説明

薬液充填プラスチックアンプルおよびその製造方法

【課題】水蒸気、ガス、光線または薬物のアンプル内への浸入もしくはアンプル外への浸出、または、アンプルに収容された薬剤、薬液、溶媒等のアンプル内表面への吸収・吸着を防止できる薬液充填プラスチックアンプルおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る薬液充填プラスチックアンプル10は、容器本体部11と、その口部12を封止する融着部13と、これに連設する捩じ切り用把持部14とを備える。プラスチックアンプル10は、少なくとも内壁面側が、ガラス転移温度が110℃以下のポリ環状オレフィンを用いたものであり、ブロー・フィル・シール法により形成して得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらかじめ薬液を充填してなるプラスチック製のアンプルに関する。より詳しくは、水蒸気、水蒸気以外のガス、光線または薬物(薬剤、薬液、それらの溶媒等)の、アンプル内部への浸入もしくはアンプル外部への浸出、または、アンプル内に収容された薬剤、薬液、溶媒等の、アンプル内表面への吸収・吸着を防止することのできる薬液充填プラスチックアンプルと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を収容するアンプルには、ガラス製のものが多く用いられている。しかしながら、ガラスアンプルは、収容する薬液のpHが高いとアルカリフレークの溶出を起こす問題がある。また、アンプルを開封する際に手指に切傷を生じ易いという問題や、アンプルが破損する危険性、開封時に生じる破片が薬液中に混入する危険性等の問題もある。さらに、ガラスアンプルに含まれるアルミニウムが薬液中に溶出する危険性について、米国食品医薬品局(FDA)による勧告も出されている。そこで、近年、これらの危険性のないプラスチック製のアンプルにとって代わられつつある。
【0003】
アンプルを形成するプラスチックには、一般に、柔軟性を有し、かつ安全性が確立されているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンが用いられる。PEやPPは酸性およびアルカリ性の薬物に対して極めて安定な材質であるものの、酸素、空気、炭酸ガス等の吸収・透過性が極めて高いことから、酸化し易い薬剤、薬液を収容するアンプルの形成材料としては不向きである。とりわけ、小容量のアンプルの場合は、水分の透過に伴う内容量の減少によって、薬液の濃度が著しく増大するという問題が生じる。
【0004】
そこで、輸液バッグ等のフィルム成形品や、輸液ボトル等のブロー成形品における成形材料には、容器にガスや水蒸気の透過防止能(バリア性)を付与した多層体(積層体)を採用することが、種々検討されている。
プラスチックの積層体は、フィルムやシートを製造する際に広く行われていることであるが、アンプルの製造にフィルムやシートを用いるのは適切ではないことから、必然的に、アンプルの製造にはブロー成形が採用されることになる。
【0005】
ブロー成形によって形成されたアンプルについては、下記特許文献1や下記特許文献2に記載がある。前者に記載のアンプル(衛生品用容器)は、ポリ環状オレフィンを用いてブロー成形したものであり、後者に記載のアンプル(注射薬剤封入用容器)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のケン化物等からなる防気層を中間層として備えるものである。
【0006】
しかしながら、これらの文献には、単にアンプルをブロー成形によって形成する旨が記載されているに過ぎない。また、これらの文献では、アンプルの密封は、薬液を注入しまたは薬剤を投入した後で、その開口部を継ぎ目が生じないようにして熱シールで封止することによって達成されている。このような場合、熱シール部を形成する際の加熱に伴って多層構造が破壊されるおそれがあり、その結果、ポリ環状オレフィンやEVAを有する多層構造を採用したことに伴うガス透過防止能等の作用・効果が損なわれるおそれがある。
【0007】
一方、薬液充填プラスチックアンプルの他の製造方法としては、いわゆるブロー・フィル・シール法が挙げられる(下記特許文献3、下記特許文献4、ロンメラーグ(rommelag)社のホームページ(「Welcome to rommelag (R)」,「BTS Process- The bottelpack (R) Process」、[2003年3月19日検索]、インターネット<URL; http://www.rommelag.com/>)参照)。
【0008】
ブロー・フィル・シール法は、筒状の溶融プラスチックパリソンをメイン金型で挟むことによってアンプル本体を形成し、続いて薬液を充填した後、ヘッド金型でアンプルの頭部の形成と密封とを連続的に行うものであって、アンプルの成形、薬液の充填、アンプルの密封を連続的に行うことから、単なるブロー成形法とは大きく異なる方法であるだけでなく、薬液の注入をより一層無菌的に達成することができ、しかも大量生産とを実現し得るという利点を備えている。
【0009】
しかしながら、ブロー・フィル・シール法によって製造されたアンプルとして公知のものは、PEやPP等のポリオレフィンからなる単層体である。従って、ブロー・フィル・シール法によって積層構造のアンプルを製造することのみならず、かかる積層構造を形成する1の層にガス、水蒸気、光線および薬物に対する透過防止能(バリア性)や、薬物の吸収着(吸収、吸着)に対する防止能をもたせるということについては、何ら検討されていないのが現状である(下記特許文献3、下記特許文献4、前出のロンメラーグ社のホームページ、(株)ミューチュアルのホームページ(「包装設備−容器成形無菌充填システム」、[2003年3月19日検索]、インターネット<URL;http://www.mutual.co.jp>)、日新製薬(株)のホームページ(「ポリエチレンボトル」、[2003年3月19日検索]、インターネット<URL; http://www.yg-nissin.co.jp/BFS.htm>)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2914826号公報
【特許文献2】特開昭60−24844号公報
【特許文献3】特公昭33−8078号公報
【特許文献4】特公昭36−5985号公報
【特許文献5】特開2001−70399号公報
【特許文献6】特開平5−277154号公報
【特許文献7】特開平5−293159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ガス、水蒸気、光線および薬物に対する透過防止能(バリア性)や、薬物の吸収着に対する防止能を付与する対策としては、例えば耐ガス透過性を有する袋にアンプルを収納して保存したり、光線透過防止能(光バリア性)を有する素材でアンプルの表面を覆ったり、外装したりする方法が考えられる。しかしながら、これらの方法では別途、収納袋や表面を被覆する材料が必要になることから、製造工程が複雑になったり、製造コストが上昇したりするなどの問題がある。
【0012】
そこで本発明の目的は、水蒸気、水蒸気以外のガス、光線または薬物の、アンプル内部への浸入もしくはアンプル外部への浸出、または、アンプル内に収容された薬剤、薬液、溶媒等の、アンプル内表面への吸収・吸着を防止することのできる薬液充填プラスチックアンプルと、その製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明に係るプラスチックアンプルは、少なくとも内壁面側が、ガラス転移温度が110℃以下のポリ環状オレフィンを用いたものである、ブロー・フィル・シール法により形成してなることを特徴とする。
また、本発明に係るプラスチックアンプルは、可撓性を有する容器本体部と、当該容器本体部の口部を封止する融着部と、当該融着部に連設してなる融着部捩じ切り用把持部とを備えるものであって、上記容器本体部、融着部および把持部が、2以上の層を備える筒状のパリソンを用いて一体的に成形してなるものであり、上記容器本体部が、上記パリソンを割り型で挟んで成形し、その内部に薬液を充填してから口部を封止してなるものであり、かつ、上記パリソンの少なくとも1層が、ガス透過防止能、水蒸気透過防止能、光線透過防止能、薬物透過防止能および薬物吸収着防止能からなる群より選ばれる少なくとも1種の特性を有する機能性層であることが好ましい。
【0014】
上記の薬液充填プラスチックアンプルによれば、アンプルの製造にブロー・フィル・シール法を採用していることから、薬液の注入、密封を無菌的に達成することができる。しかも、上記本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルは、ブロー成形によって成形された空のアンプルに薬剤を充填した後、継ぎ目が生じないように開口部を溶着してなるもの(特許文献1や特許文献2に記載のアンプル参照)とは異なっており、口部の融着部位においてその層構成が破壊されるおそれがない。それゆえ、本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルでは、アンプルの成形後においても初期の特性(ガスバリア性等)を十分に発揮させることができる。
【0015】
本発明において機能性層に求められる特性とは、ガス透過防止能(ガスバリア性)、水蒸気透過防止能(水蒸気バリア性)、光線透過防止能(光線バリア性)、薬物透過防止能(薬物バリア性)および薬物吸収着防止能が挙げられる。これらの特性は、後述するように、パリソン中の機能性層として使用する部分におけるプラスチック材料やその配合剤の種類に応じて決定される。
【0016】
なお、特許文献5には、把持部を捩り切ることで開封することが可能な薬液充填プラスチックアンプルが記載されており、さらにかかるアンプルについて、ブロー・フィル・シール法で製造することができる旨や、必要に応じて多層化したり、遮光性を付与したりすることのできる旨が記載されている(段落〔0007〕、同〔0012〕)。しかしながら、同公報には、パリソン自体を多層化したり、パリソン中に上記の機能を備える素材からなる層を配することでアンプル全体に所望のバリア性を付与させたりすることについて、何ら具体的な記載がなされておらず、示唆すらなされていない。
【0017】
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルにおいて、その成形に用いられるパリソンの最内層は、ポリ環状オレフィンより形成される。
ポリ環状オレフィンは安定な材質で、安全性が確立されているものであることから、これを最内層に配置してなる薬液充填プラスチックアンプルについては、これを安全に医療用の容器として適用させることができる。
【0018】
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルにおいて、その成形に用いられるパリソンは、その最内層を除く少なくとも1層が着色剤、紫外線吸収剤および酸素吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬剤を配合してなる層であり、かつ当該層よりも内側の層が、薬物透過防止能を有する層であるのが好ましい。
パリソンの最内層を除く少なくとも1層を、着色剤および/または紫外線吸収剤を配合してなる層とすることによって、薬液充填プラスチックアンプルに光線透過防止能(光線バリア性、具体的には光、紫外線等に対するバリア性)を付与することができる。また、パリソンの最内層を除く少なくとも1層を、酸素吸収剤を配合してなる層とすることによって、薬液充填プラスチックアンプルに酸素透過防止能(酸素バリア性)を付与することができる。
【0019】
着色剤、紫外線吸収剤または酸素吸収剤を配合してなる層は、薬液等と直接に接触することによって、その内部に含まれる着色剤等が溶出するおそれがある。しかしながら、上記の薬液充填プラスチックアンプルによれば、着色剤等を配合してなる層よりも内側に薬物透過防止能を有する層が配置されることから、着色剤等がアンプルに収容される薬液中に溶出するという問題が生じるのを防止することができる。
【0020】
上記着色剤等を配合してなる層よりも内側に配置される、薬物透過防止能を有する層としては、後述するポリオール層、ポリエステル層およびポリ環状オレフィン層が挙げられる。
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルにおいて、その成形に用いられるパリソンの機能性層は、
(i) ポリアミド層を含むもの、
(ii) ポリオール層を含むもの、
(iii) ポリエステル層を含むもの、または、
(iv) ポリ環状オレフィン層を含むもの
であるのが好ましい。
【0021】
上記(i)のようにポリアミド層を含む機能性層を備えるときは、薬液充填プラスチックアンプルにガス透過防止能と水蒸気透過防止能とを付与することができる。従って、かかるアンプルは、例えば酸化し易く、酸素存在下での保存が不可とされている薬液や、水分含有量の変化によって薬効等に著しい変化が生じ得る薬液を収容する用途にも適用可能となる。
【0022】
上記(ii)のようにポリオール層を含む機能性層を備えるときは、薬液充填プラスチックアンプルにガス透過防止能、水蒸気透過防止能および薬物透過防止能および薬物吸収着防止能を付与することができる。従って、かかるアンプルは、例えば酸素存在下での保存が不可とされている薬液や、水分含有量の変化によって薬効等に著しい変化が生じ得る薬液を収容する用途にも適用可能となる。
【0023】
例えば、アンプルが着色剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等の薬剤を含む層を備える場合には、当該層よりも内側にポリオール層を配置することによって、上記薬剤が、アンプル内に充填されている薬液中に溶出するのを防止することができる。
上記(iii)のようにポリエステル層を含む機能性層を備えるときは、薬液充填プラスチックアンプルにガス透過防止能、水蒸気透過防止能、薬物透過防止能および薬物吸収着防止能を付与することができる。従って、かかるアンプルは、例えば酸素存在下での保存が不可とされている薬液や、水分含有量の変化によって薬効等に著しい変化が生じ得る薬液を収容する用途にも適用可能となる。
【0024】
ポリ環状オレフィンは、薬剤の吸着・収着防止能、薬物の透過防止能(薬物バリア性)、水蒸気の透過防止能を有しており、しかも透明性に優れるといった利点を有することから、これを医療用容器の形成材料に応用する試みがなされている(特許文献6)。それゆえ、上記(iv)のようにポリ環状オレフィン層を含む機能性層を備えるときは、薬液充填プラスチックアンプルに薬物透過防止能(薬物バリア性)と、薬物吸収着防止能と、水蒸気透過防止能とを付与することができる。
【0025】
また、例えば、アンプルが着色剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等の薬剤を含む層を備える場合には、当該層よりも内側にポリ環状オレフィン層を配置することによって、上記薬剤が、アンプル内に充填されている薬液中に溶出するのを防止することができる。
本発明では、ポリ環状オレフィン層をアンプルの最内層として用いるので、アンプルの最内層に薬物が吸収または吸着されるのを防止することができる。さらに、この場合においては、最内層を形成するポリ環状オレフィンとして、ガラス転移温度(Tg)が110℃以下のものを用いる。ガラス転移温度が上記範囲にあるポリ環状オレフィンを最内層に用いることにより、ブロー・フィル・シール法に用いられる成形金型の継ぎ目(メイン金型とヘッド金型との継ぎ目)部分において、内容液の充填、密閉後に、液漏れが生じるのを防止することができる。ポリ環状オレフィンのガラス転移温度は、上記範囲の中でも特に60〜105℃であるのが好ましく、60〜80℃であるのがより好ましい。
【0026】
なお、特許文献7には、ポリ環状オレフィンを用いて成形されたアンプルの例が記載されているが、同文献では、ブロー・フィル・シール法によってアンプルを製造することについて何ら記載されておらず、上述の液漏れの問題が生じることおよびその解決方法については示唆すらされていない。
ところで、ポリ環状オレフィンのうち、ガラス転移温度が110℃を超えるものについては、一般に、曲げ応力に対する耐性が乏しく、もろいという特徴がある。それゆえ、ガラス転移温度が110℃以下であるポリ環状オレフィンを用いてなる最内層と、ガラス転移温度が110℃を超えるポリ環状オレフィンを含む層と、を備える積層体によって、薬液充填プラスチックアンプルを形成することにより、内容液の充填、密閉後に、液漏れが生じるのを防止しつつ、アンプルの融着部(薄肉部)等を折り曲げまたは捻じ曲げることにより、アンプルの開封操作を容易なものとすることができる。
【0027】
なお、非環状のオレフィンからなるポリマーは、一般にポリ環状オレフィンに比べてその成形体の柔軟性が高く、耐衝撃性に優れている。従って、プラスチックアンプルを形成する積層体が、環状オレフィンを含む層だけでなく、非環状のポリオレフィンを含む層を備えるものである場合には、プラスチックアンプル全体の耐衝撃性を向上させることができる。
【0028】
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルは、折り切り可能な薄肉部で連結された複数のアンプルの連結体であってもよい。このような連結体とすることで、例えば、同種の薬液を収容する複数のアンプルの管理を容易なものとすることができる。
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルは、機能性層が、水蒸気透過防止能または薬物吸収着防止能を有する層である場合に、内容量が0.5〜20mLのアンプルとして使用することができる。すなわち、機能性層として、上記(i) のポリアミド層、上記(ii)のポリオール層、上記(iii)のポリエステル層、または上記(iv)のポリ環状オレフィン層を備えるプラスチックアンプルについては、内容量が0.5〜20mLである小容量のアンプルへの適用に好適となる。これは、内容量が0.5〜20mLであるアンプルは、収容液の絶対量が少ないことから、アンプルに収容されている間に溶媒が揮散したり、薬剤がアンプルに吸収着されたりすることに伴って、収容液の性状が顕著に変化するという問題が生じるところ、水蒸気透過防止能や薬物吸収着防止能等に優れたポリアミド層、ポリオール層、ポリエステル層またはポリ環状オレフィン層を設けることによって、かかる問題の発生を防止することができるからである。
【0029】
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルの製造方法は、薬液を充填してなる本発明のプラスチックアンプルの製造方法であって、
2以上の層を備え、その少なくとも1の層がガス透過防止能、水蒸気透過防止能、光線透過防止能、薬物透過防止能および薬物吸収着防止能からなる群より選ばれる少なくとも1種の特性を有する機能性層である筒状のパリソンを、容器本体部成形用の下方割り型で挟み、その内部に空洞を形成することによって容器本体部を成形した後、
当該容器本体部に薬液を充填し、次いで、
当該容器本体部の口部を上方割り型で挟んで、当該口部を封止する融着部と、当該融着部に連設してなる融着部捩じ切り用把持部とを成形する
ことを特徴とする。
【0030】
上記の製造方法によれば、薬液充填プラスチックアンプル内への薬液の注入、密封を無菌的に達成することができる。しかも、薬液を充填後、アンプルの口部を溶着させて封止するのに際して、多層プラスチックの層構成を破壊することなく、融着部を形成することができる。
それゆえ、上記の、本発明に係る製造方法は、ガス、水蒸気、光線および薬剤が内部または外部へ透過したり、アンプル内の薬剤、薬液、溶媒等が内表面に吸収または吸着したりするのを防止できる薬液充填プラスチックアンプルを製造する方法として極めて好適である。
【0031】
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルの製造方法においては、パリソンとして、(a) その最内層がポリ環状オレフィンより形成されるものを用い、必要により、
(b) その最内層を除く少なくとも1層が着色剤、紫外線吸収剤および酸素吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬剤を配合してなる層であり、かつ当該層よりも内側の層が薬物透過防止能を備える層であるもの、
を用いるのが好ましい。
【0032】
上記(a)の場合は、上記方法によって得られる薬液充填プラスチックアンプルを、医療用の容器としてより一層安全なものとすることができる。
また、前述と同様の理由により、当該ポリ環状オレフィンとして、ガラス転移温度が110℃以下のものを用い、ガラス転移温度が60〜105℃であるものを用いるのがより好ましい。
【0033】
また、上記(a)の場合においては、前述と同様の理由により、パリソンとして、ガラス転移温度110℃以下のポリ環状オレフィンより形成される最内層と、ガラス転移温度が110℃を超えるポリ環状オレフィンより形成される層と、を備えるものを用いるのが好ましい。
上記(b)の場合は、上記方法によって得られる薬液充填プラスチックアンプルに光線透過防止能(光、紫外線等に対するバリア性)を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルの一実施形態を示す一部欠截図であって、(a)はその正面図、(b)はその右側面図である。
【図2】図2は、本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルの他の実施形態を示す一部欠截正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルとその製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
<薬液充填プラスチックアンプル>
図1および図2は、本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルの一実施形態を示す図である。
【0036】
図1に示す薬液充填プラスチックアンプル10は、可撓性を有する容器本体部11と、容器本体部の口部12を封止する融着部13と、融着部13に連設してなる把持部14とを備えている。
図2に示す薬液充填プラスチックアンプル18は、図1に示すアンプル10と同様に、可撓性を有する容器本体部11と、容器本体部の口部12を封止する融着部13と、融着部13に連設してなる把持部14とを備えている。このアンプル18の場合、側縁部17同士が、捩じ切り可能な接続部19を介して連設されている。
【0037】
薬液充填プラスチックアンプルの把持部14は、折り曲げまたは捩じ曲げることによって融着部13から切り離される。把持部14を捩じ切って、融着部13および容器本体部11から切り離すことによって、容器本体部11の口部12を開放することができ、容器本体部11内に密封・充填されている薬液15を採取、排出することができる。
なお、アンプル10,18を形成する積層体が、ガラス転移温度が110℃を超えるポリ環状オレフィンを含む層とを備えるものである場合には、前述の理由により、融着部13から切り離す操作を簡易なものとすることができる。
【0038】
薬液充填プラスチックアンプルを形成するプラスチック16は、その少なくとも1層がガス透過防止能、水蒸気透過防止能、光線透過防止能、薬物透過防止能および薬物吸収着防止能からなる群より選ばれる少なくとも1種の特性を有する機能性層であることを特徴とする。
薬液充填プラスチックアンプルの側縁部17は、当該アンプルのブロー・フィル・シール法による成形時において、パリソンが金型で挟み込まれることによって形成されるものである。薬液充填プラスチックアンプル18は、例えば連設されるアンプルの数に応じたヘッドとダイとを備える、多頭式ヘッドを用いて成形することができる。
【0039】
<アンプル形成材料>
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルにおいて、当該アンプル中に含まれる機能性層は、前述のように、ガス透過防止能、水蒸気透過防止能、光線透過防止能、薬物透過防止能および薬物吸収着防止能からなる群より選ばれる少なくとも1種の特性を有することを特徴とする。かかる特性と、当該機能性層に使用するプラスチック材料の種類との対応については、前述のとおりである。
【0040】
本発明に使用可能なポリアミドとしては、これに限定されるものではないが、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12、ナイロン−12、キシリレンジアミンポリアミド等が挙げられる。
本発明に使用可能なポリエステルとしては、これに限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0041】
本発明に使用可能なポリオールとしては、これに限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール(PVOH)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。
本発明に使用可能なポリ環状オレフィンとしては、これに限定されるものではないが、エチレンとジシクロペンタジエン類との共重合体、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体、シクロペンタジエン誘導体の開環重合体、複数のシクロペンタジエン誘導体の開環共重合体、ならびにそれらの水素化物等が挙げられる。
【0042】
本発明においては、上記例示のポリ環状オレフィンの中でも特に、エチレンとノルボルネン系化合物との共重合体の水素添加物、またhは1種以上のシクロペンタジエン誘導体の開環(共)重合体の水素添加物を用いるのが好ましい。かかるポリ環状オレフィンを用いることによって、アンプルの強度や水分透過防止能をより一層良好なものとすることができ、しかも、アンプルにガス透過防止能を付与することができる。
【0043】
上記ポリ環状オレフィンには、例えば、一般式(1)で表される繰返し単位と一般式(1')で表される繰返し単位とを有するポリマーや、一般式(2)で表される繰返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【0044】
【化1】

【0045】
(式(1)および式(1')中、R,R1’,RおよびR2’は同一または異なって、水素、炭化水素残基、またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジル等の極性基を示す。R,R1’,RおよびR2’は互いに結合して環を形成してもよい。mおよびm’は1以上の整数、nおよびn’は0または1以上の整数である。)
【0046】
【化2】

【0047】
(式(2)中、RおよびRは同一または異なって、水素、炭化水素残基、またはハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジル等の極性基を示す。RおよびRは互いに結合して環を形成してもよい。xおよびzは1以上の整数、yは0または1以上の整数である。)
一般式(1)および(1')で表される繰返し単位を有するポリマーは、1種または2種以上の単量体を公知の開環重合方法によって重合させ、またはこうして得られる開環重合体を常法に従って水素添加したものである。当該ポリマーの具体例としては、日本ゼオン(株)製の商品名「ゼオノア(登録商標)」、日本合成ゴム(株)製の商品名「ARTON(登録商標)」等が挙げられる。
【0048】
一般式(2)で表される構造単位を有するポリマーは、単量体としての、1種または2種以上のノルボルネン系モノマーと、エチレンとを公知の方法によって付加共重合させたもの、および/またはこれを常法に従って水素添加したものである。当該ポリマーの具体例としては、三井化学(株)製の商品名「アペル(登録商標)」、ティコナGmbH製の商品名「トパス(登録商標)」等が挙げられる。
【0049】
上記一般式(1),(1')および(2)で表される繰返し単位を有するポリマーのうち、その水素添加物は、いずれも飽和ポリマーであることから、ガス遮蔽性や水分遮蔽性に加えて、耐熱性や透明性、さらには安定性の点で優れている。
本発明に用いられるポリ環状オレフィンのメルトフローレート(MFR)は、アンプルの成形性や成形品の力学的特性等の観点から、4〜30g/10分(190℃)の範囲にあるのが好ましい。
【0050】
本発明に用いられるポリ環状オレフィンの分子量は特に限定されるものではないが、数平均分子量<Mn>において1万〜10万であるのが好ましく、2万〜5万であるのがより好ましい。なお、分子量は、例えばシクロヘキサンを溶媒とするゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析によって測定することができる。
本発明において、機能性層の形成に使用可能な樹脂としては、上記例示のもの以外に、例えば変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン(ガス透過防止能、水蒸気透過防止能)、ポリアクリロニトリル(ガス透過防止能、水蒸気透過防止能、薬物透過防止能・薬物吸収着防止能)等が挙げられる。
【0051】
変性ポリオレフィンとしては、無極性ポリマーであるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに、カルボキシル基等の官能基を付加したもの(例えば、マレイン酸等の不飽和カルボン酸をグラフト重合させて変性したポリオレフィン等)などが挙げられる。具体例的には、例えば三井化学(株)製の接着性ポリオレフィン〔商品名「アドマー(R) LB540」、同「アドマー(R) NF510」、同「アドマー(R) UF300」など〕;三菱化学(株)製の高接着性樹脂〔商品名「モディック−AP(R) P512V」、同「モディック−AP(R) L103」など〕等が挙げられる。これらの変性ポリオレフィンは、接着する層の樹脂の種類に応じて、適宜選択して用いればよい。
【0052】
光線透過防止能(光線バリア性)を有する層を形成するには、プラスチック中に下記の顔料や紫外線吸収剤を配合すればよい。光線バリア性材料の形成に用いられる顔料としては、これに限定されるものではないが、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ベンガラ、二酸化ケイ素等の無機顔料や、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系の有機顔料等が挙げられる。
【0053】
一方、光線バリア性材料の形成に用いられる紫外線吸収剤としては、これに限定されるものではないが、例えばフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;2,4−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレーと、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系等が挙げられる。上記の顔料や紫外線吸収剤は、光線バリア性層を構成するプラスチック中に0.01〜5重量%程度添加するのが好ましい。
【0054】
ガス透過防止能(ガスバリア性)を有する層のうち、特に酸素バリア性を有する層を形成するには、プラスチック中に鉄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アトリウム、ピロガロール、アスコルビン酸、トコフェロール等の酸素吸収剤を配合すればよい。酸素吸収剤は、酸素バリア性層を形成するプラスチック中に0.15〜5重量%程度添加するのが好ましい。
【0055】
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルにおいて、その機能性層以外の層については、一般に、ポリオレフィンを用いて形成するのが好適である。かかるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の、従来、医療用プラスチック容器に用いられている種々のポリオレフィンが挙げられる。また、必要に応じて、層間に不飽和カルボン酸変性ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の接着性樹脂を配することもできる。これらの他の層を形成プラスチックについては、層構成や容器の形状等に合わせて、密度、MFR等の性状を広い範囲から適宜選択することができる。
【0056】
本発明に使用可能なポリオレフィンは特に限定されるものではなく、従来公知の種々のポリオレフィンを採用することができる。なお、種々のポリオレフィンの中でも特に、ポリエチレンやポリプロピレンを用いるのが好ましい。
ポリエチレン(PE)には、いわゆる高圧法(分岐状)低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等の、各種のPEを用いることができる。PEの密度は、0.900g/cmから0.965g/cmまでの、PEプラスチックとして一般的な範囲の中から適宜選択することができる。ポリ環状オレフィン用いてなる層との成形性やアンプルの力学的特性等の観点からは、比較的低密度の範囲で、具体的には0.910〜0.930g/cmの範囲で選択するのが好ましい。PEのメルトフローレート(MFR)は、ポリ環状オレフィン用いてなる層との成形性やアンプルの力学的特性等の観点から、0.2〜20g/10分(190℃)であるのが好ましい。
【0057】
PEはホモポリマーに限定されるものではなく、コポリマーであってもよい。この場合のコモノマーとしては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1,4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等のα−オレフィン類が好ましい。コモノマーの含有割合は20モル%以下であるのが好ましく、3〜20モル%程度であるのがより好ましい。
ポリプロピレン(PP)の種類、性状についても特に限定されるものではないが、PPとして一般的なアイソタクチックPPまたはシンジオタクチックPP(すなわち、結晶性のホモポリマー)、もしくはこれらを主成分とする結晶性のコポリマーを採用するのが好適である。当該結晶性コポリマーにおけるコモノマーは、エチレン、ブテンー1等のα−オレフィン類であるのが好ましい。コモノマーの含有割合は30モル%以下であるのが好ましく、より好ましくは2〜30モル%程度、さらに好ましくは3〜25モル%程度である。PPのメルトフローレート(MFR)は、ポリ環状オレフィン用いてなる層との成形性やアンプルの力学的特性等の観点から、0.2〜20g/10分(190℃)であるのが好ましい。
【0058】
本発明のプラスチックアンプルに酸素透過防止能(酸素バリア性)を付与するには、プラスチック中に鉄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アトリウム、ピロガロール、アスコルビン酸、トコフェロール等の酸素吸収剤を配合すればよい。酸素吸収剤は、酸素バリア性層を形成するプラスチック中に0.15〜5重量%程度添加するのが好ましい。また、本発明のプラスチックアンプルを形成するプラスチックには、ブチルヒドロキシトルエン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の安定化剤;銀−ゼオライト、ヒノキチオール等の抗菌剤;フタル酸エステル等の可塑剤等を、適宜適量、混合することができる。このような添加剤を配合したプラスチックを用いる場合には、アンプルを積層体とし、かつ上記添加剤を配合するプラスチックの層を内壁面側以外の層とするのが好ましい。
【0059】
<アンプルの層構成>
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルの最内層は、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン、またはポリ環状オレフィンを用いるのが好ましい。ポリオレフィンやポリ環状オレフィンは、前述のとおり、薬剤、薬液に対する安全性や安定性が確立しており、さらに溶着性も優れているからである。
【0060】
薬物透過防止能(薬物バリア性)を有する層は、プラスチックアンプルの最内層よりも外側で、かつ他の機能性層よりも内側に配置するのが、薬物バリア性層の作用・効果を十分に発揮させる上で好ましい。
<配合剤等>
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルを形成するプラスチックは、必要に応じて混合することもできる。また、必要に応じて、ブチルヒドロキシトルエン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の安定化剤;銀−ゼオライト、ヒノキチオール等の抗菌剤;フタル酸エステル等の可塑剤等を、適宜適量、混合することができる。
このような添加剤を配合してなる層については、薬物バリア性層よりも外側に配置するのが好ましい。
【0061】
<製造方法等>
本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルは、多層押出機および多層フロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を使用して製造することができる。
具体的には、まず、2以上の層を備える筒状のパリソンを、多層ブロー用ダイを用いた押出成形によって形成する。このパリソンには、少なくとも1の層がガス透過防止能(ガスバリア性)、水蒸気透過防止能(水分バリア性)、光線透過防止能(光線バリア性)、薬物透過防止能(薬剤バリア性)および薬物吸収着防止能からなる群より選ばれる少なくとも1種の特性を有する機能性層であるものを使用する。次いで、この筒状パリソンを容器本体部成形用の下方割り型で挟んで、内部に空気を圧入するか、あるいは、金型面穴よりパリソンを吸引することによって容器本体部を成形し、当該容器本体部に、所定および所定量の薬液を充填する。さらに、当該容器本体部の口部を上方割り型で挟んで、当該口部を封止する融着部と、当該融着部に連設してなる融着部捩じ切り用把持部とを成形することによって、本発明に係る薬液充填プラスチックアンプルを製造することができる。パリソンの層構成は、薬液充填プラスチックアンプルに要求される層構成に応じて、適宜設定すればよい。
【0062】
ブロー・フィル・シール法によるアンプル製造の条件については特に限定されるものではなく、通常の製造条件に従えばよい。パリソンの溶融押出温度や溶融押出速度については、用いる樹脂や目的容器の形状等に応じて適宜設定すればよい。
薬液充填プラスチックアンプルの総厚みは300〜2000μm程度とするのが好ましい。機能性層の厚みは特に限定されるものではなく、当該層が有する機能の種類や使用目的等に応じて適宜選択することができるが、通常、10〜300μm程度とするのが好ましい。
【0063】
<収容可能な薬剤、薬液>
本発明に係るプラスチックアンプルに収容される薬液は特に限定されるものではなく、機能性層が有する機能の特性に応じて、適宜選択すればよい。
例えば易酸化薬剤の溶液については、本発明に係るプラスチックアンプルのうち、ガス透過防止能(ガスバリア性)を有する層を備えるものに収容すればよい。易酸化薬剤としては、例えばビタミンA等のビタミン類;システイン、トリプトファン等のアミノ酸;還元型グルタチオン、脂肪乳剤、リポソーム製剤等が挙げられる。
【0064】
光劣化性薬剤の溶液については、本発明に係るアンプルのうち、光線透過防止能(光線バリア性)を有する層を備えるものに収容すればよい。光劣化性薬剤としては、例えばビタミンB2、ビタミンB12等のビタミン類;塩酸ブロムヘキシン、含糖酸化鉄剤、硫酸アトロピン、ネオスチグミン、アミノプロピロン、ハロペリドール、塩酸エフェドリン等が挙げられる。
【0065】
吸収着性薬剤の溶液については、本発明に係るアンプルのうち、薬物吸収着防止能を有する層を備えるものに収容すればよい。吸収着性薬剤としては、例えばビタミンD等のビタミン類;ニトログリセリン;エルカトニン等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
次に、実施例を挙げて、本発明の薬液充填プラスチックアンプルについて説明する。
薬液充填プラスチックアンプルの形成材料について、その略号、物性等を以下に示す。
(ポリオレフィン)
・PE1:エチレン・1−ブテン共重合体(密度0.92g/cm、メルトフローレート(MFR)1.0g/10min(190℃)、商品名「ウルトゼックス2010B」、三井化学(株)製)
・PE2:PE1に、有機顔料(商品名「クロモフタルイエローGR」と「クロモフタルイエローAGR」、いずれもチバガイギー社製)を、それぞれ0.2重量%ずつ混合したもの。(紫外線透過防止能(紫外線バリア性)を有するプラスチック)
・PE3:PE1に、酸素吸収剤としての亜硫酸ナトリウム(平均粒径約8μm)を10重量%混合したもの。(酸素透過防止能(酸素バリア性)を有するプラスチック)
・PP1:アイソタクチックポリプロピレン(密度0.91g/cm、MFR1.6g/10min(230℃)、品番「J704」、三井化学(株)製)
・PP2:PP1に、有機顔料(商品名「クロモフタルイエローGR」と「クロモフタルイエローAGR」)を、それぞれ0.2重量%ずつ混合したもの。(紫外線透過防止能を有するプラスチック)
(変性ポリオレフィン)
・AD1:マレイン酸変性ポリエチレン(密度0.92g/cm、MFR0.9g/10min(190℃)、商品名「アドマーNB550」、三井化学(株)製)
(ポリオール)
・EVOH1:エチレン・ビニルアルコール共重合体(融点175℃、MFR1.6g/10min(190℃)、商品名「エバールEP−H101」、クラレ(株)製)
(ポリ環状オレフィン)
・COP1:ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物(比重1.01、MFR20g/min(280℃)、ガラス転移温度(Tg)105℃、商品名「ゼオノア1020R」、日本ゼオン(株)製)
・COP2:ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物(比重1.01、MFR27g/min(280℃)、Tg70℃、商品名「ゼオノア750R」、日本ゼオン(株)製)
・COP3:ノルボルネン系単量体の開環重合体水素添加物(比重1.01、MFR20g/min(280℃)、Tg136℃、商品名「ゼオノア1420R」、日本ゼオン(株)製)
・COC1:エチレンとテトラシクロドデセンとの共重合体(比重1.03、MFR25g/10min(260℃)、Tg105℃、商品名「アペルAPL6011T」、三井化学(株)製)
・COC2:エチレンとテトラシクロドデセンとの共重合体(比重1.02、MFR40g/10min(190℃)、Tg80℃、商品名「アペルAPL6509」、三井化学(株)製)
・COC3:エチレンとテトラシクロドデセンとの共重合体(比重1.02、MFR40g/10min(190℃)、Tg70℃、商品名「アペルAPL8008」、三井化学(株)製)
(ポリアミド)
・NY1:メタキシリレンジアミン−アジピン酸重縮合体(融点243℃、商品名「MXナイロン6001」、三菱ガス化学(株)製)
(ポリエステル)
・PET1:ポリエチレンテレフタレート(商品名「三井PET」、三井化学(株)製)
<薬液充填プラスチックアンプルの製造>
(実施例1)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COP1(ポリ環状オレフィン)からなる内層と、PE1(ポリオレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に0.005%ニトログリセリン水溶液10mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積10mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が100μm、外層が700μmであった。
【0067】
(参考例1)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COP1(ポリ環状オレフィン)とPE1(ポリオレフィン)とを50:50(重量比)の割合で混合したプラスチックからなる内層と、PP1(ポリオレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に0.005%ニトログリセリン水溶液20mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積20mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が100μm、外層が700μmであった。
【0068】
(参考例2)
3層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層と、COP1(ポリ環状オレフィン)からなる中間層と、PE1からなる外層とを備え、かつ、内部に0.005%ニトログリセリン水溶液10mLを充填してなる、3層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積10mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層が100μm、外層が700μmであった。
【0069】
(参考例3)
中間層を形成するプラスチックとして、COP1(ポリ環状オレフィン)単独に代えて、COP1とPE1(ポリオレフィン)とを50:50(重量比)の割合で混合したものを使用し、アンプルの内容積を5mLとし、かつ、アンプル内に充填する0.005%ニトログリセリン水溶液の量を5mLとしたこと以外は、参考例2と同様にして、3層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。
【0070】
(参考例4)
5層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層、COP1(ポリ環状オレフィン)とPE1とを50:50(重量比)の割合で混合したプラスチックからなる中間層(内層側)、COP1からなる中間層(中間部)、COP1とPE1とを50:50(重量比)の割合で混合したプラスチックからなる中間層(外層側)、およびPE1からなる外層を備え、かつ、内部に0.005%ニトログリセリン水溶液20mLを充填してなる、5層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積20mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層(内層側、中間部および外層側)が各々100μm、外層が700μmであった。
【0071】
(参考例5)
中間層(中間部)を形成するプラスチックとして、COP1(ポリ環状オレフィン)単独に代えて、COP1とPE1(ポリオレフィン)とを80:20(重量比)の割合で混合したものを使用し、アンプルの内容積を10mLとし、かつ、アンプルの内部に充填する0.005%ニトログリセリン水溶液の量を10mLとしたこと以外は、参考例4と同様にして、5層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。
【0072】
<プラスチックアンプルの性能評価>
実施例1および参考例1〜5の薬液充填プラスチックアンプルに対して、それぞれ106℃、40分間の高圧蒸気滅菌を施し、その後、60℃で2週間保存して、アンプル内に充填されたニトログリセリン水溶液におけるニトログリセリンの含有量を測定した。測定結果を、プラスチックアンプルの層構成等とともに、表1に示す。なお、ニトログリセリンは吸収着性の高い薬剤である。
【0073】
測定の結果、いずれのアンプルについても、2週間保存後のニトログリセリンの残存量は95重量%以上であって、ニトログリセリンのアンプルの内壁面への吸収・吸着や、アンプル外部への浸透・排出が十分に抑制されていることが分かった。すなわち、実施例1および参考例1〜5のアンプルは、いずれも薬物吸収着防止能と薬物透過防止能とが良好であった。このことは、実施例1および参考例1〜5のアンプルが、いずれもポリ環状オレフィン層を備えることによるものと考えられる。
【0074】
<薬液充填プラスチックアンプルの製造>
【0075】
【表1】

【0076】
(参考例6)
3層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層と、EVOH1(ポリオール)からなる中間層と、PE1からなる外層とを備え、かつ、内部に0.1%トリプトファン水溶液10mLを充填してなる、3層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積10mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層が100μm、外層が700μmであった。
【0077】
(参考例7)
5層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層、AD1(変性ポリオレフィン)からなる中間層(内層側)、EVOH1(ポリオール)からなる中間層(中間部)、AD1からなる中間層(外層側)、およびPE1からなる外層を備え、かつ、内部に0.1%トリプトファン水溶液5mLを充填してなる、5層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積5mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層(内層側および外層側)が各々10μm、中間層(中間部)が100μm、外層が700μmであった。
【0078】
(参考例8)
4層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層、PE3(酸素バリア性プラスチック)からなる中間層(内層側)、EVOH1(ポリオール)からなる中間層(外層側)、およびPE1からなる外層を備え、かつ、内部に0.1%トリプトファン水溶液10mLを充填してなる、4層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積10mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層(内層側および外層側)が各々100μm、外層が600μmであった。
【0079】
<プラスチックアンプルの性能評価>
参考例6〜8の薬液充填プラスチックアンプルに対して、それぞれ106℃、40分間の高圧蒸気滅菌を施し、その後、60℃で2週間保存して、アンプル内に充填されたトリプトファン水溶液におけるトリプトファンの含有量を測定した。測定結果を、プラスチックアンプルの層構成等とともに、表2に示す。なお、トリプトファンは易酸化性の薬剤である。
【0080】
測定の結果、いずれのアンプルについても、2週間保存後のトリプトファンの残存量は95重量%以上であって、トリプトファンの酸化劣化が十分に抑制されていることが分かった。すなわち、参考例6〜8のアンプルは、いずれもガス透過防止能(ガスバリア性、特に酸素バリア性)と薬物透過防止能とが良好であることが分かった。このことは、参考例6〜8のアンプルが、いずれもポリオール層を備えることによるものと考えられる。
【0081】
<薬液充填プラスチックアンプルの製造>
(参考例9)
3層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層と、COP1(ポリ環状オレフィン)からなる中間層と、PE2(紫外線バリア性プラスチック)からなる外層とを備え、かつ、内部に0.05%ビタミンB2水溶液10mLを充填してなる、3層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積10mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層が100μm、外層が700μmであった。
【0082】
<プラスチックアンプルの性能評価>
参考例9の薬液充填プラスチックアンプルに対して、106℃、40分間の高圧蒸気滅菌を施し、その後、60℃で2週間保存して、アンプル内に充填されたビタミンB2水溶液におけるビタミンB2の含有量を測定した。なお、ビタミンB2は光劣化性の薬剤である。
【0083】
測定の結果、2週間保存後のビタミンB2の残存量は95重量%以上であって、その光劣化は十分に抑制されていることが分かった。すなわち、参考例9のアンプルは光線透過防止能(光線バリア性)が良好であることが分かった。このことは、参考例9のアンプルが、着色剤(有機顔料)を配合してなる層を備えることによるものと考えられる。
また、外層に含まれる顔料の、ビタミンB2水溶液中への溶出も十分に抑制されていることが分かった。このことは、着色剤(有機顔料)を配合してなる層の内側にポリ環状オレフィン層を備えることによるものと考えられる。
【0084】
<薬液充填プラスチックアンプルの製造>
(参考例10)
5層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、PE1(ポリオレフィン)からなる内層、AD1(変性ポリオレフィン)からなる中間層(内層側)、NY1(ポリアミド;メタキシリレンジアミン−アジピン酸重縮合体)からなる中間層(中間部)、AD1からなる中間層(外層側)、およびPP2(紫外線バリア性プラスチック)からなる外層を備え、かつ、内部に400IU/mLのパルチミン酸レチノール可溶化液2mLを充填してなる、5層構造の薬液充填プラスチックアンプル(内容積2mL)を製造した。このアンプル10は、図1に示す形状を有するものであって、胴部の肉厚は、内層が50μm、中間層(内層側および外層側)が各々10μm、中間層(中間部)が100μm、外層が700μmであった。
【0085】
<プラスチックアンプルの性能評価>
参考例10の薬液充填プラスチックアンプルに対して、106℃、40分間の高圧蒸気滅菌を施し、その後、60℃、60%RHで2週間保存して、アンプル内に充填されたパルチミン酸レチノール可溶化液におけるパルチミン酸レチノールの含有量を測定した。なお、パルミチン酸レチノールは易酸化性および光劣化性の薬剤である。
【0086】
測定の結果、2週間保存後のパルチミン酸レチノールの残存量は95重量%以上であって、その酸化劣化および光劣化は十分に抑制されていることがわかった。すなわち、参考例10のアンプルはガス透過防止能(ガスバリア性、特に酸素バリア性)や光線透過防止能(光線バリア性)が良好であることが分かった。このことは、参考例10のアンプルが、ポリアミド層と、着色剤(有機顔料)を配合してなる層とを備えることによるものと考えられる。
【0087】
また、外層に含まれる顔料の、パルチミン酸レチノール可溶化液中への溶出も十分に抑制されていることが分かった。このことは、着色剤(有機顔料)を配合してなる層の内側にポリアミド層を備えることによるものと考えられる。
なお、参考例6〜10で得られたプラスチックアンプルの層構成等について、表2にまとめて示す。
【0088】
【表2】

【0089】
<薬液充填プラスチックアンプルの製造>
(実施例2)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COP2(ポリ環状オレフィン)からなる内層と、PE1(ポリオレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は、内層が200μm、外層が500μmであった。
【0090】
(実施例3)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COP2(ポリ環状オレフィン)からなる内層と、COP3(ポリ環状オレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は、内層が200μm、外層が500μmであった。
【0091】
(実施例4)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COC1(ポリ環状オレフィン)からなる内層と、PE1(ポリオレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は、内層が200μm、外層が500μmであった。
【0092】
(実施例5)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COC2(ポリ環状オレフィン)からなる内層と、PE1(ポリオレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は、内層が200μm、外層が500μmであった。
【0093】
(実施例6)
2層ブロー用ダイを備えるブロー・フィル・シール機を用いて、COC3(ポリ環状オレフィン)からなる内層と、PE1(ポリオレフィン)からなる外層とを備え、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、2層構造の薬液充填プラスチックアンプルを製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は、内層が200μm、外層が500μmであった。
【0094】
(比較例1)
ブロー・フィル・シール機を用いて、COP3(ポリ環状オレフィン、Tg136℃)からなり、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、単層構造のプラスチックアンプルを製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は800μmであった。
【0095】
(実施例7)
ブロー・フィル・シール機を用いて、COP2(ポリ環状オレフィン、Tg70℃)からなり、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、単層構造のプラスチックアンプル18を製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は800μmであった。
【0096】
(実施例8)
ブロー・フィル・シール機を用いて、COC1(ポリ環状オレフィン、Tg105℃)からなり、かつ、内部に生理食塩水10mLを充填してなる、単層構造のプラスチックアンプル18を製造した。このアンプル18は、図2に示す5連体であって、胴部の肉厚は800μmであった。
【0097】
<プラスチックアンプルの性能評価>
上記実施例2〜6、比較例1および実施例7〜8で得られたプラスチックアンプルについて、液漏れの有無を目視で確認した。その結果、内層を形成するプラスチックがポリ環状オレフィンであって、かつ、そのガラス転移温度(Tg)が110℃以下である実施例2〜6では、50本のアンプル(5連体のアンプル10個分)の全てにおいて、液漏れを検出しなかった。これに対し、比較例1では、50本のアンプルの8割にあたる40本のアンプルで、液漏れが検出された。
【0098】
なお、実施例7および8に示すように、プラスチックアンプルは、1種のポリ環状オレフィンからなる単層体として、実用に供することもできる。この場合において、アンプル全体を形成するポリ環状オレフィンには、ガラス転移温度が110℃以下であるものを用いるのが好ましい。ポリ環状オレフィンのガラス転移温度は、好ましくは60〜105℃であり、より好ましくは60〜80℃である。
【0099】
実施例2〜6、比較例1および実施例7〜8で得られたプラスチックアンプルの層構成等について、表3にまとめて示す。
【0100】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、この発明は、易酸化薬剤、光劣化性薬剤、吸収着製薬剤等を、無菌的にかつ安定して保管、保存するためのプラスチックアンプルとして利用することができ、さらに、かかるプラスチックアンプルの製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
11 容器本体部
12 口部
13 融着部
14 把持部
15 薬液
18 プラスチックアンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内壁面側が、ガラス転移温度が110℃以下のポリ環状オレフィンを用いたものである、ブロー・フィル・シール法により形成してなる、プラスチックアンプル。
【請求項2】
上記ポリ環状オレフィンのガラス転移温度が60〜105℃である、請求項1に記載のプラスチックアンプル。
【請求項3】
ガラス転移温度が110℃以下のポリ環状オレフィンを用いてなる層と、ガラス転移温度が110℃を超えるポリ環状オレフィンを含む層とを備える、請求項1または2に記載のプラスチックアンプル。
【請求項4】
ガラス転移温度が110℃以下のポリ環状オレフィンを用いてなる層と、ポリオレフィンを含む層とを備える、請求項1または2に記載のプラスチックアンプル。
【請求項5】
可撓性を有する容器本体部と、当該容器本体部の口部を封止する融着部と、当該融着部に連設してなる融着部捩じ切り用把持部とを備える、薬液を充填してなる請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチックアンプルであって、
上記容器本体部、融着部および把持部が、2以上の層を備える筒状のパリソンを用いて一体的に成形してなるものであり、
上記容器本体部が、上記パリソンを割り型で挟んで成形し、その内部に薬液を充填してから口部を封止してなるものであり、かつ、
上記パリソンの少なくとも1層が、ガス透過防止能、水蒸気透過防止能、光線透過防止能、薬物透過防止能および薬物吸収着防止能からなる群より選ばれる少なくとも1種の特性を有する機能性層である、請求項1〜4のいずれかに記載の薬液充填プラスチックアンプル。
【請求項6】
上記パリソンの最内層を除く少なくとも1層が、着色剤、紫外線吸収剤および酸素吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の薬剤を配合してなる層であり、かつ当該層よりも内側の層が、薬物透過防止能を有する層である、請求項5に記載の薬液充填プラスチックアンプル。
【請求項7】
上記機能性層がポリ環状オレフィン層を含むものである、請求項5に記載の薬液充填プラスチックアンプル。
【請求項8】
折り切り可能な薄肉部で連結された複数のアンプルの連結体である、請求項1〜7のいずれかに記載の薬液充填プラスチックアンプル。
【請求項9】
内容量が0.5〜20mLである、請求項1〜7のいずれかに記載の薬液充填プラスチックアンプル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−135621(P2012−135621A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−627(P2012−627)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2005−505729(P2005−505729)の分割
【原出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】