説明

薬剤投与システム

【課題】改善された薬剤投与装置を提供する。
【解決手段】薬剤投与装置は、薬剤を含む空気と薬剤を含まない空気を選択的に送達する薬剤投与デバイスと、患者の呼吸パターンを監視するセンサ4と、患者が吸入を開始したとセンサ4が観察したときに開始するパルスで薬剤を含んだ空気を送達することを開始するように薬剤投与デバイスを制御するように構成されたコントローラ24であって、パルスは観察された患者の呼吸パターンに基づいてコントローラ24によって調節された長さを有するコントローラと、観察された呼吸パターンが薬剤を含んだ空気の吸入に効果的であるか効果的ではないかを患者に示すフィードバックインジケータ16と、患者に送達された投与量を計算する投与量計算器25と、所望の投与量が送達されたときに患者に示すインジケータ17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された薬剤投与装置に関し、改善された薬剤の処方を使用してこの装置によって送達することに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器障害の患者の治療に多くの薬剤が使用されてきた。プロラスチン(登録商標)などのアンチプロテイナーゼ抑制剤が研究され、炎症性の肺疾患の治療に使用され、先天性肺気腫での使用を承認されている。イロプロストなどのプロスタサイリンズ/プロスタサイリン類似物は肺高血圧の治療に使用される。パルモザイム(登録商標)(組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼ)およびスーパーベント(登録商標)(商標)などのムコアクティブ薬剤は、嚢胞性線維症の肺疾患の患者の治療用に使用され、研究されている。ガンマインターフェロンは肺線維症および結核の治療に使用するために研究されている。サイロスポリンなどの免疫抑制剤は、肺器官の拒絶反応防止のために研究されている。インターフェロン、腫瘍関連抗原、受容体たんぱく質または発ガン遺伝子たんぱく質に対して使用される特定のモノクローナル抗体、およびアデノウィルスを対象とする遺伝子治療は、種々の肺がんの治療のために使用され、研究されている。
【0003】
ベントリン(登録商標)、アルブテロール(登録商標)およびサルブタモール(登録商標)などのβ2アドレナリン作働性気管支拡張剤は、気管支痙攣の防止と軽減を目的としたものである。ブデソニド(登録商標)などのコルチコステロイドは、肺の炎症、および、喘息などの反応性気道疾患の治療に使用されている。エクソサーフ(登録商標)、サーバンタ(登録商標)、サーファクシン(商標)などのサーファクタントは幼児の呼吸困難症の治療に使用され、慢性気管支炎および嚢胞性線維症などの所定の炎症性肺疾患の治療法として研究されている。抗感染剤(たとえば、抗菌剤(例 トブラマイシン)、抗真菌剤(例、アンバイオゾーム(登録商標))、および、抗ウイルス剤(例、シナジス(商標)、ビラゾール(登録商標)、インターフェロン、ワクチン))は、肺感染症を制御するために使用され、特に、子供、老人、免疫無防備状態の患者、およびたとえば、嚢胞性線維症の肺疾患などに罹患している患者など、危険性の高い症例に使用されている。後者の患者は、典型的には、グラム陰性菌である緑膿菌が引き起こす急性および慢性の気管支の炎症にかかりやすい。緑膿菌感染症は、抗菌性ポリペプチドであるコリスチン、および、アミノグリコシド抗生物質のトブラマイシンで治療する。
【0004】
WO 96/12471号は、アミノグリコシドの処方(トブラマイシン)を使用したエアゾール化を開示している。この処方は、約0.225%の塩化ナトリウムを含む溶液約5mlの中に溶解した、約200mgから約400のアミノグリコシドを含む。この処方は約5.5から6.5の間のpHを有し、エアゾール化して投与される。この処方は気管支の感染に罹患した患者の気管支内空間にいる感染性のバクテリアの少なくとも95%を抑制する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような薬剤を噴霧した形態で送達するために、種々の薬剤投与装置が適している。たとえば、WO 96/12471号では、アミノグリコシド溶液のエアゾール化に適しているジェットタイプの噴霧器が開示されている。これは、製剤を、主に1μmから5μmの範囲の粒子サイズを有するエアゾールで噴霧する。この処方を噴霧するのに適した噴霧器の数は限定されている。またこの種の処方は非常に大きな体積を有し、複数の呼吸で送達しなければならない。
【0006】
適切なジェットタイプの噴霧器はWO 96/12471号の図3に示されており、ケース、マウスピース、キャップで覆われた噴霧器カップ、ベンチュリチャンバ、空気供給チューブ、およびバッフルを備える。液体の処方が噴霧器のカップに入れられ、空気供給チューブがカップに接続される。圧縮空気がカップからジェット噴霧器の開口部に通過し、ここで、液体の溶液をバッフルにあて小さな粒子に粉砕される液体の細いスレッドに剪断することによってエアゾールが生成される。患者がマウスピースを介して吸入すると、空気はキャップの空気取り入れ穴を介してベンチュリチャンバに吸い込まれ、ベンチュリチャンバでは空気とエアゾールが混合され、患者に送られる。
【0007】
開示された噴霧器はすべて、エアゾールを連続的に生成する連続的に動作する噴霧器である。
【0008】
さらに、WO 96/12471号は、噴霧器を使用して、エアゾール送達の有効性の尺度である、患者の痰の中のアミノグリコシドの薬物動態を決定する研究にも言及している。このようなジェット噴霧器は臨床状態では約10%の効率であることが見出されているが、肺の中に蓄積し吸収される量はこの10%の一部分に過ぎない。したがって必要な処方の投与量を患者に到達させるには、大量の薬剤を使用しなければならない。この理由のため、関連技術の文書は、約5mlの溶液に溶解した、約200mgから約400mgのアミノグリコシドからなる処方に関している。これは、患者に送達する薬剤の量としては大量であり、この処置はおそらく数分間続く何回かの吸入で送達しなければならないことを意味する。300mgを送達するのに、10分から13分という例が与えられている。WO 96/09085号およびWO 96/13292号に開示されたような単一の吸入噴霧器では、1吸入ごとの最大の薬剤の質量は10mg未満に限定されている。したがってこのような噴霧器は、抗生物質を送達するのには適していない。
【0009】
他の適切な噴霧器は、メッシュタイプの噴霧器である。
【0010】
抗生物質を含む一部の薬剤は、患者の症状をすぐに軽減する効果を有する喘息用の気管支拡張剤とは異なり、吸入時に効果を患者に直接フィードバックすることはない。さらに、エアゾールの吸入は、pHと張性に関して適切に処方されていても、患者の気管支狭窄と咳き込みを起こす原因となりうる。この結果、患者は送達された薬剤の量に関して実際にはなにも分からない。彼または彼女は、噴霧される物質がなくなるまで、吸入し続けるだけである。
【0011】
最近の研究では、in vitroのデューティサイクルと、在宅で噴霧器を使用している間に吸入された投与量の間の関係が調査されている。在宅での噴霧器の治療法の効果は、処方された療法の厳守、肺の関連する領域における薬剤の蓄積、および噴霧の間の呼吸パターンによって決定される。患者の呼吸パターンが研究室で測定され、これらの測定値から、患者のデューティサイクルが計算された。デューティサイクルは、患者が吸息に費やした時間の比であり、通常は0.3から0.5の範囲内である。患者がエアゾールを噴霧器から吸入している場合、彼または彼女が吸入するエアゾールの量は彼のデューティサイクルに直接比例する。これは、テストの間、フィルタ上の吸入された投与量を測定し、また肺のシンチグラフィを使用することによって確認される。
【0012】
在宅で噴霧器を使用する間に同様な測定を行うと、記録されるデューティサイクルは、研究室内で記録されたデューティサイクルより大幅に小さい。これは、噴霧器の出力が連続的であり、患者は処置を中断して休んだり、話したり、飲んだり、または、疾病関連の症状の結果として咳き込んだりなどするためである。これによって患者が吸入する薬剤の量は低減する。さらに、デューティサイクルを使用した投与量の測定は、患者がよい吸入方法を有しているかいないか、または、医師から処方された回数の処置を行っているなど患者が処置療法を厳守しているかいないかは考慮しない。このため、患者が処置に反応しないのは、患者が処方された療法を遵守していないためなのか、または患者がデリバリー装置から正しく吸入していないためなのか、または薬剤の効果がないためなのか、医師は分からないため、患者が治療に反応しない理由を評価することを特に困難にしている。種々の研究から、非常に高い割合の患者が自分の処置療法を遵守していないことはきわめてはっきりしている。
【0013】
在宅でのデューティサイクルが研究室で測定されたデューティサイクルよりはるかに少ない場合、患者は処方された薬剤より大幅に少ない量しか受け取っていないことは明らかである。さらに、患者の吸入方法がよくないことと、療法を遵守していないことは、患者の肺が受け取る薬剤の量をさらに低減する。患者の肺が実際に受け取ったと予想される投与量のパーセンテージは非常に変わる。典型的には、在宅の使用では噴霧器に入れた薬剤の最初の量の10%未満しか、患者の肺に届いていない。したがって、患者の肺に実際に届くように、10倍のオーダ程度の薬剤を噴霧する必要があるのは明らかである。
【0014】
薬剤を患者の肺に送達する多くの異なるタイプの装置が知られている。空気式またはジェットタイプの噴霧器は、吸入用にエアゾール化された薬剤を供給するには特に効果的であるが、噴霧される薬剤が振動性の圧電結晶によってメッシュを介して強制的に送られ、メッシュを通過する飛沫は患者が吸入する空気の中に混入される超音波タイプの噴霧器など、別のタイプの噴霧器も使用可能である。メッシュのゲージは空気の流れの中に入る飛沫の大きさを決定する。別法としては、薬量計スペーサを使用することもできる。スペーサを使用する時には、薬剤はエアゾール化された形態か、または、粉末化された形態の薬剤を保持チャンバの中の空気に取り込むことによってスペーサの保持チャンバの中に導入される。ついで患者は保持チャンバから呼吸し、これによって、薬剤が含まれた空気を吸入する。このようなスペーサは、子供または老人の患者を治療する時、または所定の薬剤で使用する時には特に効果的である。薬剤は通常、何回かの呼吸で送達される。もちろん、呼吸ごとの薬剤の濃度は、外気が保持チャンバ内に入り込み、患者が吸入している空気と入れ替わることによる希釈の結果として、また、チャンバ内に薬剤が沈着する結果として、時間の経過と共に減少する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の様態によれば、薬剤投与装置は、薬剤を含んだ空気と薬剤を含まない空気とを選択的に送達する薬剤投与デバイスと、患者の呼吸パターンを監視するセンサと、患者が吸入を開始したことをセンサが観察した時に開始するパルスで薬剤を含んだ空気を送達するように薬剤投与デバイスを制御するように構成されたコントローラであって、パルスは、患者の観察された呼吸パターンに基づいてコントローラによって調節される長さを有するコントローラと、観察された呼吸パターンが薬剤を含んだ空気を吸入するのに効果的であるか効果的ではないかを患者に示すフィードバックインジケータと、呼吸ごとのベースで患者に送達された投与量を計算する投与量計算器と、所望の投与量が送達された時に患者に示すインジケータとを備え、これによって、装置は、処置の少なくとも80%の望ましい投与量全体を送達するように構成される。薬剤投与装置のこれらの機能の結果として、処置の少なくとも80%の望ましい投与量が送達される。これは多くの要因の組み合わせの結果であり、この要因の中には、肺に到達する吸入段階の部分だけで薬剤を含んだ空気を送達することが含まれ、また、患者が彼または彼女が正しく吸入しているかしていないかに関して指示を受け取ることの結果でもある。また、適切な投与量が送達された時に患者に示すことも重要である。処置の少なくとも90%の投与量全量を送達すること、または好ましくは、処置の少なくとも90%は、これまで使用されてきたデリバリー装置と比較すると大変な改善である。送達された薬剤のほとんど全部が肺の正しい部分に正しく送達されるので、この改善は多くの利点を提供する。これは、既存の噴霧器と比較すると、必要な薬剤の処方量がかなり少なくなることを意味する。これによって薬剤のコストが低減し、送達に必要な時間も短くなる。本発明による装置を使用すると、関連技術のデリバリー装置に比べると、正しい投与量を吸入するために必要な呼吸の数は3分の1よりも少なくできる。さらに、装置は患者に反応し、薬剤を含んだ空気を送達するパルスの長さを最適化するため、この装置は病院内で使用されるのみではなく、在宅での使用にも理想的である。したがって、本発明を使用することによって、かなりの利点が得られる。
【0016】
装置がデータログを含み、送達された投与量を含む各処置に関する情報のレコーダルに関するデータログを含むことが好ましい。医師が後でデータログからのデータを確認し、患者が行った処置の回数の点から、実際に患者がどの程度処置を遵守したかを確認し、これらの各々の処置の間に実際に受け取られた投与量を確認することができるため、この装置の在宅での使用に有利さが増す。
【0017】
薬剤投与デバイスは、薬剤を多数の呼吸に渡って患者の肺の中に送達する任意のデバイスであってよい。たとえば、薬剤投与デバイスは保持チャンバを画定する容器、メッシュタイプの噴霧器、または空気式タイプの噴霧器を含む、薬量計スペーサであってもよい。
【0018】
他の有利な機能は付随する請求項に述べられている。
【0019】
吸入の間だけ薬剤を噴霧し、患者の吸入パターンに適合したこのようなエアゾールデリバリー装置を使用すると、呼息の間にはエアゾールは生成されないので消耗が大幅に少なくなるため、必要な薬剤の体積は大幅に低減する。このようなデリバリーデバイスを使用する特に驚くべき効果は、処置療法を遵守する患者が実質的に増大することである。遵守という用語は、処方された投与量を正しい時間に実際に服用することによって、患者が処方された療法を遵守することを意味する。このようなデリバリー装置によって、デバイスが、患者が正しい処置を行ったことを知らせるまで、処置の90%以上ものを正しく服用するという結果になると考えられる。この装置は予想できないほどの高いレベルの遵守を生んだので、本発明は他のデリバリー装置と比較すると、大幅な、予想もできなかった利点を与える。従来の噴霧器では入れられた薬剤のうち約10%の体積の薬剤しか患者の肺に届かず、在宅で使用する場合はさらに低いのに対し、本発明では噴霧器に入れられる薬剤の量を約50%減少できることを意味する。これは、薬剤のコストの大幅な低減につながり、また、必要な薬剤が患者に投与されるために必要な時間がはるかに少なくなることも意味する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による薬量計スペーサの概念図を示す図である。
【図2】ピストンが保持チャンバの中で移動可能である薬量計スペーサの第2の形態を示す概念図を示す図である。
【図3】ピストンが保持チャンバの中で移動可能である薬量計スペーサの第2の形態を示す概念図を示す図である。
【図4】図2と図3に示された第2の実施形態の動作を制御するコントローラの構成図を示す図である。
【図5】患者の呼吸パターンを示すグラフを示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態による、噴霧器の上部を示す図である。
【図7】本発明の別の実施形態による、噴霧器の下部を示す図である。
【図8】図6と図7に示されたタイプの噴霧器の動作のフロー図を示す図である。
【図9】測定された1回換気量に対して、予想される1回換気量を配置したグラフを示す図である。
【図10】薬剤を供給するために2部分に分かれた薬剤パッケージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照しながら本発明の実施形態を例として説明する。
【0022】
図1を参照すると、筐体1aは保持チャンバ1を画定し、保持チャンバ1は入口2を含んで、液体または乾燥粉末の薬剤は入口2を介して、たとえばマルチドーズ吸入器(MDI)3などの飛沫または粒子の源から保持チャンバに入る。MDI3は、空気が薬剤を含むように、液体状または粉末状の薬剤を雲として放出する。センサ4がMDI3と保持チャンバ1の間に配置され、MDI3の各動作を検出する。また、センサ4は空気または他のガスが入口2を介して保持チャンバ1に入るレートも検出する。
【0023】
保持チャンバ1はまた出口5も含み、マウスピース6が出口5に接着される。患者はマウスピース6から吸入し、保持チャンバから薬剤を含んだ空気またはガスを吸い込む。これによって、外気またはガスが入口2を介して保持チャンバ1に吸い込まれる。入口2を介した空気の流入レートは、センサ4によって検出される。
【0024】
第1の弁7aが出口5とマウスピース6の間に配置され、患者が吸入すると、第1の弁7aを介して薬剤を含んだ空気が通過する。第2の弁7bはマウスピース6の中に配置され、呼気を大気中に排出する。コントローラ(図4に関して次にさらに詳細に説明する)は、第1の弁と第2の弁(7a、7b)の両方を制御するように動作する。呼気が保持チャンバ1の中に入らないように、第1の弁は呼息の間は閉じていなければならない。第2のセンサ8がマウスピースの中にあり、患者の呼吸パターンを観察する。コントローラは、観察された呼吸パターンに基づいて、第1の弁7aと第2の弁7bを動作させる。患者が吸入を開始すると、第2のセンサ8がこれを検出し、コントローラは第1の弁7aが開き、第2の弁7bが閉じて、患者が保持チャンバ1から薬剤を含んだ空気を吸入するように弁を動作させる。コントローラが、患者に送達する薬剤を含んだ空気がもうないと決定するか、または患者が吸入を中止すると、第1の弁7aは閉じ、第2の弁7bは開いて、患者は残りの吸入を終え、第2の弁7bを介してマウスピースに外気が入り、患者はマウスピースを介して息を吐き出して呼気は第2の弁7bを介して外気に排出され保持チャンバ1には入らない。コントローラは、保持チャンバ1からの薬剤を含んだ空気をパルスで吸入できるようにし、パルスの長さは観察された患者の呼吸パターンに従って調節される。また、コントローラは患者の呼吸パターンを分析して、吸入が、薬剤を含んだ空気のパルスを送達するのに適していることを確認する。吸入が弱すぎたり、不安定である場合、薬剤を含んだ空気のパルスは送達されないか、早く停止する。
【0025】
2つのインジケータ16と17がこのスペーサに含まれる。第1のインジケータ16は患者フィードバックインジケータであり、適切な吸入が行われているか行われていないかを患者に示す。この実施形態では、フィードバック16はバイブレータユニットであり、薬剤を含んだ空気が送達されている間穏やかに振動する。第1の弁7aが閉じて第2の弁7bが開くとすぐに、フィードバックインジケータ16はオフになる。また、患者が正しく吸入していない場合、フィードバックインジケータ16は振動を停止するか、振動を開始しない。したがって、患者はスペーサを使用しているとき、正しく吸入する方法をすぐに習得する。別法としては、フィードバックインジケータは薬剤を含んだ空気が送達されている間にハム音を出す可聴インジケータであってもよく、または、薬剤を含んだ空気が送達されているときに点灯するLEDなどの可視インジケータであってもよい。
【0026】
第2のインジケータ17は、患者が薬剤の全量を受け取った時と、処置が終了したときを示す。これは、トーンを発生する小さなスピーカなどの可聴インジケータであってもよく、またはLEDなどの可視インジケータであってよい。もちろん場合によっては、フィードバックインジケータ16と第2のインジケータ17を単一のインジケータに組み合わせ、好ましくは、バイブレータまたは可聴信号源としてもよい。
【0027】
薬剤が保持チャンバ1に放出されると、まず、重力と筐体1aと薬剤の間の静電力によって保持チャンバの壁と基部の上に薬剤が沈着した結果として、第2に、入口2を介して保持チャンバに空気が入り、患者が吸入した薬剤を含んだ空気と置き換わることによって生じた希釈の結果として、薬剤の濃度は減少する。
【0028】
患者に実際に送達された薬剤の投与量を決定するために、投与量計算器(図示せず)によって計算を行わなければならない。これらの計算の詳細は、参照により内容が全体として本明細書に組み込まれている、WO 96/13294号で発表された発明者らの以前の共同特許出願で説明されている。すなわち、投与量の計算は呼吸ごとのベースで行われ、所望の投与量が送達されるまで、1呼吸で送達された薬剤の量が、その前の呼吸で送達された薬剤の量に加算される。この段階で、投与量計算器は第2のインジケータ17に処置が終了したことを示させ、コントローラは薬剤を含んだ空気の送達を不可能にする。さらに、スペーサは種々の異なる薬剤の処方に使用できるため、投与量計算器は処方入力も含む。処方入力は、使用されている薬剤の処方を選択できる、スペーサ上のボタンという形状でもよい。投与量計算器のさらなる詳細を図4に関して説明する。
【0029】
別のスペーサの実施形態が図2に示される。このスペーサは特に、乾燥粉末吸入器(DPI)と共に動作するように構成される。DPIは通常、患者の吸息の流れによって作動する。DPIは、安定的にトリガされないので、吸息が非常に少ない患者には適していない。DPIは、患者が彼または彼女の肺の中に吸入する微細な粉末の形状で薬剤を放出する。従来のMDIと同じように、従来のDPIは、与えられた投与量のほとんどが患者ののどの後部に密着するという欠点を有する。図2と図3を参照すると、筐体1aは保持チャンバ1を画定し、保持チャンバ1にロードすることと、保持チャンバ1を空にすることの両方に使用される第1のポート9を含む。またスペーサはチャンバ1内で動くことのできるピストン10を含む。ピストン10を後ろに引くと、空気またはガスが第1のポート9を介して保持チャンバ1に吸い込まれ、ピストンの背後に入った空気は第2のポート11を介して逃げる。
【0030】
使用に際しては図2に示されるように、ピストン10を後ろに引き、第1のポート9を介して空気またはガスを保持チャンバ1に引き込む。空気またはガスは第1のポート9に着く前に、薬剤を空気またはガスの中に放出する乾燥粉末吸入器13と、センサ4を通過する。ピストン10は引っ込んだ位置に固定される。ついで図3に示されるように、患者はDPI13を除去し、マウスピース6と交換する。ついで患者はマウスピース6を介して吸入し、薬剤を含んだ空気またはガスはポート9を介しセンサ4を超え、マウスピース6を介して通過し、保持チャンバから吸入される。センサ4はこの空気の流れを検出する。
【0031】
患者が吸入するとピストン10は保持チャンバ1を通過して戻り、保持チャンバ1を空にする方向だけで動き希釈を防ぐように構成される。患者が息を吐き出すことができるように、1方向弁14がマウスピース6の中に配置される。またマウスピース6は第2の弁15も含み、第2の弁15は、患者が吸入している間に薬剤を含んだ空気が送達されない場合、弁15が開いて、患者が吸入する前に外気がマウスピースの中に入るように、コントローラ(次に説明する)によって制御される。次に説明するように、これによって薬剤がパルスで送達される。したがって、コントローラは、患者の呼吸パターンを監視するセンサ4から受け取った情報に基づいて弁15を動作させる。コントローラが、患者が正しく吸入していることを検出すると、弁15を閉じて、患者が保持チャンバ1から吸入できるようにする。その呼吸に関する薬剤のパルスが受け取られると、弁15は再び開いて、患者は、外気と薬剤を含まない空気を受け取る。パルスの長さはコントローラによって決定され、薬剤の送達を最適化する。息を吐き出す間、呼気は1方向の弁14を介して排出される。吸入中は外気は保持チャンバに入らないため、保持チャンバ内の薬剤の濃度の低減は、チャンバ内の薬剤の蓄積から起きることに注意されたい。
【0032】
図1に示されるように、2つのインジケータ16と17がある。患者フィードバックインジケータ16は、適切な吸入が行われているか行われていないかを示し、第2のインジケータ17は、患者が全投与量を受け取った時と、処置が終了したことを示す。
【0033】
次に、図2と図3に示された実施形態に関して、患者に与えられる投与量の計算を説明する。患者はまずDPI13をポート9に接続する。ピストン10が後ろに引かれ、DPI13とポート9を介して保持チャンバ1の中に空気を引き込むので、保持チャンバには薬剤が充填される。マイクロフォンまたは圧力検出装置であってもよいセンサ4は、薬剤がチャンバ1に導入されたことを検出し、信号を生成する。投与量計算器(図示せず)は信号をセンサ4から受け取り、クロック(図示せず)を開始する。ついで患者はDPIをポート9から除去し、マウスピースと取り替える(図3)。患者はマウスピースを介して吸入し、空気はセンサ4を通過して流れる。投与量計算器は、典型的には100分の1秒ごとなど、非常に頻繁に患者に送達される薬剤の量を計算する。保持チャンバ1の中の薬剤の濃度は連続的に計算され、時間の経過と共に保持チャンバ1の壁に体積する薬剤を考慮する。メモリは、薬剤がチャンバ1に導入されてからのチャンバ1内の薬剤の濃度を与えるデータルックアップ表を含む。吸入された薬剤の投与量はついで、センサ4が感知した空気の体積と、その時点での薬剤の濃度を乗算することによって計算される。この100分の1秒のサンプル期間の間に計算された容量はついで、以前のサンプル期間の間の計算で計算された投与量に加算される。別法としては、計算は呼吸ごとのベースで計算してもよい。累積した合計の投与量が既定のレベルに達すると、第2のインジケータ17を介して、全投与量が与えられたことが患者に示される。
【0034】
図4は、図2と図3に示されたスペーサに関するコントローラ24の構成図を示すが、これは図1に示されたスペーサにも適している。コントローラ24は、電源34から電力を供給されるプロセッサ25を含む。センサ4は増幅器32を介して信号をプロセッサ25に送り、薬剤が保持チャンバ1に導入された時と、患者の吸入のレートを示す。プロセッサ25は、プログラム29、ルックアップデータ31を含むメモリ30、およびクロック27に基づいて、患者に与えられた投与量を計算する。処置が開始する前に、送達される薬剤の処方を入力する必要がある。この装置で処方を入力する1つの方法は、装置の上のボタンの形である、薬剤処方入力26を含む。装置は、任意の数の薬剤を患者に送達するのに適しており、ボタンを押すとプロセッサ25は使用されている処方を考慮することができる。薬剤の処方に関する情報はメモリ30の中に記憶される。プロセッサ25は通常、呼吸ごとのベースで患者に送達される薬剤の量を計算し、1回の呼吸で送達されたことが検出された投与量を、その前の各呼吸で送達された量に加算する。これは、吸入の間に定期的なベースで空気の流れをサンプリングすることによって行うことができる。プロセッサが、既定の投与量が与えられたと計算すると、信号が終端インジケータ35に出力され、処置は停止し、患者はマウスピースを介して外気だけを吸入でき、薬剤が含まれた空気は吸入できないようになる。
【0035】
プロセッサ25はまた呼吸パターンを分析し、吸入の間患者が正しく呼吸している場合は、患者フィードバックインジケータ16が、正しい吸入が行われていることを患者に示すようにする。吸入が所定の強さより強い場合、または適度に安定している場合に、正しい吸入が行われていると考えられる。呼吸パターンを分析する時、プロセッサ25はまた、薬剤の送達が行われるパルスを生成する。呼吸パターンが適切でないと考えられる場合、パルスは発生しないか早く終了する。したがって、患者フィードバックインジケータ16は、薬剤の送達の間に正しい吸入が行われている時だけ、患者に示すようにすることができる。パルスの間に吸入が薬剤の送達に適さなくなった場合、パルスは早く終了し、患者フィードバックインジケータ16は、患者に、正しい吸入が行われていることを示さなくなる。
【0036】
もっとも効果的に薬剤を送達するために、プロセッサ25は各呼吸を分析して、以前の呼吸(複数可)に基づいて弁を制御し、患者の吸入段階だけでパルスで薬剤を送達するようにする。プロセッサは、薬剤を送達するパルスを生成するパルス生成装置(図示せず)を含む。パルス生成装置は、各パルスの開始時とその長さを制御する。たとえば、薬剤送達パルスは、患者の吸入段階の最初の50%で発生してもよい。しかし、患者の吸入段階の長さは処置ごとに変化する可能性があり、または単一の処置の中でも変化する可能性がある。したがって、プロセッサ25はこの変化に適合しなければならない。たとえば、プロセッサが、吸入段階の最初の50%に対応する薬剤送達パルスを生成している場合、クロック27を使用して、以前の呼吸の長さまたは以前の呼吸の数を決定する必要がある。
【0037】
続く呼吸では、プロセッサ25のパルス長生成装置は、患者が吸入を開始したという信号をセンサ4から受信するとすぐにパルスを生成できる。パルスの長さは、以前の吸入段階の長さの50%であるか、またはたとえば以前の3回の吸入段階の平均の50%となる。患者が正しく吸入していない場合、プロセッサ25はパルスを停止し、患者の吸入が適切ではないことを彼または彼女に示す。プロセッサ25は図1から図3に関して説明されたように弁を制御する。
【0038】
別法としては、パルス長は50%より多くてもよく、パルス長が最大化される別の構成の説明は、本発明の後の実施形態で説明する。このような構成は薬量計スペーサに適用できる。
【0039】
またメモリ30を使用して、各処置の間に装置が送達する投与量を記録することができる。プロセッサ25は各処置の間、投与量計算器として動作し、呼吸ごとのベースで送達された投与量を計算する。処置の終了時に、全投与量が送達された結果として、または、全投与量が送達される前に患者が処置を停止した結果として、実際に送達された投与量がメモリ30の中に記録され、後から、医師または他の人が患者が受け取った投与量を確認し、この患者が治療を遵守したかしなかったかを確認できる。たとえば患者が処置に反応しなかった場合、医師は療法が遵守されていたかいなかったかが分かり、遵守されていた場合、異なる処置を処方することができる。このように、メモリ30は処置のデータログも構成する。メモリ30は通常は、各処置が行われた時間も記録し、さらに、必要であれば患者の呼吸パターンに関する情報も含めることができる。
【0040】
上記では、薬剤の濃度が時間と共に減少した様子と、知られた体積の吸入から生じた希釈によって薬剤の濃度が減少した様子とに関するデータを与えるルックアップ表を参照した。ルックアップ表の中のデータは実験によって集めなければならない。たとえば、時間に伴う薬剤の濃度の減少に関するデータを集める時、知られた量の薬剤を保持チャンバに導入し、ついで所定の時間の後保持チャンバ1内の空気を濾紙に放出する。ついで放出された薬剤の重さを図る。この実験は異なる期間で繰り返して、必要なデータを確立する。時間プロファイルに伴う濃度の変動は、異なる薬剤ごとに異なる可能性がある。したがって、装置は正しいプロファイルをプログラムに組み込まなければならない。
【0041】
次に、本発明による噴霧器を説明する。本発明を理解するために図5を参照するが、図5の中では、患者の吸入パターンが時間の経過と共に示されている。呼吸パターンはあまり規則的ではなく、一部の呼吸は他の呼吸より深いことが分かるであろう。
【0042】
この応用の図6と図7は、噴霧器を示す。図6を参照すると、マウスピース101が示され、患者はマウスピース101を介して矢印102の方向で吸入する。マウスピース101の下には除去可能な噴霧セクション103があり、噴霧セクション103は基部104の上に置かれている。
【0043】
基部104は図7にさらに詳細に示されている。図7を参照すると、基部104は入口105を含み、空気は入口105を介して、コンプレッサ(図示せず)から圧力をかけられて供給される。圧縮空気はチューブ106を介してマニホールド107に導かれ、マニホールド107は圧縮空気の流れを排気口108に向け、排気口108は空気を図6に示された噴霧セクション103に向ける。基部104はまた圧力センサ109を含み、圧力センサはポート110を介して噴霧セクション103内の圧力を検出する。
【0044】
再び図6を参照すると、圧力のかかった空気は基部104の排気口108を通過して、管状ポスト111を介して噴霧器ノズル112に伝えられ、空気は噴霧器ノズル112から、圧力をかけられて噴出する。ノズル112から噴出する圧縮空気の経路にデフレクタ113があるので、圧縮空気は横にそれて、バッフル114の下を通過する。圧縮空気の通路は管状ポスト111の上を横切るので、薬剤115は、管状ポスト111の外面と、管状ポスト111を囲むスリーブ116の内面の間で吸い上げられる。薬剤115は空気の流れの中で霧状になり、バッフル114の縁の下の空気の流れで運ばれ、マウスピース101を介して上昇して患者に入る。
【0045】
基部104の中の圧力センサ109は患者の呼吸パターンを監視し、マニホールド107はこの呼吸パターンに基づいて、吸入段階の最初の50%だけにパルスで噴霧セクション103に圧縮空気を供給し、薬剤の送達がそのパルスの間だけ起きるように制御される。
【0046】
本発明は薬剤送達パルスを生成する噴霧器に適用される。しかし本発明は上記とまったく等しい噴霧器のみに限定されるのではなく、他の噴霧器にも適用可能である。利便のために、本発明の次の説明は図6と図7に示されたデバイスの構成要素に言及するが、本発明は他のデザインのジェット噴霧器、超音波噴霧器、および圧力メッシュ噴霧器など別の噴霧器にも適用可能である。
【0047】
ジェット噴霧器には、空気ジェット噴霧器と液体ジェット噴霧器の2種類がある。圧縮空気を使用して液体を噴霧する空気ジェット噴霧器の例は、EP0627266(Medic-Aid Limited)に開示されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれている。液体を1つまたは複数のノズルの出口を介して吹きつけ、細かい飛沫のスプレーを生成する液体ジェット噴霧器の例は、WO 94/07607号(ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル社ら)に開示されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0048】
超音波噴霧器は、通常は振動する圧電素子で生成される超音波を使用して液体の薬剤を噴霧し、多くの形態をとる。これらの形態には、1)液体を圧電素子に直接接触させるもの、2)典型的には囲まれた液体である増幅インタフェースが圧電素子と液体の間にあるもの、3)圧電素子が、エアゾールが生成されるメッシュを振動させるもの、が含まれる。超音波噴霧器の例は米国特許第4533082号(マエハラら)、および、米国特許第5261601号(Rossら)に開示されており、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれている。これらの文書に説明される噴霧器は、調剤すべき量の液体を保持するタンクを有する筐体を含み、この筐体はタンクと接触する穴の開いた膜と、筐体と接続して穴のあいた膜を振動させる超音波バイブレータとを有する。超音波噴霧器の別の例は、WO 97/29851号(Fluid Propulsion Technologies, Inc)に説明されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれている。圧力メッシュ噴霧器の例は、圧電素子を含む場合もあれば含まない場合もあるが、WO 96/13292号(Aradigm Corporation)に開示されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0049】
上記のように、上記のタイプの噴霧器はすべて、薬剤をパルスで噴霧するために使用することができる。これは、噴霧と薬剤の送達は、オンとオフが切り替えられるということである。パルスは、噴霧が、患者に有利であるような患者の呼吸パターンの部分だけで生じるように制御することができる。図6と図7に示されたデバイスを参照すると、センサ109は患者の呼吸パターンを測定するので非常に重要である。コントローラ(図示せず)は、センサ109から呼吸パターン情報を受け取り、患者の呼吸パターンを分析する。コントローラは患者が吸入した時間の長さを計算し、この情報に基づいて、患者の吸入部分の間の薬剤送達パルスの中だけで噴霧が発生するようにマニホールド107を制御する。
【0050】
コントローラは図4に開示された形状と同じ形状であってもよい。この構成では、コントローラは、多くの機能を実行し、薬剤送達パルスの生成装置として動作するプロセッサ25と、呼吸ごとのベースで送達された投与量を計算する投与量計算器と、患者の呼吸パターンを分析し、患者が正しく呼吸しているかしていなかを決定し、フィードバックインジケータを使用して、正しい吸入が行われているかいないかを患者に示す呼吸パターン分析装置とを含む。さらに、装置が使用される薬剤の処方を入力する入力を含む場合、プロセッサは異なる処方を考慮することもできる。また、コントローラは、送達された投与量、各処置が送達された時など、処置に関する情報と、患者の呼吸パターンに関する情報を記録することができる。
【0051】
たとえば、よい構成とは、患者の吸入の最初の50%だけで薬剤送達パルスを生成することである。患者の吸入の長さは処置の間で変わり、単一の処置でも変わるので、1回または複数の呼吸に渡って吸入の長さを監視し、平均の吸入の長さを計算して次の呼吸に関するパルス長さを決定することが必要である。コントローラが決定すると、吸入が開始されたという指示をコントローラがセンサ109から受け取るとすぐに、患者の吸入の平均の長さの半分に等しい薬剤送達パルスを生成する。さらに、患者の吸入が分析され、患者の吸入が薬剤の送達に適していることを確認する。呼吸が弱すぎるかまたは中断された場合、または強さが非常に不均一であった場合、薬剤送達パルスは開始しないか、または、早く終了する。どのような呼吸が適切でどのような呼吸が適切ではないかを患者に知らせることを助けるために、噴霧器は患者に、呼吸が適切であるかまたは適切でないかを示す患者フィードバックインジケータ(図示せず)を含む。これは可視インジケータ、可聴インジケータ、または小さなバイブレータのいずれであってもよい。噴霧器は患者が正しく吸入している時に示し、患者が受け取る信号は噴霧のパルスと一致することが好ましい。このようにして、吸入が適切でない場合、噴霧のパルスは停止し、患者が正しく吸入しているという指示も停止する。
【0052】
全投与量が投与された時を患者に示す末端インジケータ(図示せず)も含まれる。このために、噴霧器は、呼吸ごとのベースで患者が受け取った薬剤の量を計算する投与量計算器も含む。デバイスの出力は実験を介して知られるので、パルスの合計の長さと噴霧器の出力レートを掛け合わせると、患者が受け取る投与量の合計が得られる。投与量計算器が、全投与量が送達されたことを決定すると、末端インジケータは患者に、処置が終了したことを可聴的または可視的に示す。ついで、コントローラはこの処置に関してはパルスの生成をしなくなる。
【0053】
患者の吸入の比率を広げ、50%以上で噴霧が発生するようにすると、治療に必要な体積を送達するためにより少ない呼吸しか必要でなくなるため、患者は処置をより早く受け取るという結果になる。しかし、薬剤が患者の吸息体積の最終体積で噴霧されて浪費されるのを防ぐために、噴霧のパルスは最終体積に達する前に止めなければならない。最終体積とは、吸息体積の終了時に患者が吸入し、上部気道(口と気管)に残っており、肺の下部には入っていかない体積のことである。最終体積に噴霧された薬剤があっても肺には届かないので、患者が息を吐き出す時に、噴霧器の中に残っている噴霧された薬剤と共に無駄になってしまう。
【0054】
最終体積は患者の上部気道の体積であり、患者の大きさに比例する。1回呼吸量は患者が罹患している呼吸器疾患のタイプと程度に応じて大幅に変わるため、最終体積は吸息の1回呼吸量のパーセンテージとして変わることは明らかであろう。したがって噴霧パルスの最適な長さは、吸入の開始時から、まだ吸い込むために残っている体積が最終体積に等しくなる時点までとなる。ついで噴霧は停止し、残りの最終体積はデバイスと患者の上部気道から、噴霧された薬剤を一掃して肺に送達される。このように、噴霧された薬剤が送達される吸息のパーセンテージは最大化されるので、処置時間が最小化され、さらに薬剤の無駄を避ける。噴霧パルスの長さは患者の吸息の1回呼吸量に依存する。したがって噴霧器は、好ましくは呼吸ごとのベースで患者の1回呼吸量を測定し、たとえば以前の3回の呼吸から、次の呼吸の平均の吸入量を計算しなければならない。したがって、噴霧パルス時間は次のように計算される。
【0055】
パルス時間=平均の吸息時間x(平均の1回呼吸量−最終体積)/平均の1回呼吸量
【0056】
圧力センサ109(図7に示される)に接続されたタイマが噴霧器に含まれ、吸息の長さを測定する。また、特定の患者の最終体積の推定値を記憶する記憶手段も噴霧器に含まれる。この数字は特定の患者について一定の値なので、これは処置の過程の開始時に入力でき、患者の大きさに基づいて推定される。噴霧器は、患者の1回呼吸量を測定する手段を含む。本発明の1形態によれば、患者の吸息の流れは連続して、典型的には10ミリ秒ごとに観察され、吸息の長さにわたって合計される。患者の1回呼吸量を測定する別のより簡単な方法は、本明細書の後半で説明する。
【0057】
また噴霧器は、吸息の長さ、1回呼吸量および最終体積に基づいて噴霧パルス時間を計算する手段を含む。計算手段は上記の計算を実行する。
【0058】
噴霧器が患者の呼吸パターンに適合しているという事実を考えると、患者が呼吸を開始したときに、最初の3回の呼吸の間は噴霧は生じない。これらの最初の3回の呼吸を使用して、患者の呼吸パターンを分析する。最初の3回の呼吸の流量が測定され、これから、最初の3回の呼吸の吸入段階の長さが計算され、平均が見いだされる。ついで、吸入の平均の長さを使用して、第4の呼吸の間の噴霧パルスの長さを決定する。さらに、患者は息を吸い込んだり吐き出したりし続けるにしたがって、前の3回の呼吸パターンが測定され、次のパルスの長さを計算するために使用される。このようにして、患者の呼吸パターンが処置の間に改善すると、噴霧器はこの変化に適合し、各呼吸の間に投与される投与量が最適化される。
【0059】
次に図8を参照すると、噴霧器と患者がとるステップが説明されている。第1の動作では、ボックス130は患者が吸入を開始したことを表す。ボックス131に示されているように、タイマは吸入の開始時間を記録し、ボックス133に示されるように、吸入の間に計算が行われ、患者の1回呼吸量が予想される。このステップは本明細書の後半でさらに詳細に説明されるが、ボックス132に示されるように、最後の3回の呼吸からの平均としての吸入時間とピークの流れを含む計算の中に含まれるべきデータが、計算に必要であることに注意されたい。ついでボックス134に示されるようにパルス時間が計算され、パルス長が圧縮空気が噴霧器に供給されるアキュムレータを消耗してしまう場合、ボックス135に示されるようにパルス時間は調節される。噴霧パルスは吸入の間に発生し、パルスが停止した後、計算が行われて、噴霧された投与量が決定される。ボックス138に示されるように、呼吸の終了時に、患者の吸入のピーク流量の詳細と吸入の長さが記録され、次の呼吸のためのパルス長を決定する計算を行うことができる。これはボックス139に示される。
【0060】
換気量のより簡単な予想に関して上記を参照する。吸息の時間に渡って測定された流量を合計することによって1回呼吸量を測定することはかなりの処理能力を必要とし、比較的高価なものであることが理解されるであろう。はるかに簡単な計算とその計算に使用するためにはるかに簡単な測定しか必要としない、より簡単に1回呼吸量を決定する方法を提案する。測定を行うために、噴霧器はピーク流量検出装置を含んで、吸息のピーク流量を検出する。
【0061】
計算されるか予想された1回呼吸量はピーク流量検出装置が測定したピーク流量と、タイマが測定した吸息の長さから導出される。1回呼吸量計算手段は、次の計算を実行する。
予想される1回呼吸量=Cx平均のピーク流量x吸息時間/60Cは定数であり、C=0.7であることが知られている。
【0062】
図9は、測定された1回呼吸量に対する予想された1回呼吸量のグラフである。グラフ上の各点は、患者の、吸入の長さに渡って吸入流量を合計することによる複雑な1回呼吸量の計算で測定された1回呼吸量と、新しい、より簡単な計算方法に従って予想された1回呼吸量の計算で測定された1回呼吸量を表す。予想される1回呼吸量は非常に正確であるので、予想される1回呼吸量は噴霧パルス時間の計算に含められることが分かるであろう。
【0063】
本発明を使用すると、肺胞を介した組織的な薬剤の送達の場合は通常そうであるような多数の吸入が必要な場合、または抗感染剤を使用する場合のように呼吸器疾患に関して肺にローカルに薬剤を送達する場合には、特に効果的な療法を提供することができる。エアゾールは、呼息については生成されず環境中に失われることがなく、吸入の最初の段階だけで生成されて無駄が少なくなるため、必要な薬剤の体積は大幅に低減される。また、このような噴霧器は、処置が完了し正しい投与量が受け取られた時を患者に知らせる。これによって、患者は多すぎる薬剤または過剰投与を受けることがなく、正しい治療効果のための十分な薬剤が受け取られるようになる。たとえば抗生物質では、大量に投与する必要のある場合、意外なことに、テストでは、処置の処置療法を患者が遵守する割合が大幅に増大し、少なくとも処置の80%、通常は少なくとも処置の90%に上ることが見出された。
【0064】
図10は、抗感染剤、蛋白性材料を含むほとんどのエアゾール薬品を格納し、これらを薬剤投与装置へ投与するのに適した薬剤のパッケージを示す。多くのエアゾール薬品は溶液の中では限定された安定性と貯蔵期間しか有しない。この結果、このような薬品は、吸入の前に戻さなければならない、粉末、結晶、微粉化または凍結乾燥化された固形物など、乾燥した形状で供給される。また、最終的な液体の製剤であるほかのエアゾール薬品も限定された貯蔵期間しか有しない。この結果、このような薬品は吸入時に成分を混合しなければならない。図10は、乾燥した形状で包装するか、または使用するまで液体成分を分離しておくことが必要な、エアゾール薬品を供給するために適した薬剤のパッケージの例を示す。当業者であれば、図10には、薬剤投与デバイスと統合して、戻された乾燥エアゾール溶液、または、2つの分離した液体成分として包装されたエアゾール薬剤を正確に投与することを可能にする薬剤のパッケージが示されていることが理解されるであろう。パッケージは本体201を含み、本体201からチューブ202が伸びている。本体201の反対側からはピストン203が伸び、ピストン203は本体201を介してチューブ202の中に押し込まれる。このために、ピストン203はノブ204を含み、人の指がノブと本体201のフランジを一緒に握ることによってピストン203を押しいれることができる。
【0065】
チューブ202は、ストッパ207によって分離された第1のチャンバ205と第2のチャンバ206とに分けられる。本体201から最も遠いチューブ202の端は、閉止部208で閉じられている。チューブ202の端は、マウスピース、バッフル、薬剤チャンバまたは他の適切な場所で薬剤投与装置と一体に設計され、液体または戻されたエアゾール薬品が薬剤投与装置内に入る直接通路を提供する。第1のチャンバ205は固形の薬品を含み、第2のチャンバ206は乾燥/乾燥した薬品が溶解できる希釈剤/溶媒を含む。別法としては、第1のチャンバ205は薬品の液体成分を含み、第2のチャンバ206は他の混合可能な液体成分を含む。ストッパ207は混合が必要になるまで、2つを分離しておく。
【0066】
ピストン203は本体201に最も近い端に向かってねじ込まれ、本体201はピストン203のスレッド209と係合する内部スレッドを含む。
【0067】
使用に際しては、ピストン203は本体201に対して回され、ピストンは材料を第2のチャンバ206からストッパ207を超えて第1のチャンバ205に押し出し、チャンバ205ではエアゾール薬品の固体成分と液体成分、または液体成分と液体成分の混合が行われる。ついでピストンは本体201の中に押し込まれ、液体の薬品が、薬剤投与装置または噴霧器を閉止部および付属部(統合)の端に含む、チューブ202から噴出される。こうして、液体エアゾール剤は直接正確に噴霧器の中に噴出される。
【0068】
また当業者であれば、ほとんどのエアゾール薬品の格納と、これらを噴霧器に噴射することに適した薬剤のパッケージは、第1のチャンバ205と第2のチャンバ206がストッパ207で分離されない単一のチャンバでも設計できることが理解されるであろう。この1部分だけの薬剤パッケージは、最終的な処方、すなわち、直接正確に噴霧器に吸入され投与される処方で包装できる液体のエアゾール薬品で使用するのに適している。
【0069】
装置の有利な効果を説明するために、使用できる薬剤の例を次に説明する。送達される薬剤の体積のため、この薬剤は多数の呼吸に渡る処置を必要とする。溶液ベースの処方は0.1から0.5mlの間の量を送達することを必要とし、粉末ベースの処方は1から5mgの間の量を送達することを必要とする。このような薬剤のほとんどは、予防的な処置のために使用され、処置の時に利益の点では直接のフィードバックは与えず、咳き込みなどネガティブなフィードバックも与えない。
【0070】
次に、「肺投与量」は肺に到達する薬剤の量であり、薬剤の一部は肺に到達しないので肺投与量を達成するには、肺投与量より多くの薬剤を送達する必要があることを理解されたい。
【0071】
肺に送達される重要な薬剤はトブラマイシンである。トブラマイシンの典型的な処置では、30mgを肺に送達することが必要である。典型的な噴霧器は約10%を肺に送達するので、300mgのトブラマイシンを噴霧しなければならない。300mgは通常、5.5から6.5のpHを有する0.225%の塩化ナトリウム5mlに溶解される。したがって、濃度は60mg/mlとなる。しかし、本発明を使用すると使用すべき薬剤はかなり少なくできる。送達効率は少なくとも80%であるため、肺に到達させなければならない投与量が15mgである場合、19mgだけ送達すればよい。処方は既存の噴霧器に関して上に説明した処方と同じでよいが、使用される薬剤の量ははるかに少ない。もちろん、投与される薬剤の量に加えて、デリバリー装置は、送達が継続するにしてもデリバリー装置の中に残存するデッドボリュームを有する。たとえば、一部の空気式またはジェットタイプ噴霧器では、デッドボリュームは0.8mlもの大きさである場合がある。しかし、メッシュタイプの噴霧器はわずか0.1mlのデッドボリュームしか有しない場合がある。したがって、実際に薬剤投与デバイスに入れる薬剤の量は、ジェットタイプの噴霧器では1.01ml(デッドボリューム用に0.8ml+送達用に0.21ml)、または、メッシュタイプの噴霧器では、0.42ml(デッドボリューム用に0.1ml+送達用に0.21ml)となる。もちろん、他のタイプの薬剤投与デバイスは異なるデッドボリュームを有するので、これらのデバイスに供給される実際の量は異なるであろう。
【0072】
嚢胞性線維症患者の主な感染性肺微生物の1つである「緑膿菌」の効果的な制御を提供するには、微生物を除去するために肺液内のトブラマイシンの濃度は最小抑制濃度(MIC)を超えなければならない。トブラマイシンに関しては、MICレベルは典型的には、微生物の90%に対しては16μg/mlより多くなければならず、MIC濃度は120分間に渡ってこのレベルを維持していなければならない。
【0073】
トブラマイシンを使用して、従来の噴霧器の性能と本発明による高適応装置の性能とを比較するために、8人の患者が従来の噴霧器を介して300mg/5mlを受け取るか、または、高適応装置を介して30mgを送達された。2時間後の痰の中の平均のトブラマイシン濃度は、従来の噴霧器では128μg/gであり、高適応装置では98μg/gであった。この研究は、5mgから30mgのトブラマイシンの範囲で、本発明に開示されたような高適応装置で送達したとき、少ない投与量でも認められるMICレベルを達成できることを示している。
【0074】
トブラマイシンは安定した薬剤であり、修正された図10に関連して上に説明されたように1部分だけのパッケージの中、または単一のガラスまたはプラスチックのユニット投与量ビンの中に、ユニット投与量の溶液として包装できる。
【0075】
コリスチン剤(コリスチン サルフォメテート)を使用する場合、一日あたりの最高投与量は3回の処置で6百万ユニットである。これは、1日あたり60万Uを肺に投与することに等しいが、本発明では、80%以上の効率で30万Uを一日に送達すれば、1回の処置で18万7千Uを2回処置して、1日あたり噴霧器によって37万5千Uだけ投与すればよい。したがって、薬剤の量の非常に大幅な低減が達成される。コリスチン剤の4種類の処方の例を次に説明する。第1の処方では、百万ユニットのコリスチンを0.9%の塩化ナトリウム2mlに溶解する。第2の処方では、0.9%の塩化ナトリウム0.75mlと1.275mlの水からできた2mlの溶液にコリスチンを溶解する。
【0076】
別法としては、コリスチンを0.9%の塩化ナトリウム2.5mlの中で2.5mgのサルブタモールと共に溶解するか、または別法としては、0.9%の塩化ナトリウム0.75mlプラス水1.275mlの中で2.5mgのサルブタモールと共に溶解して、追加の気管支拡張剤を含んでいてもよい。最後に、コリスチンは0.9%の塩化ナトリウム2.5mlの中に2.5mgのデオキシリボヌクレアーゼを含む溶液の中に溶解することもできる。コリスチンは溶液内では安定していないので、図10に関して上に説明したように、異なるびんまたは2つの部分に分かれたパッケージのいずれかで供給される希釈液であらかじめ混合しなければならない粉末として供給される。この用途では、薬剤投与装置の中に入れなければならないコリスチン処方の実際の体積は、メッシュ噴霧器では0.48ml、ジェット噴霧器では1.18mlでよく、従来の噴霧器よりはるかに少ない。もちろん、他の薬剤投与装置はデッドボリュームに応じて異なる量を必要とするであろう。
【0077】
同様な利点を伴って同じ方法で送達できる別の薬剤は、デオキシリボヌクレアーゼである。通常の噴霧器で必要な肺投与量は0.25mgである。通常の(従来の)噴霧器では、0.9%の塩化ナトリウム2.5mlの中に、2.5mgのデオキシリボヌクレアーゼが必要である。しかし、本発明では、0.125mgの肺投与量が80%の効率で送達されるので、0.156mgだけの投与量しか必要とせず、従来の噴霧器よりはるかに少ない。高い効率は、薬剤の粒子サイズが、直径が約3ミクロンという狭い大きさの範囲である結果である。このようにして、送達された薬剤の80%が肺に届き、そこにとどまる。埋伏および呼息によって失われるのは20%だけである。
【0078】
デッドボリュームによっては、ジェット噴霧器に供給される薬剤の量は1.06ml、メッシュ噴霧器では0.26mlであってもよい。他の薬剤投与装置はデッドボリュームに応じて異なるボリュームを必要とするであろう。
【0079】
組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼ治療を開始すると、患者のうち約38%が、基準線を超えて10%より多いFEVの変化を示す。一部の患者は、鼻呼吸、会話、咳き込みなどよくない噴霧器の使い方により吸入した療法に応答せず、吸入の遵守性はよくないという結果になる。
【0080】
従来の噴霧器デバイスでの療法には応答しなかった患者における、本発明による装置によって送達された組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼに対する応答を評価する研究。
【0081】
組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼ療法に応答しなかった8人の大人のCF患者(この療法に対する平均の応答率は、FEVの変化が4.17%)が、0.25ml/0.25mgの調剤を使用して10日間、本発明のデバイスによりエアゾール化された組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼを送達された。FEVの平均の変化率は11.51%であった。
【0082】
この結果により、吸入療法に応答しなかったCF患者は、高適応送達装置では従来の噴霧器と比較して改善された応答を有したことが示された。この研究は、本発明で開示されたような高適応装置で送達したときは、0.06/0.25mgの範囲の組み換えヒトデオキシリボヌクレアーゼという少ない投与量であっても認められることを示している。
【0083】
別の適切な薬剤は、A1AT(α1抗トリプシン)であり、従来の噴霧器では肺投与量は典型的には20mgであり、0.9%の塩化ナトリウム4mlの中の約200mgの薬剤を噴霧する必要がある。本発明によるデリバリー装置の送達効率により、0.9%の塩化ナトリウム1mlに付き50mgの濃度を有する処方を12.5mg送達する噴霧器では、10mgの肺投与量が必要となる。発明者らのジェットタイプの噴霧器では、必要な薬剤の量は1.05であるが、メッシュタイプの噴霧器では0.35mlである。他の薬剤投与装置はデッドボリュームにしたがって異なる体積が必要となるであろう。
【0084】
A1ATは、水での希釈を必要とする粉末として供給される。図10に開示されたような2部分に分かれたパッケージが薬剤の希釈液を供給するために適している。
【0085】
別の薬剤はサイクロスポリンであり、通常は噴霧器で送達され、1mlあたり125mgの濃度で100mgの肺投与量を必要とする。通常は、4mlのプロピレングリコールの中の500mgのシクロスポリンを噴霧しなければならない。本発明による肺投与量は、同じ処方で62mgしか使用せず、50mgである。
【0086】
典型的なジェット噴霧器に供給される量は1.3mlであり、メッシュタイプの噴霧器では0.6mlである。別の薬剤投与装置はデッドボリュームに応じて体積を必要とするであろう。
【0087】
ブデソニドは高い抗炎症活性を伴うコルチコステロイドであり、喘息の管理には重要である。効果をあげるためには、ステロイドは何ヶ月から何年にも渡る長期間にわたって送達しなければならない。しかし、副腎の機能、カルシウムの代謝、および子供の成長速度に重大な副作用が生じる可能性があるため、送達する投与量は最小にすることが重要である。また、のどの刺激、カンジダ症、発声障害を含む局所的な副作用もある。
【0088】
噴霧用のブデソニドは典型的には、従来の噴霧器では、2mlに1000mg、500mg、または250mgとして処方される。
【0089】
本特許で開示された装置を使用して喘息の小児125人を対象とした研究では、3つの異なる療法で、短い期間(2週間から12週間)に渡って一日200μgの高い投与量が送達され、次に、長期間(12週間から22週間)にわたって一日50μgの低い投与量が送達された。彼らの処置に対する遵守性と喘息の症状は、両親がビジュアルアナログスコアを使用して電子的に観察した。この研究に渡る処置の遵守性は80/90%であり、喘息のスコアは1.23/1.27のベースラインから0.23/0.43のベースラインに低減した。
【0090】
従来の噴霧器を使用して481人の喘息の小児に5つの異なる療法を送達した研究。通常の噴霧器の投与量は一日あたり250/1000μgの範囲と、12週間にわたるプラセボである。両親がビジュアルアナログスコアを使用した彼らの喘息の症状は、1.21/1.33から0.87/0.93に低減した。
【0091】
表1の中の比較データは、本発明による装置により一日あたり少ない投与量を長期間にわたって使用した従来の噴霧器の約2倍も、喘息のスコアが改善されたことを示している。この研究は、本発明に開示されたような高適応装置で送達された場合、12μgから50μgの範囲のブデソニドなど、一日あたりの投与量が少なくても認められることを示している。500μg/mlの処方から送達したとき、0.024/0.1mlの処方しか必要としないであろう。
【0092】
本発明は、現在は2.5mlの中に250μg/2000μgという処方で従来の噴霧器によって送達されているフルチカゾンなどのほかのコルチコステロイドにも適用できる。一日あたり6μgから50μgの範囲で投与量を送達することが必要であり、800μg/mlの調剤からは0.0075/0.063mlが必要となる。
【0093】
表1 ブデソニド噴霧一時停止この研究は日中の喘息の症状のスコアを示す(ビジュアルアナログ範囲は0から3であり、0は症状がなかったことを示す)
【表1】

【0094】
使用に適した他の薬剤は、抗ウィルス剤/抗感染剤のガンマインターフェロン(IFN*)、シナジス(商標)、ビラゾール(登録商標)、スーパーベント(商標)、および、アンバイオゾーム(登録商標)などの抗真菌剤、ブデソニド(登録商標)などのコルチコステロイド、サーファクタント剤のエクソサーフ(登録商標)およびサーファクシン(商標)である。他の使用に適した薬剤は成長ホルモン、エリスロポイチン、上皮小体ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)を含むホルモンである。また、イロプロスト、フロラン、UT15を含む肺高血圧症用(PPH)の薬剤、および、ドロナビロール(THC)、モルヒネ、およびマリノール(登録商標)を含むペインコントロール用アヘン剤とカンナビノイドである。
【0095】
適切なほかの薬剤は、糖尿病用のインシュリンおよび、骨粗しょう症用のカルシトニンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤投与装置であって、
薬剤を含む空気と薬剤を含まない空気とを選択的に送達する薬剤投与デバイスと、
患者の呼吸パターンを観察するセンサと、
前記患者が吸入を開始したと前記センサが観察した時に開始するパルスで薬剤を含んだ空気を送達するように前記薬剤投与デバイスを制御するように構成されたコントローラであって、前記パルスは前記患者の前記観察された呼吸パターンに基づいてコントローラによって調節された長さを有するコントローラと、
前記観察された呼吸パターンが薬剤を含んだ空気の吸入に効果的であるか効果的ではないかを患者に示すフィードバックインジケータと、
患者に送達された投与量を計算する投与量計算器と、
所望の投与量が送達された時に前記患者に示すインジケータとを備え、
処置の少なくとも80%の望ましい投与量の全量を送達するように構成された装置。
【請求項2】
処置の少なくとも90%の望ましい投与量の全量を送達するように構成された請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記投与量計算器は処方入力を含み、前記処方入力を介して投与量計算器が行う計算で使用される、送達される薬剤の処方が入力される請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
送達された投与量を含む、各処置に関する情報を記録するためのデータログをさらに備える請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは前記患者の観察された呼吸パターンに基づいて各パルスの長さを決定するパルス長生成装置を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記パルス長生成装置は、患者の呼吸パターンを分析し、患者が最終体積を吸入し始めた時を決定する呼吸パターン分析装置を含み、前記最終体積は、吸入の終了時に肺に到達しない空気の最終体積を含む患者の上部気道の体積である請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記パルス長生成装置は薬剤を含んだ空気を前記最終体積に送達することを停止する長さを有するパルスを生成する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記呼吸パターン分析装置は、
患者の一回換気量を測定する一回換気量測定デバイスと、
前記患者の吸入の長さを測定するタイマと、
前記患者の上部気道の体積の推定値を記憶する推定値記憶デバイスと、
前記測定された一回換気量、測定された吸息の長さ、および前記記憶された患者の上部気道の体積の推定値に基づいて、前記患者が前記最終体積の吸入を開始した時を決定する最終体積推定装置とを含む請求項6または7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記分析装置はさらに平均化デバイスを含み、前記平均化デバイスは、複数の呼吸に渡って前記分析装置が収集した値の平均値に基づいて、前記患者が前記最終体積の吸入を開始した時を決定する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記センサは圧力センサである請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記フィードバックインジケータは、前記装置を振動させて前記患者が効果的に吸入していることを示すバイブレータである請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記薬剤投与デバイスは、保持チャンバを画定する容器を含むスペーサであって、前記保持チャンバ内の空気は処置の前に薬剤を負荷される請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記薬剤投与デバイスは、前記患者に導かれる空気の流れを吸入している間、薬剤を噴霧する噴霧器である請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記薬剤投与デバイスはメッシュタイプの噴霧器である請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記薬剤投与デバイスは薬剤の噴霧が圧縮空気で行われる空気式噴霧器である請求項13に記載の装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤投与装置において、約19mgのトブラマイシンが溶媒内に溶解される薬剤の使用。
【請求項17】
前記溶媒は体積が約0.3mlである請求項16に記載の薬剤の使用。
【請求項18】
前記薬剤はさらに、前記デリバリー装置のデッドボリュームを満たし、送達できる薬剤がすべて送達された後に残る、約0.1mlから0.8mlの溶液中に約6mgから50mgの量のトブラマイシンがさらに含まれる請求項16または17に記載の薬剤の使用。
【請求項19】
前記トブラマイシンの濃度は約60mg/mlである請求項16または18のいずれか一項に記載の薬剤の使用。
【請求項20】
請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤投与装置において、約187000Uのコリスチンを含む薬剤の使用。
【請求項21】
次の溶液のうち1つの中に約100万ユニット/2mlの濃度のコリスチンが含まれる請求項20に記載の薬剤の使用であり、前記溶液は
a)0.9%の塩化ナトリウム2ml
b)0.9%の塩化ナトリウム0.75mlと、水1.275mlを含んだ2mlの溶媒
c)0.9%の塩化ナトリウム2.5mlにサルブタモール2.5mgを含んだ溶液
d)0.75%、0.9%の塩化ナトリウムと水1.275mlの中にサルブタモール2.5mgを含んだ溶液
e)0.9%の塩化ナトリウム2.5mlにデオキシリボヌクレアーゼ2.5mgを含んだ溶液、
f)0.9%の塩化ナトリウム2.5mlにデオキシリボヌクレアーゼ2.5mgとサルブタモール2.5mgを含んだ溶液
のいずれかである請求項20に記載の薬剤の使用。
【請求項22】
前記薬剤はさらに、前記デリバリー装置のデッドボリュームを満たし、送達できる薬剤がすべて送達された後に残る0.1mlから0.8mlというさらなる量の薬剤をさらに含む請求項20または21に記載の薬剤の使用。
【請求項23】
請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤投与装置において、溶媒内の約0.156mgのデオキシリボヌクレアーゼを含む薬剤を使用。
【請求項24】
前記溶媒は約0.156mlの体積を有する請求項23に記載の薬剤の使用。
【請求項25】
前記薬剤はさらに、前記デリバリー装置のデッドボリュームを満たし、送達できる薬剤がすべて送達された後に残る0.1mlから0.8mlというさらなる量の薬剤をさらに含む請求項23または24に記載の薬剤の使用。
【請求項26】
請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤投与装置において、溶媒内に約12.5mgのAIATを含む薬剤の使用。
【請求項27】
前記溶媒は約0.25mlの体積を有する請求項26に記載の薬剤の使用。
【請求項28】
前記薬剤はさらに、0.1mlから0.8mlの間の溶媒の追加量を含む請求項26または27に記載の薬剤の使用。
【請求項29】
請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤投与装置において、溶媒内に約25μgのブデソニドを含む薬剤の使用。
【請求項30】
前記溶媒の体積は約0.05mlである請求項29に記載の薬剤の使用。
【請求項31】
請求項1から15のいずれか一項に記載の薬剤投与装置の使用であって、薬剤の使用は約12μgのフルチカゾンを含む薬剤投与装置の使用。
【請求項32】
請求項16から25のいずれか一項に記載の薬剤と、送達の前に薬剤成分が混合される多数の部分に分かれたパッケージとを含む医療品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−87968(P2011−87968A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−1608(P2011−1608)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2001−557622(P2001−557622)の分割
【原出願日】平成13年2月12日(2001.2.12)
【出願人】(502291632)レスピロニクス・レスピラトリー・ドラッグ・デリバリー・(ユーケー)・リミテッド (3)