説明

薬剤投与監視器と、それを用いた薬剤投与装置

【課題】本発明は、薬剤投与監視器と、それを用いた薬剤投与装置に関するもので、薬剤の適切な効用を発揮させることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、一端側に、インスリンポンプ2の薬剤投与口に接続される薬剤流入口26、他端側に、針17の薬剤注入口に接続される薬剤流出口27を有する薬剤流路28と、この薬剤流路28を流れる薬剤の流量を検出する流量センサ29と、この流量センサ29に接続した制御部32と、この制御部32に接続した通信部35とを備え、前記薬剤流路28には、薬剤排出流路27Aを接続し、この薬剤排出流路27Aには、流路切替部34を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤投与監視器と、それを用いた薬剤投与装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の薬剤投与装置の構成は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、生体情報測定器と、この生体情報測定器から薬剤投与量が指示される薬剤投与器とを設けた構成となっていた(例えば、これに類似する先行文献として下記特許文献1が存在する)。
【0004】
たとえば、前記生体情報測定器が血糖値を測定するものであった場合には、この生体情報測定器で測定した血糖値に応じて、薬剤投与器から投与するインスリンの投与量が指示されるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−511430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例において、例えば、前記生体情報測定器が血糖値を測定するものであった場合には、この生体情報測定器で測定した血糖値に応じて、薬剤投与器から投与するインスリンの投与量が指示されるようになっていた。
【0007】
しかしながら、薬剤投与器を誤って落下させてしまったり、あるいは、長期使用による部品劣化が発生してしまったりした場合には、生体情報測定器から指示された量のインスリンを投与することができず、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができなくなることがあった。
【0008】
そこで本発明は、薬剤の適切な効用を発揮させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、一端側に、薬剤投与器の薬剤投与口に接続される薬剤流入口、他端側に、薬剤注入針の薬剤注入口に接続される薬剤流出口を有する薬剤流路と、この薬剤流路を流れる薬剤の流量を検出する流量センサと、この流量センサに接続した制御部と、この制御部に接続した第1の通信部とを備え、前記薬剤流路には、薬剤排出流路を接続し、この薬剤排出流路には、流路切替部を設けた構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、一端側に、薬剤投与器の薬剤投与口に接続される薬剤流入口、他端側に、薬剤注入針の薬剤注入口に接続される薬剤流出口を有する薬剤流路と、この薬剤流路を流れる薬剤の流量を検出する流量センサと、この流量センサに接続した制御部と、この制御部に接続した第1の通信部とを備え、前記薬剤流路には、薬剤排出流路を接続し、この薬剤排出流路には、流路切替部を設けたものであるので、薬剤の適切な効用を発揮させることができる。
【0011】
すなわち、本発明においては、薬剤流路の一端側に設けた薬剤流入口を薬剤投与器の薬剤投与口に接続し、また、他端側の薬剤流出口は、薬剤注入針の薬剤注入口に接続したものであるので、薬剤投与器から薬剤注入針に供給される薬剤の投与量を流量センサで検出することができる。つまり、薬剤の投与量を、薬剤投与器のみならず、この薬剤監視器によって検出することとなるので、薬剤の適切な投与が行え、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【0012】
また、本発明においては、前記薬剤流路には、薬剤排出流路を接続し、この薬剤排出経路には、流路切替部を設けたものであるので、薬剤投与器からの投与量が過多の状態時には、薬剤を薬剤流出路を介して薬剤流路外に排出することができ、この点からも、薬剤の適切な投与が行え、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤投与装置の図
【図2】同、生体情報測定器の制御ブロック図
【図3】同、薬剤投与器の制御ブロック図
【図4】同、薬剤投与監視器の断面図
【図5】同、薬剤投与監視器の制御ブロック図
【図6】同、薬剤投与監視器で監視するインスリンの監視量を示す図
【図7】同、薬剤投与監視器の動作フローチャート
【図8】同、薬剤投与監視器の動作フローチャート
【図9】同、生体情報測定器の表示を示す図
【図10】(a)同、生体情報測定器の表示を示す図(b)同、薬剤投与器の表示を示す図
【図11】同、生体情報測定器の表示を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1において、1は血液から血糖値を測定する測定器(生体情報測定器の一例)で、測定した血糖値に応じたインスリンの投与量を、インスリンポンプ2(薬剤投与器の一例)に指示するものである。
【0016】
インスリンポンプ2は、指示されたインスリンの投与量を患者に投与するものである。
【0017】
このインスリンポンプ2には、インスリン監視器3(薬剤投与監視器の一例)が接続され、このインスリン監視器3が、インスリンポンプ2によって患者に投与されるインスリンの投与量を監視するようになっている。
【0018】
本実施形態においては、測定器1、インスリンポンプ2、インスリン監視器3により、薬剤投与装置を形成している。
【0019】
まず、測定器1について説明する。
【0020】
測定器1の上面には、表示部4が設けられており、測定器1の先端側にはセンサ装着部5が設けられている。そして、このセンサ装着部5に、長板形状の血糖値センサ6の接続端子7を装着し、その状態で、血糖値センサ6の接続端子7とは反対側端部に設けた点着部8に血液を点着すれば、その時の血糖値が測定され表示部4に表示されるようになっている。
【0021】
この測定器1の制御ブロック図を図2に示す。
【0022】
この図2に示すごとく、測定器1の表示部4、センサ装着部5は、制御部9に接続されている。この制御部9には、センサ装着部5に装着される血糖値センサ6(図1)の血糖値を測定する測定部10が接続され、さらに、この測定部10で測定した血糖値に応じたインスリンの投与量を算出する投与量算出部11が接続されている。
【0023】
また、制御部9には、投与量算出部11が算出したインスリンの投与量を、図1のインスリンポンプ2およびインスリン監視器3に送信する通信部12が接続されている。さらに、この制御部9には電池13が接続されている。
【0024】
つぎに、インスリンポンプ2について、図1、図3、図4を用いて説明する。
【0025】
図1のインスリンポンプ2の内部には、インスリンの入った薬剤シリンジ14(図3)が薬剤シリンジ装着部15(図3)に着脱自在に装着されており、図1に示すごとく、この薬剤シリンジ装着部15に接続されたチューブ16、針17(薬剤注入針の一例)を介して、薬剤シリンジ14内のインスリンを患者に投与するようになっている。
【0026】
なお、針17は、患者の腹やお腹の皮下脂肪に差し入れており、インスリンポンプ2は、微量のインスリンを24時間、自動的に投与し続けることができる。
【0027】
図3は、インスリンポンプ2のブロック図を示している。
【0028】
この図3に示すごとく、測定器1と通信を行う通信部18が、制御部19に接続されている。この制御部19には、測定器1から通信により受け取ったインスリンの投与量等を記憶する記憶部20が接続され、さらに、このインスリンの投与量に応じたインスリンを投与するためのモータ21が接続されている。
【0029】
このモータ21には、薬剤シリンジ14が装着される薬剤シリンジ装着部15が接続されており、この薬剤シリンジ装着部15は、薬剤投与口2a(図1)に接続されている。さらに、この薬剤投与口2aには、図1に示すごとく、チューブ16が接続されている。なお、薬剤シリンジ14は、たとえば円筒形のシリンジ(図示せず)と、可動式のプランジャ(図示せず)によって構成され、モータ21がプランジャを操作することにより、シリンジ内に封入したインスリンをチューブ16に送出する。
【0030】
また、電池22、電源スイッチ23、表示部24が、制御部19に接続されている。
【0031】
再び図1に戻って、本実施形態におけるインスリン監視器3(薬剤投与監視器の一例)について説明する。
【0032】
インスリン監視器3は、図1に示すごとく、インスリンポンプ2と針17を繋ぐチューブ16の中程に設けられている。
【0033】
図4は、インスリン監視器3の断面図で、このインスリン監視器3は本体ケース25を有している。この本体ケース25内には、その一端側に、チューブ16を介して、インスリンポンプ2の薬剤投与口2aに接続される薬剤流入口26を有し、他端側に、針17(薬剤注入針の一例)の薬剤注入口17a(図1)に接続される薬剤流出口27を有する薬剤流路28を備えている。
【0034】
なお、この薬剤流路28は、中空の円筒状にチューブ16と同じ材料で形成されており、チューブ16と連結されている。インスリンは、この薬剤流路28を流れる。
【0035】
また、本体ケース25内には、薬剤流路28を流れるインスリン(薬剤の一例)の流量を検出する流量センサ29を設けている。
【0036】
ここで本実施形態においては、この図4に示すごとく、薬剤流路28には、薬剤排出流路27Aを接続し、この薬剤排出流路27Aと薬剤流路28との接続部に流路切替器30を設けている。なお、この薬剤排出流路27Aは、中空の円筒状にチューブ16と同じ材料で形成されている。
【0037】
また、上述した流量センサ29を、薬剤流路28の薬剤排出流路27Aの下流側(つまり、薬剤流出口27側)に設けている。
【0038】
この流量センサ29は、非接液型の電磁式流量センサで、磁場中を流れる導電性流体が発生させる電圧を測定することで、流量を測定するものである。つまり、図4に示すごとく、2つの流量センサ29で、薬剤流路28を形成するチューブ16の外側から、このチューブ16を挟み込み、この挟み込み部分に磁場を発生させる。この磁場内のチューブ16の薬剤流路28をインスリンが流れると、電圧が発生するため、この電圧を、流量センサ29が測定することによりインスリンの流量が測定される。
【0039】
図5は、インスリン監視器3の制御ブロック図を示し、流量センサ29は、流量監視部31を介して制御部32に接続され、流量監視部31には、この流量監視部31を間欠駆動する間欠駆動部33が接続されている。
【0040】
また、流路切替器30は、流路切替部34を介して制御部32に接続されている。
【0041】
なお、制御部32には、測定器1と通信を行う通信部35が接続され、さらに、電池36が接続されている。
【0042】
以上の構成において、以下、測定器1、インスリンポンプ2、インスリン監視器3の動作を、図1、図5、図6、および図7のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
まず、インスリンポンプ2によるインスリンの投与方法には2種類あって、それぞれ、バザル(常時投与)、ボーラス(一時的投与)と呼ぶ。図6は、これらバザルとボーラスを説明するための図である。
【0044】
まず、バザル(図6のA)は、インスリンを少量ずつ常時(たとえば24時間)投与する方法であり、これは、健康な人の基礎分泌にあたるものである。
【0045】
一方、ボーラス(図6のB)は、食後の血糖値が上昇した時に、所定量のインスリンを一時的に投与する方法であり、これは、健康な人の追加分泌にあたるものである。
【0046】
そして、これらバザルとボーラスでは、インスリンをユニット単位で患者に投与する。
【0047】
このユニットとは、インスリンの投与量を示す単位であり、インスリン・カーボ(カーボとは炭水化物量を表し、たとえば1カーボ=炭水化物10グラム)比に、食事による炭水化物量を乗じたものがインスリンの投与量となる。なお、このインスリン・カーボ比の値は、人によって異なる。
【0048】
具体的に一例を示すと、インスリン・カーボ比が1.5の人が、200グラム(=20カーボ)の炭水化物の食事をした時には、1.5(インスリン・カーボ比)×20(カーボ)=30ユニットのインスリンの投与が必要になる。
【0049】
まず、インスリンポンプ2の投与方法がバザル(常時投与)の時の説明を、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
このバザル時においては、あらかじめ、患者の操作によってインスリン投与量がインスリンポンプ2に指示されている。たとえば、図9に示すごとく、測定器1の表示部4にインスリン投与量が(インスリン投与量 0.25U)と表示され、このインスリン投与量を、患者がインスリンポンプ2に指示するのである。
【0051】
この指示されたインスリン投与量は、測定器1の通信部18、制御部19を介してインスリンポンプ2、およびインスリン監視器3に通信する。今回は、たとえば、1時間当たり0.25ユニットで患者にインスリンを投与する。
【0052】
インスリンポンプ2では、図3の通信部18を介してこのインスリンの投与量を受け取り、記憶部20に格納する。
【0053】
そして投与の時には、インスリンポンプ2の制御部19は、インスリンの投与量に応じた送り出し量(つまり、時間当たりの投与量)を算出し、この算出量にしたがってモータ21を制御する。モータ21は、薬剤シリンジ装着部15に装着した薬剤シリンジ14のプランジャ(図示せず)を操作することにより、シリンジ内に封入したインスリンをチューブ16に、送出開始する。
【0054】
一方、インスリン監視器3では、測定器1が送信したインスリンの投与量を、通信部35、制御部32を介して、流量監視部31が受け取る。
【0055】
そして、この流量監視部31は、インスリンの投与量を受け取ることにより、インスリンポンプ2によりボーラスの投与が開始されたと判断し、監視開始を間欠駆動部33に通知して、図7のS1から監視処理を開始する。
【0056】
インスリンポンプ2がバザル(常時投与)でインスリンの投与を開始すると、インスリン監視器3が、インスリン投与量の監視を開始する。この時、インスリン監視器3は、インスリンポンプ2による投与方法がバザルかボーラス(一時的投与)かの判断を行う。この判断は、上述したごとく、測定器1が送信するインスリンの投与量により行う(図7のS2)。
【0057】
このバザルの監視においては、図5の間欠駆動部33が所定の監視間隔(たとえば、バザルの監視においては1分間に1回)ごとに、流量監視部31を用いて流量センサ29の値を確認する。そして、このようにして所定の監視間隔毎に測定した流量を積算していく(図7のS3)。
【0058】
つぎに、流量監視部31は、この積算量をもとに、単位時間当たりの流量が規定範囲内であるか否かを判断する(図7のS4)。
【0059】
もし、単位時間当たりの流量が規定範囲よりも大きい時には、インスリンポンプ2によるインスリンの投与量が過多であるので、インスリン監視器3の制御部32は、通信部35を用いて、測定器1にインスリンの投与量の過多を通知する。この過多通知を、測定器1では、通信部12を介して制御部9が受け取り、たとえば図10(a)に示すごとく、測定器1の表示部4に(インスリン投与エラー インスリンポンプの状態を確認ください)と表示して、患者にインスリン投与の過多を知らせる。
【0060】
この表示を見た患者は、インスリンポンプ2を操作して、このエラー状態を解除する。
【0061】
さらに、インスリン監視器3の制御部32は、通信部35を用いてインスリンポンプ2にインスリンの投与量の過多を通知する。この過多通知を、インスリンポンプ2では、通信部18を介して制御部19が受け取り、たとえば図10(b)に示すごとく、インスリンポンプ2の表示部24に(インスリン投与エラー インスリンポンプの状態を確認ください)と表示する。
【0062】
つまり、患者は、測定器1の表示だけでなく、このインスリンポンプ2の表示でも、バザル時におけるインスリンの投与量の過多を知ることが出来る。その後、患者は、インスリンポンプ2を操作して、このエラー状態を解除する(図7のS5)。
【0063】
なお、図7のS5処理が終了した後は、図7のS2に処理を戻す。
【0064】
一方、図7のS4において、流量監視部31が、単位時間当たりの流量が規定範囲内であると判断した時には、図7のS2に処理を戻して、インスリンポンプ2の状態がバザルであるかボーラスであるかを再び判断し、インスリンの投与量の監視を継続することとなる。
【0065】
次に、インスリンポンプ2の投与方法がボーラス(一時的投与)の時の説明を行う。
【0066】
まず、図7のS1でインスリン監視器3による監視が開始される。この時、上述したごとく、通常状態においては、バザルの監視が実施されている。
【0067】
ここで、たとえば、患者が食事を行った後などでは、血糖値が上昇するため、ボーラスの投与が行われることになる。
【0068】
具体的に一例を示すと、図1において、上述したごとく、測定器1の測定部10(図2)で患者の血糖値が測定され、この血糖値に応じたインスリンの投与量が投与量算出部11(図2)により算出され、たとえば図11に示すごとく、表示部4に(インスリン投与量 30U)と表示される。
【0069】
次に、患者の操作により、測定器1は、通信部12を用いて、算出したインスリンの投与量を、インスリンポンプ2、およびインスリン監視器3に通信する。
【0070】
インスリンポンプ2では、図3の通信部18を介してこのインスリンの投与量を受け取り、記憶部20に格納する。制御部19は、インスリンの投与量に応じた送り出し量(つまり、時間当たりの投与量)を算出し、この算出量にしたがってモータ21を制御する。モータ21は、薬剤シリンジ装着部15に装着した薬剤シリンジ14のプランジャ(図示せず)を操作することにより、シリンジ内に封入したインスリンをチューブ16に、送出開始する。
【0071】
一方、インスリン監視器3では、測定器1が送信したインスリンの投与量を、通信部35を介して、流量監視部31が受け取る。
【0072】
そして、この流量監視部31は、インスリンの投与量を受け取ることにより、インスリンポンプ2によりボーラスの投与が開始されたと判断し、監視開始を間欠駆動部33に通知して(図7のS2)、図8のS1から監視処理を開始する。
【0073】
図8は、このボーラスの監視処理を示すフローチャートである。
【0074】
図8のS1において、インスリン監視器3はボーラスが開始されるのを待つ。
【0075】
具体的には、間欠駆動部33が、一定期間ごとに流量監視部31に対して監視指示を出し、この監視指示に従って、流量監視部31は、インスリンポンプ2がチューブ16に送出するインスリン量を、流量センサ29を用いて監視する。
【0076】
このボーラスの監視においては、図5の間欠駆動部33が、流量監視部31のボーラスの監視間隔を、バザルの監視間隔(たとえば、1分間に1回)よりも短くし、たとえば、1秒間に1回とする。
【0077】
そして、この所定の監視間隔(たとえば、1秒間に1回)ごとに、間欠駆動部33が流量監視部31を用いて流量センサ29の値を確認する。この時、直前の値に比べ、測定値が急激に大きくなった時には、流量監視部31は、ボーラスが開始されたと判断する。
【0078】
さらに、間欠駆動部33が、所定の監視間隔(たとえば、1秒間に1回)ごとに、流量監視部31を用いて流量センサ29の値を確認し、その流量を積算していく(図8のS2)。
【0079】
流量監視部31は、この流量の積算量を用いて、投与量の過多を判断する(図8のS3)。具体的には、所定時間当たりの積算量が所定値を超えた時には、投与量は過多であると判断し、制御部32に投与量の過多を通知する。この過多通知を受けた制御部32は、流路切替部34を用いて流路切替器30を操作し、図4の薬剤流路28の流路を、薬剤流出口27側から薬剤排出流路27Aへと切り換える(図8のS4)。
【0080】
このため、インスリンは、インスリン監視器3外へと排出され、患者の体内に過多なインスリンが投与されることがない。したがって、薬剤の適切な投与が行えるものとなり、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができる。
【0081】
次に、インスリン監視器3の制御部32は、通信部35を用いて測定器1にインスリンの投与量の過多を通知する。この過多通知を、測定器1では、通信部12を介して制御部9が受け取り、たとえば図10(a)に示すごとく、測定器1の表示部4に(インスリン投与エラー インスリンポンプの状態を確認ください)と表示し、患者にインスリン投与の過多を知らせる(図8のS5)。
【0082】
この表示を見た患者は、インスリンポンプ2を操作して、このエラー状態を解除することとなる(図8のS6)。
【0083】
図8のS3で、投与量が過多で無い時には、流量監視部31は、ボーラスが終了したか否かを判断する。この判断は、現在の流量センサ29の測定値と、直前の流量センサ29の測定値とを比較して行われ、その差が所定値以内の時には、ボーラスは継続中と判断し、図8のS2に戻り、監視を継続する(図8のS7)。
【0084】
一方、測定値の差が所定値以上の時(つまり、現在の測定値が直前の測定値よりも急激に小さくなった時)には、流量監視部31は、ボーラスが終了したと判断する。
【0085】
その後、流量監視部31は、ボーラスが適切に実施されたか否かを判断する。つまり、インスリンの投与量が過少であったか否かを判断する。
【0086】
もし、流量の積算量が規定値以下である時には、流量監視部31は、ボーラスは不適切であり、インスリンの投与量が過少であったと判断する(図8のS8)。
【0087】
そして、インスリン監視器3の制御部32は、通信部35を用いて測定器1にインスリンの投与量の過少を通知する。この過少通知を、測定器1では、通信部12を介して制御部9が受け取り、たとえば図10(a)に示すごとく、測定器1の表示部4に(インスリン投与エラー インスリンポンプの状態を確認ください)と表示し、患者にインスリン投与の過少を知らせる(図8のS9)。
【0088】
この表示を見た患者は、インスリンポンプ2を操作して、このエラー状態を解除することとなる(図8のS10)。
【0089】
なお、図8のS8で、投与量が過少で無い時には、図7のS2に処理を戻し、インスリンポンプ2の状態がバザルであるかボーラスであるかを再び判断し、インスリンの投与量の監視を継続することとなる。
【0090】
以上説明したごとく、本実施形態においては、インスリンポンプ2の投与量を、インスリンポンプ2のみならず、インスリン監視器3によって検出することとなるので、インスリンの適切な投与が行え、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【0091】
また、本実施形態においては、前記薬剤流路28には、薬剤排出流路27Aを接続し、この薬剤排出流路27Aには、流路切替器30を設けたものであるので、インスリンポンプ2からの投与量が過多の時には、インスリンを薬剤排出流路27Aを介して薬剤流路28外に排出することができ、この点からも、インスリンの適切な投与が行え、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【0092】
さらに、本実施形態においては、図4に示すごとく、上述した流量センサ29は、流路切替器30よりも薬剤流路28の薬剤排出経路の下流側(つまり、薬剤流出口27側)に設けた構成としている。
【0093】
この構成によれば、上述の薬剤排出流路27Aへの切り換えを確実に検知できるものとなる。
【0094】
すなわち、流路切替器30が、薬剤流路28の流路を、薬剤流出口27側から薬剤排出流路27Aへと切り換えた時には、薬剤流出口27側へはもはやインスリンは流入しないのであるが、この状態を、薬剤流出口27側に設けた流量センサ29を用いて、インスリン監視器3の制御部32が検知することができるのである。
【0095】
さらにまた、図4において、上述した流量センサ29を、流路切替器30よりも薬剤流路28の薬剤排出経路の上流側(つまり、薬剤流入口26側)に設けてもよい。
【0096】
この構成によれば、インスリンの投与停止を確実に検知できるものとなる。
【0097】
すなわち、流路切替器30が、薬剤流路28の流路を薬剤排出流路27Aへと切り換えた後には、上述したごとく、患者がインスリンポンプ2を操作して、このエラー状態を解除し、インスリンの投与を停止する。この状態を、薬剤流入口26側に設けた流量センサ29を用いて、インスリン監視器3の制御部32が検知することができるのである。
【0098】
さらに、上述した流量センサ29を、流路切替器30よりも薬剤流路28の薬剤排出経路の上流側(つまり、薬剤流入口26側)と、流路切替器30よりも薬剤流路28の薬剤排出経路の下流側(つまり、薬剤流出口27側)の双方に設けた構成としてもよい。
【0099】
この構成によれば、上述したごとく、薬剤排出流路27Aへの切り換えを確実に検知できるとともに、インスリンの投与停止を確実に検知できるものとなる。
【0100】
その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【0101】
さらに本実施形態においては、測定器1は、インスリン監視器3からの警告を、表示部4に表示させる構成としたが、インスリンポンプ2にも流量監視部(図示せず)を設けるとともに、この流量監視部が、たとえばモータ21の制御量からインスリンの投与量を算出して測定器1へ投与量の過多あるいは過少を通知し、この過多通知あるいは過少通知を、測定器1の表示部4に表示させる構成にしてもよい。
【0102】
この構成によれば、測定器1は、インスリンポンプ2とインスリン監視器3の双方、もしくは、少なくとも一方からの過多通知あるいは過少通知を、表示部4に表示させることができるので、より安全に配慮して、薬剤の適切な効用を発揮させることができる。
【0103】
その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように本発明は、一端側に、薬剤投与器の薬剤投与口に接続される薬剤流入口、他端側に、薬剤注入針の薬剤注入口に接続される薬剤流出口を有する薬剤流路と、この薬剤流路を流れる薬剤の流量を検出する流量センサと、この流量センサに接続した制御部と、この制御部に接続した第1の通信部とを備え、前記薬剤流路には、薬剤排出流路を接続し、この薬剤排出流路には、流路切替部を設けたものであるので、薬剤の適切な効用を発揮させることができる。
【0105】
すなわち、本発明においては、薬剤流路の一端側に設けた薬剤流入口を薬剤投与器の薬剤投与口に接続し、また、他端側の薬剤流出口は、薬剤注入針の薬剤注入口に接続したものであるので、薬剤投与器から薬剤注入針に供給される薬剤の投与量を流量センサで検出することができる。つまり、薬剤の投与量を、薬剤投与器のみならず、この薬剤監視器によって検出することとなるので、薬剤の適切な投与が行え、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【0106】
また、本発明においては、前記薬剤流路には、薬剤排出流路を接続し、この薬剤排出経路には、流路切替部を設けたものであるので、薬剤投与器からの投与量が過多の状態時には、薬剤を薬剤流出路を介して薬剤流路外に排出することができ、この点からも、薬剤の適切な投与が行え、その結果として、薬剤の適切な効用を発揮させることができるのである。
【符号の説明】
【0107】
1 測定器(生体情報測定器の一例)
2 インスリンポンプ(薬剤投与器の一例)
2a 薬剤投与口
3 インスリン監視器(薬剤投与監視器の一例)
4 表示部
5 センサ装着部
6 血糖値センサ
7 接続端子
8 点着部
9 制御部
10 測定部
11 投与量算出部
12 通信部
13 電池
14 薬剤シリンジ
15 薬剤シリンジ装着部
16 チューブ
17 針
17a 薬剤注入口
18 通信部
19 制御部
20 記憶部
21 モータ
22 電池
23 電源スイッチ
24 表示部
25 本体ケース
26 薬剤流入口
27 薬剤流出口
27A 薬剤排出流路
28 薬剤流路
29 流量センサ
30 流路切替器
31 流量監視部
32 制御部
33 間欠駆動部
34 流路切替部
35 通信部
36 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に、薬剤投与器の薬剤投与口に接続される薬剤流入口、他端側に、薬剤注入針の薬剤注入口に接続される薬剤流出口を有する薬剤流路と、この薬剤流路を流れる薬剤の流量を検出する流量センサと、この流量センサに接続した制御部と、この制御部に接続した第1の通信部とを備え、
前記薬剤流路には、薬剤排出流路を接続し、この薬剤排出流路には、流路切替器を設けた薬剤投与監視器。
【請求項2】
流量センサは、薬剤流路の薬剤排出経路下流側に設けた請求項1に記載の薬剤投与監視器。
【請求項3】
流量センサは、薬剤流路の薬剤排出経路上流側に設けた請求項1に記載の薬剤投与監視器。
【請求項4】
流量センサは、薬剤流路の薬剤排出経路上流側と下流側に設けた請求項1に記載の薬剤投与監視器。
【請求項5】
流量センサには、流量監視部を接続し、この流量監視部は、間欠駆動部を接続した請求項1から4のいずれか一つに記載の薬剤投与監視器。
【請求項6】
生体情報測定器と、この生体情報測定器から薬剤投与量が指示される薬剤投与器と、この薬剤投与器に接続される請求項1から5のいずれか一つに記載の薬剤監視器とを備えた薬剤投与装置。
【請求項7】
生体情報測定器は、前記薬剤投与器と前記薬剤監視器に薬剤投与量を指示する第2の通信部と、前記薬剤投与器と前記薬剤監視器の少なくとも一方からの警告を表示させる表示部とを有する構成とした請求項6に記載の薬剤投与装置。
【請求項8】
薬剤監視器は、前記生体情報測定器の表示部に、薬剤投与量の過多または過少を表示させる構成とした請求項7に記載の薬剤投与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−94473(P2013−94473A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240943(P2011−240943)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】