説明

薬剤揮散器

【課題】 倒れた場合に生じ得る不具合を防止することができる薬剤揮散器を提供する。
【解決手段】 薬剤揮散器1を揮散器本体11と詰替容器12で構成する。揮散器本体11の起立部21の前面25に、詰替容器12内の薬剤を揮散する為の外スリット27と大径開口部28とを開設する。起立部21の取付穴29にカバー41の脚部45を固定し、カバー41によって大径開口部28が設けられた前面25より突出した突出部を構成する。前記カバー41で大径開口部28を覆い、カバー41と前面25との間に間隙51を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤等の薬剤を揮散する薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭剤、芳香剤、防虫剤、殺虫剤等の薬剤を揮散する装置として薬剤揮散器が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
この薬剤揮散器の容器本体の前面には、揮散用のスリットが開設されており、該スリットから薬剤を揮散できるように構成されている。
【特許文献1】意匠登録第1155755号公報
【特許文献2】意匠登録第1155756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の薬剤揮散器にあっては、立てて使用した際に、スリットが設けたれた前面を下にして倒れることがある。
【0005】
この場合、前記スリットが載置面によって塞がれてしまい、当該スリットから揮散された薬剤の濃度が高まる。すると、この高い濃度の薬剤によって前記載置面を傷める恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、倒れた場合に生じ得る不具合を防止することができる薬剤揮散器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の薬剤揮散器にあっては、薬剤を揮散する開口部が本体の外側面に設けられた薬剤揮散器において、前記開口部が設けられた前記外側面に、当該外側面より突出する突出部を設けた。
【0008】
すなわち、この薬剤揮散器を立てて使用した場合、薬剤を揮散する開口部を有する本体の外側面を下にして倒れることがある。
【0009】
このとき、前記開口部が設けられた前記外側面には、当該外側面より突出する突出部が設けられている。このため、この突出部が先行して載置面に当接することによって、該載置面による前記開口部の閉鎖が防止される。
【0010】
また、請求項2の薬剤揮散器においては、前記本体に前記開口部の少なくとも一部を覆うカバーを設け、該カバーで前記突出部を構成するとともに、前記カバーを前記本体の前記外側面より離間して配置し、前記カバーと前記外側面との間に間隙を確保した。
【0011】
すなわち、本体の外側面に設けられた開口部は、前記突出部を構成するカバーによって覆われており、前記開口部は、前記カバーで少なくとも一部が隠蔽される。このため、外側面に大きな開口部を形成した場合であっても、当該開口部の全域に渡る露出が防止される。
【0012】
また、この本体が前記外側面を下にして倒れた場合においては、薬剤を揮散する前記開口部と載置面との間に、前記カバーが配置される。
【0013】
そして、このカバーは、前記外側面より離間して配置されており、前記カバーと前記外側面との間に間隙が確保されている。これにより、前記本体が前記外側面を下にして倒れた場合であっても、揮散した薬剤を放出する為の間隙が確保される。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明の請求項1の薬剤揮散器にあっては、使用時において開口部が設けられた本体の外側面を下にして倒れた場合、前記外側面より突出した突出部が先行して載置面に当接することによって、該載置面と前記外側面との密着状態を回避することができる。これにより、前記載置面による前記開口部の閉鎖を防止することができる。
【0015】
このため、本体が倒れた際に、前記載置面で前記開口部が塞がれてしまう従来と比較して、前記開口部から揮散された薬剤の濃度が高まり、この高い濃度の薬剤によって前記載置面を傷めるといった不具合を未然に防止することができる。
【0016】
また、請求項2の薬剤揮散器においては、本体の外側面に設けられた開口部は、前記突出部を構成するカバーによって覆われており、前記開口部は、前記カバーで隠蔽される。このため、外側面に大きな開口部を形成して揮散面積を増大した場合であっても、当該開口部の全域に渡る露出を防止することができ、外観品質を高めることができる。
【0017】
さらに、この本体が前記外側面を下にして倒れた場合においては、薬剤を揮散する前記開口部と載置面との間に、前記カバーを配置することができる。これにより、揮散した薬剤と載置面との直接接触を防止することができる。
【0018】
そして、このカバーは、前記外側面より離間して配置されており、前記カバーと前記外側面との間に間隙が確保されている。このため、前記本体が前記外側面を下にして倒れた場合であっても、揮散した薬剤を放出する為の間隙を確保することができ、薬剤揮散による効果を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一の実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる薬剤揮散器1を示す図であり、該薬剤揮散器1は、消臭剤、芳香剤、防虫剤、殺虫剤等の薬剤を揮散する装置である。
【0020】
この薬剤揮散器1は、揮散器本体11と、該揮散器本体11に交換可能に取り付けられる詰替容器12とによって構成されている。
【0021】
前記揮散器本体11は、使用時に起立される起立部21と、該起立部21の下端部に取り付けられる基端構成部材22とによって構成されている。前記起立部21は、図2に示すように、縦長の長方形板状に形成されており、下端の中央部を除く周縁には、図3にも示すように、裏面側に延出するフランジ23が形成されている。
【0022】
前記起立部21の外側面である前面25には、図2及び図3に示したように、短辺方向に延在する複数の凹溝26,・・・が上下に並設されており、中間領域Mに位置する各凹溝26,・・・内には、裏面側に貫通する開口部としての外スリット27,・・・が凹溝26,・・・に沿って開設されている。また、前記中間領域Mには、前記各外スリット27,・・・より大径楕円形状の大径開口部28が開設されており、該大径開口部28の外周縁部には、円形の取付穴29,・・・が四カ所に形成されている。
【0023】
この起立部21の背面には、図3及び図4に示すように、上縁部及び側縁部に支持突起31が設けられており、上縁に設けられたフランジ23の内側面及び側縁に設けられたフランジ23の内側面には、内方に突出する係止条32,・・・が形成されている。前記下縁に形成された前記フランジ23の端部には、上方に起立した起立壁33,33が一体形成されており、両起立壁33,33の中心側の側面には、前記起立壁33,33に沿って延在するL字リブ34,34が一体形成されている。
【0024】
前記起立部21に形成された前記取付穴29,・・・には、図1に示したように、前記大径開口部28を覆うカバー41が取り付けられるように構成されている(図1中下部側の支持状態は省略)。
【0025】
このカバー41は、図5に示すように、前記大径開口部28より大径の楕円形状に形成されており、中央部が外側に膨出したドーム型に形成されている。前記カバー41の裏面には、当該カバー41を支持する脚部45,・・・が周縁部の四カ所に立設されており、各脚部45,・・・の先端部には、小径部46が形成されている。各小径部46,・・・は、前記起立部21の対応した取付穴29,・・・に挿入された状態で固定されるように構成されている。
【0026】
前記各脚部45,・・・は、図1に示したように、前記取付穴29に挿入して固定した状態で、前記カバー41を前記起立部21の前記前面25より離間して配置できる長さ寸法に設定されており、前記カバー41と前記前面25との間に間隙51を形成できるように構成されている。このカバー41は、前記大径開口部28が設けられた前記前面25より突出した突出部を構成するように構成されている。
【0027】
この起立部21の下端部に取り付けられる前記基端構成部材22は、図6にも示すように、矩形容器状に形成されており、この基端構成部材22の側面前側には、内側に後退した後退面55,55が形成されている。これにより、当該基端構成部材22の前部には、幅寸法の狭い幅狭部56が形成されている。該幅狭部56での幅寸法は、前記起立部21のフランジ23間の寸法より小さく設定されており、当該幅狭部56に前記起立部21の下端部を外嵌できるように構成されている。
【0028】
前記後退面55には、矩形状の切欠部61が形成されており、前記基端構成部材22の底面62には、矩形状の挿通穴63,63が前方の両角部に開設されている。これにより、前記起立部に当該基端構成部材22を取り付けた状態において、前記起立部21に設けられた前記起立壁33及び前記L字リブ34を前記各挿通穴63,63に挿通できるように構成されている。
【0029】
前記詰替容器12は、図7に示すように、図外の薬剤を収容する容器本体71を備えており、該容器本体71は、図8及び図9に示すように、長方形状の底面72と、該底面72の周縁に起立した周壁73とによって形成されている。該周壁73の上縁には、側方に延出した側方フランジ部74と、該側方フランジ部74より下方に延出した延出部75とが一体形成されており、下方に折り返した折返し部76が形成されている。前記底面72の裏面には、上方へ没入した凹部77,77が各短辺に沿って形成されており、当該底面72の裏面には、前記短辺に沿った段差部78,78が形成されている。
【0030】
また、前記底面72には、図7に示したように、各短辺寄りの二カ所に各短辺に沿って延在する第1仕切壁81及び第2仕切壁82が立設されており、短辺側の周壁73と前記第1仕切壁81との間には、第1収容空間83が形成されている。また、前記第1仕切壁81と前記第2仕切壁82との間には、第2収容空間84が形成されており、前記第2仕切壁82と前記短辺側の周壁73との間には、第3収容空間85が形成されている。
【0031】
前記第1仕切壁81は、図7において右寄りに配置されており、左端と前記周壁73との間には、第1幅広連通路91が形成されている。この第1仕切壁81の右端と前記周壁73との間には、前記第1幅広連通路91より狭い第1幅狭連通路92が形成されている。
【0032】
前記第2仕切壁82は、図7において左寄りに配置されており、右端と前記周壁73との間には、第2幅広連通路95が形成されている。この第2仕切壁82の左端と前記周壁73との間には、前記第2幅広連通路95より狭い第2幅狭連通路96が形成されている。
【0033】
この容器本体71の中央部に位置する前記両仕切壁81,82の部位には、図8及び図9に示すように、円柱状の支柱部101,101が一体形成されており、各支柱部101,101の先端には、小径の小径部102,102が形成されている。
【0034】
前記周壁73を形成する各辺には、図7から図8に示すように、内側に突出する支持リブ105,・・・が底面72から開口部側へ向けて延設されており、前記周壁73を形成する各辺の上縁部には、上縁に沿って延在する凸条106,・・・が形成されている。各凸条106,・・・は、前記各支持リブ105上端より高位置に設定されており、前記各支持リブ105,・・・から前記凸条106,・・・までの範囲内に、前記支柱部101の前記小径部102が配置されるように構成されている。
【0035】
また、前記詰替容器12は、図10に示すように、前記容器本体71の開口部を閉鎖する蓋部111を備えている。該蓋部111は、前記容器本体71の開口部に内嵌する大きさの長方形板状に形成されており、その周縁には、上面側に突出する周縁フランジ112が全周に渡って形成されている。また、この蓋部111には、短辺方向に延在する内スリット113,・・・が複数並設されており、前記容器本体71内に収容された粒状の薬剤の飛び出しを防止しつつ、揮発した薬剤を前記内スリット113,・・・及び前記起立部21に設けられた外スリット27,・・・及び大径開口部28を介して外部へ放出できるように構成されている。
【0036】
この蓋部111の裏面には、円筒部121,121が二カ所に突設されており、当該蓋部111を前記容器本体71に取り付けた状態で、各円筒部121,121に前記容器本体71に立設された前記支柱部101,101の前記小径部102,102を挿入した状態で固定できるように構成されている。
【0037】
以上の構成にかかる本実施の形態において、この薬剤揮散器1を立てて使用した場合、薬剤を揮散する為の外スリット27,・・・や大径開口部28が設けられた揮散器本体11の前面25を下にして倒れることがある。
【0038】
このとき、前記外スリット27,・・・や大径開口部28が設けられた前記前面25には、当該前面25より突出する突出部としてのカバー41が設けられている。このため、当該薬剤揮散器1を載置した載置面に前記カバー41が先行して当接することによって、当該載置面と前記前面25との密着状態を回避することができる。これにより、前記載置面による前記外スリット27,・・・や前記大径開口部28の閉鎖を防止することができる。
【0039】
したがって、揮散器本体11が倒れた際に、前記載置面で薬剤揮散用の開口部が塞がれてしまう従来と比較して、前記外スリット27,・・・や前記大径開口部28から揮散された薬剤の濃度が高まり、この高い濃度の薬剤によって前記載置面を傷めるといった不具合を未然に防止することができる。
【0040】
そして、本実施の形態では、前記揮散器本体11の前面25に設けられた前記大径開口部28は、突出部を構成する前記カバー41によって覆われており、前記大径開口部28は、前記カバー41で隠蔽されている。このため、前記前面25に大きな前記大径開口部28を形成して揮散面積を増大した場合であっても、当該大径開口部28の露出を防止することができ、外観品質を高めることができる。
【0041】
さらに、この揮散器本体11が前記前面25を下にして倒れた場合においては、薬剤を揮散する前記大径開口部28と載置面との間に、前記カバー41を配置することができる。これにより、揮散した薬剤と載置面との直接接触を防止することができる。
【0042】
そして、このカバー41は、前記前面25より離間して配置されており、前記カバー41と前記前面25との間に間隙51が確保されている。このため、前記揮散器本体11が前記前面25を下にして倒れた場合であっても、揮散した薬剤を放出する為の間隙51を確保することができ、薬剤揮散による効果を維持することができる。
【0043】
なお、本実施の形態にあっては、前記起立部21の前面25にカバー41を設けて本発明の突出部を形成した場合に付いて説明したが、これに限定されるものでは無く、図11に示すように、複数の外スリット27が設けられた起立部21の前面25に円柱部151,・・・を設けて本発明の突出部を構成しても良い。
【0044】
この図11では、大径開口部28を廃止してデザイン性を高めたものを示したが、これに限定されるものでは無く、前述の実施の形態と同様に、前記大径開口部28を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同実施の形態の起立部を示す正面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】同実施の形態の起立部を示す背面図である。
【図5】同実施の形態のカバーを示す図で、(a)はカバーの背面図であり、(b)は同図(a)のB−B線に沿った断面図である。
【図6】同実施の形態の基端構成部材を示す図で、(a)は基端構成部材の平面図であり、(b)は基端構成部材の側面図である。
【図7】同実施の形態の容器本体を示す平面図である。
【図8】同実施の形態の容器本体の側面を示す一部断面図である。
【図9】同実施の形態の容器本体の正面を示す一部断面図である。
【図10】同実施の形態の蓋部を示す図で、(a)は蓋部の平面図であり、(b)は蓋部の側面を示す一部断面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
1 薬剤揮散器
11 揮散器本体
25 前面
27 外スリット
28 大径開口部
41 カバー
45 脚部
51 間隙
71 容器本体
151 円柱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を揮散する開口部が本体の外側面に設けられた薬剤揮散器において、
前記開口部が設けられた前記外側面に、当該外側面より突出する突出部を設けたことを特徴とする薬剤揮散器。
【請求項2】
前記本体に前記開口部の少なくとも一部を覆うカバーを設け、該カバーで前記突出部を構成するとともに、前記カバーを前記本体の前記外側面より離間して配置し、前記カバーと前記外側面との間に間隙を確保したことを特徴とした請求項1記載の薬剤揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−6959(P2007−6959A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188263(P2005−188263)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000102544)エステー化学株式会社 (127)
【Fターム(参考)】