説明

薬液供給装置及び薬液供給装置を用いた半導体装置の製造方法

【課題】薬液の寿命を大幅に延ばすことができる薬液供給装置を提供する。
【解決手段】ボトル11には薬液が貯蓄され、添加調整部15に送出される。添加量制御部19により、ボトル11から供給された薬液の劣化度に応じた量の改質剤が、添加調整部15にて薬液に添加される。改質剤が添加された薬液は、ノズル17により基板上に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上にSOG(Spin On Glass)等の薬液を供給する薬液供給装置及び薬液供給装置を用いた半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造においては、多層レジストプロセスの中間膜や層間絶縁膜としてSOG材料が使用されている。しかし、SOG材料は、ゲル化が非可逆的に進行するため、一般に保存安定性に難があることが知られている。そのため、所定の保証期限を過ぎた、SOG材料を含む薬液(以下、SOG薬液)が装填されたボトルは廃棄しているが、無駄になるSOG薬液量が膨大になるという問題があった。
【0003】
この対策として、各種技術が開示されている。一例を挙げると、特許文献1では、SOG薬液の固形成分を保存する部分と、溶媒を保存する部分と、固形成分と溶媒をある割合で混合する部分を有することを特徴とする、SOGコートを行う半導体製造装置を用いる技術が開示されている。本技術によれば、使用量に応じて薬液を装置内で調製するため、無駄になる薬液が減少するというメリットがある。
【0004】
しかしながら、この方法は薬液の製造設備を、SOGコートを行う半導体製造装置に取り込むため、装置が大型化してしまうという問題があった。また、SOG材料の種類によっては、固形成分を溶媒と混合することによって製造することが困難なものも存在する。
【特許文献1】特開2003−100729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、薬液の寿命を大幅に延ばすことができる薬液供給装置及び薬液供給装置を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施態様の薬液供給装置は、薬液を貯蓄する貯蓄部と、前記貯蓄部から供給された前記薬液の劣化度に応じた量の改質剤を前記薬液に添加する添加部と、前記改質剤が添加された前記薬液を基板上に供給するノズル部とを具備することを特徴とする。
【0007】
この発明の他の実施態様の半導体装置の製造方法は、薬液を貯蓄する貯蓄部から供給された前記薬液の劣化度に応じた量の改質剤を前記薬液に添加する工程と、前記改質剤が添加された前記薬液を基板上に供給する工程と、前記基板上に供給された前記薬液を用いて膜を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、薬液の寿命を大幅に延ばすことができる薬液供給装置及び薬液供給装置を用いた半導体装置の製造方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0010】
[第1実施形態]
まず、この発明の第1実施形態の薬液供給装置について説明する。この薬液供給装置は、薬液を半導体基板上に供給するものであり、供給路の途中に薬液の改質剤として、例えば水(例えば、純水)を薬液に添加する機構を備えている。この実施形態では、SOG薬液を3層レジストプロセスの中間層として用いる例を示す。すなわち、半導体基板上に有機膜が形成され、この実施形態の薬液供給装置により、有機膜上にSOG薬液が塗布される。さらに、SOG薬液から形成されたSOG膜上にレジスト膜が塗布され、フォトリソグラフィ工程によりレジストパターンが形成される。
【0011】
図1は、第1実施形態の薬液供給装置の構成を示す図である。図1に示すように、この薬液供給装置は、ボトル11、タンク部12、ポンプ部13、フィルタ部14、添加調整部(例えば、バッファタンク)15、バルブ16、ノズル17、及び添加量制御部19を備えている。添加調整部15及び添加量制御部19は、薬液に改質剤を添加するための添加部を構成している。
【0012】
ボトル11は薬液供給装置内に装着されており、ボトル11にはSOG薬液が入っている。ボトル11内のSOG薬液は、配送管に送出され、配送管を通ってタンク部12に一時的に蓄えられる。タンク部12内のSOG薬液は、ポンプ部13に供給される。ポンプ部13に供給されたSOG薬液は、ポンプ部13により押し出され、フィルタ部14を通って添加調整部15に供給される。フィルタ部14では、SOG薬液に含まれる不用物が取り除かれる。添加調整部15には添加量制御部19が接続されている。添加量制御部19は、SOG薬液が入ったボトル11が装置内に装着されてからの経過時間に応じて、SOG薬液に添加する改質剤の量、例えば水の量を制御する。添加調整部15では、添加量制御部19の制御により、SOG薬液が入ったボトル11が装置内に装着されてからの経過時間に応じて設定された量の改質剤、例えば設定された量の水がSOG薬液に添加される。添加調整部15により水が添加されたSOG薬液は、バルブ16を通ってノズル17から半導体基板(ウェハ)18上に塗布される。
【0013】
このような構成を有する薬液供給装置を用いて、SOG薬液を半導体基板上に供給する動作を以下に詳細に述べる。
【0014】
まず、SOG薬液の劣化度(または変質度)に応じた水の適切な添加量を求める必要がある。SOG薬液が劣化すると分子量が上昇し、このSOG膜上に形成されたレジストパターンの断面形状が食われ形状となる。一方、SOG薬液の水分含有率が多くなると、レジストパターンの断面形状は矩形形状から裾引き形状となる。レジストパターンの断面形状は、矩形形状となることが望ましく、ここではレジストパターンの断面形状が矩形形状となるSOG薬液の水分含有率を求めた。
【0015】
SOG薬液の劣化度と、矩形形状とするために必要なSOG薬液の水分含有率との関係を図2に示す。横軸は、薬液供給装置にSOG薬液が入ったボトル11を装着してからの経過日数を示しており、SOG薬液の劣化度を表している。縦軸は、レジストパターンの断面形状が矩形形状となるのに必要なSOG薬液の水分含有率を示している。
【0016】
図2に示した関係より、SOG薬液を装着後、日数が経過するのに従って、SOG薬液の水分含有率を増やす必要があることがわかる。具体的には、以下のような処理を行う。例えば、ある時刻において、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから、すなわちSOG薬液が装置内に注入されてから、3日間経過していた。このため、添加量制御部19により添加調整部15としてのバッファタンクに水を注入し、SOG薬液における水の含有率が2%になるようにした。また、別の時刻において、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから、6日間経過していた。このため、添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が5%になるようにした。さらに、別の時刻において、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから、15日間経過していた。このため、添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が15%になるようにした。
【0017】
このように各々の経過日に、前記所定の水の含有率としたSOG薬液により成膜したSOG膜上にレジストパターンを形成し、これらレジストパターンを観察したところ、レジストパターンの断面形状はいずれも美しい矩形形状に保たれていた。また、これらレジストパターンの感度もほぼ一定に保たれていた。さらに、レジストパターンに対して欠陥検査を行ったが、パターン倒れは発生していなかった。
【0018】
一方、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから15日を越えていた場合は、水を添加しても、塗布性に異常が出ること、形成される膜厚がスペック内に入らないことがわかっているため、装置に装着されていたSOG薬液が入ったボトル11を廃棄すると共に、装置内に注入されていたSOG薬液をパージして廃棄した。
【0019】
なお、SOG薬液に水の添加を行わない従来の技術によれば、SOG薬液が入ったボトル11が装置に装着されてから6日を越えると、このSOG膜上に形成されたレジストパターンの断面形状は食われ形状となり、パターン倒れが頻発した。このため、装置への装着から6日を越えたSOG薬液は廃棄しなければならず、装着されたSOG薬液を無駄にすることになる。また、装置への装着から6日経過していない場合であっても、装着からの経過時間によってレジストパターンの断面形状が微妙に異なり、寸法制御性に難があるという問題がある。
【0020】
これに対して第1実施形態によれば、SOG薬液が入ったボトル11が装置に装着されてからの経過時間に関わらず、SOG膜上に形成されるレジストパターンの断面形状を矩形形状に保つことが可能となる。すなわち、性能劣化を起こしやすい薬液であっても、一定の性能を維持しつつ使用期間の延長が可能になる。
【0021】
また、薬液の劣化度は、貯蓄部への薬液供給後の経過時間、薬液の分子量、または薬液により成膜された膜の膜厚のうち、少なくともいずれかに基づいて決定されるようにしてもよい。薬液の分子量は、薬液の溶質の分子量をさす。貯蓄部への薬液供給後の経過時間は、薬液供給装置内にSOG薬液が入ったボトルが装着されてからの経過時間、あるいは外部より装置内へ薬液が供給されてからの経過時間を指す。この場合、前記外部では薬液の劣化は起こらず、装置内へ薬液が供給された時点から劣化が開始されるものとする。
【0022】
なお、第1実施形態では、薬液を半導体基板上に供給し、半導体基板上に塗布膜を形成するために薬液供給装置が用いられる例を示したが、これに限定されるわけではない。また、第1実施形態では、SOG薬液の改質剤として水を用いたが、アルコール系物質を用いてもよい。
【0023】
SOG材料の固形成分に対し親和性の高い水やアルコール系物質をSOG薬液に添加すると、SOG薬液の塗布時における溶剤の揮発速度が遅くなるため、SOG膜の緻密度が上がる。分子量の上がったSOG薬液を塗布して成膜した場合でも、SOG薬液に水やアルコール系物質を添加しておくことにより、分子量の上がる前と同程度の緻密な膜が得られる。これにより、分子量の上がる前と同様の物性を持つSOG膜を得ることが可能になり、実質的に薬液の寿命を大幅に延ばすことができる。
【0024】
また、SOG薬液は時間経過に伴って分子量が上昇していくという特徴があり、分子量を薬液の劣化度の指標として用いることも可能である。また、分子量が上昇すると粘度が上昇し、SOG薬液により成膜されるSOG膜の膜厚が厚くなる。このため、SOG膜の膜厚を劣化度の指標として用いることも可能である。すなわち、薬液の劣化度は、薬液の分子量または薬液の成膜後の膜厚の少なくともいずれか1つによって決定してもよい。
【0025】
また、SOG薬液への改質剤の添加量は、SOG薬液の劣化度に関わらず、SOG膜上に形成されるレジスト膜の感度、レジストパターンの形状、レジストパターンの倒壊耐性のうち、少なくともいずれかが同一になるように決定してもよい。例えば、分子量の上がったSOG薬液を用いてSOG膜を成膜し、このSOG膜上にレジストパターンを形成すると、レジスト感度は上昇する。ところが、分子量の上がったSOG薬液に水またはアルコール系物質を添加すると、SOG膜上に形成されるレジストパターンのレジスト感度は低下し、分子量が低いSOG薬液を用いてSOG膜を成膜し、このSOG膜上にレジストパターンを形成した場合のレジスト感度に近づく。また、分子量の上がったSOG薬液を用いてSOG膜を成膜し、このSOG膜上にレジストパターンを形成すると、レジストパターンの断面形状は一般に食われ形状になる。ところが、分子量の上がったSOG薬液に水またはアルコール系物質を添加すると、SOG膜上に形成されるレジストパターンでは、分子量が低いSOG薬液を用いてSOG膜を成膜し、このSOG膜上にレジストパターンを形成した場合と同様な良好な断面形状が得られる。また、分子量の上がったSOG薬液を用いてSOG膜を成膜し、このSOG膜上にレジストパターンを形成すると、レジストパターンが倒壊し易くなる。ところが、分子量の上がったSOG薬液に水またはアルコール系物質を添加すると、SOG膜上に形成されるレジストパターンの倒壊耐性が高くなり、分子量が低いSOG薬液を用いてSOG膜を成膜し、このSOG膜上にレジストパターンを形成した場合のレジストパターンの倒壊耐性に近づく。
【0026】
また、この第1実施形態の薬液供給装置を用いて製造する半導体装置としては、例えば、液晶表示に用いるFPD(Flat Panel Display)や、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)などがある。
【0027】
[第2実施形態]
次に、この発明の第2実施形態の薬液供給装置について説明する。前記第1実施形態における構成と同様の部分には同じ符号を付す。第1実施形態と同様に、この薬液供給装置は、薬液を半導体基板上に供給するものであり、供給路の途中に改質剤として、例えば水(例えば、純水)を薬液に添加する機構を備えている。ここでも、SOG薬液を3層レジストプロセスの中間層として用いる例を示す。この第2実施形態では、SOG薬液が入ったボトルは冷蔵された状態で装置に装着されており、ボトルを装置に装着した後でも、時間経過によるSOG薬液の劣化はない。ボトルからSOG薬液が送出された時点から、SOG薬液の劣化が生じ始める。
【0028】
図3は、第2実施形態の薬液供給装置の構成を示す図である。図3に示すように、この薬液供給装置は、冷蔵貯蔵部21、ボトル11、タンク部12、ポンプ部13、フィルタ部14、供給調整部15、バルブ16、ノズル17、及び添加量制御部19を備えている。冷蔵貯蔵部21には、SOG薬液が入ったボトル11が装着される。冷蔵貯蔵部21に装着されたボトル11内のSOG薬液は冷蔵され、必要に応じて配送管内に送出される。配送管内に送出されたSOG薬液は、配送管を通ってタンク部12に一時的に蓄えられる。その後、第1実施形態と同様に、SOG薬液はフィルタ部14を通って添加調整部15に供給される。
【0029】
ここで、ボトル11は冷蔵貯蔵部21内に装着されているため、ボトル11内のSOG薬液は冷蔵されている。このため、ボトル11を装置に装着した後でも、時間経過によるSOG薬液の劣化はなく、SOG薬液がボトル11(または冷蔵貯蔵部21)から配送管内に送出された時点からSOG薬液の劣化が始まる。したがって、SOG薬液の劣化度(または変質度)は、ボトル11(または冷蔵貯蔵部21)から送出されたSOG薬液の配送管内の滞留時間から見積もることができる。言い換えると、SOG薬液がボトル11(または冷蔵貯蔵部21)から配送管内に送出された時点からの経過時間により見積もることができる。SOG薬液が劣化すると分子量が上昇し、このSOG膜上に形成されたレジストパターンの形状が食われ形状となる。一方、SOG薬液の水分含有率が多くなると、レジストパターンの断面形状は矩形形状から裾引き形状となる。ここでは、レジストパターンの断面形状が矩形形状となるSOG薬液の水分含有率を求めた。
【0030】
SOG薬液の劣化度と、矩形形状とするために必要なSOG薬液の水分含有率との関係を図4に示す。横軸は、SOG薬液がボトル11から送出された時点からの経過日数、言い換えるとSOG薬液の配送管内の滞留日数を示しており、SOG薬液の劣化度を表している。縦軸は、レジストパターンの断面形状が矩形形状となるのに必要なSOG薬液の水分含有率を示している。
【0031】
図4に示した関係より、SOG薬液の配送管内の滞留日数が経過するのに従って、SOG薬液への水分添加量を増やす必要があることがわかる。具体的には、以下のような処理を行う。例えば、ある時刻において、添加調整部(バッファタンク)15内のSOG薬液は冷蔵貯蔵部21内のボトル11から送出された時点から、3日間経過していた。このため、添加量制御部19により添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が2%になるようにした。また、別の時刻において、添加調整部15内のSOG薬液は冷蔵貯蔵部21内のボトル11から送出された時点から、6日間経過していた。このため、添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が5%になるようにした。さらに、別の時刻において、添加調整部15内のSOG薬液は冷蔵貯蔵部21内のボトル11から送出された時点から、15日間経過していた。このため、添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が15%になるようにした。
【0032】
このように各々の経過日に前記所定の水の含有率としたSOG薬液により成膜したSOG膜上にレジストパターンを形成し、これらレジストパターンを観察したところ、レジストパターンの断面形状はいずれも美しい矩形形状に保たれていた。また、これらレジストパターンの感度もほぼ一定に保たれていた。さらに、レジストパターンに対して欠陥検査を行ったが、パターン倒れは発生していなかった。
【0033】
一方、添加調整部(バッファタンク)15内のSOG薬液が冷蔵貯蔵部21内のボトル11から送出された時点から、15日を越えていた場合は、水を添加しても、塗布性に異常が出ること、形成される膜厚がスペック内に入らないことがわかっているため、装置の配管内に滞留するSOG薬液をパージして廃棄した。
【0034】
以上説明したようにこの第2実施形態では、SOG薬液が入ったボトル11は冷蔵貯蔵部21内に装着されており、ボトル11を装置に装着した後でも、時間経過によるSOG薬液の劣化は生じない。ボトル11(または冷蔵貯蔵部21)からSOG薬液が送出された時点から、SOG薬液の劣化が開始される。したがって、ボトル11(または冷蔵貯蔵部21)からSOG薬液が送出された時点からの経過時間に応じて、設定された量の改質剤をSOG薬液に添加することにより、SOG薬液により成膜したSOG膜上にレジストパターンを形成したとき、所望のレジストパターン、すなわち断面形状が矩形形状であるレジストパターンを形成することができる。
【0035】
また、薬液の劣化度は、貯蓄部より薬液が送出されてからの経過時間、薬液の分子量、または薬液により成膜された膜の膜厚のうち、少なくともいずれかに基づいて決定される。貯蓄部より薬液が送出されてからの経過時間は、SOG薬液がボトル(または冷蔵貯蔵部)から配送管内に送出された時点からの経過時間、言い換えると、ボトル(または冷蔵貯蔵部)から送出されたSOG薬液の配送管内の滞留時間を指す。
【0036】
第2実施形態によれば、SOG薬液が入ったボトル11が装置に装着されてからの経過時間に関わらず、SOG膜上に形成されるレジストパターンの断面形状を矩形形状に保つことが可能となる。すなわち、性能劣化を起こしやすい薬液であっても、一定の性能を維持しつつ使用期間の延長が可能になる。なお、第1実施形態では、SOG薬液の改質剤として水を用いたが、アルコール系物質を用いてもよい。その他の構成及び効果については、前述した第1実施形態と同様である。
【0037】
[第3実施形態]
次に、この発明の第3実施形態の薬液供給装置について説明する。前記第1実施形態における構成と同様の部分には同じ符号を付す。第1実施形態と同様に、この薬液供給装置は、薬液を半導体基板上に供給するものであり、供給路の途中に改質剤として、例えば水(例えば、純水)を薬液に添加する機構を備えている。この第3実施形態では、SOG薬液を層間絶縁膜(低誘電率膜(Low−k膜)等)として用いる例を示す。
【0038】
図5は、第3実施形態の薬液供給装置の構成を示す図である。図3に示すように、この薬液供給装置は、ボトル11、タンク部12、ポンプ部13、フィルタ部14、添加調整部(例えば、バッファタンク)15、バルブ16、ノズル17、及び添加量制御部19を備えている。
【0039】
ボトル11は薬液供給装置内に装着されており、ボトル11にはSOG薬液が入っている。ボトル11内のSOG薬液は、配送管に送出され、配送管を通ってタンク部12に一時的に蓄えられる。続いて、第1実施形態と同様に、SOG薬液は添加調整部15に供給される。添加量制御部19は、SOG薬液が入ったボトル11が装置内に装着されてからの経過時間に応じて、SOG薬液に添加する改質剤の量、例えば水の量を制御する。添加調整部15では、添加量制御部19の制御により、SOG薬液が入ったボトル11が装置内に装着されてからの経過時間に応じて設定された量の改質剤、例えば設定された量の水がSOG薬液に添加される。添加調整部15により水が添加されたSOG薬液は、ノズル17から半導体基板18上に供給される。
【0040】
このような構成を有する薬液供給装置を用いて、SOG薬液を半導体基板上に供給する動作を以下に詳細に述べる。
【0041】
まず、SOG薬液の劣化度(または変質度)に応じた水の適切な添加量を求める必要がある。SOG薬液が劣化すると分子量が上昇し、このSOG薬液により形成される成膜後の層間絶縁膜がポーラスになり、誘電率が低下する。一方、SOG薬液の水分含有率が多くなると、層間絶縁膜が緻密になり誘電率は上昇する。ここでは、層間絶縁膜の誘電率が一定となる水分量含有率を求めた。
【0042】
SOG薬液の劣化度と、層間絶縁膜の誘電率が一定となるのに必要なSOG薬液の水分含有率との関係を図6に示す。横軸は、薬液供給装置にSOG薬液が入ったボトル11を装着してからの経過日数を示しており、SOG薬液の劣化度を表している。縦軸は、SOG薬液により形成される層間絶縁膜の誘電率が一定となるのに必要なSOG薬液の水分含有率を示している。
【0043】
図6に示した関係より、SOG薬液を装着後、日数が経過するのに従って、SOG薬液の水分含有率を増やす必要があることがわかる。具体的には、以下のような処理を行う。例えば、ある時刻において、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから、すなわちSOG薬液が装置内に注入されてから、7日間経過していた。このため、添加量制御部19により添加調整部15としてのバッファタンクに水を注入し、SOG薬液における水の含有率が3%になるようにした。また、別の時刻において、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから、14日間経過していた。このため、添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が6%になるようにした。さらに、別の時刻において、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから、28日間経過していた。このため、添加調整部15に水を注入し、SOG薬液における水の含有率が15%になるようにした。
【0044】
このように各々の経過日に、前記所定の水の含有率としたSOG薬液により成膜した層間絶縁膜(SOG膜)の誘電率を測定した結果、目標通りほぼ同一の誘電率を示した。
【0045】
一方、SOG薬液が入ったボトル11が、装置に装着されてから28日を越えていた場合は、水を添加しても、塗布性に異常が出ることや、誘電率を調整できないこと、形成される膜厚がスペック内に入らないことがわかっているため、装置に装着されていたSOG薬液が入ったボトル11を廃棄すると共に、装置内に注入されていたSOG薬液をパージして廃棄した。
【0046】
なお、SOG薬液に水分の添加を行わない従来の技術によれば、SOG薬液が入ったボトル11が装置に装着されてから14日を越えると、このSOG薬液により成膜した層間絶縁膜がポーラスになり、誘電率が低下した。このため、装置への装着から14日を越えたSOG薬液は廃棄しなければならず、装着されたSOG薬液を無駄にすることになる。また、装置への装着から14日経過していない場合であっても、装着からの経過時間によって誘電率が微妙に異なり、デバイスの電気特性が変動するという問題がある。
【0047】
これに対して第3実施形態では、SOG薬液が入ったボトル11が装置に装着されてからの経過時間に関わらず、所定の誘電率を有する層間絶縁膜を形成することが可能となる。すなわち、性能劣化を起こしやすい薬液であっても、一定の性能を維持しつつ使用期間の延長が可能になる。
【0048】
また、薬液の劣化度は、貯蓄部への薬液供給後の経過時間、薬液の分子量、または薬液により成膜された膜の膜厚あるいは誘電率のうち、少なくともいずれかに基づいて決定されるようにしてもよい。貯蓄部への薬液供給後の経過時間は、薬液供給装置内にSOG薬液が入ったボトルが装着されてからの経過時間、あるいは外部より装置内へ薬液が供給されてからの経過時間を指す。この場合、前記外部では薬液の劣化は起こらず、装置内へ薬液が供給された時点から劣化が開始されるものとする。
【0049】
なお、第3実施形態では、SOG薬液を用いて層間絶縁膜としての低誘電率膜(Low−k膜)を形成することが可能である。また、SOG薬液の改質剤として水を用いたが、水に限るわけではなく、アルコール系物質を用いてもよい。その他の構成及び効果については、前述した第1実施形態と同様である。
【0050】
また、前述した各実施形態はそれぞれ、単独で実施できるばかりでなく、適宜組み合わせて実施することも可能である。さらに、前述した各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、各実施形態において開示した複数の構成要件の適宜な組み合わせにより、種々の段階の発明を抽出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の第1実施形態の薬液供給装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態におけるSOG薬液の劣化度と、矩形形状とするために必要なSOG薬液の水分含有率との関係を示す図である。
【図3】この発明の第2実施形態の薬液供給装置の構成を示す図である。
【図4】第2実施形態におけるSOG薬液の劣化度と、矩形形状とするために必要なSOG薬液の水分含有率との関係を示す図である。
【図5】この発明の第3実施形態の薬液供給装置の構成を示す図である。
【図6】第3実施形態におけるSOG薬液の劣化度と、層間絶縁膜の誘電率が一定となるのに必要なSOG薬液の水分含有率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
11…ボトル、12…タンク部、13…ポンプ部、14…フィルタ部、15…添加調整部、16…バルブ、17…ノズル、18…半導体基板(ウェハ)、19…添加量制御部、21…冷蔵貯蔵部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を貯蓄する貯蓄部と、
前記貯蓄部から供給された前記薬液の劣化度に応じた量の改質剤を前記薬液に添加する添加部と、
前記改質剤が添加された前記薬液を基板上に供給するノズル部と、
を具備することを特徴とする薬液供給装置。
【請求項2】
前記薬液の劣化度は、前記貯蓄部への薬液供給後の経過時間、または前記貯蓄部より前記薬液が送出されてからの経過時間のうち、いずれかの前記経過時間に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記薬液の劣化度は、前記薬液の分子量または前記薬液により成膜された膜の膜厚の少なくともいずれか1つによって決定されることを特徴とする請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記改質剤は、水またはアルコール系物質のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項5】
薬液を貯蓄する貯蓄部から供給された前記薬液の劣化度に応じた量の改質剤を前記薬液に添加する工程と、
前記改質剤が添加された前記薬液を基板上に供給する工程と、
前記基板上に供給された前記薬液を用いて膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−147448(P2008−147448A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333389(P2006−333389)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】