説明

薬剤感受性試験用バイオチップ

【課題】薬剤感受性試験用バイオチップを提供する。
【解決手段】(1)第1の液体注入口から流路内に架橋アルブミン溶液を送液し、細胞培養部に設けられた溝部又は孔部以外の表面を細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムでコーティングする工程、(2)第2の液体注入口から、標的細胞懸濁液を送液し、細胞非接着性になっていない溝又は孔部のみに細胞を付着させる工程、(3)前記標的癌細胞が3次元的に増殖するまで培養液を送液して培養を行い、溝部又は孔部内に多層状に標的細胞が付着した標的細胞付着領域を形成する工程、(4)前記標的細胞付着領域に接した細胞非接着性領域を細胞接着性に変換する工程、(5)第3の液体注入口から、細胞培養部内に補助細胞懸濁液を送液することで、細胞培養部内の標的細胞付着領域に接した細胞接着性領域のみに補助細胞を付着させ、補助細胞付着領域を形成する工程。を含む細胞培養用マイクロ流路デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な流路デバイス内の所望の位置に複数種の細胞を配置する技術と濃度勾配形成や3次元培養を可能とするデザインの流路を単独、もしくは、組み合わせて利用することで、微量の細胞であっても抗癌剤等の薬剤感受性試験を効果的に実施できる方法、及びその方法により得られた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療において抗癌剤は今や欠かせないものでありその貢献は計り知れないが、抗癌剤の処方において難しい点は、同じ薬物であっても個々人の体質に応じて薬効や副作用の大小が異なることであり、患者によっては全く薬効が現れず、副作用のみが見られる場合があり大きな問題となっている。この問題を解決する1つの方法として、抗癌剤を投与する前に、その抗癌剤が個々の患者に有効な薬剤であるかどうかを判別する抗癌剤感受性試験があり、一部実践されてきた。抗癌剤感受性試験の具体的な手順は、患者から癌の一部を切り取ってきて、マルチウェルなどの培養皿の中に入れ、色々な種類の抗癌剤を投与する。効く抗癌剤を加えた培養皿では癌細胞は死ぬが、効かない抗癌剤を加えた培養皿では生き残るので、有効な抗癌剤と無効な抗癌剤を区別できる、といった流れである。現在日本で実施されている主な方法として、SDI法やCD-DST法があり(非特許文献1)、特許においても抗癌剤感受性試験に関して幾つかの方法が出願されている(特許文献1〜3)。しかし、共通の大きな問題は、患者から採取した癌細胞が体外ではあまり増殖せず、かつ、死にやすいことであり、試験に必要な細胞量を十分に確保することが難しいケースが多いことから、感受性試験を実施することができなかったり、検討できる薬剤の条件(種類や濃度など)が限られてしまうなどの事態を引き起こしている。
そこで、患者への負担を少しでも軽くするために、できるだけ少ない細胞量で行うことのできる効果的な抗癌剤感受性試験が強く望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−76355号公報
【特許文献2】特開2000−217570号公報
【特許文献3】国際公開WO95/18216号公報
【特許文献4】特開2008−174714号公報
【特許文献5】特開2009−131241号公報
【特許文献6】特開2003−285298号公報
【特許文献7】特開2008−132543号公報
【特許文献8】特開2009−109401号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tetsuro Kubota, Jpn J Cancer Chemother, Vol.35, 174-177, 2008
【非特許文献2】Whitesides G.M. et al. Anal. Chem., 2001年、73巻、p.1240-1246.
【非特許文献3】馬場嘉信、バイオインダストリー、Vol.24, pp.5-11, 2007
【非特許文献4】Indraccolo S. et al., Cancer. Res. 2009年, 69巻, p.1314-1323
【非特許文献5】Yamazoe H.et al, Acta Biomaterialia, 2010, Vol.6, 526-533
【非特許文献6】Okuyama T. et al., Microflow System for Cell Micropatterning and Assays under Concentration Gradients, Proceedings of The 9 th Asian-Pacific International Symposium on Microscale Separations and Analysis & The 1st Asian-Pacific Interbational Symposium on Lab-on-Chip, pp.178, 2009.10.
【非特許文献7】Okuyama T. et al.,Microfluidic Cell Culture System for Cytotoxicity and Migration Assays, Proceedings of The Tissue Engineering and Regenerative Medicine International Society World Congress 2009, pp.836, 2009.8
【非特許文献8】Okuyama T. et al.,Microfluidic Channel for Cellular Micropatterning and Assay of Concentration-Gradient-Induced Migration. Proceedings of The 14th Symposium of Young Asian Biochemical Engineers' Community, pp.85, 2008.11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来法に比べてより少ない細胞量であっても効果的な抗癌剤感受性試験が実施できる方法、及びその方法を実施するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来下記(1)〜(3)の細胞培養用マイクロ流路デバイスに関する技術を開発し報告してきた(非特許文献5〜8)。
(1)ナノ・マイクロテクノロジーを駆使して作製されるマイクロ流路デバイス(特許文献6〜8,非特許文献2)を使用する。
(2)本発明者らが以前に発明した架橋アルブミンフィルム(特許文献4,5)を用いることで細胞接着性を制御することができるので、当該フィルムを利用し、流路デバイス内の所望の位置に2種類の細胞、例えば癌細胞と癌細胞の生存をサポートする細胞を並べて配置する。上記フィルムを用いる細胞接着性の制御方法によれば、マイクロスケールで細胞が接着できる領域を作り出すことができるので、もともと微小な流路デバイスの極めて限定された位置にのみ少量の細胞を配置することができる。
(3)最低限必要な細胞量を流路の特定の位置に配置した後、流路デバイスのデザインを工夫することで抗癌剤の濃度勾配を作り出し、この抗癌剤の濃度勾配下で細胞を培養する。
本発明者は、このような本発明者らが従来開発してきた細胞培養用マイクロ流路デバイス(非特許文献5〜8)を組み合わせて利用して微量の細胞による精度の高い抗癌剤感受性試験の実施を行うことを発想し、精度の高い抗癌剤感受性試験を開発した。そしてさらに上記(2)の架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することによる3次元的細胞培養法の工夫により、癌細胞を本来の癌組織に近い3次元の状態で培養することが可能となり、実際の生体の癌組織の薬物応答との一致性が向上した試験結果を得ることができた。
本発明で細胞培養用マイクロ流路デバイスを抗癌剤感受性試験に用いたことで、細胞培養用マイクロ流路デバイスにおける上記の(1)〜(3)の各特徴点が、本発明において目的とする抗癌剤感受性試験にとってきわめて有効に作用したことは驚くべきことであった。
具体的には、上記(1)の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いたことで、試験に必要な癌細胞や抗癌剤の量を減らすことができた。
また、(2)の架橋アルブミンフィルムによる細胞接着性を制御することにより、流路デバイス内の所望の極めて限定された位置に少量の癌細胞と並べて癌細胞の生存をサポートする細胞を配置することができるため、癌細胞の生存率の向上を図ることができ、同時に、より本来の癌組織に近い形態となり、実際の生体の癌組織の薬物応答との一致性が向上した試験結果を得ることができる。
そして、(3)本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスの濃度勾配形成部を、抗癌剤の濃度勾配を作り出すために利用することで、癌細胞を抗癌剤の濃度勾配下で培養することが可能となり、1つの培養皿に相当する細胞量であっても極めて多くの濃度に対する細胞応答を同時に検討することができることになった。
細胞は互いに栄養を供給し合っているので、体外での培養において良好に生存させるためには、ある程度の量の細胞を纏めて培養する必要がある。従来の96ウェルなどのマルチウェルを用いた試験においては、1つの培養皿に最低限必要な細胞量を入れ、特定の濃度を有する抗癌剤を加えて試験するために、10種類の濃度を検討するためには、10個の培養皿分に相当する細胞量が必要となっていたが、このような濃度勾配を設けた抗癌剤の供給法により、1度に多くの濃度に対する細胞応答が同時に検討できる。
更に、本発明においては、上記(2)の架橋アルブミンフィルムによる細胞接着性制御技術を用い、流路の細胞培養部を立体的にパターニングすることで、癌細胞を本来の癌組織に近い3次元の状態で培養し、その周囲に癌細胞の生存や機能をサポートする細胞を配置することができた。このような本来の癌組織に近い3次元の状態で培養された癌細胞に対して、抗癌剤評価を行うことが可能になったため、より実際の生体の癌組織の薬物応答との一致性が向上した試験結果を得ることができた。
【0007】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
〔1〕 複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に細胞培養部が形成されており、当該細胞培養部は、当該領域内にあらかじめ設けられた溝部又は孔部内で、標的細胞が多層状に付着した状態に形成されている標的細胞付着領域を有し、かつ当該領域に接して補助細胞付着領域を有していることを特徴とする細胞培養用マイクロ流路デバイスの製造方法であって、下記工程(1)〜(5)を含む方法;
(1)第1の液体注入口から流路内に架橋アルブミン溶液を送液し、細胞培養部に設けられた溝部又は孔部以外の表面を細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムでコーティングする工程、
(2)第2の液体注入口から、標的細胞懸濁液を送液し、細胞非接着性になっていない溝又は孔部のみに細胞を付着させる工程、
(3)前記標的癌細胞が3次元的に増殖するまで培養液を送液して培養を行い、溝部又は孔部内に多層状に標的細胞が付着した標的細胞付着領域を形成する工程、
(4)前記標的細胞付着領域に接した細胞非接着性領域を細胞接着性に変換する工程、
(5)第3の液体注入口から、細胞培養部内に補助細胞懸濁液を送液することで、細胞培養部内の標的細胞付着領域に接した細胞接着性領域のみに補助細胞を付着させ、補助細胞付着領域を形成する工程。
〔2〕 前記工程(4)において、細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムの1部領域をカチオン性ポリマーにより細胞接着性に変換する方法を採用する際に、マイクロ流路によりカチオン性ポリマーの溶液を層流状態で流路の細胞培養部の一部領域のみに送液し、その領域のみを細胞接着性領域へと変換することを特徴とする、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に細胞培養部が形成されており、当該細胞培養部は、当該領域内にあらかじめ設けられた溝部又は孔部内で、標的細胞が多層状に付着した状態に形成されている標的細胞付着領域を有し、かつ当該領域に接して補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、前記〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、細胞培養用マイクロ流路デバイス。
〔4〕 前記〔3〕に記載の細胞培養用マイクロ流路デバイス内の流路に培養液を送液することによる標的細胞の培養方法。
〔5〕 前記培養液が、あらかじめ含有成分又は成分濃度が異なるように少なくとも2種類以上調製されており、それぞれ異なる液体注入口から同時に注入され、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により濃度勾配を有する培養液として細胞培養部内に供給されることを特徴とする、前記〔4〕に記載の標的細胞の培養方法。
〔6〕 前記〔5〕に記載の培養方法に用いることができる細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、複数の液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイス。
〔7〕 複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、液体注入口から検薬剤を溶液又は懸濁液として送液し、一定期間培養後に標的細胞の生存率を測定することを特徴とする、標的細胞に対する被検薬剤の細胞毒性もしくは細胞増殖能の阻害活性、または細胞増殖能の促進活性の評価方法。
〔8〕 細胞培養用マイクロ流路デバイスとして、前記〔3〕に記載の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いることを特徴とする、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕 前記液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、かつ供給される前記被検薬剤が、あらかじめ含有成分又は成分濃度が異なるように少なくとも2種類以上調製されており、それぞれ異なる液体注入口から同時に注入され、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により濃度勾配を有する被検薬剤として細胞培養部内に供給されることを特徴とする、前記〔7〕又は〔8〕に記載の方法。
〔10〕 複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、かつ前記液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、被検薬剤の高濃度含有溶液を1つの液体注入口から注入すると同時に、被検薬剤の低濃度含有溶液もしくは被検薬剤のみを含まない同一成分溶液を他の液体注入口から注入し、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により濃度勾配を有する被検薬剤含有液として細胞培養部内に供給し、一定期間培養後、被検薬剤の濃度勾配に応じた標的細胞の生存率を測定することを特徴とする、標的細胞に対する被検薬剤の殺細胞剤もしくは細胞増殖阻害剤、又は細胞増殖細胞活性剤としての有効量の評価方法。
〔11〕 複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、かつ前記液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、あらかじめ複数種類の被検薬剤含有溶液を用意し、それぞれの種類の被検薬剤含有溶液をそれぞれ異なる液体注入口から同時に注入し、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により複数の被検薬剤の組み合わせのそれぞれが濃度勾配を有する状態で細胞培養部内に供給し、一定期間培養後、複数の被検薬剤の組み合わせそれぞれの濃度勾配に応じた標的細胞の生存率を測定することを特徴とする、標的細胞に対する複数の被検薬剤における殺細胞剤もしくは細胞増殖阻害剤、又は細胞増殖細胞活性剤としての最適な配合割合の評価方法。
〔12〕 複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、被検物質を溶液又は懸濁液として液体注入口から送液し、一定期間培養後の標的細胞の生存率を測定することにより、標的細胞に対する被検物質の細胞毒性もしくは細胞増殖能の阻害活性、または細胞増殖能の促進活性を評価する工程を含む、殺細胞剤もしくは細胞増殖阻害剤、又は細胞増殖細胞活性剤のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、これまで試験が困難であった被検細胞が微量の場合であっても抗がん剤の評価試験が実施できるようになることは大きな進歩であり、効果的な抗癌剤の処方が行われることで、副作用の回避や無効な薬剤の投与を止めることによる医療費削減などが期待できる。また、より少ない細胞量で薬物試験が可能であるため、従来のように大きな手術によってたくさんの癌細胞を採取する必要がなく、内視鏡などで採取される微小な癌組織であっても試験が実施できることから患者の負担を大きく減らすことができる。また、本システムは、抗がん剤の評価のみでなく細胞の生育、増殖を抑制または促進する物質の評価試験にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)】マイクロ流路デバイス内における細胞のパターンニング(実験例1)
【図1(b)】マイクロ流路デバイス内における細胞のパターンニング(実験例1)
【図2】マイクロ流路デバイスを用いた濃度勾配形成(実験例2)
【図3(a)(b)】濃度勾配形成流路による細胞薬物試験(実験例3)
【図3(c)(d)】濃度勾配形成流路による細胞薬物試験(実験例3)
【図4(a)(b)】マイクロ流路デバイス内における3次元細胞パターンニング(実施例1)
【図4(c)(d)(e)】マイクロ流路デバイス内における3次元細胞パターンニング(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本発明における細胞培養用マイクロ流路デバイス
近年、ガラスやポリマー製の基板上に微細な流路や反応層を構築した「マイクロ流路デバイス」の開発研究が盛んであり、多種多様な製造方法が知られており、その用途も化学反応、分離、分析用など種々の用途開発が進んでいる(非特許文献3)。典型的な製法としては、樹脂基板に半導体技術等を応用したパターンを形成する手法があり、マイクロオーダーでの流路が自由自在に形成可能である(特許文献6〜8など)。
本発明において用いる「細胞培養用マイクロ流路デバイス」は、複数個の液体注入部、細胞培養部、及び液体排出部が設けられ、それぞれを結ぶ流路により形成され、全長0.1 cm〜100cm、好ましくは1cm〜10cmであり、各流路幅は、細胞培養部では50μm〜3000μm、好ましくは100μm〜5000μm、他の流路幅は1μm〜1000μm、好ましくは10μm〜300μmであり、高さは10μm〜1000μm、好ましくは30μm〜300μmである。
本発明の実施の態様では、市販されているポリジメチルシロキサン(PDMS)溶液(信越化学社製など)を使用説明書に従い、望みのデザインの鋳型に流し込み固めることで様々なデザインを有するマイクロ流路デバイスのパーツを作製する。その後、鋳型からはがしたパーツに酸素プラズマ処理を施し、ガラス基板に貼り付けることでマイクロ流路デバイスを完成させ実験に用いている。
【0011】
2.架橋アルブミンフィルムによる細胞接着性の制御
本発明において、マイクロ流路デバイスの流路表面のうち、少なくともその細胞培養部の流路の表面には細胞非接着性の架橋アルブミンフィルム層が設けられている。当該架橋アルブミンフィルム層は、特許文献4又は5に詳細に記載されている方法に従って作製することができるが、具体的な作製方法は以下の通りである。
(1)まず、血清アルブミンをエチレングリコールジグリシジルエーテルにより架橋後、グリセリン、糖類又はポリエチレングリコールから選ばれる保水性可塑剤を加えた架橋アルブミン溶液をろ過滅菌後、流路デバイス内に送液することで、流路内を細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムでコーティングする。
ここで、血清アルブミンは血清中のみならず、肺、心臓、汗、唾液などにも存在することが知られており、血清由来のアルブミンに限定されず、由来生物もヒトのみならずウシ、ウマなどの各種哺乳動物に由来するものでよいが、微量で正確な解析に用いるためには、市販のウシ血清アルブミンなどの均質な精製品が好ましい。
また、エチレングリコールジグリシジルエーテルに代えて、エチレングリコール単位の繰り返し数が8以下であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いることもできる。
(2)次いで、流路デバイス内の細胞培養部に相当する領域の流路に沿った1部の領域表面のみを、細胞非接着性から細胞接着性へと変換する。
架橋アルブミン表面の細胞接着性への変換方法としては、UV光などの光照射、加熱処理などの通常のタンパク変性処理や、タンパク変性剤などの化学薬品溶液への曝露などがある。UV光など光照射を用いる場合は、特定の部分のみ光が通過するようにデザインされたマスクを介して光照射を行なうなどの方法で照射部を限定することにより、特定の領域のみを細胞接着性に変換できる。例えば、流路に沿って中心部にスリットを有するマスクを用いた光照射により、細胞培養部の流路に沿った細長い領域のみを細胞接着性に変換することができ、スリットの幅を調節することで標的細胞を付着させるための領域の幅が調節できる。また、化学薬品溶液により変換させる場合は、化学薬品溶液を、両サイドから緩衝液(例えばリン酸緩衝液)で挟んで層流状態で流し、細胞培養部で合流させることで、細胞培養部の流路に沿った中央部領域のみを化学薬品溶液で暴露することができるから、当該領域のみを選択的に細胞接着性に変換できる。その際、両サイドの緩衝液(又は水)の流量を調節することで、細胞接着性変換領域の位置や幅を適宜変更することができる。流量の調節は流速を変化させることで調節可能である。その際に採用される流速の範囲は0.05〜20μl/min、好ましくは0.5〜3μl/minである。
用いる化学薬品溶液としては、細胞非接着性を有するアルブミンフィルムを細胞接着性へと変換し得るものであればどのようなものでもよく、例えば、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドなどの架橋剤溶液、グアニジン塩酸塩、尿素などのタンパク質の変性を促す溶液、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒の他、正電荷を有する高分子化合物溶液などが挙げられ、それらを組み合わせた混合溶液として用いることもできる。ここで、正電荷を有する高分子化合物としては天然物でもよいが、タンパク質、多糖類、脂質、合成ポリマーなどに対して、正電荷を有する官能基を共有結合を介して導入したり、イオン結合を介して正電荷を担持させるなどの手段により正電荷を付加したものであってもよい。典型的には、ポリエチレンイミン、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのいわゆるカチオン性ポリマーが挙げられ、その低濃度溶液を用いる。ここで、低濃度溶液とは、例えばポリエチレンイミン(数平均分子量;6万、重量平均分子量;75万)の場合であれば1×10−2%から1×10−4%であり、他のポリマーにおいてもこれと同程度の電荷量を有する濃度が最適である。
(3)次に、標的癌細胞などの標的細胞含有培養液を送液して、細胞培養領域中に新たに作り出した細胞接着領域に標的細胞を付着させた後に、当該標的細胞の付着領域を挟み込む領域を接着性に変換する。その際、UV照射などの光照射を用いる場合には、既に表面に付着している標的細胞領域を保護し、その両脇スリットから光照射が可能にデザインされたマスクを用いることで、標的細胞領域を挟む両脇の領域のみを細胞接着性に変換することができる。また、化学薬品溶液を送液して細胞接着性に変換する場合は、両サイドに送液される緩衝液の流量を調節して標的細胞領域の両脇領域のみを化学薬品溶液で暴露するか、もしくは、標的細胞領域も含んだ全領域を曝露すればよい。全領域を曝露する場合には、用いる化学薬品溶液としては既に存在している標的細胞を傷害しない溶液を用いる必要があり、典型的には、上記(2)で述べたポリオルニチン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどの正電荷を有する高分子化合物の低濃度溶液を用いる。
【0012】
3.本発明において対象とする標的細胞及び補助細胞について
本発明において対象とする標的細胞としては、付着性の株化された哺乳動物細胞、癌細胞、または、神経、内皮、皮膚、肺、筋肉、腎臓、肝臓、腸など由来の初代培養細胞などが用いられるが、哺乳類の細胞以外も用いることができ、その生物種は問わない。例えば、昆虫細胞、植物細胞などであってもよく、細菌、酵母などの微生物細胞であってもよい。また、遺伝子導入した組み換え体細胞や幹細胞から分化誘導して作り出した細胞なども使用することができる。典型的には各種癌細胞であり、そのような癌細胞としては、癌患者から採取された初代癌細胞、株化された癌細胞、または、癌幹細胞も含む。また、ヒト以外の動物の癌細胞も含み、幹細胞から人為的に作製されたものであってもよい。また、細胞増殖剤の評価対象として典型的な細胞は、各生物種由来のES細胞,組織幹細胞、iPS細胞等の各種幹細胞、BまたはTリンパ球などの免疫細胞である。
また、本発明における補助細胞とは、標的細胞の生存や機能をサポートする細胞のことをいう。このような性質を有する細胞であればどのような細胞でもよく、標的細胞によって適宜選択することができる。これら補助細胞は当業者には周知であり、例えば、癌、または、癌幹細胞が標的細胞の場合には、ストローマ細胞、内皮細胞、間質細胞、肝実質細胞が標的細胞の場合は、血管内皮細胞、胆管上皮細胞、繊維芽細胞、神経細胞が標的細胞の場合には、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどが補助細胞として用いられる。
【0013】
4.本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイス及び当該流路デバイスを用いた培養方法
(4−1)本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスの製造方法
本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスは、液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に細胞培養部が形成されており、当該細胞培養部はその1部領域として標的細胞付着領域を有し、かつ当該領域に接して補助細胞付着領域を有している。
その製造方法は、下記工程(1)〜(5)を含む方法として表すことができる。(なお、第1〜第3の液体注入口を同一の注入口とすることができる。)
(1)第1の液体注入口から流路内に架橋アルブミン溶液を送液し、流路内を細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムでコーティングする工程、
(2)前記流路表面の架橋アルブミンフィルムの1部領域のみを細胞接着性に変換する工程、
(3)第2の液体注入口から細胞培養部内に標的細胞懸濁液を送液することで、細胞培養部内の細胞接着性領域のみに標的細胞を付着させ、標的細胞付着領域を形成する工程、
(4)前記標的細胞付着領域に接した領域を細胞接着性に変換する工程、
(5)第3の液体注入口から細胞培養部内に補助細胞懸濁液を送液することで、細胞培養部内の標的細胞付着領域に接した細胞接着性領域のみに補助細胞を付着させ、補助細胞付着領域を形成する工程。
【0014】
(4−2)細胞培養部への標的細胞及び補助細胞の設置
標的細胞を、前記2.の工程(2)により流路デバイス内の細胞培養部中に新たに作り出された細胞接着領域に付着させるためには、当該工程(2)に続き、標的細胞含有培養液を送液する工程を設ければよい。ここで、細胞接着領域といっても送液している段階で細胞が接着するわけではなく、細胞を接着させるためには懸濁状態の細胞が沈降して細胞接着性領域に一定時間(通常30分〜2時間)滞留させておく必要があることからみて、前記2.の工程(2)において、化学薬品溶液を送液して細胞接着性に変換する手法を採用した場合であっても、当該溶液の注入口と同一の注入口を用いても流路内に細胞が接着してしまう心配はないが、タンパク質成分などを通過させることで詰まりやすくなり、また、送液する液の種類を変更する手順において流路内に泡が混入しやすくなる不都合もあるため、別の注入口から直接細胞培養部に標的細胞含有培養液を送液することが好ましい。
また、標的癌細胞の生存をサポートする補助細胞の付着方法も同様であり、前記2.の工程(3)で、標的細胞付着領域の両脇に新たに作り出した細胞接着領域のみ、もしくは、標的細胞領域も含んだ全領域に補助細胞含有溶液を送液し、補助細胞を付着させる。化学薬品溶液による細胞接着性への変換方法を採用した場合に、当該溶液の注入口などとは別の注入口を用いる方が好ましい点も、標的細胞の場合と同様である。
【0015】
(4−3)本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いた細胞培養方法
本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスの液体注入口の1つから培養液を送液し、細胞培養部内を常に培養液で満たし、補助細胞にサポートされた標的細胞を培養する。癌細胞は補助細胞に接触した状態の生体内の癌組織と類似した環境で培養されることになり、生存率が向上する。癌細胞の培養期間は、通常の癌細胞の培養期間と同様であり、2〜7日程度である。
【0016】
異種の細胞を共培養する方法としては、従来主に2通りの方法が用いられていた。
1つ目は異種の細胞同士の直接の接触はなく、別々で培養し、培養液のみを共有している方法である。この方法においては、細胞が分泌した液性因子が別の細胞に到達し、作用を及ぼす事で細胞同士の相互作用があるが、細胞同士の直接的な接触による刺激が伝達されない欠点がある。細胞同士が直接接触することで癌の生存率が向上するという報告もあり(非特許文献4)、分泌される因子を介した相互作用のみでなく、直接的な接触による相互作用がある方が望ましいと考えられる。
2つ目の方法としては、1種類目の細胞のシートの上に2種類目の細胞を接着させて培養する方法であり、分泌される因子を介した相互作用と細胞間の直接の接触による相互作用が共にある点では優れている。しかし、抗癌剤感受性試験においては、通常MTT法によって生細胞数を計測、または、生細胞と死細胞を染色して画像解析により生細胞、死細胞をカウントすることで、薬剤が有効か無効かを判定するため、癌細胞の生存をサポートする細胞のシートの上で癌細胞を培養すればシートの細胞がこれらの判定を妨害する。すなわち、MTT法により、薬剤が効かずに生き残った癌細胞数を求めようとする場合には、測定法の原理上、生き残った癌細胞のみでなく、癌細胞の下のシートの細胞で生存している細胞まで結果に含んでしまい、抗癌剤の癌細胞に対する効果を正確に判定できない。また、画像解析により判定する場合には、癌細胞の下の細胞シートが邪魔になって正確な画像解析を妨げる。
一方、本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスによる共培養であれば、分泌される因子を介した相互作用と細胞間の直接の接触による相互作用が共にある上に、癌細胞の部分のみにMTT溶液を流して生細胞を求めることが可能であり、また画像解析で判定する際にも邪魔になるものは何もなく容易に判定ができるという利点を有する。
【0017】
5.マイクロ流路デバイス内における3次元細胞パターニング
生体内の癌細胞は通常単層状態では存在せず、3次元的に幾層にも折り重なった状態で増殖していることから、本発明における標的癌細胞の培養に際しても、より本来の癌組織に近い形態で培養することが好ましい。また、癌組織の薬物応答を評価する際にも、このような擬似癌組織を用いて試験をすることにより、さらに実際の生体の癌組織の薬物応答と一致する結果を得ることができるから、被験者の癌細胞への薬物応答試験の信頼性が高まるメリットがある。
そこで、本発明においては、マイクロ流路デバイス内の細胞培養部において3次元細胞パターニングを構築した。具体的には、図4cの手順に従い、以下の通りに行う。
(1)流路デバイス内の細胞培養部に、あらかじめ溝部又は孔部(円形の溝部)を形成しておく。その際、溝の場合は、溝幅200μm以内に、孔の場合は直径200μm以内にすることで、流路に沿って架橋アルブミン溶液が通過しても溝部又は孔部内にトラップされた空気のために、当該溶液の進入が防げられる。一般に好ましい溝幅又は孔の直径は、10μm〜200μmであり、溝又は孔の深さは5〜200μm、好ましくは10〜100μmである。
(2)流路デバイスに前記2.(1)と同様に調製した架橋アルブミン溶液を5〜20μl/minの流速で流し、溝又は孔部分以外の流路表面を架橋アルブミンフィルムコーティングし、細胞非接着性とする。
(3)当該溶液を送液した注入口とは別の注入口から、標的癌細胞株の懸濁液を送液し、細胞非接着性になっていない溝の部分にのみ細胞を接着させる。
(4)その後、溝又は孔の中に接着している標的癌細胞が3次元的に増殖するまで培養液を送液して培養を行う(図4d)。その際の培養時間は、癌細胞の種類にもよるが通常は2〜4日程度である。
(5)上記(4)の培養液注入口とは別の注入口から、細胞毒性の少ない化学薬品溶液(例えば、ポリエチレンイミン)を送液することで、細胞非接着性であった平坦な部分を細胞接着性に変換後、さらに別の注入口から補助細胞(例えば、マウス繊維芽細胞株3T3細胞の細胞懸濁液を送液して、当該新細胞接着領域に細胞を配置する(図4e)。
なお、(5)の工程に代え、溝又は孔部をマスクする光照射法を採用することもできる。
【0018】
6.マイクロ流路デバイス内の濃度勾配の形成法
近年、多段階の分岐構造を有するデザインのマイクロ流路デバイスを利用することで、所望の濃度勾配を細胞培養部に作り出せることが報告されている(非特許文献2)。
本発明のマイクロ流路デバイスにおいても、非特許文献2の方法を適用して薬剤の濃度勾配を作製し、流路内において培養された細胞に曝露することができる。具体的には、実験例2に示すように(図2a)、2つの溶液注入口を設け、多段階の分岐構造を有するデザインの流路からなる濃度勾配形成部、及び細胞培養部からなる細胞培養デバイスであり、2つの注入口から、それぞれ濃度の異なる培養液を注入することで、望みの濃度勾配を作り出すことができ、それに続く細胞培養部において培養された細胞を、作り出した濃度勾配下で培養することができる(図2b)。
なお、本発明においては、所望の濃度勾配を形成できるのであればどのようなデザインでもよく、上記実験例2に示した多段階の分岐構造を有するデザインの流路に限定されない。
【0019】
7.本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いた標的細胞に対する被検薬剤の評価方法、スクリーニング方法
本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いることで、標的細胞に対する被検薬剤の細胞毒性、細胞増殖能の阻害又は促進活性を効率的に評価することができる。また、薬剤候補物質をスクリーニングするために用いることもできる。
その際、本発明の流路デバイスの注入口から、標的細胞に対する細胞障害性物質(例えば抗癌剤)もしくは細胞増殖促進物質、又はそれらの候補物質を含有する被検物質溶液を、標的細胞培養領域に対応する流路に沿って注入し、標的細胞に対する被検物質溶液の感受性を試験する。
特に、細胞培養部へ被検薬剤を導入するための流路を上記6.で述べた濃度勾配形成部とすることで被検薬剤の濃度勾配が形成されている状態で標的細胞に供給することができるから、被検薬剤を標的細胞に殺細胞剤、細胞増殖阻害剤、細胞増殖促進剤などとして投与する際の有効量を定量的に評価することができる。また、被検薬剤を複数種類組み合わせて当該濃度勾配形成部に供給することで、標的細胞に対する最適な配合割合を決定することができる。
本発明の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いた評価方法の典型的な例は、抗癌剤感受性試験なので、以下抗癌剤感受性試験について説明する。
抗癌剤感受性試験では、被検抗癌剤含有溶液を送液した場合を非含有溶液の場合と比較した標的癌細胞の生存細胞数をMTT法や染色法により定量的に評価する。
ここで、「MTT(3-[4,5-dimethylthiazol-2-yl]-2,5-diphenyltetrazolium bromide)法」とは、生細胞数を定量する方法として広く使われており、同仁化学研究所などからキットとして市販されている。その原理は、MTT溶液(黄色)が生存細胞内に取り込まれると、ミトコンドリア内の脱水素酵素の作用でホルマザン(Formazan)に還元されることを利用している。ホルマザンは、青色の非水溶性結晶であるが、これをDMSOなど有機溶媒で溶解させると赤紫色の溶液となり、570nmにおける吸光度により、ホルマザン産生量を測定することで、ミトコンドリア酵素活性、すなわち生細胞数を定量できる。
被検抗癌剤の効果をMTT法を用いて評価する場合には、被検抗癌剤を含有した培養液で一定期間培養した標的癌細胞を、MTT溶液で処理することで抗癌剤が効かずに生き残った正細胞数を測定し、被検抗癌剤に対する標的癌細胞の感受性を定量的に判断する。
また、被検抗癌剤の効果を染色法を用いて評価する場合には、被検抗癌剤を含有した培養液で一定期間培養した標的癌細胞を、死細胞や生細胞を特異的に染め分けることができる染色溶液で処理し、画像解析により、死細胞数と生細胞数をカウントすることで、被検抗癌剤に対する標的癌細胞の感受性を定量的に判断する。
本発明の流路デバイスとして濃度勾配が形成されたマイクロ流路デバイスを用いることで、被検抗癌剤の最適濃度範囲を決定できる。また、細胞培養部に複数の筋状に標的細胞培養部を設け、それぞれに別の抗癌剤含有溶液を送液することで、同時に複数の抗癌剤感受性試験を行うことができる。
標的細胞の増殖促進活性を評価する場合も、同様の手法が適用でき、被検薬剤を送液し一定時間経過後に生細胞数の増加数をカウントし評価すればよい。
本発明の上記評価方法を被検物質溶液又は懸濁液に対して適用することにより、抗癌剤などの細胞毒性活性もしくは細胞増殖阻害活性を有する物質のスクリーニング、又は細胞増殖促進活性を有する物質のスクリーニングができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれに限定されない。
なお、本発明で引用した先行文献の記載内容は、本明細書の記載内容として参照されるものとする。
【0021】
(実験例1)細胞培養用マイクロ流路デバイスの作製
発明者らが以前に開発した架橋アルブミンフィルムは、本来細胞が接着しない性質を有しているが、フィルムを正電荷ポリマー溶液に曝露するか、又はUV照射により接着性に変換することができる(特許文献4,5)。この架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで、マイクロ流路デバイス内の所望の位置に複数種の細胞を配置した。
ポリジメチルシロキサン(PDMS、信越化学社製)の溶液を望みのデザインを有する鋳型に流し込んだ後、固めることで特定の形状を有するPDMS製のパーツを作製した(PDMS溶液に付属する使用説明書による。)。このパーツを鋳型からはがした後、酸素プラズマ処理を行い、ガラス基板に貼り付けることでマイクロ流路デバイスを作製した。マイクロ流路デバイスの図面を図1aに示す。5つの液の入り口、細胞培養部、液の出口から成っており、細胞培養部の流路幅は500μm、その他の部分の流路幅は100μmであり、高さは50μmである。
ウシ血清アルブミン(SIGMA社製)とエチレングリコールジグリシジルエーテル(Wako社製)をそれぞれ3%と215 mMの濃度で20mlのpH7.4のリン酸緩衝液(PBS)に溶解し、24時間、室温にて攪拌する事により架橋反応を行った。室温にて透析を行う事により未反応のエチレングリコールジグリシジルエーテルを除き、可塑剤としてグリセリンを143μl加えた後、PBSを用いて溶液量を30mlにメスアップした。このようにして作製した架橋アルブミン溶液をろ過滅菌後、流路デバイス内に送液することで、流路内を細胞非接着性を有するアルブミンフィルムでコーティングした(図1b)。入り口1からリン酸緩衝液を、入り口2から正電荷ポリマーである10μg/ml ポリエチレンイミン(PEI、SIGMA社製)を層流状態で流し、流路の細胞培養部の中央のみを細胞接着性に変換した(図1a,b)。ポリエチレンイミン溶液の両サイドから送液しているリン酸緩衝液の流量を制御することで、様々なサイズの細胞接着領域を作ることができる。入り口3から10μg/ml フィブロネクチン溶液を2時間送液した後、マウス頭蓋骨由来ストローマ細胞株PA6細胞の細胞懸濁液を入り口4から送液し、中央の細胞接着性の部分に細胞を配置した。図1(c)に細いサイズの線形パターンで、図1(d)に太いサイズの線形パターンで細胞を配置した様子を示す。
次に、入り口2から10μg/mlポリエチレンイミンの溶液を5分間送液することで、細胞非接着性である周囲の領域を細胞接着性に変換し、入り口5からマウス繊維芽細胞株3T3細胞の細胞懸濁液を送液して、新たに作り出した細胞接着領域に細胞を配置した(図1b,e,g)。2種類の細胞を明瞭に区別するためにPA6細胞はPHK26-red(赤色、Invitrogen) 、3T3細胞はCFSE-green(緑色、Invitrogen)であらかじめ標識しておいた(図1f,h)。このように、アルブミンフィルムを利用して2種類の細胞を段階的に配置していくことにより、異なる種類の細胞を所望のパターンで流路デバイス内に配置することができた。この方法を用いれば患者から採取した癌細胞、及び、癌細胞の生存・機能をサポートする細胞を含めた様々な細胞を流路デバイス内に配置することが可能である。
【0022】
(実験例2)濃度勾配形成部を有する細胞培養用マイクロ流路デバイスの作製
多段階の分岐構造を有するデザインの流路デバイスを利用することで、所望の濃度勾配を細胞培養部に作り出せることが報告されている。(非特許文献2)これらの報告を元に2つの溶液注入口から送液するだけで簡便に望みの濃度勾配を作り出せる流路デバイスを実験例1と同様の手法で作製した(図2a)。細胞培養部の流路幅は1000μm、濃度勾配形成部の流路幅は100μm、高さは50μmである。注入口1から蛍光物質フルオレセインを、注入口2からリン酸緩衝液を送液し、細胞培養部を蛍光顕微鏡で観察することにより、細胞培養部の各部分における蛍光強度のデータを取得した。蛍光強度を濃度に換算し、プロットした結果を図2bに示す。計算により算出した理論上の結果も実線で合わせて表示しているが、理論上の結果とよく一致したスムーズな濃度勾配が細胞培養部に形成されていることが分かる。
【0023】
(実験例3)濃度勾配形成部を有する細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いた標的細胞の抗癌剤感受性試験
(3−1)肝癌細胞株HepG2細胞に対する界面活性剤Triton-Xの作用効果の確認
実験例2で作製した流路デバイスの細胞培養部に繊維芽細胞株3T3細胞、及び肝癌細胞株HepG2細胞の細胞懸濁液をそれぞれ送液し、細胞培養部に接着させた。3T3細胞が接着している流路において、0.02%の界面活性剤Triton-Xを含有した培地を注入口1から、培地のみを注入口2から0.5μl/minの流速で送液することで細胞培養部にTriton-Xの濃度勾配を形成させ、この濃度勾配下において3T3細胞を10分間培養した。一方、HepG2細胞が接着している流路においては、20μg/mlの抗癌剤マイトマイシンCを含有した培地を注入口1から、培地のみを注入口2から送液することで細胞培養部にマイトマイシンCの濃度勾配を形成させ、この濃度勾配下においてHepG2細胞を24時間培養した。培養後、生細胞と死細胞をそれぞれ、フルオレセイン(緑色)とエチジウムブロマイド(赤色)で染色することで細胞の生死判定を行った。また、対象として従来のマルチウェルを用いた方法で実験を行った。すなわち、培養皿に細胞を入れ、3T3細胞の場合は0.005, 0.01, または、0.02%のTriton-Xを、HepG2の場合は4, 8, 12, 16,または、20μg/mlのマイトマイシンCを培養液に加えて培養し、その後、染色により生死判定を行った。
図3aにTriton-Xの濃度勾配下で培養後、生細胞(緑)と死細胞(赤)を染色した結果を示す。生細胞と死細胞の境界に相当する部分の濃度は0.014%であることから、流路デバイスを用いた検討からは0.014%以上の濃度ではTriton-Xは細胞を障害すると結論づけることができる。対象となるマルチウェルを用いた検討においては、0.01%以下の濃度では死細胞は見られずこの濃度では細胞を障害しなかった。一方、0.02%の濃度では細胞を障害し、大多数の細胞が死滅していた。これらの結果をまとめたものが図3cであり、流路デバイスを用いた検討の結果は、従来のマルチウェルを用いた検討結果とよく一致することを実証できた。
【0024】
(3−2)肝癌細胞株HepG2に対する抗癌剤マイトマイシンCの有効濃度の検討
同様の手法で肝癌細胞株HepG2に対する抗癌剤マイトマイシンCの有効濃度の検討を行った。流路デバイスを用いた検討では、抗癌剤が有効に作用し、癌細胞を死滅させることができる濃度は、6μg/ml以上であった。対象となるマルチウェルを用いた検討においては、4μg/ml以下の濃度では死細胞は見られなかった。一方、8μg/ml 以上の濃度では大多数の細胞が死滅し抗癌剤が有効に作用していた。これらの結果をまとめたものが図3dであるが、流路デバイスを用いた検討の結果は、従来のマルチウェルを用いた検討結果とよく一致していた。このように流路デバイスを用いて濃度勾配を作り出すことで様々な濃度に対する細胞応答を従来のマルチウェルを用いた試験と同等の正確さで検討できることが分かった。
本実験においては、流路の全面に細胞を接着させて実験を行ったが、実験例1の手法を活用することで、癌細胞と癌細胞の生存をサポートする細胞を所望のパターンで流路内の特定の位置に配置して同様の実験を行うことも可能であり、極めて少ない細胞量であっても、様々な濃度の抗癌剤の薬効を評価することができる。
【0025】
(実施例1)3次元的細胞培養用マイクロ流路デバイスの作製
実験例1と同様の方法で図4aに示すデザインのPDMS製パーツを作製した。このパーツを図4bに示す多数の円形の溝(溝の直径は100μm、深さは70μm)を掘ったPDMS製のパーツと組み合わせることでマイクロ流路デバイスを作製した。当該マイクロ流路デバイスは、5つの液の入り口、濃度勾配形成部、細胞培養部、液の出口から成っており、細胞培養部の流路幅は1000μm、濃度勾配形成部の流路幅は100μm、高さは50μmである。
図4cに示す手順により流路内で3次元的に癌細胞を培養しつつ、周囲に癌細胞の機能、及び、生存をサポートする細胞を配置した。まず、流路デバイスに実験例1と同様に、架橋アルブミン溶液を流し、一晩乾燥させることで流路表面をアルブミンフィルムでコーティングし、細胞非接着性とした。ただし、溝の部分には、空気がトラップされているために、架橋アルブミン溶液の進入が防げられ、細胞非接着性にならない。入り口3から、肝癌細胞株HepG2細胞の懸濁液を送液し、細胞非接着性になっていない溝の部分にのみ細胞を接着させた。その後、入り口1と2から培養液を0.2μl/minの流速で送液し、3日間培養を行うことで、溝の中に接着しているHepG2細胞を3次元的に増殖させた(図4d)。入り口4から、10μg/mlポリエチレンイミンの溶液を5分間送液することで、細胞非接着性であった平坦な部分を細胞接着性に変換後、入り口3からマウス繊維芽細胞株3T3細胞の細胞懸濁液を送液して、新たに作り出した細胞接着領域に細胞を配置した(図4e)。2種類の細胞を明瞭に区別するためにHepG2細胞はCFSE-green(緑色、Invitrogen)、3T3細胞はPHK26-red(赤色、Invitrogen)であらかじめ標識してある(図4d,e)。このように、流路のデザインを工夫することで、癌細胞を流路の中でより本来の癌組織の形態に近い3次元で培養し、その周囲に生存、及び、機能をサポートする細胞を配置することができた。溝のデザインを変更することでどのような形状の3次元組織も作る事ができ、濃度勾配形成部も備えているので実験例3のように抗癌剤の濃度勾配を作り出して、様々な濃度の抗癌剤の薬効を評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
従来よりも微量の癌細胞で、個々の癌に適した抗癌剤を選別することができ、抗癌剤の開発や抗癌剤感受性試験において有用である。また各種幹細胞に対する細胞増殖促進剤の有効性を評価するためにも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に細胞培養部が形成されており、当該細胞培養部は、当該領域内にあらかじめ設けられた溝部又は孔部内で、標的細胞が多層状に付着した状態に形成されている標的細胞付着領域を有し、かつ当該領域に接して補助細胞付着領域を有していることを特徴とする細胞培養用マイクロ流路デバイスの製造方法であって、下記工程(1)〜(5)を含む方法;
(1)第1の液体注入口から流路内に架橋アルブミン溶液を送液し、細胞培養部に設けられた溝部又は孔部以外の表面を細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムでコーティングする工程、
(2)第2の液体注入口から、標的細胞懸濁液を送液し、細胞非接着性になっていない溝又は孔部のみに細胞を付着させる工程、
(3)前記標的癌細胞が3次元的に増殖するまで培養液を送液して培養を行い、溝部又は孔部内に多層状に標的細胞が付着した標的細胞付着領域を形成する工程、
(4)前記標的細胞付着領域に接した細胞非接着性領域を細胞接着性に変換する工程、
(5)第3の液体注入口から、細胞培養部内に補助細胞懸濁液を送液することで、細胞培養部内の標的細胞付着領域に接した細胞接着性領域のみに補助細胞を付着させ、補助細胞付着領域を形成する工程。
【請求項2】
前記工程(4)において、細胞非接着性の架橋アルブミンフィルムの1部領域をカチオン性ポリマーにより細胞接着性に変換する方法を採用する際に、マイクロ流路によりカチオン性ポリマーの溶液を層流状態で流路の細胞培養部の一部領域のみに送液し、その領域のみを細胞接着性領域へと変換することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に細胞培養部が形成されており、当該細胞培養部は、当該領域内にあらかじめ設けられた溝部又は孔部内で、標的細胞が多層状に付着した状態に形成されている標的細胞付着領域を有し、かつ当該領域に接して補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、請求項1又は2に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする、細胞培養用マイクロ流路デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の細胞培養用マイクロ流路デバイス内の流路に培養液を送液することによる標的細胞の培養方法。
【請求項5】
前記培養液が、あらかじめ含有成分又は成分濃度が異なるように少なくとも2種類以上調製されており、それぞれ異なる液体注入口から同時に注入され、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により濃度勾配を有する培養液として細胞培養部内に供給されることを特徴とする、請求項4に記載の標的細胞の培養方法。
【請求項6】
請求項5に記載の培養方法に用いることができる細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、複数の液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイス。
【請求項7】
複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、液体注入口から検薬剤を溶液又は懸濁液として送液し、一定期間培養後に標的細胞の生存率を測定することを特徴とする、標的細胞に対する被検薬剤の細胞毒性もしくは細胞増殖能の阻害活性、または細胞増殖能の促進活性の評価方法。
【請求項8】
細胞培養用マイクロ流路デバイスとして、請求項3に記載の細胞培養用マイクロ流路デバイスを用いることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、かつ供給される前記被検薬剤が、あらかじめ含有成分又は成分濃度が異なるように少なくとも2種類以上調製されており、それぞれ異なる液体注入口から同時に注入され、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により濃度勾配を有する被検薬剤として細胞培養部内に供給されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、かつ前記液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、被検薬剤の高濃度含有溶液を1つの液体注入口から注入すると同時に、被検薬剤の低濃度含有溶液もしくは被検薬剤のみを含まない同一成分溶液を他の液体注入口から注入し、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により濃度勾配を有する被検薬剤含有液として細胞培養部内に供給し、一定期間培養後、被検薬剤の濃度勾配に応じた標的細胞の生存率を測定することを特徴とする、標的細胞に対する被検薬剤の殺細胞剤もしくは細胞増殖阻害剤、又は細胞増殖細胞活性剤としての有効量の評価方法。
【請求項11】
複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスであって、かつ前記液体注入部と細胞培養部とを結ぶ流路の途中に多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部が設けられている細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、あらかじめ複数種類の被検薬剤含有溶液を用意し、それぞれの種類の被検薬剤含有溶液をそれぞれ異なる液体注入口から同時に注入し、多段階の分岐構造を有する濃度勾配形成部により複数の被検薬剤の組み合わせのそれぞれが濃度勾配を有する状態で細胞培養部内に供給し、一定期間培養後、複数の被検薬剤の組み合わせそれぞれの濃度勾配に応じた標的細胞の生存率を測定することを特徴とする、標的細胞に対する複数の被検薬剤における殺細胞剤もしくは細胞増殖阻害剤、又は細胞増殖細胞活性剤としての最適な配合割合の評価方法。
【請求項12】
複数の液体注入部と液体排出部とを結ぶ流路の途中に設けられた細胞培養部が、架橋アルブミンフィルムの細胞接着性を制御することで標的細胞付着領域及び当該領域と接した補助細胞付着領域を有している細胞培養用マイクロ流路デバイスを用い、被検物質を溶液又は懸濁液として液体注入口から送液し、一定期間培養後の標的細胞の生存率を測定することにより、標的細胞に対する被検物質の細胞毒性もしくは細胞増殖能の阻害活性、または細胞増殖能の促進活性を評価する工程を含む、殺細胞剤もしくは細胞増殖阻害剤、又は細胞増殖細胞活性剤のスクリーニング方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図2】
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【図3(a)(b)】
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【図3(c)(d)】
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【図4(a)(b)】
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【図4(c)(d)(e)】
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【公開番号】特開2011−193758(P2011−193758A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62025(P2010−62025)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行所名 社団法人 化学工学会 刊行物名 化学工学会第75年会研究発表講演要旨集 発行日 平成22年2月18日
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】