説明

薬剤溶解装置

【課題】薬剤収納袋体から排出された薬剤が排出管を詰まらせてしまう不都合を抑えることができ、また、調製作業後に薬剤収納袋体を減容する手間を省くことができる薬剤溶解装置を提供する。
【解決手段】薬剤収納袋体2を保持する袋体保持機構3と、溶解槽と、薬剤収納袋体2内に溶媒Sを供給可能な溶媒供給管10と、薬剤収納袋体2内から薬剤Mおよび溶媒Sを溶解槽へ排出可能な排出管11と、溶媒ポンプと、該溶媒ポンプを駆動制御する制御装置とを備え、薬剤収納袋体2のスパウト22に溶媒供給管10の下流端および排出管11の上流端を液密状態で連通可能とし、袋体保持機構3は、薬剤収納袋体2をスパウト22が下部に位置する姿勢で保持可能とし、溶媒ポンプを制御装置により駆動制御して、溶媒供給管10から薬剤収納袋体2内へ供給される溶媒Sの流入量を、排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量よりも少なく設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として人工透析に用いる透析液の調製に使用され、粉末状あるいは顆粒状とした固体透析用剤などの薬剤を所定濃度に溶解するための薬剤溶解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工透析に使用される透析液は、水に粉末状あるいは顆粒状の透析用薬剤(あるいは、単に薬剤と称す)に水を溶解して複数(例えば2種)の透析用原液(薬液)を用意し、この透析用原液を混合したものを更に水で希釈して調製されている。そして、透析用薬剤を収納する容器は、ボトル式と袋式があるが、ボトル式薬剤収納容器は、剛性の高い材料で構成されているので、使用後に空になっても潰して容量を小さくし難く、ゴミとして処分する際に嵩張るという問題がある。一方、袋式の薬剤収納容器(薬剤収納袋体)は、点滴用液の容器と同様に、可撓性を有するシート材で袋状に構成されているので、使用後の嵩高を減少させることができるという利点がある。
【0003】
上記薬剤収納袋体を利用した透析液の調製において、薬剤収納袋体を開封してこの薬剤収納袋体内の薬剤を溶解装置に投入する作業を作業員による手作業で行う場合には、数量の間違い等の人為的ミスが生じたり、薬剤に塵や毛髪などの異物が混入したりする虞があり、また、効率の面でも不利であるという問題があった。そのため、近年では、薬剤収納袋体に収納された規定量の薬剤を溶解槽へ自動投入し、溶解槽内で溶媒である水と混合して規定濃度となるように溶解作業を行うことができる薬剤溶解装置が使用されている。この薬剤溶解装置に関し、特許文献1では、複数の容器をターンテーブル上に配置して移送し、所定位置において薬剤容器に溶媒循環配管を接続し、薬剤容器内に溶媒を通して薬剤と溶媒とを溶解タンクへ供給する旨が提案されている。また、特許文献2では、袋保持手段により起立状態で保持された薬剤収納袋体を開封した後、袋保持手段を回動して薬剤収納袋体の開封した口部を溶解槽へ接続して、薬剤収納袋体内の薬剤を溶解槽へ払い出すように構成された薬剤溶解装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−146487号公報
【特許文献2】特開2000−217906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の薬剤溶解装置においては、大量の薬剤を一度に薬剤収納袋体から排出して調製作業の効率を向上させようとすると、配管が薬剤で詰まってしまう虞があり、却って調製作業の効率を低下させ兼ねない。また、調製作業後に薬剤収納袋体を潰す等して減容する手間が掛かり、作業者の負担に改善の余地を残している。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、薬剤収納袋体から排出された薬剤が排出管を詰まらせてしまう不都合を抑えることができ、また、調製作業後に薬剤収納袋体を減容する手間を省くことができる薬剤溶解装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、薬剤が収納された薬剤収納袋体を保持する袋体保持機構と、薬剤を溶媒により溶解して薬液を調製可能な溶解槽と、薬剤収納袋体内に溶媒を供給可能な溶媒供給管と、薬剤収納袋体内から薬剤および溶媒を溶解槽へ排出可能な排出管と、溶媒供給管に溶媒を送出するための溶媒ポンプと、該溶媒ポンプを駆動制御する制御装置と、を備えた薬剤溶解装置であって、
前記薬剤収納袋体の袋開口に設けられたスパウトに溶媒供給管の下流端および排出管の上流端を液密状態で連通可能とし、
前記袋体保持機構は、薬剤収納袋体をスパウトが当該薬剤収納袋体の下部に位置する姿勢で保持可能とし、
前記溶媒ポンプを制御装置により駆動制御して、溶媒供給管から薬剤収納袋体内へ供給される溶媒の流入量を、排出管内を流下する薬剤および溶媒の流出量よりも少なく設定したことを特徴とする薬剤溶解装置である。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記薬剤収納袋体を溶解槽よりも上方に位置する状態で保持し、薬剤収納袋体と溶解槽との落差によって薬剤および溶媒を薬剤収納袋体から排出管内へ通して溶解槽へ流下させることを特徴とする請求項1に記載の薬剤溶解装置である。
【0009】
請求項3に記載のものは、前記排出管の管内径を溶媒供給管の管内径よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤溶解装置である。
【0010】
請求項4に記載のものは、前記溶媒ポンプは、薬剤収納袋体が破裂せずに耐え得る圧力で溶媒を送出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の薬剤溶解装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、薬剤収納袋体の袋開口に設けられたスパウトに溶媒供給管の下流端および排出管の上流端を液密状態で連通可能とし、袋体保持機構は、薬剤収納袋体をスパウトが当該薬剤収納袋体の下部に位置する姿勢で保持可能とし、溶媒ポンプを制御装置により駆動制御して、溶媒供給管から薬剤収納袋体内へ供給される溶媒の流入量を、排出管内を流下する薬剤および溶媒の流出量よりも少なく設定したので、薬剤収納袋体内に対する出入りのバランスを保とうとすることに起因して、薬剤収納袋体からの薬剤および溶媒の流出量が、薬剤収納袋体への溶媒の流入量に対して極端に多くなることを規制することができる。したがって、排出管に大量の薬剤が一度に流入することを阻止することができ、薬剤が排出管を詰まらせてしまう不都合を抑えることができる。また、薬剤収納袋体を次第にしぼませながら薬剤および溶媒を排出することができ、調製作業を行いながら薬剤収納袋体を減容することができる。したがって、調製作業後に薬剤収納袋体を減容する手間を省くことができるし、調製作業中においては、薬剤収納袋体が膨らんで破裂する不都合を避けることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、薬剤収納袋体を溶解槽よりも上方に位置する状態で保持し、薬剤収納袋体と溶解槽との落差によって薬剤および溶媒を薬剤収納袋体から排出管内へ通して溶解槽へ流下させるので、薬剤および溶媒を溶解槽へ排出するための電気的駆動源を備える必要がなく、薬剤溶解装置の消費電力が大きくなる不都合を抑制することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、排出管の管内径を溶媒供給管の管内径よりも大きく設定したので、溶媒供給管から薬剤収納袋体内へ供給される溶媒の流入量を、排出管内を流下する薬剤および溶媒の流出量よりも少なく設定することが容易になる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、溶媒ポンプは、薬剤収納袋体が破裂せずに耐え得る圧力で溶媒を送出するので、薬剤収納袋体が溶媒の圧力で破裂して薬剤および溶媒が散乱してしまう不都合を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】薬剤溶解装置の概略図である。
【図2】薬剤収納袋体および袋体保持機構の要部の説明図である。
【図3】薬剤収納袋体を保持した袋体保持機構の説明図であり、(a)は薬剤収納袋体を上向き姿勢で保持した概略図、(b)は上向き姿勢の薬剤収納袋体に溶媒を供給した状態の概略図、(c)は溶媒を供給した後に薬剤収納袋体を下向き姿勢へ変換した状態の概略図、(d)は下向き姿勢を維持して薬剤および溶媒を排出する状態の概略図である。
【図4】排出管に排出用ポンプを備えた薬剤溶解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0017】
薬剤溶解装置1は、図1に示すように、透析用の薬剤M(固形の透析用剤)が収納された薬剤収納袋体2を保持する袋体保持機構3と、該袋体保持機構3よりも下方に配置され、薬剤Mを溶媒(水)Sにより溶解して薬液を調製可能な溶解槽5と、薬剤溶解装置1内で溶媒Sを循環させる溶媒ポンプ(循環ポンプ)6とを備えて構成されており、溶解槽5には、薬剤Mと溶媒Sとを攪拌して溶解を促進させる攪拌機7を備えている。また、袋体保持機構3と溶媒ポンプ6の吐出口6aとの間を溶媒供給管10で接続し、溶媒Sを溶媒ポンプ6から溶媒供給管10へ送出して薬剤収納袋体2内に供給可能としている。さらに、袋体保持機構3と溶解槽5の投入口5aとの間を排出管11で接続し、薬剤収納袋体2内の薬剤Mおよび溶媒Sを排出管11へ通して溶解槽5へ排出可能としている。そして、溶解槽5の排出口5bと溶媒ポンプ6の吸入口6bとの間を戻り配管12で接続し、薬剤Mおよび溶媒Sが溶解槽5、戻り配管12、溶媒ポンプ6、溶媒供給管10、薬剤収納袋体2(袋体保持機構3)、排出管11の順に循環できるように構成されている。さらに、排出管11の管内径を溶媒供給管10の管内径よりも大きく設定している。また、袋体保持機構3および溶媒ポンプ6に制御装置14を電気的に接続し、該制御装置14からの信号に基づいて袋体保持機構3および溶媒ポンプ6を駆動制御可能としている。なお、袋体保持機構3の駆動および溶媒ポンプ6の駆動については、後で詳細に説明する。
【0018】
そして、戻り配管12の途中部分を分岐し、この分岐部には排出バルブ16を介して貯留槽17を接続し、薬液を溶解槽5から排出して貯留槽17内に貯留可能としている。また、戻り配管12のうち分岐部よりも下流側(溶媒ポンプ6側)には電導度計等からなる濃度計18を備え、戻り配管12内に流れる薬液の濃度が所定値に到達したか否かを濃度計18により測定して、薬剤Mが十分に溶媒Sにより溶解したか否か、言い換えると薬液の調製が完了したか否かを判断できるように構成されている。
【0019】
次に、薬剤収納袋体2、および薬剤収納袋体2を保持する袋体保持機構3について説明する。
薬剤収納袋体2は、図2に示すように、薬剤Mを収納する袋本体21と、この袋本体21の上部に接合されたスパウト(口部)22とから構成されており、左右対称の形状を呈している。袋本体21は、例えばポリエチレンフィルムなど可撓性のある合成樹脂シート材(フィルム)で構成されており、胴部および底部となるフィルム材を重ね、この重ねたフィルム材の左右側縁同士および下側縁同士を溶着(あるいは融着)し、また、袋本体21の上側縁については、左右両側の部分を溶着(あるいは融着)し、中間部分には袋開口(非溶着部)23を形成している。
【0020】
スパウト22は、剛性を有する素材(例えばプラスチック)により成形された筒状体であり、袋本体21の袋開口23に上方(外側)へ突出した状態で接合されている。また、スパウト22の内側には、袋本体21内と連通する連通口25を貫通して開口し、該連通口25の開口広さを溶媒供給管10の下流端が進入可能な程度に設定している。言い換えると、連通口25の開口径を溶媒供給管10の管外径よりも大きく設定している。そして、スパウト22の突出端部の周縁にフランジ部26を外方へ向けて延設し、スパウト22の外周のうちフランジ部26よりも袋本体21側の位置には、袋体保持機構3の一部に係合可能な環状の嵌合溝27を形成している。さらに、スパウト22の下部(袋本体21側に位置する部分)を上方から見て舟形となるように形成して接合部28とし、袋本体21を構成するシート材の重合部分とスパウト22の接合部28との間に隙間が形成されることなく、袋本体21とスパウト22とが密着できるように構成されている。このようなスパウト22を袋本体21の袋開口23に接合する際には、スパウト22の下縁部と袋本体21内の上側内縁部とが略同じ高さになるように位置を合わせ(図2参照)、この状態で袋本体21のシール部分(袋開口23の内側)を接合部28の側面に液密状にヒートシール接合する。
【0021】
なお、薬剤収納袋体2内に収納される薬剤(透析用剤)Mは、ブドウ糖、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、炭酸水素ナトリウムなどを粉末状あるいは顆粒状にしたものであり、袋本体21の内部に所定量が収納される。薬剤Mを袋本体21内に収納するには、袋本体21に接合されたスパウト22の連通口25から投入し、フランジ部26の表面に封止用シール材(図示せず)を貼付するなどして封止する。したがって、この薬剤収納袋体2内に薬剤Mを収納して封止すると、内部の薬剤Mが変質することもないので保管や搬送が容易である。また、薬剤収納袋体2には、袋本体21内の容積よりも少ない所定量の薬剤Mを収納して、後述する溶解作業の初期段階において、溶媒Sが袋本体21内に注入できるように構成されている。
【0022】
袋体保持機構3は、溶解槽5よりも上方の位置に配置された機構であり、図3(a)に示すように、当該袋体保持機構3の基部となる機構ベース31の上面にホルダブラケット32を立設し、該ホルダブラケット32の上部には、薬剤収納袋体2を保持可能な袋体ホルダ33(姿勢変換部の一部)を薬剤収納袋体2の上下を反転させる方向に回動可能な状態で軸着し、袋体ホルダ33の回動軸34を袋体ホルダ33の上下方向の略中央部に位置させている。また、袋体ホルダ33の内部には、袋本体21が収納可能な保持空間部36を備え、該保持空間部36のうち薬剤収納袋体2の底部側に位置する箇所を開放して袋体挿通口37とし、薬剤収納袋体2のスパウト22側に位置する箇所には、スパウト22を突出可能な突出開口38を貫通し、保持空間部36を袋体挿通口37から突出開口38へ向かうにつれて次第に縮幅している。さらに、該突出開口38の開口縁には嵌合突起39を設け、スパウト22の嵌合溝27に嵌合突起39を嵌合して、保持空間部36内に保持された薬剤収納袋体2が袋体ホルダ33から脱落することを阻止している。
【0023】
そして、袋体ホルダ33の回動軸34にはステップモータまたはサーボモータ等の回動駆動部41(姿勢変換部の一部)を接続し、該回動駆動部41を制御装置14からの駆動信号に基づいて駆動して、袋体ホルダ33の姿勢を変換できるように構成されている。具体的には、薬剤収納袋体2が保持された袋体ホルダ33を回動し、突出開口38を上に向けると、薬剤収納袋体2をスパウト22が当該薬剤収納袋体2の上部に位置してスパウト22および袋開口23が上方を向いた上向き姿勢(常態姿勢)に設定し(図3(a)参照)、突出開口38を下に向けると、薬剤収納袋体2をスパウト22が当該薬剤収納袋体2の下部に位置してスパウト22および袋開口23が下方を向いた下向き姿勢(薬剤排出姿勢)に設定するように構成されている(図3(c)参照)。また、少なくとも下向き姿勢において薬剤収納袋体2を溶解槽5よりも上方に位置する状態で保持する。なお、上向き姿勢においては、溶解槽5内の貯留物(溶媒や薬液)が薬剤収納袋体2へ流れ込まないように排出管11に対策(例えば逆止弁の装着)を施していれば、必ずしも上向き姿勢で薬剤収納袋体2が溶解槽5よりも上方に位置している必要はないが、本実施形態では、上向き姿勢においても薬剤収納袋体2を溶解槽5よりも上方に位置する状態で保持するものとする。
【0024】
さらに、袋体ホルダ33のうち突出開口38を挟んで保持空間部36とは反対側には配管ジョイント44を備えている。配管ジョイント44は、スパウト22に接続して溶媒供給管10および排出管11を薬剤収納袋体2内(袋本体21内)へ液密状態で連通するためのものであり、図2に示すように、スパウト22よりもひと回り大きなジョイント本体45を備え、該ジョイント本体45の内部には、90度屈曲した排出接続流路46を排出管11の管内径と同じ内径に設定して備え、該排出接続流路46の上流開口46aをジョイント本体45の下部に開放してスパウト22の連通口25へ接続可能とし、排出接続流路46の下流端46bをジョイント本体45の側部に突出した状態で開放して排出管11の上流部を接続可能としている。また、排出接続流路46の上流開口46aの開口縁にはパッキン等のシール部材48を設け、スパウト22のフランジ部26と排出接続流路46の上流開口46aの開口縁との間にシール部材48を挟持し、この状態でジョイント本体45をスパウト22へ押圧して、スパウト22に排出管11の上流端を液密状態で連通できるように構成されている。
【0025】
なお、ジョイント本体45のうち排出接続流路46を挟んでスパウト22とは反対側(言い換えると、常態姿勢においてジョイント本体45の上側)にはジョイントホルダ50を遊嵌し、該ジョイントホルダ50を袋体ホルダ33へ固定して嵌合突起39との相対位置が常時一定となるように設定している。また、ジョイント本体45のうちスパウト22側に位置する箇所(言い換えると、常態姿勢においてジョイント本体45の下側)には、フランジ状のブラケット部51を側方へ向けて突設し、ジョイントホルダ50とブラケット部51との間にはコイルばね等の付勢部材53を設けている。さらに、ジョイントホルダ50に開設した遊嵌穴50aに押圧調整ねじ52を先端がブラケット部51側へ向いた姿勢で遊嵌するとともに、押圧調整ねじ52の先端をブラケット部51の側部へ螺合している。したがって、押圧調整ねじ52を緩めると、ブラケット部51を含むジョイント本体45を付勢部材53の付勢力によりジョイントホルダ50側から嵌合突起39側へ移動し、ジョイント本体45のシール部材48をスパウト22のフランジ部26へ押し付けて、スパウト22と配管ジョイント44とを液密状態で接続することができるように構成されている。また、押圧調整ねじ52を締め込むと、ブラケット部51を含むジョイント本体45を付勢部材53の付勢力に抗して嵌合突起39側からジョイントホルダ50側へ移動し、ジョイント本体45のシール部材48とスパウト22のフランジ部26とを離間して、スパウト22から配管ジョイント44を取り外すことができるように構成されている。
【0026】
さらに、ジョイント本体45には溶媒供給管10の下流部を、ブラケット部51側(ジョイント本体45の上側)から挿通するとともに、ジョイント本体45の挿通口と溶媒供給管10の外周面との間にシール剤を充填する等して液密状態とし、溶媒供給管10の下流端を排出接続流路46の上流開口46aの中央部に臨ませている。そして、配管ジョイント44にスパウト22を接続すると、溶媒供給管10の下流端を連通口25内に挿通して袋本体21内にスパウト22側から臨ませて連通するように構成されている。
【0027】
次に、薬剤溶解装置1における薬剤Mの溶解作業について説明する。なお、図1に示すように、溶解槽5には、薬剤Mを溶解する溶媒(本実施形態では水)Sを所定量(具体的には薬剤収納袋体2内に収納された薬剤Mの量を溶媒Sに溶解した場合に、薬液として適した溶液成分濃度が得られるように設定された量)を予め貯留しておき、排出バルブ16を閉じて、溶解槽5内の溶媒Sが溶媒ポンプ6の吸入口6bへ流入するようにしておく。また、攪拌機7を予め駆動して、溶解槽5内を常時攪拌しておく。
【0028】
まず、袋体ホルダ33を突出開口38が上側に位置する姿勢に設定し、この状態で保持空間部36内に薬剤収納袋体2を保持して上向き姿勢に設定する。さらに、突出開口38から突出したスパウト22に配管ジョイント44を接続して、溶媒供給管10の下流端および排出管11の上流端を袋本体21内へ連通する。スパウト22に配管ジョイント44を接続したならば、溶媒ポンプ6を制御装置14により駆動制御し、溶解槽5内の溶媒Sを溶媒ポンプ6により溶媒供給管10へ通してスパウト22(袋開口23)から上向き姿勢の薬剤収納袋体2内へ供給する(図3(b)参照)。このとき、溶媒ポンプ6を、薬剤収納袋体2の袋本体21が破裂せずに耐え得る圧力(例えば30kPa以下の圧力)で溶媒Sを送出するように設定する。したがって、薬剤収納袋体2が溶媒Sの圧力で破裂して薬剤Mおよび溶媒Sが散乱してしまう不都合を避けることができる。また、溶媒ポンプ6による溶媒Sの送出量を調整して、溶媒供給管10から薬剤収納袋体2内へ供給される溶媒Sの流入量(単位時間あたりの流入量)が、排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量(単位時間あたりの流出量)よりも少なくなるように設定する。詳しくは、スパウト22から溶解槽5までの落差(高低差)により排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量よりも少なくなるように設定する。
【0029】
溶媒Sを薬剤収納袋体2内へ供給すると、この溶媒Sは、図3(b)に示すように、袋本体21内のうち薬剤Mの上方に貯留されて、薬剤Mと該薬剤Mの上方に位置する排出管11の上流端との間(詳しくは薬剤Mと排出接続流路46との間)に介在する。そして、溶媒ポンプ6を駆動し始めてから所定時間、具体的には、薬剤収納袋体2内が薬剤Mと溶媒Sとで満たされるまでの時間(例えば10秒)が経過したならば、制御装置14が回動駆動部41を駆動制御して袋体ホルダ33を反転させ、溶媒Sを薬剤収納袋体2内へ供給し続けながら、薬剤収納袋体2を内部(袋本体21内)が薬剤Mと溶媒Sとで満たされた状態で上向き姿勢から下向き姿勢へ変換する。すると、図3(c)に示すように、溶媒Sがスパウト22の連通口25の袋本体21側の直上に位置し、薬剤Mが溶媒Sの上方に位置する。したがって、薬剤溶解装置1は、薬剤収納袋体2を下向き姿勢へ変換したときに、薬剤収納袋体2の上側に位置する薬剤Mと該薬剤Mの下方に位置する排出管11および排出接続流路46との間に溶媒Sを介在させることができ、大量の薬剤Mが一度に落下して連通口25や排出接続流路46や排出管11の入口を詰まらせてしまう不具合を防止することができる。これにより、薬液の調製作業(溶解作業)を円滑に進めることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0030】
そして、薬剤収納袋体2を下向き姿勢へ変換すると、連通口25の直上に貯留された溶媒Sが薬剤Mよりも先に連通口25および排出接続流路46へ流下して、薬剤収納袋体2内から排出管11へ排出される。さらに、溶媒Sが排出された後に、薬剤Mが連通口25および排出接続流路46を流下して薬剤収納袋体2内から排出管11へ排出される。ここで、薬剤収納袋体2を内部が薬剤Mと溶媒Sとで満たされた状態で下向き姿勢へ変換しているので、下向き姿勢となった薬剤収納袋体2が座屈することを防止することができ、薬剤Mや溶媒Sを薬剤収納袋体2内から滞りなく排出することができる。
【0031】
また、溶媒Sおよび薬剤Mが薬剤収納袋体2内から排出管11へ排出されている最中においても、溶媒供給管10から薬剤収納袋体2内へ供給し続ける。このとき、薬剤収納袋体2内へ供給する溶媒Sの流入量を、スパウト22から溶解槽5までの落差によって排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量よりも少なく設定しているので、薬剤収納袋体2内に対する出入りのバランスを保とうとすることに起因して、薬剤収納袋体2からの薬剤Mおよび溶媒Sの流出量が、薬剤収納袋体2への溶媒Sの流入量に対して極端に多くなることを規制することができる。したがって、排出管11に大量の薬剤Mが一度に流入することを一層確実に阻止することができ、薬剤Mが排出管11を詰まらせてしまう不都合を更に抑えることができる。また、薬剤収納袋体2を次第にしぼませながら薬剤Mおよび溶媒Sを排出することができ、調製作業を行いながら薬剤収納袋体2を減容することができる。したがって、調製作業後に薬剤収納袋体2を潰すなどして減容する手間を省くことができるし、調製作業中においては、薬剤収納袋体2が膨らんで破裂する不都合を避けることができる。さらに、排出管11の管内径を溶媒供給管10の管内径よりも大きく設定しているので、溶媒供給管10から薬剤収納袋体2内へ供給される溶媒Sの流入量を、排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量よりも少なく設定することが容易になる。
【0032】
薬剤収納袋体2を下向き姿勢に維持した状態で所定時間が経過すると、ほとんどの薬剤Mが排出管11内へ排出されるが、僅かな薬剤Mがしぼんだ袋本体21の皺の隙間に挟まって残留することがある。また、溶媒供給管10から供給され続けている溶媒Sは、スパウト22から薬剤収納袋体2内へ流入するが、薬剤収納袋体2内には貯留されずに直ちに連通口25および排出接続流路46へ流下してしまい、下向き姿勢のままでは薬剤収納袋体2内に残留した薬剤Mを溶媒Sで流すことができない。そこで、薬剤溶解装置1は、薬剤収納袋体2を下向き姿勢から上向き姿勢に戻して溶媒Sを薬剤収納袋体2内に貯留する。
【0033】
具体的に説明すると、下向き姿勢を継続した時間を制御装置14により監視し、この時間が予め設定された所定時間(詳しくは、ほとんどの薬剤Mが薬剤収納袋体2から排出されるのに十分な時間)を越えると、制御装置14により回動駆動部41を駆動制御して袋体ホルダ33を元に戻し、溶媒Sを薬剤収納袋体2内へ供給し続けながら薬剤収納袋体2を下向き姿勢から上向き姿勢へ変換する。すると、溶媒Sが薬剤収納袋体2内に貯留され始める。そして、溶媒Sが十分に貯留されると、袋本体21の皺が伸び、残留していた薬剤Mが溶媒S内に分散する。薬剤Mが溶媒S内に分散したならば(言い換えると、薬剤Mが溶媒S内に分散し切るのに十分な時間が経過したならば)、制御装置14により回動駆動部41を駆動制御して袋体ホルダ33を再び反転させ、溶媒Sを薬剤収納袋体2内へ供給し続けながら薬剤収納袋体2を上向き姿勢から下向き姿勢へ変換し、薬剤Mおよび溶媒Sを薬剤収納袋体2内から排出管11へ排出する。このとき、薬剤収納袋体2内へ供給する溶媒Sの流入量を、スパウト22から溶解槽5までの落差によって排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量よりも少なく設定したままにしているので、溶媒Sを貯留して薬剤収納袋体2を膨らませたとしても、再び次第にしぼませながら薬剤Mおよび溶媒Sを排出することができ、調製作業後に薬剤収納袋体2を減容する手間を省くことができる。
【0034】
また、薬剤収納袋体2から排出された薬剤Mおよび溶媒Sは、スパウト22から溶解槽5までの落差(薬剤収納袋体2と溶解槽5との落差)によって排出管11内へ流下して、溶解槽5へ投入される。このことから、薬剤Mおよび溶媒Sを溶解槽5へ排出するための電気的駆動源を備える必要がなく、薬剤溶解装置1の消費電力が大きくなる不都合を抑制することができる。さらに、薬剤溶解装置1は、薬剤Mおよび溶媒Sを溶解槽5内で攪拌機7により攪拌したり、溶媒ポンプ6を駆動し続けて薬剤溶解装置1内の循環流路(戻り配管12、溶媒供給管10、薬剤収納袋体2、排出管11、溶解槽5)に循環させたりして、薬剤Mを溶媒Sへ十分に溶解して薬液を調製する。そして、戻り配管12内に流れる薬液の濃度を濃度計18により測定し、測定結果が予め定められた所定の濃度に到達したならば、溶媒ポンプ6を停止して薬液の循環を終了させ、薬剤収納袋体2内の薬液を自然に流下させて溶解槽5へ抜き出す。また、攪拌機7の駆動を停止する。そして、排出バルブ16を開き、溶解槽5内、戻り配管12内、溶媒ポンプ6内、溶媒供給管10内の薬液を貯留槽17へ抜き出して貯留する。
【0035】
ところで、上記実施形態では、スパウト22から溶解槽5までの落差によって、薬剤Mおよび溶媒Sを薬剤収納袋体2から排出管11内へ流下させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4に示すように、薬剤収納袋体2を溶解槽5よりも下方に配置(詳しくは薬剤収納袋体2のスパウト22を溶解槽5の液面よりも下方に配置)し、排出管11の途中に排出用ポンプ56を設け、排出用ポンプ56を駆動して薬剤Mおよび溶媒Sを薬剤収納袋体2から排出管11内へ流下させてもよい。また、排出用ポンプ56および溶媒ポンプ6の駆動設定を調整(詳しくは排出用ポンプ56の吐出量を溶媒ポンプ6の吐出量よりも多く設定)して、溶媒供給管10から薬剤収納袋体2内へ供給される溶媒Sの流入量を、排出管11内を流下する薬剤Mおよび溶媒Sの流出量よりも少なくなるように設定してもよい。なお、この実施形態においては、排出管11のうち排出用ポンプ56よりも下流側には逆止弁57を設けたり、溶媒供給管10のうち溶媒ポンプ6よりも下流側の一部を屈曲して溶解槽5の液面よりも高く設定したりして、溶解槽5内の貯留物(溶媒や薬液)が薬剤収納袋体2へ流れ込まないようにすることが好適である。しかしながら、排出用ポンプ56を設けると、薬剤溶解装置1の消費電力が排出用ポンプ56を設けない場合に比べて増大するため、スパウト22から溶解槽5までの落差によって、薬剤Mおよび溶媒Sを薬剤収納袋体2から排出管11内へ流下させることが望ましい。
【0036】
さらに、上記実施形態では、薬剤収納袋体2内に残留した薬剤Mを溶媒Sで流すために、薬剤収納袋体2を下向き姿勢から上向き姿勢に戻して溶媒Sを薬剤収納袋体2内に貯留したが、本発明はこれに限定されない。例えば、排出管11の途中に開閉弁を備え、該開閉弁を制御装置により開閉制御可能とし、薬剤収納袋体2を下向き姿勢に維持し、この状態で開閉弁を閉じて薬剤収納袋体2に溶媒Sを貯留し、予め設定された時間が経過したならば開閉弁を開いて薬剤Mおよび溶媒Sを薬剤収納袋体2内から排出管11へ排出するように構成してもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、所定時間の経過に基づいて袋体保持機構3を駆動して薬剤収納袋体2の姿勢を変換したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フォトセンサなどの検出器を用いて薬剤収納袋体2内の状態(例えば、薬剤の排出や溶媒液面の上昇)を検出し、この検出結果に基づいて袋体保持機構3を駆動して薬剤収納袋体2の姿勢を変換してもよい。
【0038】
そして、上記各実施形態では、薬剤溶解装置で溶解処理する薬剤を透析用剤としたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、溶媒Sに溶解される固体の薬剤(顆粒剤や粉末剤)であればどのようなものでも利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 薬剤溶解装置
2 薬剤収納袋体
3 袋体保持機構
5 溶解槽
5a 投入口
5b 排出口
6 溶媒ポンプ
6a 吐出口
6b 吸入口
7 攪拌機
10 溶媒供給管
11 排出管
12 戻り配管
14 制御装置
16 排出バルブ
17 貯留槽
18 濃度計
21 袋本体
22 スパウト
23 袋開口
25 連通口
26 フランジ部
27 嵌合溝
28 接合部
31 機構ベース
32 ホルダブラケット
33 袋体ホルダ
34 回動軸
36 保持空間部
37 袋体挿通口
38 突出開口
41 回動駆動部
44 配管ジョイント
45 ジョイント本体
46 排出接続流路
46a 上流開口
46b 下流端
48 シール部材
50 ジョイントホルダ
50a 遊嵌穴
51 ブラケット部
52 押圧調整ねじ
56 排出用ポンプ
57 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が収納された薬剤収納袋体を保持する袋体保持機構と、薬剤を溶媒により溶解して薬液を調製可能な溶解槽と、薬剤収納袋体内に溶媒を供給可能な溶媒供給管と、薬剤収納袋体内から薬剤および溶媒を溶解槽へ排出可能な排出管と、溶媒供給管に溶媒を送出するための溶媒ポンプと、該溶媒ポンプを駆動制御する制御装置と、を備えた薬剤溶解装置であって、
前記薬剤収納袋体の袋開口に設けられたスパウトに溶媒供給管の下流端および排出管の上流端を液密状態で連通可能とし、
前記袋体保持機構は、薬剤収納袋体をスパウトが当該薬剤収納袋体の下部に位置する姿勢で保持可能とし、
前記溶媒ポンプを制御装置により駆動制御して、溶媒供給管から薬剤収納袋体内へ供給される溶媒の流入量を、排出管内を流下する薬剤および溶媒の流出量よりも少なく設定したことを特徴とする薬剤溶解装置。
【請求項2】
前記薬剤収納袋体を溶解槽よりも上方に位置する状態で保持し、薬剤収納袋体と溶解槽との落差によって薬剤および溶媒を薬剤収納袋体から排出管内へ通して溶解槽へ流下させることを特徴とする請求項1に記載の薬剤溶解装置。
【請求項3】
前記排出管の管内径を溶媒供給管の管内径よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤溶解装置。
【請求項4】
前記溶媒ポンプは、薬剤収納袋体が破裂せずに耐え得る圧力で溶媒を送出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の薬剤溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−253043(P2010−253043A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106662(P2009−106662)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】