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薬液の保存装置及びこの保存装置を用いた薬液の保存方法
説明

薬液の保存装置及びこの保存装置を用いた薬液の保存方法

【課題】軟質の合成樹脂からなる容器に収容された薬液の乾燥を防いで長期間保存できる保存装置及びそれを用いた薬液の保存方法を提供する。
【解決手段】保存装置は、密閉容器と、密閉容器内に収納される少なくとも1つの薬液収容容器と、密閉容器内に収納される加湿材とを備えている。加湿材は少なくとも水を内包する袋体により構成され、袋体は合成樹脂フィルムよりなる内層と不織布よりなる外層とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液収容容器に収容されている薬液を乾燥から保護して長期間保存することのできる保存装置及びこの保存装置を用いた薬液の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、イムノクロマト法を原理としたインフルエンザ検査薬等をはじめとした薬液を構成品として含む臨床診断薬等は、通常少量ずつ容器に収容されている。また、この種の薬液を収容する容器は、容器側面を指で押圧することにより収容された薬液がドロップ栓を通じて適量滴下できるよう、及び/又は、検体を採取した綿棒を容器内の薬液に浸漬させたのち、容器側面を指で挟みこんで容器ごと綿棒に含浸された薬液を絞ることができるよう、柔らかい素材で形成されていることが多い。このような柔らかい素材として、具体的には、軟質の合成樹脂が一般的に用いられており、中でも低密度ポリエチレン(LDPE)や線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が主に用いられている。しかしながら、このような軟質の合成樹脂は密度が低いことから、容器に収容されている薬液の水分が水蒸気となって容器壁を通過し、保存中に水分が減少して薬液の濃度が変化したり、終には薬液が乾固して使用することができなくなるという問題が生じていた。
【0003】
このような問題を解決するため、この種の薬液収容容器は、ガスバリア性を有するフィルムからなる袋に収納されて保存されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの薬液収容容器は、最もガスバリア性に優れるアルミ箔ラミネートフィルムからなる袋に収納されることにより、長期間保存され得る。しかしながら、アルミ箔ラミネートフィルムが不透明であるため、袋内部が視認できず、収納された容器の本数や薬液の量を確認するために、袋から薬液収容容器をその都度取りだして確認する必要があり、使用に際して不便であるという問題があった。さらに、この種の薬液収容容器を構成品として含む臨床診断キット等の製造時においても、袋内に収納された薬液収容容器の本数が適正か否か、薬液収容容器から薬液が漏れていないか等の確認が速やかに行えないという問題が生じていた。
【0005】
他方、視認性のあるガスバリア性を有するフィルムとして、シリカやアルミナ等の透明蒸着フィルムからなる袋が存在する。しかしながら、これらの透明蒸着フィルムは、アルミ箔ラミネートフィルムと比べるとガスバリア性に劣るため、この種の薬液収容容器を収納しても、薬液が減少してしまうために1年を超えて保存することは困難であった。それゆえ、季節性を有する疾患(例えば、季節性インフルエンザ)の臨床診断薬は、翌年のシーズンには使用することができないという問題が生じていた。
【0006】
本発明は上述した点に鑑み案出されたもので、その目的は、軟質の合成樹脂からなる容器に収容された薬液の乾燥を防いで長期間保存できる保存装置及びそれを用いた薬液の保存方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、視認性を有する透明なフィルムからなる袋を使用した場合においても、アルミ箔ラミネートフィルムからなる袋と同程度又はそれ以上の期間に亘り、軟質の合成樹脂からなる容器に収容された薬液の乾燥を防いで長期間保存できる保存装置及びそれを用いた薬液の保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の薬液の保存装置は、密閉容器と、密閉容器内に収納される少なくとも1つの薬液収容容器と、密閉容器内に収納される加湿材とを備え、加湿材は少なくとも水を内包する袋体により構成され、袋体は合成樹脂フィルムよりなる内層と不織布よりなる外層とを備えている。
【0009】
本発明の薬液の保存装置は、密閉容器と少なくとも1つの薬液収容容器と加湿材とを備えている。薬液収容容器と加湿材とは密閉容器内に収納される。本発明において、密閉容器とは、外部から固体及び液体が混入することを防ぐことができる容器のことをいう。
【0010】
本発明の保存装置における加湿材は、合成樹脂フィルムよりなる内層と不織布よりなる外層を備える袋体により構成されている。この加湿材の袋体に内包されている水は、合成樹脂フィルムよりなる袋体の内層と接するところ、合成樹脂フィルムは、水はほとんど通過させないが、水蒸気は通す性質(透湿性)を有している。それゆえ、加湿材の袋体中の水蒸気は徐々に内層の合成樹脂フィルムを通り抜け、袋体の外層の不織布に到達する。また、不織布は、構成する繊維と繊維の間に小孔が形成されており、高い通湿性を有する。それゆえ、水蒸気は外層の不織布も通り抜けて加湿材の外部に達し、密閉容器内の湿度を調整する。他方、環境の急な温度変化等により、密閉容器内の湿度が高くなり、結露等が生じた際には、不織布よりなる加湿材の袋体の外層が水を吸収することができる。このように、本発明の保存装置は、加湿材が密閉容器内の湿度を好適に調整することにより、薬液収容容器に収容された薬液中の水分が薬液収容容器外へ透過するのを防ぎ、薬液の乾燥を防いで長期間保存することができる。また、保存期間中に、収納された薬液収容容器を一部取り出すため等に密閉容器を開閉した場合においても、加湿材が開閉後の密閉容器内の湿度を好適に調整することができ、薬液の乾燥を防いで長期間保存することができる。
【0011】
さらに、加湿材の袋体の外層が不織布より形成されることにより、例えば、輸送や製造、保管時等に、密閉容器内で薬液収容容器が袋体に接触した場合等にも、袋体の表面にかかる衝撃が吸収され、袋体に穴が開くことや、袋体が破損することを防ぐことができる。
【0012】
また、袋体は不織布に合成樹脂フィルムを貼り合わせて形成された積層体からなることも好ましい。袋体が合成樹脂フィルムと不織布を貼り合わせて形成されたラミネート不織布のみから構成されるため、加湿材が簡単な構成で形成される。さらに、袋体の内層には合成樹脂フィルム同士が配置されていることから、外層の材質に影響されずにヒートシールやウェルダー加工等で内層が簡単に熱溶着され、袋体を簡易に製造することができる。
【0013】
また、不織布は、吸水性素材からなることも好ましい。袋体の外層を構成する不織布が吸水性素材からなることにより、環境の急な温度変化等によって密閉容器内で結露や水滴が生じた場合、袋体の外層がこれらの水滴や結露を確実に吸収することができる。
【0014】
また、袋体は、さらに抗菌剤を内包することも好ましい。加湿材を構成する水を内包する袋体に、抗菌剤がさらに含まれることにより、長期間の保存に際して、加湿材の袋体に内包される水等が細菌やカビ等の影響を受けたり、腐敗するのを防ぐことができる。さらに、袋体に内包される抗菌剤が気体となって袋体の外部に達した際には、密閉容器内に存在する細菌やカビ等に対しても抗菌作用を示すために、密閉容器内を清浄に保つことができる。
【0015】
本発明の薬液の保存方法は、薬液の保存装置における薬液収容容器に薬液を収容し、薬液が収容された薬液収容容器と加湿材とを密閉容器に収納し、密閉容器を密閉する。
【0016】
密閉容器内に薬液収容容器と共に収納される加湿材が密閉容器内の湿度を調整することにより、薬液の水分が薬液収容容器外へ透過するのを防ぎ、薬液の乾燥を防ぐことができる。
【0017】
また、加湿材は、所望の保存期間まで加湿材に水が含まれているように、水の量が調整されていることも好ましい。所望の保存期間まで、加湿材に水が含まれていることにより、薬液の乾燥を安定して防ぐことができる。
【0018】
さらに、水の量の調整は、予め、密閉容器と略同じ素材から構成される試験容器内に、袋体の内部に所定量の水を内包する試験水袋を収納し、試験容器を密閉した後、試験水袋に内包されている水の量の変化を経時的に測定し、所望の保存期間までの密閉容器における試験水袋の水の減少量を算出し、加湿材に含まれる水の量を、算出された水の減少量以上とすることにより行われることも好ましい。
【0019】
加湿材に含まれる水の量の調整は、以下のようにして行われる。予め、薬液収容容器を保存する際に使用する密閉容器と略同じ素材から構成される試験容器と、加湿材の袋体から構成される試験水袋とを用い、試験水袋中の水の減少量を経時的に測定することにより、これらの条件における時間の経過と水の減少量との相関が検討され、回帰直線や近似曲線等を得ることができる。この得られた回帰直線等によって、所望の保存期間までの密閉容器における試験水袋の水の減少量が算出され得る。加湿材に含まれる水の量を、算出された水の減少量以上とすることにより、所望の保存期間まで、加湿材に水が含まれている状態を維持し、薬液の乾燥を安定して防ぐことができる。なお、本発明における密閉容器と略同じ素材とは、密閉容器を構成する素材と実質的に同じ素材であるか、密閉容器を構成するフィルム構成と実質的に同じフィルム構成の素材のことをいい、密閉容器の素材と実質的に同じ透湿度を示す素材のことをいう。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する薬液の保存装置及びこの保存装置を用いた薬液の保存方法を提供することができる。
(1)加湿材が密閉容器内の湿度を調整することにより、薬液中の水分が薬液収容容器外へ透過するのを防ぎ、薬液の乾燥を防ぐことができる。
(2)所望の保存期間まで、加湿材に水が含まれている状態を維持し、薬液の乾燥を安定して防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液の保存装置を概略的に示す図である。
【図2】図1の実施形態に係る薬液の保存装置における(a)加湿材を示す正面図及び(b)そのA−A’線の断面図である。
【図3】図1の実施形態に係る薬液の保存装置における薬液が収容された薬液収容容器と加湿材とを密閉容器に収納し、密閉している状態を概略的に示す図である。
【図4】各種試験容器内に収納させた試験水袋中の水の減少量と保存日数との関係及びその回帰直線を示すグラフである。
【図5】実施例における各種密閉容器の保存装置中の(a)薬液の減少量と保存日数との関係を示すグラフ及び(b)その回帰直線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1及び図3に示すように、本発明の一実施形態に係る薬液の保存装置1は、密閉容器2と少なくとも1つの薬液収容容器3と加湿材4とを備えている。
【0024】
図1に示すように、密閉容器2は、容器を密閉可能とするためのチャック21を備えた袋より構成されている。本実施形態においては、密閉容器2の一例として袋を示しているが、密閉可能であれば箱やその他の形状の容器も用いることができる。密閉容器2の大きさとしては、薬液収容容器3と加湿材4とを収納できる大きさが選択される。
【0025】
密閉容器2の材質としては特に限定されないが、合成樹脂が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン若しくはポリエステル等の合成樹脂フィルム、これらを組み合わせた合成樹脂多層フィルム、シリカやアルミナ等の透明蒸着フィルム、アルミ箔ラミネートフィルム又はアルミニウム蒸着フィルム等が挙げられる。特に、密閉容器2の透湿性が低いと密閉容器2内部に水蒸気を封じ込めることができ、薬液収容容器3からの水蒸気の透過を好適に防ぐことができる観点から、ガスバリア性を有する積層フィルム、すなわち、合成樹脂多層フィルム、シリカやアルミナ等の透明蒸着フィルム、アルミ箔ラミネートフィルム又はアルミニウム蒸着フィルム等が好ましく、さらに視認性が高いという観点から、シリカやアルミナ等の透明蒸着フィルムがより好ましい。
【0026】
次に、薬液収容容器3について説明する。図1及び図3に示すように、本実施形態における薬液収容容器3は、一般的にスクイズチューブ又はドロッパーチューブと呼ばれている、ねじ蓋を備えた小容量容器であり、容器側面を指で押圧することにより収容された薬液がドロップ栓を通じて適量滴下できるよう、及び/又は、検体を採取した綿棒を容器内の薬液に浸漬させたのち、容器側面を指で挟みこんで容器ごと綿棒に含浸された薬液を絞ることができるよう、柔らかい素材で形成されている。薬液収容容器3の材質としては、密度が低く、容器内部に収容されている薬液の水分が透過するような性質を有するものであり、一例として軟質の合成樹脂が挙げられ、具体的には低密度ポリエチレン(LDPE)や線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が選択される。
【0027】
次に加湿材4について説明する。図2(a)及び図2(b)に示すように、加湿材4は、水及び抗菌剤等の内包物43を内包する袋体42から構成されている。袋体42の内層40aは、内包されている水と接することから、液体としての水を通過させ難い合成樹脂フィルムが選択され、袋体42の外層40bは、高い通湿性及び吸水性を有する不織布が選択されている。内層40aの合成樹脂フィルムとしては、水はほとんど通過させないが、水蒸気は通す性質(透湿性)を有していればよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン若しくはポリエステル等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0028】
外層40bの不織布としては、通湿性を有する一般的な不織布を用いることができる。不織布は微細な繊維で形成されていることから、環境の急な温度変化等によって密閉容器内に結露や水滴が生じた場合、毛細管現象により水滴や結露を吸い取り、袋体42の外層40bに保持することができる。また、外層40bの吸水性を高めるため、不織布は吸水性素材からなるものが好ましく、例えば、レーヨン繊維等の親水性繊維からなる不織布、親水加工若しくは親水剤処理が施された不織布又はパルプ不織布等がより好適に用いられる。これにより、密閉容器内に生じた結露や水滴をさらに確実に吸い取ることができる。特に、レーヨン繊維で形成されたレーヨン不織布は親水性、吸水性及び放湿性に優れており、本発明に使用される不織布として好適に使用することができる。さらに、外層40bを不織布で形成することにより、袋体42にクッション性や衝撃緩衝性が付与される。それゆえ、輸送や製造、保管時等に、密閉容器2内で薬液収容容器3が袋体42に接触するようなことがあっても、袋体42の表面にかかる衝撃は外層40bの不織布で緩衝され、袋体42の内層40aを形成する合成樹脂フィルムに穴が開いたり、破れることを防ぎ、袋体42の破損を防ぐことができる。
【0029】
袋体42を構成するシート40は、上記の内層40a及び外層40b、すなわち、不織布と合成樹脂フィルムとがそれぞれ別体で構成されていてもよいが、本実施形態において示されているように、袋体42を構成するシートが1枚となって簡単な構成となる観点から、一体でもよい。本実施形態における袋体42は不織布に合成樹脂フィルムを貼り合わせて形成された積層シート40からなり、袋体の内層(内面)40aは合成樹脂フィルム、外層(表面)40bは不織布となるように構成されている。
【0030】
加湿材4の袋体42は、図2(a)及び図2(b)に示すように、シート40の外周をヒートシール等で溶着することにより得られる。その際、袋体の内層40aは合成樹脂フィルム、外層40bは不織布となるように配置させて外周を溶着する。内層40aを構成する合成樹脂フィルム同士が好適に熱により溶着されるため、容易に袋体42を製造することができる。袋体42は、本実施形態に示すような袋状の形態のほか、チューブ状、箱状又はカプセル状の形態としてもよい。
【0031】
図2(b)に示すように、加湿材4の袋体42は、主に水からなる内包物43を内包している。保存期間中の水の腐敗を防ぐため、内包物43には抗菌剤を含むことができる。また、袋体42に内包される抗菌剤が気体となって袋体42の外部に達した際には、密閉容器2内に存在する細菌やカビ等に対しても抗菌作用を示すために、密閉容器2内を清浄に保つ。本発明における抗菌剤には、防かび剤、殺菌剤、抗生物質等も含まれる概念である。抗菌剤としては、袋体42に内包される抗菌剤が気体となって袋体42の外部に達した際に薬液に影響を及ぼさない物が好ましく、特に限定されないが、たとえば、エタノール等のアルコール類、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、安息香酸若しくはその塩、ソルビン酸若しくはその塩、4級アンモニウム塩類、フェノール類、クロルヘキシジン、アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、アジ化ナトリウム、チメロサール等又はこれらの組合せが挙げられる。さらに、加湿材の袋体42に内包される内包物43には、水及び抗菌剤の他に、水及び抗菌剤を担持するためのろ紙、高分子吸収体(SAP)、布、綿又は不織布等を内包することもできる。
【0032】
次に、本発明における薬液の保存装置1を使用した薬液の保存方法について説明する。図3に示すように、薬液収容容器3に薬液30を収容し、薬液収容容器3と加湿材4とを密閉容器2に収納する。そして、密閉容器2に備えられたチャック21を閉めて密閉容器2を密閉する。密閉後、密閉容器2内の湿度が低下すると、加湿材4の袋体42中に含まれる水蒸気が内層40aの合成樹脂フィルムを通り抜け、外層40bの不織布に到達する。さらに、水蒸気はこの不織布に存在する小孔を通じて外層40bも通り抜けて、加湿材4の外部に達し、密閉容器2内の湿度を調整する。それゆえ、薬液収容容器3に収容された薬液30中の水分が薬液収容容器3外へ透過するのを防ぎ、薬液30の乾燥を防ぐ。他方、環境の急な温度変化等により、密閉容器2内の湿度が高くなり、結露等が生じた際には、不織布よりなる加湿材4の袋体42の外層40bが毛細管現象により水を吸収し、密閉容器2内の水濡れを防ぐ。このように、本発明の保存装置1は、加湿材4が密閉容器2内の湿度を好適に調整することにより、薬液収容容器3に収容された薬液30中の水分が薬液収容容器3外へ透過するのを防ぎ、薬液の乾燥を長期間防ぎつつ薬液30を保存する。
【0033】
次に、加湿材4の袋体42に内包させる水の量について説明する。加湿材4に含まれる水の量は、所望の保存期間まで、加湿材4中に水が含まれているように調整されることが好ましい。水の量の調整については、保存期間中に加湿材4中の水の量が減少した際に加湿材4を新しいものと交換する、又は加湿材4にシリンジ等を用いて水を追加注入する等の方法も挙げられるが、保存期間中に水の量を調整せずに済む観点から、予め、水の量を所望の保存期間まで保てる量としておくことが好ましい。以下、具体的に、加湿材4の袋体42に内包される水の量の調整方法について、以下説明する。
【0034】
密閉容器の材質により水蒸気透過度が異なるため、加湿材中の水の減少量も密閉容器の材質に影響される。所望の保存期間まで保てる水の量を決定するため、4種の密閉容器について加湿材の水の量の変化を以下のように試験した。試験用の加湿材、すなわち、試験水袋としては、ポリエチレンフィルムと不織布とを貼合わせたラミネート不織布からなるシートで袋体が形成され、袋体は内層がポリエチレンフィルム、外層が不織布であって、袋体には蒸留水5mLを内包させたものを用いた。試験容器は、フィルム構成がPET12μm/PE20μm/AL7μm/PE20μm/PE60μmのアルミ箔ラミネートフィルムからなる密閉容器A(株式会社生産日本社製品、製品名:ラミジップAL−11、幅11cm×チャック下長さ17cm+底ガゼット幅33mm)、フィルム構成がシリカを蒸着したPET12μm/PE20μm/CPP40μmの透明蒸着フィルムからなる密閉容器B(株式会社生産日本社製品、製品名:ラミグリップVP−G、幅14cm×チャック下長さ20cm)、フィルム厚み0.08mmの低密度ポリエチレンフィルムからなる密閉容器C(株式会社生産日本社製品、製品名:ユニパックG−8、幅14cm×チャック下長さ20cm)及びフィルム厚み0.04mmの低密度ポリエチレンフィルムからなる密閉容器D(株式会社生産日本社製品、製品名:ユニパックG−4、幅14cm×チャック下長さ20cm)を用いた。これら4種類の試験容器A〜Dに上記の試験水袋を収納し、密閉して恒温槽にて30℃で保存し、略1週間毎に試験水袋を取り出して内包されている水の量を測定した。試験は試験容器毎にN数=3で行った。測定により得られた数値の平均値を表1に示し、これらの値をプロットしたグラフを図4に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
図4は横軸が保存日数(単位:日)、縦軸が水の減少量(単位:g)を示す。試験水袋中の水の量は4種の試験容器毎に直線的に減少した。これらの数値に基づいて、4種の試験容器における保存経過日数と水の減少量との関係についての回帰直線を得た(図4)。このようにして得られた回帰直線により、所望の保存期間までの各密閉容器における試験水袋の水の減少量が算出され得る。なお、試験容器の表面積と実際に薬液の保存のために使用する密閉容器の表面積とが異なる場合には、実際に使用する密閉容器の表面積に基づいて、試験水袋の水の減少量を換算して算出することができる。そして、加湿材に含まれる水の量を、算出された水の減少量以上とすることにより、所望の保存期間まで加湿材に水が含まれている状態を維持し、薬液の乾燥を安定して防ぐことができる。一例をあげると、試験容器B(シリカ蒸着PET)を密閉容器として用いた場合において、保存期間を2年間と設定した際の加湿材に含まれる水の量は、0.0085×730(日)=6.2g以上が好ましい。また、試験容器A(アルミニウム箔ラミネート)を密閉容器として用いた場合においては、保存期間を2年間とすると、0.0016×730日=1.2g以上が好ましい。
【0037】
このように、予め、薬液収容容器3を保存する際に使用する密閉容器2と略同じ素材から構成される試験容器と、加湿材4の袋体42から構成される試験水袋とを用い、試験水袋中の水の減少量を経時的に測定することにより、これらの条件における時間の経過と水の減少量との相関が検討され、回帰直線や近似曲線等を得ることができる。この得られた回帰直線等によって、所望の保存期間までの密閉容器2における試験水袋の水の減少量が算出され得る。そして、加湿材4に含まれる水の量を、上記算出された水の減少量以上とすることにより、加湿材4の水の量の調整が行われる。
【0038】
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0039】
(1)シリカ蒸着PETフィルムからなる密閉容器について
ポリエチレンフィルムと不織布とを貼合わせたラミネート不織布を用いて、内層がポリエチレンフィルム、外層が不織布からなる袋体を作成した。袋の中にエタノール5%と安息香酸0.05%を含む水溶液をシリンジで5mL注入した後、シリンジの針穴部分を省くように袋をヒートシールし、5cm×5cmの大きさの加湿材を得た。他方、小容量の薬液収容容器として、低密度ポリエチレンからなる容量2.5mLのねじ蓋付スクイズチューブ(株式会社シン・コーポレイション製品、製品名:ドロッパーチューブII)を準備した。このスクイズチューブに0.4mL(400mg)の検体抽出液を収容し、チューブの蓋を閉めて密封して、スクイズチューブ10個を一組とした重さ(試験開始時のチューブの重さ)を測定した。次に、フィルム構成がシリカを蒸着したPET12μm/PE20μm/CPP40μmの透明蒸着フィルムからなる密閉容器(株式会社生産日本社製品、製品名:ラミグリップVP−G、幅14cm×チャック下長さ20cm)に、加湿材と0.4mLの溶液入りスクイズチューブを10個収容し、チャックを留めて密閉した。30℃温度条件下でこの容器を保存し、保存開始から32日後、63日後及び92日後に密閉容器からスクイズチューブを10個取り出し、スクイズチューブ10個あたりの重さを測定した。試験はN数=5で行った。測定により得られた数値を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
また、上記試験において、加湿材を使用しない場合につき、上記同様に測定を行った。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
測定値の平均値を算出し、スクイズチューブ1個あたりの薬液の減少量の平均値を算出した。結果を表4に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
(2)アルミニウム箔ラミネートフィルムからなる密閉容器について
フィルム構成がPET12μm/PE20μm/AL7μm/PE20μm/PE60μmのアルミ箔ラミネートフィルムからなる袋(株式会社生産日本社製品、製品名:ラミジップAL−11、幅11cm×チャック下長さ17cm+底ガゼット幅33mm)を密閉容器として用いて、実施例1と同様の試験を行った。ただし、スクイズチューブの10個あたりの重さの測定については、保存開始から92日後及び136日後に行った。結果を表5(加湿材あり)及び表6(加湿材なし)に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
測定値の平均値を算出し、スクイズチューブ1個あたりの薬液の減少量の平均値を算出した。結果を表7に示す。
【0049】
【表7】

【0050】
(3)PEフィルムからなる密閉容器について
フィルム厚み0.04mmの低密度ポリエチレンフィルムからなる袋(株式会社生産日本社製品、製品名:ユニパックG−4、幅14cm×チャック下長さ20cm)を密閉容器として用いて、実施例2と同様の試験を行った。ただし、加湿材は使用しない場合のみを試験した。結果を表8に示す。
【0051】
【表8】

【0052】
測定値の平均値を算出し、スクイズチューブ1個あたりの薬液の減少量の平均値を算出した。結果を表9に示す。
【表9】

【0053】
上記(1)〜(3)の試験結果について、スクイズチューブ1個あたりの薬液の減少量の平均値をプロットしたグラフを図5(a)に示す。図5(a)の横軸は保存日数(単位:日)、縦軸は薬液の減少量(単位:mg)である。密閉容器内に加湿材を配置させることにより、薬液の乾燥による減少が抑制されることが示された。
【0054】
さらに、上記試験結果に基づいた回帰直線より、薬液の残量と保存日数との関係を示すグラフを図5(b)に示す。図5(b)の横軸は保存日数(単位:日)、縦軸は薬液の残存量(単位:mg)である。試験開始時に400mg収容されていた薬液は、シリカ蒸着PETフィルムからなる密閉容器において、加湿材のない場合には保存後1年以内に300mg以下となり、保存後2年では半量以下の160mg程度となるが、加湿材のある場合には保存後2年経過しても350mg以上を維持することがわかった。さらに、アルミニウム箔ラミネートフィルムからなる密閉容器においては保存後3年経過しても380mgを維持しており、本発明の保存装置によって、長期間薬液を乾燥から保護しつつ保存できることが示された。
【0055】
(4)袋体の外層を構成する不織布の吸収性能について
本発明では、密閉容器内で水滴や結露等が生じた場合に、袋体表面の不織布により、水滴等が吸収されることが好ましい。そこで、複数の種類の不織布で袋体を形成し、それらの吸収性能について実験を行った。まず、15ミクロンのポリエチレンフィルムと目付17g/mのレーヨン不織布とを貼合わせたラミネート不織布を用いて、内層がポリエチレンフィルム、外層がレーヨン不織布からなる5cm×5cmの大きさの袋体を作成した。本試験においては、袋体の中には何も入れなかった。次に、フィルム構成がナイロン15μm/PE60μmの透明2層フィルムからなる密閉容器(株式会社生産日本社製品、製品名:ラミジップLZ−D、幅8.5cm×チャック下長さ12cm)に、1mLの蒸留水を入れ、上記のように作成した袋体を収容し、チャックを留めて密閉した。室温条件下でこの容器を保存し、保存開始から24時間後に密閉容器から袋体を取り出して重量を測定し、袋体の吸水量を測定した(試験区1)。試験はN数=2で行った。また、同様の試験を15ミクロンのポリエチレンフィルムと目付20g/mのレーヨン不織布(試験区2)、15ミクロンのポリエチレンフィルムと目付25g/mのレーヨン不織布(試験区3)、15ミクロンのポリエチレンフィルムと目付30g/mのレーヨン不織布(試験区4)、15ミクロンのポリエチレンフィルムとナイロン、ポリエステル及びポリプロピレンの繊維からなるスパンボンド不織布(旭化成せんい株式会社製品、エルタスPU5020)(試験区5)について行った。測定により得られた各袋体表面の不織布の吸水量の数値を表10に示す。
【0056】
【表10】

【0057】
上記(4)の試験結果により、袋体の外層を構成する不織布は、密閉容器内で生じた水滴等を吸収することができ、一定量の水分を保持できることが示された。また、特に不織布として、レーヨン不織布が吸水量に優れ、好適に使用され得ることが示された。このように袋体の外層に保持された水分は、密閉容器内の湿度環境の変化に応じて密閉容器内に速やかに放出され、密閉容器内の湿度を一定に保つことができる。
【0058】
本発明は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0059】
1 保存装置
2 密閉容器
21 チャック
3 薬液収容容器
30 薬液
4 加湿材
40 シート
40a 内層
40b 外層
41 溶着部
42 袋体
43 内包物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、前記密閉容器内に収納される少なくとも1つの薬液収容容器と、前記密閉容器内に収納される加湿材とを備え、前記加湿材は少なくとも水を内包する袋体により構成され、該袋体は合成樹脂フィルムよりなる内層と不織布よりなる外層とを備えていることを特徴とする薬液の保存装置。
【請求項2】
前記袋体は不織布に合成樹脂フィルムを貼り合わせて形成された積層体からなることを特徴とする請求項1に記載の薬液の保存装置。
【請求項3】
前記不織布は、吸水性素材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液の保存装置。
【請求項4】
前記袋体は、さらに抗菌剤を内包することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬液の保存装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬液の保存装置における薬液収容容器に薬液を収容し、薬液が収容された前記薬液収容容器と加湿材とを密閉容器に収納し、前記密閉容器を密閉することを特徴とする薬液の保存方法。
【請求項6】
前記加湿材は、所望の保存期間まで前記加湿材に水が含まれているように、水の量が調整されていることを特徴とする請求項5に記載の薬液の保存方法。
【請求項7】
前記水の量の調整は、
予め、前記密閉容器と略同じ素材から構成される試験容器内に、前記袋体の内部に所定量の水を内包する試験水袋を収納し、該試験容器を密閉した後、該試験水袋に内包されている水の量の変化を経時的に測定し、
所望の保存期間までの前記密閉容器における該試験水袋の水の減少量を算出し、
前記加湿材に含まれる水の量を、前記算出された水の減少量以上とすることにより行われることを特徴とする請求項6に記載の薬液の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36986(P2013−36986A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153619(P2012−153619)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【出願人】(500016039)株式会社シン・コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】