薬剤導入装置及び薬剤導入システム
【課題】超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療を行う際の操作者と被検体の負担を軽減して、使い勝手を向上させる。
【解決手段】被検体に超音波を照射する振動子部3と、被検体の治療領域4に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネル5と、治療領域4に超音波の照射位置を制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御するマイクロコンピュータ7と、振動子部3とマイクロコンピュータ7に電力を供給するバッテリ11とを備え、振動子部3の超音波送信面を被検体の治療領域4に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される薬剤導入装置を用いることで、操作者と被検体の負担を軽減でき、使い勝手を向上できる。
【解決手段】被検体に超音波を照射する振動子部3と、被検体の治療領域4に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネル5と、治療領域4に超音波の照射位置を制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御するマイクロコンピュータ7と、振動子部3とマイクロコンピュータ7に電力を供給するバッテリ11とを備え、振動子部3の超音波送信面を被検体の治療領域4に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される薬剤導入装置を用いることで、操作者と被検体の負担を軽減でき、使い勝手を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤導入装置及び薬剤導入システムに係り、特に、超音波を用いて、薬剤の導入を促進する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、抗がん剤や遺伝子治療に用いる遺伝子などの物質(以下、薬剤という。)を悪性腫瘍の細胞内に導入して悪性腫瘍を治療することが提案されている。特に、被検体の細胞内への薬剤の導入を促進するため、超音波診断装置を用い、静脈から被検体に投与した薬剤が悪性腫瘍の存在する治療領域に到達したときに、超音波を所定時間照射して、薬剤の悪性腫瘍の細胞内への導入を促進することが提案されている。また、同文献によれば、被検体の体表面に超音波探触子を密着させて悪性腫瘍のある領域に超音波を照射し、その反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成し、その超音波画像に基づいて治療領域と超音波の照射計画を設定するようにしている。
【0003】
ところで、特許文献1のような治療法に用いる薬剤は、一般に、悪性腫瘍の細胞と特異的に結合し、かつ、細胞内に入るように形成されている。そのため、薬剤を血管内に投与すると、薬剤は血液とともに体内を循環して悪性腫瘍の細胞に結合して細胞内に導入される。この際、薬剤は細胞内に入りにくいため、悪性腫瘍の細胞が存在する治療領域に薬剤が集積する。そこで、薬剤が集積した治療領域に超音波を照射することで、悪性腫瘍の細胞内への薬剤の導入を促進することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、治療領域に集積するまでの時間が、例えば、数時間となる薬剤を用いる場合、特許文献1のように、薬剤が集積するまでの数時間、超音波の照射を待たなければならない。また、超音波を照射している間は、医師等の操作者は、超音波の照射位置が治療領域からずれないように超音波探触子を手で持ち続け、又は機械的な装置に保持させる必要がある。また、超音波を照射している間は患者等の被検体はベットから動くことができない。このように、特許文献1の技術によれば、治療中のおける操作者と被検体の負担があり、使い勝手の向上の余地がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療を行う際の操作者と被検体の負担を軽減して、使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の薬剤導入装置は、被検体に超音波を照射する振動子と、被検体の治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルと、治療領域に超音波の照射位置を制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御装置と、振動子と制御装置に電力を供給する電池とを備え、振動子の超音波送信面を被検体の治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着されることを特徴とする。
【0008】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置により超音波を照射して、薬剤を導入する治療を行うことができるから、被検体は動くことができ、かつ、操作者は被検体に張り付いている必要がない。その結果、操作者や被検体の負担を軽減でき、装置の使い勝手を向上できる。
【0009】
この場合において、制御装置は、コントロールパネルによって入力設定された超音波の照射条件、例えば、超音波の照射強度、照射周期、照射タイミングに基づいて、超音波を治療領域に照射する。特に、治療領域における薬剤濃度が設定濃度になるまでの時間を実験等で予め求め、その時間を照射タイミングとして設定することができる。また、超音波の照射範囲は、他の医療機器によって求めた治療領域の体表面からの深さ範囲と広がり範囲に基づいて設定する。
【0010】
また、薬剤導入装置を被検体の体表面に装着する場合は、薬剤導入装置に設けたベルトを被検体の体表面に巻き付けて装着することができる。また、薬剤導入装置を被検体の体内に装着する場合は、被検体を切開して皮下に埋め込むことができる。なお、薬剤導入装置を装着する際は、超音波の照射可能範囲に治療領域が入る位置を予め求め、その位置に薬剤導入装置を装着する。
【0011】
また、超音波を送受信可能な振動子を用い、被検体からの反射エコー信号を受信し、受信したエコー信号に基づいて超音波画像を生成し、この超音波画像に基づいて治療領域を求めて照射範囲を設定することができる。例えば、基準となる治療領域の超音波画像を予め入力し、その超音波画像と、生成した超音波画像を比較することで、現在の治療領域の位置を求めることができ、その位置に超音波を照射できる。これによれば、被検体の呼吸等の体動により治療領域が移動しても、治療領域の位置を追跡することができるから、治療領域に超音波を確実に照射することができる。
【0012】
この場合において、外部に設けた薬剤導入制御装置に無線通信で反射エコー信号を送信し、外部の薬剤導入制御装置で超音波画像を生成し、超音波画像上の治療領域の位置を求め、求めた位置を超音波の照射位置とすることができる。これによれば、超音波画像は外部の装置で生成するから、被検体に装着する薬剤導入装置に超音波画像を生成する装置を設ける必要がないので、薬剤導入装置を小型化できる。特に、薬剤導入装置を体内に埋め込む場合は装置の小型化が要望されるから、超音波画像を外部の装置で生成することが好ましい。
【0013】
また、治療領域における血液中の薬剤濃度を検出し、検出濃度が設定濃度になったら超音波を照射するように構成できる。これによれば、治療領域の実際の薬剤濃度に基づいて超音波の照射タイミングを決定するから、超音波の照射タイミングを予め設定する場合に比べて、照射タイミングの正確性を向上できる。なお、血液中の薬剤濃度に代えて、治療領域における予め設定した血液中の指標成分の濃度を検出し、検出濃度が設定濃度になったら超音波を照射するように構成できる。この場合、赤血球、白血球等、薬剤によって濃度が変化する成分を指標成分として採用できる。
【0014】
また、気泡の超音波造影剤とともに薬剤を被検体の血管内に投与する場合、超音波造影剤の気泡が伸縮して薬剤とともに移動する第1の照射強度で超音波を照射した後、この第1の照射強度よりも強い第2の強度で超音波を照射して超音波造影剤の気泡を破裂させるこができる。これによれば、第1の照射強度の超音波により治療対象の細胞と薬剤の接触性を高め、薬剤が細胞内へ進入しやすくする。そして、設定時間が経過した後に、第2の照射強度の超音波を照射して超音波造影剤の気泡を破裂させると、その衝撃により細胞内に薬剤が進入するから、細胞内への薬剤導入を一層促進できる。
【0015】
また、薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された薬剤が収容されるタンクと、タンク内の薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された薬剤を被検体の血管内に投与する投与装置を設けることができる。これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置で薬剤を投与でき、病院等に行くことなく薬剤を投与できるから、被検体の負担を一層軽減できる。なお、予め設定した時間又は周期等に基づいて薬剤の投与を制御できる。また、薬剤導入装置に、血液中の薬剤濃度又は血液中の予め設定された指標成分の濃度を検出するセンサを設ける場合は、検出濃度が設定値より低下したら薬剤を投与するように制御できる。
【0016】
一方、本発明の薬剤導入システムは、薬剤導入装置と薬剤導入制御装置とが相互に無線通信可能に構成され、薬剤導入装置は、被検体との間で超音波を送受信する振動子と、薬剤導入制御装置の通信装置から送信された被検体の治療領域と超音波の照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御装置と、振動子と制御装置に電力を供給する電池とを備え、振動子の超音波送受信面を被検体の治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着されるように構成され、薬剤導入制御装置は、薬剤導入装置の通信装置から送信された超音波の反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する生成装置と、超音波画像を表示する表示装置と、超音波画像上に被検体の治療領域を設定するとともに、治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルとを備えることを特徴とする。
【0017】
これによれば、照射条件を入力するコントロールパネルを、被検体に装着される薬剤導入装置と別にできるから、上述したコントロールパネルを備える薬剤導入装置に比べて、薬剤導入装置を一層小型化できる。なお、本薬剤導入システムに用いる薬剤導入装置は、上述したいずれかの薬剤導入装置を適宜選択して用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療を行う際の操作者と被検体の負担を軽減でき、使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1の薬剤導入装置のブロック図である。
【図2】被検体の体表面に薬剤導入装置を装着した状態を示す図である。
【図3】超音波の照射範囲を説明する概念図である。
【図4】本発明の実施形態2の薬剤導入装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態3の薬剤導入装置のブロック図である。
【図6】本発明の実施形態4の薬剤導入装置のブロック図である。
【図7】図6の薬剤導入装置の変形例を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態5の薬剤導入装置のブロック図である。
【図9】被検体の体内に薬剤導入装置を装着した状態を示す図である。
【図10】実施形態5の薬剤導入装置の変形例を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施形態6の超音波の照射制御を示す図である。
【図12】図11の照射制御の変形例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態7の薬剤導入システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1、2に示すように、実施形態1は、被検体の外皮(体表面)に装着される薬剤導入装置1である。薬剤導入装置1は、複数の振動子が配列された振動子部3と、被検体の治療領域4に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネル5と、治療領域4に超音波の照射位置を制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御装置であるマイクロコンピュータ7と、振動子部3とマイクロコンピュータ7に電力を供給する電池であるバッテリ11を含むバッテリ装置15とを備えている。
【0021】
振動子部3は、本実施形態では、被検体の皮膚に密着される複数の振動子を2次元に配列して形成された超音波送信面を有している。各振動子は、超音波送信回路9に接続され、超音波送信回路9を介してバッテリ装置15から駆動電力が供給されるようになっている。超音波送信回路9は、マイクロコンピュータ7から入力された制御信号に基づいて、フォーカス処理や増幅処理などの送信処理を行って各振動子に駆動電力を供給するようになっている。
【0022】
コントロールパネル5は、マイクロコンピュータ7に医師等の操作者が治療領域4の情報と超音波と照射条件を入力設定できるようになっている。ここで、治療領域4の情報は、例えば、図3に示す治療領域4の体表面からの深さ範囲及び広がり範囲であり、照射条件は、例えば、超音波の照射強度、照射の繰り返し周期、照射開始時間及び照射終了時間等の照射タイミングである。マイクロコンピュータ7は、入力設定された治療領域4の情報に基づいて超音波の照射範囲を治療領域内4に制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御信号を超音波送信回路9に出力するようになっている。
【0023】
バッテリ装置15は、振動子部3とマイクロコンピュータ7と超音波送信回路9等に電力を供給するバッテリ11と、バッテリ11の充放電を制御するバッテリ制御回路13を備えている。
【0024】
薬剤導入装置1は、例えば、振動子部3、コントロールパネル5、マイクロコンピュータ7、バッテリ装置15等をケースに収容して形成されている。また、振動子部3の超音波送受信面を被検体の外皮に密着させて、薬剤導入装置1を被検体に固定して装着するベルト19を備えている。なお、振動子部3の超音波送信面をケースから露出させて構成することが好ましい。
【0025】
ベルト19は、例えば、平帯状に形成され、被検体に巻き付けて被検体の体表面に薬剤導入装置1を密着させて装着するようになっている。ベルト19の一端は、薬剤導入装置1のケースに固定されている。他端は、薬剤導入装置1のケースに着脱自由に形成され、着脱位置に応じて巻き付け長さを調整可能になっている。これにより、治療領域に対応する位置に応じて巻き付け長さを調整して、薬剤導入装置1を被検体に装着可能になっている。なお、呼吸等の体動によって巻き付け位置の太さが変わるので、この体動による変化を吸収できるように柔軟性を有する材質でベルト19を形成することができる。
【0026】
このように構成される薬剤導入装置1の作用を、超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療法に沿って説明する。本治療法に用いる薬剤は、血管内に注入される薬剤であり、例えば、治療対象のがん細胞内に進入してがん細胞の増殖を抑制する抗がん剤や、がん細胞内に進入してがん細胞の遺伝子の欠陥を修復する治療用の遺伝子等である。このような薬剤は、がん細胞の特定の受容体(レセプター)と特異的に結合するリガンドを備えている。これにより、がん細胞に接触した薬剤はがん細胞と結合し、また、接触しなかった薬剤は血液の循環により再度治療領域4に戻ってくるため、がん細胞に結合する薬剤が次第に増加する。これにより、がん細胞が存在する領域に薬剤が集積される。しかし、薬剤は細胞内に進入しにくいため、超音波を照射してがん細胞内への薬剤の進入を促進することにより、がん細胞内に薬剤を導入する。そのため、がん細胞が存在する領域に薬剤が集積して薬剤濃度が設定濃度になった後に超音波を照射することで、所望の導入効率を確保できる。この場合、薬剤濃度が設定濃度になるまで、超音波の照射を待つことになる。また、薬剤の血中濃度が半減するまでの時間(半減期)が数時間から数十時間になるものがあるので、その間、治療を継続する場合は超音波の照射時間が長くなる。
【0027】
このような治療を行う際、まず、治療前に行われた検査に基づいて、治療領域4と治療に用いる薬剤が決定される。また、治療領域4と治療に用いる薬剤に基づいて超音波の照射条件が決定される。そして、治療領域4の体表面からの深さ範囲及び広がり範囲等の治療領域4の情報と、超音波の照射強度、照射の繰り返し周期、照射タイミング等の照射条件がコントロールパネル5を介してマイクロコンピュータ7に入力設定される。治療領域4の情報と照射条件が設定された後、治療領域4が超音波の照射可能範囲に入る位置の外皮に超音波送信面を密着させて、ベルト19を被検体に巻き付けて薬剤導入装置1を被検体に装着する。なお、薬剤導入装置1の装着位置と治療領域4の情報は、例えば、治療前の検査で得られたX線CT装置等の他の医療機器の画像に基づいて求めることができる。つまり、画像上で治療領域4を特定して治療領域4が超音波の照射可能範囲内におさまる位置を薬剤導入装置1の装着位置とする。そして、装着位置における治療領域4の深さ範囲と広がり範囲を治療領域4の情報とする。
【0028】
マイクロコンピュータ7は、入力された治療領域4の情報に基づいて、治療領域4内に焦点を合わせフォーカス処理の条件を決定する。そして、設定された照射開始時間になると、マイクロコンピュータ7は、フォーカス処理の条件と照射条件に基づいて生成した制御信号を超音波送信回路9に出力する。超音波送信回路9は、入力された制御信号に基づいて振動子部3に電圧を印加し、治療領域4内に焦点を合わせた収束ビーム17を、振動子部3から治療領域4に照射する。これにより、焦点付近の薬剤の振動などにより、治療領域4におけるがん細胞内への薬剤の進入が促進できる。そして、治療領域内4の他の位置に焦点を代えて超音波を照射することで、治療領域4全体のがん細胞への薬剤の導入を促進することができる。
【0029】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置1により超音波を照射して、薬剤を導入する治療を行うことができる。つまり、超音波診断装置から超音波を照射する装置を分離して被検体に装着したから、被検体は動くことができ、かつ、操作者は被検体に張り付いている必要がない。したがって、操作者や被検体の負担を軽減でき、薬剤導入に用いる装置の使い勝手を向上できる。
【0030】
また、超音波を照射することで、細胞内への薬剤の導入を促進できるから、薬剤の投与量を抑えることができる。つまり、細胞内に導入しにくい薬剤を用いる場合は、投与量を多くして細胞内へ薬剤の導入を促進することがあり副作用が発生する確率が高くなることがある。この点、超音波を照射することで、細胞内への薬剤の導入を促進できるから、超音波を照射しない場合に比べて薬剤の投与量を少なくでき、副作用が発生する確率を低減できる。
【0031】
なお、超音波を照射すると、細胞内に薬剤が導入されて治療領域4における薬剤濃度は低下するが、半減期が長い薬剤を用いた場合は、薬剤が体内を循環しているから治療領域4に薬剤が再度集積する。この集積周期を予め実験等で求めておき、求めた周期を照射の繰り返し周期として設定することで、治療領域4に薬剤が集積する度に超音波を照射でき、治療を自動継続できる。
【0032】
また、超音波の照射タイミングは、例えば、治療領域4における薬剤濃度が設定濃度になる時間を照射開始時間に設定し、治療領域4における薬剤濃度が設定濃度に達しない程度に体内の薬剤濃度が低下する時間を照射停止時間に設定できる。
【0033】
また、振動子部3を形成する振動子の数や配列は、治療領域4の大きさによって適宜選択することができる。例えば、治療領域4が狭い場合は、複数の振動子を1次元に配列して形成した振動子部3、又は、単一の振動子で形成した振動子部3を用いることができる。
【0034】
また、振動子は、圧電素子(PZT)、又は容量性振動要素(cMUTセル)等、適宜選択できる。特に、cMUTセルは、半導体基板上にリソグラフィ技術を用いて作成されるから、cMUTセルを用いることで振動子部3を小型化できる。さらに、cMUTセルは、半導体基板を用いて作成されるから、PZTのように鉛成分を含有しないため、万一cMUTセルが破壊されても生体への毒性影響が少ない。
【0035】
また、コントロールパネル5は、例えば、キーボードやタッチパネルなど周知の入力装置を用いることができる。
【0036】
また、薬剤導入装置1の電源はバッテリ11などの2次電池に限定されず、1次電池を用いることができる。また、バッテリ11と充電器を有線で接続して、バッテリ11を充電可能に形成できる。
【0037】
また、照射条件に基づいて、治療領域4に照射する超音波の送波波形、送信デューティを調整するよう構成することができる。
【0038】
また、薬剤導入装置1の治療対象はがん細胞に限定されず、他の疾患等を治療対象とすることができる。
【0039】
また、実施形態1は、薬剤導入装置1を被検体の外皮に装着したが、治療領域4に対応する位置の被検体の体内に埋め込むことができる。この場合、無線通信可能な通信装置を薬剤導入装置1に設け、外部に設けた薬剤導入制御装置で、治療領域4や超音波の照射条件をマイクロコンピュータ7に入力設定することが好ましい。
【0040】
また、実施形態1の薬剤導入装置1は、設定位置に設定強度の超音波を照射するだけであるから、超音波診断装置に比べて小型化でき、被検体に容易に装着することができる。
【0041】
また、薬剤導入装置1を被検体の体表面に装着する固定具はベルトに限定されず、テープなどを用いることができる。
【0042】
(実施形態2)
図4を用いて、実施形態2の薬剤導入装置1を説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、超音波を送受信可能な振動子によって振動子部3を形成し、振動子部3で受信した超音波の反射エコー信号を受信する超音波受信回路21を設け、超音波受信回路21で受信した反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成し、生成した超音波画像に基づいて治療領域4を設定し、照射位置を決定するようにしている点である。その他の構成は、実施形態1と同じであるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
超音波受信回路21は、反射エコー信号を取り込んで増幅などの受信処理を行うようになっている。超音波受信回路21で受信処理された反射エコー信号は、マイクロコンピュータ7に入力され、マイクロコンピュータ7は、入力された反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成するようになっている。また、マイクロコンピュータ7には、治療領域4の基準超音波画像が格納され、生成された超音波画像と比較して、現在の治療領域4の位置を特定するようになっている。
【0044】
これによれば、マイクロコンピュータ7において、治療領域4の基準超音波画像と、生成した超音波画像を比較して、現在の治療領域4の位置を求め、その位置を超音波の照射位置として超音波の照射を制御することができる。例えば、呼吸等の体動により治療領域4が動く場合は、治療領域4を追跡して超音波の照射位置を変える必要がある。この点、実施形態2によれば、現在の治療領域4の位置を求め、求めた位置に超音波を照射できるから、治療領域4に超音波を確実に照射できる。なお、治療領域4の追跡は、循環器領域にて壁運動解析に用いている手法等、周知の手法を用いることができる。
【0045】
なお、薬剤導入装置1に通信装置を設け、生成した超音波画像を外部の表示装置に送信して表示させるように構成できる。これによれば、薬剤導入装置1を被検体に装着する際、被検体の体内の超音波画像を見ながら薬剤導入装置1の位置を調整できるから、治療領域4に対応する位置に確実に装着できる。さらに、操作者は、超音波画像上の治療領域4を囲んで治療領域4をマイクロコンピュータ7に設定できるから、治療領域4の座標情報等を入力する場合に比べて使い勝手を向上できる。
【0046】
(実施形態3)
図5を用いて、実施形態3の薬剤導入装置1を説明する。実施形態3が実施形態2と相違する点は、マイクロコンピュータ7で超音波画像を生成せず、反射エコー信号を、通信装置23を介して外部に設けた薬剤導入制御装置25に無線で送信し、薬剤導入制御装置25で超音波画像を生成している点である。そして、生成された超音波画像を通信装置を介してマイクロコンピュータ7に入力設定し超音波の照射位置を決定している点である。その他の構成は実施形態2と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
これによれば、マイクロコンピュータ7から超音波画像の生成機能を省略できるから、実施形態2に比べて薬剤導入装置1を小型化できる。特に、薬剤導入装置1を体内に埋め込む場合は装置の小型化が要望されるから、超音波画像を外部の装置で生成することが好ましい。
【0048】
なお、生成した超音波画像を薬剤導入制御装置25に表示し、超音波画像上の治療領域4を操作者に特定させ、特定された治療領域4の座標情報のみを通信装置23を介してマイクロコンピュータ7に入力設定して照射範囲を設定できる。これによれば、治療領域4の基準超音波画像をマイクロコンピュータ7に格納する必要がないから、薬剤導入装置1を一層小型化できる。
【0049】
また、薬剤導入制御装置25に超音波画像の表示装置を設け、薬剤導入装置1を移動させながら超音波を送受信させ、その超音波画像を表示装置に表示するように構成することができる。これによれば、薬剤導入装置1の現在位置における超音波画像を見ながら薬剤導入装置1の装着位置を決定し、装着位置における超音波画像から治療領域4の広がり範囲と深さ範囲等の治療領域4の情報を求めて超音波の照射位置を設定することができる。これによれば、薬剤導入装置1の装着位置における実際の超音波画像をみながら照射位置を設定できるから、治療領域4に確実に超音波を照射することができる。
【0050】
(実施形態4)
図6を用いて、実施形態4の薬剤導入装置1を説明する。実施形態4が実施形態1と相違する点は、治療領域4の近傍の血液中の薬剤濃度を検出する濃度センサ27を設けて、濃度センサ27の検出値に応じて超音波の照射を制御する点である。その他の構成は、実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
濃度センサ27には、針31が設けられ、設定された周期で針31を介して血管内の血液を採取するようになっている。濃度センサ27は、採取した血液中の薬剤濃度を検出し、マイクロコンピュータ7に入力するようになっている。マイクロコンピュータ7は、入力された薬剤濃度が設定濃度範囲内か否かを判定し、濃度センサ27で検出した濃度が設定濃度範囲内の場合は、超音波の照射を開始する。一方、濃度センサ27で検出した濃度が設定濃度範囲外の場合は、超音波を照射しない又は超音波の照射を停止する制御を行う。
【0052】
これによれば、治療領域4の実際の薬剤濃度に基づいて超音波の照射タイミングを決定するから、超音波の照射タイミングを予め設定する場合に比べて、照射タイミングの正確性を向上させることができる。
【0053】
なお、濃度センサ27は、例えば、薬剤の蛍光標識等の標識を検出して濃度を検出するセンサ等の周知のセンサを用いることができる。
【0054】
また、血液中の薬剤濃度に代えて、治療領域4における予め設定した血液中の指標成分の濃度を検出し、検出濃度が設定濃度になったら超音波を照射するように構成できる。この場合、赤血球、白血球等、薬剤によって濃度が変化する成分を指標成分として用いることができる。
【0055】
また、図7に示すように、針31に代えて薬剤光学センサ33を濃度センサ27に接続し、薬剤光学センサ33から血管に向けて光を照射し、その反射光に基づいて、血液中の薬剤濃度、又は、予め設定した血液中の指標成分の濃度を検出できる。これによれば、血液を採取することによる感染症のリスクを低減することができる。
【0056】
なお、超音波の照射を制御する血液中の薬剤濃度の範囲は、治療対象の細胞、治療に用いる薬剤の種類等によって適宜選択できる。また、血液中の薬剤濃度が低下するにしたがい、超音波の照射回数を増やす等の制御を行うことができる。
【0057】
(実施形態5)
図8、9を用いて、実施形態5の薬剤導入装置1を説明する。実施形態5が実施形態4と相違する点は、薬剤導入装置1を被検体の体内に埋め込んで装着している点である。さらに、コントロールパネル5を体外に設置し、コントロールパネル5とマイクロコンピュータ7とを相互に無線通信可能に形成した点である。また、薬剤が収容されるタンク45と、タンク45内の薬剤を被検体の血管内に投与する投与装置43を設けた点である。また、バッテリ装置15に無線充電可能な充電用コイル53を設けた点である。その他の構成は実施形態4と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
コントロールパネル5に入力された治療領域4の情報と照射条件の情報は、通信装置41を介して無線でマイクロコンピュータ7に入力設定される。また、投与装置43には、タンク45内の薬剤を吸い出すポンプ47が設けられている。ポンプ47には、針49が接続され、針49から血管内に薬剤を投与できるようになっている。バッテリ装置15の充電用コイル53で発生した電力をバッテリ11に充電することができるようになっている。
【0059】
ここで、実施形態5の特徴作用を説明する。濃度センサ27で検出した血液中の薬剤濃度が設定濃度よりも低下すると、マイクロコンピュータ7は、投与装置43を駆動させ、薬剤を血管内に投与する制御を行う。その後、血液中の薬剤濃度が設定濃度を超えると、薬剤投与を停止する制御を行う。なお、薬剤の投与条件、例えば、投与スピード等を、コントロールパネル5からマイクロコンピュータ7に入力設定することで、マイクロコンピュータ7によって設定された投与条件で薬剤を投与することができる。
【0060】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置1で薬剤を投与でき、病院等に行くことなく薬剤を投与できるから、例えば、在宅治療を行う場合の被検体の負担を一層軽減できる。
【0061】
なお、薬剤の投与を血液中の薬剤濃度に基づいて制御しているが、これに代えて、予め設定した時間又は周期に基づいて薬剤投与することができる。この場合、コントロールパネル5からマイクロコンピュータ7に投与時間又は投与周期を入力設定する。
【0062】
また、実施形態5の薬剤導入装置1を、体内に代えて、体外に装着することができる。
【0063】
また、図10に示すように、タンク45と投与装置43を設けない薬剤導入装置1を被検体の体内に設けることができる。この場合、薬剤の投与は医師等によって定期的に行うことができる。
【0064】
また、後述するように、気泡の超音波造影剤を用いる場合は、気泡の超音波造影剤が混合された薬剤をタンク45に収容して被検体に投与することができる。
【0065】
(実施形態6)
実施形態6として、超音波照射の照射制御の一例を説明する。図11の超音波照射のシーケンスは、実施形態5の薬剤導入装置1を用い、気泡の超音波造影剤が混合された薬剤を被検体に投与する場合の例である。なお、実施形態6で用いる気泡の超音波造影剤は、例えば、薬剤を修飾可能な造影剤、薬剤を内部に封入可能な造影剤など、薬剤とともに移動して、血管の管壁を通過可能な造影剤を用いることができる。
【0066】
マイクロコンピュータ7によって、投与装置43から血管内に超音波造影剤が混合された薬剤の投与が開始されると(T0−0)、血液中の薬剤濃度が増加する。血中薬剤濃度は、濃度センサ27からマイクロコンピュータ7に入力される。マイクロコンピュータ7は、薬剤の投与量が設定量になると、投与装置43を停止させて薬剤の投与を停止する。その後、マイクロコンピュータ7に入力される血液中の薬剤濃度が上限閾値を超えると、マイクロコンピュータ7は、第1の照射強度に設定した超音波(中音圧超音波)を照射する制御を行う(T1−0)。中音圧超音波は、超音波造影剤の気泡が圧縮と膨張を繰り返す照射強度に設定されているから、気泡の伸縮により超音波造影剤が混合された薬剤が血管内を移動する。これにより、超音波造影剤とともに薬剤を血管の管壁に向かって拡散でき、薬剤と治療対象の細胞(標的細胞)が接触する確率を高めることができるから、標的細胞に薬剤を結合させることができる。中音圧超音波を設定時間照射して、治療領域4の薬剤濃度が高められると、マイクロコンピュータ7、第1の照射強度よりも強い第2の照射強度に設定した超音波(大音圧超音波)を照射する制御を行う(T2−0)。これにより、標的細胞に結合した薬剤の気泡の超音波造影剤を破裂させる。この破裂の衝撃により、標的細胞内への薬剤の進入が促進され、標的細胞内へ薬剤を導入できる。大音圧超音波を設定時間照射した後、血液中の薬剤濃度が下限閾値より低下すると、マイクロコンピュータ7は、投与装置43を制御して薬剤の投与を再開し(T0−1)、上述した超音波の照射制御を繰り返す。
【0067】
これによれば、血管に沿って流れている薬剤を拡散させて、治療対象の細胞と薬剤が接触する確率を高めることができるため、治療領域4における薬剤濃度を高めることができる。そして、この状態で超音波造影剤の気泡を破裂させると、その衝撃により細胞内へ薬剤が進入するため、細胞内への薬剤導入を一層促進することができる。
【0068】
なお、図12に示すように、投与する薬剤によっては、薬剤投与によって被検体の血液中の発熱性物質濃度が増加することがある。この場合、血液中の薬剤濃度に代えて、血液中の発熱性物質濃度を濃度センサ27で検出し、その検出値をマイクロコンピュータ7に入力して超音波の照射を制御することができる。
【0069】
(実施形態7)
図13を用いて、被検体に装着される薬剤導入装置1と、外部に設けた薬剤導入制御装置61を無線通信可能に構成した薬剤導入システムを実施形態7として説明する。なお、上述の実施形態と同一のものは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
薬剤導入システムは、被検体に装着される薬剤導入装置1と、操作者によって操作される薬剤導入制御装置61を相互に無線通信可能に構成している。薬剤導入装置1は、被検体との間で超音波を送受信する振動子部3と、薬剤導入制御装置61の通信装置63から送信され被検体の治療領域4の情報と超音波の照射条件に基づいて超音波の照射を制御するマイクロコンピュータ7と、振動子部3とマイクロコンピュータ7に電力を供給する電池とを備えている。振動子部3は、超音波送信回路9と超音波受信回路21に接続され、マイクロコンピュータ7の制御信号に基づいて超音波を照射するとともに、反射エコー信号をマイクロコンピュータ7に出力するようになっている。マイクロコンピュータ7には、通信装置55が接続され、薬剤導入制御装置61と無線通信可能に形成されている。このように構成される薬剤導入装置1は、振動子部3の超音波送受信面を被検体の治療領域4に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される。
【0071】
薬剤導入制御装置61は、薬剤導入装置1の通信装置55から送信された超音波の反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する生成装置65と、超音波像上に治療領域4を設定するとともに、治療領域4に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネル5とを備えている。生成装置65には、通信装置63で受信した反射エコー信号が入力され、入力された反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成するようになっている。コントロールパネル5は、例えば、タッチパネルであり、生成装置65で生成された超音波画像を表示して、超音波画像上の治療領域4の情報を医師等が指定できるようになっている。そして、指定された治療領域4の情報に基づいて、超音波の照射範囲を決定するようになっている。さらに、コントロールパネル5は、照射条件を入力可能になっている。そして、コントロールパネル5は、照射範囲と照射条件を通信装置55、63を介してマイクロコンピュータ7に入力設定するようになっている。
【0072】
次に、実施形態7の薬剤導入システムの動作を説明する。医師等の操作者によって、薬剤導入装置1は、被検体の体外又は体内に装着される。この際、操作者は、コントロールパネル5に超音波画像の生成指令を入力し、被検体の超音波画像を見ながら薬剤導入装置1を装着位置を調整することができる。薬剤導入装置1を装着した後、コントロールパネル5に入力された超音波画像の生成指令に基づき、被検体に対して設定条件の超音波を照射し、その反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する。生成した超音波画像をコントロールパネル5に表示し、表示した超音波画像上に指定された治療領域4の情報に基づいて、コントロールパネル5は、超音波の照射範囲を決定する。コントロールパネル5は、照射範囲の情報とともに、操作者によって入力された照射条件の情報を、通信装置55、63を介してマイクロコンピュータ7に入力設定する。薬剤導入制御装置61からの設定が終了した後、薬剤導入装置1は、設定された照射範囲と照射条件に基づいて、被検体に超音波を照射する。
【0073】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置1によって、細胞内への薬剤導入に必要な超音波照射が自動で行われるから、操作者と被検体の負担を軽減することができる。さらにコントロールパネル5や生成装置65を、外部に設けた薬剤導入制御装置61に設けたので、被検体に装着する薬剤導入装置1を小型化することができる。特に、薬剤導入装置1を被検体の体内に埋め込む場合は小型化が要望されるから、コントロールパネル5や生成装置65等を外部に設けることが好ましい。
【0074】
なお、本薬剤導入システムに用いる薬剤導入装置は、上述した実施形態1〜6の薬剤導入装置を適宜選択して適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 薬剤導入装置
3 振動子部
4 治療領域
5 コントロールパネル
7 マイクロコンピュータ
11 バッテリ
23 通信装置
25 薬剤導入制御装置
27 濃度センサ
41 通信装置
43 投与装置
55 通信装置
61 薬剤導入制御装置
63 通信装置
65 生成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤導入装置及び薬剤導入システムに係り、特に、超音波を用いて、薬剤の導入を促進する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、抗がん剤や遺伝子治療に用いる遺伝子などの物質(以下、薬剤という。)を悪性腫瘍の細胞内に導入して悪性腫瘍を治療することが提案されている。特に、被検体の細胞内への薬剤の導入を促進するため、超音波診断装置を用い、静脈から被検体に投与した薬剤が悪性腫瘍の存在する治療領域に到達したときに、超音波を所定時間照射して、薬剤の悪性腫瘍の細胞内への導入を促進することが提案されている。また、同文献によれば、被検体の体表面に超音波探触子を密着させて悪性腫瘍のある領域に超音波を照射し、その反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成し、その超音波画像に基づいて治療領域と超音波の照射計画を設定するようにしている。
【0003】
ところで、特許文献1のような治療法に用いる薬剤は、一般に、悪性腫瘍の細胞と特異的に結合し、かつ、細胞内に入るように形成されている。そのため、薬剤を血管内に投与すると、薬剤は血液とともに体内を循環して悪性腫瘍の細胞に結合して細胞内に導入される。この際、薬剤は細胞内に入りにくいため、悪性腫瘍の細胞が存在する治療領域に薬剤が集積する。そこで、薬剤が集積した治療領域に超音波を照射することで、悪性腫瘍の細胞内への薬剤の導入を促進することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、治療領域に集積するまでの時間が、例えば、数時間となる薬剤を用いる場合、特許文献1のように、薬剤が集積するまでの数時間、超音波の照射を待たなければならない。また、超音波を照射している間は、医師等の操作者は、超音波の照射位置が治療領域からずれないように超音波探触子を手で持ち続け、又は機械的な装置に保持させる必要がある。また、超音波を照射している間は患者等の被検体はベットから動くことができない。このように、特許文献1の技術によれば、治療中のおける操作者と被検体の負担があり、使い勝手の向上の余地がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療を行う際の操作者と被検体の負担を軽減して、使い勝手を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の薬剤導入装置は、被検体に超音波を照射する振動子と、被検体の治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルと、治療領域に超音波の照射位置を制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御装置と、振動子と制御装置に電力を供給する電池とを備え、振動子の超音波送信面を被検体の治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着されることを特徴とする。
【0008】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置により超音波を照射して、薬剤を導入する治療を行うことができるから、被検体は動くことができ、かつ、操作者は被検体に張り付いている必要がない。その結果、操作者や被検体の負担を軽減でき、装置の使い勝手を向上できる。
【0009】
この場合において、制御装置は、コントロールパネルによって入力設定された超音波の照射条件、例えば、超音波の照射強度、照射周期、照射タイミングに基づいて、超音波を治療領域に照射する。特に、治療領域における薬剤濃度が設定濃度になるまでの時間を実験等で予め求め、その時間を照射タイミングとして設定することができる。また、超音波の照射範囲は、他の医療機器によって求めた治療領域の体表面からの深さ範囲と広がり範囲に基づいて設定する。
【0010】
また、薬剤導入装置を被検体の体表面に装着する場合は、薬剤導入装置に設けたベルトを被検体の体表面に巻き付けて装着することができる。また、薬剤導入装置を被検体の体内に装着する場合は、被検体を切開して皮下に埋め込むことができる。なお、薬剤導入装置を装着する際は、超音波の照射可能範囲に治療領域が入る位置を予め求め、その位置に薬剤導入装置を装着する。
【0011】
また、超音波を送受信可能な振動子を用い、被検体からの反射エコー信号を受信し、受信したエコー信号に基づいて超音波画像を生成し、この超音波画像に基づいて治療領域を求めて照射範囲を設定することができる。例えば、基準となる治療領域の超音波画像を予め入力し、その超音波画像と、生成した超音波画像を比較することで、現在の治療領域の位置を求めることができ、その位置に超音波を照射できる。これによれば、被検体の呼吸等の体動により治療領域が移動しても、治療領域の位置を追跡することができるから、治療領域に超音波を確実に照射することができる。
【0012】
この場合において、外部に設けた薬剤導入制御装置に無線通信で反射エコー信号を送信し、外部の薬剤導入制御装置で超音波画像を生成し、超音波画像上の治療領域の位置を求め、求めた位置を超音波の照射位置とすることができる。これによれば、超音波画像は外部の装置で生成するから、被検体に装着する薬剤導入装置に超音波画像を生成する装置を設ける必要がないので、薬剤導入装置を小型化できる。特に、薬剤導入装置を体内に埋め込む場合は装置の小型化が要望されるから、超音波画像を外部の装置で生成することが好ましい。
【0013】
また、治療領域における血液中の薬剤濃度を検出し、検出濃度が設定濃度になったら超音波を照射するように構成できる。これによれば、治療領域の実際の薬剤濃度に基づいて超音波の照射タイミングを決定するから、超音波の照射タイミングを予め設定する場合に比べて、照射タイミングの正確性を向上できる。なお、血液中の薬剤濃度に代えて、治療領域における予め設定した血液中の指標成分の濃度を検出し、検出濃度が設定濃度になったら超音波を照射するように構成できる。この場合、赤血球、白血球等、薬剤によって濃度が変化する成分を指標成分として採用できる。
【0014】
また、気泡の超音波造影剤とともに薬剤を被検体の血管内に投与する場合、超音波造影剤の気泡が伸縮して薬剤とともに移動する第1の照射強度で超音波を照射した後、この第1の照射強度よりも強い第2の強度で超音波を照射して超音波造影剤の気泡を破裂させるこができる。これによれば、第1の照射強度の超音波により治療対象の細胞と薬剤の接触性を高め、薬剤が細胞内へ進入しやすくする。そして、設定時間が経過した後に、第2の照射強度の超音波を照射して超音波造影剤の気泡を破裂させると、その衝撃により細胞内に薬剤が進入するから、細胞内への薬剤導入を一層促進できる。
【0015】
また、薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された薬剤が収容されるタンクと、タンク内の薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された薬剤を被検体の血管内に投与する投与装置を設けることができる。これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置で薬剤を投与でき、病院等に行くことなく薬剤を投与できるから、被検体の負担を一層軽減できる。なお、予め設定した時間又は周期等に基づいて薬剤の投与を制御できる。また、薬剤導入装置に、血液中の薬剤濃度又は血液中の予め設定された指標成分の濃度を検出するセンサを設ける場合は、検出濃度が設定値より低下したら薬剤を投与するように制御できる。
【0016】
一方、本発明の薬剤導入システムは、薬剤導入装置と薬剤導入制御装置とが相互に無線通信可能に構成され、薬剤導入装置は、被検体との間で超音波を送受信する振動子と、薬剤導入制御装置の通信装置から送信された被検体の治療領域と超音波の照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御装置と、振動子と制御装置に電力を供給する電池とを備え、振動子の超音波送受信面を被検体の治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着されるように構成され、薬剤導入制御装置は、薬剤導入装置の通信装置から送信された超音波の反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する生成装置と、超音波画像を表示する表示装置と、超音波画像上に被検体の治療領域を設定するとともに、治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルとを備えることを特徴とする。
【0017】
これによれば、照射条件を入力するコントロールパネルを、被検体に装着される薬剤導入装置と別にできるから、上述したコントロールパネルを備える薬剤導入装置に比べて、薬剤導入装置を一層小型化できる。なお、本薬剤導入システムに用いる薬剤導入装置は、上述したいずれかの薬剤導入装置を適宜選択して用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療を行う際の操作者と被検体の負担を軽減でき、使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1の薬剤導入装置のブロック図である。
【図2】被検体の体表面に薬剤導入装置を装着した状態を示す図である。
【図3】超音波の照射範囲を説明する概念図である。
【図4】本発明の実施形態2の薬剤導入装置のブロック図である。
【図5】本発明の実施形態3の薬剤導入装置のブロック図である。
【図6】本発明の実施形態4の薬剤導入装置のブロック図である。
【図7】図6の薬剤導入装置の変形例を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施形態5の薬剤導入装置のブロック図である。
【図9】被検体の体内に薬剤導入装置を装着した状態を示す図である。
【図10】実施形態5の薬剤導入装置の変形例を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施形態6の超音波の照射制御を示す図である。
【図12】図11の照射制御の変形例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態7の薬剤導入システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1、2に示すように、実施形態1は、被検体の外皮(体表面)に装着される薬剤導入装置1である。薬剤導入装置1は、複数の振動子が配列された振動子部3と、被検体の治療領域4に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネル5と、治療領域4に超音波の照射位置を制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御装置であるマイクロコンピュータ7と、振動子部3とマイクロコンピュータ7に電力を供給する電池であるバッテリ11を含むバッテリ装置15とを備えている。
【0021】
振動子部3は、本実施形態では、被検体の皮膚に密着される複数の振動子を2次元に配列して形成された超音波送信面を有している。各振動子は、超音波送信回路9に接続され、超音波送信回路9を介してバッテリ装置15から駆動電力が供給されるようになっている。超音波送信回路9は、マイクロコンピュータ7から入力された制御信号に基づいて、フォーカス処理や増幅処理などの送信処理を行って各振動子に駆動電力を供給するようになっている。
【0022】
コントロールパネル5は、マイクロコンピュータ7に医師等の操作者が治療領域4の情報と超音波と照射条件を入力設定できるようになっている。ここで、治療領域4の情報は、例えば、図3に示す治療領域4の体表面からの深さ範囲及び広がり範囲であり、照射条件は、例えば、超音波の照射強度、照射の繰り返し周期、照射開始時間及び照射終了時間等の照射タイミングである。マイクロコンピュータ7は、入力設定された治療領域4の情報に基づいて超音波の照射範囲を治療領域内4に制御するとともに、照射条件に基づいて超音波の照射を制御する制御信号を超音波送信回路9に出力するようになっている。
【0023】
バッテリ装置15は、振動子部3とマイクロコンピュータ7と超音波送信回路9等に電力を供給するバッテリ11と、バッテリ11の充放電を制御するバッテリ制御回路13を備えている。
【0024】
薬剤導入装置1は、例えば、振動子部3、コントロールパネル5、マイクロコンピュータ7、バッテリ装置15等をケースに収容して形成されている。また、振動子部3の超音波送受信面を被検体の外皮に密着させて、薬剤導入装置1を被検体に固定して装着するベルト19を備えている。なお、振動子部3の超音波送信面をケースから露出させて構成することが好ましい。
【0025】
ベルト19は、例えば、平帯状に形成され、被検体に巻き付けて被検体の体表面に薬剤導入装置1を密着させて装着するようになっている。ベルト19の一端は、薬剤導入装置1のケースに固定されている。他端は、薬剤導入装置1のケースに着脱自由に形成され、着脱位置に応じて巻き付け長さを調整可能になっている。これにより、治療領域に対応する位置に応じて巻き付け長さを調整して、薬剤導入装置1を被検体に装着可能になっている。なお、呼吸等の体動によって巻き付け位置の太さが変わるので、この体動による変化を吸収できるように柔軟性を有する材質でベルト19を形成することができる。
【0026】
このように構成される薬剤導入装置1の作用を、超音波を用いて細胞内に薬剤を導入する治療法に沿って説明する。本治療法に用いる薬剤は、血管内に注入される薬剤であり、例えば、治療対象のがん細胞内に進入してがん細胞の増殖を抑制する抗がん剤や、がん細胞内に進入してがん細胞の遺伝子の欠陥を修復する治療用の遺伝子等である。このような薬剤は、がん細胞の特定の受容体(レセプター)と特異的に結合するリガンドを備えている。これにより、がん細胞に接触した薬剤はがん細胞と結合し、また、接触しなかった薬剤は血液の循環により再度治療領域4に戻ってくるため、がん細胞に結合する薬剤が次第に増加する。これにより、がん細胞が存在する領域に薬剤が集積される。しかし、薬剤は細胞内に進入しにくいため、超音波を照射してがん細胞内への薬剤の進入を促進することにより、がん細胞内に薬剤を導入する。そのため、がん細胞が存在する領域に薬剤が集積して薬剤濃度が設定濃度になった後に超音波を照射することで、所望の導入効率を確保できる。この場合、薬剤濃度が設定濃度になるまで、超音波の照射を待つことになる。また、薬剤の血中濃度が半減するまでの時間(半減期)が数時間から数十時間になるものがあるので、その間、治療を継続する場合は超音波の照射時間が長くなる。
【0027】
このような治療を行う際、まず、治療前に行われた検査に基づいて、治療領域4と治療に用いる薬剤が決定される。また、治療領域4と治療に用いる薬剤に基づいて超音波の照射条件が決定される。そして、治療領域4の体表面からの深さ範囲及び広がり範囲等の治療領域4の情報と、超音波の照射強度、照射の繰り返し周期、照射タイミング等の照射条件がコントロールパネル5を介してマイクロコンピュータ7に入力設定される。治療領域4の情報と照射条件が設定された後、治療領域4が超音波の照射可能範囲に入る位置の外皮に超音波送信面を密着させて、ベルト19を被検体に巻き付けて薬剤導入装置1を被検体に装着する。なお、薬剤導入装置1の装着位置と治療領域4の情報は、例えば、治療前の検査で得られたX線CT装置等の他の医療機器の画像に基づいて求めることができる。つまり、画像上で治療領域4を特定して治療領域4が超音波の照射可能範囲内におさまる位置を薬剤導入装置1の装着位置とする。そして、装着位置における治療領域4の深さ範囲と広がり範囲を治療領域4の情報とする。
【0028】
マイクロコンピュータ7は、入力された治療領域4の情報に基づいて、治療領域4内に焦点を合わせフォーカス処理の条件を決定する。そして、設定された照射開始時間になると、マイクロコンピュータ7は、フォーカス処理の条件と照射条件に基づいて生成した制御信号を超音波送信回路9に出力する。超音波送信回路9は、入力された制御信号に基づいて振動子部3に電圧を印加し、治療領域4内に焦点を合わせた収束ビーム17を、振動子部3から治療領域4に照射する。これにより、焦点付近の薬剤の振動などにより、治療領域4におけるがん細胞内への薬剤の進入が促進できる。そして、治療領域内4の他の位置に焦点を代えて超音波を照射することで、治療領域4全体のがん細胞への薬剤の導入を促進することができる。
【0029】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置1により超音波を照射して、薬剤を導入する治療を行うことができる。つまり、超音波診断装置から超音波を照射する装置を分離して被検体に装着したから、被検体は動くことができ、かつ、操作者は被検体に張り付いている必要がない。したがって、操作者や被検体の負担を軽減でき、薬剤導入に用いる装置の使い勝手を向上できる。
【0030】
また、超音波を照射することで、細胞内への薬剤の導入を促進できるから、薬剤の投与量を抑えることができる。つまり、細胞内に導入しにくい薬剤を用いる場合は、投与量を多くして細胞内へ薬剤の導入を促進することがあり副作用が発生する確率が高くなることがある。この点、超音波を照射することで、細胞内への薬剤の導入を促進できるから、超音波を照射しない場合に比べて薬剤の投与量を少なくでき、副作用が発生する確率を低減できる。
【0031】
なお、超音波を照射すると、細胞内に薬剤が導入されて治療領域4における薬剤濃度は低下するが、半減期が長い薬剤を用いた場合は、薬剤が体内を循環しているから治療領域4に薬剤が再度集積する。この集積周期を予め実験等で求めておき、求めた周期を照射の繰り返し周期として設定することで、治療領域4に薬剤が集積する度に超音波を照射でき、治療を自動継続できる。
【0032】
また、超音波の照射タイミングは、例えば、治療領域4における薬剤濃度が設定濃度になる時間を照射開始時間に設定し、治療領域4における薬剤濃度が設定濃度に達しない程度に体内の薬剤濃度が低下する時間を照射停止時間に設定できる。
【0033】
また、振動子部3を形成する振動子の数や配列は、治療領域4の大きさによって適宜選択することができる。例えば、治療領域4が狭い場合は、複数の振動子を1次元に配列して形成した振動子部3、又は、単一の振動子で形成した振動子部3を用いることができる。
【0034】
また、振動子は、圧電素子(PZT)、又は容量性振動要素(cMUTセル)等、適宜選択できる。特に、cMUTセルは、半導体基板上にリソグラフィ技術を用いて作成されるから、cMUTセルを用いることで振動子部3を小型化できる。さらに、cMUTセルは、半導体基板を用いて作成されるから、PZTのように鉛成分を含有しないため、万一cMUTセルが破壊されても生体への毒性影響が少ない。
【0035】
また、コントロールパネル5は、例えば、キーボードやタッチパネルなど周知の入力装置を用いることができる。
【0036】
また、薬剤導入装置1の電源はバッテリ11などの2次電池に限定されず、1次電池を用いることができる。また、バッテリ11と充電器を有線で接続して、バッテリ11を充電可能に形成できる。
【0037】
また、照射条件に基づいて、治療領域4に照射する超音波の送波波形、送信デューティを調整するよう構成することができる。
【0038】
また、薬剤導入装置1の治療対象はがん細胞に限定されず、他の疾患等を治療対象とすることができる。
【0039】
また、実施形態1は、薬剤導入装置1を被検体の外皮に装着したが、治療領域4に対応する位置の被検体の体内に埋め込むことができる。この場合、無線通信可能な通信装置を薬剤導入装置1に設け、外部に設けた薬剤導入制御装置で、治療領域4や超音波の照射条件をマイクロコンピュータ7に入力設定することが好ましい。
【0040】
また、実施形態1の薬剤導入装置1は、設定位置に設定強度の超音波を照射するだけであるから、超音波診断装置に比べて小型化でき、被検体に容易に装着することができる。
【0041】
また、薬剤導入装置1を被検体の体表面に装着する固定具はベルトに限定されず、テープなどを用いることができる。
【0042】
(実施形態2)
図4を用いて、実施形態2の薬剤導入装置1を説明する。実施形態2が実施形態1と相違する点は、超音波を送受信可能な振動子によって振動子部3を形成し、振動子部3で受信した超音波の反射エコー信号を受信する超音波受信回路21を設け、超音波受信回路21で受信した反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成し、生成した超音波画像に基づいて治療領域4を設定し、照射位置を決定するようにしている点である。その他の構成は、実施形態1と同じであるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
超音波受信回路21は、反射エコー信号を取り込んで増幅などの受信処理を行うようになっている。超音波受信回路21で受信処理された反射エコー信号は、マイクロコンピュータ7に入力され、マイクロコンピュータ7は、入力された反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成するようになっている。また、マイクロコンピュータ7には、治療領域4の基準超音波画像が格納され、生成された超音波画像と比較して、現在の治療領域4の位置を特定するようになっている。
【0044】
これによれば、マイクロコンピュータ7において、治療領域4の基準超音波画像と、生成した超音波画像を比較して、現在の治療領域4の位置を求め、その位置を超音波の照射位置として超音波の照射を制御することができる。例えば、呼吸等の体動により治療領域4が動く場合は、治療領域4を追跡して超音波の照射位置を変える必要がある。この点、実施形態2によれば、現在の治療領域4の位置を求め、求めた位置に超音波を照射できるから、治療領域4に超音波を確実に照射できる。なお、治療領域4の追跡は、循環器領域にて壁運動解析に用いている手法等、周知の手法を用いることができる。
【0045】
なお、薬剤導入装置1に通信装置を設け、生成した超音波画像を外部の表示装置に送信して表示させるように構成できる。これによれば、薬剤導入装置1を被検体に装着する際、被検体の体内の超音波画像を見ながら薬剤導入装置1の位置を調整できるから、治療領域4に対応する位置に確実に装着できる。さらに、操作者は、超音波画像上の治療領域4を囲んで治療領域4をマイクロコンピュータ7に設定できるから、治療領域4の座標情報等を入力する場合に比べて使い勝手を向上できる。
【0046】
(実施形態3)
図5を用いて、実施形態3の薬剤導入装置1を説明する。実施形態3が実施形態2と相違する点は、マイクロコンピュータ7で超音波画像を生成せず、反射エコー信号を、通信装置23を介して外部に設けた薬剤導入制御装置25に無線で送信し、薬剤導入制御装置25で超音波画像を生成している点である。そして、生成された超音波画像を通信装置を介してマイクロコンピュータ7に入力設定し超音波の照射位置を決定している点である。その他の構成は実施形態2と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
これによれば、マイクロコンピュータ7から超音波画像の生成機能を省略できるから、実施形態2に比べて薬剤導入装置1を小型化できる。特に、薬剤導入装置1を体内に埋め込む場合は装置の小型化が要望されるから、超音波画像を外部の装置で生成することが好ましい。
【0048】
なお、生成した超音波画像を薬剤導入制御装置25に表示し、超音波画像上の治療領域4を操作者に特定させ、特定された治療領域4の座標情報のみを通信装置23を介してマイクロコンピュータ7に入力設定して照射範囲を設定できる。これによれば、治療領域4の基準超音波画像をマイクロコンピュータ7に格納する必要がないから、薬剤導入装置1を一層小型化できる。
【0049】
また、薬剤導入制御装置25に超音波画像の表示装置を設け、薬剤導入装置1を移動させながら超音波を送受信させ、その超音波画像を表示装置に表示するように構成することができる。これによれば、薬剤導入装置1の現在位置における超音波画像を見ながら薬剤導入装置1の装着位置を決定し、装着位置における超音波画像から治療領域4の広がり範囲と深さ範囲等の治療領域4の情報を求めて超音波の照射位置を設定することができる。これによれば、薬剤導入装置1の装着位置における実際の超音波画像をみながら照射位置を設定できるから、治療領域4に確実に超音波を照射することができる。
【0050】
(実施形態4)
図6を用いて、実施形態4の薬剤導入装置1を説明する。実施形態4が実施形態1と相違する点は、治療領域4の近傍の血液中の薬剤濃度を検出する濃度センサ27を設けて、濃度センサ27の検出値に応じて超音波の照射を制御する点である。その他の構成は、実施形態1と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
濃度センサ27には、針31が設けられ、設定された周期で針31を介して血管内の血液を採取するようになっている。濃度センサ27は、採取した血液中の薬剤濃度を検出し、マイクロコンピュータ7に入力するようになっている。マイクロコンピュータ7は、入力された薬剤濃度が設定濃度範囲内か否かを判定し、濃度センサ27で検出した濃度が設定濃度範囲内の場合は、超音波の照射を開始する。一方、濃度センサ27で検出した濃度が設定濃度範囲外の場合は、超音波を照射しない又は超音波の照射を停止する制御を行う。
【0052】
これによれば、治療領域4の実際の薬剤濃度に基づいて超音波の照射タイミングを決定するから、超音波の照射タイミングを予め設定する場合に比べて、照射タイミングの正確性を向上させることができる。
【0053】
なお、濃度センサ27は、例えば、薬剤の蛍光標識等の標識を検出して濃度を検出するセンサ等の周知のセンサを用いることができる。
【0054】
また、血液中の薬剤濃度に代えて、治療領域4における予め設定した血液中の指標成分の濃度を検出し、検出濃度が設定濃度になったら超音波を照射するように構成できる。この場合、赤血球、白血球等、薬剤によって濃度が変化する成分を指標成分として用いることができる。
【0055】
また、図7に示すように、針31に代えて薬剤光学センサ33を濃度センサ27に接続し、薬剤光学センサ33から血管に向けて光を照射し、その反射光に基づいて、血液中の薬剤濃度、又は、予め設定した血液中の指標成分の濃度を検出できる。これによれば、血液を採取することによる感染症のリスクを低減することができる。
【0056】
なお、超音波の照射を制御する血液中の薬剤濃度の範囲は、治療対象の細胞、治療に用いる薬剤の種類等によって適宜選択できる。また、血液中の薬剤濃度が低下するにしたがい、超音波の照射回数を増やす等の制御を行うことができる。
【0057】
(実施形態5)
図8、9を用いて、実施形態5の薬剤導入装置1を説明する。実施形態5が実施形態4と相違する点は、薬剤導入装置1を被検体の体内に埋め込んで装着している点である。さらに、コントロールパネル5を体外に設置し、コントロールパネル5とマイクロコンピュータ7とを相互に無線通信可能に形成した点である。また、薬剤が収容されるタンク45と、タンク45内の薬剤を被検体の血管内に投与する投与装置43を設けた点である。また、バッテリ装置15に無線充電可能な充電用コイル53を設けた点である。その他の構成は実施形態4と同一であるから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
コントロールパネル5に入力された治療領域4の情報と照射条件の情報は、通信装置41を介して無線でマイクロコンピュータ7に入力設定される。また、投与装置43には、タンク45内の薬剤を吸い出すポンプ47が設けられている。ポンプ47には、針49が接続され、針49から血管内に薬剤を投与できるようになっている。バッテリ装置15の充電用コイル53で発生した電力をバッテリ11に充電することができるようになっている。
【0059】
ここで、実施形態5の特徴作用を説明する。濃度センサ27で検出した血液中の薬剤濃度が設定濃度よりも低下すると、マイクロコンピュータ7は、投与装置43を駆動させ、薬剤を血管内に投与する制御を行う。その後、血液中の薬剤濃度が設定濃度を超えると、薬剤投与を停止する制御を行う。なお、薬剤の投与条件、例えば、投与スピード等を、コントロールパネル5からマイクロコンピュータ7に入力設定することで、マイクロコンピュータ7によって設定された投与条件で薬剤を投与することができる。
【0060】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置1で薬剤を投与でき、病院等に行くことなく薬剤を投与できるから、例えば、在宅治療を行う場合の被検体の負担を一層軽減できる。
【0061】
なお、薬剤の投与を血液中の薬剤濃度に基づいて制御しているが、これに代えて、予め設定した時間又は周期に基づいて薬剤投与することができる。この場合、コントロールパネル5からマイクロコンピュータ7に投与時間又は投与周期を入力設定する。
【0062】
また、実施形態5の薬剤導入装置1を、体内に代えて、体外に装着することができる。
【0063】
また、図10に示すように、タンク45と投与装置43を設けない薬剤導入装置1を被検体の体内に設けることができる。この場合、薬剤の投与は医師等によって定期的に行うことができる。
【0064】
また、後述するように、気泡の超音波造影剤を用いる場合は、気泡の超音波造影剤が混合された薬剤をタンク45に収容して被検体に投与することができる。
【0065】
(実施形態6)
実施形態6として、超音波照射の照射制御の一例を説明する。図11の超音波照射のシーケンスは、実施形態5の薬剤導入装置1を用い、気泡の超音波造影剤が混合された薬剤を被検体に投与する場合の例である。なお、実施形態6で用いる気泡の超音波造影剤は、例えば、薬剤を修飾可能な造影剤、薬剤を内部に封入可能な造影剤など、薬剤とともに移動して、血管の管壁を通過可能な造影剤を用いることができる。
【0066】
マイクロコンピュータ7によって、投与装置43から血管内に超音波造影剤が混合された薬剤の投与が開始されると(T0−0)、血液中の薬剤濃度が増加する。血中薬剤濃度は、濃度センサ27からマイクロコンピュータ7に入力される。マイクロコンピュータ7は、薬剤の投与量が設定量になると、投与装置43を停止させて薬剤の投与を停止する。その後、マイクロコンピュータ7に入力される血液中の薬剤濃度が上限閾値を超えると、マイクロコンピュータ7は、第1の照射強度に設定した超音波(中音圧超音波)を照射する制御を行う(T1−0)。中音圧超音波は、超音波造影剤の気泡が圧縮と膨張を繰り返す照射強度に設定されているから、気泡の伸縮により超音波造影剤が混合された薬剤が血管内を移動する。これにより、超音波造影剤とともに薬剤を血管の管壁に向かって拡散でき、薬剤と治療対象の細胞(標的細胞)が接触する確率を高めることができるから、標的細胞に薬剤を結合させることができる。中音圧超音波を設定時間照射して、治療領域4の薬剤濃度が高められると、マイクロコンピュータ7、第1の照射強度よりも強い第2の照射強度に設定した超音波(大音圧超音波)を照射する制御を行う(T2−0)。これにより、標的細胞に結合した薬剤の気泡の超音波造影剤を破裂させる。この破裂の衝撃により、標的細胞内への薬剤の進入が促進され、標的細胞内へ薬剤を導入できる。大音圧超音波を設定時間照射した後、血液中の薬剤濃度が下限閾値より低下すると、マイクロコンピュータ7は、投与装置43を制御して薬剤の投与を再開し(T0−1)、上述した超音波の照射制御を繰り返す。
【0067】
これによれば、血管に沿って流れている薬剤を拡散させて、治療対象の細胞と薬剤が接触する確率を高めることができるため、治療領域4における薬剤濃度を高めることができる。そして、この状態で超音波造影剤の気泡を破裂させると、その衝撃により細胞内へ薬剤が進入するため、細胞内への薬剤導入を一層促進することができる。
【0068】
なお、図12に示すように、投与する薬剤によっては、薬剤投与によって被検体の血液中の発熱性物質濃度が増加することがある。この場合、血液中の薬剤濃度に代えて、血液中の発熱性物質濃度を濃度センサ27で検出し、その検出値をマイクロコンピュータ7に入力して超音波の照射を制御することができる。
【0069】
(実施形態7)
図13を用いて、被検体に装着される薬剤導入装置1と、外部に設けた薬剤導入制御装置61を無線通信可能に構成した薬剤導入システムを実施形態7として説明する。なお、上述の実施形態と同一のものは、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
薬剤導入システムは、被検体に装着される薬剤導入装置1と、操作者によって操作される薬剤導入制御装置61を相互に無線通信可能に構成している。薬剤導入装置1は、被検体との間で超音波を送受信する振動子部3と、薬剤導入制御装置61の通信装置63から送信され被検体の治療領域4の情報と超音波の照射条件に基づいて超音波の照射を制御するマイクロコンピュータ7と、振動子部3とマイクロコンピュータ7に電力を供給する電池とを備えている。振動子部3は、超音波送信回路9と超音波受信回路21に接続され、マイクロコンピュータ7の制御信号に基づいて超音波を照射するとともに、反射エコー信号をマイクロコンピュータ7に出力するようになっている。マイクロコンピュータ7には、通信装置55が接続され、薬剤導入制御装置61と無線通信可能に形成されている。このように構成される薬剤導入装置1は、振動子部3の超音波送受信面を被検体の治療領域4に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される。
【0071】
薬剤導入制御装置61は、薬剤導入装置1の通信装置55から送信された超音波の反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する生成装置65と、超音波像上に治療領域4を設定するとともに、治療領域4に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネル5とを備えている。生成装置65には、通信装置63で受信した反射エコー信号が入力され、入力された反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成するようになっている。コントロールパネル5は、例えば、タッチパネルであり、生成装置65で生成された超音波画像を表示して、超音波画像上の治療領域4の情報を医師等が指定できるようになっている。そして、指定された治療領域4の情報に基づいて、超音波の照射範囲を決定するようになっている。さらに、コントロールパネル5は、照射条件を入力可能になっている。そして、コントロールパネル5は、照射範囲と照射条件を通信装置55、63を介してマイクロコンピュータ7に入力設定するようになっている。
【0072】
次に、実施形態7の薬剤導入システムの動作を説明する。医師等の操作者によって、薬剤導入装置1は、被検体の体外又は体内に装着される。この際、操作者は、コントロールパネル5に超音波画像の生成指令を入力し、被検体の超音波画像を見ながら薬剤導入装置1を装着位置を調整することができる。薬剤導入装置1を装着した後、コントロールパネル5に入力された超音波画像の生成指令に基づき、被検体に対して設定条件の超音波を照射し、その反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する。生成した超音波画像をコントロールパネル5に表示し、表示した超音波画像上に指定された治療領域4の情報に基づいて、コントロールパネル5は、超音波の照射範囲を決定する。コントロールパネル5は、照射範囲の情報とともに、操作者によって入力された照射条件の情報を、通信装置55、63を介してマイクロコンピュータ7に入力設定する。薬剤導入制御装置61からの設定が終了した後、薬剤導入装置1は、設定された照射範囲と照射条件に基づいて、被検体に超音波を照射する。
【0073】
これによれば、被検体に装着した薬剤導入装置1によって、細胞内への薬剤導入に必要な超音波照射が自動で行われるから、操作者と被検体の負担を軽減することができる。さらにコントロールパネル5や生成装置65を、外部に設けた薬剤導入制御装置61に設けたので、被検体に装着する薬剤導入装置1を小型化することができる。特に、薬剤導入装置1を被検体の体内に埋め込む場合は小型化が要望されるから、コントロールパネル5や生成装置65等を外部に設けることが好ましい。
【0074】
なお、本薬剤導入システムに用いる薬剤導入装置は、上述した実施形態1〜6の薬剤導入装置を適宜選択して適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 薬剤導入装置
3 振動子部
4 治療領域
5 コントロールパネル
7 マイクロコンピュータ
11 バッテリ
23 通信装置
25 薬剤導入制御装置
27 濃度センサ
41 通信装置
43 投与装置
55 通信装置
61 薬剤導入制御装置
63 通信装置
65 生成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を照射する振動子と、前記被検体の治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルと、前記治療領域に超音波の照射位置を制御するとともに、前記照射条件に基づいて前記超音波の照射を制御する制御装置と、前記振動子と前記制御装置に電力を供給する電池とを備え、
前記振動子の超音波送信面を前記被検体の前記治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される薬剤導入装置。
【請求項2】
被検体との間で超音波を送受信する振動子と、前記被検体の治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルと、前記治療領域に超音波の照射位置を制御するとともに、前記照射条件に基づいて前記超音波の照射を制御する制御装置と、外部に設けられる薬剤導入制御装置と無線通信可能な通信装置と、前記振動子と前記制御装置と前記通信装置に電力を供給する電池とを備え、
前記制御装置は、前記振動子で受信された反射エコー信号を前記通信装置を介して前記薬剤導入制御装置に送信し、前記薬剤導入制御装置で生成された超音波画像に基づいて定められた前記治療領域に前記照射位置を制御するよう形成されてなり、
前記振動子の超音波送受信面を前記被検体の前記治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される薬剤導入装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薬剤導入装置において、
前記被検体に巻き付けられるベルトによって前記被検体の体表面に密着させて装着されることを特徴とする薬剤導入装置。
【請求項4】
さらに、前記治療領域における血液中の薬剤濃度又は血液中の予め設定された指標成分の濃度の少なくとも一方を検出するセンサを備え、前記制御装置は、前記センサの検出値に基づいて前記超音波の照射を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬剤導入装置。
【請求項5】
前記薬剤は、気泡の超音波造影剤とともに前記被検体の血管内に投与され、前記制御装置は、前記超音波を第1の照射強度に制御した後、該第1の照射強度よりも強い第2の強度に制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬剤導入装置。
【請求項6】
さらに、前記薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された前記薬剤が収容されるタンクと、該タンク内の前記薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された前記薬剤を前記被検体の血管内に投与する投与装置とを備えてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の薬剤導入装置。
【請求項7】
薬剤導入装置と薬剤導入制御装置とが相互に無線通信可能に構成され、
前記薬剤導入装置は、被検体との間で超音波を送受信する振動子と、前記薬剤導入制御装置の通信装置から送信された前記被検体の治療領域と前記超音波の照射条件に基づいて前記超音波の照射を制御する制御装置と、前記振動子と前記制御装置に電力を供給する電池とを備え、前記振動子の超音波送受信面を前記被検体の前記治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着されるように構成され、
前記薬剤導入制御装置は、前記薬剤導入装置の通信装置から送信された前記超音波の反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する生成装置と、前記超音波画像上に被検体の治療領域を設定するとともに、該治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する前記照射条件を入力するコントロールパネルとを備えてなる薬剤導入システム。
【請求項1】
被検体に超音波を照射する振動子と、前記被検体の治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルと、前記治療領域に超音波の照射位置を制御するとともに、前記照射条件に基づいて前記超音波の照射を制御する制御装置と、前記振動子と前記制御装置に電力を供給する電池とを備え、
前記振動子の超音波送信面を前記被検体の前記治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される薬剤導入装置。
【請求項2】
被検体との間で超音波を送受信する振動子と、前記被検体の治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する照射条件を入力するコントロールパネルと、前記治療領域に超音波の照射位置を制御するとともに、前記照射条件に基づいて前記超音波の照射を制御する制御装置と、外部に設けられる薬剤導入制御装置と無線通信可能な通信装置と、前記振動子と前記制御装置と前記通信装置に電力を供給する電池とを備え、
前記制御装置は、前記振動子で受信された反射エコー信号を前記通信装置を介して前記薬剤導入制御装置に送信し、前記薬剤導入制御装置で生成された超音波画像に基づいて定められた前記治療領域に前記照射位置を制御するよう形成されてなり、
前記振動子の超音波送受信面を前記被検体の前記治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着される薬剤導入装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の薬剤導入装置において、
前記被検体に巻き付けられるベルトによって前記被検体の体表面に密着させて装着されることを特徴とする薬剤導入装置。
【請求項4】
さらに、前記治療領域における血液中の薬剤濃度又は血液中の予め設定された指標成分の濃度の少なくとも一方を検出するセンサを備え、前記制御装置は、前記センサの検出値に基づいて前記超音波の照射を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬剤導入装置。
【請求項5】
前記薬剤は、気泡の超音波造影剤とともに前記被検体の血管内に投与され、前記制御装置は、前記超音波を第1の照射強度に制御した後、該第1の照射強度よりも強い第2の強度に制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の薬剤導入装置。
【請求項6】
さらに、前記薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された前記薬剤が収容されるタンクと、該タンク内の前記薬剤又は気泡の超音波造影剤が混合された前記薬剤を前記被検体の血管内に投与する投与装置とを備えてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の薬剤導入装置。
【請求項7】
薬剤導入装置と薬剤導入制御装置とが相互に無線通信可能に構成され、
前記薬剤導入装置は、被検体との間で超音波を送受信する振動子と、前記薬剤導入制御装置の通信装置から送信された前記被検体の治療領域と前記超音波の照射条件に基づいて前記超音波の照射を制御する制御装置と、前記振動子と前記制御装置に電力を供給する電池とを備え、前記振動子の超音波送受信面を前記被検体の前記治療領域に対応させて体表面に密着させて又は体内に埋め込んで装着されるように構成され、
前記薬剤導入制御装置は、前記薬剤導入装置の通信装置から送信された前記超音波の反射エコー信号に基づいて超音波画像を生成する生成装置と、前記超音波画像上に被検体の治療領域を設定するとともに、該治療領域に超音波を照射して血管内に投与された薬剤を細胞内に導入する前記照射条件を入力するコントロールパネルとを備えてなる薬剤導入システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−200454(P2012−200454A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68586(P2011−68586)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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