説明

薬剤

【課題】ポステリザンは感染防御作用や創傷治癒作用が臨床的に認められ汎用されている痔疾治療薬である。本製剤の有効成分は大腸菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌及び緑膿菌の死菌の単独または混合液である。しかし、本成分の詳細な薬理作用機序や有効物質の分子レベルの解析はほとんどなされていないために、至適量不明なままに臨床使用されている。
【解決手段】そこで、今回、我々は本大腸菌死菌浮遊液の薬理作用発現の基礎にあると考えられる、マクロファージが産生する重要なサイトカインであるTNF誘導活性について、大腸菌死菌浮遊液または混合液を皮膚に投与し、生物活性としてプライミング作用の測定または、TNFのメッセンジャーRNAで測定出来ることを明らかにし、至適投与量を明らかにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸菌死菌は感染防御作用や創傷治癒作用が臨床的に認められ、これを有効成分として配合した薬剤は痔疾治療薬として認可され臨床現場で汎用されている(例.ポステリザン(登録商標)(非特許文献1))。また、大腸菌、ブドウ球菌、レンサ球菌及び緑膿菌の死菌混合液は皮膚炎、湿疹、熱傷、術創及び膿皮症に有効性が認められるとして、これを有効成分として配合した薬剤は皮膚疾患治療薬として認可され臨床現場で用いられている(例.エキザルベ(登録商標)(非特許文献2、3))。これらは臨床的に極めて有用性の高い薬剤として定評がある。しかしながら、有効成分である大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌による該疾患に対する効果発現機構は不明である。しかも、一般に微生物菌体は、複数のたんぱく質、脂質、糖質を始め種々の成分から構成されている。従ってその死菌も複数成分から構成されている。一方薬剤を製造する場合には、単位重量あたりの有効成分量を定め、然る後に用量を定めることが必要となる。本来であれば、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌に含まれる該疾患に有効な成分は同定されているはずであるが、効果発現機構が不明であることに見られるように有効成分は未だに確定していない。そこで、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌を薬剤として用いる場合には、経験的に単位薬剤重量当りの菌体数を定める方法で、薬剤の規格が構成されている。このことは、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌の薬効最適化あるいは副作用防止の観点から好ましいことではない。
【0003】
本発明者らは、死菌体が示す生物活性として、腫瘍壊死因子誘導などのサイトカイン産生能を指標にとることに注目することで、死菌体数の最適化が計れることに着目した。その結果、現在用いられている死菌体数に比べはるかに少ない用量によって、また、規格として定められている死菌体数に比べ、はるかに少ない菌体数を含む薬剤によって、所定の薬効が発現することを発見し、本発明を完成したものである。
【非特許文献1】「医薬品インタビューフォーム」、2004年9月、改訂第3版、日本標準商品分類番号872559
【非特許文献2】高橋耕一ら、「薬物療法」、10(8・9)、1205頁、1977年
【非特許文献3】高橋耕一ら、「エキザルベの薬理作用、薬理と治療」、5(2)、397−406頁、1977年
【非特許文献4】AkiraS, Takeda K., "Toll-like receptor signaling. Nature Reviews immunology",4:499−511頁、2004年
【非特許文献5】杣源一郎、「低分子量型リポ多糖(Pantoea agglomerans)の皮内投与により誘導される抗腫瘍効果に寄与するサイトカインネットワークの動的解析」、薬学研究の進歩、研究成果報告書16:7−22頁、2000年
【非特許文献6】Yamamoto,A., Nagamuta, M., Usami, H., Sugawara, Y., Watanabe, N., Niitsu, Y., Urushizaki,I. " Release of tumor necrosis factor (TNF) into mouse peritoneal fluidsby OK-432, a streptococcal preparation " Immunopharmacology, 11: 頁79-86 (1986年).
【非特許文献7】Soma,G-I., Mizuno, D. "Exogenous and endogenous tumour necrosisfactor therapy" Cancer Surveys, 8: 頁837-852 (1989年).
【非特許文献8】Yamasu,K., Shimada, Y., Sakaizumi, M., Soma, G-I., Mizuno, D. "Activation of thesystemic production of tumor necrosis factor after exposure to acute stress"European Cytokine Network, 3: 頁391-398 (1992年).
【非特許文献9】Inagawa,H., Oshima, H., Soma, G-I., Mizuno, D. "TNF induces endogenous TNF invivo: The basis of EET therapy as a combination of rTNF together withendogenous TNF" Journal of Biological Response Modifiers.(Journal of Immunotherapyに誌名変更)7: 頁596-607 (1988年).
【非特許文献10】Nishizawa, T., Inagawa, H., Oshima, H., Okutomi, T., Tsukioka, D.,Iguchi, M., Soma,G-I., Mizuno, D. "Homeostasis as regulated by activatedmacrophage. I., Lipopolysaccharide (LPS) from wheat flour: isolation,purification and some biological activities" Chemical & PharmaceuticalBulletin, 40: 頁479-483 (1992年).
【非特許文献11】Ruff, M.R., Gifford, G. E. "Purification and physicochemicalcharacterization on rabbit tumor necrosis factor" J. Immunol, 125, 頁1671-1677 (1980年).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌によるサイトカイン産生能を指標とすることで、菌体数を現在使用されている菌体数よりも少なく設定し、薬剤用量の最適化をはかる。このことにより、より安全な薬剤を提供する。
【0005】
大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌体には種々の物質が含まれる。この物質の幾つかは、特異的な受容体を介して細胞からサイトカイン誘導を初めとする細胞応答を誘導することが報告されている(非特許文献4)。これらの受容体のなかで特に注目されるものはトールライク受容体(TLR)である。トールライク受容体は病原体に特異的な構成成分の認識に必須の受容体であり、現在ヒトでは、11種類が報告されている。これらのそれぞれは、認識する構成成分が異なり、リポポリサッカライド(LPS)はTLR4に認識され、ペプチドグリカンはTLR2に認識される。また、細菌の核酸はTLR9に認識される。
【0006】
ところで、マクロファージは生体に侵入してきた菌体を最初に異物として識別し、これを除去するために機能する細胞である。この場合、マクロファージは例えば菌体の膜成分、LPS、ペプチドグリカン等、例えば核酸などを異物として認識する。この識別に際して機能を果たす受容体がTLRである。その結果、マクロファージ細胞内に情報が伝達される結果、NF−kBやAP−1等の転写因子が活性化され、サイトカイン群の誘導産生・分泌((腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン(IL)−1β、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12p40、IL−15、IL−21、C−Cケモカイン、C−X−Cケモカイン、インターフェロン−α、グラニュロサイトコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、ファスリガンド、トランスフォーミング増殖因子、神経細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子等)に至る。本願発明者は、このような所謂異物に対して誘導される生理活性物質のうち、とりわけ腫瘍壊死因子(TNF)の特殊性に着目してきた。マクロファージによる異物の識別時には、誘導されるサイトカインの種類によって、誘導される時間経過が異なることが知られている(非特許文献5)。TNFは、主としてマクロファージが産生するが、異物識別反応において最も初期に誘導産生されるサイトカインでもある。ところでTNFは、その存在状態によって少なくとも、構造の異なる2種類の存在が報告されている。第1は、完全に細胞外に分泌される可溶性タンパク質である。この場合の分子量は17Kdである。第2は、細胞膜に結合した膜結合型タンパク質である。この場合の分子量は26Kdである。通常TNFといえば、第1の状態、即ち可溶性タンパク質、分子量17Kdの物質を言う。第1、第2のTNFとも生物活性(生物学的応答一般の意味)を持っているが、生物活性は同一ではなく、作用機作も異なる。第2のTNFは第1のTNFと区別するために、通常は膜結合型TNF、あるいはプロTNFとも呼ばれる。可溶性TNFはマクロファージ等の細胞が細菌成分等により強い刺激を受けることで、プロTNFに特異的なメタロプロテアーゼが活性化され、膜に結合しているプロTNFが特定部位で切断されて産生する。
【0007】
生物個体では、プロTNFがマクロファージ細胞表面に発現することが、感染防除等の生体恒常性維持に重要な意義を持つと考えられる(非特許文献5)。即ち、細胞表面にプロTNFの発現を誘導することができる物質は、生体恒常性維持を図る観点から有効物質である可能性がある。以下、プロTNFが細胞膜上に発現している細胞の状態をプライムド状態と呼び、このように細胞の状態を変化させる作用をプライミング作用、このような作用を持つ物質をプライミング物質と呼ぶことにする。言うまでもないことであるが、プロTNFは異物識別の初期段階に発現する。この性格ゆえに、プロTNFの発現は、サイトカイン等のカスケードを形成するうえで極めて本質的である。そしてサイトカイン等により形成されるカスケードは、創傷治癒に留まらず、胃潰瘍、ウイルス感染、急性疼痛、トキソプラズマ感染症、高脂血症、糖尿病、腫瘍に有効であることが報告されている(非特許文献5)。
【0008】
以上より、特定の物質による、プロTNF誘導に関して、用量活性相関が求められれば、ある物質をプロTNF誘導を指標にして規格化できることにもなる。
【0009】
例えば、プロTNFはマクロファージ、ナチュラルキラー細胞、好中球、T細胞、B細胞、繊維芽細胞、マスト細胞、血管内皮細胞等に作用し、炎症性エフェクター細胞を集積させ、活性酸素や蛋白分解酵素類による殺菌作用を活性化する他、血管内皮細胞や繊維芽細胞を増殖させることによって、創傷治癒を促進することが知られている(非特許文献5)。そこで、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌死菌の規格を、これまでの単なる菌体数によるだけではなく、生物活性としてプロTNFの誘導活性として示すことにより、用量最適化が可能であると着想した。
【0010】
より具体的には、プロTNF誘導量は、プロTNF量が可溶性のTNF誘導量と相関するこに基づいて、可溶性TNFをL929細胞傷害試験で測定した。さらに、プロTNF誘導量をTNFのmRNAの相対的誘導量として遺伝子レベルで解析した。その結果、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌の生物活性としてプロTNF誘導活性(プライミング活性)で評価可能な事が見出された。そして、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌体の菌対数を用いる現在の薬剤規格とは異なって、プライミング活性による大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌体の規格化を行って、薬効は同程度に発現するが、単位重量に含まれる大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の死菌体数は、より少数でよいことを発見して本発明を完成したものである。
【0011】
さらに、以上の発見から、大腸菌死菌やブドウ球菌、レンサ球菌、緑膿菌の1回投与あたりの死菌体数はこれまでの薬剤に比べ大幅に少なくても所定の薬効が発現することが明らかである。

【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の薬剤は1回当たりの投与量として2000万個から4億個の大腸菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする。
【0013】
好ましくは、1回当たりの投与量として5000万個から2億個の大腸菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の薬剤は、製品1グラムあたり、合計260万個から2億個の大腸菌死菌、ブドウ球菌死菌、レンサ球菌及び/又は緑膿菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、製品1グラムあたり、合計2600万個から2億個の大腸菌死菌、ブドウ球菌死菌、レンサ球菌及び/又は緑膿菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする。
【0016】
また、薬剤形状が軟膏、クリーム、液、ムース、スプレー、ゲル又は固形剤であることが望ましい。
【0017】
また、使用形態が皮内投与剤、経皮投与剤、浴用剤、坐薬、うがい薬、トローチ、点鼻薬、貼布剤、経肺投与剤又はヘルスケアー剤であることが望ましい。
【0018】
また、効果又は効能が、痔核若しくは裂肛の症状(出血、疼痛、腫脹及び痒感を含む)の緩解、肛門部手術創、肛門周囲の湿疹若しくは皮膚炎、若しくは軽度な直腸炎の症状の緩解、又は湿潤、びらん、結果を伴うか若しくは二次感染を併発している、湿疹若しくは皮膚炎群(進行性指掌角皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎及び日光皮膚炎を含む)、熱傷、術創、若しくは湿疹様変化を伴う膿皮症(感染性湿疹様皮膚炎及び湿疹様膿か疹を含む)の緩解であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本研究により効果発現の至適投与量がわかり、投与量がこれまでの菌数よりも少量で有効なことが明らかとなった。そのために、副作用発現は低減出来る。ポステリザンの副作用としては、掻痒感、便意及び局所不快感などが知られている。エキザルベの副作用としては、皮膚刺激症状、発赤、皮疹憎悪及び湿潤などが知られている。また、投与量が少なくできるので、これまでよりも安価に薬剤を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
ポステリザンやエキザルベに含まれる有効性を示唆する菌体構成成分は生体内でこれらを認識するレセプター群を介して、マクロファージ等に取り込まれ、サイトカインの産生が誘導される。サイトカインはナチュラルキラー細胞、好中球、T細胞、B細胞、繊維芽細胞、マスト細胞、血管内皮細胞等の免疫系細胞に働き生物活性を誘起し、ついで、更にサイトカインの産生が誘導される。これらのいわゆる、サイトカインネットワークを介して生体の免疫系の活性化に働くと考えられる。菌体成分として免疫系を活性化するものとしては糖脂質、多糖、リポ多糖、糖ペプチド、核酸成分が知られている。有効成分は複数より構成された成分よりなるポステリザンやエキザルベを単独の成分の定量化(例えば、特定される糖の含量や、特定の構造を有する脂質の含量)で評価する事は不可能である。そこで、複合的菌体を認識する生体システムを統合的に生物活性として評価する方法として、結果として誘導される生体応答を定量化できる方法を選択すべきであり、ポステリザンやエキザルベによる生体への効果を感染防御、創傷治癒促進が得られる生体応答に着目することが望ましい。
【0022】
そこで、ポステリザン及びエキザルベに含まれる各種死菌浮遊液の生物活性を評価する方法を実現させるための工夫として、各死菌浮遊液の生物活性をマウスの皮内に投与し、TNF誘導能としてプライミング作用を生物活性として測定することとした。実際に医薬品として常用されている菌体数をマウスに投与した場合に示される菌体のプライミング作用はヒトに投与した場合に得られるプラミング作用と相関性があるので、マウスで得られる菌体数とプライミング作用の用量活性相関はそのままヒトに当てはめることができる(非特許文献6,7)。

【実施例1】
【0023】
ポステリザンに含まれる大腸菌死菌浮遊液のプライミング作用評価に基づく、生物活性の検討
マウス皮内投与を用いたTNFプライミング作用による大腸菌浮遊液の生物活性の用量依存性の評価

【0024】
ポステリザンは軟膏である。そこで、マウスを用いた実験でポステリザンの菌数に伴う生物活性の発現の測定に一定量の軟膏を塗布することになる。しかし、マウスは体中をなめる性質があり、塗布した軟膏を嘗め取ってしまう。それを回避するためには首を固定する等の器具を使わなくてはならないが、それは、マウスにとってストレスである。本実験はストレスに大きく影響を受けるので、マウスを拘束することは好ましくない(非特許文献8)。そこで、我々は、塗布と同等の量を皮内投与法で代替することとした。ポステリザン軟膏には、2.59×10個/グラムの大腸菌死菌が含まれ、一回の使用量が2グラムとされているので、一回あたりの大腸菌死菌の使用量は2.59×10個/グラム×2グラム=5.18×10個となる。以上に基づき、マウスに皮内投与する大腸菌死菌の菌体数(細胞数)を変化させて、TNFの産生を調べた。

【0025】
[実験材料]
大腸菌死菌浮游液の調製:
大腸菌は通常の細菌培養用の寒天培地に塗り広げ、37℃で培養を行う。寒天培地としては例えば、標準寒天培地やブレインハートインフュージョン寒天培地等を用いることが出来る。出現した一つのコロニーをとり、通常の液体培地、例えばトリプトソーヤブロスややニュートリエントブロス(ベクトンディキンソン)を適当な培養フラスコ、例えば3リットル坂口フラスコなどを用いて行うことが可能である。37℃にて一晩、振盪培養を行った。培養液にフェノールの終濃度が1−3%になるようにフェノールを加えて大腸菌死菌浮游液を調製した。菌数測定は、例えば、ペトローフ−ハウザーの計算盤や濁度計を用いることが出来る。ペトローフ−ハウザーの計算盤では、培養した一区画に5〜10個の菌が見えるように希釈した試料を計算盤上にとり、カバーグラスを横からすべらせるようにかける。すなわち、死菌浮遊液を10倍に蒸留水で希釈し、計算盤上にとり、カバーグラスをかけ、数分間静置後、50区画を数えた。一区画当たりの平均値を求め、1区画5×10−5mmなので、2×10を乗じ、さらに希釈倍率を乗じて1ml当たりの死菌数に換算した。

その他試薬:
燐酸緩衝生理食塩水(PBS)、RPMI1640培地(日研医科学)、牛胎児血清(ギブコ)

装置及び器具:
24穴培養プレート(住友)、炭酸ガス細胞培養器、プレート分光光度計(バイオラッド)

【0026】
[方法]
雄性のBALB/cマウスの6週齢を静岡実験動物より購入し、2週間の予備飼育を行った後、8週齢で実験に供した。動物は温度、湿度及び照明(明:8時から20時、暗:20時から8時、の12時間の明暗サイクル)が一定に調節された環境の飼育施設で飼育し、飼料としてCE−2(日本クレア)を、飲料水として水道水をオートクレーブ滅菌したものをそれぞれ自由に摂取させた。マウス皮内投与によるTNF産生におけるプライミング活性の誘導及びその用量依存性についての実験方法は我々が確立した方法を用いた(非特許文献7,9,10)。大腸菌死菌浮遊液の均一な懸濁液1mlを1.5mlのプラスチックチューブに移し、遠心分離(約6,000g、10分間)した。その後、遠心上清0.9mlを分離し試験液原液とし、必要に応じ生理食塩水(生食液)にて希釈し試験液とした。検体として用いる各試験液及びコントロール群の生理食塩水は腹部皮内に投与した。投与後3時間放置し、遊離TNFを誘導する菌体として用いたピシバニール(OK−432;中外製薬;グラム陽性死菌体)はマウスあたり1KEを尾静脈投与した。その2時間後にマウスを固定後、大腿部動脈より全採血し、37℃で30分加温の後遠心分離による血清を得、L929細胞傷害性試験用検体とした。細胞傷害試験は従来の方法(非特許文献11)に従い実施した。すなわち、トリプシン処理したL929細胞を8×10細胞/mlの濃度になるように新鮮なイーグルMEM培地に懸濁し、その100μlずつを平底の96穴プレートの各穴に播いた。その後、6時間炭酸ガス培養器内にて前培養し、その後、50μl/穴の割合で4μグラム/mlの希釈アクチノマイシンDを添加し、終濃度1μグラム/mlとなるようにした。さらに即座に、検体の血清をMEM培地で希釈したものを50μl/mlの割合で加え、液量を200μlとした。更に、L929細胞を上記条件にて18時間培養した。細胞傷害活性を測定するために、全培地を除去し、ついで、0.1%クリスタルバイオレットを含む1%メチルアルコールPBS溶液を加えて15分間固定染色を行った(クリスタルバイオレットは全有核細胞を染色するが、死細胞は染色後にプレート底面より水洗で除去されるので、生存細胞の結果から細胞傷害性を直接測定できる)。この染色度を590nmの吸光度を指標として測定し、対照群に対する染色度と比較することで細胞傷害活性を測定した。活性の定義は以下のように行った。L929細胞が50%生存(ED50)できる陽性対照のTNF(PAC−4D;旭化成;蛋白質1mグラムあたりの2.4×10単位)の希釈倍率(C)を求めた。次に、検体のED50を与える希釈倍率(N)を求めた。これらのデータを元に、以下の式で計算した。
検体活性(U/ml)=N/C×2.4×10

【0027】
群構成
コントロール群(生理食塩水−OK−432投与群)、試験検体投与量群(試験検体−OK−432投与群)として投与用量の異なる6群とした。各群は無作為に群分けした各3匹を一群として、マウス一匹あたりに大腸菌死菌を0個、2×10個、2×10個、1×10個、2×10個、4×10個、1×10個を皮内投与した。

【0028】
[結果]
結果を図1に示した。ポステリザンの主成分である大腸菌死菌浮遊液の生物活性としてTNF誘導を指標にして、菌数を調べたところ、大腸菌数がマウスあたり2×10個以上でTNFの産生が認められ、2×10個まで増加したが、2×10個から低下する傾向が始まり、1×10個では、効果が低下した。
【0029】
現在医薬品に使用されているポステリザン軟膏の一回に使用される菌数は5.18×10個なので、図1で明らかなように、充分プライミング作用が認められるが、低下が始まる範囲の菌数が使用されている事が明らかとなった。本結果からはマウスあたり2×10個から4×10個が含まれていれば市販ポステリザンと同等の生物活性を有する。これは1回の用量が2グラムである薬剤のグラムあたりにすると1×10から2×10個含まれることになる。
【0030】
実際に医薬品として常用されている菌体数をマウスに投与した場合に示される菌体のプライミング作用はヒトに投与した場合に得られるプラミング作用と相関性があるので、マウスで得られる菌体数とプライミング作用の用量活性相関はそのままヒトに当てはめることができる。

【0031】
[結論]
本発明者らの方法によれば、プライミング活性を指標にとることにより、マウスあたり大腸菌死菌2×10から4×10個の範囲では、誘導される生物活性は市販のポステリザンと同等であることが明らかとなった。なお、好ましくはマウスあたり、5×10から2×10個である。また、実際に医薬品として常用されている菌体数をマウスに投与した場合に示される菌体のプライミング作用はヒトに投与した場合に得られるプラミング作用と相関性があるので、マウスで得られる菌体数とプライミング作用の用量活性相関はそのままヒトに当てはめることができる。

【実施例2】
【0032】
エキザルベに含まれる死菌体による皮膚局所での効果
エキザルベに含まれる混合死菌浮遊液について、マウスの皮内に投与し、皮膚局所での創傷治癒・感染防御作用を示すTNF遺伝子が誘導されることを指標に有効菌数を調べた。

マウスを用いた混合死菌浮遊液投与後3時間目の投与部位におけるTNF誘導の用量依存性

【0033】
[実験材料]
実験動物:実施例1と同じ。

【0034】
混合死菌浮游液の調製:まず、以下の各死菌浮遊液を調整した。
大腸菌は通常の細菌培養用の寒天培地に塗り広げ、37℃で培養を行う。寒天培地としては例えば、標準寒天培地やブレインハートインフュージョン寒天培地等を用いることが出来る。出現した一つのコロニーをとり、通常の液体培地、例えばトリプトソーヤブロスやニュートリエントブロス(ベクトンディキンソン)を適当な培養フラスコ、例えば3リットル坂口フラスコなどを用いて行うことが可能である。37℃にて一晩、振盪培養を行った。培養液にフェノールの終濃度が1〜3%になるようにフェノールを加えて大腸菌死菌浮游液を調製した。菌数は、ペトローフ−ハウザーの計算盤で測定した。
【0035】
緑膿菌は通常の細菌培養用の寒天培地に塗り広げ、37℃で培養を行う。寒天培地としては例えば、標準寒天培地やブレインハートインフュージョン寒天培地等を用いることが出来る。出現した一つのコロニーをとり、通常の液体培地、例えば、市販のトリプトソーヤブロス、ブレインハートインフュージョン培地やニュートリエントブロスを適当な培養フラスコ、例えば3リットル坂口フラスコなどを用いて行うことが可能である。37℃にて一晩、振盪培養を行った。培養液にフェノールの終濃度が1〜3%になるようにフェノールを加えて緑膿菌死菌浮游液を調製した。菌数は、ペトローフ−ハウザーの計算盤で測定した。(同前)。例えば、ペトローフ−ハウザーの計算盤を用いることが出来る。
【0036】
ブドウ球菌は通常の細菌培養用の寒天培地に塗り広げ、37℃で培養を行う。寒天培地としては例えば、標準寒天培地やブレインハートインフュージョン寒天培地等を用いることが出来る。出現した一つのコロニーをとり、通常の液体培地、例えば、市販のトリプトソーヤブロス、ブレインハートインフュージョン培地やニュートリエントブロスを適当な培養フラスコ、例えば3リットル坂口フラスコなどを用いて行うことが可能である。37℃にて一晩、振盪培養を行った。培養液にフェノールの終濃度が1〜3%になるようにフェノールを加えてブドウ球菌死菌浮游液を調製した。菌数は、ペトローフ−ハウザーの計算盤で測定した。
【0037】
レンサ球菌は通常の細菌培養用の寒天培地に塗り広げ、37℃で培養を行う。寒天培地としては例えば、標準寒天培地やブレインハートインフュージョン寒天培地等等を用いることが出来る。出現した一つのコロニーをとり、通常の液体培地、例えば、市販のトリプトソーヤブロス、ブレインハートインフュージョン培地やニュートリエントブロスを適当な培養フラスコ、例えば3リットル坂口フラスコなどを用いて行うことが可能である。37℃にて一晩、振盪培養を行った。培養液にフェノールの終濃度が1〜3%になるようにフェノールを加えてレンサ球菌死菌浮游液を調製した。菌数は、ペトローフ−ハウザーの計算盤で測定した。
【0038】
各死菌浮游液を菌数の比率で、大腸菌死菌浮游液:ブドウ球菌死菌浮游液:緑膿菌死菌浮游液:レンサ球菌死菌浮游液が、10:10:1:1になるように混合した液を混合死菌浮游液とした。

【0039】
競合DNA:マウスTNF、β−アクチン
競合DNAは、それぞれの遺伝子のポリメラーゼチェインリアクション(PCR)用プライマーの配列を元に、競合DNA調製用のプライマーを合成し(宝酒造)、ラムダDNAをテンプレートとして用いPCR反応により増幅した。得られた産物を限外濾過精製し、吸光度値から競合DNAのコピー数を求めた。実際の競合的PCRには1反応液中に競合DNAが10〜10コピー含まれるように用いた。

【0040】
PCR用プライマー:TNF及びβ−アクチンの各センス(S)とアンチセンス(A)プライマーは下記に示す。

TNF プライマー
(PCR 産物 :422塩基対, 競合DNAのPCR産物: 340塩基対)
(S) 5’ AGCACAGAAAGCATGATCCG3’ 20塩基
(A) 5’ GGAGTAGACAAGGTACAACC3’ 20塩基
β-アクチン
プライマー(PCR 産物 :660塩基対, 競合DNAのPCR産物:540塩基対)
(S) 5’CCAACCGTGAAAAGATGACC 3’ 20塩基
(A) 5’ CAGGAGGAGCAATGATCTTG 3’ 20塩基

【0041】
(5).その他試薬:
燐酸緩衝生理食塩水(PBS)、RPMI1640培地(日研医科学)、牛胎児血清(ギブコ)トリゾール試薬(ギブコ)、リバトラエース(東洋紡)、オリゴdT12−18(アマシャムファルマシア)、rTaqDNAポリメラーゼ(宝酒造)、アガロースME(岩井化学)、エチジウムブロマイド(和光純薬)、大腸菌リポ多糖(リスト)

【0042】
(6).装置及び器具:
96穴マルチプレート(住友ベークライト)、炭酸ガス培養器、サーマルサイクラー(システム9600,パーキンエルマー)、電気泳動装置ミューピッド(コスモバイオ)、ゲル写真撮影装置(フォトダイン)

【0043】
[方法]
混合死菌浮遊液の投与量の見積もり:
水や油に対する吸収性の低いパラフィン紙にエキザルベを指にて薄く均等に塗布し、パラフィン紙1平方センチの重量を測定した。対照にエキザルベを塗布しないものを測定した。各群10サンプルを測定した。

【0044】
死菌浮遊液の前処理:
混合死菌浮遊液中のフェノールを除くために、混合死菌浮遊液を透析した。混合死菌浮遊液2mlを透析チューブに入れ、40mlのPBS(−)を外液として、氷冷下、一回につき3時間以上透析した。この操作を4回繰り返し、フェノール含量を1/1000〜1/2000(各透析外液のフェノール含量は吸光度測定によりモニター)にし、各検体中のフェノール濃度を0.001%以下にした。さらにRPMI1640培地(血清無添加)40mlで透析し、浮遊液をPBS(−)から培地に交換した。

【0045】
マウスへの被検体の投与及び皮膚の摘出:
BALB/cマウス(雄)の腹部の毛を予め投与部位はかみそりで剃り、傷のない皮膚の10mm×10mmの領域をマジックインキで印を記した。透析済みの混合死菌浮遊液はRPMI1640培地で希釈し、各量の菌数を含むサンプル液を作製し、皮内に皮内針(1/5)を用いて50μlの液量を注射した。コントロールでは、RPMI1640培地を注射した。投与後3時間目に注射部分を中心とする印を付けてある領域の皮膚を剥離した。直ちに400μlのトリゾール試薬中に浸けハサミで細かく切った。総RNAの抽出はトリゾール試薬添付のプロトコールに従って行い、総RNAを得た。

【0046】
逆転写反応、及び競合的RCR:
得られた総RNAの内、4〜5μグラムを用い、オリゴdTをプライマーとして、逆転写酵素によりcDNAを作製した。得られたcDNAをテンプレートとして各遺伝子について競合的PCRを行った。競合的PCRは、これまでの各サイトカインのPCRの条件で、反応溶液に予め調製したコピー数既知の競合DNAを添加することで行った。PCR反応には、テンプレートのcDNAを総RNAの25nグラム分に相当する量を用い、10μlの反応系で、プライマー5pモルを加え、タックDNAポリメラーゼ存在下94℃、1分加熱の後、94℃、1分、55℃、1分、72℃、1分を1サイクルとしてサーマルサイクラーを用いて、25サイクル(β−アクチン)、35サイクル(TNF)繰り返し、遺伝子増幅を行った。得られたPCR産物は、2%の濃度のアガロース電気泳動により分離し、エチジウムブロマイド染色後、写真撮影を行った。対象遺伝子のmRNAのコピー数は、cDNA中に含まれる対象遺伝子のPCR産物のバンド強度と、同一のバンド強度を示す競合DNAのコピー数から推定した。

【0047】
[結果]
混合死菌浮遊液の投与量の見積もり:
エキザルベは火傷や傷へ塗布剤として用いられるが、生物活性評価実験においては、投与量を正確に調整する必要があるため、皮内注射で行う。皮内注射による混合死菌浮遊液投与量を、塗布剤として使用されるエキザルベに含まれる菌量にあわせて設定するため、まずエキザルベを塗布した場合に塗布部位に存在する菌量を見積もった。測定値を表1に示した。平均増加重量は3.83mグラム/平方センチであった。エキザルベに含まれる菌数が3.3×10個/グラムなので、1平方センチ当たり、おおよそ1×10個の菌が塗布されることになる。
表1 エキザルベの塗布量の見積もり
【0048】
【表1】

【0049】
混合死菌浮遊液投与後3時間目の投与部位におけるTNF誘導の用量依存性:
投与菌数を検討するために、混合死菌浮遊液の皮内投与によるTNFメッセンジャーRNA誘導の用量依存性について検討を行った。投与液量は通常用いられる皮内投与量である50μlとする。皮膚内に投与された菌体・菌体成分は低分子でなければほとんどが50μlの皮内投与で出来る水疱部の収まる10mm×10mm以内の皮膚に限局されるので、投与部位を中心とする10mm×10mmの皮膚を観察することにした。表2に皮膚局所のTNFのメッセンジャーRNA量のコピー数を未処理の皮膚を1として相対的増加量を示した。混合死菌1×10個の皮内投与で皮膚局所のTNF量が9倍に増加した。現在市販されているエキザルベは1平方センチあたりの塗布される菌数が1.26×10個であり、この菌数が本測定方法においても、52倍のTNFmRNAを誘導することから、十分な生物活性があることが認められた。また、混合死菌浮遊液1×10個から1×10個ではエキザルベと同等のTNFmRNA誘導量が認められた。
【0050】
表1に示したように、エキザルベの塗布による1平方センチあたりの重量は3.83mグラムであり、菌数は1.26×10個である。上述のTNF量が9倍に増加した混合死菌1×10個でよいとすれば、有効菌数は126分の1で良いことになる。すなわち、エキザルベに含まれる混合死菌菌数が3.3×10個/グラムなので、2.6×10個/グラム以上含まれていればよい。一方、3.83mgに1×10個、すなわち、グラムあたりは2.6×1010個でも十分な活性が得られるので、従来技術を除外して本発明は、混合死菌菌数が2.0×10個/グラム以下含まれていればよい。
【0051】
本発明者らの方法によれば、皮膚局所のTNFのmRNA誘導を指標にとることにより、1グラムあたり混合死菌2.6×10個以上2.6×1010個以下含有された範囲で有効であった。このうち、本発明は混合死菌2.6×10個以上2.0×10個以下含有された範囲である。なお、好ましくは誘導される生物活性は市販のポステリザンと同等である1グラムあたり、2.6×10個以上2.0×10個以下である。

表2 皮膚(10mm×10mm)内の相対的TNFメッセンジャーRNA量
【表2】

【実施例3】
【0052】
ヒトマクロファージ系細胞株THP-1を用いた大腸菌死菌浮遊液、緑膿菌死菌浮遊液、ブドウ球菌死菌浮遊液、レンサ球菌死菌浮遊液及び混合死菌浮遊液のTNFのmRNA誘導効果

【0053】
[実験材料]
(1).細胞:THP-1細胞は10%牛胎児血清入りRPMI1640培地で培養(CO2インキュベータ)した。試験に用いるおおよそ24時間前に培地交換を行った。THP-1細胞を、5×105細胞/穴なるように96穴平底プレートに入れた。
混合死菌浮游液の調製:実施例2と同じ。

【0054】
競合DNA:ヒトTNF、β−アクチンについて作製した。作成方法は実施例2と同じ。

PCR用プライマー:TNF及びβ−アクチンの各センス(S)とアンチセンス(A)プライマーは下記に示す。
TNF プライマー(PCR
産物 :444塩基対, 競合DNAのPCR産物: 312塩基対)
(S) 5’ GAGTGACAAGCCTGTAGCCCATGTTGTAGCA 3’ 31塩基
(A) 5’ GCAATGATCCCAAAGTAGACCTGCCCAGACT 3’ 31塩基
β-アクチン
プライマー(PCR 産物 :642塩基対, 競合DNAのPCR産物:544塩基対)
(S) 5’GATGACCCAGATCATGTTTGAG 3’ 22塩基
(A) 5’GGAGCAATGATCTTGATCTTCA 3’ 22塩基

【0055】
(5).その他試薬:
燐酸緩衝生理食塩水(PBS)、RPMI1640培地(日研医科学)、牛胎児血清(ギブコ)トリゾール試薬(ギブコ)、リバトラエース(東洋紡)、オリゴdT12−18(アマシャムファルマシア)、rTaqDNAポリメラーゼ(宝酒造)、アガロースME(岩井化学)、エチジウムブロマイド(和光純薬)

【0056】
(6).装置及び器具:
24穴プレート(住友ベークライト)、96穴マルチプレート(住友ベークライト)、炭酸ガス培養器、サーマルサイクラー(システム9600,パーキンエルマー)、電気泳動装置ミューピッド(コスモバイオ)、ゲル写真撮影装置(フォトダイン)

【0057】
[実験方法]
各種死菌浮遊液の前処理:実施例2と同じ。

【0058】
THP−1細胞の調製と各種死菌処理
THP-1細胞をRPMI1640培地(培地)で洗浄し、さらに5%FBS入り培地を用いて1×10細胞/mlに調製し、0.5ml(5×10細胞/穴)を24穴プレートに加え培養した。透析した大腸菌、ブドウ球菌、レンサ球菌及び緑膿菌死菌浮遊液、及び混合死菌浮遊液をTHP-1細胞の培地に添加し、3時間5%COインキュベータ中で培養した。
【0059】
各死菌浮遊液は1×10個/mlの濃度で使用した。培地のみを添加したものを無刺激コントロールとした。
【0060】
添加3時間後に培地を除き、PBSで洗浄後、TRIzol 400μlを加え、添付の方法に従い総RNAを抽出した。

【0061】
逆転写反応、及び競合的RCR:実施例2と同じ。

【0062】
[結果]
THP−1細胞を用いた各種死菌浮遊液及び混合死菌浮遊液のTNFmRNA誘導能を、無刺激コントロールを1とした場合の誘導倍率として表3に示した。
【0063】
THP−1は、各死菌浮遊液及び混合死菌浮遊液共に、無刺激コントロールよりTNFmRNAの誘導倍率が増加していることから各死菌浮遊液及び混合死菌浮遊液共に誘導効果があることがわかり、各死菌浮遊液も混合死菌浮遊液と同様に効果があることがわかった。

表3 THP−1細胞の各種死菌浮遊液及び混合死菌浮遊液のTNFmRNAの誘導作用
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】TNFプライミング作用による大腸菌浮遊液の生物活性の用量依存性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回当たりの投与量として2000万個から4億個の大腸菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする薬剤。
【請求項2】
1回当たりの投与量として5000万個から2億個の大腸菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする薬剤。
【請求項3】
製品1グラムあたり、合計260万個から2億個の大腸菌死菌、ブドウ球菌死菌、レンサ球菌及び/又は緑膿菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする薬剤。
【請求項4】
製品1グラムあたり、合計2600万個から2億個の大腸菌死菌、ブドウ球菌死菌、レンサ球菌及び/又は緑膿菌死菌を有効成分として含有することを特徴とする薬剤。
【請求項5】
薬剤形状が軟膏、クリーム、液、ムース、スプレー、ゲル又は固形剤であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の薬剤。
【請求項6】
使用形態が皮内投与剤、経皮投与剤、浴用剤、坐薬、うがい薬、トローチ、点鼻薬、貼布剤、経肺投与剤又はヘルスケアー剤であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の薬剤。
【請求項7】
効果又は効能が、痔核若しくは裂肛の症状(出血、疼痛、腫脹及び痒感を含む)の緩解、肛門部手術創、肛門周囲の湿疹若しくは皮膚炎、若しくは軽度な直腸炎の症状の緩解、又は湿潤、びらん、結果を伴うか若しくは二次感染を併発している、湿疹若しくは皮膚炎群(進行性指掌角皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎及び日光皮膚炎を含む)、熱傷、術創、若しくは湿疹様変化を伴う膿皮症(感染性湿疹様皮膚炎及び湿疹様膿か疹を含む)の緩解であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の薬剤。


【図1】
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【公開番号】特開2006−131622(P2006−131622A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292587(P2005−292587)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(390025210)
【Fターム(参考)】