説明

薬剤送達カテーテル

先端部の組み付けおよび/または目標組織への針供給の精度/再現性が改善された、抗ホイッピング形態部を含む薬剤送達カテーテル。更なる特徴は、針を使用することなく治療薬剤を送達するための空気圧供給装置のカテーテルへの取り付けを含む。

【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
[0001]この出願は、2008年9月2日に出願された米国仮出願第61/093,701号の35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は医療機器に関し、特に、カテーテル、とりわけ薬剤送達カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]操向可能な(steerable)カテーテルは、マッピング(例えば、心臓マッピング)、薬剤送達(例えば、心筋内薬剤送達)、および、アブレーション(例えば、不整脈アブレーション)などの用途で一般に使用される。
【0004】
[0004]操向可能なカテーテルは、偏向可能で柔軟な先端部分と、更に硬質な基端シャフトとを有する。医療処置中に三次元空間内で操向可能なカテーテルのチップ(最先端部)を位置決めすることは、カテーテルの3つの異なる作動形態、すなわち、シャフト方向に沿う並進カテーテル移動、柔軟な先端部分の偏向、および、カテーテルシャフトを回転させて偏向部を目標治療部位へ向けることを伴う。先端部分の偏向を制御するために腱ワイヤ(tandon wire)が含まれる。この腱ワイヤは、その先端がカテーテルの先端チップ近傍に取り付けられた状態においてカテーテルシャフト内でカテーテルシャフトに沿って延びるシースの内側に配置される。カテーテルシャフトの基端に結合される基端カテーテルハンドル内には引張機構が含まれている。引張機構は、カテーテルシャフトの先端部分を偏向させるために腱ワイヤを制御する。腱ワイヤは、カテーテルの先端の偏向可能部分で意図される偏向側へのモーメントをもたらすために、カテーテルシャフト中心から径方向に偏心して配置されている。腱ワイヤが引っ張られると、カテーテルは、腱ワイヤが配置される径方向へ向けて偏向する。偏向部分は、一般に、カテーテルシャフトの残りの部分よりもかなり柔軟に形成される。腱ワイヤがテンションをもって引っ張られると、カテーテルシャフトが「巻き上がろう」とする。先端部分は、カテーテルシャフトの最も柔軟な部分であり、したがって、腱ワイヤが引っ張られると偏向する。偏向される部分を目標部位へ方向付けるため、術者が基端部でカテーテルシャフトを回転させる。偏向部分は、カテーテルが構成された方法によって支配される態様でトルクに応答する。
【0005】
[0005]この種のカテーテルの動作で一般に生じる1つの問題は、カテーテルがシャフトの基端から回転されるときにホイッピング(whipping)するということである。ホイッピングは、カテーテルのその好ましい方向から離れる回転に対する抵抗によって引き起こされる。このホイッピング問題は、カテーテル先端部分が偏向されるときおよび/またはカテーテルが曲がりくねった脈管構造内にあるときに更に悪化する。
【0006】
[0006]著しいホイッピングを伴うことなく、すなわち、ホイッピングを制御して、より有益なトルク応答を示すことができるようにカテーテルシャフト構造を改良する必要性がある。これは、カテーテルチップを標的に向けることができる更に大きな能力を医師に対して与え、それにより、送達精度および処置結果を向上させることができる。
【0007】
[0007]鬱血性心不全に関連する疾患を治療するための薬剤送達カテーテルが提案されてきた。この疾患は循環的に進行し、原因は、梗塞を起こした心筋からの機能の損失を補うための心筋の過大補償である。心臓が過大補償をし続けるにつれて、より多くの組織が梗塞を起こすようになり、解剖学的な弁構造がもはや意図されるように動作できなくなるまで心臓が肥大化する。その結果として生じる合併症は極めて深刻である。鬱血性心不全を治療するための既存の方法は、梗塞組織の除去および心筋の拘束を含む。
【0008】
[0008]梗塞心筋組織を治療するための他の手法は、間葉幹細胞、骨格筋芽細胞、骨髄単核細胞などの細胞の移植であり、これは、梗塞心臓組織の再生を容易にする。以下、これらのタイプの材料およびそれらを含む溶液を治療薬剤と称する。
【0009】
[0009]治療薬剤の送達は、一般に、針ルーメンを通じて治療薬薬剤塊を組織中へ送達する前に針が心筋組織を穿刺することを必要としている。複数の穿刺が必要とされる場合があり、また、それぞれの穿刺は、貫通がもたらす機械的な応力に起因して幾らかの大きさの組織損傷を引き起こす。
【0010】
[0010]針がもたらし得る機械的な外傷を減らしつつ管腔壁中に薬剤を送達する能動的な手段を提供する必要性がある。
【0011】
[0011]カテーテルシャフト、特に先端部の偏向は、カテーテルを曲がりくねった生体構造を通じて誘導して治療物質の送達のために管腔内の様々な場所へ方向付けることができるようにするために必ず柔軟にされる構成要素に対して内部歪みをもたらす。先に簡単に説明されるような操向可能なカテーテルのために使用される方法は、構成要素に対する横荷重および軸線方向荷重の両方を伴う。この変形の1つの結果は、注射針にわたる制御の損失である。効果的な治療のため、医師は、目標組織に対する針の正確な位置を知る必要がある。操向腱部により加えられる張力に起因してカテーテルのチップに対する針位置が変化した場合には、針の穿孔チップを組織壁に対して正確に位置決めすることが困難な場合がある。これらの欠点を考慮すると、針注射装置の針精度および再現性(すなわち、NEAR)を高めて、カテーテルの基端での針の軸線方向並進の結果としてのカテーテルのチップからの針の伸長が正確でかつ再現できるようにする必要性がある。
【0012】
[0012]操向可能な薬剤送達カテーテルの送達および使用中、カテーテルのチップは、チップをカテーテルから脱落させ得る外力を受ける場合があり、それにより、医学的合併症が引き起こされる。カテーテルのチップが患者内で外れた場合、それが場合によっては患者の脈管構造に入る可能性があり、それにより、深刻な医学的合併症がもたらされる場合がある。このようなことが発生しないように、カテーテルチップを先端に対して良好に固定することが必要である。先端チップをカテーテル本体または補強部材に固着する一般的な製造プロセスは、部品に対する接着剤の塗布を必要とする。接着プロセスは、制御することが難しくかつ確認することが難しい変動を有する場合がある。したがって、より信頼できる、すなわち、使用中のチップの脱落に抗するとともに、より簡単な製造プロセスおよび品質制御を与える固定手段が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
ホイッピング
[0013]本発明の1つの態様によれば、カテーテルシャフト構造は、ホイッピングに関して良好な制御を得るためにシャフトの構造特性を変更する。該変更は、所定の制御可能な距離にわたってホイッピングを意図的に引き起こすシャフトまたはその一部の曲げ弾性率の変化を含む。結果として、カテーテルの回転が更に制御可能になるため、装置のトルク応答が改善される。
【0014】
[0014]1つの実施形態では、基端シャフトの一部のみに漸増的ホイッピング形態部が形成される。漸増的ホイッピング形態部は、主にチップにおいて利点をもたらすためにカテーテルのチップの基端側に配置されてもよく、あるいは、ホイッピング形態部は、最大の曲げが生じる導管領域内に配置されるシャフト部分に配置されてもよい。
【0015】
[0015]他の実施形態において、カテーテルは、シャフト回転に応じて1つ以上の最大および最小歪みエネルギ状態を含む部分を有する。カテーテルが回転されるにつれて、トルク応答が最大歪みエネルギと最小歪みエネルギとの間で移動し、それにより、段階的なトルク応答がチップでもたらされる。結果として、カテーテルシャフトが回転されるときにカテーテルのチップを更に容易に制御できる。最大最小エネルギ状態は、シャフトの60度、120度、および、180度回転などの様々な回転角度で生じるように選択されてもよく、この選択は、材料の強度、予期される湾曲、および、ねじれ角などのファクタに関連し得る。最大エネルギ状態と最小エネルギ状態との間の差の大きさは、ねじれ特性および/または曲げ特性にしたがって選択されてもよい。漸増的ホイッピングを生み出すシャフトの部分は、最大および最小エネルギ状態を依然として与えつつキンクまたは他の機械的問題に対する抵抗を増大するように変更されてもよい。
【0016】
[0016]本発明の漸増的ホイッピング形態部の態様は、切り欠きによって、または、本明細書中に開示される或いは開示を考慮して明らかとなる他の方法によって形成されてもよい。
【0017】
[0017]他の実施形態において、カテーテルシャフトのチップを位置決めするための方法は、カテーテルシャフトの最大湾曲領域内に漸増的ホイッピング部分を位置決めすることおよびシャフトを回転してチップを処置部位に位置決めすることを含めて、シャフトチップを処置領域内に配置することを含む。回転ステップは、カテーテル基端で所定のトルク(または、強制的回転)を入力して、入力に追従する対応する出力偏向をもたらすことを含んでもよい。入力回転は、180、120、90、72、60、51度出力をもたらすように選択されてもよい。
【0018】
[0018]他の実施形態において、カテーテルは、回転増分での(回転方向における所定の刻みでの)制御されたホイッピング(controlled whipping in rotational increments)を可能とするように構成され、この場合、医療処置を行なうための手術位置に先端部を位置決めするためにカテーテルの一部が患者の脈管構造内で湾曲形状をとらされる。カテーテルは、基端シャフト部と先端シャフト部とを有するとともに、内部にルーメン(内腔)を有し、基端シャフト部がトルクを該基端シャフト部から先端シャフト部へ伝えるように構成された、長尺な管状シャフトと、第1の曲げ弾性率を有する基端シャフト部の第1の部分と、周方向に離間される空所(void)を有する基端の第2の部分であって、それぞれの空所が第2の部分にわたって長さ方向に延びる、第2の部分とを含む。第2の部分は、該第2の部分に空所が形成されなかった場合に第1の曲げ弾性率よりもかなり高い曲げ弾性率を有する。したがって、空所が第2の部分に形成されなかった場合には、第2の部分の曲げ弾性率は第1の部分よりも高い。第2の部分は、湾曲形状を実質的にとる基端シャフト部に沿う位置を占める。
【0019】
[0019]他の実施形態において、カテーテルの基端シャフト部は第1の部分および第2の部分を含む。第2の部分は、湾曲形状をとらされる基端シャフト部に沿う位置を占めるように構成され、第2の部分は、該第2の部分の周方向部分を占める複数の周方向に離間される空所を含む。
【0020】
[0020]空所は、互いに周方向に離間される第1および第2の端部と、空所内に延び、該端部間に配置される少なくとも1つの隆起部と、隆起部を第2の部分の対向面から長手方向に分離する隙間とを含み、該隙間は第2の部分のための曲げ限度を生み出すように寸法付けられ、それにより、第2の部分が第1の曲率をとると、第2の部分の周方向部分の曲げ弾性率は、空所間で延びる周方向部分の各部に対応する曲げ弾性率の総和によってほぼ規定される。
【0021】
[0021]第2の部分が第1の曲率よりも大きい第2の曲率をとると、該隆起部が該対向面と当接し、それにより、第2の部分の周方向部分の曲げ弾性率が、空所間で延びる周方向部分の各部に対応する曲げ弾性率の総和、および、周方向部分の各空所の各隆起部に対応する曲げ弾性率の総和に等しくなる。これらの実施形態に係る第2の部分の1つの例が図面の図6Bに描かれている。
【0022】
[0022]他の実施形態において、カテーテルは、先端シャフト部と、第1および第2の部分を含む基端シャフト部とを含み、第2の部分は、カテーテル先端部が状態の処置のために手術位置にあるときに湾曲形状をとらされる。漸増的ホイッピングするように構成された第2の部分は、最大でN個の対称軸線を有してもよい。ここで、Nは、漸増的ホイッピングをもたらすために低エネルギ蓄積配向と高エネルギ蓄積配向との間で十分大きい変化を維持しつつ許容される対称軸線の最大数である。エネルギ蓄積の変化が非常に小さい場合、第1の部分の蓄積されたねじれエネルギの解放は、非常に低く、次の低いエネルギ蓄積配向を通り過ぎて次の高エネルギ蓄積配向のポテンシャルエネルギを超え、それにより、シャフトは、その低エネルギ蓄積配向へ増分せずに、該配向を通過して回転する。
【0023】
[0023]他の実施形態において、回転増分での制御されたホイッピングを可能とするように構成されたカテーテルは、基端シャフト部と先端シャフト部とを有するとともに、内部にルーメンを有し、基端シャフト部が該基端シャフト部で回転を強制するように構成された、長尺な管状シャフトと、基端シャフト部で回転を強制するための制御器と、トルクが基端シャフト部に加えられるときに少なくとも何らかの湾曲形状をとらされる基端シャフト部の部分を漸増的にホイッピングするための手段とを含む。
【0024】
針伸長精度および再現性(NEAR)
[0024]本発明の他の態様において、針注射装置の針伸長精度/再現性(NEAR)は、曲げの中立軸線(NA)に対して構成要素を位置決めすることにより高められる。実施形態によれば、NAが針アセンブリの近傍へ移動されてもよく、腱部アセンブリがNAから離れて移動されてもよく、あるいは、これらの実施形態が組み合わされてもよい。本開示のこの態様によれば、マーカまたはカテーテルのチップに対する針の位置は、先端が偏向されるときに不変のままであってもよい。
【0025】
[0025]1つの実施形態によれば、針アセンブリは、NAが針軸線と一致するように他の構造要素に対して配置される。したがって、ゼロ歪み領域にある場合には、針シースは、装置の先端部が偏向されるときに針に対して同じ位置を維持しなければならない。しかしながら、カテーテルの先端を偏向させるために腱部が使用される場合、シースは、腱部に加えられる引張荷重に起因して針に対して圧縮されてもよい。これらのケースにおいて、針アセンブリは、長さの正味変化がゼロとなるようにカテーテルチップの偏向が存在するときに伸長される領域あるいは引張り状態の領域へ移動されてもよい。
【0026】
[0026]あるいは、NAは、他の耐荷重性の構造要素と比べて高い曲げ弾性率を有する構造要素を改質することによって移動されてもよい。NAが好ましい位置へ移動されるように材料が除去されあるいは構造が再設計されてもよい。
【0027】
[0027]1つの実施形態によれば、NEARは、腱部が基端へ引っ張られるときのシャフトの圧縮と(前述したように)腱部がNAから離れて配置されることにより生じるシャフトの曲げとの両方に関連付けられる変形をもたらすように最適化される。1つの例によれば、所定のあるいは好ましい曲げ平面が装置構造において想定される。装置は、腱部を装置の基端へ向けて引っ張ることにより引き起こされる圧縮歪みに対抗するあるいは該圧縮歪みを打ち消す引張り歪み領域に針アセンブリが配置されるように構成される。
【0028】
[0028]1つの実施形態によれば、針注射装置に対して軸線方向剛性を与えるのに適する補強材が、中心に配置されるNAを与えるように配置される支柱を有する。支柱は、せん断ではなく曲げにおいて荷重を支えることができるそれらの能力を向上させるために丸みを帯びたエッジを有してもよい。
【0029】
[0029]他の実施形態において、カテーテルが湾曲形状をとるときに針の精度および再現性を高めるように構成された薬剤送達カテーテルは、基端と先端とを含む長尺シャフトと、シャフトのルーメン内に配置され、該先端に取り付けられる腱部であって、腱部を該基端へ向けて引っ張ることにより先端チップの偏向を可能にするべく該先端の中立軸線からオフセットされる腱部と、
シャフトのルーメン内に配置され、該中立軸線とほぼ一致して配置される針シャフトと、を含む。
【0030】
[0031]他の実施形態において、カテーテルが湾曲形状をとるときに針の精度および再現性を高めるように構成された薬剤送達カテーテルは、シャフトの先端でシャフトのルーメン内に配置される偏向背骨部を含む。背骨部は、先端の軸線方向剛性を高めるように構成されるとともに、中立軸線とほぼ一致して平行に延びる第1および第2のリブを有し、第1および第2のリブが先端・基端スタビライザに固定される。針は、シャフトのルーメン内に配置され、中立軸線に配置される。
【0031】
[0032]他の実施形態において、カテーテルが湾曲形状をとるときに針の精度および再現性を高めるように構成された薬剤送達カテーテルは、
長尺シャフトを含む。該シャフトは、基端と先端とを含み、長尺シャフトの第1の領域が引張り状態におかれかつ第2の反対側の領域が圧縮状態におかれるように第1の方向に偏向するべく再配置される。腱部は、シャフトのルーメン内に配置されて、該先端に取り付けられ、腱部を該基端へ向けて引っ張ることにより先端チップの偏向を可能にするべく中立軸線からオフセットされ、腱部の引張りがカテーテルを圧縮させ、針は、シャフトのルーメン内に配置され、腱部により引き起こされる圧縮を打ち消す第1の領域の部分に配置される。
【0032】
[0034]この実施形態によれば、シャフトの先端部内の構成要素の配置および構造が以下の特徴を有してもよい。断面で見たときに、中立軸線が断面の中心を通過し、一対の補強リブが両側に配置されて該中立軸線にほぼ沿って位置し、針が中立軸線から距離を隔ててかつ補強リブから離れて配置され、腱部は、中立軸線から距離を隔てて、補強リブおよび針から離れて配置される。
【0033】
[0035]他の実施形態では、薬剤送達カテーテルにおける針の精度および再現性を高めるための方法が提供される。この方法では、カテーテルが設けられる。カテーテルは、先端および基端を有するシャフトと、該シャフト内に配置されかつ基端で術者により腱部に荷重がかけられるときに先端チップを偏向させるように構成された腱部アセンブリとを含み、偏向された状態が圧縮歪み領域と引張り歪み領域とをもたらし、荷重がかけられた腱部が正味の軸線方向圧縮をシャフトにもたらす。方法は、荷重がかけられた腱部により引き起こされる正味の圧縮を偏向によって引き起こされる伸長が打ち消すように、偏向によって引き起こされる該引張り歪み領域に針アセンブリを配置するステップを含む。
【0034】
カテーテルチップの操向
[0036]本発明の他の態様において、針カテーテル先端部は、カテーテルが処置部位へ供給されているときに外れを防止するべく確実な機械的係合を与えるチップ−背骨部アセンブリを含む。本発明のこの態様は、補強材または偏向ケージによって支持された比較的脆弱な先端を有する操向可能な薬剤送達カテーテルにおいて特に有用である。これらのカテーテルは、先端部を操向させるために腱部を使用してもよい。しかしながら、カテーテルのチップは、時として、カテーテルが患者の脈管構造またはガイドカテーテルの領域に当接するときに先端部から外れ易くなる。チップは、補強材によって直接に支持されるが、先端で必要とされる柔軟性に影響を与えなることはない。
【0035】
[0037]1つの実施形態によれば、チップと背骨部、外部ジャケット、または、カテーテルの先端の他の適した構造との間に積極的な締まり嵌めを与えるスナップフィットアセンブリが存在する。別の実施形態では、係合がキーロック係合を介してもよい。
【0036】
[0038]機械的な係合は、針カテーテルにおいてしばしば生じる組み立ておよび信頼性に伴う問題を解決する。本発明によって与えられる解決策は、性能に悪影響を与えることなく、他の点では非常に柔軟で繊細な針カテーテルの領域に配置される安定で比較的硬質な要素、すなわち、先端チップに対してチップを固定する。一方、従来技術は接着剤を利用するため、不備が生じる可能性がある。
【0037】
針を伴わない薬剤送達
[0039]本発明の他の態様は、治療薬剤の送達のために管腔壁に刺入する針に依存することなく、薬剤を管腔壁へ送達する能動的手段を提供することに関する。本発明のこの態様によれば、薬剤を高速で組織中へ推し進めるために空気圧供給機構が使用される。
【0038】
[0040]本発明のこの態様は、血管新生因子、MSC、抗増殖剤、抗炎症薬などの治療薬剤の心筋組織への送達を容易にするための装置および方法を含む。心筋壁への薬剤送達の現在の方法は、目標部位に刺入される針を通じた組織への注入に大きく依存する。
【0039】
[0041]1つの実施形態によれば、薬剤送達カテーテルは、基端および先端を含み、基端が先端を処置部位へ案内するように構成され、カテーテルの基端の術者により先端を選択的に偏向できる、長尺シャフトと、基端から先端へシャフトを貫通して延びて先端チップで終端する薬剤送達ルーメンとを含む。このチップは、送達ルーメン内に収容される加圧された治療薬剤を放出するように構成される。また、薬剤送達カテーテルは、治療薬剤源と流体連通する空気圧源を含む基端制御器、および、チップに隣接して配置される目標組織へ治療薬剤を送達するのに十分な速度まで治療薬剤が加速するように治療薬剤を加圧するためのアクチュエータも含む。
【0040】
[0042]この実施形態によれば、基端制御器は、ハウジング、駆動ピン、および、発射機構を含んでもよい。ハウジングは、治療薬剤源と流体連通する流体送達ルーメンと、空気圧源と流体連通する空気圧ルーメンと、基端、流体チャンネル、および、先端テーパ状端部を含む流体チャンネルとを含む。駆動ピンは、流体チャンネルと流体連通する先端と、空気圧ルーメンと流体連通する基端とを有する。発射機構は、加圧ガスを空気圧ルーメン内へ排出するように構成される。
【0041】
[0043]他の実施形態では、治療薬剤を体内の目標組織へ送達するための方法が操向可能なカテーテルを使用して提供される。カテーテルは、基端部と薬剤を送達するためのチップを含む先端部とを有するシャフトと、該シャフトのルーメンに沿って延びてチップで終端する流体送達ルーメンによって薬剤を目標組織へ注入するための制御器とを有する。方法は、カテーテルを処置位置へ進めるステップと、チップを目標組織に隣接してあるいは対向して配置するステップと、流体柱が送達ルーメンを占めるまで治療薬剤を送達ルーメン内へ導入するステップと、送達カテーテル内の流体がチップから推し進められて隣接する目標組織に入り込むように制御器を使用して空気圧源を作動させるステップとを含む。
【0042】
[文献の引用]
[0044]この明細書中で言及される全ての文献および特許出願は、あたかもそれぞれの個々の文献または特許出願が参照によって組み入れられるべく具体的にかつ個別に示されているかのように、また、それぞれの該個々の文献および特許出願が任意の図面を含めて本願に十分に示されているかのように、参照によって同じ程度まで本願に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】配置可能な針をその先端に有する偏向可能なカテーテルのシャフトの一部の側断面図である。カテーテルは、生体内腔または管内に配置される目標組織部位へ治療薬剤を送達するために使用されてもよい。
【図2】例示を目的として一定の縮尺で描かれない図1のカテーテルの側面図である。カテーテルは基端シャフト部と先端シャフト部とを含む。先端シャフト部は非変形状態で示されている。先端における偏向された位置は仮想線で示されている。また、この図は、カテーテル先端を目標位置へ操向または案内するために使用されるカテーテルのための制御部の例も示している。
【図3】先端が患者の心室内に配置される状態の図2のカテーテルの概略図である。先端に隣接するカテーテルシャフト部は、大動脈弁内に配置される漸増的ホイッピング形態部を含む。漸増的ホイッピング形態部は、カテーテルが所定位置へ操作されるときに先端を介してより大きな制御を与える。
【図4A】カテーテルシャフトの基端部の一部の1つの実施形態の斜視図を示している。シャフトは、シャフトの曲げ剛性およびねじり剛性を増大させる単一の螺旋状に巻回されたワイヤを含む。
【図4B】カテーテルシャフトの基端部の一部の1つの実施形態の断面図を示している。シャフトは、シャフトの曲げ剛性およびねじり剛性を増大させる単一の螺旋状に巻回されたワイヤを含む。
【図4C】カテーテルシャフトの基端部の一部の他の実施形態の斜視図を示している。シャフトは、シャフトの曲げ剛性およびねじり剛性を増大させる2つの螺旋状に巻回されたワイヤを含む。
【図4D】カテーテルシャフトの基端部の一部の他の実施形態の断面図を示している。シャフトは、シャフトの曲げ剛性およびねじり剛性を増大させる2つの螺旋状に巻回されたワイヤを含む。
【図5】先端を含むその近傍のカテーテルシャフトの一部の斜視図である。カテーテルシャフトのこの実施形態は、先端に隣接する漸増的ホイッピング形態部の第1の実施形態を含む。
【図6A】図5のカテーテルシャフトの隣接部分における漸増的ホイッピング形態部の第2の実施形態を示している。
【図6B】図5のカテーテルシャフトの隣接部分における漸増的ホイッピング形態部の第3の実施形態を示している。
【図7A】180度漸増的ホイッピング形態部を有するカテーテルシャフトの断面図を示している。
【図7B】180度漸増的ホイッピング形態部を有するカテーテルシャフトの断面図を示している。
【図7C】180度漸増的ホイッピング形態部を有するカテーテルシャフトの断面図を示している。
【図8A】120度漸増的ホイッピング形態部を有するカテーテルシャフトの断面図を示している。
【図8B】120度漸増的ホイッピング形態部を有するカテーテルシャフトの断面図を示している。
【図8C】120度漸増的ホイッピング形態部を有するカテーテルシャフトの断面図を示している。
【図9A】基端部分がハイポチューブから形成されて高度のねじり剛性を有するカテーテルにおける基端および先端のそれぞれでの入力および出力回転を示すプロットである。プロットは、時間に伴う回転角度の変化を示している。プロットは、基端でのそれぞれの強制的な回転におけるシャフトの先端における出力回転角度のほぼ理想的な段階的変化(ホイッピングを最小限に抑えたいという要望に関して)の実証を目的とする。
【図9B】基端部分がハイポチューブから形成されて高度のねじり剛性を有するカテーテルにおける基端および先端のそれぞれでの入力および出力回転を示すプロットである。プロットは、時間に伴う回転角度の変化を示している。プロットは、基端でのそれぞれの強制的な回転におけるシャフトの先端における出力回転角度のほぼ理想的な段階的変化(ホイッピングを最小限に抑えたいという要望に関して)の実証を目的とする。
【図9C】シャフトの基端での強制的な回転に応じた、時間に伴う2つのシャフトタイプのそれぞれにおける出力回転角度を示すプロットである。第1のシャフトは、本開示に係る漸増的ホイッピング形態を組み込まないブレード付きシャフトである。先端での回転応答は、基端でのほぼ360度の回転ごとに生じる。高度のホイッピング。第2のシャフトは、ほぼ90度の回転ごとに低エネルギ蓄積配向を有する。段階的な出力回転は、より厳密に入力回転(角度)に追従し、したがって、より制御可能である。
【図10】図1の10−10線に沿うカテーテルシャフトの先端の断面図である。また、断面における中立軸線も示されている。
【図11】カテーテルにおける針伸長精度および再現性(NEAR)を最適化するように構成されたカテーテルシャフトの第1の実施形態の先端の断面図である。この実施形態において、カテーテルのための針は、断面の中立軸線と一致してあるいはその近傍に配置される。
【図12】図1のカテーテルの偏向背骨部の斜視図である。偏向背骨部は、図1のカテーテルの先端の復元または圧縮ケージの一部である。
【図13】材料が背骨部の補強リブから除去された状態を示す図12の背骨部の第2の実施形態である。
【図14】一対のリブが背骨部の両側に配置された状態を示す図12の背骨部の第3の実施形態である。
【図15】カテーテルにおける針伸長精度および再現性(NEAR)を最適化するように構成されたカテーテルシャフトの第2の実施形態の先端の断面図である。この実施形態は、図14に示される背骨部に類似する背骨部を含んでおり、NEARを最適化してカテーテルシャフトの先端の制御可能性を高めるために図1のカテーテルの針アセンブリおよび腱部アセンブリを更に移動させる。
【図16】図15の実施形態における先端を含むその近傍のカテーテルシャフトの一部の側面図である。この図は、NEARに関連する偏向されたシャフトにおける歪み特性を示している。
【図17A】本発明の他の態様に係るカテーテルチップ・背骨部アセンブリの側面図である。これらの実施形態によれば、チップおよび背骨部の先端スタビライザ部は連結するように構成され、それにより、干渉する機械的係合が形成される。
【図17B】本発明の他の態様に係るカテーテルチップ・背骨部アセンブリの側面図である。これらの実施形態によれば、チップおよび背骨部の先端スタビライザ部は連結するように構成され、それにより、干渉する機械的係合が形成される。
【図18A】本発明の他の態様に係るカテーテルチップ・背骨部アセンブリの側面図である。これらの実施形態によれば、チップおよび背骨部の先端スタビライザ部は連結するように構成され、それにより、干渉する機械的係合が形成される。
【図18B】本発明の他の態様に係るカテーテルチップ・背骨部アセンブリの側面図である。これらの実施形態によれば、チップおよび背骨部の先端スタビライザ部は連結するように構成され、それにより、干渉する機械的係合が形成される。
【図19】図17〜図18の組み付けられた背骨部およびチップの部分の側面図である。
【図20】背骨部の先端スタビライザおよび先端チップにおける第2のアセンブリの分解斜視図である。
【図21】薬剤送達カテーテルの他の実施形態の側面図である。カテーテルのこの実施形態は、図1のカテーテルの場合のように穿刺針を使用することなく目標組織へ治療薬剤を送達するように構成される。
【図22】図23のカテーテルのための空気圧供給装置の概略部分側断面図である。
【図23】患者の左心室内における図22のカテーテルの先端の概略図である。図面は、目標組織部位に配置されるカテーテルのチップを描いている。
【図24】患者の左心室内における図22のカテーテルの先端の概略図である。図面は、目標組織部位に配置されるカテーテルのチップを描いている。図23において「図24」の符号が付された部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[0069]図1は、カテーテル基端部分4とカテーテル先端部分6とを有する長尺なカテーテルシャフト2を含む心室または心房の偏向可能なカテーテル1の好ましい実施形態を示している。言うまでもなく、カテーテル1の部分Aと部分20の直ぐ先端側とに描かれる破断は、これらの部分の実際の長さが本開示に係る実際のカテーテル構造において図1に示されるよりもかなり長いことを示している。例えば、ルーメンを満たす先端材料(図1にクロスハッチングを用いて示される)と背骨部50の先端スタビライザ56との間で延びる偏向部分Aは、腱部10a(後述する)を使用して容易に偏向することが見込まれるため、その長さがシャフト直径と比べて図1に示されるよりもかなり長くなければならない。
【0045】
[0070]カテーテル1は、本明細書中で示されるように、カテーテル部分の機能目的およびカテーテル部分の意図される用途に関して(あるいは、一般用途のカテーテルにおける)特定のねじり剛性、軸線方向剛性、および/または、曲げ剛性を有するように形成される。剛性は、カテーテル1の性能を最適化ことを目的とする。カテーテル先端部分6はカテーテル基端部分4よりも柔軟である。先端部分6は、図2に仮想線(6−D)で描かれるようにそれが横方向に容易に偏向され得るように十分である。カテーテル1は、基端部分と先端部分とにわたって延びる少なくとも1つの腱部10を引っ張ることにより先端6で偏向され得る。腱部シース10bを貫通して延びる腱部10aは、先端部分6に取り付けられるとともに、カテーテル1の制御部8に配置される操向ガイド10cによって制御される(腱部10a、シース10b、および、操向ガイド10cは総称して腱部アセンブリ10と称される)。例えば図2に示されるように先端部分6を偏向できる腱部アセンブリの例は、米国特許出願公開第2005/00780844号に開示されている。開示された実施形態によれば、操向ガイド10cを使用するチップ60の偏向または制御は、以下で更に詳しく説明するように、先端部分6のための中立曲げ軸線から離れるように先端部分6の腱部接続点を移動させることにより高められる。
【0046】
[0071]図2を参照すると、カテーテルはその基端に制御部8を有しており、制御部8は、シャフト2操向制御器12と、操向ガイド10と、針制御器16と、治療薬剤を処置部位へ送達するための接続ポート18とを含む。操向制御器12およびガイド10c、例えば米国特許出願公開第2005/00780844号に記載されるものは、チップ偏向のための1つ以上の腱部を引っ張ることによって目標部位へ行く途中および目標部位にいる間にシャフト2の偏向を制御するべく使用される。
【0047】
[0072]針5aは、治療薬剤を処置部位へ送達するために使用される。針5aがカテーテルチップ60から引っ込みかつ延び出るための通路を形成するためにシース5bがカテーテルの基端から先端へ延びる。針5aの動きは、針制御器5cによって制御される。以下、針5aおよびシース5bを針アセンブリ5と称する。本発明の実施形態として考えられる針アセンブリおよび制御器は、米国特許出願公開第2005/00780844号および米国特許出願第12/022,047号において見出される。注射針を治療薬剤と流体連通させるために1つ以上の接続ポート18が使用される。接続ポート18は圧力レギュレータ/センサを含んでもよい。本発明の1つの実施形態において、針アセンブリ5および制御器5cは、チップ60から高速で薬剤を放出するための発射機構を含む。チップ60から放出される薬剤の勢いは、尖った針の埋め込み端ではなく隣接する目標組織を貫通することに依存される。この場合、制御器5cは、以下で更に詳しく説明するような発射機構を含んでもよい。
【0048】
[0073]言うまでもなく、針アセンブリ5の実施形態は、既存の偏向カテーテルをレトロフィットすることにより実施されてもよい。したがって、本発明の針アセンブリ態様が既存のカテーテルで針アセンブリ5に置き換えることによって実施されてもよいことを理解すべきである。本発明の他の態様を含むように既存のカテーテルをレトロフィットしてもよいことは言うまでもない。
【0049】
[0074]幾つかの実施形態では、図1に描かれるように、腱部アセンブリ10がカテーテルシャフトのほぼ中心に配置され、また、針アセンブリ5が基端部分4の長さの少なくとも一部にわたって腱部アセンブリ10の周囲に巻き付けられる。巻き付け数および巻き付け位置は、例えばカテーテルが特定のタイプの曲がりくねった生体構造内に配置されるときにカテーテルの有用性を高めるためのような、特定の目的に適するように変えられてもよい。
【0050】
[0075]カテーテル先端部分6は、軸線方向に剛性があるが限られたあるいは適切に限られた曲げ剛性を伴う復元または圧縮ケージ7を含む。圧縮ケージ7は、カテーテル外側シャフト2の先端部分ハウジング2a部と、偏向背骨部50とを含む。以下で更に詳しく説明するように、偏向背骨部50は、先端スタビライザと基端スタビライザとを接続する1つ以上の長尺なリブとして構成されてもよい。リブは、図1では、偏向部分Aにわたって延びている。したがって、リブは、先端チップが所定位置へ操向されるべきときに偏向部分Aが容易に偏向できるように、曲げにおいて適切に柔軟でなければならない。
【0051】
[0076]先端カテーテルシャフト2aは、カテーテル先端部分6内に収容されるカテーテルの内部構成要素のための外側パッケージング層としての役目を果たす。圧縮ケージ7は、先端部分6に対してその曲げ剛性をそれほど増大させることなく縦方向の(軸線方向)剛性/強度を与え、それにより、操向ガイド10cにより腱部10aを介して先端部分6を容易に偏向できる。針5aとシース5bとを含む針アセンブリ5は、図示の実施形態では、先端部分6にわたって腱アセンブリ10と平行に延びるとともに、先端部分6にわたってシャフトルーメンの中心に配置される。他の実施形態では、以下で更に詳しく説明されるように、針アセンブリ5が中心から外れて配置されてもよい。カテーテルのチップ60には、チップ60が処置部位に配置されるときに針5aが通過できるようにチップ60に形成される通路60aが存在する。
【0052】
[0077]カテーテルシャフト2の基端部2bは、先端部分2aを処置部位へ送る。シャフトの基端部2bの1つの機能は、操向制御器12を介して加えられるトルクをシャフトの全長にわたって伝えることである。シャフト部2bの曲げ剛性および軸線方向剛性も重要である。
【0053】
ホイッピング
[0078]開示の1つの態様によれば、カテーテルシャフト基端部2bの曲げ弾性率は、チップ60の配向制御を手助けして処置薬剤の正確な配置を確保するように変更される。先端部2aの正確な配置と関連する課題は、図3に示される例を考慮することによって理解できる。ここでは、カテーテル1が大動脈弁を越えて配置され、また、目標組織、例えば心室の壁に沿って三次元空間内に配置される梗塞組織TおよびTに隣接してチップ60を配置するべく先端部6が関節式に曲げられる。
【0054】
[0079]チップ60が目標組織部位に正確に配置されるように、先端部6が腱部アセンブリ10/操向ガイド10cを使用して曲げられる。チップ60の完全な三次元変位は、カテーテルシャフト2に対してトルクを加える操向ガイド10cと操向制御器12との組み合わせによって達成される。したがって、チップ60は、目標組織を処置するために先端部6の回転と曲げとの組み合わせによって三次元空間内に配置されてもよい。
【0055】
[0080]言うまでもなく、トルクTが加えられると、あるいは、恐らく更に正確には、操向制御器12を介して回転が強制されると、すなわち、強制回転が基端4に加えられると、ワインドアップがシャフトに生じて、その後、端部6に過渡的な動的応答が生じる。この過渡応答はホイッピングとして知られる。先端部分6でのホイッピングの度合いは、トルク軸線に対するカテーテル部分の配向、先端部6の基端側のシャフトのねじり剛性、および、ダンピングの程度などのファクタに依存する。ホイッピングは、時として、処置部位T、Tなどにチップ60を正確に配置することを困難にする可能性がある。
【0056】
[0081]本発明の1つの態様によれば、カテーテル1を更に制御できるようにするべく基端部4のカテーテルシャフト2bが変更される。特に、所定の制御可能な距離にわたってホイッピングを目的をもって増加的にもたらすようにシャフト2bの撓み剛性または曲げ剛性が設定される実施形態が考えられる。結果として、先端部分6のトルク応答が向上される。
【0057】
[0082]先に暗示したように、ホイッピングの物理的基盤は、カテーテルシャフトが患者の大動脈弓または他の湾曲した生体構造などの湾曲導管内またはガイドカテーテルの湾曲部分内に閉じ込められるときのカテーテルシャフトの曲げ弾性率または曲げモーメントの回転方向の向き(回転配向:rotational orientation)に伴う変化である。これにより、シャフトに蓄えられるエネルギの量が、シャフトが湾曲導管内に閉じ込められる間に回転されるシャフト部の回転角度に伴って変化し、それにより、ホイッピングをもたらす最大および最小エネルギ回転配向が生じる。意図せずに引き起こされるホイッピングは、基端を回転させることにより装置の先端回転配向を適切に制御することを非常に困難にしあるいは不可能にする可能性があるため、多くの従来の経皮的カテーテルにおける設計目標は、特に回転配向が望まれる場合には、ホイッピングを最小限に抑えることである。カテーテルシャフトの設計では、ホイッピングを最小限に抑えるために様々な特徴および状態が考慮される。一般に、曲げ弾性率に対する剛性率の比率が最も高いシャフトでは、少なくともホイッピングおよびワインドアップが生じる。また、シャフトが大動脈弓などの湾曲導管内に閉じ込められた状態で回転されるにつれて非常に均一な曲げ弾性率または曲げモーメントを有するようにシャフトを設計して加工すると、ホイッピングが最小になる。残念ながら、完全な対称性を有するカテーテルを製造してホイッピングを打ち消すことは不可能であり、実用的ではなく、あるいは、恐らく望ましくはなく、また、一般に、その全長にわたって完全な対称性を有するカテーテルシャフトを製造することも不可能でありあるいは実用的ではない。このように、ある程度のホイッピングは、シャフト部が曲げ形状をとらざるを得ないときにも存在する。
【0058】
[0083]基端部2bにおける既存のカテーテルシャフト部分が図4A〜図4Dに示されている。図4Aおよび図4Bは、コイルワイヤ15構造を伴うシャフト14を示している。この構造では、コイルワイヤ15がカテーテルシャフト14の壁内に配置されて示されている。コイルが同様の効果を伴ってシャフト壁の内面または外面に沿って固着されてもよいことは言うまでもない。コイルワイヤは、高分子カテーテルシャフトの軸線方向剛性および曲げ剛性を増大させる。また、トルクがコイルワイヤに沿って伝えられてカテーテルシャフトを回転させるため、トルク制御が改善される。
【0059】
[0084]図4Cおよび図4Dは、ねじれに更に耐えるより強力な全体構造を形成するためにストランドが反対方向に周回されて編み込まれて成る簡単な2ストランドブレード17a、17b構造を有する基端部2bにおけるカテーテルシャフト部分16を示している。断面(図4D)は、ストランドがカテーテルシャフト基端部分2bの壁の内側層17aと外側層17bとの間に配置されてもよいことを示している。また、図4Aおよび図4Bにおいて前述したコイルワイヤの例に関して示されるカテーテルシャフトと同様な単層状のカテーテルシャフト内にブレードを共押し出しすることもできる。ブレード構造は、主に湾曲導管内に閉じ込められるカテーテルにおいて曲げ弾性率に対する剛性率の比率が増大するため、単一方向コイルと比べてトルク応答が改善されている。湾曲導管内のシャフト部の曲げ弾性率が低ければ低いほど、曲げの回転配向に伴う曲げ弾性率の意図しない変化が低くなり、それにより、シャフト蓄積エネルギの変化が小さくなる。閉じ込め湾曲導管の基端側(および先端側)のシャフト部では、シャフト剛性率が高ければ高いほど、所定量のシャフト蓄積エネルギを蓄えるあるいは解放するために必小さい回転変化が必要とされる。
【0060】
[0085]これらの既存の解決策14、16のそれぞれは、カテーテルシャフトのトルク応答を向上させる。それにもかかわらず、これらの解決策はカテーテルホイッピングを起こし易く、そのようなカテーテルホイッピングは、第1の端部が回転されるにつれてカテーテルシャフトがエネルギを蓄え、何らかの入力角度でカテーテルがそのエネルギを解放するときに生じ、それにより、入力角度と再び一致するまで比較的大きい角度にわたって急速に回転する出力角度をもたらす。この現象は、良く知られており、カテーテル設計の悩みの種であり続けている。
【0061】
[0086]図2〜図3を再び参照すると、前述したように、カテーテルシャフトの基端部分2bは、トルクの大部分をユーザから装置の先端へ伝える役目を担う。好ましい実施形態では、先端部2bの部分20は、チップ60が三次元空間内で関節式に曲げられるときにチップ60の制御可能性を高めるように変更される。後述される部分20の実施形態は、既存のカテーテルシャフトに形成されてもよく、あるいは、先端6の近傍の更なる部分に対応してもよい。部分20は、トルク応答を向上させることができる図5〜図6に描かれる様々なカット形態部を備えてもよい。更なる他の実施形態では、カテーテルの内部構成要素、すなわち、シャフト2bのルーメン内に配置される構成要素が制御可能性を高めるように配置されてもよく、あるいは、シャフト断面形状が同様の利点を与えるように変えられてもよい。
【0062】
[0087]図5は、先端6近傍のカテーテル1の部分図であり、ホイッピングを制御するための部分20の1つの例、すなわち、円形開口を基端部分2b内またはその近傍に含む。この場合、部分20は、シャフト部2bの周囲に60度間隔で配置される穴または開口21の列を含む。ここで、トルク応答を先端6で向上させるための図5のこれらの円形穴21の列の能力について説明する。
【0063】
[0088]回転の開始時に、シャフト外径に作用する摩擦と、ダンピング(および、シャフトに予め設定された任意の曲げに打ち勝つこと)に起因するエネルギ損失は、シャフトの先端部が回転し始める前にトルク/強制回転がシャフトの基端に加えられることを必要とする(すなわち、シャフトの先端が回転し始める前に、何らかの大きさのエネルギがシャフトに蓄えられて、何らかの大きさのエネルギが熱へ変換される)。摩擦およびダンピングに打ち勝つために必要とされるこのねじれ回転は「ワインドアップ」と呼ばれる。ダンピングは、シャフトの内部摩擦であると考えられ得る。システムの摩擦を低下させると、ワインドアップが少なくなる。ある場合には、静止摩擦係数と動摩擦係数との間の差あるいは装置の回転配向に伴う摩擦変化が、ホイッピングであるように思われるワインドアップの変化を引き起こす可能性がある。一般に、他の全ての特性/状態が等しければ、摩擦係数が低い、曲げ弾性率が低い、剛性率が高い、あるいは、湾曲が小さい導管内に閉じ込められる装置は、ワインドアップが小さい。一般に、回転配向制御が望まれる殆どの経皮的装置構造では、ワインドアップは主な懸案事項でもない。これは、ホイッピングを最小限に抑える構造が、通常は、低摩擦/血液潤滑脈管構造環境でホイッピングが適切に制御される前にワインドアップを許容できる程度まで制御するからである。
【0064】
[0089]図3に示される位置でカテーテル1のために基端4に加えられるトルクTにより引き起こされる回転(または、強制回転)中、シャフト2の蓄積エネルギの大きさは、基端4と先端6との間の回転変位の差が大きくなるにつれて増大し、そのため、より大きなトルクが基端4に加えられる必要がある。先端6が回転し始めると、先端6の回転量を基端4と比べて増大させる(強制回転に対するねじれ抵抗を基端で減少させる)ことにより、この蓄積エネルギがシャフトへ戻される。基端4が回転されると、先端6は、シャフトが(隣接する配向に対して)最小量のエネルギを蓄える回転配向に近づくときに急速に回転しかつ該回転配向から離れるときにゆっくりと回転する傾向がある。シャフトの基端が回転されると、シャフト2bの先端6は、シャフト2が(隣接する配向に対して)最大量のエネルギを蓄える回転配向に近づくときにゆっくりと回転し、その後、(隣接する配向に対して)最大のエネルギ蓄積を伴う配向を飛び越える(急速に回転する)傾向がある。
【0065】
[0090]したがって、シャフト2bの基端4が回転されると、シャフト2bの先端6は、最小シャフト蓄積エネルギまたはその付近により長期間にわたって保たれて、最大シャフト蓄積エネルギが存在する配向を越えて急速回転する傾向がある。本発明の実施形態は、チップ60を再配置するべくカテーテルシャフト2が回転されるにつれて漸増的または制御可能なホイッピング挙動を与えるため、回転角度に応じてシャフト2の曲げ弾性率を変える。
【0066】
[0091]シャフトが曲げ軸線を回転させるにつれて、例えば図3のカテーテル1が図3の平面内で1つの軸線を中心に回転されるにつれて非常に均一な曲げ弾性率または曲げモーメントを有するようにシャフトを設計して加工すると、ホイッピングが最小になる。このことは、通常、応力解放されるあるいは均一に応力がかけられる材料を使用する均一に同心の/径方向に対称なシャフト断面構造が必要とされることを意味する。他の全ての特性/状態が等しければ、曲げ弾性率が最も低いシャフトで生じるホイッピングは最小である。これは、想定し得る回転配向に伴うあるいは寸法/材料変化の結果としての曲げ弾性率または曲げモーメントの変化量が曲げ弾性率の低いシステムにおいて制限される/小さいからである。したがって、シャフトの曲げ配向(回転)の変化に伴う蓄積エネルギ変化は更に低い。また、一般に、他の全ての特性/状態が等しければ、曲げ弾性率が高ければ高いほど、閉じ込め湾曲導管に加えられる力が大きくなり、したがって、摩擦力およびワインドアップが大きくなる。
【0067】
[0092]ホイッピングの他の主要な根源は、湾曲導管内に閉じ込められるシャフト部にプリセットされる湾曲(曲げ)である。プリセット湾曲は、しばしば、カテーテルが湾曲状態でパッケージングされる結果として与えられる。このプリセット湾曲と導管の湾曲とが合わせられると、シャフトは、それに対して最小の曲げモーメントが加えられ、したがって、最小のエネルギを蓄えている。2つの湾曲が正反対である場合、シャフトは、それに対して最大の曲げモーメントが加えられ、したがって、最大のエネルギを蓄えている。このように、シャフトは、回転されるにつれて常に蓄積エネルギの変化に晒され、したがって、ホイッピングを有する。一般に、他の全ての特性/状態が等しければ、シャフトが真っ直ぐであればあるほど、すなわち、プリセット湾曲がなければ、あるいは、使用状態下でプリセット曲げを受け入れる傾向が小さければ小さいほど、シャフトが有するであろうホイッピングが小さくなる。
【0068】
[0093]シャフトシステムの剛性(剛性率)またはダンピングを増大させると、ホイッピングを最小限に抑えるのに役立つことができる。シャフトの剛性率が高ければ高いほど、シャフトへ戻されるあるいはシャフトから除去される任意の所定量の蓄積エネルギによる先端回転の変化が小さくなり、したがって、ホイッピングが小さくなる。ダンピング材料をシャフトで使用することにより、シャフトの先端がシャフトの基端に対して回転するにつれてエネルギが使い果たされ、それにより、エネルギの戻り状況中にわたってシャフトの先端による余分な回転量が減少される。これは、そのエネルギの一部が熱の形態で使い果たされる(減衰される)からである。しかしながら、通常、これは重要な設計手段ではない。なぜなら、ダンピングが大きければ大きいほど、シャフトを回転させることが難しくなる(必要とされるトルクが高くなる)からである。他の全ての特性/状態が等しければ、曲げ弾性率に対する剛性率の比率が最も高いシャフトに生じるホイッピングおよびワインドアップが最小になる。
【0069】
[0094]剛性率(単位シャフトねじれ当たりの印加トルク)は、トルクが加えられる場所とトルクが抵抗される場所との間のシャフトの長さに反比例する。したがって、他の全ての特性/状態が等しければ、回転が加えられる場所(トルクが加えられる場所)と湾曲導管(トルクが抵抗される場所)との間のシャフトが長ければ長いほど、ホイッピングおよびワインドアップが大きくなる。他の全ての特性/状態が等しければ、閉じ込め導管に起因するシャフトの先端部の湾曲は、閉じ込め導管に起因するシャフトの基端部の湾曲よりも大きいホイッピングおよびワインドアップを引き起こす場合がある。
【0070】
[0095]回転配向に伴って曲げ弾性率が変化する多くのシャフトまたはシャフト状構造またはアセンブリでは、該変化が少なくともシャフトの長さの一部に沿って比較的規則的である。これは、特に、寸法不均一性、断面径方向対称性の欠如、および/または、加工により生じる応力によって引き起こされる曲げ弾性率変化に当てはまる。ホイッピングは、そのようなシャフトでは、シャフトおよび/またはシャフトの関連する構成要素および/またはシャフトの内面が、シャフトの長さに沿って異なる回転配向でねじられる/該配向をとるようにすることによって最小限に抑えることができる。これは、湾曲導管内に閉じ込められるシャフトの一部がエネルギをシャフトへ戻している間、シャフトの他の部分のエネルギをシャフトから除去しているため、したがって、シャフトエネルギ蓄積の全体の変化が減少されるため、有効である。一般に、他の全ての特性/状態が等しければ、湾曲導管の長さの範囲内でねじれが大きければ大きいほど、ホイッピングが小さくなる。
【0071】
[0096]好ましい実施形態において、カテーテルトルクシャフト(基端部分2b)は、湾曲導管、例えば図3の大動脈弓内に配置されるカテーテルシャフト2の部分で回転角度に伴って変動する曲げ剛性特性を生み出すように変更される。前述したように、シャフトの曲げ特性を選択的に変えることでトルク応答に伴って高蓄積エネルギ状態と低蓄積エネルギ状態との間で変えることにより、基端4に加えられるトルク(または、強制回転)に対するチップ60の応答の制御可能性を高め得る漸増的なホイッピング効果が与えられると考えられる。
【0072】
[0097]したがって、1つの実施形態において、湾曲導管内に閉じ込められるときに漸増的ホイッピング制御を行なうようになっているシャフト構造は、所望の回転漸増間隔でシャフトの曲げ弾性率を増大させるあるいは減少させる特徴である。すなわち、曲げ弾性率が低い長手方向シャフト部は、更に高い曲げ弾性率を有する長手方向シャフト部によって回転が分離される。
【0073】
[0098]幾つかの実施形態において、曲げ弾性率の変化は、例えば図5に切り欠き21で描かれるようにシャフトから材料を選択的に除去してシャフトの曲げ弾性率を減らすことによって得られてもよい。切り欠きは、意図される用途に応じて多くの形状をとることができる。そのため、部分20は、開示内容を踏まえて分かるように、その特定の形状に起因する特定の機能目的を果たすように形成される。切り欠きまたは材料の除去は、それがシャフト2の外径(OD)の増大またはシャフト2の内径(ID)の減少をもたらさないため、好ましい。図5において、曲げ弾性率が低い方の長手方向部分は、それらに穴のラインまたは列がカットされた部分であり、また、曲げ弾性率が高い方の長手方向部分は、それらの間でシャフトがカットされていない部分である。(断面で見たときに)シャフトの周囲に配置されるそのような列の数またはこれらの列の周方向長さは、制御される漸増的回転の数を増大させるために(例えば単一の制御されない回転とは対照的に)あるいはホイッピングが生じるときに回転速度を調整するためにそれぞれ変えられてもよい。
【0074】
[0099]幾つかの実施形態では、長手方向部分ごとに1つの切り欠きだけが必要とされる。1つの例では、曲げ弾性率を減少させる切り欠きのラインまたは等価な形態部が回転方向に約120°離間されてもよい。このタイプのシャフトが湾曲導管内に閉じ込められると、該シャフトは、切り欠きのラインまたは等価な脆弱領域が湾曲導管の内面と位置合わせする方向へ漸増的にホイッピングする傾向がある。これらの形態部が約120°離間される場合には、3つのそのような回転増分が存在する。180°離間されるそのような穴のライン、切り欠き、または、脆弱領域(曲げ弾性率の減少を引き起こす)が2つしか存在しない場合、シャフトは、この場合も先と同様に、これらの穴のラインが湾曲の内面と位置合わせする方向へ漸増的にホイッピングする傾向がある。したがって、180°間隔においては、2つの回転増分が存在する。シャフトに沿った脆弱領域ではなく、代わりにシャフトが補強されてもよい。すなわち、「通常の」または変更されない低い曲げ弾性率の長手方向シャフト部によって分離される高い曲げ弾性率の長手方向シャフト部を形成するために、シャフト周りの角度方向で漸増的に材料および/または構成要素がシャフト壁および/またはシャフト構造に加えられてもよい。しかしながら、これは、それによって許容できない大きさまでシャフトODが増大しおよび/またはシャフトIDが減少する可能性があるため、望ましくない。あるいは、より好ましくは、高い曲げ弾性率の長手方向シャフト部を形成するためにシャフト壁に加えられる材料および/または構成要素が「通常の」シャフト、材料を置き換えあるいは移動させてもよく、また、シャフトODの増大および/またはシャフトIDの減少が最小限に抑えられあるいは完全に回避される。
【0075】
[0100]幾つかの実施形態において、部分20は、使用されるその構造または材料のいずれかにおいて異なる曲げ弾性率を生み出すように構成され、それにより、漸増的な回転を引き起こすべく材料が除去されると、シャフトのこの部分の(回転の)平均曲げ弾性率が隣接するシャフトの残りの部分のそれと等しくなるあるいは近くなる。このタイプの構造には少なくとも2つの利点がある。第1に、この部分の最小曲げ弾性率が他のシャフト部分に対して高くなる場合があり、それにより、閉じ込め湾曲導管内での曲げ/湾曲は、シャフト2が回転されて脆弱部分が歪まされるにつれて導管内で生じ得るキンクまたは他のタイプの破損を生じ易くならない。シャフトのこの部分の最小曲げ弾性率がシャフトの隣接する部分よりもかなり小さい場合には、シャフトの隣接する部分の湾曲がこの最小曲げ弾性率部分へ移動される傾向があり、それにより、場合によっては、カテーテルのこの部分でダンピング歪みあるいは許容できない弱体化が引き起こされる(例えば、キンクが起こる可能性が増大し、剛性率が下がり、ねじれ不足になり、および/または、圧縮または引張において軸線方向強度が低下し、あるいは、カテーテルの内部構成要素がダンピングする)。第2に、幾つかの実施形態では、最小および最大の歪みまたは蓄積エネルギ(または、最大および最小の曲げ弾性率)の差が、非常に脆弱なシャフト部を回避しつつ維持されあるいは増大されてもよい。例えば、ブレード付きのシャフトの部分は、そのジャケットが、シャフト形成中に高弾性率ジャケットを与える図4に関して前述したプラスチックシャフトまたはプラスチック混在シャフト部分16、17と置き換えられる。そのようなジャケットは、隣接する部分よりも高いあるいは低い弾性率によって形成される周方向に離間された部分を有することができる。
【0076】
[0101]また、そのようなジャケットは、その後のカテーテル加工でその識別を可能にしてシャフト長手方向でのその位置が特定の導管に適するようにするために、異なる色を有するように形成することもでき、該特定の導管では、基端シャフト部がチップ60に対して配置され、例えば部分20が図3の大動脈弓内に配置される。また、色識別は、漸増的回転をもたらす形態部が所定の位置決めのためにカットされあるいは形成されてもよい場所を特定するために役立つ場合がある。更に、そのようなジャケットを適切な画像診断システム下で独特の外観を有するように形成することもでき、それにより、部分20は、適切に所望の導管内に閉じ込められている(湾曲状態を強いられている)ことが確認されてもよい。
【0077】
[0102]部分20の様々な実施形態が図6〜図8に示されている。図6Aは、図5の斜視図に示される実施形態を示しているが、互いに120度離間して配置される穴の列を伴っている。図5に示される例では、漸増的なホイッピング形態部が60度回転ごとにホイッピング速度の漸増的または段階的な変化を引き起こしてもよい。すなわち、部分20(したがって、先端部4も同様に)が回転する速度は、湾曲と関連する曲げ剛性が最大エネルギ状態と最小エネルギ状態との間で移動するときに60度回転ごとに増大し/減少する。図6Aの実施形態では、この状態変化が120度回転ごとに起こる。
【0078】
[0103]図6Bには、可変曲げ剛性をもたらすように切り欠き25が形成される実施形態がある。この例では、それぞれの列が120度離間される。したがって、周方向部分が3つのそのような切り欠きを含む。切り欠きは、それぞれの端部に定形穴26、例えば略円形の穴を形成し、穴26同士の間に2つの対向する隆起部を配置して隙間27を形成するように作られてもよい。切り欠きによって形成されるこれらの表面は、限られた曲げ角にわたって曲げ弾性率の減少をもたらすように使用される。この曲げ角に達すると、隆起部面が協働して互いに干渉し、それにより、表面の当接によって有効曲げ弾性率が増大する。
【0079】
[0104]可変剛性特性をもたらすために空所が形成され得る。空所は、例えば図6Bの貫通穴、または、材料が掘削され、除去され、材料が欠如する、または、部分的にのみ貫通する溝、スリット、あるいは、スロットを含んでもよい。1または2つの隆起部が形成されてもよく、例えば、1つの隆起部は、空所内へ延びない表面と対向してもよい。空所は、例えば図6Bの切り欠きのように長手方向に対する周方向の比率度合いが1よりも大きい規則的なあるいは不規則な形状を有してもよい。前述したように、1つの部分が変更されるべき適切な態様は、意図される用途、例えばカテーテルの作用要素にわたって必要とされる制御に依存し、また、変更後のカテーテルシャフト部分の材料特性、例えば該シャフト部分の弾性域、キンクに対する耐性は、内部構成要素等を保護する必要がある。
【0080】
[0105]これらの実施形態において、シャフト構造は、所定の曲げ範囲内で漸増的なホイッピングをもたらすために低い蓄積エネルギを依然として維持しつつ、過度のシャフト湾曲を防止できる。高エネルギ蓄積に対する低エネルギ蓄積の割合を更に高くすることが可能になる。これは、低い弾性率が所定の曲げ範囲に限られるからである。漸増的ホイッピングのためのこの手法は、キンクを生じる可能性が大きい部分20の金属チューブにおいて特に有用となる場合がある。隙間の幅は、表面が当接する前の周方向部分の曲げ剛性に依存する場合があり、該曲げ剛性は、該部分が破損を引き起こすことなく歪みを安全に受け入れることができる度合いに依存し得る。更なるファクタは、先に暗示したように、該部分にわたる歪みエネルギ蓄積状態の所望の比率、または、最小蓄積状態の数を含む。
【0081】
[0106]他の実施形態では、部分20に関してステント状構造が採用されてもよい。これらの実施形態において、低い曲げ弾性率を有する長手方向部分は、高い曲げ弾性率を有する長手方向部分によって回転が分離され、シャフトのID内またはOD上に配置され/保持され、あるいは、漸増的ホイッピング形態部を形成するためにシャフト壁に組み込まれる。
【0082】
[0107]他の実施形態において、シャフト2に対してある程度の曲げ剛性を与えるシャフト2のルーメン内のシャフト/装置の構成要素は、高い曲げ弾性率を有する長手方向部分によって回転が分離される低い曲げ弾性率の長手方向部分をもたらすように配置される。部分20のための漸増的ホイッピング形態部が同様に形成されてもよい。
【0083】
[0108]図7A〜図7Cおよび図8A〜図8Cは、120度または180度回転ごとに漸増的ホイッピング形態部を生み出し得る成形チューブの例である。図7A〜図7Cは、180度ごとに最大/最小エネルギ状態を生み出すチューブ断面を示している。これらの実施形態は、円形IDおよび楕円OD、楕円IDおよび楕円OD、ならびに、円形ODおよび楕円IDを示している。図8A〜図8Cは、120度ごとに最大/最小エネルギ状態を生み出すチューブ断面を示している。それぞれの実施形態におけるIDおよびODに関する形状は一目瞭然である。図5〜図8の実施形態の2つ以上が組み合わされてもよい。
【0084】
[0109]漸増的ホイッピング部分20は、曲げ弾性率の断面対称軸線の観点から説明されてもよい。例えば、図8Aに示される実施形態は3つの対称軸線を有し、一方、図7Aに示される本体は2つの直交する対称軸線を有する。また、図6Aに示される実施形態は、断面で見ると、空所21の3つの等距離ストリップが使用されるときには3つの対称軸線を有するが、2つの等距離ストリップだけが使用されるときには2つの対称軸線を有する。一方、円形チューブは、無限数の対称軸線または1つの対称極軸線を有する。したがって、例えば、図7Bのチューブにおける対称軸線周りの印加曲げモーメントは、曲げ平面にほぼ限られる偏向を生み出す。しかしながら、この軸線から例えば45度で加えられるモーメントは、曲げ平面の外側で偏向をもたらす。他の実施形態では、対称軸線の数が3より多くてもよい。今日使用される多くのカテーテルにおいては、対称軸線の数が2〜20の範囲に及ぶ場合があると考えられる。
【0085】
[0110]恐らく更に一般的な用語で述べると、本体の「対称軸線」とは、本開示に係る部分20の説明に関連して、外部から加えられる負荷を釣り合わせる応力/歪み分布に大きな影響を及ぼす材料の曲げ弾性率の曲げ軸線周りの対称性(または、その欠如)のことである。対称軸線を有するあるいは特定の曲げ軸線に関して対称性を欠く本体は、この開示の目的のため、曲げ軸線に関する対称性または実質的対称性の欠如をもたらすように本体が意図的に組み立てられ、形成され、あるいは、製造されることを意味する。対称性の欠如の意味するところは、製造プロセスまたは組み立てプロセスの不完全性に起因する非対称性を包含しない。
【0086】
[0111]生体構造に対する閉じ込め導管の湾曲の方向が知られているあるいは適切な限度内にある幾つかの実施形態において、漸増的回転をもたらす形態部の方向は、作用要素を所望の解剖学的形態または方向へ向けて漸増的にホイッピングさせることができるようにするのに役立つべく作用要素に対して制御されてもよく、あるいは、作用要素を望ましくない解剖学的形態または方向へ向けない。例えば、図3のケースにおいて、部分20は、カテーテル1が図示の位置にあるときにチップ60が心室内の処置部位から離れるように高速でホイッピングされないように構成されてもよい。
【0087】
[0112]理論的には、任意の数の回転増分を有するように形成できるが、実用的な限界がある。例えば、部分20において角度増分の数が増大されるにつれて、最小曲げ弾性率と最大曲げ弾性率との間の最大の想定し得る差(最小および最大の蓄積エネルギの差)が減少される。したがって、実用的なシステムでは、最小曲げ弾性率と最大曲げ弾性率との間の設計差(シャフトエネルギ蓄積の変化)が意図しないホイッピング源に起因する差および/またはシャフトの他の部分の蓄積エネルギの変化に近づくあるいはそれを下回ることにより回転の漸増的制御が失われるポイントに達する。また、最小および最大蓄積エネルギの差が小さければ小さいほど/最小および最大蓄積エネルギの回転配向間のエネルギ勾配が小さければ小さいほど、シャフトを最小エネルギ蓄積回転配向に維持する傾向がある力は小さくなる。したがって、他の全ての状態/特性が等しければ、設計回転増分が大きければ大きいほど、回転の増分があまり正確にならず/あまり再現できなくなる可能性がある。また、回転増分の数が増大されるにつれて、回転中の印加トルクの変化も減少される。これは、部分20が蓄積エネルギの小さい変化を有するからである。したがって、あるポイントでは、印加トルクの変化をユーザまたは回転を加える機械によってもはや確実に検出することができず、そのため、漸増敵回転が依然として生じている間、それを確実に制御できない。幾つかの実施形態では、ワインドアップ、導管湾曲、および、他のシステム特性が知られあるいは限界内にある。これらの実施形態においては、印加トルクの変化を検出することなくシャフトの基端に加えられる回転量を制御することによって漸増的回転の速度を制御することができる。
【0088】
[0113]例えば図面に示されるような回転的に繰り返す要素を等しく離間させる必要はないが、回転配向の望ましい変化であるいはその付近で回転配向増分を保持する傾向がある力を等しくする等しい回転増分をもたらし、それにより各回転増分において同程度の精度を有することが好ましい。これにより、1増分当たりの最小トルク変化も最大になり(最多数の検出可能な増分を許容でき)、また、回転配向の漸増的変化をもたらすためにユーザが加えなければならない回転量が正規化される(使用が容易)。
【0089】
[0114]漸増的ホイッピング部分がそれぞれの増分でほぼ同じ最大・最小曲げ弾性率/エネルギ蓄積/比率特性を示すことが好ましい。これらの特性が全く異なりかつ低い曲げ弾性率の長手方向シャフト部の円弧が非常に小さいある場合には、シャフトは、次の最大エネルギ蓄積方向のうちの少なくとも1つにわたって回転するのに十分な蓄積エネルギを有することができ、それにより、先端部6で所望の回転よりも大きい回転がもたらされる。次のエネルギ蓄積ピークは、今しがた通過したエネルギ蓄積ピークよりも十分小さい。シャフトは、それが次の低いエネルギ状態に拘束されたまま保持されるため十分な歪みエネルギを発するべく十分に回転する前に、次の高いエネルギ蓄積状態に直面する。すなわち、シャフトは、次の低いエネルギ状態を通り過ぎて増分する。
【0090】
[0115]湾曲導管内の漸増的回転をもたらす形態部、すなわち、部分20の長手方向の長さが長ければ長いほど、回転中のシャフトエネルギ蓄積の想定し得る変化が大きくなり、したがって、増分を更に検出できかつ制御できるようになり得る。しかしながら、チップ60(または、一般に作用要素)が配置されあるいは配置されるであろう閉じ込め湾曲導管の長さと、装置にとって望ましい長手方向位置(装置の前進と後退)とを考慮して、漸増的回転をもたらす形態部が閉じ込め導管内に十分に存在するようにしなければならない。該部分が異なる方向または曲率を有する異なる湾曲導管内に存在する場合には、これにより、装置使用中にチップ60の方向または印加トルクの望ましくない/予期される変化がもたらされる。
【0091】
[0116]図1の心室または心房カテーテルの好ましい実施形態では、閉じ込め導管が大動脈弓であり、部分20のカテーテル先端のかなりの部分が心室(図3)または他の非湾曲生体構造内に配置される。したがって、部分20のカテーテル先端のかなりの部分が、湾曲導管内に閉じ込められず、したがって、その構造または形状(実用的限度内)にもかかわらず、カテーテルのホイッピングに寄与せず/部分21によって引き起こされる漸増的ホイッピングを妨げない。チップ60よりも約15〜20cm基端側(あるいは、何らかの病変状態では更に大きい)の先端部が適切な剛性率を伴ってうまく形成される場合には、部分20よりも先端側のカテーテルの部分が部分20の回転に適切に追従する(すなわち、チップ60が漸増的回転に適切に追従する)。
【0092】
[0117]また、漸増的ホイッピングのために選択された比率または増分に関して印加トルクおよび剛性率を考慮しなければならない。これは、部分20のその長さにわたる最大ねじれが所望の漸増的ホイッピングとかなり異なる場合があるからである。したがって、ねじれ角度が設計増分、例えば60度、120度に近づくと、回転に伴う蓄積シャフトエネルギの変化が最小に達し、漸増的ホイッピングを引き起こすことができる部分20の能力が低下される。この効果は、前述したようにホイッピングに関与するシャフトまたはシャフト要素をねじることによりホイッピングを最小にする方法と殆ど同じである。
【0093】
[0118]湾曲導管内に閉じ込められるシャフトにおいて漸増的ホイッピングをもたらすための他の方法は、シャフトの材料特性の操作を伴う。そのような操作は、異なる応力−歪み湾曲を示す、したがってエネルギを異なって蓄えるシャフト材料の長手方向シャフト部をもたらす場合がある。そのような変化は、レーザなどの装置、急冷流体および/またはヒートシンク、シールディング、または、他の設備を介してシャフトに異なって加えられる加熱・冷却温度および/または速度の結果である可能性がある。例えば、300シリーズステンレス鋼(SST)ハイポチューブ(シャフト状構造)では、SSTの引張降伏が、ハイポチューブの引き出しスケジュール(加工硬化)に起因して高い値となるように設定される。長手方向シャフト部の温度をSSTのアニーリング温度まで上昇させると、「使用時」湾曲において長手方向シャフト部の降伏値を上回る歪みに晒される配向をもたらすことができ、したがって、その湾曲で、アニーリング温度に達しなかった回転的に隣接する長手方向シャフト部よりも少ないエネルギを蓄えることができる。他の例では、「使用時」湾曲で回転配向に伴ってシャフトのエネルギ蓄積が変化するように、異なるロード応力およびアンロード応力を伴う長手方向シャフト部を形成するために、超弾性材料シャフトが同様の態様で温度操作されてもよい。他の例では、確実に長手方向に向けられる高分子シャフト(例えば、押し出しプロセスおよび/または長手方向延伸に起因する)が曲げにおいて比較的高い弾性率/高い降伏応力を示してもよく、また、長手方向シャフト部に対して高温を加えて、それらのシャフト部でポリマー鎖の配向を減少させあるいは破壊し、それにより、高分子の弾性率/降伏応力を低下させてもよい。したがって、「使用時」曲げ中、シャフトのエネルギ蓄積特性はシャフト回転配向に伴って変化する。これらのような方法は、材料特性変化をもたらすために必要な時間にわたって異なるシャフト配向でシャフトの長手方向長さの温度および温度差を制御するために求められる時間、機器、および、費用に起因して、あまり好ましくない場合がある。そのような操作は、中実なあるいは厚い壁を有する小さい金属シャフトにおいて特に難しくなる場合がある。
【0094】
[0119]他の実施形態において、高分子は、交差結合されない隣接する長手方向部分とは異なる応力−歪み湾曲を伴う長手方向部分を形成するために放射線を使用してあるいは化学的手段によって交差結合されてもよい。他の実施形態において、シャフト材料特性は、紫外線劣化、酸化、化学エッチング等のような機構を使用して材料の分子構成を変えることによって低下(応力−歪み湾曲変化)されてもよい。これらの実施形態は、劣化された材料が生体適合性、粒子形成、保管寿命等のような特性に悪影響を及ぼし得るため、好ましくない場合がある。
【0095】
[0120]前述したように、部分20は、基端外側シャフトの残りの部分にほぼ類似するあるいは類似しない構造を備えるカテーテルシャフト2の部分に配置されてもよい。例えば、基端外側シャフト2bは支持を向上させるために内側ブレード構造(図4)を含むため、損傷を伴うことなくあるいはブレードによって妨げられることなく切り欠き形態部を内部に配置することが幾分難しい場合がある。したがって、付加的なカテーテル部分が好ましい場合がある。付加的なカテーテル構造は、例えば図5〜図6に示されるような切り欠き形態部を伴って更に容易に変更され得る単一壁のあるいは複合的な管状構造を有してもよい。
【0096】
[0121]部分20は、図3に描かれるように大動脈弓の湾曲形状をとるべく強いられる基端シャフト部分4の部位にだけ配置されてもよい。あるいは、部分20が主にここに配置されてもよい。図3において、カテーテル1は、術中、大動脈弁を貫通した大動脈弓内で最大曲げ量を示す。これらの領域の基端側および先端側の部分は、大きな曲げ状態ではなく、漸増的ホイッピング部分から大きな利益を享受し得ない。これは、エネルギが真っ直ぐな部分で同じ程度まで蓄えられず、したがって、ホイッピングが問題でないからである。例えばカット形態部の形成は、術中に比較的真っ直ぐなカテーテルの部分の価値を高めないため、製造効率および節約を最大にするべく、これらの部分からカット形態部が省かれてもよい。
【0097】
[0122]ホイッピンに関する先の試みに優る本発明の1つの主要な利点は、曲げ部のみに例えば切り欠き形態部を設けることによって、基端外側シャフト部2bの全体にわたって漸増的ホイッピング形態部を有する装置を形成することと比べて比較的低いコストでかなりのトルク応答利益を得られるという点である。また、製造可能性に関して、部分20は、良く知られる製造プロセスを使用して、トルクシャフトまたは他のシャフト構成要素に形成されてもよい。例えば、カット形態部は、レーザカッティング、マイクロマシニング、フォトリソグラフィ、および、金属カテーテル要素の場合にはEDMによって形成されてもよい。この発明に係るカテーテルシャフト内にカット形態部を形成するために他のプロセスが当業者によって使用されてもよい。
【0098】
[0123]他の代わりの実施形態において、カテーテルシャフトは、大動脈弓(図3)内に存在するカテーテルシャフト2の部分のみを部分20が占めるように構成されてもよく、一方、シャフト2の残りの部分は、比較的安価なブレード付きシャフトから構成されてもよい。結果として、剛性率が高くかつシャフト蓄積エネルギの変動が少ないシャフトの長い基端部に関しては、製造の比較的低いコストおよび更に高い利益対コスト比率を維持するために、安価なブレード付きシャフト構造(図4)が使用されてもよい。同様に、異なる曲率の更なる部分が他の生体構造、例えば静脈、動脈、または、ガイドカテーテルに存在する場合には、この他の湾曲領域が本開示に係る部分20の場所において選択されてもよい。
【0099】
[0124]ここで、漸増的ホイッピング形態部を組み込む構造の効果について図9A〜図9Cを参照して更に説明する。図9A〜図9Bは、最小量のホイッピングを有するカテーテルシャフトに関する入出力回転と時間との間の関係を描いている。それは、図1に係る偏向カテーテルであるが、ブレードがないレーザカットされたハイポチューブから形成されかつ高度のねじれ剛性を有する基端シャフトを伴っており、その先端が図3に類似する湾曲導管内に閉じ込められている。この先端は当然ながら真っ直ぐであり、カテーテルが湾曲導管内に挿入された直後に試験が行なわれた。図9Aは、基端での入力時計回り回転(下側曲線)および先端での出力時計回り回転(上側曲線)を示している。図9Bは、反時計回り回転における入力/出力回転を示している。何らホイッピングが無ければ、これらの2つの曲線は同一の傾きを有する。観察結果は、強制基端回転中における入力角変化に伴う出力角変化の非常に良好な追従であるが、湾曲導管内に閉じ込められる(湾曲形状を強制的にとらされる)カテーテルの先端部の避けられない不均一性により引き起こされるホイッピングに関連する小さい回転ジャンプを伴う。しかしながら、そのようなシャフトは、その高い曲げ剛性、曲がりくねった生体構造内で回転されるときの疲れ破壊特性、および、高いコストにより、また、後述するような他の理由により、使用にとって実用的ではない。しかしながら、そのような曲線は、漸増的ホイッピング構造を用いてアプローチされてもよい最良の応答を示す。
【0100】
[0125]図9Cは、図9A〜図9Bのハイポチューブと比べて柔軟なブレード付きシャフトを有する剛性率が低い同様のカテーテルにおける時計回り入力/出力回転を示しており、このカテーテルは、閉じ込め導管内で湾曲形状をとらされる基端シャフト部分に漸増的ホイッピング部分が形成される。漸増的ホイッピング部分を有さないカテーテルは360度の入力回転ごとにホイッピングし、これは、制御が難しいため望ましくない。このタイプのホイッピングは、湾曲導管内に閉じ込められるカテーテルの部分にプリセット曲げを有するカテーテルに特有である。そのようなプリセット曲げは、カテーテルのパッケージングによってもたらされてもよく、あるいは、更に一般的には、プラスチックの粘弾性とカテーテルが医療処置中に湾曲状態のままにされる実質的に避けられない時間とに起因して閉じ込め湾曲導管によって形成されてもよい。漸増的ホイッピング部分20、この場合には90度ごとに低エネルギ蓄積配向をもつ部分20を有する同じカテーテルは、90度の入力回転ごとに増分する。したがって、このタイプのシャフトは制御が容易である。
【0101】
[0126]図9Cの漸増的ホイッピング部分20を有するブレード付きシャフトの例に関して、低エネルギ蓄積配向の数が例えば5、6、7等まで増大される場合には、漸増的ホイッピングステップの数がそれに対応して5、6、7までそれぞれ増大されてもよく、それにより、作用要素を再配置するように基端が回転されるときのカテーテルを介したオペレータ制御を向上させることができる。このように、低エネルギ蓄積配向の数が増大するにつれて、図9Cの出力回転が図9Aのハイポチューブにより示される出力回転に類似し始めてもよい。しかしながら、前述したように、形成できる低エネルギ蓄積配向の数には実用的限界がある。一般に、ホイッピング問題を扱うのに最も適する部分20の構造、すなわち、湾曲導管内にある間に曲げ形状をとらされる部分においてホイッピングを最も良好に制御する構造は、シャフトが低エネルギ蓄積方向にわたって回転しないようにする十分なエネルギ蓄積変化を維持しつつ、より多くの対称軸線をもちたいという要望を(回転応答が図9Aのシャフトと最も良く適合するように)適切に釣り合わせなければならない。例えば、直径が大きいカテーテルは、直径が小さいカテーテルシャフトよりも良好に低エネルギ蓄積配向の数を増大できるようになっていなければならない。
【0102】
針伸長精度/再現性
[0127]本開示の他の態様によれば、シャフト内のカテーテル構成要素は、カテーテルシャフトの湾曲形状にかかわらず、針配置の精度および再現性を高めるように互いに対して配置される。図1を参照すると、先端部6のチップ60に対する針5aの末端の位置を正確に知ることができるのが望ましい。カテーテルが真っ直ぐなときには、相対的な位置は設計構造により知られる。しかしながら、カテーテルが曲がっているときには、曲げ状態に起因する針5aに対する針シース5bの伸長および/または圧縮が、これらの構成要素を互いに対して移動させる。これは、針がシースよりもかなり硬質だからである。したがって、カテーテル1が図2および図3のように曲げられると、シース5bの末端および/またはチップ60に対する針5a端の相対位置が変化する。これは、医師が針を目標部位に正確に埋め込むことを困難にする想定し得る不正確さをもたらす。
【0103】
[0128]装置の先端6の偏向は、主に、2つの構成要素、すなわち、腱部10aと復元または圧縮ケージ7とによって可能にされる。腱部10aは、引っ張られると、カテーテル1の先端6に作用する圧縮力をカテーテル中立軸線から僅かに外れる方向に向け、それにより、チップ60が偏向して、カテーテルの先端6が湾曲する(図2に仮想線で示される)。この張力が解放されると、復元ケージ7は、先端6を真っ直ぐにする傾向がある復元力を当初の方向へ向けて及ぼす。復元ケージ7は、偏向ハウジング2aおよび偏向背骨部50の両方を備えており、スタビライザ要素と称されてもよい。これは、ケージが、偏向後にカテーテル1の当初の形状を復元することに加えて、カテーテルのキンクを防止するからである。
【0104】
[0129]非偏向状態では、カテーテル1の中立軸線(すなわち、NA)がカテーテル断面の曲げ重心と一致する。NAは、湾曲中にゼロ歪みを有する曲げ平面内の位置である。NAの一方側の耐荷重構造は圧縮状態または引張り歪み状態にあり、一方、NAの反対側の耐荷重構造は、平衡を維持するために反対の歪み状態を有する。中立軸線は、カテーテル偏向中、腱部10aによって引き起こされる偏向力によりカテーテル本体に歪みがもたらされるにつれて僅かに変化する場合がある。しかしながら、当然、NAに一致するあるいはNAに近い任意の構造は軸線方向に変形しない。中立軸線距離にある構造は一定の長さを保つため、中立軸線を針軸線に沿って配置できる場合には、針5aの配置の精度およびシャフト2の異なる湾曲における再現性(NEAR)が高められる。これは、カテーテル先端6またはチップ60の長さに対する針5aの長さが一定のままだからである。
【0105】
[0130]図10は、図1の10−10切断線で得られるカテーテル1の先端部6の断面図を示している。先端ジャケット2aは、該ジャケット2aの外周付近に偏向背骨部50を収容する。針アセンブリ5(シース5bおよび針5a)および腱部アセンブリ10(腱部10aおよびシース10b)は偏向背骨部50の下側に配置される。NAは偏向背骨部50の近傍に配置される。これは、この構造がこの断面のうちで最も高い曲げ弾性率を有しているからである。針アセンブリ5は中立軸線NAから距離Yだけオフセットしており、一方、腱部アセンブリ10はNAからより大きい距離Lだけオフセットしている。
【0106】
[0131]カテーテル1が偏向されると、図10においてNAと一致しない構造は圧縮歪みまたは引張り歪みに晒される。したがって、腱部10aを引っ張ることによって先端部6が偏向されると、図10におけるNAよりも下側の部分が圧縮状態におかれる(張力を保持する腱部10aを除く)。圧縮歪みにより針シース5bが短くなる。シースまたは他の構造に結合されない針5aは、チップが偏向するときにシース5b内で自由に移動する。そのため、チップが偏向するにつれて、針端と針シースの端部との間の距離(および、針端と装置端との間の距離)が変化する。この位置の変化は、それに対応して、針5a端と、処置中に針を目標組織へ設定距離にわたって正確に延ばすために術者により依存されるカテーテルの先端との相対位置を変える。偏向によって引き起こされる相対位置のこの変化は、最適でないNEARの一因となる。
【0107】
[0132]図11は別の実施形態である。図示のように、針アセンブリ5は、それがNA上に配置されるように背骨部50へ向けて移動されている。また、腱部10aはNAから離れるように外側ジャケット2へ向けて移動されている。したがって、カテーテル1が偏向されると、ここではNAと一致する針5a/針シース5bが相対長さの僅かな変化を示す。これによりNEARが高められる。また、腱部10aを中立軸線から離れるように移動させることにより、モーメントアームLが増大されるため、加えられる曲げモーメントが増大する。これは、カテーテル偏向および制御を更に容易に達成できるようにして人間工学的に快適にできる。また、モーメントアームを増大させ、それにより、チップを偏向させるために必要な印加力の大きさを減らすことによって、基端シャフトが軸線方向に殆ど圧縮しない。圧縮量を減らすことにより、チップに対する針5aの相対的な動きが減少する。好ましい実施形態では、以下で更に詳しく説明するように、チップの圧縮により引き起こされる長さ変化を補償するために、針が実質的に引張り歪み範囲内に(図11のリブ52に隣接して)配置される。
【0108】
[0133]図12は偏向背骨部50の斜視図を示している。機能的に、この構成要素は、先端部6に対して軸線方向剛性を付加するようになっている。背骨部50は、長尺部材、補強材、リブ、または、支柱52と、半円形(または円形)スタビライザ54a、54bとを含んでもよい。言うまでもなく、補強材の曲げ弾性率が減少されあるいは補強材52の位置が変更される場合には、図12に示されるNAが支柱52から離れるように断面の中心へ向けて移動する。
【0109】
[0134]カテーテル1の別の実施形態において、補強材は、NEARを高めるために材料が除去されてもよい。図13は1つの可能性を示している。補強材52にスロットが形成され、それにより、図10の断面における補強材の曲げ弾性率が減少される。図10の断面の全曲げ弾性率に対する補強材25のパーセンテージ寄与を減らすことにより、NAが支柱52から離間移動するべきである。そのため、モーメントアームYが減少され、それにより、針5aとシース5bとの間の相対的な動きが小さくなり、NEARが向上する。他の実施形態では、NAの位置を変える目的で、補強材がテーパ状を成してもよく、あるいは、支柱52が他の場所へ移動されてもよい。あるいは、一連の穴が背骨部50に穿孔されてもよい。更なる他の別の実施形態では、例えばスタビラザ54a、54bで背骨部50の曲げ弾性率を減少させるために、背骨部50が薄肉化されてもよい。背骨部50をスタビライザ54において更に柔軟にするあるいは従順にすることにより有効NAが移動されてもよいことは言うまでもない。これは、針5aまたはシース5bの実際の歪み伸長または圧縮が先端部6の長さにわたる積分から決定されるためである。
【0110】
[0135]幾つかの実施形態において、補強材の構造は、カテーテルのために意図される曲げ軸線を考慮に入れてもよい。例えば、カテーテル先端6が主に図10〜図11に描かれる水平軸線の周りでのみ偏向する場合には、補強部材(支柱52、または、材料が補強材52から除去される場合には更なる支柱)が、シース2aの反対側で曲げ軸線に沿ってあるいは中点に沿って配置されてもよい。これらの実施形態において、NAは、曲げ軸線から遠く離れて配置されている支柱52から離間移動されてもよい。これは、耐荷重材料が高い割合で存在しあるいは高い曲げ弾性率が存在するからである(偏向される先端部6によりもたらされる大きな割合の圧縮/引張歪みが支柱52以外の構造によって支えられる)。
【0111】
[0136]ある場合には、NAは、NEARを高めるために針5aの更に近くへ移動されるのが好ましい。他の実施形態では、チップが偏向されるときに伸長を受けている領域へ向けてNAから離れるように針5を移動させることが望ましい場合がある。
【0112】
[0137]背骨部に関する別の実施形態が図14に示されている。この実施形態において、背骨部55は、曲げにとって好ましい軸線に中心付けられ、対向するリブ55a、55bを含む。言うまでもなく、リブ55a、55bは、シャフト2aのルーメン空間を最大にして外形を減らす目的で、曲げ軸線と平行であるよりもシース2a外周を越えて幅広くなっている。これは、ルーメン空間を最大にしようとするものであるが、部材50が図14に示されるような曲げモーメントに晒されるときに不安定な曲げ状態を回避する必要性に対して釣り合わされるべきである。シャフト2aの外周に沿って延びるリブは、キンクまたは座屈を生じ易い場合がある。すなわち、横せん断作用によって簡単な曲げよりも多く荷重が支持される場合がある。この可能性を考慮して、(ねじり、キンク、せん断曲げ、または、大部分せん断とは対照的に)簡単な曲げを促すために、補強材55a、55bに丸みが付けられてもよく、あるいは、(例えば図15に示されるように)更なる構造が加えられてもよい。幾つかの実施形態において、支柱は、丸みを帯びたエッジを有していてもよくあるいは完全な円形であってもよく、または、加えられる曲げモーメントのために強度を高めるべくワイヤが加えられてもよい。他の実施形態では、支柱形状の幅に対する高さの比率を減少させることにより、簡単な曲げが促されてもよい。
【0113】
[0138]図15は、丸みのある支柱55を含むように変更された、図14の背骨部55を採用する先端6の一実施形態の断面を示している。この実施形態によれば、腱部10aは、好ましい曲げ軸線またはNAに対して垂直な軸線に沿って優先的に配置される。背骨部50の外周に沿う腱部10aの配置はモーメントアームを増大させる(L、図10〜図11)。したがって、チップ60の改善された操向をもたらすことができる。また、前述したように、モーメントアームが大きければ大きいほど、偏向のために必要な力が小さくなり、それにより、基端シャフトの圧縮量またはチップと針5aとの間の相対的な動きが減少される。図16は、腱部10aが引張り状態に置かれるときのカテーテル1の側面図を示している。この説明の目的のため、この偏向の効果は、図16に描かれる時計回りの曲げモーメントMに起因する応力/歪みの観点から説明されてもよい。
【0114】
[0139]図15〜図16に描かれる実施形態は、針アセンブリ5を意図的にNAから離間させて配置する。特に、針アセンブリ5は、加えられるモーメントに起因する引張歪みの範囲(図16の下端)内に配置される。引張り歪みの領域は、腱部10aがカテーテル1の基端4へ向けて引かれることに起因して生じるシャフト2の軸線方向圧縮に抗することができる。
【0115】
[0140]前述したように、腱部10aが引っ張られるときのシャフトの軸線方向圧縮に関して、針シースまたは他の構造に対して軸線方向に結合されない針5aは短くならない。しかしながら、針シース5bおよびチップは短くなる。したがって、一般にチップに配置されるマーカが針に対して移動する。NEARに対するマイナスの影響が生じる。
【0116】
[0141]この影響と釣り合いをとるため、針5aは、シャフト部分4の軸線方向圧縮の影響を補償するべく、曲げ時に引張り歪みに晒されるカテーテルの側縁、すなわち、腱部10aが配置される場所の端部と対向する側縁に沿って配置されてもよい。本質的に、針シース5bは、曲げに起因して構成要素が伸長される領域に配置され、それにより、シャフト圧縮の影響が打ち消されあるいは少なくともある程度まで補償される。結果として、針シース5b位置および装置構成要素を適切に設計すると、針シース5b(したがって、チップにおける針5aのための出口ポイント)の正味の長さ変化をゼロにすることができる。したがって、針のための出口ポイントの場所を突き止めるために術者によって依存されるカテーテル上におけるチップマーカまたは他の基準点の位置は、先端の偏向の度合いの如何にかかわらず、針端の位置に対して変化しないように保たれるべきである。この構造は、NEARの最適化になると予期される。
【0117】
先端チップの固定
[0142]本開示の他の態様によれば、操向カテーテル1のチップ60は、カテーテルシャフト2aまたは偏向背骨部50に対して積極的な機械的係合を形成するように構成されてもよい。再び図1を参照すると、チップ60は、一般に、例えば接着溶着や熱溶着などによってカテーテル本体に固着される。そのような装置の1つの例は、カテーテルのチップがカテーテルの内壁に熱溶着される血管形成術用バルーンである。
【0118】
[0143]図17〜図19を参照して、先端チップアセンブリの1つの実施形態に係るチップ60および偏向背骨部50の先端部について説明する。この実施形態において、先端スタビライザ54aは、図17Aおよび図17B(図17A、17Bは互いに対して90度回転される)に描かれるように、切り欠き62a、62bを形成するように変更される。スタビライザ54aは、チップ60の一部を強制的に受けるように寸法付けられる内部クリアランスをもつ先端当接壁68を有する。
【0119】
[0144]図18Aおよび図18Bにはチップ60の側面図(図17と同様に90度回転)が描かれている。チップ60の基端は、傾斜面65a、65bを有する一対の面取り64a、64bを含む。環状稜部またはストッパ66が、スタビライザ54aの前壁68のための当接面としての機能を果たすべく面取り64の先端に形成される。言うまでもなく、面取りは、それが相手側のスナップ溝とロック態様または干渉態様で相互作用できるようにする円柱、非テーパ状、半円、または、任意の他の形状などの別の形状を有してもよい。図17〜図19に描かれる実施形態において、チップ60およびスタビライザ54は、傾斜面65の後縁がスタビライザ54に形成される溝62を乗り越えるまでピンをクリアランスを貫通して押し進めることにより嵌め合わされる。つまり、偏向背骨部50のスタビライザ54に対してチップ60が機械的干渉係合によって保持されることを示す図19に描かれる組み付け部品は、以下の方法で組み立てられる。面取りが壁68と係合する。傾斜面に起因して、チップ60がスタビライザを貫通して押し進められるにつれてスタビライザの壁が弾性的に外側に変形する。面取りが溝62を乗り越えると、スタビライザがその当初の形状へ跳ね戻る。面取りの真っ直ぐな先端縁は、アセンブリが引張状態におかれるときにチップ60が背骨部50から外れるのを防止し、また、スタビライザとストッパ66との係合は、アセブリが圧縮状態におかれるときにチップ60の外れを防止する。また、溝は、スタビライザに対するチップの回転を防止する。このように、チップ60は、通常のごとく腱部の先端がチップに取り付けられて腱部が腱部シース内に挿入される場合には、チップに固着する腱部に大きな回転力を加えることなく、高分子を損傷する高い溶着熱を伴うことなく、また、腱部シースに入り込む接着剤がカテーテルチップの偏向を妨げる可能性なく、カテーテルに接合されてもよい。
【0120】
[0145]図20は第2の実施形態の分解組立図である。この実施形態において、先端70aを有するチップ70は、第1の環状稜部73と、離間された基端の第2の環状稜部72とを含む。図17〜図19に関連して説明した実施形態と同様に、稜部72、73の当接面は、スタビライザ54の相手側の壁と共に締まり嵌めを形成するであろう間隔を形成する。しかしながら、この実施形態では、溝と位置合わせされるように離間される面取りとは対照的に、環状稜部が使用される。
【0121】
[0146]稜部72は隙間72aを含んでおり、この隙間72aは、該隙間72aがリブ52と位置合わせされるときに背骨部50のリブ52を受けるように寸法付けられる。第2の実施形態の組み付けは以下のように進められてもよい。最初に、チップ70の基端が、背骨部50によって設けられる環状スタビライザ54のクリアランスを貫通して押し進められる。環状稜部72は、環状稜部72がスタビライザ54の環状通路を貫通して押し進められるにつれて背骨部50のスタビライザの弾性的拡張を容易にするために、(第1の実施形態と同様に)面取り状の前縁を含んでもよい。稜部72がスタビライザ54のその当接壁74aに達すると、スタビライザ54は、隙間72aがリブ52と位置合わせされれば、従前通りに72、73の対向壁間の場所に嵌まり込む(これにより、締まり嵌めを形成する)。隙間が位置合わせされなければ、隙間72aが位置合わせするまでチップ70を単にこの係合位置で回転させてもよく、その時点で、リブ52が隙間72aに落ち込む。この場合も先と同様に、構造の1つの利点は、シャフトとチップ60との間の相対的な回転が回避されるという点である。
【0122】
[0147]これらの構造特徴が装置の他の部分で利用されてもよいことは言うまでもない。例えば、先端チップ60、70を先端ジャケットに固定することが望ましい場合があり、その場合、これらの構成要素のロック係合を容易にするためにこれらの構成要素の両方でスナップ形態部を使用することができる。また、先端チップのスナップリップと偏向背骨部のスナップ溝とが置き換えられてもよい。
【0123】
針を伴わない薬剤送達
[0148]本開示の他の態様によれば、薬剤を目標組織へ送達するために針を使用しない薬剤送達カテーテルが提供される。図23は1つのそのようなカテーテルを示している。カテーテルは、カテーテル1と同じ特徴の多くを具備する。
【0124】
[0149]カテーテル100は、基端部4と先端部6とを有するシャフト2を含む。先端部6(ここでは偏向位置で示される)は、尖った針を使用することなく薬剤を薬剤組織へ送達するように構成されたチップ160を含む。カテーテル100のための制御部8は、カテーテル1の場合と同様に、操向ガイド10cと操向制御器12とを含む。
【0125】
[0150]制御器8のカテーテルチップ操向/ガイド部に加えて、カテーテル100は、少なくとも2つの取付具119、118と、空気圧流体送達装置120とを含む。取付具119は、治療薬剤源に接続するための薬剤送達取付具を有する。第2の取付具118は、圧縮エアラインなどの空気圧源に接続するために使用されてもよい。
【0126】
[0151]図24は、空気圧供給装置120のための基本的な構造を示している。この図は、図23に示される装置120の断面図である。該装置は、薬剤をカテーテルシャフト2の本体を通じてチップ160へ大きな勢いで送達するように構成される。空気圧駆動機構(図24にはその全体が示されない)が発射ピンまたは駆動ピン122に結合される。ピン122は、作動されると、図24に示されるその位置から流体送達ルーメン126の右上に配置されたチャンネルへ向けて高速で推し進められる。空気圧駆動機構が空気圧駆動ピン122によって衝撃波を流体柱へもたらし、それにより、流体柱が非常に短い持続期間にわたってカテーテルの先端160から高速で推し進められる(図24の左から右へ)。流体送達ルーメン126は、流体取付具119と流体連通しており、治療薬剤をシリンジまたは他の供給源から導入するために使用されてもよい。空気圧ルーメン124は、取付具118を介して空気圧取付具と流体連通しており、圧縮ガスを空気圧駆動機構へ送達することができる。駆動ピン122は駆動機構の流体チャンネル130内に配置される。流体チャンネル130は、空気圧ルーメン124および流体送達ルーメン126の両方と流体連通する。
【0127】
[0152]駆動ピン122が基端位置にある(図24)と、治療薬剤を流体送達ルーメン126を通じてカテーテルチップ160へ向けてカテーテルシャフト2のルーメン内へ輸送されてもよい。駆動ピン122が先端位置にあると、流体送達ルーメン126が駆動ピン122によって塞がれ、それにより、更なる治療薬剤がシリンジまたは他の流体源によって注入されるのが防止される。
【0128】
[0153]駆動ピン122は、空気圧の力によって基端位置から先端位置へ急速に移動させることができる。空気圧の適用を制御するために別個のトリガ機構(図示せず)が使用されてもよい。駆動ピン122が前方へ急速に移動されると、該駆動ピンは、それが押し付けられる流体柱内に衝撃波をもたらす。この衝撃波は、カテーテルルーメン全体にわたって進行し、少量の流体をカテーテルチップから非常に速い速度で移動させる。先端には、流体が流体柱の圧力によって外側に流れるように逆止弁または一方向弁がチップ160に構成されてもよく、流れた後に該弁が閉じる。流体送達ルーメンにおいてはハイポチューブが好ましい。これは、このハイポチューブが、粘弾性材料から形成されるチューブよりも更に定量の注入物質解放を引き起こすからである。
【0129】
[0154]流体は治療薬剤を含む粒子の溶液であってもよいため、粒子は、それらの質量、組織整合性、および、それらが送達される速度に依存する深さまで組織中へ弾道線状に送達される。この送達深さは、良く知られる物理的原理を使用して正確に設定できる。
【0130】
[0155]図25は、先端6が患者の左心室内に配置された状態のカテーテル100を示している。カテーテルを適切な位置へ進めた後、チップ60が目標処置域に隣接する心筋壁と対向して配置されるのが好ましい。カテーテルチップ160の位置は、放射線不透過性のマーカ132によって、あるいは、EKGまたは他のセンサ、例えば超音波などの位置検出機構を使用することにより確認されてもよい。
【0131】
[0156]図26を参照すると、カテーテルチップ160を心筋壁に対向して配置した後、治療薬剤が流体送達ルーメン内へ導入されてもよい。治療薬剤は、カテーテルルーメン内に完全な流体柱が形成されるまで導入されることが好ましい。これにより、差し迫った衝撃波が、流体柱を通じて十分に伝わって、心筋組織への粒子送達をもたらす。
【0132】
[0157]流体送達ルーメン126が充填されて、カテーテルチップ160が心筋壁上にあるいは心筋壁と対向して配置された後、空気圧源が駆動されて駆動ピン122が作動されてもよく、それにより、流体柱内に衝撃波が形成され、図示のように治療薬剤粒子が目標組織へ推し進められる。
【0133】
[0158]本発明の特定の実施形態を図示して説明してきたが、当業者であれば明らかなように、この発明のその広範な態様から逸脱することなく変更および改良を行なうことができる。したがって、添付の請求項は、この発明の思想および範囲内に入るそのような全ての変更および改良をそれらの範囲内に包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転増分での制御されたホイッピングを可能とするように構成されたカテーテルであって、
医療処置を行なうための手術位置に先端部を配置するために当該カテーテルの一部が患者の脈管構造内で強制的に湾曲形状をとらされ、
当該カテーテルは、
基端シャフト部と先端シャフト部とを有するとともに、内部にルーメンを有する長尺の管状シャフトであり、前記基端シャフト部がトルクを該基端シャフト部から前記先端シャフト部へ伝えるように構成されている、管状シャフトと、
第1の曲げ弾性率を有する前記基端シャフトの第1の部分と、
周方向に互いに離間される複数の空所を有する前記基端の第2の部分であり、前記空所のそれぞれが第2の部分にわたって長さ方向に延びる、第2の部分と
を備え、
前記第2の部分は、該第2の部分に空所が形成されなかった場合には該第2の部分の曲げ弾性率が第1の曲げ弾性率よりもかなり高いようになっており、
前記第2の部分は、湾曲形状を実質的にとる前記基端シャフト部に沿う位置を占める、カテーテル。
【請求項2】
前記第2の部分が、前記第1の部分を形成するために使用される材料よりも高い弾性率を有する材料から形成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1の部分および前記第2の部分がほぼ同じ曲げ弾性率を有し、それにより、第1の部分の弾性率を有しかつ横荷重に晒されるチューブにおけるチップ偏向は、前記チューブが第2の部分の弾性率を有して横荷重に晒されるときと同じである、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記空所は、前記第2の部分が第1の湾曲形状をとるときに前記第2の部分が第1の曲げ弾性率を有しかつ前記第2の部分が第2の湾曲形状をとるときに前記第2の部分が第2の曲げ弾性率を有するように形成され、前記第1の弾性率および前記第2の弾性率が互いに異なる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1の湾曲形状が前記第2の湾曲形状の曲率よりも小さい曲率を有し、前記第1の曲げ弾性率が前記第2の曲げ弾性率よりも小さい、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第2の部分が金属から形成され、前記第2の部分が高分子または高分子を含む複合材料から形成される、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項7】
回転増分での制御されたホイッピングを可能とするように構成されたカテーテルであって、
医療処置を行なうための手術位置に先端部を配置するために当該カテーテルの一部が患者の脈管構造内で強制的に湾曲形状をとらされ、
当該カテーテルは、 基端シャフト部と先端シャフト部とを有するとともに、内部にルーメンを有する長尺な管状シャフトであり、前記基端シャフト部がトルクを該基端シャフト部から前記先端シャフト部に伝えるように構成されている、管状シャフトを備え、
前記基端シャフト部が、
第1の部分と、
湾曲形状を実質的にとる該基端シャフト部に沿う位置を占めるように構成された第2の部分であり、前記第2の部分の周方向部分を占める周方向に互いに離間される複数の空所を含む、第2の部分と
を含み、
前記空所が、
互いに周方向に離間される第1の端部および第2の端部と、
該空所内に延び、前記第1の端部と前記第2の端部との間に配置される少なくとも1つの隆起部と、
前記隆起部を前記第2の部分の対向面から長手方向に分離する隙間と、
を含み、前記隙間が前記第2の部分についての曲げ限度を生み出すように寸法付けられ、それにより、
前記第2の部分が第1の曲率をとると、前記第2の部分の周方向部分の曲げ弾性率が、前記空所間で延びる周方向部分の各部に対応する曲げ弾性率の総和によってほぼ規定され、
前記第2の部分が第1の曲率よりも大きい第2の曲率をとると、前記隆起部が前記対向面と当接し、それにより、前記第2の部分の周方向部分の曲げ弾性率が、前記空所間で延びる周方向部分の各部に対応する曲げ弾性率の総和、および、周方向部分の各空所の各隆起部に対応する曲げ弾性率の総和にほぼ等しくなる、カテーテル。
【請求項8】
前記空所が、端部に略円形の開口を含むとともに、前記隙間と前記対向面との間に比較的真っ直ぐな開口を含む、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記周方向部分内に3つの空所が配置される、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記周方向部分内に2つの空所が配置される、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項11】
2つの前記空所間の距離がどちらか一方の空所の長さよりも大きい、請求項10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記第2の部分は、当該カテーテルのチップのトルク応答が前記第2の部分とほぼ同じになるように前記先端に隣接して配置される、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記第1の部分が螺旋ブレードを有するチューブである、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第2の部分における前記空所が、少なくとも1つの溝、スリット、スロット、開口、貫通穴、くぼみ、または、トレンチを備える、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記対向面が隆起部である、請求項7に記載のカテーテル。
【請求項16】
回転増分での制御されたホイッピングを可能とするように構成されたカテーテルであって、
医療処置を行なうための手術位置に先端部を配置するために当該カテーテルの一部が患者の脈管構造内で強制的に湾曲形状をとらされ、
当該カテーテルは、
先端シャフト部と、
第1の部分および第2の部分を含む基端シャフト部であり、前記先端部が手術位置にあるときに前記第2の部分が強制的に湾曲形状をとらされる、基端シャフト部と
を備え、
前記第2の部分が、少なくとも2つの対称軸線と20個以下の対称軸線とを断面において有する、カテーテル。
【請求項17】
前記第2の部分が、前記基端シャフト部のワインドアップ中に低歪みエネルギ領域と高歪みエネルギ領域とを形成する周方向に互いに離間される複数のリブを含む、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記複数のリブが管腔表面上に概ね配置される、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記第2の部分が、最大で2つの対称軸線を有するように形成されるチューブである、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項20】
前記チューブが楕円形の内面および/または外面を有する、請求項19に記載のカテーテル。
【請求項21】
前記チューブが、対称軸線を有さないとともに、少なくとも3つの不連続面によって形成される反管腔側表面を含む、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項22】
前記第2の部分が、前記第1の部分を形成するために使用される材料よりも大きいヤング率を有する材料から形成される、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項23】
前記第2の部分は、当該カテーテルのチップのトルク応答が前記第2の部分とほぼ同じになるように前記先端に隣接して配置される、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項24】
前記第2の部分が第3の部分および第4の部分を備え、前記第3の部分は、当該カテーテルのチップのトルク応答が前記第2の部分とほぼ同じになるように前記先端に隣接して配置され、前記第4の部分は、前記チップが作用可能に配置されるときに湾曲位置をとる基端部の位置に配置される、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項25】
前記シャフトが、前記第2の部分にジャケットを有するブレード付きシャフトであり、
前記ジャケットが、
第1の材料が該ジャケットの第1の部位を形成し、
第2の材料が該ジャケットの第2の部位を形成し、
前記第1の部分が、第1の材料からなる、等しい距離で互いに離間される少なくとも2つの領域を含み、前記第1の材料の前記領域が第2の材料の領域によって離間される、
ように前記シャフトのブレード領域にわたって延びる、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項26】
少なくとも2つの対称軸線および20個以下の対称軸線が、高エネルギ蓄積配向と低エネルギ蓄積配向との間の差を示す構造によって形成され、高エネルギ蓄積配向と低エネルギ蓄積配向との間の前記差が、前記シャフトを高エネルギ蓄積配向と低エネルギ蓄積配向との間で移動させるねじれ歪みエネルギが高エネルギ蓄積配向と低エネルギ蓄積配向との間の前記差よりも小さくなるようになっている、請求項16に記載のカテーテル。
【請求項27】
回転増分での制御されたホイッピングを可能とするように構成されたカテーテルであって、
医療処置を行なうための手術位置に先端部を配置するために当該カテーテルの一部が患者の脈管構造内で強制的に湾曲形状をとらされ、
当該カテーテルは、
基端シャフト部と先端シャフト部とを有するとともに、内部にルーメンを有する長尺な管状シャフトであり、前記基端シャフト部がトルクを前記基端シャフト部から前記先端シャフト部に伝えるように構成されている、長尺な管状シャフトと、
前記基端シャフト部に対してトルクを加えるための制御器と、
前記トルクが前記基端シャフト部に加えられるときに少なくとも何らかの湾曲形状をとる前記基端シャフトの部分を漸増的にホイッピングするための手段と
を備えるカテーテル。
【請求項28】
薬剤送達カテーテルであって、
当該薬剤送達カテーテルは、この薬剤送出カテーテルが湾曲形状をとるときに針の精度および再現性を高めるように構成されており、
基端と先端とを含む長尺なシャフトと、
前記シャフトのルーメン内に配置され、前記先端に取り付けられる腱部であり、該腱部を前記基端へ向けて引っ張ることにより先端チップの偏向を可能にするべく前記先端の中立軸線からオフセットされる腱部と、
前記シャフトの前記ルーメン内に配置され、前記中立軸線とほぼ一致して配置される針シャフトと
を備える、薬剤送達カテーテル。
【請求項29】
前記中立軸線は、前記シャフトが偏向されるときにゼロ歪みを有する平面として規定され、圧縮歪みが前記中立軸線の上側に配置され、引張り歪みが前記中立軸線の下側に配置される、請求項28に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項30】
前記針がシース内に入れられ、前記シースが、前記針よりもかなり小さい軸線方向剛性を有する、請求項28に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項31】
薬剤送達カテーテルであって、
当該薬剤送達カテーテルは、この薬剤送達カテーテルが湾曲形状をとるときに針の精度および再現性を高めるように構成されており、
基端と先端とを含む長尺なシャフトと、
前記シャフトのルーメン内に配置され、前記先端に取り付けられる腱部であり、該腱部を前記基端へ向けて引っ張ることにより先端チップの偏向を可能にするべく前記先端の中立軸線からオフセットされる腱部と、
前記先端で前記シャフトの前記ルーメン内に配置されて、前記先端の軸線方向剛性を高めるように構成されるとともに、前記中立軸線とほぼ一致して平行に延びる第1のリブおよび第2のリブを有し、前記第1のリブおよび前記第2のリブが先端・基端スタビライザに固定される偏向背骨部と、
前記シャフトの前記ルーメン内に配置され、前記中立軸線に配置される針と
を備える、薬剤送達カテーテル。
【請求項32】
前記針が金属から形成され、周囲の構造が、前記針よりもかなり低い軸線方向剛性を有する非金属から形成される、請求項31に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項33】
前記背骨部における前記第1のリブおよび前記第2のリブが、所定の長さと楕円形の断面とを有する、請求項31に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項34】
楕円形断面が円形断面である、請求項31に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項35】
前記スタビライザが、円筒形であり、前記リブと一体に形成される、請求項31に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項36】
薬剤送達カテーテルであって、
当該薬剤送達カテーテルは、この薬剤送達カテーテルが湾曲形状をとるときに針の精度および再現性を高めるように構成されており、
基端と先端とを含む長尺なシャフトであり、該シャフトの第1の領域が引張り状態におかれかつ第2の領域が圧縮状態におかれるように第1の方向に偏向するべくあらかじめ配置された長尺シャフトと、
前記シャフトのルーメン内に配置され、前記先端に取り付けられる腱部であり、該腱部を前記基端へ向けて引っ張ることにより先端チップの偏向を可能にするべく中立軸線からオフセットされ、該腱部の引張りが前記カテーテルを圧縮させる、腱部と、
前記シャフトの前記ルーメン内に配置され、前記腱部により引き起こされる圧縮を打ち消す前記第1の領域の部分に配置される針と
を備える、薬剤送達カテーテル。
【請求項37】
前記先端が管腔空間を有し、
断面で見たときに、
前記中立軸線が前記断面の中心を通過し、
一対の補強リブが両側に配置されて前記中立軸線に概ね沿って配置され、
前記針が前記中立軸線および前記補強リブから離間され、
前記腱部が前記中立軸線、前記補強リブ、および、前記針から離間されている、
請求項36に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項38】
偏向背骨部を更に含み、前記背骨部が、前記先端で前記シャフトの前記ルーメン内に配置されて、前記先端の軸線方向剛性を高めるように構成されるとともに、前記中立軸線とほぼ一致して平行に延びる第1のリブおよび第2のリブを有し、前記第1のリブおよび前記第2のリブが先端・基端スタビライザに固定される、請求項36に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項39】
薬剤送達カテーテルにおける針の精度および再現性を高めるための方法であって、
先端および基端を有するシャフトと、前記シャフト内に配置されかつ前記基端で術者により腱部に荷重がかけられるときに前記先端チップを偏向させるように構成された腱部アセンブリとを含む薬剤送達カテーテルを設けるステップであり、前記偏向された状態が圧縮歪み領域と引張り歪み領域とをもたらし、前記荷重がかけられた腱部が正味の軸線方向圧縮をシャフトにもたらす、ステップと、
前記荷重がかけられた腱部により引き起こされる正味の圧縮を偏向によって引き起こされる伸長が打ち消すように、前記偏向によって引き起こされる引張り歪み領域に針アセンブリを配置するステップと
を備える方法。
【請求項40】
前記薬剤送達カテーテルは、前記シャフトの湾曲度合いおよび先端チップの偏向が知られるあるいは既知の範囲内にあるように、医療処置を行なうための前記薬剤送達カテーテルの手術位置に対して湾曲姿勢をとるようになっており、それにより、前記偏向によって引き起こされる引張り歪み領域に針アセンブリを配置する前記ステップが、とられる形状の湾曲度合いおよび荷重がかけられた腱部により引き起こされる圧縮に関連して前記シャフトのルーメン内に前記針アセンブリを配置することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
基端および先端を含み、前記基端が前記先端を処置部位へ案内するように構成され、カテーテルの基端の術者により前記先端を選択的に偏向できる、長尺なシャフトと、
前記シャフトを貫通して前記基端から前記先端へ延びて先端で終端する薬剤送達ルーメンと
を備え、
前記先端が、加圧された治療薬剤を前記薬剤送達ルーメンから放出するように構成されたチップを含み、
治療薬剤源と流体連通する空気圧源と、前記チップに隣接して配置される目標組織へ前記治療薬剤を送達するのに十分な速度まで治療薬剤が加速するように治療薬剤を加圧するためのアクチュエータとを含む基端制御器を備える、薬剤送達カテーテル。
【請求項42】
前記アクチュエータが、前記治療薬剤中へ押し込まれる駆動ピンを含み、結果として生じる衝撃波が前記基端から前記先端へ進行する、請求項41に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項43】
前記薬剤送達ルーメンは、前記ルーメンが衝撃波に起因する繰り返し荷重に耐えることができるように金属製である、請求項42に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項44】
前記治療薬剤が粒子の溶液を含む、請求項41に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項45】
前記チップが、前記粒子を前記薬剤送達ルーメンから放出するための圧力作動弁を含む、請求項44に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項46】
前記基端制御器が、
(i)治療薬剤源と流体連通する流体送達ルーメンと、
空気圧源と流体連通する空気圧ルーメンと、
基端、流体チャンネル、および、先端テーパ状端部を含む流体チャンネルと
を含むハウジングと、
(ii)前記流体チャンネルと流体連通する先端と、前記空気圧ルーメンと流体連通する基端とを有する駆動ピンと、
(iii)加圧ガスを前記空気圧ルーメン内へ排出するように構成された発射機構と
を含む、請求項41に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項47】
前記チップは、該チップが患者内に配置されるときに該チップの位置を突きとめるための手段を含む、請求項41に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項48】
前記チップが放射線不透過性のマーカを含む、請求項47に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項49】
治療薬剤を体内の目標組織へ送達するための方法であって、
基端部と薬剤を送達するためのチップを含む先端部とを有するシャフトと、前記シャフトのルーメンに沿って延びて前記チップで終端する流体送達ルーメンによって薬剤を目標組織へ注入するための制御器とを有する操向可能なカテーテルを設けるステップと、
前記カテーテルを処置位置へ進めるステップと、
前記チップを目標組織に隣接して配置するステップと、
流体柱が前記流体送達ルーメンを占めるまで治療薬剤を前記流体送達ルーメン内へ導入するステップと、
前記カテーテル内の流体が前記チップから推し進められて隣接する目標組織に入り込むように前記制御器を使用して空気圧源を作動させるステップと
を備える方法。
【請求項50】
前記流体送達ルーメン内に収容される流体に衝撃を与えるために前記制御器に駆動ピンを設けるステップと、
流体柱が前記駆動ピンの周囲から前記チップへ延びるまで治療薬剤を前記流体送達ルーメン内に導入するステップと、
圧力を前記駆動ピンに加えることにより前記空気圧源を作動させるステップと
を含み、
前記駆動ピンが、前記制御器から前記チップを通じて進行する衝撃波をもたらし、それにより、流体柱を前記チップから推し進めて隣接組織に侵入できるように十分加速させる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
薬剤送達カテーテルであって、
基端部と先端部とを含み、前記先端部が前記基端部よりもかなり小さい曲げ剛性である長尺なシャフトと、
前記先端部に取り付けられる腱部先端部であり、前記先端部に対して圧縮力を加えることによって前記先端部を偏向するように構成された腱部先端部を含む腱部アセンブリと、
前記先端部の一部にわたって延び、前記先端部の軸線方向剛性を増大させて、圧縮力が前記腱部によって前記先端部に加えられるときに前記先端部の変形に抗するように構成された圧縮ケージであり、
外側ジャケットと、
基端スタビライザおよび先端スタビライザ、ならびに、前記基礎スタビライザと前記先端スタビライザとの間で延びる補強リブと
を含み、前記スタビライザが、前記腱部が圧縮力を前記先端部に対して加えるときに前記先端部に対して軸線方向剛性を与えるように構成された、圧縮ケージと、
前記基端から前記先端へ延び、治療薬剤を目標組織へ送達するように構成された薬剤送達ルーメンと、
当該薬剤送達カテーテルの先端に配置され、前記薬剤送達ルーメンのための出口開口を有するチップと
を備え、
前記先端部のチップは、前記先端スタビライザと積極的な機械的係合を形成することにより、当該薬剤送達カテーテルが患者の処置部位へ供給されるときに前記先端部からの前記チップの外れに抵抗するようになっている、薬剤送達カテーテル。
【請求項52】
前記積極的な機械的係合が、前記チップの基端部と前記先端スタビライザとの間の締まり嵌めである、請求項51に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項53】
前記チップ基端部が一対の面取りされた突出部と先端ストッパとを含み、前記先端スタビライザが、円形であるとともに、前記突出部を受ける一対のスロットを含み、前記先端スタビタイザが前記ストッパと前記突出部との間で受けられる、請求項52に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項54】
前記チップ基端部が隙間を有する陵部と先端ストッパとを含み、前記先端スタビライザが円形であり、前記偏向背骨部リブが前記隙間内で受けられ、前記先端スタビライザが前記ストッパと前記稜部との間で受けられる、請求項52に記載の薬剤送達カテーテル。
【請求項55】
前記積極的な機械的係合は、係合された前記チップおよび前記先端スタビライザが圧縮荷重および引張り荷重の両方に耐えるように前記チップおよび前記先端スタビライザと係合するための手段を含む、請求項51に記載の薬剤送達カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2012−501690(P2012−501690A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525299(P2011−525299)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/055787
【国際公開番号】WO2010/028090
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】