薬液吐出具
【課題】目的部位に対してより確実に薬液を吐出することができる薬液吐出具を提供する。
【解決手段】薬液吐出具としての薬液噴霧具10は、薬液Lが充填されたシリンジ12の流出口20に接続されて用いられ、該流出口20から供給される薬液Lを噴霧するためのデバイスである。この薬液噴霧具10は、流出口20と嵌合可能な注入口28が設けられた基部16と、流出口20から注入口28へと供給される薬液Lを噴霧する噴霧孔である微小通路40が設けられた噴霧ノズル14と、基部16と噴霧ノズル14との間に設けられ、注入口28に供給される薬液Lを噴霧ノズル14へと流通させる流路34が設けられた可撓性を有するチューブ部18とを備える。
【解決手段】薬液吐出具としての薬液噴霧具10は、薬液Lが充填されたシリンジ12の流出口20に接続されて用いられ、該流出口20から供給される薬液Lを噴霧するためのデバイスである。この薬液噴霧具10は、流出口20と嵌合可能な注入口28が設けられた基部16と、流出口20から注入口28へと供給される薬液Lを噴霧する噴霧孔である微小通路40が設けられた噴霧ノズル14と、基部16と噴霧ノズル14との間に設けられ、注入口28に供給される薬液Lを噴霧ノズル14へと流通させる流路34が設けられた可撓性を有するチューブ部18とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに接続されて用いられ、該シリンジ内に充填された薬液を吐出するための薬液吐出具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、例えば、抗がん剤や放射線治療の副作用によって生じた口内炎(患部)の治療では、その鎮痛のため、非ステロイド系消炎鎮痛薬等の水溶液をスプレー容器によって口腔内全体にスプレーすることが行われている。また、例えば、鼻腔内の患部に対する治療に際しては、シリンジの先端に接続される薬液噴霧具(薬液吐出具)が用いられることがある(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−43415号公報
【特許文献2】実用新案登録第3047521号公報
【特許文献3】特開平8−47530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスプレー容器やシリンジに接続される薬液噴霧具を用いた構成では、薬液を噴霧する噴霧ノズルが、容器やシリンジの一端に一体的に設けられている。このため、口腔内や鼻腔内の目標部位(患部)まで噴霧ノズルを届けることが難しく、該目標部位に薬液が確実に噴霧されているか判断できない状態で口腔内や鼻腔内の全体に薬液が噴射されることになる。その結果、患部に対する治療効果が低下し、また薬剤の過剰使用や患者の誤飲等を生じる可能性もある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、目的部位に対してより確実に薬液を吐出することができる薬液吐出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬液吐出具は、薬液が充填されたシリンジの流出口に接続されて用いられ、該流出口から供給される前記薬液を吐出するための薬液吐出具であって、前記流出口と嵌合可能な注入口が設けられた基部と、前記流出口から前記注入口へと供給される前記薬液を吐出する吐出孔が設けられた吐出ノズルと、前記基部と前記吐出ノズルとの間に設けられ、前記注入口に供給される前記薬液を前記吐出ノズルへと流通させる流路が設けられた可撓性を有するチューブ部とを備え、前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、シリンジに接続される基部と薬液を吐出する吐出ノズルとの間に、可撓性を有するチューブ部を設けたことにより、例えば、当該薬液吐出具を口内炎の治療薬の吐出用デバイスとして用いる場合に、口腔内の奥部や歯の裏側等、吐出ノズルをアプローチさせ難い位置にある目的部位(患部)に対しても、該チューブ部を口腔内の形状に応じて適宜撓ませて屈曲させつつ、円滑にアプローチすることができる。このため、目的部位に対して、薬液を確実に吐出することができる。しかも、前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有するため、薬液吐出の目的部位の位置に応じて、チューブ部を所望の屈曲姿勢に変形させることができ、吐出ノズルによる薬液の噴射方向を所望の方向に一層確実に設定することができる。
【0008】
前記チューブ部には、前記屈曲状態を保持するための形状保持部材が設けられることにより、前記形状保持機能が達成される構成であってもよい。該形状保持部材は、前記チューブ部の外周面上に巻回され、又は前記チューブ部の外周壁面内に少なくとも一部が埋没して巻回されたコイルや、前記チューブ部の前記流路に沿った壁面内に埋設された線状部材又は板状部材であると、チューブ部に形状保持機構を容易に付加することができる。
【0009】
前記吐出孔は、流通方向が異なる複数の微小通路の下流側を集合させた集合流路を有する構成であると、より円滑に薬液を吐出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリンジに接続される基部と薬液を吐出する吐出ノズルとの間に、可撓性を有し、且つ、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有するチューブ部を設ける。これにより、吐出ノズルをアプローチさせ難い位置にある目的部位に対しても、該チューブ部を目的部位の周辺形状に応じて適宜撓ませて屈曲させつつ、円滑にアプローチすることが可能となり、目的部位に対して、薬液を確実に吐出することができる。しかも、前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有するため、薬液吐出の目的部位の位置に応じて、チューブ部を所望の屈曲姿勢に変形させることができ、吐出ノズルによる薬液の噴射方向を所望の方向に一層確実に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液噴霧具とシリンジとを示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す薬液噴霧具をシリンジに接続した状態での側面図である。
【図3】図1に示す薬液噴霧具の一部断面側面図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】形状保持部材として線状部材を用いた構成例の断面図である。
【図6】薬液噴霧具を接続したシリンジによって口腔内の患部に対して薬液を噴霧する様子を示す説明図である。
【図7】チューブ部の流路を細径流路及び拡径流路で構成した構成例の一部断面側面図である。
【図8】形状保持部材としてコイルを用いた構成例の側面図である。
【図9】噴霧ノズルの第1変形例を示す側面断面図である。
【図10】噴霧ノズルの第2変形例を示す側面断面図である。
【図11】図11Aは、シリンジと薬液噴霧具の接続部にロック機構を設けた構成例の側面断面図であり、図11Bは、図11Aに示すロック機構をロック状態とした側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る薬液吐出具について、この吐出具を接続するシリンジとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る薬液噴霧具10と該薬液噴霧具10を接続するシリンジ12とを示す分解斜視図であり、図2は、図1に示す薬液噴霧具10をシリンジ12に接続した状態での側面図である。また、図3は、薬液噴霧具10の一部断面側面図である。
【0014】
本実施形態に係る薬液吐出具としての薬液噴霧具10(以下、単に「噴霧具10」ともいう)は、薬液Lが充填されたシリンジ12の先端に接続されて用いられ、該薬液Lを先端の吐出ノズル(噴霧ノズル14)から目的部位へと吐出(噴霧)するためのデバイスである。以下では、吐出ノズルの一例として薬液Lを噴霧可能な噴霧ノズル14を適用した薬液噴霧具10を例示して、本発明に係る薬液吐出具の構成例を説明する。
【0015】
噴霧具10は、例えば、口内炎の治療において、シリンジ12に接続される基部16から延在するチューブ部18を患者の口腔内に挿入し、シリンジ12から供給される薬液(治療薬)Lを噴霧ノズル14から患部へと噴霧する医療用デバイスとして用いられる。薬液Lは、噴霧具10の用途に応じて適宜選定すればよいが、例えば、非ステロイド系消炎鎮痛薬等の水溶液等を用いることができる。
【0016】
以下、図3の側面視において、チューブ部18の左側(基部16側)を「基端(後端)」側、チューブ部18の右側(噴霧ノズル14側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、シリンジ12は、縮径した流出口20を先端に設けた外筒(シリンダ)22と、外筒22内で液密に摺動して薬液室を画成するガスケット24と、先端に装着したガスケット24を前後方向(軸方向)に移動させる押し子(プランジャロッド)26とを備える。流出口20は、外筒22の内外で薬液Lを流通させるための開口であり、外筒22の先端面から突出した先細りテーパ形状の凸部である。
【0018】
図1〜図3に示すように、噴霧具10は、シリンジ12の流出口20と嵌合可能な注入口28が設けられた基部(コネクタ部)16と、基部16の先端から軸方向に延在する細径で長尺なチューブ部18と、チューブ部18の先端に設けられた噴霧ノズル14とを備える。
【0019】
基部16は、当該噴霧具10をシリンジ12に接続する際、つまり注入口28を流出口20に嵌合する際に、使用者が指を掛けるフランジ30を基端に有し、その中心に注入口28が開口している。基部16の内部には、注入口28から連通する基部流路32が軸方向に延在形成されている。
【0020】
チューブ部18は、基部16の先端に連結固定された可撓性を有する管状部材であり、その内腔が基部流路32に液密に連通される流路34を形成している。従って、シリンジ12の流出口20から基部16の注入口28に供給された薬液Lは、基部流路32から流路34を介してチューブ部18の先端側へと流れ、先端の噴霧ノズル14へと供給される。流路34は、チューブ部18の内腔によって形成する以外にも、例えば、該内腔内に、別の細径なチューブ(図示せず)を2重管として挿通させた構成等であってよい。
【0021】
チューブ部18の壁面内部、つまり流路34を画成する内壁面と外壁面との間には、基端から先端に向かう全長に渡って又はその一部に、板状部材(帯状部材)36が埋設されている(図3及び図4参照)。板状部材36は、ステンレスやアルミニウム等の金属薄板や、超高分子量ポリオレフィンやエチレン−α−オレフィン共重合体等の塑性変形が可能な樹脂薄板によって構成されることにより、屈曲された状態を保持可能な形状保持部材である。すなわち、形状保持部材である板状部材36が可撓性を有するチューブ部18の長手方向に沿って壁面内部に混入されていることにより、該チューブ部18は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を備えている(図2参照)。
【0022】
なお、板状部材36は、チューブ部18を所望の形状に屈曲させ、その状態を保持するための形状保持部材として機能すればよいことから、板状ではなく、例えば、線状部材37によって形成することもできる(図5参照)。線状部材37を用いる場合には、前記形状保持機能を一層確実に担保するため、チューブ部18の周方向に複数本(図5では4本の構成を例示)を等間隔で配置するようにしてもよい。勿論、板状部材36も2枚以上設けてもよい。また、線状部材37は、細い金属線等で構成可能であるため、例えば、チューブ部18の外面上に貼り付けて用いることもできる。
【0023】
噴霧ノズル14は、チューブ部18の先端に一体的に設けられた先細りの略円錐形状からなり、図3に示すように、流路34と連通する先細りのノズル流路38と、該ノズル流路38から外壁面に貫通して開口する複数(図3では7本の構成を例示)の微小通路40とを備える。各微小通路40は、略放射状の異なる方向に向かって噴霧ノズル14の外面に開口する噴霧孔である。従って、チューブ部18の流路34からノズル流路38へ流れた薬液Lは、各微小通路40から噴霧ノズル14の周囲へと確実に噴霧される。
【0024】
噴霧具10の材質は、特に限定されないが、例えば、基部16及び噴霧ノズル14としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂を用いるとよい。また、チューブ部18は、可撓性を確保できる材質であればよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂を用い、基部16や噴霧ノズル14よりも柔軟に構成されるとよい。
【0025】
また、噴霧具10の寸法は、例えば、チューブ部18は、外径が0.5mm〜5.0mm程度、好ましくは1.0mm〜2.0mm程度であり、肉厚が0.1mm〜2.0mm程度、好ましくは0.5mm〜1.0mm程度であり、長さが50mm〜300mm程度、好ましくは50mm〜100mm程度、内腔となる流路34の内径が0.3mm〜4.0mm程度、好ましくは1.0mm〜2.0mm程度の管状であるとよい。
【0026】
チューブ部18内に埋設される板状部材36は、例えば、長さが50mm〜300mm程度、好ましくは50mm〜100mm程度、板厚が0.05mm〜1.9mm程度、好ましくは0.5mm〜1.2mm程度、板幅が0.05mm〜4mm程度、好ましくは0.5mm〜1.5mm程度であるとよく、略同様に、線状部材37は、線径が0.1mm〜1.9mm程度、好ましくは0.5mm〜1.5mm程度、長さは板状部材36と同等でよい。
【0027】
噴霧ノズル14は、例えば、長さが3mm〜20mm程度、好ましくは5mm〜10mm程度、微小通路40は、例えば、内径が0.01mm〜0.2mm程度、好ましくは0.05mm〜0.1mm程度であるとよい。なお、チューブ部18の寸法や噴霧ノズル14の寸法は、薬液Lの種類や噴霧量、当該噴霧具10の適用部位(口腔や鼻腔)等によって適宜最適に設定すればよい。
【0028】
次に、以上のように構成される噴霧具10を用いた薬液噴霧方法の一例について、図6を参照して説明する。図6は、当該噴霧具10を接続したシリンジ12によって口腔42内の患部(口内炎)Aに対して薬液Lを噴霧する様子を示す説明図である。
【0029】
患部Aの治療薬である薬液Lとしては、例えば、抗炎症作用、消毒作用又は保湿作用を有する薬剤が用いられ、これらの薬剤を単独で又は混合したものを薬液Lとして、シリンジ12の外筒22内に充填する。
【0030】
次に、薬液Lが所定量充填されたシリンジ12の流出口20に噴霧具10の注入口28を嵌合させることで、シリンジ12に噴霧具10を取り付ける。そこで、押し子26を多少押し込んで噴霧具10の噴霧ノズル14側まで薬液Lを供給するプライミングを行った後、図6に示すように、口腔42内に噴霧ノズル14及びチューブ部18を挿入し、目的部位である患部Aに噴霧ノズル14先端を近接配置した後、押し子26を押し込む。これにより、薬液Lをシリンジ12から噴霧ノズル14まで供給して、患部A及びその周辺部に薬液Lを噴霧する治療を行うことができる。
【0031】
この場合、本実施形態に係る噴霧具10では、可撓性を持ち、所定の長尺寸法で形成されたチューブ部18の先端に噴霧ノズル14を設けている。このため、口腔42内の奥部や歯の裏側等、噴霧ノズル14をアプローチさせ難い位置にある目的部位(患部A)に対しても、該チューブ部18を口腔42内の形状に応じて適宜撓ませて屈曲させつつ、円滑にアプローチすることができる。このため、目的部位に対して、薬液Lを確実に噴霧することができ、薬液Lが口腔42内の全体に噴霧されることを防止することができる。
【0032】
しかも、噴霧具10では、形状保持部材である板状部材36(線状部材37)をチューブ部18内に設けているため、チューブ部18を所望の屈曲姿勢に設定し、噴霧ノズル14による薬液Lの噴射方向を所望の方向に設定することができる。従って、上記のような口腔42内の奥部や歯の裏側等、噴霧ノズル14をアプローチさせ難い位置にある目的部位に対しても、歯や歯茎等を回避し得る形状にチューブ部18を容易に変形させることができ、さらに患部に対する正面に噴霧ノズル14を配置することができる。これにより、目的部位に対して、所望量の薬液Lを一層確実に噴霧して治療することが可能となり、薬液Lが口腔42内の全体に噴霧され無駄を生じることをより確実に防止することができる。
【0033】
このような薬液Lの無駄をさらに低減するため、例えば、図7に示すように、チューブ部18内に延在形成される流路34に代えて、基端側の大部分に細径な細径流路34aを設け、ノズル流路38近傍の先端側にのみ拡径した拡径流路34bを設けた構成とすることもできる。そうすると、基部16や噴霧ノズル14に比べて長尺なチューブ部18における薬液Lの無駄(デッドボリューム)を小容量の細径流路34aによって可及的に低減することができる。
【0034】
また、チューブ部18に形状保持機能を付与する形状保持部材としては、上記の板状部材36や線状部材37以外のものであっても勿論よく、例えば、図8に示すように、板状部材36に代えて、チューブ部18の外周面の基端から先端に向かう全長に渡って又はその一部に、らせん状のコイル44を巻回した構成とすることもできる。
【0035】
コイル44は、板状部材36と同様な材質で形成可能であり、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属細線や、超高分子量ポリオレフィンやエチレン−α−オレフィン共重合体等の塑性変形が可能な樹脂細線によって構成されることにより、屈曲された状態を保持可能な形状保持部材である。このようなコイル44が可撓性を有するチューブ部18の外面に巻回されていることにより、該チューブ部18は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を備えることになる。コイル44の寸法は、例えば、線径が0.1mm〜2.0mm程度、好ましくは0.5mm〜1.2mm程度で形成されるとよい。
【0036】
コイル44は、チューブ部18の外面上に巻回された構成以外にも、例えば、チューブ部18の壁面内に一部が埋没して巻回された構成や、板状部材36と略同様に、チューブ部18の壁面内部に完全に埋設された構成等であってもよい。
【0037】
噴霧ノズル14としては、上記した複数の微小通路40がノズル外面に開口した構成以外であっても勿論よく、例えば、図9に示すように、流通方向が異なる複数の微小通路46(図9では4本の構成を例示)の下流側(吐出側)を集合させることで、薬液Lの流れる方向を代え、これにより噴霧孔である集合流路48から薬液Lを噴霧する噴霧ノズル14aとして構成とすることもできる。
【0038】
さらに、図10に示すように、チューブ部18とは別体に構成された噴霧ノズル14bをチューブ部18の先端に装着する構成とすることもできる。噴霧ノズル14bの基端側内面には、凹部50が形成されると共に、チューブ部18の先端側外面には、凹部50に係合する凸部52が形成され、これら凹部50と凸部52とが係合することで噴霧ノズル14bがチューブ部18の先端に嵌合固定されている。図10では、噴霧ノズル14bの先端に、段付き孔部からなる噴霧孔54が形成された構成を例示しているが、該噴霧ノズル14bの噴霧孔としては、図3や図9に示す微小通路40や微小通路46及び集合流路48を備えた構成としてもよい。
【0039】
このようにチューブ部18の先端に嵌合可能な噴霧ノズル14bを用いると、当該噴霧具10の仕様や用途に応じて、チューブ部18の先端に設ける噴霧ノズル(噴霧孔)の形状を適宜選定し装着することができ、当該噴霧具10の生産性や汎用性が向上する。
【0040】
なお、吐出ノズルとしては、上記したように先端の噴霧孔から薬液を噴霧する構成からなる噴霧ノズル14、14a、14b以外の構成であってもよく、例えば、シャワーのような微小流を先端の吐出孔から吐出する構成であってもよい。
【0041】
ところで、当該噴霧具10では、薬液Lを霧状に噴射するために又は微小流を吐出するために、先端の噴霧ノズル14(14a、14b)の噴霧孔は非常に細径に形成されており、このためシリンジ12から吐出される薬液Lは所定の高い圧力(抵抗)を発生することになる。そこで、噴霧具10とシリンジ12との接続部について、図3に示される通常のテーパ嵌合構造(ルアーテーパ嵌合構造)以外にも、例えば、図11A及び図11Bに示されるロック機構56を備えたテーパ嵌合構造(ルアーロック構造)とすることも有効である。
【0042】
図11A及び図11Bに示すように、ロック機構56は、シリンジ12の流出口20の外周側に隙間58を有して配置された筒部60の内周面に形成された雌ねじ62と、基部16の基端側外周面にフランジ30(図3参照)に代えて形成された雄ねじ64とから構成されている。シリンジ12側の雌ねじ62に対し、噴霧具10側の雄ねじ64が螺合されることにより、シリンジ12と噴霧具10との間をより確実に嵌合・締結することができる。なお、このロック機構56を設けたルアーロック構造は、特に、図7に示す細径流路34aを有する構成に適用されると一層効果的である。細径流路34aにより、上記したシリンジ12から吐出される薬液Lの圧力(抵抗)が一層高くなるからである。
【0043】
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0044】
例えば、薬液噴霧具10を接続するシリンジとしては、図1に示すシリンジ12以外の構成であっても勿論よく、内部に充填された薬液Lを噴霧具10へと所定圧力で確実に送液可能な送液機構を有する構成のものであればよい。
【0045】
当該薬液噴霧具10の用途は上記した口内炎の治療に限定されるものでは勿論なく、例えば、鼻腔内の炎症部位(患部)に薬剤を噴霧するデバイスや、生体内にカテーテルや内視鏡等のチューブを挿入する際、或いは経鼻チューブを挿入する際の麻酔剤の噴霧用デバイスとしても用いることができ、また、これら局所麻酔薬の投与以外の用途、例えば、抗アレルギー薬やワクチン等の投与に用いることもでき、さらには、内視鏡下手術時に薬液を噴霧するデバイスとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10…薬液噴霧具 12…シリンジ
14、14a、14b…噴霧ノズル 16…基部
18…チューブ部 20…流出口
28…注入口 34…流路
36…板状部材 37…線状部材
40、46…微小通路 44…コイル
48…集合流路 56…ロック機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに接続されて用いられ、該シリンジ内に充填された薬液を吐出するための薬液吐出具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、例えば、抗がん剤や放射線治療の副作用によって生じた口内炎(患部)の治療では、その鎮痛のため、非ステロイド系消炎鎮痛薬等の水溶液をスプレー容器によって口腔内全体にスプレーすることが行われている。また、例えば、鼻腔内の患部に対する治療に際しては、シリンジの先端に接続される薬液噴霧具(薬液吐出具)が用いられることがある(特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−43415号公報
【特許文献2】実用新案登録第3047521号公報
【特許文献3】特開平8−47530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなスプレー容器やシリンジに接続される薬液噴霧具を用いた構成では、薬液を噴霧する噴霧ノズルが、容器やシリンジの一端に一体的に設けられている。このため、口腔内や鼻腔内の目標部位(患部)まで噴霧ノズルを届けることが難しく、該目標部位に薬液が確実に噴霧されているか判断できない状態で口腔内や鼻腔内の全体に薬液が噴射されることになる。その結果、患部に対する治療効果が低下し、また薬剤の過剰使用や患者の誤飲等を生じる可能性もある。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、目的部位に対してより確実に薬液を吐出することができる薬液吐出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬液吐出具は、薬液が充填されたシリンジの流出口に接続されて用いられ、該流出口から供給される前記薬液を吐出するための薬液吐出具であって、前記流出口と嵌合可能な注入口が設けられた基部と、前記流出口から前記注入口へと供給される前記薬液を吐出する吐出孔が設けられた吐出ノズルと、前記基部と前記吐出ノズルとの間に設けられ、前記注入口に供給される前記薬液を前記吐出ノズルへと流通させる流路が設けられた可撓性を有するチューブ部とを備え、前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、シリンジに接続される基部と薬液を吐出する吐出ノズルとの間に、可撓性を有するチューブ部を設けたことにより、例えば、当該薬液吐出具を口内炎の治療薬の吐出用デバイスとして用いる場合に、口腔内の奥部や歯の裏側等、吐出ノズルをアプローチさせ難い位置にある目的部位(患部)に対しても、該チューブ部を口腔内の形状に応じて適宜撓ませて屈曲させつつ、円滑にアプローチすることができる。このため、目的部位に対して、薬液を確実に吐出することができる。しかも、前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有するため、薬液吐出の目的部位の位置に応じて、チューブ部を所望の屈曲姿勢に変形させることができ、吐出ノズルによる薬液の噴射方向を所望の方向に一層確実に設定することができる。
【0008】
前記チューブ部には、前記屈曲状態を保持するための形状保持部材が設けられることにより、前記形状保持機能が達成される構成であってもよい。該形状保持部材は、前記チューブ部の外周面上に巻回され、又は前記チューブ部の外周壁面内に少なくとも一部が埋没して巻回されたコイルや、前記チューブ部の前記流路に沿った壁面内に埋設された線状部材又は板状部材であると、チューブ部に形状保持機構を容易に付加することができる。
【0009】
前記吐出孔は、流通方向が異なる複数の微小通路の下流側を集合させた集合流路を有する構成であると、より円滑に薬液を吐出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シリンジに接続される基部と薬液を吐出する吐出ノズルとの間に、可撓性を有し、且つ、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有するチューブ部を設ける。これにより、吐出ノズルをアプローチさせ難い位置にある目的部位に対しても、該チューブ部を目的部位の周辺形状に応じて適宜撓ませて屈曲させつつ、円滑にアプローチすることが可能となり、目的部位に対して、薬液を確実に吐出することができる。しかも、前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有するため、薬液吐出の目的部位の位置に応じて、チューブ部を所望の屈曲姿勢に変形させることができ、吐出ノズルによる薬液の噴射方向を所望の方向に一層確実に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液噴霧具とシリンジとを示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す薬液噴霧具をシリンジに接続した状態での側面図である。
【図3】図1に示す薬液噴霧具の一部断面側面図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】形状保持部材として線状部材を用いた構成例の断面図である。
【図6】薬液噴霧具を接続したシリンジによって口腔内の患部に対して薬液を噴霧する様子を示す説明図である。
【図7】チューブ部の流路を細径流路及び拡径流路で構成した構成例の一部断面側面図である。
【図8】形状保持部材としてコイルを用いた構成例の側面図である。
【図9】噴霧ノズルの第1変形例を示す側面断面図である。
【図10】噴霧ノズルの第2変形例を示す側面断面図である。
【図11】図11Aは、シリンジと薬液噴霧具の接続部にロック機構を設けた構成例の側面断面図であり、図11Bは、図11Aに示すロック機構をロック状態とした側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る薬液吐出具について、この吐出具を接続するシリンジとの関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る薬液噴霧具10と該薬液噴霧具10を接続するシリンジ12とを示す分解斜視図であり、図2は、図1に示す薬液噴霧具10をシリンジ12に接続した状態での側面図である。また、図3は、薬液噴霧具10の一部断面側面図である。
【0014】
本実施形態に係る薬液吐出具としての薬液噴霧具10(以下、単に「噴霧具10」ともいう)は、薬液Lが充填されたシリンジ12の先端に接続されて用いられ、該薬液Lを先端の吐出ノズル(噴霧ノズル14)から目的部位へと吐出(噴霧)するためのデバイスである。以下では、吐出ノズルの一例として薬液Lを噴霧可能な噴霧ノズル14を適用した薬液噴霧具10を例示して、本発明に係る薬液吐出具の構成例を説明する。
【0015】
噴霧具10は、例えば、口内炎の治療において、シリンジ12に接続される基部16から延在するチューブ部18を患者の口腔内に挿入し、シリンジ12から供給される薬液(治療薬)Lを噴霧ノズル14から患部へと噴霧する医療用デバイスとして用いられる。薬液Lは、噴霧具10の用途に応じて適宜選定すればよいが、例えば、非ステロイド系消炎鎮痛薬等の水溶液等を用いることができる。
【0016】
以下、図3の側面視において、チューブ部18の左側(基部16側)を「基端(後端)」側、チューブ部18の右側(噴霧ノズル14側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、シリンジ12は、縮径した流出口20を先端に設けた外筒(シリンダ)22と、外筒22内で液密に摺動して薬液室を画成するガスケット24と、先端に装着したガスケット24を前後方向(軸方向)に移動させる押し子(プランジャロッド)26とを備える。流出口20は、外筒22の内外で薬液Lを流通させるための開口であり、外筒22の先端面から突出した先細りテーパ形状の凸部である。
【0018】
図1〜図3に示すように、噴霧具10は、シリンジ12の流出口20と嵌合可能な注入口28が設けられた基部(コネクタ部)16と、基部16の先端から軸方向に延在する細径で長尺なチューブ部18と、チューブ部18の先端に設けられた噴霧ノズル14とを備える。
【0019】
基部16は、当該噴霧具10をシリンジ12に接続する際、つまり注入口28を流出口20に嵌合する際に、使用者が指を掛けるフランジ30を基端に有し、その中心に注入口28が開口している。基部16の内部には、注入口28から連通する基部流路32が軸方向に延在形成されている。
【0020】
チューブ部18は、基部16の先端に連結固定された可撓性を有する管状部材であり、その内腔が基部流路32に液密に連通される流路34を形成している。従って、シリンジ12の流出口20から基部16の注入口28に供給された薬液Lは、基部流路32から流路34を介してチューブ部18の先端側へと流れ、先端の噴霧ノズル14へと供給される。流路34は、チューブ部18の内腔によって形成する以外にも、例えば、該内腔内に、別の細径なチューブ(図示せず)を2重管として挿通させた構成等であってよい。
【0021】
チューブ部18の壁面内部、つまり流路34を画成する内壁面と外壁面との間には、基端から先端に向かう全長に渡って又はその一部に、板状部材(帯状部材)36が埋設されている(図3及び図4参照)。板状部材36は、ステンレスやアルミニウム等の金属薄板や、超高分子量ポリオレフィンやエチレン−α−オレフィン共重合体等の塑性変形が可能な樹脂薄板によって構成されることにより、屈曲された状態を保持可能な形状保持部材である。すなわち、形状保持部材である板状部材36が可撓性を有するチューブ部18の長手方向に沿って壁面内部に混入されていることにより、該チューブ部18は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を備えている(図2参照)。
【0022】
なお、板状部材36は、チューブ部18を所望の形状に屈曲させ、その状態を保持するための形状保持部材として機能すればよいことから、板状ではなく、例えば、線状部材37によって形成することもできる(図5参照)。線状部材37を用いる場合には、前記形状保持機能を一層確実に担保するため、チューブ部18の周方向に複数本(図5では4本の構成を例示)を等間隔で配置するようにしてもよい。勿論、板状部材36も2枚以上設けてもよい。また、線状部材37は、細い金属線等で構成可能であるため、例えば、チューブ部18の外面上に貼り付けて用いることもできる。
【0023】
噴霧ノズル14は、チューブ部18の先端に一体的に設けられた先細りの略円錐形状からなり、図3に示すように、流路34と連通する先細りのノズル流路38と、該ノズル流路38から外壁面に貫通して開口する複数(図3では7本の構成を例示)の微小通路40とを備える。各微小通路40は、略放射状の異なる方向に向かって噴霧ノズル14の外面に開口する噴霧孔である。従って、チューブ部18の流路34からノズル流路38へ流れた薬液Lは、各微小通路40から噴霧ノズル14の周囲へと確実に噴霧される。
【0024】
噴霧具10の材質は、特に限定されないが、例えば、基部16及び噴霧ノズル14としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂を用いるとよい。また、チューブ部18は、可撓性を確保できる材質であればよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド等の樹脂を用い、基部16や噴霧ノズル14よりも柔軟に構成されるとよい。
【0025】
また、噴霧具10の寸法は、例えば、チューブ部18は、外径が0.5mm〜5.0mm程度、好ましくは1.0mm〜2.0mm程度であり、肉厚が0.1mm〜2.0mm程度、好ましくは0.5mm〜1.0mm程度であり、長さが50mm〜300mm程度、好ましくは50mm〜100mm程度、内腔となる流路34の内径が0.3mm〜4.0mm程度、好ましくは1.0mm〜2.0mm程度の管状であるとよい。
【0026】
チューブ部18内に埋設される板状部材36は、例えば、長さが50mm〜300mm程度、好ましくは50mm〜100mm程度、板厚が0.05mm〜1.9mm程度、好ましくは0.5mm〜1.2mm程度、板幅が0.05mm〜4mm程度、好ましくは0.5mm〜1.5mm程度であるとよく、略同様に、線状部材37は、線径が0.1mm〜1.9mm程度、好ましくは0.5mm〜1.5mm程度、長さは板状部材36と同等でよい。
【0027】
噴霧ノズル14は、例えば、長さが3mm〜20mm程度、好ましくは5mm〜10mm程度、微小通路40は、例えば、内径が0.01mm〜0.2mm程度、好ましくは0.05mm〜0.1mm程度であるとよい。なお、チューブ部18の寸法や噴霧ノズル14の寸法は、薬液Lの種類や噴霧量、当該噴霧具10の適用部位(口腔や鼻腔)等によって適宜最適に設定すればよい。
【0028】
次に、以上のように構成される噴霧具10を用いた薬液噴霧方法の一例について、図6を参照して説明する。図6は、当該噴霧具10を接続したシリンジ12によって口腔42内の患部(口内炎)Aに対して薬液Lを噴霧する様子を示す説明図である。
【0029】
患部Aの治療薬である薬液Lとしては、例えば、抗炎症作用、消毒作用又は保湿作用を有する薬剤が用いられ、これらの薬剤を単独で又は混合したものを薬液Lとして、シリンジ12の外筒22内に充填する。
【0030】
次に、薬液Lが所定量充填されたシリンジ12の流出口20に噴霧具10の注入口28を嵌合させることで、シリンジ12に噴霧具10を取り付ける。そこで、押し子26を多少押し込んで噴霧具10の噴霧ノズル14側まで薬液Lを供給するプライミングを行った後、図6に示すように、口腔42内に噴霧ノズル14及びチューブ部18を挿入し、目的部位である患部Aに噴霧ノズル14先端を近接配置した後、押し子26を押し込む。これにより、薬液Lをシリンジ12から噴霧ノズル14まで供給して、患部A及びその周辺部に薬液Lを噴霧する治療を行うことができる。
【0031】
この場合、本実施形態に係る噴霧具10では、可撓性を持ち、所定の長尺寸法で形成されたチューブ部18の先端に噴霧ノズル14を設けている。このため、口腔42内の奥部や歯の裏側等、噴霧ノズル14をアプローチさせ難い位置にある目的部位(患部A)に対しても、該チューブ部18を口腔42内の形状に応じて適宜撓ませて屈曲させつつ、円滑にアプローチすることができる。このため、目的部位に対して、薬液Lを確実に噴霧することができ、薬液Lが口腔42内の全体に噴霧されることを防止することができる。
【0032】
しかも、噴霧具10では、形状保持部材である板状部材36(線状部材37)をチューブ部18内に設けているため、チューブ部18を所望の屈曲姿勢に設定し、噴霧ノズル14による薬液Lの噴射方向を所望の方向に設定することができる。従って、上記のような口腔42内の奥部や歯の裏側等、噴霧ノズル14をアプローチさせ難い位置にある目的部位に対しても、歯や歯茎等を回避し得る形状にチューブ部18を容易に変形させることができ、さらに患部に対する正面に噴霧ノズル14を配置することができる。これにより、目的部位に対して、所望量の薬液Lを一層確実に噴霧して治療することが可能となり、薬液Lが口腔42内の全体に噴霧され無駄を生じることをより確実に防止することができる。
【0033】
このような薬液Lの無駄をさらに低減するため、例えば、図7に示すように、チューブ部18内に延在形成される流路34に代えて、基端側の大部分に細径な細径流路34aを設け、ノズル流路38近傍の先端側にのみ拡径した拡径流路34bを設けた構成とすることもできる。そうすると、基部16や噴霧ノズル14に比べて長尺なチューブ部18における薬液Lの無駄(デッドボリューム)を小容量の細径流路34aによって可及的に低減することができる。
【0034】
また、チューブ部18に形状保持機能を付与する形状保持部材としては、上記の板状部材36や線状部材37以外のものであっても勿論よく、例えば、図8に示すように、板状部材36に代えて、チューブ部18の外周面の基端から先端に向かう全長に渡って又はその一部に、らせん状のコイル44を巻回した構成とすることもできる。
【0035】
コイル44は、板状部材36と同様な材質で形成可能であり、例えば、ステンレスやアルミニウム等の金属細線や、超高分子量ポリオレフィンやエチレン−α−オレフィン共重合体等の塑性変形が可能な樹脂細線によって構成されることにより、屈曲された状態を保持可能な形状保持部材である。このようなコイル44が可撓性を有するチューブ部18の外面に巻回されていることにより、該チューブ部18は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を備えることになる。コイル44の寸法は、例えば、線径が0.1mm〜2.0mm程度、好ましくは0.5mm〜1.2mm程度で形成されるとよい。
【0036】
コイル44は、チューブ部18の外面上に巻回された構成以外にも、例えば、チューブ部18の壁面内に一部が埋没して巻回された構成や、板状部材36と略同様に、チューブ部18の壁面内部に完全に埋設された構成等であってもよい。
【0037】
噴霧ノズル14としては、上記した複数の微小通路40がノズル外面に開口した構成以外であっても勿論よく、例えば、図9に示すように、流通方向が異なる複数の微小通路46(図9では4本の構成を例示)の下流側(吐出側)を集合させることで、薬液Lの流れる方向を代え、これにより噴霧孔である集合流路48から薬液Lを噴霧する噴霧ノズル14aとして構成とすることもできる。
【0038】
さらに、図10に示すように、チューブ部18とは別体に構成された噴霧ノズル14bをチューブ部18の先端に装着する構成とすることもできる。噴霧ノズル14bの基端側内面には、凹部50が形成されると共に、チューブ部18の先端側外面には、凹部50に係合する凸部52が形成され、これら凹部50と凸部52とが係合することで噴霧ノズル14bがチューブ部18の先端に嵌合固定されている。図10では、噴霧ノズル14bの先端に、段付き孔部からなる噴霧孔54が形成された構成を例示しているが、該噴霧ノズル14bの噴霧孔としては、図3や図9に示す微小通路40や微小通路46及び集合流路48を備えた構成としてもよい。
【0039】
このようにチューブ部18の先端に嵌合可能な噴霧ノズル14bを用いると、当該噴霧具10の仕様や用途に応じて、チューブ部18の先端に設ける噴霧ノズル(噴霧孔)の形状を適宜選定し装着することができ、当該噴霧具10の生産性や汎用性が向上する。
【0040】
なお、吐出ノズルとしては、上記したように先端の噴霧孔から薬液を噴霧する構成からなる噴霧ノズル14、14a、14b以外の構成であってもよく、例えば、シャワーのような微小流を先端の吐出孔から吐出する構成であってもよい。
【0041】
ところで、当該噴霧具10では、薬液Lを霧状に噴射するために又は微小流を吐出するために、先端の噴霧ノズル14(14a、14b)の噴霧孔は非常に細径に形成されており、このためシリンジ12から吐出される薬液Lは所定の高い圧力(抵抗)を発生することになる。そこで、噴霧具10とシリンジ12との接続部について、図3に示される通常のテーパ嵌合構造(ルアーテーパ嵌合構造)以外にも、例えば、図11A及び図11Bに示されるロック機構56を備えたテーパ嵌合構造(ルアーロック構造)とすることも有効である。
【0042】
図11A及び図11Bに示すように、ロック機構56は、シリンジ12の流出口20の外周側に隙間58を有して配置された筒部60の内周面に形成された雌ねじ62と、基部16の基端側外周面にフランジ30(図3参照)に代えて形成された雄ねじ64とから構成されている。シリンジ12側の雌ねじ62に対し、噴霧具10側の雄ねじ64が螺合されることにより、シリンジ12と噴霧具10との間をより確実に嵌合・締結することができる。なお、このロック機構56を設けたルアーロック構造は、特に、図7に示す細径流路34aを有する構成に適用されると一層効果的である。細径流路34aにより、上記したシリンジ12から吐出される薬液Lの圧力(抵抗)が一層高くなるからである。
【0043】
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0044】
例えば、薬液噴霧具10を接続するシリンジとしては、図1に示すシリンジ12以外の構成であっても勿論よく、内部に充填された薬液Lを噴霧具10へと所定圧力で確実に送液可能な送液機構を有する構成のものであればよい。
【0045】
当該薬液噴霧具10の用途は上記した口内炎の治療に限定されるものでは勿論なく、例えば、鼻腔内の炎症部位(患部)に薬剤を噴霧するデバイスや、生体内にカテーテルや内視鏡等のチューブを挿入する際、或いは経鼻チューブを挿入する際の麻酔剤の噴霧用デバイスとしても用いることができ、また、これら局所麻酔薬の投与以外の用途、例えば、抗アレルギー薬やワクチン等の投与に用いることもでき、さらには、内視鏡下手術時に薬液を噴霧するデバイスとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10…薬液噴霧具 12…シリンジ
14、14a、14b…噴霧ノズル 16…基部
18…チューブ部 20…流出口
28…注入口 34…流路
36…板状部材 37…線状部材
40、46…微小通路 44…コイル
48…集合流路 56…ロック機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填されたシリンジの流出口に接続されて用いられ、該流出口から供給される前記薬液を吐出するための薬液吐出具であって、
前記流出口と嵌合可能な注入口が設けられた基部と、
前記流出口から前記注入口へと供給される前記薬液を吐出する吐出孔が設けられた吐出ノズルと、
前記基部と前記吐出ノズルとの間に設けられ、前記注入口に供給される前記薬液を前記吐出ノズルへと流通させる流路が設けられた可撓性を有するチューブ部と、
を備え、
前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有することを特徴とする薬液吐出具。
【請求項2】
請求項1記載の薬液吐出具において、
前記チューブ部には、前記屈曲状態を保持するための形状保持部材が設けられていることを特徴とする薬液吐出具。
【請求項3】
請求項2記載の薬液吐出具において、
前記形状保持部材は、前記チューブ部の外周面上に巻回され、若しくは前記チューブ部の外周壁面内に少なくとも一部が埋没して巻回されたコイルであるか、又は、前記チューブ部の前記流路に沿った壁面内に埋設された線状部材若しくは板状部材であることを特徴とする薬液吐出具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬液吐出具において、
前記吐出孔は、流通方向が異なる複数の微小通路の下流側を集合させた集合流路を有することを特徴とする薬液吐出具。
【請求項1】
薬液が充填されたシリンジの流出口に接続されて用いられ、該流出口から供給される前記薬液を吐出するための薬液吐出具であって、
前記流出口と嵌合可能な注入口が設けられた基部と、
前記流出口から前記注入口へと供給される前記薬液を吐出する吐出孔が設けられた吐出ノズルと、
前記基部と前記吐出ノズルとの間に設けられ、前記注入口に供給される前記薬液を前記吐出ノズルへと流通させる流路が設けられた可撓性を有するチューブ部と、
を備え、
前記チューブ部は、その屈曲状態を保持することができる形状保持機能を有することを特徴とする薬液吐出具。
【請求項2】
請求項1記載の薬液吐出具において、
前記チューブ部には、前記屈曲状態を保持するための形状保持部材が設けられていることを特徴とする薬液吐出具。
【請求項3】
請求項2記載の薬液吐出具において、
前記形状保持部材は、前記チューブ部の外周面上に巻回され、若しくは前記チューブ部の外周壁面内に少なくとも一部が埋没して巻回されたコイルであるか、又は、前記チューブ部の前記流路に沿った壁面内に埋設された線状部材若しくは板状部材であることを特徴とする薬液吐出具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬液吐出具において、
前記吐出孔は、流通方向が異なる複数の微小通路の下流側を集合させた集合流路を有することを特徴とする薬液吐出具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−29786(P2012−29786A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170648(P2010−170648)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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