説明

薬剤組成物及び使用方法

【課題】ガン、アルツハイマー病、パーキンソン病、炎症性腸疾病、及び多発性硬化症等の疾患の化学防止治療に有用な化合物及び方法を提供。
【解決手段】誘導性酸化窒素シンターゼ及び誘導性シクロオキシゲナーゼ遺伝子の転写または翻訳を抑制する効果を有し、上記疾患を防止、治療する、トリテルペノイド誘導体である、2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸や2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1998年6月19日付出願の米国仮出願第60/090,053号に関連し、且つその優先権の利益を享受するものであり、且つ当該出願の内容の全ては引用により本出願に取り込まれる。加えて、本出願の明細書の全体に亘り引用される全ての特許、出願特許公開及び他の文献の内容の全てが本出願に引用により取り込まれる。本願明細書に開示される発明は、NIH補助金(NIH grant) CA-23108, RO1 CA 54494, RO1 CA 62275, KO1 CA 75154, NS 28767及びDOD/AMRD 奨学金(award) 1796-1-6163に基づく米国政府の支援の下でなされたものである。従って、米国政府は、本願発明についての一定の権利を有することができる。
本発明は、ガン、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、関節リューマチ、及び他の炎症性疾患等の疾患の防止または治療に有用なことが判明している化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガン防止における主要なニーズの一つは、化学防御のための有効で、安全な新しい薬剤の開発である。特に、発ガンのプロセスに含まれることが知られている機構をターゲットにした化学防御薬剤に対するニーズが存在する。近年、発ガンに関連する炎症の機構の研究及び新しい化学防御薬剤の開発の基礎としてのこのような機構の使用に関心が復活している。
【0003】
炎症と発ガンが関連する現象であるという概念がこれらの2つのプロセスを機構的な手法で結び付けることを試みる多くの研究の主題であった(Sporn and Roberts, 1986(非特許文献1); Ohshima and Bartsch, 1994(非特許文献2))。アルギニン及びアラキドネートの各々からのNO及びプロスタグランジンの恒常的な合成を仲介する酵素は、炎症または発ガンに対して比較的ににほとんど重要性を有しない。対照的に、誘導性酸化窒素シンターゼ(iNOS)及び誘導性シクロオキシゲナーゼ(COX−2)の双方は、負傷または病原菌への組織の応答において重要な役割を有する(Moncada et al., 1991(非特許文献3); Nathan and Xie, 1994(非特許文献4); Siebert and Masferrer, 1994(非特許文献5); Tamir and Tannebaum, 1996(非特許文献6))。これらの誘導性酵素は、炎症性プロセス、負傷の最終的修復、及び発ガンの不可欠の構成要素である。iNOS及びCOX−2の生理活性は、生物体にはっきりした利益を提供する一方、iNOSまたはCOX−2の異常または過剰発現は、多くの病気のプロセスの病原、特に中枢神経系の慢性変性、発ガン、敗血症性ショック、心筋症、関節リューマチにかかわりがある。
【0004】
スクアレンの環化により植物中で生合成されるトリテルペノイドは、多くのアジアの国で薬用の目的に使用される。ウルソール酸及びオレアノール酸のような一部のものは、抗炎症性で抗発ガン性であることが知られている(Huang et al., 1994(非特許文献7); Nishino et al., 1988(非特許文献8))。しかしながら、これらの天然起源の分子の生物活性は比較的弱く、それゆえこれらの効能を増進する新しい類似体の合成が試みられている(Honda et al., 1997(非特許文献9); Honda et al., 1998(非特許文献10))。いくつかのこのような合成類似体は、IFN−γまたはLPSにより刺激されたマクロファージにおけるiNOS及びCOX−2のデノボ生成を抑制することができることが以前に報告された(Suh et al., 1998(非特許文献11))。多くの器官における発ガンのエンハンサーとしてのiNOS及びCOX−2の役割は、増大する注目を集めている(Ohshima et al., 1994(非特許文献12); Tamir et al., 1996(非特許文献13); Takahashi et al., 1997(非特許文献14); Ambs et al., 1998(非特許文献15); Tsujii et al., 1998(非特許文献16); Oshima et al., 1996(非特許文献17); Hida et al., 1998(非特許文献18); Huang et al., 1998(非特許文献19))。それゆえ、これらの酵素の合成または活性の抑制が化学防御の標的である(Oshima et al., 1998(非特許文献20); Kawamori et al., 1998(非特許文献21))。分化を誘起する、あるいは前悪性あるいは悪性細胞の増殖を抑制する薬剤は、ガンの化学防御、並びに化学療法への別な機構的なアプローチとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sporn and Roberts, 1986
【非特許文献2】Ohshima and Bartsch, 1994
【非特許文献3】Moncada et al., 1991
【非特許文献4】Nathan and Xie, 1994
【非特許文献5】Siebert and Masferrer, 1994
【非特許文献6】Tamir and Tannebaum, 1996
【非特許文献7】Huang et al., 1994
【非特許文献8】Nishino et al., 1988
【非特許文献9】Honda et al., 1997
【非特許文献10】Honda et al., 1998
【非特許文献11】Suh et al., 1998
【非特許文献12】Ohshima et al., 1994
【非特許文献13】Tamir et al., 1996
【非特許文献14】Takahashi et al., 1997
【非特許文献15】Ambs et al., 1998
【非特許文献16】Tsujii et al., 1998
【非特許文献17】Oshima et al., 1996
【非特許文献18】Hida et al., 1998
【非特許文献19】Huang et al., 1998
【非特許文献20】Oshima et al., 1998
【非特許文献21】Kawamori et al., 1998
【発明の概要】
【0006】
(発明の要約)
本発明は、ガン、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症等の疾患の防止または治療の方法及び組成物を提供する。本発明の方法は対象に式:
【化1】

(ここで、AまたはBは単結合または二重結合であり、C11またはC12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である)の治療化合物を投与することを含む。
【0007】
本発明は、更に式:
【化2】

(ここで、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である)を有する治療組成物及びそれらの使用方法に関する。
【0008】
従って、実施の形態として、本発明の組成物及び方法は、ガン、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、多発性硬化症(MS)、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患(NDDs)、炎症性疾患、例えば、クローン疾患及び潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患及び関節リューマチ(RA)等の疾患の防止または治療に有用である。本発明の方法は、対象におけるこのような症状を防止または治療するために使用される。この方法は、少なくとも一部、本発明で開示された化合物がiNOS及びCOX−2遺伝子の転写または翻訳を抑制し、その過剰発現が過剰のNO及び/またはプロスタグランジンの生成と結び付けられるという発見に基づいている。
【0009】
更なる面として、本発明は、マクロファージ中のインターフェロン−γ(IFN−γ)誘導NO生成を調節するのに有効なトリテルペノイド組成物に関し、上記組成物は少なくとも0.6μM未満、好ましくは0.001μM未満のIC50値を有する。
【0010】
もう一つの面として、疾患を防止または治療するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる、iNOSまたはCOX−2遺伝子の過剰発現を特徴とする疾患の防止または治療の方法が提供される。このような疾患は、ガン、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症等の神経変性疾患、及び関節リューマチを含む。
【0011】
更なる面として、対象においてiNOSまたはCOX−2遺伝子の転写または翻訳を調節する方法は、iNOSまたはCOX−2遺伝子の転写または翻訳を調節するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる。更なるもう一つの面として、過剰のNOまたはプロスタグランジンの生成を調節するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる過剰のNOまたはプロスタグランジンの生成を調節する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ヒト結腸筋繊維芽細胞18Co細胞におけるインターロイキン−1β(IL−1β)誘導COX−2発現及びプロスタグランジンE(PGE)を抑制する点での本発明の組成物の2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸(CDDO)(「TP−151」と表示)の効力を図示する。(4/14/98 ラット小膠細胞(10細胞/ウェル)、18時間インキュベーション、LPS(5ng/ml)を誘導物質として用いた。)
【図2】ラット脳細胞小膠細胞(脳マクロファージ細胞)におけるリポポリサッカライド(LPS)により誘導されたNO生成に及ぼす種々の化合物の効力の比較であり、TP−151の活性がデキサメサソン、糖質コルチコイドのそれに有利であることを示し、神経変性疾患を防止または治療するのに本発明の組成物がどのように使用されるかを示す。「TP−82」は3,11−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸を指す。
【図3】アルツハイマー病に関与する、β−アミロイドペプチドにより誘導される毒性に対してラットの海馬ニューロンを防止する点でのTP−151の効力を図示する。(4/30/98ニューロン培養物を、重大な神経毒性を引き起こすβ−アミロイドフラグメント25−35に曝した。TP−151による24時間の前処理が、この毒性をブロックした。MTT減少(細胞生存能力についてのマーカー)は、590nmで測定された。)
【図4】前立腺ガンの防止または治療に関連して、正常なラット前立腺細胞(NRP152)の成長を阻害する点でのTP−151の効力を図示する。(NRP152細胞を、24ウェル−組織培養プレートに、ウェルあたり15,000細胞の密度で播種した。細胞付着後(約2時間)、化合物を添加した。細胞を、72時間培養し、ついでHチミジン取り込み(2時間−パルス)に供した。)
【図5】正常なラット前立腺細胞(NRP152)におけるiNOS蛋白質の発現を調節する点でのTP−151の効力を図示する。(NRP152細胞を、TP151の異なる濃度の存在下または不存在下に、LPS(10ng/ml)、TPA(10ng/ml)またはLPSとTPAで12時間処理した。細胞溶解物を得て、INOS発現についてのウェスタン分析に使用した。)
【図6】乳ガンの防止または治療に関連して、MCF−7細胞(乳ガン細胞株)におけるエストロゲン刺激増殖を阻害する点でのTP−151を含む種々の化合物の効力の比較を図示する。
【図7】炎症性コンポーネントによる状態の防止または治療に関連して、マウス初代マクロファージにおけるLPS及びIFN−γにより誘導されるNO生成を阻害する点でのTP−151を含む種々の化合物の効力の比較を図示し、TP−151の活性がデキサメサソンのそれに有利であることを示す。(初代マウスマクロファージにおけるNOアッセイ IFN−γ(5ng/ml)及びLPS(5ng/ml);96穴プレート中2X10細胞/ウェル;48時間インキュベーション。トリテルペノイドは、10μMから0.1pMの濃度で試験した。)
【図8】マウス初代マクロファージにおけるIFN−γにより誘導されるNO生成を阻害する点での種々の化合物の効力の比較を図示する。(5/3/98初代マウスマクロファージにおけるNOアッセイ IFN−γ(10ng/ml);96穴プレート中2X10細胞/ウェル;48時間インキュベーション。トリテルペノイドは、10μMから0.1pMの濃度で試験した。)
【図9】マウス初代マクロファージにおけるLPS及びIFN−γにより誘導されるPGE生成を阻害する点での種々の化合物の効力の比較を図示する。(5/3/98初代マウスマクロファージにおけるPGE2アッセイ IFN−γ(5ng/ml)及びLPS(5ng/ml);96穴プレート中2X10細胞/ウェル;48時間インキュベーション。トリテルペノイドは、10μMから0.1pMの濃度で試験した。)
【図10】マウス初代マクロファージにおけるIFN−γ及びLPSにより誘導されるiNOS及びCOX−2の発現を抑制する点での種々の化合物の効力の比較を図示する。(5/6/98初代マウスマクロファージにおけるCOX−2及びiNOS蛋白質のウェスタン分析 IFN−γ(5ng/ml)及びLPS(5ng/ml)で18時間インキュベーション。 全ての化合物は、μMの濃度で試験した。)
【図11−1】LCDB白血病細胞(A−D)、PC12細胞(E−H)におけるCDDOによる分化の誘導を示す。
【図11−2】LCDB白血病細胞(A−D)、PC12細胞(E−H)におけるCDDOによる分化の誘導を示す。
【図12】3T3−L1繊維芽細胞におけるCDDOによる分化の誘導を示す。
【図13】CDDO(中黒の正方形)、TP−82(○)、及びオレアノール酸(●)によるNRP152及びMCF−7細胞における細胞成長の抑制に対する用量−応答曲線を図示する。
【図14】マウスマクロファージ及びヒト結腸繊維芽細胞におけるiNOS及びCOX−2の誘導に及ぼすトリテルペノイドの阻害効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明の更なる説明の前に、本明細書、実施例及び添付のクレームで使用され
る語を便宜のためにここに集める。
【0014】
定義
本願で使用される「有機部分」という語は、アルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、アリール、アラルキル、アリールオキシ、アルキルチオ、及びアルキルカルボキシル等の炭素をベースとする官能基を含むことを意図する。
【0015】
本願で使用される「無機部分」という語は、水素、ハロ、アミノ、ニトロ、チオール、及びヒドロキシル等の非炭素をベースとする基または要素を含むことを意図する。
【0016】
本願で使用される「電子吸引部分」という語は、本技術分野で公知であり、水素よりも電子吸引性が大きい基を指す。種々の電子吸引基が公知であり、ハロゲン(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨード基)、ニトロ、シアノ、−NR3+、−SR2+、−NH3+、−SO2R、−SO2Ar、−COOH、−OAr、−COOR、−OR、−COR、−SH、−SR、−OH、−Ar及び−CH=CR2を含む(式中、Arはアリールであり、Rは任意の適当な有機あるいは無機部分、好ましくはアルキル部分を表す)。
【0017】
本願で使用される「ハロ置換アルキル部分」という語は、少なくとも一つの水素の代わりにハロゲン部分を有するアルキル部分を含むことを意図する。「アミノ」という語は−NH2を意味し、「ニトロ」という語は−NO2を意味し、「ハロゲン」という語は−F、−Cl、−Brまたは−Iを表し、「チオール」という語は−SHを意味し、また「ヒドロキシル」という語は−OHを意味する。かくして、本願で使用される「アルキルアミノ」という語は、アミノ基が付いている上記に定義されているようなアルキル基を意味する。こ本願で使用される「アルキルチオ」という語は、スルフヒドリル基が付いている上記に定義されているようなアルキル基を意味する。本願で使用される「アルキルカルボキシル」という語は、カルボキシル基が付いている上記に定義されているようなアルキル基を意味する。
【0018】
「芳香族基」という語は、一つあるいはそれ以上の環を含む不飽和環状炭化水素を含むことを意図する。芳香族基は、ゼロから4個のヘテロ原子を含んでもよい5及び6員単環の基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどを含む。芳香環は、一つあるいはそれ以上の環位置で例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF3、−CNなどにより置換されていてもよい。
【0019】
「アルキル」という語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を指す。
【0020】
更に、本明細書及びクレームで使用される「アルキル」(「低級アルキル」を含む)という語は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の双方を含むことを意図し、後者は炭化水素骨格の一つあるいはそれ以上の炭素上の水素を置換する部分を有するアルキル部分を指す。このような部分は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリ−ルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロ環、アラルキル、または芳香族あるいはヘテロ芳香族部分を含むことができる。炭化水素鎖上で置換された部分は、適切ならば、それ自身置換され得ることは当業者ならば理解するであろう。シクロアルキルは、例えば上記の部分によって、更に置換され得る。「アラルキル」部分は、アリールにより置換されたアルキルである(例えば、フェニルメチル(ベンジル))。
【0021】
本願で使用される「アルコキシ」という語は、−O−アルキル(アルキルは上記されている)の構造を有する部分を指す。
【0022】
本願で使用される「アリール」という語は、ゼロから4個のヘテロ原子を含んでもよい5及び6員単環の芳香族基、例えば、置換あるいは非置換のベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどを含む。
アリール基は、また、ナフチル、キノリル、インドリル等の多環縮合芳香族基を含む。芳香環は、一つあるいはそれ以上の環位置で例えば、アルキル基について上述されたような部分により置換され得る。好ましいアリール基は、非置換及び置換フェニル基を含む。
【0023】
本願で使用される「アリールオキシ」という語は、−O−アリール(アリールは上記されている)の構造を有する基を指す。
【0024】
本願で使用される「アミノ」という語は、式−NRab(式中、Ra及びRbは各々独立に水素、アルキル、アリール、またはヘテロ環であり、あるいはRa及びRbは、それらが付いている窒素原子と一緒になって、環中に3から8個の原子を有する環状部分を形成する)の非置換または置換部分を指す。かくして、「アミノ」という語は、特記しない限り、ピペリジニルあるいはピロリジニル基等の環状アミノ部分を含むことを意図する。「アミノ置換アミノ基」は、Ra及びRbの少なくとも一つがアミノ基により更に置換されているアミノ基を指す。
【0025】
本願で使用される「対象」という語は本願に記載されるある状態が起こり得る生体を含むことを意図する。例は、ヒト、猿、牛、羊、山羊、犬、猫、マウス、ねずみ、及びこれらのトランスゲニック種を含む。好ましい実施の形態として、対象は霊長類である。更に好ましい実施の形態として、霊長類はヒトである。対象の他の例は、マウス、ねずみ、犬、猫、山羊、羊、豚、及び牛等の実験動物を含む。実験動物は、疾患用の動物モデル、例えばアルツハイマー型の神経病理を持つトランスジェニックマウスとすることができる。対象は、パーキンソン病、またはアルツハイマー病、等の神経変性疾患に罹っているヒトとすることができる。
【0026】
本願で使用される「IC50」という語は得られる最大応答の50%である阻害性用量を指す。本願で使用される他の略号は次の通りである。CDDO,2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸;DMSO,ジメチルスルホキサイド;iNOS,誘導性一酸化窒素シンターゼ;COX−2,シクロオキシゲナーゼ−2;NGF,神経成長因子;IBMX,イソブチルメチルキサンチン;FBS,ウシ胎仔血清;GPDH,グリセロール3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ;RXR,レチノイドXレセプター;TGF−β,トランスフォーミング成長因子−β;IFN−γ,インターフェロン−γ;LPS,バクテリア内毒素性リポポリサッカライド;TNF−α,腫瘍壊死因子−α;IL−1β,インターロイキン−1β;GAPDH,グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ;MTT,3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド;TCA,トリクロロ酢酸。
【0027】
この化合物は、経口により、あるいは皮下、静脈内、腹腔内などの投与(例えば、注射により)により投与されてもよい。投与経路に依って、活性化合物は、酸の作用及び化合物を不活性化する他の自然条件から保護するために、ある材料中に被覆されることができる。
【0028】
非経口以外の投与により治療化合物を投与するためには、化合物を不活性化を防止する材料により被覆すること、あるいはそのような材料と共供与することが必要である。例えば、治療化合物は、適切なキャリア例えば、リポソームまたは希釈剤中で対象に投与される。医薬として許容しうる希釈剤は、食塩水及びバッファー水溶液を含む。リポソームは、水中−油中−水型CGFエマルジョン並びに従来のリポソームを含む(Strejan et al., (1984) J. Neuroimmunol. 7: 27)。
【0029】
治療化合物は、また、非経口、腹腔内、髄腔内あるいは大脳内に投与される。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物中で、また油中で分散剤を製造することができる。貯蔵及び使用の通常条件下で、調合物は微生物の成長を防止するために保存剤を含む。
【0030】
注射の使用に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性である場合には)または分散剤及び無菌注射液または分散剤の即席調合のための無菌パウダーを含む。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動的でなければならない。それは、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、バクテリア及びカビ等の微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、及び植物油を含む溶剤または分散媒体とすることができる。レシチン等のコーティングの使用により、分散剤の場合必要とされる粒子サイズの維持により、また界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。種々の抗菌剤及び抗カビ剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサルなどにより、微生物の作用の防止が得られる。多くの場合、等張剤、例えば砂糖、塩化ナトリウム、またはマンニトール及びソルビトール等のポリアルコールを組成物中に含むことが好ましい。組成物中に吸収遅延剤、例えばアルミニウムモノステアレートまたはゼラチンを含むことにより、注射用組成物のゆっくりした吸収をもたらすことができる。
【0031】
治療化合物を、必要に応じて上に挙げた成分の一つまたは組み合わせと共に、適切な溶剤中に必要とされる量で取り込ませ、その後濾過無菌化を行うことにより、無菌注射液を作製することができる。一般に、基本的な分散媒体及び上に挙げた成分のうち必要とされる他の成分を含む無菌キャリア中に治療化合物を取り込ませることにより、分散剤を作製することができる。無菌注射液作製用の無菌パウダーの場合には、好ましい製造方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、それは、前に濾過した無菌溶液から活性成分(すなわち、治療化合物)に加えて追加の所望の成分の粉末を生成する。
【0032】
治療化合物、例えば、不活性希釈剤または吸収性食用キャリアと共に経口的に投与され得る。治療化合物及び他の成分は、また、硬いあるいは柔らかいゼラチンカプセルに包み、錠剤に圧縮され、あるいは対象の食物中に直接に包含される。経口的な治療的投与には、治療化合物は賦形剤と共に包含され、経口錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、サスペンジョン、シロップ、ウエハー等の形で使用されてもよい。勿論、組成物及び調合物中の治療化合物のパーセンテージは多様であってもよい。治療上有用な組成物中の治療化合物の量は、好適な用量が得られるような量である。
【0033】
投与の容易さ及び用量の均一さのために非経口組成物を服用単位の形に配合することが特に得策である。本願で使用される服用単位の形は、治療を受ける対象に対する一回の用量として適する物理的に分けられた単位を指し、各単位は、必要とされる医薬キャリアと一緒にして所望の薬剤効果を生み出すように計算された予め定められた量の治療化合物を含む。本発明の服用単位の形に対する規格は、(a)治療化合物の独自の特徴と得るべき特定の薬剤効果、及び(b)対象における選ばれた状態の治療に対してこのような治療化合物を混和する本技術分野に固有な制約により決定され、それらに直接依存する。
【0034】
活性化合物は、対象における状態と関連する状態を治療するのに充分な治療上有効な用量で投与される。「治療上有効な用量」は、好ましくは、治療を受けない対象に比べて、感染対象における状態の症状を少なくとも約20%、更に好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約60%、更により好ましくは少なくとも約80%低減する。例えば、化合物の効能は、実施例及び図で示されるモデルシステム等、ヒトの病気を治療する効能を予測するような動物モデルシステムにおいて評価され得る。
【0035】
本発明は式
【化3】

(式中、AまたはBは単結合または二重結合であり、C11またはC12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である)を有する物質組成物を特徴とする。
【0036】
本発明は、更に式
【化4】

(式中、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である)を有する物質組成物を特徴とする。
【0037】
1は電子吸引基、例えばシアノ、アリール、及びハロ置換アルキル部分であってもよい。好ましくは、R1は、シアノ、ハロ、または−OR’(式中、R’はHまたは有機部分、例えばアセチルまたはカルボキシル基である)を含んでもよい。R1は1から10の位置により表される6員環のいずれかで置換されていてもよいが、好ましい実施の形態としては、R1は位置2にあり、更に好ましい実施の形態としては、R1は位置2のシアノである。
【0038】
式(I)の更に好ましい実施の形態としては、Bは二重結合であり、XはOであり、R3は−OHであり、R1は好ましくは位置2のシアノである。好ましい化合物の例は、3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸(3,11-dioxoolean-1,12-dien-28oic acid)、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸(2-cyano-3,11-dioxoolean-1,12-dien-28oic acid)及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸(2-cyano-3,12-dioxoolean-1,9-dien-28oic acid)を含む。
【0039】
もう一つの面として、本発明は、マクロファージ中のインターフェロン−γ(IFN−γ)誘導NO生成を調節するのに有効なトリテルペノイド組成物を特徴とし、上記組成物は少なくとも0.6μM未満、好ましくは0.001μM未満のIC50値を有する
【0040】
もう一つの面として、疾患を防止または治療するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる、iNOSまたはCOX−2遺伝子の過剰発現を特徴とする疾患の防止または治療の方法が提供される。好ましい実施の形態としては、この疾患は、ガン、神経変性疾患、及び関節リューマチを含む。更に好ましい実施の形態としては、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症を含む。ガンは、乳ガン、前立腺ガン、結腸ガン、脳腫瘍、及び骨ガンを含む。
【0041】
もう一つの面として、本願発明は、過剰のNOまたはプロスタグランジンの生成を調節するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる、過剰のNOまたはプロスタグランジンの生成を調節する方法を特徴とする。
【0042】
もう一つの面として、本願発明は、iNOSまたはCOX−2遺伝子の転写または翻訳を調節するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる、対象においてiNOSまたはCOX−2遺伝子の転写または翻訳を調節する方法を特徴とする。
【0043】
もう一つの面として、本願発明は、神経変性疾患を防止または治療するように、医薬として有効な量の式(I)の組成物を対象に投与することを含んでなる、神経変性疾患の防止または治療の方法を特徴とする。好ましい実施の形態として、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症を含む。
【0044】
本発明の化合物は、好ましい実施の形態として、下記
【化5】

(式中、Rxは任意の有機あるいは無機部分、好ましくはメチルを表し、Yは好ましくはヒドロキシルである)に示されるようなトリテルペノイド構造をベースとする式(I)に示される5個の環構造をベースとする化合物である。
【0045】
トリテルペノイドは、ステロイドのように、スクアレンの環化により天然に生成し、ウルソール酸(UA)及びオレアノール酸(OA)等、すべての30個の炭素原子を分子中に保持している。OA及びUAは多数の薬理活性を有することが知られているが、これらの天然起源の分子の効能は比較的弱い。しかしながら、本願明細書に開示されているようなOA及びUAの誘導体は、OA及びUAよりも効能が大きい。
【0046】
好ましい実施の形態として、このような化合物はウルソール酸及びオレアノール酸の誘導体を含む。特に好ましい実施の形態として、OA、例えば2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸(CDDO)の誘導体
【化6】

は、ヒトの乳ガンの細胞成長の抑制に有効であり、図で詳述するように、マクロファージにおける一酸化窒素及びプロスタグランジンの生成の抑制、ヒトの乳ガンの細胞成長の阻害、ねずみの前立腺細胞における一酸化窒素の生成の抑制、及びヒトの結腸繊維芽細胞におけるプロスタグランジン生成の抑制等の多数のビトロアッセイシステムにおいて極めて効能が高いことが見出された。
【0047】
これらの化合物は、ガン、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、関節リューマチ、炎症性腸疾病及び病原が一酸化窒素またはプロスタグランジンの過剰な生成を含むと考えられるすべての他の病気の防止及び治療に有用である。
【0048】
iNOSまたはCOX−2のいずれかの異常あるいは過剰発現が結腸における発ガンを含む多くの病気のプロセスの病原においてかかわりあいがあるとされてきた。かくして、COX−2に対する遺伝子の過剰発現は、結腸の発ガンにおける初期の中心的なイベントである(Prescott and White, 1996 ; Dubois et al., 1996)。APC(線腫様polyposis coli)遺伝子における欠陥を持つマウスは、若年で多数の腸ポリープにかかり、COX−2酵素レベルにおける顕著な上昇がこれらのポリープに見出されている。これらの動物の知見は、多くのヒトの原発性結腸ガン及び結腸ガン細胞株におけるCOX−2mRNA及び蛋白質の上昇したレベルの知見と関連し(Prescott and White, 1996)、COX−2の上昇は、通常、前新生物細胞の死に導くアポトーシスの抑制に導くと考えられる(Tsujii and DuBois, 1996)。COX−2遺伝子のノックアウト及びこのノックアウトを持つマウスとAPC遺伝子において損傷を持つポリープ形成マウスとの引き続く交配により、腸腫瘍形成へのCOX−2の機能の関連が示された。COX−2ノックアウトは、その子孫においてポリープの数の劇的な減少を起こした(Oshima et al., 1996)。更に、選択的COX−2インヒビターまたは非選択的COX−1/COX−2インヒビターによる実験動物の治療は、腸ガンの化学防御への有力なアプローチであると報告されている(Marnett, 1992; Oshima et al., 1996; Boolbol et al., 1996; Reddy et al., 1996; Sheng et al., 1997)。発ガンにおけるiNOSの役割に関しては、NOは強力な突然変異誘発物質であり、一酸化窒素はまたCOX−2を活性化することができることが明白である(Tamir and Tannebaum, 1996)。更に、発ガン物質のアゾキシメタンにより誘導されたラットの結腸腫瘍でのiNOSが顕著に増加する(Salvemini et al., 1993,1994)。
【0049】
MSは中枢神経系の炎症性状態であることが知られている(Williams, Ulvestad and Hickey, 1994; Merrill and Beneviste, 1996; Genain and Nauser, 1997)。炎症性、酸化的、あるいは免疫的機構がMS,AD,PD,及びALSの病原に含まれているかもしれない(Bagasra et al., 1995; Griffin et al., 1995; McGeer and McGeer, 1995; Good et al., 1996; Simonian and Coyle, 1996; Kaltschmidt et al., 1997)。反応性星状細胞及び活性化小膠細胞は、NDD/NIDの因果関係においてかかわりがあるとされてきた。酵素、iNOS及びCOX−2の各々の生成物としてNO及びプロスタグランジンの双方を合成する細胞として小膠細胞に特別な強調がなされている。これらの酵素のデノボ生成は、インターフェロン−ガンマまたはインターロイキン−1等の炎症性サイトカインにより促進される。一方、NOの過剰な生成は、神経系のニューロン及び希突起膠細胞を含む多くの器官の細胞及び組織中の炎症性カスケード及び/または酸化的損傷を導き、結果として、AD及びMS、及び恐らくはPD及びALSを発現する(Coyle and Puttfarcken, 1993; Goodwin et al., 1995; Beal, 1996; Good et al., 1996; Merrill and Benvenist, 1996; Simonian and Coyle, 1996; Vodovotz et al., 1996)。疫学データは、アラキドネートからのプロスタグランジンの合成を阻止するNSAIDの慢性的な使用は、ADの進行に対するリスクを顕著に低下させることを示している(McGeer et al., 1996; Stewart et al., 1997)。かくして、NO及びプロスタグランジンの生成を阻止する薬剤がNDDの防止及び治療へのアプローチにおいて使用される。
【0050】
ここに更に開示されるのは、次の3つの重要な性質を有する、新しい合成オレアネートトリテルペノイド、CDDOの合成及び生物活性である。
1)悪性及び非悪性細胞の双方における分化の誘導のための有効な薬剤である。
2)それは、多くの悪性及び前悪性細胞の増殖のインヒビターとしてナノモルレベルで活性である。
3)それは、炎症性酵素、iNOS及びCOX−2のデノボ合成の抑制においてこれ迄のいかなるトリテルペノイドよりも100から500倍の効力がある。
これらの3つの作用は有用な新しい化学防御薬剤の開発に重要であり、これらは、また、それ自体、悪性腫瘍の治療に関連がある。
【0051】
本発明の実施には、特記しない限り、当業界の技術の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学における通常の技術が使用される。このような方法は文献で充分説明されている。
例えば、Genetics; Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by Sambrook, J. et al. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)); Short Protocols in Molecular Biology, 3rd Ed., ed. by Ausubel, F. et al. (Wiley, NY (1995)); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. (1984)); Mullis et al. 米国特許番号: 4,683,195; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1984)); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N. Y.); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London (1987)); Handbook OfExperimental Immunology, Volumes I- IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds. (1986)); and Miller, J. Experiments in Molecular Genetics (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N. Y. (1972))、を参照。
【0052】
本発明は、次の実施例により例示されるが、これは本発明を更に限定するものとは考えられるべきでない。背景を含めて本出願を通して引用される、すべてのリファレンス、発行特許及び公開された特許出願はここに引用として取り込まれる。実施例及び図において記述されているモデルにおける本発明の治療化合物の効能の例示はヒトにおける効能を予測している。
【実施例】
【0053】
(実施例)
実施例1
化合物を下記のように合成した。
【化7】

【化8】

【0054】
THF(Clinton et al., 1961)中のナトリウムメトキサイドの存在下、OA(化合物9)(Simonsen and Ross, 1957)をエチルホルメートによりホルミル化することにより、化合物10を調製した。酢酸エチル中でフェニルセレニルクロライドにより化合物10のC−1に二重結合を導入し、引き続いて30%過酸化水素を添加することによって、化合物7を得た(Sharpless et al., 1973)。エタノール水溶液中でヒドロキシルアミンを添加することにより、化合物10から化合物11を合成した。化合物11をナトリウムメトキサイドにより開裂することにより、化合物12を得た(Johnson and Shelberg, 1945)。アルカリ加水分解の後、ジョーンズ酸化することにより、化合物13(Picard et al., 1939)から化合物14を調製した。ベンゼン中ナトリウムメトキサイドの存在下化合物14をエチルホルメートによりホルミル化することにより、化合物15を調製した。ヒドロキシルアミンを添加することにより、化合物15から化合物16を合成した。16をナトリウムメトキサイドにより開裂することにより、化合物17を得た。酢酸エチル中でフェニルセレニルクロライドにより化合物17のC−1に二重結合を導入し、引き続いて30%過酸化水素を添加し、その後DMF(Dean, P. D. G., 1965)中ヨウ化リチウムによりハロゲノリシス(halogenolysis)を行うことによって、化合物6(CDDO)を調製した。
【0055】
マウスのマクロファージにおけるIFN−γ誘導NO生成に及ぼすこれらの化合物及びデキサメタソンの阻害活性を下記の表1に示す。アッセイに次の手順を使用した。4日前に4%チオグリコレートを腹腔内に注射したメスのマウスからマクロファージを収穫した。96穴の組織培養プレート中にこれらの細胞を播種し、阻害試験化合物の存在下あるいは不存在下で4ng/mLINF−γとともにインキュベートした。48時間後、NO生成を求めた(グリース反応により亜硝酸塩として測定)。このアッセイの詳細は、Dingら、1990、Bogdan、1992に示されている。化合物6(CDDO)は、デキサメタソンに類似して優れた阻害活性(IC50,1nM)を示した。
【0056】
【表1】

【0057】
すべての新化合物6−8は、高分解能質量スペクトル及び元素分析を含めて満足なスペクトルデータを示した。
【0058】
次の実施例のために、DMSO中でCDDO(0.01M)のストック溶液を作製し、−20℃で凍結した。細胞培地に添加する前にDMSO中連続希釈を行った。初代ラット小膠細胞及び海馬ニューロンを単離し、Flarisら、1993及びRenとFlanders、1996に記述されているように培養した。
【0059】
実施例2:骨髄性白血病細胞、PC12褐色細胞腫細胞、及び3T3−L1繊維芽細胞における分化の誘導
CDDOは、NCI小児腫瘍学部門(Pediatric Oncology Branch)の化学療法耐性の患者に由来する、不充分に分化したLCDB急性骨髄性白血病細胞株に単球分化を誘導する。図11は、RPMI1640/2%FBS中に、単独で(11A)、2.5ng/mlTGF−β1(11B)と共に、10−8M CDDO(11C)と共に、あるいはTGF−β1及びCDDO(11D)の双方と共に播種されたLCDB細胞を図示する。48時間後、サイトスピンスライドプレパラート(cytospin slide preparations)を作製し、α−ナフチルアセテートエステラーゼ活性(Sigmaのキット)について染色した。格子付きの皿中のDMEM/10%FBS及び5%ウマ血清中で(Smith et al., 1997)、単独で(11E)、100ng/ml7S NGF(11F)と共に、10−6 MCDDO(11G)と共に、あるいはNGF及びCDDO(11H)の双方と共に、PC12細胞を5日間培養した。三度細胞を蒔き、少なくとも2つの別な細胞のプレーティングにおいて、各処理に対して類似の結果を観察した。細胞及び神経突起のサイズの定量的な像分析についての方法が記述されている(De la Torre et al., 1997)。図11Eのコントロール細胞は直径がほぼ10μmである。3T3−L1細胞をDMEM/5%子牛血清中でコンフルエントな状態まで育成し、DMEM/10%FBS中CDDO(図12A)により、あるいはDMEM/10%FBS中CDDO及び/またはLG100268(図12B)により一度処理した。その後2日毎に、CDDOまたはLG100268の添加なしで、培地をDMEM/10%FBSに変えた。8日目(図12A)または6日目(図12B)に細胞を収集し、340nmにおけるNADHの消費に対する標準のアッセイを用いて、GPDHを溶解物中で測定した(Wise and Green, 1979)。これらの細胞は単球/マクロファージマーカー、α−ナフチルエステラーゼを発現しない(図11A)。しかしながら、48時間内に、CDDO(10−8M)は、組織化学的に決定されるように、この酵素の活性を誘導した(図11C)。TGF−β1によるLCDB細胞の処理(2.5ng/ml)は、また、α−ナフチルエステラーゼ活性を誘導し(図11B)、双方の薬剤を使用する場合には相加的な効果があった(図11D)。CDDOは、それ自身であるいはTGF−β1と組み合わせて、ヒト単球白血病株、THP−1、及びヒト前骨髄性白血病株、NB4(データは示さず)に対して分化効果を有することが示された。
【0060】
ニューロン成長及び分化の研究に、ラット褐色細胞腫細胞株、PC12は、広く使用されてきた。NGFによるこれらの腫瘍細胞の処理は、多大な神経突起成長と共に、ニューロン表現型を誘導することが知られている(Greene and Rischler, 1976; Guroff 1985)。CDDOは、NGFのこれらの効果を著しく増強する。図11E及びFは、NGF(100ng/ml)による神経突起成長の誘導を示す。CDDO(10−6M)はそれ自身神経突起形成を誘導しないが、それは、細胞をして、大きな、平らな形状をとらしめる(図11G)。NGFと組み合わせて使用する場合、CDDO(図11H)は初代神経突起/細胞の数をほぼ倍加させ(1.2±0.2S.E.M.から2.1±0.1、p<0.001)、神経突起の長さの3倍以上(28±6から99±9ミクロン、p<0.001)の増加と、神経突起分枝/細胞の5倍の増加(0.23±0.06から1.13±0.08、p<0.001)を引き起こす。かくして、CDDOは、細胞サイズ、並びに神経突起樹枝状分岐の程度と複雑性を増加させることにより、PC12細胞のニューロン分化を増進させる。
【0061】
CDDOが分化を誘導する第3の細胞のタイプは、3T3−L1繊維芽細胞である。これらの非腫瘍性繊維芽細胞は、インシュリン、デキサメタソン、及びIBMX(Green and Kehinde, 1974; Bernlohr et al., 1984)の組み合わせにより古典的に誘導されて、脂肪細胞を形成する。10-8Mの低用量でのCDDO(図12A)による処理(添加されたインシュリン、デキサメタソン及びIBMXの不存在下で)は、トリグリセライド合成におけるキー酵素として知られている、マーカーのGPDH(Wise and Green, 1979)の誘導により測定されるように、脂肪細胞分化を引き起こした。酵素アッセイによる結果は、脂肪滴に対するオイルレッドO染色により確かめられた(データは示さず)。更に、CDDOはRXR選択的レチノイドのLG100268(Boehm et al., 1995)と共に相乗的に作用して、脂肪細胞の分化を促進する(図12B)。
【0062】
実施例3:CDDOによる多くの悪性及び前悪性細胞の増殖の阻害
細胞増殖のインヒビターは、有用な化学防御及び化学治療薬剤であることが知られている。極めて攻撃的な白血病及び悪性腫瘍、並びに非腫瘍性組織に由来する広範な多様な細胞に対して、CDDOを試験した。Danielpourら、1994に記述されているように、NRP−152細胞を成長させた。17−β−エストラジオール(10pM)を添加したフェノールレッドを含まないRPMI 1640/10%炭除去したFBS中でMCF−7細胞を成長させた。プレーティング時、トリテルペノイドを添加し、72時間後3H−チミジン(1μCi/穴)を添加し、2時間の最終インキュベーションを行った。細胞をTCA(10%)により沈殿させ、洗浄し、可溶化した後チミジンの取り込みを測定した。図13で使用されたシンボルは、CDDO(中黒の正方形)、TP−82(○)、及びオレアノール酸(●)である。
【0063】
2つの細胞タイプ、ヒトMCF−7乳癌及びラットNRP−152非悪性前立腺上皮についての典型的な用量−応答曲線を図13に示す(Danielpour et al., 1994)。CDDOは、これらの細胞におけるチミジンの取り込みを抑制することにおいて、ナノモルの範囲において極めて活性であり、一方、TP−82は著しく低活性であり、オレアノール酸は1μMあるいはそれ以下の濃度で実質的に活性がない。
【0064】
他のガン細胞について得られた結果を表2に示す。(1)エストロゲン受容体ネガティブの乳ガン細胞のいくつかの株はCDDOに敏感である。エストロゲン受容体ポジティブのMCF−7細胞も同様である。(2)たとえ、腫瘍細胞がSmad−4/DPC4突然変異を有し、それゆえ、TGF−βの成長阻害作用に敏感でないとしても(Schutte et al., 1996; Zhou et al., 1998; Heldin et al., 1997)、SW626卵巣悪性腫瘍、CAPAN−1及びAsPc−1膵臓悪性腫瘍、及びMDA−MB−468乳癌細胞の場合に見られるように、これらはなおCDDOに応答する。(3)特に骨髄系統の多くの白血病細胞はCDDOに極めて敏感であることに注目されたい。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例4:CDDOによるiNOS及びCOX−2のデノボ合成の阻害
CDDOは、酵素のiNOS及びCOX−2のデノボ生成を誘導するいくつかの炎症性サイトカインの能力を阻害することにおいて高活性である(図14)。図14(A)はウエスターンブロットを図示する。初代マウスマクロファージ、IFN−γ,10ng/ml、LPS,2ng/mlをトリテルペノイドまたはデキサメタソンと一緒に培養物に添加した(濃度はμMで示す)。細胞を12時間で収集した。図14(B)はRAW264.7マクロファージ様細胞株のノーザンブロットを図示する。IFN−γ,10ng/ml、LPS,1ng/ml、TNF−α,10ng/mlをCDDOまたはデキサメタソンと一緒に培養物に添加した。RNAを12時間後に調製した。GAPHDHをローディングコントロールとして使用した。図14(C)は初代マクロファージにおけるNO及びPGEの生成の抑制を図示する。NOの試験には、CDDO(中黒の正方形)、デキサメタソン(○)、TP−82(□)、またはオレアノール酸(中黒の三角形)と一緒に、細胞をIFN−γ,10ng/mlにより処理した。48時間後、上澄みをグリース反応によりNOについて分析した。PGEの試験には、同じセットのインヒビターと一緒に、細胞をIFN−γ,5ng/ml、及びにLPS,5ng/mlにより処理した。48時間後、PGEをイムノアッセイにより上澄み中で測定した。NO及びPGEに対するコントロール値(阻害なし)は、それぞれ4.7nmol/2×105細胞及び2.2ng/ml/2×105細胞であった。図14(D)及び14(E)は、MEM/10%FBS中で成長させた18Co細胞を図示する(ヒト結腸筋繊維芽細胞)。他の方法はマウスマクロファージについて上記に報告したのと同じである。図14(D)は、IL−1β(30pg/ml)による誘導の後のCOX−2mRNAの抑制に対する用量−応答を示すノーザンブロットを図示する。IL−1と一緒にCDDOを添加した。図(E)においては、ウエスターンブロットは、COX−2蛋白質の抑制を示す。IL−1β(30pg/ml)と一緒にCDDOを添加した。また、CDDOによる細胞上清におけるPGEの蓄積性の生成の抑制も示される。
【0067】
CDDOのこれらの効果は、初代マウスマクロファージ、マウスマクロファージ様腫瘍細胞株(RAW264.7)、及び非腫瘍性ヒト結腸繊維芽細胞において見られる。図14(A)は、初代マクロファージでのiNOS及びCOX−2蛋白質の発現についてのウエスターンブロットを示す。IFN−γまたはLPS等の炎症性メディエーターにより刺激される迄、iNOSまたはCOX−2の発現もこれらの細胞では検出することができない。1μMまたはそれ以下の濃度のCDDOは、iNOS及びCOX−2蛋白質双方の発現を阻害した。図13に見られるように、再度、CDDOのC−2上のニトリル機能の重要性を図14(A)に示す。図14(B)は、CDDO(10−6M)がRAW264.7細胞におけるiNOS及びCOX−2の双方に対するmRNA発現のレベルを75%以上低下させたことを表すノーザンブロットを示す。初代マクロファージにおいて測定されるように、iNOS及びCOX−2に及ぼす上記の効果はまた酵素生成物、NO及びPGEそれぞれの蓄積性の生成に反映されている図14(C)。CDDOによる顕著な阻害が10-9Mという低いレベルで見られ、これはTP−82またはオレアノール酸よりも著しく活性であった。しかしながら、これらの2つの酵素の合成が既に誘導されたRAW細胞に添加する場合、NOまたはプロスタグランジンの生成に直接の効果を持たないので、CDDOは、iNOSまたはCOX−2の酵素活性の直接のインヒビターでない(データは示さず)。同様に、CDDOの作用は、糖質コルチコイド受容体に結合することが知られている糖質コルチコイド拮抗薬のRU−486により阻害されない(データは示さず)。これらの点で、CDDOは、以前に試験された他のオレアノール酸誘導体と同じである(Suh et al., 1998)。
【0068】
CDDOがCOX−2のデノボ生成の高有効性のインヒビターである第2のタイプの細胞は、結腸繊維芽細胞である。結腸発ガンにおける間質性細胞COX−2の重要性のためにこれらの細胞を選択した(Oshima el al., 1996)。CDDOは、IL−1による非腫瘍性18Co細胞の処理によって引き起こされるCOX−2mRNA及び蛋白質の誘導を阻害した(図14D,E)。再度、この作用は培地中のPGEレベルの低下に反映された。CDDOは、IFN−γ、LPS、TNF−α、及びIL−1等の薬剤によりCOX−2の誘導を効果的に阻害するが、COX−2のインデューサーとしてTPAを使用する場合には無効である。これは、18Co細胞、並びにヒト乳房上皮細胞株、184B5/HER(Zhai et al., 1993)に見られた。
【0069】
実施例5:ラット脳細胞におけるCDDOによるiNOSの抑制及び細胞死の防止
ガン及びアルツハイマー病の発生における炎症性メディエーターの役割、並びに細胞生き残りとアポトーシスに対する異常プログラムは今真剣な研究が行われている(McGeer and McGeer, 1995; Merrill and Benveniste, 1996; Akama et al., 1998)。この実施例ではCDDOを、培養小膠細胞(脳のレジデントマクロファージ)におけるiNOSのデノボ生成のサプレッサーとして並びにβ−アミロイドにより誘導される細胞死から培養海馬ニューロンを保護する能力を試験した。CDDOは、初代マクロファージ培養において、初代腹膜マクロファージ培養について上記に報告されたものと類似ので作用することが見出された。かくして、LPS(5ng/ml)は、初代小膠細胞培養においてiNOSを誘導し、18時間内にNOの生成において27倍の増加を引き起こした。10-6または10-7MでのCDDOによるこれらの培養の付随する処理はこの誘導を、それぞれ73%及び52%阻害した。我々は、また、アルツハイマー病(Selkoe, 1997)の中心的病原であるこのペプチドβ−アミロイドの神経毒作用において、NOが関連付けられているので(Akama et al., 1998)、CDDOが、このペプチドβ−アミロイドにより誘導される細胞死から培養海馬ニューロンを保護する可能性を探究した。16日ラット胚から海馬ニューロンを単離し、培養し、CDDOにより24時間処理し、その後にβ−アミロイドペプチドフラグメント、アミノ酸25−35を、10μMの最終濃度で添加した。β−アミロイド単独によるこの投与は、MTTアッセイにより測定されるように、培養中24時間内に培養物中の半分以上のニューロンの死を引き起こした。しかしながら、CDDO(10-8及び10-7M)によるニューロン培養の前処理はこの細胞死を完全に防止し、一部のCDDOの防止活性は10-10Mという低用量にあることが判明した。
【0070】
要約
上記に見られるように、CDDO等の本発明の化合物は、広範囲の作用を有する強力な、多機能分子であり、これらの多くはガン等の疾患の防止または治療に潜在的に有用である。エストロゲン受容体ポジティブ及びネガティブの乳ガン、骨髄性白血病、及びSmad−4突然変異を持ついくつかの悪性腫瘍由来のものを含むヒト腫瘍細胞株の増殖が阻害される。マウス腹膜マクロファージ、ラット脳細胞小膠細胞、またはヒト結腸筋繊維芽細胞において酵素、誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)、または誘導性シクロオキシゲナーゼ(COX−2)のデノボ形成を誘導する、インターフェロン−γ、インターフェロン−1、または腫瘍壊死因子−α等の種々の炎症性サイトカインの能力が抑制される。また、脳海馬ニューロンはβ−アミロイドにより誘導される細胞死から保護される。上記は、本発明の化合物、例えばCDDOは、悪性腫瘍の化学防御または化学治療に、並びに神経保護にインビボで有用であることを示す。
均等物
本願明細書に記載される特定の態様は、例示によるものであり、本願発明を限定するためのものではない。本願発明の重要な特徴は、本願発明の範囲を超えることなく様々な態様で実施され得る。当業者であれば、普通の実験を用いるだけで、本願明細書に記載される特定の手順の多数の均等物を認識し、確かめることができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する物質組成物:
【化1】

ここで、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項2】
1がシアノ基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Bが二重結合であり、XがOであり、R3が−OHであり、且つR1がシアノ基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記組成物が3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸からなる群から選ばれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1がシアノ、ハロ、または−OR’からなる群から選ばれ、ここでR’はHまたは有機部分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1が電子吸引性部分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1が2の位置にある、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
上記組成物が下記式を有する請求項1に記載の組成物:
【化2】

ここで、Rxは有機あるいは無機部分を表す。
【請求項9】
xがメチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
Yがヒドロキシルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
マクロファージ中のインターフェロン−γ(IFN−γ)誘導NO生成を調節するのに有効なトリテルペノイド組成物であって、上記組成物が少なくとも0.6μM未満のIC50値を有する組成物。
【請求項12】
上記組成物が少なくとも0.001μM未満のIC50値を有する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
下記式を有する組成物を、疾患を防止し、治療するために、対象に、医薬として有効な量で投与することを含んでなる、疾患を防止又は治療する方法:
【化3】

式中、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、R2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項14】
上記疾患がガン、神経変性疾患、炎症性腸疾患、及び関節リューマチからなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記神経変性疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症からなる群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記ガンが乳ガン、前立腺ガン、結腸ガン、脳腫瘍、及び骨ガンからなる群から選ばれる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
上記対象が哺乳動物である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
上記対象がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
1がシアノ基である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
Bが二重結合であり、XがOであり、且つR3が−OHであり、R1がシアノ基である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
上記組成物が3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸からなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
1がシアノ、ハロ、または−OR’からなる群から選ばれ、ここでR’はHまたは有機部分である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
1が電子吸引性部分である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
上記炎症性腸疾患がクローン病及び潰瘍性大腸炎からなる群から選ばれる、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
下記式を有する組成物を、一酸化窒素またはプロスタグランジンの生成を調節するために、対象に、医薬として有効な量で投与することを含んでなる、対象における過剰な一酸化窒素またはプロスタグランジンの生成を調節する方法:
【化4】

ここで、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項26】
1がシアノ基である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
Bが二重結合であり、XがOであり、R3が−OHであり、且つR1がシアノ基である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
上記組成物が3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸からなる群から選ばれる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
1がシアノ、ハロ、または−OR’からなる群から選ばれ、ここでR’はHまたは有機部分である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
1が電子吸引性部分である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
1が2の位置にある、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記組成物が下記式を有する請求項25に記載の方法:
【化5】

式中、Rxは有機あるいは無機部分を表す。
【請求項33】
xがメチルである、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
Yがヒドロキシルである、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
下記式を有する組成物を、iNOSまたはCOX−2遺伝子の転写または翻訳を調節するために、対象に、医薬として有効な量で投与することを含んでなる、iNOSまたはCOX−2遺伝子の転写または翻訳を調節する方法:
【化6】

ここで、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項36】
1がシアノ基である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
Bが二重結合であり、XがOであり、R3が−OHであり、且つR1がシアノ基である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
上記組成物が3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸からなる群から選ばれる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
1がシアノ、ハロ、または−OR’からなる群から選ばれ、ここでR’はHまたは有機部分である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
1が電子吸引性部分である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
上記電子吸引性部分がシアノ、アリール、ハロ置換アルキル部分からなる群から選ばれる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
上記組成物が下記式を有する、請求項35に記載の方法:
【化7】

ここで、Rxは有機あるいは無機部分を表す。
【請求項43】
xがメチルである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
Yがヒドロキシルである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
下記式を有する組成物を、神経変性疾患を防止または治療するために、対象に、医薬として有効な量で投与することを含んでなる、神経変性疾患の防止または治療の方法:
【化8】

ここで、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項46】
上記神経変性疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症からなる群から選ばれる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
上記対象が哺乳動物である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
上記対象がヒトである、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
1がシアノ基である、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
Bが二重結合であり、XがOであり、R3が−OHであり、且つR1がシアノ基である、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
上記組成物が3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸からなる群から選ばれる、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
1がシアノ、ハロ、または−OR’からなる群から選ばれ、ここでR’はHまたは有機部分である、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
1が電子吸引性部分である、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
1が2の位置にある、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
上記組成物が下記式を有する、請求項53に記載の方法:
【化9】

ここで、Rxは有機あるいは無機部分を表す。
【請求項56】
xがメチルである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
Yがヒドロキシルである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
下記式を有する物質組成物:
【化10】

ここで、AまたはBは単結合または二重結合であり、C11またはC12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1はにより表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2基は式で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項59】
下記式を有する組成物を、下記疾患を防止又は治療するために、対象に、医薬として有効な量で投与することを含んでなる、iNOSまたはCOX−2遺伝子の過剰発現を特徴とする疾患を防止又は治療する方法:
【化11】

ここで、AまたはBは単結合または二重結合であり、C11またはC12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項60】
活性化マクロファージにより引き起こされる対象における状態を治療する方法であって、マクロファージ活性を減少させ、それにより該状態を治療するための有効量の医薬的に有効なキャリア中の請求項1に記載の化合物を、該対象に投与することを含む方法。
【請求項61】
化合物がCDDOである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
下記式を有する組成物を、下記疾患を防止又は治療するために、対象に、医薬として有効な量で投与することを含んでなる、iNOSまたはCOX−2遺伝子の過剰発現を特徴とする疾患を防止又は治療する方法:
【化12】

ここで、AまたはBは二重結合であって、Aが二重結合である場合には、C11は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、またBが二重結合である場合には、C12は有機あるいは無機の置換部分=Xを有し、R1は1から10により表される6員環のいずれかの位置で置換されていてもよい有機あるいは無機の部分であり、R2及びR3は水素または有機あるいは無機部分であって、ここでR2基は式(I)で表される構造のいずれかの位置で置換されていてもよく、且つnは0から100の数である。
【請求項63】
上記疾患がガン、神経変性疾患及び関節リューマチからなる群から選ばれる、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
上記神経変性疾患がパーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、及び筋萎縮性側索硬化症からなる群から選ばれる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
上記ガンが乳ガン、前立腺ガン、結腸ガン、脳腫瘍、及び骨ガンからなる群から選ばれる、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
上記対象が哺乳動物である、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
上記対象がヒトである、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
1がシアノ基である、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
Bが二重結合であり、XがOであり、R3が−OHであり、且つR1がシアノ基である、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
上記組成物が3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸、2−シアノ−3,11−ジオキソオレアナ−1,12−ジエン−28酸及び2−シアノ−3,12−ジオキソオレアナ−1,9−ジエン−28酸からなる群から選ばれる、請求項62に記載の方法。
【請求項71】
1がシアノ、ハロ、または−OR’からなる群から選ばれ、ここでR’はHまたは有機部分である、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
1が電子吸引性部分である、請求項62に記載の方法。
【請求項73】
1が2の位置にある、請求項72に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−144574(P2012−144574A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102499(P2012−102499)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2009−136739(P2009−136739)の分割
【原出願日】平成11年6月18日(1999.6.18)
【出願人】(500579280)トラスティーズ・オヴ・ダートマス・カレッジ (4)
【Fターム(参考)】