説明

薬剤揮散器

【課題】芯材の取り替え作業を容易に行うことができる薬剤揮散器を提供する。
【解決手段】薬剤揮散器1は、内部に液状の薬剤を収容する容器2と、吸上部30および揮散部31を有する芯材3と、芯材3を保持する芯材保持枠4とを備え、芯材保持枠4により揮散部31を容器2外部に引き上げることで、吸上部30で吸い上げた薬剤が揮散部31を介して容器2外部に揮散する。芯材保持枠4は、一対の側枠部材40,40と、側枠部材40の下端部に形成され、容器2内部の突出部25に係合して芯材保持枠4を抜止め状態とする係合突起48とを備える。揮散部31は、各側枠部材40の間に挟持されており、各側枠部材40は、上端部を支点として互いに反対方向に弾性的に揺動することにより芯材3の着脱が可能であり。各側枠部材40の上端部には、各側枠部材40を揺動させる開閉部材44が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤、消臭剤などの種々の揮散性を有する液状の薬剤を容器内部に収容するとともに、薬剤中に薬剤の吸上・揮散可能な芯材を浸漬した薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や自動車などの空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、芳香剤を自然に揮散させる薬剤揮散器が広く使用されている。この薬剤揮散器には、ゲル状、固形状、液状など、種々の薬剤が用いられており、その中で液状の薬剤を用いる薬剤揮散器は、一般に薬剤を収容する容器と、容器内に収容された薬剤を吸上・揮散可能な芯材とにより構成されている。芯材は、一部(吸上部)が薬剤中に浸漬されるとともに、他部(揮散部)が容器上部の開口部から外部に露出可能になっており、毛細管現象により、吸上部で吸い上げた薬剤を揮散部にて空気中に揮散させている。
【0003】
上記した液状の薬剤を用いる薬剤揮散器としては、特許文献1にその一例が開示されている。特許文献1に記載の薬剤揮散器は、図14および図15に示すように、液状の薬剤を収容する容器100と、容器100内に収納される帯状の芯材102と、芯材102を保持する芯材保持枠101とによって構成されている。芯材102は、芯材保持枠101を構成する一対の側枠部材103,103に設けられた一対の垂直板104,104と、各側枠部材103の下端部に各側枠部材103を連結するように設けられた横桟105との間に巻き付けられており、芯材102の一端部を、横桟105と各側枠部材103の下端部に設けられた一対の受棒106,106との間に通して下方に垂らすことで、容器100の底部まで到達している。芯材保持枠101は、容器100の開口部100Aを閉塞可能なキャップ108に連結されている。そして、キャップ108を容器100から外し、キャップ108を介して芯材保持枠101を引き上げることにより、芯材上部の揮散部102Aが容器100の外部に露出する。従って、揮散部102Aの露出の程度によって、芯材下部の吸上部102Bによって吸い上げた薬剤の揮散状態を調整可能になっている。また、各側枠部材103の下端部には、外側に向けて突き出る突起107が設けられている。芯材保持枠101を引き上げる際、各突起107が容器100の肩部100Bに引っ掛かって係合することで、芯材保持枠101が容器100から抜け出るのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案公報第3020459号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この液状の薬剤を用いた薬剤揮散容器は、容器100内の薬剤が少量になった場合には、薬剤を詰め替えることにより、再利用が可能である。ただし、再利用の際には、薬剤の揮散を終えた芯材102は、薬剤の揮散に伴い、界面活性剤などの不揮発成分により目詰まりを起こして薬剤の吸上・揮散機能が低下しているため、芯材102についても新しいものに取り替える必要がある。
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の薬剤揮散容器では、帯状の芯材102が芯材保持枠101に巻き付けられているために、芯材102を芯材保持枠101から取り外すのに手間がかかり、また、新たな帯状の芯材102を芯材保持枠101に取り付けるのにも手間がかかるという課題がある。ここで、取り替え用として、既に帯状の芯材102が芯材保持枠101に取り付けられているものが用意されていれば、上記した課題は解決するが、この場合には、芯材保持枠101も新たなものを用意する必要があるため、コストが高くつき経済的でないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたもので、芯材保持枠に対する芯材の取り替えを容易に行うことができる薬剤揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、上部に開口を有するとともに内部に液状の薬剤を収容する容器と、吸上部および揮散部を有し、少なくとも前記吸上部が薬剤に浸漬するように前記容器内に収納される芯材と、前記芯材を保持する芯材保持枠とを備え、前記芯材保持枠により前記揮散部を前記容器外部に引き上げることで、前記吸上部で吸い上げた薬剤を前記揮散部を介して前記容器外部に揮散させるように構成された薬剤揮散器において、前記芯材保持枠は、少なくとも一対の側枠部材を備え、前記芯材の少なくとも前記揮散部が前記各側枠部材の間に着脱可能に保持されていることを特徴とする薬剤揮散器により達成される。
【0009】
本発明の好ましい実施態様においては、前記揮散部は、前記各側枠部材により挟持されていることを特徴としている。
【0010】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各側枠部材は、上端部を支点として互いに反対方向に弾性的に揺動することにより前記揮散部の着脱が可能であり、前記各側枠部材の上端部には、前記各側枠部材を揺動させる開閉部材が設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明の他の好ましい実施態様においては、前記各側枠部材の間には、前記揮散部を下方より支持可能な底枠部材が設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記容器の内周面には、内方に突き出る一対の突出部が設けられており、前記各突出部の先端面が前記各側枠部材の外側面に接触していることを特徴としている。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各側枠部材の下端部には、前記容器内の段部に係合して前記芯材保持枠を抜止め状態とする係合突起が設けられていることを特徴としている。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各側枠部材には、前記突出部の上面と係合可能な突部が縦方向に複数設けられていることを特徴としている。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記各係合突起の下縁側を、外側から内側へ低く傾斜させて挿入ガイド部を形成したことを特徴としている。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記容器の上部開口を開閉可能に閉塞するキャップに、前記芯材保持枠の上端部が回転可能に連結されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薬剤揮散器によると、芯材保持枠に対する芯材の取り替え作業を容易に行うことができる。これにより、液状の薬剤と芯材のみを交換するため、低コストで再利用可能な薬剤揮散器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散器の使用時の状態を示す側面図であり、容器およびキャップを断面にして示している。
【図2】本発明の一実施形態に係る薬剤揮散器の使用前の状態を示す側面図であり、容器およびキャップを断面にして示している。
【図3】図2の薬剤揮散器の正面から見た断面図である。
【図4】芯材保持枠の側面図である。
【図5】芯材保持枠の正面図である。
【図6】芯材保持枠の断面図である。
【図7】(a)は芯材の側面図であり、(b)は芯材の正面図である。
【図8】他の実施形態の芯材保持枠の左側面図である。
【図9】他の実施形態の芯材保持枠の右側面図である。
【図10】他の実施形態の芯材保持枠の正面図である。
【図11】他の実施形態の芯材保持枠の左側面図である。
【図12】他の実施形態の芯材保持枠の右側面図である。
【図13】他の実施形態の芯材保持枠の正面図である。
【図14】従来例の薬剤揮散器の正面図であり、芯材は省略して容器およびキャップを断面にして示している。
【図15】図14の薬剤揮散器の側面図であり、容器およびキャップは省略して芯材および芯材保持枠を断面にして示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図面中の同一または同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0020】
図1〜図3は、本発明に係る薬剤揮散器の一実施形態の構成をそれぞれ示している。
【0021】
本実施形態の薬剤揮散器1は、上部に開口を有するとともに、内部に液状の薬剤を収容可能な容器2と、容器2内に収納されて液状の薬剤を吸い上げて揮散させることが可能な芯材3と、芯材3を保持可能な芯材保持枠4とを備えている。容器2の上部開口は、キャップ5により開閉可能に塞がれている。キャップ5には、芯材保持枠4が回転可能に連結されており、使用者はキャップ5を持つことで芯材保持枠4を容器2から引き上げることができる。芯材保持枠4の引き上げに伴い、芯材3の揮散部31が、入口21から容器2の外部に引き上げられて露出する。このとき、芯材3の吸上部30が薬剤中に浸漬されているため、芯材3の吸上部30で吸い上げた薬剤が芯材3の揮散部31を介して容器2の外部に揮散する。
【0022】
容器2は、図1〜図3に示すように、上面に前記開口を有する円筒状の首部20と、首部20に連続する中空の胴部22とにより構成されている。胴部22は、首部20よりも大径に形成された肩部23を備えている。この容器2としては、例えば、透明のプラスチック製ブロー成形品が挙げられるが、ガラス製品の他、インジェクション成形品などであっても構わない。
【0023】
首部20の上部外周面には、雄ネジ部24が設けられている。雄ネジ部24がキャップ5の内周面に設けられた雌ネジ部50と螺合することにより、キャップ5が容器2の首部20に固定される。
【0024】
首部20の下部内周面には、内方に向けて突き出る一対の突出部25,25が一体に設けられている。各突出部25は対向する位置に設けられ、それぞれが芯材3の厚み方向に突き出て芯材3の揮散部31の最も面積の大きな前面および後面と対向するようになっている。これにより、2つの突出部25により、首部20内に芯材3の揮散部31の外形に沿う平面視が略長方形状の開口が形成されている。該開口は、芯材3を保持した芯材保持枠4を引き上げる時、あるいは、容器2内に挿入する時の入口21となっている。
【0025】
各突出部25は、芯材保持枠4を引き上げた時に、芯材保持枠4を起立状態に保持する。つまり、芯材保持枠4を引き上げた時、各突出部25の先端面が、芯材3を保持した芯材保持枠4(後述する各側枠部材40の外側面)の一部に接触して芯材保持枠4を挟持することにより、芯材保持枠4が起立状態で保持される。また、首部20の内周面より突き出る各突出部25により芯材保持枠4が挟持されていることで、芯材保持枠4と首部20の内周面との間に空間が生じる。そのため、芯材保持枠4は、各突出部25を支点に少なくとも前後方向(芯材3の厚み方向)に傾倒することが可能になっている。
各突出部25の下面は、内側に向けて高く傾斜する傾斜面になっている。また、各突出部25の上面は、内側に向けて低く傾斜する傾斜面になっており、各突出部25は、全体として先細り状の形状を有している。各突出部25の上面および下面の先端面と連続する部分は、それぞれ滑らかな曲面になっている。
【0026】
なお、本実施形態では、各突出部25は、容器2の首部20に一体に設けられているが、必ずしもこの構成に限られるものではない。例えば、各突出部25を容器2の首部20の内周面に対して中栓のような形で取り外し可能に設けるようにしてもよい。
【0027】
キャップ5の内底面には、円筒状のボス51が内底面から突き出るように設けられている。ボス51の先端部は均等に分割されて、複数(例えば、3つ)の係合爪52が設けられており、各係合爪52の外面には段部53が設けられている。このボス51は、後述する芯材保持枠4の連結部42に設けられた嵌合孔43に嵌合可能であり、各係合爪52を内側に弾性変形させてボス51を嵌合孔43に嵌合させた後、各係合爪52の段部53を連結部42の下面に引っ掛けることで、芯材保持枠4が軸方向に抜けることなくキャップ5に対して回転可能に連結される。
【0028】
芯材保持枠4は、図4〜図6に示すように、例えば、プラスチックなどの可撓性を有する材料により成形されており、下方に向けて延びる左右一対の板状の側枠部材40,40と、各側枠部材40の上端部同士を連結する水平な板状の上枠部材41とを備えている。上枠部材41の中央部には、連結部42が一体に設けられており、連結部42の上面の中央部に嵌合孔43が設けられている。各側枠部材40の上端部は、それぞれ幅広に形成されており、各側枠部材40の上端部には、各側枠部材40を開閉させるためのL字状の開閉部材44,44が一体に設けられている。
【0029】
各側枠部材40が下方に垂下した状態では、各側枠部材40の間の距離は、芯材3の揮散部31の厚みよりわずかに小さく設定されている。これにより、揮散部31が各側枠部材40により挟持され、吸上部30が各側枠部材40から吊り下げられるようにして、芯材3は芯材保持枠4に保持される。各側枠部材40は、上端部40Aを支点として弾性的に揺動可能となっており、例えば、キャップ5(図1に示す)の上面に親指を当てるとともに、L字状の各開閉部材44の底面44Aにそれぞれ人差し指と中指とを当て、各開閉部材44をキャップ5の方向(図4に示す矢印Pの方向)に向けて押圧することで、各側枠部材40の下端部40Bが互いに離間(開動作)する。これにより、各側枠部材40の間に、芯材3の揮散部31を挿入することが可能になる。そして、各開閉部材44に対する押圧を解除すると、各側枠部材40は、弾性変形による復元力によって、元の下方に垂下する状態に復帰(閉動作)して、芯材3の揮散部31を挟持する。また、芯材3の使用済み後は、同様に、各開閉部材44をキャップ5の方向(図4に示す矢印Pの方向)に向けて押圧して、各側枠部材40を開動作させることで、芯材3に対する各側枠部材40による挟持が解除される。その結果、使用済みの芯材3を芯材保持枠4から容易に取り外すことができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、芯材3の揮散部31は、その全体が芯材保持枠4により保持されている。芯材保持枠4が容器2内に挿入されている時には、各側枠部材40は容器2の各突出部25の間に挟まれているので、各開閉部材44による各側枠部材40の開閉動作が規制されている。そのため、芯材3は、芯材保持枠4を容器2の入口21から引き抜かない限り、芯材保持枠4から取り外すことができないようになっている。
【0031】
各側枠部材40の下端部40Bは、それぞれ幅広に形成されており、幅方向における一方の側縁部が内側に向けて折り曲げられて、第1の屈曲部45が設けられている。第1の屈曲部45の下端部から所定の領域は、芯材3の揮散部31の下面の形状に沿うように「く」の字状に折り曲げられており、揮散部31の下面の一部分を支える支持面46を構成している。この第1の屈曲部45により、各側枠部材40により挟持された芯材3の一方の側面が支持されているとともに、支持面46により、芯材3が下方にずれ落ちるのが規制されている。また、各側枠部材40の上部は、その一部分が、それぞれ幅広に形成されており、幅方向における一方の側縁部が内側に向けて折り曲げられて、第2の屈曲部47が設けられている。この第2の屈曲部47により、各側枠部材40により挟持された芯材3の他方の側面が支持されている。
【0032】
各側枠部材40の下端部40Bには、その外側面の中央部に、それぞれ板面より突き出る外向きの係合突起48,48が一体に設けられている。各係合突起48は、容器2内部の段部となる前記突出部25の方向に突き出るように設けられている。そのため、薬剤揮散器1の使用時に、芯材保持枠4を引き上げた際、各係合突起48が容器2の各突出部25の下面に引っ掛かって係合する。これにより、芯材保持枠4は抜け止め状態となり、容器2の入口21から芯材保持枠4が抜け出るのが防止されている。
【0033】
各係合突起48の下縁には、外側から内側へ向けて低く傾斜するように挿入ガイド部48Aが設けられている。薬剤の詰め替えや芯材3の取り替えのために芯材保持枠4を容器2の入口21から一旦引き抜いた後、再び、芯材保持枠4を入口21から容器2内に挿入する際に、挿入ガイド部48Aの存在により各係合突起48が内側にスムーズに撓むことで、各係合突起48は容易に各突出部25を乗り越える。その結果、芯材保持枠4を容器2内に容易に挿入することができる。
【0034】
各側枠部材40の外側面には、縦方向に等間隔で複数(図示例では、3つ)の突部49が一体に設けられている。この各突部49は、芯材保持枠4を引き上げた時に、容器2の首部20の内周面に設けられた各突出部25の上面と係合するため、芯材保持枠4が容器20内に不用意に落ち込まないようになっている。これにより、芯材保持枠4を所定の高さ位置にて保持することができる。
【0035】
芯材3は、図7(a),(b)に示すように、ともに略長方体状の吸上部30と揮散部31とを備え、吸上部30および揮散部31が連続して一体化された形態を有している。この芯材3は、主に液状の薬剤の吸上・揮散効果に優れた繊維層(図示せず)で全体が構成されている。前記繊維層としては、植物繊維やパルプなどの天然繊維、レーヨン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの合成繊維、またはそれらの混合繊維などの繊維質材料で構成することができる。特に、エアレイド法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、スパンレース法などによって製造される不織布が好適であるが、その他、織物、編物などの層であってもよい。なお、前記繊維層の表面に、例えば、薄いレーヨンで構成された被覆層を設けてもよい。
【0036】
本実施形態では、吸上部30は、揮散部31よりもその幅が狭くなるように形成されている。これにより、芯材保持枠4が容器2内に収納されている時には、吸上部30を折りたたまれた状態に、一方で、芯材保持枠4が引き上げられた時には、吸上部30を伸びた状態に、それぞれ容易に変形させることができる(図1および図2参照)。吸上部30は、芯材保持枠4が引き上げられた時に、容器2の内底面に達することができる長さに設定されており、薬剤を最後まで吸い上げさせることができるようになっている。また、芯材保持枠4が引き上げられた時に、薬剤が空気中に揮散しやすくするために、揮散部31は幅広に形成されている。なお、本実施形態では、吸上部30の幅を揮散部31の幅よりも狭くしているが、吸上部30と揮散部31との幅が同じ大きさであってもよい。
【0037】
次に、上記した構成の薬剤揮散器1の使用方法について説明する。
【0038】
上記した構成の薬剤揮散器1においては、容器2の首部20にキャップ5が固定された状態では、図2に示すように、芯材3は吸上部30および揮散部31が液状の薬剤中に浸漬している。一方、図1に示すように、キャップ5と容器2の首部20との固定を外してキャップ5を容器2から引き上げると、これに伴い、芯材保持枠4が容器2の入口21から引き上げられて、芯材3の揮散部31が容器2の外部に露出する状態となる。これにより、揮散部31を介して吸上部30により吸い上げられた薬剤が空気中に揮散される。このとき、芯材保持枠4の各側枠部材40の外側面には、複数の突部49が設けられており、この各突部49が、芯材保持枠4を引き上げた際に、容器2の首部20の内周面に設けられた各突出部25の上面と係合する。これにより、芯材保持枠4が不用意に容器2内に落ち込まず、芯材保持枠4を所望の引き上げ高さに保持することができる。従って、使用者は、外部に露出させる揮散部31の表面積を変えることができ、薬剤の揮散量を調節することが可能となる。
【0039】
また、芯材保持枠4を引き上げた時には、各側枠部材40の係合突起48が容器2の突出部25の下面に引っ掛かって係合するので、使用者が誤って芯材保持枠4を強く引き上げ過ぎた場合でも、芯材保持枠4が容器2の入口21から不用意に引き抜かれるのが防止されている。
【0040】
一方、薬剤の揮散に伴い、容器2内の薬剤が少量になったり、芯材3に界面活性剤などの不揮発成分が目詰まりすることで薬剤の揮散性能が低下したりした場合には、芯材保持枠4を各係合突起48が各突出部25と係合するまで引き上げた後、これを前方または後方(図1において矢印X1または矢印X2で示す芯材3の厚み方向)に傾倒させることで、芯材保持枠4を容器2の入口21から容易に引き抜くことができる。つまり、本実施形態では、芯材保持枠4の各係合突起48が、芯材保持枠4を傾倒させることが可能な芯材3の厚み方向に突き出るように設けられているため、芯材保持枠4を傾けた際に、傾けた側の係合突起48は内側下方に変位して突出部25との係合が外れる。ここで、この芯材保持枠4を傾倒させた状態(つまり、一方の係合突起48と突出部25との係合が外れた状態)で芯材保持枠4をさらに引き上げると、傾けた側と反対側の容器2の突出部25と係合する係合突起48だけが、突出部25からの反作用の力による内向きの押圧力を受ける。これにより、側枠部材40が弾性変形によって撓むので、傾けた側と反対側の係合突起48は内側に変位し、突出部25との係合が外れて突出部25を容易に乗り越える。その後、傾けた側のもう一方の係合突起48についても、芯材保持枠4の引き上げにより、突出部25を乗り越えさせることで、芯材保持枠4を容器2の入口21から容易に引き抜くことが可能になっている。
【0041】
このように、本実施形態では、芯材保持枠4を前後方向のいずれかに傾倒させながら芯材保持枠4を引き上げるという簡易な操作で、芯材保持枠4を容器2の入口21から容易に引き抜くことができるので、薬剤の詰め替えや芯材3の取り替え作業を手軽に行うことができる。また、容器2内に新たな薬剤を補充したり、芯材保持枠4の芯材3を新たな芯材に取り替えたりすることにより、容器2および芯材保持枠4を再利用することが可能である。
【0042】
また、芯材保持枠4の芯材3を新たな芯材に取り替えたい場合には、芯材保持枠4を容器2から引き抜いた後、各開閉部材44を、例えば人差し指と中指とを使ってキャップ5の方向に押圧する。これにより、各側枠部材40が開動作して、芯材3を挟持する状態が解除される。その結果、使用者は、使用済みの芯材3を、薬剤に触れることなく、芯材保持枠4から容易に取り外すことができ、芯材保持枠4に対する芯材3の取り替え作業も簡単に行うことができる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明に係る薬剤揮散器の具体的な態様は上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、芯材保持枠4の側枠部材40は、芯材3の揮散部31の最も面積の大きな前面および後面と対向するように、それぞれ1つずつ配備されているが、2つ以上の複数配備されていてもよく、また、揮散部31の前面側と後面側とで配備される側枠部材40の数が異なっていてもよい。また、上記した実施形態では、芯材3の揮散部31の前面および後面に側枠部材40を接触させて芯材3を挟持しているが、芯材3の揮散部31の両側面に側枠部材40を接触させて芯材3を挟持するように構成してもよく、さらに、芯材3の揮散部31の前面、後面および両側面のそれぞれと対向するように側枠部材40を配備し、揮散部31の上記した4面に側枠部材40を接触させて芯材3を挟持するように構成してもよい。この場合、揮散部31の前面および後面に配備された側枠部材40が一対となって、開閉部材44により開閉動作するとともに、揮散部31の両側面に配備された側枠部材40が一対となって、別の開閉部材44により開閉動作するように構成される。
【0044】
また、図8〜図10は、芯材保持枠の他の実施形態を示している。図8〜図10の芯材保持枠6は、対向する左右一対の側枠部材60,60と、底枠部材61と、各側枠部材60と直角をなす後枠部材62とにより構成され、かご状に形成されている。底枠部材61上には、各側枠部材60および後枠部材62で囲まれた収容空間Aが形成されている。この収容空間Aは、前面Fが開放されているとともに、その幅(各側枠部材60の間の距離)が芯材3の揮散部31の厚みより大きく設定されており、この収容空間Aに芯材3の揮散部31が収容されるようになっている。
【0045】
各側枠部材60は、図示例では、それぞれ一体形成により連結した、左右各位置の縦枠63と複数の横枠64とで構成されている。各縦枠63は互いに平行に設けられており、また、各横枠64も互いに平行に設けられている。底枠部材61は、各側枠部材60の対向する縦枠63の下端部同士を連結する2つの下枠65により構成されており、2つの下枠65の間には、挿入口66が形成されている。この挿入口66に、芯材3の吸上部30が挿入されて、吸上部30が下方に垂れ下がるようになっているとともに、各下枠65により、収容空間Aに収容された芯材3の揮散部31が下方より支持されている。後枠部材62は、各側枠部材60の対向する横枠64の一方の端部同士を連結する複数の側枠67により構成されており、各側枠67により、収容空間Aに収容された芯材3の揮散部31の一方の側面が支持されている。
【0046】
各側枠部材60の上端の横枠64同士は、水平な板状の上枠部材68により連結されている。上枠部材68の中央部には、連結部69が一体に設けられている。連結部69の上面の中央部には嵌合孔(図示せず)が設けられており、この嵌合孔に、キャップ5の内底面に形成されたボス51を嵌合させることで、芯材保持枠6が軸方向に抜けることなくキャップ5に対して回転可能に連結される。
【0047】
また、各側枠部材60の各縦枠63の下端部には、それぞれ外向きに突き出る係合突起70が一体に設けられている。各係合突起70は、容器2内部の段部となる突出部25の方向に突き出るように設けられるので、薬剤揮散器1の使用時に、芯材保持枠6を引き上げた際、各係合突起70が容器2の各突出部25の下面に引っ掛かって係合する。これにより、芯材保持枠6の抜け止めが図られている。また、各係合突起70の下縁は、外側から内側へ向けて低く傾斜するように形成されて、挿入ガイド部70Aを構成している。なお、図中、71は、芯材保持枠6を引き上げた時、容器2の首部20の内周面に設けられた各突出部25の上面と係合可能な突部である。
【0048】
図8〜図10に示す芯材保持枠6においては、保持する芯材3を新たな芯材に取り替えたい場合には、芯材保持枠6を、上記した実施形態と同様に、容器2から引き抜いた後、芯材保持枠6を傾けることで、収容空間Aの開放された前面Fから芯材3が抜け落ちるので、使用済みの芯材3を芯材保持枠6から容易に取り外すことができる。よって、図8〜図10に示す芯材保持枠6によっても、使用者は、芯材3を簡単に取り替えることができる。
【0049】
なお、この実施形態の芯材保持枠6においても、芯材3の揮散部31は、その全体が芯材保持枠6により保持されており、また、芯材保持枠6が容器2内に挿入されている時には、各側枠部材60が容器2の各突出部25の間に挟まれている。そのため、芯材保持枠6を容器2の入口21から引き抜かない限り、芯材3を芯材保持枠6から取り外すことができない。
【0050】
さらに、図11〜図13は、芯材保持枠の他の実施形態を示している。図11〜図13の芯材保持枠8は、対向する左右一対の側枠部材80,80と、各側枠部材80と直角をなす前後の前枠部材81および後枠部材82とにより構成され、囲い状に形成されている。各側枠部材80、前枠部材81および後枠部材82で囲まれた収容空間Bに、芯材3の揮散部31が収容されるようになっており、収容空間Bの底面Uは開放されている。また、収容空間Bの幅(各側枠部材80の間の距離)は芯材3の揮散部31の厚みよりわずかに小さく設定されており、芯材3の揮散部31は、圧縮されることで、各側枠部材80により挟持されている。
【0051】
各側枠部材80は、図示例では、それぞれ一体形成により連結した、1つの縦枠83と、互いに平行な複数の横枠84とで構成されている。前枠部材81および後枠部材82は、各側枠部材80の対向する横枠84の端部同士を連結する複数の側枠85により構成されており、各側枠85により、収容空間Bに収容された芯材3の揮散部31の両側面が支持されている。
【0052】
各側枠部材80の上端の横枠84同士は、水平な板状の上枠部材86により連結されており、上枠部材86の中央部には、連結部87が一体に設けられている。連結部87の上面の中央部には嵌合孔(図示せず)が設けられており、この嵌合孔に、キャップ5の内底面に設けられたボス51を嵌合させることで、芯材保持枠8が軸方向に抜けることなくキャップ5に対して回転可能に連結される。
【0053】
また、各側枠部材80の縦枠83の下端部には、それぞれ外向きに突き出る係合突起88が一体に設けられている。各係合突起88は、容器2内部の段部となる突出部25の方向に突き出るように設けられるので、薬剤揮散器1の使用時に、芯材保持枠8を引き上げた際、各係合突起88が容器2の各突出部25の下面に引っ掛かって係合する。これにより、芯材保持枠8の抜け止めが図られている。また、各係合突起88の下縁は、外側から内側へ向けて低く傾斜するように形成されて、挿入ガイド部88Aを構成している。なお、図中、89は、芯材保持枠8を引き上げた時、容器2の首部20の内周面に設けられた各突出部25の上面と係合可能な突部である。
【0054】
図11〜図13に示す芯材保持枠8においては、保持する芯材3を新たな芯材に取り替えたい場合には、芯材保持枠8を、上記した実施形態と同様に、容器2から引き抜いた後、収容空間Bの開放された底面Uから芯材3を抜き出すことで、使用済みの芯材3を芯材保持枠8から容易に取り外すことができる。よって、図11〜図13に示す芯材保持枠8によっても、芯材3の取り替え作業を簡単に行うことができる。なお、図示例では、各側枠部材80の両端に前枠部材81および後枠部材82が設けられているが、いずれか一方の端部にのみ前枠部材81もしくは後枠部材82を設け、他方の端部は、開放させてもよい。これにより、芯材3の揮散部31を、収容空間Bの底面Uまたは前面(もしくは後面)から抜き出したり、または、収容したりすることが可能になる。
【0055】
なお、この実施形態の芯材保持枠8においても、芯材3の揮散部31は、その全体が芯材保持枠8により保持されており、また、芯材保持枠8が容器2内に挿入されている時には、各側枠部材80が容器2の各突出部25の間に挟まれている。そのため、芯材保持枠8を容器2の入口21から引き抜かない限り、芯材3を芯材保持枠8から取り外すことができない。
【符号の説明】
【0056】
1 薬剤揮散器
2 容器
3 芯材
4 芯材保持枠
5 キャップ
25 突出部
30 吸上部
31 揮散部
40,60,80 側枠部材
49,71,89 突部
44 開閉部材
48,70,88 係合突起
48A,70A,88A 挿入ガイド部
61 底枠部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有するとともに内部に液状の薬剤を収容する容器と、吸上部および揮散部を有し、少なくとも前記吸上部が薬剤に浸漬するように前記容器内に収納される芯材と、前記芯材を保持する芯材保持枠とを備え、前記芯材保持枠により前記揮散部を前記容器外部に引き上げることで、前記吸上部で吸い上げた薬剤が前記揮散部を介して前記容器外部に揮散するように構成された薬剤揮散器において、
前記芯材保持枠は、少なくとも一対の側枠部材を備え、
前記芯材の少なくとも前記揮散部が前記各側枠部材の間に着脱可能に保持されていることを特徴とする薬剤揮散器。
【請求項2】
前記揮散部は、前記各側枠部材により挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散器。
【請求項3】
前記各側枠部材は、上端部を支点として互いに反対方向に弾性的に揺動することにより前記揮散部の着脱が可能であり、前記各側枠部材の上端部には、前記各側枠部材を揺動させる開閉部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の薬剤揮散器。
【請求項4】
前記各側枠部材の間には、前記揮散部を下方より支持可能な底枠部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
前記容器の内周面には、内方に突き出る一対の突出部が設けられており、前記各突出部の先端面が前記各側枠部材の外側面に接触していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項6】
前記側枠部材の下端部には、前記容器内の段部に係合して前記芯材保持枠を抜止め状態とする係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項7】
前記各側枠部材には、前記突出部の上面と係合可能な突部が縦方向に複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載の薬剤揮散器。
【請求項8】
前記各係合突起の下縁を、外側から内側へ低く傾斜させて挿入ガイド部を形成したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【請求項9】
前記容器の上部開口を開閉可能に閉塞するキャップに、前記芯材保持枠の上端部が回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の薬剤揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−13483(P2013−13483A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147051(P2011−147051)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】