説明

薬液散布用の噴射器

【課題】殺虫用の液状薬剤を高所へ効果的に投じることができる薬液散布用の噴射器を提供すること。
【解決手段】殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器であって、薬液を導入して噴射するために貯留する圧力容器10と、圧力容器10内に薬液ポンプ装置60から薬液管路61を介して薬液を導入する薬液導入口部20と、圧力容器10内に配されて、内外の相対的な圧力の変化に伴って容積が変化できるように設けられ、圧縮空気を導入して封止することができるエアバッグ30と、エアバッグ30内に圧縮空気を導入するための圧縮空気導入口部40と、圧力容器10内に連通して薬液管路61よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズル51になっている噴射用管路部50とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、次の構成の高所殺虫用保持具が提案されている。この高所殺虫用保持具よれば、支柱管の先端部にスプレ−缶を固定するための取付部を形成し、前記支柱管の先端部に形成された貫通孔に可動レバ−を回動可能に取り付けるとともに可動レバ−の後端には操作紐を取り付け、前記操作紐を滑車に引っ掛け、操作紐を引っ張ることにより可動レバ−が回動するようにするとともに、支柱管に形成された取付部の下方に固定部材を上下動可能に設けたことを特徴としている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、棹状の長尺材による方法では高さに限界があり、胡桃の木などの高木のより高所にいるアメリカシロヒトリなどの害虫を駆除することは困難であった。ポンプ動力を用いる農薬散布装置の場合も、ノズルからの噴射力には限界があり、より高所へ農薬を噴霧することができない。
なお、強力なポンプ装置によれば、大量の薬液を、高圧状態でノズルから噴射することが可能であるため、より高所まで飛ばすことができる。但し、この場合は、殺虫用の液状薬剤などの農薬を、必要以上に大量に噴出することになると共に装置が大型化するため、現実的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平07−3750(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液散布用の噴射器に関して解決しようとする問題点は、殺虫用の液状薬剤を胡桃の木などの高木の高所へ効果的に投じることができないことにある。
そこで本発明の目的は、殺虫用の液状薬剤を高所へ効果的に投じることができる薬液散布用の噴射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る薬液散布用の噴射器の一形態によれば、殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器であって、前記薬液を導入して噴射するために貯留する圧力容器と、該圧力容器内に薬液ポンプ装置から薬液管路を介して薬液を導入する薬液導入口部と、前記圧力容器内に配されて、内外の相対的な圧力の変化に伴って容積が変化できるように設けられ、圧縮空気を導入して封止することができるエアバッグと、該エアバッグ内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入口部と、前記圧力容器内に連通されて前記薬液管路よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズルになっている噴射用管路部とを具備する。
【0007】
また、本発明に係る薬液散布用の噴射器の一形態によれば、前記噴射用管路部が、前記圧力容器の上端部で該圧力容器内に連通されていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明に係る薬液散布用の噴射器の一形態によれば、殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器であって、前記薬液を導入して噴射するために貯留する圧力容器と、該圧力容器内に薬液ポンプ装置から薬液管路を介して薬液を導入する薬液導入口部と、前記圧力容器内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入口部と、前記圧力容器内に連通して前記薬液管路よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズルになっている噴射用管路部とを具備する。
【0009】
また、本発明に係る薬液散布用の噴射器の一形態によれば、前記噴射用管路部が、前記圧力容器の下端部で該圧力容器内に連通されていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る薬液散布用の噴射器の一形態によれば、前記噴射用管路部の前記圧力容器との連通口には、前記薬液の前記圧力容器内への導入を許容し、前記圧力容器内の前記薬液が一定量以下になったときに該圧力容器内から排出されることを阻止する逆止弁が設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る薬液散布用の噴射器によれば、殺虫用の液状薬剤を高所へ効果的に投じることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る薬液散布用の噴射器の形態例を示す断面図である。
【図2】図1の形態例のエアバッグの作動状態を示す模式図である。
【図3】本発明に係る薬液散布用の噴射器の他の形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る薬液散布用の噴射器の形態例を添付図面(図1及び図2)に基づいて詳細に説明する。
この薬液散布用の噴射器は、殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる機器である。
【0013】
10は圧力容器であり、薬液を導入して噴射するために貯留するように、高圧力に耐えられる容器になっている。薬液は、薬液ポンプ装置60によって昇圧されて圧力容器10へ導入される。11は圧力蓋であり、本体12の口部にネジ蓋状に装着される形態に設けられ、圧力容器10の一部分を構成している。14は液圧の安全弁であり、圧力容器10に装着され、一定以上の過大な圧力が負荷された場合に開放するように設けられている。
【0014】
20は薬液導入口部であり、圧力容器10内に薬液ポンプ装置60から薬液管路61を介して薬液を導入するための薬液供給口になっている。本形態例の薬液導入口部20では、後述する噴射用管路部50と圧力容器10内とを連通する連通部55に薬液供給口が接続された形態になっている。
薬液ポンプ装置60としては、例えば、農業用の農薬散布に広く使用されているポンプ装置であって、薬液管路61の内径が8mm程度、出力圧の最大が25〜30気圧程度のものを用いることができる。
【0015】
30はエアバッグであり、圧力容器10内に配されて、内外の相対的な圧力の変化に伴って容積が変化できるように設けられ、圧縮空気を導入して封止することができるものである。例えば、ゴム製などの伸縮性材料による空気圧用バッグや、蛇腹形状又は加圧されないときはしわしわの袋状の空気圧用バッグであってもよい。
【0016】
40は圧縮空気導入口部であり、エアバッグ30内に圧縮空気を導入するために設けられている。この圧縮空気導入口部40は、圧縮空気導入用管路41を介してエアコンプレッサーなどの圧縮空気供給装置45に連通している。42は開閉弁であり、エアバッグ30内への圧縮空気の供給を操作できるように設けられている。43は空気圧の安全弁であり、一定以上の過大な圧力が負荷された場合に開放するように設けられている。また、13は圧力計であり、エアバッグ30内の圧力を計測・表示するものである。
【0017】
50は噴射用管路部であり、圧力容器10内に連通されて薬液管路61よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズル51になっている。52は開閉コックであり、これによって、噴射用管路部50の管路53を開閉し、管路53を開くことで薬液を噴出させることができる。この管路53の内径は例えば30mm程度であって、ノズル51の先端の開口を15mm程度とすることができる。
【0018】
以上の構成による薬液散布用の噴射器によれば、間欠的であるが、圧力容器10内に貯留された薬液を高く遠くへ飛ばすことができる。これは、所要の容量の薬液を、比較的大きな開口のノズル51から高圧で一気に噴出できるためである。従って、胡桃の木のような高木について、高所の消毒や殺虫を行う必要がある場合に、好適に対応できる。例えば、アメリカシロヒトリの広がりを防除する場合に、高所のアメリカシロヒトリの巣に対して。殺虫剤である薬液を好適に投じることができ、極めて有効である。
【0019】
また、本形態例の噴射用管路部50は、圧力容器10の上端部でその圧力容器10内に連通されている。これによれば、圧力容器10内の上部に溜まる空気を、容易に吐き出させることができる。圧力容器10内に空気が溜まることで薬液の導入量が制限されるような悪影響を防止でき、薬液散布用の噴射器の連続的な使用を適切に行うことができる。
【0020】
また、55は連通部であり、噴射用管路部50の管路53に連続して圧力容器10内に連通される流路として設けられている。本形態例では、圧力容器10の側壁外側に管路状に固定された形状であって、その管路の一部である圧力容器の側壁に開口された多数の孔55aによって、薬液や空気などの流体が適切に通過できるように構成されている。これによれば、エアバッグ30が、噴射用管路部50に連続する流路を塞ぐことを防止でき、薬液の噴射のための流れを適切に案内できる。なお、連通部55は、この形態に限らず、エアバッグ30が噴射用管路部50に連続する流路を塞がないように機能すればよく、例えば、エアバッグ30が密着しない溝のような形態でもよい。
【0021】
この薬液散布用の噴射器にかかる使用方法は、先ず図2(a)の状態のエアバッグ30へ、圧縮空気導入口部40を介して圧縮空気を供給し、エアバッグ30の内圧(空気圧)を例えば8気圧程度まで昇圧させる。これにより、図2(b)のように、エアバッグ30が圧力容器10の内面に接するように、その容積を増大させた状態になる。
次に、図2(c)のように、圧力容器10へ、薬液導入口部20を介して薬液を供給し、圧力容器10の内圧(エアバッグ30の内圧も同じ)を例えば16気圧程度まで昇圧させる。このように薬液を入れると、エアバッグ30が縮み、空気圧力を薬液を噴射させる力として利用できる状態になる。なお、薬液の圧力は、薬液ポンプ装置60によって制御される。
そして、噴射用管路部50のノズル51を薬液の散布対象となる高所位置などの方向へ向け、開閉コック52を開くことで薬液を噴射させる。
適宜に薬液が噴出されたところで、開閉コック52を閉じる。これにより、一サイクルの薬液散布作業が終わる。
そして、薬液の再供給によって圧力容器10の内圧が再び昇圧した時点で、次の分の薬液を噴射させることで、間欠的な薬液の散布作業を行うことができる。
【0022】
次に、本発明に係る薬液散布用の噴射器の他の形態例を添付図面(図3)に基づいて詳細に説明する。
この形態例も、図1の形態例と同様に、殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器であって、前記薬液を導入して噴射するために貯留する圧力容器10と、圧力容器10内に薬液ポンプ装置60から薬液管路61を介して薬液を導入する薬液導入口部20と、圧力容器10内に連通されて薬液管路61よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズル51になっている噴射用管路部50とを備える。
【0023】
そして、この形態例では、圧力容器10内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入口部40が設けられている。つまり、圧縮空気を圧力容器10内へ直接的に供給する構造になっている。これによっても、間欠的であるが、圧力容器10内に貯留された薬液を高く遠くへ飛ばすことができ、高所の消毒や殺虫を適切に行うことができる。
【0024】
また、本形態例では、噴射用管路部50が、圧力容器10の下端部でその圧力容器10内に連通されている。これによれば、圧力容器10の内部上側に適切に圧縮空気を導入でき、その圧縮空気の力で薬液を圧力容器10内から噴射用管路部50を介して噴出させることができる。なお、圧縮空気の圧力と量を適切に維持することが必要であり、圧力容器10内の空気量が過剰に多くなることで、薬液の導入量が制限されることになる。
【0025】
また、本形態例の噴射用管路部50の圧力容器10との連通口56には、薬液の圧力容器10内への導入を許容し、圧力容器10内の薬液が一定量以下になったときに圧力容器10内から排出されることを阻止する逆止弁21が設けられている。この逆止弁21としては、例えば図3に示すように、弁座と液に浮く球体によって構成できる。これによって、圧力容器10に導入された適量の薬液を噴出させることができると共に、圧縮空気が排出されることを防止できる。
【0026】
この薬液散布用の噴射器にかかる使用方法は、圧力容器10へ、圧縮空気導入口部40を介して圧縮空気を供給し、圧力容器10の内圧(空気圧)を例えば8気圧程度まで昇圧させる。
次に、圧力容器10へ、薬液導入口部20を介して薬液を供給し、圧力容器10の内圧を例えば16気圧程度まで昇圧させる(図3の状態を参照)。なお、薬液の圧力は、薬液ポンプ装置60によって制御される。
そして、噴射用管路部50のノズル51を薬液の散布対象となる高所位置などの方向へ向け、開閉コック52を開くことで薬液を噴射させる。
適宜に薬液が噴出されたところで、開閉コック52を閉じる。これにより、一サイクルの薬液散布作業が終わる。
そして、薬液の再供給によって圧力容器10の内圧が再び昇圧した時点で、次の分の薬液を噴射させることで、間欠的な薬液の散布作業を行うことができる。
【0027】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0028】
10 圧力容器
20 薬液導入口部
21 逆止弁
30 エアバッグ
40 圧縮空気導入口部
50 噴射用管路部
51 ノズル
60 薬液ポンプ装置
61 薬液管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器であって、
前記薬液を導入して噴射するために貯留する圧力容器と、
該圧力容器内に薬液ポンプ装置から薬液管路を介して薬液を導入する薬液導入口部と、
前記圧力容器内に配されて、内外の相対的な圧力の変化に伴って容積が変化できるように設けられ、圧縮空気を導入して封止することができるエアバッグと、
該エアバッグ内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入口部と、
前記圧力容器内に連通されて前記薬液管路よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズルになっている噴射用管路部とを具備することを特徴とする薬液散布用の噴射器。
【請求項2】
前記噴射用管路部が、前記圧力容器の上端部で該圧力容器内に連通されていることを特徴とする請求項1記載の薬液散布用の噴射器。
【請求項3】
殺虫用の液状薬剤を高所へ投じるように薬液散布装置に設けられる薬液散布用の噴射器であって、
前記薬液を導入して噴射するために貯留する圧力容器と、
該圧力容器内に薬液ポンプ装置から薬液管路を介して薬液を導入する薬液導入口部と、
前記圧力容器内に圧縮空気を導入する圧縮空気導入口部と、
前記圧力容器内に連通して前記薬液管路よりも大きな径の管路状に設けられ、先端が噴射用のノズルになっている噴射用管路部とを具備することを特徴とする薬液散布用の噴射器。
【請求項4】
前記噴射用管路部が、前記圧力容器の下端部で該圧力容器内に連通されていることを特徴とする請求項3記載の薬液散布用の噴射器。
【請求項5】
前記噴射用管路部の前記圧力容器との連通口には、前記薬液の前記圧力容器内への導入を許容し、前記圧力容器内の前記薬液が一定量以下になったときに該圧力容器内から排出されることを阻止する逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項3又は4記載の薬液散布用の噴射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−110267(P2012−110267A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261932(P2010−261932)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【特許番号】特許第4785984号(P4785984)
【特許公報発行日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(510311344)
【Fターム(参考)】