説明

薬剤耐性マイコバクテリア性疾患の処置のための置換キノリン誘導体の使用

【課題】結核の原因菌であるマイコバクテリウム・チュベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)において、多剤耐性マイコバクテリウム株の成長抑制を含む薬剤耐性マイコバクテリウム株の成長を抑制するため薬剤の提供。
【解決手段】下記化学式に代表される置換キノリン誘導体、製薬学的に許容され得る担体ならびに該化合物及び1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の治療的に有効な量を含んでなる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤耐性マイコバクテリウム(Mycobacterium)株の成長抑制を含む薬剤耐性マイコバクテリウム株の成長を抑制するための置換キノリン誘導体の使用に関する。かくして置換キノリン誘導体を薬剤耐性、特に多剤耐性マイコバクテリアによって引き起こされるマイコバクテリア性疾患の処置又は予防のために用いることができる。さらに特定的に、本キノリン誘導体を、多剤耐性を含む薬剤耐性マイコバクテリウム・チュベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)により引き起こされるマイコバクテリア性疾患の処置又は予防のために用いることができる。本発明は、(a)本発明に従う置換キノリン誘導体及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組合せにも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マイコバクテリウム・チュベルクロシスは、世界中に分布する重症で命にかかわる可能性のある感染である結核(TB)の原因となる因子(causative agent)である。世界保健機構(World Health Organization)からの概算は、毎年800万より多くの人々がTBに罹り、年に200万の人々が結核で死亡すると示している。この10年内にTB患者は世界で20%増加し、最も貧しい地域社会において苦しみが最も大きい。これらの傾向が続くと、TB発生率は次の20年内に41%増加するであろう。有効な化学療法の導入から50年、TBは、世界で成人の死亡率の筆頭の感染性の原因であるAIDSに次ぐものであり続けている。TB流行を複雑にするものは、多剤耐性株の増加する形勢及び命取りのHIVとの共生である。HIV−陽性であり、且つTBに感染する人々は、HIV−陰性である人々より30倍活性TBを発症し易く、TBは世界中でHIV/AIDSを有する人々の3人に1人の死亡に責任がある。
【0003】
結核の処置のための現存する方法はすべて、複数の薬剤の組み合わせを含む。例えば米国公衆衛生事業(U.S. Public Health Service)が薦める管理は、2ヶ月間のイソニアジド(isoniazid)、リファムピシン(rifampicin)及びピラジンアミド(pyrazinamide)の組み合わせ、及び続くさらに4ヶ月間の単独のイソニアジド及びリファムピシンである。これらの薬剤は、HIVに感染した患者においてさらに7ヶ月間続けられる。M.チュベルクロシスの多剤耐性株に感染した患者の場合、エタムブトール(ethambutol)、ストレプトマイシン(streptomycin)、カナマイシン(kanamycin)、アミカシン(amikacin)、カプレオマイシン(capreomycin)、エチオナミド(ethionamide)、サイクロセリン(cycloserine)、シプロフォキサシン(ciprofoxacin)及びオフロキサシン(ofloxacin)のような薬剤が組み合わせ治療に加えられる。結核の臨床的処置において有効な単独の薬剤も、6ヶ月未満の持続時間の治療の可能性を与えるいずれの薬剤の組み合わせも存在しない。
【0004】
患者及び供給者のコンプライアンスを助長する管理を可能にすることにより、現在の処置を向上させる新規な薬剤に対する高い医学的要求がある。より短い管理及びより少ない監督しか必要としない管理がこれを達成するのに最も良い方法である。4種の薬剤が一緒に与えられると、処置からの利益のほとんどは最初の2ヶ月内、集中又は殺バクテリア期の間に現れ、バクテリア負荷量は非常に減少し、そして患者は非感染性になる。残存する桿菌(bacilli)を除去するため及び再発の危険を最小にするために、4−〜6−ヶ月の継続又は滅菌期が必要である。処置を2ヶ月かもしくはそれ未満に短縮する有力な
滅菌薬は非常に有益であろう。より少ない集中的な監督しか必要としないことにより、コンプライアンスを助長する薬剤も必要である。明らかに、処置の合計の長さ及び薬剤投与の頻度の両方を減少させる化合物は最も大きな利益を与えるであろう。
【0005】
TB流行を複雑にするものは、多剤耐性株又はMDR−TBの発生率の増加である。世界中ですべての事例の最高で4%がMDR−TB−4−薬標準の最も有効な薬剤、イソニアジド及びリファムピン(rifampin)に耐性のもの−と考えられる。MDR−TBは処置されないと致命的であり、標準的な治療を介して十分に処置され得ず、従って処置は最高で2年の「第2次」薬(“second−line”drugs)を必要とする。これらの薬剤は多くの場合に毒性であり、高価であり、且つかろうじて有効である。有効な治療の不在下で、感染性MDR−TB患者は疾患を広め続け、MDR−TB株による新しい感染を生ずる。耐性及び/又はMDR株に対する活性を示す薬剤に対する高い医学的要求がある。
【0006】
前記又は後記で用いられる「薬剤耐性」という用語は、微生物学における熟練者が十分に理解する用語である。薬剤耐性マイコバクテリウムは、少なくとも1種の以前に有効であった薬剤にもはや感受性でないマイコバクテリウムであり;それは少なくとも1種の以前に有効であった薬剤による抗生物質攻撃に耐える能力を発現した。薬剤耐性株は、その耐える能力をその子孫に中継することができる。該耐性は、1種の薬剤又は種々の薬剤へのバクテリア細胞の感受性を変える、バクテリア細胞における無作為な遺伝子突然変異の故であり得る。
【0007】
MDR結核は、少なくとも現在2つの最も強力な抗−TB薬であるイソニアジド及びリファムピシンへの(他の薬剤への耐性を有するか、もしくは有していない)バクテリアの耐性の故の薬剤耐性結核の特別な形態である。かくして前記又は後記で用いられる場合は常に、「薬剤耐性」は多剤耐性を含む。
【0008】
予期せぬことに今回、本発明の置換キノリン誘導体が薬剤耐性、特に多剤耐性マイコバクテリアの成長の抑制のために非常な有用であり、従って薬剤耐性、特に多剤耐性マイコバクテリアにより引き起こされる疾患、特に薬剤耐性、特に多剤耐性病原性マイコバクテリウム(M.)・チュベルクロシス、M.ボビス(M.bovis)、M.アビウム(M.avium)、M.フォルツイツム(M.fortuitum)、M.レプラエ(M.leprae)及びM.マリヌム(M.marinum)、さらに特定的にマイコバクテリウム・チュベルクロシスにより引き起こされる疾患の処置に有用であることが見出された。
【0009】
本発明に関連する置換キノリン誘導体はすでに特許文献1において開示された。該文書は敏感な感受性のマイコバクテリウム株に対する置換キノリン誘導体の抗マイコバクテリア性を開示しているが、薬剤耐性、特に多剤耐性マイコバクテリアに対するそれらの活性については沈黙している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2004/011436号パンフレット
【発明の概要】
【0011】
かくして、本発明は、薬剤耐性マイコバクテリウム株に感染した温血動物の処置用の薬剤の製造のための置換キノリン誘導体の使用に関し、ここで置換キノリン誘導体は式(Ia)又は式(Ib)
【0012】
【化1】

【0013】
[式中:
は水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、Ar、Het、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであり;
pは1、2、3又は4に等しい整数であり;
は水素、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキルオキシ、アルキルチオ、モノもしくはジ(アルキル)アミノ又は式
【0014】
【化2】

【0015】
の基であり、ここでYはCH、O、S、NH又はN−アルキルであり;
はアルキル、Ar、Ar−アルキル、Het又はHet−アルキルであり;
qはゼロ、1、2、3又は4に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素、アルキル又はベンジルであるか;あるいは
及びRは一緒になって且つそれらが結合しているNを含んで、場合によりアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル及びピリミジニルで置換されていることができるピロリジニル、2H−ピロリル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成することができ

は水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、Ar、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであるか;あるいは
2個の近接R基は一緒になって式−CH=CH−CH=CH−の2価の基を形成することができ;
rは1、2、3、4又は5に等しい整数であり;そして
は水素、アルキル、Ar又はHetであり;
は水素又はアルキルであり;
はオキソであるか;あるいは
及びRは一緒になって、基=N−CH=CH−を形成し;
アルキルは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であるか;あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であるか;あるいは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基に結合した3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であり;ここで各炭素原子は場合によりハロ、ヒドロキシ、アルキルオキシ又はオキソで置換されていることができ;
Arはフェニル、ナフチル、アセナフチル、テトラヒドロナフチルの群から選ばれる同素環であり、それぞれ場合により1、2もしくは3個の置換基で置換されていることができ、各置換基はヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、カルボキシル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モルホリニル及びモノ−もしくはジアルキルアミノカルボニルの群から独立して選ばれ;
HetはN−フェノキシピペリジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びピリダジニルの群から選ばれる単環式複素環;あるいはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル又はベンゾ[1,3]ジオキソリルの群から選ばれる二環式複素環であり;各単環式及び二環式複素環は場合により炭素原子上でハロ、ヒドロキシ、アルキル又はアルキルオキシの群から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されていることができ;
ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの群から選ばれる置換基であり、そして
ハロアルキルは、1個もしくはそれより多い炭素原子が1個もしくはそれより多いハロ−原子で置換された1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基である]
に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態である。
【0016】
さらに特定的に、本発明は薬剤耐性マイコバクテリウム株による感染の処置用の薬剤の製造のための置換キノリン誘導体の使用に関し、ここで置換キノリン誘導体は式(Ia)又は式(Ib)に従う化合物である。
【0017】
本発明は、薬剤耐性マイコバクテリウム株による感染に苦しむか、又はその危険にある患者の処置方法にも関し、それは本発明に従う化合物又は製薬学的組成物の治療的に有効な量を患者に投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
式(Ia)及び(Ib)に従う化合物は、例えばオキソに等しいRを有する式(Ib)に従う化合物がヒドロキシに等しいRを有する式(Ia)に従う化合物の互変異性的同等物である点で(ケト−エノール互変異性)、相互に関連している。
【0019】
本出願の枠内で、アルキルは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であるか;あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であるか;あるいは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基に結合した3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であり;ここで各炭素原子は場合によりハロ、ヒドロキシ、アルキルオキシ又はオキソで置換されていることができる。好ましくは、アルキルはメチル、エチル又はシクロヘキシルメチルである。
【0020】
本出願の枠内で、Arはフェニル、ナフチル、アセナフチル、テトラヒドロナフチルの群から選ばれる同素環であり、それぞれ場合により1、2もしくは3個の置換基で置換されていることができ、各置換基はヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、カルボキシル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モルホリニル及びモノ−もしくはジアルキルアミノカルボニルの群から独立して選ばれる。好ましくは、Arはナフチル又はフェニルであり、それぞれ場合により1もしくは2個のハロ置換基で置換されていることができる。
【0021】
本出願の枠内で、HetはN−フェノキシピペリジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びピリダジニルの群から選ばれる単環式複素環;あるいはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル又はベンゾ[1,3]ジオキソリルの群から選ばれる二環式複素環であり;各単環式及び二環式複素環は場合により炭素原子上でハロ、ヒドロキシ、アルキル又はアルキルオキシの群から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されていることができる。好ましくは、Hetはチエニルである。
【0022】
本出願の枠内で、ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの群から選ばれる置換基であり、そしてハロアルキルは、1個もしくはそれより多い炭素原子が1個もしくはそれより多いハロ−原子で置換された1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基である。好ましくは、ハロはブロモ、フルオロ又はクロロであり、好ましくは、ハロアルキルはトリフルオロメチルである。アルキルが1個より多いハロ原子で置換されている場合、各ハロ原子は同一であるか又は異なることができる。
【0023】
好ましくは、本発明は式(Ia)又は(Ib)
【0024】
【化3】

【0025】
[式中:
は水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、Ar、Het、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであり;
pは1、2、3又は4に等しい整数であり;
は水素、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキルオキシ、アルキルチオ、モノもしくはジ(アルキル)アミノ又は式
【0026】
【化4】

【0027】
の基であり、ここでYはCH、O、S、NH又はN−アルキルであり;
はアルキル、Ar、Ar−アルキル、Het又はHet−アルキルであり;
qはゼロ、1、2、3又は4に等しい整数であり;
及びRはそれぞれ独立して水素、アルキル又はベンジルであるか;あるいは
及びRは一緒になって且つそれらが結合しているNを含んで、場合によりアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル及びピリミジニルで置換されていることができるピロリジニル、2H−ピロリル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成することができ

は水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、Ar、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであるか;あるいは
2個の近接R基は一緒になって式=C−C=C=C−の2価の基を形成することができ;
rは1、2、3、4又は5に等しい整数であり;そして
は水素、アルキル、Ar又はHetであり;
は水素又はアルキルであり;
はオキソであるか;あるいは
及びRは一緒になって、基=N−CH=CH−を形成し;
アルキルは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であるか;あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であるか;あるいは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基に結合した3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であり;ここで各炭素原子は場合によりハロ、ヒドロキシ、アルキルオキシ又はオキソで置換されていることができ;
Arはフェニル、ナフチル、アセナフチル、テトラヒドロナフチルの群から選ばれる同素環であり、それぞれ場合により1、2もしくは3個の置換基で置換されていることができ、各置換基はヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、カルボキシル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モルホリニル及びモノ−もしくはジアルキルアミノカルボニルの群から独立して選ばれ;
HetはN−フェノキシピペリジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びピリダジニルの群から選ばれる単環式複素環;あるいはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル又はベンゾ[1,3]ジオキソリルの群から選ばれる二環式複素環であり;各単環式及び二環式複素環は場合により炭素原子上でハロ、ヒドロキシ、アルキル又はアルキルオキシの群から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されていることができ;
ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの群から選ばれる置換基であり、そして
ハロアルキルは、1個もしくはそれより多い炭素原子が1個もしくはそれより多いハロ−原子で置換された1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基である]
の化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態の上記で定義された使用に関する。
【0028】
本発明は、
が水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、Ar、Het、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであり;
pが1、2、3又は4に等しい整数であり;
が水素、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキルオキシ、アルキルチオ、モノもしくはジ(アルキル)アミノ又は式
【0029】
【化5】

【0030】
の基であり、ここでYはCH、O、S、NH又はN−アルキルであり;
がアルキル、Ar、Ar−アルキル、Het又はHet−アルキルであり;
qがゼロ、1、2、3又は4に等しい整数であり;
及びRがそれぞれ独立して水素、アルキル又はベンジルであるか;あるいは
及びRが一緒になって且つそれらが結合しているNを含んで、場合によりアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル及びピリミジニルで置換されていることができるピロリジニル、2H−ピロリル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成することができ;
が水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、Ar、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであり;
rが1、2、3、4又は5に等しい整数であり;そして
が水素、アルキル、Ar又はHetであり;
が水素又はアルキルであり;
がオキソであるか;あるいは
及びRが一緒になって、基=N−CH=CH−を形成し;
アルキルが1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であるか;あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であるか;あるいは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基に結合した3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であり;ここで各炭素原子は場合によりハロ、ヒドロキシ、アルキルオキシ又はオキソで置換されていることができ;
Arがフェニル、ナフチル、アセナフチル、テトラヒドロナフチルの群から選ばれる同素環であり、それぞれ場合により1、2もしくは3個の置換基で置換されていることができ、各置換基はヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、カルボキシル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モルホリニル及びモノ−もしくはジアルキルアミノカルボニルの群から独立して選ばれ;
HetがN−フェノキシピペリジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びピリダジニルの群から選ばれる単環式複素環;あるいはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル又はベンゾ[1,3]ジオキソリルの群から選ばれる二環式複素環であり;各単環式及び二環式複素環は場合により炭素原子上でハロ、ヒドロキシ、アルキル又はアルキルオキシの群から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されていることができ;
ハロがフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの群から選ばれる置換基であり、そして
ハロアルキルが、1個もしくはそれより多い炭素原子が1個もしくはそれより多いハロ−原子で置換された1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基である
式(Ia)又は(Ib)の化合物の前記で定義された使用にも関する。
【0031】
本発明は、
が水素、ハロ、シアノ、Ar、Het、アルキル及びアルキルオキシであり;
pがゼロ、1、2、3又は4に等しい整数であり;
が水素、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキルオキシ、アルキルチオ又は式
【0032】
【化6】

【0033】
の基であり、ここでYはOであり;
がアルキル、Ar、Ar−アルキル又はHetであり;
qがゼロ、1、2又は3に等しい整数であり;
及びRがそれぞれ独立して水素、アルキル又はベンジルであるか;あるいは
及びRが一緒になって且つそれらが結合しているNを含んで、場合によりアルキル及びピリミジニルで置換されていることができるピロリジニル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成することができ;
が水素、ハロ又はアルキルであるか;あるいは
2個の近接R基が一緒になって式−CH=CH−CH=CH−の2価の基を形成することができ;
rが1に等しい整数であり;そして
が水素であり;
が水素又はアルキルであり;
がオキソであるか;あるいは
及びRが一緒になって、基=N−CH=CH−を形成し;
アルキルが1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であるか;あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であるか;あるいは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基に結合した3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であり;ここで各炭素原子は場合によりハロ又はヒドロキシで置換されていることができ;
Arがフェニル、ナフチル、アセナフチル、テトラヒドロナフチルの群から選ばれる同素環であり、それぞれ場合により1、2もしくは3個の置換基で置換されていることができ、各置換基はハロ、ハロアルキル、シアノ、アルキルオキシ及びモルホリニルの群から独立して選ばれ;
HetがN−フェノキシピペリジニル、フラニル、チエニル、ピリジニル、ピリミジニルの群から選ばれる単環式複素環;あるいはベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル又はベンゾ[1,3]ジオキソリルの群から選ばれる二環式複素環であり;各単環式及び二環式複素環は場合により炭素原子上で1、2もしくは3個のアルキル置換基で置換されていることができ;
ハロがフルオロ、クロロ及びブロモの群から選ばれる置換基である
式(Ia)又は(Ib)の化合物の前記で定義された使用にも関する。
【0034】
式(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物の場合、好ましくは、Rは水素、ハロ、Ar、アルキル又はアルキルオキシである。より好ましくは、Rはハロである。最
も好ましくは、Rはブロモである。
【0035】
好ましくは、pは1に等しい。
【0036】
好ましくは、Rは水素、アルキルオキシ又はアルキルチオである。より好ましくは、Rはアルキルオキシ、特にC1−4アルキルオキシである。最も好ましくは、Rはメチルオキシである。
【0037】
1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、2−メチル−エチルなどである。
【0038】
好ましくは、Rはナフチル、フェニル又はチエニルであり、それぞれ場合により1もしくは2個の置換基で置換されていることができ、その置換基は、好ましくはハロ又はハロアルキルであり、最も好ましくはハロである。より好ましくは、Rはナフチル又はフェニルであり、それぞれ場合によりハロ、好ましくは3−フルオロで置換されていることができる。さらにもっと好ましくは、Rはナフチル又はフェニルである。最も好ましくは、Rはナフチルである。
【0039】
好ましくは、qはゼロ、1又は2に等しい。より好ましくは、qは1に等しい。
【0040】
好ましくは、R及びRはそれぞれ独立して水素又はアルキル、特に水素又はC1−4アルキル、さらに特定的にC1−4アルキル、より好ましくは水素、メチル又はエチル、最も好ましくはメチルである。
【0041】
1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、2−メチル−エチルなどである。
【0042】
好ましくは、R及びRは一緒になって、且つそれらが結合しているNを含んで、場合によりアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル又はアルキルチオアルキルで置換されていることができる、好ましくはアルキルで置換されていることができる、最も好ましくはメチルまたはエチルで置換されていることができるイミダゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成する。
【0043】
好ましくは、Rは水素、アルキル又はハロである。最も好ましくは、Rは水素である。好ましくは、rは0、1又は2である。
【0044】
好ましくは、Rは水素又はメチル、より好ましくは水素である。
【0045】
式(Ib)に従う化合物のみに関し、好ましくは、Rはアルキル、好ましくはメチルであり、Rは酸素である。
【0046】
興味深い群の化合物は、式(Ia)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態である。
【0047】
興味深い群の化合物は、Rが水素、ハロ、Ar、アルキル又はアルキルオキシであり、p=1であり、Rが水素、アルキルオキシ又はアルキルチオであり、Rがナフチル、フェニル又はチエニルであり、それぞれ場合によりハロ及びハロアルキルの群から選ばれる1もしくは2個の置換基で置換されていることができ、q=0、1、2又は3であり
、R及びRがそれぞれ独立して水素又はアルキルであるか、あるいはR及びRが一緒になって、且つそれらが結合しているNを含んで、イミダゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピペラジニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成し、Rが水素、アルキル又はハロであり、rが0又は1に等しく、Rが水素である式(Ia)に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態である。
【0048】
好ましくは、化合物は:
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−2−(3,5−ジフルオロ−フェニル)−4−ジメチルアミノ−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールに相当する1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−ナフタレン−1−イル−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−2−(2,5−ジフルオロ−フェニル)−4−ジメチルアミノ−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−2−(2,3−ジフルオロ−フェニル)−4−ジメチルアミノ−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−(2−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−ナフタレン−1−イル−1−p−トリル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−メチルアミノ−2−ナフタレン−1−イル−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−(3−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−ブタン−2−オール;及び
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−フェニル−1−フェニル−ブタン−2−オール;
その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態である。
【0049】
さらにもっと好ましくは、化合物は
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−(3−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−フェニル−1−フェニル−ブタン−2−オール;
○6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールに相当する1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−ナフタレン−1−イル−1−フェニル−ブタン−2−オール;
その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態である。
【0050】
1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−ナフタレン−1−イル−1−フェニル−ブタン−2−オールに関する別の化学名は6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールである。該化合物を以下の通りに示すこともできる:
【0051】
【化7】

【0052】
最も好ましくは、化合物は以下の1つである:
6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態;あるいは
6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩;あるいは
6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその立体化学的異性体;あるいは
6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はそのN−オキシド形態;あるいは
(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール、すなわち化合物12又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩;あるいは
(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール、すなわち化合物12。
【0053】
かくして最も好ましくは、化合物は(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールであり、それは(1R,2S)−1−(6−ブロモ−2−メトキシ−キノリン−3−イル)−4−ジメチルアミノ−2−ナフタレン−1−イル−1−フェニル−ブタン−2−オールに相当する。該化合物を以下の通りに示すこともできる:
【0054】
【化8】

【0055】
製薬学的に許容され得る酸付加塩は、式(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物が形成することができる治療的に活性な無毒性の酸付加塩の形態を含むと定義される。式
(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物の塩基の形態を、適した酸、例えば無機酸、例えばハロゲン化水素酸、特に塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸;有機酸、例えば酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロパン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸及びパモ酸を用いて処理することにより、該酸付加塩を得ることができる。
【0056】
酸性プロトンを含有する式(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物を、適した有機及び無機塩基を用いる処理により、それらの治療的に活性な無毒性の塩基付加塩の形態に転換することもできる。適した塩基塩の形態は、例えばアンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、特にリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム塩、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒドラバミン塩ならびにアミノ酸、例えばアルギニン及びリシンとの塩を含む。
【0057】
逆に、適した塩基又は酸を用いる処理により、該酸もしくは塩基付加塩の形態を遊離の形態に転換することができる。
【0058】
本出願の枠内で用いられる付加塩という用語は、式(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物ならびにそれらの塩が形成することができる溶媒和物も含む。そのような溶媒和物は、例えば水和物及びアルコラートである。
【0059】
本明細書で用いられる「立体化学的異性体」という用語は、式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物が有することができるすべての可能な異性体を定義する。他にことわるか、又は示さなければ、化合物の化学的名称はすべての可能な立体化学的異性体の混合物を示し、該混合物は、基となる分子構造のすべてのジアステレオマー及びエナンチオマーを含有する。さらに特定的に、ステレオジェン中心はR−又はS−立体配置を有することができ;2価の環状(部分的)飽和基上の置換基はシス−又はトランス−立体配置を有することができる。式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物の立体化学的異性体は、明らかに本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
CAS命名法協定に従うと、1個の分子中に2個の既知の絶対立体配置のステレオジェン中心が存在する場合、最低の番号が付けられるキラル中心、参照中心にR又はSの記述字(descriptor)が指定される(Cahn−Ingold−Prelog順位則に基づいて)。第2のステレオジェン中心の立体配置は相対的記述字[R,R]又は[R,S]を用いて示され、ここでRは常に参照中心として規定され、[R,R]は同じキラリティーを有する中心を示し、[R,S]は同じでないキラリティーの中心を示す。例えば分子中の最低の番号が付けられるキラル中心がS立体配置を有し、第2の中心がRである場合、立体記述字はS−[R,S]と規定される。「α」及び「β」が用いられる場合:最低の環番号を有する環系中の不斉炭素原子上の最高優先置換基の位置は、随意に常に環系により決定される平均平面の「α」位にある。環系中の他の不斉炭素原子上の最高優先置換基の、参照原子上の最高優先置換基の位置に対する位置は、それが環系により決定される平均平面の同じ側上にある場合には「α」、あるいはそれが環系により決定される平均平面の他の側上にある場合には「β」と呼ばれる。
【0060】
式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物ならびに中間化合物のいくつかは、必ずそれらの構造中に少なくとも2個のステレオジェン中心を有し、それは少なくとも4個の立体化学的に異なる構造に導き得る。
【0061】
式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物の互変異性体は、例えばエノール基がケト基に転換される式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物を含むものとする(ケト−エ
ノール互変異性)。
【0062】
式(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物のN−オキシド形態は、1個もしくは数個の第3級窒素原子がいわゆるN−オキシドに酸化されている式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物を含むものとする。
【0063】
下記に記載する方法で製造される式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物は、エナンチオマーのラセミ混合物の形態で合成され得、それは当該技術分野において既知の分割法に従って互いから分離されることができる。式(Ia)及び(Ib)のいずれかのラセミ化合物を、適したキラル酸との反応により対応するジアステレオマー塩の形態に転換することができる。該ジアステレオマー塩の形態を、続いて例えば選択的又は分別結晶化により分離し、アルカリによりそこからエナンチオマーを遊離させる。式(Ia)及び(Ib)のいずれかの化合物のエナンチオマーの形態を分離する別の方法は、キラル固定相を用いる液体クロマトグラフィーを含む。該純粋な立体化学的異性体を、適した出発材料の対応する純粋な立体化学的異性体から誘導することもでき、但し、反応は立体特異的に起こる。好ましくは、特定の立体異性体が望まれる場合、該化合物は立体特異的製造方法により合成されるであろう。これらの方法は有利にはエナンチオマー的に純粋な出発材料を用いるであろう。
【0064】
本発明は、本発明に従う薬理学的に活性な化合物の誘導化合物(通常「プロ−ドラッグ」と呼ばれる)も含み、それらは生体内で分解して本発明に従う化合物を与える。プロ−ドラッグは通常(しかし必ずではなく)、標的受容体において、それらが分解して与える化合物より低い力価のものである。プロ−ドラッグは、所望の化合物がその投与を困難にするか、又は無効にする化学的もしくは物理的性質を有する場合に特に有用である。例えば所望の化合物はわずかにしか可溶性でないかもしれず、それはあまり粘膜上皮を横切って輸送されないかもしれず、あるいはそれは望ましくない短い血漿半減期を有するかもしれない。プロ−ドラッグについてのさらなる議論は、Stella,V.J.et al.著,“Prodrugs”,Drug Delivery Systems,1985年,pp.112−176及びDrugs,29,1985年,pp.455−473に見出すことができる。
【0065】
本発明に従う薬理学的に活性な化合物のプロ−ドラッグ形態は一般に、エステル化又はアミド化された酸基を有する式(Ia)及び(Ib)のいずれかに従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体及びそのN−オキシド形態であろう。そのようなエステル化された酸基に含まれるのは式−COORの基であり、ここでRはC1−6アルキル、フェニル、ベンジル又は以下の基:
【0066】
【化9】

【0067】
の1つである。アミド化された基には式−CONRの基が含まれ、ここでRはH、C1−6アルキル、フェニル又はベンジルであり、Rは−OH、H、C1−6アルキル、フェニル又はベンジルである。
【0068】
アミノ基を有する本発明に従う化合物をケトン又はアルデヒド、例えばホルムアルデヒドを用いて誘導体化し、マンニッヒ塩基(Mannich base)を形成することができる。この塩基は水溶液中で一次速度論を以って加水分解されるであろう。
【0069】
本発明の興味深い態様は、上記で定義された薬剤耐性マイコバクテリウム株による感染の処置用の薬剤の製造のための式(Ia)又は式(Ib)に従う置換キノリン誘導体、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールの使用であり、ここで薬剤耐性マイコバクテリウム株は薬剤耐性M.チュベルクロシス株である。
【0070】
本発明のさらに興味深い態様は、薬剤耐性マイコバクテリウム株、特に薬剤耐性M.チュベルクロシス株に感染した人間の処置用の薬剤の製造のための式(Ia)又は式(Ib)に従う置換キノリン誘導体、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールの使用である。
【0071】
本発明のさらにもっと興味深い態様は、多剤耐性マイコバクテリウム株、特に多剤耐性M.チュベルクロシス株の感染の処置用の薬剤の製造のため、特に多剤耐性マイコバクテリウム株、特に多剤耐性M.チュベルクロシス株に感染した人間を含む哺乳類の処置用の薬剤の製造のための式(Ia)又は式(Ib)に従う置換キノリン誘導体、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールの使用である。
【0072】
すでに上記で記載した通り、多剤耐性を含む薬剤耐性マイコバクテリア性疾患の処置のために式(Ia)及び(Ib)の化合物を用いることができる。正確な用量及び投与の頻度は、当該技術分野における熟練者に周知の通り、用いられる特定の式(Ia)又は(Ib)の化合物、処置されている特定の状態、処置されている状態の重度、特定の患者の年令、体重及び一般的身体条件ならびに患者が受けてい得る他の投薬に依存する。さらに、処置される患者の反応に依存して及び/又は本発明の化合物を処方する医師の評価に依存して、該有効な1日の量を少なくするか又は多くすることができることは明らかである。
【0073】
式(Ia)及び(Ib)の化合物が多剤耐性を含む薬剤耐性マイコバクテリウム株に対して活性であるという事実を与えられ、マイコバクテリア性疾患を有効に防除するために、本化合物を他の抗マイコバクテリア薬と組み合わせることができる。
【0074】
従って本発明は、(a)式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又は製薬学的に許容され得るその酸付加塩及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組合せにも関する。
【0075】
本発明は、薬剤として用いるための(a)式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又は製薬学的に許容され得るその酸付加塩及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組合せにも関する。
【0076】
製薬学的に許容され得る担体ならびに活性成分として(a)式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又は製薬学的に許容され得るその酸付加塩及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテ
リア薬の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物も本発明に含まれる。
【0077】
本発明は、薬剤耐性マイコバクテリウム株、特に薬剤耐性M チュベルクロシス株による感染の処置のための上記で定義された組み合わせ又は製薬学的組成物の使用にも関する。上記で定義された組み合わせ又は製薬学的組成物を、感受性マイコバクテリア株、特に感受性M.チュベルクロシスによる感染の処置のために用いることもできる。
【0078】
上記で定義された組み合わせ又は製薬学的組成物において、式(Ia)又は(Ib)の化合物は、好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0079】
式(Ia)又は(Ib)の化合物と組み合わせることができる他のマイコバクテリア薬は、例えばリファムピシン(=リファムピン);イソニアジド;ピラジンアミド;アミカシン;エチオナミド;モキシフロキサシン(moxifloxacin);エタムブトール;ストレプトマイシン;パラ−アミノサリチル酸;サイクロセリン;カプレオマイシン;カナマイシン;チオアセタゾン(thioacetazone);PA−824;キノロン類/フルオロキノロン類、例えばオフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxacin);スパルフロキサシン(sparfloxacin);マクロライド類、例えばクラリトロマイシン(clarithromycin)、クロファジミン(clofazimine)、クラブラン酸と一緒のアモキシシリン(amoxycillin);リファマイシン(rifamycins);リファブチン(rifabutin);リファペンチン(rifapentine)である。
【0080】
好ましくは、本式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールをリファペンチン及びモキシフロキサシンと組み合わせる。
【0081】
本発明に従う他の興味深い組み合わせは、(a)式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組み合わせであり、ここで該1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬はピラジンアミドを含む。かくして本発明は、式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩ならびにピラジンアミド及び場合により1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組合せにも関する。そのような組み合わせの例は、(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩及びピラジンアミドの組み合わせ;(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩、ピラジンアミド及びリファペンチンの組み合わせ;(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩、ピラジンアミド及びイソニアジドの組み合わせ;(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩、ピラジンアミド及びモキシフロキサシンの組み合わせ;(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩、ピ
ラジンアミド及びリファムピンの組み合わせである。式(Ia)又は(Ib)の化合物、特に(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩及びピラジンアミドは相乗的に作用することが見出された。
【0082】
やはり興味深い組み合わせは、表11及び12に記載されるような式(Ia)又は(Ib)の化合物を含んでなる組み合わせである。
【0083】
製薬学的に許容され得る担体及び活性成分として上記の組み合わせ中に挙げられる活性成分の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物も本発明に含まれる。
【0084】
本製薬学的組成物は、投与目的のために種々の製薬学的形態を有することができる。適した組成物として、全身的に薬剤を投与するために通常用いられるすべての組成物を挙げることができる。本発明の製薬学的組成物の調製のために、場合により付加塩の形態にあることができる特定の化合物の活性成分として有効な量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせ、その担体は、投与のために望ましい調製物の形態に依存して多様な形態をとることができる。望ましくはこれらの製薬学的組成物は、特に経口的又は非経口的注入による投与に適した単位投薬形態にある。例えば経口的投薬形態における組成物の調製において、通常の製薬学的媒体のいずれか、例えば懸濁剤、シロップ、エリキサー、乳剤及び溶液のような経口用液体調製物の場合、水、グリコール、油、アルコールなど;あるいは粉剤、丸薬、カプセル及び錠剤の場合、澱粉、糖類、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などのような固体担体を用いることができる。それらの投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口的投薬単位形態物を与え、その場合には固体の製薬学的担体が用いられるのは明らかである。非経口用組成物の場合、担体は通常少なくとも大部分において無菌水を含むであろうが、例えば溶解性を助けるための他の成分が含まれることができる。例えば担体が食塩水、グルコース溶液又は食塩水とグルコース溶液の混合物を含む注入可能な溶液を調製することができる。注入可能な懸濁剤も調製することができ、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。使用の直前に液体形態の調製物に転換されることが意図されている固体形態の調製物も含まれる。
【0085】
投与の様式に依存して、製薬学的組成物は、好ましくは0.05〜99重量%、より好ましくは0.1〜70重量%の活性成分及び1〜99.95重量%、より好ましくは30〜99.9重量%の製薬学的に許容され得る担体を含み、すべてのパーセンテージは合計組成物に基づく。
【0086】
組み合わせとして与えられる場合の式(Ia)又は(Ib)の化合物対(b)他の抗マイコバクテリア薬の重量対重量比は、当該技術分野における熟練者が決定することができる。該比及び正確な用量及び投与の頻度は、当該技術分野における熟練者に周知の通り、用いられる特定の式(Ia)又は(Ib)の化合物及び他の抗マイコバクテリア薬、処置されている特定の状態、処置されている状態の重度、特定の患者の年令、体重及び一般的身体条件ならびに患者が受けてい得る他の投薬に依存する。さらに、処置される患者の反応に依存して及び/又は本発明の化合物を処方する医師の評価に依存して、該有効な1日の量を少なくするか又は多くすることができることは明らかである。
【0087】
式(Ia)又は(Ib)の化合物及び1種もしくはそれより多い他の抗マイクバクテリア薬を単一の調製物において組み合わせることができるか、あるいはそれらを個別の調製物において調製し、それらを同時に、個別に又は逐次的に投与することができる。かくして本発明は、マイクバクテリア性疾患の処置における同時、個別又は逐次的使用のための組み合わせ調製物としての(a)式(Ia)又は(Ib)の化合物及び(b)1種もしく
はそれより多い他の抗マイクバクテリア薬を含有する製品にも関する。
【0088】
製薬学的組成物はさらに、当該技術分野において既知の種々の他の成分、例えば滑沢剤、安定剤、緩衝剤、乳化剤、粘度−調整剤、界面活性剤、防腐剤、風味料又は着色剤を含有することができる。
【0089】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、前記の製薬学的組成物を投薬単位形態物において調製するのが特に有利である。本明細書で用いられる投薬単位形態物は、1回の投薬量として適した物理的に分離された単位を指し、各単位は所望の治療効果を生むために計算されたあらかじめ決められた量の活性成分を、必要な製薬学的担体と一緒に含有する。そのような単位投薬形態物の例は錠剤(刻み付き又はコーティング錠を含む)、カプセル、丸薬、粉剤小包、ウェハース、座薬、注入可能な溶液又は懸濁剤などならびに分離されたそれらの複数である。本発明に従う化合物の毎日の投薬量は、もちろん用いられる化合物、投与の様式、所望の処置及び指示されるマイコバクテリア性疾患とともに変るであろう。しかしながら一般に、本発明に従う化合物を体重のkg当たり1グラムを超えない、例えば10〜50mgの範囲内の毎日の投薬量で投与すると、満足できる結果を得られるであろう。
【0090】
式(Ia)及び(Ib)の化合物ならびにそれらの製造は、国際公開第2004/011436号パンフレットに記載されており、その記載事項は引用することにより本明細書の内容となる。
【0091】
いくつかの化合物の、その中にあるステレオジェン炭素原子の絶対立体化学的配置は実験的に決定されなかった。そのような場合、最初に単離された立体化学的異性体を「A」と称し、第2のものを「B」と称し、実際の立体化学的配置へのそれ以上の言及をしない。しかしながら、当該技術分野における熟練者は当該技術分野において既知の方法、例えばX−線回折を用いて該「A」及び「B」異性体を明確に特性化することができる。
【0092】
「A」及び「B」が立体異性体混合物である場合、それらをさらに分離し、それによりそれぞれの単離される第1の画分を「A1」及び「B1」と称し、第2のものを「A2」及び「B2」と称し、実際の立体化学的配置へのそれ以上の言及をしない。
【0093】
以下の表は式(Ia)及び(Ib)の化合物を挙げており、それらはすべて国際公開第2004/011436号パンフレットに記載されている方法に従って製造することができる。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【0098】
【表5】

【0099】
【表6】

【0100】
【表7】

【0101】
【表8】

【0102】
【表9】

【0103】
【表10】

【0104】
【表11】

【0105】
【表12】

【実施例】
【0106】
薬理学的実施例
耐性マイコバクテリア株に対して化合物を試験するための試験管内法
固体培地中における最小阻止濃度(MIC:MICは、抗生物質なしの標準培地上におけるバクテリア成長の99%より多くを阻止する最低の薬剤濃度である)の決定により、試験管内活性を評価した。
【0107】
試験管内試験のために、以下の培地を用いた:10%オレイン酸アルブミンデキストロースカタラーゼ(OADC)−濃厚7H11培地。
【0108】
接種材料として:マイコバクテリア種に依存して3〜14日令の10%OADC−濃厚7H9ブロス培養物の2種類の適切な希釈液(最終的な接種材料=約10及び10
fu(コロニー形成単位))を用いた。
【0109】
マイコバクテリア種に依存して30℃又は37℃で3〜42日間、インキュベーションを行なった。
【0110】
表7及び8は、耐性マイコバクテリウム株の種々の臨床的単離物に対するMICs(mg/L)を挙げている。表9及び10は、フルオロキノロン類に対して耐性のマイコバクテリウム株の種々の臨床的単離物に対するMICs(mg/L)を挙げている。表中にリファムピン及びオフロキサシンも参照として含まれる。
【0111】
【表13】

【0112】
【表14】

【0113】
【表15】

【0114】
【表16】

【0115】
これらの結果から、本化合物は薬剤耐性マイコバクテリウム株に対して高度に活性であると結論することができる。抗結核薬:イソニアジド、リファムピン、ストレプトマイシン、エタムブトール及びピラジンアミドとの交差耐性の証拠はない。同じように、フルオロキノロンとの交差耐性の証拠はない。
【0116】
化合物12を2種の多剤耐性M.チュベルクロシス株、すなわちイソニアジド10mg/L及びリファムピンに耐性の株ならびにイソニアジド0.2mg/L及びリファムピンに耐性の株に対しても試験した。両方の株に対して得られる化合物12に関するMICは
0.03mg/Lである。
【0117】
M.チュベルクロシス感染マウスに対して組み合わせを試験するための生体内法
4週令の雌のSwissマウスを5x10CFUのM.チュベルクロシスH37Rv株に静脈内的に感染させた。感染に続くD1及びD14に、10匹のマウスを犠牲にして接種後及び処置の開始時の脾臓重量ならびに脾臓及び肺中のCFUカウントのベースライン値を決定した。残るマウスを以下の処置群に割り当てた:生存監視のための未処置標準群、毎日イソニアジド25mg/kg、リファムピン10mg/kg、ピラジンアミド150mg/kgで2ヶ月間処置される感受性結核のための管理を有する一方と毎日アミカシン150mg/kg、エチオナミド50mg/kg、モキシフロキサシン100mg/kg及びピラジンアミド150mg/kgで2ヶ月間処置される多剤耐性結核のための管理を有する他方の2つの正の標準群。3つの負の標準群は以下の薬剤、毎日のリファムピン10mg/kg、毎日のモキシフロキサシン100mg/kg及び毎日の化合物12 25mg/kgの1つで2ヶ月間処置された。感受性結核又はMDR結核に関して調べられたすべての管理を表11にまとめる。すべての群は10匹のマウスを含有し、D14からD70まで8週間、週に5日間処置された。感染の重度及び処置の有効性の評価のために用いられるパラメーターは:生存率、脾臓重量、肉眼的肺病変ならびに脾臓中及び肺中のCFUカウントであった。
生存率:未処置マウスは感染から後の21日までに死亡し始め、すべてのマウスが感染の28日までに死亡した。すべての処置はマウスの死亡を妨げることができ、数匹のマウスは強制栄養(gavage)の事故の故に死亡した。
【0118】
【表17】

【0119】
以下の表は2ヶ月間の実験の結果を示す。
【0120】
【表18】

【0121】
固体培地アッセイにおける完全に感受性及び多剤耐性M.チュベルクロシス株の化合物12への感受性の試験管内試験
73種のM.チュベルクロシス株の化合物12に対する感受性を固体培地アッセイ(寒天プレート)において調べた。株のパネルは、標準的な抗−結核薬に完全に感受性の株(41種)ならびに多剤耐性(MDR)株(32種)、すなわち少なくともリファムピン及びイソニアジドに対して耐性の株を含んだ。
【0122】
0.002mg/L〜0.256mg/Lの範囲の濃度で化合物12を含有する溶液と寒天プレートを密着させた(8種の濃度を調べた)。次いでM.チュベルクロシス単離物を各寒天プレート上にプレート化し(plated)、プレートを密封し、36℃で3週間インキュベーションした。
【0123】
単離物の成長をプレートの接種に続く3週間分析し、単離物のMICを成長が観察され
ない最初の濃度として定義した。
【0124】
調べられたすべての株の場合に、0.064mg/Lより高い濃度では成長が見られず、株の大部分は0.032mg/LのMICを示した。
【0125】
完全に感受性及びMDR M.チュベルクロシス株の間でMICにおける差は見られなかった。
【0126】
他の抗マイコバクテリア薬と組み合わされた化合物12へのM チュベルクロシスの感受性の生体内試験
Swissマウスに10対数コロニー形成単位(log colony forming units)(CFU)の株H37Rvを静脈内的に接種した。化合物12(J)を、接種から後の14日から70日まで5日/週(1日1回処置群)又は週に1回、モノテラピー(monotherapy)において、あるいはイソニアジド(H)、リファムピン(R)、ピラジンアミド(Z)又はモキシフロキサシン(M)と一緒に、強制栄養により投与した。処置から1又は2ヶ月後に肺CFUを決定した。結果を表13及び14に集める。
【0127】
【表19】

【0128】
【表20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(Ia)又は式(Ib)
【化1】

[式中:
1は水素、ハロ、ハロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、Ar、Het、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであり;
pは1、2、3又は4に等しい整数であり;
2は水素、ヒドロキシ、メルカプト、アルキルオキシ、アルキルオキシアルキルオキシ、アルキルチオ、モノもしくはジ(アルキル)アミノ又は式
【化2】

の基であり、ここでYはCH2、O、S、NH又はN−アルキルであり;
3はアルキル、Ar、Ar−アルキル、Het又はHet−アルキルであり;
qはゼロ、1、2、3又は4に等しい整数であり;
4及びR5はそれぞれ独立して水素、アルキル又はベンジルであるか;あるいは
4及びR5は一緒になって且つそれらが結合しているNを含んで、場合によりアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル及びピリミジニルで置換されていることができるピロリジニル、2H−ピロリル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルの群から選ばれる基を形成することができ;
6は水素、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、Ar、アルキル、アルキルオキシ、アルキルチオ、アルキルオキシアルキル、アルキルチオアルキル、Ar−アルキル又はジ(Ar)アルキルであるか;あるいは
2個の近接R6基は一緒になって式−CH=CH−CH=CH−の2価の基を形成する
ことができ;
rは1、2、3、4又は5に等しい整数であり;そして
7は水素、アルキル、Ar又はHetであり;
8は水素又はアルキルであり;
9はオキソであるか;あるいは
8及びR9は一緒になって基=N−CH=CH−を形成し;
アルキルは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基であるか;あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であるか;あるいは1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基に結合した3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基であり;ここで各炭素原子は場合によりハロ、ヒドロキシ、アルキルオキシ又はオキソで置換されていることができ;
Arはフェニル、ナフチル、アセナフチル、テトラヒドロナフチルの群から選ばれる同素環であり、それぞれ場合により1、2もしくは3個の置換基で置換されていることができ、各置換基はヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−もしくはジアルキルアミノ、アルキル、ハロアルキル、アルキルオキシ、ハロアルキルオキシ、カルボキシル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、モルホリニル及びモノ−もしくはジアルキルアミノカルボニルの群から独立して選ばれ;
HetはN−フェノキシピペリジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びピリダジニルの群から選ばれる単環式複素環;あるいはキノリニル、キノキサリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル又はベンゾ[1,3]ジオキソリルの群から選ばれる二環式複素環であり;各単環式及び二環式複素環は場合により炭素原子上でハロ、ヒドロキシ、アルキル又はアルキルオキシの群から選ばれる1、2又は3個の置換基で置換されていることができ;
ハロはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの群から選ばれる置換基であり、そして
ハロアルキルは1個もしくはそれより多い炭素原子が1個もしくはそれより多いハロ−原子で置換された1〜6個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素基あるいは3〜6個の炭素原子を有する環状飽和炭化水素基である]
に従う化合物、その製薬学的に許容され得る酸もしくは塩基付加塩、その立体化学的異性体、その互変異性体又はそのN−オキシド形態及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組み合わせ製品。
【請求項2】
(a)請求項1に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の組み合わせを含んでなる薬剤。
【請求項3】
製薬学的に許容され得る担体ならびに活性成分として(a)請求項1に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項4】
マイコバクテリア性疾患の処置における同時、個別又は逐次的使用のための組み合わせ調製物として、(a)請求項1に記載の式(Ia)又は(Ib)の化合物及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬を含有する製品。
【請求項5】
1種もしくはそれより多い他の抗マイコバクテリア薬がリファムピシン(=リファムピ
ン);イソニアジド;ピラジンアミド;アミカシン;エチオナミド;モキシフロキサシン(moxifloxacin);エタムブトール;ストレプトマイシン;パラ−アミノサリチル酸;サイクロセリン;カプレオマイシン;カナマイシン;チオアセタゾン(thioacetazone);PA−824;キノロン類/フルオロキノロン類;マクロライド類;リファマイシン(rifamycins);リファブチン(rifabutin);リファペンチン(rifapentine)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組み合わせ製品、薬剤、製薬学的組成物又は製品。
【請求項6】
式(Ia)又は(Ib)の化合物が(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノール又はその製薬学的に許容され得る酸付加塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組み合わせ製品、薬剤、製薬学的組成物又は製品。
【請求項7】
式(Ia)又は(Ib)の化合物が(αS,βR)−6−ブロモ−α−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−2−メトキシ−α−1−ナフタレニル−β−フェニル−3−キノリンエタノールである請求項1〜6のいずれか1項に記載の組み合わせ製品、薬剤、製薬学的組成物又は製品。
【請求項8】
薬剤耐性マイコバクテリウム株による感染の処置用の薬剤の製造のための請求項1〜7のいずれか1項に記載の組み合わせ製品、薬剤、製薬学的組成物又は製品の使用。
【請求項9】
薬剤耐性マイコバクテリウム株が薬剤耐性マイコバクテリウム・チュベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)株である請求項8に従う使用。

【公開番号】特開2012−229239(P2012−229239A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152373(P2012−152373)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【分割の表示】特願2007−513922(P2007−513922)の分割
【原出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】