説明

薬剤散布機

【課題】取り扱う苗の背丈に関わらず、苗や苗マット等に付着している水滴等により散布ノズルの内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズルの内部に固着することを防止可能な薬剤散布機を提供する。
【解決手段】田植機100の苗載台16上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機140において、繰出部42に連結された散布ノズル65の先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバー66を、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、該散布ノズルの先端部を斜めにカットした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植え直前の育苗箱に浸透移行性のある粒剤を散布し、移植後まもなく発生する害虫を駆除する箱施用剤が知られている。該箱施用剤は出穂以前に発生する主要病原虫のほとんどを一回だけの薬剤処理で防除できるものである。
また、最近では稲作中期以降に発生する害虫や葉イモチ、紋枯病などの発生を抑制することができる長期残効性の箱施用剤も登場してきている。
しかし、多忙な田植え直前の時期に、手散布により育苗箱に所定量の薬剤を丁寧に散布するのは非常に煩わしい作業であるため、動力散布機を用いて大量に処理していたが、均一に散布することは難しかった。
そこで、本出願人は、特許文献1に記載の如く、田植機の苗載台上方に薬剤散布機を搭載して、該薬剤散布機によって苗マット上に薬剤を散布し、田植えと同時に施薬も行うことのできる作業機を提案している。
【0003】
また、薬剤散布機では、散布体である散布ノズルの先端を苗マットの床土近傍まで延出し、苗をかき分けて苗マットに施薬するため、苗や苗マット等に付着している水滴等により散布ノズルの内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズルの内部に固着するおそれがあった。
そこで、本出願人は、特許文献2に記載の如く、繰出部下流に連結された散布ノズルの先端に、少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバー先端が該散布ノズル先端よりも突出した状態で嵌設する薬剤散布機を提案している。
【特許文献1】特開2002−027895号公報
【特許文献2】特開2003−088291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の薬剤散布機は、通常の背丈に成長した苗に付着している水滴が散布ノズルの先端部に付着することを防止することは可能であるが、背丈が低い苗の先端部が筒形のカバーの内部に入り込んで散布ノズルの先端部に接触し、該苗に付着している水滴が散布ノズルの先端部に付着する場合がある。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑み、取り扱う苗の背丈に関わらず、苗や苗マット等に付着している水滴等により散布ノズルの内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズルの内部に固着することを防止可能な薬剤散布機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、田植機の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機において、
繰出部に連結された散布ノズルの先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、
該散布ノズルの先端部を斜めにカットしたものである。
【0008】
請求項2においては、前記散布ノズルの先端部のカット面は、垂直面よりも散布ノズルの根元側に傾斜しているものである。
【0009】
請求項3においては、田植機の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機において、
繰出部に連結された散布ノズルの先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、
カバーの先端部の略上半分、かつ、散布ノズルの延長線上にない部分を覆う被覆部を設けたものである。
【0010】
請求項4においては、田植機の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機において、
繰出部に連結された散布ノズルの先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、
該散布ノズルの先端部を斜めにカットし、
カバーの先端部の略上半分、かつ、散布ノズルの延長線上にない部分を覆う被覆部を設けたものである。
【0011】
請求項5においては、前記散布ノズルの先端部のカット面は、地面に対して垂直な面よりも散布ノズルの根元側に傾斜しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、苗マット上の苗の背丈が低く、該苗の先端部がカバーの内部に入り込んだ場合でも、散布ノズルの先端部は斜めにカットされており、該苗の先端部が散布ノズルの先端部に接触することを防止、より厳密には、接触する頻度を小さくすることが可能である。
従って、該苗に付着している水滴が散布ノズルの先端部に付着することを防止し、ひいては、水滴により散布ノズルの内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズルの内部に固着することを防止することが可能である。
【0014】
請求項2においては、散布ノズルの先端部に苗の先端部が接触する頻度をさらに小さくすることが可能である。
【0015】
請求項3においては、苗マット上の苗の背丈が低い場合でも、該苗の先端部が被覆部に接触してカバーの内部に入り込むことを防止することができ、該苗の先端部が散布ノズルの先端部に接触することを防止、より厳密には、接触する頻度を小さくすることが可能である。
従って、該苗に付着している水滴が散布ノズルの先端部に付着することを防止し、ひいては、水滴により散布ノズルの内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズルの内部に固着することを防止することが可能である。
【0016】
請求項4においては、苗マット上の苗の背丈が低い場合でも、該苗の先端部が被覆部に接触してカバーの内部に入り込むことを防止することができる。また、該苗の先端部がカバーの内部に入り込んだ場合でも、散布ノズルの先端部は斜めにカットされている。
よって、該苗の先端部が散布ノズルの先端部に接触することを防止、より厳密には、接触する頻度を小さくすることが可能である。
従って、該苗に付着している水滴が散布ノズルの先端部に付着することを防止し、ひいては、水滴により散布ノズルの内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズルの内部に固着することを防止することが可能である。
【0017】
請求項5においては、散布ノズルの先端部に苗の先端部が接触する頻度をさらに小さくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、図1、図2および図3を用いて本発明の薬剤散布機の実施の一形態である薬剤散布機140を具備する乗用田植機100の全体構成について説明する。
なお、本発明に係る薬剤散布機は田植機に広く適用可能であって、その適用範囲は本実施例の乗用田植機100に限定されるものではない。ここで、「田植機」とは、水田に稲の苗を植え付ける機械を指し、作業者が乗って操作する乗用田植機および作業者が手で押して操作する歩行式田植機の両方を含む。
また、以下の説明では、便宜上図1中の矢印Aの方向を「前方」と定義する。
【0019】
乗用田植機100は田植機の実施の一形態であり、走行部1の後部に昇降リンク機構27を介して植付部4を配置する。
走行部1は車体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にてフロントアクスルケースを介して前輪6を支持する。また、走行部1は、後部にてリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持する。エンジン2はボンネット9に覆われる。
乗用田植機100はボンネット9の後部に設けられたダッシュボード5の上に操向ハンドル14を配置し、ボンネット9の左右両側およびボンネット9の後部の車体フレーム3の上面を車体カバー12で覆っている。
乗用田植機100は操向ハンドル14の後方に座席13を配置し、ボンネット9の左右両側、座席13の前方、座席13の左右両側、および座席13の後方を作業者が足を載せるステップとしている。
【0020】
乗用田植機100は、座席13の側部に走行変速レバー30、植付昇降および作業走行変速用の副変速レバー31、植付感度調節レバー等を配置する。乗用田植機100は、ダッシュボード5の下部のステップ上に主クラッチペダル32や左右ブレーキペダルを配設する。また、乗用田植機100は、座席13の後方に施肥機33を配設している。
【0021】
植付部4は、苗載台16、植付爪17、フロート34等で構成される。苗載台16は前高後低に配設され、苗載台16の下部は下ガイドレール18、苗載台16の前面の上部は上ガイドレール19により左右往復摺動自在に支持される。下ガイドレール18および上ガイドレール19は植付センターケース20よりフレーム等を介して支持される。
植付ケース21は植付センターケース20より連結パイプを介して平行に後方へ突出される。植付ケース21の後部には、一方向に回転するロータリケース22が設けられ、ロータリケース22の左右両側に一対の植付爪17・17が設けられる。
こうして、乗用田植機100は、前進走行とともに苗載台16を横送り機構により左右に往復運動(摺動)し、この往復運動に同期させて植付爪17・17を駆動して一株分の苗を切り出し、連続的に植え付け作業を行う。
【0022】
なお、植付センターケース20の前部にローリング支点軸を介して昇降リンク機構27が連結される。昇降リンク機構27はトップリンク25やロワーリンク26等より構成され、座席13下方に配置した昇降シリンダ28によって植付部4を昇降する。
【0023】
図1、図2および図3に示す如く、苗載台16の上面には各条の左右両側にリブ85・85・・・が突設され、苗マット載置部86・86・・・が形成される。隣り合うリブ85・85で挟まれた苗マット載置部86に載置された苗マットが、一条に対応する。
苗マットの縦送り機構は、従動ローラ37、駆動ローラ38、苗送りベルト35等で構成される。苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて開口部が設けられ、該開口部の上下に従動ローラ37と駆動ローラ38を配設され、従動ローラ37と駆動ローラ38の間に苗送りベルト35が巻回される。苗送りベルト35・35・・・の表面には多数の突起が設けられ、苗マット載置部86の下部から上下中間位置にかけて設けられた開口部からベルト表面が露出する。苗マットの縦送り機構の上方に設けられた苗マット押え機構36と苗送りベルト35とで苗マットを保持しながら、苗を正確に下方へ縦送りし、安定した植付けを行う。
【0024】
苗載台16の左右往復運動と、該往復運動に同期して植付爪17・17・・・が行う苗の切り出し作業と、により、苗マットの下端が一定幅ずつ切断され、切断された苗マットが下方へ搬送されて水田に植え付けられる。また、苗マットは苗載台16の左右端での折り返し時に縦送り機構の苗送りベルト35によって下方へと運ばれる。
この植付作業の際、本発明の薬剤散布機140により同時に施薬を行って、散布ムラのない確実な施薬を行う。
【0025】
以下では、図1、図2、図4、図5、図6および図7を用いて、薬剤散布機140の詳細構成を説明する。
図1および図2に示す如く、薬剤散布機140は乗用田植機100の苗載台16の上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬するものである。より厳密には、薬剤散布機140は苗載台16の苗マット載置部86に対向して配置される。薬剤散布機140が取り扱う薬剤は、主に粉体の原料を粒状に成形したものであるが、他の粒状の薬剤(例えば、表面にコーティングを施した粒状の薬剤)に適用することも可能である。
【0026】
また、図4に示す如く、薬剤散布機140は二つの苗マット載置部86・86の左右中央上方に配置される。これは、後で詳述するが、一台の薬剤散布機140が二つの苗マット載置部86・86に施薬可能な構成であることによる。従って、本実施例の薬剤散布機140は、適用される田植機の植え付け作業を行う条数の半分の台数があれば全ての条に対応する苗マットに施薬可能である。
【0027】
図4および図5に示す如く、薬剤散布機140は主に薬剤ホッパ41、繰出部42、搬送部43等で構成される。
【0028】
薬剤ホッパ41は苗マットに施薬される薬剤を貯溜する容器である。薬剤ホッパ41の上部には蓋41aが設けられる。該蓋41aを開けて薬剤ホッパ41の内部に薬剤を補充する。薬剤ホッパ41の下半部は漏斗状になっており、下端部には開口部が設けられている。薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤は、自重で薬剤ホッパ41の下端部に設けられた開口部より下方に落下する。
【0029】
繰出部42は薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤を所定量ずつ繰り出すものである。本実施例の繰出部42は主に繰出ケース47、繰出ロール45、ロール軸49等で構成される。
繰出ケース47は上下面が開口した箱状の部材であり、その内部に繰出ロール45を収容する。また、繰出ケース47の内部空間は、繰出ロール45を挟んで上半部と下半部に区画されている。繰出ケース47は薬剤ホッパ41の下端部に連結される。
従って、薬剤ホッパ41から落下してきた薬剤は、繰出ケース47の上半部の空間に充填される。
【0030】
繰出ロール45は略円柱形状の部材であり、その外周面には複数の溝が設けられる。該溝の長手方向は、繰出ロール45の両端面を貫通するロール軸49の長手方向(軸心方向)と略一致している。
ロール軸49は繰出ロール45を繰出ケース47の内部にて回転可能に軸支するための軸である。ロール軸49は繰出ロール45に貫設され、ロール軸49の両端は繰出ケース47の左右側面から突出している。ロール軸49を回転駆動することにより、繰出ケース47に収容された繰出ロール45を回転させることが可能である。
【0031】
繰出ケース47の上半部の空間に充填された薬剤の一部は、繰出ロール45の外周面に接触しており、さらにその一部が繰出ロール45の外周面に設けられた溝に収容される。
繰出ロール45を回転させると、該繰出ロール45の溝に収容された薬剤のみが繰出ケース47の下半部の空間に移動し、該溝から下方に落下する。すなわち薬剤ホッパ41に貯溜された薬剤が繰出部42により繰り出される。
なお、繰出ロール45に設けられる溝の本数、長さ、深さ、幅を変更することにより、繰り出される薬剤の量を適宜選択することが可能である。
【0032】
図4および図5に示す如く、搬送部43は繰出部42に連結され、繰出部42により繰り出された薬剤を搬送し、苗マットに施薬するものである。搬送部43は主に分岐部材61、搬送導管62・62、支持筒63・63、ガイド筒64・64、散布ノズル65・65、カバー66・66等で構成される。
【0033】
分岐部材61は繰出ケース47の下面の開口部に設けられる略漏斗状の部材である。分岐部材61の上面には開口部が設けられるとともに、下端部にも二箇所の開口部が設けられる。繰出部42により繰り出され、分岐部材61の内部に落下してきた薬剤は、分岐部材61の下端部に設けられた二箇所の開口部に略均等に配分される。
【0034】
搬送導管62・62は樹脂やゴム等の可撓性の材料からなる筒状の部材である。搬送導管62・62の上端部は、分岐部材61の下端部に設けられた二箇所の開口部にそれぞれ接続される。分岐部材61の下端部に設けられた二箇所の開口部に略均等に配分された薬剤は、それぞれ対応する搬送導管62・62の中を滑落する。
【0035】
図5および図6に示す如く、支持筒63・63は筒状の部材であり、その上端部が搬送導管62・62の下端部にそれぞれ接続される。支持筒63・63は後述する下横フレーム53dにボルト固定される。
【0036】
図4、図5、図6および図7に示す如く、ガイド筒64・64は一端(上端)が閉塞され、他端(下端)が開口された筒状の部材である。ガイド筒64・64の中途部には支持筒63・63の下端部がそれぞれ連通可能に固設される。
支持筒63・63が下横フレーム53dにボルト固定されたときのガイド筒64・64の姿勢は、ガイド筒64・64の上端部が機体後方かつ上方を向き、ガイド筒64・64の下端部が機体前方かつ下方を向くように定められている。
【0037】
図4、図5、図6および図7に示す如く、散布ノズル65・65はガイド筒64・64の内径と略同じ外径を有する略筒状の部材である。散布ノズル65・65はガイド筒64・64に摺動可能に嵌装され、ガイド筒64・64の外周面に螺装された固定ネジ64a・64aにより該ガイド筒64・64に固定される。このように構成することにより、散布ノズル65のガイド筒64の下端部からの突出量(換言すれば、散布ノズル65の先端部(下端部)と苗マットとの距離)を調整することが可能である。
図7に示す如く、散布ノズル65の根元(上端)側の上部には切り欠き65aが設けられている。該切り欠き65aは、散布ノズル65をガイド筒64に固定したときに支持筒63の下方に位置する。搬送導管62の中を滑落してきた薬剤は、支持筒63を経て散布ノズル65の中を滑落する。
散布ノズル65の先端(下端)部は斜めにカットされており、先端部のカット面65bは垂直面200よりも散布ノズル65の根元側に傾斜している。
【0038】
図4、図5、図6および図7に示す如く、本発明に係るカバーの第一実施例であるカバー66は筒形の部材であり、その先端部(下端部)はラッパ状に拡径している。カバー66の内径は散布ノズル65の外径よりも大きく、カバー66は散布ノズル65の先端部に嵌設される。このとき、カバー66の先端部は、散布ノズル65の先端部よりも突出している。また、カバー66の先端部は施薬の対象である苗マット載置部86に載置された苗マットに近接した位置に配置され、カバー66によりかき分けられた苗マット上の苗の根元部分に施薬するようにしている。
【0039】
本実施例の場合、図7に示す如く、カバー66の中心軸300を散布ノズル65の中心軸400よりも下方に配置し、カバー66の内周面と散布ノズル65の外周面との隙間を上方で狭くし、下方で広くしている。このように構成することにより、散布ノズル65の先端部から落下して苗マットに施薬される薬剤が、カバー66の内周面に接触することを防止している。
なお、カバー66の内径が散布ノズル65の外径に比べて十分に大きい場合には、カバー66の中心軸300と散布ノズル65の中心軸400とを一致させても、散布ノズル65の先端部から落下して苗マットに施薬される薬剤が、カバー66の内周面に接触することを防止することが可能である。
【0040】
以上の如く、本実施例の薬剤散布機140は、
乗用田植機100の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機であって、
繰出部42に連結された散布ノズル65の先端部に少なくとも散布ノズル65の外径よりも大きい内径を有する筒形のカバー66を、該カバー66の先端部が該散布ノズル65の先端部よりも突出した状態で嵌設し、
該散布ノズル65の先端部を斜めにカットしたものである。
【0041】
このように構成することにより、苗マット上の苗の背丈が低く、該苗の先端部がカバー66の内部に入り込んだ場合でも、散布ノズル65の先端部は斜めにカットされており、該苗の先端部が散布ノズル65の先端部に接触することを防止し、より厳密には、接触する頻度を小さくすることが可能である。
従って、該苗に付着している水滴が散布ノズル65の先端部に付着することを防止し、ひいては、水滴により散布ノズル65の内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズル65の内部に固着することを防止することが可能である。
【0042】
また、本実施例の薬剤散布機140においては、散布ノズル65の先端部のカット面65bは、垂直面(鉛直面)200よりも散布ノズル65の根元側に傾斜している。
【0043】
このように構成することにより、散布ノズル65の先端部に苗の先端部が接触する頻度をさらに小さくすることが可能である。
【0044】
以下では、図8を用いて本発明に係るカバーの第二実施例であるカバー166の詳細構成を説明する。
【0045】
カバー166は、筒形の部材であり、その先端部(下端部)はラッパ状に拡径している。カバー166の内径は散布ノズル65の外径よりも大きく、カバー166は散布ノズル65の先端部に嵌設される。このとき、カバー166の先端部は、散布ノズル165の先端部よりも突出している。また、カバー166の先端部は施薬の対象である苗マット載置部86に載置された苗マットに近接した位置に配置され、カバー166によりかき分けられた苗マット上の苗の根元部分に施薬するようにしている。
【0046】
カバー166が前記カバー66と異なる点は、カバー166の先端部の略上半分、かつ、散布ノズル65の延長線上にない部分を覆う被覆部166aを設けたことである。
【0047】
このように構成することにより、苗マット上の苗の背丈が低い場合でも、該苗の先端部が被覆部166aに接触してカバー166の内部に入り込むことを防止することができ、該苗の先端部が散布ノズル65の先端部に接触することを防止し、より厳密には、接触する頻度を小さくすることが可能である。
従って、該苗に付着している水滴が散布ノズル65の先端部に付着することを防止し、ひいては、水滴により散布ノズル65の内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズル65の内部に固着することを防止することが可能である。
また、カバー166の先端部の下半分および散布ノズル65の延長線上となる部分(切り欠き166bに対応する部分)は開口しており、薬剤が被覆部166aに衝突することなく、所望の位置に施薬することが可能である。
【0048】
なお、散布ノズル65にカバー166を嵌設した場合には、散布ノズル65の先端部をカットしない(図8中の二点鎖線で示す)状態でも苗の先端部がカバー166の内部に入り込むことを被覆部166aが防止することが可能であり、該苗に付着している水滴が散布ノズル65の先端部に付着することを防止し、ひいては、水滴により散布ノズル65の内部が湿り気を帯び、薬剤が散布ノズル65の内部に固着することを防止することが可能である。
しかし、図8に示す如く、散布ノズル65の先端部のカット面65bを、垂直面200よりも散布ノズル65の根元側に傾斜させた方が、散布ノズル65の先端部に苗の先端部が接触する頻度をさらに小さくすることが可能である。
【0049】
以下では、図9を用いて、リング部材170およびリング部材171の説明を行う。
リング部材170およびリング部材171は略菱形に屈曲されたリング状の部材であり、棒状の部材である固定部材172の先端部および中途部に固設される。固設部材172の根元部はカバー166の外周面の上方に固定される。
リング部材170およびリング部材171はカバー166の開口部の前方に距離を空けて互いに略平行に配置され、カバー166の先端面とも略平行となるように配置される。
【0050】
このように構成することにより、カバー166だけでなく、リング部材170およびリング部材171によっても苗マット上の苗の先端部がかき分けられ、散布ノズル65の先端部に水滴が付着する頻度をさらに小さくすることが可能である。
【0051】
なおリング部材170およびリング部材171の説明を行う。
リング部材170、リング部材171および固定部材172はカバー66に固定することも可能である。
【0052】
以下では、図4および図5を用いて、支持フレーム53の詳細構成について説明する。
支持フレーム53は薬剤散布機140を乗用田植機100に固定する部材である。支持フレーム53は主に基部フレーム53a、支持柱53b、上横フレーム53c、下横フレーム53d等で構成されている。
基部フレーム53aは支持フレーム53の下部を成す部材であり、植付ケース21の後部に固定される。支持柱53bは略角柱形状の部材であり、その下端部が基部フレーム53aに固設される。支持柱53bは、その上端部が植付ケース21から略上方となる姿勢に保持される。
上横フレーム53cは支持柱53bの上端に横設される略角柱形状の部材である。なお、図4に示す如く、隣り合う薬剤散布機140・140にそれぞれ対応する上横フレーム53c・53cを連結フレーム23で連結し、支持フレーム53の剛性を更に向上させることが可能である。
下横フレーム53dは支持柱53bの中途部に横設される棒状の部材であり、その左右両端部にはそれぞれ支持筒63・63が固定される。
【0053】
ステー50・50は上横フレーム53cから前方かつ上方に突設される部材であり、該ステー50・50に薬剤散布機140の繰出ケース47・47が固設される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の一形態である薬剤散布機を具備する乗用田植機の側面図。
【図2】乗用田植機の植付部の側面図。
【図3】乗用田植機の苗載台の一部平面図。
【図4】本発明の実施の一形態である薬剤散布機の背面図。
【図5】本発明の実施の一形態である薬剤散布機の側面図。
【図6】散布ノズルおよびカバーの第一実施例の側面一部断面図。
【図7】散布ノズルおよびカバーの第一実施例の側面断面図および正面図。
【図8】散布ノズルおよびカバーの第二実施例の側面断面図および正面図。
【図9】リング部材の側面図および正面図。
【符号の説明】
【0055】
16 苗載台
42 繰出部
65 散布ノズル
66 カバー
100 乗用田植機(田植機)
140 薬剤散布機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
田植機の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機において、
繰出部に連結された散布ノズルの先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、
該散布ノズルの先端部を斜めにカットした、
ことを特徴とする薬剤散布機。
【請求項2】
前記散布ノズルの先端部のカット面は、垂直面よりも散布ノズルの根元側に傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤散布機。
【請求項3】
田植機の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機において、
繰出部に連結された散布ノズルの先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、
カバーの先端部の略上半分、かつ、散布ノズルの延長線上にない部分を覆う被覆部を設けた、
ことを特徴とする薬剤散布機。
【請求項4】
田植機の苗載台上方に設けられ、苗の移植と同時に苗マットに施薬する薬剤散布機において、
繰出部に連結された散布ノズルの先端部に少なくとも散布ノズルの外径よりも大きい内径を有する筒形のカバーを、該カバーの先端部が該散布ノズルの先端部よりも突出した状態で嵌設し、
該散布ノズルの先端部を斜めにカットし、
カバーの先端部の略上半分、かつ、散布ノズルの延長線上にない部分を覆う被覆部を設けた、
ことを特徴とする薬剤散布機。
【請求項5】
前記散布ノズルの先端部のカット面は、地面に対して垂直な面よりも散布ノズルの根元側に傾斜している、
ことを特徴とする請求項4に記載の薬剤散布機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−81504(P2006−81504A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272013(P2004−272013)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】