説明

薬剤手撒き代行装置

【課題】薬剤手撒き代行装置にて予備撒きカセットへの薬剤分配の確度と能率を向上。
【解決手段】区画室8の多数形成された予備撒きカセット6を一時載置するカセット載置部36と、薬剤4の容器2を一時載置する容器載置部34と、その薬剤4を区画室8に投入する薬剤移載機構45と、薬剤手撒き情報を取得して薬剤移載機構45の動作制御を行う分配制御装置とを備える。また、薬剤容器2を多段に収納できる容器運搬具20を一時載置する運搬具載置部31と、そこから容器載置部34へ薬剤容器2を移す容器移載機構32,33も備える。さらに、運搬具載置部31に置くと解除されるロック機構(25)を容器運搬具20に組み込む。薬剤保持部材41のうち薬剤移載機構45に装着されていないものを清掃可能にする清掃部(50)も備える。薬剤分包機(80)と並設し連携動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動の薬剤排出に備えて予め多数の区画室に薬剤を人手で撒いておく薬剤手撒き装置を更に改良した薬剤手撒き代行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤分包機に組み込んだ形で薬剤手撒き装置が実用化されており(例えば特許文献1,2参照)、そのような薬剤手撒き装置では予備撒きカセットが薬剤分包機の筐体から引き出し可能に設けられ、予備撒きカセットには多数の区画室が縦横に並べて形成され、区画室(マス)は、上面が薬剤投入のため解放され、下面・底面が薬剤排出のためシャッタ等の底板で出来ていて開閉するようになっている。また、薬剤投入は手撒きでも、薬剤排出は自動で行えるよう、薬剤分包機の筐体内には、押し込まれた予備撒きカセットの下方のところに、区画室から排出された薬剤を受け取って1室分ずつ包装機へ送り込む作動部材(コンベア)が、設けられている。そして、予備撒きカセットの各区画室内の薬剤が作動部材の対応する各区画室に一括して移し替えられるよう、予備撒きカセットの底板は例えばシャッタレバーの一操作に応じて全区画室に亘り一括で開閉するようになっており、予備撒きカセットにはモータ等の駆動源が搭載されていない。
【0003】
さらに、それらの薬剤手撒き装置は区画室の個数(マス数)や薬剤の名称(薬品名)を表示するようにもなっている。マス数の表示は(例えば特許文献1参照)、手撒きすべき包装数を間違いないようにする作業者の精神的な負担を軽減するためであり、2桁のLEDで区画室の個数を表示したり、縦の区画室の個数と横の区画室の個数を表示したり、区画室に一個ずつ配置したLEDの発光により区画室の位置を表示したり、区画室の周囲に配置したLEDの発光により表示することによって、使用する区画室の個数を手撒き作業者に指示するようになっている。マス数の表示に加えて二度撒きの表示まで行うようにもなっている。また、薬品名の表示は(例えば特許文献2参照)、プリンタでの印字によって、手撒き処方の照合No.と一緒に行われるようになっている。
【0004】
もっとも、上述した薬剤手撒き装置では総てが薬剤分包機に組み込まれているので、先行して手撒きできるのは、せいぜい次回の分までであり、それ以上は否応なく待たされてしまうことから、何回か先の分まで予め撒いておくことができるよう、薬剤分包機から分離されて別体になった薬剤手撒き装置も幾つか開発されている(例えば特許文献3,4参照)。何れも、薬剤分包機に組み込まれた薬剤手撒き装置のうち多数の区画室の形成されている予備撒きカセットを薬剤分包機の前方に引き出して更には薬剤手撒き装置から抜き取って使用するためのものであり、薬剤手撒き装置や薬剤手撒き装置とは別体になっていて予備撒きカセットを出し入れ可能な枠体と、この枠体に付設された手撒部とを備えている。手撒部には予備撒きカセットの区画室配置に対応した配置で多数の投入口が貫通形成されており、さらに、手撒き範囲の投入口を点灯で案内したり(例えば特許文献3参照)、投入口に投入された薬剤の予備撒きカセットへの落下移載を個々の開閉部材にて適正範囲に限定したり(例えば特許文献4参照)、種々の改良が加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−240604号公報
【特許文献2】特開平3−240603号公報
【特許文献3】特開2007−209600号公報
【特許文献4】特開2007−297066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、薬剤分包機の自動化を補完する薬剤手撒き装置についても、自動分包の中断を短縮や回避するために薬剤分配用機構部を薬剤分包機とは別体で構成したり、手撒き作業を間違えないよう支援するといった改良が重ねられている。
しかしながら、調剤作業において機械による自動処理と人による手作業では正確性に桁違いの差があり、一説では調剤ミスの発生頻度が自動処理に比べて手作業の方が約百倍も多いとさえ言われている。また、一般に能率も手作業は自動処理より劣る。
そこで、予備撒きカセットへの薬剤分配の確度と能率の向上を図るべく、薬剤の手撒き作業を代行する薬剤手撒き代行装置を実現することが、技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤手撒き代行装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、別体の薬剤分包機の薬剤手撒き装置に着脱しうるカセットであって薬剤手撒き対象の区画室が多数形成されている予備撒きカセットを一時載置しうるカセット載置部と、薬剤を収容した薬剤容器を一時載置しうる容器載置部と、前記容器載置部に置かれた薬剤容器の中から薬剤を取り出して前記カセット載置部に置かれた予備撒きカセットの各区画室に投入する薬剤移載機構と、前記薬剤分包機の前記薬剤手撒き装置に係る薬剤手撒き情報を取得して前記薬剤移載機構の動作制御を行う分配制御装置とを備えたものである。
【0008】
また、本発明の薬剤手撒き代行装置は(解決手段2)、上記解決手段1の薬剤手撒き代行装置であって、薬剤を収容した薬剤容器を多段に収納しうる容器運搬具を一時載置しうる運搬具載置部と、前記運搬具載置部に置かれた容器運搬具から薬剤容器を取り出して前記容器載置部に一時載置する容器移載機構とを備えたことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の薬剤手撒き代行装置は(解決手段3)、上記解決手段2の薬剤手撒き代行装置であって、前記容器運搬具に組み込まれていて前記容器運搬具が前記運搬具載置部に置かれると前記容器運搬具から薬剤容器を取り出すのを許容するが前記容器運搬具が前記運搬具載置部から持ち上げられると前記容器運搬具から薬剤容器が抜け落ちるのを防止するロック機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薬剤手撒き代行装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の薬剤手撒き代行装置であって、前記薬剤移載機構に着脱可能であって装着時に移載対象の薬剤を保持する薬剤保持部材を複数個と、前記薬剤保持部材のうち前記薬剤移載機構に装着されていないものを清掃可能に保持する清掃部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の薬剤手撒き代行装置は(解決手段5)、上記解決手段1〜4の薬剤手撒き代行装置であって、前記カセット載置部から前記薬剤手撒き装置へ予備撒きカセットを移載するカセット移載機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明の薬剤手撒き代行装置にあっては(解決手段1)、薬剤手撒き装置を装備した薬剤分包機とは別のところで、その薬剤手撒き装置に使用しうる予備撒きカセットをカセット載置部に載せて置くとともに、手撒き対象の薬剤を収容した薬剤容器を容器載置部に載せて置けば、例えば操作部の操作等によるデータ入力によって又は前記薬剤分包機から若しくは前記薬剤分包機に調剤指示を与える上位装置からのデータ送信によって、該当する薬剤手撒き情報が分配制御装置に取得され、その制御に従い薬剤移載機構によって薬剤が薬剤容器の中から取り出されて予備撒きカセットの各区画室に投入される。これにより、従来は手撒き作業だった薬剤分配が自動処理によって代行されるので、予備撒きカセットへの薬剤分配の確度と能率が向上する。したがって、この発明によれば、薬剤の手撒き作業を代行する薬剤手撒き代行装置を実現することができる。
【0013】
また、本発明の薬剤手撒き代行装置にあっては(解決手段2)、予備撒きカセットに分配すべき薬剤が複数種類存在するときや多数存在するときには、薬剤を剤種別に分けて又は適宜数量等で分けて幾つかの薬剤容器に収容してから各薬剤容器を容器運搬具に多段収納し、その容器運搬具を運搬具載置部に載せて置けば、その容器運搬具から薬剤容器が次々に容器移載機構にて取り出されて薬剤移載機構等での薬剤分配すなわち薬剤手撒き作業代行の自動処理に供される。したがって、この発明によれば、多種多量の薬剤でも予備撒きカセットに高確度かつ高能率で分配することができる。
【0014】
さらに、本発明の薬剤手撒き代行装置にあっては(解決手段3)、容器運搬具にロック機構を組み込むとともに、そのロック機構には容器運搬具が運搬具載置部に置かれると薬剤容器の取り出しを許容するが容器運搬具が運搬具載置部から持ち上げられると薬剤容器の抜け落ちを防止するものを採用したことにより、薬剤容器の持ち運びやセット作業が気軽に行えて而も的確になされることとなる。
【0015】
また、本発明の薬剤手撒き代行装置にあっては(解決手段4)、薬剤移載機構のうち薬剤移載時に移載対象の薬剤と接触する薬剤保持部材については、着脱式にしたうえで、複数個装備するとともに、それら複数個の薬剤保持部材のうち薬剤移載機構に装着されているものは別として、薬剤移載機構に装着されていない薬剤保持部材は清掃可能な状態で保持されるようにしたことにより、薬剤移載動作中でも使用済みの又は使用前の薬剤保持部材を清掃することが可能なので、清浄な状態で薬剤分配処理を継続することができる。
したがって、この発明によれば、薬剤の手撒き作業を清浄な状態で代行する薬剤手撒き代行装置を実現することができる。
【0016】
また、本発明の薬剤手撒き代行装置にあっては(解決手段5)、カセット載置部のところで薬剤分配を済ませた予備撒きカセットがカセット移載機構によって薬剤分包機の薬剤手撒き装置に移載されるので、薬剤の予備撒きカセットへの手撒き作業に加えて、予備撒きカセットの薬剤手撒き装置へのセット作業まで、自動処理される。
したがって、この発明によれば、薬剤の手撒き作業に加えて予備撒きカセットのセット作業まで代行する薬剤手撒き代行装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1について、薬剤手撒き代行装置の構造を示し、(a)が装置の外観斜視図、(b)が容器運搬具の外観斜視図、(c)が基板に装着された機構部の斜視図である。
【図2】容器運搬具の詳細構造を示し、(a)が箱体の縦断面図、(b)がロック機構の縦断面図、(c)及び(d)が薬剤容器を収納した容器運搬具の縦断面図であって(c)がアンロック状態を示し(d)がロック状態を示している。
【図3】本発明の実施例2について、薬剤手撒き代行装置の構造を示し、(a)が清掃部の斜視図、(b)が交換ユニット及び薬剤保持部材の斜視図、(c)が清掃部等を張出形にしたものの斜視図である。
【図4】本発明の実施例3について、薬剤手撒き代行装置の構造を示し、(a)及び(b)が何れも薬剤手撒き代行装置と薬剤分包機の外観斜視図、(c)が薬剤手撒き代行装置と薬剤分包機の側面図、(d)が薬剤手撒き代行装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
このような本発明の薬剤手撒き代行装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を具現化したものであり、図3に示した実施例2は、上述した解決手段4(出願当初の請求項4)を具現化したものであり、図4に示した実施例3は、上述した解決手段5(出願当初の請求項5)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,タイミングベルト等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0019】
本発明の薬剤手撒き代行装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が薬剤手撒き代行装置10の外観斜視図、(b)が容器運搬具20の外観斜視図、(c)が基板13に装着された機構部31〜46の斜視図である。また、図2は、(a)が容器運搬具20の箱体21の縦断面図、(b)がロック機構25の縦断面図、(c)及び(d)が薬剤容器2を収納した容器運搬具20の縦断面図であって、(c)がアンロック状態を示し、(d)がロック状態を示している。
【0020】
薬剤手撒き代行装置10は(図1(a)参照)、既述した薬剤手撒き装置のうち自動分包の中断を短縮や回避するために薬剤分配用機構部を薬剤分包機から分離したものを更に改良して薬剤分配を手撒きから自動にしたものであり、自立した専用の筐体11を具備して、薬剤分包機やそれに組み込まれた薬剤手撒き装置とは別体のものとなっている。
筐体11の内部空間は、基板13にて上下に仕切られており、基板13の上方と直下のところが機構部となり、基板13の下方の底板15の上が電装部となっている。
電装部には、図示は割愛したが、分配制御装置や、電源回路の他、バキュームチャック用やクリーナ用のエア配管なども収納されている。
【0021】
筐体11の外板のうち主に基板13より上のところには、メンテナンス用の大扉12と、容器運搬具20を出し入れするための小扉14と、予備撒きカセット6を出し入れするためのカセット出入口16と、予備撒きカセット6の出入動作や薬剤分配の開始などを手動指示するため例えば幾つかの押しボタンを配設した操作部17と、装置動作状態や薬剤手撒き情報などを目視可能に表示するため例えば液晶パネルからなる表示部18とが設けられている。底板の下面には移動用キャスターや固定用ボルトも設けられている。
【0022】
また、薬剤手撒き代行装置10に固定されるものでなく薬剤手撒き代行装置10に出し入れして用いられるものとして(図1(b),(c)参照)、容器運搬具20と薬剤容器2と予備撒きカセット6がある。
容器運搬具20は(図1(b)参照)、小扉14を開けて出し入れできる大きさの箱体21に、人手で運び易いよう持ち手22を付けたものであり、薬剤容器2を一つずつ差し込んで収納しうる容器収納空間23が多段に図示の例では上下4段に形成されている。
【0023】
容器運搬具20の箱体21には(図2参照)、容器収納空間23の総てと天板と底板とを貫通して上下に連なるロッド挿通穴24が形成されており、そのロッド挿通穴24にロック機構25のロッド27が挿通されている。ロック機構25のロッド27の上端には、摘み兼抜け落ち防止用のヘッド26が装着され、ロッド27の中間部には、一つずつ容器収納空間23に収まるフック28が装着されている。そして(図2(c)参照)、例えば容器運搬具20を容器載置部34に載置してロッド27の下端を押し上げたり或いはヘッド26を引っ張ったりして、ロック機構25が持ち上げられると、容器収納空間23の中の薬剤容器2からフック28が外れて、ロック機構25がアンロック状態になり、容器運搬具20から薬剤容器2を取り出すのが許容されるようになっている。
【0024】
これに対し(図2(d)参照)、例えば持ち手22を掴んで容器運搬具20を持ち上げると、ロック機構25が自重で下降し、それによって容器収納空間23の中の薬剤容器2にフック28が掛かって、ロック機構25がロック状態になり、容器運搬具20から薬剤容器2が抜け落ちるのが防止されるようになっている。
薬剤容器2は(図1(c)参照)、丸皿や角皿のような上面解放の小容器であり、容器運搬具20の容器収納空間23に一つずつ収納しうるようになっている。
【0025】
薬剤4は、玉剤などの錠剤が典型的であるが、一つずつ移載しうるものであれば、例えばカプセル等に入った散剤や水剤など他の剤形でも予備撒き可能な薬剤になりうる。
予備撒きカセット6は、既述した別体の薬剤分包機に組み込まれている薬剤手撒き装置に着脱しうるカセットであり、薬剤手撒き対象の区画室8が多数形成されている。区画室8の上面は薬剤分配時に薬剤8を投入しうるよう解放されている。また、薬剤手撒き代行装置10で薬剤分配を終えて薬剤分包機の薬剤手撒き装置へ移された予備撒きカセット6の各区画室8から一斉に分配済み薬剤4を薬剤手撒き装置の作動部へ移し替えるのを可能とするために、予備撒きカセット6の下面部には開閉部材が付設されている。
【0026】
薬剤手撒き代行装置10の機構部の構成に説明を戻すと(図1(c)参照)、基板13の上面には、容器運搬具20の底部を収めて位置決めすガイド凹み等が形成されていて容器運搬具20を安定姿勢で一時載置しうる運搬具載置部31と、例えば運搬具載置部31の下方に設けられた運搬具昇降機構32と運搬具載置部31の横に設けられた容器水平搬送機構33とからなり運搬具載置部31に置かれた容器運搬具20から薬剤容器2を一つずつ取り出して容器載置部34に移して一時載置するとともに空になった薬剤容器2を容器運搬具20に戻す容器移載機構32,33と、薬剤容器2の底面より広いガイドやストッパ等が設けられていて薬剤4を収容した薬剤容器2を安定姿勢で一時載置しうる容器載置部34とを備えている。
【0027】
また、薬剤手撒き代行装置10は、基板13の上に、カセット出入口16から進退しうる引出機構からなり予備撒きカセット6を一時載置しうるカセット載置部36と、カセット載置部36の引出部材を伸縮動作させてカセット載置部36の上の予備撒きカセット6をカセット出入口16から出し入れする進退駆動機構35とを備えている。
さらに、薬剤手撒き代行装置10は、薬剤4を例えば負圧吸引にて吸着保持する多数の薬剤保持部材41と、薬剤保持部材41を複数たとえば3個ずつ装備した複数の交換ユニット42と、容器載置部34に置かれた薬剤容器2を照らす照明43と、容器載置部34に置かれた薬剤容器2の薬剤4を撮る撮像装置44と、使用中の交換ユニット42を一つ装着しうる薬剤移載機構45と、待機中の交換ユニット42を複数装着しうるユニットストック46とを備えている。
【0028】
薬剤移載機構45は、例えば汎用のハンドリングロボットからなり、平面移動に加えて上下移動も可能なアームを具備していて、そのアームをユニットストック46のところへ伸ばしてアーム先端の交換ユニット42を交換するようになっている。また、アーム先端を容器載置部34のところへ伸ばして、容器載置部34に置かれている薬剤容器2の中から薬剤保持部材41にて薬剤4を取り出すとともに、アーム先端を予備撒きカセット6のところへ伸ばして、カセット載置部36に置かれている予備撒きカセット6の各区画室8に薬剤4を投入することにより、薬剤分配を自動で行うようになっている。
【0029】
分配制御装置は、例えばプログラマブルなマイクロプロセッサやシーケンサからなり、薬剤手撒き装置を組み込んだ薬剤分包機の制御装置から又はそのような薬剤分包機に調剤指示を与える上位装置から、その薬剤分包機の薬剤手撒き装置に係る薬剤手撒き情報があれば、その情報を有線や無線の適宜な通信手段によって取得して、その薬剤手撒き情報に基づいて薬剤移載機構45やその他の機構に対して動作制御を行うことにより、機構部に薬剤分配を的確に遂行させるようになっている。また、撮像装置44で得た画像データに基づいて薬剤4の認識と確認なども行うようになっている。
なお、その具体的な制御内容は、以下の動作説明において例示する。
【0030】
この実施例1の薬剤手撒き代行装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が薬剤手撒き代行装置10の外観斜視図、(b)が容器運搬具20外観斜視図、(c)が基板13に装着された機構部31〜46の斜視図である。また、図2は、(a)が容器運搬具20の箱体21の縦断面図、(b)がロック機構25の縦断面図、(c)及び(d)が薬剤容器2を収納した容器運搬具20の縦断面図であって、(c)がアンロック状態を示し、(d)がロック状態を示している。
【0031】
薬剤手撒き代行装置10は、薬剤手撒き装置が組み込まれた薬剤分包機が一台または複数台設置されている調剤薬局や調剤部門で使用されることが多く、薬剤手撒き代行装置10の分配制御装置と薬剤分包機の制御装置やその上位装置とがLAN等を介して通信可能であれば薬剤手撒き情報が自動で分配制御装置に送りつけられ、そうでない場合は薬剤手撒き情報が操作部17の手動操作にて分配制御装置に入力される。薬剤手撒き情報は、薬剤分包機80で自動分包できない薬剤だけについて剤種や分配情報などを規定したデータであり、表示部18に表示される他、手撒き調剤指示箋などに印刷される。
【0032】
その表示や指示箋を見て、人手で、薬品棚等から必要な薬剤4を収集して例えば剤種毎に分けて幾つかの薬剤容器2に収容し、更にその薬剤容器2を容器運搬具20に収納する。容器収納後は薬剤容器2が容器運搬具20から抜け落ちないようロック機構25でロックし、容器運搬具20を薬剤手撒き代行装置10のところへ運び、小扉14を開閉して容器運搬具20を運搬具載置部31に載せ置く。容器運搬具20が運搬具載置部31に置かれるとロック機構25のロッド27の下端が運搬具載置部31によって押し上げられるので、容器運搬具20は、ロックが解除され、薬剤容器2の取出が許容される。
【0033】
その容器運搬具20のセットの先でも後でも良いが、操作部17を操作してカセット載置部36をカセット出入口16から進出させて、その上に空の予備撒きカセット6を載せてから、カセット載置部36を軽く押して又は再び操作部17を操作して、カセット載置部36を後退させて戻すととともに、それで予備撒きカセット6をカセット出入口16から内部へ引き込ませる。
これで、薬剤分配の自動処理の準備が整うので、操作部17を操作して薬剤分配の自動処理を開始させる。そうすると、分配制御装置が薬剤手撒き情報に基づいて各部材の動作を制御することで薬剤分配が自動で実行される。
【0034】
詳述すると、分配制御装置の制御の下、容器移載機構32,33によって容器運搬具20から薬剤容器2が一つずつ容器載置部34に送り込まれ、その容器載置部34に収容されている薬剤4の剤種と位置が撮像装置44の画像データに基づくコードや文字の読取さらにはパターンの切出やマッチングといったデータ処理によって検出され、その検出された剤種や位置と薬剤手撒き情報との突き合わせ結果に応じて、薬剤移載機構45によって容器載置部34の薬剤容器2から薬剤4が取り出されるとともにその薬剤4が予備撒きカセット6の何れか適切な区画室8に投入される。そして、薬剤手撒き情報で指示された薬剤分配が終了すると、予備撒きカセット6がカセット出入口16から出されるとともに、空になった薬剤容器2を収納した容器運搬具20がセット時の高さに戻される。
【0035】
こうして、予備撒きカセット6への薬剤4の手撒き作業が、薬剤手撒き代行装置10による自動の薬剤分配にって代行されて、能率良く迅速に遂行される。しかも、分配ミスの少ない高確度で実行される。
人手に依存するのは、薬剤4の取り揃えや予備撒きカセット6のセットなどの準備作業と、薬剤分配を終えた容器運搬具20の取り出しや予備撒きカセット6の薬剤手撒き装置への移し替えといった後始末作業だけである。
【実施例2】
【0036】
本発明の薬剤手撒き代行装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、清掃部50の斜視図、(b)が交換ユニット42と複数の薬剤保持部材41の斜視図、(c)が清掃部等を張出形にしたものの斜視図である。
この薬剤手撒き代行装置が上述した実施例1の薬剤手撒き代行装置10と相違するのは、ユニットストック46の隣に清掃部50が設けられた点と(図3(a)参照)、交換ユニット42を介して薬剤移載機構45に着脱しうる薬剤保持部材41が交換ユニット42に対しても個々に着脱できるようになった点である(図3(b)参照)。
【0037】
清掃部50は、ブラシ回転支持部52にて軸回転させられる清掃ブラシ51と、清掃ブラシ51に吸引口を向けた集塵機53とを図示したが、他の清掃手段でも良い。そして、薬剤移載機構45への装着を待って又は薬剤移載機構45での使用を終えて戻されてユニットストック46に保持されている交換ユニット42のうちユニットストック46の回転等によって清掃部50に接近してきた交換ユニット42を清掃対象として、それに装着されている薬剤保持部材41を綺麗に清掃するようになっている。
【0038】
なお(図3(c)参照)、清掃部50を装置外の集塵機などで代用する場合や、装置外から人手で薬剤保持部材41を清掃するような場合、ユニットストック46から装置外へ延びる拡張ベルト47等にて、交換ユニット42を装置から外部へ出し入れ可能にすると良い。この場合、交換ユニット42の装着可能個数が増加するという利点もある。
【実施例3】
【0039】
本発明の薬剤手撒き代行装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、(a)及び(b)が何れも薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80とを横に並べて設置したところの外観斜視図、(c)及び(d)が薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80とを向かい合わせで設置したところの側面図である。
【0040】
図4(a)に示したものは、連携する薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80とを左右隣り合わせに設置したものであり、薬剤手撒き情報の自動送受信は行うが、予備撒きカセット6を薬剤手撒き代行装置10のカセット載置部36から薬剤分包機80の薬剤手撒き装置81へ移載するのは人手で行うようになっている。
【0041】
図4(b)〜(d)に示したものは、薬剤手撒き代行装置10のカセット載置部36から薬剤分包機80の薬剤手撒き装置81へ予備撒きカセット6を移載するカセット移載機構82,83を備えていて、薬剤分配を終えた予備撒きカセット6の移載まで自動で行われるようになっている。
そのうち図4(b)に示したものは、カセット移載機構82の大部分が薬剤手撒き代行装置10と薬剤分包機80の中に格納されて、外部への突出部分が小さくなっている。
【0042】
図4(c)に示したものは、薬剤手撒き代行装置10を薬剤分包機80の前方に位置させるとともに、両者の間に別体のカセット移載機構83を配置したものであり、特定の薬剤分包機80に限らず幾つかの薬剤分包機80に対して手軽に薬剤手撒き代行装置10及びカセット移載機構83を組み替えることができるようになっている。
【0043】
図4(d)に示したものは、薬剤手撒き代行装置10にカセット供給機構84を追加内蔵したものであり、上側部分には未使用で空の予備撒きカセット6を積み上げ収納し、下側部分には使用済みの予備撒きカセット6を積み重ね収納している。そして、未使用の予備撒きカセット6を一つずつ取り出してカセット載置部36に載置し、その予備撒きカセット6に薬剤分配を行ってからその予備撒きカセット6を薬剤分包機80へ供給する一方、使用済みの予備撒きカセット6を薬剤分包機80から受け取って下側部分に収納するようになっている。
【符号の説明】
【0044】
2…薬剤容器、4…薬剤、6…予備撒きカセット、8…区画室、
10…薬剤手撒き代行装置、
11…筐体、12…大扉、13…基板、14…小扉、
15…底板、16…カセット出入口、17…操作部、18…表示部、
20…容器運搬具、
21…箱体、22…持ち手、23…容器収納空間、24…ロッド挿通穴、
25…ロック機構、26…ヘッド、27…ロッド、28…フック、
31…運搬具載置部、32…運搬具昇降機構、33…容器水平搬送機構、
34…容器載置部、35…進退駆動機構、36…カセット載置部、
41…薬剤保持部材、42…交換ユニット、43…照明、44…撮像装置、
45…薬剤移載機構、46…ユニットストック、47…拡張ベルト、
51…清掃ブラシ、52…ブラシ回転支持部、53…集塵機、
80…薬剤分包機、81…薬剤手撒き装置、
82,83…カセット移載機構、84…カセット供給機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
別体の薬剤分包機の薬剤手撒き装置に着脱しうるカセットであって薬剤手撒き対象の区画室が多数形成されている予備撒きカセットを一時載置しうるカセット載置部と、薬剤を収容した薬剤容器を一時載置しうる容器載置部と、前記容器載置部に置かれた薬剤容器の中から薬剤を取り出して前記カセット載置部に置かれた予備撒きカセットの各区画室に投入する薬剤移載機構と、前記薬剤分包機の前記薬剤手撒き装置に係る薬剤手撒き情報を取得して前記薬剤移載機構の動作制御を行う分配制御装置とを備えた薬剤手撒き代行装置。
【請求項2】
薬剤を収容した薬剤容器を多段に収納しうる容器運搬具を一時載置しうる運搬具載置部と、前記運搬具載置部に置かれた容器運搬具から薬剤容器を取り出して前記容器載置部に一時載置する容器移載機構とを備えたことを特徴とする請求項1記載の薬剤手撒き代行装置。
【請求項3】
前記容器運搬具に組み込まれていて前記容器運搬具が前記運搬具載置部に置かれると前記容器運搬具から薬剤容器を取り出すのを許容するが前記容器運搬具が前記運搬具載置部から持ち上げられると前記容器運搬具から薬剤容器が抜け落ちるのを防止するロック機構を備えたことを特徴とする請求項2記載の薬剤手撒き代行装置。
【請求項4】
前記薬剤移載機構に着脱可能であって装着時に移載対象の薬剤を保持する薬剤保持部材を複数個と、前記薬剤保持部材のうち前記薬剤移載機構に装着されていないものを清掃可能に保持する清掃部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤手撒き代行装置。
【請求項5】
前記カセット載置部から前記薬剤手撒き装置へ予備撒きカセットを移載するカセット移載機構を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された薬剤手撒き代行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187273(P2012−187273A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53258(P2011−53258)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】