説明

薬包用ポリエステルフィルム

【課題】 ヒートシール性樹脂と積層されてなる薬包材料として好適な、透明性に優れ、手裂け性の良いポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ヒートシール性樹脂と積層されて薬包材料として使用される積層ポリエステルフィルムであって、フィルムの長手方向および幅方向の端裂抵抗値がいずれも80N以下であることを特徴とする二軸延伸積層ポリエステルフィルムであり、当該積層ポリエステルフィルムは、共重合ポリエチレンテレフタレートまたは共重合ポリブチレンテレフタレートを含む原料からなる層を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬包包装材料に用いることのできる、透明性、手裂け開封性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、病院の薬局あるいは調剤薬局等において行なわれる薬剤の分包は、湿気、酸素等から薬剤を保護する目的、薬剤を1回分ずつ服用するのに便利なようにする等の目的から、溶封可能なフィルムを用いて形成された包装材料を用いて包装することが一般化している。このような薬包用材料は、いつでも、どこでも、手で容易に切ることができ、中の薬をこぼしたり、残したりしないで取り出せることが望まれている。また、薬剤に関する情報が印刷されるので、印刷インキの接着性の良いことも望まれている。
【0003】
こうした薬包材料には、グラシン紙にエチレン系樹脂をラミネートした包装フィルムや、セロファンにエチレン系樹脂をラミネートした包装フィルムが使われており、専用の充填装置にて連続的に小袋とし、内部に薬剤を充填してシールされる。グラシン紙を用いた薬包用包装フィルムは、不透明なために内部の薬が視認できないという欠点がある。また、セロファンは透明であり、かつ、種類も多いことから使われている。例えば、セロファンや、セロハンに塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体をコーティングした、いわゆる防湿セロハンや、セロハンに塩化ビニリデンをコーティングしたフィルム(Kコートセロハン)が用いられている。
【0004】
しかし、セロハン、防湿セロハン、Kコートセロハンは、透明であり、優れた手切れ性を有するものの、印刷特性が悪かったり、フィルムの特性が湿度によって変わったりする。また、ヒートシール材とラミネートするとカールする傾向があるため、加工性が悪いという欠点があり、改善が求められている。また、基材のセロハンは、高価であり、将来的に供給面での不安もある。さらに、Kコートセロハンについては、燃焼時ダイオキシンの発生の可能性等の環境面の配慮から、使い難い状況となっている。
【0005】
こうした流れの中で、薬包用包装フィルムにセロハンの代わりにポリエステルフィルムを使うことが特許文献1に提案されている。この文献で提案されているポリエステルフィルムは、手切れ性を発揮するためにフィルムに微細な穴を密に開けているものであるが、湿気や酸素のバリアー性が悪い、フィルム面への印刷性が悪い、外観が悪い等の欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−233374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来の問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、ヒートシール性樹脂と積層されてなる薬包材料として好適な、透明性に優れ、手裂け性の良いポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記解決課題について、鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムが薬包材料として好適であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ヒートシール性樹脂と積層されて薬包材料として使用される積層ポリエステルフィルムであって、フィルムの長手方向および幅方向の端裂抵抗値がいずれも80N以下であることを特徴とする二軸延伸積層ポリエステルフィルムに存する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムとしては、共重合ポリエチレンテレフタレートおよび共重合ポリブチレンテレフタレートの片方または両方を含むポリエステル原料からなる層(A層)とポリエステル層(B層)とからなる積層フィルムであることが好ましい。さらに、B層の融点がA層の融点より10℃以上大きいこと、具体的には、245℃以上であることにより手裂け性が改善されるので好ましい。
【0011】
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸とから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。その製法としては、例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して 重縮合させる方法が採用される。
【0012】
かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート等が例示される。これらのポリマーはホモポリマーであってもよく、また第3成分を共重合させたものでもよい。
【0013】
共重合ポリエチレンテレフタレートとは、酸成分がテレフタル酸およびイソフタル酸、グリコール成分がエチレングリコールからなるポリエステルで代表され、前述の公知の製法で製造することができる。また、さらに、他の共重合成分を共重合させてもよい。
【0014】
他の共重合成分として酸成分としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸等を例示することができる。またアルコール成分としてはジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を例示することができる。これらは単独あるいは2種以上を使用することができる。
【0015】
上記の各成分の割合を、上述のA層とB層の融点の好ましい条件を満足するように選択することが好ましい。具体的には、共重合ポリエチレンテレフタレートについては、共重合成分の割合は、ポリエステルフィルムにしたときA層の融点が240℃以下、好ましくは195〜235℃の範囲となる割合で、例えばポリエステルフィルムのA層における全ジカルボン成分中のイソフタル酸成分の割合を1〜25モル%、さらには5〜20モル%の範囲にするのがよい。A層のポリエステルとしては、イソフタル酸成分の配合量が多い共重合体をポリエチレンテレフタレートで所定の範囲になるように希釈して用いてもよい。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルムに微粒子を含有させることが、フィルムの巻上げ工程、ラミネート工程、薬剤充填工程等での作業性を向上させる上で望ましい。この微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、カオリン等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残差を粒子化させた析出粒子を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。 これら粒子の粒径や量は目的に応じ適宜決めることができる。含有させる微粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。
【0017】
原料ポリエステルに対する前記各粒子の配合方法は、特に限定されないが、例えばポリエステルの重合工程に各粒子を添加する方法または原料ポリエステルと各粒子を溶融混練する方法などが好適である。また、適宜、各種安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、帯電防止剤、抗菌剤、分散性補助剤等を加えることもできる。
【0018】
本発明におけるポリエステルフィルムは上記した共重合ポリエチレンテレフタレートを含有するポリエステル原料と、ポリエステル原料とを別々のエクストルーダーに代表される周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いでスリット状のダイより溶融ポリマーを押出しながら積層し、回転冷却ドラム状でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してフィルム化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。本発明においては、包装材料として十分な寸法安定性、腰を得るため延伸倍率を面積倍率として9倍以上、好ましくは12倍以上とし、フィルムの熱収縮率は150℃、30分間における値で10%以下、さらには5%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向および幅方向の端裂抵抗値がいずれも80N以下であり、好ましくは60N以下である。さらには、薬包材料とした時に、容易に手で開封できるには、40N以下が好ましい。端裂抵抗値が80Nを超えると、手裂け性が悪く、薬包材料としては、適さないものとなる。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、通常6〜50μm、好ましくは9〜38μmであり、A層の厚みは、全体の厚みに対し50〜95%にすることが好ましい。厚みが薄いと腰が弱くなって加工時にシワになったり、破断したりして加工性が悪く、また、A層の厚みを厚くしすぎると引裂強度が大きくなり、薬包材料として適さないことがある。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表面固有抵抗を、5×1012Ω/□以下とすることにより、薬剤の充填時や取り出し時に薬剤が薬包材料に付着するトブルを防止できるので、好ましい。表面固有抵抗を、5×1012Ω/□以下とする方法としては、特に制約はない。好ましい方法としては、B層に帯電防止剤を配合する方法や帯電防止剤を含有したコート層を設ける方法を挙げることができる。
【0022】
薬包材料には、高齢化社会における誤飲防止等を目的として、薬剤表示、病院名、薬局名、あるいは、服用方法が印刷表示される。これら印刷表示に際しては、文字の識別性を良くするために、印刷部分の背景に、一般に白色等の不透明部分を形成する。不透明部分を形成する方法としては特に限定されることはなく、梨地模様を付与することや、印刷インクを用いて印刷することによって行うことができる。
【0023】
薬包用包装袋には、上記のように印刷することが多く、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムには、帯電防止性と同時に印刷インキとの接着性を付与することができれば、薬包材料としてより好ましい。接着性を付与する方法としては、表面処理や積層ポリエステルフィルムのB層に易接着を発揮できる樹脂を配合する方法を適用することができる。例えば、コロナ放電処理、窒素雰囲気下または炭酸ガス雰囲気下でのコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、各種溶剤処理、高分子化合物の塗布等の表面処理や積層ポリエステルフィルムのB層にポリアルキレングリコールを配合させる方法を挙げることができる このような易接着性付与により、印刷インキとの接着性を向上させることができる。必要に応じ、積層ポリエステルフィルムのB層にポリアルキレングリコールを配合させ、かつコロナ処理やプラズマ処理をしても構わない。また、帯電防止剤をコートする場合、このコート層にインキ接着性があるコート層を使うことによって、帯電防止性と易接着性に優れる、手裂け性の良いフィルムを得ることができる。
【0024】
本発明で配合する帯電防止剤として、代表的なものとして、スルホン酸金属塩がある。 なかでも、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホイソフタル酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩を挙げることができる。金属塩を構成する金属元素としては、リチウム、カリウム、ナトリウムが良い。ここで、アルキル基としては、炭素数が8〜30のものが良い。炭素数が少ないと、ポリエステルとの相溶性が悪く、炭素数が多いと帯電防止能の効きが悪くなる傾向がある。帯電防止剤の配合量は、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。配合量が少ないと帯電防止効果が少なく、多いと、フィルムが滑りやすくなり、製膜性が悪くなることがある。実際に使う際には、炭素数が異なる化合物の混合物を用いることが多い。また、配合に際しては、分散性を良くするためにポリエチレングリコールやスチレンオリゴマーを配合してもよい。
【0025】
本発明でコートする帯電防止剤としては、上記のスルホン酸塩やアルキル硫酸エステル塩および、カチオン系の化合物がある。これらの中でも、接着性が向上する帯電防止層をコートすることが好ましい。
【0026】
本発明で使うことのできるスルホン酸塩やアルキル硫酸エステル塩のアルキル基としては、炭素数が8〜30が好ましい。炭素数が少ないと塗布する樹脂との相溶性が悪く、炭素数が多いと帯電防止能の効きが悪くなる。
【0027】
本発明で使うカチオン系帯電防止剤としては、例えば、4級アンモニウム塩基を有する化合物がある。これは、分子中の主鎖や側鎖に、4級アンモニウム塩基を含む構成要素を持つ化合物を指す。そのような構成要素としては、例えば、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N−アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。さらに、これらを組み合わせて、あるいは他の樹脂と共重合させても構わない。また、これらの4級アンモニウム塩の対イオンとなるアニオンとしては、例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0028】
また、本発明においては、4級アンモニウム塩基を有する化合物は高分子化合物であることが望ましい。数平均分子量が、通常は1000以上、さらには2000以上、特に5000以上、500000以下であることが望ましい。分子量が低すぎる場合は、帯電防止剤がブリードアウトし、接触する面に転移するトラブルを発生させることがある。分子量が高すぎる場合は、塗布液の粘度が高くなりすぎ、塗布性が悪くなるトラブルが発生することがある。
【0029】
帯電防止層の厚さは乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μmの範囲である。帯電防止層の厚さが0.003μm未満の場合は、十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる傾向がある。
【0030】
薬包材料は、ヒートシール可能な樹脂と本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムとをラミネートすることにより得ることができる。ラミネート方法としては、接着剤を介してラミネートするドライラミネート法とヒートシール可能な樹脂を二軸延伸積層ポリエステルフィルムに押し出してラミネートする押し出しラミネート方法が知られている。押し出しラミネート法では、押し出す前に二軸延伸積層ポリエステルフィルムにプライマーコートをするのが一般的であるが、本発明の二軸延伸積層ポリエステルフィルムでは、ポリエステルフィルムの製膜時にプライマーコートをしていてもよい。このプライマーのコート剤としては、有機シラン化合物が好ましく、モノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン等があり、これらの混合物や縮合反応物であってもよい。コート剤としては、分子内に有機官能機を持ったアルコキシシランを用いる。その代表的な例としては、 下記一般式で表されるシランカップリング剤がある。
XRSi(ORや(XR)(YR)Si(OR
(上記式中、Rはメチル基またはエチル基で代表されるアルキル基やメトキシアルキル基等の置換アルキル基である。RおよびRは、それぞれ独立して、プロピレン基等のアルキレン基、X、Yは有機官能基である)。
【0031】
上記一般式において、XやYの有機官能基としてはアミノ基、エポキシ基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基およびグリシジル基が好ましい例である。また。有機官能基としては、N―β(アミノエチル)アミノ基のような置換アミノ基やポリエチレンイミンのように、置換されたものであっても良い。有機官能基を有するシランカップリング剤の具体例としては、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N―β(アミノエチル)γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、N―β(アミノエチル)γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が好ましく例示される。これらは一種または二種以上 および 必要によっては、官能基を持たないアルコキシシランを含めた混合物や縮合物を用いることができる。
【0032】
本発明のプライマーコート層は、アルコール溶媒で希釈して用いることができるが、水系であることが好ましく、その際には、コート性を改善する目的で各種の界面活性剤を配合することができる。また、必要に応じて水溶性または水分散性のバインダー樹脂の1種もしくは2種以上を併用し塗布性の向上を図ってもよい。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。また、本発明のコート剤には、コート面の滑り性確保する目的で、無機粒子や有機の粒子を加えても構わない。
【0033】
本発明において二軸延伸積層ポリエステルフィルムに帯電防止層やプライマー層を設ける方法は、二軸延伸フィルムに従来技術でコートしてもよく、また、ポリエステルフィルムを製造する工程中で、従来技術によりコートしてもよい。例えば、逐次二軸延伸法においては、縦一軸延伸後のフィルムに帯電防止剤を含む水分散体をコートした後、横に延伸しその後、熱熱処理する方法、または、二軸延伸フィルム後にコートし乾燥する方法がある。方法に制約はないが、一軸延伸フィルムにコートし、次いで横延伸し、熱処理する方法は、コート層を均一に薄くできる等の特徴があり好ましい。
【0034】
ポリエステルフィルムに帯電防止剤やプライマー剤をコートする方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0035】
本発明では、前述のように、接着性を付与する目的でB層にポリアルキレングリコールを配合してもよいが、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングルコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体等を挙げることができる。なかでも、その熱安定性や接着性能の観点からポリエチレングリコールが、より好ましい。その重合度は、使用するポリアルキレングリコールの種類によるが、配合量は、0.1〜5.0重量%が好ましい。
【0036】
本発明のポリエチレングリコールの分子量は、1000から50000の範囲が好ましく、4000〜20000の範囲がさらに好ましい。分子量が1000に満たないと、ポリエステル原料の熱安定性が悪く製膜しにくく、また得られたフィルムの接着性の向上の程度も大きくない。分子量が、50000を超えると、ポリエステルとの相溶性が悪くなり、得られたフィルムに不透明感が出ることがある。
【0037】
ポリエチレングリコールの配合量は、通常0.3〜5.0重量%の範囲とする。0.3%に満たないと、易接着性が発揮されない。5.0%を超えると、ポリエステルの耐熱性が悪くなり、フィルムの生産性を低下させることがある。
【0038】
ポリアルキレングリコールの配合方法に制限はなく、例えば、ポリエステルとブレンドして配合してもよく、また、ポリエステルの重合時に配合してもよい。特に好ましい方法は、ポリアルキレングリコールの濃度の高いポリエステル共重合体を製造し、これを本発明の濃度の範囲に希釈して配合することである。この方法では、熱安定性のよいポリエステルフィルムを得ることができる。
【0039】
本発明のフィルムに積層するヒートシール性樹脂としては、エチレン系樹脂層を挙げることができる。エチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等を用いることができる。これらの中でも、密度0.91〜0.93g/mm、MFR0.1〜40g/10分の低密度ポリエチレン、または、密度0.88〜0.94g/cm、MFR0.1〜40g/10分の線状低密度ポリエチレンが好ましい。線状低密度ポリエチレンはメタロセン触媒を用いて重合されたものが好ましい。
【0040】
エチレン系樹脂には、帯電防止剤を添加することが好ましい。帯電防止剤としてはノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等の界面活性剤を使用することができ、帯電防止剤の添加量は、エチレン系樹脂組成物に対して0.05〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%の範囲が適当である。0.05重量%より低いときは帯電防止効果が乏しくなる傾向があり、また、10重量%を超えるときは複合フィルム表面にべたつきが生じるおそれがある。
【0041】
また、エチレン系樹脂として、酸変性エチレン系樹脂を使用することができ、代表的なものとして、エチレン系樹脂を不飽和カルボン酸またはその酸無水物をグラフト化したものを挙げることができる。不飽和カルボン酸またはその酸無水物としては、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、ハイミツク酸、シトラコン酸またはこれらの酸無水物等であるが、特にアクリル酸または無水マレイン酸を用いることが好ましい。添加する不飽和カルボン酸またはその酸無水物の量は、エチレン系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.01重量部〜5重量部である。0.01重量部以下では、接着強度の改良効果が乏しく、10重量部以上では、刺激臭が生じる場合がある。
【0042】
酸変性樹脂の製造方法としては、公知の種々の変性方法を適用でき、例えば、上記のエチレン系樹脂に不飽和カルボン酸またはその酸無水物とベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物を添加し、押出機で150〜350℃で溶融・混練する方法を採用することができる。また、エチレン系樹脂を溶剤に溶解して溶液として反応させることもできる。
【0043】
エチレン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、各種の添加剤を配合することができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、塩素補足剤、滑剤、アンチブロッキング剤、金属不活性剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0044】
エチレン系樹脂は、単層であってもよいが、目的に応じて、機能を異にするエチレン系樹脂組成物を2層以上積層した複層とすることができる。
【0045】
本発明のフィルムを用いた薬包材料は、薬剤の包装に使用されが、包装される薬剤の形状は特に制限はなく、顆粒、細粒、粉末、カプレット、カプセル等いかなる形態であってもよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、薬包材料として好適な、透明性に優れ、手裂け性の良いポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法やサンプルの処理方法は下記のとおりである。また、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を示す。
【0048】
(1)ポリマーの極限粘度[η](dl/g)の測定方法
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100ml中に溶解させ、ウベローデ型粘度計にて30℃で測定した。
【0049】
(2)フィルム厚みの測定方法
フィルムを10枚重ねてマイクロメータ法にて厚さを測定し10で除して平均値を求めフィルム厚みとした。
【0050】
(3)積層ポリエステル層の厚みの測定方法
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を積層厚さとした。
【0051】
(4)融点の測定方法
融点(Tpm)の測定はパーキンエルマー性示差走査カロリーメーターDSC7型を用いて測定した。DSC測定条件は以下のとおりである。すなわち、試料フィルム6mgをDSC装置にセットし、急冷試料を常温より10℃/分の速度で昇温し、JIS K7121のDSC曲線の読み方に従い結晶化温度を検知した。
【0052】
(5)引張破断強度の測定方法
(株)インテスコ製引張り試験機モデル2001型を用いて、温度23℃、湿度50%RHに調節された室内において長さ(チャック間)50mm、幅15mmの試料フィルムを200mm/分の歪み速度で引張り、フィルム破断時の荷重を測定し、下記式により引張破断強度を求めた。
引張破断強度(MPa)=切断時の荷重(N)/試料フィルムの断面積(mm)
【0053】
(6)端裂抵抗の測定方法
JISC2318−1975の測定方法で平均値を端裂抵抗値とした。
【0054】
(7)ヘーズの測定方法
JIS K7105に準じ、日本電色工業社製積分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムのヘーズを測定した。
【0055】
(8)手切れ性の測定方法
フィルムに切れ込みを入れずに、スムーズに手で引き裂けるかどうか下記基準で評価した。評価は長手方向(MD)および幅方向(TD)に対して、それぞれ行った。
評価A:容易に手で引き裂くことができるもの
評価B:比較的容易には手で引き裂くことができるもの
評価C:容易には手で引き裂くことができないもの
【0056】
(9)表面固有抵抗の測定方法
横河ヒューレットパッカード社製の内側電極50mm径、外側電極70mm径の同心円型電極である16008Aを23℃、50%RHの雰囲気下で試料に設置し、100Vの電圧を印加し、同社製の高抵抗計である4329Aで試料の体積固有抵抗を測定した。
【0057】
(10)インキ接着性の評価方法
東洋インキ製造(株)製セロカラー用印刷インキCCST39藍を用い、乾燥後の塗膜厚さが、1.5μmになるようにフィルム表面に塗布し、80℃で1分間熱風乾燥し、評価用フィルムを得た。評価用フィルムを23℃、湿度50%RHにて24時間調温調湿し、フィルムのインキ塗布面にニチバン(株)製セロテープ(登録商標)(18mm巾)を気泡の入らぬように7cmの長さに貼り、この上を3kgの手動式荷重ロールで一定の荷重を与えた。フィルムを固定し、セロハンテープ(登録商標)の一端を500gの錘に接続し、錘が45cmの距離を自然落下後に、180°方向の剥離試験が開始する方法で評価した。接着性は、次の3段階の基準で評価した。
評価3:フィルム面からインキが全く剥離しない
評価2:フィルム面からインキは剥離するが、剥離する面積は、10%未満である
評価1:10%以上の面積でインキが剥離する。
実用的には、評価3または評価2であれば問題なく使用できる
【0058】
(11)薬包袋としての評価
実施例および比較例で得た二軸延伸積層ポリエステルフィルムの片面にコロナ処理をし、処理面にプライマーコート後、厚さが20μmとなるように、密度が0.919g/cm、MRF8.1g/10分の低密度ポリエチレンを押し出し、薬包用包装フィルムを得た。このフィルムのポリエチレン面を合わせ、ヒートシールバーにてヒートシールして包装材料を作成した。ヒートシール部を手で引き裂いて、引裂性を評価した。
【0059】
以下の実施例および比較例にて使うポリエステル原料は次の方法にて製造した。
<ポリエステル1の製造法>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の溶融重縮合法にて、平均粒径2.5μmの非晶質シリカを0.18%含有するポリエステルを得た。このものは、極限粘度 0.70dl/g、原料から得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は254℃であった。
【0060】
<ポリエステル2の製造法>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の溶融重縮合法で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は6モル%であった。このものは、極限粘度0.69dl/g、原料から得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は239℃であった。
【0061】
<ポリエステル3の製造法>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の溶融重縮合法で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は15モル%であった。このものは、極限粘度0.69dl/g、原料から得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は220℃であった。
【0062】
<ポリエステル4の製造法>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸およびテレフタル酸、多価アルコール成分としてエチレングリコールをそれぞれ使用し、常法の溶融重縮合法で製造した。ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は22モル%であった。このものは、極限粘度0.69dl/g、原料から得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は196℃であった。
【0063】
<ポリエステル5の製造法>
ポリエステル1を35部とポリエステル4を65部ブレンドして得た。ポリエステル5に含まれるイソフタル酸の量は 14モル%だった。
【0064】
<ポリエステル6の製造法>
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、多価アルコール成分として1.4ブタンジオールを使用し、常法の溶融重縮合法で製造した。このポリエステル原料の極限粘度([η])=0.80dl/gで、原料から得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は222℃であった。
【0065】
<ポリエステル7の製造方法>
ポリエステル1を80部に対して 炭素数14、15、16からなるアルキルスルホン酸ナトリウムを20部配合し、溶融押し出してポリエステルチップを得た。
【0066】
<ポリエステル8の製造法>
ジメチルテレフタレート90部、エチレングリコール61部および分子量8000のポリエチレングリコール10部を反応槽に入れ、酢酸カルシウム1水塩を触媒として、常法によりオリゴマーを得、その後、平均粒径2.5μmの非晶質シリカ0.18部、および、3酸化アンチモン触媒を加えて常法にて重合し、ポリエチレングリコール10%含有する共重合ポリエステルを得た。
【0067】
<ポリエステル9の製造法>
ポリエステル1を25部とポリエステル4を50部とポリエステル6を25部ブレンド後、二軸押出機で溶融混錬しチップ化して得た。ポリエステル9に含まれるポリブチレンテレフタレートの量は25%、ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は11モル%であった。この原料得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は、217℃であった。
【0068】
<ポリエステル10の製造法>
ポリエステル6を25部とポリエステル3を75部ブレンドして得た。ポリエステル10に含まれるポリブチレンテレフタレートの量は25%、ジカルボン酸成分中のイソフタル酸含量は11モル%であった。この原料から得られるポリエステルフィルムの融点(Tpm)は、217℃であった。
【実施例1】
【0069】
ポリエステル1とポリエステル3のペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用いポリエステル1(B層)/ポリエステル3(A層)/ポリエステル1(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。次いで、80℃にて縦方向に3.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て90℃で4.0倍、横延伸、230℃で10秒間の熱処理を行い、厚さ12μmの積層ポリエステルフィルムを得た。B層/A層/B層の厚み構成は、1.5μm/99μm/1.5μmだった。得られたフィルムの端裂抵抗は、長手方向、幅方向共に50Nであり、手裂け性の良いフィルムだった。また、薬包材料としての性能を評価したところ、比較的容易に手で引き裂くことができた。
【実施例2】
【0070】
ポリエステル1のペレットとポリエステル7のペレットとポリエステル8のペレットを87:3:10の割合で配合した原料(ブレンド原料I)を準備した。ブレンド原料Iとポリエステル5のペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用い、ブレンド原料I(B層)/ポリエステル5(A層)/ブレンド原料I(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して急冷し、厚さ約250μmの未延伸フィルムを得た。次いで、80℃にて縦方向に3.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て90℃で4.0倍、横延伸、225℃で10秒間の熱処理を行い、厚さ16μmの積層ポリエステルフィルムを得た。B層/A層/B層の厚み構成は、2μm/12μm/2μmだった。長手方向の端裂抵抗は45N、幅方向の端裂抵抗は50Nであり、表面固有抵抗は、5×1011Ω/□であり、帯電防止性に優れ、かつ手切れ性の良いフィルムだった。薬包材料としての性能を評価したところ、袋外面へのインキ接着性は良く、また比較的容易に手で引き裂くことができた。
【実施例3】
【0071】
ポリエステル1とポリエステル9のペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用い、ポリエステル1(B層)/ポリエステル9(A層)/ポリエステル1(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約250μmの未延伸フィルムを得た。次いで、70℃にて縦方向に3.5倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て80℃で4.4倍の横延伸、230℃で5秒間の熱処理を行い、厚さ16μmの積層ポリエステルフィルムを得た。B層/A層/B層の厚み構成は、1μm/14μm/1μmだった。得られたフィルムの長手方向の端裂抵抗は30N、幅方向の端裂抵抗は35Nだった。薬包材料としての性能を評価したところ、容易に手で引き裂ける袋であった。
【実施例4】
【0072】
ポリエステル1のペレットとポリエステル7のペレットを97:3の割合で配合した原料(ブレンド原料II)を準備した。ブレンド原料IIとポリエステル10のペレットをそれぞれ別の単軸押出機に溶融させて、積層ダイを用い、ブレンド原料II(B層)/ポリエステル10(A層)/ブレンド原料II(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約250μmの未延伸フィルムを得た。次いで、75℃にて縦方向に3.5倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て80℃で4.4倍の横延伸、235℃で5秒間の熱処理を行い、厚さ16μmの積層ポリエステルフィルムを得た。B層/A層/B層の厚み構成は、1μm/14μm/1μmだった。得られたフィルムの長手方向の端裂抵抗は25N、幅方向の端裂抵抗は28Nで、手裂け性が良いフィルムだった。このフィルムの表面抵抗は、5×1011であり、良好な帯電防止性能だった。薬包材料としての性能を評価したところ、容易に手で引き裂ける袋であった。
【0073】
(比較例1)
ポリエステル1とポリエステル2のペレットをそれぞれ別の押出機に溶融させて、積層ダイを用い、ポリエステル1(B層)/ポリエステル2(A層)/ポリエステル1(B層)の構成の2種3層積層ポリエステル樹脂を表面温度30℃の冷却ドラムに押出して、急冷し厚さ約180μmの未延伸フィルムを得た。次いで、80℃にて縦方向に3.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て90℃で4.0倍、横延伸、230℃で10秒間の熱処理を行い、厚さ12μmの積層ポリエステルフィルムを得た。B層/A層/B層の厚み構成は、1.5μm/9μm/1.5μmだった。得られたフィルムの長手方向端裂抵抗は85N、幅方向の端裂抵抗は90Nであり、手切れ性が不十分なフィルムであった。
【0074】
(比較例2)
実施例4において、ポリエステルフィルムのB層/A層/B層の厚み構成を4μm/8μm/4μmとした以外は、実施例4と同じ方法にて二軸延伸積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの長手方向の端裂抵抗は76N、幅方向の端裂抵抗は83Nだった。このフィルムを使って薬包材料を作製したところ、手で切れるものの、相当に力を要するものであり、改良が不十分だった。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のフィルムは、薬包材料として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール性樹脂と積層されて薬包材料として使用される積層ポリエステルフィルムであって、フィルムの長手方向および幅方向の端裂抵抗値がいずれも80N以下であることを特徴とする二軸延伸積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2006−51699(P2006−51699A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235086(P2004−235086)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000108856)三菱化学ポリエステルフィルム株式会社 (187)
【Fターム(参考)】