説明

薬剤計量システムを含む医薬供給装置

薬剤供給装置(5)は、液体薬剤を保持する貯槽と、ある投与量の液体薬剤を貯槽に供給するために貯槽に結合される計量装置(25)とを含む。計量装置は、上方チャンバと、上方チャンバに結合される下方チャンバと、上方チャンバ及び下方チャンバ内で選択的に移動可能なピストンと、ピストンの移動に応答して下方チャンバと貯槽との間の選択的な流体連絡をもたらす弁とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザ(噴霧器)(nebulizer)のような薬剤供給装置に関し、具体的には、患者への供給のために提供される薬剤の量を制御するための計量システムを有する薬剤供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品を患者の肺内に送り込むために多数の装置が利用可能である。1つのそのような装置はネブライザであり、ネブライザは液体薬剤のような液体をエアロゾル(aerosol)に変換するために使用される装置であり、次に、エアロゾルは、典型的にはマウスピースを通じて、患者によって吸引される、噴射ネブライザ(空圧ネブライザと呼ばれることもある)及び超音波ネブライザのような多数の異なる種類のネブライザが存在するが、それらに限定されない。典型的な噴射ネブライザは、圧縮空気を使用して液体からエアロゾルを生成する。1つの種類の超音波ネブライザは、超音波周波数を有する音波を利用し、音波は、エアロゾルに変換されるべき液体の表面上のある地点に向けられる。これらの超音波が集束する液体の表面上の地点で、超音波は、超音波の周波数で振動する表面張力波を生成する。表面張力波の振幅が十分に大きいならば、表面張力波のピークは液体から離れ、滴の形態において液体の表面から排出され、それによって、エアロゾルを形成する。超音波ネブライザにおいて超音波を生成するために頻繁に使用される装置は、(圧電結晶のような)圧電送受波器(transducer)であり、圧電送受波器は、適用される電場に応答して振動し、超音波を生成する。他の種類の超音波ネブライザにおいて、エアロゾルに変換されるべき液体は、ホーンの上に作用する圧電結晶の振動によってメッシュを通過させられ、(それによって、液滴を創成する)。典型的にはメッシュネブライザと呼ばれる、この種類の超音波ネブライザでは、メッシュのゲージが、エアロゾルを形成するよう生成される滴の大きさを決定する。
【0003】
従来的なネブライザシステムは、連続的なエアロゾル/医薬の出力をもたらし、よって、吸引される医薬の量は患者の呼吸パターンに依存する。患者の呼吸パターンのデューティサイクルは、典型的には、40:60である。これは患者が1回の呼吸周期の40%を吸気に費やし、その時間の60%を呼息に費やすことを意味する。よって、ネブライザからの医薬の60%は、呼息中に環境に廃棄される。加えて、1人の患者の呼吸パターンは、治療の工程に亘って変化する。
【0004】
これらの問題に取り組むために、適合エアロゾル供給(AAD)技術として既知の技術に基づき、当該ネブライザシステムを適合ネブライザシステムと呼ぶ、より洗練されたネブライザシステを開発した。適合ネブライザシステムは、エアロゾルの供給を患者の呼吸パターンに適合させ、患者がマウスピースを通じて吸気するときだけ薬剤を送り出す。適合ネブライザシステムは薬剤を極めて効率的に供給し得る(ネブライザに供給される殆ど全ての薬剤が実際に患者に供給される)ので、患者が正しい投与量を受け取るために、ネブライザに供給される薬剤の量は可能な限り精密であることが重要である。
【0005】
薬剤の容量を制御する1つの既知の方法では、バイアル(vial)から精密な量の薬剤を汲み上げるために注射器(syringe)が使用され、次に、汲み上げられた薬剤は、ネブライザ内のチャンバに移転される。この方法は数多くの不利点を有する。例えば、年配者のような器用さが不十分な患者は、このように注射器を使用することが困難であると知るかもしれない。また、注射器の使用は、注射針を誤って刺すことによる刺傷の危険性をもたらし、廃棄のためにシャープス容器(sharps container)が必要とされる。注射器は、患者が絶えず注視しなければならず且つ家を出るときに携行しなければならない追加的な部品ももたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の譲受人が所有する米国特許出願公開番号第2003/0146300号は、薬剤を噴霧するための噴霧装置と貯槽とを有するネブライザを記載しており、貯槽は、噴霧装置に薬剤を送るよう構成される計量チャンバと、計量チャンバ内に保持される量を超える薬剤の如何なる超過量をも保持及び保留するよう構成される第二チャンバとを有する。このアプローチは、特定の用途には有効であるが、患者に供給される薬剤の量を制御するネブライザ及び方法の領域において改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様において、液体薬剤を保持する貯槽と、ある投与量の液体薬剤を貯槽に供給するために貯槽に結合される計量装置とを含む、薬剤供給装置が提供される。計量装置は、上方チャンバと、上方チャンバに結合される下方チャンバと、上方チャンバ及び下方チャンバの長手軸に沿って上方チャンバ及び下方チャンバ内を選択的に移動可能なピストンと、ピストンの移動に応答して下方チャンバと貯槽との間の選択的な流体連絡をもたらす弁とを含む。1つの具体的な実施態様において、弁は(ダックビル弁のような)一方向弁であり、弁は、下方チャンバが貯槽と流体連絡しない通常閉塞状態に付勢され、且つ、ピストンが下方チャンバ内で弁に向かって移動する結果として弁に加えられる力に応答して、下方チャンバが貯槽と流体連絡する開放状態に移動するよう構成される。
【0008】
他の具体的な実施態様において、下方チャンバ及び上方チャンバは、それぞれ円筒形の形状であり、上方チャンバのボアは、下方チャンバのボアよりも大きい。また、ピストンは、円筒形の底端部を含んでもよく、底端部は、底端部に結合されるシール素子を有し、シール素子は、ピストンが下方チャンバ内で移動するとき、下方チャンバの内壁と係合するよう構成される。
【0009】
他の具体的な実施態様において、ピストンは、上方チャンバと選択的に結合されるよう構成されるキャップの一部である。キャップが上方チャンバに結合されるとき、キャップを上方チャンバに対して回転可能であるように構成してもよく、キャップの回転は、ピストンを下方チャンバ内で移動させる。この実施態様において、上方チャンバは、その外壁の上にピンを含んでもよく、キャップは(4分の1回転ネジ山のような)傾斜したネジ山を含み、ピンはキャップが上方チャンバに結合されるときにネジ山と係合するよう構成される。
【0010】
異なる実施態様において、キャップが上方チャンバに結合されるとき、キャップは、上方チャンバの長手軸に沿って上方チャンバに対して下向きに移動可能であるよう構成され、キャップの移動は、ピストンを下方チャンバ内で移動させる。
【0011】
ピストンは、中央ボアと、中央ボア内の第二の弁とを含んでもよく、中央ボアは、キャップに設けられる孔を通じて大気に通気される。
【0012】
薬剤供給装置は、上方チャンバに選択的に結合し得る1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップを更に含み、1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップの各々は、キャップのピストンと異なる、関連付けられるピストンを有する。キャップのピストンは、第一ストロークを有してもよく、1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップのうちの1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップの各々は、関連付けられるピストンを有し、関連付けられるピストンは、第一ストロークとは異なる、関連付けられるストロークを有する。当該装置は、下方チャンバ内に受け入れられるよう構成されるインサートを更に含んでもよく、下方チャンバは、第一ボアを有し、インサートは、第一ボアよりも小さい第二ボアを有し、1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップのうちの1つの追加的なキャップは、関連付けられるピストンを有し、関連付けられるピストンは、インサートと共に使用されるような大きさ及び構成とされる。
【0013】
薬剤供給装置は、ネブライザであってもよく、貯槽はエアロゾル生成システムの一部であり、貯槽は液体薬剤の投与量を保持し、患者への供給のために液体薬剤の投与量がエアロゾル生成システムによって噴霧化されるのを可能にする。
【0014】
他の実施態様では、ある投与量の液体薬剤を薬剤供給装置の貯槽に提供する方法が提供され、当該方法は、ある量の液体薬剤を計量装置の上方チャンバ及び下方チャンバに供給するステップを含み、前記量は投与量よりも大きく、下方チャンバは上方チャンバに結合され、前記量の第一部分は、下方チャンバ内に保持され、前記量の第二部分は、上方チャンバ内に保持され、下方チャンバは、下方チャンバ内の第一部分の静圧の下で貯槽と流体連絡せず、当該方法は、ある力を、上方チャンバを通じて、下方チャンバ内の第一部分に適用するステップを含み、前記力は、第一部分の少なくとも一部を下方チャンバから出させ、薬剤供給装置の貯槽内に収容させ、第二部分は前記力の適用の後、計量装置内に維持される。
【0015】
本発明のこれらの及び他の目的、機能、及び、特徴、並びに、動作の方法、構造の関連素子の機能、部品の組み合わせ、及び、製造の経済は、添付の図面を参照して以下の記載及び付属の請求項を考察した後、より明らかになるであろう。以下の記載、付属の請求項、及び、添付の図面の全ては、この明細書の一部であり、同様の参照番号は、様々な図面中の対応する部分を指している。しかしながら、図面は例示及び記載の目的のためだけであり、本発明の限定の定義として意図されていないことが明示的に理解されるべきである。明細書及び請求項において使用されるとき、不定冠詞及び定冠詞の単数形態は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の参照を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の1つの実施態様に従ったネブライザ装置を示す側面図である。
【図2】本発明の1つの実施態様に従ったネブライザ装置を示す等角図である。
【図3】図1及び2のネブライザ装置を示す概略図であり、ネブライザ装置の選択的な構成部品を簡略的又は記号的な形態において示している。
【図4】1つの具体的な実施態様に従った計量装置を示す断面図である。
【図5】1つの具体的な実施態様に従った計量装置を示す正面図である。
【図6】本発明の代替的な実施態様に従った計量装置を示す断面図である。
【図7】本発明の代替的な実施態様に従った計量装置を示す断面図である。
【図8A】他の具体的な実施態様に従った計量装置を示す断面図である。
【図8B】他の具体的な実施態様に従った計量装置を示す断面図である。
【図8C】他の具体的な実施態様に従った計量装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例えば、非限定的に、頂部、底部、左、右、上方、下方、正面、背面、及び、それらの派生形のような、ここで使用される方向を示す成句は、図面中に示される素子の向きに関係し、請求項中に明示的に列挙されない限り、請求項を限定しない。
【0018】
ここで使用されるとき、2つ又はそれよりも多くの部分又は構成部品が一体に「結合」されるという記述は、それらの部分が、直接的であれ或いは1つ又はそれよりも多くの中間の部分又は構成部品を通じてであれ、「結合」され或いは協働することを意味する。
【0019】
ここで使用されるとき、2つ又はそれよりも多くの部分又は構成部品が互いに「係合」するという記述は、それらの部分が、直接的であれ或いは1つ又はそれよりも多くの中間の部分又は構成部品を通じてであれ、互いに力を加え合うことを意味する。
【0020】
ここで使用されるとき、「数」という用語は、1又は1よりも大きい整数(即ち、複数)を意味する。
【0021】
図1は、本発明の1つの実施態様に従ったネブライザ装置5の側面図であり、図2は、本発明の1つの実施態様に従ったネブライザ装置5の等角図である。図3は、ネブライザ装置5の概略図であり、ネブライザ装置の選択的な構成部品を簡略的又は記号的な形態において示している。ネブライザ装置5は、エアロゾル20(図3)の形態の医薬を患者の肺内に送り込む医薬供給システムとして機能する。ネブライザ装置5は、ネブライザ装置5の(図3に示し且つ以下に記載する)特定の構成部品を収容する主ハウジング10と、マウスピース部分15とを含み、マウスピース部分15は、例示の実施態様では、主ハウジング10に取り外し可能に取り付けられる。ネブライザ装置5は、以下により詳細に記載する計量装置25も含み、計量装置25は、エアロゾル20に変換し、究極的には、患者に供給するためにネブライザ装置5の内部構成部品に供給される、薬剤の量を制御するよう構成される。マウスピース部分15は、患者の口内に受け入れられるよう構成され、マウスピース部分15が主ハウジング10に取り付けられるとき、以下に詳細に記載するように主ハウジング10内で構成部品によって生成されるエアロゾル20を受け入れるよう構成されるチャンバを含む。患者が彼又は彼女の口をマウスピース部分15の端部に置いて吸引するとき、空気流が創成され、空気流はエアロゾル20を患者の肺内に運ぶ。
【0022】
図3に見られるように、ネブライザ5は、(内部に複数の細孔を含む)メッシュ板30と、エアロゾル20に変換されるべき流体(医薬)を保持する貯槽35と、ホーン40と、ホーン40に動作的に結合される圧電送受波器45とを含む。計量装置25は、図3に矢印によって示すように、貯槽35と流体連絡し、ここで以下に詳細に記載するように、エアロゾル20への変換のために、制御された容量の液体を貯槽35に供給するよう構成される。ネブライザ5は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は、何らかの他の適切な電子制御デバイス又は回路構成であり得るコントローラ50や、充電可能な電池であり得る電源55も含む。ホーン40は、メッシュ板30の背面に近接して配置され、電源55によって提供される圧電送受波器45を駆動する電力で、コントローラ50の制御の下で送受波器45によって振動させられ得る。貯槽35内の液体は、メッシュ板30の背面と流体接触する。圧電送受波器45が振動させられるとき、圧電送受波器45はメッシュ板30の領域においてホーン40を振動させる。そのようなホーン40の振動の結果、貯槽35からの液体は、メッシュ板30の孔を通過させられ、それによって、マウスピース部分15内に排出される(噴煙柱の形態の)エアロゾル20を生成する。
【0023】
既述の図3に示すメッシュ板の種類のエアロゾル生成システムは例示的であることが意図され、本発明と共に利用し得るエアロゾル生成システムの1つの種類であるに過ぎないことが理解されるべきである。本発明の範囲内で他の種類のエアロゾル生成システムを利用し得ることが想定される。例えば、非限定的に、メッシュの外側の周りの圧電素子を利用するが、図3におけるような別個のホーンを利用しないエアロゾル生成システムも利用し得る。他の非限定的な実施例として、空圧型のエアロゾル生成システムを利用し得る。
【0024】
図4は、1つの具体的な実施態様に従った計量装置25の断面図であり、図5は、1つの具体的な実施態様に従った計量装置25の正面図である。計量装置25は、計量チャンバ60と、キャップ65とを含む。計量チャンバ60は、上方円筒形チャンバ70と、下方円筒形チャンバ75と、ポート部分80とを含む。図3乃至5に見られるように、上方円筒形チャンバ70のボア(即ち、内径)は、下方円筒形チャンバ75のボア(即ち、内径)よりも大きい。例示的な実施態様において、計量チャンバ60は、ネブライザ5の主ハウジング10内に設けられ、計量装置25は、ネブライザ5の一体的な部分として設けられる(図1及び2を参照)。代替的に、計量装置25は取り外し可能であり、且つ、貯槽35に選択的に結合される。いずれの場合においても、ポート部分80は、貯槽35と流体連絡するよう構成され、内部的な一方向弁85を含み、一方向弁85は、図示の実施態様では、ゴム製のダックビル弁である。キャップ65は、内部ピストン90と、外壁95と、封止リップ100とを含む。ピストン90は、ピストン90の円筒形の底端部110に封止素子105を備え、封止素子は、例示の実施態様では、Oリングの形態である。加えて、ピン115が計量チャンバ60の上方円筒形チャンバ70の外壁120の上に設けられ、傾斜した4分の1回転ネジ山125がキャップ65の外壁95内に設けられ、ピン115を受け入れるよう構成される。
【0025】
一方向弁85がゴム製のダックビル弁である具体的な実施態様では、一方向弁85の通常の装着のために、フランジの10〜15%の軸方向の圧縮が、径方向の撓みを許容するOD遊びを伴って必要である。正しく機能するためには、一方向弁85のバレル(円筒形部分)の周りにも小さな遊びがなければならない。これは、弁を開放するために弁が前方の開放圧力を通常必要とし、その場合、1mbarが10mmWGと等しいことを保証する。加えて、弁開放圧力が計量チャンバ60の高さよりも大きいことを保証するために、一方向弁85のフランジを楕円形ソケット内に装着し得る。フランジがダックビルの軸に沿って圧縮されるならば、荷重は一方向弁85を開放させる。しかしながら、圧力がダックビルの軸に対して垂直に適用されるならば、荷重はダックビルを伸張し、開放圧力を増大する。
【0026】
動作中、液体薬剤を収容するバイアルは計量チャンバ60内に空にされ、計量チャンバにおいて、液体医薬は下方円筒形チャンバ75を充填し、且つ、上方円筒形チャンバ70内に溢れる。液体薬剤は、一方向弁85によって、下方円筒形チャンバ75の底部から離れるのが防止される。計量されるべき液体薬剤の容量は、下方円筒形チャンバ75の容量とピストン90のストロークとによって実質的に決定される。液体の粘度に依存して、液体薬剤は一方向弁85を充填し得る。しかしながら、一方向弁85内の空間の容積は、全体的な東洋量の許容値に大きな影響を及ぼさない程に十分に小さい。
【0027】
次に、キャップ65が計量チャンバ60に取り付けられる。具体的には、ピストン90が計量チャンバ60内に挿入され、ピン115が4分の1回転ネジ山125内に収容され、4分の1回転ネジ山125と係合する。
【0028】
次に、キャップ65が4分の1回転される。この回転の間、キャップ65はピン115上の4分の1回転ネジ山125の移動によって案内され且つ制限される。同様に、この回転の間、シール素子105が下方円筒形チャンバ75の内壁表面と係合し、封止をもたらす。このキャップ65の4分の1回転は、ピストン90の底端部110を下方円筒形チャンバ75の頂部から底部に駆動する。この移動は、計量された量の液体薬剤を、ポート部分80及び一方向弁85を通じて(ピストン90からの圧力が一方向弁85を開放させる)ネブライザ5のメッシュエアロゾル生成システムの下方円筒形チャンバ75から貯槽35に送る。より具体的には、一方向弁85は、(下方円筒形チャンバ75内の液体の静圧力の下で)通常閉塞状態にあるよう付勢され、下方円筒形チャンバ75は貯槽35と流体連絡せず、開放状態に移動するよう構成され、下方円筒形チャンバ75は、ピストン90が下方円筒形チャンバ75内で一方向弁85に向かって移動する結果として、一方向弁85及び下方円筒形チャンバ75内の液体に加えられる力に応答して貯槽35と流体連絡する。あらゆる残留液体は、ピストン90の底端部110及びシール素子105によって創成される封止より上で下方円筒形チャンバ75内に収容される。
【0029】
キャップ65を反対方向に4分の1回転だけ移動させることによって、キャップ65を取り外し得る。ピストン90は、第二の一方向弁135を有する中央ボアを含み、第二の一方向弁135は、例示の実施態様では、ゴム製のダックビル弁であり、ダックビル弁は、キャップ65が計量チャンバ60から取り外されるのを可能にし、計量チャンバ60、具体的には、下方円筒形チャンバ75内に空気ロックを生成することはない。第二の一方向弁135より上の領域は、キャップ65内の小さな孔を介して大気に通気される。
【0030】
図3に見られるように、封止リップ100は、キャップ65が十分に下げられるときに上方円筒形チャンバ70の壁の内側と係合するよう構成される。この封止は、計量装置25が反転されるときに、計量チャンバ60内に残留する液体が漏れ出すことを防止する。
【0031】
理解されるように、下方円筒形チャンバ75から貯槽35内に放出される液体薬剤の投与量は、下方円筒形チャンバ75のボア及びピストン90のストロークによって実質的に決定される。よって、それらの機能を制御することによって、投与量を制御し得る。図6は、ピストン90と比べて減少されたストロークを有するピストン90’を有する本発明の代替的な実施態様に従った計量装置25’の断面図である。これはより小さな投与量をもたらす。図7は、本発明の更なる代替的な実施態様に従った計量装置25”の断面図であり、計量チャンバ60内に設けられる概ね円筒形の形状のインサートによって形成される下方円筒形チャンバ75”を有し、下方円筒形チャンバ75と比べて減少されたボアを有する。加えて、計量装置25”は、底端部110と比べて減少された直径を有する底端部110”を有するピストン90”を含む。これもより小さな投与量をもたらす。
【0032】
本発明の特徴によれば、多数のキャップ65を備えるネブライザ装置5を患者に提供し得る。特定のキャップ65を選択することによって且つ/或いは特定のインサートを使用することによって患者が計量される液体の投与量を選択的に決定し得るよう、各キャップ65は異なるピストン90,90,90を有し、1つ又はそれよりも多くの異なる大きさの図7に示されるようなインサートを備える。1つの具体的な実施態様では、0.25ml〜1.5mlの計量された投与量のPRSを満足するよう、下方円筒形チャンバ75の寸法を変更し得る。ここに様々な実施態様において記載したような計量装置は、特定の規制要件の下で要求される±/10%の精度で、投与量を計量し得る。
【0033】
図8A、8B、及び、8Cは、代替的な実施態様に従った計量装置150の断面図である。計量装置150は、計量チャンバ150と、キャップ160とを含む。計量チャンバ150は、上方円筒形チャンバ165と、下方円筒形チャンバ170と、ポート部分175とを含む。図8A乃至8Cに見られるように、上方円筒形チャンバ165のボア(即ち、内径)は、下方円筒形チャンバ170のボア(即ち、内径)よりも大きい。例示的な実施態様において、計量チャンバ155は、ネブライザ5の主ハウジング10内に設けられ、計量装置150は、ネブライザ5の一体的な部分として提供される。代替的に、計量装置150は取り外し可能であってもよく、計量装置150を貯槽35に選択的に結合し得る。いずれの場合においても、ポート部分175は、貯槽35と流体連絡するよう構成され、内部的な一方向弁180を含み、一方向弁180は、図示の実施態様では、ゴム製のダックビル弁である。キャップ160は、内部ピストン185と、外壁190と、封止リップ195とを含む。ピストン185は、封止素子200を備え、封止素子200は、例示の実施態様では、ピストン185の円筒形の底端部205にあるOリングの形態である。
【0034】
動作中、液体薬剤を収容するバイアルは計量チャンバ155内に空にされ、計量チャンバ155内で、液体薬剤は下方円筒形チャンバ170を充填し、上方円筒形チャンバ165内に溢れる。液体薬剤は、一方向弁180によって、下方円筒形チャンバ160の底部から漏れ出ることが防止される。計量されるべき液体薬剤の容量は、下方円筒形チャンバ170の容積とピストン185のストロークとによって実質的に決定される。液体の粘度に依存して、液体薬剤は一方向弁185も充填する。しかしながら、一方向弁180内の空間の容積は、全体的な投与量の許容値に大きな影響を有さない程度に十分に小さい。次に、ピストン185を計量チャンバ155内に挿入し、キャップ160を下向きに押すことによって、キャップ160が計量チャンバ155に結合される。この下向きの移動の間、シール素子200は、下方円筒形チャンバ170の内壁表面と係合し、封止をもたらし、ピストン185の底端部205は、下方円筒形チャンバ170の頂部から底部に駆動される。本明細書の他の場所において詳細に記載したように、この移動は、計量された容量の液体薬剤を、ネブライザ5のメッシュエアロゾル生成システムのポート175及び一方向弁180を通じて(ピストン185からの圧力が一方向弁180を開放させる)下方円筒形チャンバ170から貯槽35に送る。あらゆる残留液体は、ピストン185の底端部205及びシール素子200によって創成される封止より上で下方円筒形チャンバ170内に収容される。
【0035】
キャップ160を上向きに引っ張ることによって、キャップ160を取り外し得る。ピストン185は、第二の一方向弁210を有する中央ボア215を含み、第二の一方向弁210は、例示の実施態様では、ゴム製のダックビル弁であり、ダックビル弁は、キャップ160が計量チャンバ155から取り外されることを可能にし、計量チャンバ155、具体的には、下方円筒形チャンバ170内に空気ロックを生成することはない。第二の一方向弁210より上の領域は、キャップ160内の小さい孔を介して大気に通気される。加えて、封止リップ195は、キャップ160が十分に下げられるときに上方円筒形チャンバ165の壁の内部と係合するよう構成される。この封止は、計量装置155が反転されるときに、計量チャンバ155内に残る液体が漏れ出すことを防止する。
【0036】
その上、計量チャンバ60の外部形状を計量チャンバが使用される装置に合わせることによって、本明細書の様々な実施態様において記載したような計量装置を特定のネブライザにおいてのみ使用し得るよう設計し得る。
【0037】
ネブライザに関連して本発明を記載したが、それは限定的ではないこと、並びに、本発明を他の種類の薬剤供給装置と共に利用し得ることが理解されるべきである。
【0038】
現時点で最も実用的且つ好適と考えられる実施態様に基づき例示の目的のために本発明を詳細に記載したが、そのような詳細は専ら例示の目的のためであること、並びに、本発明は開示の実施態様に限定されず、逆に付属の請求項の精神及び範囲内にある変更及び均等な構成をカバーすることが意図されていることが理解されるべきである。例えば、本発明は、可能な限り、任意の実施態様の1つ又はそれよりも多くの機能を任意の他の実施態様の1つ又はそれよりも多くの機能と組み合わせ得ることを想定することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体薬剤を保持する貯槽と、
ある投与量の液体薬剤を前記貯槽に供給するために前記貯槽に結合される計量装置とを含む、
薬剤供給装置であって、
該計量装置は、
上方チャンバと、
該上方チャンバに結合される下方チャンバと、
前記上方チャンバ及び前記下方チャンバの長手軸に沿って前記上方チャンバ及び前記下方チャンバ内を選択的に移動可能なピストンと、
該ピストンの移動に応答して前記下方チャンバと前記貯槽との間の選択的な流体連絡をもたらす弁とを含む、
薬剤供給装置。
【請求項2】
前記弁は、一方向弁であり、前記弁は、前記下方チャンバが前記貯槽と流体連絡しない通常閉塞状態に付勢され、且つ、前記ピストンが前記下方チャンバ内で前記弁に向かって移動する結果として前記弁に加えられる力に応答して、前記下方チャンバが前記貯槽と流体連絡する開放状態に移動するよう構成される、請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項3】
前記弁は、ダックビル弁である、請求項2に記載の薬剤供給装置。
【請求項4】
前記下方チャンバ及び前記上方チャンバは、それぞれ円筒形の形状であり、前記上方チャンバのボアは、前記下方チャンバのボアよりも大きい、請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項5】
前記ピストンは、円筒形の底端部を含み、該底端部は、該底端部に結合されるシール素子を有し、該シール素子は、前記ピストンが前記下方チャンバ内で移動するとき、前記下方チャンバの内壁と係合するよう構成される、請求項4に記載の薬剤供給装置。
【請求項6】
前記ピストンは、前記上方チャンバと選択的に結合されるよう構成されるキャップの一部である、請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項7】
前記キャップが前記上方チャンバに結合されるとき、前記キャップは、前記上方チャンバに対して回転可能であるよう構成され、前記キャップの回転は、前記ピストンを前記下方チャンバ内で移動させる、請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項8】
前記上方チャンバは、その外壁の上にピンを含み、前記キャップは、傾斜したネジ山を含み、前記ピンは、前記キャップが前記上方チャンバに結合されるとき、前記ネジ山と係合するよう構成される、請求項7に記載の薬剤供給装置。
【請求項9】
前記ネジ山は、4分の1回転ネジ山である、請求項8に記載の薬剤供給装置。
【請求項10】
前記キャップが前記上方チャンバに結合されるとき、前記キャップは、前記上方チャンバの前記長手軸に沿って前記上方チャンバに対して移動可能であるよう構成され、前記キャップの移動は、前記ピストンを前記下方チャンバ内で移動させる、請求項6記載の薬剤供給装置。
【請求項11】
前記ピストンは、中央ボアと、該中央ボア内の第二の弁とを含み、前記中央ボアは、前記キャップに設けられる孔を通じて大気に通気される、請求項6に記載の薬剤供給装置。
【請求項12】
当該薬剤供給装置は、前記上方チャンバに選択的に結合し得る1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップを更に含み、該1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップの各々は、前記キャップの前記ピストンと異なる、関連付けられるピストンを有する、請求項6に記載の薬剤供給装置。
【請求項13】
前記キャップの前記ピストンは、第一ストロークを有し、前記1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップのうちの1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップの各々は、関連付けられるピストンを有し、該関連付けられるピストンは、前記第一ストロークとは異なる、関連付けられるストロークを有する、請求項12に記載の薬剤供給装置。
【請求項14】
前記下方チャンバ内に受け入れられるよう構成されるインサートを更に含み、前記下方チャンバは、第一ボアを有し、前記インサートは、前記第一ボアよりも小さい第二ボアを有し、前記1つ又はそれよりも多くの追加的なキャップのうちの1つの追加的なキャップは、関連付けられるピストンを有し、該関連付けられるピストンは、前記インサートと共に使用されるような大きさ及び構成とされる、請求項12に記載の薬剤供給装置。
【請求項15】
当該薬剤供給装置は、ネブライザであり、前記貯槽は、エアロゾル生成システムの一部であり、前記貯槽は、前記液体薬剤の前記投与量を保持し、患者への供給のために、前記液体薬剤の前記投与量が前記エアロゾル生成システムによって噴霧化されるのを可能にする、請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項16】
ある投与量の液体薬剤を薬剤供給装置の貯槽に提供する方法であって、
ある量の前記液体薬剤を計量装置の上方チャンバ及び下方チャンバに供給するステップを含み、前記量は、前記投与量よりも大きく、前記下方チャンバは、前記上方チャンバに結合され、前記量の第一部分は、前記下方チャンバ内に保持され、前記量の第二部分は、前記上方チャンバ内に保持され、前記下方チャンバは、前記下方チャンバ内の前記第一部分の静圧の下で前記貯槽と流体連絡せず、
前記上方チャンバを通じて、前記下方チャンバ内の前記第一部分に、ある力を適用するステップを含み、前記力は、前記第一部分の少なくとも一部を前記下方チャンバから排出させ、前記薬剤供給装置の前記貯槽内に収容させ、前記第二部分は、前記力の適用の後、前記計量装置内に維持される、
方法。
【請求項17】
前記力を適用するステップは、前記上方チャンバ及び下方チャンバ内でピストンを移動することによって前記力を適用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ピストンは、前記下方チャンバの内壁と係合し、前記ピストンが前記下方チャンバ内で移動するとき、封止をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ピストンは、キャップの一部であり、前記力を適用するステップは、前記キャップを前記上方チャンバに結合させるステップと、前記キャップを前記上方チャンバに対して回転させるステップとを更に含み、前記キャップの回転は、前記ピストンを前記下方チャンバ内で移動させる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記上方チャンバは、その外壁の上にピンを含み、前記キャップは、傾斜したネジ山を含み、前記結合するステップは、前記ピンを前記ネジ山と係合させるステップを含み、前記ネジ山は、前記キャップが前記上方チャンバに対して回転されるとき、前記ピンに対して移動する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ピストンは、キャップの一部であり、前記力を適用するステップは、前記キャップを前記上方チャンバに結合させるステップと、前記キャップを前記上方チャンバの長手軸に沿って前記上方チャンバに対して移動させるステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記計量装置は、前記下方チャンバと前記貯槽との間に選択的な流体連絡をもたらす弁を含み、該弁は、静圧の下で通常閉塞状態に付勢され、前記下方チャンバは、前記貯槽と流体連絡せず、前記力を適用するステップは、前記弁を開放状態に移動させ、前記下方チャンバは、前記貯槽と流体連絡する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記キャップの回転は、前記ピストンを前記下方チャンバ内で第一方向において移動させ、前記ピストンは、中央ボアを含み、当該方法は、前記ピストンが前記第一方向と反対の第二方向において移動されるときに、前記中央ボアを大気に通気させるステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記キャップは、複数の提供されるキャップのうちの1つであり、前記キャップ以外の前記複数の提供されるキャップの各1つは、関連付けられるピストンを有し、該関連付けられるピストンは、前記キャップの前記ピストンと異なるピストンを有し、当該方法は、前記多数の提供されるキャップの中から前記キャップを選択するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記キャップの前記ピストンは、第一ストロークを有し、前記キャップ以外の前記複数の提供されるキャップの各1つ又はそれよりも多くのキャップは、関連付けられるピストンを有し、該関連付けられるピストンは、前記第一ストロークと異なる関連付けられるストロークを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記計量装置の計量チャンバ内にインサートを挿入することによって前記下方チャンバを創成するステップを更に含み、前記計量チャンバは、前記上方チャンバを含み、前記キャップの前記ピストンは、前記インサートと共に使用される大きさ及び構成とされる、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2013−509901(P2013−509901A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535969(P2012−535969)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054471
【国際公開番号】WO2011/055243
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)