説明

薬剤収容容器

【課題】 回転中心軸にはその縦軸線長さ寸法にばらつきが生じていても、ロータの浮量を正確に設定できる薬剤収容容器の提供。
【解決手段】 薬剤収容部の下部で且つ薬剤収容部の底壁板よりも上側に、底壁板の上面と対向する底面を有して縦軸線回りに回転するロータが配置され、ロータには上下方向に亙る薬剤収容路が形成され、ロータの回転によって薬剤収容路に収容された薬剤を所定個数ずつ落下させるよう構成され、ロータの縦軸線回りの回転中心となる回転中心軸体の下部が容器本体の底壁板を貫通して底壁板の下方に突出する突出部を有し、ロータを前記底壁板から浮かす方向に付勢する弾性体が設けられ、弾性体による底壁板からのロータの浮量を所定値に保持すべく突出部上の所定位置に外嵌固定される外嵌部材が設けられている薬剤収容容器の構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤収容容器に関し、特に、処方箋に指示された薬剤としての錠剤を患者に供給するための薬剤分包装置に用いられる薬剤収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や薬局等では、医師の処方箋に指示された薬剤を患者に供給するために、薬剤分包装置を用いる場合がある。
この薬剤分包装置には、薬剤収容容器(「薬剤カセッタ」とも称する)が着脱自在に設けられているものがあり、該薬剤分包装置および薬剤収容容器として、例えば、下記特許文献1に示す技術が提案されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された薬剤収容容器は、容器本体の上部に薬剤収容部を有し、薬剤収容部に、外周部に上下方向に沿って形成した薬剤収容路を有して縦軸線回りに回転することで薬剤を周方向へ搬送するロータを配置している。
薬剤収容容器は、薬剤収容部から薬剤を所定個数ずつ落下させるよう上下に重なる薬剤の間を仕切る仕切体を有している。この仕切体は、薬剤収容部の側壁から薬剤収容部の内部に突出しており、その上下方向位置は、ロータ(薬剤収容路)の上下方向位置と関係付けられている。
薬剤収容容器では、ロータを縦軸線回りに回転可能とする回転中心軸が、ロータから下方に延長されている。回転中心軸の下端部は容器本体(薬剤収容部)の底壁から所定長さだけ下方に突出して、該突出部に従動ギヤが外嵌されている。この従動ギヤは、薬剤収容容器を薬剤分包装置に装着することで駆動ギヤに噛合するよう設けられている。駆動ギヤが回転駆動することで、回転中心軸が縦軸線回りに回転してロータもまた、縦軸線回りに回転する。
【0004】
ところでロータは、回転するときにその下面が、容器本体の底壁板の上面に接触しないことが好ましい。接触するとその分だけ摩擦力が大きくなって、ロータの回転が円滑に行われなかったり、駆動部に負担がかかったりするからである。そこでロータは、その下面を容器本体の底壁板の上面に対して浮かせるようにして、容器本体に組付けられている。
【0005】
ロータの下面と容器本体の底壁板の上面との間の浮量は、回転中心軸の長さと、従動ギヤの位置によって決められる。すなわち、ロータの下面を容器本体の底壁板の上面に当てた状態で回転中心軸の突出部端部に従動ギヤを固定し、予めロータの内部に設けたバネによってロータを上方に付勢することで、ロータを容器本体の底壁板の上面から浮かせている。なお、従動ギヤが底壁板の下面に当接した状態でのロータの浮量が最大の浮量となる。
【0006】
この浮量は、ロータが仕切体に上下方向で当らない量に設定する必要がある。ロータの位置が仕切体に対して必要以上に上方または下方にあるとロータが仕切体に接触してしまう。そうすると、ロータの回転が円滑に行われないからである。
この浮量を設定するために、下記特許文献1では次のような構成を有する。すなわち、回転中心軸は予め、所定の長さに形成されるとともに、突出部の中心には雌ネジが形成されている。また、突出部には径方向に沿う段付の座面が形成されるとともに、キー部が径方向外方に突出して形成されている。従動ギヤの中心孔には、キー部に嵌合する凹部が形成されている。
【0007】
上記構成において、キー部に凹部が嵌合するように突出部に従動ギヤを外嵌し、固定用ビスを従動ギヤの中心孔に挿通するとともに固定用ビスを雌ネジに螺合する。そして、回転中心軸の突出部に形成してある座面と固定用ビスの頭部とで、従動ギヤの中心部分を挟むようにしている。このようにすることで、回転中心軸の突出部に対する従動ギヤの位置が決められる。
なお参考特許文献として、特許文献2に示すように、薬剤収容容器の種類によっては従動ギヤと底壁板の下面との間に、別の従動ギヤを設けた構成のものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−188078号公報
【特許文献2】特開2007−190401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の薬剤収容容器では、浮量を決めるために、ロータの下面を容器本体の底壁板の上面に当てた状態とし、所定の長さの回転中心軸の突出部に形成された雌ネジに取付ビスを螺合して従属ギヤを突出部に固定する構成としている。
【0010】
しかしながら、回転中心軸にはその縦軸線長さ寸法にばらつきが生じる。このため、雌ネジに取付ビスを螺合して従属ギヤを突出部に固定する構成では、浮量は回転中心軸にはその縦軸線長さ寸法に依存してしまうことになる。そして回転中心軸にはその縦軸線長さ寸法にばらつきがあると、浮量が一定とならず、この場合はロータが仕切体に接触してしまうことが考えられる。
【0011】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、回転中心軸にはその縦軸線長さ寸法にばらつきが生じていても、ロータの浮量を正確に設定できる薬剤収容容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の薬剤収容容器は、薬剤収容部の下部で且つ薬剤収容部の底壁板よりも上側に、該底壁板の上面と対向する底面を有して縦軸線回りに回転するロータが配置され、該ロータには上下方向に亙る薬剤収容路が形成され、ロータの回転によって薬剤収容路に収容された薬剤を所定個数ずつ落下させるよう構成され、前記ロータの縦軸線回りの回転中心となる回転中心軸体の下部が容器本体の底壁板を貫通して該底壁板の下方に突出する突出部を有し、前記ロータを前記底壁板から浮かす方向に付勢する弾性体が設けられ、該弾性体による底壁板からのロータの浮量を所定値に保持すべく前記突出部上の所定位置に外嵌固定される外嵌部材が設けられていることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、ロータを容器本体に組付けるには、回転中心軸体を底壁板に貫通させて、弾性体の弾性に抗してロータを底壁板に当てたうえで外嵌部材を突出部上の所定位置に外嵌し固定する。そうすると、底壁板に対するロータの浮量が、突出部上の外嵌部材の位置に応じた所定の浮量になる。
そして、回転中心軸の縦軸線方向の長さにばらつきがあったとしても、そのばらつきに応じた突出部上の位置に外嵌部材を位置付けたうえで固定すれば、ロータの、弾性体の弾性による底壁板の上面からの浮量を最適な量に調節することが可能である。
【0014】
本発明の薬剤収容容器では、突出部の外周面に雄ネジが形成され、外嵌部材は回転中心軸体に回転力を付与するべく前記雄ネジに螺合するナットギヤとされ、該ナットギヤを雄ネジに固定するための固定手段として、前記雄ネジに螺合してナットギヤに縦軸線方向で当接するナット部材が設けられていることを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、固定手段としてのナット部材を雄ネジに螺合し、ナット部材をナットギヤに当接させてナットギヤを雄ネジに固定することで、ナットギヤを雄ネジ上の所定位置に固定する。
【0016】
本発明の薬剤収容容器では、ナット部材の締付けにより雄ネジとナットギヤの雌ネジのネジ山どうしが縦軸線方向で圧着されて、ナットギヤが突出部に固定されていることを特徴としている。
上記構成によれば、雄ネジとナットギヤの雌ネジのネジ山どうしの圧着力により、ナットギヤは突出部に確実に固定される。
【0017】
本発明の薬剤収容容器では、ナットギヤにおいてナット部材が当接する側の面に凹部が形成されて該凹部にナット部材の一部または全部が収納されていることを特徴としている。
上記構成によれば、ナット部材がナットギヤの凹部に収容される分だけ、薬剤収容容器の縦軸線方向の長さを小さくすることが可能になる。
【0018】
本発明の薬剤収容容器では、回転中心軸は内軸と該内軸を外嵌する外軸を有した二軸構造であり、内軸と外軸とは縦軸線回りに相対回転可能に構成され、ロータは上部回転部と下部回転部とを有して上部回転部と内軸とが連結され、下部回転部と外軸とが連結され、雄ネジは内軸の突出部に形成され、ナットギヤは内軸の突出部に螺合され、該ナットギヤとは別のギヤが外軸の突出部に縦軸線方向に摺動自在で且つ一体的に回転するよう外嵌されていることを特徴としている。
【0019】
上記構成において、ナットギヤに駆動力が付与されるとロータの上部回転部が縦軸線回りに回転し、ギヤに駆動力が付与されるとロータの下部回転部が縦軸線回りに回転するから、ロータの上部回転部と下部回転部とを異なる回転数で縦軸線回りに回転させることが可能になり、薬剤収容部に収容された薬剤(錠剤)に対する撹拌性が向上し、薬剤が確実に薬剤収容路に収容される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の薬剤収容容器では、弾性体による底壁板からのロータの浮量を所定値に保持すべく突出部上の所定位置に外嵌固定される外嵌部材が設けられているから、回転中心軸の縦軸線方向の長さにばらつきがあったとしても、そのばらつきに応じた突出部上の位置に外嵌部材を位置付けたうえで固定することで、ロータの、弾性体の弾性による底壁板の上面からの浮量を最適な量に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を示し、薬剤分包装置の一部を拡大した側面図
【図2】同じく多数の薬剤収容容器を薬剤分包装置の躯体に装着した状態の斜視図
【図3】同じく薬剤収容容器の上方からの単体斜視図
【図4】同じく薬剤収容容器の下方からの単体斜視図
【図5】同じく下方からの要部拡大斜視図
【図6】同じく薬剤収容容器の全体縦断面図
【図7】同じく薬剤収容容器の組立工程の一部を示す拡大縦断面図
【図8】同じく薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図
【図9】同じく薬剤収容容器の横断面図
【図10】第二の実施形態を示し、薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図
【図11】第三の実施形態を示し、薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図
【図12】同じく薬剤収容容器の全体縦断面図
【図13】第四の実施形態を示し、薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る薬剤分包装置を図面に基づいて説明する。図1ないし図9は本発明の第一の実施形態を示す。これらの図において、図1は薬剤分包装置の一部を拡大した側面図、図2は多数の薬剤収容容器を薬剤分包装置の躯体に装着した状態の斜視図である。
また、図3は薬剤収容容器の上方からの単体斜視図、図4は薬剤収容容器の下方からの単体斜視図、図5は下方からの要部拡大斜視図、図6は薬剤収容容器の全体縦断面図、図7は薬剤収容容器の組立工程の一部を示す拡大縦断面図、図8は薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図、図9は薬剤収容容器の横断面図である。
【0023】
図1および図2に示すように、薬剤分包装置1は、円柱状の躯体2と、躯体2から放射状に多数水平方向に突設された扇状の支持体3と、各支持体3上に、躯体2に対してその前後方向に移動させることにより、上下の支持体3間に着脱自在に収容される薬剤収容容器(「薬剤カセッタ」とも称する)4とから構成されている。
【0024】
各支持体3は板状に形成され、その板面には、躯体2の下部に向けて薬剤としての錠剤5(例えば、図6参照)を落下させるための不図示の錠剤通過孔が穿設され、該錠剤通過孔の内面には、錠剤5の通過を検出可能とする検出手段として、例えば不図示のセンサーを有している。
【0025】
次に、薬剤収容容器4の構成を、図3ないし図9を主にして説明する。
これらの図に示すように、薬剤収容容器4は、薬剤を収容する容器本体6と、容器本体6内の下部に設けられ、容器本体6の底部に対して縦軸線(上下方向軸線)7回りに回転可能なロータ8と、錠剤5を一錠ずつ躯体2の下部に落下させるべく設けられた仕切体10と、容器本体6の底部に対してロータ8とは反対側に設けられ、ロータ8の回転中心部材である回転中心軸の突出部(下端部)に装着されたギヤ(平ギヤが用いられている)と、薬剤収容容器4を支持体3に着脱する際にこれを案内するための案内ローラ11とを備える。
【0026】
容器本体6は平面視して扇状の底壁部12と、底壁部12における底壁板13の上面13aに一体的に形成された薬剤収容部14とを備える。
底壁部12は、平面視して扇状の前記底壁板13と、底壁板13の周方向両側端辺に前後方向に沿うよう一体的に形成された横フレーム15と、底壁板13の前端辺に周方向に沿うよう一体的に形成された前フレーム16とを有する。
横フレーム15および前フレーム16は同一の所定の高さを有し、容器本体6を支持体3の上面に装着した際に、底壁板13は横フレーム15および前フレーム16の高さ分だけ支持体3の上面から浮いた状態として保持される。
【0027】
薬剤収容部14はその底壁板13の上面13aから垂直方向上方に立ち上がってロータ8を内周面側に配置可能とする、下部収容部としての円筒部(外壁部に相当する)17と、円筒部17の上部に配置され、平面視して扇形状の上部収容部18とを一体的に有する。上部収容部18の底面は、円筒部17の上端部に向けて下傾斜する傾斜壁20とされている。
円筒部17の前方には、薬剤収容容器4を着脱する際に把持される把持部21が組込まれている。
【0028】
容器本体6の底部、具体的には底壁板13の周方向中心の後部寄りには、前記錠剤通過孔と上下方向で対向する平面視して矩形形状の薬剤排出開口22が形成されている。この薬剤排出開口22は、薬剤を排出する排出孔となる。
薬剤排出開口22の前方で円筒部17の中心位置に、前記回転中心軸が上方から挿通される円筒状膨出部23が上方に突出するよう一体的に形成されている。
【0029】
薬剤排出開口22は、平面視して矩形形状に穿たれており、薬剤排出開口22を形成する前壁面50と後壁面51とは前後方向で対向し、両側壁面52,53は左右方向で対向している。
前壁面50は垂直面であり、前壁面50は、ロータ8の回転中心である縦軸線7を中心として薬剤収容路24の径方向内面55どうしを連続するよう描いた仮想円に対して、中心側(縦軸線7側)に位置ずれしている。後壁面51は垂直面であり、ロータ8の回転中心である縦軸線7を中心として円筒部17の外周面42に対してさらに後方に位置ずれしている。このずれ量は、特に定めてはおらないが、扱われる錠剤5の形状、直径、サイズ等の条件に基づいて適宜設定することが好ましい。
なお、両側壁面52,53は何れも垂直面であり、左右方向への離間距離は薬剤収容路24の周方向幅に比べて大きく設定されている。
【0030】
次に、仕切体10の構成を説明する。
仕切体10は、ロータ8に隣接して配置され、薬剤排出開口22と薬剤収容路24とが連通するときに薬剤収容路24への錠剤5の進入を阻止するように薬剤収容路24を仕切り、薬剤収容路24に収容された錠剤5を所定個数(この場合一個)だけ、薬剤排出開口22に落下させるようにするものである。
仕切体10は、円筒部17の後部側の壁面部にその周方向形成された挿通孔25に後方から前方に向けて挿入されて、円筒部17内に露出している。この仕切体10は、円筒部17外に配置される基部26を有し、基部26の一方側が、円筒部17の一方側寄りの外周面から後方へ突出するよう形成された支持突起27に対して、ビス28によって着脱自在、且つ上下方向(縦軸線7に沿う方向)位置を調節可能に取付けられている。
また、仕切体10はその円筒部17内に露出している部分の上面は、ロータ8の回転方向上流側が下流側に向けて上傾斜する傾斜案内面とされ、傾斜案内面から下流側は水平面に形成されている。
【0031】
次に、ロータ8の構成を説明する。ロータ8には、錠剤5を個別に収容する薬剤収容路24が形成される。このロータ8の回転によって、薬剤収容路24に収容される錠剤5を薬剤排出開口22に搬送することができる。ロータ8は、下部回転部32と上部回転部33とを有する。
軸体である前記回転中心軸は、ロータ8を保持し、ロータ8の回転軸線である縦軸線7と同軸に延びて容器本体6の底部を貫通する。本実施形態では、回転中心軸は、下部回転部32に設けられた外軸34と、上部回転部33に設けられた内軸35とを有した二軸構造である。このように二軸構造とすることにより、上部回転部33と下部回転部32とが縦軸線7回りに相対回転可能に構成されている。
上部回転部33と下部回転部32とが相対回転することにより、ロータ8は上部収容部18に収容された多数個の錠剤5を、高い撹拌性をもって撹拌する撹拌部材としての機能を有する。
【0032】
前記外軸34は円筒状に形成されており、外軸34は下部回転部32に一体に設けられて、円筒状膨出部23に上方から内嵌し、また、底壁板13を貫通して下方に突出する外突出部43を有する。内軸35は、上部回転部33に一体的に設けられ、外軸34に上方から内嵌し、また、底壁板13の下方に突出する内突出部44を有している。
内突出部44は外突出部43に比べてさらに下方に突出しており、内突出部44の外周面には雄ネジ46が所定の長さ分だけ上下領域に形成されている。
【0033】
下部回転部32は、円板状に形成された円板部32Aを有し、その上面は平滑面とされ、該上面に上部回転部33の下面が周方向に摺動自在に載置されている。下部回転部32の直径は、円筒部17の内周面36の内径に対してわずかに小さく設定されている。円板部32Aの底面32aには、周方向に等間隔置きに突起29が配置されている。
円板部32Aの底面(下面)32aは、環状の平滑面とされている。底面32aは、円板部32Aの中心部に凹部32Bを形成することで、環状に形成されている。
下部回転部32の径方向中心には、上方に向けて突出して上部回転部33の裏面中心部に形成した下面凹部38に内嵌する膨出部40が形成されている。前記外軸34は膨出部40の径方向内方側から下方に向けて一体的に形成されている。
【0034】
下部回転部32の外周面からその径方向内方部分の環状の領域を薬剤収容路形成部分とし、下部回転部32の外周面を周方向等間隔置きに径方向内方に後退させることで、上下方向に亙って沿って前記薬剤収容路24が複数形成されている。この薬剤収容路24の周方向幅および高さは、錠剤5を一つだけ収容し得るよう設定されている。
下部回転部32において薬剤収容路24間の上面は薬剤収容部14に収容された錠剤5が載る載置面24aとされている。
【0035】
ロータ8を容器本体6の底部から離れる方向、本実施形態では上方に付勢する弾性体として、コイルバネ48(圧縮バネ)が設けられている。
円筒状膨出部23の下端部には、薄板の環状部材65が遊嵌されており(図7参照)、この環状部材65が弾性体の一例としての前記コイルバネ48の下端部でのバネ座となっている。
膨出部40の裏面47には、コイルバネ48の上端面を周方向で係止するための係止部66が形成されている。この係止部66は、薄板状に形成されて、裏面47に縦軸線7を中心とする径方向に放射状に複数本形成されている。係止部66の、裏面47からの下方への突出量はわずかである。コイルバネ48の上端部は、係止部66の下面66aをバネ座としている。
【0036】
このコイルバネ48の弾性によって、ロータ8、すなわち上部回転部33と下部回転部32は、底壁板13の上面13aから浮く方向に付勢されている。また、収容される錠剤5の量に起因する重さに応じてコイルバネ48は伸縮し、少なくとも錠剤5がロータ8上にない場合では、ロータ8の下面は底壁板13の上面13aからわずかな浮量をもって浮いている。
また、少なくとも錠剤5がロータ8上にない場合では、前記突起29も底壁板13の上面13aから離れている。
【0037】
特に、突起29を設けたことにより、突起29の高さ分だけ円板部32Aの底面32aは上方に位置するよう設定されている。
これら突起29は、ロータ8の径方向について薬剤収容路24と同じ位置(薬剤収容路24に対応する位置)に配置している。
この実施形態では、突起29は90°間隔で薬剤収容路24と薬剤収容路24との中間位置に配置されて、何れの突起29も底面32aの最外端位置に配置されている。
【0038】
また各突起29の、円板部32Aの底面32aからの突出量はわずかであるが、下部回転部32に錠剤5の重さがかかってコイルバネ48が縮んだとしても、あるいは薬剤収容容器4の組立て誤差によるガタつき等で、ロータ8(下部回転部32)が縦軸線7に対して傾いたとしても、突起29以外では円板部32Aの底面32aと底壁板13の上面13aとが当接せず、突起29が底壁板13の上面13aに当接するよう構成されている。
なお、これらの突起29は下方を凸とする略半球形状に形成されており、合成樹脂によって円板部32Aに一体的に形成されている。合成樹脂として自己潤滑性に優れた材料が用いられている。
ところで、薬剤収容容器4が薬剤分包装置1に搭載されているときに、装置の振動などでロータ8が回動してしまうことがある。ロータ8が回動してしまうと、薬剤収容容器4から不要な錠剤5が排出されてしまう。そのため、このようなロータ8の回動を防ぐ必要がある。
前記コイルバネ48は、前述のようなロータ8の回動を防ぐ、という機能をも有する。換言すれば、前記コイルバネ48を設けることによって、容器本体6およびロータ8間の摩擦抵抗が大きくなり、これによって前述のようなロータ8の回動を防ぐことができる。
【0039】
上部回転部33は、円筒部17の内周面36に対して錠剤5が落下できる隙間19を介して設けられている。換言すれば、上部回転部33の外径辺33aは隙間19を介して円筒部17の内周面36と径方向内外方向で対向している。隙間19の径方向幅は、薬剤収容路24の径方向幅にほぼ一致している。
このような上部回転部33の構成により、上部回転部33の上面に錠剤5が載ると、錠剤5は該上面あるいは傾斜平面部に沿って斜め下方に滑り落ち、薬剤収容路24に収容されるよう構成されている。
【0040】
外軸34の外突出部43には、大径従動ギヤ41が外嵌装着されている。大径従動ギヤ41は、外突出部43に、縦軸線7方向に摺動自在で且つ一体的に回転するよう外嵌装着されている。符号60はスリーブ状に形成した上下の軸受(すべり軸受)を示しており、内軸35と外軸34との相対回転を円滑にし、内軸35と外軸34との相対的なガタを防止する。
なお、大径従動ギヤ41の歯には、下部回転部32の不測の回転を阻止すべく、不図示の板バネの係止部が側方から係止されている。
【0041】
内軸35の内突出部44の雄ネジ46には、大径従動ギヤ41よりも小径の小径従動ギヤ(外嵌部材としてのナットギヤに相当する)45が螺合されている。この小径従動ギヤ45の下面45bには、上方へ凹となる凹部45cが形成されている。内突出部44には、小径従動ギヤ45に下方から重なるように、固定手段としての固定用ナット部材61が螺合されている。
この固定用ナット部材61は凹部45cに収納される形態とされており、固定用ナット部材61の締付けにより雄ネジ46と小径従動ギヤ45の雌ネジのネジ山どうしが縦軸線方向で圧着されて、小径従動ギヤ45が内突出部44に強固に固定されている。
【0042】
外軸34と内軸35には、それぞれ径の異なるギヤが装着されていることにより、薬剤収容容器4を支持体3上に装着して、不図示の駆動ギヤを駆動させることで各ギヤを回転させた際に、上部回転部33と下部回転部32とは異なる速度で縦軸線7回りに回転する構成となっている。
なお、浮量である、突起29の先端部と底壁板13の上面13aとの間の上下方向距離δ1は、係止部66の下面66aと円筒状膨出部23の上端面23aとの上下方向での距離に比べて小さく設定されている。
【0043】
上記構成の薬剤分包装置1では、薬剤収容容器4の蓋4Aを開けて上部収容部18から錠剤5を容器本体6内に投入し、蓋4Aを閉じる。
このとき、コイルバネ48の弾性により、下部回転部32は、底壁板13の上面13aから浮いており、突起29も底壁板13の上面13aから離れている。
【0044】
また、薬剤収容部14に錠剤5が入っていない状態において、突起29の最下端部と底壁板13の上面13aまでの上下方向での距離δ1は、係止部66の下面66aと円筒状膨出部23の上端面23aとの上下方向での距離に比べて小さく設定されている。
【0045】
したがって、仮に薬剤収容部14に錠剤5を投入することでその重さがロータ8にかかりコイルバネ48が縮んだとすると、係止部66の下面66aが円筒状膨出部23の上端面23aに当接する前に、突起29が底壁板13の上面13aに当接する。
そして、仮に突起29が底壁板13の上面13aに当接したとして、この場合、突起29は半球形状であるから、底壁板13の上面13aと突起29とは点接触する。
【0046】
続いて薬剤収容容器4を支持体3に対して押込むようにして装着すると、支持体3の上面後部に立設された押圧壁49の前端部によって板バネの先端部が押圧される。そうすると、板バネがその基端部回りに撓んで大径従動ギヤ41の歯に係止している板バネの係止部が、該歯から外れて係止が解除される。そして不図示の駆動ギヤと、小径従動ギヤ45および大径従動ギヤ41がそれぞれ噛合し、小径従動ギヤ45および大径従動ギヤ41が縦軸線7回りに回転可能となる。
【0047】
このような状態において、駆動ギヤを回転駆動させると、小径従動ギヤ45および大径従動ギヤ41が互いに異なる速度で外軸34、内軸35回りにそれぞれ回転し、その結果、ロータ8の下部回転部32、上部回転部33が異なる速度をもって外軸34、内軸35とともに縦軸線7回りに回転する。
このようにロータ8の下部回転部32、上部回転部33が異なる速度をもって回転することにより、投入されている錠剤5が充分に撹拌されながら、薬剤収容路24に一錠の錠剤5が収容される。また、薬剤収容路24に収容された錠剤5の上に別の錠剤5が重なる。さらに、錠剤5が載置面24a上に、一列で周方向に並ぶように載置される。
【0048】
また、膨出部40の裏面47に係止部66が形成されていて、コイルバネ48の上端面は係止部66に係止されているから、ロータ8の回転に伴ってコイルバネ48も縦軸線7回りに回転する。
【0049】
そして、薬剤収容路24に対して上下で錠剤5が重なっていれば、ロータ8の回転により、上にある錠剤5は仕切体10によって掬われるようにして下にある(薬剤収容路24内にある)錠剤5と分離される。そして、ロータ8が縦軸線7回りに回転して、錠剤5が収容された薬剤収容路24が、薬剤排出開口22と上下方向で対向すると、その錠剤5のみが薬剤収容路24から薬剤排出開口22に落下する。
【0050】
ところで、突起29の最下端部と底壁板13の上面13aまでの上下方向での距離(最大の浮量)は、係止部66の下面66aと円筒状膨出部23の上端面23aとの上下方向での距離に比べて小さくなるよう設定されている。
したがって、ロータ8に錠剤5の重さがかかってロータ8が下動した際には、突起29の最下端部が底壁板13の上面13aに接触して、係止部66の下面66aと円筒状膨出部23の上端面23aとは接触しない。
【0051】
このように、ロータ8に錠剤5の重さがかかってロータ8が縦軸線7回りに回転しても、ロータ8と底壁板13の上面13aとは突起29のみで接触するだけであるので、下部回転部32の底面32aが底壁板13の上面13aに接触する場合に比べて、摩擦力が極めて小さくなる。このため、ロータ8が極めて円滑に縦軸線7回りに回転することができる。
【0052】
ところで、上下方向に重なる錠剤5どうしは仕切体10によって仕切られることで、薬剤収容路24内の錠剤5を一錠(所定個数)ずつ落下させる必要がある。このため、仕切体10の上下方向位置と仕切られる錠剤5の上下方向での重なり位置との高さ関係はできるだけ正確に設定する必要がある。
【0053】
そこで、この実施形態では突起29の位置を、下部回転部32の底面32aにおいて、薬剤収容路24と同じ位置に配置している。このように構成することで、突起29を底壁板13の上面13aに当てて、突起29のある位置で底壁板13に対するロータ8の高さ位置を決めることで、組付精度が最も要求される位置での部材どうしの組付精度を確保することが可能となる。したがって、上下方向で重なる錠剤5を確実に仕切るようにすることができる。
【0054】
ところで、ロータ8(載置面24a)の浮量が大きすぎて仕切体10に対して必要以上に上にあってロータ8が仕切体10に接触してしまうとロータ8の回転が円滑に行われない。また、ロータ8の浮量が小さすぎて仕切体10に対して必要以上に下方にあると、上下方向に重なる錠剤5のうち、上方の錠剤5の上下方向中心に近い位置に仕切体10が当る現象が想定される。そうなると、上方の錠剤5が仕切体10と載置面24aとの間に噛み込んだり、あるいは上方の錠剤5が破損したりする等の現象が発生することが考えられる。
したがって、ロータ8の浮量は、仕切体10の高さ位置に対して過不足ない高さに設定する必要がある。そこでこの実施形態では、次のようにしてロータ8を容器本体6に組付ける。
【0055】
すなわち、円筒状膨出部23の下端部に環状部材65を装着し、円筒状膨出部23にコイルバネ48を外嵌するよう装着し、上側の軸受60を介して外軸34に内軸35を内嵌するようにして下部回転部32と上部回転部33とを組付けてロータ8とし、その外軸34を円筒状膨出部23に挿通した状態とする。
続いて、大径従動ギヤ41を、外軸34の外突出部43に外嵌挿通し、下側の軸受60を、その胴部60aが外軸34と内軸35との間に入るよう装着する。
【0056】
続いて、大径従動ギヤ41の下面41bと軸受60の鍔部60bの上面との間に、シム部材(治具)70を挿入する(図8参照)。このシム部材70の厚みは、前記最大の浮量である所定の浮量(距離δ1)に等しく設定しておく。
【0057】
続いて、コイルバネ48の弾性に抗して突起29を底壁板13の上面13aに当接させ、この状態で、内軸35の内突出部44に小径従動ギヤ45を螺合して締付ける。こうして、底壁板13と小径従動ギヤ45とによって、大径従動ギヤ41、シム部材70および軸受60が縦軸線7方向に隙間なく挟持される。
【0058】
続いて、内軸35および小径従動ギヤ45の回転を阻止した状態で、内軸35の内突出部44に、小径従動ギヤ45に下方から重なるように固定用ナット部材61を螺合し、小径従動ギヤ45の凹部45cに固定用ナット部材61が収納されるように、レンチ等の工具により固定用ナット部材61を凹部45cの底面に圧着するよう締付ける。
【0059】
そうすると、固定用ナット部材61の締結力により、内突出部44の雄ネジ46と小径従動ギヤ45の雌ネジのネジ山どうしが縦軸線7方向で圧着されて、小径従動ギヤ45が内突出部44に強固に固定される。
そうなると、ここでシム部材70を引抜いても、前記ネジ山どうしの圧着により、小径従動ギヤ45および固定用ナット部材61は、容易には回転しないから、小径従動ギヤ45がその場に固定される。
【0060】
ところで、コイルバネ48によってロータ8は上方に付勢されており、大径従動ギヤ41は、外突出部43に、縦軸線7方向に摺動自在である。よって、シム部材70を取外せば、コイルバネ48の弾性により、シム部材70の厚み分だけ底壁板13の上面13aに対して突起29の先端部が浮くことになる。
【0061】
このように、内軸35の内突出部44を雄ネジ46とすることで、小径従動ギヤ45の回転中心軸に対する上下方向の位置に自由度を付与した状態で、シム部材70の厚みを必要な浮量に等しく設定して、固定用ナット部材61を締付けることで、仮に回転中心軸の縦軸線7長さ寸法にばらつきが生じていたとしても、底壁板13の上面13aに対する突起29の浮量を調整して正確に設定することができる。
また仮に容器本体6の底部に反りがあったり、あるいは円筒状膨出部23と外軸34との間に軸受部材を設ける場合に円筒状膨出部23に対する軸受部材の挿入量にばらつきがあったりしても、同様に、前記浮量を調整して正確に設定することができる。
【0062】
このように、小径従動ギヤ45によって、軸体に対してこの軸体に沿って位置を調整される調整部材が実現され、内軸35の雄ネジ46に螺合するダブルナットによって、調整部材を軸体に対して固定する固定手段が実現される。そして、調整部材および固定手段によって、軸体に対してこの軸体に沿って位置を調整されて固定され、ロータ8を容器本体6内の下部に係止する係止手段が構成される。
しかもダブルナットを構成する一方のナットは、調整部材となる小径従動ギヤ45と一体に設けられ、これによって薬剤収容容器4の小型化を図ることができる。
【0063】
換言すれば、ロータ8の位置と仕切体10との上下方向距離を過不足ないよう、底壁部12に対してロータ8を組付けることができ、ひいては、薬剤排出開口22から一定のタイミングで錠剤5を落下させることができ、錠剤5が錠剤通過孔に至って、該錠剤通過孔を通過することで錠剤5が排出されたことを検出手段が検出して、錠剤5を正確に分配することができる。
【0064】
なお、小径従動ギヤ45の下面45bには、上方へ凹となる環状の凹部45cが形成されており、凹部45cに固定用ナット部材61が収納されているので、その分だけ装置の高さ方向が嵩張らない。このように調整部材である小径従動ギヤ45には、ダブルナットを構成する他方のナットである固定用ナット部材61が嵌り込む凹所が形成され、これによっても薬剤収容容器4の小型化を図ることができる。
逆に、装置の高さが問題にならないのであれば、必ずしも凹部45cを形成する必要はない。この場合では、固定用ナット部材61を小径従動ギヤ45の下面45bに圧着することで小径従動ギヤ45を内突出部44の所定位置に固定することができる。
【0065】
次に、図10に基づいて別の実施形態(第二の実施形態)を説明する。図10は薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図である。図10で示した実施形態が図1ないし図9で示した第一の実施形態と異なる構成は、固定手段である。
【0066】
図10で示す第二の実施形態における固定手段は、小径従動ギヤ45に対して雄ネジ46の両側から螺合し、小径従動ギヤ45を挟持するよう当接する固定用ナット部材71,72から構成されている。
同図では、小径従動ギヤ45に凹部45cを形成していないが、固定用ナット部材71,72の一部または全部が収納される凹部を、小径従動ギヤ45の両側面に形成することも好ましい。
他の構成は第一の実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図10に表れない部材については、図1ないし図9を援用する。
【0067】
第二の実施形態における上記構成では、外軸34の外突出部43に大径従動ギヤ41を嵌合し、下側の軸受60を、その胴部60aが外軸34と内軸35との間に入るよう装着する。そして、コイルバネ48の弾性に抗して突起29を底壁板13の上面13aに当接させ、この状態で大径従動ギヤ41の下面41bと軸受60の鍔部60bの上面との間に、シム部材70を挿入する(図8参照)。
【0068】
そして、内突出部44の雄ネジ46に、一方の固定用ナット部材71(薬剤収容容器4の使用状態において上側になる固定用ナット部材)を軸受60の鍔部60bに当たるまで螺合し、続いて雄ネジ46に小径従動ギヤ45を一方の固定用ナット部材71に当たるまで螺合し、さらに雄ネジ46に他方の固定用ナット部材72を小径従動ギヤ45(薬剤収容容器4の使用状態において下側になる固定用ナット部材)に当たるまで螺合する。
【0069】
このようにしたうえで、他方の固定用ナット部材72を、レンチ等の工具により回転させて、他方の固定用ナット部材72を小径従動ギヤ45に対して締付ける。
そうすると、他方の固定用ナット部材72の締結力により、内突出部44の雄ネジ46と小径従動ギヤ45の雌ネジのネジ山どうし、内突出部44の雄ネジ46と一方の固定用ナット部材71のネジ山どうしが縦軸線7方向で圧着されて、小径従動ギヤ45が内突出部44に強固に固定される。
【0070】
ここでシム部材70を引抜いても(取外しても)、前記ネジ山どうしの圧着により、小径従動ギヤ45および固定用ナット部材71,72は、容易には回転しないから、小径従動ギヤ45がその場に固定される。他は上記図1ないし図9で示した第一の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0071】
さらに別の実施形態(第三の実施形態)を、図11および図12に基づいて説明する。図11は薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図、図12は薬剤収容容器の全体縦断面図である。
第三の実施形態が第一の実施形態および第二の実施形態と異なる構成は、内突出部44に雄ネジ46が形成されていない点と、固定手段の構成である。
【0072】
第三の実施形態における固定手段は、小径従動ギヤ45そのものに設けられてその中心穴75の周面の一部を形成する加圧片76と、加圧片76の径方向外方側に形成した雌ネジ(雌ネジ穴)77とを有する。
また固定手段は、雌ネジ77に螺着自在であって、雌ネジ77に螺合することで加圧片76を径方向内方に加圧するための雄ネジ78を有する。
雄ネジ78の径は雌ネジ77の径に比べて大きく設定されており、加圧片76の外周一部には溝79が形成されており、雌ネジ77に雄ネジ78を螺着すると加圧片76が径方向中心側へ撓んで、これが内突出部44の外周面に圧着される構成となっている。
他の構成は第一の実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図11,12に表れない部材については、図1ないし図9を援用する。
【0073】
上記構成において、第一の実施形態に示したように、外軸34の外突出部43に大径従動ギヤ41を嵌合し、下側の軸受60を、その胴部60aが外軸34と内軸35との間に入るよう装着する。そして、コイルバネ48の弾性に抗して突起29を底壁板13の上面13aに当接させ、この状態で大径従動ギヤ41の下面41bと軸受60の鍔部60bの上面との間に、シム部材70を挿入する(図8参照)。
【0074】
続いて小径従動ギヤ45をその中心穴75が内突出部44を挿通するようにして、小径従動ギヤ45を内突出部44に装着する。続いて雄ネジ78を雌ネジ77に螺着すると、雄ネジ78の径は雌ネジ77の径に比べて大きく設定されているから、加圧片76が径方向中心側へ撓んで、これが内突出部44の外周面に圧着されて、小径従動ギヤ45が内突出部44に確実に固定される。したがって、シム部材70を取除くと、コイルバネ48の弾性によってシム部材70の厚み分に対応する分だけ、ロータ8が底壁板13の上面13aから所定の浮量をもって浮く(離間する)。他は上記第一の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0075】
さらに別の実施形態(第四の実施形態)を、図13に基づいて説明する。図13は薬剤収容容器を上下逆転させた全体斜視図である。なお、図10に表れない部材については、図1ないし図9を援用する。
【0076】
この実施形態では、固定手段としてネジロック剤を用いている。この場合、内突出部44には雄ネジ46が形成され、小径従動ギヤ45はナットギヤである。図ではネジロック剤を充填したネジロック剤差し80を用いて、内突出部44の雄ネジ46、あるいは小径従動ギヤ45の雌ネジにネジロック剤を付加することで、小径従動ギヤ45を内突出部44の所定位置に固定する構成である。
これによって、底壁板13の上面13aに対するロータ8を所定の浮量とすることができる。
【0077】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態では、回転中心軸は内外の二軸構造とした。しかしながら本発明は、回転中心軸が一軸構造であっても適用できる。
回転中心軸が一軸構造である場合は、ロータが上下に分割されていない場合であって、該一軸を回転中心軸としてロータを回転させる構成となる。この場合では、従動ギヤ(ナットギヤ)もまた一個となる。そして該従動ギヤを一軸の突出部に形成した雄ネジに螺合し、固定用ナット部材を従動ギヤに圧着し、従動ギヤと固定用ナット部材のネジ山どうしを圧着することで、回転中心軸に従動ギヤを固定する。このとき、シム部材は従動ギヤの上面と底壁板の下面との間に挿入しておく。
【0078】
あるいは、内突出部44に雄ネジ46が形成せず、第三の実施形態に示した小径従動ギヤ45の構成に相当するギヤ(径の大小は問わない)を用いて、これを内突出部44の所定位置に固定してもよい。
【0079】
例えば、上記各実施形態では、突起29の形状を略半球形状として周方向に間隔を置いて配置している。しかしながら、突起は下部回転部32の底面32aに、縦軸線7を中心とする環状に形成することもできる。
その断面形状は特に限定されず、径方向の幅の小さい矩形形状や、逆三角形形状、半球形状などとしたり、周方向に所定の長さを有するよう形成したものを同一円周上に所定間隔で配置したりして、底壁板13の上面13aに線接触的に接触させてもよい。
【0080】
上記各実施形態では、薬剤収容路24を下部回転部32の径方向外方端部に配置しているため、これに応じて突起29は下部回転部32の底面32aの径方向外方端部に配置した。しかしながら、突起はロータの径方向について薬剤収容路と同じ位置に配置する構成であるから、突起はロータの底面の径方向外方端部に配置することに限定されない。
【0081】
上記実施形態では、下部回転部32の外周面からその径方向内方部分の環状の領域を薬剤収容路形成部分とし、下部回転部32の外周面を周方向等間隔置きに径方向内方に後退させることで、上下方向に亙って沿って薬剤収容路24を形成している。しかしながら、薬剤収容路形成部分をロータの外周面に対して径方向内方側に位置ずれさせた領域とし、薬剤収容路をロータの外周面に対してその径方向内方に上下方向に貫通する穴として形成することもある。
【0082】
このような場合では、突起は薬剤収容路と同じ位置に配置すべくロータの外周面に対してその径方向内方に位置ずれして配置した構成とする。突起をロータの径方向について薬剤収容路と同じ位置に配置することで、組付精度が最も要求される位置での部材どうしの組付精度を確保することが可能となり、上下方向で重なる錠剤を確実に仕切ることができる。
そして、上記何れの形状の突起であっても、ロータの底面が底壁板の上面に接触する場合に比べて摩擦力が極めて小さくなる。このため、ロータが極めて円滑に縦軸回りに回転することができる。
【0083】
また、上記実施形態では、下部回転部32の底面32aに突起を設けたが、底壁板13の上面13aに設けることもできる。
この場合は、突起と下部回転部32の底面32aとを点接触ないし線接触させるようにすることで、ロータ8を安定して縦軸線7回りに回転させることができ、薬剤排出開口22から錠剤5を一定のタイミングで落下させることができる。
【0084】
また、図示しないが、薬剤排出開口22に連続して案内凹部を形成することも好ましい。ロータ8(下部回転部32)が回転して仮に突起29が薬剤排出開口22に入り込んだ場合には、突起29は案内凹部の案内面に案内されて円滑に上動するから、ロータ8の回転が円滑に行われる。
【符号の説明】
【0085】
1…薬剤分包装置、4…薬剤収容容器、7…縦軸線、8…ロータ、10…仕切体、13…底壁板、13a…上面、14…薬剤収容部、22…薬剤排出開口、29…突起、32A…円板部、32…下部回転部、34…外軸、35…内軸、41…大径従動ギヤ、41b…下面、43…外突出部、44…内突出部、45…小径従動ギヤ(ナットギヤ)、45c…凹部、46…雄ネジ、48…コイルバネ、61…固定用ナット部材、70…シム部材、71,72…固定用ナット部材、75…中心穴、76…加圧片、77…雌ネジ、78…雄ネジ、79…溝、δ1…上下方向距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤収容部の下部で且つ薬剤収容部の底壁板よりも上側に、該底壁板の上面と対向する底面を有して縦軸線回りに回転するロータが配置され、該ロータには上下方向に亙る薬剤収容路が形成され、ロータの回転によって薬剤収容路に収容された薬剤を所定個数ずつ落下させるよう構成され、
前記ロータの縦軸線回りの回転中心となる回転中心軸体の下部が容器本体の底壁板を貫通して該底壁板の下方に突出する突出部を有した薬剤収容容器であって、
前記ロータを前記底壁板から浮かす方向に付勢する弾性体が設けられ、該弾性体による底壁板からのロータの浮量を所定値に保持すべく前記突出部上の所定位置に外嵌固定される外嵌部材が設けられていることを特徴とする薬剤収容容器。
【請求項2】
突出部の外周面に雄ネジが形成され、外嵌部材は回転中心軸体に回転力を付与するべく前記雄ネジに螺合するナットギヤとされ、該ナットギヤを雄ネジに固定するための固定手段として、前記雄ネジに螺合してナットギヤに縦軸線方向で当接するナット部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の薬剤収容容器。
【請求項3】
ナット部材の締付けにより雄ネジとナットギヤの雌ネジのネジ山どうしが縦軸線方向で圧着されて、ナットギヤが突出部に固定されていることを特徴とする請求項2記載の薬剤収容容器。
【請求項4】
ナットギヤにおいてナット部材が当接する側の面に凹部が形成されて該凹部にナット部材の一部または全部が収納されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の薬剤収容容器。
【請求項5】
回転中心軸は内軸と該内軸を外嵌する外軸を有した二軸構造であり、内軸と外軸とは縦軸線回りに相対回転可能に構成され、ロータは上部回転部と下部回転部とを有して上部回転部と内軸とが連結され、下部回転部と外軸とが連結され、雄ネジは内軸の突出部に形成され、ナットギヤは内軸の突出部に螺合され、該ナットギヤとは別のギヤが外軸の突出部に縦軸線方向に摺動自在で且つ一体的に回転するよう外嵌されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4の何れかに記載の薬剤収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−168110(P2010−168110A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86672(P2009−86672)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】