説明

薬液供給システム

【課題】 薬液供給システムにおいて、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給の微少流量制御を可能とする。
【解決手段】 内部に薬液5を収容して密閉可能とされた薬液タンク10と、この薬液タンクに薬液供給パイプ7で接続され外部からの高圧気体の送気により上記薬液タンクから供給される薬液を負圧吸引して該薬液を噴射するノズル11と、上記薬液タンクの上面に接続され内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させる空気吸引手段12と、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段13とを備え、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御するものである。これにより、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給を微少流量で制御できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体基板、ディスプレイ基板、ガラス、その他の工業用の膜形成対象物等に対し各種処理の薬液を塗布する際の薬液供給システムに関し、詳しくは、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給の微少流量制御を可能とする薬液供給システムに係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体装置、液晶表示装置などの製造工程において、半導体基板やディスプレイ基板などに薄膜を塗布するには、図6に示すように、例えばウェハ1を水平支持して高速回転させ、その上方から該ウェハ1の中心孔2寄りの位置に薬液3を滴下する薬液供給システムが用いられている。そして、上記高速回転するウェハ1上に滴下された薬液3に働く遠心力の作用により、該薬液3をウェハ1の表面上で放射状に伸ばして、該ウェハ1の表面全体に薄膜を塗布していた。
【0003】また他の例として、半導体基板やディスプレイ基板などにスプレーコーティングにより薬液を塗布する場合は、図7に示すように、内部に薬液5を収容した薬液タンク6と、この薬液タンク6に接続された薬液供給パイプ7と、この薬液供給パイプ7に接続され上記薬液タンク6から薬液5を供給されて吐出するノズル8とを有する薬液供給システムが用いられている。なお、上記薬液供給パイプ7の途中には、ノズル8への薬液5の供給流量を制御するための例えばニードルバルブ等の流量調整バルブ9が設けられている。そして、上記薬液タンク6内の薬液5を加圧したり、図示省略のポンプで圧送して、流量調整バルブ9で薬液供給の流量を制御してノズル8から薬液5を吐出して塗布していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、図6に示す従来例では、ウェハ1上に滴下する薬液3の量があまり少なくては拡散せず、例えば10ml/min以上の量を滴下することとなる。そして、この場合、薬液3は高速回転するウェハ1により遠心力で外周方向へ拡散されて、一部はウェハ1の表面に塗布されるが、他の部分は該ウェハ1の外側に捨てられるものであった。このように、薬液3を滴下する量が多いことと、該薬液3がウェハ1の外側に捨てられる量が多いことから、薬液塗布の効率が低下すると共に、非経済的であった。また、ウェハ1の外側に捨てられる薬液3によってその周辺が汚染されることがあった。
【0005】また、図7に示す従来例では、ノズル8に供給する薬液5の流量制御を、薬液供給パイプ7の途中に設けられたニードルバルブ等の流量調整バルブ9で行っていたので、このような流量調整バルブ9では例えば1ml/min程度或いはそれ以下のレベルでの流量制御はできないものであった。したがって、例えば1ml/min以下の流量制御により薬液5を供給して、対象物に対して薄膜を均一に塗布することが難しかった。また、薬液タンク6内の薬液5にゴミやカーボン等の異物が混入していると、ノズル8への供給途中で上記流量調整バルブ9のところで詰まりが発生して、ノズル8へ薬液5を供給できない状態となることがあった。したがって、薬液塗布の工程がスムーズに進まないことがあった。
【0006】そこで、本発明は、このような問題点に対処し、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルを利用して薬液供給の微少流量制御を可能とする薬液供給システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による薬液供給システムは、内部に薬液を収容して密閉可能とされた薬液タンクと、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続され外部からの高圧気体の送気により上記薬液タンクから供給される薬液を負圧吸引して該薬液を噴射するノズルと、上記薬液タンクの上面に接続され内部空間の空気を吸引して負圧を発生させる空気吸引手段と、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段とを備え、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御するものである。
【0008】このような構成により、密閉可能とされた薬液タンクで内部に薬液を収容しておき、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続されたノズルに外部から高圧気体を送気し上記薬液タンクから供給される薬液を負圧吸引して該ノズルで薬液を噴射し、上記薬液タンクの上面に接続された空気吸引手段で内部空間の空気を吸引して負圧を発生させ、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し正圧供給手段で任意圧力の正圧ガスを供給し、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御する。これにより、薬液タンク内の圧力とノズルに発生する負圧との差により薬液供給の微少流量制御を可能とする。
【0009】また、上記正圧供給手段と薬液タンクとの間には、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段を備えたものである。これにより、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整する。
【0010】さらに、上記圧力制御手段は、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いてもよい。これにより、圧力や温度変化の影響を受けず、薬液タンクに供給する正圧ガスの流量を質量流量に比例して安定に調整を行って、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整する。
【0011】さらにまた、上記正圧供給手段には、大気又は不活性ガスを供給するものである。特に、不活性ガスを供給した場合は、薬液タンク内の薬液に影響を与えず安定に保つことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による薬液供給システムの実施の形態を示すシステム概要図である。この薬液供給システムは、例えば半導体基板、ディスプレイ基板、ガラス、その他の工業用の膜形成対象物等に対し各種処理の薬液を塗布する際に薬液を供給するもので、薬液タンク10と、ノズル11と、空気吸引手段12と、正圧供給手段13とを備えている。
【0013】上記薬液タンク10は、工業用の膜形成対象物等に塗布する各種の薬液5を内部に収容しておくもので、所定の大きさの容器状に形成され、上面に蓋をして密閉可能とされている。そして、薬液タンク10内には負圧空間が形成されるようになっている。なお、薬液タンク10の上面には、該薬液タンク10内に薬液5を供給するためのパイプライン14が接続されている。また、符号15は上記パイプライン14の途中に設けられた開閉バルブを示している。
【0014】上記薬液タンク10の例えば底面には薬液供給パイプ7が接続され、この薬液供給パイプ7の先端にノズル11が接続されている。なお、上記薬液供給パイプ7の途中には、ノズル11への供給路を開閉する開閉バルブ16が設けられている。上記ノズル11は、外部からの高圧気体の送気により上記薬液タンク10から薬液供給パイプ7を介して供給される薬液5を負圧吸引して該薬液5を噴射するもので、該ノズル11の側面部に上記薬液供給パイプ7の先端が接続され、ノズル11の軸心部に高圧気体供給パイプ17が接続されている。なお、符号18は上記高圧気体供給パイプ17の後端に設けられたコンプレッサを示している。
【0015】図2及び図3は、上記ノズル11の具体的な構造の一例を示す断面図である。図2は上記薬液供給パイプ7が接続される面を含む縦断面図であり、図3は図2の断面と直交する縦断面図である。図2において、ノズル11の側面部には薬液送入口19が形成され、この薬液送入口19に上記薬液供給パイプ7の先端が接続される。また、ノズル11の軸心部の後端には高圧気体送入口20が形成され、この高圧気体送入口20に上記高圧気体供給パイプ17の先端が接続される。
【0016】この状態で、図1に示すコンプレッサ18の運転により高圧気体供給パイプ17を介して送られた高圧気体は、図2に示す高圧気体送入口20からノズル11内の軸心部に流入し、小口径の一次気体噴出口21を通って高速噴射し内部混合室22に入る。このとき、図1に示す薬液供給パイプ7が接続された薬液送入口19の位置にベンチュリ管の原理により負圧を生じ、上記薬液供給パイプ7からの薬液5を内部混合室22内に吸引する。上記一次気体噴出口21から噴出する高速気体は、薬液送入口19より吸引する薬液5を破砕し、広くなった内部混合室22の中で薬液5と混合され、流速を落としてノズル先端の噴出口23から噴射される。
【0017】一方、図3に示すように、上記高圧気体送入口20からノズル11内に流入した高圧気体は、ノズル11内の軸心部の外側に形成された二次気体通路24を通って、ノズル11の先端部にスパイラル状に形成された二次気体噴出溝25に至り、高速な旋回流となって噴射される。このとき、上記噴出口23から噴射される薬液5を二次混合しながら破砕微粒化して前方に噴射する。なお、図2及び図3では、旋回流を発生して噴射するノズル11の例を示したが、本発明はこれに限られず、旋回流を発生しない通常のノズルであってもよい。
【0018】上記薬液タンク10の上面には、図1に示すように、空気吸引手段12が接続されている。この空気吸引手段12は、上記薬液タンク10の上面に接続され内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させるもので、基端部に真空ポンプなどが接続されたパイプラインから成る。そして、上記空気吸引手段12と薬液タンク10との間には、上記真空ポンプで吸引して発生される負圧を制御する圧力コントローラ26が設けられ、薬液タンク10への接続の前位置には開閉バルブ27が設けられている。
【0019】また、上記薬液タンク10の例えば上面には、正圧供給手段13が接続されている。この正圧供給手段13は、上記薬液タンク10内に形成される負圧空間Sに対し任意圧力の正圧ガスを供給するもので、基端部に1〜2気圧の不活性ガス、例えば窒素ガス(N2)を供給する窒素ガスボンベなどが接続されたパイプラインから成る。そして、上記正圧供給手段13と薬液タンク10との間には、圧力コントローラ28が設けられている。この圧力コントローラ28は、薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段となるもので、上記窒素ガスボンベから供給される窒素ガスの圧力を制御するようになっている。なお、上記空気吸引手段12のパイプラインと、正圧供給手段13のパイプラインとは、途中で連結されて上記開閉バルブ27を介して薬液タンク10に共通に接続されている。
【0020】そして、上記正圧供給手段13により薬液タンク10に正圧ガスを供給し、圧力コントローラ28により正圧ガスの圧力を調整することによって、上記ノズル11への薬液の供給流量を制御するようになっている。
【0021】次に、このように構成された薬液供給システムの動作について説明する。まず、図1において、パイプライン14の途中の開閉バルブ15を開いて薬液タンク10内に薬液5を所定量だけ供給する。その後、上記開閉バルブ15を閉じると共に、空気吸引手段12と正圧供給手段13の系統の開閉バルブ27を閉じて、上記薬液タンク10内を密閉状態とする。
【0022】この状態で、薬液タンク10の底面に接続された薬液供給パイプ7の開閉バルブ16を閉じ、上記空気吸引手段12の系統の開閉バルブ27を開け、該空気吸引手段12に接続された真空ポンプを運転し、薬液タンク10の内部空間Sの空気を吸引して負圧(例えば0.1〜0.4気圧)を発生させる。
【0023】次に、上記開閉バルブ16を開くと共に、図1に示すコンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、前述のようにノズル11内の薬液送入口19の位置に負圧(例えば0.1〜0.4気圧)が発生して薬液供給パイプ7からの薬液5を吸引しようとする。このとき、薬液タンク10の内部空間Sは負圧とされているので、ノズル11内に発生する負圧(P1)と、上記空間Sの負圧(P2)とが等しくなるように調整する。ここで、開閉バルブ16よりも下流側の薬液供給パイプ7に圧力P1を計測する圧力計を取り付け、薬液タンク10の内部空間Sの圧力P2を計測する圧力計を取り付けてもよい。
【0024】この状態では、P1=P2となって薬液5は流れず、薬液供給パイプ7内で薬液5が安定して停止する。そして、この状態をもって薬液供給の初期状態とし、ここから薬液供給の工程がスタートする。なお、このとき、薬液5は図2に示すノズル11内の薬液送入口19の付近で停止することとなるので、ノズル11へ至る経路が乾くことがない。したがって、その後において、上記ノズル11から薬液5をすぐに噴射することができる。
【0025】次に、ノズル11の噴出口23を薬液5の塗布対象物に向けてセットし、上記と同様にコンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。しかし、この状態ではP1=P2であるので、薬液5はノズル11から噴射されない。そこで、図1に示す正圧供給手段13に設けられた圧力コントローラ28を適宜調整して、薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を調整する。すると、上記薬液タンク10内の圧力が変化して圧力P2が大きくなって、P2とP1との差が生じてこの差圧により薬液タンク10からノズル11に薬液5が供給される。これにより、上記ノズル11から薬液5が噴射される。
【0026】このとき、上記圧力コントローラ28による圧力調整を細かく行うことにより、圧力P2とP1との差を微細に調整して、ノズル11への薬液5の供給流量を微少に制御することができる。例えば、従来は不可能であった1ml/min程度或いはそれ以下のレベル(例えば0.1~0.9ml/min程度)での流量制御が可能となる。また、ノズル11へ至る薬液供給パイプ7の途中には従来のようなニードルバルブ等の流量調整バルブが設けられていないので、この部分に異物が詰まることはなく、スムーズに薬液5がノズル11に供給される。さらに、薬液5が粘度の高いものであっても、ノズル11の負圧及び圧力P2とP1との差圧により薬液5が供給される。
【0027】なお、図1においては、正圧供給手段13の圧力制御手段として圧力コントローラ28を設けたものとしたが、本発明はこれに限られず、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いてもよい。この場合は、圧力や温度変化の影響を受けず、薬液タンクに供給する正圧ガスの流量を質量流量に比例して安定に調整を行って、薬液タンク10に供給する正圧ガスの圧力を容易に調整することができる。また、上記正圧供給手段13に窒素ガスを供給する代わりに、大気を供給してもよい。
【0028】図4は本発明の他の実施形態を示すシステム概要図である。この実施形態は、図1に示す空気吸引手段12及び圧力コントローラ26を省略し、ノズル11の直前の薬液供給パイプ7からパイプライン29を分岐して薬液タンク10の上面に接続し、このパイプライン29を空気吸引手段としたものである。なお、符号30は上記パイプライン29の途中に設けられた開閉バルブを示している。
【0029】上記パイプライン29から成る空気吸引手段で薬液タンク10の内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させるには、薬液供給パイプ7の途中の開閉バルブ16を閉じると共に、分岐したパイプライン29の開閉バルブ30を開けて、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送る。すると、図2を参照して説明したようにノズル11内の薬液送入口19の位置に負圧(例えば0.1〜0.4気圧)が発生して、この負圧が上記パイプライン29を介して薬液タンク10の内部空間Sに連通され、該内部空間Sの空気を吸引する。この空気吸引により、上記薬液タンク10の内部空間Sが負圧P2(例えば0.1〜0.4気圧)とされる。この状態で、上記パイプライン29の開閉バルブ30を閉じる。
【0030】この実施形態による薬液供給システムは、図1に示す空気吸引手段12及び圧力コントローラ26を、分岐したパイプライン29から成る空気吸引手段に替えただけであり、該パイプライン29の系統で薬液タンク10の内部空間Sの空気を吸引して負圧P2にした後、薬液供給パイプ7の途中の開閉バルブ16を開くだけで、その他は図1の場合と全く同様に動作する。この場合は、図1に示す空気吸引手段12及び圧力コントローラ26並びに図示省略の真空ポンプを用いずに薬液タンク10の内部空間Sを負圧P2とすることができるので、システム全体の構成を簡略化することができる。
【0031】図5は、図1に示す実施形態による薬液供給システムの具体的な実施例を示す構成図である。この実施例では、薬液タンク10に薬液供給タンク31と洗浄液タンク32とを接続し、上記薬液タンク10内に薬液を供給したり、洗浄液を供給するようになっている。上記薬液供給タンク31には薬液吸上げパイプ33が挿入され、開閉バルブ34を介して薬液タンク10内に薬液5を供給するためのパイプライン14に接続されている。また、上記洗浄液タンク32には洗浄液吸上げパイプ35が挿入され、開閉バルブ36を介して上記パイプライン14に接続されている。なお、上記薬液吸上げパイプ33と洗浄液吸上げパイプ35とは、薬液タンク10に対してはパイプライン14で共通に接続されている。
【0032】そして、上記薬液供給タンク31の上面には、薬液補充パイプ37が接続され、この薬液補充パイプ37の薬液補充口の手前には開閉バルブ38が設けられている。また、上記洗浄液タンク32の上面には、洗浄液補充パイプ39が接続され、この洗浄液補充パイプ39の洗浄液補充口の手前には開閉バルブ40が設けられている。
【0033】このような構成で、薬液タンク10に薬液を供給するには、まず、洗浄液吸上げパイプ35の開閉バルブ36を閉じると共に、薬液吸上げパイプ33の開閉バルブ34を開き、薬液タンク10の薬液供給パイプ7の開閉バルブ16を閉じておく。次に、空気吸引手段12の系統の開閉バルブ27を開け、該空気吸引手段12に接続された真空ポンプを運転して薬液タンク10の内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させる。これにより、上記内部空間Sの負圧によって薬液供給タンク31から薬液を吸い上げ、パイプライン14を介して薬液が薬液タンク10内に供給される。その後、上記開閉バルブ34を閉じて薬液の供給を終了する。このとき、上記薬液タンク10の内部空間Sは負圧に保たれる。
【0034】このように薬液が供給されたところで、上記薬液供給パイプ7の開閉バルブ16を開くと共に、コンプレッサ18から高圧気体供給パイプ17を介してノズル11へ高圧気体を送ることにより、図1を参照して説明したと同様に動作してノズル11から薬液が噴射される。
【0035】次に、所定の薬液の塗布を終了して薬液タンク10及び薬液供給パイプ7等を洗浄するときは、上記薬液タンク10から薬液を排出して、該薬液タンク10に洗浄液を供給する。まず、薬液吸上げパイプ33の開閉バルブ34を閉じると共に、洗浄液吸上げパイプ35の開閉バルブ36を開き、薬液タンク10の薬液供給パイプ7の開閉バルブ16を閉じておく。次に、空気吸引手段12の系統の開閉バルブ27を開け、該空気吸引手段12に接続された真空ポンプを運転して薬液タンク10の内部空間Sの空気を吸引して負圧を発生させる。これにより、上記内部空間Sの負圧によって洗浄液タンク32から洗浄液を吸い上げ、パイプライン14を介して洗浄液が薬液タンク10内に供給される。その後、上記開閉バルブ36を閉じて洗浄液の供給を終了する。
【0036】そして、薬液供給パイプ7の開閉バルブ16を開き、空気吸引手段12及び正圧供給手段13の系統の開閉バルブ27を開いて、上記正圧供給手段13から薬液タンク10内に正圧ガスを供給したり、空気吸引手段12で薬液タンク10の空気を吸引したりして、洗浄液を流して薬液タンク10及び薬液供給パイプ7等を洗浄する。その後、正圧供給手段13による正圧ガスの供給又は空気吸引手段12による吸引を停止し、洗浄液を外部に放出して洗浄を終了する。
【0037】なお、図5は図1に示す実施形態による薬液供給システムの具体的な実施例を示したが、図4に示す実施形態についても同様に適用して具体的な実施例を構成することができる。
【0038】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る発明によれば、薬液タンクの上面に接続された空気吸引手段で内部空間の空気を吸引して負圧を発生させ、該薬液タンク内に形成される負圧空間に対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって、薬液タンクからの薬液を負圧吸引して噴射するノズルへの薬液の供給流量を制御することができる。これにより、薬液タンク内の圧力とノズルに発生する負圧との差により薬液供給を微少流量で制御することができる。したがって、対象物に対して薬液を均一に塗布することができる。また、薬液の使用量を低減して、薬液塗布の効率を向上できると共に、経済性を改善することができる。さらに、薬液タンク内の負圧により、内部に収容された薬液の脱気をすることができ、ノズルへ至る薬液供給パイプの所謂ベーパーロックを防止できる。さらにまた、薬液が粘度の高いものであっても、ノズルの負圧及び薬液タンク内の圧力との差によりノズルに薬液を供給できる。また、ノズルへ至る薬液供給パイプの途中には何も設けられていないので、この部分に異物が詰まることはなく、スムーズに薬液をノズルに供給できる。
【0039】また、請求項2に係る発明によれば、上記正圧供給手段と薬液タンクとの間に、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段を備えたことにより、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整することができる。したがって、薬液タンク内の圧力調整により、上記ノズルへの薬液供給を微少流量で制御することができる。
【0040】さらに、請求項3に係る発明によれば、上記圧力制御手段として、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いることにより、圧力や温度変化の影響を受けず、薬液タンクに供給する正圧ガスの流量を質量流量に比例して安定に調整を行って、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を容易に調整することができる。したがって、薬液タンク内の圧力を容易かつ安定に調整して、上記ノズルへの薬液供給を微少流量で制御することができる。
【0041】さらにまた、請求項4に係る発明によれば、上記正圧供給手段に、大気又は不活性ガスを供給するものとしたことにより、特に、不活性ガスを供給した場合は、薬液タンク内の薬液に影響を与えず安定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による薬液供給システムの実施の形態を示すシステム概要図である。
【図2】 上記薬液供給システムに用いるノズルの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図3】 図2に示す断面と直交する断面における上記ノズルの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図4】 本発明の他の実施形態を示すシステム概要図である。
【図5】 図1に示す実施形態による薬液供給システムの具体的な実施例を示す構成図である。
【図6】 従来技術において半導体基板やディスプレイ基板などに薄膜を塗布する状態を示す説明図である。
【図7】 従来技術において対象基板などにスプレーコーティングにより薬液を塗布する場合の薬液供給システムを示すシステム概要図である。
【符号の説明】
5…薬液
7…薬液供給パイプ
10…薬液タンク
11…ノズル
12…空気吸引手段
13…正圧供給手段
16,27,30…開閉バルブ
17…高圧気体供給パイプ
18…コンプレッサ
26,28…圧力コントローラ
29…分岐されたパイプライン
31…薬液供給タンク
32…洗浄液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に薬液を収容して密閉可能とされた薬液タンクと、この薬液タンクに薬液供給パイプで接続され外部からの高圧気体の送気により上記薬液タンクから供給される薬液を負圧吸引して該薬液を噴射するノズルと、上記薬液タンクの上面に接続され内部空間の空気を吸引して負圧を発生させる空気吸引手段と、上記薬液タンク内に形成される負圧空間に対し任意圧力の正圧ガスを供給する正圧供給手段とを備え、上記正圧供給手段により薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整することによって上記ノズルへの薬液の供給流量を制御することを特徴とする薬液供給システム。
【請求項2】上記正圧供給手段と薬液タンクとの間には、薬液タンクに供給する正圧ガスの圧力を調整する圧力制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の薬液供給システム。
【請求項3】上記圧力制御手段は、正圧ガスの質量流量を測定して流量を調整するマスフローコントローラを用いることを特徴とする請求項2記載の薬液供給システム。
【請求項4】上記正圧供給手段には、大気又は不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬液供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2003−135999(P2003−135999A)
【公開日】平成15年5月13日(2003.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−334421(P2001−334421)
【出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(391061510)株式会社藤森技術研究所 (20)
【出願人】(501423816)株式会社エヌシーエス (7)
【Fターム(参考)】