説明

薬学的活性剤の製造方法

本明細書に開示されるのは、薬学的活性剤およびその薬学的に許容される塩を調製する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンおよびその薬学的に許容される塩の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
5−HTレセプターは、セロトニンレセプターのGタンパク質共役型レセプタースーパーファミリーの一員であり、5−HTレセプターおよび5−HTレセプターと同様、アデニレートシクラーゼと正に共役する(Monsma, F. et al. Mol. Pharmacol. 1993, 43, 3, 320-327)。ラットの5−HTレセプターが1993年に初めてクローニングされ、それと89%の配列同一性をもつヒトのホモログがクローニングされたことが1996年に報告された(Kohen, R. et al. J Neurochem. 1996, 66, 1, 47-56)。ラットの脳における5−HTレセプターの局在が、ノーザン分析およびRT−PCRによるmRNA定量法、免疫組織化学法、およびオートラジオグラフィーを用いて研究されてきた(Ward, R., et al. J. Comp Neurol. 1996, 370, 3, 405-414、およびWard, R. et al. Neuroscience 1995, 64, 4, 1105-1111)。これらの方法では、一貫して、嗅結節、海馬、線条体、側坐核および皮質領域において高レベルの本レセプターが見出されている。5−HTレセプターは、末梢組織には存在しないか、または非常に低レベルで存在する。
【0003】
初期の頃の5−HTレセプターに対する興味の多くは、いくつかの向精神薬がヒト5−HTレセプターにおける高アフィニティーアンタゴニストであることによったせいである。これらの化合物には、アミトリプチリン(Ki=65nM)ならびに非定型抗精神病薬であるクロザピン(Ki=9.5nM)、オランザピン(Ki=10nM)およびクエチアピン(33nM)が含まれる。Roth, B. L., et al. J. Pharmacol. Exp. Ther. 1994, 268, 3, 1403-1410を参照のこと。
【0004】
選択的5−HTレセプターアンタゴニストを認知機能障害の治療に使用することは広く認められているが、それはいくつかの理由に基づく。例えば、選択的5−HTレセプターアンタゴニストは、コリン作動性およびグルタミン酸作動性のニューロン機能を調節する。コリン作動性およびグルタミン酸作動性のニューロン系は、認知機能において重要な役割を果たしている。コリン作動性ニューロン経路は、記憶の形成および固定にとって重要であることが知られている。中枢性抗コリン作用薬は、動物実験および臨床実験では認知機能を低下させるが、コリン作動性ニューロンの消失は、アルツハイマー病の顕著な特徴の一つである。逆に言うと、コリン作動性の機能を刺激すると認知能力が改善することが知られており、アルツハイマー病の認知障害を治療するために最近承認された2種類の薬剤であるガランタミンとドネペジルはどちらもアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である。前頭前野におけるグルタミン酸作動系も認知機能に関係することが知られている(Dudkin, K.N., et al. Neurosci. Behav. Physiol. 1996, 26, 6, 545-551)。
【0005】
選択的5−HTレセプターアンタゴニストの活性も、認知機能の動物モデルにおいて示されている。最初に選択的5−HTレセプターアンタゴニストが開示されて以来、認知機能モデルにおける、これらの選択的化合物の活性に関する報告がいくつかなされている。例えば、選択的5−HTレセプターアンタゴニストであるSB−271046は、モーリス水迷路における成績を向上させた(Rogers, D. et al. Br. J. Pharamcol. 1999, 127 (suppL): 22P)。これらの結果は、5−HTレセプターの配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの慢性脳室内投与によって、モーリス水迷路における成績がある程度向上したという知見と整合していた(Bentley, J. et al. Br. J. Pharmacol. 1999, 126, 7, 1537-42)。また、SB−271046処理は、老化ラットにおける空間弁別オペラント行動試験(spatial alternation operant behavior test)結果の向上ももたらした。
【0006】
現在、いくつかの5−HTレセプターアンタゴニストが、認知障害疾患を治療する可能性があるものとして臨床開発されている。5−HTレセプターアンタゴニストであるSB−742457がアルツハイマー病患者に臨床上有効であるとの最初の報告は、この方法の治療可能性をさらに証拠付けている。
【0007】
N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンは、現在臨床開発中の強力で選択的な5−HTレセプターアンタゴニストである。その化学構造を、式Iの化合物として下記に示す。
【化1】

【0008】
N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンの合成、それを認知障害疾患などの疾患の治療に使用すること、およびこの物質を含む医薬組成物が、米国特許第7,157,488号(以下「488号特許」)に開示されている。また、488号特許には、対応する一塩酸塩の調製についての記載もある。
【0009】
上記参照文献に開示されている合成法は、少量の材料を調製するには十分であるが、さまざまな安全性問題、低収率、または大量合成に合わせて修正することができない工程があるという問題を抱えている。このように、式Iの化合物を製造するための方法を確認しようという、まだ満たされない要求が存在する。
【0010】
したがって、本発明は、前臨床用、臨床用および商業用に用いるための材料をキログラム単位で生産するのに有用な、式Iの化合物の効率的かつ経済的な調製法を記載するものである。特に、本発明者らは、ニトリル含有中間体を対応するアミンに還元するのに伴う二量体化を阻止するためのアンモニアの役割を思いがけず発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第7,157,488号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Monsma, F. et al. Mol. Pharmacol. 1993, 43, 3, 320-327
【非特許文献2】Kohen, R. et al. J Neurochem. 1996, 66, 1, 47-56
【非特許文献3】Ward, R., et al. J. Comp Neurol. 1996, 370, 3, 405-414
【非特許文献4】Ward, R. et al. Neuroscience 1995, 64, 4, 1105-1111
【非特許文献5】Roth, B. L., et al. J. Pharmacol. Exp. Ther. 1994, 268, 3, 1403-1410
【非特許文献6】Dudkin, K.N., et al. Neurosci. Behav. Physiol. 1996, 26, 6, 545-551
【非特許文献7】Rogers, D. et al. Br. J. Pharamcol. 1999, 127 (suppL): 22P
【非特許文献8】Bentley, J. et al. Br. J. Pharmacol. 1999, 126, 7, 1537-42
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンおよびその薬学的に許容される塩を調製する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(a)酸性水溶液存在下で、6−フルオロインドールを、ホルムアルデヒドとジメチルアミンから原位置(in-situ)で生成されたイミニウムイオン種と反応させて、以下のIIの化合物を製造する工程、
【化2】


(b)DMF/水の存在下で、式IIの化合物をKCNと反応させて、以下の式IIIの化合物を製造する工程、
【化3】


(c)NH存在下、式IIIの化合物を、遷移金属触媒を用いてHで水素添加して、以下の式IVの化合物を製造する工程、および
【化4】


(d)溶媒存在下、式IVの化合物を、3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンズアルデヒドと反応させた後、還元剤を加える工程。
【0014】
別個の態様は、以下の工程を含む、式IIの化合物を調製する方法に関する:
【化5】


(a)ジエトキシメタン、水およびギ酸の溶液を混合する工程、
(b)工程(a)の溶液を、6−フルオロインドール、メチルアミンおよび酢酸の混合物に加える工程、および
(c)塩基性水溶液を加える工程。
【0015】
一つの実施形態において、工程(a)の溶液を約75℃から約85℃の温度で混合する。
【0016】
別の実施形態において、工程(a)の溶液を約2時間未満撹拌する。
【0017】
さらに別の実施形態において、工程(a)の溶液を、約2℃から8℃の温度で、6−フルオロインドールと酢酸の混合液に加える。
【0018】
別の実施形態において、塩基性水溶液はNaOH水溶液(NaOHaq)である。
【0019】
一つの実施形態において、収率は90%よりも高い。一つの実施形態において、収率は95%よりも高い。別個の実施形態において、収率は98%よりも高い。
【0020】
別の態様は、以下の工程を含む、式IVの化合物を調製する方法に関する:
【化6】


(a)アルコール溶媒中で(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)アセトニトリル、水中25%NHおよび遷移金属触媒を混合する工程、および
(b)この混合液をHで水素添加する工程。
【0021】
一つの実施形態において、遷移金属触媒はRaNiである。
【0022】
別の実施形態において、アルコール溶媒はメタノールである。
【0023】
さらに別の実施形態において、水素添加は、約2.5バールの圧力で約16時間行われる。
【0024】
一つの実施形態において、水素添加は、約55℃から約65℃の温度で行われる。さらに別の態様は、以下の工程を含む、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチルアミンを精製する方法に関する:
(a)2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチルアミンをアルコール溶媒に溶解させる工程、
(b)L(+)−酒石酸を添加する工程、および
(c)酒石酸塩を沈殿として捕集する工程。
【0025】
一つの実施形態において、アルコール溶媒はメタノールである。
【0026】
一つの実施形態において、酢酸エチルをアルコール溶媒とともに用いる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
既述したように、本発明は、N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンおよびその薬学的に許容される塩を効率的かつ経済的に得ることができる実現可能な方法を発見したことに基づく。本発明を以下により詳しく説明するが、この説明は、本発明を実施することができるすべての別法を詳細に羅列しようとするものでも、本発明に追加することができるすべての特徴を網羅しようとするものでもない。
【0028】
したがって、本発明は、スキームIに記載した新規の方法を開発したことによって完成したのである。
【化7】

【0029】
市販されている6−フルオロインドールから開始する本方法は以下のように特徴づけることができる:
・第一の工程において、市販の6−フルオロインドールを(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルメチル)−ジメチルアミンに変換する。この変換は、原位置でイミニウムイオン種を生成するマンニッヒ反応を含む。一つの実施形態において、イミニウムイオン種は、ジエトキシメタンおよびジメチルアミンから原位置で生成される。別の実施形態において、この反応は水性溶媒中で行われる。
・第二の工程において、(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルメチル)−ジメチルアミンが、DMF/水存在下、高温でのシアン化カリウムとの反応によって、(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)アセトニトリルに変換される。別の実施形態において、高温とは、反応混合液の還流温度とほぼ同じである。
・第三の工程において、(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)アセトニトリルが、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)−エチルアミンに変換される。この変換は、アンモニア存在下、水素および遷移金属触媒を用いて、ニトリルを一級アミンに還元することを含む。別の実施形態において、遷移金属触媒はラネーニッケルである。
・第四の工程において、2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)−エチルアミンが、溶媒存在下、アミンを3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンズアルデヒドと共役させた後、還元剤によってイミン結合を還元することによって、N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンに変換される。この変換は、還元的アミノ化反応である。一つの実施形態において、還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。
【0030】
本発明に係る方法の著しい利点は、第三の工程においてアンモニアを使用することで、反応のスムーズかつ高収率での進行を可能にしつつ、望ましくない(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)アセトニトリルの二量体化が避けられるという事実に存在する。ラネーニッケルによる塩基性ニトリルの水素化はかねてから知られているが(Huber, W. JACS 1944, 66, 876-879)、式Iの化合物の調製にラネーニッケルだけを使用することは実用的ではないだろう。
【0031】
ラネーニッケルなどの助触媒とともに作用させるために、アンモニアを反応添加物として使用することは開示されていた(Robinson and Snyder, Organic Syntheses Collective Volume 3, 720-722)。しかし、先行技術において、アンモニアを使用すると全体的な活性が低下すると考えられると指摘されている(Thomas-Pryor, et al. Chem.Ind. 1998, 17, 195, Viullemin, et al. Chem. Eng. Sci. 1994, 49, 4839-4849、およびFouilloux, New Frontiers in Catalysis - Proceedings of the 10thInternational Congress on Catalysis, 1992, Elsevier Science, Amsterdam, 255-2558)。さらなる例については、欧州特許第0913388号、国際公開公報第00/27526号、国際公開公報第99/22561号、米国特許第5,777,166号および第5,801,286号を参照のこと。このように、先行技術は、全体的な活性低下が見られるせいで、ラネーニッケルによるニトリルの還元にアンモニアを使用することを教示もしくは示唆していないと考えられる。
【0032】
このため、本発明者らは、この方法においてアンモニアを使用すると、全体活性を低下させることなく、一方で望ましくない二量体形成を防止しながら反応を進行させることが可能になることを思いがけず発見したのである。
【0033】
以下は、本明細書で使用されているさまざまな略語の定義である。
「DEM」はジエトキシメタンである。
「DMF」はN,N−ジメチルホルムアミドである。
「MeOH」はメタノールである。
「THF」はテトラヒドロフランである。
「6FI」は6−フルオロインドールである。
「RaNi」は、FeおよびCrが任意で添加されてさまざまな粒子サイズになる活性化ニッケル触媒である。一つの実施形態において、使用されるRaNiは、フルカ(Fluka)社から市販されているスポンジタイプの金属触媒である。別の実施形態において、使用されるRaNiは、ジョンソン・マッセイ(Johnson Matthey)社のA5009(5%、33ミクロン)触媒である。さらに別の実施形態において、使用されるRaNiは、デグサ(Degussa)社のB111W触媒である。
「シアン化物源」はKCN、NaCN、およびCNアニオンを遊離する他の物質である。
「Aq」は水性である。
「DI」は蒸留または超純粋である。
「RT」は室温である。
「eq」は当量である。
「g」はグラムである。
「ml」はミリリットルである。
「L」はリットルである。
「kg」はキログラムである。
「M」はモルである。
「w/w」は重量比である。
「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーである。
【0034】
式Iの化合物は、多種多様の有機酸および無機酸と薬学的に許容される酸添加塩を形成し、薬化学においてしばしば使用される生理学的に許容される塩を含む。このような塩も、本発明の一部である。このような塩は、Journal of Pharmaceutical Science, 66, 2-19 (1977)に列挙された、当業者に公知の薬学的に許容される塩を含む。このような塩を生成するために用いられる代表的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸などが含まれる。有機酸に由来する塩、例えば、脂肪族のモノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸を使用することも可能である。すなわち、このような薬学的に許容される塩には、クロライド、ブロマイド、イオダイド、ナイトレート、アセテート、フェニルアセテート、トリフルオロアセテート、アクリレート、アスコルベート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、メチルベンゾエート、o−アセトキシベンゾエート、イソブチレート、フェニルブチレート、a−ヒドロキシイソブチレート、ブチン−1,4−ジカルボキシレート、ヘキシン−1,4−ジカルボキシレート、カプレート、カプリレート、シンナメート、シトレート、ホルメート、フマレート、グリコレート、ヘプタリオエート(heptarioate)、ヒプレート、ラクテート、マレート、マレエート、ヒドロキシマレエート、マロネート、マンデレート、メシレート、ニコチネート、イソニコチネート、オキサレート、フタレート、テトラフタレート、プロピオレート、プロピオネート、フェニルプロピオネート、サリシレート、セバケート、サクシネート、スベレート、ベンゼンスルホネート、p−ブロモベンゼンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、エチルスルホネート、2−ヒドロキシエチルスルホネート、メチルスルホネート、ナフタレン−1−スルホネート、ナフタレン−2−スルホネート、ナフタレン−1,5−スルホネート、p−トルエンスルホネート、キシレンスルホネート、タルタレートなどが含まれる。
【実施例】
【0035】
HPLCの説明:
HPLC分析を以下のクロマトグラフィー条件で行った;カラム:エクステラ(Xterra)RP18(100mm×4.6mm、3.5μm)、移動相:10mMアンモニウムカルボネート(H8.5)/アセトニトリル、86/14から14/86(v/v、%)、流速:2ml/分、カラム温度:約45℃、検出:280nmのUV。
【実施例1】
【0036】
式IIの化合物の合成
市販されている6−フルオロインドールから式IIの化合物を合成したことの詳細を以下に説明する。スキームIIでは、ジエトキシメタンとジメチルアミンを用いて、「イミニウムイオン種」を生成させる。ジエトキシメタンの代わりにホルムアルデヒドを用いる代替法も下記に記載されている。
【化8】

【0037】
合成手順:
リアクターAの中でホルムアルデヒドの調製を行った。式IIの化合物の合成をリアクターBの中で行った。最終産物の沈殿をリアクターCの中で行った。
【0038】
手順:
ジエトキシメタン(65ml/54g)、水(50ml)およびギ酸(39ml/47g)をリアクターAに入れた。この混合液を約2時間、約80℃/還流に加熱した後、約20℃まで冷却した。6−フルオロインドール(50g)および80%酢酸(66ml/70g、6−フルオロインドールに対し2.5eq.)をリアクターBに入れた。この懸濁液を2〜5℃に冷却した。約15℃よりも低い温度に保ちつつ、40%ジメチルアミン(aq)(103ml/92g、6−フルオロインドールに対し2.2eq.)を一滴ずつリアクターBに加えた。この反応混合液を約20分間撹拌すると同時に、温度を2〜4℃に調整した。
【0039】
温度を約2〜8℃に保ちつつ、リアクターAからの混合液(約20℃でDEM、水、ギ酸、ホルムアルデヒドおよびエタノール)を一滴ずつリアクターBに加えた。この反応混合液を、2〜8℃でさらに10分間撹拌した。この反応混合液を、1時間かけて約40℃までゆっくりと暖めた。この反応混合液をさらに1時間、約40℃にて撹拌した。反応混合液を約20℃に冷却した。
【0040】
3M NaOH(800ml、酢酸+ギ酸に対し1.24eq.)をリアクターCに入れ、この溶液を約10℃に冷却した。リアクターBから取り出した反応混合液を、温度を10〜15℃に保ちつつ、リアクターC中のNaOH溶液に一滴ずつ加えた(pH>14)。この懸濁液を5〜20℃にて40分間撹拌した(pH>14)。生成物をろ過によって集め、ろ過ケーキを水で2回洗浄した(2×250ml)。この生成物を、、約60℃にて、真空下で16時間乾燥させた。収率:95%。HPLC(280nm)による純度:98面積%。
【0041】
ジエトキシメタンの代わりにホルムアルデヒドを用いる手法:
250Lのリアクターに、N雰囲気下、約17℃にて約40%水性ジメチルアミン(35.68kg、1.0eqv.)を加えた。この混合液を約4.5℃に冷却し、温度を約15℃よりも低く保ちつつ、140分間かけて氷酢酸(43.4kg、2.5eq.)を一滴ずつ加えた。約3℃にて20分間撹拌した後、温度を約0℃から約10℃に保ちつつ、約20分間かけて37%水性ホルムアルデヒド(25.9kg、1.1eq.)を加えた。6−フルオロインドール(39.2kg)を加えた。この反応は発熱性で、最終温度は約40℃に達し、その後、約20℃に冷却された。この反応溶液を、3M NaOHを入れた650Lのリアクターに、約40分間かけてゆっくりと加えた。温度を約5℃から20℃に保ちつつ、この懸濁液を約40分間撹拌した。生成物をろ過し、DI水で濯ぎ、約50℃で乾燥させて、式IIの化合物を提供した。収率:85%。
【実施例2】
【0042】
式IIIの化合物の合成
式IIの化合物から式IIIの化合物を合成する方法の詳細が、下記のスキームIIIに記載されている。
【化9】

【0043】
段階的手順:
(6−フルオロ−1H−インドール−3−イルメチル)−ジメチルアミン(65g)、KCN(31g)、DMF(195ml)および水(104ml)をリアクターに入れた。この反応混合液を、約5〜8時間、約100〜105℃に加熱した(強還流)。この反応混合液を20〜25℃まで冷却した。水(780ml)およびトルエン(435ml)をリアクターの中に入れ、混合液を2時間よりも長く激しく撹拌した。有機層と水層を分離させた。有機層を、5%NaHCO(6×260ml、2M HCl(260ml)、5%NaHCO(260ml)および5%NaCl(260ml)のぞれぞれで洗浄した。この有機層をろ過し、乾燥するまで濃縮した。MeOH(260ml)を加えて、溶液を乾燥するまで濃縮した。式IIIの化合物が茶色の油として単離された。収率:90%。HPLC(280nm)による純度:95%。MS m/z:193(M+H)
【実施例3】
【0044】
式IVの化合物の合成
式IIIの化合物の詳細な合成法が下記のスキームIVに記載されている。
【化10】

【0045】
合成手順:
式IIIの化合物の水素による式IVの化合物への還元を、オートクレーブ内で行った。リアクターAおよびリアクターBを用いて、RaNi懸濁液と、オートクレーブに移入する試薬溶液とを調製した。リアクターCおよびDを合成過程で用い、リアクターEおよびFを、酒石酸塩である式IVの化合物の単離に用いた。
【0046】
手順:
リアクターAにRaNi(66g、加湿)とMeOH(600ml)を入れた。HO(375ml)中25%NHを(真空ラインによって)オートクレーブに入れた。リアクターAから取り出したMeOH中のRaNi懸濁液を(真空ラインによって)オートクレーブに移した。HO(200ml)中25%NHをリアクターAに入れた後、(真空ラインによって)オートクレーブに移した。式IIIの化合物(211g)とMeOH(500ml)をリアクターBに入れた後、(真空ラインによって)オートクレーブに移した。MeOH(600ml)をリアクターBに入れた後、(真空ラインによって)オートクレーブに移した。HO(175ml)中25%NHをリアクターBに入れた後、(真空ラインによって)オートクレーブに移した。この反応混合液を窒素で換気した(約P2〜3バールで3×N)。この反応混合液を水素で換気した(P2バールで4×H)。水素圧をP2バールに調整した。この反応混合液を60℃に加熱した。水素圧を約P2.5バールに調整した。約60℃およびP(H)2.5バールにて約16時間後、反応混合液を室温まで冷却した。この反応混合液を窒素で換気した(約P2.0〜3.0バールで3×N)。
【0047】
反応混合液を、オートクレーブからリアクターCに移した。このオートクレーブをMeOH(500ml)で洗浄した。このメタノールをリアクターCに移した。この混合液を撹拌せずに2〜16時間静置した。その上清をリアクターDに集めた。MeOH(350ml)をリアクターDに入れた。この混合液を5分間ゆっくりと撹拌した後、撹拌せずに2〜16時間静置した。その上清をリアクターDに集めた。破壊した後廃棄するためにRaNi残渣を集めた。窒素雰囲気下で、リアクターD中の上清をセライトでろ過した。追加したMeOH(350ml)をセライトでろ過して、複合ろ液(combined filtrate)を得た。
【0048】
このろ液をリアクターEに移し、減圧下で約2倍容(ほぼ400〜450ml)に濃縮した。メタノール(600ml)を入れた。混合液を減圧下で約2倍容(ほぼ400〜450ml)に濃縮した。メタノール(600ml)を入れた。混合液を減圧下で約2倍容(ほぼ400〜450ml)に濃縮した。メタノール(600ml)を入れた。混合液を減圧下で約2倍容(ほぼ400〜450ml)に濃縮した。MeOH(1420ml)、エチルアセテート(1135ml)および水(190ml)を入れた。リアクターE内にあるこの溶液を加熱して還流した。
【0049】
リアクターFにL(+)酒石酸(163.6g)とMeOH(1135ml)を入れた。リアクターFから取り出した溶液を5〜10分かけてリアクターE内の溶液に移したところ、酒石酸塩である所望の生成物が沈殿となって生じた。この混合液を還流しながら15分間撹拌した後、約1時間かけて5〜10℃に冷却した。この混合液を、5〜10℃で約1時間撹拌した。生成物をろ過して集めた。ろ過ケーキを冷エチルアセテート:MeOH(1:2、380:760ml)で洗浄した。白色の生成物を、真空下、約40〜45℃で16時間乾燥させた。収率:82%。HPLC(280nm)による純度:99〜100面積%。MS m/z:179(M+H)
【0050】
BH−THFを用いた手順:
または、水素添加の代わりにBH−THF複合体も、式IIIの化合物のニトリルを、対応するアミンに還元する方法を調べた。1600Lのリアクターに、N雰囲気下、室温にて、式IIIの化合物(18.46kg)を含むトルエン性溶液を入れた。この溶液に、温度を15℃から25℃に保ちつつ、約133分かけて、ボラン−THF複合体の1M溶液(211kg、2.2eqv.)を加えた。得られた黄色味を帯びた溶液を、約65℃に加熱し、この温度で約1時間撹拌した。21℃に冷却した後、反応混合液を、N気流下、約80分間かけて一滴ずつ、十分に撹拌した15%NaOH水溶液に加えた。この二相性混合液をゆっくりと約50℃に加熱し、約50〜60℃にて撹拌し、約65℃に加熱し、この温度で1時間撹拌した。
【0051】
約25℃に冷却した後、アルカリ性水層をデカントして廃棄した。そして、減圧下(約0.2バールG)でTHFを蒸留するために反応混合液を約50℃に加熱した。残った水層にジクロロメタン(93L)を加え、HCl水溶液(18.8kg含水HC1が37%および22kgのDI水)を、約22℃で約30分間かけてゆっくりと加えた。そして、この反応混合液を、RTにて約2時間撹拌したままにしておき、その後、ろ過し、ジクロロメタンで2回洗浄し(2×19L)、減圧下で一晩乾燥させると、一塩酸塩である式IVの化合物が提供された。収率:72%で17.3kg。
【実施例4】
【0052】
式Iの化合物の合成
N−(2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチル−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンジルアミンを一塩酸塩として合成することの詳細が下記のスキームVに記載されている。
【化11】

【0053】
手順:
2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチルアミンの酒石酸塩(49.3g)を、トルエン(270ml)、THF(100ml)、2M NaOH(200ml)および15%NaCl(65ml)の混合液の中で撹拌した。相を分離させた。有機層を5%NaCl(200ml)で洗浄した。この有機層を減圧下で乾燥するまで濃縮し、残留物をイソプロパノール(400ml)に溶解させた。
【0054】
この反応混合液に、3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)ベンズアルデヒド(39g)とイソプロパノール(200ml)を入れた。反応混合液を60℃で2.5時間加熱した後、約55℃に冷却した。この温かい反応混合液に、イソプロパノール中のNaBH(7.4g)の懸濁液を入れた(100+50ml)。この反応混合液を55℃で2.5時間加熱した後、約15〜20℃に冷却した。2M HCl(80ml)を、約30分間かけて一滴ずつ加えた。2M HCl(140ml)を15分間かけて加えた。この混合液を15分間激しく撹拌した。この混合液を半量に濃縮した後、6M NaOH(83ml)を加えてpHを14以上にした。トルエン(400ml)を加えた。相を分離させて、有機層を、2M NaOH(200ml)、3%NHC1(200ml)および水(200ml)のそれぞれで洗浄した。有機層をろ過し、乾燥するまで濃縮した。残留物をトルエン(550ml)およびアセトニトリル(50ml)に溶解させた。6M HCl(33ml)を一滴ずつ加えた。得られた懸濁液を2〜4時間撹拌した後ろ過した。ろ過ケーキを、トルエン/アセトニトリル(9:1、2×75ml)および0.1M HCl(2×75ml)のそれぞれで洗浄した。式Iの化合物の粗HCl塩を、真空下、約45℃にて約16時間乾燥させた。
【0055】
式I HClのHCl塩の最終精製を、まず、単離されたHCl塩をアセトン(300ml)に溶解させて行った。この溶液をろ過し、約90〜120mlの容量まで濃縮した。ろ過した0.1M HCl(1900ml)を、30分間かけて一滴ずつ加えた。得られた懸濁液を20〜25℃で16時間撹拌した後、ろ過した。ろ過ケーキを、ろ過した0.1M HCl(200ml)およびろ過した水(150ml)のそれぞれで洗浄した。精製されたHCl塩を、真空下、40℃で約16時間乾燥させると、白色の固体として単離された。収率:80%。HPLC(280nm)による純度:>99.5%。MS m/z:399(M+H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIの化合物を調製する方法であって、
【化12】

(a)ジエトキシメタン、水およびギ酸の溶液を混合する工程、
(b)工程(a)の溶液を、6−フルオロインドール、ジメチルアミンおよび酢酸の混合物に加える工程、および
(c)塩基性水溶液を加える工程
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)の溶液を約75℃から約85℃の温度で混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の溶液を約2時間未満撹拌する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)の溶液を、約2〜8℃の温度にて、6−フルオロインドールおよび酢酸の混合液に加える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
塩基性水溶液がNaOH水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式IIの化合物の収率が、HPLC分析によれば90%よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式IIの化合物の収率が、HPLC分析によれば95%よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
式IIの化合物の収率が、HPLC分析によれば98%よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
式IVの化合物を調製する方法であって、
【化13】

(a)アルコール溶媒中で(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)アセトニトリル、水中のNHおよび遷移金属触媒を混合する工程、および
(b)該混合液をHで水素添加する工程
を含む方法。
【請求項10】
遷移金属触媒がRaNiである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アルコール溶媒がメタノールである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
水素添加が、約2.5バールの圧力で約16時間行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
水素添加が、約55℃から約65℃の温度で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチルアミンを精製する方法であって、
(a)2−(6−フルオロ−1H−インドール−3−イル)エチルアミンをアルコール溶媒に溶解させる工程、
(b)L(+)−酒石酸を添加する工程、および
(c)酒石酸塩を沈殿として捕集する工程
を含む方法。
【請求項15】
アルコール溶媒がメタノールである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
酢酸エチルがアルコール溶媒とともに用いられる、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515683(P2013−515683A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545093(P2012−545093)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/DK2010/050348
【国際公開番号】WO2011/076212
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】