説明

薬液供給装置

【課題】薬液から発生した気体の気体溜まりが形成されるのを防止する。
【解決手段】発泡性の薬液を他の液体が流れる主通路(32)まで供給する薬液供給装置(10)が、薬液を貯蔵する薬液貯蔵タンク(21)と、薬液貯蔵タンクと主通路とを接続する供給通路(23)と、供給通路に設けられたポンプ(25)と、ポンプよりも下流の供給通路からポンプよりも上流の供給通路まで供給通路内の薬液を循環させる循環通路(24)と、薬液を循環させられる供給通路の一部分および循環通路のうちの少なくとも一方の内部を大気に開放させる大気開放部(22)とを具備する。大気開放部は、上方が開放している希釈液タンクであるのが好ましい。また、供給通路の少なくとも一部は、薬液貯蔵タンクから主通路に向かう方向において水平面に対して斜め上方に傾斜しているのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性の薬液、例えば次亜塩素酸ナトリウム水溶液を水などの液体に供給する薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の工業分野において、発泡性の薬液を水などの液体に供給することが要求される場合がある。例えば工場内の各種装置を洗浄するために、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を水に供給して、所望の殺菌能力を備えた洗浄液を作成することがある。
【0003】
また、特許文献1には、上水に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を均等に注入するために、配水口付近に圧力調整弁が設けられた輸送管を用いることが開示されている。
【特許文献1】特開2000−189979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発泡性の薬液は、薬液を供給する供給通路内で発泡して薬液内に気泡が発生することがある。特に、薬液が次亜塩素酸ナトリウム水溶液である場合には、温度が例えば25℃程度まで上昇すると次亜塩素酸ナトリウムの分解速度が上昇して多量の気泡が発生する。
【0005】
このような場合には、発生した気泡が供給通路内で滞留して気体溜まりが形成される。この気体溜まりによって、供給通路内の薬液の流れが阻害され、所定流量の薬液を供給できないようになる。このため、供給通路の内径を必要以上に大きくし、気体溜まりが形成された場合であっても、要求される流量の薬液を供給できるようにすることが行われている。
【0006】
前述したようにこのような気体溜まりは薬液の分解によって発生するので、気体溜まり発生後における薬液の濃度は要求される薬液の濃度よりも低くなる。従って、薬液が発泡すると、薬液の供給が困難になるだけでなく、所定の薬液濃度を維持することもできなくなる。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薬液から気体が発生して供給通路内に気体溜まりが形成されるのを防止することのできる薬液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、発泡性の薬液を他の液体が流れる主通路まで供給する薬液供給装置において、前記薬液を貯蔵する薬液貯蔵タンクと、該薬液貯蔵タンクと前記主通路とを接続する供給通路と、該供給通路に設けられたポンプと、前記ポンプよりも下流の前記供給通路と前記ポンプよりも上流の前記供給通路とを前記供給通路内の前記薬液を循環させる循環通路と、前記薬液を循環させられる前記供給通路の一部分および前記循環通路のうちの少なくとも一方の内部を大気に開放させる大気開放部とを具備する薬液供給装置が提供される。
【0009】
すなわち1番目の発明においては、循環ポンプを駆動することにより供給通路と循環通路との間で薬液を循環させられる。そして、循環する薬液が大気開放部を通過するときに、薬液内の気体が大気開放部から外部に流出するようになる。このため、供給通路および循環通路の内部に発生した気体が気体溜まりとなるのを防止できる。それゆえ、供給通路および/または循環通路の内径を必要以上に大きくする必要はなく、薬液供給装置の製造費用を抑えることも可能である。
【0010】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記薬液を循環させられる前記供給通路の一部分および前記循環通路のうちの少なくとも一方にはタンクが設けられており、前記大気開放部は前記タンクに連通可能に配置されている。
すなわち2番目の発明においては、大気開放部を通過して気体が外部に排出された薬液をタンクによって効率的に回収して再利用することができる。
【0011】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記タンクは、前記薬液貯蔵タンク内の前記薬液を希釈する希釈液タンクである。
すなわち3番目の発明においては、希釈液タンクにおいて希釈された薬液を主通路に供給するようにしている。このため、薬液貯蔵タンクの薬液を直接的に供給する場合と比較して、主通路内の液体に必要とされる薬液濃度の調整を容易に行うことができる。
【0012】
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、前記供給通路の少なくとも一部は、前記薬液貯蔵タンクから前記主通路に向かう方向において水平面に対して斜め上方に傾斜している。
すなわち4番目の発明においては、水平状態にある供給通路の一部に気体が滞留するのを、比較的簡易な構成により防止することができる。
【0013】
5番目の発明によれば、1番目から4番目のいずれかの発明において、さらに、前記循環通路には開閉弁が設けられている。
すなわち5番目の発明においては、薬液を主通路に供給するときには循環通路を閉鎖することによって、薬液を主通路に効率的に供給できる。
【0014】
6番目の発明によれば、1番目から5番目のいずれかの発明において、前記発泡性の薬液が次亜塩素酸ナトリウム水溶液である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同一の部材には同一の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明に基づく薬液供給装置を含む処理水形成システム全体の略図である。図1に示される処理水形成システム10は、原水、例えば井戸水を貯蔵する原水タンク11と、原水を炭濾過する炭濾過部12と、炭濾過部12を通過した原水を処理水として保存する処理水タンク13とを主に含んでいる。
【0016】
図示されるように、原水タンク11と炭濾過部12とを接続する主通路31内の原水には、次亜塩素酸ナトリウム一次添加ユニット15によって、所定量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が添加される。また、炭濾過部12と処理水タンク13とを接続する主通路32内の原水には、次亜塩素酸ナトリウム二次添加ユニット20によって、次亜塩素酸ナトリウム水溶液がさらに添加される。
【0017】
このような添加処理によって所望の殺菌能力を備えた処理水は所望の殺菌能力を備えた状態で処理水タンク13に貯蔵される。そして、処理水タンク13内の処理水は、例えば工場内の各種の装置を洗浄するときなどに、必要に応じて使用される。
【0018】
図1に示される次亜塩素酸ナトリウム一次添加ユニット15により供給される次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度は比較的高く、従って主通路32内の液体を所望の濃度に調節するのが困難な場合がある。次亜塩素酸ナトリウム二次添加ユニット20を用いて希釈液を主通路32に再度供給する理由は、主通路32内の液体の濃度を所望の濃度になるように微調整するためである。
【0019】
以下、図2を参照して、次亜塩素酸ナトリウム二次添加ユニット20(図1に示される破線Aに対応)を詳細に説明する。なお、以下においては、次亜塩素酸ナトリウム二次添加ユニット20を薬液供給装置20と呼ぶこととする。
【0020】
図2に示される薬液供給装置20は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液の原液(濃度12%)が貯蔵される原液貯蔵タンク21と水源29とを含んでいる。原液貯蔵タンク21内の原液を水源29からの水、例えば井戸で希釈することによって、所定の濃度(3%)の希釈液が薬液供給装置20の希釈液タンク22に一時的に貯蔵される。なお、図1に示される原水タンク11が図2に示される水源29を兼ねていてもよい。
【0021】
図2から分かるように、希釈液タンク22はその上部22Aが開放しており、希釈液タンク22内の希釈液が大気に開放するようになっている。なお、希釈液タンク22の上部22A以外の箇所が大気に開放していてもよい。
【0022】
図示されるように、供給通路23の一端23Aが希釈液タンク22の一側に接続されており、供給通路23は希釈液タンク22から主通路32まで延びている。図示されるように、供給通路23には、モータ26により駆動されるポンプ25、例えばパルスポンプが設けられている。ポンプ25が駆動することによって、希釈液タンク22内の希釈液は主通路32まで供給される。さらに、主通路32の直前においては、第一開閉弁27が供給通路23に設けられている。第一開閉弁27は要求されるときに開放して、希釈液を主通路32に供給する。
【0023】
また、供給通路23においてポンプ25と第一開閉弁27との間に分岐部33が設けられており、この分岐部33から循環通路24が延びている。図示されるように、循環通路24の先端24Aは希釈液タンク22の上部22A内に延びている。循環通路24の先端24Aは、希釈液タンク22内における希釈液の液面よりも上方に位置決めされている。さらに、循環通路24には第二開閉弁28が分岐部33に隣接して設けられている。
【0024】
このような構成であるために、一端23Aと分岐部33との間に位置する供給通路23の一部分と循環通路24とが循環経路を形成しているのが分かるであろう。
【0025】
以下、本発明に基づく薬液供給装置20の動作について説明する。
希釈液タンク22内の希釈液を主通路32に供給するときには、供給通路23の第一開閉弁27を開放すると共に循環通路24の第二開閉弁28を閉鎖する。次いで、モータ26によってポンプ25を駆動させると、希釈液タンク22内の希釈液は供給通路23を通って主通路32まで供給される。前述したように希釈液タンク22における希釈液の濃度は比較的低いので、本発明においては、そのような希釈液によって主通路32内の液体の濃度を容易に微調整することができる。
【0026】
一方、希釈液を主通路32に供給する必要が無い場合には、供給通路23の第一開閉弁27を閉鎖すると共に循環通路24の第二開閉弁28を開放する。そして、ポンプ25を同様に駆動させると、希釈液タンク22内の希釈液は、供給通路23の前述した一部分および循環通路24からなる循環経路を循環するようになる。
【0027】
図2から分かるように、この循環経路内を循環するときに、希釈液は循環通路24の先端24Aから希釈液タンク22内に供給される。このとき、希釈液内に存在しうる気体または気泡は希釈液内部から排出される。前述したように希釈液タンク22の上部22Aは開放状態にあるので、希釈液内部から排出された気泡または気体は希釈液タンク22の上部22Aから外部に流出する。なお、図面には示さないものの、そのような気体は公知の回収手段によって回収され、所定の処理を受けるものとする。
【0028】
このように本発明においては、希釈液タンク22の上部22Aを通じて希釈液内の気泡または気体を排出できるので、希釈液内の気泡を低減することができる。このため、本発明においては、供給通路23および循環通路24内に気体溜まりが形成されるのを防止できる。当然のことながら、供給通路23に設けられたポンプ25においても気体溜まりの形成を防止でき、ポンプ25内の気体溜まりによって希釈液が送液されなくなるのを避けられる。
【0029】
このように、本発明においては気体溜まりが形成されないので、供給通路における希釈液の流れが円滑になる。それゆえ、本発明においては、従来技術のように供給通路の内径を必要以上に大きくする必要はない。言い換えれば、本発明においては、従来技術の場合よりも内径の小さい供給通路23、例えば内径が約6mmの供給通路23を使用する場合であっても、希釈液に要求される流量を確保することができる。このことが、薬液供給装置20の製造費用の低減に寄与するのは明らかであろう。当然のことながら、循環通路24の内径も供給通路23の内径と同様にできる。
【0030】
また、希釈液を作成して薬液の濃度を低下させることによって、薬液から気泡が発生し難くなる。さらに、井戸水を用いて希釈液を作成した場合には、希釈液の温度を比較的低温に維持することも可能である。なお、循環作用時に希釈液が希釈液タンク22を通過すると、気体が排出されるので、希釈液内の薬液、つまり次亜塩素酸ナトリウムの濃度が低下することが想定される。そのような場合には、主通路32に供給されるべき希釈液の量を循環時間などに応じて増大させれば足りる。
【0031】
ところで、図3は本発明の一つの実施形態における供給通路の詳細図である。図3に示されるように供給通路23は可撓性のチューブ、例えばシリコーン製チューブである。そして、可撓性の供給通路23を支持するために、供給通路23は硬質の外筒34、例えば塩化ビニル製外筒に挿入されている。
【0032】
前述したように希釈液が次亜塩素酸ナトリウム水溶液の希釈液である場合には、温度が高くなると、希釈液から気泡が発生するしやすい。このため本発明においては、供給通路23を金属ではない材料、例えばシリコーンから形成するのが好ましく、それにより、供給通路23内の希釈液が大気温度の影響を受け難くさせられる。
【0033】
さらに、図3に示される実施形態においては、外筒34が供給通路23を包囲しているので、供給通路23内の希釈液は大気温度の影響をさらに受け難くできる。このような構成によって、気泡が発生して気体溜まりが形成される可能性をさらに低くできる。
【0034】
図4は供給通路が設置されている建物の断面図である。図4において破線で示されるように、従来技術の供給通路23’は天井41付近に位置する建物の複数の梁45に沿って蛇行するように配置されている。従来技術においては、希釈液が供給通路23’の蛇行部分を流れるときに希釈液が供給通路23’の内壁に衝突し、蛇行する供給通路23’が多数の気泡を発生させる要因になっていた。
【0035】
本発明における供給通路23は図4において実線で示されるように水平面に対して斜め上方に傾斜するように延びている。図4に示される矢印方向は希釈液が流れる方向であり、図2において原液貯蔵タンク21から主通路32に向かう方向に対応する。つまり、図4には示していないものの、傾斜している供給通路23の低い側の一端23Aが希釈液タンク22に接続されており、高い側の他端が主通路32に接続されている。
【0036】
このように、図4に示される供給通路23は水平状態の部分を含んでいないので、供給通路23内の希釈液から気体が発生したとしても、その気体は供給通路23に沿って流れ、供給通路23内には滞留しないようになる。このため、図4に示される実施形態においては、比較的簡易な構成により、気体の滞留を抑えることが可能となる。
【0037】
図示しない実施形態においては、希釈液タンク22を排除して、供給通路23または循環通路24内部が大気に開放させられる孔を供給通路23または循環通路24に形成してもよい。そのような場合であっても、循環時に希釈液が孔を通じて大気に開放されるので、希釈液内の気体が排出され、前述したのと同様な効果を得ることができる。また、供給通路23が挿入されている外筒34を循環通路24として使用してもよい。このような場合には、薬液供給装置20に必要とされるスペースを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に基づく薬液供給装置を含む処理水形成システム全体の略図である。
【図2】本発明に基づく薬液供給装置を示す図である。
【図3】本発明の一つの実施形態における供給通路の詳細図である。
【図4】供給通路が設置されている建物の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 処理水形成システム
11 原水タンク
12 炭濾過部
13 処理水タンク
15 次亜塩素酸ナトリウム一次添加ユニット
20 次亜塩素酸ナトリウム二次添加ユニット、薬液供給装置
21 原液貯蔵タンク
22 希釈液タンク(大気開放部)
22A 上部
23 供給通路
24 循環通路
25 ポンプ
26 モータ
27 第一開閉弁
28 第二開閉弁
29 水源
31、32 主通路
33 分岐部
34 外筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性の薬液を他の液体が流れる主通路まで供給する薬液供給装置において、
前記薬液を貯蔵する薬液貯蔵タンクと、
該薬液貯蔵タンクと前記主通路とを接続する供給通路と、
該供給通路に設けられたポンプと、
前記ポンプよりも下流の前記供給通路と前記ポンプよりも上流の前記供給通路とを前記供給通路内の前記薬液を循環させる循環通路と、
前記薬液を循環させられる前記供給通路の一部分および前記循環通路のうちの少なくとも一方の内部を大気に開放させる大気開放部とを具備する薬液供給装置。
【請求項2】
前記薬液を循環させられる前記供給通路の一部分および前記循環通路のうちの少なくとも一方にはタンクが設けられており、
前記大気開放部は前記タンクに連通可能に配置されている請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記タンクは、前記薬液貯蔵タンク内の前記薬液を希釈する希釈液タンクである請求項2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記供給通路の少なくとも一部は、前記薬液貯蔵タンクから前記主通路に向かう方向において水平面に対して斜め上方に傾斜している請求項1から3のいずれか一項に記載の薬液供給装置。
【請求項5】
さらに、前記循環通路には開閉弁が設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記発泡性の薬液が次亜塩素酸ナトリウム水溶液である請求項1から5のいずれか一項に記載の薬液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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