説明

薬剤微粒子

薬剤の微粒子を有する担体粒子を含有する医薬組成物が記載される。薬剤微粒子は例えば昇華により担体粒子上に沈着される。これらの医薬組成物の好適な例は、吸入又は注射による投与に適している。例えばカルシトリオール組成物の吸入により嚢胞性線維症を有する患者の肺感染を治療する方法も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/789,197号(2006年4月3日出願)と米国仮特許出願第60/854,778号(2006年10月26日出願)(これらはそれぞれその全体が本明細書で援用される)の優先権を主張する。
発明の分野
【0002】
本発明は、薬剤、特に難水溶性の薬剤の微粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの重要な薬剤は難水溶性のため、経口バイオアベイラビリティが低い。この問題を克服するために、多くのアプローチが提唱されている。幾つかのアプローチが使用されているが、あまり商業的には成功しておらず、それらのアプローチはそれぞれ欠点と限界を有している。
【0004】
難水溶性の薬剤のバイオアベイラビリティは、薬剤の粒子サイズを低下させて表面積を増加させることにより改良される。粉砕、高圧均一化、噴霧乾燥、水−有機溶媒混合物中の溶液の凍結乾燥、及び無機溶媒の溶液の凍結乾燥が試みられている。原理的にサイズの低下は一般にバイオアベイラビリティを改良するのに適用されるが、例えば高エネルギー粉砕によりサイズ低下を達成するには特殊な装置が必要であり、必ずしも適用できるわけではない。高圧均一化は特殊な装置を必要とし、そして有機溶媒を必要とするが、これは粉砕された生成物に残存することがある。噴霧乾燥もまた溶媒を必要とし、一般により大きなサイズの粒子を生成する。
【0005】
上記方法の多くは、溶媒除去により粒子を生成することを必要とし、これは次に溶液の濃縮を必要とする。溶液濃縮中に溶質分子(これは溶液中では、統計的に個々の分子に分離しており、小さい塊又は凝集物である)が互いに引き合ってより大きな凝集物を形成する。溶質薬剤が最終的に沈降すると、比較的大きな結晶が形成される。
【0006】
凍結乾燥(凍結乾燥)は、溶質を比較的静止したまま維持しながら溶媒を除去し、従って塊又は凝集物の拡大を抑制するという利点を有する。溶媒が除去されると、生成する結晶が小さいか又は物質は非晶質となり、凍結溶液状態での分子の分離を反映している。より希薄な溶液を凍結乾燥することにより、分子の分離を改良することができ、そして凝集物生成をさらに抑制することができるが、より多くの溶媒を除去するのに必要なエネルギーが増加する。通常、凍結乾燥は遅くてエネルギー消費型のプロセスであり、普通は高真空装置を必要とする。さらに形成された結晶は遊離状態で凝集する傾向があり、凍結乾燥が行ったことをもとに戻してしまう。時にはこの傾向は添加剤により克服できることもあるが、これらの添加剤はシステム全体に適合する必要がある。
【0007】
非晶質又はナノ粒子物質は粉末としてのブロック流動性に乏しく、これらをカプセルに充填できるようにする調製作業を必要とする。これらの問題は克服できないものではないが、システムの有用性にさらなる制限を加えることになる。既存の限界の多くは、本発明の好適な実施態様により克服される。
【0008】
難水溶性の薬剤を含む薬剤を呼吸系を介して患者に投与(すなわち薬剤を循環系又は疾患部位にに送る)することが好ましい場合がある。これは、吸入投与又は吸入送達と呼ぶことができる。
【0009】
吸入投与のために粒子のサイズは重要であると報告されている。例えば、Howard C. Anse, Ph.D. et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, p.384 (Donna Bolado, ed., 7th ed.)を参照。
【0010】
乾燥粉末吸入(DPI)製品として使用される活性薬剤成分の粒子サイズ分布は、吸入される組成物の空気力学的性能にとって決定的に重要であると考えられている。一般に5μm未満のサイズを有する粒子のみが、所望の肺の奥まで浸透するのに有効である。このため活性成分は一般的に、ジェットミルを使用して粒子サイズが小さくされる。
【0011】
難水溶性薬剤などの薬剤は、皮下又は静脈内注射により投与することがしばしば好ましい。薬剤が難水溶性の場合(典型的に注射剤の好適なビヒクル)、薬剤は懸濁物又は分散物として投与する必要があり、ここで粒子サイズが再度重要な考慮事項となる。
【0012】
すなわち、特に吸入又は注射による投与のために、10μm未満、特に1μm未満のサイズを有する薬剤粒子を製造し送達するためのより簡便な一般的に適用可能な手段に対するニーズがある。
【0013】
嚢胞性繊維症(CF)は、世界中で約100,000人が罹患している寿命を短縮させる疾患である。肺機能消失の多くは緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のような病原体の肺への慢性感染が原因であり、その他は感染と炎症の循環が原因である。抗生物質を用いて継続治療を行っても微生物を完全に排除できず、従って抵抗性株となる(L. Saiman et al., Antimicrobial Agents and Chemotherapy, Oct. 2001, p. 2838-2844、及びその中の参考文献を参照)。薬剤を経口的に投与しても、標的組織中に薬剤濃度は充分高くならない場合がある。トブラマイシンのような薬剤を用いる吸入による薬剤の直接肺送達により、ある程度の改善が得られている。しかし市販のトブラマイシンのネブライザー製剤も実験的乾燥粉末吸入製剤も、充分量の薬剤を肺の深部に到達させて完全駆除を行うことができないため、耐性を引き起こす。
【0014】
カテリジジンペプチドは、CF病原体を阻害するのに有効であることが証明されている内因性抗生物質である。これらのペプチドは、肺感染の吸入治療法のための薬剤として研究されている(同上)。ペプチド薬剤は、商業的生産が困難であり、取り扱いが困難であり、特に肺送達については毒性プロファイルが不明である。
【0015】
1,25−ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)の投与が抗微生物ペプチドの遺伝子発現のインデューサーであり、かつ緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のような抗生物質耐性病原体を治療する候補となり得ることが最近証明された(Tian-Tian Wang et al., The Journal of Immunology 2004, 173:29909-2912)。
【0016】
カルシトリオールはカルシウムホメオスタシスに対するその作用がよく知られてり、約0.5〜2μgの用量で低カルシウム血症を治療するのに使用されている。より大きな用量の薬剤は、低カルシウム血症の重症の有害作用を引き起こさすことがある。一方、充分な用量が肺に達して、抗微生物ペプチドのin situでの産生を誘導するためには、薬剤の経口投与が比較的高くなければならない。従って全身性副作用を最小にしながら、充分な濃度のカルシトリオールを肺の深部まで到達させて抗微生物ペプチドを誘導する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
通常肺感染は経口抗生物質で治療されているが、そのような薬剤を吸入により肺に直接送達するための多くの研究がなされている。利用可能な1つの物質は、トブラマイシンのネブライザー製剤である(PDR 60th ed. 2006 page 1015)。アジロマイシンのネブライザー製剤についての研究も文献で見られる(A. J. Hickey et al. Journal of Aerosol Medicine, Volume 19, No. 1, 2006, pg. 54-60)。カルシトリオールは水には極めて溶けにくいため、ネブライザー製剤に特に適しているということはない。エマルジョンを調製してそれをネブライザーにより投与することが考えられるが、その場合肺に投与できる適切な界面活性剤が必要である。さらにカルシトリオールの用量は比較的少なく、エマルジョンの安定性と均一性を確保することが困難である。抗微生物ペプチド合成の誘導に必要な低用量のカルシトリオールは、カルシトリオールを乾燥粉末吸入(DPI)の候補とするであろう。再度2つの問題が存在する:いったん投与されても、カルシトリオールの不溶性のためにこれが利用できないものになることと、充分な量を肺の深部に送達する必要があることは、いつもDPIの問題である。
【0018】
明らかに、抗微生物ペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導するカルシトリオールのような化合物の肺投与の新しい方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明の1つの態様は、微粉化された薬剤微粒子を有する微粉化医薬担体を含む医薬組成物に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、微粉化された薬剤微粒子を有する医薬担体を含む吸入投与用医薬組成物に関し、ここで薬剤微粒子は約2μm以下のd50値を有する。
【0021】
本発明の別の態様は、約2μm以下のd50値を有する非機械的に微粉化された薬剤微粒子を有する注射溶液又は懸濁液への再構成に適した医薬担体を含む、注射投与用の医薬組成物に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、a)薬剤と溶融した昇華性担体との組合せを少なくとも1つの医薬担体粒子の表面上に適用し、この組合せを瞬間冷凍により固化して固溶体を得ることにより、微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を生成する工程と、b)固溶体から昇華性担体を昇華させて、薬剤の微粉化微粒子を医薬担体粒子の表面に沈着させる工程とを含む、医薬組成物の製造法に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、a)薬剤と溶融した昇華性担体との組合せを少なくとも1つの医薬担体粒子の表面上に適用し、この組合せを瞬間冷凍により固化して固溶体を得ることにより、微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を生成する工程と、b)固溶体から昇華性担体を昇華させて、薬剤の微粉化微粒子を医薬担体粒子の表面上に沈着させる工程とを含む、医薬組成物の製造法に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、a)微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を提供する工程と、b)固溶体から昇華性担体を昇華させ、こうして薬剤の微粉化微粒子を微粉化医薬担体粒子の表面に沈着させる工程とを含む方法により調製された医薬組成物に関する。
【0025】
本発明の別の態様において本発明は、a)薬剤と溶融した昇華性担体との組合せを少なくとも1つの医薬担体粒子の表面上に適用し、この組合せを瞬間冷凍により固化して固溶体を得ることにより、微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を生成する工程と、b)固溶体から昇華性担体を昇華させて、薬剤の微粉化微粒子を医薬担体粒子の表面上に沈着させる工程とを含む方法により調製された医薬組成物に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、例えば乾燥粉末、定量投与、又はネブライザーを含む公知の吸入療法(肺投与)の任意の方法により、抗微生物ペプチドの遺伝子発現を誘導する物質を肺に送達することにより、嚢胞性繊維症における肺感染を治療する方法である。
【0027】
本発明の別の態様においてペプチド遺伝子発現のインデューサーは、直径が約3000nm未満の微粒子として存在する。
【0028】
ある態様においてインデューサーはカルシトリオールである。
【0029】
本発明の別の態様は、吸入療法の任意の方法により、抗生物質又は抗真菌剤とともにインデューサーを肺に送達して、嚢胞性繊維症における肺感染を治療する方法を含む。
【0030】
別の態様において本方法は、アジスロマイシンとともにカルシトリオールを肺に送達することを含む。
【0031】
ある態様において本方法は、カルシトリオールとアジスロマイシンの両方が、直径が好ましくは3000nm未満、さらに好ましくは1000nm未満の粒子として存在することを特徴とする、乾燥粉末吸入器による送達を含む。
【0032】
本発明の別の態様は、カルシトリオールが好ましくは直径が3000nm未満、さらに好ましくは1000nm未満の粒子として存在することを特徴とする、乾燥粉末吸入器によりカルシトリオールを肺に送達するためのカルシトリオールの組成物を含む。
【0033】
本発明の別の態様は、アジスロマイシンが好ましくは直径が3000nm未満の粒子として存在することを特徴とする、アジスロマイシンを含む肺送達用組成物を含む。
【0034】
ある態様においてカルシトリオール及び/又は抗生物質粒子は、機械的には微粉化されない。ある態様において粒子は昇華微粉化により調製される。
【0035】
本発明の別の態様は、(i)アジスロマイシンを昇華性溶媒に溶解させて溶液を生成し、(ii)溶液に担体を混合し、(iii)少なくとも1つの追加の医薬添加剤を任意に加え、(iv)担体上で溶液を固溶体に固化し、及び(v)固相から昇華性溶媒を昇華させる、ことを含む肺投与用アジスロマイシンを調製する方法を含む。
【0036】
本発明の別の態様は、カルシトリオールが直径3000nm未満の粒子として存在することを特徴とする、カルシトリオールを含む組成物を含む。
【0037】
本発明の別の態様は、アジスロマイシンが好ましくは直径3000nm未満の粒子として存在することを特徴とする、アジスロマイシンを含む組成物を含む。
【0038】
本発明の別の態様は、アジスロマイシンとカルシトリオールとが直径が3000nm未満の粒子として存在することを特徴とする、アジスロマイシンとカルシトリオールとを含む組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、昇華微粉化技術を使用して医薬組成物を製造する方法に関する。昇華微粉化の一般的方法は、同時係属の本出願人による米国特許出願第10/400,100号(この公報(US2003/0224059)はその全体が本明細書で援用される)に開示されている。本公報は、昇華性担体(特にメントール)中で薬剤の固溶体を生成する工程と、昇華により固溶体から昇華性担体を除去する工程とを含む。
【0040】
本発明は、薬理活性物質(例えば薬剤)の微粒子と、及び薬剤微粒子の製造とを提供する。本発明はまた、薬理活性物質を投与するための薬剤送達ビヒクルと、かかる薬剤送達ビヒクルの製造法とを提供し、ここで送達ビヒクルは薬剤の微粒子を有する少なくとも1つの医薬担体粒子を含む。
【0041】
本発明の薬剤送達ビヒクルは、経口送達、吸入送達、鼻内送達、及び注射送達に有用である。吸入送達は、乾燥粉末吸入、定量吸入、及びネブライザー送達を含む。
【0042】
吸入による投与(送達)は、疾患の部位が肺である局所的肺症状の治療のために使用することができ、これは、肺での吸収を介して全システムに薬剤を送達する(全身性投与)方法として使用することができる。吸入によく適した組成物は、所望の空気力学的流動性を示し、肺の所望の部分での侵入と沈着を促進する空気力学的直径を有する薬剤粒子を有するものである。
【0043】
注射による投与(注射送達)は、静脈内、皮下、筋肉内、及び病巣内注射を含む。注射に適した組成物は、容易に溶液(例えば、水、食塩水、又は水エタノール溶液中)中で再構成され、安定な懸濁物を生成するものである。
【0044】
本発明の医薬中の薬剤の微粒子は後述するように生成され、一般に約50nm〜最大約10μmのオーダーの平均寸法を有する。薬剤微粒子は好ましくはd50が3μm以下であり、例えば約0.05、約1、約2、約3μm、及びこれらの範囲、例えば約0.05〜約2、約1〜約3などである。本発明の微粒子は通常の形(例えば本質的に球形)又は普通ではない形を有することもできる。微粒子は結晶性でも、又は少なくとも部分的に非晶質でもよい。好ましくは微粒子は少なくとも部分的に非晶質である。
【0045】
本明細書において、測定量に関連して用語「約」は、測定を行っており、測定の目的及び使用される器具の測定精度に合ったレベルの注意を払っている当業者により予測されるような、測定量の通常の変動を意味する。
【0046】
本発明の実施において任意の薬理活性物質(薬剤)を使用することができる。しかし水溶性の低い薬剤(難水溶性の薬剤)及びバイオアベイラビリティが比較的低い薬剤が好適であり、難水溶性の薬剤を用いることにより本発明の利点がより充分に実現される。本発明の目的において、薬剤が水1ミリリットルにつき約20mg未満の溶解度を有する場合、その薬剤は水溶性が低いと見なされる。水溶性の低い薬剤の例には、少し例を挙げると、フェノフィブレート、イトラコナゾール、ブロモクリプチン、カルバマゼピン、ジアゼパム、パクリタキセル、エトポシド、カンプトテシン、ダナゾール、プロゲステロン、ニトロフラントイン、エストラジオール、エストロン、オクスフェンダゾール、プロクアゾン、ケトプロフェン、ニフェジピン、ベラパミル、及びグリブリドがある。さらなる例には、ドセタキセル、他の細胞毒性剤、リスペリドン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、他のステロイド剤、サルブタモール、テルブタリン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、フォルモテロール、サルメテロール、及びチオトロピウムがある。水溶液の低い他の薬剤は当業者に公知である。吸入により投与すると、好適な薬剤粒子は非毒性であり、肺で充分に可溶性であり、血漿中で有効レベルの薬剤を与える。注射投与すると、好適な癌患者は非毒性であり、関連する体液中で完全に可溶性である(すなわち、少なくとも99重量%)。
【0047】
本発明の送達ビヒクルを製造するのに有用な医薬担体粒子は食用物質から作られ、当該分野で公知である。好適な担体粒子は微粒子である。有用な医薬担体粒子の例には、ノンパリール(non-pariel)ペレット、典型的には直径約0.1mm〜約2mmの粒子で、例えばデンプン、微結晶セルロース粒子、乳糖粒子、又は特に糖粒子から製造される。適切な糖粒子(ペレット、例えばノンパリール103、ヌコア(Nu-core)、ヌパリール(Nu-pariel))は、35〜40メッシュから18〜14メッシュのサイズで市販されている。
【0048】
本発明の好適な実施態様の注射又は吸入経路による投与(送達)において、乳糖、デキストラン、ブドウ糖、及びマンニトールの粒子は注射又は吸入用途に好適な医薬担体であり、乳糖粒子が最も好ましい。吸入投与のさらに好適な実施態様において、微粉化乳糖は薬剤粒子の担体として使用され、そのまま最終製品に処理されるか又はかかる処理の前に別の医薬担体とさらに混合されてから処理される。吸入及び/又は注射により投与される組成物に適した他の有用な医薬担体粒子は当業者に公知である。
【0049】
特に好適な実施態様において微粉化乳糖は、累積容量に基づいて粒子サイズ分布d50が10μm以下であり、例えば約2〜8、又は約6〜7であり、及びd90が15μm以下であり、好ましくは約10μm以下である。別の好適な実施態様において微粉化乳糖はd90が5μm未満である。用語「d50」及び「d90」は当該分野で公知である。例えば、通常認められた方法(例えばレーザー回折法)により試験する時、9μmのd90は、90%(容量)の粒子が9ミクロン以下のサイズを有することを意味する;5μmのd50は、50%(容量)の粒子が5ミクロン以下のサイズを有することを意味する。d50とd90値は当該分野で公知の種々の方法(例えばレーザー回折)により測定することができる。例えばレーザー回折の適切な方法は公知であり、種々の供給源(例えば、Malvern Instruments(U.K.))から得ることができる。本明細書において用語「平均粒子サイズ」はd50値を意味する。
【0050】
本明細書に記載の例において乳糖のd50及びd90値は、Hydro 2000S測定セルを取り付けたMalvern Mastersizer 2000を使用して、エタノール溶媒(屈折率1.36)中の乳糖の適切な屈折率(すなわち1.5)を用いて得られた。レーザー回折による粒子サイズの測定で使用される具体的なパラメータ(例えば、粒子屈折率、分散剤屈折率、及び吸収値)は、使用される溶媒と測定される具体的な粒子に依存することを当業者は理解しているであろう。例えばフルチカゾンと乳糖製剤の粒子サイズを、レーザー回折により水を溶媒として測定すると、粒子屈折率は1.500であり、吸収は0であり、分散剤の屈折率は1.330である。適切なd50及びd90値を有する乳糖粒子は、例えばFriesland Food DomoからLactohale(登録商標)として市販されている。
【0051】
微粉化乳糖にミクロン以下の粒子を結合させると、呼吸中に薬剤粒子が吐き出されるのを防ぎ、一方、溶解性が上昇するため薬剤の局所的作用と全身吸収が利用しやすくなる。多くの用途で、微粉化担体に結合されたミクロン以下の粒子の最適サイズは、呼吸中の薬剤粒子の排出を防ぐのに充分な動力学的エネルギーを与えるが、肺ではなく主要な気道(すなわち気管支)に粒子が沈着するほどの動力学的エネルギーではない。
【0052】
本発明の薬剤又は薬理活性物質の微粒子は、好ましくは昇華性担体中の薬剤の固溶体から昇華性担体を除去することにより得られる。薬剤又は薬理活性物質は分離した分子として固溶体中の昇華性担体とともに存在してもよく、又は数百、数千、又はそれ以上の分子の凝集物で存在してもよい。この薬剤は、最終的に充分小さく分離した微粒子が得られるように、分散しているか又は充分に小さければよい。好ましくは固溶体中の薬剤又は薬理活性物質は、昇華性担体中に溶解される。
【0053】
本発明の実施に有用な好適な昇華性担体は、容易に到達可能な温度で薬剤と固溶体を形成し、固溶体の融点以上の温度まで固溶体を加熱することなく、例えば昇華により固溶体から除去することができる。昇華性担体は融点以下で測定可能な蒸気圧を有する。好適な昇華性担体はその通常の融点より約10℃又はそれ以上低い温度で、少なくとも約10パスカルさらに好ましくは少なくとも約50パスカルの蒸気圧を有する。好ましくは昇華性担体は、約−10℃〜約200℃、さらに好ましくは約20℃〜約60℃、最も好ましくは約40℃〜約50℃の融点を有する。好ましくは昇華性担体は、米国の食品医薬品局により安全であると一般的に認められる(すなわちGRAS)として分類されている物質である。適切な昇華性担体の例には、メントール、チモール、樟脳、t−ブタノール、トリクロロ−t−ブタノール、イミダゾール、クマリン、酢酸(氷酢酸)、ジメチルスルホン、尿素、バニリン、カンフェン、サリチルアミド、及び2−アミノピリジンがある。メントールが特に好ましい昇華性担体である。
【0054】
本発明の固溶体は、ランダムに格子点を占める独特な化学種からなる侵入型又は置換型の真に均一結晶相として存在するか、昇華性担体中の分離した分子の分散物もしくは分子の凝集物でもよい。
【0055】
固溶体は、薬剤と溶融した昇華性担体を一緒にし、次にこの組合せ物を固溶体の融点より低い温度まで冷却することにより製造することができる。
【0056】
好ましくは固溶体は、薬剤と溶融した昇華性担体を一緒にし、この組合せ物を少なくとも1つの医薬担体粒子(好ましくは、微粉化した医薬担体粒子)に添加し、そしてこの組合せ物を固化させて、医薬担体粒子の表面で固溶体を得ることにより、生成される。
【0057】
固化は好ましくは瞬間冷凍により行われる。瞬間冷凍は好ましくは、液体窒素と、医薬担体粒子の表面上にある薬剤と溶融した昇華性担体の組合せとを混合することを含む。あるいは瞬間冷凍は好ましくは、医薬担体粒子の表面上にある薬剤と溶融した昇華性担体の組合せを液体窒素中に注ぐことを含む。最も好適な実施態様において薬剤と昇華性担体の組合せを有する医薬担体粒子の流れが、液体窒素の流れと同時に、薬剤用ミルのふるいに流される。医薬担体粒子上に沈着される薬剤と昇華性担体の組合せは瞬間冷凍され、その直後に生成物は粉砕される。
【0058】
固溶体はまた、有機溶媒中の薬剤と昇華性担体を組合せ、有機溶媒を蒸発させて昇華性担体中の薬剤の固溶体を得ることにより生成することができる。エタノールは本発明の実施で使用できる好適な有機溶媒の例である。
【0059】
固溶体はまた、薬剤と分散物を形成する化合物又はポリマーを含むことができる。固溶体に添加される好適な化合物には、界面活性剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、及び昇華性担体を適切な温度で固化させるかかるグレードと量のポロキサマーがある。好適な実施態様においてPEG1000又はそれ以上が、ポロキサマーの添加有り又は無しで使用される。さらに好適な実施態様においてPEG6000又はポロキサマー407が使用され、最も好適な実施態様においてPEG6000とポロキサマー407の両方が製剤で使用される。
【0060】
好適な実施態様において固溶体は、少なくとも1つの医薬担体粒子、好ましくは複数の医薬担体粒子の表面上、さらに好ましくは複数の微粉化した医薬担体粒子の上で形成される。例えば薬剤と担体の溶融した組合せを医薬担体粒子の表面に適用することができ、ここでこれは冷却されて医薬担体粒子の表面上に固溶体を生成する。固溶体はまた、溶媒、薬剤、及び昇華性担体の組合せを、少なくとも1つの、好ましくは複数の医薬担体粒子に適用して、有機溶媒を蒸発させて固体を得ることにより、医薬担体粒子の表面に形成することもできる。
【0061】
溶媒が使用されない場合、適用は昇華性担体の融点より高い温度で行われる。薬剤と昇華性担体は溶媒と組合わされる場合、適用は薬剤と昇華性担体が溶媒中で溶液のままであるような温度で行われる。
【0062】
本発明の微粒子は、上記したように作成した固溶体から、固溶体の融点より低い温度で昇華性担体を除去することにより形成される。固溶体は昇華性担体を除去する方法中に、固溶体を保存するためにその融点より低い温度で維持すべきである。昇華性担体は、例えば流動床ドライヤー中で空気好ましくは加熱空気の流れの中で、医薬担体粒子上に沈着された固溶体を適宜処理することにより除去することができる。
【0063】
固溶体(医薬担体粒子上に被覆されているか又は被覆されていない)からの昇華性担体の除去は、本発明の微粒子を生成させる。
【0064】
本発明の別の実施態様において薬剤の微粒子又は薬剤の微粒子を有する医薬担体粒子は医薬組成物に調製され、これは剤形、特に経口固体剤形、例えば当該分野で公知のカプセル、圧縮錠剤、乾燥粉末吸入器、定量投与吸入器、又はネブライザーにおける吸入剤形用のカプセル又は他の容器、注射溶液又は懸濁液への再構成のためのバイアル又は他の容器における粉末、粉末ベッドもしくは顆粒、及び注射用の再構成された溶液又は懸濁液にされる。注射は、例えば静脈内、皮下、筋肉内、又は病巣内注射でもよい。
【0065】
本発明に従って作成した薬剤の微粒子を有する医薬担体粒子は優れたバルク流動性を有し、直接、単独で、又は薬剤を持たない他の担体粒子とともに使用して、カプセル剤形を製造することができる。必要であれば、カプセル剤を製造する時、希釈剤(例えば乳糖、マンニトール、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム)を微粒子を有する医薬担体粒子と一緒に調製することができる。
【0066】
吸入製剤の説明では、粒子の「空気力学的直径」を参照することがしばしば有用である。本明細書において空気力学的直径は、エアゾル剤の粒子の挙動サイズを意味する。具体的にはこれは、空気力学的に試験物質の粒子のように挙動する単位密度の球の直径である。空気力学的直径は、異なるサイズ、形、及び密度の粒子を比較するために、及びかかる粒子が呼吸器管のどこに沈着するかを予測するために使用される。この用語は、実際の直径(これ自体は呼吸器管内の沈着を決定しない)の代表値である「光学的」、「実測の」、又は「幾何学的」直径と比較して使用される。
【0067】
製剤の空気力学サイズ分布及び/又は粒子サイズ分布の説明において、空気動力学的中央粒子径(mass median aerodynamic diameter;MMAD)は、50重量%の粒子が空気動力学的中央粒子径より小さく、50%の粒子がこれより大きい時の数である。幾何学的標準偏差(「GSD」)は、MMADと直径サイズ分布の84%又は16%との比に等しい無次元数である(例えば、MMAD=2m;84%=4m;GSD=4/2=2.0)。GSDとともにMMADは、粒子の重量とサイズに基づいてエアゾルの粒子サイズ分布を統計的に説明するのに使用することができる。空気力学的サイズ分布を測定するための適切な方法と器具は当該分野で公知であり、例えば多段階液体インピンジャー(MSLI)がある。
【0068】
本明細書に記載の例では空気力学的サイズ分布は、Copley Scientificから供給されたMSP Corp.のNew Generator Impactor(NGI)を流速100リットル/分、サンプリング時間2.4秒でPCH Cyclohalerとともに使用して得られた。
【0069】
微粒子用量(「FPD」)は、例えばMSLI又はMGI試験で示されるような供給用量で微粒子(一般に5μm未満)中に存在する活性薬剤成分の量を意味する。
【0070】
微粒子率は、微粒子用量と供給用量との比を意味する。一般的に当業者により肺の奥深くに到達すると推定されているのは、ある用量中の活性薬剤成分のこの比率(パーセント)である。
【0071】
本発明はさらに、日和見肺感染に罹っている嚢胞性線維症患者のかかる感染を吸入療法により治療するための肺送達用の組合せであって、微粒子、特に平均寸法が約3000nm、好ましくは約1000nm未満のビタミンD化合物の微粒子、特に医薬担体粒子に沈着したか又は運搬されるカルシトリオール又はそのプロドラッグを含む上記組合せを提供する。この組合せはまた、抗真菌剤又は抗微生物剤を含む。
【0072】
本発明はまた、抗微生物ペプチドをコードする遺伝子、好ましくはヒト遺伝子のインビボ発現を誘導することができる化合物(本明細書においてインデューサー化合物と呼ぶ)の微粒子と;医薬担体粒子と;場合により、抗微生物剤又は抗真菌剤の少なくとも1つ又は両方との組合せを提供する。この組合せはそのまま又は医薬組成物の一部として使用され、好ましくは3000nmより小さく、さらに好ましくは1000nmより小さい(粒子が大きい方が有効性は低い)微粒子の形のインデューサー化合物を肺に送達することができる。
【0073】
この組合せはまた、製造又は保存中にこの組合せ又はその一部を安定化させるために添加剤(例えば抗酸化剤)のような他の成分を含有することもできる。この組合せはまた、医薬として許容される賦形剤を含む医薬組成物を含むか又は医薬組成物に調製することもできる。
【0074】
当業者であれば、抗微生物性タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導することができる多くの化合物を知っており、そのすべてが本発明の範囲内である。ビタミンD化合物、特に抗微生物性タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導することができるカルシトリオール又はその類似体もしくはプロドラッグは、本発明の実施において好適なインデューサー化合物である。
【0075】
カルシトリオールは以下の構造を有する。
【化1】

【0076】
ある実施態様においてインデューサー化合物(好ましくはカルシトリオール)は、好ましくは昇華微粉化により生成される、好ましくは3000nmより小さく、さらに好ましくは1000nmより小さいサイズの微粒子として前記組合せ中に存在する。
【0077】
カルシトリオールは抗微生物ペプチドを生成するための遺伝子発現を誘導するため、抗生物質活性の作用の開始が遅延することがある。また微生物感染の背後に日和見真菌感染があることもある。従って本発明のある実施態様において、肺への送達のためのカルシトリオールは抗生物質又は抗真菌剤と一緒にされる。ある実施態様においてこの組合せは、当該分野で公知のような抗微生物剤を含む。アジスロマイシンは、この使用のため及び本発明の他の実施態様に好適な抗微生物剤である。
【0078】
嚢胞性線維症の肺感染を治療する方法は、吸入法、例えば乾燥粉末、定量投与、又はネブライザーのいずれかによりカルシトリオールを肺に送達することを含む。本発明の好適な実施態様においてカルシトリオールは、ナノ粒子として、すなわち3000nmより小さい粒子、さらに好ましくは1000nmより小さいサイズの微粒子として送達されるであろう。小さい粒子は肺中により深く運搬され、ネブライザー治療では届かない肺の部分も治療すると考えられる。同時に、より小さい粒子はカルシトリオールを肺内に溶解していくが、大きなタンパク質は溶解性が低いかほとんど不溶性であろう。しかし環境及び取り扱いによる分解に対するカルシトリオールの感受性を考慮すると、記載の粒子サイズを有するカルシトリオールを製造することは簡単なことではない。
【0079】
本発明の組合せは、上記した昇華微粉化の方法により作成することができる。この方法は、光、酸素、及び特に熱により容易に分解されるカルシトリオールのようなインデューサーで使用するのに特に有利である。
【0080】
本発明の方法での使用に適した昇華性溶媒及び医薬担体粒子は上記した。本発明のこの実施態様において乳糖は好適な担体粒子であり、5μm〜500μm、さらに好ましくは約50〜150μmの粒子サイズを有する。
【0081】
好適な実施態様において組合せは、インデューサー化合物(例えばカルシトリオール)と抗微生物組成物(例えばアジスロマイシン)との両方を含む。より好適な実施態様においてカルシトリオールとアジスロマイシンは、これらの2つの薬剤を一緒に昇華性溶媒に溶解し、乳糖もしくは他の許容されている賦形剤担体上で昇華微粉化を行うことにより、DPI用に調製され、その結果両方の薬剤はナノスケール薬剤として存在する。より好適な実施態様において両方の薬剤は、3000nm未満、さらに好ましくは2000nm未満、最も好ましくは約1000nm未満のサイズで存在する。ある好適な実施態様において製剤に抗酸化剤が添加され、別の好適な実施態様において許容される界面活性剤が単独で又は抗酸化剤とともに加えられる。
【0082】
別の実施態様において本発明は、乾燥粉末吸入によりカルシトリオールを肺に送達するためのカルシトリオールの組合せ又は組成物を提供する。ある実施態様においてカルシトリオールは、許容される担体物質(例えば乳糖)上に沈着される。医薬担体は微粉化されるか、又は微粉化担体との混合物中にある。カルシトリオールの用量は好ましくは0.1〜10マイクログラム、さらに好ましくは0.5〜5マイクログラム、最も好ましくは約2マイクログラムのカルシトリオールである。好適な実施態様においてカルシトリオールは直径が3000nm未満の粒子として存在し、より好適な実施態様では粒子サイズが2000nm未満、最も好ましくは1000nm未満である。医薬担体上にカルシトリオールを調製するための好適な方法は、上記したように昇華微粉化法である。好適な実施態様において組成物はさらに、抗生物質又は抗真菌剤を含む。より好適な実施態様において抗生物質はまた、3000nm未満、2000nm未満、又は1000nm未満の粒子である。より好適な実施態様において抗生物質はアジスロマイシンである。最も好ましい実施態様においてカルシトリオールとアジスロマイシンは乳糖上で一緒に昇華微粉化され、ここで両方とも平均粒子サイズは1000nm未満である。カルシトリオールの好適な用量は0.1〜10マイクログラム、さらに好ましくは0.5〜5マイクログラム、最も好ましくは約2マイクログラムのカルシトリオールであり、アジスロマイシンの好適な用量は5〜20mg、最も好ましくは約10〜15mgである。抗酸化剤と界面活性剤は任意の添加剤である。
【0083】
本発明の組合せはまた他の添加剤を含有してもよい。これらの任意の医薬添加剤には、吸入投与用にそれを含有する組合せ又は医薬組成物の適切性を改良するように、抗酸化剤と界面活性剤、すなわち表面張力や接触角度のような性質を修飾する化合物を含む。本発明の好適な実施態様において固化工程は、好ましくは液体窒素と混合することにより又は液体窒素中に注ぎ入れることにより、溶液を瞬間冷凍して行われる。本発明の最も好適な実施態様において、カルシトリオールと他の添加剤とが溶解している溶融溶媒との担体の溶融混合物の流れが、液体窒素の流れと同時に医薬ミルのふるいに流される。溶融溶媒は瞬間冷凍され、その直後に生成物が粉砕される。最も好適な実施態様において抗生物質又は抗真菌剤は、カルシトリオールとともに溶融した昇華性溶媒に加えられる。最も好適な実施態様においてこの抗生物質はアジスロマイシンである。
【0084】
別の実施態様において本発明は、アジスロマイシンが好ましくは直径3000nm未満の粒子として存在するアジスロマイシンを含む組成物を含む。本発明はまた、乾燥粉末吸入により肺にアジスロマイシンを送達するためのアジスロマイシンの組合せ又は組成物を含む。ある実施態様においてアジスロマイシンは許容される担体物質(例えば乳糖)上に沈着される。医薬担体は微粉化されるか、又は微粉化担体との混合物中でもよい。
【0085】
以下の番号を付けた例は本発明の好適な実施態様のいくつかを例示する。
【0086】
第1の実施態様において本発明は、日和見肺感染に罹っている嚢胞性線維症患者のかかる感染を吸入療法により治療するための肺送達用の組合せであって、この組合せは、微粒子、特に平均寸法が約3000nm、好ましくは約1000nm未満のビタミンD化合物の微粒子、特に医薬担体粒子に沈着したか又は運搬されるカルシトリオール又はそのプロドラッグを含む上記組合せを提供する。この組合せは好ましくは、抗真菌剤又は抗微生物剤も含む。
【0087】
第2の実施態様において本発明は、ビタミンD化合物が1,25−ジヒドロキシカルシフェロールとしても知られているカルシトリオールである第1の実施態様の組合せを提供する。
【0088】
第3の実施態様において本発明は、微粒子が昇華微粉化の方法により生成される第1又は第2の実施態様のいずれかの組合せに関し、ここで微粒子は、昇華性担体、特にメントール、t−ブタノール、又はメントールとt−ブタノールの混合物をビタミンD化合物の固溶体から昇華させることにより、及び任意に、昇華性担体中の1つ又はそれ以上の抗微生物剤、抗細菌剤、抗真菌剤、又はこれらの組合せの固溶体を昇華することにより生成される。
【0089】
第4及び第5の実施態様において本発明は、昇華性担体がメントールである第3の実施態様の組合せに関し、抗微生物剤、特にアジスロマイシン(第4の実施態様)を含むか、又は抗真菌剤(第5の態様)を含む。
【0090】
第6の実施態様において本発明は、担体粒子が糖粒子、好ましくは乳糖粒子である第1〜第5の実施態様のいずれの組合せを提供する。
【0091】
第7の実施態様において本発明は、嚢胞性線維症を有し日和見肺感染に罹っている患者の日和見肺感染を、患者に本発明の実施態様の組合せを単独又は医薬組成物で投与することにより治療する方法に関する。
【0092】
第8の実施態様において本発明は、嚢胞性線維症に罹っている哺乳動物特にヒトに、吸入により投与するのに適した組合せを製造する方法であって、その組合せは日和見肺感染を治療するのに有効であり、その方法は、昇華性担体好ましくはメントール中のビタミンD化合物好ましくはカルシトリオールの固溶体を提供する工程(該固溶体は抗微生物剤、抗真菌剤、又は両方を含む)と、昇華により昇華性担体を除去する工程とを含むことを特徴とする上記方法を提供する。
【0093】
第9の実施態様において本発明は、提供される固溶体が瞬間冷凍により例えば溶融溶液を液体窒素又は固体二酸化炭素(これ自体が昇華する)と組合せることにより、得られる第8の実施態様の方法を提供する。抗微生物ペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導する他の化合物は、本発明においてその任意の実施態様でビタミンD化合物の代わりに使用することができる。
【0094】
本発明をさらに以下の限定的でない例を用いて例示する。
【実施例1】
【0095】
実施例1−メントール中の選択された薬剤の溶解度
【0096】
以下の一般的方法を、いくつかの薬剤とメントール担体を用いて繰り返した。
【0097】
メントール(10グラム)を攪拌ホットプレート上で磁気攪拌しながら溶融させ、次に表1に示す所望の温度まで加熱した。所望の薬剤を少量ずつ(約0.1グラム)加え、攪拌して清澄な溶液を得た。所望の薬剤をメントールに溶けなくなるまで少しずつ加えた。まだ清澄な溶液を与えるメントール溶融物に加えた物質の重量を、記載の温度での活性薬剤の溶解度とした。結果を表1に示す。
【表1】

【実施例2】
【0098】
実施例2−「メントール微粉化」によるフェノフィブレートの溶解の改良
【0099】
メントール(50グラム)をジャケット付き反応槽中で60℃に加熱した。溶融後、溶融物を100rpmで攪拌した。フェノフィブレート(25グラム)を加え、混合物を完全に溶解するまで60℃で100rpmで攪拌した。微結晶セルロース(Avicel ph102、55グラム)を溶融物に加え、混合物を30分攪拌した。次に熱源を除去し、塊を100rpmでさらに30分攪拌して室温まで冷却した。
【0100】
得られた塊を6.35mmふるいでQuadro Comilミルで1300rpmで粉砕した。粉砕した生成物を25℃まで冷却し、再度1.4mmふるいで粉砕して、フェノフィブレートがメントールに溶解され微結晶セルロース上に被覆された粉末を得た。
【0101】
粉末を流動床ドライヤー(AeromaticモデルSTREA1)に移し、ここでメントールを30〜32℃でファンを7〜8Nm3/時間で3時間乾燥することにより除去した。粉末(62グラム)が得られた。この粉末は、微結晶セルロース上に沈着された微粉化フェノフィブレートであった。
【0102】
100mgのフェノフィブレートを含有するこの粉末試料を、USP Apparatus II溶解テスターで水中0.5%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)900mlで37℃、100rpmで溶解について試験した。溶解媒体中のフェノフィブレートをHypersil(R) ODSカラムのHPLCで286nmでのUV検出を用いて試験した。結果を表2に示す。メントール法により微粉化したフェノフィブレートは2時間で100%の溶解を与えた。フェノフィブレート(対照、メントールから沈着されていない)と微結晶セルロースとの同等の単純な組合せは、3時間で40.2%の溶解を与え、一方微結晶セルロースと混合した機械的に微粉化したフェノフィブレート含量は3時間で72.1%の溶解を与えた。
【表2】

【実施例3】
【0103】
実施例3−「メントール微粉化」による塩化オキシブチニンの溶解の改良
【0104】
メントール(80グラム)を溶融し、塩化オキシブチニン(8グラム)と微結晶セルロース(89.5グラム)を加え、実施例2のように処理して、微結晶セルロース上の微粉化塩化オキシブチニンの粉末を得た。
【0105】
この粉末(100mgの活性薬剤を含有する粉末試料)から塩化オキシブチニンの溶解をUSP Apparatus II溶解テスターで100mlの50mMリン酸緩衝液(pH=6.8)で37℃、50rpmで試験した。溶解試料のオキシブチニン含量を225nmで分光光度計により測定した。結果を表3に示す。溶解は3時間で79.2%に達した。塩化オキシブチニン含量とメントール微粉化法で処理しなかった微結晶セルロースとの同等の単純な組合せは、3時間で22.1%の溶解を与えた。
【表3】

【実施例4】
【0106】
実施例4−メントール微粉化によるリスペリドンの溶解の改良
【0107】
メントール(50グラム)を溶融し、リスペリドン(4.5グラム)と微結晶セルロース(62.5グラム)を加え、実施例2の方法に従って処理した。得られた粉末(50mgのリスペリドンを含有する)をUSP Apparatus II溶解テスターで900mlの水を使用して37℃、100pmで試験した。溶解試料中のリスペリドンの濃度を分光光度計を使用して240nmで測定した。
【0108】
メントール微粉化粉末と、対照のリスペリドンと微結晶セルロース(メントールのように処理していない)の単純な組合せとの溶解の結果を表4に示す。メントールで沈着したリスペリドンは30分で100%の溶解を与え、一方対照混合物は30分で31.9%で3時間で64.7%を与えた。
【表4】

【実施例5】
【0109】
実施例5−メントール微粉化によるシクロスポリンの溶解の改良
【0110】
メントール(80グラム)を溶融し、シクロスポリン(20グラム)と微結晶セルロース(100グラム)を加え、実施例2のように処理した。この粉末の試料(10mgのメントール微粉化シクロスポリンを含有する)をUSP Apparatus II溶解テスターで900mlの水中の溶解について37℃、100pmで測定した。溶解試料中のシクロスポリン含量を分光光学的に215nmで測定した。メントール沈着物質とシクロスポリンと微結晶セルロース(メントールのように処理していない)の対照混合物の溶解を表5に示す。
【0111】
メントールから沈着したシクロスポリンを有する粉末からのシクロスポリンの溶解は、対照(単純な組合せ)の約2倍であり、最大溶解はより短い時間で達成された。
【表5】

【実施例6】
【0112】
実施例6(比較)−メントール微粉化によるイトラコナゾール中の改良の試み
【0113】
メントール(92グラム)を実施例2のように溶融させた。イトラコナゾール(3.6グラム)を加え、溶融物中によく混合した。イトラコナゾールは60℃でメタノール中の溶解度がわずかに1%であるため、溶液は生成されなかった(表1を参照)。メタノール中のイトラコナゾールの懸濁液に微結晶セルロース(90グラム)を加え、混合物を実施例2のように処理した。0.1N HCl 900ml中に100mgの薬剤を含有する粉末試料から、USP Apparatus II溶解テスターを使用して37℃、100pmでイトラコナゾールの溶解を測定した。溶解したイトラコナゾールを251nmで分光光学的に測定した。溶解の結果を表6に示す。溶解は30分で約8%であり、3時間で同じであった。イトラコナゾールと微結晶セルロース(メントールのように沈着していない)の対照単純混合物は本質的に同じ結果(3時間で7.8%)を与えた。
【表6】

【実施例7】
【0114】
実施例7−メントール微粉化ドセタキセルの溶解
【0115】
メントール(5.0g)をホットプレート上で溶融させた。PEG6000(50mg)とポロキサマー407(50mg)を加え、均一溶液を得た。ドセタキセル(100mg)を加え、混合物中に完全に溶解した(注:ドセタキセルは添加剤無しでもメントール溶融物中で可溶性なため、所望であれば添加の順序を変えて、まずドセタキセルをメントールに溶解し、次にPEG6000とポロキサマー407を加えてもよい)。乳糖(1.0g)を加え、攪拌してほぼ均一の懸濁液を得た。こうして得られた懸濁液をフリーザーに入れて、乳糖担体と混合した固溶体を得た。乳糖の代わりに微結晶セルロースを使用した別の試料を調製した。機械的に粗く粉砕した後、固体を真空オーブン又は凍結乾燥機に入れ、20〜40度の温度でメントールを除去した。乳糖又は微結晶セルロース上のメントールで微粉化したドセタキセルの粉末を得た。
【0116】
これらの粉末からのドセタキセルの溶解を、乳糖上の2% PVPで顆粒化したドセタキセルAPIの溶解に対して試験した。溶解は900mlの13%エタノール水溶液中でUSP Apparatus II溶解テスターで37℃、50rpmで測定した。結果を表7と図1に示す。
【表7】

【実施例8】
【0117】
実施例8:メントール微粉化を使用して作成したベクロメタゾンの吸入製剤
【0118】
ここに記載した実験では、Beclomethasone cyclocaps 400μgの製造についてメントール微粉化を行った。通常の製造法では、微粉化活性成分は高剪断ミキサーで乳糖一水和物(これは担体として使用される)と混合される。粉末混合物を硬シェルカプセルに充填する。
【0119】
通常の方法で製造した生成物の微粒子の空気力学評価を、メントール微粉化後に得られたベクロメタゾン原料を含有するカプセルと比較する。この実験で以下の物質を使用した。
・ベクロメタゾン二プロピオン酸塩、Sicor Italy、バッチP304736、レーザー粒子サイズ分布:d10=1μm、d50=2μm、d90=3μm;
・乳糖一水和物微粒、Borculo The Netherlands、レーザー粒子サイズ分布:d50=5μm、d90=9μm;
・乳糖一水和物 DMV The Netherlands、広い分布。
【0120】
使用される一般的方法は以下の通りである。具体的な実施例を以下に記載する。
【0121】
一般的方法:
【0122】
50℃の水浴を使用してL−メントールを溶解する。溶融したメントール中でベクロメタゾンの原料を溶解する。微粉化した乳糖一水和物(Microfine、Borculo)を加え、均一になるまで混合する。懸濁液を室温まで冷却する。得られた混合物を粉砕する。凍結乾燥機中で昇華して混合物からメントールを除去する。
【0123】
メントール微粉化後に得られたベクロメタゾン粒子を有する微粉化乳糖一水和物を用いて、1バッチのBeclomethasone cyclocaps 400μgを調製する。通常のシクロ乳糖混合物(乳糖一水和物 DMV)を用いて調製を完了する。総バッチサイズ400g(=16,000カプセル)。
【0124】
粉末混合物をサイズ3の硬シェルカプセルに充填する。カプセルを密封する。両方の調製物の力価と微粒子用量(FPD)を測定する。結果を比較する。
【0125】
具体的な実験の詳細は以下の通りである。
【0126】
具体的実施例
75.0gのL−メントールを水浴を使用して50℃で溶融させた。7.5g量のベクロメタゾン二プロピオン酸塩を秤量し、溶融メントール中に溶解させた。清澄な溶液が得られた後、40.8gの微粉化乳糖一水和物を分散させた。懸濁液を室温で固化させ、次におろしふるい(1.5mm)を使用して粉砕した。粉末をガラストレイに充填し、凍結乾燥機に入れた。表8に記載のプログラムを使用してメントールを昇華させた。
【表8】

【0127】
バッチID601.16の調製:凍結乾燥ベクロメタゾン/微粉化乳糖一水和物混合物を通常のシクロ乳糖(非微粉化)混合物と高剪断ミキサー中で混合した。混合前にすべての成分をあらかじめ0.7mmふるいでふるいにかけた。粉末混合物をサイズ3のゼラチンカプセルに充填した。各カプセルは25mgの粉末混合物を含有した。生成物の組成を表9に示す。カプセルをゼラチンバンドで密封し、25℃/60%RHで24時間保存した。
【0128】
バッチID601.015、Beclomethasone cyclocaps 400μgの調製:メントール微粉化法で使用した微粉化乳糖の量を補償するために、追加の微粉化乳糖一水和物を用いて通常のベクロメタゾン混合物を作成した。活性成分をまず微粉化乳糖一水和物と用手法で混合し、次に通常シクロ乳糖と高剪断混合した。混合前にすべての成分をあらかじめ0.7mmふるいでふるいにかけた。25mgの粉末混合物をサイズ3のゼラチンカプセルに充填した。カプセルを密封後、25℃/60%RHで24時間保存した。
【表9】

【0129】
両方のバッチの力価と微粒子用量(FPD)を測定した。
【0130】
図2は、両方のバッチの二重測定による空気力学的サイズ分布を示す。表10は両方のバッチの分析結果を示す。空気力学的サイズ分布は、Copley Scientificから供給されたMSP Corp.のNew Generator Impactor(NGI)を使用して、流速100リットル/分、サンプリング時間2.4秒でPCH Cyclohalerとともに使用して得られた。
【0131】
メントール微粉化活性物質を含有するカプセルの力価は少し低かった。これは、溶液の調製に不慣れなためかも知れない。このために、これらのカプセルの微粒子用量も小さかった。しかし測定は方法の実行可能性を示す。
【0132】
結果は、FPDはまた微粉化乳糖の粒子サイズ分布(PSD)により制限されることを示す。ベクロメタゾン原料は乳糖に強く結合する。
【表10】

【実施例9】
【0133】
実施例9:ビーグル犬における乾燥粉末吸入(DPI)により送達されるフルチカゾンの肺送達と全身性送達の比較
【0134】
A:乳糖上のプロピオン酸フルチカゾンの製造
【0135】
100gの溶融メントール(60℃)に0.5gのHPCLFを加えた。清澄な溶液が生成するまで、混合物を攪拌した。この加熱溶液に0.5gのプロピオン酸フルチカゾン(Teva API-Sicor Mexico)粉末を加え、ほとんど清澄な溶液が生成するまで溶液を2時間攪拌した。4.0gの微粉化乳糖粉末(Teva API d(0.1)1.99μ、d(0.5)6.65μ、d(0.9)14.63μ)を加え、乳糖の均一懸濁液が得られるまで10分間攪拌した。
【0136】
懸濁液を冷却し、液体窒素中で粗く粉砕した。メントール昇華のために固体をトレイに入れた(35℃、0.2mbarで13時間、38℃、0.2mbarで4時間)。昇華物中残存メントール含量は0.1%w/wを超えなかった。
【0137】
昇華物(1.0g)を吸入用の4.0gの乳糖(Respitose SV003、DMV)と混合装置中で1分間混合した。混合した粉末をまず150μ、次に75μの金属ふるいでサイズ分別した。混合とふるいプロセスを繰り返した。最終生成物は12.5mgの粉末混合物中で250μgのプロピオン酸フルチカゾンを含有した。
【0138】
試料を水に分散し乳糖を溶解(Mastersizer 2000、Malvern)後の活性物の粒子サイズ分布は、d(0.1)0.07μm、d(0.5)0.16μm、及びd(0.9)1.9μmであった。
【0139】
粉末をカプセル(ゼラチン、サイズ3)に充填した後、生成物の性質をNGI Impactor(Cyclohaler)で調べた。
供給用量:196μg
プレセパレーターを通過した総活性物:109μg
微粒子画分≦5μm:83.1μg
【0140】
B:肺沈着と血漿中薬物動態の試験
本試験の目的は、ビーグル犬の肺組織と血液中の、250μgのプロピオン酸フルチカゾンの調製物と市販の製品 Fixotide Diskus 250μgとの相対的バイオアベイラビリティを比較することであった。両方の場合に、薬剤調製物(粉末)を気管内チューブを介して吸入経路により送達した。肺沈着と以後の肺からの全身性吸収について新しい調製物を市販の製品に対して試験した。
【0141】
肺沈着は、この薬剤の改良された送達の尺度となり、全身性吸収は、「昇華微粉化」プロセスにより処理した時薬剤について得られる肺からの改良された全身性吸収のモデルとなる。この改良された調製物(DPI用の乳糖上のプロピオン酸フルチカゾン−Teva)の製造は、上記セクションAに記載されている。
【0142】
試験施設:チャールズリバーラボラトリーズ(Charles River Laboratories、Tranent、Edinburgh、UK)。
【0143】
試験した製品:
1)試験
a)活性成分−プロピオン酸フルチカゾン
b)説明−DPI用の乳糖上のプロピオン酸フルチカゾン−Teva、ガラスバイアル中の粉末
c)薬剤含量−12.5mgの粉末につき250μg
d)バッチ番号−MPL−80
2)参照
a)活性成分−プロピオン酸フルチカゾン
b)説明−Fixotide Diskus 250μg(GSK)(ブリスターから取り出す)
c)薬剤含量−12.5mgの粉末につき250μg
d)バッチ番号−0806
【0144】
試験動物の数:4〜6ヶ月齢の5匹のオスのビーグル犬、それぞれ6〜8kg、2群に分ける(動物1〜5 試験、動物6〜10 参照)
【0145】
試験計画−
【表11】

【0146】
投与:麻酔下で気管内チューブ挿管により、吸入投与を行った。試験する調製物を皿に秤量し、そこから気管内チューブを介して気管支まで挿入したPennCentury(登録商標)送達器具を介して薬剤を肺に投与した。試験調製物と参照調製物のそれぞれ12.5mgを、呼吸の開始と一致する自動ソレノイドバルブを使用して投与した。フェーズAでは各イヌにその群の調製物を投与し、血液試料を採取した。10日間の回復/ウォッシュアウト期間後、フェーズBでイヌに同じ方法で再投与して肺沈着を調べた。各投与後、送達器具を取り外し、10mlの酢酸緩衝液:メタノール:アセトニトリル(40:30:30)で洗浄した。洗浄液を採取し、分析して投与用量のうち送達器具中に残った割合を調べた。このデータを使用して、薬物動態計算で投与用量について補正した。
【0147】
血液サンプリング:投与前、投与終了(約5分)、10、15、30、60分、2、4、8、24時間に1.5mlの全血試料を適切な静脈から採取して、リチウムヘパリンチューブに移した。3000rpm、4℃で15分遠心分離して血漿を分離した。認証されたHPLC MS/MS法を使用して分析するまで−80℃で血漿を凍結した。
【0148】
肺サンプリング:フェーズBで調製物投与の5分後、フェノバルビトンナトリウムの静脈内過量投与と次の主要な血管の切断により、動物を安楽死させた。肺を取り出し、肺葉に分離し、均一にし、認証されたHPLC MS/MS法を使用して分析するまで−80℃で血漿を凍結保存した。
【0149】
結果
【0150】
表11は、吸入により試験調製物を投与された動物の血漿中のフルチカゾンレベルの分析から得られた結果を時間の関数として示し、表12は、参照調製物を投与された動物についての同じデータを示す。表13は、表11と12のデータから計算された薬物動態パラメータを示す。
【表12】

【0151】
【表13】

【0152】
【表14】

【0153】
表11と12の比較は、試験調製物からのフルチカゾンの吸収は全実験を通して血漿中の高い薬剤レベルを与えることを明瞭に示す。特に顕著なことは5分時点での比較であり、参照調製物はフルチカゾンの吸収を示さないのに、試験調製物はかなりの吸収を示す。これらの結果は、試験調製物が参照調製物よりも肺の深部でより利用し易くかつより可溶性であることを意味する。
【0154】
表11と12のデータの定性的解釈は、表13の計算された薬物動態パラメータにより行われる。試験調製物は参照調製物より多くの薬剤を器具から送達した(190μg対140μg)。試験調製物の曲線下の面積(AUC)は参照調製物の2倍以上(0.791ng*h/ml対0.321ng*h/ml)であり、最大濃度(Cmax)は3倍以上であった(0.472ng/ml対0.136ng/ml)。
【0155】
表14は試験調製物を投与されたイヌの肺の種々の肺葉中のフルチカゾンのデータを集めたものであり、表15は参照調製物を投与されたイヌの同じデータを示す。
【表15】

【0156】
【表16】

【0157】
これらの2つの表に示したデータは再度、参照調製物に対する試験調製物の顕著な利点を示す。各肺葉において、参照調製物と比較して試験調製物の2〜3倍の利点があった。試験調製物の総肺沈着は、5匹のイヌのうち4匹について12〜18μgであり、1匹はわずかに2.4μgの沈着であった。参照調製物について値は3〜9μgであった。試験調製物の総肺沈着の平均値は12.2μg(1匹の低値を無視すると14.7μg)であり、参照調製物について肺沈着の平均は5.2μgであった。従って試験調製物は参照調製物の2倍以上の肺沈着を有する。
【実施例10】
【0158】
実施例10:抗酸化剤を有するメントール中のカルシトリオール
【0159】
メントール(12グラム)を50℃で溶融させ、窒素流を1時間パージした。抗酸化剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(267mg)とブチル化ヒドロキシアニソール(267mg)をメントール溶融物に加えた。メントール溶融物を窒素下ですべての抗酸化剤が溶解するまで攪拌した。溶融にカルシトリオール(267mg)を加え、これを窒素下ですべてが溶解するまで攪拌した。容器を気密密閉した。室温(RT、約25℃)まで冷却すると、容器中でメントール溶液が固化した。得られた生成物を容器中で−20℃で保存した。
【実施例11】
【0160】
実施例11:メントール中のアジスロマイシン
【0161】
メントール(10グラム)を攪拌ホットプレート上で磁気攪拌しながら溶融させ、次に表1に示す所望の温度まで加熱した。アジスロマイシンを少量ずつ(0.1グラム)加え、攪拌して清澄な溶液を得た。これ以上薬剤がメントール中に溶解しなくなるまで薬剤を少量ずつ加えた。まだ清澄な溶液を与えたメントール溶融物に加えた物質の重量を、記載の温度で活性薬剤の溶解度とした。アジスロマイシンについての結果を以下に示す。
【表17】

【実施例12】
【0162】
実施例12:吸入用の乳糖上のアジスロマイシン
表17の2つの調製物は以下のように調製した。
【0163】
メントールを攪拌して溶融させた。ヒドロキシプロピルセルロースLFとアジスロマイシンを加え、すべてが溶解するまで混合物を攪拌した。乳糖画分を加え、均一な懸濁液が得られるまで攪拌した。混合物を液体窒素流とともに粉砕機のふるい上に注ぐことにより瞬間冷凍し、凍結溶液を小さく粉砕した(<1mm)。凍結乾燥機中で混合物からメントールを昇華させた。
【表18】

【0164】
乳糖とHPCが溶解するがアジスロマイシンが固体状態で留まるようにアジスロマイシン飽和水中で、粒子サイズ用Malvernレーザー光分散装置中で、粒子サイズについて2つのバッチを試験した。粒子はまた「New Generation Impactor」(NGI)器具上で測定し、ここで器具の種々のステージプレート上でHPLCにより総FPFを測定した。NGIは吸入のモデルとなり、ここで生成物を「Cyclohaler」DPI装置に充填し、空気流中で試験した。結果を表18に示す。
【表19】

【0165】
両方のバッチのアジスロマイシンは、マイクロメートルサイズの粒子を生成し、粒子の50%はそれぞれ5.2又は6.6μmより小さかった。より大きな比のメントールで処理された物質は、より小さい粒子画分を与えた。溶液の粒子サイズ測定の結果は、固相状態NGI結果に反映され、バッチ1はバッチ2より小さい粒子の割合が大きかった。
【実施例13】
【0166】
表19に示した調製物は実施例12に示した方法と同じ方法により製造される。より小さい粒子を得るためにメントールの量を増やす。乳糖を加える前に、カルシトリオールと抗酸化剤を加える。製造される調製物は、25mgの乳糖の各DPI用量について2.5mgのアジスロマイシンと2μgのカルシトリオールを含有する。
【表20】

【0167】
混合した活性成分は0.8μmのD(0.5)を有し、各活性成分は別々にNGI試験で>50% FPFを有し、ここで各活性物質は種々のステージでHPLCにより別々に測定される。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の医薬組成物として調製されたドセタキセルの溶解度を、従来法で調製されたドセタキセルを含有する医薬組成物の溶解度と比較するグラフである。
【図2】本発明と、従来法とにより調製されたBeclomethasone cyclocaps(400μg)の空気力学的サイズ分布を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉化された薬剤微粒子を有する微粉化医薬担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
微粉化医薬担体が、乳糖、デキストラン、ブドウ糖、マンニトール、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
微粉化医薬担体が乳糖を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
微粉化医薬担体が本質的に乳糖からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
微粉化乳糖が粒子サイズ分布d50が5μm以下である、d90が9μm以下であり、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
微粉化乳糖は粒子サイズ分布d90が5μm以下であり、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項7】
吸入による投与に適している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬剤微粒子がd50値が約2μm以下であり、組成物は吸入による投与に適している、微粉化された薬剤微粒子を有する医薬担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
微粉化された薬剤微粒子はd50値が約50nm〜約2μmである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
微粉化された薬剤微粒子が非機械的に微粉化した薬剤微粒子である、請求項1又は8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
非機械的に微粉化した薬剤微粒子が、ドセタキセル、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、サルブタモール、テルブタリン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、フォルモテロール、サルメテロール、トブラマイシン、及びチオトロピウムよりなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
非機械的に微粉化した薬剤微粒子がドセタキセル、ベクロメタゾン、又はフルチカゾンである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬担体が微粉化されている、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
非微粉化医薬担体をさらに含む、請求項1又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
薬剤微粒子がプロピオン酸フルチカゾンである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
プロピオン酸フルチカゾンのd50値が約0.1μm〜約0.5μmである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
プロピオン酸フルチカゾンのd50値が約0.1μm〜約0.2μmである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
微粉化担体が乳糖である、請求項15又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
乳糖のd50値が約2μm〜約8μmである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
乳糖のd50値が約4μm〜約7μmである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
乳糖のd50値が約6μm〜約7μmである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
乾燥粉末吸入による投与に適している、請求項1〜6及び8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
医薬組成物の製造法であって、
a)薬剤と昇華性担体との固溶体を医薬担体粒子の表面上に提供する工程と、
b)固溶体から昇華性(sublimable)担体を昇華させ、こうして薬剤の微粉化微粒子を医薬担体粒子の表面に沈着させて、d50値が約2μm以下である、微粉化された薬剤微粒子を有する医薬担体を得る工程とを含んで成る、上記方法。
【請求項24】
微粉化された薬剤微粒子のd50値が約50nm〜約2μmである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
医薬担体が微粉化されている、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
2μm未満のd50値を有する非機械的に微粉化された薬剤微粒子を有する注射溶液又は懸濁液への再構成に適した医薬担体を含む、注射投与用の医薬組成物。
【請求項27】
非機械的に微粉化した薬剤微粒子が、ドセタキセル、リスペリドン、エトポシド、カンプトテシン、ダナゾール、プロゲステロン、及びドキソルビシンよりなる群から選択される、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
非機械的に微粉化した薬剤微粒子がドセタキセルの粒子である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
医薬担体が、乳糖、デキストラン、ブドウ糖、マンニトール、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項30】
医薬担体が乳糖を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項31】
医薬担体が本質的に乳糖からなる、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項32】
界面活性剤、ポリエチレングリコール、及びポロキサマーよりなる群から選択される1つ又はそれ以上の添加剤をさらに含む、請求項26〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
ポリエチレングリコールがPEG1000とPEG6000から選択され、ポロキサマーがポロキサマー407である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
微粉化された薬剤微粒子が、昇華性担体中の薬剤の固溶体から医薬担体上に沈着される、請求項1〜6、8〜9、13、又は26〜31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
医薬組成物の製造法であって、
a)微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を提供する工程と、
b)固溶体から昇華性担体を昇華させ、こうして薬剤の微粉化微粒子を微粉化医薬担体粒子の表面に沈着させる工程とを含む上記方法。
【請求項36】
固溶体が薬剤を溶融した昇華性担体と組合せて、この組合せを固化することにより製造される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
薬剤と溶融した昇華性担体との組合せは瞬間冷凍により固化される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
瞬間冷凍が、液体窒素と、微粉化した医薬担体粒子の表面上の薬剤と溶融した昇華性担体の組合せとを混合することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
瞬間冷凍が、微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と溶融した昇華性担体の組合せとを、液体窒素中に注ぐことを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
固溶体が、薬剤と昇華性担体とを有機溶媒と組合せ、次に有機溶媒を除去することにより調製される、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
溶媒がエタノールである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
薬剤が、ドセタキセル、ベクロメタゾン、フルチカゾン、ブデソニド、サルブタモール、テルブタリン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、フォルモテロール、サルメテロール、トブラマイシン、及びチオトロピウムよりなる群から選択される、請求項35〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
昇華性担体が、メントール、チモール、樟脳、t−ブタノール、トリクロロ−t−ブタノール、イミダゾール、クマリン、酢酸(氷酢酸)、ジメチルスルホン、尿素、バニリン、カンフェン、サリチルアミド、及び2−アミノピリジンよりなる群から選択される、請求項35〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
微粉化した医薬担体粒子が、乳糖、デキストラン、ブドウ糖、マンニトール、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項35〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
微粉化した医薬担体粒子が乳糖を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
微粉化した医薬担体粒子が本質的に乳糖からなる、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
微粉化乳糖のレーザー粒子サイズ分布d50が5μm以下であり、d90が9μm以下である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
微粉化乳糖のレーザー粒子サイズ分布d90が5μm以下である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
微粉化医薬担体が非微粉化医薬担体と混合される、請求項35〜41又は45〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
昇華性担体が、固溶体を有する微粉化した医薬担体粒子を流動床ドライヤー中で固溶体の融点より低い温度で処理することにより昇華される、請求項35〜41又は45〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
医薬組成物の製造法であって、
a)薬剤と溶融した昇華性担体との組合せを少なくとも1つの医薬担体粒子の表面上に適用し、この組合せを瞬間冷凍により固化して固溶体を得ることにより、微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を生成する工程と、
b)固溶体から昇華性担体を昇華させて、薬剤の微粉化微粒子を医薬担体粒子の表面上に沈着させる工程とを含む、上記方法。
【請求項52】
瞬間冷凍が、液体窒素と、医薬担体粒子の表面上にある薬剤と溶融した昇華性担体の組合せとを混合することを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
瞬間冷凍が、医薬担体粒子の表面上にある薬剤と溶融した昇華性担体の組合せを液体窒素中に注ぐことを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
以下の工程を含む方法により製造される医薬組成物:
a)薬剤と昇華性担体との固溶体を微粉化医薬担体粒子の表面上に提供する工程、及び
b)固溶体から昇華性担体を昇華させ、こうして薬剤の微粉化微粒子を微粉化医薬担体粒子の表面に沈着させる工程。
【請求項55】
微粉化した医薬担体粒子が、乳糖、デキストラン、ブドウ糖、マンニトール、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
微粉化した医薬担体粒子が乳糖を含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項57】
以下の工程を含む方法により製造される医薬組成物:
a)薬剤と溶融した昇華性担体との組合せを少なくとも1つの医薬担体粒子の表面上に適用し、この組合せを瞬間冷凍により固化して固溶体を得ることにより、微粉化医薬担体粒子の表面上の薬剤と昇華性担体との固溶体を生成する工程、及び
b)固溶体から昇華性担体を昇華させて、薬剤の微粉化微粒子を医薬担体粒子の表面上に沈着させる工程とを含む工程。
【請求項58】
瞬間冷凍が、液体窒素と、医薬担体粒子の表面上にある薬剤と溶融した昇華性担体の組合せとを混合することを含む、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
微粉化した医薬担体粒子が、乳糖、デキストラン、ブドウ糖、マンニトール、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項60】
微粉化した医薬担体粒子が乳糖を含む、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項61】
請求項1〜6、8〜9、又は54〜60のいずれか1項に記載の医薬組成物を吸入により投与することを含む治療法。
【請求項62】
請求項26〜31、又は54〜60のいずれか1項に記載の医薬組成物を注射により投与することを含む治療法。
【請求項63】
請求項1〜22、26〜34、及び54〜60のいずれかに記載され、前記薬剤を含有する医薬組成物を、当該薬剤の血漿レベルの上昇が必要な患者に投与することを含む、患者の薬剤の血漿レベルを上昇させる方法。
【請求項64】
ビタミンD化合物の微粒子と医薬として許容される担体の粒子とを含む、肺送達用組成物。
【請求項65】
ビタミンD化合物の微粒子が平均粒子サイズが約3000nm未満である、請求項64に記載の組成物。
【請求項66】
ビタミンD化合物の微粒子が平均粒子サイズが約1000nm未満である、請求項64に記載の組成物。
【請求項67】
ビタミンD化合物がカルシトリオール又はそのプロドラッグである、請求項64に記載の組成物。
【請求項68】
抗真菌剤又は抗微生物剤をさらに含む、請求項64に記載の組成物。
【請求項69】
昇華微粉化により製造される、請求項64〜68のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項70】
請求項69に記載の組成物であって、昇華微粉化は、
a)ビタミンD化合物と、医薬として許容される担体と、昇華性担体との固溶体を提供し、そして
b)固溶体から昇華性担体を昇華させて組成物を生成することを含む方法により行われる上記組成物。
【請求項71】
昇華性担体が、メントール、t−ブタノール、又はメントールとt−ブタノールとの混合物である、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
固溶体が、少なくとも1つの抗微生物剤、少なくとも1つの抗真菌剤、又はこれらの両方をさらに含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
昇華性担体がメントールであり、固溶体は抗微生物剤をさらに含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
抗微生物剤がアジスロマイシンである、請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
医薬担体が糖である、請求項64〜74のいずれかに記載の組成物。
【請求項76】
糖が乳糖である、請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
請求項64〜76のいずれかに記載の組成物を患者に投与することを含む、嚢胞性線維症を有し日和見肺感染に罹っている患者の日和見肺感染を治療する方法。
【請求項78】
以下の工程を含む、医薬組成物の製造法:
a)ビタミンD化合物と、医薬として許容される担体と、昇華性担体との固溶体を提供し、そして
b)固溶体から昇華性担体を昇華させて医薬組成物を生成する。
【請求項79】
昇華性担体が、メントール、t−ブタノール、又はメントールとt−ブタノールとの混合物である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
昇華性担体がメントールである、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
固溶体が、少なくとも1つの抗微生物剤又は抗真菌剤をさらに含む、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
固溶体が瞬間冷凍により得られる、請求項78〜82のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
吸入によりカルシトリオールを肺に送達することを含む、嚢胞性線維症に関連する肺感染を治療する方法。
【請求項85】
カルシトリオールが粒子型であり、当該粒子が約3000nm未満の直径を有する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
粒子が約1000nm未満の直径を有する、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
カルシトリオールが医薬として許容される担体の粒子との組成物中で送達される、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
カルシトリオールが抗生物質又は抗真菌剤との組成物中で送達される、請求項84〜87のいずれかに記載の方法。
【請求項89】
抗生物質がアジスロマイシンである、請求項88の方法。
【請求項90】
以下を含む肺送達用のカルシトリオールを製造する方法。
a)カルシトリオールを昇華性溶媒に溶解させて溶液を生成させ;
b)溶液を医薬として許容される担体と混合し;
c)任意に少なくとも1つの医薬添加剤を溶液に加え;
d)担体上で溶液を固化して固溶体とし;そして
e)昇華性溶媒を昇華させる。
【請求項91】
抗生物質又は抗真菌剤は昇華性溶媒中でカルシトリオールとともに溶解される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
抗生物質がアジスロマイシンである、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
昇華性溶媒がメントール又はt−ブタノールである、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
医薬添加剤が、医薬として許容される界面活性剤、医薬として許容される抗酸化剤、又は医薬として許容されるポリマーである、請求項90〜93のいずれかに記載の方法。
【請求項95】
医薬として許容されるポリマーがポリエチレングリコール又はポロキサマーである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
担体が乳糖である、請求項90〜95のいずれかに記載の方法。
【請求項97】
吸入により抗生物質を肺に送達することを含む嚢胞性線維症の患者の肺感染を治療する方法であって、当該抗生物質が粒子型であり、当該粒子が約3000nm未満の直径を有することを特徴とする上記方法。
【請求項98】
粒子が約1000nm未満の直径を有する、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
吸入が乾燥粉末吸入による、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
カルシトリオールが医薬として許容される担体との組成物中で送達される、請求項97〜99のいずれかに記載の方法。
【請求項101】
医薬として許容される担体が微粉化されている、請求項100に記載の組成物。
【請求項102】
微粉化医薬担体が非微粉化医薬担体と混合される、請求項101に記載の組成物。
【請求項103】
微粉化医薬担体が乳糖である、請求項100又は101に記載の組成物。
【請求項104】
抗生物質がアジスロマイシンである、請求項97〜103のいずれかに記載の方法。
【請求項105】
アジスロマイシンが粒子型であり、当該粒子が約3000nm未満の直径を有することを特徴とする、アジスロマイシンを含む肺送達用組成物。
【請求項106】
粒子が約1000nm未満の直径を有する、請求項105に記載の組成物。
【請求項107】
アジスロマイシンが医薬として許容される担体に結合している、請求項105に記載の組成物。
【請求項108】
医薬として許容される担体が微粉化されている、請求項107に記載の組成物。
【請求項109】
微粉化医薬担体が非微粉化医薬担体と混合される、請求項108に記載の組成物。
【請求項110】
微粉化医薬担体が乳糖である、請求項108又は109に記載の組成物。
【請求項111】
医薬として許容される界面活性剤と抗酸化剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項106〜110のいずれかに記載の組成物。
【請求項112】
界面活性剤がポリソルベート、ポロキサマー、ラウリル硫酸ナトリウム、又はドクセートナトリウムである、請求項111に記載の組成物。
【請求項113】
アジスロマイシンが機械的微粉化によっては製造されてはいない、請求項105〜112のいずれかに記載の組成物。
【請求項114】
アジスロマイシンの粒子が昇華微粉化により製造される、請求項105〜113のいずれかに記載の組成物。
【請求項115】
以下を含む、肺送達用のアジスロマイシンを製造する方法:
a)アジスロマイシンを昇華性溶媒に溶解させて溶液を生成させ;
b)溶液を担体と混合し;
c)任意に少なくとも1つの医薬添加剤を加え;
d)担体上で溶液を固化して固溶体とし;そして
e)昇華性溶媒を昇華させる。
【請求項116】
昇華性溶媒がメントール又はt−ブタノールである、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
医薬添加剤が、医薬として許容される界面活性剤、医薬として許容される抗酸化剤、又は医薬として許容されるポリマーである、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
医薬として許容されるポリマーがポリエチレングリコール又はポロキサマーである、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
担体が乳糖である、請求項115〜118のいずれかに記載の方法。
【請求項120】
アジスロマイシンが粒子型であり、粒子は約3000nm未満の直径を有する、アジスロマイシンを含む組成物。
【請求項121】
粒子が約1000nm未満の直径を有する、請求項120に記載の組成物。
【請求項122】
アジスロマイシンが粒子型であり、粒子は約3000nm未満の直径を有する、カルシトリオールを含む組成物。
【請求項123】
粒子が約1000nm未満の直径を有する、請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
アジスロマイシンとカルシトリオールがそれぞれ粒子型であり、粒子は約3000nm未満の直径を有する、アジスロマイシンとカルシトリオールとを含む組成物。
【請求項125】
粒子が約1000nm未満の直径を有する、請求項124に記載の組成物。
【請求項126】
ビタミンD化合物の微粒子の少なくとも99%が約3000nm未満の直径を有する、請求項64〜76又は122〜125のいずれかに記載の組成物。
【請求項127】
ビタミンD化合物の微粒子の少なくとも99%が約1000nm未満の直径を有する、請求項64〜76又は122〜125のいずれかに記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−532489(P2009−532489A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504340(P2009−504340)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/008685
【国際公開番号】WO2007/117661
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】