説明

薬学的調製物および医療用製品を最終的に滅菌するための高圧滅菌法

本発明は、系、好ましくは薬学的調製物(例えば、高圧最終滅菌技術を使用する薬学的に活性な化合物の小粒子または小滴の分散物)を滅菌するためのプロセス、およびその製品を提供する。本発明は、系を滅菌するための方法を提供する。このような系は、組成物(例えば、粒子の分散物)、およびデバイス(例えば、薬学的調製物のような水溶液を含み得る容器)であり得るが、これらに限定されない。本方法は、このような系の効力を大きく消失させることのない滅菌を提供するという利点を有する。本発明はさらに、滅菌された薬学的調製物を提供する。適切な容器としては、医療用溶液を含む医療用送達デバイスを含む、本方法の下で安定である任意の容器が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、薬学的調製物(例えば、高圧最終滅菌技術を使用する薬学的に活性な化合物の小粒子または小滴の分散物)を滅菌するためのプロセスおよびそれからの製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
これまでに、治療上の効果または診断上の効果のために調製された、水溶液に対して、難溶性であるか、または不溶性である有機化合物の数は増加し続けている。このような薬物は、医療関係者によって一般的に使用される投与経路によりそれらを送達することへの課題を与える。この課題に対する1つの可能性のある解決は、不溶性の薬物候補の小粒子を、そこから、マイクロ粒子の分散物またはナノ粒子の分散物を調製することによって生成することである。このような処方物から得られる利点としては、より高い負荷、低毒性、薬物飽和溶解度の向上および/または薬物溶解速度の向上、効力の向上、および向上した薬物安定性の増強が挙げられ得る。
【0003】
このように、これまでに水ベースの系中において処方され得なかった薬物は、種々の投与の経路に適切に作製され得る。水に不溶性の薬物の小粒子分散物の調製物は、静脈内経路、経口経路、肺経路、局所的経路、鞘内経路、眼の経路、鼻腔経路、舌下経路、直腸経路、膣経路、および経皮経路を介して送達され得る。これらの分散物についての至適サイズの範囲は、一般的に、特定の経路、粒子の特徴、およびその他の要因に依存する(例えば、静脈内投与においては、約7μm未満の粒子サイズを有することが、所望される)。粒子は、このサイズ範囲で、そして凝集されないで、塞栓を生じることなく安全に毛細管を通過しなければならない(Allenら、1987;DavisおよびTaube、1978;Schroederら、1978;Yokelら、1981)。
【0004】
投与の経路および他の要因に依存して、これらの小粒子の分散物は、無菌性についての特定の要求を満たさなければならない。1つの有用な滅菌法は、121℃における、小粒子の分散物の、従来の最終高圧蒸気滅菌である。薬学的懸濁物が、常温で保存される間、その処方物中の界面活性剤の存在によって粒子の成長および/または凝集から保護されることは、周知である。しかし、これらの安定化界面活性剤の存在下でさえ、小粒子の懸濁物は、多くの場合、非常に熱に敏感であり、そして最終高圧蒸気滅菌に耐えられない。薬学的に活性な成分、界面活性剤、および薬物/界面活性剤の集合体は、121℃における滅菌サイクル全体の間、物理的安定および化学的安定の両方を維持しなければならない。最終高圧蒸気滅菌に対する小粒子の分散物の化学的な感受性(suspectibility)は、滅菌時間および滅菌温度両方の関数として知られる。化学的不安定性を削減するための方法は、一般的に、高温で短時間の滅菌プロセスに関する。この場合、熱不安定性処方物の保存および微生物の破壊は、それぞれ、化学的分解および化学的不活性化の速度の相違に基づく。このプロセスにおける重要な課題は、非常に短い曝露時間の間に、均一な温度が生成物の全体にわたって存在するように、十分に迅速な熱伝達を得ることである。
【0005】
薬物/界面活性剤集合体の物理学的安定性はまた、多くの場合、維持することが困難である。小粒子は、熱の存在下において、頻繁に凝集し、成長し、および/または分解し、最終的な分散物は、使用不可能になる。さらに、界面活性剤集合体は、不可逆的様式で、薬学的に活性な化合物から解離し得る。例えば、固体サブミクロン粒子の分散物の、凝集または融合の1つの機構は、滅菌プロセスの間の界面活性剤の曇り点を超える温度における安定化界面活性剤の析出に直接関連し得る。用語「曇り点」とは、一方は界面活性剤が豊富な相への、そして一方は界面活性剤が乏しい相とへの、等方的な界面活性剤溶液の分離をいう。このような温度において、多くの場合、その界面活性剤は、上記分子から解離し、保護されない粒子凝集および/または成長させる。従って、多くの特許(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)は、高圧蒸気滅菌の間において、粒子懸濁物を安定化させるための、イオン性および非イオン性の曇り点改変剤の使用を開示する。これらの改変剤は、界面活性剤の曇り点を121℃より上に上げ、その界面活性剤の薬物粒子からの解離を防ぎ、その後、最終滅菌の間、粒子を成長から安定化させる。
【0006】
特許文献5もまた、至適サイズの範囲が、高圧蒸気滅菌の間の、成長および不安定性を最小限にするのに最も重要であることを開示する。特許文献5は、界面活性剤で安定化された薬物粒子の少なくとも50%が150〜300nmの間の重量平均の粒子サイズを有する場合に最も高い安定性が示されることを報告する。
【0007】
従って、薬学的分野において、小粒子の分散物の最終滅菌のための新規かつ改良されたプロセスの開発が必要とされ続けており、そして本発明は、これらの必要性に取り組む。
【0008】
粒子状分散物以外の系および溶液は、多くの場合、使用前の滅菌が必要である。例としては、溶解された薬学的溶液、腎臓に適用(例えば、腹膜透析)するための溶液、および薬学的調製物の他の形態(例えば、脂肪乳剤)が挙げられる。他の例としては、使い捨ての医療用デバイス(例えば、医薬を含むバッグ(多くの場合、可塑化されたPVC製または可塑化された他のプラスチック製))、血液を含むバッグ、透析器、自動化されたデバイスにおいて使用するための系(例えば、血液分離デバイス、輸液ポンプなど)が挙げられる。このような系は、伝統的な滅菌技術(例えば、γ線滅菌、ETO滅菌、または高圧蒸気滅菌)に対して敏感であり得る。例えば、グルコースを含む溶液は、伝統的な滅菌技術の後、グルコースの分解またはグルコースの凝集を受ける。従って、滅菌された系に、妥協をほとんど伴わないか、または全く伴わない適切な滅菌を提供する改良された滅菌技術の供給についての必要性がまた存在する。
【特許文献1】米国特許第5,298,262号明細書
【特許文献2】米国特許第5,346,702号明細書
【特許文献3】米国特許第5,470,583号明細書
【特許文献4】米国特許第5,336,507号明細書
【特許文献5】米国特許第6,267,989号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、系を滅菌するための方法を提供する。このような系は、組成物(例えば、粒子の分散物)、およびデバイス(例えば、薬学的調製物のような水溶液を含み得る容器)であり得るが、これらに限定されない。本方法は、このような系の効力を大きく消失させることのない滅菌を提供するという利点を有する。本発明はさらに、滅菌された薬学的調製物を提供する。適切な容器としては、医療用溶液を含む医療用送達デバイスを含む、本方法の下で安定である任意の容器が挙げられる。
【0010】
本方法は、系を滅菌するのに十分な時間で、上記系に熱エネルギーを供給する工程および上記系に0.25MPaを超過する圧力をかける工程を包含する。好ましくは、この系は、70℃を超過する温度に達する。上記エネルギーおよび圧力を供給する工程は、少なくとも、その系を滅菌するのに十分な時間の間、同時に実施される。その後、この系は使用のために、周囲の温度または圧力に戻され得る。
【0011】
本方法は、空の容器、または多種多様な溶液のいずれかを含む容器において使用され得、その溶液としては、非経口的投与のための溶液、急性または慢性の血液透析のための溶液、急性または慢性の腹膜透析、携行式腹膜透析および自動腹膜透析のための、血液濾過溶液または血液透析濾過溶液が挙げられる。
【0012】
本方法は、グルコースを含む溶液の滅菌に、特に有用である。滅菌に用いられる、より低い温度は、より高い温度において起こるグルコースの分解を最小限にする。従って、本方法は、グルコースを含む溶液を滅菌するために使用され得、その結果、そのグルコースは、実質的に非分解を維持する。好ましくは、そのグルコースは、滅菌後に約75%以上が非分解であり、より好ましくは、そのグルコースは、約80%以上が非分解であり、さらにより好ましくは、滅菌された溶液は、その中でグルコースが、約85%より多く、または約90%より多く、またはさらにより好ましくは、約95%より多く分解されていない。
【0013】
本発明の、これらの局面および他の局面ならびにこれらの特性および他の特性は、以下の図面および添付の明細書への参照と共に議論される。
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明では、多くの異なる形態の実施形態が可能であるが、それらは図面に示され、そして本明細書中にそれらの詳細な、特定の実施形態で記載される。本開示が、本発明の原理の例示と考えられるべきであり、そして本発明を、例示された特定の実施形態に限定することを意図しないことが理解される。
【0015】
本発明は、その調製物の、有用性、安定性、および/または効力を著しく消失することなく系を滅菌するための方法を提供する。本発明は、動的な系(すなわち、安定状態から不安定状態へ移行し得る系)を滅菌する方法を提供し、その系は、その系を安定状態から不安定状態へ移行させることなく、その系を滅菌するのに十分な時間高圧に供される。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「滅菌」およびその改変物とは、哺乳動物、好ましくはヒトで使用される場合に、感染の危険を減少させるようなその系における、細菌、ウイルス、原生動物または他の生物学的微生物の、殺傷または制御を意味する。本発明の好ましい方法は、その生物学的微生物の、全てまたはほぼ全てが、殺傷されるかもしくは複製できなくなる点まで系を滅菌する。
【0017】
好ましくは、本方法は、薬学的な系を滅菌するために使用される。薬学的調製物は、当該分野において公知である多くの技術、および開発される多くの技術によって調製され得る。一般的に、本方法は、系を高圧滅菌に供する工程を提供する。本方法は、小粒子の分散物の高圧滅菌において好まれる。本方法はさらに、滅菌された薬学的分散物を提供する。
【0018】
本発明の高圧滅菌技術は、薬学的に活性な化合物の顕著な分解、上記界面活性剤の分解を生じることなく、または上記薬物/界面活性剤集合体に対する変化を生じることなく、小粒子の分散物の滅菌を可能にする。さらに、熱は、圧縮工程の間に、迅速な断熱加熱によってその分散物全体に即座に伝達される。高圧滅菌技術が、多くの容器構造中の、種々の薬学的化合物を含む多くの小粒子の分散物との使用に適していることが理解される。
【0019】
一般的に、本方法は、薬学的調製物を高圧滅菌に供する工程を提供する。薬学的調製物は、当該分野において公知である多くの技術、および開発される多くの技術によって調製され得る。その高圧滅菌技術は、多くの異なる形態(乾燥した形態または粉末形態、液体形態、ガス形態、あるいは水性媒体中または有機媒体中の小粒子もしくは小滴として分散されている薬学的に有効な化合物を含む)にある処方物を滅菌するのに適している。好ましくは、滅菌されるべき系は、いくらかの水を含む。水の存在は、活性な微生物の負荷の減少を得ることにおいて、特別な有効性を与えることが示されている。界面活性剤を使用して、薬学的に活性な化合物を、凝集およびサイズの変化から安定化させることは、周知である。その界面活性剤は、当該分野で周知である多くの手段の1つにおいて、その薬学的に活性な化合物に結合し得る。本発明の高圧滅菌技術は、その薬学的に活性な化合物の分解を生じることもなくその薬学的に活性な化合物からの、界面活性剤の顕著な解離を生じない滅菌を可能にする。本発明の方法および製品は、化学的な曇り点改変剤の使用を必要としない。用語「曇り点」とは、その調製物の物理的特性における変化(例えば、温度もしくはpHまたは他の物理的特性における変化)が、その界面活性剤をその薬学的調製物から解離させる場合の、薬学的調製物の濁度上昇をいう。
【0020】
上記高圧滅菌技術が、多くの有機化合物との使用に適していることが企図される。
【0021】
(I.薬学的に活性な化合物)
本発明の方法は、一般的に、薬学的調製物の滅菌に適す。本発明の好ましい方法において、薬学的に活性な成分は、その成分が水溶液中の分散された疎水性領域(例えば、界面活性剤が集合した疎水相、シクロデキストリン空洞、油滴)に結合するような成分である。薬学的に活性な化合物は、治療剤、腎治療生成物、診断剤、化粧品、栄養補給剤、および農薬から選択され得る。
【0022】
薬学的活性剤は、以下:鎮痛薬、麻酔薬、中枢神経興奮薬、アドレナリン作用剤、抗アドレナリン遮断剤、抗アドレナリン剤、アドレノコルチコイド、アドレナリン様作動剤、抗コリン作用剤、抗コリンエステラーゼ、鎮痙薬(anticonvulsant)、アルキル化剤、アルカロイド、アロステリックインヒビター、タンパク同化ステロイド、食欲抑制物、制酸薬、下痢止め薬、解毒剤、葉酸代謝拮抗薬、解熱薬、抗リウマチ剤、精神治療薬、神経遮断薬、抗炎症剤、抗寄生虫剤、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝固薬、抗鬱薬、抗糖尿病剤、抗痙攣薬(antiepileptic)、抗真菌剤、抗ヒスタミン薬、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗マラリア薬、防腐薬、抗腫瘍剤、抗原虫剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安性鎮静剤、収れん薬、β−アドレナリン作用性レセプター遮断剤、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断用剤、画像診断用剤、利尿薬、ドパミン作用因子、止血剤、血液学的因子、ヘモグロビン修飾因子、ホルモン、催眠薬、免疫学的因子(immuriological agent)、抗高脂血症剤(antihyperlipidemic)および他の脂質を調節する薬剤、ムスカリン作用剤、筋弛緩薬、副交感神経作用因子、副甲状腺のカルシトニン、プロスタグランジン、放射性医薬品、鎮静剤、性ホルモン、抗アレルギー剤、興奮薬、交感神経作用因子、甲状腺剤、血管拡張薬、ワクチン、ビタミン、およびキサンチンのような多くの公知の分類より選択され得るが、これらに限定されない。抗腫瘍剤、または抗癌剤としては、パクリタキセルおよびその誘導体化合物、ならびにアルカロイド、代謝拮抗剤、酵素インヒビター、アルキル化剤および抗生物質からなる群より選択される他の抗腫瘍剤が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤はまた、生物学的(タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、および核酸が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。そのタンパク質は、抗体であり得、それは、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。
【0023】
診断用剤としては、X線造影剤および造影剤が挙げられる。X線造影剤の例としては、ジアトラゾ酸(diatrazoic acid)のエチルエステル(EEDA)としても公知であるWIN−8883(エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート)、WIN 67722(すなわち、6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート)、エチル−2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)ブチラート(WIN 16318)、エチルジアトリゾキシアセテート(ethyl diatrizoxyacetate)(WIN 12901)、エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)プロピナート(WIN 16923)、N−エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセトアミド(WIN 65312)、イソプロピル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセトアミド(WIN 12855)、ジエチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)マロネート(WIN 67721)、エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)フェニルアセテート(WIN 67585)、プロパン二酸,[[3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,5−トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1−メチル)エステル(WIN 68165)、および安息香酸,3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−4−(エチル−3−エトキシ−2−ブテノエート)エステル(WIN 68209)が挙げられる。好ましい造影剤としては、比較的に素早く生理学的条件下で崩壊し、従って、炎症応答に関連する任意の粒子を最小限にすると予測されるものが挙げられる。崩壊は、酵素的加水分解、生理学的なpHにおけるカルボン酸の可溶化、または他の機構によって生じ得る。従って、難溶性のヨウ素標識したカルボン酸(例えば、ヨージパミド、ジアトリゾ酸(diatrizoic acid)およびメトリゾ酸(metrizoic acid))、ならびに加水分解に対して不安定なヨウ素標識した化学種(例えば、WIN 67721、WIN 12901、WIN 68165、およびWIN 68209など)が、好まれ得る。
【0024】
他の造影剤としては、ガドリニウムキレートのような磁気共鳴映像補助剤である粒子状調製物、または他の常磁性造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例は、ガドペント酸ジメグルミン(Magnevist(登録商標))およびガドテリドール(Prohance(登録商標))である。
【0025】
治療剤および診断用剤の分類についての記述ならびに各分類内の化学種の一覧は、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,第29版,The Pharmaceutical Press,London,1989に見出され得る(これは、参考として本明細書に援用され、かつ本明細書の一部をなす)。治療剤および診断用剤は、市販されており、そして/または当該分野で公知の技術によって調製され得る。
【0026】
腎治療剤としては、持続的な携行式透析、自動腹膜透析および血液透析のための溶液が挙げられる。
【0027】
化粧品用剤は、化粧品の活性を有し得る任意の活性成分である。これらの活性成分の例は、特に、皮膚軟化剤、湿潤剤、フリーラジカル阻害剤、抗炎症剤、ビタミン、脱色素剤、抗座瘡剤、抗脂漏剤、角質溶解剤、痩身剤、皮膚着色剤、遮光剤、および、とりわけ、リノール酸、レチノール、レチン酸、アスコルビン酸アルキルエステル、ポリ不飽和脂肪酸、ニコチンのエステル、ニコチン酸トコフェロール、米、大豆またはシアバタの不けん化物、セラミド、グリコール酸のようなヒドロキシ酸、セレン誘導体、抗酸化剤、β−カロテン、γ−オリザノール、ステアリルグリセラート(stearyl glycerate)であり得る。化粧品は、市販されており、そして/または当該分野で公知の技術によって調製され得る。
【0028】
本発明の実施における使用が企図される栄養補給剤の例としては、タンパク質、炭水化物、水溶性ビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンB群など)、脂溶性ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど)、およびハーブエキスが挙げられるが、これらに限定されない。栄養補給剤は、市販されており、そして/または当該分野で公知の技術によって調製され得る。
【0029】
用語「農薬」は、除草剤、殺虫剤、ダニ駆除剤、殺線虫剤、寄生生物撲滅薬、殺真菌剤を包含することが理解される。本発明における農薬を分類する化合物の例は、尿素、トリアジン、トリアゾール、カルバメート、リン酸エステル、ジニトロアニリン、モルホリン、アシルアラニン、ピレスロイド、ベンジリン酸(benzilic acid)エステル、ジフェニルエーテル、および多環式のハロゲン化炭水化物に属し得、それらを含み得る。これらの各分類における農薬の特定の例は、Pesticide Manual,第9版,British Crop Protection Councilに網羅される。その農薬は、市販されており、そして/または当該分野で公知の技術によって調製され得る。
【0030】
好ましくは、薬学的に活性な化合物は、難溶性である。「難溶性」の意味するところは、約10mg/mL未満、そして好ましくは、1mg/mL未満の、水に対する化合物の溶解度である。これらの難溶性薬剤は、これらの薬剤を水性媒体中に処方する場合の選択肢が限定されるので、水性懸濁液調製物に、最も適している。
【0031】
本発明はまた、特定の場合において水に溶ける薬学的に活性な化合物と共に実施され得、それは、これらの化合物を固体の疎水性分散相(例えば、ポリ乳酸−ポリグリコール酸重合体、または固体脂質のナノ粒子)中に取り込むことによってか、またはこれらの化合物を、上記薬学的化合物へ浸透できない界面活性剤集合体に取り囲まれた中に取り込むことによって、実施され得る。界面活性剤集合体の例としては、小胞およびミセルが挙げられるが、これらに限定されない。水性薬学的因子としては、単純な有機化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクオチド、および炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
(II.分散物の粒子サイズおよび投与の経路)
本発明の薬学的因子は、粒子形態である(すなわち、溶媒中に溶解されない)場合、その粒子は、動的光散乱法(例えば、画像相関分光法(photocorrelation spectroscopy)、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、多角度レーザー光散乱(MALLS)、光掩蔽(light obscuration)法(例えば、Coulter法)、レオロジー、または顕微鏡(光学もしくは電子))によって測定される場合、一般に約100μm未満の平均有効粒子サイズを有する。しかし、その粒子は、広い範囲のサイズ(例えば、約100μm〜約10nm、約10μm〜約10nm、約2μm〜約10nm、約1μm〜約10nm、約400nm〜約50nm、約200nm〜約50nm、もしくは任意の範囲、またはそれらの範囲の組み合わせ)で調製され得る。好ましい平均有効粒子サイズは、意図された投与経路、処方物、溶解度、化合物の毒性およびバイオアベイラビリティーのような要因に依存する。
【0033】
非経口的投与に適合させるために、上記粒子は、好ましくは約7μm未満、そしてより好ましくは約2μm未満、もしくは任意の範囲、またはそれらの範囲の組み合わせの平均有効粒子サイズを有する。非経口投与としては、静脈内注入、動脈内注入、鞘内注入、腹腔内注入、眼内注入、関節内注入、硬膜内注入、心室内注入、心膜内注入、筋肉内注入、皮内注入または皮下注入が挙げられる。
【0034】
経口投薬形態における粒子サイズは、2μmを超えるものであり得る。その粒子が、十分なバイオアベイラビリティーおよび経口投薬形態の他の特徴を有する場合、その粒子は、約100μmまでの範囲のサイズであり得る。経口投薬形態としては、錠剤、カプセル、カプレット、ソフトゲルカプセルおよびハードゲルカプセル、または経口投与によって薬物を送達するための他の送達ビヒクルが挙げられる。
【0035】
本発明はさらに、肺への投与に適した形態で、薬学的に活性な化合物の粒子を提供するのに適している。肺への投薬形態のための粒子サイズは、500nmを超過し得、そして代表的に約10μm未満であり得る。懸濁物における粒子は、エアロゾル化され得、そして肺への投与のために、ネブライザーによって投与され得る。あるいは、その粒子は、その懸濁物から液相を除去する工程の後、ドライパウダー吸入器によってドライパウダーとして投与され得るか、またはドライパウダーは、定量噴霧式吸入器による投与のために非水系の噴霧剤中に再懸濁され得る。適切な噴霧剤の例は、ヒドロフルオロカーボン(HFC)(例えば、HFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)およびHFC−227ea(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン))である。クロロフルオロカーボン(CFC)とは異なり、HFCは、オゾン層破壊能をほとんど示さないか、または全く示さない。
【0036】
本研究者らは、上述の範囲にあるサイズの、有機化合物の粒子および液滴を、一括して小粒子という。
【0037】
送達の他の経路(経鼻、局所的、眼、経鼻、舌下、直腸、膣、経皮など)のための投与形態もまた、本発明から作成される粒子から処方され得る。
【0038】
溶液の他の形態は、本発明によって滅菌され得る。このような溶液の例としては、非経口的投与のための薬学的調製物、および腎臓透析のための溶液(例えば、血液透析溶液および腹膜透析溶液)が挙げられる。
【0039】
(III.小粒子の分散物の調製)
薬学的に活性な化合物の小粒子の薬学的調製物を調製するための多くの技術が存在する。以下で議論される滅菌技術は、このような薬学的調製物を滅菌するのに適している。包括的ではないが、代表的に、薬学的に活性な化合物の小さい分子を提供するための方法論の例は、次で簡単に議論される。
【0040】
(A.小粒子の分散物を形成するためのエネルギー付加技術)
一般的に、エネルギー付加技術を使用して小粒子の分散物を調製する方法は、薬物と呼ばれることもある薬学的に活性な化合物をバルク形態で、適切なビヒクル(例えば、水もしくは1つ以上の後述される界面活性剤を含む水ベースの溶液、または前懸濁物(presuspension)を形成するための、薬学的化合物がほとんど溶解しない他の液体)に付加する工程を含み、に対して大きすぎる形態である。エネルギーは、粒子分散物を形成するために前懸濁物に付加される。エネルギーは、機械的研削、パールミル粉砕(pearl milling)、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、流体エネルギーミル粉砕または湿式研削によって付加される。このような技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,145,684号に開示される。
【0041】
エネルギー付加技術はさらに、前懸濁物を、キャビテーション、剪断または(マイクロフルイダイザー(microfluidizer)を利用する)衝撃力を含む、高剪断条件に供する工程を含む。本発明はさらに、ピストンギャップ(piston gap)ホモジナイザーまたは対向流式(counter current flow)ホモジナイザー(例えば、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,091,188号に開示される)を使用して、前懸濁物にエネルギーを付加する工程を企図する。適切なピストンギャップホモジナイザーは、AvestinによるEMULSIFLEX、およびSpectronic Instrumentsによって販売されるFrench Pressure Cellsの製品名で市販される。適切なマイクロフルイダイザーは、Microfluidics Corp.より入手可能である。
【0042】
エネルギーを付加する工程はまた、超音波処理技術を使用して達成され得る。超音波処理の工程は、任意の適切な超音波処理デバイス(例えば、Branson Model S−450AまたはCole−Parmer 500/750 Watt Model)を用いて実施され得る。このようなデバイスは、その業界において周知である。代表的に、その超音波処理デバイスは、超音波ホーンまたは超音波プローブを有し、それらは、溶液中に超音波エネルギーを放出するために、その前懸濁物中に挿入される。本発明の好ましい形態において、その超音波処理をするデバイスは、約1kHz〜約90kHzの周波数、そしてより好ましくは約20kHz〜約40kHzの周波数、もしくは任意の範囲またはそれらの範囲の組み合わせにおいて操作される。プローブの大きさは変化し得るが、好ましくは明確な大きさ(例えば、1/2インチもしくは1/4インチなど)である。
【0043】
使用されるエネルギー付加技術にかかわらず、小粒子の分散物は、使用の前に、適切な滅菌保証レベルを満たす必要がある。滅菌は、以下に記載される高圧滅菌技術を使用して達成され得る。
【0044】
(B.サブミクロンサイズの粒子の分散物を調製するための沈殿方法)
小粒子の分散物はまた、周知の沈殿技術によって調製され得る。以下は固体のサブミクロン分散物を生成するために使用する沈殿技術である。
【0045】
(微小沈殿法(microprecipitation method))
微小沈殿法の1つの例は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,780,062号に開示される。米国特許第5,780,062号は、以下:(i)水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解する工程;(ii)水性の第2の溶媒中で、ポリマーおよび両親媒性物質の溶液を調製する工程であって、そして第2の溶媒中で、この有機化合物は、実質的に不溶性であり、それによってポリマー/両親媒性物質複合体が形成される、工程;および(iii)上記有機化合物および上記ポリマー/両親媒性物質複合体の凝集体の沈殿を生じるために、工程(i)および工程(ii)に由来する溶液を混合する工程を含む、有機化合物沈殿プロセスを開示する。
【0046】
適切な沈殿プロセスの別の例は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、同時係属中かつ同一出願人の、米国特許出願番号09/874,499;米国特許出願番号09/874,799;米国出願番号09/874,637;および米国出願番号10/021,692に開示される。その開示されたプロセスは、以下の工程を含む:(1)第1の溶液を生成するために、水混和性の第1の有機溶媒中に有機化合物を溶解する工程;(2)前懸濁物を生成するために、上記第1の溶液と、上記有機化合物を沈殿する、第2の溶液または水とを混合する工程;および(3)小粒子の分散物を得るために、高剪断の混合または加熱の形態で、前懸濁物にエネルギーを付加する工程。後述される1つ以上の任意の表面修飾因子は、第1の有機溶媒または第2の水溶液に添加され得る。
【0047】
(エマルジョン沈殿方法)
1つの適切なエマルジョン沈殿技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、同時係属中かつ同一出願人の、米国特許出願番号09/964,273に開示される。このアプローチにおいて、そのプロセスは、以下の工程を含む:(1)有機相および水相を有する多相系(multiphase system)を提供し、その有機相が、その中に薬学的に活性な化合物を有する、工程;(2)その系を超音波処理して有機相の部分を揮発させ、その水相中でその化合物を沈殿させて小粒子の分散物を形成する、工程。多相系を提供する工程は、以下の工程を含む:(1)水混和性の溶媒と、薬学的に活性な化合物とを混合して、有機溶液を規定する工程;(2)1つ以上の界面活性化合物を用いて水ベースの溶液を調製する工程;および(3)多相系を形成するために、その有機溶液とその水溶液とを混合する工程。上記有機相および水相を混合する工程としては、ピストンギャップホモジナイザーの使用、コロイドミル(colloidal mill)の使用、高速攪拌装置の使用、押出成形装置の使用、手動の攪拌装置もしくは手動の振盪装置の使用、マイクロフルイダイザーの使用、または高剪断条件を提供する他の装置もしくは技術の使用が挙げられ得る。粗製エマルジョンは、水中に約1μm未満の直径のサイズの油滴を有する。粗製エマルジョンは、超音波処理されて、より細かい(finer)エマルジョンを規定し、そして最終的に小粒子の分散物を提供する。
【0048】
小粒子の分散物を調製するための別のアプローチは、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、同時係属中かつ同一出願人の、米国特許出願番号10/183,035に開示される。そのプロセスは、以下の工程を含む:(1)有機相および水相を有する多相系の粗製分散物を提供する工程であり、その有機相が、その中に薬学的化合物を有する、工程;(2)微細な分散物を形成するために、粗製分散物にエネルギーを与える工程;(3)上記微細な分散物を凍結する工程;および(4)薬学的化合物の小粒子を得るために、上記微細な分散物を凍結乾燥する工程。その小粒子は、後述の技術によって滅菌され得るか、またはその小粒子は、水性媒体中に再編成得、そして滅菌され得る。
【0049】
多相系を提供する工程は、以下の工程を含む:(1)水混和性の溶媒と、有機溶液を規定する薬学的に有効な化合物とを混合する工程;(2)1つ以上の界面活性化合物を用いて水ベースの溶液を調製する工程;および(3)多相系を形成するためにその有機溶液と水溶液とを混合する工程。その有機相および水相を混合する工程としては、ピストンギャップホモジナイザーの使用、コロイドミルの使用、高速攪拌装置の使用、押出成形装置の使用、手動の攪拌装置または手動の振盪装置の使用、マイクロフルイダイザーの使用、または高剪断条件を提供する他の装置もしくは技術の使用が挙げられる。
【0050】
(溶媒貧溶媒沈殿(Solvent Anti−solvent Precipitation))
小粒子の分散物はまた、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許出願第5,118,528号および米国特許出願第5,100,591号に開示される溶媒貧溶媒沈殿技術を使用して調製され得る。そのプロセスは、以下の工程を含む:(1)溶媒または1つ以上の界面活性剤が添加され得る溶媒の混合物中で、生物学的に活性物質の液相を調製する工程;(2)非溶媒または非溶媒の混合物の第2の液相を調製する工程であり、その非溶媒が、上記物質のために、溶媒または溶媒の混合物と混和できる、工程;(3)(1)の溶液と(2)の溶液を、攪拌しながら一緒にする工程;および、(4)小粒子の分散物を生成するために望ましくない溶媒を除去する工程。
【0051】
(転相沈殿(Phase Inversion Precipitation))
小粒子の分散物は、各々が本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第6,235,224号、米国特許第6,143,211号および米国特許出願2001/0042932に開示されるような転相沈殿を使用して形成され得る。転相は、連続相である溶媒系中に溶解されたポリマーが、そのポリマーが連続相となる固体高分子のネットワークへと反転する物理的現象を記述するのに使用される用語である。転相を誘導する1つの方法は、その連続相への非溶媒の添加によるものである。そのポリマーは、単一の相から不安定な2相混合物(ポリマーが豊富な分画およびポリマーが少ない分画)への転移を受ける。ポリマーが豊富な相中の非溶媒のミセルの液滴は、核生成部位として働き、そしてポリマーによってコーティングされる。米国特許第6,235,224号は、特定の条件下でのポリマー溶液の転相が、ナノ粒子を含む分離した微粒子の自発的な形成を引き起こし得ることを開示する。米国特許第6,235,224号は、溶媒中にポリマーを溶解または分散する工程を開示する。薬学的因子もまた、その溶媒中に溶解されるか、または分散される。上記ポリマー、上記因子および上記溶媒は、一緒になって連続相を有する混合物を形成し、その溶媒は、その連続相である。その後、その混合物は、少なくとも10倍過剰の混和性の非溶媒中に導入されて、10nmと10μmの間の平均粒子サイズを有するその因子のマイクロカプセル化された微粒子の自発的な形成を生じる。その粒子サイズは、溶媒:非溶媒の体積比、ポリマー濃度、ポリマー−溶媒溶液の粘度、ポリマーの分子量、および溶媒と非溶媒の組み合わせの特徴に影響される。
【0052】
(pHシフト沈殿(pH Shift Precipitation)
小粒子の分散物は、pHシフト沈殿技術によって形成され得る。このような技術は、代表的に、薬物が溶解できるpHを有する溶液中にその薬物を溶解する工程と、その工程につづく、薬物がもはや溶解できないpHにそのpHを変化させる工程を含む。そのpHは、その特定の薬学的化合物に依存して、酸性または塩基性であり得る。その後、その溶液は、小粒子の分散物を形成するために中和される。1つの適切なpHシフト沈殿プロセスは、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,665,331号に開示される。そのプロセスは、その薬学的因子を、結晶成長改変剤(CGM)と一緒にアルカリ溶液中に溶解する工程、およびその後に、適切な表面改変性表面活性剤の存在下で、酸を用いて上記溶液を中和して、上記薬学的因子の小粒子の分散物を形成する工程を含む。その沈殿工程には、その後に、分散物のダイアフィルトレーションおよび精製の工程が続き得、その後、その分散物の濃度は、好ましいレベルに調整され得る。
【0053】
pHシフト沈殿法の他の例は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,716,642号、米国特許第5,662,883号、米国特許第5,560,932号、および米国特許第4,608,278号に開示される。
【0054】
(注入沈殿法(Infusion Precipitation Method))
小粒子の分散物を形成するための適切な注入沈殿技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第4,997,454号および米国特許第4,826,689号に開示される。最初に、適切な固体化合物は、溶媒混合物を形成するために適切な有機溶媒中に溶解される。その後、有機溶媒と混和できる沈殿性の非溶媒は、約−10℃と約100℃との間の温度において、そして50mlの容量に対して、1分あたり約0.01ml〜約1000mlの注入速度でその溶媒混合物中に注入され、10μm未満の実質的に均一な平均直径を有する、その化合物の沈殿した非凝集固体粒子の懸濁物を生成する。沈殿性の非溶媒を注入された溶液の攪拌(agitation)(例えば、攪拌(stirring)による)は、好ましい。その非溶媒は、その粒子を凝集に対して安定化させるための界面活性剤を含み得る。その後、その粒子は、その溶媒から分離される。その固体化合物および好ましい粒子サイズに依存して、温度のパラメータ、溶媒に対する非溶媒の比、注入速度、攪拌速度、および容量は、本発明に従って変えられ得る。その粒子サイズは、非溶媒容量:溶媒容量の比および注入の温度に比例し、そして注入速度および攪拌速度に反比例する。その化合物の相対的な溶解度および好ましい懸濁ビヒクルに依存して、その沈殿する非溶媒は、水性または非水性であり得る
(温度シフト沈殿(Temperature Shift Precipitation))
温度シフト沈殿技術もまた、小粒子の分散物を形成するために使用され得る。この技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,188,837号に開示される。本発明の実施形態において、リポスフェア(lipospher)は、以下の工程によって調製される:(1)物質(例えば、送達されるべき薬物)を、融解したビヒクル中に融解または溶解して、送達されるべき物質の液体を形成する工程;(2)その物質またはビヒクルの融解温度より高い温度において、リン脂質を水性媒体と一緒に、その融解された物質または融解されたビヒクルに添加する工程;(3)そのビヒクルの融解温度を上回る温度において、均一で微細な調製物が得られるまで、その懸濁物を混合する工程;そしてその後(4)その調製物を、室温またはそれ以下の温度まで素早く冷却する工程。
【0055】
(溶媒蒸発沈殿(Solvent Evaporation Precipitation))
溶媒蒸発沈殿技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第4,973,465号に開示される。米国特許第4,973,465号は、以下の工程を含む、微小結晶を調製するための方法を開示する:(1)一般的な有機溶媒または溶媒の組み合わせの中に溶解された、薬学的組成物およびリン脂質の溶液を提供する工程;(2)溶媒を蒸発させる工程;および(3)水性溶液中の溶媒または溶媒の組み合わせの蒸発によって得られたフィルムを激しく攪拌することによって懸濁して、小粒子の分散物を形成する工程。その溶媒は、溶液にエネルギーを付加して十分な量の溶媒を蒸発させることによって除去されて、その化合物の沈殿を生じ得る。その溶媒はまた、他の周知の技術(例えば、上記溶液を真空に適用する工程、または上記溶液に窒素を吹き込む工程)によって除去され得る。
【0056】
(反応沈殿(Reaction Precipitation))
反応沈殿は、溶液を形成するために、薬学的化合物を適切な溶媒中に溶解する工程を含む。その化合物は、その溶媒中のその化合物の飽和点か、またはそれ以下における量で添加されるべきである。その化合物は、化学的因子と共に反応することによってか、またはエネルギー(例えば、熱または紫外光など)を付加する工程に対する改変によって改変され、その改変された化合物は、その溶媒に対して、より低い溶解度を有し、そしてその溶液から沈殿して小粒子を形成する。
【0057】
(圧縮流体沈殿(Compressed Fluid Precipitation))
圧縮流体による沈殿のための適切な技術は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、JohnstonのWO97/14407に開示される。その方法は、溶液を形成するために、溶媒中に水に不溶性の薬物を溶解する工程を含む。その後、その溶液は、ガス、液体または超臨界流体であり得る圧縮流体中に噴霧される。溶媒中の溶質の溶液に対する圧縮流体の添加は、その溶質を、過飽和状態に到達させるか、または近づけ、そして微細な粒子として析出させる。この場合、その圧縮流体は、その薬物が溶解される溶媒の凝集エネルギー密度を低下させる貧溶媒として作用する。
【0058】
あるいは、上記薬物は、上記圧縮流体中に溶解され得、その後その圧縮流体は、水相中に噴霧される。その圧縮流体の急速な膨張は、その流体の溶媒力を減少し、次いで、その水相中にその溶質を小粒子として析出させる。この場合、その圧縮流体は、溶媒として作用する。
【0059】
凝集に対して粒子を安定化させるために、表面修飾因子(例えば、界面活性剤)が、この技術に含まれる。
【0060】
小粒子の分散物を調製するための、他の多くの方法論が存在する。本発明は、その調製物の効力に大きく影響することなく、このような分散物を最終的に滅菌するための方法論を提供する。
【0061】
(IV.小粒子の分散物の型)
小粒子の分散物は、水溶液系(例えば、界面活性剤集合体、シクロデキストリン空洞、油滴)中の疎水性領域および上記薬学的に活性な化合物、または薬学的に活性な場合、疎水性領域自体から形成され得る。その疎水性領域は、その小粒子の分散物における多くの異なる機構によって、その薬学的に活性な化合物と結合し得る。例えば、その疎水性領域は、共有結合およびイオン結合、誘導された双極子間相互作用(dipole−dipole interaction)双極子間相互作用(dipole−dipole interaction)またはファンデルワールス力を介して、その薬学的に活性な化合物と結合し得る。さらに、その薬学的に活性な化合物は、その疎水性領域中に封入され得る。
【0062】
(A.疎水性領域)
(界面活性剤集合体)
疎水性領域は、水溶液中の、単一の(amphiphilic−type)界面活性剤(例えば、リン脂質)または界面活性剤の組み合わせに由来して、水溶液中に形成されることが知られている。界面活性剤集合体としては、ミセル(図1)、逆ミセル(図2)、混合ミセル、逆混合ミセル(reversed mixed micelle)、ラメラ形態(図3)、逆ラメラ形態(reversed lamellar form)、六方相(図4)、逆六方相(reversed hexagonal phase)、立方相(図5)、逆立方相(reversed cubic phase)、L3スポンジ相(L3 sponge phase)、および中間相が挙げられる。順相の形成または逆相の形成は、界面活性剤の型、界面活性剤の濃度、圧力、および温度に依存する。コキレート(cochelate)もまた、この分類に収まる。
【0063】
図1は、周辺に互いに分離した多くの両親媒性分子12を有し、かつ両親媒性分子の、コア16を特徴付ける内部の軸方向に伸びる非極性で疎水性である尾14、コアから放射状に遠ざかり、表面19を規定する極性親水性の頭18を有するミセル10を示す。
【0064】
図2は、極性の頭18が、そのコアに向かって内部に伸び、そしてその非極性の尾がコアから遠ざかって外に伸びることを除いては、図1のミセルと、全ての点において同じである、逆ミセル20を示す。従って、各反転形態についての図は、省略した。
【0065】
図3は、ラメラ相30を示す。ラメラ相30は、積み重なる2重層構造32を形成する間隔を空けた両親媒性分子群12を有する。その2重層構造32の間の領域と、疎水性の尾の間の領域は、柵状層(pallisade layer)34および柵状層36として知られる。その柵状層34は、疎水性であり、そして柵状層36は、親水性(bydrophylic)である。
【0066】
図4は、六方相40を示す。その六方相は、チューブ様構造42を形成する互いの上に、積み重なった一連の通常のミセル(図1)として想定され得る。
【0067】
図5は、立方相50の1つの例を示す。7つの立方相が、これまでに同定され、そしてその構造が暫定的に記載される構造である。両連続性の立方相50は、一連の2重層構造32を有し、構造32は、水性孔(aqueous pore)52を与える交差するチューブの相互に連結するネットワークを規定する。
【0068】
L3相は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第5,531,925号に開示される。L3相は、立方相に非常に類似しているが、立方相の長距離にわたる秩序を欠く。
【0069】
(錯化剤)
疎水性領域はまた、錯化剤(例えば、シクロデキストリン)の添加によって、水溶液中に形成され得る。シクロデキストリンはまた、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす米国特許第4,764,604号に開示されるように、水溶液中で、不溶性の薬物の化合物と相互作用させるために使用される。
【0070】
(2相分散物)
水系中の疎水性領域はまた、多くの異性な2相系から形成され得、その2相系は、エマルジョン、微小エマルジョン、懸濁物、ならびに他のものを含む。
【0071】
前述のように、本発明は、薬学的に活性な化合物が、疎水性領域と結合して小粒子の分散物を形成するか、または疎水性領域が薬学的に活性である場合には、それ自体に由来する処方物のいずれかとによって実施され得る。その薬学的に活性な化合物は、上述した多くの機構によって、これらの型の処方物のいずれかの疎水性領域に取り込まれ得る。これらの系の多くは、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす「Surfactants and Polymers in Aqueous Solution」2003,John Wiley and Sonsに詳細に記載される。
【0072】
(V.界面活性剤)
特に重要かつ安全な両親媒性界面活性剤の分類としては、リン脂質が挙げられる。リン脂質は、代表的に、脂肪酸に結合したグリセロールエステルの2つのヒドロキシル基(極性の尾を特徴付ける)を有し、そして1つの末端のヒドロキシル基、リン酸に結合されているトリグリセロール誘導体である。そのリン酸も同様に、別の化合物(例えば、コリン、エタノールアミン、エチルアミン、グリセロール、またはL−セリン)に結合され、極性の頭の基を特徴付ける。適切なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾリン脂質、卵のリン脂質もしくは大豆のリン脂質、またはそれらの組み合わせが挙げられる。そのリン脂質は、塩を付加されても脱塩されてもよいし、水素化されても部分的に水素化されてもよいし、または天然、半合成のもの、合成のものであってよい。
【0073】
本発明の適切な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、または生物学的表面活性分子が挙げられる。適切なアニオン性界面活性剤および適切な両性イオン性界面活性剤としては、ラウリン酸カリウム、ラルリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、硫酸アルキルポリオキシエチレン、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート、グリセリルエステル、カルボキシメチルセルロールナトリウム、コール酸および他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)、ならびにそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなど)が挙げられるが、これらに限定されない。適切なカチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム)、アシルカルニチンの塩酸塩、またはアルキルピリミジンのハロゲン化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(Myrj)、ソルビタンエステル(Span)、モノステアリン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー)、ポロキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、デンプンまたはデンプン誘導体を含むポリサッカライド(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES))、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。本発明の1つの好ましい形態において、その非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマーであり、好ましくは、プロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、ときにはPLURONIC(登録商標)とも称される、商品名POLPXAMERで販売され、そしてBASF、Spectrum Chemical、およびRugerを含むいくつかの供給業者によって販売される。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルの間には、短いアルキル鎖を有するものが含まれる。このような界面活性剤の1つの例は、SOLUTOL(登録商標)HS 15(BASF Aktiengesellschaftによって製造されるポリエチレン−660−ヒドロキシステアレート)である。
【0075】
生物学的表面活性分子としては、アルブミン、カゼイン、ヘパリン、ヒルジン、または他の適切なタンパク質のような分子が挙げられる。
【0076】
経口投与形態のために、以下の賦形剤の1つ以上が、利用され得る:ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のTweensTM)、ポリエチレングリコール、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状(colloidol)の二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、およびポリビニルピロリドン(PVP)。これらの賦形剤のほとんどは、the American Pharmaceutical AssociationおよびThe Pharmaceutical Society of Great Britain,the Pharmaceutical Press,1986によって共同出版された、the Handbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に記載される。その表面修飾因子は、市販されており、そして/または当該分野で公知の技術によって調製され得る。2つ以上の表面修飾因子が、組み合わせて使用され得る。
【0077】
(VI.小粒子の分散物に対する高圧の安定化効果)
高圧は、多くの異なる機構によって小粒子の系を安定化し得、その機構は、本来、熱力学的(反応の量)または動力学的(活性化の量)のいずれかであり得る。さらに、高圧は、滅菌サイクル全体の間に、薬学的に活性な成分、界面活性剤、および/もしくは薬物/疎水性領域の会合性を、化学的ならびに/または物理的に安定化し得る。熱力学的安定化の例は、ポリオキシエチレン界面活性剤の曇り点に対する高圧の効果である。これらの系について、曇り点は、水素結合の増強および疎水結合の崩壊に起因する圧縮によって上昇することが、知られる。従って、曇り点の降下によって高圧蒸気滅菌の間において不安定である小粒子の分散物は、より高い圧力にて最終滅菌を行うことによって安定化され得、それによって、その界面活性剤の系の曇り点は、121℃より大きくなる。
【0078】
(実施例1:イトラコナゾールナノ懸濁物の高圧滅菌)
0.1%のポロキサマー188、0.1%のデオキシコール酸、および2.2%のグリセリンを含む1%のイトラコナゾールナノ懸濁物を微小沈殿手順とホモジネーション手順の組み合わせ(米国特許出願2002/0127278 A1)を用いて製造した。静的光散乱(static light scattering)(Horiba LA−920)によって測定したときの、最初の粒子サイズ分布を図7に示した。
【0079】
ポジティブコントロールとして、そのナノ懸濁物の5mlのサンプルを、最初に121℃で15分間の通常の高圧滅菌サイクルを用いて滅菌した。これにより、図8の光散乱データに示されるように、その粒子の顕著な凝集が生じた。この種の凝集は、121℃未満の曇り点を有する界面活性剤(Poloxamer 188の曇り点=約110℃)と共に滅菌されたナノ懸濁物において代表的である。
【0080】
対照的に、同じ懸濁物を、図9に示す高圧滅菌サイクルを使用して滅菌した場合に生じた1%イトラコナゾールナノ懸濁物の粒子サイズ分布は、図10に示されるように、全く変化しなかった。
【0081】
(VII.高圧滅菌設備および高圧滅菌方法論)
高圧滅菌機器は、代表的に、温度制御および圧力制御される滅菌チャンバーを有する。そのチャンバーは、使用の間中しっかりと閉じられる蓋を有する。その装置は、1000Mpaの圧力まで達し得る。その装置はまた、120℃以上にその滅菌チャンバーを加熱し得る熱源を有する。
【0082】
上記装置を使用するための方法は、好ましい形態で系を供給する工程を含む。薬学的調製物の場合において、その調製物は、粉末形態、溶液であるかまたは水性の粒子分散物のようなものである。本発明の好ましい形態において、その薬学的調製物は、容器内に収められ、その容器は、容量または形状が、その容器に適用される圧力に応じて変化する。このような容器は、可撓性のあるポリマー容器、または他の可撓性のある容器(例えば、注射筒、ジェット式注射器用または定量式吸入器用のカートリッジ)を包含し得る。これらの容器は、以下でより詳細に議論される。本発明はさらに、その薬学的調製物をその滅菌チャンバーに直接加えることを企図する。
【0083】
上記薬学的調製物は、その調製物が、圧力の変化か、温度の変化か、またはその両方を同時に受ける滅菌チャンバー中に挿入される。0.25Mpa未満の圧力に達するのみの、静脈注射用容器などを滅菌するための現行の高圧蒸気滅菌と異なり、本方法は、上記調製物を0.25Mpaを超える圧力に供する。本発明の好ましい形態において、その調製物は、0.25Mpaを上回る圧力から約1500Mpaの圧力、さらに好ましくは、0.25Mpa〜約700Mpaおよび任意の範囲またはそれらの範囲の組み合わせに供される。
【0084】
本発明はさらに、上記調製物が、25℃を超える温度に曝される期間を最小限にするために、温度および圧力を適用する工程を含む。好ましくは、その系の温度は、70℃を超過し、より好ましくは90℃、より好ましくは100℃、そして最も好ましくは120℃およびそれより高い温度を超過する。種々の温度−時間−圧力プロフィール(例えば、図6に示されるもの)は、その調製物の、安定状態から不安定状態への変化を生じずにその調製物を滅菌するのに使用され得る。
【0085】
特に、図6は、温度−時間−圧力プロフィールを示す。ここでは薬学的調製物が、約700Mpaの圧力に曝され、そして第1のサイクル中の期間において、温度を約121℃まで上げるためにエネルギーが付加され、その後、ある期間、圧力を大気圧まで低下させ、そして温度を室温まで低下させる第2のサイクルが続く。図6は、その薬学的調製物が、各圧力パルス間における素早い温度変化に直面することを示す。これらの温度変化は、圧縮および減圧から得られる産物を、瞬間的に断熱(adiabiatic)加熱する工程および断熱冷却する工程のそれぞれによって引き起こされる。無菌性に到達する代表的な時間は、分のオーダーであり、2以上のサイクルが使用される。
【0086】
上記薬学的調製物は、非滅菌のユニットの確率が100万分の1以下である場合に滅菌されたと見なされる。これは、米国薬局方、欧州薬局方、および日本薬局方の要求を満たす。
【0087】
(VIII.滅菌プロセスの致死性)
上述の、高圧滅菌サイクルを使用して処理された1%のイトラコナゾールナノ懸濁物は、現在、無菌性について試験されている。生理食塩水中では、Bacillus stearothermophilusの致死性についての高圧滅菌の効果は、既に実証されている(バイオバーデンに関して高い湿式加熱耐性を実証したとされている最も耐熱性の株を使用した)(ANSI/AAMI/ISO 11134−1993,Sterilization of health care products−Requirements for validation and routine control−Industrial moist heat sterilization、Association for the advancement of medical instrumentationによって開発され、そしてAmerican National Standards Instituteによって承認されたAmerican National Standard、12ページ、A.6.6節を参照のこと)。少なくとも100万個のBacillus stearothermophilusの胞子を接種された、試験されるユニットおよびコントロールのユニットを、2つの異なるプロセス(約600MPaの圧力を1分間使用した第1のプロセス、および約600MPaの圧力を6回の10秒サイクルの間使用した第2のプロセス)に供した。両方のプロセスにおいて、初期温度および最高温度は、それぞれ、90℃および121℃であった。両方のプロセスにおいて、生理食塩水溶液中に生存する菌は、見出されなかった(表1を参照のこと)。1%イトラコナゾールナノ懸濁物が、接種され、そして滅菌された場合に類似の結果が見出されることが理解される。
【0088】
【表1】

(IX.容器)
種々の容器、好ましくは医療用デバイスとして使用されるもの(例えば、薬学的投与、腎臓透析および血液の採取/処理のためのもの)は、本発明の方法によって滅菌され得る。このような容器の例としては、流体投与セット(注射器を含むものを包含する)、採血アセンブリ(例えば、血液パックユニット)、自動化された血液加工用の使い捨てアセンブリ、透析器アセンブリ、ならびに腹膜透析バッグ、腹膜透析カテーテルおよび腹膜透析アセンブリが挙げられるが、これらに限定されない。代表的に、このような系は、流体移送部材(例えば、チューブ)を含む。
【0089】
図11は、2つの側壁152を有し、その間のチャンバー154を特徴付ける、流動性物質用容器150を示す。アクセス部材155は、その容器の内容物への無菌的なアクセスを提供する。図12は、剥離シール166によって連結された第1のチャンバー162および第2のチャンバー164を有する、複数チャンバーの容器160を示す。このような複数チャンバーの容器は、液体を1つのチャンバー中に保存し、そして粉末を第2のチャンバー中に保存するか、または液体を両方のチャンバー中に保存するのに、特に適している。上記剥離シールは、使用直前に構成成分を混合することを可能にする。適切なマルチチャンバー容器としては、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第5,577,369号、米国特許第6,017,598号に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。請求項1の方法において、上記容器は、密封された流体用容器、注射器および密封されたチューブからなる群より選択される。
【0090】
本発明の好ましい形態において、上記側壁は、非PVC含有ポリマーより作製される。その側壁は、単層構造170(図13)、または図14に示されるような第1の層174および第2の層176を有する多層171より形成され得る。これは、そのフィルム中に2より多い層を有することが考えられる。本発明の別の形態において、上記側壁は、指向されておらず、そして熱収縮性フィルムと見なされない。
【0091】
上記側壁を形成するための、適切な非PVC含有ポリマーとしては、ポリオレフィン、エチレンとアクリル酸低級アルキルとのコポリマー、エチレンと低級アルキル置換アクリル酸アルキルとのコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド、およびスチレンと炭化水素とのコポリマーが挙げられる。
【0092】
適切なポリオレフィンとしては、2個〜20個の炭素原子、そしてより好ましくは、2個〜10個の炭素原子を含むα−オレフィンを重合化することによって得られるホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。従って、適切なポリオレフィンとしては、プロピレン、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1およびデセン−1の、ポリマーおよびコポリマーが挙げられる。最も好ましくは、そのポリオレフィンは、プロピレンのホモポリマーもしくはコポリマー、またはポリエチレンのホモポリマーもしくはコポリマーである。
【0093】
ポリプロピレンの適切なホモポリマーは、非晶質の立体配置、アイソタクチックな立体配置、シンジオタクチックな立体配置、アタクチックな立体配置、ヘミアイソタクチックな立体配置、ステレオブロックな立体配置を有し得る。本発明の1つの好ましい形態において、そのプロピレンのホモポリマーは、一部位触媒を使用して得られる。
【0094】
プロピレンの適切なコポリマーは、2個〜20個の炭素原子を有するα−オレフィンを有するプロピレンモノマーを重合化することによって得られる。本発明のより好ましい形態において、そのプロピレンは、そのコポリマーの、約1重量%〜約20重量%、より好ましくは約1重量%〜約10重量%、そして最も好ましくは約2重量%〜約5重量%の量のエチレンとコポリマー化される。そのプロピレンとエチレンとのコポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。本発明の好ましい形態において、そのプロピレンコポリマーは、一部位触媒を使用して得られる。
【0095】
また、ポリプロピレンとα−オレフィンとのコポリマーのブレンドを使用でき、そのプロピレンコポリマーは、そのα−オレフィン中の炭素の数によって変化し得る。例えば、本発明は、1つのコポリマーは、2炭素のα−オレフィンを有し、別のコポリマーは、4炭素のα−オレフィンを有する、ポリプロピレンとα−オレフィンとのコポリマーのブレンドを企図する。また、2個〜20個の炭素、そして好ましくは2個〜8個の炭素を有するα−オレフィンの任意の組み合わせを使用できる。従って、本発明は、プロピレンとα−オレフィンとのコポリマーのブレンドを企図し、第1のα−オレフィンおよび第2のα−オレフィンは、以下の炭素数の組み合わせを有する:2および6、2および8、4および6、4および8。それはまた、そのブレンドにおいて、2つより多いポリプロピレンとα−オレフィンとのコポリマーの使用を企図する。適切なポリマーは、カタルロイ(catalloy)手順を使用して得ることができる。
【0096】
また、高溶融強度ポリプロピレンを使用することが好ましくあり得る。高溶融強度ポリプロピレンは、10グラム/10分〜800グラム/10分の範囲内、より好ましくは30グラム/10分〜200グラム/10分の範囲内、もしくは任意の範囲内またはそれらの範囲の組み合わせ内のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンの、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。高溶融強度ポリプロピレンは、プロピレン単位の自由端長鎖分岐(free−end long chain branch)を有することが知られる。高溶融強度特性を示すポリプロピレンを調製する方法は、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第4,916,198号、米国特許第5,047,485号、および米国特許第5,605,936号に開示されている。1つのこのような方法としては、直鎖状ポリプロピレンポリマーに、活性酸素濃度が、約15体積%であり、環境中で、高エネルギーのイオン化エネルギー照射を用いてその直鎖状ポリプロピレンポリマーの相当量の鎖の切断に十分な時間、しかし鎖を切断して物質がゼラチン状になるには十分でない時間、1分間あたり1メガラド〜10メガラドの線量にて放射線照射する工程が挙げられる。その照射は、鎖の切断を生じる。鎖フラグメントのその後の再結合は、新しい鎖の形成、ならびに鎖への鎖フラグメントの結合を生じて分岐を形成する。これはさらに、望ましい自由端長鎖分岐を有し、高分子量であり、非直鎖状のプロピレンポリマー物質を生じる。放射線は、長鎖分岐形態が顕著な量になるまで維持される。その後、その物質は、その放射線照射された物質に存在する、実質的に全てのフリーラジカルを非活性化するために処理される。
【0097】
高溶融強度ポリプロピレンはまた、特定の有機過酸化物(ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート)が、特定の条件下でポリプロピレンと反応し、その後、溶融混練される場合に、米国特許第5,416,169号(本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす)に開示されているように得ることができる。このようなポリプロピレンは、実質上1の分岐係数を有する直鎖状の結晶性ポリプロピレンであり、従って、非自由端長鎖分岐を有し、そして約2.5dl/g〜10dl/gの固有の粘度を有する。
【0098】
エチレンの適切なホモポリマーとしては、0.915g/ccより大きい密度を有するものが挙げられ、ならびに低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。
【0099】
エチレンの適切なコポリマーは、3個〜20個の炭素、より好ましくは3個〜10個の炭素、そして最も好ましくは4個〜8個の炭素を有するα−オレフィンを有するエチレンモノマーを重合化することによって得られる。それはまた、ASTM D−792で測定した場合に、約0.915g/cc未満の密度、そしてより好ましくは約0.910g/cc未満の密度、そしてなおさらに好ましくは0.900g/cc未満の密度を有することが、そのエチレンのコポリマーに所望される。このようなポリマーは、しばしば、VLDPE(超(very)低密度ポリエチレン)またはULDPE(超(ultra)低密度ポリエチレン)と称される。好ましくは、そのエチレンとα−オレフィンとのコポリマーは、一部位触媒、そしてなおさらに好ましくは、メタロセン触媒系を使用して生成される。一部位触媒は、触媒部位の混合を有することが知られるZiegler−Natta型触媒と対照的に、単一の、立体的かつ電子的に等価な触媒部分を有すると考えられる。このような、一部位触媒されたエチレンとα−オレフィンは、Dowによって商品名AFFINITYとして、DuPont Dowによって商標ENGAGE(登録商標)として、そしてExxonによって商品名EXACTとして販売される。エチレンのこれらのコポリマーはまた、ときには、本明細書中の、m−ULDPEと称される。
【0100】
エチレンの適切なコポリマーとしてはまた、エチレンとアクリル酸低級アルキルとのコポリマー、エチレンと低級アルキル置換アクリル酸アルキルとのコポリマー、およびコポリマーの約8重量%〜約40重量%の酢酸ビニル含量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。用語「アクリル酸低級アルキル」とは、図式1に示される式を有するコモノマーをいう。
【0101】
【化1】

R基は、1個〜17個の炭素を有するアルキルである。従って、用語「アクリル酸低級アルキル」としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
用語「アルキル置換アクリル酸アルキル」とは、図式2に示される式を有するコモノマーをいう。
【0103】
【化2】

およびRは、1個〜17個の炭素を有するアルキルであり、同じ数の炭素を有しても、異なる数の炭素を有してもよい。従って、用語「アルキル置換アクリル酸アルキル」としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、エタクリル酸メチル、エタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エタクリル酸ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
適切なポリブタジエンとしては、1,3−ブタジエンの、1,2−付加生成物および1,4−付加生成物が挙げられる(これらは、一括してポリブタジエンと称される)。本発明のより好ましい形態において、上記ポリマーは、1,3ブタジエンの1,2−付加生成物(これらは、「1,2ポリブタジエン」と称される)である。本発明のなおさらに好ましい形態において、目的のポリマーは、シンジオタクチックな1,2−ポリブタジエンであり、そしてなおさらに好ましくは、低結晶化度を有する、シンジオタクチックな1,2ポリブタジエンである。本発明の好ましい形態において、低結晶化度を有する、シンジオタクチックな1,2ポリブタジエンは、50%未満の結晶化度、より好ましくは45%未満の結晶化度、なおさらに好ましくは40%の結晶化度を有し、なおさらに好ましくは、その結晶化度は、約13%〜約40%、そして最も好ましくは約15%〜約30%である。本発明の好ましい形態において、低結晶化度を有する、シンジオタクチックな1,2ポリブタジエンは、ASTM D3418に従って測定された、約70℃〜約120℃の融点を有する。適切な樹脂としては、JSR(Japan Synthetic Rubber)によって、等級表示JSR RB 810、JSR RB 820、およびJSR RB 830として販売される樹脂が挙げられる。
【0105】
適切なポリエステルとしては、ジカルボン酸の重縮合生成物またはポリカルボン酸の重縮合生成物、およびジヒドロキシアルコールもしくはポリヒドロキシアルコールまたはアルキレンオキシドが挙げられる。本発明の好ましい形態において、上記ポリエステルは、ポリエステルエーテルである。適切なポリエステルエーテルは、1,4シクロヘキサンジメタノール、1,4シクロヘキサンジカルボン酸、およびポリテトラメチレングリコールエーテルを反応することにより得られ、そしてそれらは、一般的に、PCCEと称される。適切なPCCEは、Eastmanによって商品名ECDELとして販売される。適切なポリエステルはとしては、さらに、テレフタル酸ポリブチレンの硬質結晶部分と軟質(非晶質)ポリエーテルグリコールの第2の部分とのブロックコポリマーである、ポリエステルエラストマーが挙げられる。このようなポリエステルエラストマーは、Du Pont Chemical Companyによって商品名HYTREL(登録商標)として販売される。
【0106】
適切なポリアミドとしては、4個〜12個の炭素を有するラクタムの開環反応から生じるポリアミドが挙げられる。従って、このポリアミドの群としては、ナイロン6、ナイロン10およびナイロン12が挙げられる。受容可能なポリアミドとしてはまた、2〜13の範囲内の炭素数を有するジ−アミンの縮合反応から生じる脂肪族ポリアミド、2〜13の範囲内の炭素数を有する2価酸の縮合反応から生じる脂肪族ポリアミド、2量体の脂肪酸の縮合反応から生じるポリアミド、およびコポリマーを含むアミドが挙げられる。従って、適切な脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6,6、ナイロン6,10および2量体の脂肪酸ポリアミドが挙げられる。
【0107】
スチレンと炭化水素コポリマーとのスチレンとしては、スチレンおよびアルキル置換スチレンを含む種々の置換スチレンならびにハロゲン置換スチレンが挙げられる。そのアルキル基は、1個〜約6個の炭素原子を含み得る。置換スチレンの特定の例としては、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、2−クロロ−4−メチルスチレンなどが挙げられる。スチレンは、最も好ましい。
【0108】
スチレンおよび炭化水素のコポリマーの炭化水素部分は、共役ジエンを含む。利用され得る共役ジエンは、4個〜10個の炭素原子、そして、より一般的に、4個〜6個の炭素原子を含む共役ジエンである。例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエンの混合物はまた、ブタジエンとイソプレンとの混合物のように使用され得る。好ましい共役ジエンは、イソプレンおよび1,3−ブタジエンである。
【0109】
上記スチレンおよび炭化水素のコポリマーは、ブロックコポリマーであり得、そのブロックコポリマーとしては、ジ−ブロックコポリマー、トリ−ブロックコポリマー、マルチ(multi)−ブロックコポリマー、スター(star)ブロックコポリマー、およびそれらの混合物が挙げられる。ジブロックコポリマーの特定の例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、およびそれらの水素化誘導体が挙げられる。トリブロックコポリマーの例としては、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレン、およびα−メチルスチレン−イソプレン−α−メチルスチレン、ならびにそれらの水素化誘導体が挙げられる。
【0110】
上述のブロックコポリマーの選択的水素化は、レニーニッケル、貴金属(例えば、白金、パラジウム)などのような触媒、および可溶性の遷移金属触媒の存在下での水素化を含む、種々の周知のプロセスによって実施され得る。使用され得る適切な水素化プロセスは、ジエンを含むポリマーまたはジエンを含むコポリマーが、不活性炭化水素の希釈剤(例えば、シクロヘキサン)中に溶解され、そしてそれらが、可溶性の水素化触媒の存在下で、水素との反応によって水素化されるプロセスである。このような手順は、その開示が本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第3,113,986号、および米国特許第4,226,952号に開示される。
【0111】
特に有用な水素化ブロックコポリマーは、スチレン−イソプレン−スチレンの水素化ブロックコポリマー(例えば、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロックポリマー)である。ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロックコポリマーが、水素化された場合に、生じた生成物は、エチレンと1−ブテン(EB)との通常のコポリマーブロックに似ている。上述のように、利用される共役ジエンが、イソプレンである場合に、生じた水素化生成物は、エチレンとプロピレン(EP)との通常のコポリマーブロックに似ている。市販の選択的水素化物の1つの例は、30%のスチレン末端ブロックを含有する水素化SBSトリブロックであり、そして中間ブロック等価物が、エチレンと1−ブテン(EB)とのコポリマーである、KRATON G−1652である。この水素化ブロックコポリマーは、たいていSEBSと称される。Kraton G−1657は、SEBSトリブロックと、こちらも適切であるSBSジブロックとのブレンドである。他の適切なSEBSまたはSISコポリマーは、Kuraryによって商品名SEPTON(登録商標)および商品名HYBRAR(登録商標)として販売される。
【0112】
α,β−不飽和モノカルボン酸試薬またはα,β−飽和ジカルボン酸試薬を、上述の所望の選択的水素化ブロックコポリマー上にグラフトすることによる、グラフト修飾型スチレンおよびグラフト修飾型炭化水素ブロックコポリマーの使用が、所望され得る。
【0113】
共役ジエンとビニル芳香族化合物とのブロックコポリマーは、α,β−不飽和モノカルボン酸試薬またはα,β−飽和ジカルボン酸試薬を用いてグラフトされる。上記カルボン酸試薬としては、カルボン酸自体、それらの機能的誘導体(例えば、無水物、イミド、金属塩、エステルなど)が挙げられ、それらのカルボン酸試薬は、選択的水素化ブロックコポリマー上にグラフト可能である。グラフトされたポリマーは、通常、そのブロックコポリマーおよびグラフトされたカルボン酸のカルボン酸試薬の総重量に基づいて、約0.1重量%〜約20重量%、そして好ましくは約0.1重量%〜約10重量%である。有用な1塩基のカルボン酸の特定の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、無水アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム、およびアクリル酸マグネシウムなどが挙げられる。ジカルボン酸およびそれらの有用な誘導体の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸一ナトリウムなどが挙げられる。
【0114】
スチレンおよび炭化水素のブロックコポリマーは、油を用いて修飾され得る(例えば、Shell Chemical Companyによって、製品記号KRATON G2705として販売される油修飾型SEBS)。
【0115】
上記フィルムが、上述の成分のポリマーブレンドから形成され得ることも企図される。特に適切なポリマーのブレンドは、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第5,849,843号に開示される。本発明の好ましい形態において、1つの層は、2つ以上の成分、そしてより好ましくは、3つ以上の成分を有するブレンドから作られる。これらのポリマーブレンドは、単層フィルムを形成し得るか、または本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第5,998,019号に記載されるような多層フィルム中に取り込まれ得る。
【0116】
(3成分組成物)
3成分系の第1の実施形態において、第1の成分は、組成物に対して耐熱性および可撓性を与える。この成分は、非晶質のポリα−オレフィンからなる群より選択され得、そして好ましくは、可撓性ポリオレフィンである。これらのポリオレフィンは、121℃までの高温について、破壊に耐えるべきであり、130℃より高い融点の最高点を有し、そして高可撓性であり、40,000psi以下の係数、そしてより好ましくは、20,000psi以下の係数を有する。さらに、高シンジオタクチック性(syndiotacticity)を有する特定のポリプロピレンもまた、高融点特性および低係数特性を有する。第1の成分は、その組成物の40重量%〜90重量%の範囲の重量を構成するべきである。
【0117】
3成分組成物の第2の成分は、その組成物に対してRF封鎖性(sealability)を与える、RF感受性ポリマーであり、そして極性ポリマーの2群のいずれかから選択され得る。その第1の群は、アクリル酸、メタクリル酸、1個〜10個の炭素を有するアルコールを含むアクリル酸のエステル誘導体、1個〜10個の炭素を有するアルコールを含むメタクリル酸のエステル誘導体、酢酸ビニル、およびビニルアルコールからなるより選択されるコモノマーを有する、50%〜85%のエチレン含量を有するエチレンコポリマーからなる。RF感受性ポリマーはまた、ポリウレタンの部分、ポリエステルの部分、ポリ尿素の部分、ポリイミドの部分、ポリスルホンの部分、およびポリアミドの部分を含むポリマーからなる第2の群より選択され得る。これらの機能性は、RF感受性ポリマーの5%〜100%の間を構成し得る。そのRF感受性ポリマーは、その組成物の5重量%〜50重量%の範囲を構成するべきである。
【0118】
好ましくは、そのRF成分は、そのポリマーの15重量%〜25重量%の範囲内のアクリル酸メチルを有するエチレンアクリル酸メチルのコポリマーである。3成分化合物の最後の成分は、最初の2成分の間に適合性を確保し、そしてスチレン性(styrenic)のブロックコポリマーより選択され、そして好ましくは、官能化された無水マレイン酸である。その第3の成分は、その組成物の5重量%〜30重量%の範囲内を構成するべきである。
【0119】
その3成分フィルムの第2の実施形態において、上記第1の成分は、望ましい温度範囲にわたって、RF封鎖性および可撓性を与える。その第1の成分は、高温耐性(「温度耐性ポリマー」)を与える、そしてポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリプロピレンおよびポリメチルペンテンからなる群より選択される。好ましくは、その第1の成分は、その組成物の30重量%〜60重量%の範囲内を構成し、そして好ましくは、ポリプロピレンである。上記第2の成分は、望ましい温度範囲にわたって、RF封鎖性および可撓性を与える。そのRFポリマーは、上述のエチレンビニルアルコールを除外して同定される、第1の群および第2の群より選択される。その第2の成分は、その組成物の30重量%〜60重量%の範囲内を構成するべきである。上記第3の成分は、最初の2成分の間に適合性を確保し、そしてSEBSブロックコポリマーより選択され、そして好ましくは、官能化された無水マレイン酸である。その第3の成分は、その組成物の5重量%〜30重量%の範囲内を構成するべきである。
【0120】
(4成分組成物)
4成分のフィルムの第1の成分は、耐熱性を与える。この成分は、ポリオレフィン、最も好ましくは、ポリプロピレン、そしてより具体的には、プロピレンα−オレフィンランダムコポリマー(PPE)より選択され得る。好ましくは、そのPPEは、狭い分子量範囲を有する。そのPPEは、硬性を必要とし、そして約121℃の高圧蒸気滅菌温度における可縮性に対する抵抗性を有する。しかし、そのPPEは、それら自体では、可撓性条件を満たすには硬すぎる。特定の低係数ポリマーとの合金化によって組み合わされる場合には、良好な可撓性が、達成され得る。受容可能なPPEの例としては、製品記号Soltex 4208、および製品記号Exxon Escorene PD9272として販売されるものが挙げられる。これらの低係数コポリマーとしては、エチレンベースのコポリマー(例えば、エチレン−コ−酢酸ビニル(「EVA」))、エチレン−コ−α−オレフィン、またはいわゆる超(ultra)低密度(代表的に、0.90Kg/L未満)ポリエチレン(「ULDPE」)が挙げられ得る。これらのULDPEとしては、商品名TAFMER(登録商標)(Mitsui Petrochemical Co.)の製品記号A485、製品記号4023−4024のExact(登録商標)(Exxon Chemical Company)、およびInsite(登録商標)技術によるポリマー(Dow Chemical Co.)として販売されるそれらの市販製品が挙げられる。さらに、ポリブテン−1(「PB」)(例えば、Shell Chemical Companyによって製品記号PB−8010、製品記号PB−8310として販売されるもの)、熱可塑性エラストマーベースのSEBSブロックコポリマー(Shell Chemical Company)、製品記号Vistanex L−80、L−100、L−120、L−140(Exxon Chemical Company)のポリイソブチレン(「PIB」)、エチレンアクリル酸アルキル、アクリル酸メチルコポリマー(「EMA」)(例えば、製品記号EMAC 2707、およびDS−1130(Chevron))、ならびにアクリル酸n−ブチル(「ENBA」)(Quantum Chemical)は、受容可能なコポリマーとして見出された。エチレンコポリマー(例えば、アクリル酸コポリマーおよびメタクリル酸コポリマー)、ならびに部分的に中和された塩およびイオノマー(例えば、PRIMACOR(登録商標)(Dow Chemical Company)およびSURYLN(登録商標)(E.I.DuPont de Nemours & Company)もまた、満足できる。
【0121】
代表的に、エチレンベースのコポリマーは、高圧蒸気滅菌の適用に適さない110℃未満の融点を有する。さらに、各成分の限定された範囲の比率のみが、可撓性および高圧蒸気滅菌可能性の要件を同時に満たし得る。好ましくは、第1の成分は、その組成物の、約30重量%〜60重量%、より好ましくは35重量%〜45重量%、そして最も好ましくは45重量%を構成するα−オレフィンを有する、ポリプロピレンホモコポリマーおよびポリプロピレンランダムコポリマーの群より選択される。例えば、エチレン含量が、そのポリマーの、1重量%〜6重量%の範囲内の量、そしてより好ましくは2重量%〜4重量%の範囲内の量であるエチレンを有するプロピレンのランダムコポリマーは、第1の成分として好まれる。
【0122】
上記4成分組成物の第2の成分は、可撓性および低温での柔軟性を与え、そして第1の成分のポリオレフィンと異なる第2のポリオレフィンであり、第2のポリオレフィンは、プロピレンの反復単位を有さない(「非プロピレンベースのポリオレフィン」)。好ましくは、それは、エチレンコポリマーであり、これには、ULDPE、ポリブテン、ブテンエチレンコポリマー、エチレン酢酸ビニル、約18%〜50%の間の酢酸ビニル含量を有するコポリマー、約20%〜40%の間にあるアクリル酸メチル含量を有するエチレンアクリル酸メチルコポリマー、20%〜40%の間のアクリル酸n−ブチル含量を有するエチレンアクリル酸n−ブチルコポリマー、約15%より大きいアクリル酸含量を有するエチレンアクリル酸コポリマーが挙げられる。これらの製品の例は、Tafmer A−4085(Mitsui)、EMAC DS−1130(Chevron)、Exact 4023、Exact 4024、Exact 4028(Exxon)のような製品記号で販売され、組成物の、約25重量%〜50重量%、より好ましくは35重量%〜45重量%、そして最も好ましくは45重量%を構成するべきである。RF誘電損を、その4成分組成物に与えるために、特定の公知の高誘電損成分(「RF感受性ポリマー」)が、その組成物中に含まれる。これらのポリマーは、上述の、第1の群および第2の群におけるRFポリマーの群より選択され得る。
【0123】
他のRF活性物質としては、PVC、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン、PHENOXYS(登録商標)(Union Carbide)として公知である、ビス−フェノール−Aとエピクロロヒドリンとのコポリマーが挙げられる。しかし、これらのクロリンおよびフルオリン含有ポリマーの非常に高い含有量は、無機酸を産生するような、物質の焼却に好ましくない化合物を与える。
【0124】
RF感受性ポリマーのポリアミドは、好ましくは、2〜13の範囲内の炭素数を有するジ−アミンの縮合反応から生じる脂肪族ポリアミド、2〜13の範囲内の炭素数を有する2価酸の縮合反応から生じる脂肪族ポリアミド、2量体の脂肪酸の縮合反応から生じるポリアミド、およびアミドを含むコポリマー(ランダム、ブロック、およびグラフト)より選択される。ナイロンのようなポリアミドは、薄いフィルム用材料に広く使用される。なぜなら、それらは、そのフィルムに耐摩耗性を提供するからである。しかし、まれに、医療用溶液に接触する層に含まれるナイロンが、代表的に、その溶液中に浸出することによって、その溶液を汚染する場合がある。最も好ましいRF感受性ポリマーは、Henkel Corporationによって製品記号MACROMELTおよび製品記号VERSAMIDとして販売される種々の2量体の脂肪酸ポリアミドであり、それらは、このような汚染をもたらさない。そのRF感受性ポリマーは、好ましくはその組成物の、約5重量%〜30重量%であり、より好ましくは7重量%〜13重量%の間であり、そして最も好ましくは10重量%を構成すべきである。
【0125】
上記組成物の第4の成分は、その組成物の、極性成分と非極性成分との間に適合性を与え(ときに、「適合化性ポリマー(compatibilizing polymer)と称される)、そして好ましくは炭化水素の軟性部分を有するスチレンブロックコポリマーである。より好ましくは、その第4の成分は、無水マレイン酸、エポキシ、またはカルボン酸官能基(functionality)によって修飾されたSEBSブロックコポリマーから選択され、そして好ましくは無水マレイン酸官能基(「官能基化された」)を有するSEBSブロックコポリマーである。このような製品は、Shell Chemical Companyによって製品記号KRATON RP−6509として販売される。その適合化ポリマーは、その組成物の、約5重量%〜40重量%を構成し、より好ましくは7重量%〜13重量%を構成し、そして最も好ましくは10重量%を構成すべきである。非官能基化SEBSブロックコポリマー(例えば、Shell Chemical Companyによって製品記号KRATON G−1652および製品記号KRATON G−1657として販売されるもの)である第5の成分を付加することも所望され得る。その第5の成分は、その組成物の、約5重量%〜40重量%を構成し、より好ましくは7重量%〜13重量%を構成し、そしてその組成物のほとんどを構成すべきである。
【0126】
前述の各組成物に関して、その最終組成物が前述の物理学的要求を満たす限り、必要とされかつ当該分野で周知であるような、微量の、他の添加剤(例えば、スリップ剤、潤滑剤、ワックス、および抗ブロック剤(antiblock))を添加することが、所望され得る。
【0127】
上記フィルムは、当該産業で周知の技術を使用して作製され得る。例えば、上述の成分は、Welexブレンダーのような高強度ブレンダー中において、乾燥形態でブレンドされ得、そして押出成形機に供給され得る。その成分はまた、二軸式の非常に激しく混合する押出成形機(例えば、Werner Pfleiderer)中に重量測定法で供給され得、そしてその生産物は、複数の紐状で水浴において急冷され、ペレット化され、そして使用のために乾燥され得る。そのペレット化する工程は、第3の方法において複合押出成形機の生産物をフィルム押出成形機に直接供給することによって回避され得る。フィルム押出成形機中に高強度混合区画を構築することも可能であり、その結果として、合金フィルムが、単一の押出成形機を使用して生成され得る。
【0128】
多層フィルム171は、1つの層172および別の層174として、上述のブレンドを利用し得る。本発明の好ましい形態において、その層174は、表皮層(skin layer)である。表皮層174は、熱変形耐性および耐摩耗性を与え、そして好ましくはポリプロピレンであり、そしてより好ましくはスチレンおよび炭化水素ブロックコポリマーを有するポリプロピレンコポリマーブレンドである。より好ましくは、表皮層174は、0〜20重量%の範囲内のSEBSブロックコポリマーをブレンドしたポリプロピレンコポリマーである。表皮層174は、0.2ミル〜3.0ミルの範囲内の厚さを有するべきである。
【0129】
図15は、表皮層172とRF層174との間に挟まれたコア層176を有する、本発明の別の実施形態を示す。そのコア層176は、フィルム構造10に対して熱変形耐性、および可撓性を与え、そしてフィルム構造170の成分の間に適合性を与える。好ましくは、そのコア層は、0.5ミル〜10ミルの範囲内の厚さ、そしてより好ましくは1ミル〜4ミルの範囲内の厚さを有する。そのコア層176は、3つの成分を含む。第1の成分はポリオレフィンであり、そして好ましくはコア層176の、20重量%〜60重量%の範囲を構成する量であり、より好ましくは35重量%〜50重量%の範囲を構成する量であり、そして最も好ましくは45重量%を構成する量のポリプロピレンである。
【0130】
コア層176の第2の層は、ULDPE、ポリブテンコポリマーを含むコア層16に対して可撓性を与える化合物からなる群より選択される。好ましくは、そのコア層の第2の成分は、40重量%〜60重量%の量、より好ましくは40重量%〜50重量%の量、そして最も好ましくは40重量%の量であるULDPEまたはポリブテン−1である。
【0131】
コア層176の第3の成分は、コア層176の成分の間に適合性を与える化合物の群より選択され、そしてスチレン−炭化水素ブロックコポリマー、そして最も好ましくはSEBSブロックコポリマーが挙げられる。第3の成分は、好ましくは、コア層176の5重量%〜40重量%の範囲内の量であり、より好ましくは7重量%〜15重量%の範囲内の量であり、そして最も好ましくは15重量%の量である。
【0132】
コア層176の第4の成分として、容器の製造工程の間に回収された再研磨された(reground)トリミング屑物質を添加することも可能である。その屑物質は、コア層16全体に分散される。屑は、好ましくはコア層16の、約0〜50重量%の間の量で添加され得、そしてより好ましくは10重量%〜30重量%の範囲内の量で添加され得、そして最も好ましくは3重量%〜12重量%の範囲内の量で添加され得る。
【0133】
図16は、表皮層174に対向するRF層174の脇に付着する、溶液接触層182を有するフィルム180を示す。その溶液接触層182は、上述の物質の1つの層であり、より好ましくはポリオレフィンを含み、そしてなおさらに好ましくは表皮層174と同一の物質、またはコア層176のような同一物質である。好ましくは、その溶液接触層182は、0.2ミル〜1.0ミルの範囲内の厚さを有し、そして最も好ましくは1.0ミルの厚さを有する。
【0134】
図17は、表皮層174、コア層176、上述されるようなRF層172を有し、そして表皮層174とコア層176との間に屑190のさらなる別個の層を有する多層フィルム構造の別の実施形態を示す。図18は、コア層176とRF層172との間の別個の屑層190を示す。図19は、コア層176を第1のコア層176aと第2のコア層176bに分割する屑層190を示す。好ましくは、屑層190は、0.5ミル〜5.0ミルの範囲内の厚さ、そして最も好ましくは1.0ミルの厚さを有するべきである。
【0135】
図20は、上で議論される、表皮層174、コア層176およびRF層172、そしてコア層176とRF層172との間に挟まれる障壁層200、およびそこに結合し障壁層200の対向する層に付着するつなぎ(tie)層202を含む6つの層を有する、本発明の別の実施形態を示す。図21は、コア層176と表皮層174との間の障壁層200を示す。図22は、コア層176を、2つの、コア層176aおよびコア層176bに分割する障壁層200を示す。障壁層200は、フィルム層のガス障壁特性を増強する。障壁層200は、エチレンビニルアルコール(例えば、Evalca(Evalca Co.)の名前で販売される)、高度にガラス状であるかまたは結晶性のポリアミド(例えば、Sclar PA(登録商標)(Dupont Chemical Co.))、高いニトリル含有量のアクリロニトリルコポリマー(例えば、British Petroleumによって販売されるBarex(登録商標))からなる群より選択される、好ましくは、障壁層200は、エチレンビニルアルコールであり、そしてそれは、0.3ミル〜1.5ミルの範囲内の厚さを有し、そして最も好ましくは1.0ミルの厚さを有する。
【0136】
つなぎ層202は、修飾型エチレンおよびプロピレンのコポリマー(例えば、製品記号Prexar(Quantum Chemical Co.)およびBynel(Dupont)として販売されるもの)より選択され得、そしてそれは、0.2ミル〜1.0ミルの範囲内の厚さを有し、そして最も好ましくは0.5ミルの厚さを有するべきである。
【0137】
本発明の高圧滅菌技術はまた、腎臓CAPD適用のための空のドレインバッグ(例えば、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第6,004,636号に開示される容器)を滅菌するのに適する。本発明の高圧滅菌技術を使用する最終滅菌に適する他の容器としては、可撓性細胞培養用容器(例えば、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第5.935,847号、米国特許第4,417,753号、米国特許第4,210,686号に開示されるもの)が挙げられる。タンパク質適合性のフィルムおよびタンパク質適合性の容器(例えば、本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第6,309,723号に開示されるもの)はまた、本明細書中に開示される高圧滅菌技術を使用して滅菌され得る。さらに、滅菌技術はまた、酸素に感受性の化合物(本明細書中に参考として援用され、かつ本明細書の一部をなす、米国特許第6,271,351号に開示されるような脱酸素化ヘモグロビン)を収容するための容器を滅菌するのに適する。上記滅菌技術は、100℃より高い温度に短い時間このような容器を曝す工程を必要とするのみであるので、容器を121℃で1時間蒸気に曝す標準的な技術を使用する最終滅菌に適さない多くの容器は、本発明の高圧技術を用いる最終滅菌され得る。
【0138】
図23は、当該分野で周知であるような、筒222およびプランジャー224を有する注射器220を示す。その注射器220は、上述の材料から製造され得る。この注射筒は、薬学的化合物の、分散物またはドライパウダーのうちの1つで満たされ得、その後、上述のように高圧蒸気滅菌される。その注射筒、好ましくは筒およびプランジャーの両方は圧力の増加に応じて体積を変化し得る必要があり、そして両方の部分、222および224は、本発明の最終滅菌プロセスに耐え得るべく、十分な熱変形耐性を有する必要がある。
【0139】
図24は、カートリッジ230またはチャンバー234を規定する本体232を有する挿入部を示す。チャンバー234は、必要な場合に、エンドキャップ236または一対のエンドキャップで密封される。上記カートリッジは、送達デバイス(例えば、米国特許第6,132,395号に記載されるもののようなジェット式注射器)、またはチャンバー234の内容物にアクセスし、そして使用のために内容物を送達し得る他の送達デバイス中に挿入され得る。
【0140】
図25は、医療用チューブ252およびアクセスデバイス254を有する流体アクセスデバイス250を示す。このアクセスデバイスは、アクセス部材154を貫通するための物体であり得るか、または送達のために滅菌に使用される容器から、患者、または患者にその組成物を送達するのに使用される別のデバイスに、流体を運ぶ注射筒222にドッキングするか、さもなければ連結するように適合され得る。
【0141】
容器を121℃で1時間、蒸気に曝す最終滅菌プロセスに耐えられない多くの容器(例えば、特定のポリマー製医療用容器)が、存在する。
【0142】
(X.製品)
本発明は、滅菌された製品、そして好ましくは薬学的調製物を含む製品を提供し、この製品としては、滅菌した薬学的調製物を含む容器(この調製物は、その製品に熱を供給する工程およびその製品に0.25Mpaより大きい圧力をかける工程によって滅菌されている)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、化学的な曇り点改変剤を含まない、滅菌された薬学的調製物を提供する。
【0143】
本明細書中に記載された、現在の好ましい実施形態に対する種々の変更および種々の改変が当業者にとって明らかであることが、理解されるべきである。このような変更および改変は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そして意図された利点を損なうことなくなされ得る。このような変更および改変は、添付の特許請求の範囲によって網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1は、ミセルを示す。
【図2】図2は、逆ミセルを示す。
【図3】図3は、ラメラ相を示す。
【図4】図4は、六方相を示す。
【図5】図5は、立方相を示す。
【図6】図6は、圧力−時間−温度プロフィールを示す。
【図7】図7は、粒子サイズの分布曲線を示す(実施例1)。
【図8】図8は、対照サンプルについての粒子サイズの分布を示す(実施例1)。
【図9】図9は、高圧滅菌サイクルを示す(実施例1)。
【図10】図10は、粒子サイズの分布曲線を示す。
【図11】図11は、流動性を有する物質のための容器を示す。
【図12】図12は、複数チャンバーの剥離シール容器を示す。
【図13】図13は、単層フィルムを示す。
【図14】図14は、2層フィルムを示す。
【図15】図15は、3層フィルムを示す。
【図16】図16は、3層フィルムを示す。
【図17】図17は、4層フィルムを示す。
【図18】図18は、4層フィルムを示す。
【図19】図19は、5層フィルムを示す。
【図20】図20は、6層フィルムを示す。
【図21】図21は、6層フィルムを示す。
【図22】図22は、7層フィルムを示す。
【図23】図23は、注射器を示す。
【図24】図24は、医療用送達デバイスのためのカートリッジを示す。
【図25】図25は、流体アクセスデバイスを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定状態および不安定状態にある動的な系を滅菌するための方法であって、以下:
該動的な系に0.25MPaを超過する圧力をかけ、滅菌系を達成するのに十分な時間について該動的な系の温度を上昇させる工程;および
該動的な系が、該不安定状態に至る前に該動的な系から圧力を抜く工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記圧力をかける工程が、前記動的な系の温度を、70℃を超過する温度に上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力をかける工程が、前記動的な系の温度を、120℃を超過する温度に上昇させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動的な系に圧力をかける前記工程が、パルス状である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記動的な系が、治療的に活性な化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動的な系が、治療的に活性な化合物およびビヒクルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
非滅菌の系の確率が100万分の1以下である場合に無菌性が確立される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ビヒクルが、水溶液、有機溶媒、または油である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記動的な系が、前記治療的に活性な化合物に関連する賦形剤をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記治療用化合物が、固体、液体またはガスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療用化合物が、粒子の形態、または滴の形態である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粒子または液滴が、100ミクロン未満の平均有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子または液滴が、10ミクロン未満の平均有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記粒子または液滴が、7ミクロン未満の平均有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子または液滴が、3ミクロン未満の平均有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記粒子または液滴が、1ミクロン未満の平均有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記粒子または液滴が、500nm未満の平均有効サイズを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記賦形剤が、前記粒子または液滴に、該粒子または該液滴に対する共有結合、該粒子または該液滴に対するイオン的結合、該粒子または該液滴に対する電子的引力、該粒子または該液滴の表面上への吸着、および該粒子または該液滴の中への懸濁からなる群より選択される様式にて結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記賦形剤が、1つ以上のアニオン性界面活性剤、1つ以上のカチオン性界面活性剤、1つ以上の非イオン性界面活性剤、および1つ以上の双性イオン性界面活性剤、ならびに1つ以上の生物学的表面活性分子からなる群より選択される界面活性剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記粒子または前記液滴が、1つの熱力学的な相から別の熱力学的な相へ変換され、その後、前記圧力を抜く工程が続く、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記熱力学的な相が、結晶性、半結晶、非晶質および過冷却された液体からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記熱力学的な相における相違が、第1の結晶構造から、該第1の結晶構造と異なる第2の結晶構造までである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記圧力をかける工程、またはさらなる加熱する工程のいずれかを介して前記動的な系に熱を供給するさらなる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記動的な系の前記温度が、1分間を超過する時間で100℃を超えて上昇される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
圧力が、種々の圧力の律動で前記動的な系に適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
滅菌するための方法であって、以下:
非滅菌ビヒクル中にある治療的に活性な化合物を含む、ポリマー容器を提供する工程;
該容器を加熱する工程;
該容器に0.25MPaを超過する圧力をかける工程であって、該容器の温度が70℃を超える、工程;
該ビヒクルを滅菌するのに有効な時間で実施される、該エネルギーを供給する工程および該圧力をかける工程;および
該容器から、該熱および該圧力を抜く工程
を包含する、方法。
【請求項27】
前記ポリマー容器が、非PVC含有材料から製造される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記容器が、単層構造または多層構造を有するフィルムから作られる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記容器が、ポリマーから作られる請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマー容器が、流体移送部材に連結されるように適合される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記流体移送部材が、チューブ状である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記流体移送部材が、流体送達投与セットである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記容器が、密封された流体の容器、注射器および密封されたチューブからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
医療用製品水溶液中に分散した滅菌治療用化合物および該粒子に結合した賦形剤を含む、可撓性液密製ポリマー容器を含み、該化合物は、1ミクロン未満の平均サイズを有する粒子の形態であり、該溶液は、本質的に曇り点改変剤を含有しない、医療用製品。
【請求項35】
前記容器が、非PVC含有材料から製造される、請求項34に記載の製品。
【請求項36】
前記容器が、単層構造または多層構造を有するフィルムから製造される、請求項35に記載の製品。
【請求項37】
前記フィルムが、50重量%より大きいポリオレフィンを有する、請求項35に記載の製品。
【請求項38】
前記フィルムが、高周波による密封技術を使用する前記容器中に密封され得る、請求項35に記載の製品。
【請求項39】
前記フィルムが、ASTM D−882によって測定される場合、40,000psi未満の弾性係数を有する、請求項35に記載の製品。
【請求項40】
請求項34に記載の製品であって、前記容器が、該容器にエネルギーを供給する工程および該容器に0.25MPaを超過する圧力をかける工程によって滅菌されている、製品。
【請求項41】
可撓性のある医療用容器を滅菌するための方法であって、以下:
対向する側壁を有するポリマー容器を提供する工程であって、該壁は、約40,000psi未満の弾性係数を有する、工程;
該容器に熱を供給する工程;
該容器に0.25MPaを超過する圧力をかける工程;および
滅菌容器を達成するのに有効な時間の後、該加熱する工程および該圧力をかける工程を終了する工程
を包含する、方法。
【請求項42】
前記容器が、充填されていない状態である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記容器が、その中に流体を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記流体が、水ベースの溶液である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記容器が、静脈注射用容器、ドレインバッグ、複数チャンバーの容器、タンパク質適合性の容器、細胞培養用容器、代用血液用容器、送達デバイスのためのカートリッジ、注射筒、流体投与セットからなる群より選択される型の容器である、請求項41に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2007−505712(P2007−505712A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527152(P2006−527152)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/031107
【国際公開番号】WO2005/030273
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】