第2の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図3b】本明細書において使用される第2の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図3c】本明細書において使用される第2の薬剤分配器を準備するための連続工程の斜視図である。
【図4a】外側ハウジングを除いて示されている第2の薬剤分配器を準備するための対応する連続工程の側面図である。
【図4b】外側ハウジングを除いて示されている第2の薬剤分配器を準備するための対応する連続工程の側面図である。
【図4c】外側ハウジングを除いて示されている第2の薬剤分配器を準備するための対応する連続工程の側面図である。
【図5】第2の薬剤分配器の歯車機構の分解組立斜視図である。
【図6a】図3a〜3cおよび4a〜4cに対応する、使用のために連続工程で準備されるときの歯車機構の詳細斜視図である。
【図6b】図3a〜3cおよび4a〜4cに対応する、使用のために連続工程で準備されるときの歯車機構の詳細斜視図である。
【図6c】図3a〜3cおよび4a〜4cに対応する、使用のために連続工程で準備されるときの歯車機構の詳細斜視図である。
【図7】第2の薬剤分配器の爪歯車「逆行防止」機構の詳細側面図である。
【図8】第2の薬剤分配器の分配機構および薬剤キャリアの側面図である。
【図9】マウスピースを除いた第2の薬剤分配器の部分分解組立図である。
【図10】第2の薬剤分配器の切欠図である。
【図11】第2の薬剤分配器のマウスピースおよびマニホルドのアセンブリの切欠図である。
【図12】マウスピースおよびマニホルドのアセンブリに使用される第1のマニホルドの平面図である。
【図13】マウスピースおよびマニホルドのアセンブリに使用される第2のマニホルドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1は、本発明にしたがって使用するのに適した薬剤キャリア100を示しており、キャリア100は、GlaxoSmithKlineのDISKUS(登録商標)ADVAIR(登録商標)吸入器に使用されるタイプのものである。
【0058】
薬剤キャリアは、複数のポケット104、106、および108を規定する柔軟なストリップ102を備え、ポケットはそれぞれ、吸入に適した形態かつ粉末の形態の薬剤の用量区分を収容する。本発明によれば、複数のそのようなストリップ102は、一般的に単一の薬剤分配器に用いられ、各ストリップは混合薬剤製品の成分薬剤用量区分を提供する。各ストリップは同じサイズのものであってもよく、かつ/または同じ用量(例えば、体積または質量)であってもよく、あるいは、代替実施形態では、異なるサイズの、かつ/または異なる用量を収容しているストリップが組み合わされて使用されてもよい。
【0059】
ストリップは、ポケット104、106、および108を規定するようにブリスタが形成されたベースシート110と、蓋シート112とベースシート110を剥離することができるようにして、ブリスタの領域を除いてベースシートに気密封止された蓋シート112とを備える。シート110および112は、それらが互いに全く封止されないことが好ましい前端部分114および116を除いて、全幅にわたって互いに封止される。
【0060】
蓋シート112およびベースシート110はそれぞれ、プラスチック/アルミニウム積層体で形成され、ヒートシールによって互いに適切に接着される。蓋シート112は少なくとも、
(a)紙、(b)紙が接着されたポリエステル、(c)ポリエステルが接着されたアルミニウムフォイルの連続層を含み、ベースシートに接合するためヒートシールラッカーで被覆される。ベースシート110は少なくとも、(a)延伸ポリアミド(OPA)、(b)OPAが接着されたアルミニウムフォイル、(c)アルミニウムフォイルが接着された、ポリマー材料(例えば、ポリ塩化ビニル)を含む第3の層の連続層を含む。
【0061】
ストリップ102は、ストリップ102の長さに対して横方向に通る細長いポケット104、106、および108を有するものとして示される。これは、所与のストリップ102の長さに沿って、多数のポケット104、106、および108を直列に配置できるようになる点で便利である。ストリップ102は、例えば、60〜100個のポケットを備えてもよいが、ストリップ102は任意の適切な数のポケットを有してもよいことを理解されたい。
【0062】
図2〜13を参照して後述される、本発明による第1および第2の薬剤分配器の好ましい一実施形態では、分配器は2つの同一の柔軟なストリップ102を含み、それらのストリップのポケット104、106、および108は同じ形状とサイズのものであり、ストリップ長さに沿って均等に間隔を空けられている。各ストリップのポケットは同じ薬剤粉末を中に収容し、ストリップの各ポケットの量(用量区分)はそのストリップの他のポケットと同じである。ただし、1つのストリップは、その薬剤粉末中に他のストリップとは異なる少なくとも1つの活性成分を有する。したがって、使用の際、患者は各ストリップからの1つの用量区分を同時に吸入することができ、組み合わされた用量区分が多重活性の固定用量の治療を構成する。
【0063】
図2a〜2eは、本明細書において使用される手持ち型の手動操作が可能な薬剤分配器を準備するための連続工程を示しており、この特定の実施形態では、分配器は乾燥粉吸入器(DPI)である。単純にするため、各図において、以下の対応する説明で言及される部分のみに番号が付されている。
【0064】
図2aは、ハウジング220を備える薬剤分配器を示しており、マウスピースカバー230に設けられたフォロワ(図示なし)を受け入れるため、トラック222が規定されている。使用の際、マウスピースカバー230は、フォロワとトラック222の関係によって規定された経路に沿って移動可能である。図2aでは、マウスピースカバー230はマウスピースが目に見えない第1の位置にある。換言すれば、マウスピースはカバー230によって覆われ保護されている。ハウジング220にはさらに窓224が設けられ、それを通して用量計数のしるし225、この場合は「30」を見ることができる。
【0065】
図2bでは、マウスピースカバー230は、マウスピース232が露出する第2の位置へ移動されている。ここではさらに、図2aの第1の位置のとき、マウスピースカバー230上の同様の機構(図示なし)と相互作用してカバー230を適所に係止する、スナップ嵌め式のロック226の一部が見えている。第1の位置から第2の位置へカバー230を移動させることでは、分配器内で分配機構(図示なし)は作動されず、用量カウンタ(機構は図示なし)も作動されない。
【0066】
図2cでは、マウスピースカバー230は、カバー230の一部がハウジングの基部221を超えて延びる第3の位置へ、トラック222に沿ってさらに移動されている。第2の位置から第3の位置へさらに移動させた結果として、分配機構(図示なし)が分配器内で作動されて、薬剤用量を吸入できるようになる。換言すれば、ここでは薬剤分配器は使用の準備ができている。移動によってさらに、薬剤分配器の用量カウンタが作動されるので、用量計数のしるし225が1単位分、ここでは新しい読取値「29」に減少する。
【0067】
図2dでは、薬剤分配器は、マウスピース232を介して吸入するため、患者に向かって示されている。
【0068】
使用後、マウスピースカバー230は第1の位置(すなわち、図2aのような)に戻される。
【0069】
これは、分配器の格納(「マウスピース保護」)位置に対応する。
【0070】
したがって、第1の薬剤分配器は、マウスピースカバー230を移動させて分配器を作動させ、また、この実施形態では用量カウンタも作動させることが分かる。第1の薬剤分配器は、さらに、分配器を作動させることなく、また、この実施形態では用量カウンタも作動させることなく、部分的に開いた位置(第1の位置)へカバー230を移動させる。これにより、患者がマウスピース232を掃除することが可能になり、例えば、患者がマウスピースカバー230を動かしたりいじったりすることによって、分配器が不用意に、または意図せずに使用されてしまう可能性が低減される。
【0071】
図3a〜3cおよび図4a〜4cはそれぞれ、本明細書において使用される第2の手持ち型の手動操作が可能な薬剤分配器を準備するための対応する連続工程を示しており、この特定の実施形態では、分配器はやはりDPIである。単純にするため、各図において、以下の対応する説明で言及される部分のみに番号が付されている。
【0072】
第2の薬剤分配器は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、US-A-2005/0154491(Andersonら)に開示されているタイプのものである。すなわち、第2の薬剤分配器は、図1に示される2つの薬剤キャリア(ブリスタストリップ)を備える(図8の符号300aおよび300bを参照)。ストリップの第1のものはそのポケットそれぞれに同じ薬剤粉末を収容しており、活性成分(1つまたは複数)の量も、そのストリップの各ポケットで同じである。他方のストリップは、同様に、そのポケットそれぞれに共通の薬粉末を収容しており、各ポケットはやはり同じ量の活性成分(1つまたは複数)を中に有している。各ストリップ内の薬剤粉末は、単一の活性成分または活性成分の混合物を収容してもよい。ただし、1つのストリップ内の薬剤粉末は、他方のストリップ内にはない少なくとも1つの活性成分を含む。以下により詳細に説明されるように、第2の薬剤分配器を操作する際、各ブリスタストリップのポケットは、その中の異なる薬剤粉末を露出させるため、剥がされて開かれる。次に、患者は、マウスピース(図3cの符号332)において吸入を行って、ストリップ300aおよび300bの開いたポケット内の粉末を同時に吸入する。このようにして、患者は、各ポケット内の異なる薬剤粉末が各用量区分を構成する、薬剤粉末の固定の計量された用量を受け取る。
【0073】
図3aおよび4aは、マウスピースカバー330を備えるハウジング320を備える薬剤分配器を示す。図4aで分かるように、マウスピースカバー330は、複雑な歯車機構340の爪歯車346と相互作用するように取り付けるための、取付けアパーチャ336を備えるアーム334を有する。使用の際、マウスピースカバー330は、爪歯車346の回転軸線によって規定される軸線の周りで回転移動可能である。図3aおよび4aでは、マウスピースカバー330は、マウスピースがカバーによって覆われる第1の位置にある。ハウジング320にはさらに窓324が設けられ、それを通して用量カウンタ(図示なし)の用量計数のしるし325を見ることができる。
【0074】
図3bおよび4bでは、マウスピースカバー330は、マウスピース332が部分的に露出する第2の位置へ回転されているが、その位置では、より詳細に後述されるように、歯車機構340および関連する分配機構は作動されず、そのため、薬剤用量は吸入できるようにならない。さらに、用量カウンタ(図示なし)は作動されず、そのため、計数のしるしは同じままである。
【0075】
図3cおよび4cでは、マウスピースカバー330は、マウスピース332が完全に露出または開放される第3の位置へさらに回転されている。この位置では、カバー330の一部はほぼハウジング320の基部321まで延びる。第2の位置から第3の位置へさらに移動させた結果として、歯車機構(図5および6a〜6cを参照して以下により詳細に記載される)ならびに分配機構(図8を参照して以下により詳細に記載される)が分配器内で作動されて、薬剤用量が吸入できるようになっている。換言すれば、ここでは薬剤分配器は使用の準備ができている。移動によってさらに、薬剤分配器の用量カウンタ(機構は図示なし)が作動されるので、用量計数のしるし325が新しい読取値「29」へ1単位分減少する。
【0076】
使用後、マウスピースカバー330は第1の位置(すなわち、図3aおよび4aのような)に戻される。これは、分配器の格納(「マウスピース保護」)位置に対応する。
【0077】
次に図5を参照すると、ハウジング320はマウスピース332を備え、マウスピース332は、使用の際に、開放部327(図8参照)において薬剤キャリア300aおよび300bそれぞれの開いたポケットから薬剤粉末を患者による吸入のために方向付けるように配置された、マニホルド450と相互作用することが分かる。
【0078】
図5はまた、本明細書における第2の薬剤分配器の歯車機構340の態様を示す。ハウジング320は、歯車機構340の部分を外側で受け入れる内部シャーシ328を備えていることが分かる。シャーシ328内には、図8を参照してより良く分かるように、薬剤を分配する鏡像(左右)分配機構350aおよび350bが設けられている。歯車機構340は、分配機構350aおよび350bの一部を形成すると考えることができる。
【0079】
図8をより詳細に参照すると、第1および第2の薬剤収容ブリスタストリップ300aおよび300bは、シャーシ328の左右のチャンバ303aおよび303bそれぞれの中に位置付けられている。各ブリスタストリップ300aおよび300bは、US-A-2005/0126568(Daviesら)(図16の割送りホイール416参照)に記載され示されているような、GlaxoSmithKlineのDISCUS(登録商標)吸入器に、ならびにUS-A-2005/0154491(Andersonら)の「ツインストリップ」吸入器に使用されるタイプの、多重ポケット割送りホイール360aおよび360bをそれぞれ係合し、連続するポケットは、それによって中央の開放部327に向かって案内される。開放部327では、各ストリップ300aおよび300bの、蓋フォイル312aおよび312bとベースフォイル314aおよび314bの部分とは、ビーク309aおよび309bの周りで剥がして分離することができる。結果として得られる空のベースフォイル314aおよび314bは、ベース巻取りチャンバ315aおよび315bに巻き付く。回転可能なベース巻取りスピンドル313aおよび313bは、各ベースフォイル314aおよび314bそれぞれの端部をそのチャンバ315aおよび315b内で固定する。各ベース巻取りチャンバ313aおよび313bが漸進的に回転することにより、「不用な」ベースフォイル314aおよび314bがその周りに巻き上げられて緊密なコイルとなる。一般的に、各ベースピンドル313aおよび313bの回転は、各割送りホイール360aおよび360bの回転に連結される。
【0080】
使用済みの蓋フォイル312aおよび312bは、その各ビーク309aおよび309bを越えて送り込まれ、やはり回転してその上に蓋フォイル312aおよび312bを巻き上げる蓋巻取りホイール317aおよび317bそれぞれの周りに巻き付く。蓋巻取りホイール317aおよび317bはそれぞれ、それに蓋フォイル312aおよび312bが取り付けられ、かつその周りに巻き上げられる中央のハブと、ハブがその周りで回転することができ、かつねじりばね(図示なし)がその上に取り付けられる中央のスピンドル(図示なし)とを備える。これは、WO-A-2006/018261 (Glaxo Group Limited)、特に図1〜4を参照して記載されているその実施形態に詳細に記載されており、その国際出願は、それに基づく米国国内特許出願とともに、参考により本明細書に組み込まれる。ねじりばねの機能は、各ストリップ全体の長さにわたって、その蓋巻取りホイール317aおよび317bにより、各ストリップ300aおよび300bに対してほぼ一定の駆動張力が確実にもたらされるようにすることである。具体的には、各ねじりばねは、使用済みの蓋フォイル312aおよび312bが徐々に各蓋巻取りホイール317aおよび317bに巻き付けられるにつれて、ホイールの有効巻取り直径が増加することに関連した、駆動張力の変動を補償する働きをする。したがって、各ストリップ300aおよび300bの均一な割送りをストリップの長さ全体にわたって維持することができる。
【0081】
使用の際、分配器は、図3a〜3cおよび4a〜4cに示されるように、割送りホイール360aおよび360bならびに蓋巻取りホイール317aおよび317bを駆動し回転させて、各ブリスタストリップ300aおよび300bを前進させ、それによってその前端のポケットが剥がれて開くように、カバー330を第2の位置(図3bおよび4bに示されるような)から第3の位置(図3cおよび4cに示されるような)へ移動させることによって準備がなされる。次に、開かれたポケットの内容物にアクセスするため、患者はマウスピース332を介して吸気する。これにより、負圧が、マニホルド450を介して、開放部327における各ストリップ300aおよび300bの開いた前端のポケットに伝達される。これによって、次に、開いたポケットそれぞれの中に収容された薬剤粉末が、共通のマニホルド450を介してマウスピース332へ出て、結果として吸入される混合薬剤用量として患者へと引き出される。これは、図9〜13を参照してより詳細に後述される。
【0082】
図5を再び参照すると、歯車機構340は駆動スピンドル331上に取り付けられた爪歯車装置342を備えることが分かる。爪歯車装置342は、他の歯車と同様に、向かい合った内表面341および外表面343(分配器の外部に対して)と、それらの間の外周面345aとを有するホイール形態である。外表面343は、外周面345aと向かい合った内周面345bを規定するように窪んでいる。図から分かるように、外周面345aおよび内周面345bは、外側の爪歯車機構344aおよび内側の爪歯車機構344bがそれぞれ爪歯車346と歯止めされて相互作用するように、階段状の輪郭を備える。なお、その相互作用は図6a〜6cを参照してより詳細に後述される。爪歯車機構344aおよび344bは、均等な角度で間隔を空けられた爪歯車歯である。この実施形態では、各周面345aおよび345b上に5つの歯がある。外周面345a上の歯344a(「外側歯344a」)は、内周面345b上の歯(「内側歯344b」)からずれている。換言すれば、内側歯344bのいずれも、歯車342の回転軸線から外側歯344aと同じ半径上にはない。
【0083】
図6aから分かるように、内周面345bは、隣接した内側歯344bの対それぞれを接続する表面セグメント349を含む。各表面セグメント349は、セグメント349の向かい合った端部から内向きに延びる第1の区画349aおよび第2の区画349bから成り、第1の区画349aは1つの内側歯344bの第2の区画349bから内向きに延び、第2の区画349bは次の隣接した内側歯344bから第1の区画349aまで内向きに延びる。第1の区画349aの曲率半径は第2の区画349bよりも大きく、それによって、第2の区画349bは第1の区画349aに対して傾斜区画を形成する。
【0084】
図5を参照すると、ベース巻取りスピンドル313aおよび313b、ならびに蓋巻取りホイール317aおよび317bのスピンドル(図示なし)はそれぞれ、ベース巻取り歯車362aおよび362bと蓋巻取り歯車361aおよび361bとに接続されることが理解されるであろう。割送りホイール360aおよび360bも歯車を備える。爪歯車装置342の内表面341は、(i)割送りホイール360aの第1の1つの歯車および(ii)第1の遊び歯車364と駆動相互作用(噛合)するように、駆動歯車歯347を備える。第1の割送りホイール360aの歯車は、蓋巻取りホイールの歯車361aの第1のものおよび第2の割送りホイール361bの歯車と噛合し、ホイール361bの歯車が次に、第2の蓋巻取りホイール361bと噛合する。第1の遊び歯車364は、ベース巻取りスピンドル歯車362bの第1のものおよび第2の遊び歯車365と噛合し、遊び歯車365が次に第2のベース巻取りスピンドル歯車362aと噛合する。この歯車列配置により、マウスピースカバー330がその第2の位置からその第3の位置へ移動すると、薬剤キャリア300aおよび300bが割り送られ、ベースシート310a、bならびに蓋シート312a、bが巻き取られる。
【0085】
分配器に使用される適切なカウンタ機構のより詳細な説明は、WO-A-2005/079727 (Glaxo Group Limited)において提供されており、これは、それに基づく米国国内特許出願とともに参照により本明細書に組み込まれる。ベース巻取りスピンドル313bは、カウンタ機構の駆動ホイール/増速歯車ホイールと係合することによってそれを駆動するのに使用することができる。
【0086】
図5〜7に示されるように、爪歯車346は中央のハブ346aを備え、その外周から、複数の均等な角度で間隔を空けられ、円周方向に向けられた弾性脚部346bが垂れ下がる。爪歯車ハブ346aはさらに、隆起346cを備え、これは、図4aに示されるように、マウスピースカバーのアーム334の取付けアパーチャに嵌合して、マウスピースカバー330と爪歯車346の間に直接的な駆動接続を確立し、それにより、次により詳細に記載されるように、マウスピースカバー330がその第1の位置と第3の位置の間で回転移動することで、爪歯車装置342の爪歯車346が回転移動する。この特定の実施形態では、5つの爪歯車脚部346bが爪歯車ハブ346aから垂れ下がる。換言すれば、爪歯車脚部346bの数は爪歯車装置342の内側歯344bの数と一致するように選択される。
【0087】
爪歯車346を備えた爪歯車装置342の相互作用は、図3a〜3cに対応する連続工程で使用の準備がされるときの第2の薬剤分配器の歯車機構340の部分の移動を示す、図6a〜6cを参照してさらに理解することができる。
【0088】
図6aの休止位置(すなわち、マウスピースカバー330が閉じている)では、爪歯車346は、爪歯車装置342の内側歯344bが爪歯車脚部346bの自由端から円周方向に間隔を空けられるようにして、爪歯車装置342内で角度を成して配置される。図6bの第2の位置(すなわち、マウスピースカバー330が部分的に開いている)では、爪歯車346は、爪歯車脚部346bが内周面345bの隣接した表面セグメント349の上で滑動して内側歯344bを係合するように、爪歯車装置342内で回転されている。したがって、この第2の位置では、爪歯車装置342は移動する準備ができるが、まだ移動されておらず、したがって、歯車機構340と分配機構350aおよび350bの全体は前進していないことが理解されるであろう。図6cの第3の位置(すなわち、マウスピースカバー330が完全に開いている)では、爪歯車脚部346bと内側歯344bが相互に係合することにより、爪歯車346および爪歯車装置342が両方とも(図示されるように72°だけ)一緒に回転するので、歯車機構340と分配機構350aおよび350bの全体が前進し、各薬剤キャリア300aおよび300bが割り送られ前進されて、それぞれのポケットが開き、かつそれによって、開いたポケットそれぞれに収容された薬剤粉末が開放部327のマニホルド450において、患者が開いたマウスピース332を介して同時に吸入することができるようになる。
【0089】
図7を参照すると、分配器はさらに、歯車機構340を覆う内部保定プレート(retaining plate)381を備える。保定プレート381は、爪歯車装置342および爪歯車346の上に位置する弓状の受材383を備える。受材383の一端は、切欠き385がその中に設けられる弾性フィンガー384として構成される。爪歯車346は、図7に示されるように、爪歯車(および結果としてマウスピースカバー330)が図6aにあるその最初の休止位置にあるとき、切欠き内に係合する突起346dを含む。爪歯車の突起346dと保定プレートの切欠き385とのこの相互係合は、マウスピースカバー330を、「マウスピースが閉じた」、すなわち図3a、4a、6a、および7の休止位置で移動止めする移動止めとして働く。
【0090】
保定プレート381はさらにまた、爪歯車装置346の外側歯344aと相互作用して爪歯車装置346の「戻り防止」機構を形成する、固定の弾性つめ脚部(resilient pawl leg)387を備える。マウスピースカバー330が開かれたとき、爪歯車脚部346bが内側歯344bに係合すると、爪歯車346が、また結果として爪歯車装置342が回転するようにするため、つめ脚部387は爪歯車装置342の回転移動を妨げないが、これは、外側歯344aの向きとつめ脚部387の弾性により、つめ脚部387が外側歯344aの上に載るためである。しかし、マウスピースカバー330がその閉じた位置に戻され、次に爪歯車346がその休止位置へ回転すると、つめ脚部387が外側歯344aの1つと係合することにより、爪歯車装置342は戻り回転に抵抗する。したがって、マウスピースカバー330を閉じる際の爪歯車346の反回転は歯車機構340に伝達されない。結果として、マウスピースカバー330が完全に開かれ、かつ閉じられるそれぞれの場合において、爪歯車装置342は一回転方向にのみ増分される。
【0091】
マウスピースカバー330が、その第1のカバー位置(図3a)に戻されて、爪歯車装置342の爪歯車346をその休止位置(図6a)へ回転させて戻すとき、弾性脚部346bは、内周面345bの上を滑動して戻り、マウスピースカバー330を次に開くための準備ができている別の内側歯344bの後方において間隔を空けられる。
【0092】
図6aでは、割送りホイール360aの歯車歯の1つの輪郭を示すその拡大図が示される。歯車機構内のすべての歯車の歯車歯はこの輪郭を備える。
【0093】
第2の薬剤分配器のマニホルド450を、図9〜13を参照して以下により詳細に記載する。
【0094】
図9は、そのマウスピース332を除き、かつそのハウジング320が噛合する第1および第2のシェルカバー部420aおよび420bを備える、第2の薬剤分配器を示す。マニホルド450は、マニホルドの煙突452への入口453を規定するリップが、空気入口グリル470を規定する第1のシェルカバー部420aの内壁472内に受け入れられるようにして、第1のシェルカバー部420aに受け入れられる。マニホルド450はまた、マニホルド450の突出する足部455がマニホルド受入れキャビティ(図示なし)内に収まるようにして、第2のシェルカバー部420bに受け入れられる。
【0095】
図3a〜cに示されるように、第1のシェルカバー部420a内の空気入口グリル470は、マウスピースカバー330がその第1の、すなわち閉じた位置(図3a)にあるときはそれによって覆われ、マウスピースカバー330がその第2の、すなわち部分的に開いた位置(図3b)にあるときは部分的に露出し、マウスピースカバー330がその第3の、すなわち開いた位置(図3c)にあるときは完全に露出する。
【0096】
使用の際、空気入口グリル470によって、患者がマウスピース332において吸入するのに応答して、空気が、煙突452への煙突入口453を介して分配器の外部からマニホルド450内に入ることが可能になる。特に、空気入口グリル470は、第2の薬剤分配器の外部からそのマニホルド450内へ吸気が入る唯一のポイントを提供する。
【0097】
図10および11を参照しても分かるように、マニホルド450は、煙突452がチャンバ460の上に位置し、それと共通の壁459を部分的に共有する特定の内側構造を有し、この共通の壁459は、煙突452の底壁(図示される向きに対して)とチャンバ460の頂壁(図示される向きに対して)の一部とを形成する。
【0098】
煙突452は、煙突入口453と一対の煙突出口454aおよび454bとを有する。使用の際、煙突452は、内向きの気流(患者が吸入すると空気入口グリル470を介して排他的に受け入れられる)を、煙突入口453から一対の煙突出口454aおよび454bへ方向付ける。チャンバ460は、一対のチャンバ入口462aおよび462b(1つのみが図示される)とチャンバ出口464とを有する。一対の煙突出口454aおよび454bと、一対のチャンバ入口462aおよび462bとは両方とも、この特定の実施形態では直径約3 mmの、一対の丸穴によって規定され、各穴はそれぞれ十字形451および461を備える。煙突出口454aおよび454bはそれぞれ、互いに隣接させて位置付けることにより、チャンバ入口462aおよび462bの1つと対になる。マウスピース332は、チャンバ出口464に設けられ、スナップ取付け機構465を介してチャンバ出口464にスナップ取付けされる。
【0099】
詳細に上述したように、マウスピースカバー330がその第3の位置へ完全に開かれると、歯車および分配機構が作動されて、各ブリスタストリップ300aおよび300bが前進し、各ストリップの単一のポケットが剥がされ開かれる。各ストリップ300aおよび300bの剥がされて開かれたブリスタポケット(図示なし)は、対になった煙突出口454aおよび454bとチャンバ入口462aおよび462bとのそれぞれ1つに隣接して位置する。マウスピース332において患者が吸入すると、気流は、煙突452への空気入口グリル470のみを介して、分配器の外部からマニホルド450内へ流れる。この気流の第1の部分は、各煙突出口454aおよび454bを介して各ストリップ300aおよび300bの開かれたブリスタポケット内へ流れ、それにより、ポケットに収容された薬剤粉末が気流に取り込まれ、結果として、ポケットを出てチャンバ入口462aおよび462bを介してチャンバ460に入る。次に、薬剤粉末が取り込まれた気流は、マウスピース332を出て患者の気道に流れ込む。
【0100】
図12に示されるように、例えば、単一のD字形のブリード穴480が、煙突450をチャンバ460から分離する壁459に設けられる。D字形のブリード穴480は、煙突出口454aおよび454bとチャンバ入口462aおよび462bの両方に隣接して位置する。使用の際、ブリード穴480は、気流の第2の部分(「ブリード部分」)を煙突452からチャンバ460内へ方向付けて、取り込まれた薬剤粉末をチャンバ460内に運搬する気流の第1の部分が分断されるようにそれに衝突させ、それによって、粉末の凝集塊成分があればそれを分解する。
【0101】
図13は、D字形タイプのブリード穴480を備えたマニホルド450の変形例(およびその代替例)である、第2のマニホルド550を示す。
【0102】
この第2のマニホルド550の全体的な形状および形態は「D字穴」マニホルド550の形状および形態に対応するので、容易に置き換えることができることが理解されるであろう。ただし、第2のマニホルドは、煙突552をチャンバ(図示なし)から分離する壁559に設けられた、2つの細長い溝状のブリード穴580aおよび580bを有する。
【0103】
より詳細には、第2のマニホルド550は、煙突552がチャンバ(図示なし)の上方に位置し、それと壁559を部分的に共有する内部構造を有し、この壁559は、煙突552の底壁(図示される)とチャンバ(図示なし)の頂壁の一部とを形成する。
【0104】
煙突552は、煙突入口553と二重の煙突出口554aおよび554bとを有する。使用の際、煙突552は、内向きの気流(空気入口グリル470を介して排他的に受け入れられる)を、煙突入口553から煙突出口554aおよび554bへ方向付ける。チャンバは、二重のチャンバ入口(図示なし)およびチャンバ出口564を有する。煙突出口554aおよび554bとチャンバ出口とは、第1のマニホルド450のものと同様である。
【0105】
第1のマニホルド450と同様に、煙突出口554aおよび554bとチャンバ入口とは互いに隣接して対を形成し、それに接して剥離可能なブリスタストリップからの開いたブリスタポケットが位置するので、患者が吸入を行うと、気流が空気入口グリル470を介して排他的にマニホルドの煙突552に流れ込み、気流の第1の部分が対になった煙突出口554aおよび554bとチャンバ入口とを介して開いたポケットを通るように方向付けられて、開いたポケットからの薬剤粉末がチャンバ内に取り込まれる。
【0106】
細長い溝状のブリード穴580aおよび580bが、煙突552をチャンバ(図示なし)から分離する壁559に設けられる。細長い溝状のブリード穴580aおよび580bは、煙突出口554aおよび554bとチャンバ入口の両方から離れて配置される。使用の際、ブリード穴580aおよび580bは、煙突552からの気流のブリード部分をチャンバ内へ方向付けて、第1の気流部分によってチャンバ内に取り込まれた薬剤粉末が分断されるようにそれに衝突させ、それによって、粉末の凝集塊成分があればそれを分解する。
【0107】
マニホルド450および550は、全体的または部分的に、薬剤がそこに付着する傾向を低減する材料から成ってもよく、あるいは部分的または全体的にそれらの材料によって被覆されてもよい。そのような材料は、例えば、関連するマニホルド表面の表面張力を上昇させてもよい。フルオロポリマー材料が使用されてもよい。高密度ポリエチレン(HDPE)および/または変性アセタール材料も適切である。
【0108】
したがって、第2の薬剤分配器は、マウスピースカバー330を移動させて分配器を作動させ、また、この実施形態では用量カウンタも作動させることが分かる。第2の薬剤分配器は、さらに、分配器を作動させることなく、また、この実施形態では用量カウンタも作動させることなく、部分的に開いた位置(第1の位置)へカバー330を移動させる。これにより、患者がマウスピース332を掃除することが可能になり、例えば、患者がマウスピースカバー330を動かしたりいじったりすることによって、分配器が不用意に、または意図せずに使用されてしまう可能性が低減される。
【0109】
図3〜13の第2の薬剤分配器は、2つの薬剤キャリア300aおよび300bを備える分配器に関して記載してきたが、同じ分配器が、分配機構の1つがどの薬剤キャリアにも働かない、単一の薬剤キャリアとともに使用されてもよいことが理解されるであろう。あるいは、各薬剤キャリアは同じ薬剤粉末(すなわち、同じ活性または活性の組み合わせ)を収容することができる。
【0110】
当業者であれば、本発明の薬剤分配器の構成要素のほとんどを、一般的には射出成形によってプラスチック材料から、例えば成型プラスチック構成要素として作成することができることを理解するであろう。図3〜13の第2の薬剤分配器では、ねじりばね(ステンレス鋼から作成されてもよい)以外のすべての構成要素がプラスチック材料から作成(例えば、射出成形)されてもよい。この場合、次のプラスチック構成要素を除いて、プラスチック構成要素はすべてアセタール(ポリオキシメチレン(POM))製であってもよい。
【0111】
ハウジングシェル420aおよび420b - アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)
マウスピースカバー330 - ABS
計数ホイール(図示なし) - ABS
マニホルド450および550 - 高密度ポリエチレン(HOPE)
カウンタ窓324 - ポリカーボネート(PC)
マウスピース332 - ポリプロピレン(PP)
本発明の薬剤分配器は、特に、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患、気管支炎、ならびに胸部感染症の治療用の薬剤製品を分配するのに適している。
【0112】
したがって、適切な薬剤は、例えば、鎮痛薬(例えば、コデイン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、フェンタニル、またはモルヒネ)、狭心症製剤(例えば、ジルチアゼム)、抗アレルギー性物質(例えば、クロモグリク酸(例えば、ナトリウム塩として)、ケトチフェン、またはネドクロミル(例えば、ナトリウム塩として))、抗感染剤(例えば、セファロスポリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、およびペンタミジン)、抗ヒスタミン剤(例えば、メタピリレン)、抗炎症剤(例えば、ベクロメタゾン(例えば、ジプロピオン酸エステルとして)、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸エステルとして)、フルニソリド、ブデソニド、モメタゾン(例えば、フロン酸エステルとして)、シクレソニド、トリアムシノロン(例えば、アセトニドとして)、または6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオン酸S-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3-イル)エステル)、鎮咳剤(例えば、ノスカピン)、気管支拡張剤(例えば、アルブテロール(例えば、遊離塩基または硫酸塩として)、サルメテロール(例えば、キシナホ酸塩として)、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール(例えば、臭化水素酸塩として)、ホルモテロール(例えば、フマル酸塩として)、イソプレナリン、メタプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノラミン、ピルブテロール(例えば、アセテートとして)、レプロテロール(例えば、塩酸塩として)、リミテロール、テルブタリン(例えば、硫酸塩として)、イソエタリン、ツロブテロール、または4-ヒドロキシ-7-[2-[[2-[[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル]エチル]アミノ]エチル-2(3H)-ベンゾチアオゾロン)、アデノシン2a作動薬(例えば、2R,3R,4S,5R)-2-[6-アミノ-2-(1S-ヒドロキシメチル-2-フェニル-エチルアミノ)-プリン-9-イル]-5-(2-エチル-2H-テトラゾル-5-イル)-テトラヒドロ-フラン-3,4-ジオール(例えば、マレイン酸塩として))、α4インテグリン阻害剤(例えば、(2S)-3-[4-({[4-(アミノカルボニル)-1-ピペリジニル]カルボニル}オキ
シ)フェニル]-2-[((2S-4-メチル-2-{[2-(2-メチルフェノキシ)アセチル]アミノ}ペンタノイル)アミノ]プロパン酸(例えば、遊離酸またはカリウム塩として))、利尿剤(例えば、アミロリド)、抗コリン作動薬(例えば、イプラトロピウム(例えば、臭化物として)、チオトロピウム、アトロピン、またはオキシトロピウム)、ホルモン(例えば、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、またはプレドニゾロン)、キサンチン(例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリネート、リジンテオフィリネート、またはテオフィリン)、治療用タンパク質およびペプチド(例えば、インシュリンまたはグルカゴン)、ワクチン剤、診断用薬、ならびに遺伝子治療から選択されてもよい。薬剤の活性および/または安定性を最適化するため、適切であれば、薬剤が塩の形態(例えば、アルカリ金属もしくはアミン塩として、または酸付加塩として)で、エステル(例えば、低級アルキルエステル)として、あるいは溶媒和物(例えば、水和物)として使用されてもよいことが、当業者には明白であろう。
【0113】
配合された薬剤製品は、態様の点で、単一治療(すなわち、単一の活性薬剤を含有する)製品であってもよく、または混合治療(すなわち、複数の活性薬剤を含有する)製品であってもよい。
【0114】
混合治療製品の適切な薬剤または薬剤成分は、一般的に、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイドまたはNSAID)、抗コリン作動薬(例えば、M1、M2、M1/M2、またはM3受容体拮抗剤)、他のβ2-アドレナリン受容体作動薬、抗感染剤(例えば、抗生物質または抗ウイルス剤)、および抗ヒスタミン剤から成る群から選択される。適切な組み合わせがすべて想到される。
【0115】
適切な抗炎症剤としては、コルチコステロイドおよびNSAIDが挙げられる。適切なコルチコステロイドは、抗炎症活性を有する経口および吸入コルチコステロイド、およびそれらのプロドラッグである。例としては、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオン酸S-フルオロメチルエステル、6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-17α-プロピオニルオキシ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオン酸S-(2-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3S-イル)エステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、17-プロピオン酸エステル、または17,21-ジプロピオン酸エステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、フロン酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド、ブチキソコートプロピオネート、RPR-106541、およびST-126が挙げられる。好ましいコルチコステロイドとしては、プロピオン酸フルチカゾン6α,9α-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-17α-[(4-メチル-1,3-チアゾール-5-カルボニル)オキシ]-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオン酸S-フルオロメチルエステル、および6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-カルボチオン酸S-フルオロメチルエステル、より好ましくは、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17α-カルボチオン酸S-フルオロメチルエステルが挙げられる。
【0116】
適切なNSAIDとしては、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤、または混合PDE3/PDE4阻害剤)、ロイコトリエン拮抗剤、ロイコトリエン合成の阻害剤、iNOS阻害剤、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害剤、β2インテグリン拮抗剤およびアデノシン受容体作動薬または拮抗剤(例えば、アデノシン2a作動薬)、サイトカイン拮抗剤(例えば、ケモカイン拮抗剤)またはサイトカイン合成の阻害剤が挙げられる。他の適切なβ2-アドレナリン受容体作動薬としては、サルメテロール(例えば、キシナホ酸塩として)、サルブタモール(例えば、硫酸塩または遊離塩基として)、ホルモテロール(例えば、フマル酸エステルとして)、フェノテロール、またはテルブタリン、およびそれらの塩類が挙げられる。
【0117】
適切なホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤としては、PDE4酵素を阻害することが知られているか、またはPDE4阻害剤として作用することが見出されている化合物、およびPDE4のみの阻害剤である化合物が挙げられ、ただし、PDE族の他のものならびにPDE4を阻害する化合物を除く。一般に、高い親和性でロリプラムを結合するPDE4触媒形態のIC50を、低い親和性でロリプラムを結合する形態のIC50で割ったIC50比が約0.1以上のPDE4阻害剤を使用することが好ましい。本開示の目的のため、低い親和性でRおよびSのロリプラムを結合するcAMP触媒部位は「低親和性」結合部位(LPDE 4)と称され、高い親和性でロリプラムを結合するこの触媒部位の他の形態は「高親和性」結合部位(HPDE 4)と称される。この用語「HPDE4」は、ヒトのPDE4を表すのに使用される用語「hPDE4」と混同してはならない。
【0118】
IC50比を決定する方法は、本明細書に提示されるものとして全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,998,428号に提示されている。また、前記アッセイの別の説明については、PCT出願WO00/51599を参照のこと。
【0119】
適切なPDE4阻害剤としては、有益な治療可能比を有する化合物、すなわち、酵素が低い親和性でロリプラムを結合する形態の場合にcAMP触媒活性を優先的に阻害し、それによって、高い親和性でロリプラムを結合する形態の阻害に明らかに結び付く副作用を低減する化合物が挙げられる。このことを説明する別の形として、好ましい化合物は、高い親和性でロリプラムを結合するPDE4触媒形態のIC50を、低い親和性でロリプラムを結合する形態のIC50で割ったIC50比が約0.1以上である。
【0120】
この基準をさらに改善したものは、PDE4阻害剤が約0.1以上のIC50比を有するものであり、前記比は、高い親和性でロリプラムを結合するPDE4の形態への1nMの[3H]R-ロリプラムの結合に匹敵するIC50値と、1μMの[3H]-cAMPを基材として使用して低い親和性でロリプラムを結合する形態のPDE4の触媒活性を阻害するIC50値との比である。
【0121】
最も適切なのは、0.5を超えるIC50比を有するPDE4阻害剤、特に1.0を超える比を有する化合物である。好ましい化合物は、シス4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オン、およびシス-[4-シアノ-4-(シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オル]であり、これらは、低い親和性の結合部位に優先的に結合し、かつ0.1以上のIC50比を有する化合物の例である。
【0122】
他の適切な薬剤化合物としては、米国特許第5,552,438号に開示されているシス-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチロキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸(シロマラスト(cilomalast)としても知られる)、およびその塩、エステル、プロドラッグ、または物理的形態、elbion製のAWD-12-281(Hofgen, N. et al. 15th EFMC Int Symp Med Chem (Sept 6-10, Edinburgh) 1998, Abst P. 98; CAS reference No. 247584020-9)、NCS-613(INSERM)と指定された9-ベンジルアデニン誘導体、ChiroscienceおよびSchering-Plough製のD-4418、CI-1018(PD-168787)として特定された、Pfizerに帰属するベンゾジアゼピンPDE4阻害剤、Kyowa HakkoのWO99/16766に開示されているbenzodioxole誘導体、Kyowa Hakko製のK-34、Napp (Landells, L.J. et al. Eur Resp J [Annu Cong Eur Resp Soc (Sept 19-23, Geneva) 1998] 1998, 12 (Suppl. 28): Abst P2393)製のV-11294A、Byk-Gulden製のロフルミラスト(roflumilast)(CAS参照番号162401-32-3)およびフタラジノン(pthalazinone)(WO99/47505、その開示を参照により本明細書に組み込む)、Byk-Gulden、つまり現在のAltanaによって調製され公表されている混合PDE3/PDE4阻害剤である、Pumafentrine、すなわち(-)-p-[(4aR*,10bS*)-9-エトキシ-1,2,3,4,4a,10b-ヘキサヒドロ-8-メトキシ-2-メチルベンゾ[c][1,6]ナフチリジン-6-イル]-N,N-ジイソプロピルベンズアミド、Almirall-Prodesfarmaによって開発されているアロフィリン(arofylline)、Vernalis製のVM554/UM565、またはT-440 (Tanabe Seiyaku; Fuji, K. et al. J Pharmacol Exp Ther, 1998, 284(1): 162), and T2585が挙げられる。
【0123】
適切な抗コリン作動薬は、ムスカリン受容体で拮抗剤として作用する化合物、特にM1およびM2受容体の拮抗剤である化合物である。代表的な化合物としては、アトロピン、スコポラミン、ホマトロピン、ヒヨスチアミンのようなものによって示される、ベラドンナプラントのアルカロイドが挙げられ、これらの化合物は通常、第三級アミンである塩として処理される。
【0124】
特に適切な抗コリン作動薬としては、Atroventの名称で販売されているイプラトロピウム(例えば、臭化物として)、オキシトロピウム(例えば、臭化物として)、およびチオトロピウム(例えば、臭化物として)(CAS-139404-48-1)が挙げられる。やはり重要なものは、メタンテリン(CAS-53-46-3)、臭化プロパンテリン(CAS-50-34-9)、アニソトロピン臭化メチル、すなわちValpin 50(CAS-80-50-2)、臭化クリジニウム(Quarzan、CAS-3485-62-9)、コピロレート(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド(CAS-71-81-8)、臭化メペンゾラート(米国特許第2,918,408号)、塩化トリジヘキセチル(Pathilone、CAS-4310-35-4)、およびメチル硫酸ヘキソジクリウム(Tral、CAS-115-63-9)である。塩酸シクロペントラート(CAS-5870-29-1)、トロピカミド(CAS-1508-75-4)、塩酸トリヘキシフェニジル(CAS-144-11-6)、ピレンゼピン(CAS-29868-97-1)、テレンゼピン(CAS-80880-90-9)、AF-DX 116、すなわちメトクトラミン、およびWO01/04118に開示されている化合物も参照のこと。
【0125】
適切な抗ヒスタミン剤(H1受容体拮抗剤とも称される)としては、H1受容体を阻害することが知られており、かつヒトへの使用に安全である多数の拮抗剤の任意の1つまたは複数が挙げられる。すべて、ヒスタミンとH1受容体の相互作用の可逆的な拮抗的阻害剤である。例としては、エタノールアミン、エチレンジアミン、およびアルキルアミンが挙げられる。それに加えて、他の第1世代の抗ヒスタミン剤としては、ピペリジン(piperizine)およびフェノチアジンに基づくものとして特徴付けることができるものが挙げられる。鎮静性ではない第2世代の拮抗剤は、それらが核のエチレン基(アルキルアミン)を保持するか、ピペリジン(piperizine)またはピペリジンによって第三級アミンを模倣するという点で同様の構造活性関係を有する。代表的な拮抗剤は次のとおりである。
【0126】
エタノールアミン マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミン、およびジメンヒドリナート。
【0127】
エチレンジアミン マレイン酸ピリラミン、トリペレナミンHCI、およびトリペレナミンクエン酸塩。
【0128】
アルキルアミン クロフェニラミン、およびマレイン酸塩などのその塩、ならびにアクリバスチン。
【0129】
ピペラジン ヒドロキシジンHCI、パモ酸ヒドロキシジン、シクリジンHCI、乳酸シクリジン、メクリジンHCI、およびセチリジンHCI。
【0130】
ピペリジン アステミゾール、レボカバスチンHCI、ロラタジンまたはそのデカルボエトキシ類似体、塩酸テルフェナジン、塩酸フェキソフェナジン、または別の薬学的に受容可能な塩。
【0131】
塩酸アゼラスチンは、PDE4阻害剤と組み合わせて使用されてもよい、さらに別のH1受容体拮抗剤である。
【0132】
特に適切な抗ヒスタミン剤としては、メタピリレンおよびロラタジンが挙げられる。
【0133】
混合製品に関して、共配合(co-formulation)の適合性は、一般に、既知の方法による実験に基づいて決定され、また選択されたタイプの薬剤分配器の動作に応じて決まってもよい。
【0134】
混合製品の薬剤成分は、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイドまたはNSAID)、抗コリン作動薬(例えば、M1、M2、M1/M2、またはM3受容体拮抗剤)、他のβ2アドレナリン受容体作動薬、抗感染剤(例えば、抗生物質または抗ウイルス剤)、および抗ヒスタミン剤から成る群から適切に選択される。適切な組み合わせがすべて想到される。
【0135】
適切には、共配合に適合した成分は、β2アドレナリン受容体作動薬およびコルチコステロイドを含み、共配合に適合しない成分は、PDE-4阻害剤、抗コリン作動薬、またはそれらの混合物を含む。β2アドレナリン受容体作動薬は、例えば、サルブタモール(例えば、遊離塩基または硫酸塩として)、サルメテロール(例えば、キシナホ酸塩として)、あるいはホルモテロール(例えば、フマル酸塩として)であってもよい。コルチコステロイドは、例えば、ベクロメタゾンエステル(例えば、ジプロピオネート)、フルチカゾンエステル(例えば、プロピオナート)、あるいはブデソニドである。
【0136】
一例では、共配合に適合した成分は、プロピオン酸フルチカゾンおよびサルメテロール、またはそれらの塩(特に、キシナホ酸塩)を含み、共配合に適合しない成分は、PDE-4阻害剤、抗コリン作動薬(例えば、臭化イプラトロピウムまたはチオトロピウム臭化物)、あるいはそれらの混合物を含む。
【0137】
別の例では、共配合に適合した成分は、ブデソニドおよびホルモテロール(例えば、フマル酸塩として)を含み、共配合に適合しない成分は、PDE-4阻害剤、抗コリン作動薬(例えば、臭化イプラトロピウムまたはチオトロピウム臭化物)、あるいはそれらの混合物を含む。
【0138】
一般に、肺の気管支または肺胞領域に送達するのに適した粉末状薬剤粒子は、10μm未満、好ましくは1〜6μmの空気動力学的直径を有する。鼻腔、口、または喉など、気道の他の部分に送達することが望ましい場合、他のサイズの粒子が使用されてもよい。薬剤は純粋な薬として送達されてもよいが、より適切には、薬剤が吸入に適した賦形剤(キャリア)とともに送達されることが好ましい。適切な賦形剤としては、多糖(すなわち、デンプン、セルロースなど)、ラクトース、グルコース、マンニトール、アミノ酸、およびマルトデキストリンなどの有機賦形剤、ならびに炭酸カルシウムまたは塩化ナトリウムなどの無機賦形剤が挙げられる。ラクトースは好ましい賦形剤である。
【0139】
粉末状薬剤および/または賦形剤の粒子は、従来の技術によって、例えばミクロン化、ミリング、またはふるい分けによって生成されてもよい。さらに、薬剤および/または賦形剤の粉末は、特定の密度、サイズ範囲、または特性で改変されてもよい。粒子は、活性剤、界面活性剤、壁成形材、または当業者が望ましいと考える他の成分を含んでもよい。
【0140】
賦形剤は、混和、共沈殿など、周知の方法によって薬剤に包含されてもよい。賦形剤と薬剤のブレンドは、一般的に、ブレンドを正確に計量し用量に分散させることが可能になるように配合される。標準のブレンドは、例えば、50μgの薬剤と混合された13000μgのラクトースを含み、賦形剤と薬剤の比は260:1となる。賦形剤と薬剤の比が100:1〜1:1の適用量ブレンドが使用されてもよい。しかし、賦形剤と薬剤の比が非常に低い場合、薬剤用量の再現性はさらに変動してもよい。
【0141】
本発明の薬剤分配器は、1つの態様では、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、肺および気管支の疾患などの呼吸器疾患を治療する薬剤を分配するのに適している。別の態様では、本発明の薬剤分配器は、薬剤の体循環による治療を必要とする状態、例えば、偏頭痛、糖尿病、鎮痛(例えば、吸入モルヒネ)を治療する薬剤を分配するのに適している。
【0142】
したがって、喘息およびCOPDなどの呼吸器疾患を治療する薬剤分配器の用途が本明細書において提供される。あるいは、本発明は、例えば喘息およびCOPDなどの呼吸器疾患を治療する、本明細書に記載されるような薬剤製品の有効量を本明細書の薬剤分配器から吸入することによる投与を含む方法を提供する。
【0143】
治療効果を得るために必要な、任意の特定の薬剤化合物、または薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、もしくはそれらの生理学的に機能的な誘導体の量は、当然ながら、特定の化合物、投与経路、治療対象、および治療される特定の疾患または疾病によって変わる。本明細書の呼吸器疾患を治療する薬剤は、例えば、0.0005 mg〜10 mg、好ましくは0.005 mg〜0.5 mgの用量で吸入することによって投与されてもよい。ヒトの成人の用量範囲は、一般に、1日当たり0.0005 mg〜100 mg、好ましくは1日当たり0.01 mg〜1 mgである。
【0144】
本開示は単に例示のためのものであり、本発明はその修正、変形、および改善に及ぶことが理解されるであろう。
【0145】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別の薬剤区分を保持している少なくとも1つの薬剤キャリアとともに使用するための薬剤分配器であって、
(a)前記少なくとも1つの薬剤キャリアが保持している個別の薬剤区分を分配するために作動可能な分配機構と、
(b)マウスピースと、
(c)前記マウスピースのカバーであって、前記マウスピースが覆われる第1の位置から前記マウスピースが少なくとも部分的に露出する第2の位置へ、また前記マウスピースが露出する第3の位置へ連続的に移動するように、前記分配器に移動可能に取り付けられたカバーと、を備え、
前記カバーが、前記第1の位置から第2の位置へではなく、前記第2の位置から前記第3の位置へ移動することにより、前記分配機構が作動するように、前記カバーが前記分配機構と連結するように適合されており、
前記カバーと前記分配機構の連結は、第1および第2の爪歯車機構を備える爪歯車装置を構成する爪歯車を介して形成されており、該第1の爪歯車機構は該カバーによって該爪歯車装置を駆動させ、該第2の爪歯車機構によって該爪歯車装置は一回転方向にのみ増分される薬剤分配器。
【請求項2】
前記爪歯車は前記カバーと直接駆動接続するハブをさらに備えており、該ハブは前記第1の爪歯車機構と係合して該カバーによって前記爪歯車装置を駆動させる、請求項1に記載の薬剤分配器。
【請求項3】
前記爪歯車装置は前記ハブを受け入れるための窪みを備えている、請求項1または2に記載の薬剤分配器。
【請求項4】
前記窪みが内周面を規定し、該内周面は第1の爪歯車機構を提供する階段状をなしている、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項5】
前記爪歯車装置はさらに外周面を規定し、該外周面は第2の爪歯車機構を提供する階段状をなしている、請求項4に記載の薬剤分配器。
【請求項6】
前記第1の爪歯車機構は均等な角度で間隔を空けられた一連の内側の爪歯車歯を備え、前記第2の爪歯車機構は均等な角度で間隔を空けられた一連の外側の爪歯車歯を備えている、請求項5に記載の薬剤分配器。
【請求項7】
第1の爪歯車機構の有する前記内側の爪歯車歯と第1の爪歯車機構の有する前記外側の爪歯車歯はずれており、該内側の爪歯車歯のいずれも前記爪歯車装置の回転軸線から該外側の爪歯車歯と同じ半径上にない、請求項6に記載の薬剤分配器。
【請求項8】
前記爪歯車は外側につめをさらに備えており、該つめが第2の爪歯車機構と係合することで前記爪歯車装置が一回転方向にのみ増分される、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項9】
前記つめが弾性つめ脚部である、請求項8に記載の薬剤分配器。
【請求項10】
前記弾性つめ脚部には前記爪歯車装置の上に位置する保定プレートが備えてある請求項9に記載の薬剤分配器。
【請求項11】
前記分配器には、前記第1の位置で前記マウスピースカバーを移動止めする移動止め構成が備えてある、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項12】
前記移動止め構成は、前記保定プレートの有する切欠きと前記ハブの有する突起からなる請求項10に従属する請求項11に記載の薬剤分配器。
【請求項13】
前記切欠きに前記保定プレートの弾性フィンガーが備えてある請求項12に記載の薬剤分配器。
【請求項14】
前記分配機構が、
i)各薬剤キャリアを受け入れる受入れ部と、
ii)前記受入れ部によって各薬剤キャリアが受け入れられると、そこから個別の薬剤区分を放出する放出部と、
iii)前記マウスピースと連通し、かつ前記放出部によって放出可能な各薬剤キャリアの前記個別の薬剤区分と連通する排出口と、
iv)各薬剤キャリアの前記個別の薬剤区分を個々に割り送るインデクサと、を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項15】
前記第2の位置において前記マウスピースが完全に露出する、請求項1から14のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項16】
前記カバーが回転経路上を移動するように配置された、請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項17】
前記少なくとも1つの薬剤キャリアが粉末状の個別の薬剤区分を保持する、請求項1から16のいずれか一項に記載の薬剤分配器。
【請求項18】
前記カバーと前記分配機構との連結が、前記カバーが前記第2の位置から前記第3の位置へ移動することによってのみ前記分配機構が作動するように適合されている、請求項1から17のいずれか一項に記載の薬剤分配器。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−254315(P2012−254315A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177068(P2012−177068)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2008−523458(P2008−523458)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain