薬剤
NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤が2つのアルブミン分子からなる場合には、それらが1以上のシステイン−システインジスルフィド架橋のみによる結合以外の手段により互いに共有結合している、薬剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、腎疾患および関連症状の処置のための薬剤、その薬剤を製造するための方法および手段、ならびにその薬剤の腎疾患および関連症状の処置における使用に関する。より詳しくは、本発明は、天然に生産されるアルブミンよりもネフローゼ症候群患者の血液からの排泄速度が遅い修飾アルブミンに関する。
【0002】
ネフローゼは、低アルブミン血症、高コレステロール血症および浮腫を特徴とする腎臓の疾患である。ネフローゼ症候群(NS)は糸球体濾過系の著しい漏出を特徴とし、血漿タンパク質の大きな損失をもたらす(Peters, 1996, All About Albumin: Biochemistry, Genetics and Medical Applications, Academic Press, Inc., San Diego, California)。
【0003】
正常な糸球体バリアは電荷選択特性とサイズ選択特性の組合せによりアルブミン尿(尿中にアルブミンが存在)を防ぐこと、また、検討したネフローゼ患者における観察可能なレベルのタンパク尿を説明するには、これら両特性の欠陥が必要であることが示されている(Blouch et al, 1997, Am J. Physiol., 273 (3 Pt 2): P430-437)。78kDaより小さいタンパク質はNS患者のタンパク尿に特に影響されやすい(Peters, 1996, 前掲)。
【0004】
ヒト血清アルブミン(HSA)は一般に約66kDaの大きさである。NS患者では、アルブミンの日々の損失は一般に約10mgから1〜8gに上昇するが、17gといった高い値になる場合もある(Peters, 1996,前掲)。NSにおける偶発的所見は、冷凍保存した尿サンプルにおける高い割合のアルブミンS−S結合二量体である(Birtwhistle and Hardwicke, 1985, Clin. Chim. Acta, 151, 41-48)。このアルブミンの損失に腎尿細管内の高い異化作用が加わり(Kaysen and Bander, 1990, Am. J. Nephrol., 10 (Suppl. 1), 36-42)、その結果、血漿中のアルブミンの半減期は19日から約4日に短縮される(Jensen et al, 1967, Clin. Sci., 33, 445-457)。
【0005】
低い血清アルブミンレベルは、血中脂質含量の上昇につながる可能性がある。低アルブミン血症は血清リポタンパク質(a)レベルの上昇における重要な誘因であり、これは特にNS患者においてアテローム性動脈硬化心血管疾患を誘発し得ることが示されている(Yang et al, 1997, Am. J. Kidney Dis., 30(4): 507-513)。高脂血症はNSの特徴であり、アルブミンの損失量と並行しているので、リポタンパク質リパーゼ作用からの長鎖脂肪酸のアクセプターとしてのアルブミンの不足は、高脂血症においてある役割を果たしている可能性があることが示唆されている(Peters, 1996, 前掲)。
【0006】
一般に30〜50%の患者がアルブミン合成の上昇(通常、13〜14g/日の標準速度から30〜40%)という応答を示すが、27g/日という高い上昇を示す場合もある (Peters, 1996, 前掲)。アミノ酸供給に対するアルブミン合成の依存性が維持されていることから、NSの処置として高タンパク質摂取が示唆された(Peters, 1996, 前掲)。逆に、NSの処置において低タンパクの食事も考えられており(Palmer, 1993, Am J Med Sci, 306(1): 53-67; Kaysen, 1998, Miner. Electrolyte Metab., 24: 55-63)、最近では、ネフローゼ患者におけるタンパク尿の軽減および血清アルブミンレベルの上昇が示されている(Giordano et al, 2001, Kidney Int., 60(1): 235-242)。
【0007】
NSに関して他の処置も提案されている。アルブミン注入は重篤なネフローゼ患者で血漿量を高めることが示されているが、その作用は短期的なものであり、アルブミンは急速に腎排泄される(Kuhn et al, 1998, Kidney Int. Suppl., 64: S50-53)。一方、アルブミンとループ利尿薬であるフロセミドを同時投与すると、ネフローゼ性の浮腫の処置に、より有効となることが示されている(Bircan et al, 2001, Pediatr. Nephrol., 16(6): 497-499)。NS患者においてヒトアルブミンを同時投与すると、フロセミドの作用が増進するが、これはわずかなものでしかないと結論付けられている(Fliser et al, 1999, Kidney Iit., 55(2): 629-634)。さらに、フロセミド耐性NSの治療において、組換えHSA(rHSA)はヒト血漿から調製されたHSAと同等に使用することができることが示されている(Tsulcada et al, 1998, Gen. Pharmacol., 31(2): 209-214)。
【0008】
示唆されている他の治療としては、NSにおけるタンパク尿を軽減するためのアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(Bakris, 1993, Postgrad. Med., 93(5):89-100)の使用、NSに関連する原発性糸球体疾患の処置(Kuhn et al, 1998, Kidney Int. Suppl., 64: S50-53) および通常の凝固により20g/lを下回る血清アルブミンレベルを有するネフローゼ患者の処置(Kuhn et al, 1998, 前掲)のためのプレドニゾロン、シクロホスファミド、クロラムブシルおよびヒドロクロロチアジドの使用が挙げられる。また、重篤なNSの場合の著しい高脂血症はHMG−CoAレダクターゼ阻害剤で処置することができることも示唆されている(Kuhn et al, 1998, 前掲)。
【発明の開示】
【0009】
こういったことを背景に、本発明の目的は、天然に生産されるアルブミンよりも半減期が改良された(すなわち、長い)修飾アルブミンを提供することにより、NSなどの腎症状の処置のための薬剤を提供することである。
【0010】
アルブミンの融合は先行技術において知られている。実際、アルブミンは、その長い半減期と生物活性が比較的低いために、他のタンパク質の担体としての使用に適していることが周知である。よって、先行技術では、アルブミンと治療上有効なタンパク質との融合が開示されており、この場合、融合は、アルブミンの半減期ではなく、治療上有効なタンパク質の半減期を改良する効果を有する。例えば、WO01/05826公報では、血清アルブミンのセグメントと生物学的に活性な異種ペプチドの断片を含有するキメラポリペプチドが提供され、この生物学的に活性な異種ペプチドは、例えば、受容体アクチベーター、抗原、または膜もしくはイオンチャネルと相互作用することができ、それが融合するアルブミンと40%未満の同一性を有するペプチドである。さらに、WO01/05826公報では、そこに示されたキメラポリペプチドが非融合血清アルブミンの半減期を超えることなく、単にそれに近い半減期を有することが教示されている。
【0011】
米国特許第6,165,470号明細書では、ウイルスに対する受容体の活性ドメインか、またはウイルスと結合し得る分子の活性ドメインか、またはウイルスと結合した免疫グロブリンのFcフラグメントを認識し得る分子の活性ドメインか、またはアルブミンもしくはアルブミン変異体と結びついた、病理過程に介在するリガンドと結合し得る分子の活性ドメインを有することを特徴とするハイブリッド高分子が提供されている。これらのハイブリッドは活性ドメインの半減期を延長させるために形成されたものである。
【0012】
WO99/66054公報では、エリスロポエチン生物活性を有するエリスロポエチン類似体−HSA融合タンパク質が提供されている。WO00/69900公報では、治療ペプチドの半減期を延長させるための血中成分との結合により、内在する治療ペプチドの、ペプチダーゼ活性からの保護が提供されている。WO00/69900公報では、治療ペプチドの担体としてのアルブミンの使用に言及されている。
【0013】
よって、本発明の第一の態様によれば、ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、少なくともアルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤が2つのアルブミン分子からなる場合には、それらが1以上のシステイン−システインジスルフィド架橋のみによる結合以外の手段により互いに共有結合している薬剤が提供される。言い換えれば、本発明の第一の態様による薬剤は、Birtwhistle and Hardwicke, 1985(前掲)に記載されているようなアルブミンS−S結合二量体ではない。
【0014】
本発明の第二の態様によれば、医薬上許容される担体または希釈剤と、NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤とを含んでなる組成物であって、該薬剤が第二のポリペプチドと結合したアルブミン様のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤がアルブミン様ポリペプチドの二量体である場合には、医薬組成物中に存在するアルブミン様の第一のポリペプチドの2%を超えるものが第二のポリペプチドと結合している組成物が提供される。
【0015】
担体または希釈剤は、それが本発明の第一または第二の態様による薬剤と適合する場合、かつ、それがそのレシピエントに害をおよぼさない場合に「医薬上許容される」。通常、担体または希釈剤は無菌またはパイロジェンフリーの水または生理食塩水である。
【0016】
薬剤が2つのアルブミンポリペプチドの二量体である場合、本発明の第二の態様による組成物の総アルブミンポリペプチド含量の少なくとも30%、40%、50%またはそれ以上が第二のポリペプチドと結合している。薬剤がアルブミン−アルブミン二量体ではない場合には、もっと低い割合(3%、5%、9%、10%、15%または20%など)のアルブミン様の第一のポリペプチドしか第二のポリペプチドと結合していないかもしれないが、やはり、上記のように少なくとも30%等がこのような結合をしていることが好ましい。本発明の第二の態様による医薬組成物中のアルブミン様の第一のポリペプチドの、好ましくは60%、70%、80%または90%、より好ましくは95%、さらに好ましくは98%、さらに好ましくは99%、最も好ましくは実質的に100%のものが第二のポリペプチドと結合している。
【0017】
好ましくは、本発明の第二の態様による組成物では、この薬剤は、Eur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載のような酢酸セルロース電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)−HPLCにより測定した場合に、主要なタンパク質成分として、より好ましくはその組成物の全タンパク質含量の少なくとも80%として存在し、この場合、薬剤に相当するバンドまたはピークは全電気泳動図またはクロマトグラムのそれぞれ>80%を示す。
【0018】
本発明の第一の態様による薬剤および本発明の第二による態様の組成物で用いる薬剤は、NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも長い半減期を有する。NS患者における薬剤の半減期に関して「長い」とは、その薬剤がNS患者において天然に生産されるアルブミンよりも少なくとも1日、より好ましくは少なくとも3日、より好ましくは少なくとも5日、さらに好ましくは少なくとも10日長い半減期を有するという意味が含まれる。通常、NS患者における本発明の第一および/または第二の態様で定義された薬剤の半減期は、NS患者において天然に生産されるアルブミンの少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、20倍またはそれ以上である。患者の身体におけるタンパク質の半減期は当技術分野で周知の技術によって判定することができる。例えば、本発明による薬剤(「試験薬剤」)の半減期は次のようにして野生型の非修飾アルブミン(「通常アルブミン」)と臨床的に比較することができる:ネフローゼ症候群患者を「通常」アルブミンまたは「試験」アルブミンに不作為に割り付ける。各1回量1.4g/kgを静脈点滴する。これは「通常」の血漿アルブミン濃度約35g/L(ヒトの血漿量は40mL/Kg)に相当する。投与前にアルブミンの血漿濃度を測定し、血液循環中のこの生成物の生存時間に従い、12時間ごとに繰り返す。生成物濃度が20g/Lを下回ったらすぐに上記のように点滴を繰り返す。アルブミンの測定は、例えばEur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載のような酢酸セルロース電気泳動アッセイを、同書に記載のタンパク質窒素アッセイのような全タンパク質アッセイと併用して行うことができる。この方法は特定の「試験」薬剤に合うように適合させることができる。また、薬剤の生理学的作用は血圧、心拍数、または血清リポタンパク質(a)レベルなど、半減期の向上を評価するためのマーカーにより追跡することもできる。
【0019】
あるいは、半減期の評価にin vitro試験を用いてもよい。例えば、Millipore Corp.などの公知の実験器具業者から提供されている攪拌デッドエンド型限外濾過セルまたは再循環型限外濾過セルに取り付けた限外濾過膜を用いてもよい。「通常」アルブミンおよび「試験薬剤」の溶液は、血漿を模倣すべくリン酸緩衝生理食塩水pH7.2〜7.4(PBS)中35g/Lとなるよう調整する。通常、ミリポアの、分子量カットオフ10,000Da、30,000Da、50,000Daおよび100,000Daの標準的なポリスルホン膜を用いる。アルブミンの限外濾過の際、最初の溶液のアルブミン濃度を限外濾過溶液の濃度と比べる。限外濾過の操作条件は室温、膜間差圧0.5〜2.0バールである。タンパク質の測定は、例えば、Eur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載の全タンパク質アッセイ(タンパク質窒素)などのタンパク質アッセイを用いて行う。10,000Daおよび30,000Daカットオフによる限外濾過を対照として用いるが、これは同じ条件下で行った場合、「通常」アルブミンと「試験薬剤」の間に差がないと予測されるからである。限外濾過物中のアルブミンの濃度は最初の溶液の約10%未満、すなわち<3.5g/Lであるものと予測される。50,000Daカットオフ膜による限外濾過では、「通常」アルブミンの透過量が約10%を超え、「試験薬剤」の透過量が約10%より少ないと思われる。100,000Daカットオフ膜による限外濾過では、「通常」アルブミンの透過量が約10%を超えるか、または50%を超えるなど、いっそう高いと考えられる。「試験薬剤」の透過量は約10%より少ないであろう。
【0020】
好ましい実施態様では、本発明の第一および/または第二の態様による薬剤は天然に生産されるHSAよりも大きい。通常、この薬剤は80〜250kDa、より一般には80〜200kDaの大きさであり、好ましくは少なくとも100kDaの大きさである。これは150KDaを超えないのが好ましい。130〜135KDa前後が理想的である。分子量の値は「平均」分子量としてとらえ、Eur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載のような(サイズ排除クロマトグラフィー)SEC−HPLCを用いて測定する。主要ピークの頂点が平均分子量を定義するものと考えられる。カラムの較正は、分子量(MW)44,000Daのオボアルブミン(ニワトリ)、MW67,000Daのアルブミン(ウシ血清)、MW81,000Daのトランスフェリン、MW158,000Daのアルドラーゼ(ウサギ筋肉)、およびMW232,000Daのカタラーゼ(ウシ肝臓)などの市販の較正タンパク質と、50,000Da〜250,000Daの間の分子量を測定するのに適したSEC−HPLC TSK G4000 SWxlカラム(“Current Protocols in Protein Science”, 2002, John Wiley & Sons Ed参照)を用いて行う。65,000Da〜80,000Daの間の分子量を有する試験薬剤の場合、分子量は、代わりにエレクトロスプレー質量分析ES−MS法を用いて測定すればよい。この目的で、揮発性溶媒中、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)にて試験薬剤を脱塩する。タンパク質を回収し、そのまま、ウマ心臓ミオグロビンを用いて較正したエレクトロスプレー質量分析計に注入する。この質量分析計では、試験薬剤分子は大気圧でイオン化され、生じたイオンを四極子分析装置に送り、そこで質量/電荷比が測定される。このデータを処理して、タンパク質の真の分子量を示す単一質量ピークを得る。この技術の精度はアルブミンの予測値の0.01%内(すなわち、7Da内)である。
【0021】
本発明の第一および/または第二の態様による薬剤はアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる。通常、アルブミン様ポリペプチドはアルブミンである。一般に、アルブミンは血清から抽出されたヒト血清アルブミン(HSA)、または生物もしくは細胞株をヒト血清アルブミンのアミノ酸配列をコードするヌクレオチドコード配列で形質転換もしくはトランスフェクトすることにより生産される組換えヒトアルブミン(rHA)である。本明細書では、「アルブミン」とは、一般にHSAおよび/またはrHAをさす。一つの実施態様では、「アルブミン様ポリペプチド」とは、その意味の中に変異体アルブミンを含む。「変異体アルブミン」とは、1以上の位置にアミノ酸の挿入、欠失、または置換(保存的または非保存的)を有しているアルブミンタンパク質をさすが、ただし、このような変異は、少なくとも1つの基本的特性、例えば、結合活性(例えばビリルビンに対する結合のタイプおよび特異的活性)、浸透圧(膨張圧、コロイド浸透圧)、特定のpH域での挙動(pH安定性)が有意に変化していないアルブミンタンパク質を生じる。この文脈における「有意に」とは、当業者が、変異体の特性がもとのタンパク質の特性と異なりはするが、明瞭なものではないとするであろうことを意味する。
【0022】
「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp,Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組合せを意図する。このような変異体は、引用することにより本明細書の一部とされる、1981年11月24日Stevensに対して発行された米国特許第4,302,386号明細書に開示されているものなど、当技術分野で公知のタンパク質工学および位置指定突然変異誘発の方法を用いて作出することができる。
【0023】
一般に、アルブミン変異体は、天然に存在するアルブミンに対して40%を超える、通常は少なくとも50%、より一般には少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、なおさらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%またはそれ以上の配列同一性を有する。2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えばウイスコンシン州立大学ジェネティックコンピューティンググループのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて決定することができ、当然のことながら、同一性%はその配列が最適に並べられたポリペプチドに関して計算される。あるいは、このアライメントはClustal Wプログラム(Thompson et al., 1994)を用いて行ってもよい。用いるパラメーターは次の通りである。
【0024】
ファースト・ペアワイズ・アライメント・パラメーター:K−タプル(ワード)サイズ;1、ウインドウサイズ;5、ギャップペナルティー;3、トップダイアゴナル数;5。スコアリング法:x%。マルチプル・アライメント・パラメーター:ギャップ・オープン・ペナルティー;10、ギャップ・エクステンション・ペナルティー;0.05。スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0025】
本発明の第一および第二の態様による薬剤はアルブミン様ポリペプチドと結合した第二のポリペプチドを有する。第二のポリペプチドは、上記で定義したようなアルブミン様の第一のポリペプチドと結合することができ、かつ、結合しているときには、そのような結合をしたアルブミン様の第一のポリペプチドをNS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期を長くする量まで、アルブミン様の第一のポリペプチドの分子量(MW)を高めるポリペプチドである。一般に、この第二のポリペプチドは14〜134kDa、好ましくは20〜100kDa、より好ましくは35〜66kDaの分子量を有する。
【0026】
本発明の第一および第二の態様による薬剤の第二のポリペプチドは、少なくともアルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときには治療上不活性である。「治療上不活性」とは、第二のポリペプチドがアルブミンにより提供されるものを超えて薬剤にさらなる治療上有益な特性(もちろん、その半減期の延長以外)を実質的に付加せず、かつ、害もないことを意味する。「さらなる治療上有益な特性を実質的に付加しない」とは、第二のポリペプチドが、アルブミンが持っていない生物学的に有意な受容体アクチベーター活性、抗原性、または膜またはイオンチャネルと相互作用する能力を持たないという意味を含む。「さらなる治療上有益な特性を実質的に付加しない」とは、さらに、第二のポリペプチドが、ウイルスに対する受容体の活性ドメインか、ウイルスと結合し得る分子の活性ドメインか、ウイルスと結合した免疫グロブリンのFcフラグメントを認識し得る分子の活性ドメインか、または病理過程に介在するリガンドと結合し得る分子の活性ドメインとしてアルブミンよりも有効な作用ができないという意味を含む。「さらなる治療上有益な特性を実質的に付加しない」とは、さらに、第二のポリペプチドがエリスロポエチン生物活性またはWO00/69900公報に記載の治療ペプチドのいずれの活性も持たないという意味を含む。第二のポリペプチドは有害であってはならない。特に、それは有害な薬理作用を持ってはならないし、免疫原性があってはならず、または、特にヒトにおいては少なくとも臨床上許容される低レベルの免疫原性しか持ってはならない。
【0027】
よって、一般に、この薬剤はアルブミンと実質的に同じ生物特性を有する。例えば、この薬剤はアルブミンと実質的に同じ膨張圧および/または輸送機能(解毒作用を含む)を有し得る。「治療上不活性」とは、アルブミンが持っている治療特性と同じ、または少なくともそのいくらかを有する第二のポリペプチドを排除するものではない。よって、アルブミン様ポリペプチドまたはその断片を第二のポリペプチドとして使用してもよい。好ましい実施態様では、この第二のポリペプチドは、1つ、2つ、またはそれ以上のアルブミン完全ドメインから本質的になるアルブミン様タンパク質の断片であり得る。アルブミンは、各々、1つの短いループにより分離された2つの長いループとを含む3つの完全ドメインを有する。ドメインは、通常、アミノ末端からはじめてI、IIおよびIIIという番号が付けられている。HSAおよびBSAをはじめとするアルブミンの構造はPeters (1996, 前掲)に示されている。第二のポリペプチドとしてアルブミン様ポリペプチドまたはその断片を含んでなる本発明の薬剤は、以下「アルブミン二量体」と呼ぶ。
【0028】
このように当業者には、本発明による「アルブミン二量体」薬剤は、そのC末端により第二のポリペプチドのN末端と結合しているアルブミン様の第一のポリペプチド、またはそのC末端によりアルブミン様の第一のポリペプチドのN末端と結合している第二のポリペプチドを含み得る。よって、このアルブミン二量体はH2N−[ポリペプチド1]−X−[ポリペプチド2]−COOHまたはH2N−[ポリペプチド2]−X−[ポリペプチド1]−COOH(ここで、ポリペプチド1はアルブミン様の第一のポリペプチドであり、ポリペプチド2は、アルブミン様タンパク質またはその断片でもある第二のポリペプチドである)の形をとり得る。よって、この「二量体」は同じ方向に読む2つの連続するアルブミン様配列を有し得る。Xは好適な形態のいずれの結合であってもよい。一つの実施態様では、それはペプチド結合であり得る。Xはまた、下記のようなリンカー分子であってもよい。好ましいリンカー分子は、1〜20個のアミノ酸残基を有し得るオリゴペプチドである。このリンカーがオリゴペプチドであるとき、ポリペプチド1および/またはポリペプチド2のいずれか、または好ましくは双方はペプチド結合を介してこのリンカーと連結するのが通常である。
【0029】
あるいは、本発明による「アルブミン二量体」は、そのN末端により第二のポリペプチドのN末端と結合しているアルブミン様の第一のポリペプチド、またはそのC末端により第二のポリペプチドのC末端と結合しているアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでもよい。これらはそれぞれ「ヘッド・トゥ・ヘッド」および「テール・トゥ・テール」二量体と呼ぶことができる。よって、この「二量体」は、反対方向に読む2つの連続するアルブミン様配列を有し得る。所望により、上記のようにリンカーを含んでもよい。このような二量体は、以下でより詳しく記載するように、2つのアルブミン様ポリペプチドの結合により作製することができる。
【0030】
このペプチド結合は、アミノ酸残基のCα原子間に空間を保持する適当なリンカー部分を用いる限り、全く存在しなくてもよく、リンカー部分がペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ平面性を有するならば特に好ましい。
【0031】
しかしながら、本発明はアルブミン二量体に限定されるものではなく、上記で示された判定基準を満たす第二のポリペプチドならばいずれでも使用できる。一般に、第二のポリペプチドは薬剤の意図されるレシピエントによって天然に生産されるポリペプチドの全配列または部分配列を含んでなる。好ましい一つの実施態様では、第二のポリペプチドはアルブミンまたはその変異体の全配列または部分配列を含んでなる。第二のポリペプチドについての「部分配列」および「変異体」は、通常、それらが由来する配列のアミノ酸の少なくとも5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%または100%を含んでなる。第二のポリペプチドについての「部分配列」および「変異体」がそれが由来する配列のアミノ酸の100%未満を含んでなる場合、その「部分配列」および「変異体」はそれが由来する配列のN末端断片、C末端断片または内部断片であり得る。一般に、第二のポリペプチドに関して「部分配列」および「変異体」は、それらが由来する配列と少なくとも5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%または100%の配列同一性を有する。長さに関してより高いパーセンテージ、および特に配列同一性が好ましく、これは、このようにして作出された部分配列または変異体の免疫原性が軽減される傾向があるためである。
【0032】
第二のポリペプチドである増量用結合パートナー(bulking partner)は、当技術分野で公知のいずれかの方法により作出することができる。それらは天然タンパク質であってもよいし、天然源から精製してもよい。それらは組換え発現させることもできる。それらは合成法により製造することもできる。これらの生産手段の総てを達成するのに好適な技術は当業者ならば容易に利用できる。これらの技術により得られたポリペプチドは、例えば当技術分野で公知の方法により化学的および/または酵素的にさらに修飾することができる。
【0033】
好ましい一実施態様では、第二のポリペプチドはアルブミンまたはその変異体の全配列または部分配列を含んでなる。よって、この第二のポリペプチドは全長アルブミンまたは1つもしくは2つのそのドメイン、例えばアルブミン断片であり得る。この第二のポリペプチドはアルブミンの部分配列を含んでなることができる。後者の場合、第二のポリペプチドは、全長アルブミンにより天然に提示されるものではないいずれのエピトープ(例えば、非天然NまたはC末端)の提示も避けるような方法でアルブミンの配列を含む第一のポリペプチドと結合されているのが好ましい。
【0034】
このアルブミン様の第一のポリペプチドは、当技術分野で公知のいずれの好適な方法によって第二のポリペプチドに結合させてもよい。一般に、この結合は共有結合であるが、非共有結合であってもよい(例えば、以下の本発明の第三の作用の記載を参照)。この目的で、アルブミン様ポリペプチドおよび/または第二のポリペプチドに修飾または合成アミノ酸を含めてもよい。第二のポリペプチドとアルブミン様の第一のポリペプチドとを連結させるには、リンカー分子、例えば短いアルキル基(C1−30)、オリゴペプチドなどが提案される。好適な結合としては、ペプチド結合、ジスルフィド結合、ホスホジエステル結合、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、イミン結合、アミン結合などの生物学的に誘導された高分子で一般に見られる結合が挙げられる。第二のポリペプチドとアルブミン様ポリペプチドとを連結させるのに二官能性架橋基を提供することもできる。例えば、第二のポリペプチドがシステイン含有タンパク質であれば、アルブミン様の第一のポリペプチド(例えば、Cys34を介して)とタンパク質性の増量用結合パートナーとを連結させるには、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、1,4−ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)、ビス−マレイミドエタン(BMOE)、1,8−ビス−マレイミドトリエチレングリコール(BM[POE]3)、1,11−ビス−マレイミドテトラ−エチレングリコール(BM[POE]4)、1,4−ジ[3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]−ブタン(DPDPB)、ジチオ−ビス−マレイミドエタン(DTME)または1,6−ヘキサン−ビス−ビニルスルホン(HBVS)など、遊離のスルヒドリル基と反応する二官能性架橋基を用いることができる。同様に、トリス[2−マレイミドエチル]アミン(TMEA)などの三官能性架橋基を用いてアルブミン様の第一のポリペプチドと2つのタンパク質性の増量用結合パートナーとを連結することもできる。
【0035】
一般には、この結合はNS患者の循環系で安定である。「安定」とは、結合の解離による薬剤の損失速度が腎臓による血流からの完全な形の薬剤のクリアランスによる薬剤の損失速度よりも遅いことを意味する。本発明の第一および/または第二の態様による薬剤の複数の分子が提供される場合、一般に、このような分子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%または実質的に100%のものが、アルブミン様の第一のポリペプチドと第二のポリペプチドとの間の完全な形の結合を含む。より高い値が好ましい。
【0036】
一つの実施態様では、本発明の第一および/または第二の態様による薬剤は、ペプチド結合ではない、アルブミン様の第一のポリペプチドと第二のポリペプチドの間の結合を含んでなる。好適ないずれの非ペプチド結合を用いてもよい。一般に、この非ペプチド結合は上述のような結合である。
【0037】
しかしながら、好ましい一つの実施態様では、本発明の第一および/または第二の態様による薬剤は、ペプチド結合を介して第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる。例えば、この薬剤は融合タンパク質であってもよい。一般に、融合タンパク質は、そのN末端またはC末端を介して直接、または間接的に(すなわち、ポリペプチドリンカーを介して)第二のポリペプチドと融合したアルブミン様の第一のポリペプチドの配列を含んでなる。融合タンパク質は、アルブミン二量体に関して上記したように、ヘッド・トゥ・ヘッドまたはテール・トゥ・テール融合タンパク質であってよいが、当業者ならば、この原理はアルブミン二量体に限定されるものではなく、上記で示した判定基準を満たす限り、他のいずれのタイプのポリペプチド配列を第二のポリペプチドとして用いてもよいことが分かるであろう。また、「融合タンパク質」とは、その意味に、アルブミン様の第一のポリペプチドの配列を含むポリペプチドの内部における第二のポリペプチドの包摂、または第二のポリペプチドの内部におけるアルブミン様の第一のポリペプチドの配列の包摂も含む。特に好ましい一つの実施態様では、融合タンパク質は、そのN末端またはC末端を介して第二のポリペプチド(この増量用結合パートナーはアルブミン様ポリペプチドの部分配列または全配列を含む)のN末端またはC末端と直接または間接的に融合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる。
【0038】
本発明は、アルブミン様分子が大きくなると、NSなどの腎症状を有する患者においてその分子の半減期が長くなるという理解に基づくものである。
【0039】
上記のように大きなアルブミン様分子を提供する他、患者を直接、または患者から採取したex vivoアルブミン含有サンプルを、アルブミンと結合するアルブミンリガンドで、アルブミンの大きさを増すような用量で処置することにより、個体により天然に生産されるアルブミン分子を修飾することもできる。
【0040】
アルブミンリガンドは一般にアルブミンと非共有結合する。アルブミンと特異的に結合し、かつ、上記のように、そのような結合しているときには治療上不活性である限り、適当ないずれのリガンドを用いてもよい。「アルブミンと特異的に結合する」とは、患者においてアルブミン分子の半減期を長くし、それにより、患者において腎疾患またはそれに関連する症状の作用を緩和するのに治療上有効な量で用いた場合に、そのアルブミンリガンドと非アルブミン分子との結合の結果として患者が示す望ましくない顕著な副作用がないように、リガンドが十分高いアルブミン親和性を持っていなければならないことを意味する。
【0041】
アルブミンリガンドは、例えば、ある抗体の配列を含み得る。よって、例えばそれはIgG分子であってもよい。ここで、抗体という用語は、結合にかかわる配列を保持するフラグメントまたはその一部も含む。
【0042】
初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された事実として、抗体の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)ドメインは抗原認識および結合に関与する。齧歯類抗体の「ヒト化」によりさらなる確信が得られている。
【0043】
よって、フラグメントは1以上の重鎖可変(VH)または軽鎖可変(VL)ドメインを含み得る。例えば、抗体フラグメントとは、Fab様分子(Better et al (1988) Science 240, 1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science 240, 1038);VHとVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結されている単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science 242, 423; Huston et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85,5879)および単離されたVドメインを含んでなる単一ドメイン抗体(dAb)(Ward et al (1989) Nature 341, 544)が挙げられる。
【0044】
用いる可変ドメインが処置を意図する個体と同じ種に由来するものではない場合、その抗体はその可変ドメインと処置を意図する個体由来の定常ドメインとを融合させることにより改変することができる。よって、治療を意図するものがヒトである場合、その抗体は、組換え抗体が親抗体の抗原特異性を保持するように、その可変ドメインとヒト起源の定常ドメインとを融合させることにより「ヒト化」することができる(例えば、Morrison et al(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851-6855参照)。
【0045】
それらの特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の総説は、Winter & Milstein (1991) Nature 349, 293-299に見出せる。
【0046】
完全抗体ではなく、抗体フラグメントを用いると数倍有利である。フラグメントの大きさが小さいと、固形組織の浸透が良くなるなど、薬理特性の向上につながることがある。補体結合などの完全抗原のエフェクター機能は除去される。Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体フラグメントは総て、組換えにより発現および分泌させることができ(例えば、大腸菌または酵母から)、従って、このようなフラグメントが容易に大量生産できる。
【0047】
当業者ならば抗体の使用に代わるものに気づくであろう。例えば、アルブミンリガンドは、高い特異性でアルブミンと結合することが知られているペプチド配列である、アミノ酸配列DICLPRWGCLW(Dennis et al, 2002, J. Biol. Chem., 277: 35035)、または実質的に同じアルブミン結合特性を保持するその変異体を含んでもよい。
【0048】
アルブミン結合領域を含むことに加え、アルブミンリガンドは一般に、アルブミン分子と結合した際に、アルブミン−アルブミンリガンド複合体が上記のように天然に生産されるアルブミンよりも長い半減期を持つような十分な大きさを有する。
【0049】
この助けとなるよう、アルブミンリガンドは第二のポリペプチドと結合したアルブミン結合領域を含んでなるのが好適であり得る。第二のポリペプチドは上記で定義されたものであり得る。例えば、アルブミンリガンドは、アルブミンまたはその変異体の全配列または部分配列と融合した上記のような抗体を含み得る。
【0050】
よって、本発明の第三の態様によれば、14〜200kDa、より一般には14〜150kDaの大きさ、好ましくは少なくとも30kDaの大きさを有するアルブミンリガンドが提供される。これは100kDaを超えないのが好ましい。60〜70kDa前後が理想的であり得る。分子量の値は「平均」分子量としてとらえ、上記のように(サイズ排除クロマトグラフィー)SEC−HPLCを用いて測定する。
【0051】
上記で定義されたようなサイズ要求を有するアルブミンリガンドの代わりとして、アルブミンリガンドは第二の結合部位をさらに含み、すなわち、アルブミンリガンドは二重特異的である。よって、このアルブミンリガンドはアルブミン二量体の形成を容易にするよう、同じであっても異なっていてもよい2つのアルブミン結合領域を含み得る。あるいは、このアルブミンリガンドは、そのアルブミン結合領域の他、別のタンパク質またはその他の分子と結合し得る第二の結合部位を含んでもよく、このタンパク質またはその他の分子は治療上不活性な増量用結合パートナーとして機能して半減期の長いアルブミン−アルブミンリガンド−増量用結合パートナーの複合体をもたらす。
【0052】
また、本発明の第三の態様によれば、医薬において用いられる上記で定義したようなアルブミンリガンド、および腎疾患またはそれに関連する症状の処置用の薬品の製造における、上記で定義したようなアルブミンリガンドの使用が提供される。
【0053】
また、組換え法または化学的方法による、非天然エピトープを含む修飾アルブミンの製造も可能である。非天然エピトープは、例えば、C末端延長部であってもN末端延長部であってもよい。次に、アルブミンの天然エピトープではなく、非天然エピトープに対して結合特異性を有する上記で定義したようなアルブミンリガンドを選択することができる。アルブミンリガンドと修飾アルブミンとの結合は、次に、本発明の第一の態様による薬剤の製造を可能とする。
【0054】
よって、本発明の第三の態様によれば、第一の成分として、非天然エピトープを含んでなる修飾アルブミンと、第二の成分として、その修飾アルブミンの非天然リガンドと特異的に結合するアルブミンリガンドとを含んでなる系も提供される。第一および第二の成分の一方または双方は、上記で定義したような医薬上許容される担体または希釈剤とともに配合された組成物の形で提供することができる。この系は医薬として使用できる。例えば、この系は腎疾患またはそれに関連する症状の処置に使用できる。
【0055】
本発明の第四の態様によれば、上記で定義したように、融合タンパク質の形態の薬剤またはアルブミンリガンドをコードするコード配列を含んでなるポリヌクレオチドが提供される。
【0056】
さらに、例えば相同組換えにより外来のポリヌクレオチド配列を染色体DNAに導入することにより細胞内の内在遺伝子を改変する技術は先行技術として既知である。例えば、読者はWO01/68882公報に記載されているようなTranskaryotic Therapies, Inc.が提供しているTKTシステムに着目するであろう。このシステムを用いれば、相同組換えを促進する薬剤(例えば、Rad52)と標的配列近傍での非相同末端連結を阻害する薬剤(例えば、Ku不活剤)を提供することで、相同組換えにより二本鎖DNAが選択された標的DNA中に導入される。
【0057】
このタイプの組換え技術は、本発明においては、所定の細胞に内在するアルブミン遺伝子を改変するために使用できる。例えば、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、非天然エピトープをアルブミン遺伝子発現産物に導入し、それにより、本発明の第三の態様に記載したような修飾アルブミンを発現する細胞を作出するのに好適な配列を含んでなる、WO01/68882公報に記載のTKTシステムで用いるのに好適な二本鎖DNAであり得る。
【0058】
本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、上記で定義したような第二の増量用結合パートナーをアルブミン遺伝子発現産物に導入し、それにより、本発明による薬剤を融合タンパク質として発現する細胞を作出するのに好適な配列を含んでなる、WO01/68882公報に記載のTKTシステムで用いるのに好適な二本鎖DNAであり得る。
【0059】
以下の段は本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドに関するものであるが、当業者ならばまた、融合した第二のポリペプチドの不在下にアルブミン配列を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが同等の技術を用いて生産および発現可能であることが分かるであろう(このようにして生産されたアルブミンタンパク質は本発明の非融合タンパク質薬剤の製造に有用である)。このポリヌクレオチドは一般にDNAまたはRNAである。本発明によるポリヌクレオチドは、組換え法または合成法によるなど、当技術分野で公知のいずれかの方法により作製することができる(Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, (3rd Ed) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)。例えば、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは当技術分野で公知の合成方法により、通常は細孔性ガラスまたはポリスチレンなどの固相支持体を用いて製造すればよい(総説としては、Sambrook and Russell (2001) 前掲およびその中の参照文献を参照)。この目的で自動合成装置が利用でき、いくつかの業者から受注合成された所定の配列のポリヌクレオチドが商業的に入手できる。合成ポリヌクレオチドは、短いオリゴヌクレオチドを作製し、それらを組み合わせて、ライゲーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるなど、当技術分野で公知の技術を用いて本発明の第四の態様による全長ポリヌクレオチドを製造することにより合成することができる。さらに、および/またはあるいは、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の技術により天然源から直接または間接的に誘導可能なDNAまたはRNAを含み得る。よって、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、天然由来のポリヌクレオチド配列と合成ポリヌクレオチド配列の組合せを含み得る。さらに、天然由来のポリヌクレオチドの配列を、例えば選択された宿主細胞またはin vitro発現系に適するように意図する発現手段に従うコドン利用を至適化すべく改変してもよい。例えば本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドの発現タンパク産物の分泌を起こし得るシグナル配列またはリーダー配列など、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドにさらなる配列を含めてもよい。分泌は、本発明の第四の態様によるポリペプチドを発現する組換え細胞の培養物などの発現系からタンパク質を回収する目的に特に望ましいが、これは、培養培地から分泌したポリペプチドを回収するほうが組換え細胞内から非分泌型ポリペプチドを回収するよりも効率がよいからである。
【0060】
このようにして生産されたポリヌクレオチドの配列は、シーケンシングなど、好適ないずれかの方法によって確認することができる。当業者ならば、例えばこのようにして生産されたポリヌクレオチドの安定性を高める(in vitroまたはin vivo分解を軽減する)ために、または二次構造を改変する(これは例えばそのポリヌクレオチドのin vitroまたはin vivo発現の改変を可能とする)ために、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドに合成または改変ヌクレオチドを導入することができることが分かるであろう。
【0061】
通常、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、コード配列に作動可能なように連結された調節領域をさらに含む。「調節領域」とは、作動可能なように連結されているコード領域、この場合、本発明の第一および/または第二の態様による融合タンパク質をコードするコード領域または本発明の第三の態様によるアルブミンリガンドをコードするコード領域の発現(すなわち、転写および/または翻訳)を調整する(すなわち、増強または低下させる)配列をさす。調節領域は、一般にプロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位などを含む。当業者ならば、調節領域の選択が意図する発現系によって異なることが分かるであろう。例えば、プロモーターは構成型であっても誘導型であってもよく、細胞種または組織種特異的であっても非特異的であってもよい。本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドがDNAである場合、翻訳の読み過ごしを最小にし、それにより伸張した非天然融合タンパク質の生産を避けるため、UAA、UAGまたはUGAなどの翻訳停止コドンをコードする1を超えるDNA配列を組み込むのが有益であり得る。翻訳停止コドンUAAをコードするDNA配列が好ましい。当業者ならば、RNAポリヌクレオチドにも同等の配列を組み込むことができることが分かるであろう。
【0062】
「作動可能なように連結される」とは、その意味の範囲内に、調節領域を意図した様式で機能させるよう、融合タンパク質をコードする配列などのコード配列との関連性を形成するように本発明の第四の態様によるポリヌクレオチド内に置くことを含む。よって、融合タンパク質コード配列と「作動可能なように連結された」調節領域は、その調節領域が、その調節領域に適合する条件下で、意図した様式でコード配列の転写および/または翻訳に影響を及ぼし得るように配置される。
【0063】
本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドをベクターに導入してもよい。当業者ならば、異なる用途に用いるには異なるタイプのベクターが適していることが分かるであろう。このベクターは、例えば、細菌または酵母細胞における発現に好適なプラスミドであってもよい。ベクターはウイルスベクターであってもよい。一般的なベクターとしては、クローニングベクターおよび発現ベクターが挙げられる。ベクターを宿主細胞に導入する場合、ベクターは染色体外ポリヌクレオチドのままであるか、または宿主細胞の染色体に組み込まれる。
【0064】
よって、ベクターは標準的な技術によって宿主に導入した後、形質転換された宿主細胞を選択すればよい。このように形質転換された宿主細胞を、次に、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドのコード配列の発現を可能とするのに十分な時間、当業者に公知の、また、本明細書で開示した技術に照らして既知の適当な条件下で培養し、その後、これを回収することができる。
【0065】
細菌(例えば、大腸菌(E. coli)および枯草菌(Bacillus subtilis)、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis))、糸状真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、植物細胞、完全植物体、動物細胞および昆虫細胞をはじめ、多くの発現系が知られている。
【0066】
一つの実施態様では、好ましい宿主細胞は酵母サッカロミセス・セレビシエ、クルイベロミセス・ラクチスおよびピキア・パストリスである。例えば、遺伝子コード配列の破壊により、タンパク質のO−グリコシル化に関与する1以上のタンパク質マンノシルトランスフェラーゼが欠損している酵母を用いるのが特に有利である。
【0067】
アルブミンタンパク質配列はN結合グリコシル化部位を含まず、自然界ではO結合グリコシル化による修飾は報告されていない。しかしながら、いくつかの酵母種で生産されたrHAは一般にマンノースに関与するO結合グリコシル化によって修飾できることが分かっている。このマンノシル化アルブミンはレクチンコンカナバリンAと結合することができる。酵母が生産するマンノシル化アルブミンの量は、1以上のPMT遺伝子が欠損した酵母株を用いることで低下させることができる(WO94/04687公報)。これを達成する最も便宜な方法は、Pmtタンパク質の1つの産生レベルが低くなるようにそのゲノムに欠損を有する酵母を作出することである。例えば、Pmtタンパク質がほとんど、または全く生産されないような、コード配列または調節領域における(またはPMT遺伝子の1つの発現を調節する別の遺伝子における)欠失、挿入、または転位があり得る。あるいは、抗Pmt抗体などの抗Pmt剤を生産するように酵母を形質転換させてもよい。
【0068】
S.セレビシエ以外の酵母を用いる場合、例えばピキア・パストリスまたはクルイベロミセス・ラクチスにおいては、S.セレビシエのPMT遺伝子と同等な1以上の遺伝子を破壊することも有益である。S.セレビシエから単離されたPMT1(または他のいずれかのPMT遺伝子)の配列を、他の真菌種において同様の酵素活性をコードする遺伝子の同定または破壊に用いてもよい。クルイベロミセス・ラクチスのPMT1ホモログのクローニングはWO94/04687公報に記載されている。
【0069】
酵母はそれぞれWO95/33833およびWO95/23857に教示されているようなHSP150および/またはYAP3遺伝子の欠損を有することが有利である。
【0070】
好ましい一つの実施態様では、酵母をサッカロミセス・セレビシエ2μmプラスミドに基づく発現プラスミドで形質転換させる。酵母を形質転換する際には、プラスミドは細菌複製配列および選択配列を含み、これを形質転換後、EP286424公報の教示に従って内部組換え事象により切り出す。このプラスミドはまた、EP431880公報に教示されているような酵母プロモーター(例えば、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター);WO90/01063公報に教示されているように、例えば天然HSA分泌リーダーの大部分およびS.セレビシエα−交配因子分泌リーダーの小部分を含んでなる分泌リーダーをコードする配列;ヒト遺伝子に相当するcDNAを単離するための既知の方法により得られる、例えばEP73646公報およびEP286424公報に開示されているHSAコード配列;および転写ターミネーター、好ましくはEP60057公報に教示されているようなサッカロミセスADH1に由来するターミネーターを含んでなる発現カセットも含む。このベクターは少なくとも2つの翻訳停止コドンを組み込んでいるのが好ましい。
【0071】
上記プラスミドの種々のエレメントの選択は得られるアルブミン産物の純度には直接関係があるとは考えられないが、これらのエレメントは産物の収率の改善に関与するかもしれない。
【0072】
もう1つの実施態様では、宿主細胞は動物細胞である。一般に、動物細胞は哺乳類細胞、好ましくは哺乳類肝細胞である。この実施態様では、好ましい細胞種はヒト細胞種である。
【0073】
よって、本発明の第五の態様によれば、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチド、または本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドを含有するベクターを含んでなる上記のような宿主細胞が提供される。
【0074】
この宿主細胞はそのまま治療薬となり得る(すなわち、レシピエントと接触した際に治療作用をもたらし得る)。例えば、この宿主細胞は、本発明による薬剤である融合タンパク質を必要とするレシピエントへの移植に好適なものであり得る。レシピエントはヒトであり得る。このレシピエントはネフローゼ症候群を有していてもよい。さらに、および/またはあるいは、この宿主細胞は本発明において有用なポリペプチドを発現および取得する手段を提供することができ、例えば、この宿主細胞は、本発明の第一または第二の態様による非融合タンパク質薬剤または本発明の第三の態様によるアルブミンリガンドの製造のための、融合タンパク質または成分などのポリペプチドの組換え生産に使用できる。この様式で得られたポリペプチドは所望によりさらに修飾してもよく(例えば第二のポリペプチドと結合させることによる)、かつ/または所望により本明細書で述べるようにさらに精製してもよい。
【0075】
よって、本発明の第六の態様によれば、本発明の第一、第二または第三の態様により定義したような薬剤またはアルブミンリガンドを製造するための方法であって、本発明の第五の態様による細胞を得る工程、およびそれから第二のポリペプチドの配列と融合したアルブミン様の第一のポリペプチドの配列を含んでなるポリペプチドを含んでなる融合タンパク質を単離する工程を含んでなる方法が提供される。
【0076】
rHAの精製技術は、WO92/04367公報、マトリックス由来色素の除去;EP464590公報、酵母由来着色剤の除去;およびEP319067公報、アルカリ沈殿法およびその後のアルブミンに対して特異的親和性を有する親油相へのrHAの適用に開示されている。当業者ならば、これらの方法が本発明の第一、第二または第三の態様による融合タンパク質またはアルブミンリガンドの単離に適用できることが分かるであろう。好ましい一つの実施態様では、本発明の第六の態様は、WO00/44772公報またはWO96/37515公報(両者とも引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている方法による融合タンパク質の単離を含む。
【0077】
精製に関して以下で用いる「アルブミン溶液」および「アルブミン」とは、それぞれ、本発明の第五の態様による細胞から得られるものなどのアルブミン/融合タンパク質溶液およびアルブミン/融合タンパク質を含むものとする。
【0078】
本発明の第六の態様による方法で用いる精製過程は、例えば、比較的不純なアルブミン溶液をそのアルブミンが特異的親和性を持たないクロマトグラフィー材料に適用してアルブミンをその材料に結合させる工程、およびアルブミンに対して特異的親和性を有する化合物の溶液を適用することにより、結合したアルブミンをその材料から溶出させる工程を含み得る。好ましくは、このクロマトグラフィー材料は、SP−セファロースFF、SP−スフェロシルなどのような陽イオン交換体である。アルブミンに対して特異的親和性を有する化合物としては、オクタン酸塩(例えば、オクタン酸ナトリウム)、その他の長鎖(C6〜C22)脂肪酸、サリチル酸塩、オクチルコハク酸塩、N−アセチルトリプトファンまたはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0079】
最終産物は付加的安定性を与えるように調剤することができる。好ましくは、本発明によるアルブミン融合タンパク質または本発明による非融合タンパク質薬剤の製造に用いられるアルブミンタンパク質などの高純度アルブミンは、少なくとも100g、より好ましくは1kgまたは10kgのアルブミン融合タンパク質またはアルブミンを含み得るものであり、複数のバイアルに分割することができる。
【0080】
しかしながら、精製アルブミンが最終産物でなく、単に最終産物の前駆体である場合、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤またはアルブミンリガンドを得るためにはさらなる修飾が必要である。よって、本発明の第七の態様によれば、NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤を製造する方法であって、薬剤が第二のポリペプチドと結合した第一のアルブミン様ポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが治療上不活性であり、
(a)第一の成分としてアルブミン様の第一のポリペプチドを準備する工程;
(b)第二の成分として第二のポリペプチドを準備する工程;および
(c)薬剤を形成させるのに好適な条件下で第一の成分を第二の成分と接触させる工程
を含んでなる方法が提供される。
【0081】
「薬剤を形成させるのに好適な条件」とは、第二のポリペプチドが、不可逆的変化が変化した分子をレシピエントに対して有毒とするか、またはレシピエントで無効とするような第二のポリペプチドまたは第一のアルブミン様のポリペプチドのいずれかの不可逆的変化を起こさずに、アルブミン様配列を含んでなる第一のポリペプチドと結合するいずれの条件も含むものとする。当業者ならば、条件は第一および第二の成分の特性を考慮して、望ましいタイプの結合の形成に合うようにすることができることが分かるであろう。
【0082】
当業者ならば、アルブミンリガンドを形成させるに好適な条件下でアルブミン結合分子を第二のポリペプチドと接触させることにより、上記で定義したようなアルブミンリガンドを製造するための同等の方法を使用できることが分かるであろう。
【0083】
あるポリペプチドを別のポリペプチドと結合させる方法は当技術分野で周知のものである。例えば、タンパク質−LabFax(N. C. Price, 1996, Academic Press)には、4,4’−ジマレイミドスチルベンなどの同質二官能性架橋試薬を用いて遊離SH基を介しての、またはN−スクシンイミジル6−マレイミドカプロエートなどの異質二官能性架橋試薬を用いて−SH基および−NH2基を介しての、またはジスクシンイミジルスベレートなどの同質二官能性架橋試薬を用いて−NH2基を介してのポリペプチド架橋プロトコールが記載されている。米国特許第4,136,093号明細書には、グルタルアルデヒドを用いた−NH2基を介してのポリペプチドの架橋が記載されている。その他の二官能性および三官能性架橋基も上記に述べられている。
【0084】
本発明の第八の態様によれば、本発明の第二の態様による組成物、または本発明の第三の態様で定義されたアルブミンリガンドを含んでなる組成物を製造する方法であって、本発明の第六または第七の態様による方法により薬剤またはアルブミンリガンドを製造すること、およびその薬剤またはアルブミンリガンドと医薬上許容される担体または希釈剤とを配合することを含んでなる方法が提供される。
【0085】
以下の例は、有効成分が本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤またはアルブミンリガンドである、本発明による医薬処方物を例示するものである。
【0086】
注射用処方物
有効成分 10g
無菌パイロジェンフリーリン酸バッファー(pH7.0) 50mlまで
【0087】
有効成分を大部分のリン酸バッファーに溶解し(20〜40℃)、一定量とし、無菌0.2μmフィルターで無菌の50mlガラスバイアル(I型またはII型)中へ濾過し、無菌の栓およびオーバーシールで密閉する。読者は、処理する条件に合わせて有効成分の量を増やしたり減らしたりできることが分かるであろう。例えば、用いる有効成分の量は10gを超えてよく、例えば20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500gまたはそれ以上とすることができる。処方物の量は、有効成分が確実に生理学上許容される濃度で提供されるように調整することができる。
【0088】
非経口投与に好適な処方物としては、抗酸化剤、バッファー、アルブミン安定剤、および処方物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性無菌注射溶液が挙げられる。これらの処方物は単位用量で提供してもよいし、または例えば密閉アンプルおよびバイアルなどの多回用量容器で提供してもよく、使用直前に例えば注射用水などの無菌液体担体を添加するだけの凍結乾燥状態で保存してもよい。即時調合注射溶液は従来の各種無菌粉末から調製し得る。
【0089】
本発明による薬剤の濃度、ナトリウムの濃度、およびオクタン酸塩の濃度を決定するため、好適な注射用処方物を分析すればよい。これらの量を考慮し、処方物の仕様を達成するために必要なさらなる量の塩化ナトリウムおよびオクタン酸ナトリウム賦形剤原液と適当な等級の水を加える。最終的な薬剤濃度は150〜250gL−1または235〜265gL−1であってよく、ナトリウム濃度は130〜160mMである。他の実現可能な薬剤濃度とすることもでき、例えば最小濃度は少なくとも4%(w/v)、好ましくは4〜25%(w/v)である。処方物は、ポリソルベート80、またはヒトアルブミンに関して米国薬局方に明示されているもの、および希釈水などの、適当な通常の医薬上許容される賦形剤も含み得る。
【0090】
好ましい単位投与形処方物は、一日量または単位、有効成分の一日部分用量またはその適当な画分を含有するものである。
【0091】
特に上述した成分の他、本発明による処方物は対象とする処方物種に対して含まれる当技術分野で通常の他の成分を含んでもよいと理解すべきである。
【0092】
よって、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、また、本発明の第六、第七または第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞は、レシピエントに治療上有益な作用をもたらすように投与することができる。「治療上有益な」とは、ネフローゼ症候群(NS)もしくは尿毒症、またはそれに関連する症状などの腎疾患の作用が緩和されるという意味を含む。腎疾患に関連する症状とは、その症候または腎疾患に関連する症状を含む。このような症候としては、低アルブミン血症、タンパク尿、アルブミン尿、浮腫、低血漿量および高脂血症が挙げられる。よって、腎疾患に関連する症状の例としては、高脂血症に関連することが知られているアテローム性動脈硬化心血管疾患がある。
【0093】
一般に、本発明による薬剤、アルブミンリガンド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞またはその処方物は、レシピエントが腎疾患を有する場合に本明細書に記載の方法において使用される。1つの好ましい実施態様では、レシピエントはネフローゼ症候群を有し得る。もう1つの好ましい実施態様では、レシピエントは尿毒症を有し得る。さらに、および/またはあるいは、レシピエントは浮腫またはアテローム性動脈硬化心血管疾患などの腎疾患に関連する症状を有し得る。よって、上記の方法における本発明による薬剤、アルブミンリガンド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞、またはその処方物の使用は、低タンパク質血症、低アルブミン血症、タンパク尿、高脂血症、浮腫の処置を提供し、かつ、血漿コロイド圧を維持し、組織への酸素分布を改善する手段を提供する。
【0094】
ネフローゼ症候群は糸球体濾過系の著しい漏出を特徴とする。本発明による既知分子量の薬剤またはアルブミンリガンドを個体に投与し、その個体の糸球体濾過系の漏出の分子量閾値を判定することができる。本発明による薬剤またはアルブミンリガンドは当技術分野で周知の技術を用いて標識することができる。本発明による標識薬剤またはアルブミンリガンドを個体に投与した後、次に、例えばその個体の尿を分析することで、標識薬剤またはアルブミンリガンドの排泄の検出を試みる工程を行えばよい。投与した薬剤またはアルブミンリガンドは互いに同じ分子量を有してもよい。あるいは、大きさの異なる薬剤またはアルブミンリガンドを、所望により各々異なる大きさに対応する異なる標識を有するようにして同時に投与してもよい。例えば、個体の尿中の薬剤またはアルブミンリガンドの検出は、個体の糸球体濾過系の排泄に関する分子量閾値を示唆し得る。もちろん、アルブミンリガンドの大きさがそれ自体患者の糸球体濾過系の分子量閾値を下回る場合は、アルブミンと結合している場合にのみ排泄されるのであれば「漏れのある」糸球体濾過系の指標となるので、排泄されるアルブミンリガンドが遊離のリガンドとして排泄されるのか、アルブミンと結合した場合に排泄されるのかを判定する必要がある。よって、本発明による薬剤およびアルブミンリガンドはNSなどの異常な糸球体濾過系に関連する症状を診断する方法において用いることができる。
【0095】
よって、本発明の第九の態様によれば、ヒトまたは動物体の外科術、治療または診断による処置方法に用いるための、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、または本発明の第六、第七または第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞が提供される。
【0096】
上述のように、薬剤、アルブミンリガンド、その組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞は、レシピエントに投与するのに好適な様式で調剤することができる。よって、本発明の第十の態様によれば、腎疾患またはそれに関連する症状の処置用薬品の製造における、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、または本発明の第六、第七または第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞の使用が提供される。
【0097】
このようにして調剤された薬剤は、次に、レシピエントに投与することができる。よって、本発明の第11の態様によれば、腎疾患またはそれに関連する症状を有する患者を処置する方法であって、本発明の第一、第二もしくは第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、または本発明の第六、第七もしくは第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞を、医薬上有効な量および濃度で患者に投与することを含んでなる方法が提供される。
【0098】
上述の本発明による薬剤、アルブミンリガンド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞またはその処方物は、経口および非経口(例えば、皮下または筋肉内)注射をはじめとする便宜ないずれかの方法によって投与することができる。この処置は単回投与または一定の期間にわたる複数回の投与からなってよい。本発明による薬剤、アルブミンリガンド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は単独で投与することもできるが、1種以上の許容される担体とともに医薬処方物として提供することが好ましい。
【0099】
本明細書において「医薬上有効な量」とは、その意味の範囲内に、個体に投与される本発明による薬剤、アルブミンリガンドまたは組成物の最適な量を含む。これは、当業者ならば、患者または被験体の種、大きさ、齢および健康状態を考慮して決定することができる。最適な量とは、細胞傷害作用または免疫応答などの許容されないレベルの望ましくない副作用を生じることなく、腎疾患またはそれに関連する症状の作用を最適に緩和することができる量である。当業者ならば、ある用量が許容されない副作用を持つかどうかを決定することができる。単回用量で投与される薬剤または組成物の量は一般に1g〜200g、より一般には5g〜150g、好ましくは10g〜100gである。一般的な提案として、非経口投与する薬剤の、投与1回当たりの医薬上有効な総量は0.5g/kg〜5g/kg患者体重の範囲である。一般に、患者においてアルブミンの正常量を効果的に維持するためには、1日、または3日もしくは7日に1回投与する。
【0100】
以下、本発明を以下の図面および実施例を参照しながらより詳細に説明する。
【0101】
実施例1
配列番号5は、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター由来の5’UTRを含む非コード領域(配列番号1);WO90/01063に定義されているHSA/MFα−1融合リーダー配列をコードするポリヌクレオチド領域(配列番号2);成熟ヒトアルブミンの第二のコドン最適化コード領域と融合した、成熟ヒトアルブミンの第一のコドン最適化コード領域(双方とも配列番号3)および翻訳終結部位(配列番号4)を含んでなる本発明の薬剤をコードするDNA配列を示す。
【0102】
このようなDNA配列は重複一本鎖オリゴヌクレオチドの形でGenosys, Inc (Cambridge, UK)から入手することができる。
配列番号5はSacI−HindIII DNA断片として合成し、プラスミドAとしてのプラスミドpBSSK−(Stratagene Europe, P. O. Box 12085, Amsterdam, The Netherlands)のSacI−HindIII部位にクローニングする(図1)。
【0103】
サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーターは、2つの標準的な一本鎖オリゴヌクレオチドPRBJM1(配列番号6)およびPRBJM3(配列番号7)を用いてPCRにより酵母ゲノムDNAから単離する。
【0104】
PCR条件は、94℃30秒、50℃40秒、72℃120秒を40回の後、72℃60秒、その後4℃で保持する。0.81kb DNA断片をNotIおよびHindIIIの両者で消化し、同様にNotIおよびHindIIIで消化したWO97/24445に記載のpBST+に連結し、プラスミドBを作出する(図2)。プラスミドBをHindIIIおよびBamHIで消化し、従前にWO00/44772に開示されているpAYE440由来の0.48kb HindIII/BamHI ADH1ターミネーターDNA断片と連結し、プラスミドCを作出する(図3)。
【0105】
配列番号5の3.6kb HindIII DNA断片をプラスミドCのユニークなHindIII部位にクローニングしてプラスミドDを作出し、これはPRB1プロモーターとADH1ターミネーターの間に、PRB1プロモーターからの発現に関して適正な配向で、適切な大きさの配列番号5のHindIII DNA断片を含むことを示すことができる(図4)。
【0106】
プラスミドDをNotIで完全に消化し、配列番号5のNotI PRB1プロモーター/HindIII DNA断片遺伝子/ADH1ターミネーター発現カセットを精製する。プラスミドD由来のNotI発現カセットを、予めウシ腸管ホスファターゼ(CIP)で処理した、NotIで線状化したpSAC35 (Sleep et al.(1991), Bio/technology 9: 183-187)へ連結し、プラスミドEを作出する(図5)。プラスミドEは、pSAC35のNotI部位に挿入され、かつ、融合遺伝子の発現がLEU2栄養要求マーカーから2μm複製起点へと向かうように配向されているNotI発現カセットを含むことを示すことができる。
【0107】
酵母株は、Hinnen et al, (1978) P. N. A. S. 75,1929に記載の方法により、プラスミドEでロイシン原栄養性へと形質転換させる。この形質転換体を、2%(w/v)グルコースを含有する緩衝最小培地(Buffered Minimal Medium(BMM、Kerry-Williams, S. M. et al. (1998) Yeast 14, 161-169により記載) (BMMD)に貼り付け、さらなる分析のために十分増殖するまで30℃で培養する。2%(w/v)グルコースを含有する10mL YEP(1%(w/v)酵母抽出物;2%(w/v)バクトペプトン)(YEPD)およびBMMD振盪フラスコ培養物(30℃、200rpm、72時間)から、無細胞培養上清のロケット免疫電気泳動により、形質転換体によるアルブミン融合タンパク質の生産性を分析する。
【0108】
許容レベルのアルブミン融合タンパク質生産を示す形質転換体の保存株培養物を用い、20%(w/v)トレハロースの存在下で培養物のアリコートを冷凍することにより、振盪フラスコ培養物の調製に好適な処理酵母の実施保存株(研究用細胞バンク)を作製する。
【0109】
発酵法は、引用することにより本明細書の一部とするWO00/44772に記載のものと本質的に同じである。
【0110】
WO00/44772に記載のものと本質的に同様に陽イオン交換体でのクロマトグラフィーのため、発酵から濃縮物を調製、またはコンディショニングする。精製プロセスは本質的にWO00/44772に記載のように、次のような工程:陽イオン交換クロマトグラフィー;陰イオン交換クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー;限外濾過とダイアフィルトレーション;第二のアフィニティークロマトグラフィー工程;限外濾過とダイアフィルトレーション;第二の陽イオン交換クロマトグラフィー工程;および第二の陰イオン交換クロマトグラフィーを含む。好ましくは、これらの精製プロセスの後に最終の限外濾過/ダイアフィルトレーション、その後、所望のタンパク質濃度、例えば200g/Lとするために、インジェクション用水の添加、オクタン酸ナトリウムおよび/またはポリソルベート80のような既知のアルブミン安定剤の添加、レシピエントの血液と等張にするための溶質(例えば、NaCl)の添加、および生理学的に適合するようにするためのpH調整、例えばpH7.0、および/またはその溶液の最終容器への充填を含む調製工程を行う。
【0111】
実施例2
配列番号8は、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター由来の5’UTRを含む非コード領域;HSA/MFα−1融合リーダー配列をコードするポリヌクレオチド領域;成熟ヒトアルブミンのコドン最適化コード領域および翻訳終結部位を含んでなるDNA配列を示す。
【0112】
このDNA配列は、Genosys, Inc (Cambridge, UK)が重複一本鎖オリゴヌクレオチドから、プラスミドpAYE639としてのプラスミドpBSSK−(Stratagene Europe, P.O. Box 12085, Amsterdam, The Netherlands)のSacI−HindIII部位にクローニングされた1.865kb SacI−HifzdIII DNA断片として合成されたものである(図6)。
【0113】
サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーターは、2つの標準的な一本鎖オリゴヌクレオチドPRBJM1(配列番号9)およびPRBJM3(配列番号10)を用いPCRにより酵母ゲノムDNAから単離した。
【0114】
PCR条件は、94℃30秒、50℃40秒、72℃120秒を40回の後、72℃60秒、その後4℃で保持する。0.81kb DNA断片をNotIおよびHindIIIの両者で消化し、同様にNotIおよびHindIIIで消化したWO97/24445に記載のpBST+に連結し、プラスミドpAYE439作出した(図7)。プラスミドpAYE439をHindIIIおよびBamHIで消化し、従前にWO00/44772に開示されているpAYE440由来の0.48kb HindIII/BamHI ADH1ターミネーターDNA断片と連結し、プラスミドpAYE466作出した(図8)。
【0115】
配列番号7の1.865kb HindIII DNA断片をプラスミドpAYE466のユニークなHindIII部位にクローニングしてプラスミドpAYE640を作出したところ、これはPRB1プロモーターとADH1ターミネーターの間に、PRB1プロモーターからの発現に関して適正な配向で、配列番号26の1.865kb HindIII DNA断片を含むことが示された(図9)。
【0116】
プラスミドpAYE640は、適当な転写プロモーターと転写ターミネーター配列を提供する酵母RAB1プロモーターと酵母ADH1ターミネーターを含む。プラスミドpAYE640を制限酵素AfZIIで完全に消化し、制限酵素HindIIIで部分的に消化し、酵母PEB1プロモーターの3’末端とrHA コード配列を含む1.90kb DNA断片を単離した。特許出願WO00/44772に記載されているようなプラスミドpDB2241をAfZII/HindIIIで消化し、酵母PRB1プロモーターの5’末端と酵母ADH1ターミネーターを含む4.31kb DNA断片を単離した。このpAYE640由来のAfZII/HindIII DNA断片を次にAfZII/HindIII pDB2241ベクターDNA断片にクローニングし、プラスミドFを作出した。プラスミドFをPacI/XhoIで完全に消化し、6.19kb断片を単離し、この凹末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端とし、細連結してプラスミドGを作出した。プラスミドGをClaIで線状化し、凹末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端とし、細連結してプラスミドHを作出した。プラスミドHをBlnIで線状化し、凹末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端とし、細連結してプラスミドIを作出した。プラスミドIをBmgBI/BglIIで完全に消化し、6.96kb DNA断片を単離し、2つの二本鎖オリゴヌクレオチドリンカーVC053(配列番号11)/VC054(配列番号12)およびVC057(配列番号13)/VC058(配列番号14)のうちの1つと連結してプラスミドJを作出した。
【0117】
組換えアルブミン発現ベクターpDB2243を従前に特許出願WO00/44772に記載されている。プラスミドpDB2243をSphIおよびBsu36Iで完全に消化し、酵母PRB1プロモーター、大部分のヒトアルブミンcDNAおよび酵母ADH1ターミネーターの一部を含む6.00kb DNA断片を単離した。プラスミドJをSphIおよびAgeIで完全に消化し、合成アルブミン遺伝子と酵母ADH1ターミネーターの一部を含む1.93kb DNA断片を単離した。配列番号15および配列番号16の配列を有する2つの合成オリゴヌクレオチドをアニーリングすることで、二本鎖Bsu36I−AgeI DNAリンカーを形成した。
【0118】
pDB2243由来の6.00kb SphI/Bsu36I DNA断片を、二本鎖Bsu36I−AgeI DNAリンカーとプラスミドJ由来の1.93kb SphI/AgeI DNA断片と連結することで、アルブミン二量体遺伝子を含んだプラスミドKを作出した。
【0119】
プラスミドKをNotIで完全に消化し、NotI PRB1プロモーター/アルブミン二量体遺伝子/ADH1ターミネーター発現カセットを精製する。プラスミドK由来のこのNotIアルブミン二量体発現カセットを、予めウシ腸管ホスファターゼ(CIP)で処理した、NotIで線状化したpSAC35(Sleep et al. (1991), Bio/technology 9:183-187)に連結してプラスミドLを作出する。プラスミドLは、pSAC35のNotI部位に挿入され、かつ、その融合遺伝子の発現がLEU2栄養要求マーカーから2μm複製起点に向かうように配向されたNotI発現カセットを含むことを示すことができる。プラスミドLの融合遺伝子の配列は配列番号17に示されている。
【0120】
酵母株をプラスミドLで形質転換し、その形質転換体を発酵させてアルブミン二量体を生産し、上記実施例1に記載したようにアルブミン二量体を精製した。
【0121】
配列表
配列番号1:サッカロミセス・セレビシエ由来の5’UTR
【化1】
【0122】
配列番号2:HSA/MFα1融合リーダー配列
【化2】
【0123】
配列番号3:成熟ヒトアルブミンのコドン最適化コード領域
【化3】
【0124】
配列番号4:翻訳終結部位
【化4】
【0125】
配列番号5:実施例1の融合構築物
【化5】
凡例:サッカロミセス・セレビシエ由来の5’UTR−一重線
HSA/MFα−1融合リーダー配列−太字
第一のコドン最適化HSAコード領域−破線
第二のコドン最適化HSAコード領域−文字飾りなし
翻訳終結部位−二重線
【0126】
配列番号6:PRBJM1
【化6】
【0127】
配列番号7:PRBJM3
【化7】
【0128】
配列番号8
【化8】
【0129】
配列番号9:PRBJM1
【化9】
【0130】
配列番号10:PRBJM3
【化10】
【0131】
配列番号11:VC053
【化11】
【0132】
配列番号12:VC054
【化12】
【0133】
配列番号13:VC057
【化13】
【0134】
配列番号14:VC058
【化14】
【0135】
配列番号15
【化15】
【0136】
配列番号16
【化16】
【0137】
配列番号17:実施例2の融合構築物
【化17】
凡例:サッカロミセス・セレビシエ由来の5’UTR−一重線
HSA/MFα−1融合リーダー配列−太字
天然HSA cDNAコード領域−破線
第一のコドン最適化HSAコード領域−文字飾りなし
翻訳終結部位−二重線
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】プラスミドAのプラスミド地図を示す。
【図2】プラスミドBのプラスミド地図を示す。
【図3】プラスミドCのプラスミド地図を示す。
【図4】プラスミドDのプラスミド地図を示す。
【図5】プラスミドEのプラスミド地図を示す。
【図6】プラスミドpAYE639のプラスミド地図を示す。
【図7】プラスミドpAYE439のプラスミド地図を示す。
【図8】プラスミドpAYE466のプラスミド地図を示す。
【図9】プラスミドpAYE640のプラスミド地図を示す。
【図10】プラスミドFのプラスミド地図を示す。
【図11】プラスミドGのプラスミド地図を示す。
【図12】プラスミドHのプラスミド地図を示す。
【図13】プラスミドIのプラスミド地図を示す。
【図14】プラスミドJのプラスミド地図を示す。
【図15】プラスミドKのプラスミド地図を示す。
【図16】プラスミドLのプラスミド地図を示す。
【発明の背景】
【0001】
本発明は、腎疾患および関連症状の処置のための薬剤、その薬剤を製造するための方法および手段、ならびにその薬剤の腎疾患および関連症状の処置における使用に関する。より詳しくは、本発明は、天然に生産されるアルブミンよりもネフローゼ症候群患者の血液からの排泄速度が遅い修飾アルブミンに関する。
【0002】
ネフローゼは、低アルブミン血症、高コレステロール血症および浮腫を特徴とする腎臓の疾患である。ネフローゼ症候群(NS)は糸球体濾過系の著しい漏出を特徴とし、血漿タンパク質の大きな損失をもたらす(Peters, 1996, All About Albumin: Biochemistry, Genetics and Medical Applications, Academic Press, Inc., San Diego, California)。
【0003】
正常な糸球体バリアは電荷選択特性とサイズ選択特性の組合せによりアルブミン尿(尿中にアルブミンが存在)を防ぐこと、また、検討したネフローゼ患者における観察可能なレベルのタンパク尿を説明するには、これら両特性の欠陥が必要であることが示されている(Blouch et al, 1997, Am J. Physiol., 273 (3 Pt 2): P430-437)。78kDaより小さいタンパク質はNS患者のタンパク尿に特に影響されやすい(Peters, 1996, 前掲)。
【0004】
ヒト血清アルブミン(HSA)は一般に約66kDaの大きさである。NS患者では、アルブミンの日々の損失は一般に約10mgから1〜8gに上昇するが、17gといった高い値になる場合もある(Peters, 1996,前掲)。NSにおける偶発的所見は、冷凍保存した尿サンプルにおける高い割合のアルブミンS−S結合二量体である(Birtwhistle and Hardwicke, 1985, Clin. Chim. Acta, 151, 41-48)。このアルブミンの損失に腎尿細管内の高い異化作用が加わり(Kaysen and Bander, 1990, Am. J. Nephrol., 10 (Suppl. 1), 36-42)、その結果、血漿中のアルブミンの半減期は19日から約4日に短縮される(Jensen et al, 1967, Clin. Sci., 33, 445-457)。
【0005】
低い血清アルブミンレベルは、血中脂質含量の上昇につながる可能性がある。低アルブミン血症は血清リポタンパク質(a)レベルの上昇における重要な誘因であり、これは特にNS患者においてアテローム性動脈硬化心血管疾患を誘発し得ることが示されている(Yang et al, 1997, Am. J. Kidney Dis., 30(4): 507-513)。高脂血症はNSの特徴であり、アルブミンの損失量と並行しているので、リポタンパク質リパーゼ作用からの長鎖脂肪酸のアクセプターとしてのアルブミンの不足は、高脂血症においてある役割を果たしている可能性があることが示唆されている(Peters, 1996, 前掲)。
【0006】
一般に30〜50%の患者がアルブミン合成の上昇(通常、13〜14g/日の標準速度から30〜40%)という応答を示すが、27g/日という高い上昇を示す場合もある (Peters, 1996, 前掲)。アミノ酸供給に対するアルブミン合成の依存性が維持されていることから、NSの処置として高タンパク質摂取が示唆された(Peters, 1996, 前掲)。逆に、NSの処置において低タンパクの食事も考えられており(Palmer, 1993, Am J Med Sci, 306(1): 53-67; Kaysen, 1998, Miner. Electrolyte Metab., 24: 55-63)、最近では、ネフローゼ患者におけるタンパク尿の軽減および血清アルブミンレベルの上昇が示されている(Giordano et al, 2001, Kidney Int., 60(1): 235-242)。
【0007】
NSに関して他の処置も提案されている。アルブミン注入は重篤なネフローゼ患者で血漿量を高めることが示されているが、その作用は短期的なものであり、アルブミンは急速に腎排泄される(Kuhn et al, 1998, Kidney Int. Suppl., 64: S50-53)。一方、アルブミンとループ利尿薬であるフロセミドを同時投与すると、ネフローゼ性の浮腫の処置に、より有効となることが示されている(Bircan et al, 2001, Pediatr. Nephrol., 16(6): 497-499)。NS患者においてヒトアルブミンを同時投与すると、フロセミドの作用が増進するが、これはわずかなものでしかないと結論付けられている(Fliser et al, 1999, Kidney Iit., 55(2): 629-634)。さらに、フロセミド耐性NSの治療において、組換えHSA(rHSA)はヒト血漿から調製されたHSAと同等に使用することができることが示されている(Tsulcada et al, 1998, Gen. Pharmacol., 31(2): 209-214)。
【0008】
示唆されている他の治療としては、NSにおけるタンパク尿を軽減するためのアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(Bakris, 1993, Postgrad. Med., 93(5):89-100)の使用、NSに関連する原発性糸球体疾患の処置(Kuhn et al, 1998, Kidney Int. Suppl., 64: S50-53) および通常の凝固により20g/lを下回る血清アルブミンレベルを有するネフローゼ患者の処置(Kuhn et al, 1998, 前掲)のためのプレドニゾロン、シクロホスファミド、クロラムブシルおよびヒドロクロロチアジドの使用が挙げられる。また、重篤なNSの場合の著しい高脂血症はHMG−CoAレダクターゼ阻害剤で処置することができることも示唆されている(Kuhn et al, 1998, 前掲)。
【発明の開示】
【0009】
こういったことを背景に、本発明の目的は、天然に生産されるアルブミンよりも半減期が改良された(すなわち、長い)修飾アルブミンを提供することにより、NSなどの腎症状の処置のための薬剤を提供することである。
【0010】
アルブミンの融合は先行技術において知られている。実際、アルブミンは、その長い半減期と生物活性が比較的低いために、他のタンパク質の担体としての使用に適していることが周知である。よって、先行技術では、アルブミンと治療上有効なタンパク質との融合が開示されており、この場合、融合は、アルブミンの半減期ではなく、治療上有効なタンパク質の半減期を改良する効果を有する。例えば、WO01/05826公報では、血清アルブミンのセグメントと生物学的に活性な異種ペプチドの断片を含有するキメラポリペプチドが提供され、この生物学的に活性な異種ペプチドは、例えば、受容体アクチベーター、抗原、または膜もしくはイオンチャネルと相互作用することができ、それが融合するアルブミンと40%未満の同一性を有するペプチドである。さらに、WO01/05826公報では、そこに示されたキメラポリペプチドが非融合血清アルブミンの半減期を超えることなく、単にそれに近い半減期を有することが教示されている。
【0011】
米国特許第6,165,470号明細書では、ウイルスに対する受容体の活性ドメインか、またはウイルスと結合し得る分子の活性ドメインか、またはウイルスと結合した免疫グロブリンのFcフラグメントを認識し得る分子の活性ドメインか、またはアルブミンもしくはアルブミン変異体と結びついた、病理過程に介在するリガンドと結合し得る分子の活性ドメインを有することを特徴とするハイブリッド高分子が提供されている。これらのハイブリッドは活性ドメインの半減期を延長させるために形成されたものである。
【0012】
WO99/66054公報では、エリスロポエチン生物活性を有するエリスロポエチン類似体−HSA融合タンパク質が提供されている。WO00/69900公報では、治療ペプチドの半減期を延長させるための血中成分との結合により、内在する治療ペプチドの、ペプチダーゼ活性からの保護が提供されている。WO00/69900公報では、治療ペプチドの担体としてのアルブミンの使用に言及されている。
【0013】
よって、本発明の第一の態様によれば、ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、少なくともアルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤が2つのアルブミン分子からなる場合には、それらが1以上のシステイン−システインジスルフィド架橋のみによる結合以外の手段により互いに共有結合している薬剤が提供される。言い換えれば、本発明の第一の態様による薬剤は、Birtwhistle and Hardwicke, 1985(前掲)に記載されているようなアルブミンS−S結合二量体ではない。
【0014】
本発明の第二の態様によれば、医薬上許容される担体または希釈剤と、NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤とを含んでなる組成物であって、該薬剤が第二のポリペプチドと結合したアルブミン様のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤がアルブミン様ポリペプチドの二量体である場合には、医薬組成物中に存在するアルブミン様の第一のポリペプチドの2%を超えるものが第二のポリペプチドと結合している組成物が提供される。
【0015】
担体または希釈剤は、それが本発明の第一または第二の態様による薬剤と適合する場合、かつ、それがそのレシピエントに害をおよぼさない場合に「医薬上許容される」。通常、担体または希釈剤は無菌またはパイロジェンフリーの水または生理食塩水である。
【0016】
薬剤が2つのアルブミンポリペプチドの二量体である場合、本発明の第二の態様による組成物の総アルブミンポリペプチド含量の少なくとも30%、40%、50%またはそれ以上が第二のポリペプチドと結合している。薬剤がアルブミン−アルブミン二量体ではない場合には、もっと低い割合(3%、5%、9%、10%、15%または20%など)のアルブミン様の第一のポリペプチドしか第二のポリペプチドと結合していないかもしれないが、やはり、上記のように少なくとも30%等がこのような結合をしていることが好ましい。本発明の第二の態様による医薬組成物中のアルブミン様の第一のポリペプチドの、好ましくは60%、70%、80%または90%、より好ましくは95%、さらに好ましくは98%、さらに好ましくは99%、最も好ましくは実質的に100%のものが第二のポリペプチドと結合している。
【0017】
好ましくは、本発明の第二の態様による組成物では、この薬剤は、Eur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載のような酢酸セルロース電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)−HPLCにより測定した場合に、主要なタンパク質成分として、より好ましくはその組成物の全タンパク質含量の少なくとも80%として存在し、この場合、薬剤に相当するバンドまたはピークは全電気泳動図またはクロマトグラムのそれぞれ>80%を示す。
【0018】
本発明の第一の態様による薬剤および本発明の第二による態様の組成物で用いる薬剤は、NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも長い半減期を有する。NS患者における薬剤の半減期に関して「長い」とは、その薬剤がNS患者において天然に生産されるアルブミンよりも少なくとも1日、より好ましくは少なくとも3日、より好ましくは少なくとも5日、さらに好ましくは少なくとも10日長い半減期を有するという意味が含まれる。通常、NS患者における本発明の第一および/または第二の態様で定義された薬剤の半減期は、NS患者において天然に生産されるアルブミンの少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、20倍またはそれ以上である。患者の身体におけるタンパク質の半減期は当技術分野で周知の技術によって判定することができる。例えば、本発明による薬剤(「試験薬剤」)の半減期は次のようにして野生型の非修飾アルブミン(「通常アルブミン」)と臨床的に比較することができる:ネフローゼ症候群患者を「通常」アルブミンまたは「試験」アルブミンに不作為に割り付ける。各1回量1.4g/kgを静脈点滴する。これは「通常」の血漿アルブミン濃度約35g/L(ヒトの血漿量は40mL/Kg)に相当する。投与前にアルブミンの血漿濃度を測定し、血液循環中のこの生成物の生存時間に従い、12時間ごとに繰り返す。生成物濃度が20g/Lを下回ったらすぐに上記のように点滴を繰り返す。アルブミンの測定は、例えばEur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載のような酢酸セルロース電気泳動アッセイを、同書に記載のタンパク質窒素アッセイのような全タンパク質アッセイと併用して行うことができる。この方法は特定の「試験」薬剤に合うように適合させることができる。また、薬剤の生理学的作用は血圧、心拍数、または血清リポタンパク質(a)レベルなど、半減期の向上を評価するためのマーカーにより追跡することもできる。
【0019】
あるいは、半減期の評価にin vitro試験を用いてもよい。例えば、Millipore Corp.などの公知の実験器具業者から提供されている攪拌デッドエンド型限外濾過セルまたは再循環型限外濾過セルに取り付けた限外濾過膜を用いてもよい。「通常」アルブミンおよび「試験薬剤」の溶液は、血漿を模倣すべくリン酸緩衝生理食塩水pH7.2〜7.4(PBS)中35g/Lとなるよう調整する。通常、ミリポアの、分子量カットオフ10,000Da、30,000Da、50,000Daおよび100,000Daの標準的なポリスルホン膜を用いる。アルブミンの限外濾過の際、最初の溶液のアルブミン濃度を限外濾過溶液の濃度と比べる。限外濾過の操作条件は室温、膜間差圧0.5〜2.0バールである。タンパク質の測定は、例えば、Eur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載の全タンパク質アッセイ(タンパク質窒素)などのタンパク質アッセイを用いて行う。10,000Daおよび30,000Daカットオフによる限外濾過を対照として用いるが、これは同じ条件下で行った場合、「通常」アルブミンと「試験薬剤」の間に差がないと予測されるからである。限外濾過物中のアルブミンの濃度は最初の溶液の約10%未満、すなわち<3.5g/Lであるものと予測される。50,000Daカットオフ膜による限外濾過では、「通常」アルブミンの透過量が約10%を超え、「試験薬剤」の透過量が約10%より少ないと思われる。100,000Daカットオフ膜による限外濾過では、「通常」アルブミンの透過量が約10%を超えるか、または50%を超えるなど、いっそう高いと考えられる。「試験薬剤」の透過量は約10%より少ないであろう。
【0020】
好ましい実施態様では、本発明の第一および/または第二の態様による薬剤は天然に生産されるHSAよりも大きい。通常、この薬剤は80〜250kDa、より一般には80〜200kDaの大きさであり、好ましくは少なくとも100kDaの大きさである。これは150KDaを超えないのが好ましい。130〜135KDa前後が理想的である。分子量の値は「平均」分子量としてとらえ、Eur. Pharmacopoeia (3rd Ed, 1997-0255)の単行本“Albumin solution, human”に記載のような(サイズ排除クロマトグラフィー)SEC−HPLCを用いて測定する。主要ピークの頂点が平均分子量を定義するものと考えられる。カラムの較正は、分子量(MW)44,000Daのオボアルブミン(ニワトリ)、MW67,000Daのアルブミン(ウシ血清)、MW81,000Daのトランスフェリン、MW158,000Daのアルドラーゼ(ウサギ筋肉)、およびMW232,000Daのカタラーゼ(ウシ肝臓)などの市販の較正タンパク質と、50,000Da〜250,000Daの間の分子量を測定するのに適したSEC−HPLC TSK G4000 SWxlカラム(“Current Protocols in Protein Science”, 2002, John Wiley & Sons Ed参照)を用いて行う。65,000Da〜80,000Daの間の分子量を有する試験薬剤の場合、分子量は、代わりにエレクトロスプレー質量分析ES−MS法を用いて測定すればよい。この目的で、揮発性溶媒中、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)にて試験薬剤を脱塩する。タンパク質を回収し、そのまま、ウマ心臓ミオグロビンを用いて較正したエレクトロスプレー質量分析計に注入する。この質量分析計では、試験薬剤分子は大気圧でイオン化され、生じたイオンを四極子分析装置に送り、そこで質量/電荷比が測定される。このデータを処理して、タンパク質の真の分子量を示す単一質量ピークを得る。この技術の精度はアルブミンの予測値の0.01%内(すなわち、7Da内)である。
【0021】
本発明の第一および/または第二の態様による薬剤はアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる。通常、アルブミン様ポリペプチドはアルブミンである。一般に、アルブミンは血清から抽出されたヒト血清アルブミン(HSA)、または生物もしくは細胞株をヒト血清アルブミンのアミノ酸配列をコードするヌクレオチドコード配列で形質転換もしくはトランスフェクトすることにより生産される組換えヒトアルブミン(rHA)である。本明細書では、「アルブミン」とは、一般にHSAおよび/またはrHAをさす。一つの実施態様では、「アルブミン様ポリペプチド」とは、その意味の中に変異体アルブミンを含む。「変異体アルブミン」とは、1以上の位置にアミノ酸の挿入、欠失、または置換(保存的または非保存的)を有しているアルブミンタンパク質をさすが、ただし、このような変異は、少なくとも1つの基本的特性、例えば、結合活性(例えばビリルビンに対する結合のタイプおよび特異的活性)、浸透圧(膨張圧、コロイド浸透圧)、特定のpH域での挙動(pH安定性)が有意に変化していないアルブミンタンパク質を生じる。この文脈における「有意に」とは、当業者が、変異体の特性がもとのタンパク質の特性と異なりはするが、明瞭なものではないとするであろうことを意味する。
【0022】
「保存的置換」とは、Gly、Ala;Val、Ile、Leu;Asp,Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、Tyrなどの組合せを意図する。このような変異体は、引用することにより本明細書の一部とされる、1981年11月24日Stevensに対して発行された米国特許第4,302,386号明細書に開示されているものなど、当技術分野で公知のタンパク質工学および位置指定突然変異誘発の方法を用いて作出することができる。
【0023】
一般に、アルブミン変異体は、天然に存在するアルブミンに対して40%を超える、通常は少なくとも50%、より一般には少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、なおさらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%またはそれ以上の配列同一性を有する。2つのポリペプチド間の配列同一性%は、例えばウイスコンシン州立大学ジェネティックコンピューティンググループのGAPプログラムなどの好適なコンピュータープログラムを用いて決定することができ、当然のことながら、同一性%はその配列が最適に並べられたポリペプチドに関して計算される。あるいは、このアライメントはClustal Wプログラム(Thompson et al., 1994)を用いて行ってもよい。用いるパラメーターは次の通りである。
【0024】
ファースト・ペアワイズ・アライメント・パラメーター:K−タプル(ワード)サイズ;1、ウインドウサイズ;5、ギャップペナルティー;3、トップダイアゴナル数;5。スコアリング法:x%。マルチプル・アライメント・パラメーター:ギャップ・オープン・ペナルティー;10、ギャップ・エクステンション・ペナルティー;0.05。スコアリングマトリックス:BLOSUM。
【0025】
本発明の第一および第二の態様による薬剤はアルブミン様ポリペプチドと結合した第二のポリペプチドを有する。第二のポリペプチドは、上記で定義したようなアルブミン様の第一のポリペプチドと結合することができ、かつ、結合しているときには、そのような結合をしたアルブミン様の第一のポリペプチドをNS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期を長くする量まで、アルブミン様の第一のポリペプチドの分子量(MW)を高めるポリペプチドである。一般に、この第二のポリペプチドは14〜134kDa、好ましくは20〜100kDa、より好ましくは35〜66kDaの分子量を有する。
【0026】
本発明の第一および第二の態様による薬剤の第二のポリペプチドは、少なくともアルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときには治療上不活性である。「治療上不活性」とは、第二のポリペプチドがアルブミンにより提供されるものを超えて薬剤にさらなる治療上有益な特性(もちろん、その半減期の延長以外)を実質的に付加せず、かつ、害もないことを意味する。「さらなる治療上有益な特性を実質的に付加しない」とは、第二のポリペプチドが、アルブミンが持っていない生物学的に有意な受容体アクチベーター活性、抗原性、または膜またはイオンチャネルと相互作用する能力を持たないという意味を含む。「さらなる治療上有益な特性を実質的に付加しない」とは、さらに、第二のポリペプチドが、ウイルスに対する受容体の活性ドメインか、ウイルスと結合し得る分子の活性ドメインか、ウイルスと結合した免疫グロブリンのFcフラグメントを認識し得る分子の活性ドメインか、または病理過程に介在するリガンドと結合し得る分子の活性ドメインとしてアルブミンよりも有効な作用ができないという意味を含む。「さらなる治療上有益な特性を実質的に付加しない」とは、さらに、第二のポリペプチドがエリスロポエチン生物活性またはWO00/69900公報に記載の治療ペプチドのいずれの活性も持たないという意味を含む。第二のポリペプチドは有害であってはならない。特に、それは有害な薬理作用を持ってはならないし、免疫原性があってはならず、または、特にヒトにおいては少なくとも臨床上許容される低レベルの免疫原性しか持ってはならない。
【0027】
よって、一般に、この薬剤はアルブミンと実質的に同じ生物特性を有する。例えば、この薬剤はアルブミンと実質的に同じ膨張圧および/または輸送機能(解毒作用を含む)を有し得る。「治療上不活性」とは、アルブミンが持っている治療特性と同じ、または少なくともそのいくらかを有する第二のポリペプチドを排除するものではない。よって、アルブミン様ポリペプチドまたはその断片を第二のポリペプチドとして使用してもよい。好ましい実施態様では、この第二のポリペプチドは、1つ、2つ、またはそれ以上のアルブミン完全ドメインから本質的になるアルブミン様タンパク質の断片であり得る。アルブミンは、各々、1つの短いループにより分離された2つの長いループとを含む3つの完全ドメインを有する。ドメインは、通常、アミノ末端からはじめてI、IIおよびIIIという番号が付けられている。HSAおよびBSAをはじめとするアルブミンの構造はPeters (1996, 前掲)に示されている。第二のポリペプチドとしてアルブミン様ポリペプチドまたはその断片を含んでなる本発明の薬剤は、以下「アルブミン二量体」と呼ぶ。
【0028】
このように当業者には、本発明による「アルブミン二量体」薬剤は、そのC末端により第二のポリペプチドのN末端と結合しているアルブミン様の第一のポリペプチド、またはそのC末端によりアルブミン様の第一のポリペプチドのN末端と結合している第二のポリペプチドを含み得る。よって、このアルブミン二量体はH2N−[ポリペプチド1]−X−[ポリペプチド2]−COOHまたはH2N−[ポリペプチド2]−X−[ポリペプチド1]−COOH(ここで、ポリペプチド1はアルブミン様の第一のポリペプチドであり、ポリペプチド2は、アルブミン様タンパク質またはその断片でもある第二のポリペプチドである)の形をとり得る。よって、この「二量体」は同じ方向に読む2つの連続するアルブミン様配列を有し得る。Xは好適な形態のいずれの結合であってもよい。一つの実施態様では、それはペプチド結合であり得る。Xはまた、下記のようなリンカー分子であってもよい。好ましいリンカー分子は、1〜20個のアミノ酸残基を有し得るオリゴペプチドである。このリンカーがオリゴペプチドであるとき、ポリペプチド1および/またはポリペプチド2のいずれか、または好ましくは双方はペプチド結合を介してこのリンカーと連結するのが通常である。
【0029】
あるいは、本発明による「アルブミン二量体」は、そのN末端により第二のポリペプチドのN末端と結合しているアルブミン様の第一のポリペプチド、またはそのC末端により第二のポリペプチドのC末端と結合しているアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでもよい。これらはそれぞれ「ヘッド・トゥ・ヘッド」および「テール・トゥ・テール」二量体と呼ぶことができる。よって、この「二量体」は、反対方向に読む2つの連続するアルブミン様配列を有し得る。所望により、上記のようにリンカーを含んでもよい。このような二量体は、以下でより詳しく記載するように、2つのアルブミン様ポリペプチドの結合により作製することができる。
【0030】
このペプチド結合は、アミノ酸残基のCα原子間に空間を保持する適当なリンカー部分を用いる限り、全く存在しなくてもよく、リンカー部分がペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ平面性を有するならば特に好ましい。
【0031】
しかしながら、本発明はアルブミン二量体に限定されるものではなく、上記で示された判定基準を満たす第二のポリペプチドならばいずれでも使用できる。一般に、第二のポリペプチドは薬剤の意図されるレシピエントによって天然に生産されるポリペプチドの全配列または部分配列を含んでなる。好ましい一つの実施態様では、第二のポリペプチドはアルブミンまたはその変異体の全配列または部分配列を含んでなる。第二のポリペプチドについての「部分配列」および「変異体」は、通常、それらが由来する配列のアミノ酸の少なくとも5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%または100%を含んでなる。第二のポリペプチドについての「部分配列」および「変異体」がそれが由来する配列のアミノ酸の100%未満を含んでなる場合、その「部分配列」および「変異体」はそれが由来する配列のN末端断片、C末端断片または内部断片であり得る。一般に、第二のポリペプチドに関して「部分配列」および「変異体」は、それらが由来する配列と少なくとも5%、10%、30%、50%、70%、90%、95%または100%の配列同一性を有する。長さに関してより高いパーセンテージ、および特に配列同一性が好ましく、これは、このようにして作出された部分配列または変異体の免疫原性が軽減される傾向があるためである。
【0032】
第二のポリペプチドである増量用結合パートナー(bulking partner)は、当技術分野で公知のいずれかの方法により作出することができる。それらは天然タンパク質であってもよいし、天然源から精製してもよい。それらは組換え発現させることもできる。それらは合成法により製造することもできる。これらの生産手段の総てを達成するのに好適な技術は当業者ならば容易に利用できる。これらの技術により得られたポリペプチドは、例えば当技術分野で公知の方法により化学的および/または酵素的にさらに修飾することができる。
【0033】
好ましい一実施態様では、第二のポリペプチドはアルブミンまたはその変異体の全配列または部分配列を含んでなる。よって、この第二のポリペプチドは全長アルブミンまたは1つもしくは2つのそのドメイン、例えばアルブミン断片であり得る。この第二のポリペプチドはアルブミンの部分配列を含んでなることができる。後者の場合、第二のポリペプチドは、全長アルブミンにより天然に提示されるものではないいずれのエピトープ(例えば、非天然NまたはC末端)の提示も避けるような方法でアルブミンの配列を含む第一のポリペプチドと結合されているのが好ましい。
【0034】
このアルブミン様の第一のポリペプチドは、当技術分野で公知のいずれの好適な方法によって第二のポリペプチドに結合させてもよい。一般に、この結合は共有結合であるが、非共有結合であってもよい(例えば、以下の本発明の第三の作用の記載を参照)。この目的で、アルブミン様ポリペプチドおよび/または第二のポリペプチドに修飾または合成アミノ酸を含めてもよい。第二のポリペプチドとアルブミン様の第一のポリペプチドとを連結させるには、リンカー分子、例えば短いアルキル基(C1−30)、オリゴペプチドなどが提案される。好適な結合としては、ペプチド結合、ジスルフィド結合、ホスホジエステル結合、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、イミン結合、アミン結合などの生物学的に誘導された高分子で一般に見られる結合が挙げられる。第二のポリペプチドとアルブミン様ポリペプチドとを連結させるのに二官能性架橋基を提供することもできる。例えば、第二のポリペプチドがシステイン含有タンパク質であれば、アルブミン様の第一のポリペプチド(例えば、Cys34を介して)とタンパク質性の増量用結合パートナーとを連結させるには、1,4−ビス−マレイミドブタン(BMB)、1,4−ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン(BMDB)、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)、ビス−マレイミドエタン(BMOE)、1,8−ビス−マレイミドトリエチレングリコール(BM[POE]3)、1,11−ビス−マレイミドテトラ−エチレングリコール(BM[POE]4)、1,4−ジ[3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]−ブタン(DPDPB)、ジチオ−ビス−マレイミドエタン(DTME)または1,6−ヘキサン−ビス−ビニルスルホン(HBVS)など、遊離のスルヒドリル基と反応する二官能性架橋基を用いることができる。同様に、トリス[2−マレイミドエチル]アミン(TMEA)などの三官能性架橋基を用いてアルブミン様の第一のポリペプチドと2つのタンパク質性の増量用結合パートナーとを連結することもできる。
【0035】
一般には、この結合はNS患者の循環系で安定である。「安定」とは、結合の解離による薬剤の損失速度が腎臓による血流からの完全な形の薬剤のクリアランスによる薬剤の損失速度よりも遅いことを意味する。本発明の第一および/または第二の態様による薬剤の複数の分子が提供される場合、一般に、このような分子の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.5%または実質的に100%のものが、アルブミン様の第一のポリペプチドと第二のポリペプチドとの間の完全な形の結合を含む。より高い値が好ましい。
【0036】
一つの実施態様では、本発明の第一および/または第二の態様による薬剤は、ペプチド結合ではない、アルブミン様の第一のポリペプチドと第二のポリペプチドの間の結合を含んでなる。好適ないずれの非ペプチド結合を用いてもよい。一般に、この非ペプチド結合は上述のような結合である。
【0037】
しかしながら、好ましい一つの実施態様では、本発明の第一および/または第二の態様による薬剤は、ペプチド結合を介して第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる。例えば、この薬剤は融合タンパク質であってもよい。一般に、融合タンパク質は、そのN末端またはC末端を介して直接、または間接的に(すなわち、ポリペプチドリンカーを介して)第二のポリペプチドと融合したアルブミン様の第一のポリペプチドの配列を含んでなる。融合タンパク質は、アルブミン二量体に関して上記したように、ヘッド・トゥ・ヘッドまたはテール・トゥ・テール融合タンパク質であってよいが、当業者ならば、この原理はアルブミン二量体に限定されるものではなく、上記で示した判定基準を満たす限り、他のいずれのタイプのポリペプチド配列を第二のポリペプチドとして用いてもよいことが分かるであろう。また、「融合タンパク質」とは、その意味に、アルブミン様の第一のポリペプチドの配列を含むポリペプチドの内部における第二のポリペプチドの包摂、または第二のポリペプチドの内部におけるアルブミン様の第一のポリペプチドの配列の包摂も含む。特に好ましい一つの実施態様では、融合タンパク質は、そのN末端またはC末端を介して第二のポリペプチド(この増量用結合パートナーはアルブミン様ポリペプチドの部分配列または全配列を含む)のN末端またはC末端と直接または間接的に融合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる。
【0038】
本発明は、アルブミン様分子が大きくなると、NSなどの腎症状を有する患者においてその分子の半減期が長くなるという理解に基づくものである。
【0039】
上記のように大きなアルブミン様分子を提供する他、患者を直接、または患者から採取したex vivoアルブミン含有サンプルを、アルブミンと結合するアルブミンリガンドで、アルブミンの大きさを増すような用量で処置することにより、個体により天然に生産されるアルブミン分子を修飾することもできる。
【0040】
アルブミンリガンドは一般にアルブミンと非共有結合する。アルブミンと特異的に結合し、かつ、上記のように、そのような結合しているときには治療上不活性である限り、適当ないずれのリガンドを用いてもよい。「アルブミンと特異的に結合する」とは、患者においてアルブミン分子の半減期を長くし、それにより、患者において腎疾患またはそれに関連する症状の作用を緩和するのに治療上有効な量で用いた場合に、そのアルブミンリガンドと非アルブミン分子との結合の結果として患者が示す望ましくない顕著な副作用がないように、リガンドが十分高いアルブミン親和性を持っていなければならないことを意味する。
【0041】
アルブミンリガンドは、例えば、ある抗体の配列を含み得る。よって、例えばそれはIgG分子であってもよい。ここで、抗体という用語は、結合にかかわる配列を保持するフラグメントまたはその一部も含む。
【0042】
初期のプロテアーゼ消化実験によって最初に認識された事実として、抗体の重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)ドメインは抗原認識および結合に関与する。齧歯類抗体の「ヒト化」によりさらなる確信が得られている。
【0043】
よって、フラグメントは1以上の重鎖可変(VH)または軽鎖可変(VL)ドメインを含み得る。例えば、抗体フラグメントとは、Fab様分子(Better et al (1988) Science 240, 1041);Fv分子(Skerra et al (1988) Science 240, 1038);VHとVLパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結されている単鎖Fv(ScFv)分子(Bird et al (1988) Science 242, 423; Huston et al (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85,5879)および単離されたVドメインを含んでなる単一ドメイン抗体(dAb)(Ward et al (1989) Nature 341, 544)が挙げられる。
【0044】
用いる可変ドメインが処置を意図する個体と同じ種に由来するものではない場合、その抗体はその可変ドメインと処置を意図する個体由来の定常ドメインとを融合させることにより改変することができる。よって、治療を意図するものがヒトである場合、その抗体は、組換え抗体が親抗体の抗原特異性を保持するように、その可変ドメインとヒト起源の定常ドメインとを融合させることにより「ヒト化」することができる(例えば、Morrison et al(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6851-6855参照)。
【0045】
それらの特異的結合部位を保持する抗体フラグメントの合成に関与する技術の総説は、Winter & Milstein (1991) Nature 349, 293-299に見出せる。
【0046】
完全抗体ではなく、抗体フラグメントを用いると数倍有利である。フラグメントの大きさが小さいと、固形組織の浸透が良くなるなど、薬理特性の向上につながることがある。補体結合などの完全抗原のエフェクター機能は除去される。Fab、Fv、ScFvおよびdAb抗体フラグメントは総て、組換えにより発現および分泌させることができ(例えば、大腸菌または酵母から)、従って、このようなフラグメントが容易に大量生産できる。
【0047】
当業者ならば抗体の使用に代わるものに気づくであろう。例えば、アルブミンリガンドは、高い特異性でアルブミンと結合することが知られているペプチド配列である、アミノ酸配列DICLPRWGCLW(Dennis et al, 2002, J. Biol. Chem., 277: 35035)、または実質的に同じアルブミン結合特性を保持するその変異体を含んでもよい。
【0048】
アルブミン結合領域を含むことに加え、アルブミンリガンドは一般に、アルブミン分子と結合した際に、アルブミン−アルブミンリガンド複合体が上記のように天然に生産されるアルブミンよりも長い半減期を持つような十分な大きさを有する。
【0049】
この助けとなるよう、アルブミンリガンドは第二のポリペプチドと結合したアルブミン結合領域を含んでなるのが好適であり得る。第二のポリペプチドは上記で定義されたものであり得る。例えば、アルブミンリガンドは、アルブミンまたはその変異体の全配列または部分配列と融合した上記のような抗体を含み得る。
【0050】
よって、本発明の第三の態様によれば、14〜200kDa、より一般には14〜150kDaの大きさ、好ましくは少なくとも30kDaの大きさを有するアルブミンリガンドが提供される。これは100kDaを超えないのが好ましい。60〜70kDa前後が理想的であり得る。分子量の値は「平均」分子量としてとらえ、上記のように(サイズ排除クロマトグラフィー)SEC−HPLCを用いて測定する。
【0051】
上記で定義されたようなサイズ要求を有するアルブミンリガンドの代わりとして、アルブミンリガンドは第二の結合部位をさらに含み、すなわち、アルブミンリガンドは二重特異的である。よって、このアルブミンリガンドはアルブミン二量体の形成を容易にするよう、同じであっても異なっていてもよい2つのアルブミン結合領域を含み得る。あるいは、このアルブミンリガンドは、そのアルブミン結合領域の他、別のタンパク質またはその他の分子と結合し得る第二の結合部位を含んでもよく、このタンパク質またはその他の分子は治療上不活性な増量用結合パートナーとして機能して半減期の長いアルブミン−アルブミンリガンド−増量用結合パートナーの複合体をもたらす。
【0052】
また、本発明の第三の態様によれば、医薬において用いられる上記で定義したようなアルブミンリガンド、および腎疾患またはそれに関連する症状の処置用の薬品の製造における、上記で定義したようなアルブミンリガンドの使用が提供される。
【0053】
また、組換え法または化学的方法による、非天然エピトープを含む修飾アルブミンの製造も可能である。非天然エピトープは、例えば、C末端延長部であってもN末端延長部であってもよい。次に、アルブミンの天然エピトープではなく、非天然エピトープに対して結合特異性を有する上記で定義したようなアルブミンリガンドを選択することができる。アルブミンリガンドと修飾アルブミンとの結合は、次に、本発明の第一の態様による薬剤の製造を可能とする。
【0054】
よって、本発明の第三の態様によれば、第一の成分として、非天然エピトープを含んでなる修飾アルブミンと、第二の成分として、その修飾アルブミンの非天然リガンドと特異的に結合するアルブミンリガンドとを含んでなる系も提供される。第一および第二の成分の一方または双方は、上記で定義したような医薬上許容される担体または希釈剤とともに配合された組成物の形で提供することができる。この系は医薬として使用できる。例えば、この系は腎疾患またはそれに関連する症状の処置に使用できる。
【0055】
本発明の第四の態様によれば、上記で定義したように、融合タンパク質の形態の薬剤またはアルブミンリガンドをコードするコード配列を含んでなるポリヌクレオチドが提供される。
【0056】
さらに、例えば相同組換えにより外来のポリヌクレオチド配列を染色体DNAに導入することにより細胞内の内在遺伝子を改変する技術は先行技術として既知である。例えば、読者はWO01/68882公報に記載されているようなTranskaryotic Therapies, Inc.が提供しているTKTシステムに着目するであろう。このシステムを用いれば、相同組換えを促進する薬剤(例えば、Rad52)と標的配列近傍での非相同末端連結を阻害する薬剤(例えば、Ku不活剤)を提供することで、相同組換えにより二本鎖DNAが選択された標的DNA中に導入される。
【0057】
このタイプの組換え技術は、本発明においては、所定の細胞に内在するアルブミン遺伝子を改変するために使用できる。例えば、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、非天然エピトープをアルブミン遺伝子発現産物に導入し、それにより、本発明の第三の態様に記載したような修飾アルブミンを発現する細胞を作出するのに好適な配列を含んでなる、WO01/68882公報に記載のTKTシステムで用いるのに好適な二本鎖DNAであり得る。
【0058】
本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、上記で定義したような第二の増量用結合パートナーをアルブミン遺伝子発現産物に導入し、それにより、本発明による薬剤を融合タンパク質として発現する細胞を作出するのに好適な配列を含んでなる、WO01/68882公報に記載のTKTシステムで用いるのに好適な二本鎖DNAであり得る。
【0059】
以下の段は本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドに関するものであるが、当業者ならばまた、融合した第二のポリペプチドの不在下にアルブミン配列を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが同等の技術を用いて生産および発現可能であることが分かるであろう(このようにして生産されたアルブミンタンパク質は本発明の非融合タンパク質薬剤の製造に有用である)。このポリヌクレオチドは一般にDNAまたはRNAである。本発明によるポリヌクレオチドは、組換え法または合成法によるなど、当技術分野で公知のいずれかの方法により作製することができる(Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, (3rd Ed) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)。例えば、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは当技術分野で公知の合成方法により、通常は細孔性ガラスまたはポリスチレンなどの固相支持体を用いて製造すればよい(総説としては、Sambrook and Russell (2001) 前掲およびその中の参照文献を参照)。この目的で自動合成装置が利用でき、いくつかの業者から受注合成された所定の配列のポリヌクレオチドが商業的に入手できる。合成ポリヌクレオチドは、短いオリゴヌクレオチドを作製し、それらを組み合わせて、ライゲーションまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるなど、当技術分野で公知の技術を用いて本発明の第四の態様による全長ポリヌクレオチドを製造することにより合成することができる。さらに、および/またはあるいは、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の技術により天然源から直接または間接的に誘導可能なDNAまたはRNAを含み得る。よって、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、天然由来のポリヌクレオチド配列と合成ポリヌクレオチド配列の組合せを含み得る。さらに、天然由来のポリヌクレオチドの配列を、例えば選択された宿主細胞またはin vitro発現系に適するように意図する発現手段に従うコドン利用を至適化すべく改変してもよい。例えば本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドの発現タンパク産物の分泌を起こし得るシグナル配列またはリーダー配列など、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドにさらなる配列を含めてもよい。分泌は、本発明の第四の態様によるポリペプチドを発現する組換え細胞の培養物などの発現系からタンパク質を回収する目的に特に望ましいが、これは、培養培地から分泌したポリペプチドを回収するほうが組換え細胞内から非分泌型ポリペプチドを回収するよりも効率がよいからである。
【0060】
このようにして生産されたポリヌクレオチドの配列は、シーケンシングなど、好適ないずれかの方法によって確認することができる。当業者ならば、例えばこのようにして生産されたポリヌクレオチドの安定性を高める(in vitroまたはin vivo分解を軽減する)ために、または二次構造を改変する(これは例えばそのポリヌクレオチドのin vitroまたはin vivo発現の改変を可能とする)ために、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドに合成または改変ヌクレオチドを導入することができることが分かるであろう。
【0061】
通常、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドは、コード配列に作動可能なように連結された調節領域をさらに含む。「調節領域」とは、作動可能なように連結されているコード領域、この場合、本発明の第一および/または第二の態様による融合タンパク質をコードするコード領域または本発明の第三の態様によるアルブミンリガンドをコードするコード領域の発現(すなわち、転写および/または翻訳)を調整する(すなわち、増強または低下させる)配列をさす。調節領域は、一般にプロモーター、ターミネーター、リボソーム結合部位などを含む。当業者ならば、調節領域の選択が意図する発現系によって異なることが分かるであろう。例えば、プロモーターは構成型であっても誘導型であってもよく、細胞種または組織種特異的であっても非特異的であってもよい。本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドがDNAである場合、翻訳の読み過ごしを最小にし、それにより伸張した非天然融合タンパク質の生産を避けるため、UAA、UAGまたはUGAなどの翻訳停止コドンをコードする1を超えるDNA配列を組み込むのが有益であり得る。翻訳停止コドンUAAをコードするDNA配列が好ましい。当業者ならば、RNAポリヌクレオチドにも同等の配列を組み込むことができることが分かるであろう。
【0062】
「作動可能なように連結される」とは、その意味の範囲内に、調節領域を意図した様式で機能させるよう、融合タンパク質をコードする配列などのコード配列との関連性を形成するように本発明の第四の態様によるポリヌクレオチド内に置くことを含む。よって、融合タンパク質コード配列と「作動可能なように連結された」調節領域は、その調節領域が、その調節領域に適合する条件下で、意図した様式でコード配列の転写および/または翻訳に影響を及ぼし得るように配置される。
【0063】
本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドをベクターに導入してもよい。当業者ならば、異なる用途に用いるには異なるタイプのベクターが適していることが分かるであろう。このベクターは、例えば、細菌または酵母細胞における発現に好適なプラスミドであってもよい。ベクターはウイルスベクターであってもよい。一般的なベクターとしては、クローニングベクターおよび発現ベクターが挙げられる。ベクターを宿主細胞に導入する場合、ベクターは染色体外ポリヌクレオチドのままであるか、または宿主細胞の染色体に組み込まれる。
【0064】
よって、ベクターは標準的な技術によって宿主に導入した後、形質転換された宿主細胞を選択すればよい。このように形質転換された宿主細胞を、次に、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドのコード配列の発現を可能とするのに十分な時間、当業者に公知の、また、本明細書で開示した技術に照らして既知の適当な条件下で培養し、その後、これを回収することができる。
【0065】
細菌(例えば、大腸菌(E. coli)および枯草菌(Bacillus subtilis)、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis))、糸状真菌(例えば、アスペルギルス(Aspergillus))、植物細胞、完全植物体、動物細胞および昆虫細胞をはじめ、多くの発現系が知られている。
【0066】
一つの実施態様では、好ましい宿主細胞は酵母サッカロミセス・セレビシエ、クルイベロミセス・ラクチスおよびピキア・パストリスである。例えば、遺伝子コード配列の破壊により、タンパク質のO−グリコシル化に関与する1以上のタンパク質マンノシルトランスフェラーゼが欠損している酵母を用いるのが特に有利である。
【0067】
アルブミンタンパク質配列はN結合グリコシル化部位を含まず、自然界ではO結合グリコシル化による修飾は報告されていない。しかしながら、いくつかの酵母種で生産されたrHAは一般にマンノースに関与するO結合グリコシル化によって修飾できることが分かっている。このマンノシル化アルブミンはレクチンコンカナバリンAと結合することができる。酵母が生産するマンノシル化アルブミンの量は、1以上のPMT遺伝子が欠損した酵母株を用いることで低下させることができる(WO94/04687公報)。これを達成する最も便宜な方法は、Pmtタンパク質の1つの産生レベルが低くなるようにそのゲノムに欠損を有する酵母を作出することである。例えば、Pmtタンパク質がほとんど、または全く生産されないような、コード配列または調節領域における(またはPMT遺伝子の1つの発現を調節する別の遺伝子における)欠失、挿入、または転位があり得る。あるいは、抗Pmt抗体などの抗Pmt剤を生産するように酵母を形質転換させてもよい。
【0068】
S.セレビシエ以外の酵母を用いる場合、例えばピキア・パストリスまたはクルイベロミセス・ラクチスにおいては、S.セレビシエのPMT遺伝子と同等な1以上の遺伝子を破壊することも有益である。S.セレビシエから単離されたPMT1(または他のいずれかのPMT遺伝子)の配列を、他の真菌種において同様の酵素活性をコードする遺伝子の同定または破壊に用いてもよい。クルイベロミセス・ラクチスのPMT1ホモログのクローニングはWO94/04687公報に記載されている。
【0069】
酵母はそれぞれWO95/33833およびWO95/23857に教示されているようなHSP150および/またはYAP3遺伝子の欠損を有することが有利である。
【0070】
好ましい一つの実施態様では、酵母をサッカロミセス・セレビシエ2μmプラスミドに基づく発現プラスミドで形質転換させる。酵母を形質転換する際には、プラスミドは細菌複製配列および選択配列を含み、これを形質転換後、EP286424公報の教示に従って内部組換え事象により切り出す。このプラスミドはまた、EP431880公報に教示されているような酵母プロモーター(例えば、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター);WO90/01063公報に教示されているように、例えば天然HSA分泌リーダーの大部分およびS.セレビシエα−交配因子分泌リーダーの小部分を含んでなる分泌リーダーをコードする配列;ヒト遺伝子に相当するcDNAを単離するための既知の方法により得られる、例えばEP73646公報およびEP286424公報に開示されているHSAコード配列;および転写ターミネーター、好ましくはEP60057公報に教示されているようなサッカロミセスADH1に由来するターミネーターを含んでなる発現カセットも含む。このベクターは少なくとも2つの翻訳停止コドンを組み込んでいるのが好ましい。
【0071】
上記プラスミドの種々のエレメントの選択は得られるアルブミン産物の純度には直接関係があるとは考えられないが、これらのエレメントは産物の収率の改善に関与するかもしれない。
【0072】
もう1つの実施態様では、宿主細胞は動物細胞である。一般に、動物細胞は哺乳類細胞、好ましくは哺乳類肝細胞である。この実施態様では、好ましい細胞種はヒト細胞種である。
【0073】
よって、本発明の第五の態様によれば、本発明の第四の態様によるポリヌクレオチド、または本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドを含有するベクターを含んでなる上記のような宿主細胞が提供される。
【0074】
この宿主細胞はそのまま治療薬となり得る(すなわち、レシピエントと接触した際に治療作用をもたらし得る)。例えば、この宿主細胞は、本発明による薬剤である融合タンパク質を必要とするレシピエントへの移植に好適なものであり得る。レシピエントはヒトであり得る。このレシピエントはネフローゼ症候群を有していてもよい。さらに、および/またはあるいは、この宿主細胞は本発明において有用なポリペプチドを発現および取得する手段を提供することができ、例えば、この宿主細胞は、本発明の第一または第二の態様による非融合タンパク質薬剤または本発明の第三の態様によるアルブミンリガンドの製造のための、融合タンパク質または成分などのポリペプチドの組換え生産に使用できる。この様式で得られたポリペプチドは所望によりさらに修飾してもよく(例えば第二のポリペプチドと結合させることによる)、かつ/または所望により本明細書で述べるようにさらに精製してもよい。
【0075】
よって、本発明の第六の態様によれば、本発明の第一、第二または第三の態様により定義したような薬剤またはアルブミンリガンドを製造するための方法であって、本発明の第五の態様による細胞を得る工程、およびそれから第二のポリペプチドの配列と融合したアルブミン様の第一のポリペプチドの配列を含んでなるポリペプチドを含んでなる融合タンパク質を単離する工程を含んでなる方法が提供される。
【0076】
rHAの精製技術は、WO92/04367公報、マトリックス由来色素の除去;EP464590公報、酵母由来着色剤の除去;およびEP319067公報、アルカリ沈殿法およびその後のアルブミンに対して特異的親和性を有する親油相へのrHAの適用に開示されている。当業者ならば、これらの方法が本発明の第一、第二または第三の態様による融合タンパク質またはアルブミンリガンドの単離に適用できることが分かるであろう。好ましい一つの実施態様では、本発明の第六の態様は、WO00/44772公報またはWO96/37515公報(両者とも引用することにより本明細書の一部とされる)に記載されている方法による融合タンパク質の単離を含む。
【0077】
精製に関して以下で用いる「アルブミン溶液」および「アルブミン」とは、それぞれ、本発明の第五の態様による細胞から得られるものなどのアルブミン/融合タンパク質溶液およびアルブミン/融合タンパク質を含むものとする。
【0078】
本発明の第六の態様による方法で用いる精製過程は、例えば、比較的不純なアルブミン溶液をそのアルブミンが特異的親和性を持たないクロマトグラフィー材料に適用してアルブミンをその材料に結合させる工程、およびアルブミンに対して特異的親和性を有する化合物の溶液を適用することにより、結合したアルブミンをその材料から溶出させる工程を含み得る。好ましくは、このクロマトグラフィー材料は、SP−セファロースFF、SP−スフェロシルなどのような陽イオン交換体である。アルブミンに対して特異的親和性を有する化合物としては、オクタン酸塩(例えば、オクタン酸ナトリウム)、その他の長鎖(C6〜C22)脂肪酸、サリチル酸塩、オクチルコハク酸塩、N−アセチルトリプトファンまたはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0079】
最終産物は付加的安定性を与えるように調剤することができる。好ましくは、本発明によるアルブミン融合タンパク質または本発明による非融合タンパク質薬剤の製造に用いられるアルブミンタンパク質などの高純度アルブミンは、少なくとも100g、より好ましくは1kgまたは10kgのアルブミン融合タンパク質またはアルブミンを含み得るものであり、複数のバイアルに分割することができる。
【0080】
しかしながら、精製アルブミンが最終産物でなく、単に最終産物の前駆体である場合、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤またはアルブミンリガンドを得るためにはさらなる修飾が必要である。よって、本発明の第七の態様によれば、NS患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤を製造する方法であって、薬剤が第二のポリペプチドと結合した第一のアルブミン様ポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが治療上不活性であり、
(a)第一の成分としてアルブミン様の第一のポリペプチドを準備する工程;
(b)第二の成分として第二のポリペプチドを準備する工程;および
(c)薬剤を形成させるのに好適な条件下で第一の成分を第二の成分と接触させる工程
を含んでなる方法が提供される。
【0081】
「薬剤を形成させるのに好適な条件」とは、第二のポリペプチドが、不可逆的変化が変化した分子をレシピエントに対して有毒とするか、またはレシピエントで無効とするような第二のポリペプチドまたは第一のアルブミン様のポリペプチドのいずれかの不可逆的変化を起こさずに、アルブミン様配列を含んでなる第一のポリペプチドと結合するいずれの条件も含むものとする。当業者ならば、条件は第一および第二の成分の特性を考慮して、望ましいタイプの結合の形成に合うようにすることができることが分かるであろう。
【0082】
当業者ならば、アルブミンリガンドを形成させるに好適な条件下でアルブミン結合分子を第二のポリペプチドと接触させることにより、上記で定義したようなアルブミンリガンドを製造するための同等の方法を使用できることが分かるであろう。
【0083】
あるポリペプチドを別のポリペプチドと結合させる方法は当技術分野で周知のものである。例えば、タンパク質−LabFax(N. C. Price, 1996, Academic Press)には、4,4’−ジマレイミドスチルベンなどの同質二官能性架橋試薬を用いて遊離SH基を介しての、またはN−スクシンイミジル6−マレイミドカプロエートなどの異質二官能性架橋試薬を用いて−SH基および−NH2基を介しての、またはジスクシンイミジルスベレートなどの同質二官能性架橋試薬を用いて−NH2基を介してのポリペプチド架橋プロトコールが記載されている。米国特許第4,136,093号明細書には、グルタルアルデヒドを用いた−NH2基を介してのポリペプチドの架橋が記載されている。その他の二官能性および三官能性架橋基も上記に述べられている。
【0084】
本発明の第八の態様によれば、本発明の第二の態様による組成物、または本発明の第三の態様で定義されたアルブミンリガンドを含んでなる組成物を製造する方法であって、本発明の第六または第七の態様による方法により薬剤またはアルブミンリガンドを製造すること、およびその薬剤またはアルブミンリガンドと医薬上許容される担体または希釈剤とを配合することを含んでなる方法が提供される。
【0085】
以下の例は、有効成分が本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤またはアルブミンリガンドである、本発明による医薬処方物を例示するものである。
【0086】
注射用処方物
有効成分 10g
無菌パイロジェンフリーリン酸バッファー(pH7.0) 50mlまで
【0087】
有効成分を大部分のリン酸バッファーに溶解し(20〜40℃)、一定量とし、無菌0.2μmフィルターで無菌の50mlガラスバイアル(I型またはII型)中へ濾過し、無菌の栓およびオーバーシールで密閉する。読者は、処理する条件に合わせて有効成分の量を増やしたり減らしたりできることが分かるであろう。例えば、用いる有効成分の量は10gを超えてよく、例えば20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500gまたはそれ以上とすることができる。処方物の量は、有効成分が確実に生理学上許容される濃度で提供されるように調整することができる。
【0088】
非経口投与に好適な処方物としては、抗酸化剤、バッファー、アルブミン安定剤、および処方物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性無菌注射溶液が挙げられる。これらの処方物は単位用量で提供してもよいし、または例えば密閉アンプルおよびバイアルなどの多回用量容器で提供してもよく、使用直前に例えば注射用水などの無菌液体担体を添加するだけの凍結乾燥状態で保存してもよい。即時調合注射溶液は従来の各種無菌粉末から調製し得る。
【0089】
本発明による薬剤の濃度、ナトリウムの濃度、およびオクタン酸塩の濃度を決定するため、好適な注射用処方物を分析すればよい。これらの量を考慮し、処方物の仕様を達成するために必要なさらなる量の塩化ナトリウムおよびオクタン酸ナトリウム賦形剤原液と適当な等級の水を加える。最終的な薬剤濃度は150〜250gL−1または235〜265gL−1であってよく、ナトリウム濃度は130〜160mMである。他の実現可能な薬剤濃度とすることもでき、例えば最小濃度は少なくとも4%(w/v)、好ましくは4〜25%(w/v)である。処方物は、ポリソルベート80、またはヒトアルブミンに関して米国薬局方に明示されているもの、および希釈水などの、適当な通常の医薬上許容される賦形剤も含み得る。
【0090】
好ましい単位投与形処方物は、一日量または単位、有効成分の一日部分用量またはその適当な画分を含有するものである。
【0091】
特に上述した成分の他、本発明による処方物は対象とする処方物種に対して含まれる当技術分野で通常の他の成分を含んでもよいと理解すべきである。
【0092】
よって、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、また、本発明の第六、第七または第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞は、レシピエントに治療上有益な作用をもたらすように投与することができる。「治療上有益な」とは、ネフローゼ症候群(NS)もしくは尿毒症、またはそれに関連する症状などの腎疾患の作用が緩和されるという意味を含む。腎疾患に関連する症状とは、その症候または腎疾患に関連する症状を含む。このような症候としては、低アルブミン血症、タンパク尿、アルブミン尿、浮腫、低血漿量および高脂血症が挙げられる。よって、腎疾患に関連する症状の例としては、高脂血症に関連することが知られているアテローム性動脈硬化心血管疾患がある。
【0093】
一般に、本発明による薬剤、アルブミンリガンド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞またはその処方物は、レシピエントが腎疾患を有する場合に本明細書に記載の方法において使用される。1つの好ましい実施態様では、レシピエントはネフローゼ症候群を有し得る。もう1つの好ましい実施態様では、レシピエントは尿毒症を有し得る。さらに、および/またはあるいは、レシピエントは浮腫またはアテローム性動脈硬化心血管疾患などの腎疾患に関連する症状を有し得る。よって、上記の方法における本発明による薬剤、アルブミンリガンド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞、またはその処方物の使用は、低タンパク質血症、低アルブミン血症、タンパク尿、高脂血症、浮腫の処置を提供し、かつ、血漿コロイド圧を維持し、組織への酸素分布を改善する手段を提供する。
【0094】
ネフローゼ症候群は糸球体濾過系の著しい漏出を特徴とする。本発明による既知分子量の薬剤またはアルブミンリガンドを個体に投与し、その個体の糸球体濾過系の漏出の分子量閾値を判定することができる。本発明による薬剤またはアルブミンリガンドは当技術分野で周知の技術を用いて標識することができる。本発明による標識薬剤またはアルブミンリガンドを個体に投与した後、次に、例えばその個体の尿を分析することで、標識薬剤またはアルブミンリガンドの排泄の検出を試みる工程を行えばよい。投与した薬剤またはアルブミンリガンドは互いに同じ分子量を有してもよい。あるいは、大きさの異なる薬剤またはアルブミンリガンドを、所望により各々異なる大きさに対応する異なる標識を有するようにして同時に投与してもよい。例えば、個体の尿中の薬剤またはアルブミンリガンドの検出は、個体の糸球体濾過系の排泄に関する分子量閾値を示唆し得る。もちろん、アルブミンリガンドの大きさがそれ自体患者の糸球体濾過系の分子量閾値を下回る場合は、アルブミンと結合している場合にのみ排泄されるのであれば「漏れのある」糸球体濾過系の指標となるので、排泄されるアルブミンリガンドが遊離のリガンドとして排泄されるのか、アルブミンと結合した場合に排泄されるのかを判定する必要がある。よって、本発明による薬剤およびアルブミンリガンドはNSなどの異常な糸球体濾過系に関連する症状を診断する方法において用いることができる。
【0095】
よって、本発明の第九の態様によれば、ヒトまたは動物体の外科術、治療または診断による処置方法に用いるための、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、または本発明の第六、第七または第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞が提供される。
【0096】
上述のように、薬剤、アルブミンリガンド、その組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞は、レシピエントに投与するのに好適な様式で調剤することができる。よって、本発明の第十の態様によれば、腎疾患またはそれに関連する症状の処置用薬品の製造における、本発明の第一、第二または第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、または本発明の第六、第七または第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞の使用が提供される。
【0097】
このようにして調剤された薬剤は、次に、レシピエントに投与することができる。よって、本発明の第11の態様によれば、腎疾患またはそれに関連する症状を有する患者を処置する方法であって、本発明の第一、第二もしくは第三の態様による薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、または本発明の第六、第七もしくは第八の態様のいずれか1つの方法によって得られる薬剤、組成物またはアルブミンリガンド、あるいは本発明の第四の態様によるポリヌクレオチドまたはベクター、あるいは本発明の第五の態様による細胞を、医薬上有効な量および濃度で患者に投与することを含んでなる方法が提供される。
【0098】
上述の本発明による薬剤、アルブミンリガンド、組成物、ポリヌクレオチド、ベクターおよび細胞またはその処方物は、経口および非経口(例えば、皮下または筋肉内)注射をはじめとする便宜ないずれかの方法によって投与することができる。この処置は単回投与または一定の期間にわたる複数回の投与からなってよい。本発明による薬剤、アルブミンリガンド、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は単独で投与することもできるが、1種以上の許容される担体とともに医薬処方物として提供することが好ましい。
【0099】
本明細書において「医薬上有効な量」とは、その意味の範囲内に、個体に投与される本発明による薬剤、アルブミンリガンドまたは組成物の最適な量を含む。これは、当業者ならば、患者または被験体の種、大きさ、齢および健康状態を考慮して決定することができる。最適な量とは、細胞傷害作用または免疫応答などの許容されないレベルの望ましくない副作用を生じることなく、腎疾患またはそれに関連する症状の作用を最適に緩和することができる量である。当業者ならば、ある用量が許容されない副作用を持つかどうかを決定することができる。単回用量で投与される薬剤または組成物の量は一般に1g〜200g、より一般には5g〜150g、好ましくは10g〜100gである。一般的な提案として、非経口投与する薬剤の、投与1回当たりの医薬上有効な総量は0.5g/kg〜5g/kg患者体重の範囲である。一般に、患者においてアルブミンの正常量を効果的に維持するためには、1日、または3日もしくは7日に1回投与する。
【0100】
以下、本発明を以下の図面および実施例を参照しながらより詳細に説明する。
【0101】
実施例1
配列番号5は、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター由来の5’UTRを含む非コード領域(配列番号1);WO90/01063に定義されているHSA/MFα−1融合リーダー配列をコードするポリヌクレオチド領域(配列番号2);成熟ヒトアルブミンの第二のコドン最適化コード領域と融合した、成熟ヒトアルブミンの第一のコドン最適化コード領域(双方とも配列番号3)および翻訳終結部位(配列番号4)を含んでなる本発明の薬剤をコードするDNA配列を示す。
【0102】
このようなDNA配列は重複一本鎖オリゴヌクレオチドの形でGenosys, Inc (Cambridge, UK)から入手することができる。
配列番号5はSacI−HindIII DNA断片として合成し、プラスミドAとしてのプラスミドpBSSK−(Stratagene Europe, P. O. Box 12085, Amsterdam, The Netherlands)のSacI−HindIII部位にクローニングする(図1)。
【0103】
サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーターは、2つの標準的な一本鎖オリゴヌクレオチドPRBJM1(配列番号6)およびPRBJM3(配列番号7)を用いてPCRにより酵母ゲノムDNAから単離する。
【0104】
PCR条件は、94℃30秒、50℃40秒、72℃120秒を40回の後、72℃60秒、その後4℃で保持する。0.81kb DNA断片をNotIおよびHindIIIの両者で消化し、同様にNotIおよびHindIIIで消化したWO97/24445に記載のpBST+に連結し、プラスミドBを作出する(図2)。プラスミドBをHindIIIおよびBamHIで消化し、従前にWO00/44772に開示されているpAYE440由来の0.48kb HindIII/BamHI ADH1ターミネーターDNA断片と連結し、プラスミドCを作出する(図3)。
【0105】
配列番号5の3.6kb HindIII DNA断片をプラスミドCのユニークなHindIII部位にクローニングしてプラスミドDを作出し、これはPRB1プロモーターとADH1ターミネーターの間に、PRB1プロモーターからの発現に関して適正な配向で、適切な大きさの配列番号5のHindIII DNA断片を含むことを示すことができる(図4)。
【0106】
プラスミドDをNotIで完全に消化し、配列番号5のNotI PRB1プロモーター/HindIII DNA断片遺伝子/ADH1ターミネーター発現カセットを精製する。プラスミドD由来のNotI発現カセットを、予めウシ腸管ホスファターゼ(CIP)で処理した、NotIで線状化したpSAC35 (Sleep et al.(1991), Bio/technology 9: 183-187)へ連結し、プラスミドEを作出する(図5)。プラスミドEは、pSAC35のNotI部位に挿入され、かつ、融合遺伝子の発現がLEU2栄養要求マーカーから2μm複製起点へと向かうように配向されているNotI発現カセットを含むことを示すことができる。
【0107】
酵母株は、Hinnen et al, (1978) P. N. A. S. 75,1929に記載の方法により、プラスミドEでロイシン原栄養性へと形質転換させる。この形質転換体を、2%(w/v)グルコースを含有する緩衝最小培地(Buffered Minimal Medium(BMM、Kerry-Williams, S. M. et al. (1998) Yeast 14, 161-169により記載) (BMMD)に貼り付け、さらなる分析のために十分増殖するまで30℃で培養する。2%(w/v)グルコースを含有する10mL YEP(1%(w/v)酵母抽出物;2%(w/v)バクトペプトン)(YEPD)およびBMMD振盪フラスコ培養物(30℃、200rpm、72時間)から、無細胞培養上清のロケット免疫電気泳動により、形質転換体によるアルブミン融合タンパク質の生産性を分析する。
【0108】
許容レベルのアルブミン融合タンパク質生産を示す形質転換体の保存株培養物を用い、20%(w/v)トレハロースの存在下で培養物のアリコートを冷凍することにより、振盪フラスコ培養物の調製に好適な処理酵母の実施保存株(研究用細胞バンク)を作製する。
【0109】
発酵法は、引用することにより本明細書の一部とするWO00/44772に記載のものと本質的に同じである。
【0110】
WO00/44772に記載のものと本質的に同様に陽イオン交換体でのクロマトグラフィーのため、発酵から濃縮物を調製、またはコンディショニングする。精製プロセスは本質的にWO00/44772に記載のように、次のような工程:陽イオン交換クロマトグラフィー;陰イオン交換クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィー;限外濾過とダイアフィルトレーション;第二のアフィニティークロマトグラフィー工程;限外濾過とダイアフィルトレーション;第二の陽イオン交換クロマトグラフィー工程;および第二の陰イオン交換クロマトグラフィーを含む。好ましくは、これらの精製プロセスの後に最終の限外濾過/ダイアフィルトレーション、その後、所望のタンパク質濃度、例えば200g/Lとするために、インジェクション用水の添加、オクタン酸ナトリウムおよび/またはポリソルベート80のような既知のアルブミン安定剤の添加、レシピエントの血液と等張にするための溶質(例えば、NaCl)の添加、および生理学的に適合するようにするためのpH調整、例えばpH7.0、および/またはその溶液の最終容器への充填を含む調製工程を行う。
【0111】
実施例2
配列番号8は、サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーター由来の5’UTRを含む非コード領域;HSA/MFα−1融合リーダー配列をコードするポリヌクレオチド領域;成熟ヒトアルブミンのコドン最適化コード領域および翻訳終結部位を含んでなるDNA配列を示す。
【0112】
このDNA配列は、Genosys, Inc (Cambridge, UK)が重複一本鎖オリゴヌクレオチドから、プラスミドpAYE639としてのプラスミドpBSSK−(Stratagene Europe, P.O. Box 12085, Amsterdam, The Netherlands)のSacI−HindIII部位にクローニングされた1.865kb SacI−HifzdIII DNA断片として合成されたものである(図6)。
【0113】
サッカロミセス・セレビシエPRB1プロモーターは、2つの標準的な一本鎖オリゴヌクレオチドPRBJM1(配列番号9)およびPRBJM3(配列番号10)を用いPCRにより酵母ゲノムDNAから単離した。
【0114】
PCR条件は、94℃30秒、50℃40秒、72℃120秒を40回の後、72℃60秒、その後4℃で保持する。0.81kb DNA断片をNotIおよびHindIIIの両者で消化し、同様にNotIおよびHindIIIで消化したWO97/24445に記載のpBST+に連結し、プラスミドpAYE439作出した(図7)。プラスミドpAYE439をHindIIIおよびBamHIで消化し、従前にWO00/44772に開示されているpAYE440由来の0.48kb HindIII/BamHI ADH1ターミネーターDNA断片と連結し、プラスミドpAYE466作出した(図8)。
【0115】
配列番号7の1.865kb HindIII DNA断片をプラスミドpAYE466のユニークなHindIII部位にクローニングしてプラスミドpAYE640を作出したところ、これはPRB1プロモーターとADH1ターミネーターの間に、PRB1プロモーターからの発現に関して適正な配向で、配列番号26の1.865kb HindIII DNA断片を含むことが示された(図9)。
【0116】
プラスミドpAYE640は、適当な転写プロモーターと転写ターミネーター配列を提供する酵母RAB1プロモーターと酵母ADH1ターミネーターを含む。プラスミドpAYE640を制限酵素AfZIIで完全に消化し、制限酵素HindIIIで部分的に消化し、酵母PEB1プロモーターの3’末端とrHA コード配列を含む1.90kb DNA断片を単離した。特許出願WO00/44772に記載されているようなプラスミドpDB2241をAfZII/HindIIIで消化し、酵母PRB1プロモーターの5’末端と酵母ADH1ターミネーターを含む4.31kb DNA断片を単離した。このpAYE640由来のAfZII/HindIII DNA断片を次にAfZII/HindIII pDB2241ベクターDNA断片にクローニングし、プラスミドFを作出した。プラスミドFをPacI/XhoIで完全に消化し、6.19kb断片を単離し、この凹末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端とし、細連結してプラスミドGを作出した。プラスミドGをClaIで線状化し、凹末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端とし、細連結してプラスミドHを作出した。プラスミドHをBlnIで線状化し、凹末端をT4DNAポリメラーゼおよびdNTPで平滑末端とし、細連結してプラスミドIを作出した。プラスミドIをBmgBI/BglIIで完全に消化し、6.96kb DNA断片を単離し、2つの二本鎖オリゴヌクレオチドリンカーVC053(配列番号11)/VC054(配列番号12)およびVC057(配列番号13)/VC058(配列番号14)のうちの1つと連結してプラスミドJを作出した。
【0117】
組換えアルブミン発現ベクターpDB2243を従前に特許出願WO00/44772に記載されている。プラスミドpDB2243をSphIおよびBsu36Iで完全に消化し、酵母PRB1プロモーター、大部分のヒトアルブミンcDNAおよび酵母ADH1ターミネーターの一部を含む6.00kb DNA断片を単離した。プラスミドJをSphIおよびAgeIで完全に消化し、合成アルブミン遺伝子と酵母ADH1ターミネーターの一部を含む1.93kb DNA断片を単離した。配列番号15および配列番号16の配列を有する2つの合成オリゴヌクレオチドをアニーリングすることで、二本鎖Bsu36I−AgeI DNAリンカーを形成した。
【0118】
pDB2243由来の6.00kb SphI/Bsu36I DNA断片を、二本鎖Bsu36I−AgeI DNAリンカーとプラスミドJ由来の1.93kb SphI/AgeI DNA断片と連結することで、アルブミン二量体遺伝子を含んだプラスミドKを作出した。
【0119】
プラスミドKをNotIで完全に消化し、NotI PRB1プロモーター/アルブミン二量体遺伝子/ADH1ターミネーター発現カセットを精製する。プラスミドK由来のこのNotIアルブミン二量体発現カセットを、予めウシ腸管ホスファターゼ(CIP)で処理した、NotIで線状化したpSAC35(Sleep et al. (1991), Bio/technology 9:183-187)に連結してプラスミドLを作出する。プラスミドLは、pSAC35のNotI部位に挿入され、かつ、その融合遺伝子の発現がLEU2栄養要求マーカーから2μm複製起点に向かうように配向されたNotI発現カセットを含むことを示すことができる。プラスミドLの融合遺伝子の配列は配列番号17に示されている。
【0120】
酵母株をプラスミドLで形質転換し、その形質転換体を発酵させてアルブミン二量体を生産し、上記実施例1に記載したようにアルブミン二量体を精製した。
【0121】
配列表
配列番号1:サッカロミセス・セレビシエ由来の5’UTR
【化1】
【0122】
配列番号2:HSA/MFα1融合リーダー配列
【化2】
【0123】
配列番号3:成熟ヒトアルブミンのコドン最適化コード領域
【化3】
【0124】
配列番号4:翻訳終結部位
【化4】
【0125】
配列番号5:実施例1の融合構築物
【化5】
凡例:サッカロミセス・セレビシエ由来の5’UTR−一重線
HSA/MFα−1融合リーダー配列−太字
第一のコドン最適化HSAコード領域−破線
第二のコドン最適化HSAコード領域−文字飾りなし
翻訳終結部位−二重線
【0126】
配列番号6:PRBJM1
【化6】
【0127】
配列番号7:PRBJM3
【化7】
【0128】
配列番号8
【化8】
【0129】
配列番号9:PRBJM1
【化9】
【0130】
配列番号10:PRBJM3
【化10】
【0131】
配列番号11:VC053
【化11】
【0132】
配列番号12:VC054
【化12】
【0133】
配列番号13:VC057
【化13】
【0134】
配列番号14:VC058
【化14】
【0135】
配列番号15
【化15】
【0136】
配列番号16
【化16】
【0137】
配列番号17:実施例2の融合構築物
【化17】
凡例:サッカロミセス・セレビシエ由来の5’UTR−一重線
HSA/MFα−1融合リーダー配列−太字
天然HSA cDNAコード領域−破線
第一のコドン最適化HSAコード領域−文字飾りなし
翻訳終結部位−二重線
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】プラスミドAのプラスミド地図を示す。
【図2】プラスミドBのプラスミド地図を示す。
【図3】プラスミドCのプラスミド地図を示す。
【図4】プラスミドDのプラスミド地図を示す。
【図5】プラスミドEのプラスミド地図を示す。
【図6】プラスミドpAYE639のプラスミド地図を示す。
【図7】プラスミドpAYE439のプラスミド地図を示す。
【図8】プラスミドpAYE466のプラスミド地図を示す。
【図9】プラスミドpAYE640のプラスミド地図を示す。
【図10】プラスミドFのプラスミド地図を示す。
【図11】プラスミドGのプラスミド地図を示す。
【図12】プラスミドHのプラスミド地図を示す。
【図13】プラスミドIのプラスミド地図を示す。
【図14】プラスミドJのプラスミド地図を示す。
【図15】プラスミドKのプラスミド地図を示す。
【図16】プラスミドLのプラスミド地図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤が2つのアルブミン分子からなる場合には、それらが1以上のシステイン−システインジスルフィド架橋のみによる結合以外の手段により互いに共有結合している、薬剤。
【請求項2】
医薬上許容される担体または希釈剤と、ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤とを含んでなる医薬組成物であって、該薬剤が第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤がアルブミン様ポリペプチドの二量体である場合には、医薬組成物中に存在するアルブミン様の第一のポリペプチドの30%を超えるものが第二のポリペプチドと結合している、医薬組成物。
【請求項3】
前記薬剤が少なくとも80kDaの大きさを有する、請求項1または2に記載の薬剤または組成物。
【請求項4】
前記薬剤が約130〜135kDaの大きさを有する、請求項3に記載の薬剤または組成物。
【請求項5】
前記第二のポリペプチドがアルブミン様ポリペプチドまたはそのフラグメントである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤または組成物。
【請求項6】
アルブミン様の第一のポリペプチドがペプチド結合を介して第二のポリペプチドと結合している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤または組成物。
【請求項7】
アルブミンと特異的に結合することができるアルブミン結合領域を含んでなり、かつ、(a)14〜200kDaの大きさを有するか、または(b)第二のポリペプチドと特異的に結合することができる第二の結合部位を有する、アルブミンリガンド。
【請求項8】
アルブミンと特異的に結合する領域および/または増量用結合パートナーと特異的に結合することができる第二の結合部位が、抗体またはFab、Fv、ScFvもしくはdAbなどのそのフラグメントである、請求項7に記載のアルブミンリガンド。
【請求項9】
抗体がIgGである、請求項8に記載のアルブミンリガンド。
【請求項10】
アルブミン結合領域と結合した第二のポリペプチドをさらに含んでなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載のアルブミンリガンド。
【請求項11】
前記薬剤またはアルブミンリガンドが融合タンパク質である、請求項6または10に記載の薬剤、組成物またはアルブミンリガンド。
【請求項12】
アルブミン様の第一のポリペプチドまたはアルブミン結合領域と第二のポリペプチドとの間の結合がペプチド結合ではない、請求項1〜5または7〜10のいずれか一項に記載の薬剤、組成物またはアルブミンリガンド。
【請求項13】
(a)請求項11で定義された融合タンパク質をコードする配列、または
(b)非天然エピトープまたは第二のポリペプチド配列を相同組換えによりアルブミン遺伝子中に導入するのに好適な配列
から選択される配列を含んでなる、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項11で定義された融合タンパク質をコードする配列を含んでなり、このコード配列と作動可能なように連結された調節領域をさらに含んでなる、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項13または14で定義されたポリヌクレオチドを含んでなる、ベクター。
【請求項16】
請求項13もしくは14に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項17】
請求項11で定義された薬剤またはアルブミンリガンドを製造する方法であって、
請求項16で定義された細胞を増殖させる工程、および該細胞によって生産された薬剤を回収する工程を含んでなる、方法。
【請求項18】
細胞を増殖させる工程が該細胞を培養培地中で培養することを含み、薬剤を回収する工程が該細胞または該培地から薬剤を単離することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤を製造する方法であって、薬剤が第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、該第二のポリペプチドが治療上不活性であり、
(a)第一の成分としてアルブミン様の第一のポリペプチドを準備する工程、
(b)第二の成分として第二のポリペプチドを準備する工程、および
(c)薬剤を形成させるのに好適な条件下で第一の成分を第二の成分と接触させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項20】
アルブミンと結合してネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い分子を産生することができるアルブミンリガンドを製造する方法であって、該アルブミンリガンドが第二のポリペプチドと結合したアルブミン結合領域を含んでなり、該第二のポリペプチドが治療上不活性であり、
(a)第一の成分としてアルブミン結合領域を含んでなる分子を準備する工程、
(b)第二の成分として第二のポリペプチドを準備する工程、および
(c)アルブミンリガンドを形成させるのに好適な条件下で第一の成分を第二の成分と接触させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法によって薬剤またはアルブミンリガンドを製造すること、およびその薬剤またはアルブミンリガンドと医薬上許容される担体または希釈剤とを配合することを含んでなる、組成物の製造方法。
【請求項22】
ヒトまたは動物体の治療または診断による処置の方法に用いるための、請求項1〜11のいずれか一項で定義された薬剤、組成物もしくはアルブミンリガンド、もしくは請求項17〜21のいずれか一項の方法によって得られる薬剤、組成物もしくはアルブミンリガンド、または請求項13もしくは14に記載のポリヌクレオチド、請求項15に記載のベクター、もしくは請求項16に記載の細胞。
【請求項23】
腎疾患またはそれに関連する症状の処置用薬品の製造における、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる薬剤(この第二のポリペプチドは、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性である)、または請求項7〜11のいずれか一項で定義されたアルブミンリガンド、もしくは請求項17、18、20もしくは21のいずれか一項の方法によって得られるアルブミンリガンド、該薬剤もしくは該アルブミンリガンドをコードするポリヌクレオチド、もしくは非天然エピトープもしくは第二のポリペプチドである増量用結合パートナーを相同組換えによりアルブミン遺伝子中に導入するのに好適な配列を含んでなるポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、または該ポリヌクレオチドもしくは該ベクターを含んでなる細胞の使用。
【請求項24】
腎疾患またはそれに関連する症状を有する患者を処置する方法であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる薬剤(この第二のポリペプチドは、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性である)、または請求項7〜11のいずれか一項で定義されたアルブミンリガンド、もしくは請求項17、18、20もしくは21のいずれか一項の方法によって得られるアルブミンリガンド、該薬剤もしくは該アルブミンリガンドをコードするポリヌクレオチド、もしくは非天然エピトープもしくは第二のポリペプチドである増量用結合パートナーを相同組換えによりアルブミン遺伝子中に導入するのに好適な配列を含んでなるポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、または該ポリヌクレオチドもしくは該ベクターを含んでなる細胞を、医薬上有効な量および濃度で患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項25】
前記薬剤が請求項1〜6、11もしくは12のいずれか一項で定義された薬剤、または請求項17〜19もしくは21のいずれか一項に記載の方法によって得られる薬剤であるか、または前記ポリヌクレオチドが請求項13または14に記載のポリヌクレオチドであるか、または前記ベクターが請求項15に記載のベクターであるか、または前記細胞が請求項16に記載の細胞である、請求項23または24に記載の使用または方法。
【請求項26】
腎疾患がネフローゼ症候群または尿毒症である、請求項24、25または26に記載の使用または方法。
【請求項27】
(a)第一の成分としての、非天然エピトープを含んでなる修飾アルブミン、および
(b)第二の成分としての、前記修飾アルブミンの非天然リガンドと特異的に結合するアルブミンリガンド
を含んでなる、系。
【請求項28】
第一および/または第二の成分が、医薬上許容される担体または希釈剤とともに配合された組成物の形態で提供される、請求項27に記載の系。
【請求項29】
非天然エピトープがアルブミン分子のC末端またはN末端延長部である、請求項27または28に記載の系。
【請求項30】
ヒトまたは動物体の治療または診断による処置方法に用いるための、請求項27〜29のいずれか一項に記載の系。
【請求項31】
腎疾患またはそれに関連する症状の処置用薬品の製造における、請求項27〜29のいずれか一項に記載の系の使用。
【請求項32】
腎疾患またはそれに関連する症状を有する患者を処置する方法であって、請求項27〜29のいずれか一項で定義された系の第一および第二の成分を患者に投与することを含んでなり、該第一および第二の成分の投与が同時、個別または逐次である、方法。
【請求項1】
ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤が2つのアルブミン分子からなる場合には、それらが1以上のシステイン−システインジスルフィド架橋のみによる結合以外の手段により互いに共有結合している、薬剤。
【請求項2】
医薬上許容される担体または希釈剤と、ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤とを含んでなる医薬組成物であって、該薬剤が第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、第二のポリペプチドが、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性であり、かつ、この薬剤がアルブミン様ポリペプチドの二量体である場合には、医薬組成物中に存在するアルブミン様の第一のポリペプチドの30%を超えるものが第二のポリペプチドと結合している、医薬組成物。
【請求項3】
前記薬剤が少なくとも80kDaの大きさを有する、請求項1または2に記載の薬剤または組成物。
【請求項4】
前記薬剤が約130〜135kDaの大きさを有する、請求項3に記載の薬剤または組成物。
【請求項5】
前記第二のポリペプチドがアルブミン様ポリペプチドまたはそのフラグメントである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤または組成物。
【請求項6】
アルブミン様の第一のポリペプチドがペプチド結合を介して第二のポリペプチドと結合している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬剤または組成物。
【請求項7】
アルブミンと特異的に結合することができるアルブミン結合領域を含んでなり、かつ、(a)14〜200kDaの大きさを有するか、または(b)第二のポリペプチドと特異的に結合することができる第二の結合部位を有する、アルブミンリガンド。
【請求項8】
アルブミンと特異的に結合する領域および/または増量用結合パートナーと特異的に結合することができる第二の結合部位が、抗体またはFab、Fv、ScFvもしくはdAbなどのそのフラグメントである、請求項7に記載のアルブミンリガンド。
【請求項9】
抗体がIgGである、請求項8に記載のアルブミンリガンド。
【請求項10】
アルブミン結合領域と結合した第二のポリペプチドをさらに含んでなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載のアルブミンリガンド。
【請求項11】
前記薬剤またはアルブミンリガンドが融合タンパク質である、請求項6または10に記載の薬剤、組成物またはアルブミンリガンド。
【請求項12】
アルブミン様の第一のポリペプチドまたはアルブミン結合領域と第二のポリペプチドとの間の結合がペプチド結合ではない、請求項1〜5または7〜10のいずれか一項に記載の薬剤、組成物またはアルブミンリガンド。
【請求項13】
(a)請求項11で定義された融合タンパク質をコードする配列、または
(b)非天然エピトープまたは第二のポリペプチド配列を相同組換えによりアルブミン遺伝子中に導入するのに好適な配列
から選択される配列を含んでなる、ポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項11で定義された融合タンパク質をコードする配列を含んでなり、このコード配列と作動可能なように連結された調節領域をさらに含んでなる、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項13または14で定義されたポリヌクレオチドを含んでなる、ベクター。
【請求項16】
請求項13もしくは14に記載のポリヌクレオチドまたは請求項15に記載のベクターを含んでなる、宿主細胞。
【請求項17】
請求項11で定義された薬剤またはアルブミンリガンドを製造する方法であって、
請求項16で定義された細胞を増殖させる工程、および該細胞によって生産された薬剤を回収する工程を含んでなる、方法。
【請求項18】
細胞を増殖させる工程が該細胞を培養培地中で培養することを含み、薬剤を回収する工程が該細胞または該培地から薬剤を単離することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い薬剤を製造する方法であって、薬剤が第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなり、該第二のポリペプチドが治療上不活性であり、
(a)第一の成分としてアルブミン様の第一のポリペプチドを準備する工程、
(b)第二の成分として第二のポリペプチドを準備する工程、および
(c)薬剤を形成させるのに好適な条件下で第一の成分を第二の成分と接触させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項20】
アルブミンと結合してネフローゼ症候群患者において天然に生産されるアルブミンよりも半減期の長い分子を産生することができるアルブミンリガンドを製造する方法であって、該アルブミンリガンドが第二のポリペプチドと結合したアルブミン結合領域を含んでなり、該第二のポリペプチドが治療上不活性であり、
(a)第一の成分としてアルブミン結合領域を含んでなる分子を準備する工程、
(b)第二の成分として第二のポリペプチドを準備する工程、および
(c)アルブミンリガンドを形成させるのに好適な条件下で第一の成分を第二の成分と接触させる工程
を含んでなる、方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法によって薬剤またはアルブミンリガンドを製造すること、およびその薬剤またはアルブミンリガンドと医薬上許容される担体または希釈剤とを配合することを含んでなる、組成物の製造方法。
【請求項22】
ヒトまたは動物体の治療または診断による処置の方法に用いるための、請求項1〜11のいずれか一項で定義された薬剤、組成物もしくはアルブミンリガンド、もしくは請求項17〜21のいずれか一項の方法によって得られる薬剤、組成物もしくはアルブミンリガンド、または請求項13もしくは14に記載のポリヌクレオチド、請求項15に記載のベクター、もしくは請求項16に記載の細胞。
【請求項23】
腎疾患またはそれに関連する症状の処置用薬品の製造における、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる薬剤(この第二のポリペプチドは、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性である)、または請求項7〜11のいずれか一項で定義されたアルブミンリガンド、もしくは請求項17、18、20もしくは21のいずれか一項の方法によって得られるアルブミンリガンド、該薬剤もしくは該アルブミンリガンドをコードするポリヌクレオチド、もしくは非天然エピトープもしくは第二のポリペプチドである増量用結合パートナーを相同組換えによりアルブミン遺伝子中に導入するのに好適な配列を含んでなるポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、または該ポリヌクレオチドもしくは該ベクターを含んでなる細胞の使用。
【請求項24】
腎疾患またはそれに関連する症状を有する患者を処置する方法であって、第二のポリペプチドと結合したアルブミン様の第一のポリペプチドを含んでなる薬剤(この第二のポリペプチドは、アルブミン様の第一のポリペプチドと結合しているときは治療上不活性である)、または請求項7〜11のいずれか一項で定義されたアルブミンリガンド、もしくは請求項17、18、20もしくは21のいずれか一項の方法によって得られるアルブミンリガンド、該薬剤もしくは該アルブミンリガンドをコードするポリヌクレオチド、もしくは非天然エピトープもしくは第二のポリペプチドである増量用結合パートナーを相同組換えによりアルブミン遺伝子中に導入するのに好適な配列を含んでなるポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含んでなるベクター、または該ポリヌクレオチドもしくは該ベクターを含んでなる細胞を、医薬上有効な量および濃度で患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項25】
前記薬剤が請求項1〜6、11もしくは12のいずれか一項で定義された薬剤、または請求項17〜19もしくは21のいずれか一項に記載の方法によって得られる薬剤であるか、または前記ポリヌクレオチドが請求項13または14に記載のポリヌクレオチドであるか、または前記ベクターが請求項15に記載のベクターであるか、または前記細胞が請求項16に記載の細胞である、請求項23または24に記載の使用または方法。
【請求項26】
腎疾患がネフローゼ症候群または尿毒症である、請求項24、25または26に記載の使用または方法。
【請求項27】
(a)第一の成分としての、非天然エピトープを含んでなる修飾アルブミン、および
(b)第二の成分としての、前記修飾アルブミンの非天然リガンドと特異的に結合するアルブミンリガンド
を含んでなる、系。
【請求項28】
第一および/または第二の成分が、医薬上許容される担体または希釈剤とともに配合された組成物の形態で提供される、請求項27に記載の系。
【請求項29】
非天然エピトープがアルブミン分子のC末端またはN末端延長部である、請求項27または28に記載の系。
【請求項30】
ヒトまたは動物体の治療または診断による処置方法に用いるための、請求項27〜29のいずれか一項に記載の系。
【請求項31】
腎疾患またはそれに関連する症状の処置用薬品の製造における、請求項27〜29のいずれか一項に記載の系の使用。
【請求項32】
腎疾患またはそれに関連する症状を有する患者を処置する方法であって、請求項27〜29のいずれか一項で定義された系の第一および第二の成分を患者に投与することを含んでなり、該第一および第二の成分の投与が同時、個別または逐次である、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2007−527369(P2007−527369A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505964(P2006−505964)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001100
【国際公開番号】WO2004/083245
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(591131523)ノボザイムス、デルタ、リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】NOVOZYMES DELTA LIMITED
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001100
【国際公開番号】WO2004/083245
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(591131523)ノボザイムス、デルタ、リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】NOVOZYMES DELTA LIMITED
【Fターム(参考)】
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