説明

薬液散布用ノズル及び散布器

【課題】直射散布の際には液体を直線状に遠方まで好適に噴射でき、さらに、直射散布と広角散布の切り換えが、手際良く簡単にできる薬液散布用ノズル及び散布器を提供することを目的とする。
【解決手段】渦流形成手段13が進退移動可能な部分よりも噴出口43側寄りに設けられた空気吸入口35と、液体が内部を通過することにより負圧が生じて空気吸入口から空気が流路内へ導入されるオリフィス部30と、渦流溝18が形成された渦流形成手段が外周面との間に隙間を有して挿入される収容室28と、収容室より噴出口側に設けられ渦流形成手段が内壁面に接して挿入される渦流発生室20と、渦流形成手段を進退移動させる進退移動手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を散布する際に使用する薬液散布用ノズル及びこれを用いた散布器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
園芸等で殺菌剤や除草剤等の農薬を散布する際には、散布器が多く使用されている。一般的な散布器は、タンク、加圧ポンプ、及び薬液散布用ノズルを有し、加圧ポンプによってタンク内を加圧し、内部に貯留されている殺菌剤や除草剤等の液体を薬液散布用ノズルの先端部から植物等に向けて噴射し、散布する。
【0003】
殺菌剤や除草剤等の農薬を散布する際には、遠くの植物等に的を絞って集中的に散布(直射散布)したい場合と、比較的近くの、所望の範囲の植物に的確に散布(広角散布)したい場合とがある。そこで、1つの散布器によって薬液散布用ノズルを交換することなく、上記2つの場合に対応可能な薬液散布用ノズルが従来開発されている。この具体的な例として、図5、図6に示されるような薬液散布用ノズルがある。
【0004】
図5、6は同一の薬液散布用ノズルを示し、図5は、広角散布の際の薬液散布用ノズルの先端部B側を説明する断面図であり、図6は直射散布の際の薬液散布用ノズルの先端部B側を説明する断面図である。管状に形成されている薬液散布用ノズルは、図示しない後端部Cにグリップが設けられており、使用者はこのグリップを握り、先端部Bを植物等の対象物に向けて液体を散布する。
【0005】
まず、図5、図6を用いて薬液散布用ノズルの構造を概略説明する。尚、液体の移動方向を矢印Aで示す。
【0006】
内装管80の中心には、その軸線方向に延びる流路96が設けられている。流路96は、液体が貯留されるタンクに接続されるホース内に連通している。また、流路96の中途には、流路96を絞るオリフィス部83が設けられ、オリフィス部83より下流側には、側方に開口する空気吸入口85が形成されている。さらに、流路の先端側は拡径されて、混合室86が形成され、混合室には側方に開口する開口部97が設けられている。また、混合室の先端側には流路96を遮断するように衝突板89が設けられ、衝突板89の先端側には筒状の渦流形成手段92が取り付けられている。渦流形成手段92には、流体を渦状の流れとするための切欠部が先端面から所要深さに設けられている。
【0007】
このような構成からなる内装管80の外周面にはネジ部81が配設されており、外装管90内に先端側が螺入される。このとき、内装管80の先端側の外周面は、外装管の内周面との間に隙間を有し、流路87が形成されている。
【0008】
さらに外装管の先端部には、中央に噴出口88を設けたノズル板98が配設されている。そして、外装管90の先端側には筒体95が外嵌される。
【0009】
広角散布する場合は、図5に示すように、外装管90を回転させることにより、内装管80を外装管内に最大限に進入させ、渦流形成手段92をノズル板98に当接させる。この状態で加圧ポンプによって圧送されたタンク内の薬液等液体は、オリフィス部を通過して流路96を移動し、正面の衝突板89に衝突して混合室を通過する。このとき、液体が上流側から下流側へオリフィス部を介して圧送されることにより、負圧が生じて空気吸入口85から空気が吸引される。そして、吸引された空気は、液体と共に流路96内を下流側へ移動しながら正面の衝突板89に衝突し、混合室内で液体と空気が混合される。液体と空気の混合された混合流体は、混合室から側方の開口部97を介して流路87へと流入し、渦流形成手段に設けられた切欠部を通過して筒状の渦流形成手段の外側から内側に流入する際に渦状の流れとなって、噴出口88から広角度に広がって噴出される。これにより、薬液等の液体は、空気と混合されて泡状となって渦状に外方へ広がりながら噴出される。
【0010】
薬液を比較的細かな径のミスト状に散布すると風によって漂流しやすく、対象の植物に的確に散布することができない。そればかりか散布対象外の近隣の植物に薬液がかかってしまうという不具合がある。しかしながら、上記のように液体を空気と混合し比較的大きな径の泡状とすることで、散布の際の風による漂流が防止でき、対象の植物のみに的確に薬液を散布できる。
【0011】
直射散布する際には、図6に示すように内装管を外装管内から最大限に後退させ、渦流形成手段とノズル板98との間に流路99を形成する。
【0012】
そして、この状態で加圧ポンプによって圧送された薬液等の液体は、前述のようにオリフィス部83を通過して流路96の下流側へと流れ、正面の衝突板89に衝突しながら混合室86を通過する。この際、空気吸入口85から吸引された空気が、流路内を液体と共に下流側へ移動しながら、液体と共に衝突板89に衝突し、混合室86内で液体と混合され、混合流体となる。そして、混合流体は、流路87、流路99を通過して噴出口88から外方へと噴出される。混合流体は、渦流形成手段とノズル板との間に形成された流路99を通過するので、渦流形成手段の影響を受けずに直射状に噴出口から噴出される。
【0013】
また、内装管を外装管内に進入させるに従って流路99が狭まるので、液体は渦流形成手段の影響を受けやすくなっていく。渦流形成手段の影響度が大きい程液体の噴出角度が広角となるので、内装管の外装管に対する螺入状態を調整することにより、液体の噴出角度を直線状から広角の間で調整できる。
【0014】
このような構成からなる薬液散布用ノズルは、薬液散布用ノズルを交換することなく広角散布と直射散布ができるので便利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記構成からなる薬液散布用ノズルは、直射散布の際にも液体は空気と混合されてしまうので、比較的大きな粒径を有した泡状となって噴出されていた。大きな粒径を有した泡状の混合流体は落下しやすいので、噴射距離が短く、遠方へ噴射できないという不具合がある。また、流路87と流路99が狭いので直射散布の際にも渦流形成手段の影響を受け易く、噴出口88から噴射される液体が若干渦状に広がり気味で、的確に所定の植物の狭い範囲に的を絞って噴射できず、広角散布との違いをはっきり出せなかった。
【0016】
さらに、直射散布と広角散布を切り換える際には、一旦液体の散布を停止し、グリップを持っていた手を薬液散布用ノズルの先端側の外装管と内装管に持ちなおして操作しなければならないので、切り換えが素早くできず操作性が悪いという課題があった。
【0017】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、直射散布の際には液体を直線状に遠方まで好適に噴射できる薬液散布用ノズル及び散布器を提供することにある。さらに、直射散布と広角散布の切り換えが、手際良く簡単にできる薬液散布用ノズル及び散布器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記目的を達成するため次の構成を備える。
【0019】
すなわち、本発明は、タンク内から圧送された液体が流通する流路と、該液体を噴出する噴出口とを有し、直線状に液体を噴出する直射散布と、液体を空気と混合して泡状とし、円錐形に外方へ広がる渦流の状態で噴出する広角散布との切り換えが、液体に渦流の回転運動を付与する渦流形成手段を前記流路内において進退移動することにより成される薬液散布用ノズルであって、前記渦流形成手段が進退移動可能な部分よりも噴出口側寄りに設けられた空気吸入口と、流路を絞り、液体が内部を通過することにより負圧が生じて前記空気吸入口から空気が流路内へ導入されるオリフィス部と、渦流溝が形成された前記渦流形成手段が、外周面との間に隙間を有して挿入される収容室と、該収容室より噴出口側に設けられ、前記渦流形成手段が内壁面に接して挿入される渦流発生室と、前記渦流形成手段を前記収容室と前記渦流発生室との間にわたり進退移動させる進退移動手段とを有し、渦流形成手段を渦流発生室内へ挿入した際には、液体が渦流溝内を通過して広角散布され、渦流形成手段を収容室内に配置した際には液体が前記隙間を通過して直射散布されることを特徴とする。
【0020】
これによれば、渦流形成手段が進退移動できる部分を流路に充分な長さでとることができ、自由度が増して直射散布の際に液体が渦流形成手段の影響を受けないように簡単に構成できるようになる。さらに、渦流形成手段は進退移動手段によって簡単に進退移動させることができ、広角散布と直射散布の切り換えを手際良く行うことができる。
【0021】
また、前記進退移動手段は、一端部がグリップで、他端部に前記渦流形成手段が固定された棒体が、他端部側が流路内に挿入され、一端部が外方へ突出してなることを特徴とする。これにより、簡単な構成によって進退移動手段を形成できる。
【0022】
また、オリフィス部より噴出口側の流路の径は、オリフィス部の排出口の径よりも大きく形成されており、広角散布の際には、液体が渦流形成手段により円錐形に広がる渦流となって、流路内の内壁面に衝突することにより、流路内に導入された空気と混合され、直射散布の際には、前記排出口から直線状に排出される液体の外側を空気が通過することにより液体が空気と混合されることなく噴出されることを特徴とする。
【0023】
これにより、簡単な構成でありながら、広角散布と直射散布の違いが明確な薬液散布用ノズルを提供できる。
【0024】
また、本発明の散布器は、前記薬液散布用ノズルと、液体が貯留されるタンクと、該タンク内を加圧する加圧ポンプと、前記薬液散布用ノズルと前記タンクを連結する連結ホースとを具備することを特徴とする。
【0025】
これにより、広角散布と直射散布をそれぞれ良好に行うことができ、扱いやすい散布器を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の薬液散布用ノズル及び散布器によれば、直射散布の際には渦流形成手段の影響を受け難く、液体を遠くの対象物に集中的に散布できる。また、直射散布と広角散布の切り換えが手際良く簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
以下に説明する散布器は、園芸等で殺菌剤や除草剤等の薬液を散布する際に使用するものである。散布器は薬液等の液体を貯留するタンクと、このタンク内を加圧するピストン及びシリンダを有する電動式加圧ポンプと、タンク内の薬液を散布するための薬液散布用ノズル、および薬液散布用ノズルとタンクを連結する連結ホースとを備えている。加圧ポンプは電動式でなく手押し式であってもよい。そして、タンク内に貯留された液体を加圧ポンプにより加圧して、薬液散布用ノズルから噴出させ、植物等の対象物に散布する。
【0029】
図3は、薬液散布用ノズル10の全体形状を示す断面図である。薬液散布用ノズル10は、その先端部10aから液体が噴出されるのに対し、後端部10bは使用の際に使用者が薬液散布用ノズルを持つときに握るグリップ15となっている。
【0030】
薬液散布用ノズル10は、管状の本体部11を有する。本体部11は、その中心に軸線方向に貫通する流路12が設けられている。また、本体部11は、後端部10b側の中途で分岐して、供給管17が設けられている。これに伴って、流路12も後端部10b側の流路12bに対して供給管17側へ流路17bが分岐して形成されている。供給管には前記連結ホースが接続され、タンク内の液体は供給管内の流路17bを通過して流路12内へ圧送される。
【0031】
本体部11の後端部10b側の開口部は、封止部16によって封止されている。そして、一端部がグリップ15となっている棒体14の他端部側が、封止部16を貫通して本体部11の流路12内に挿入されている。詳しくは、棒体14は、グリップが後端部側の流路12bから外方へ突出した状態で、外周面に配設されたネジ部によって流路12内に螺合しながら、流路12内で進退(矢印Bで示す)移動可能となっている。
【0032】
図1は、直射散布の際の薬液散布用ノズル10の先端部10a側を説明する断面図であり、図2は、広角散布の際の薬液散布用ノズル10の先端部10a側を説明する断面図である。
【0033】
図1を用いて薬液散布用ノズルの先端部10a側の構造について説明する。
【0034】
流路12内に挿入されている棒体14の他端部14b側には、渦流形成手段13及びガイド部19が固定されている。これに対して流路12の渦流形成手段13とガイド部19が挿入される部位は、棒体14の一端部側が挿入される部位よりも拡径されて収容室28が形成されている。
【0035】
図4は、渦流形成手段13の正面図13cと側面図13dである。渦流形成手段13は、筒部13aと、筒部13aに接続され筒部13aから徐々に拡径して形成される円錐台型のブロックである拡径部13bと、拡径部13bに連続的に接続される円柱部13eとからなる。
【0036】
拡径部13bと円柱部13eとから構成される渦流部13fの外周面には、渦流形成手段13の軸線と所定の角度を有して斜めに設けられた渦流溝18が2個、向い合った位置に形成されている。渦流溝18は複数個設けられれば良く、2個〜4個程度が好適である。渦流溝18内を通過する流体は、渦状に誘導されて回転運動が付与され、渦状の流れとなる。
【0037】
このような構成からなる渦流形成手段13は、その軸線が棒体14の軸線と一致するように筒部13aが棒体14に外嵌されて、棒体14の他端部14bに固定されている。
【0038】
ガイド部19は、筒型の外嵌部19bと、外嵌部19bの一端部から径方向に突出するリング部19cを有する。そして、ガイド部19は、その軸線が棒体14の軸線と一致するように、棒体14に外嵌部19bが外嵌されて固定されている。この際、ガイド部19は、棒体14において渦流形成手段13よりも一端部側(グリップ側)に配置され、渦流形成手段13の筒部13aに当接している。また、ガイド部19は、リング部19cが設けられた側が渦流形成手段13側に位置している。
【0039】
そして、リング部19cには、液体がリング部19cを貫通して通過できるように、複数の貫通する流通孔19aが設けられている。
【0040】
このような構成からなる棒体14は、リング部19cの外周面が収容室28の内壁面に対して摺動することで、ガイド部19によって支持されながら流路12内を流路12の中心軸線方向に進退移動できるように構成されている。
【0041】
収容室28の後端部10b側の段差面38は、収容室28が流路12を拡径して設けられることに伴って形成されるが、この段差面38にガイド部19が当接することにより渦流形成手段13及びガイド部19の、それ以上の後端部10b側への移動が阻止され、棒体14の本体部11からの抜け止めがなされている。
【0042】
また、段差面38にガイド部19が当接した状態で、収容室28内における渦流形成手段13の先端側には空間ができる。このように、収容室28の軸線方向の長さは、ガイド部19と渦流形成手段13を合わせた長さに対して十分長く形成される。
【0043】
また、流路12は、収容室28から先端部10a側へ段階的に徐々に縮径して、第1縮径部20、第2縮径部22、第3縮径部24、第4縮径部25が設けられ、これに伴って第1段差面21、第2段差面23、第3段差面26、第4段差面27が形成されている。
【0044】
第1段差面21、第2段差面23及び第4段差面27は、後端部10b側に向けて広がるテーパー面となっている。第3段差面26は流路12の中心軸線47に対して垂直な面となっている。
【0045】
収容室28の径は、渦流形成手段13の最大径部分である円柱部13eの径よりも大きく、渦流形成手段の外周面と収容室28の内壁面との間には隙間を有して通路29が形成される。これに対して第1段差面21を有して収容室28よりも縮径して設けられる第1縮径部(渦流発生室)20は、第1縮径部20の内壁面に円柱部13eの外周面が接して挿入される大きさの径に形成される。そして、第1縮径部20内に渦流形成手段13が挿入された際には、液体は、渦流溝18内を通過することでのみ第1縮径部20を通過できる。
【0046】
第2段差面23は、第1縮径部よりさらに縮径されて第2縮径部22が設けられることにより形成されるが、渦流形成手段13は、この第2段差面23に係止されることにより、先端部10a側への移動が阻止される。こうして、渦流形成手段13は収容室28と第1縮径部20の範囲内で進退移動可能となっている。
【0047】
そして、渦流形成手段を収容室と渦流発生室との間にわたり進退移動させる進退移動手段が、一端部がグリップで他端部に渦流形成手段が固定された棒体が、一端部が外方へ突出し他端部側が流路内に挿入されて設けられる。
【0048】
第1縮径部20より先端部10a側に設けられる第2縮径部22と第3縮径部24の内部には、オリフィス部30が配設されている。オリフィス部30は、円筒部31と、円筒部31の端部から径方向にリング状に突出するフランジ部32とを有する。さらに、オリフィス部30はその中心に軸線に沿って貫通する流通孔33を有している。流通孔33は、フランジ部32側の開口部からフランジ部32内で徐々に縮径し、円筒部31内では同径に貫通して設けられている。
【0049】
このような形状からなるオリフィス部30は、フランジ部32が第3段差面26に当接して、第2縮径部22内に嵌入され、円筒部31が第3縮径部24内に挿入されて固定されている。第3段差面26とは、第3縮径部24が第2縮径部22よりも縮径されて設けられることにより形成される段差面である。このとき、流路12の中心軸線とオリフィス部30の中心軸線は一致している。また、円筒部31の外径よりも第3縮径部24の内径の方が大きく設定されているので、円筒部31の外周面と第3縮径部24の内壁面との間には通路39が形成される。さらに、第2縮径部22内には、第1縮径部20側にフランジ部の嵌入されない空間34が設けられる。
【0050】
また、第3縮径部24の第4段差面27側には、側方に開口する空気吸入口35が設けられているが、空気吸入口35の第4段差面27に最も近い開口縁部35aは、オリフィス部30の開口端部30aと略同一面上に位置する。このようにオリフィス部30の排出口45を空気吸入口35よりも先端部10a側に設けることで、液体が第4段差面27に衝突して逆流し、空気の吸引を妨げることを防止できる。
【0051】
また、第4段差面27と円筒部31との間には、通路40が形成される。通路40は、空気吸入口35、通路39及び第4縮径部25と連通している。ここで、第4段差面27とは、第4縮径部25が第3縮径部24よりも縮径して形成されることにより設けられる段差面である。
【0052】
こうして配設されたオリフィス部30は、流路12を絞る役目をなす。
【0053】
第4縮径部25の径は、円筒部31の開口であるオリフィス部30の排出口45の径よりも大きく形成されている。第4縮径部25より先端部10a側の流路12は、第5段差面37を有して拡径され、混合室36が形成されている。混合室36より先端部10a側は、第6段差面41を有して再び縮径され、第5縮径部42が形成されている。第5縮径部42の先端部10a側は外方に向って開口し、噴出口43が形成されている。また、第5縮径部42の径は、第4縮径部25の径よりも大きく、第3縮径部24の径よりも小さく設定されている。
【0054】
第5段差面37は、先端部10a側に向って広がるテーパー面となっており、第6段差面41は、後端部10b側に向って広がるテーパー面となっている。
【0055】
上記構成を有する本体部11の構成について詳しく説明する。
【0056】
噴出口43、第5縮径部42及び第6段差面41は、第1部材51に設けられている。
【0057】
混合室36の側壁面36a、第5段差面37、第4縮径部25、第4段差面27、第3縮径部24、第3段差面26、第2縮径部22、第2段差面23、第1縮径部20、第1段差面21は、第2部材52に設けられている。
【0058】
本体部11の収容室28を含めてそれより後端部10b側は、第3部材53に設けられている。
【0059】
そして、第3部材53の先端部側の内部に、第2部材52の後端部側がシール部材54を介して嵌め込まれ、第3部材53と第2部材52の境目を覆うように第2外嵌部材55が外嵌されている。このとき、第3部材53の外周面に設けられたネジ部に、第2外嵌部材55の内周面に設けられたネジ部が螺合している。また、第2外嵌部材55の先端部が内側に折り曲げられて形成された係止部53aが、第2部材52の外周面に形成された段差部に食い込むように配設されている。こうして第2外嵌部材55により、第2部材52と第3部材53が連結され一体化されている。
【0060】
また、第2部材52の先端部側に、第1部材51の後端部側がシール部材57を介して外嵌され、さらに第1部材51と第2部材52の境目を覆うように第1外嵌部材56が外嵌されている。このときも、第2部材52の外周面のネジ部に、第1外嵌部材56の内周面のネジ部が螺合している。また、第1外嵌部材56の先端部が内側に折り曲げられて形成された係止部56aが、第1部材51の外周面に形成された段差部に食い込むようにして配設されている。こうして、第1外嵌部材56により、第1部材51と第2部材52が連結され一体化されている。このように、本体部は、第1、第2、第3部材が連結して形成されている。
【0061】
次に、図2によって広角散布の際の薬液散布用ノズル10について説明する。広角散布の際には、使用者はまず本体部11内に挿入されている棒体14のグリップ15を握って回転させ、本体部11内に螺入し、収容室28内の渦流形成手段13を第1縮径部(渦流発生室)20内に挿入して、渦流形成手段の先端面48を第2段差面23に当接させる。この状態が図2であり、渦流形成手段13をその進退移動可能な流路12内の部分で最大限に進入させた状態である。この状態でタンク内の液体を加圧ポンプにより加圧して、連結ホース、供給管17を介して流路12内へと圧送する。液体は、ガイド部19に設けられた流通孔19aを通過し、渦流発生室20内の渦流溝18内を通ることにより、渦状となって円錐形状に広がる回転運動が付与される。回転運動が付与された液体は、さらに空間34、オリフィス部内の流通孔33、第4縮径部25を通過する。このとき、液体がオリフィス部内の流通孔33を通過しオリフィス部から噴出することにより、負圧が生じ、空気吸入口35を介して外方から流路12内へと空気が吸引される。吸引された空気は、通路39、通路40を通過して第4縮径部25内に導入される。
【0062】
回転運動が付与された液体は、オリフィス部内から渦流状に広がりながら第4縮径部25を通過するので、第4縮径部25の内壁面に衝突し空気と混合される。空気と混合しながら液体は第4縮径部25を通過し、混合室36内ではさらに円錐形に広がる。そして、空気と混合された混合流体である液体が、第6段差面41に衝突することで、混合室36内でさらに空気と混合される。こうして空気と混合された液体(混合流体)は、第5縮径部42で内壁面に衝突することでさらに空気と混合され、噴出口43から噴出される。噴出口43から噴出された液体44は、空気と充分に混合されて比較的大きな径を有する泡状となっており、渦状の回転運動が付与されて円錐形に外方へと広がる状態で噴出される。これにより、液体の風による漂流を防止でき、広い範囲の対象の植物のみに的確に薬液を散布できる。
【0063】
次に図1によって直射散布の際の薬液散布用ノズルについて説明する。直射散布の際には、使用者はグリップ15を握って棒体14を回転させ、棒体14を本体部11内に螺合させた状態で、渦流形成手段13を渦流発生室20内から後退させて引き出す。この際、ガイド部19が段差面38に当接するまで棒体14を本体部11から引き出す。この状態は、渦流形成手段13をその進退移動可能な流路12内の部分で最大限に後退させた状態である。
【0064】
前述のように加圧ポンプで圧送された液体は、流路12内に導入される。そして、液体は収容室28内に導入され、ガイド部に設けられた流通孔19aを通過し、さらに渦流形成手段13と収容室28の内壁面との間に形成される通路29を通過する。これにより、液体は渦流溝18の影響を受けずに収容室28内を通過することができる。
【0065】
この後、液体が渦流発生室20内に流入し、オリフィス部30内を通過することにより、前述と同様、空気吸入口35を介して空気が流路12内へ導入される。
【0066】
オリフィス部30から排出された液体は、前述のように渦流形成手段によって回転運動が付与されていないので、オリフィス部30の排出口45から広がることなく直線状に圧送され、第4縮径部25、混合室36、及び第5縮径部42を通過して噴出口43から外方へと噴出される。
【0067】
一方、空気吸入口35から吸引された空気も液体の流れに伴って、通路39、通路40、第4縮径部25、混合室36及び第5縮径部42を順に通過して、噴出口43から噴出される。このとき、オリフィス部より噴出口側の流路(第4縮径部、混合室、第5縮径部)の径は、オリフィス部の排出口45の径よりも大きく設定されており、さらに液体は排出口から直線状に排出されるので、第4縮径部25、混合室36、第5縮径部42において空気は、液体の流れの外側に生じる隙間46を通過することとなる。こうして、空気は、液体の外側を通って液体と混合されることなく、噴出口43から排出される。
【0068】
これによれば液体は、空気と混合されず、さらに渦流形成手段の影響を受けないので、直線状に遠方へと噴出でき、遠方の対象物に的を絞って噴射できる。
【0069】
また、渦流形成手段13の位置を渦流発生室の付近から渦流発生室に接近させ、さらに渦流発生室内に進入し最大限に進入させた状態に移動するに従って、噴出口43から噴出される際の液体の噴出角度が徐々に広角となると共に、液体への空気の混合量も徐々に増していく。
【0070】
これは、図7のように渦流形成手段13が渦流発生室20の手前にあって挿入されていない状態では、渦流溝18を通過して若干の回転運動が付与される液体の流れと、渦流形成手段13と第1段差面21との間の隙間58を通る液体の流れが生じる為、直射散布より若干開いた角度で噴出口43から噴出される。これに対し、図2の状態では、すべて液体は渦流溝18を通るため強力な回転運動を得てオリフィス部30から渦状に吐出し、広角度に広がって噴出口から噴出するからである。
【0071】
すなわち、渦流形成手段の先端面48とオリフィス部30の間の空間が狭いほど、渦流溝18の渦流発生室20内に挿入される部分が増えて液体が長い距離渦流溝18を通過することとなり、液体への渦流溝18の影響が大きくなる。液体に対する渦流形成手段13の影響が大きくなる程、液体は大きい角度の渦状となって広がりながら流路12内を通過し噴出されるので、空気と混合される機会も増えてその混合量も増すことと成る。
【0072】
従って、渦流形成手段を進退移動して位置を変更することで、液体の噴出角度を直線状から広角の状態の間で調整でき、これに伴って液体への空気の混合量も直射散布の際の殆ど混合されない状態から広角散布の際の多く混合される状態の間で調整される。
【0073】
上記実施形態では以下のような効果を得ることができる。
【0074】
直射散布の際には、液体はオリフィス部を通過した状態のまま噴出されるので、速度が増して勢いがあり、より好適に直線状に噴出させることができる。
【0075】
広角散布と直射散布の切り換えが、グリップから薬液散布用ノズルの先端側へ握りかえることなく、手際良く簡単に行うことができる。
【0076】
液体に早い段階で回転運動を付与しているので、広角散布の際には、液体が渦となって円錐状に広がりながら流路内の内壁面や段差面に衝突することを利用して、効率良く液体を空気と混合させることができる。
【0077】
従来は、渦流形成手段が薬液散布用ノズルの先端部側に設けられ、その移動可能な範囲が小さい範囲に限定されていたので、直射散布の際にも液体が渦流形成手段の影響を受けやすく、回転運動が付与されやすかった。上記実施形態では渦流形成手段を空気吸入口よりも後端部側へ配置したので、渦流形成手段の移動が比較的広い範囲で可能となり、直射散布の際に液体が渦流形成手段の影響を受け難くすることが容易になった。
【0078】
以上、本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】直射散布の際の薬液散布用ノズルの状態を示す断面図である。
【図2】広角散布の際の薬液散布用ノズルの状態を示す断面図である。
【図3】薬液散布用ノズルの全体の構成を示す断面図である。
【図4】渦流形成手段の正面図及び側面図である。
【図5】従来の薬液散布用ノズルの広角散布の際の断面図である。
【図6】従来の薬液散布用ノズルの直射散布の際の断面図である。
【図7】渦流形成手段が渦流発生室の手前にある状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
10 薬液散布用ノズル
11 本体部
12 流路
13 渦流形成手段
15 グリップ
30 オリフィス部
35 空気吸入口
43 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内から圧送された液体が流通する流路と、該液体を噴出する噴出口とを有し、直線状に液体を噴出する直射散布と、液体を空気と混合して泡状とし、円錐形に外方へ広がる渦流の状態で噴出する広角散布との切り換えが、液体に渦流の回転運動を付与する渦流形成手段を前記流路内において進退移動することにより成される薬液散布用ノズルであって、
前記渦流形成手段が進退移動可能な部分よりも噴出口側寄りに設けられた空気吸入口と、
流路を絞り、液体が内部を通過することにより負圧が生じて前記空気吸入口から空気が流路内へ導入されるオリフィス部と、
渦流溝が形成された前記渦流形成手段が、外周面との間に隙間を有して挿入される収容室と、
該収容室より噴出口側に設けられ、前記渦流形成手段が内壁面に接して挿入される渦流発生室と、
前記渦流形成手段を前記収容室と前記渦流発生室との間にわたり進退移動させる進退移動手段とを有し、
渦流形成手段を渦流発生室内へ挿入した際には、液体が渦流溝内を通過して広角散布され、渦流形成手段を収容室内に配置した際には液体が前記隙間を通過して直射散布されることを特徴とする薬液散布用ノズル。
【請求項2】
前記進退移動手段は、一端部がグリップで、他端部に前記渦流形成手段が固定された棒体が、他端部側が流路内に挿入され、一端部が外方へ突出してなることを特徴とする請求項1記載の薬液散布用ノズル。
【請求項3】
オリフィス部より噴出口側の流路の径は、オリフィス部の排出口の径よりも大きく形成されており、
広角散布の際には、液体が渦流形成手段により円錐形に広がる渦流となって、流路内の内壁面に衝突することにより、流路内に導入された空気と混合され、
直射散布の際には、前記排出口から直線状に排出される液体の外側を空気が通過することにより液体が空気と混合されることなく噴出されることを特徴とする請求項1または2記載の薬液散布用ノズル。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の薬液散布用ノズルと、
液体が貯留されるタンクと、
該タンク内を加圧する加圧ポンプと、
前記薬液散布用ノズルと前記タンクを連結する連結ホースとを具備することを特徴とする散布器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−35081(P2006−35081A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218100(P2004−218100)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(504103526)株式会社麻場 (6)
【Fターム(参考)】