説明

薬液噴霧機

【課題】薬液タンク内の薬液を撹拌して、薬液タンク内の水中から薬剤が分離して薬液タンク内底部に沈殿するのを防ぐ手段が備えられた、薬液噴霧機を提供する。
【解決手段】薬液タンク10内にサブノズル60を備えて、そのサブノズル60と薬液送給ホース40とをサブホース70を介して連結する。そして、薬液送給ホース40内を通して薬液噴射ノズル管50から噴射させる薬液の一部を、サブホース70内を通して、サブノズル60から薬液タンク10内に貯留された薬液20中に噴射させて、そのサブノズル60から噴射させる薬液により薬液タンク10内の薬液20を撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培中の植物やその周辺の圃場等に消毒用、除草用、肥料用等の薬液を噴霧する薬液噴霧機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記噴霧機は、プラスチック製等の大型の薬液タンクを備えていて、その薬液タンク内に貯留された薬液を、薬液圧送ポンプにより、薬液送給ホース内を通して、該ホース先端に連結された薬液噴射ノズル管から、植物やその周辺の圃場等に噴霧する構造をしている。
この噴霧機の使用に際しては、その大型の薬液タンク内に水を多量に投入して、その水に薬剤を添加した後、その薬剤が添加された水を、噴霧器付属の長尺の薬液噴射ノズル管を撹拌棒に用いる等して、撹拌している。そして、その水中に薬剤を均一に溶解させている。次いで、薬液圧送ポンプを作動させて、その薬剤を均一に溶解させた薬液タンク内の水、即ち薬液を、薬液送給ホース内を通して、薬液噴射ノズル管先端から噴射させている。
【0003】
ところで、上記噴霧機には、肩掛け式や、背負い式や、車輪の付いた手押し式や、動力車輪の付いた自走式のものなどがあるが、そのいずれのタイプの噴霧機においても、その薬液タンク内に貯留された薬液を、薬液送給ホース内を通して、薬液噴射ノズル管先端から噴射させる構造をしていて、薬液の散布作業を行う間は、薬液タンクが、激しく上下、左右に揺すられる等されずに、肩に動かぬように安定させて掛けられたり、背中に動かぬように安定させて背負われたり、台車等に乗せられて圃場上方の一定高さ位置に安定させて支持し続けられたりする構造をしている。
そのために、その薬液タンク内の水中に溶解させた薬剤が、薬液の散布中に、薬液から次第に分離して、薬液タンク内底部に沈殿し、その薬液タンク内の薬液中の薬剤の濃度が低下してしまった。そして、その薬液タンク内の薬液を植物等に噴霧した際の、薬液の効能や作用が落ちてしまった。
【特許文献1】特開2004−261770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような難点を解消するためには、薬液タンク内に撹拌羽根車を設けて、その撹拌羽根車を薬液タンク内で回転させ、その撹拌羽根車により、薬液タンク内の薬液を撹拌し続ける方法が、考えられる。
しかしながら、そのようにした場合には、薬液タンク内に複雑な構造をした撹拌羽根車を備えたり、その羽根車を回転させる動力源を新たに噴霧機に備えたりする必要があって、そのために、噴霧機のコストが大幅にアップしてしまう。また、その撹拌羽根車に薬液から分離して付着する薬剤等を時々取り除く作業が必要となって、その撹拌羽根車のメンテナンスに多大な手数と時間が掛ることになる。
【0005】
本発明は、このような課題を解消しようとするもので、薬液タンク内の水中から薬剤が分離して薬液タンク内底部に沈殿するのを防ぐための手段であって、その構造が簡単で、噴霧機のコストをアップさせることのない、メンテナンスの容易な、薬液タンク内の薬液を撹拌するための手段が備えられた、薬液噴霧機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明の薬液噴霧機は、薬液タンク内に貯留された薬液を、薬液圧送ポンプにより、薬液送給ホース内を通して、該ホース先端に連結された薬液噴射ノズル管から噴射させる噴霧機において、
前記薬液タンク内にサブノズルを備えて、そのサブノズルと前記薬液送給ホースとをサブホースを介して連結し、前記薬液送給ホース内を通して薬液噴射ノズル管から噴射させる薬液の一部を、前記サブホース内を通して、サブノズルから薬液タンク内に貯留された薬液中に噴射させて、そのサブノズルから噴射させる薬液により薬液タンク内の薬液を撹拌する構造としたことを特徴としている。
【0007】
このような構成の薬液噴霧機においては、薬液タンク内に貯留された薬液を、薬液圧送ポンプにより、薬液送給ホース内を通して、該ホース先端に連結された薬液噴射ノズル管から噴射させて、植物等に散布する際に、前記薬液送給ホース内を通して薬液噴射ノズル管から噴射させる薬液の一部を、サブホース内を通して、サブノズルから薬液タンク内に貯留された薬液中に噴射させることができる。そして、そのサブノズルから薬液中に噴射させる薬液の持つ押圧力を用いて、薬液タンク内の薬液を、薬液タンク内壁に激しく衝突させる等して撹拌し続けることができる。そして、その薬液タンク内の薬液中から薬剤が分離して、薬液タンク内底部に沈殿するのを、防ぐことができる。そして、薬液タンク内の薬液の散布作業を行う際に、その薬液タンク内の薬液中の薬剤の溶解濃度を常にほぼ均一に保持し続けることが可能となる。
【0008】
本発明の薬液噴霧機においては、前記サブノズルから噴射させる薬液の量を調整する調整弁を備えると良い。
そして、薬液タンク内の薬液に展着剤等が添加されていて、その薬液タンク内の薬液を激しく撹拌すると、薬液から多量の泡沫が発生する場合等に、調整弁により、サブノズルから薬液タンク内の薬液中に噴射させる薬液の量を少量に制限すると良い。そして、薬液タンク内の薬液をサブノズルから噴射させる薬液により撹拌中に、その薬液タンク内の薬液から、薬液散布の妨げとなる、多量の泡沫が発生するのを、防ぐと良い。
【0009】
本発明の薬液噴霧機においては、薬液タンク内に備えられたサブノズルを、着脱可能な構造とすると良い。
そして、サブノズルを、薬液タンク内から取り外して、薬液タンク外部に取り出すことができるようにするとよい。そして、そのサブノズルに薬液タンク内の薬液から分離して付着した薬剤等を、容易かつ的確に排除できるようにすると良い。そして、そのサブノズルのメンテナンスを容易かつ的確に行えるようにすると良い。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の薬液噴霧機によれば、薬液タンク内に貯留された薬液の散布作業を行う際に、薬液タンク内に備えられたサブノズルから噴射させる薬液の持つ押圧力を用いて、その薬液タンク内の薬液を撹拌し続けることができる。そして、その薬液タンク内の薬液中から薬剤が分離して、薬液タンク内底部に沈殿するのを、防ぐことができる。そして、その薬液タンク内の薬液中の薬剤の溶解濃度を常にほぼ均一に保持し続けることが可能となる。そして、その植物等に散布する薬液の効能や作用が落ちるのを、防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の薬液噴霧機の好適な実施の形態を示し、図1はその構造説明図である。以下に、この薬液噴霧機を説明する。
【0012】
この薬液噴霧機は、従来汎用の噴霧機と同様に、蓋付きのプラスチック製等の大型の薬液タンク10を備えていて、その薬液タンク10内に貯留された薬液20を、薬液圧送ポンプ30により、薬液送給ホース40内を通して、該ホース先端に連結された薬液噴射ノズル管50から噴射させる構造をしている。薬液圧送ポンプ30は、動力エンジン、電動モータ等により駆動させる構造をしている。なお、薬液圧送ポンプ30には、手漕ぎ式のものを用いることも、可能である。
【0013】
以上の構成に加えて、図1に示した噴霧機においては、薬液タンク10内底部に、小型のサブノズル60を、その先端を薬液タンク内底壁10aとほぼ平行な横方向に向けて、備えている。サブノズル60は、薬液圧送ポンプ30と薬液噴射ノズル管50とを繋いでいる薬液送給ホース40の中途部に、サブホース70を介して連結している。そして、薬液送給ホース40内を通して薬液噴射ノズル管50から噴射させる薬液の一部を、薬液圧送ポンプ30により、サブホース70内を通して、サブノズル60から薬液タンク内に貯留された薬液20中に噴射させる構造をしている。そして、そのサブノズル60から薬液20中に噴射させる薬液の持つ押圧力を用いて、薬液タンク内の薬液20を、薬液タンク内壁10bに激しく衝突させる等して撹拌し続ける構造をしている。
そして、薬液タンク10内に貯留された薬液20の散布作業を行う際に、薬液タンク内の薬液20を撹拌し続けて、その薬液タンク内の薬液20中から薬剤が分離して、薬液タンク10内底部に沈殿するのを、防ぐ構造をしている。そして、その植物等に散布する薬液タンク内の薬液20中の薬剤の溶解濃度を常にほぼ均一に保持し続ける構造をしている。
【0014】
この薬液噴霧機においては、図1に示したように、薬液送給ホース40内からサブホース70内を通してサブノズル60から噴射させる薬液の量を調整する調整弁80を備えると良い。調整弁80には、市販の絞り弁を用いると良い。調整弁80は、サブホース70と薬液送給ホース40との連結部に備えると良い。
そして、薬液タンク内の薬液20に展着剤等が添加されていて、その薬液タンク内の薬液20を激しく撹拌すると、その薬液20中から多量の泡沫が発生する場合等に、調整弁80により、薬液送給ホース40内からサブホース70内を通してサブノズル60から噴射させる薬液の量を少量に制限すると良い。そして、そのサブノズル60から噴射させる薬液により薬液タンク内の薬液20を撹拌中に、その薬液タンク内の薬液20から、薬液散布の妨げとなる、多量の泡沫が発生するのを、防ぐと良い。
【0015】
この薬液噴霧機においては、薬液タンク10内にサブノズル60を、ねじ止め機構等を用いて、着脱可能に備えると良い。
そして、薬液タンク10内に備えられたサブノズル60を、薬液タンク10内から容易かつ迅速に取り外して、薬液タンク10外部に容易に取り出すことができるようにすると良い。そして、そのサブノズル60に薬液タンク10内の薬液20中から分離して付着する薬剤等を容易かつ的確に排除できるようにすると良い。そして、そのサブノズル60のメンテナンスを容易かつ的確に行えるようにすると良い。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の薬液噴霧機は、栽培中の野菜、果実等の植物やその周辺の圃場等に消毒用、除草用、肥料用等の薬液を噴霧する薬液噴霧機であって、肩掛け式や、背負い式や、車輪の付いた手押し式や、動力車輪の付いた自走式などの様々のタイプの薬液噴霧機に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の薬液噴霧機の構造説明図である。
【符号の説明】
【0018】
10 薬液タンク
20 薬液
30 薬液圧送ポンプ
40 薬液送給ホース
50 薬液噴射ノズル管
60 サブノズル
70 サブホース
80 調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液タンク内に貯留された薬液を、薬液圧送ポンプにより、薬液送給ホース内を通して、該ホース先端に連結された薬液噴射ノズル管から噴射させる噴霧機において、
前記薬液タンク内にサブノズルを備えて、そのサブノズルと前記薬液送給ホースとをサブホースを介して連結し、前記薬液送給ホース内を通して薬液噴射ノズル管から噴射させる薬液の一部を、前記サブホース内を通して、サブノズルから薬液タンク内に貯留された薬液中に噴射させて、そのサブノズルから噴射させる薬液により薬液タンク内の薬液を撹拌する構造としたことを特徴とする薬液噴霧機。
【請求項2】
前記サブノズルから噴射させる薬液の量を調整する調整弁を備えたことを特徴とする請求項1記載の薬液噴霧機。
【請求項3】
前記薬液タンク内に備えられたサブノズルを、着脱可能な構造としたことを特徴とする請求項1記載の薬液噴霧機。

【図1】
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【公開番号】特開2007−75692(P2007−75692A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264542(P2005−264542)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(502417519)有限会社やまろく機工 (1)
【出願人】(500270572)株式会社麻場 (8)
【Fターム(参考)】