説明

薬剤製品のための抽出プロセス

海洋無脊椎動物から可溶天然コラーゲンを単離する一つのプロセスであって、以下のステップ、1)天然コラーゲン原線維を可溶化するために、海洋無脊椎動物のコラーゲン含有部分を弱酸液で処理し、2)組織微粒子を除去するために生成スラリーを遠心分離し、3)塩基の追加でコラーゲンを沈殿させるために上澄のpHを調節し、4)沈殿コラーゲンを収集し、5)沈殿コラーゲンを再懸濁し、また、6)限外濾過膜を使用して水に対する緩衝液交換を実施する、ことより成るプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋無脊椎動物から抽出を通じて天然コラーゲンを得るプロセスに関する。可溶天然コラーゲンが得られるが、それは現在ウシ海綿状脳症(BSE)すなわち狂牛病に対する懸念に帰因して陸上動物コラーゲンの代替製品として薬剤用途にとりわけ適しているが、陸上動物コラーゲンに代替し、同じく加熱によりゼラチンに転化される他の用途にも向けられる。
【背景技術】
【0002】
BSEは、家畜用飼料濃縮物で感染する牛肉と骨粉から由来するものと見做される家畜の極めて重い疾病である。BSEは、家畜で媒介され、最初は英国で1986年に確認された。それが致死的であることは避けられない事実である。その治療法は存在せず、またその検出も困難である。最近の研究では、感染牛を食した人は、家畜病のヒト等価物であるクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)を進行させたことが示されている。英国において少なくとも10人の患者が、牛肉を食することで狂牛病にかかったものと考えられている。CJDを進行させた人は年齢が50歳と70歳の間にある。
【0003】
今日では、家畜群を保護するために、英国やヨーロッパにおいては家畜の間引きがもっとも重要である。にも拘らず、ヒトおよび動物用飼料消費のための牛肉および乳製品の将来の供給、薬剤、医療および化粧品産業で使用される重要なウシ副産物の供給などに対し、BSEは重大な脅威を与える。現在、日本、英国およびヨーロッパその他の国の薬物製造業者は、薬剤、医薬品および化粧品の製造で、ヒトへの「狂牛」病の蔓延を防ぐために、英国産ウシおよびウシ製品の使用を停止している。英国牛の産物を含む医薬および化粧品の輸入も停止した。
【0004】
もっとも広範に使用されるウシ製品は、コラーゲンである。コラーゲンは線維性タンパク質であり、それは哺乳類の結合組織、とりわけ皮膚、腱骨および筋肉にある大抵の白筋線維を含む。数多くの異なる脊椎動物コラーゲンが確認されており、これまでには19グループまでのものが脊椎動物で確認され(プロコップおよびキフィリッコ,1995年)、この中でもI型、II型およびIII型がもっとも広範に分布する型を表している。コラーゲンは、哺乳類で全有機物の約30%を含み、またタンパク質含有量の約60%近くを含んでいる。コラーゲンは急速な成長期に急速に沈着し、その合成割合は年齢と共に、とりわけ作り直しを殆んどしない皮膚で低下する。
【0005】
コラーゲン分子は、立体配座でヘリックス(らせん)である3個のペプチド鎖から構築される。このヘリックスは、鎖あたり1014残基まで伸長する(ホッフマン他,1980年)。三重らせんドメインの末端では、短い非ヘリックス鎖、すなわち非反復配列を持ち、9乃至25残基に広がるテロペプチドが、各鎖の両端から三重らせんを越えて伸長する(ホッフマン他,1980年)。天然コラーゲンのテロペプチド部分は、その免疫原性の主要部位であると考えられ、原線維形成に指向するのに重要な役割を果たしたことを示してきた(ヘルセスおよびヴァイス,1981年)。分子のヘリックスの長さ、および非らせん部分の物性と大きさは型から型へと変化する。コラーゲン分子の三重らせん構造が熱で破壊される場合には、ポリペプチドの性質は同じ化学的組成物を有しているにも拘らず、完全に変化する。
【0006】
皮膚においては、コラーゲンは線維束を構成する網状構造に織り込まれる線維として存在し、この線維は、原線維間接合による束に維持される。コラーゲン原線維は、典型的には、約2mmの長さであり、一方線維は、本来的により長く、より大きい径のものである。
【0007】
脊椎動物のコラーゲンは、300,000ダルトンの分子量を持つ。三重らせんの各鎖は約100,000ダルトンの分子量であり、左巻きらせん立体配置をとるものと仮定される(レーニンジャー,1975年)。大抵の脊椎動物コラーゲンは、皮膚,腱,筋肉に存在し、骨は[(α1)α2]により示される2個の同一および1個の異なるα鎖で構成される(ピエズ他,1963年;ルイスおよびピエズ,1964年;ミラー他,1967年;マックレーン他,1970年)が、タラの皮膚とひな鳥の骨は3個の異なる鎖[(α1)(α2)(α3)]を含み、異なっている(ピエズ,1965年;フランソワおよびグリンシェ,1967年)。軟骨コラーゲンは、鎖組成物[α1(II)]で構成される分子を持つ(ミラー,1971年;トレルスタッド,1970年)。α1(II)鎖はα1鎖とは明らかに異なり、後者はそのグリコシル化ヒドロキシリシンの高い含有量でα1(II)と比較した時にのみα1(I)と示される。コラーゲンは基底膜に存在し(ケファライズ,1971年)、またイソギンチャク体壁(カッツマンおよびカン,1972年)は、同じα鎖より成ることが確認されている。
【0008】
コラーゲンは、大量のヒドロキシプロリンを含有する唯一の哺乳類タンパク質であり、それはグリシン(約30%)とプロリンが異常に多い。ヒドロキシプロリンは、ヒドロキシル基およびペプチド鎖を通じて水素結合ウォーターブリッジの形成に必須であり、これにより三重らせんを安定させる。可溶コラーゲンでは、分子間結合は切断されるが、三重らせんは無傷のまま残る。
【0009】
コラーゲンI型、とりわけウシ皮膚コラーゲンは、食品と飲料、化粧品と医薬品に利用されてきている。精製成熟ウシコラーゲンは、止血鉗子、角膜シールド、および軟組織増強などの各種の医療用具で使用される。コラーゲンゲルは、これらの用具の調整の際に、しばしば中間生成物となり、またある場合には、ゲルは最終医療製品ともなる。更に、治療用および化粧品目的の両方で皮膚に使用されることを意図したコラーゲンマスクまたはフェースパックもある。精製コウシ皮膚コラーゲンは、人工器官、人工組織、人工器官のための構造部材および薬剤担体としていくつかの装置にも使用される重要な生体適合物質であるが、それはコラーゲン分子が生体に無毒であり、かつ高い機械強度を持つためである。それはまた同じ理由で、化粧品組成物で有用である。
【0010】
生体臨床医療分野では、天然繊維が縫合糸や結紮糸に使用される。結紮糸は、止血している血管のために腕をしばるために使用される糸であり、一方縫合糸は、創傷を縫合するために使用される。創傷は内部で起こることもあり、または露出することもある。内部の創傷を閉じるために使用される縫合糸は、た易く取り除かれない。かくして吸収性(または生物分解性)物質が、顕著な利益を提供する。
【0011】
コラーゲンが著しく架橋結合されるようになったために、それは吸湿性が少なくなる。哺乳類が老化する影響の一つは、コラーゲン分子の架橋の増加である。架橋が増加するにつれて、それは哺乳源からのトロポコラーゲンを抽出することがより一層困難になる。未架橋トロポコラーゲンが化粧品に使用されているが、それはしわののびた皮膚と会合するためである。
【0012】
脊椎動物コラーゲンは、すべての非コラーゲン性汚染構造を取り除くために、広範囲に精製されねばならない。大抵のコラーゲン分離および精製手順の最終製品は、主として結合組織の非コラーゲン成分の酵素分解より成るが、それは単量体コラーゲン分子である。これらの桿状体がフィルム、膜、またはスポンジに再構築される時に、それは最終構造の機械強度に殆んど貢献しないであろう。コラーゲン線維と原線維の天然構造を保持することが望ましい。これらの高純度コラーゲン線維の長さ(2−10cm)と厚み(40μm)の故で、それらは更に糸、縫合糸、または不織布フリース層に加工することができるし、また、編布や織物にもすることができる。
【0013】
従来のやり方で脊椎動物の高架橋コラーゲン組織を可溶化するために、2種の方法が適用された。それらは、(1)タンパク質分解酵素での消化、および(2)アルカリでの処理である。
【0014】
ペプシンなどの酵素でのタンパク質分解消化は、コラーゲンの架橋がた易くこわれるなどの故でよく使用される。ペプシンはもっとも一般的に使用される酵素であるが、それは商業的ルートで純粋形態で利用でき、また、モノマー分子で容易に溶解する酸性溶媒で利用できるからである。ペプシンでの限定されたタンパク質分解が数多くの動物および人間の組織から、基本的にモノマー形態にある各種のコラーゲンの相対的に大きな量を調製するのに極めて有用ではあったけれども、手順それ自体には制約がある。例えば分子は変性された非らせん限界物で得られ、これは効果的にこれら領域の構造と機能を評価するよう設計されたその後の研究を排除する。更に酵素溶解性コラーゲンはモノマーコラーゲンが豊富にあるがテロペプチドがないということから、コラーゲン原線維の再構築は大きく阻害され、また再構築原線維はテロペプチドを持つ可溶性コラーゲンに比べて低い熱安定性を示す。
【0015】
ペプチドを形成するために酵素加水分解により天然コラーゲンから調製されたコラーゲン加水生成物は、1,000乃至10,000ダルトンの分子量を示す。脊椎動物組織においては、本プロセスは4℃での完全抽出のために少なくとも3−4日を要する。
【0016】
アルカリ処理は、安定剤として硫酸ナトリウムとアミンを含む2−5%水酸化ナトリウムと求核試薬にそれぞれコラーゲン組織を4−20℃で数日浸して通常行われる。組織は次いで酸で処理される。これは環境温度に依存して数ヶ月にもわたる時間のかかるプロセスである。伝統的には、ウシ皮革は数週間もかかるアルカリ中和プロセスでコンディショニングされてきた。アルカリ処理は、アミンとアミド基を部分的に除去してタンパク質を修飾する。アミド基の膨張と加水分解の殆どは中和の初期の段階で起こり、等電点がpH5近くまで降下するにつれて、アンモニアの著しい発生が存在する。
【0017】
国際公開番号第WO02/102831は、コラーゲン誘導タンパク質画分を可溶化するために、そのコラーゲン含有部分を弱酸液で処理することを通して海洋無脊椎動物からコラーゲン誘導タンパク質画分を単離する方法を記載している。天然コラーゲンは、0.3Mの塩化ナトリウムで塩析することにより、弱酸液から沈殿する。次いで沈殿物は、脱イオン水に対する透析により過剰塩化ナトリウムを除去するために処理されねばならない。それは次いでpHを調節するために弱酸液に対して透析され、固形産物は凍結乾燥により単離される。このプロセスの結果として得られた産物は、品質が大きく変化することが確認された。
【0018】
一般に、可溶天然コラーゲンを産生するために、とりわけコラーゲンが高度に架橋している組織から天然不溶コラーゲン原線維を精製する満足な方法は存在していない。
【発明の開示】
【0019】
本発明は、その内容がここに組み込まれている国際公開番号第WO02/102831号に記載のプロセスの変更が、可溶天然コラーゲンを生じるという予期しない発見に基づくものである。それは、コラーゲンが塩析に代ってpHの変化で沈殿し、緩衝液交換の続くステップで可溶天然コラーゲンを得るということが意外にも発見されたことであった。
【0020】
従って、最初の見地において、本発明は以下のステップ、
1)天然コラーゲン原線維を可溶化するために、海洋無脊椎動物のコラーゲン含有部分を弱酸液で処理し、
2)組織微粒子を除去するために生成スラリーを遠心分離し、
3)塩基の追加でコラーゲンを沈殿させるために上澄のpHを調節し、
4)沈殿コラーゲンを収集し、
5)沈殿コラーゲンを再懸濁し、および、
6)限外濾過膜を使用して水に対する緩衝液交換を実行する、
ステップを含む海洋無脊椎動物から可溶天然コラーゲンを分離するプロセスを提供する。
【0021】
このpH沈殿プロセスは、塩析により分離されたものとは著しく異なる触感の沈殿物を生じることが観察される。理論によりしばられることは一方では望まないものの、より均一な性質の沈殿物がより完全な緩衝液交換を可能にし、従って不溶性に貢献する塩類のよりよい除去をも可能にするものと考えられる。
【0022】
弱酸液は酢酸溶液、それも典型的には3%溶液が望ましい。弱酸は水溶液で1.0×10−5から1.0×10−2までの間の解離定数を持つ酸であり、また当業者により容易に確認されるものであり、しかし、乳酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびイエン酸を含む。
【0023】
望ましくは、pH調節は、コラーゲン含有部分が冷蔵室で1日乃至20日、望ましくは3日乃至6日、もっとも望ましくは6日、弱酸液と接触した後にこの調節が行われることである。
【0024】
典型的には、弱酸液は、前記の抽出プロセスの間にある形態の攪拌を受ける。望ましくはコラーゲン含有部分は弱酸液で縣濁され、この縣濁液はよい収穫をあげ高品質の産物が得られるように攪拌される。
【0025】
典型的には、海洋無脊椎動物は、コラーゲン含有部分の機械的分断により抽出されるよう準備される。
【0026】
有利なことに、コラーゲン含有部分は筋組織であり、それは望ましくは色素を除かれていた。これは無傷筋組織を弱酸液に浸漬して達成することができる。弱酸液は典型的には酢酸溶液であり、望ましくは0.2Mの溶液である。
【0027】
本発明のとりわけ望ましい実施例において、海洋無脊椎動物はアワビである。望ましくはアワビは商業的な種のものであり、ブラックリップアワビ(Haliotis ruber),ブラウンリップアワビ(Haliotis conicopora),およびグリーンリップアワビ(Haliotis laevigata),またはロウズアワビ(Haliotis roei)を含む。
【0028】
有利なことに、コラーゲン含有部分は遠心分離で回転され、天然コラーゲンは上澄みから沈殿される。望ましければ、追加のコラーゲンがペレットから抽出される。上澄みからの望ましい収集プロセスにおいて、十分な塩基、典型的には1MのNaOHが加えられ、コラーゲン原線維を沈殿させるために上澄みのpHは4.5まで下がる。
【0029】
有利なことに、コラーゲン沈殿は冷蔵室で1時間乃至10時間、望ましくは2時間乃至6時間、もっとも望ましくは3時間の間で行われる。典型的に混合物は沈殿の間連続攪拌される。
【0030】
沈殿コラーゲンは、典型的には遠心分離で収集される。
【0031】
沈殿コラーゲンは脱イオン水で、典型的にはいずれかの適切な酸で3.5までのpH調節で再縣濁される。再縣濁コラーゲン沈殿物は、限外濾過膜、典型的には100キロダルトンのNMCO限外濾過膜を用いて、水、典型的には脱イオン水に対して緩衝液交換される。
【0032】
有利なことに、緩衝液交換産物は、固形形態で可溶天然コラーゲンを収集するために凍結乾燥される。
【0033】
ゼラチンは、コラーゲンから誘導されるタンパク質である。コラーゲンがある温度で加熱されると、コラーゲン分子はヘリックスコイル転移を受ける。ヘリックスは開き、コラーゲンはよりた易く可溶になる。これが起こる温度は、α鎖のプロリンとヒドロキシプロリンの量に依存し、この温度は変性点となる。海洋冷水魚にとってこの温度は約15℃であるが、ウシコラーゲンではそれは約40℃である。ある温度で未加工皮膚にあるコラーゲンは弛緩し、皮膚は収縮するであろう(収縮温度)。イミノ酸、プロリンおよびヒドロキシプロリンの量は、収縮温度および変性温度を決定する。本発明のコラーゲンを加熱することにより、ゼラチンを産生することができる。
【0034】
本発明のポリペプチドは、コラーゲン自身の用途を通じて、あるいはゼラチンへの転換などの続く処理に従って、陸上脊椎動物から分離されるコラーゲンに代って使用されることが提案される。コラーゲンはその天然形態または一度処理された形で広い範囲の分野で有用である。例えば、コラーゲンは化粧成分として、注射可能コラーゲン形態で、生体臨床医療用具で、薬剤物質として、および食品産物ならびに飲料で使用することができる。とりわけコラーゲンは、細胞培養で表面処理剤としての使用を見出す。本発明で調製されるコラーゲンは、陸上動物コラーゲンの直接の代替物として使用することができ、これらの分野でのそれぞれの使用のやり方は、当業者にとっては十分に理解できるものである。ゼラチンは、少なくとも食用ゼラチンの形態で、また飲料で凝集薬剤として、またPVCパイプ、にかわおよびノーカーボン紙の製造などの産業用分野で、エマルジョン調合のための写真用ゼラチンとして、薬剤のカプセル剤皮および化粧品の成分として、陸上動物から得られるゼラチンと似たやり方で有用である。これらのコラーゲンまたはその処理から誘導される産物は、対応する陸上動物コラーゲンと同等またはより優れた性能を持つことが期待される。例えばアワビ培養基で成長した細胞は、ウシコラーゲンで成長したものよりも適度に高い成長率を示し、より大きな組織化を示すように見える。従ってアワビコラーゲンを細胞培養基の表面処理剤として使用することは、とりわけ望ましい。
【0035】
[発明を実施するための形態(モード)]
実施例1
分離と精製
第1次抽出
ステップ1.生きたアワビが獲得され、10℃に制御された保存タンクに移された。
【0036】
ステップ2.必要に応じてアワビがタンクから取り出された。
【0037】
ステップ3.殻取り前にアワビは流水で洗浄された。まな板で作業する際に、アワビはへらで殻取りし貝殻から中身を取り出された。貝殻は後での使用のために保管された。
【0038】
ステップ4.消化管は解体用メスで脚部の上端の周囲を注意深く切断して除去され、後での使用のために保管された。
【0039】
ステップ5.口腔域は解体用メスで切り取られ、後での使用のために保管された。
【0040】
ステップ6.脚部域を用殻筋域からの着色部分は0.2Mの酢酸で緩やかに攪拌しながら一晩浸漬して除去され、次いで流水下で剛毛ブラシでこすり落とされた。
【0041】
ステップ7.全筋組織は、解体用メスまたはナイフを用いて1”−2”片に切断された。
【0042】
ステップ8.組織はコミトロール3600を通す通路により混合された。コミトロール3600は、抽出前の原料の粉砕のために使用される。これは静止円筒スクリーンまたは三枚刃ローターを持つカッタヘッドに材料を押し進めることで作動する。カッタヘッドは、0.03インチ厚の刃を持ち、0.06インチの間隔で離れている。カッタヘッド内のホールドアップは、数個の角氷で排出された。混合組織は重量測定された。
【0043】
ステップ9.混合組織は、3%酢酸液(pH3.0)に投入された。酢酸液の量は、混合組織の12ml/gであった。
【0044】
ステップ10.天然コラーゲン原線維を抽出するために、スラリーは6日間冷蔵室で攪拌された。
【0045】
ステップ11.組織微粒子を除去するために、スラリーは3,500g,4℃で20分遠心分離された。ペレット化された組織が保存された。
【0046】
ステップ12.コラーゲンを沈殿させるために、上澄みのpHは1MのNaOHの追加により4.5まで徐々に調節された。混合物は、冷蔵室で絶えず攪拌しながら3時間保存された。
【0047】
ステップ13.沈殿コラーゲンは5000g,4℃で10分間の遠心分離により収集された。
【0048】
ステップ14.沈殿コラーゲンに最小量の脱イオン水と1MのHClで3.5まで低下したpHで再縣濁された。
【0049】
ステップ15.コラーゲン縣濁液は、1/2または1:1の脱イオン水で希釈され、100キロダルトンのNMCO限外濾過膜を用いて2量脱イオン水に対して緩衝液交換された。
【0050】
ステップ16.緩衝液交換コラーゲンは、凍結乾燥機に置かれた凍結乾燥トレーに注がれ凍結乾燥棚の冷凍で−20℃までに凍結された。
【0051】
ステップ17.コラーゲンは20度の最終製品温度まで凍結乾燥された。これには約48時間を要した。
【0052】
ステップ18.凍結乾燥コラーゲンはコミトールを使用して粉砕された。
【0053】
ステップ19.粉砕コラーゲンは分析のために保管された。
【0054】
第2次抽出
第1次抽出のステップ11で得られたペレット組織は再抽出のために3%の酢酸溶液(pH3.0)に加えられた。酢酸液の量はペレット組織の5ml/gであった。
【0055】
スラリーは冷蔵室で3日間攪拌された。次いで再抽出が第1次抽出のステップ11から進められる。
【0056】
凍結乾燥コラーゲンの分析
1.外観
視覚検査による物質の色彩、香り、表面の触感についての記録がとられた。
【0057】
2.可溶性
凍結乾燥物質の可溶性が、室温で0.1M酢酸で0.1%の濃度で試験された。3時間攪拌後の溶液の透明度が観察された。
【0058】
3.分子量、純度および鎖型組成物
アワビコラーゲンの分子量、純度および鎖型組成物がドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で評価される。12%のグラジポア・イーゲル・プレキャスト・トリスグリシンゲルが使用された。SDS−PAGEはレームリの方法(1970年)に従って実行された。
【0059】
凍結乾燥アワビコラーゲンは1mg/mlの0.1M酢酸に溶解された。試料はグラジポア・グリシン試料緩衝液で、1/2に希釈され、1MのNAOHでpH調節された。
【0060】
試料は次いで沸騰水浴に3分置かれ、更に冷却された。ゲルはバイオラッド・ミニ−プロティーン3電気泳動セルに集められた。内部室はSDSグリシン運転緩衝液で充填され、また、試料はオートピペターで標準イエローチップを負荷された。ウエル当り全タンパク質負荷は2μgであった。分子量マーカー(バイオラッド広範囲前染色マーカー)が各ゲルで実行された。外部室では、ウエルの水準まで運転緩衝液で充填された。
【0061】
運転条件は、50mAのおおよその起動電流で60分にわたり、150Vの定電圧であった。ゲルは次いでケーシングから除去され、水で約30分洗浄された。ゲルは約50mlのグラジポア・グラジピュア染料(コロイド状 G−250クーマシーブルーによるもの)で一晩緩やかなふりまぜで染色された。ゲルは水の頻繁な交換で脱色された。5分後に帯は一般的に可視であったし、完全な脱色にはまる1日を必要とした。
【0062】
ゲルの恒久的な保管は、セロファンシートの間で乾燥して達成された。脱色されたゲルは20%のメタノールと2%のグリセロールの乾燥液に浸漬され、15分ゆっくり振りまぜされた。ゲル当り2枚のセロファンシートは、約30秒間乾燥液で湿らされた。手入れされたゲルは、乾燥フレームでセロファンシートの間にはさまれ、室温で2日間オープンコンテナーに置かれたままであった。ゲルは次いで巻き上がらないように、多くの日数でプレスされた。
【0063】
ログ図面が分子量対分子量基準に対するゲルから下方に移行する距離から作成され、線形傾向線がMSエクセルを用いて決定された。生成された式は、その移動距離に従ってサンプル帯の分子量を計数するのに使用することができる。
【0064】
結果
1.凍結乾燥天然アワビコラーゲンの外観−(表1)
【0065】
【表1】

【0066】
2.凍結乾燥天然アワビコラーゲンの可溶性−(表2)
【0067】
【表2】

【0068】
3.天然アワビコラーゲンの分子量,純度および鎖型組成物−(表3)
【0069】
【表3】

【0070】
実施例2−細胞培養
ステップ1.凍結乾燥1型コラーゲンは、0.1M酢酸に1−2mg/mlで溶解された。
【0071】
ステップ2.コラーゲン溶液は、混合させずに底部の10%量のクロロホルムに層としてゆっくり重ね、一晩冷蔵室にそのまま置いて殺菌された。
【0072】
ステップ3.上部(コラーゲン)層は無菌で除去され、無菌容器に移された。
【0073】
ステップ4.培養容器(24−ウエル平板)の成長表面は、無菌濾過された0.2g/1 EDTA.4Na,0.1ml/cm(200μl)で洗浄された。
【0074】
ステップ5.ウエルはコラーゲン溶液の10μg/cmで被覆され、ピペットチップでの反覆吸引により、成長表面を覆うように広げられた。
【0075】
ステップ6.ウエル6の一つの列は対照として被覆されないまま残り、一方他の列は、それぞれアワビコラーゲンとコウシ皮膚コラーゲンで被覆された。
【0076】
ステップ7.被覆平板は37℃で4−5時間培養され、次いで紫外線下で一晩置かれて殺菌衛生化された。
【0077】
ステップ8.過剰被覆液は吸引され、ウエルは基本培地(ハム栄養混合培地 F12)で洗浄された。
【0078】
ステップ9.継代培養哺乳類細胞(CHO K1)は、F12+10%FCS+1%ペニシリン/ストレプトマイシンに再縣濁され、トリパンブルー排除試験での生存で血球計算器で計数された。
【0079】
ステップ10.細胞は、約5×10細胞/mlで播種され、5%COの下で37℃で保温培養された。
【0080】
ステップ11.培養物は倒立顕微鏡を用いて形態学的差異を毎日検討された。写真の記録がデジタルカメラで行われた。
【0081】
ステップ12.培養物の成長は、毎日細胞を収穫し、血球計で計数することで測定された。
【0082】
ステップ13.対照ウエルからの細胞の収穫はトリプシン消化によるものであった。培養培地は除去され、ウエルは0.15ml/cm(300μl)の基本培地ですすぎ洗いされた。0.25%トリプシン/EDTA溶液の等量のものが細胞を分離するのに使用された。培養は4分室温で行われた。細胞は基本培地を使って最終了1mlになるように縣濁され、直ちに計数された。
【0083】
ステップ14.被覆ウエルからの細胞の収穫は、(基本培地で0.1%の)コラゲナーゼでの培養によるものであった。培養培地は除去され、ウエルは基本培地0.2ml/cm(400μl)ですすぎ洗いされた。等量のコラゲナーゼがウエルに加えられ、ピペットチップを用いて反覆吸引で混合された。平板は、次いで交互に37℃で10分培養され、5分混合され、37℃で10分培養され、5分混合され、次いで37℃で20分培養された。再縣濁細胞は、係数のために1mlの量まで基本培地で希釈された。
【0084】
選択肢として、0.3%のコラゲナーゼが単一室温培地8分で使用され、次いで再縣濁の前にウエル当り1分混合された。
【0085】
公開されたコラゲナーゼプロトコルは、条件が対象となる細胞系に最適のものにされなければならないという条件下で、コラゲナーゼの濃度を変える単一短時間培養を典型的に示唆している。
【0086】
結果
毎日の細胞数計数により測定される培養物の成長は図1で図により示される。対照細胞(未被覆プラスチック上で成長したもの)はより遅く、しかし、より線形の成長を示し、より高い細胞数に到達する。コラーゲン被覆表面での成長は、当初は分化の開始であったためにより急速であった。
【0087】
被覆表面上の細胞は、付着と関連する平な外観を速やかに示し、またより大きな度合の組織化を提示し、更に細胞は帯状構造に整列される(図2)。未被覆表面上の細胞は、全体が平になるまで時間がかかり、また無作為に配列されたように見えた。
【0088】
長期にわたる細胞培養に続き、コラーゲン被覆表面上の細胞は、より高い数のものとなり、しかもなお平な外観のものであった。未被覆表面上の細胞はより少なくなり、しかも円形化した(図3)。細胞の生存能力と分化は、コラーゲン被覆表面上でより長く保持された。
【0089】
アワビコラーゲンで成長する細胞は、ウシコラーゲンのそれよりも測定上より高い成長率を示し、より高い組織化を提示する。
【0090】
引用例
下記のリストによる引用例は、その開示をここで引用例として本出願に組み込まれたものである。
【0091】
フランソワ,C.J.およびグリンシェ,M.J.(1967年),Biochim.Biophys.Acta,133巻,91ページ
ヘルセス,D.L.ジュニアおよびヴァイス,A.(1981年),J.Biol,Chem.,256巻,7118−7128ページ
ホフマン,H.,フィーツェック,P.P.およびクーン,K.(1980年)J.Mol.Biol.,141巻,293−314ページ
カッツマン,R.L.,およびカン,A.H.(1972年),J.Biol.Chem.247巻,5486ページ
ケファライズ,N.A.(1971年),Biochem.Biophys.Res.Commun.46巻,226ページ
U.K・レームリ(1971年),Nature,227巻,680−685ページ
ローレン,G.,デルビンコート,T.,およびスツィマノビッチ,A.G.(1980年),FEBS Letter,120巻,44−48ページ
ルイス,M.S.,およびピエズ,K.A.J.,(1964年)Biol,Chem.,239巻,336ページ
マクレーン,P.E.,クリード,G.J.,ワイリー,E.R.およびゲリッツ,R.J.,(1970年),Biochim,Biophys.Acta,221巻,349ページ
ミラー,E.J.,Biochemistry(1971年),10巻,1652ページ
ミラー,E.J.,マーチン,G.R.,ピエズ,K.A.,およびパワーズ,M.J.,J.Biol.Chem.(1967年),242巻,5481ページ
ピエズ,K.A.,Biochemistry(1965年),4巻,2590ページ
ピエズ,K.A.,アイガー,A.,およびルイス,M.S.,(1963年),Biochemistry,2巻,58号
ピエズ,K.A.,(1984年),コラーゲンの分子構造と全体構造「細胞外マトリックス生化学」所収(ピエズ,K.A.,およびレッディ,A.H.編),1−39ページ,エルスヴィア,ニューヨーク
プロコップ,D.J.,およびキビリッコ,K.I.(1995年),Annu.Rev.Bioche.,64巻,403−434ページ
トレルスタッド,R.I.,カン,A.H.,五十嵐,S.およびグロス,J.(1970年),Biochemistry,9巻4993ページ
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】コラーゲン被覆表面と未被覆プラスチック対照表面の上での細胞培養物の成長が生じる細胞数対時間の関係を示す図
【図2】細胞培養成長について位相差顕微鏡により算出されたイメージを示す図 上部から底部−第1日乃至第4日 左部から右部−C,対照;BV,ウシコラーゲン;AB,アワビコラーゲン、および、
【図3】長期細胞培養成長(23日)についての位相差顕微鏡からのイメージを示す図 左部から右部−C,対照;AB,アワビコラーゲン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋無脊椎動物から可溶天然コラーゲンを単離する一つのプロセスであって、以下のステップ、
1)天然コラーゲン原線維を可溶化するために、海洋無脊椎動物のコラーゲン含有部分を弱酸液で処理し、
2)組織微粒子を除去するために生成スラリーを遠心分離し、
3)塩基の追加でコラーゲンを沈殿させるために上澄のpHを調節し、
4)沈殿コラーゲンを収集し、
5)沈殿コラーゲンを再懸濁し、および、
6)限外濾過膜を使用して水に対する緩衝液交換を実行する、
ステップを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1記載のプロセスであって、ここでpH調節が、コラーゲン含有部分を1日乃至20日弱酸液と接触させた後に行われることを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項2記載のプロセスであって、ここでpH調節が、3日乃至6日後に行われることを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項3記載のプロセスであって、ここでpH調節が、6日後に行われることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のプロセスであって、ここでpH調節が、強塩基の徐々の追加により行われることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項5記載のプロセスであって、ここでpH調節が、1Mの水酸化ナトリウムの徐々の追加により行われることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプロセスであって、ここでpH調節が、1時間乃至10時間にわたり冷蔵室で行われることを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項7記載のプロセスであって、ここでpH調節が、2時間乃至6時間にわたり行われることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
請求項8記載のプロセスであって、ここでpH調節が、3時間にわたり行われることを特徴とするプロセス。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項記載のプロセスであって、ここでpH調節が、連続攪拌を伴い行われることを特徴とするプロセス。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載のプロセスであって、ここで海洋無脊椎動物が、アワビであることを特徴とするプロセス。
【請求項12】
請求項11記載のプロセスであって、ここで海洋無脊椎動物が、(オキナエビス亜目ミミガイに属する)ブラックリップアワビ(Haliotis ruber),ブラウンリップアワビ(Haliotis conicopora),およびグリーンリップアワビ(Haliotis laevigata),またはロウズアワビ(Haliotis roei)より成るグループから選択されることを特徴とするプロセス。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載のプロセスにより調製される場合のコラーゲン。
【請求項14】
請求項13記載のコラーゲンを加熱することを含むゼラチンを調製するためのプロセス。
【請求項15】
陸上脊椎動物から単離されるコラーゲン、または陸上脊椎動物のコラーゲンから調製されるゼラチンに替えての請求項13記載のコラーゲンの使用法。
【請求項16】
化粧用成分として、注射可能コラーゲンの形態で、生体臨床医療用具で、薬剤物質として、細胞培養の表面処理剤として、および食料品と飲料において、請求項15で請求された使用法。
【請求項17】
請求項13に基づくコラーゲンでコートされたことを特徴とする細胞培養容器。
【請求項18】
請求項13に基づくコラーゲンを含むことを特徴とする化粧品組成物。
【請求項19】
請求項13に基づくコラーゲンを含むことを特徴とする生体臨床医療用具。
【請求項20】
請求項13に基づくコラーゲンを含むことを特徴とする薬剤組成物。
【請求項21】
請求項13に基づくコラーゲンを含むことを特徴とする食品。
【請求項22】
清澄剤として請求項13に基づくコラーゲンを使用して調製されることを特徴とする飲料。
【請求項23】
請求項14に記載のプロセスにより調製される場合のゼラチン。
【請求項24】
請求項23に基づくゼラチンを含むことを特徴とする薬剤用カプセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−524582(P2007−524582A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504030(P2006−504030)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000574
【国際公開番号】WO2004/096834
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(505357926)ノリカ ホールディングス ピーティーワイ リミテッド (3)
【Fターム(参考)】