説明

薬剤容器及びその製造方法

【課題】簡易に短時間で薬剤の凍結乾燥を行うことのできる薬剤容器を提供することを目的とする。
【解決手段】シート状の部材で袋状に形成された収納バッグ1と、一端が開口している容器状であって、その端部が収納バッグ1に挿入される収容部2と、収納バッグ1内に収容される第1の薬剤4と、収容部2に収容される第2の薬剤11と、収納バッグ1と収容部2の端部との間に設けられ、収納バッグ1の外枠を形成しているシール部5のシール強度より弱いシール強度にて収納バッグ1と収容部2とを区画する弱シール部6と、を備えるものとする。そして収容部2を、収納バッグ1よりも硬質の部材によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を内部に収納する薬剤容器と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者に投与する薬剤の中には、予め配合して保存しておくと、経時変化を生じやすいものがある。例えば、アミノ酸液とブドウ糖液を予め配合しておくと、保存の間にメイラード反応が生じ、混合液が褐色に着色してしまう。
【0003】
このため、配合前の各薬剤を個別に収納できる容器を用いて薬剤を保存し、患者への投与の直前に薬剤を混合することが行われている。
例えば、下記特許文献1では、シート材によって構成されたバッグの内部空間を2つの空間に分ける仕切り部を融着や接着剤により設けている。そして、それぞれの内部空間に液体が収納される。また、この仕切り部には、融着強度または接着強度が弱い弱シール部が配設されている。
下記特許文献1では、患者への薬剤投与時に、この弱シール部を剥離することで仕切られた2つの内部空間を連通し、それぞれの液体を混合させて配合を行う。
【0004】
また、液体に限らず粉末状の薬剤もバッグ内に保存される。例えば下記特許文献2では、2枚のシートによって形成された容器の内部空間を、剥離可能なシールによって上部区画室と中間区画室とに区画している。
上部区画室には希釈液が収納され、中間区画室には、粉末薬剤が収納される。上部区画室と中間区画室とを区画するシールを剥離することにより、希釈液と粉末薬剤とが混合され、薬剤が配合される。
【0005】
下記特許文献2のように、粉末状の薬剤をバッグ内に保存する場合、薬剤を例えば凍結乾燥することにより薬剤内の水分を昇華させることが求められる。このため、従来は予め凍結乾燥させた薬剤を粉砕し、適量をバッグ内に封入することが行われていた。しかし、凍結乾燥された粉末は飛散しやすいので、薬剤の粉砕やバッグ内への封入時等において扱いに手間がかかってしまう。
【0006】
また、別の方法として、一端が封止されずに開放されている状態のバッグ内に薬剤を入れ、バッグごと凍結乾燥機にかけて薬剤を凍結乾燥させることも可能である。この場合、凍結乾燥によって昇華した薬剤内の水分は、開放されているバッグの一端から飛ばされる。
【0007】
こうした凍結乾燥は、凍結乾燥機の例えば金属等によって構成された冷却部に、直接バッグを接触させることによって行われている。これは、周囲の低温雰囲気を介した冷却よりも、冷却部に直接接触させた方が短時間で凍結乾燥を行うことができるためである。特に、真空雰囲気中において冷却を行う場合には、熱の伝導は輻射熱のみになるので、長い冷却時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−314487号公報
【特許文献2】特表平5−509025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述のようにバッグ内に薬剤を入れた状態で冷却を行う場合には、冷却部との接触面積が小さくなってしまう。これは、バッグがシート材によって構成されていることにより、その外形が変形しやすいためである。例えば、バッグ内に薬剤が入れられると、バッグが膨らむことによってバッグの表面が平面ではなくなる。また、バッグの膨らみや、薬剤の自重によってバッグ表面に皺が寄ったりもする。
このため、バッグと凍結乾燥機の冷却部との接触面積が小さくなり、凍結乾燥にかかる時間が長くなる。また、接触面積や接触箇所が一定とならないため、凍結乾燥の程度にばらつきが生じ、安定した品質維持が困難となる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み、簡易に短時間で凍結乾燥を行うことのできる薬剤容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明による薬剤容器は、シート状の部材で袋状に形成された収納バッグと、一端が開口している容器状であって、この端部が収納バッグに挿入される収容部を備える。また、収納バッグ内に収容される第1の薬剤と、収容部に収容される第2の薬剤と、収納バッグと収容部の端部との間に設けられ、収納バッグの外枠を形成しているシール部のシール強度より弱いシール強度にて収納バッグと収容部とを区画する弱シール部と、を備える。
そして、上述の収容部は、収納バッグよりも硬質の部材によって構成されている。
【0012】
本発明の薬剤容器によれば、収納バッグのシート材よりも硬質な部材によって構成された収容部内に、凍結乾燥された薬剤が収容される。
収容部がシート材よりも硬質な部材によって構成されているので、内部に薬剤を収容したとしても、薬剤の体積や重さによる変形が抑制される。したがって、凍結乾燥させたい薬剤が入った収容部と、凍結乾燥機の冷却部との接触面積を大きくすることができる。
【0013】
また、本発明の薬剤容器の製造方法は、上述の薬剤容器の製造方法であって、収容部に第1の薬剤を充填するステップと、第1の薬剤が充填された収容部を凍結乾燥機に設置し、凍結乾燥するステップを含む。また、上述の弱シール部を設けた収納バッグを成形するステップと、収納バッグに第2の薬剤を充填するステップと、収納バッグのシール部に収容部を取り付けるステップを含む。
【0014】
本発明の薬剤容器の製造方法によれば、収納バッグよりも硬質な部材によって構成された収容部内に薬剤を入れ、凍結乾燥を行う。収容部は、収納バッグよりも硬質な部材によって構成されているので、内部に薬剤を入れても変形が抑制される。このため、凍結乾燥機の冷却部との接触面積を大きくして凍結乾燥を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薬剤容器及び、本発明の薬剤容器の製造方法によれば、収納バッグよりも硬質な部材によって構成された収容部内に薬剤を入れるので、凍結乾燥機の冷却部との大きな接触面積を確保することが可能となる。このため、短時間で簡易に薬剤を凍結乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薬剤容器を示す概略構成図である。概略構成図である。
【図2】Aは、本発明の第1の実施の形態に係る薬剤容器の収容部に入れられた粉末状の薬剤を凍結乾燥する状態を示す説明図であり、Bは、バッグに収容部を接続した状態を示す説明図である。
【図3】Aは、本発明の第1の実施の形態に係る薬剤容器の収納バッグに、液体状の薬剤を入れた状態を示す説明図であり、Bは、収納バッグに排出ポートを接続した状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る薬剤容器の収納バッグにおいて、直線状の弱シール部を設けた場合を示す説明である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る薬剤容器を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(粉末状の薬剤を収容する収容部と、薬剤を排出する排出ポートとを別々に設ける例)
1−1.薬剤容器の構成
1−2.薬剤容器の製造方法
2.第2の実施の形態(収容部と排出ポートとを一体化する例)
【0018】
1.第1の実施の形態(粉末状の薬剤を収容する収容部と、薬剤を排出する排出ポートと
を別々に設ける例)
1−1.薬剤容器の構成
図1は、第1の実施の形態による薬剤容器100の構成を示す概略構成図である。
本実施の形態による薬剤容器100は、内部に薬剤を収納する収納バッグ1と、収納バッグ1に接続された収容部2と、収納バッグ1内の薬剤を排出するための排出ポート3と、を含んで構成されている。
【0019】
収納バッグ1は、例えば略長方形の2枚のシート材を重ね合わせて構成されている。収納バッグ1は、その周縁のシール部5において2枚のシート材が融着または接着等されることにより、袋状に形成されている。
シール部5は、シート材の短辺側に位置する先端部5a及び基端部5bと、シート材の長辺側に配置された側端部5d,5dとによって構成され、収納バッグ1の外枠を形成している。
融着方法としては、例えば、熱融着、高周波融着や超音波融着等が挙げられる。また、接着方法としては、例えば、接着剤による接着や、溶媒による接着が挙げられる。
【0020】
収納バッグ1を構成するシート材としては、異物の混入や、複数の薬剤を混合して用いる際の反応等を確認するために、透明又は半透明なものを用いることが好ましい。シート材11の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリプロピレン系コポリマーや軟質ポリ塩化ビニル等が挙げられる。この他に、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂に少なくとも2種以上の熱可塑性エラストマーを配合したものを用いても良い。
【0021】
なお、本例では、2枚のシート材11の周縁部を融着、または接着することで収納バッグ1を構成した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、インフレーション法によってシート材を筒状に形成し、この筒状のシート材における両端の開口を融着、または接着することで袋状の収納バッグを形成してもよい。また、インフレーション法の他に、ブロー成形法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、共押出インフレーション法、共押出Tダイ法、ホットプレス法等のその他各種の方法によってシート材11を製造してもよい。
また、収納バッグ1内に収納される薬剤との相互作用が無いものであればその他の材料を用いることも可能であり、例えばエンジニアリングプラスチックによって収納バッグ1の最内層を形成してもよい。
【0022】
収納バッグ1には、上述の2枚のシート材を剥離可能に接着または融着等した弱シール部6が形成されている。この弱シール部6によって、収納バッグ1内の空間は、例えば液体状の薬剤11を収納する薬剤室7と、収容部2に連通する連通室9とに仕切られている。
この弱シール部6は、接着強度または融着強度がシール部5よりも小さく、例えば薬剤室7を押圧する等によって、弱シール部6における2枚のシート材が剥離する。これにより、薬剤室7と連通室9とが連通する。
【0023】
収納バッグ1の基端部5bには、収納バッグ1をハンガー等に吊り下げるための吊り下げ孔10が設けられている。また、この基端部5bにおいて、連通室9と収容部2とが接続されている。
【0024】
収容部2は、一端に開口を有する容器状をしており、その開口側の端部が収納バッグ1内に挿入される。そして、収納バッグ1に挿入された収容部2の端部と収納バッグ1とをシールすることによって収納バッグ1と収容部2が接続される。
このシールとしては、例えば、熱融着、高周波融着や超音波融着等の融着、接着剤による接着、溶媒による接着が挙げられる。
【0025】
例えば本実施形態では、軸方向の一端側のみに貫通した貫通孔2aを有する筒体12と、収納バッグ1に接続される接続部13とによって収容部2が構成され、貫通孔2aによって収容部2の内部空間と、連通室9とが連通している。収容部2は、収納バッグ1の基端部5b(シール部5)において、収納バッグ1を構成する2枚のシート材に挟持されるように、収納バッグ1に接続されている。
【0026】
収容部2内には、凍結乾燥された粉末状の薬剤4が収納されている。この粉末状の薬剤4と、収納バッグ1内の薬剤11は、弱シール部6によって隔離されている。
本実施の形態において、収容部2は、収納バッグ1を構成するシート材よりも硬質な部材によって形成されている。ここで、硬質とは材質であり、シート材を構成している材料よりも硬度の高い材料を用いることを意味する。
例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)のような各種樹脂が挙げられる。こうした硬質プラスチック材料の中から、シート材に用いた材料よりも硬質なものを適宜選択し、用いることができる。
ただし、収容部2の筒体の厚さを厚くする等により、粉末状の薬剤4の自重によって収容部2が変形しない程度の強度を収容部2に付与可能であれば、シート材と同等の硬度の材料によって収容部2を構成することも可能である。
すなわち、本発明において収容部2は、応力を加えられた時の変形量が、収納バッグ1を構成するシート材よりも小さくなるように構成されている。
【0027】
また、収納バッグ1の先端部5aにおいて、収納バッグ1内に収納された薬剤を排出する排出ポート3が収納バッグ1に接続されている。排出ポート3は、収納バッグ1の先端部5aにおいて、収納バッグ1を構成する2枚のシート材に挟持されるようにして、収納バッグ1に接続されている。
【0028】
排出ポート3は、筒体14と、収納バッグ1に接続される接続部15を備えている。例えば、筒体14は円筒形に形成され、軸方向の両端が開口している。この筒体14の軸方向の一端には接続部15が連続して形成されている。
接続部15には、貫通孔15aが設けられており、この貫通孔15aによって、排出ポート3の内部空間と、収納バッグ1の薬剤室7とが連通される。
また、筒体14の他端には、例えばゴム材等によるシール部材16が配設され、筒体14の開口を封止している。
シール部材16は、注射器等の医療機器の針管が穿刺可能とされる。このシール部材16に針管を通すことにより、収納バッグ1の内部空間と、医療機器の内部空間とが連通する。これによって、収納バッグ1内の薬剤が排出される。
【0029】
さらに、筒体14のシール部材16側の端部には、例えばリング状のキャップ部材17が装着されている。このキャップ部材17は、筒体14のシール部材16側の端部に嵌合または螺合する等によって筒体14に固定されている。これにより、シール部材16の落下を防ぎ、収納バッグ1の薬剤室7から薬剤11が漏れ出すのを防止している。
【0030】
このように、本実施の形態による薬剤容器100は、収納バッグ1とは別個に収容部2を設け、この収容部2内に凍結乾燥した粉末状の薬剤4が収容されている。すなわち、本実施の形態では、その製造時において、薬剤4を収納バッグ1とは別個の収容部2内に入れたまま凍結乾燥が行われている。
【0031】
特に、収容部2は収納バッグ1を構成するシート材よりも硬質な部材によって構成されている。このため、凍結乾燥前の薬剤4を内部に入れても変形が生じないので、収容部2は凍結乾燥機の冷却部に対する大きな接触面積を確保することができる。
したがって、本実施の形態による薬剤容器100では、収容部2に収容された薬剤4に安定した凍結乾燥が行われるため、品質の向上を図ることができる。また、接触面積が大きいことにより凍結乾燥時間も短縮できる。
【0032】
また、収容部2に液体状の薬剤を入れたまま凍結乾燥できるので、従来のように、外で粉末状に凍結乾燥させた薬剤をバッグ内に封入する作業を必要としない。すなわち、粉末状体となった薬剤を直接扱う必要が無いので、製造を容易にできる。
【0033】
凍結乾燥された複数種の薬剤を薬剤容器100内に保存する場合には、収納バッグ100に複数個の収容部2を接続し、それぞれの収容部2に薬剤を配設してもよい。
また、収容部2の内部に仕切りを設け、仕切られたそれぞれの内部空間に、異なる種類の薬剤を配設してもよい。
【0034】
本実施の形態による薬剤容器100内に収納された薬剤を患者に投与する際には、まず収納バッグ1の薬剤室7を押圧する等により、弱シール部6を剥離する。弱シール部6を剥離すると、薬剤室7と連通室9とが連通し、収容部2と薬剤室7とが連通する。
そして、本実施の形態による薬剤容器100を逆さにする等により、収容部2内の粉末状の薬剤4を収納バッグ1内に移動させる。これにより、液体状の薬剤11と粉末状の薬剤4とを混合し、配合することができる。
【0035】
1−2.薬剤容器の製造方法
この収容部2内に収容されている薬剤4を凍結乾燥し、本実施の形態による薬剤容器100を製造する方法について、図2〜4を参照し、以下に説明する。
まず、図2Aに示すように、例えば始め液体状の薬剤4を収容部2内に入れ、液体状の薬剤4の入った収容部2を凍結乾燥機の冷却部18に設置する。冷却部18は、凍結乾燥機の真空チャンバー内に配設されており、冷媒等によって冷却される。また、真空チャンバー内には、コールドトラップが配設され、このコールドトラップは冷却部18よりも低い温度に冷却される。
【0036】
真空チャンバー内を真空引きし、冷却部18及びコールドトラップの冷却を開始すると、コールドトラップの温度が冷却部18の温度よりも低いため、コールドトラップの周囲の平衡蒸気圧は冷却部18の周囲の平衡蒸気圧よりも低くなる。
また、冷却部18が冷却されることにより、収容部2内の薬剤4に含まれる水分は昇華する。昇華した水分は、上述の平衡蒸気圧の差によってコールドトラップに引き付けられ、氷として凝結する。これにより、薬剤4は凍結乾燥され、粉末状となる。
【0037】
なお、冷却部18は、薬剤4内に含まれる水分が昇華する際の昇華熱によって温度低下するため、凍結乾燥機は、冷却部18が一定温度となるように加熱手段も備えている。また、薬剤4からの水分が凝結する際に熱が放出されるので、コールドトラップは、その温度が一定となるように調節される。
【0038】
冷却部18は、例えば熱伝導率の高い金属等によって構成されており、孔の一端のみが貫通した筒体の形状をしている。このような形状とすることにより、収容部2の底面2aのみでなく、側面2bも冷却部18に接触させることが可能であり、より短時間で均一な凍結乾燥を行うことができる。
なお、収容部2の内部に仕切りを設け、複数種の薬剤を入れている場合には、複数種の薬剤が同時に凍結乾燥されることになる。
【0039】
また、本実施の形態において、収容部2は、収容バッグ1を構成するシート材よりも硬質な部材によって構成されている。したがって、凍結乾燥を行いたい薬剤4が入った収容部2を冷却部18内に設置する際には、収容部2が変形したり、皺が寄ったりするのが抑制される。
収容部2の変形が起きないので、収容部2と冷却部18との接触面積を大きくすることができ、薬剤4の凍結乾燥にかかる時間を短縮できる。また、接触面積が大きいことから、薬剤4をムラなく均一に凍結乾燥できる。
【0040】
次に、図2Bに示すように、収納バッグ1を準備し、凍結乾燥された粉末状の薬剤4が入った収容部2を、収納バッグ1に接続する。
例えば、2枚のシート材の周縁部を融着等によって貼り合わせてシール部5を形成し、収納バッグ1を構成する。このとき、例えばシール部5には、融着されずに残った注入孔5eと挿入孔5fとが設けられ、この部位において収納バッグ1の内部空間と外部とが連通されている。
【0041】
そして、この挿入孔5fに収容部2を挿入し、収容部2と収納バッグ1とを接続する。収納バッグ1を構成するシート材と収容部2とを、融着によって固定してもよいし、接着剤等により接着してもよい。
その後、挿入孔5fを塞ぐように、例えば逆U字型の弱シール部6を設け、収納バッグ1に薬剤室7と連通室9とを形成する。この弱シール部6も、融着や接着等により形成することができる。
【0042】
ここでは、シール部5に挿入孔5fを設けておき、ここから収容部2を挿入する例としたが、2枚のシート材をシール部5において融着し、収納バッグ1を形成する際において、収容部2も同時に挟み込んで接続してもよい。また、弱シール部6も、収容部2の接続前に予め収納バッグ1に形成してあってもよい。吊り下げ孔10を設けるタイミングも適宜設定してよい。
また、異なる種類の薬剤が入った複数個の収容部2を収納バッグ1に接続する場合には、一つの収容部2に対して一つの弱シール部6がそれぞれ設けられる。
【0043】
収容部2を収納バッグ1に接続すると、図3Aに示すように、収納バッグ1のシール部5に設けられていた注入孔5eから、収納バッグ1の薬剤室7内に例えば液体状の薬剤11を注入する。薬剤室7と連通室9は、弱シール部6によって仕切られているので、薬剤室7に注入した液体状の薬剤11は収容部2内に浸入しない。これにより、粉末状の薬剤4と、液体状の薬剤11とを隔離して保存できる。
【0044】
そして、図3Bに示すように、収納バッグ1の注入孔5eに排出ポート3の接続部15を挿入し、収納バッグ1のシート材と接続部15とを融着や接着等により固定する。これにより、収納バッグ1と排出ポートとが接続されるとともに、収納バッグ1の薬剤室7が密閉され、薬剤容器100が完成する。
【0045】
また、収納バッグ1内に液体状の薬剤11を注入する前に排出ポート3を接続してもよい。この場合には、排出ポート3を収納バッグ1に接続した後、排出ポート3から直接薬剤11を注入する。また、排出ポート3の筒体14のみを先に収納バッグ1に接続し、筒体14の開口から薬剤11を注入した後、シール部材16、キャップ部材17によって筒体14を封止してもよい。
【0046】
図4に示すように、シール部5の側端部5cから5dまでに渡って弱シール部6を設ける場合には、まず収納バッグ1の薬剤室7に液体状の薬剤11を入れ、排出ポート3を接続して薬剤室7を封止した後に、収容部2(図示せず)を収納バッグ1に接続してもよい。
【0047】
この場合、例えば収納バッグ1の2枚のシート材において、先端部5a、側端部5c,5dが融着等によりシールされ、基端部5bはシールされていない。もしくは、収容部2が配設される領域T1を残して、それ以外の収納バッグ1の周縁部が融着等によりシールされる。
そして、排出ポート3側から、薬剤室7に液体状の薬剤11を注入する。
【0048】
薬剤室7に薬剤11を入れると、薬剤11の体積や重さによって薬剤室7は膨らみ、シート材に皺が寄る等の変形を起こす。しかし、図4のように、側端部5cから側端部5dまでに渡って弱シール部6を設けることで、薬剤11による薬剤室7の変形が連通室9に伝播するのを遮断できる。
したがって、収納バッグ11の基端部5bは、薬剤室7に薬剤11が注入されてもほとんど変形しない。
【0049】
収納バッグ1の基端部5bに収容部2を接続するには、例えば基端部5bにおける2枚のシート材の間の領域T1に収容部2を配置し、高温の金型によって挟み込むことでシート材と収容部2を融着させると同時に、基端部5bのシールを行うことができる。この場合、基端部5bに変形が及んでいると、金型によってうまく挟み込むことができない。
上述のように、側端部5cから側端部5dまでに渡って弱シール部6を設けることで、基端部5bの変形が抑制されるので、金型による融着が容易になり、収容部2の接続、基端部5bのシールを簡易に行うことができる。
【0050】
なお、収納バッグ1に弱シール部6を形成するステップ、薬剤11を注入するステップ、排出ポート3を収納バッグ1に接続するステップ、収容部2を収納バッグ1に接続するステップ等の順序は限定するものでなく、適宜変更してよい。
【0051】
2.第2の実施の形態(収容部と排出ポートとを一体化する例)
第1の実施の形態では、粉末状の薬剤を収容するための容器を別個に設けたが、凍結乾燥した薬剤を排出ポート内に収容するようにしてもよい。これにより、収容部を別個に設ける必要がないので部品点数が削減され、コストを抑えることができる。また、薬剤容器全体の容積も減らせるので、小型化を図れる。
【0052】
図5は、第2の実施の形態による薬剤容器200を示す概略構成図である。
本実施の形態による薬剤容器200は、内部に薬剤を収納する収納バッグ21と、収納バッグ21に接続され、凍結乾燥した例えば粉末状の薬剤24が収容された排出ポート23と、を含んで構成されている。
【0053】
収納バッグ21は、2枚のシート材が重ね合わされることによって構成され、そのシール部25が融着または接着等されて外枠となり、袋状に形成されている。融着や接着は、例えば第1の実施の形態(図1)において例示した各種方法を採用してよい。
また、シート材の素材についても、第1の実施の形態と同様であってよい。
【0054】
収納バッグ21の基端部25bには、収納バッグ21をハンガー等に吊り下げるための吊り下げ孔30が設けられている。また、収納バッグ21の先端部25aには、排出ポート23が接続されている。
また、収納バッグ21には、収納バッグ21を構成する2枚のシート材を剥離可能に接着または融着等した弱シール部26が形成されている。この弱シール部26によって、収納バッグ21の内部空間は、例えば液体の薬剤31を収納する薬剤室27と、排出ポート23に連通する連通室29とに仕切られている。
【0055】
この弱シール部26は、接着強度または融着強度(シール強度)がシール部25よりも小さく、例えば薬剤室27を押圧する等によって、弱シール部26における2枚のシート材が剥離する。これにより、薬剤室27と連通室29とが連通する。
弱シール部26は、その両端が収納バッグ21の基端部25aに接するU字型に形成されている。弱シール部26は、その両端が、収納バッグ21の側端部25c,25dに接するようにU字型に形成されてもよいし、側端部25cから即端部25dに渡って直線状に形成されてもよい。
【0056】
また、収納バッグ21の先端部25aには、排出ポート23が接続されている。
排出ポート23は、基本的には、第1の実施の形態において示したものと同様の構成であってよい。すなわち、排出ポート23は、例えば筒体34と、収納バッグ1に接続される接続部35を備えている。筒体34の軸方向の一端には、接続部35が連続して形成されている。また、筒体34の他端には、例えばゴム材等によるシール部材36が配設され、筒体34の開口を封止している。
【0057】
また、接続部35には、貫通孔35aが設けられており、この貫通孔35aによって、排出ポート23の内部空間と、収納バッグ21の連通室29とが連通される。
さらに、筒体34のシール部材36側の端部には、例えばリング状のキャップ部材37が装着されている。このキャップ部材37は、筒体34のシール部材36側の端部に嵌合または螺合する等によって筒体34に固定されている。これにより、シール部材36の落下を防いでいる。
【0058】
本実施の形態では、排出ポート23は、収納バッグ21を構成するシート材よりも硬質な部材によって形成されている。例えば、第1の実施の形態における収容部2(図1)を構成する材料と同じものを用いることが可能である。
また、第1の実施の形態と同様に、排出ポート23の筒体34の厚さを厚くする等により、凍結乾燥前の薬剤24の重さによって排出ポート23が変形しない程度の強度を排出ポート23に付与可能であれば、シート材と同等の硬度の材料によって排出ポート23を構成することも可能である。
すなわち、本実施の形態においては、応力を加えられた時の変形量が収納バッグ1を構成するシート材よりも小さくなるように排出ポート23が構成されている。
【0059】
このように本実施の形態では、凍結乾燥させた粉末状の薬剤24が排出ポート23の内部に収容されている。収納バッグ内に収納された薬剤を排出するための排出ポートと、凍結乾燥させた粉末状の薬剤を収容する収容部とを一体化することにより、部品点数が削減されるので、より低コストでの製造が可能である。
凍結乾燥を行いたい薬剤が2種類以上ある場合には、排出ポート23内に仕切りを設け、排出ポート23内の仕切られた各部屋に、それぞれ薬剤を配設してもよい。
【0060】
また、この薬剤容器200は、第1の実施の形態において示した製造方法において、収容部2の代わりに、排出ポート23を配設することで、同様に製造可能である。
まず排出ポート23内に凍結乾燥を施したい薬剤を入れ、凍結乾燥機にかける。このとき、排出ポート23は、収納バッグ21のシート材よりも硬質な部材によって構成されているので、変形が抑制される。これにより、凍結乾燥機との大きな接触面積を確保でき、短時間で安定した凍結乾燥を行うことができる。
また、排出ポート23の内部を複数の部屋に区切り、複数種の薬剤を入れる場合には、複数種の薬剤を同時に凍結乾燥可能である。
【0061】
そして、凍結乾燥の終えた薬剤24の入った排出ポート23を、収納バッグ21に接続することで、薬剤容器200を製造することができる。
なお、第1の実施の形態と同様に、収納バッグ21に弱シール部26を形成するステップ、薬剤室27内に薬剤31を注入するステップ、収納バッグ21に排出ポート23を接続するステップ等の順序は、適宜選択して変更してよい。
【0062】
以上、本発明による薬剤容器及びその製造方法の実施の形態について説明した。本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、考えられる種々の形態を含むものである。
【0063】
1,21・・・収納バッグ、2・・・収容部、3,23・・・排出ポート、4,11,24,31・・・薬剤、5,25・・・シール部、5a,25a・・・先端部、5b,25b・・・基端部、5c,5d,25c,25d・・・側端部、5e・・・注入孔、5f・・・挿入孔、6,26・・・弱シール部、7,27・・・薬剤室、9,29・・・連通室、10,30・・・吊り下げ孔、 12,14,34・・・筒体、13,15,35・・・接続部、15a,35a・・・貫通孔、16,36・・・シール部材、17,37・・・キャップ部材、18・・・冷却部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の部材で袋状に形成された収納バッグと、
一端が開口している容器状であって、該端部が前記収納バッグに挿入される収容部と、
前記収納バッグ内に収容される第1の薬剤と、
前記収容部に収容される第2の薬剤と、
前記収納バッグと前記収容部の前記端部との間に設けられ、前記収納バッグの外枠を形成しているシール部のシール強度より弱いシール強度にて前記収納バッグと前記収容部とを区画する弱シール部と、を備え、
前記収容部は、前記収納バッグよりも硬質の部材によって構成されていることを特徴とする
薬剤容器。
【請求項2】
前記弱シール部は、前記収納バッグを加圧することでシールが解除され、前記収納バッグと前記収容部とを連通させることを特徴とする請求項1に記載の薬剤容器。
【請求項3】
前記収容部は、前記収納バッグに収納された薬剤を排出する排出ポートであることを特徴とする請求項1に記載の薬剤容器。
【請求項4】
前記弱シール部は、前記収納バッグを加圧することでシールが解除され、前記収納バッグと、前記排出ポートとを連通させることを特徴とする請求項1に記載の薬剤容器。
【請求項5】
前記収納バッグは、前記弱シール部によって、前記薬剤が収納される収納室と、前記収容部が取り付けられる連通室とに区画されることを特徴とする請求項2または4に記載の薬剤容器。
【請求項6】
前記収容部は、少なくとも前記第1の薬剤の重さによって変形しない程度の硬質部材によって構成されることを特徴とする請求項5に記載の薬剤容器。
【請求項7】
シート状の部材で袋状に形成された収納バッグと、
一端が開口している容器状であって、該端部が前記収納バッグに挿入される収容部と、
前記収納バッグ内に収容される第1の薬剤と、
前記収容部に収容される第2の薬剤と、
前記収納バッグと前記収容部の前記端部との間に設けられ、前記収納バッグの外枠を形成しているシール部のシール強度より弱いシール強度にて前記収納バッグと前記収容部とを区画する弱シール部と、を備え、
前記収容部は、前記収納バッグよりも硬質の部材によって構成されている薬剤容器の製造方法であって、
前記収容部に第1の薬剤を充填するステップと、
前記第1の薬剤が充填された前記収容部を凍結乾燥機に設置し、凍結乾燥するステップと、
前記弱シール部を設けた前記収納バッグを成形するステップと、
前記収納バッグに第2の薬剤を充填するステップと、
前記収納バッグの前記シール部に前記収容部を取り付けるステップと、
を含む
薬剤容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94474(P2013−94474A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240985(P2011−240985)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】