説明

薬剤容器

【課題】容器内への導水性を確保しつつ、薬剤の落下に起因した不具合を未然に防止することができる薬剤容器を提供する。
【解決手段】水溶性薬剤22を収容した容器本体21の底部91に、水を取り込む機能及び水溶性薬剤22が溶け込んだ水を排出する機能を果たす開口部を設ける。底部91を下方に突出した断面円弧状に形成し、底部91に複数の小孔121,・・・を設けて前記開口部を構成する。底部91における底部中心131の外周部に、上方へ向けて後退した各凹部141,142,151,152を形成し、各凹部141,142,151,152に設けられた小孔121,・・・に水を案内する導水構造161,・・・を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性薬剤を収容する薬剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレにおいて、貯水タンクに配置して使用する芳香洗浄器が知られている(例えば、特許文献1から特許文献3参照。)。
【0003】
この芳香洗浄器は、薬剤容器と、該薬剤容器内に収容された薬剤とによって構成されている。前記薬剤容器は、上容器と下容器とによって構成されており、前記上容器を着脱することで、固形状の水溶性薬剤を交換可能に収容できるように構成されている。
【0004】
前記下容器には、開口部が開設されており、この開口部は、トイレ洗浄時に手洗い用カランから供給された水を前記薬剤容器内に取り込む機能と、前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能とを果たすように構成されている。また、この下容器は、前記開口部からの水の取り入れ効率を高める為に様々な工夫がなされており、当該開口部は、可能な限り大径に形成されている。
【0005】
一方、前記下容器の底面には、下方に延出した延出部が中央部に複数設けられており、各延出部は、底面中央部を包囲するように構成されている。この底面中央部には、単一の大径穴が設けられており、当該大径穴は、専ら前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を、前記延出部が挿入された前記貯水タンクの通水穴を介して、当該貯水タンク内に供給する機能を果たすように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−134980公報
【特許文献2】特開2004−324410公報
【特許文献3】特開2010−059785公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の薬剤容器にあっては、薬剤容器内への水の取り込みを容易とする為に、前記開口部は可能な限り大径に設定されている。
【0008】
このため、前記水溶性薬剤が溶解して縮小した際に、比較的大きなかたまりで前記開口部を介して落下することも考えられる。
【0009】
特に、溶解して縮小した水溶性薬剤は、前記下容器において、最も低位置となる底面中央に移動し易く、この底面中央に開設された大径穴から貯水タンクの通水穴を介して、当該貯水タンク内に落ちる恐れがあった。塊状でタンク内に落下することにより、タンクの排水口を塞いでしまったり、排水口のゴムフロート弁と排水口との間に挟まり、水が流れっぱなしになってしまうといった問題が生ずる虞もある。
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、容器内への導水性を確保しつつ、薬剤の落下に起因した不具合を未然に防止することができる薬剤容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の薬剤容器にあっては、水溶性薬剤を収容した容器本体の底部に、該容器本体内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられた薬剤容器において、前記底部を下方に突出した断面円弧状に形成し、当該底部に複数の小孔を設けて前記開口部を構成する一方、前記底部における底部中心の外周部に上方へ向けて後退した凹部を設定して該凹部に設けられた前記小孔に水を案内する導水構造を構成した。
【0012】
すなわち、容器本体内への水の取り込み及び排出を行う開口部は、底部に設けられた複数の小孔で構成されている。このため、溶解した水溶性薬剤の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下が防止される。
【0013】
このとき、前記開口部を複数の小孔で構成することで、当該開口部から容器本体内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0014】
ここで、前記底部は、下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。
【0015】
また、前記底部中心の外周部、すなわち上方へ向けて傾斜した当該外周部には、上方へ向けて後退した凹部が形成されており、前記底部の外周部に貯留した水は、この後退した凹部に集められる。
【0016】
これにより、この凹部に設けられた前記小孔に水を案内する導水構造が構成されており、前記底部の外周部に貯留した水は、前記凹部に集められ、当該凹部に設けられた前記小孔から内部へ導かれる。
【0017】
また、本発明の請求項2の薬剤容器にあっては、水溶性薬剤を収容した容器本体の底部に、該容器本体内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられた薬剤容器において、前記底部を下方に突出した断面円弧状に形成し、当該底部に複数の小孔を設けて前記開口部を構成する一方、前記底部における底部中心より外側に下方へ向けて延出する邪魔板部を設けて該邪魔板部より外側に配置された前記小孔への水の浸入を促進する促進構造を構成した。
【0018】
すなわち、容器本体内への水の取り込み及び排出を行う開口部は、底部に設けられた複数の小孔で構成されている。このため、溶解した水溶性薬剤の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下が防止される。
【0019】
このとき、前記開口部を複数の小孔で構成することで、当該開口部から容器本体内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0020】
ここで、前記底部は、下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。
【0021】
また、前記底部中心より外側には、下方へ向けて延出する邪魔板部が設けられており、該邪魔板部より外側に配置された前記小孔への水の浸入を促進する促進構造が構成されている。
【0022】
このため、前記底部の外周部に貯留した水の底部中心側への流れは、前記邪魔板部によって阻止され、前記邪魔板より外側であって上方へ向けて傾斜した部位に開設された前記小孔からの水の浸入が促進される。
【0023】
さらに、請求項3の薬剤容器にあっては、水溶性薬剤を収容した容器本体の底部に、該容器本体内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられた薬剤容器において、前記底部を下方に突出した断面円弧状に形成し、当該底部に複数の小孔を設けて前記開口部を構成する一方、前記底部における底部中心の外周部に上方へ向けて後退した凹部を設定して該凹部に設けられた前記小孔に水を案内する導水構造を構成するとともに、前記凹部の中心より前記底部中心側に下方へ向けて延出する邪魔板部を設けて該邪魔板部より外側に配置された前記凹部内の前記小孔への水の浸入を促進する促進構造を構成した。
【0024】
すなわち、容器本体内への水の取り込み及び排出を行う開口部は、底部に設けられた複数の小孔で構成されている。このため、溶解した水溶性薬剤の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下が防止される。
【0025】
このとき、前記開口部を複数の小孔で構成することで、当該開口部から容器本体内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0026】
ここで、前記底部は、下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。
【0027】
また、前記底部中心の外周部、すなわち上方へ向けて傾斜した当該外周部には、上方へ向けて後退した凹部が形成されており、前記底部の外周部に貯留した水は、この後退した凹部に集められる。
【0028】
これにより、この凹部に設けられた前記小孔に水を案内する導水構造が構成されており、前記底部の外周部に貯留した水は、前記凹部に集められ、当該凹部に設けられた前記小孔から内部へ導かれる。
【0029】
そして、前記底部中心より外側であって前記凹部の中心より底部中心側の部位には、下方へ向けて延出する邪魔板部が設けられており、該邪魔板部より外側に配置された前記小孔への水の浸入を促進する促進構造が構成されている。
【0030】
このため、前記底部の外周部に貯留した水の底部中心側への流れは、前記邪魔板部によって阻止され、前記邪魔板より外側であって上方へ向けて傾斜した部位に開設された前記凹部内の前記小孔からの水の浸入が促進される。
【0031】
また、請求項4の薬剤容器においては、前記底部に下方へ向けて延出した複数の延出部を当該底部の底部中心を包囲するように配設し、前記各延出部を貯水タンクの通水穴に挿入して位置決め可能に構成するとともに、前記各延出部で包囲された前記底部の包囲領域に前記小孔を複数配置した。
【0032】
すなわち、前記底部には、下方へ向けて延出した複数の延出部が当該底部中心を包囲するように配設されており、各延出部を貯水タンクの通水穴に挿入することで、当該容器本体を位置決めでき、不用意な移動や転倒が防止される。
【0033】
そして、前記各延出部で包囲された前記底部の包囲領域には、前記小孔が複数配置されている。このため、底部において、最も低位置に複数の小孔が配置されることで、水溶性薬剤が溶け込んだ水は、前記延出部が挿入された前記通水穴を介して、前記貯水タンクに直接供給される。
【0034】
このとき、前記包囲領域内の開口部は、複数の前記小孔で構成されている。このため、前記包囲領域内に単一の大径穴を設けた場合と比較して、溶解して縮小した水溶性薬剤の比較的大きな状態での前記貯水タンクへの落下が防止される。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明の請求項1の薬剤容器にあっては、容器本体内への水の取り込み及び排出を行う開口部を底部に設けられた複数の小孔で構成したので、溶解した水溶性薬剤の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下を防止することができる。
【0036】
これにより、前記水溶性薬剤の落下に起因した不具合を未然に防止することができる。
【0037】
このとき、前記開口部を複数の小孔で構成することで、当該開口部から容器本体内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0038】
しかし、前記底部は、下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。また、前記底部中心の外周部、すなわち上方へ向けて傾斜した当該外周部には、上方へ向けて後退した凹部が形成されており、前記底部の外周部に貯留した水を、この後退した凹部に集めることができる。そして、この凹部に集められた水を、当該凹部に設けられた前記小孔から内部へ導くことができる。
【0039】
したがって、前記容器本体内への導水性の確保と、前記水溶性薬剤の不用意な落下に起因した不具合防止とを両立することができる。
【0040】
また、本発明の請求項2の薬剤容器にあっては、容器本体内への水の取り込み及び排出を行う開口部を底部に設けられた複数の小孔で構成したので、溶解した水溶性薬剤の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下を防止することができる。
【0041】
これにより、前記水溶性薬剤の落下に起因した不具合を未然に防止することができる。
【0042】
このとき、前記開口部を複数の小孔で構成することで、当該開口部から容器本体内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0043】
しかし、前記底部は、下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。また、前記底部中心より外側には、下方へ向けて延出する邪魔板部が設けられており、該邪魔板部より外側に配置された前記小孔への水の浸入を促進する促進構造が構成されている。
【0044】
このため、前記底部の外周部に貯留した水の底部中心側への流れを、前記邪魔板部によって阻止することができ、前記邪魔板より外側であって上方へ向けて傾斜した部位に開設された前記小孔からの水の浸入を促進することができる。
【0045】
したがって、前記容器本体内への導水性の確保と、前記水溶性薬剤の不用意な落下に起因した不具合防止とを両立することができる。
【0046】
さらに、請求項3の薬剤容器にあっては、容器本体内への水の取り込み及び排出を行う開口部を底部に設けられた複数の小孔で構成したので、溶解した水溶性薬剤の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下を防止することができる。
【0047】
これにより、前記水溶性薬剤の落下に起因した不具合を未然に防止することができる。
【0048】
このとき、前記開口部を複数の小孔で構成することで、当該開口部から容器本体内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0049】
しかし、前記底部は、下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。また、前記底部中心の外周部、すなわち上方へ向けて傾斜した当該外周部には、上方へ向けて後退した凹部が形成されており、前記底部の外周部に貯留した水を、この後退した凹部に集めることができる。そして、この凹部に集められた水を、当該凹部に設けられた前記小孔から内部へ導くことができる。
【0050】
そして、前記底部中心より外側であって前記凹部の中心より底部中心側の部位には、下方へ向けて延出する邪魔板部が設けられており、該邪魔板部より外側に配置された前記小孔への水の浸入を促進する促進構造が構成されている。
【0051】
このため、前記底部の外周部に貯留した水の底部中心側への流れを、前記邪魔板部によって阻止することができ、前記邪魔板より外側であって上方へ向けて傾斜した部位に開設された前記凹部内の前記小孔からの水の浸入を促進することができる。
【0052】
したがって、前記容器本体内への導水性の確保と、前記水溶性薬剤の不用意な落下に起因した不具合防止とを両立することができる。
【0053】
また、請求項4の薬剤容器においては、前記底部に下方へ向けて延出した複数の延出部が底部中心を包囲するように配設されており、各延出部を貯水タンクの通水穴に挿入することで、当該容器本体を位置決めでき、不用意な移動や転倒を防止することができる。
【0054】
そして、前記各延出部で包囲された前記底部の包囲領域には、前記小孔が複数配置されている。このため、底部において、最も低位置に複数の小孔が配置されることで、水溶性薬剤が溶け込んだ水を、前記延出部が挿入された前記通水穴を介して、前記貯水タンクに直接供給することができる。
【0055】
このとき、前記包囲領域内の開口部は、複数の前記小孔で構成されている。このため、前記包囲領域内に単一の大径穴を設けた場合と比較して、溶解して縮小した水溶性薬剤の比較的大きな状態での前記貯水タンクへの落下を防止することができる。
【0056】
これにより、比較的大きな水溶性薬剤が前記貯水タンクへの落下した場合に生じ得る問題の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、(a)は下容器の正面図であり、(b)は、下容器の側面図である。
【図2】同実施の形態を示す図で、(a)は下容器の平面図であり、(b)は、下容器の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0059】
図1は、本実施の形態にかかる薬剤容器1を示す図であり、該薬剤容器1は、トイレで使用されるものである。
【0060】
すなわち、トイレには、水洗用の水を貯留する貯水タンク11が設けられており、該貯水タンク11の天部には、手洗い用の手洗い部12が設けられている。該手洗い部12には、手洗い用のカランが設けられており(図示省略)、前記貯水タンク11に設けられた水洗レバーを操作時に、前記カランから水が供給されるように構成されている。このカランから供給された供給水は、前記手洗い部12で受けられ、該手洗い部12に沿って流れるとともに、当該手洗い部12に設けられた円形の通水口13を介して前記貯水タンク11内に貯留されるように構成されている。
【0061】
前記薬剤容器1は、容器本体21によって構成されており、該容器本体21には、固形状の水溶性薬剤22が収容されている。該水溶性薬剤22は、芳香機能を有した芳香成分と、便器の洗浄機能を有した洗浄成分とを含有しており、前記芳香成分を揮散するように構成されている。また、前記水溶性薬剤は、前記カランからの供給水で溶解して前記洗浄成分を前記供給水に溶出するように構成されており、当該供給水が前記貯水タンク11より便器へ流される際に当該便器を洗浄できるように構成されている。
【0062】
前記容器本体21には、下部を構成する下容器31と、上部を構成する上容器32とによって構成されており、両容器31,32は嵌合した状態で結合されている。また、両容器31,32は、この嵌合状態を解除することで開放できるように構成されており、前記水溶性薬剤22を当該容器本体21内に交換可能に収容できるように構成されている。
【0063】
前記上容器32は、下側を形成する胴部41と、上側を形成する頭部42とによって構成されている。前記胴部41は、下方へ向けて開口した横断面楕円形状を成す半球容器状に形成されており、その外周面の下縁には、薄肉の内嵌部が形成されている。これにより、当該内嵌部を、前記下容器31に内嵌することで、該下容器31と前記上容器32とを分離可能に連結できるように構成されている。
【0064】
前記頭部42は、前記胴部41の上部中央部より上方へ向けて起立した円筒状の起立部51と、該起立部51の上部開口部を閉鎖する屋根部52とによって構成されており、該屋根部52と前記起立部51とで包囲された空間は、前記胴部41内に連通するように構成されている。
【0065】
前記起立部51には、当該上容器32の側方へ向けて開口してスリット状の側方開口部61,・・・が等間隔をおいた四ヶ所に形成されており、各側方開口部61,・・・によって前記水溶性薬剤22が溶解した際に、当該水溶性薬剤22から揮散した芳香成分を放出できるように構成されている。
【0066】
前記屋根部52は、矩形状に形成されており、中央へ向かうに従って上方へ突出した球面状に形成されている。この屋根部52の周縁部は、前記起立部51より側方へ突出するように構成されており、当該屋根部52の周縁部は、前記カランからの供給水の前記側方開口部61,・・・からの浸入を防止する庇部71を構成している。
【0067】
前記下容器31は、上方へ向けて開口した横断面楕円形状を成す半球容器状に形成されており、その外周面の上縁には、図2に示すように、薄肉の外嵌部81が形成されている。該外嵌部81には、内側に突出した係止部82,・・・が四ヶ所に形成されており、当該外嵌部81を、前記上容器32の内嵌部に外嵌した状態で、前記係止部82,・・・を前記上容器32の内嵌部に係止できるように構成されている。
【0068】
この下容器31が構成する当該容器本体21の底部91は、図1に示したように、下方に突出した断面円弧状に形成されており、上方へ向かうに従って側方へ膨出した曲面状に形成されている。
【0069】
この底部91は、下部を構成する下部構成部101と上部を構成する上部構成部102とによって構成されており、前記下部構成部101は、比較的緩やかなカーブで構成された球面状に形成されている。これにより、図1及び図2に示したように、円錐台形状の前記水溶性薬剤22を当該下部構成部101上に載置できるように構成されている。
【0070】
前記上部構成部102は、図1に示したように、前記下部構成部101より急なカーブで構成された球面状に形成されており、該下部構成部101の周縁より側方へ向かうに従って徐々に起立するように構成されている。この下部構成部101の上縁部には、長さの異なる三本の凸条部111,・・・が前部及び後部に形成されており、この下容器31から前記上容器32を離脱する際に、当該下容器31を弾性変形して前記係止部82,・・・による係合状態を解除する為の滑り止め112が前記各凸条部111,・・・によって構成されている。
【0071】
前記底部91には、図1及び図2に示したように、当該容器本体21内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられている。
【0072】
すなわち、前記底部91には、図2に示したように、複数の小孔121,・・・が網目状に開設されており、各小孔121,・・・によって前記開口部が構成されている。各小孔121,・・・は、正方形状に形成されており、縦横に配列されている。
【0073】
この底部91の中心である底部中心131の外周部には、上方へ向けて後退した凹部が形成されており、該凹部に設けられた前記小孔121,・・・に水を案内する導水構造が形成されている。
【0074】
具体的に説明すると、図2に示したように、前記底部中心131より右側の部位には、上方へ向けて後退した横長楕円形状の右凹部141が形成されており、該右凹部141は、前記下部構成部101から前記上部構成部102に渡って形成されている。また、前記底部中心131より左側の部位には、上方へ向けて後退した横長楕円形状の左凹部142が形成されており、該左凹部142も、前記下部構成部101から前記上部構成部102に渡って形成されている。
【0075】
そして、前記底部中心131より前側の部位には、上方へ向けて後退した横長楕円形状の前凹部151が形成されており、該前凹部151は、前記下部構成部101から前記上部構成部102に渡って形成されている。また、前記底部中心131より後側の部位には、上方へ向けて後退した横長楕円形状の後凹部152が形成されており、該後凹部152も前記下部構成部101から前記上部構成部102に渡って形成されている。
【0076】
これにより、前記下容器31の前記下部構成部101には、上方に膨出した膨出部を前記各凹部141,142,151,152で構成することができ、底面が平坦面で構成された前記水溶性薬剤22を前記下部構成部101から浮かせた状態で支持できるように構成されている。
【0077】
前記各凹部141,142,151,152内には、前記小孔121,・・・が複数形成されており、各凹部内141,142,151,152の小孔121,・・・のうち容器本体21外周側に配列された小孔121,・・・は、前記底部構成部101より上方へ起立した前記上部構成部102に設定されている。これにより、これら外周側に配列された小孔121,・・・は、図1に示したように、当該容器本体21の側方へ向けて開口するように構成されている。
【0078】
前記前凹部151及び前記後凹部152によって、図1の(a)に示したように、各凹部151,152と前記手洗い部12との間に間隙を確実に確保することができ、前記底部91の前部側及び後部側に、各凹部151,152に設けられた前記小孔121,・・・に水を案内する導水構造161,161が形成されている(前部側のみ図示)。また、前記左凹部142及び前記右凹部141によって、図1の(b)に示したように、各凹部141,142と前記手洗い部12との間に確実に間隙を確保することができ、前記底部91の左側及び右側に、各凹部141,142に設けられた前記小孔121,・・・に水を案内する導水構造161,161が形成されている(右側のみ図示)。
【0079】
前記前凹部151の中心より前記底部中心131側の部位には、図2の(a)に示したように、前記小孔121,・・・を不具備な前不具備部171が設定されており、前記後凹部152の中心より前記底部中心131側の部位には、前記小孔121,・・・を不具備な後不具備部172が設定されている。前記左凹部142の中心より前記底部中心131側の部位には、前記小孔121,・・・を不具備な左不具備部173が設定されており、前記右凹部141の中心より前記底部中心131側の部位には、前記小孔121,・・・を不具備な右不具備部174が設定されている。
【0080】
前記前不具備部171の裏側には、図1の(a)及び図2の(b)に示したように、下方へ向けて延出する半円板状の前邪魔板部181が設けられており、該前邪魔板部181は、前記前凹部151の中心より前記底部中心131に設定されている。前記後不具備部172の裏側にも、図2の(b)に示したように、下方へ向けて延出する半円板状の後邪魔板部182が設けられており、該後邪魔板部182は、前記後凹部152の中心より前記底部中心131側に設定されている。
【0081】
また、前記左不具備部173の裏側には、図2の(b)に示したように、下方へ向けて延出する半円板状の左邪魔板部191が設けられており、該左邪魔板部191は、前記左凹部142の中心より前記底部中心131に設定されている。前記右不具備部174の裏側にも、図1の(b)及び図2の(b)に示したように、下方へ向けて延出する半円板状の右邪魔板部192が設けられており、該右邪魔板部192は、前記右凹部141の中心より前記底部中心131に設定されている。
【0082】
これにより、前記各邪魔板部181,182,191,192より容器本体21外側に配置された前記各凹部141,142,151,152内の前記小孔121,・・・への水の浸入を促進する促進構造201,・・・が四方に形成されている。
【0083】
また、前記底部91の中心部には、図2の(a)に示したように、前記小孔121,・・・を不具備な中心側不具備部211,・・・が三箇所に設定されており、各中心側不具備部211,・・・は、前記底部中心131を包囲するように等間隔をおいて設定されている。
【0084】
これらの中心側不具備部211,・・・の裏側には、図1及び図2の(b)に示したように、下方へ向けて延出した延出部221,・・・が設けられている。各延出部221,・・・は、横断面円弧状の板状に形成されており、これら三本の延出部221,・・・は、前記底部中心131を包囲するとともに、所定径の円内の収まる位置に配置されている。
【0085】
これにより、前記各延出部221,・・・は、図1の(a)に示すように、前記貯水タンク11の前記通水穴13に挿入できるように構成されており、前記各延出部221,・・・を、前記通水穴13に挿入した状態で、当該容器本体21を、前記貯水タンク11の前記手洗い部12に位置決めできるように構成されている。
【0086】
また、図2に示したように、これら延出部221,・・・で包囲された前記底部91の包囲領域231にも、四つの前記小孔121,・・・が配置されており、各小孔121,・・・の内径寸法は、前記各延出部221,・・・による前記包囲領域231、すなわち前記通水穴13より十分に小さなサイズに設定されている。
【0087】
そして、前記底部91には、図1及び図2の(b)に示したように、半円形状の脚部241,・・・が前記各凹部141,142,151,152間に設けられており、各脚部241,・・・は、当該容器本体21を前記貯水タンク11にセットした状態で、前記手洗い部12に当接して、該手洗い部12と前記底部91との間に間隙を形成できるように構成されている。
【0088】
以上の構成にかかる本実施において、前記容器本体21内への水の取り込み及び排出を行う開口部は、前記底部91に設けられた複数の小孔121,・・・で構成されている。このため、溶解した水溶性薬剤22の比較的大きな状態での開口部からの不用意な落下を防止することができる。
【0089】
これにより、前記水溶性薬剤22の落下に起因した不具合を未然に防止することができる。
【0090】
このとき、前記開口部を複数の小孔121,・・・で構成することで、当該開口部から容器本体21内への水の取り込み効率の低下が懸念される。
【0091】
ここで、本実施の形態では、前記底部91が下方に突出した断面円弧状に形成されており、外周部が上方へ向けて傾斜するように構成されている。
【0092】
また、底部中心131の外周部、すなわち上方へ向けて傾斜した当該外周部には、上方へ向けて後退した各凹部141,142,151,152が形成されており、前記底部91の外周部に貯留した水を、この後退した各凹部141,142,151,152に集めることができる。
【0093】
これにより、前記各凹部141,142,151,152に設けられた前記小孔121,・・・に水を案内する導水構造161,・・・が構成されており、前記底部91の外周部に貯留した水を、前記各凹部141,142,151,152に集め、各凹部141,142,151,152に設けられた前記小孔121,・・・から内部へ導くことができる。
【0094】
そして、前記底部中心131より外側であって前記各凹部141,142,151,152の中心より前記底部中心131側の部位には、下方へ向けて延出する各邪魔板部181,182,191,192が設けられており、各邪魔板部181,182,191,192より外側に配置された前記小孔121,・・・への水の浸入を促進する促進構造201,・・・が構成されている。
【0095】
このため、前記底部91の外周部に貯留した水の前記底部中心131側、すなわち前記通水穴13への流れを前記各邪魔板部181,182,191,192によって阻止することができ、各邪魔板181,182,191,192より外側であって上方へ向けて傾斜した部位に開設された前記各凹部141,142,151,152内の前記小孔121,・・・からの水の浸入を促進することができる。
【0096】
したがって、前記容器本体21内への導水性の確保と、前記水溶性薬剤22の不用意な落下に起因した不具合防止とを両立することができる。
【0097】
そして、前記底部91には、下方へ向けて延出した三本の延出部221,・・・が前記底部中心131を包囲するように配設されており、各延出部221,・・・を前記貯水タンク11の前記通水穴13に挿入することで、当該容器本体21を位置決めでき、給水時での不用意な移動や転倒を防止することができる。
【0098】
そして、前記各延出部221,・・・で包囲された前記底部91の包囲領域231には、前記小孔121,・・・が複数配置されている。このため、この底部91において、最も低位置に複数の小孔121,・・・が配置されることで、前記水溶性薬剤22が溶け込んだ水を、前記延出部221,・・・が挿入された前記通水穴13を介して、前記貯水タンク11に直接供給することができる。
【0099】
このとき、前記包囲領域231内の開口部は、複数の前記小孔121,・・・で構成されている。このため、前記包囲領域231内に単一の大径穴を設けた場合と比較して、溶解して縮小した水溶性薬剤22の比較的大きな状態での前記貯水タンク11への落下を防止することができる。
【0100】
これにより、比較的大きな水溶性薬剤22が前記貯水タンク11への落下した場合に生じ得る問題の発生を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 薬剤容器
11 貯水タンク
13 通水穴
21 容器本体
22 水溶性薬剤
91 底部
121 小孔
131 底部中心
141 右凹部
142 左凹部
151 前凹部
152 後凹部
161 導水構造
181 前邪魔板
182 後邪魔板
191 左邪魔板
192 右邪魔板
201 促進構造
221 延出部
231 包囲領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性薬剤を収容した容器本体の底部に、該容器本体内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられた薬剤容器において、
前記底部を下方に突出した断面円弧状に形成し、当該底部に複数の小孔を設けて前記開口部を構成する一方、
前記底部における底部中心の外周部に上方へ向けて後退した凹部を設定して該凹部に設けられた前記小孔に水を案内する導水構造を構成したことを特徴とする薬剤容器。
【請求項2】
水溶性薬剤を収容した容器本体の底部に、該容器本体内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられた薬剤容器において、
前記底部を下方に突出した断面円弧状に形成し、当該底部に複数の小孔を設けて前記開口部を構成する一方、
前記底部における底部中心より外側に下方へ向けて延出する邪魔板部を設けて該邪魔板部より外側に配置された前記小孔への水の浸入を促進する促進構造を構成したことを特徴とする薬剤容器。
【請求項3】
水溶性薬剤を収容した容器本体の底部に、該容器本体内に水を取り込む機能及び前記水溶性薬剤が溶け込んだ水を排出する機能を備えた開口部が設けられた薬剤容器において、
前記底部を下方に突出した断面円弧状に形成し、当該底部に複数の小孔を設けて前記開口部を構成する一方、
前記底部における底部中心の外周部に上方へ向けて後退した凹部を設定して該凹部に設けられた前記小孔に水を案内する導水構造を構成するとともに、前記凹部の中心より前記底部中心側に下方へ向けて延出する邪魔板部を設けて該邪魔板部より外側に配置された前記凹部内の前記小孔への水の浸入を促進する促進構造を構成したことを特徴とする薬剤容器。
【請求項4】
前記底部に下方へ向けて延出した複数の延出部を当該底部の底部中心を包囲するように配設し、前記各延出部を貯水タンクの通水穴に挿入して位置決め可能に構成するとともに、前記各延出部で包囲された前記底部の包囲領域に前記小孔を複数配置したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の薬剤容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251363(P2012−251363A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124754(P2011−124754)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】