説明

薬液注入ポートおよびそれを備える薬液容器

【課題】コアリングが発生することなく薬液を無菌的に注入可能であり、部品数が少なくて従来より小型で簡略化した構造の薬液注入ポート、およびこの薬液注入ポートを備える薬液容器を提供すること。
【解決手段】一方側の端部にシリンジを連結可能な薬液注入口部が形成されるとともに他方側の端部に薬液容器に連結可能な薬液排出口部が形成され、薬液注入口部から薬液排出口部に連なる通路を有する筒体と、該通路に設けられた除菌フィルタと、該除菌フィルタと薬液排出口部との間に、通路を閉鎖し、かつ薬液が薬液注入口部から通路に注入されると通路を開放し得るように設けられた閉鎖手段とを備えることを特徴とする薬液注入ポート、およびこれを備える薬液容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液同士の混注、具体的には輸液などの注射液への他の薬液の混注を無菌的にかつ簡易に行うための薬液注入ポート、および該薬液注入ポートを備える薬液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床の場では、複数種の薬液を同時に患者に投与することが繁用されている。たとえばビタミン剤などを静脈に注射したい場合など、ビタミン剤は熱により変質してしまうため、輸液バッグなどの薬液容器内に収容し、予め高圧蒸気滅菌処理を施しておくことができない。このため、用事、他の薬液が予め収容された薬液容器内に注入混合(これを混注という)して薬液容器内で混合する必要がある。
【0003】
上記の薬液を薬液容器に混注する場合、従来、薬液容器の薬液排出ポートのゴム栓に注射針を刺して混注する方法が採用されていたが、このような方法では、混注操作時の無菌性の確保が困難であった。該混注操作の際に外部から微生物(菌)が混入すると、この混合注射液を患者に投与している期間中に、該混合注射液中で微生物が繁殖してしまう。特に、該注射液がたとえば高カロリー輸液など栄養補給を目的とした輸液である場合、たとえ少量の混入であっても投与期間中に微生物が繁殖してしまう危険性がある。このような場合では、投与後期には大量の微生物が輸液と同時に患者の体内に注入される可能性がある。このような混合注射液を投与された患者は、敗血症やエンドトキシンショックなどの重篤な副作用を引き起こす。したがって患者の安全性を配慮して、混注操作時の無菌性を確保する必要がある。
【0004】
無菌的に混注操作を行うための医療用容器として、特開平9−19480号公報が開示されている。この医療用容器は、プラスチック容器本体に液密に取付けられる筒状の口部材と、上記口部材の開口を液密に密封するゴム栓体と、上記ゴム栓体に刺針可能な刺針部と連通され、あるいは該刺針部と一体成形されるハウジングと、上記ハウジングによって支持された除菌フィルタと、上記刺針部、ハウジングおよび除菌フィルタを滅菌状態で収容し、上記口部材に取付けられる収容カバーとからなる混注口(薬液注入ポート)が設けられてなるものである。
【0005】
しかしながらこのような医療用容器では、ゴム栓を刺通することによるコアリングが発生してしまい、容器内の薬液に異物が混入してしまう問題がある。また、刺針部を移動させてゴム栓体を刺針する構造であるため、薬液注入ポートが比較的大型になり、さらには部品の数が多いために高コストとなってしまう不具合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コアリングが発生することなく薬液を無菌的に注入可能であり、部品数が少なくて従来より小型で簡略化した構造の薬液注入ポート、およびこの薬液注入ポートを備える薬液容器を提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕一方側の端部にシリンジを連結可能な薬液注入口部が形成されるとともに他方側の端部に薬液容器に連結可能な薬液排出口部が形成され、薬液注入口部から薬液排出口部に連なる通路を有する筒体と、
該通路に設けられた除菌フィルタと、
該除菌フィルタと薬液排出口部との間に、通路を閉鎖し、かつ薬液が薬液注入口部から通路に注入されると通路を開放し得るように設けられた閉鎖手段とを備えることを特徴とする薬液注入ポート。
〔2〕前記筒体は、通路へ向けて突出する環状の突出部を有し、前記閉鎖手段が、環状突出部の薬液排出口部側に溶着されたフィルムであることを特徴とする上記〔1〕に記載の薬液注入ポート。
〔3〕前記筒体は、薬液注入口部を有する第一筒状部材と、薬液排出口部および環状突出部を有する第二筒状部材とからなり、第一筒状部材と第二筒状部材とが除菌フィルタを挟持した状態で互いに嵌着されてなることを特徴とする上記〔1〕または〔2〕に記載の薬液注入ポート。
〔4〕薬液注入口部が、開封可能な遮蔽手段によって、使用前まで無菌的に遮蔽されてなることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の薬液注入ポート。
〔5〕遮蔽手段が薬液注入口部に嵌め込まれたゴムキャップであって、
該ゴムキャップは、その天面に前記通路に連通する孔の開口を有し、かつ該孔がガスフィルタにて通気可能に塞がれてなるものである上記〔4〕に記載の薬液注入ポート。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の薬液注入ポートを備える薬液注入ポート付き薬液容器。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の好ましい一例の薬液注入ポートを備える薬液容器を一部切り欠いて示す正面図である。
【図2】図2は、図1の例の薬液注入ポートを拡大して示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の好ましい他の例の薬液注入ポートを簡略化して示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の好ましいさらに他の例の薬液注入ポートを簡略化して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい一例の薬液注入ポート2を備える薬液容器1を一部切り欠いて示す正面図であり、図2は、図1の例の薬液注入ポート2を拡大して示す断面図である。なお、図2は、薬液注入ポート2の軸線を含む断面である。本発明の薬液注入ポート2は、筒体3と、除菌フィルタ4と、閉鎖手段5とを、基本的に備える。
【0010】
筒体3は、略筒状、好ましくは円筒状の部材であって、一方側(以下、「軸線方向一方A1側」ということがある。)の端部にシリンジに連結可能な薬液注入口部6が形成され、かつ他方側(以下、「軸線方向他方A2側」ということがある。)の端部に薬液容器に連結可能な薬液排出口部7が形成される。また筒体3は、薬液注入口部6から薬液排出口部7に連なる通路9を有する。薬液注入口部6は、混注させたい薬液を収容したシリンジを連結し得る構造であればよく、図2に示す例では、通路9が、その途中(後述する透孔18)から前記軸線方向一方A1側に向かって徐々に径が拡がるような緩やかなテーパ状に形成され、ルアーチップ型シリンジのルアーチップ部を嵌め込んで連結できるように実現される。薬液排出口部7は、薬液容器に連結し得る構造であればよく、図2に示す例では、たとえば上記軸線方向他方A2側の端部で外方に拡がるように形成され、かつ薬液容器に溶着可能な材料にて形成されたフランジ部分8を有するように実現される。
【0011】
除菌フィルタ4は、筒体3内において、上記通路9の途中に設けられる。このような除菌フィルタ4としては、特に限定されるものではないが、たとえばメンブランタイプ、スクリーンタイプ、デプスタイプ、アニソトロピックタイプなど、当分野において通常用いられている各タイプのフィルタを好適に用いることができる。中でも、メンブランタイプのフィルタを用いるのが特に好ましい。除菌フィルタ4がメンブランタイプで実現される場合、その孔径(目の粗さ)が、細菌の通過を阻止できる大きさである0.01μm〜1.0μmに選ばれるのが好ましく、0.01μm〜0.5μmに選ばれるのがより好ましい。また、除菌フィルタ4を形成する材料としては、酢酸セルロース、再生セルロース、セルロースエステル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリエーテルスルホンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0012】
閉鎖手段5は、前記除菌フィルタ4と前記薬液排出口部7との間で、通路9を閉鎖するように設けられる。このような閉鎖手段5は、薬液が薬液注入口部6から通路9に注入されると通路9を開放し得るように前記通路9を閉鎖するものであれば、特には限定はされない。このような閉鎖手段5は、後述するような筒体に溶着されたフィルムで実現されてもよいし、逆止弁で実現されてもよい。
【0013】
上記のような構造を有する本発明の薬液注入ポート2は、図1に示すように薬液容器に装着したときに、薬液注入口部6から注入された薬液が閉鎖手段5に到達して初めて閉鎖手段5が開放されるので、少なくとも使用前(混注操作前)まで薬液容器内に収容される薬液が薬液注入ポート側に流出してしまうのを防止できる。また薬液注入ポート2は、閉鎖手段5にて通路9の閉鎖手段5よりも薬液注入口部6側の部分と、薬液容器の内部空間とを連通させることがないので、薬液注入ポート2を装着したままで使用前まで薬液容器内に収容される薬液を無菌的に保持できる。
【0014】
混注操作時には、薬液容器内の薬液に混注させたい他の薬液(以下、「混注液」と呼ぶことがある。)を収容したシリンジ(図示せず)を薬液注入口部6に連結し、該薬液注入口部6から前記混注液を通路9に注入する。上記のように通路9の途中には、除菌フィルタ4が設けられているので、除菌フィルタ4を通過した後の混注液は除菌される。除菌された混注液は、除菌フィルタ4と薬液排出口部7との間に設けられた閉鎖手段5に到達し、閉鎖手段5を開放する。閉鎖手段5の開放後、混注液は、薬液排出口部7から排出されて薬液容器内に流入し、薬液容器内の薬液と混合する。このように本発明の薬液注入ポート2では、混注液を注入して初めて通路9と薬液容器の内部空間とが連通するような構成であるため、無菌的な混注操作を確実に行うことができる。したがって混注後の薬液容器1内の混合薬液を滅菌処理する必要がなく、該滅菌処理で変質してしまうようなものでも混注操作に供することができる。
【0015】
本発明においては、上記のような無菌的な混注操作を行える薬液注入ポートを、従来のたとえば特開平9−19480号公報に開示されていたような、開口を液密に密封するゴム栓体および該ゴム栓体に刺針可能な刺針部を用いることなく実現できる。したがって、従来とは異なり、ゴム栓体を刺針することによるコアリングが発生してしまい、薬液容器内にゴム削片など異物が混入してしまうことがない。またゴム栓体および刺針部を備えるような薬液注入ポートと比較して、小型であり、かつ少ない部品点数で簡単な構造の薬液注入ポートを実現できるため、製造コストも格段に少なくすることができる。
【0016】
このような本発明の薬液注入ポート2を用いて、薬液容器内の薬液に混注させる混注液としては、特に限定はないが、滅菌により変質してしまうようなものや、非常に不安定なもの、あるいは滅菌処理により配合変化を受け易いものなどが特に好ましいものとして例示される。
【0017】
本発明においては、上記筒体3が通路9へ向けて突出する環状の突出部を有し、かつ前記閉鎖手段5が、環状突出部の薬液排出口部7側に溶着されたフィルムで実現されるのが好ましい。図2には、筒体3が、略筒状の周壁10と、該周壁10から通路9に向けて突出する環状突出部11を有しており、閉鎖手段5であるフィルムが、この環状突出部11の薬液排出口部7側に溶着、さらに具体的には環状突出部11の薬液排出口部7側に形成される環状リブ12に溶着されてなる例を示している。但し、該フィルムは、本発明の目的から、薬液が通路9を通過する際に薬液の重量によりフィルムが環状リブ12から容易に剥離するように弱く溶着されていなければならず、かつ薬液が閉鎖手段5に到達するまではその溶着が保持されている程度に環状リブ12に溶着されている必要がある。
【0018】
上記のような構造では、薬液注入口部6から通路9に混注液を注入させると、薬液を注入することによる注入圧によって、閉鎖手段5であるフィルムが環状リブ12から剥離し、閉鎖手段5が開放される。図2に示す例では、フィルムが環状突出部11の薬液排出口部7側に設けられることから、薬液注入口部6側からの圧力に対しては容易に剥離し、薬液排出口部7側からの圧力に対しては容易に剥離し難いという利点を有する。これにより、たとえば使用前に薬液容器1を誤って押圧することで薬液排出口部7側からフィルムに圧力がかかってしまい、フィルムが剥離して閉鎖手段が不所望に開放されてしまうことがなく、使用前の薬液容器内の薬液の無菌状態を確実に保持することができる。
【0019】
また本発明における筒体3は、図2に示すように前記薬液注入口部6を有する第一筒状部材13と、前記薬液排出口部7および環状突出部11を有する第二筒状部材14とからなり、この第一筒状部材13と第二筒状部材14とが除菌フィルタ4を挟持した状態で互いに嵌着されて実現されるのが好ましい。
【0020】
筒体3をこのような構造とすることによって、第一筒状部材13と第二筒状部材14とを、除菌フィルタ4を挟み込みながら互いに嵌着させることで、通路9の途中に除菌フィルタ4が設けられた薬液注入ポートを容易に製造することができる。
【0021】
図2に示す例において、第一筒状部材13は、上記薬液注入口部6以外に、支持部15、嵌着部16および周壁部17を有する。支持部15は、円板状の部分であって、同心円状の透孔18を有する。この支持部15の透孔18の周囲から軸線方向一方A1側に向かって同軸に立ち上がるようにして薬液注入口部6が形成される。図2に示す例の薬液注入口部6は、上記のように透孔18から軸線方向一方A1側に向かって徐々に径が拡がるような緩やかなテーパ状に形成される。薬液注入口部6の開口および支持部15における透孔18は、上述した通路9の一部を形成する。嵌着部16は、後述する第二筒状部材14の被嵌着部19と互いに嵌着し得るように形成される。該嵌着部16は、図2の例では、たとえば支持部15の軸線方向他方A2側で、言わばスカート状に中心軸に向かって段階的に深くなる凹状部分として形成されてなる。また周壁部17は、支持部15の外周において形成される円筒状の部分であって、この周壁部17が上述した筒体3の周壁10の一部を形成する。なお図2には、該薬液注入口部6が、支持部15から周壁部17と同程度の距離だけ軸線方向一方A1側に向かって立ち上がるようにして形成されてなる例を示している。
【0022】
このような第一筒状部材13を形成する材料としては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネートなどの耐薬品性を有する合成樹脂が挙げられる。
【0023】
また図2に示す例において、第二筒状部材14は、上記薬液排出口部7および環状突出部11以外に、被嵌着部19および周壁部20を有する。被嵌着部19は、上記の第一筒状部材13の嵌着部16と互いに嵌着し得るように形成される。該被嵌着部19は、図2の例では、支持部15の軸線方向他方A2側で、上記嵌着部16の形状に対応した段階的な高さの凸状部分として形成されてなる。周壁部20は、略円筒状の部分であって、図2のように第一筒状部材13と第二筒状部材14とを嵌着させた状態で、第一筒状部材13の上記周壁部17と共に上述した筒体3の周壁10を形成する。上記環状突出部11は、この周壁部20から通路9へ向けて突出する。
【0024】
このような第二筒状部材14を形成する材料としては、上記の第一筒状部材13と同様の、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネートなどの耐薬品性を有する合成樹脂が挙げられる。第一筒状部材13と第二筒状部材14とは、上記合成樹脂材料の中から選ばれるならば、同一の材料で形成されていてもよいし互いに異なる材料で形成されていてもよいが、同一の材料で形成されるのが好ましい。また後述するように薬液注入ポートを、溶着によって薬液容器に連結する場合には、溶着させる相手部材の形成材料に応じて、上述した樹脂材料の中から溶着可能なものを選択する。また第二筒状部材とフランジ部分とが別体で形成されてもよく、このような態様で溶着にて容器本体に連結するのであれば、少なくともフランジ部分が溶着可能な材料で形成されればよい。
【0025】
図2の例では、上記のように閉鎖手段5が環状リブ12に溶着されたフィルムで実現される。このフィルムを形成する材料としては、耐薬品性を有し、かつ環状リブ12に溶着し得る材料であるならば特には限定されず、上述した第二筒状部材14の形成材料(環状リブ12の形成材料)に併せて適宜選択される。フィルム形成材料の例として、上述の第二筒状部材14の形成材料と、これに相溶性を有しない樹脂とのポリマーブレンドにて形成される場合が挙げられる。たとえば、第二筒状部材14がポリエチレンで形成される場合、閉鎖手段5となるフィルム形成材料としては、ポリエチレンとポリプロピレンとのポリマーブレンドが好ましく採用される。またさらにこの場合、フィルムにおけるポリエチレンとポリプロピレンとの混合比率は、3:7〜7:3が好ましい。
【0026】
また環状リブ12およびフィルムが、共にポリエチレン、より好ましくは共に高密度ポリエチレンで形成されていてもよい。このような形成材料の組合せであっても、上記のような環状リブ12へのフィルムの溶着を実現できる。
【0027】
上記フィルムの環状突出部11への溶着は、従来公知の溶着と同じく、加熱や超音波誘導あるいは高周波誘導による発熱にて行えばよい。但し、該フィルムは、上述のように薬液注入口部6からの薬液の注入によって剥離することを意図しているので、図2の例では、断面半円状の環状リブ12に溶着することで、換言すれば溶着の面積をできるだけ少なくすることで、上記の弱い溶着を実現している。また本発明においては、溶着する面積ではなく、溶着の際の条件を調整する、たとえば加熱温度を低めにする、あるいは加熱時間を短くすることによって、上記の弱い溶着を実現してもよい。
【0028】
また本発明の薬液注入ポート2は、薬液注入口部6が、開封可能な遮蔽手段によって、使用前まで無菌的に遮蔽されてなるように実現されるのが好ましい。この遮蔽手段としては、薬液注入ポートを使用するまでの間、薬液注入口部6を無菌的に遮蔽できる、換言すれば薬液注入口部6を略気密に密封できるものであれば、特に限定はない。これによって、使用前の通路9の滅菌状態を保持できる。
【0029】
図2には、遮蔽手段として、薬液注入口部6の開口を全面にわたって覆うように、前記筒体3に貼着される密封シール(図中、二点鎖線の部分22)を用いた場合を示している。該密封シール22は、滅菌紙、アルミフィルム、たとえばアルミニウム単独フィルム、プラスチックフィルム、アルミニウムと他のプラスチックとのラミネートフィルム、アルミ蒸着フィルムなどのフィルムで実現される。薬液注入ポート2にて薬液の混注を行いたい場合には、密封シール22を剥離してから用いる。
【0030】
図2の例では、薬液注入口部6が支持部15から周壁部17と同程度の距離だけ軸線方向一方A1側に向かって立ち上がるようにして形成された態様であるので、該周壁部17の軸線方向一方側の端部分17aに密封シール22を貼着すれば、該密封シール22にて薬液注入口部6の開口を全面にわたって覆うことができる。このように第一筒状部材13に周壁部17が形成されることで、周壁部が形成されない場合と比較して、密封シール22の貼着および剥離がより容易となる利点がある。なお薬液注入口部は、支持部から周壁部よりも小さな距離だけ軸線方向一方側に向かって立ち上がるようにして形成されてもよく、このような態様によっても上記利点が得られる。
【0031】
このような薬液注入ポート2は、図1に示すような薬液容器用の薬液注入ポートとして好適に使用できる。薬液容器は、医療用に利用可能であれば特に限定されるものではない。図1に示す例の薬液容器1は、薬液注入ポート2以外に、容器本体25および薬液排出ポート26を備える。
【0032】
容器本体25は、柔軟な合成樹脂からなる2枚のシートを重ね合わせ、その周囲を溶着して形成された容器である。この容器の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリエステル、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、特に耐薬品性に優れた低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく採用される。そして、容器本体25の内部には、アミノ酸液、ブドウ糖液、電解質を含む溶液、生理食塩水等の液体が収容される。
【0033】
尚、容器本体としては、図1に示す本例のように内部が1室だけのものに限定されず、隔壁により2室以上に区切られたもの等も採用できる。さらに、シートを重ね合わせた形状の他、チューブ状に成形されたもの等も採用できる。
【0034】
薬液排出ポート26は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂成形体からなる排出ポート部材27と、この排出ポート部材27と同様の材質で形成された接続部材28と、排出ポート部材27に支持されてその開口を液密に密封するゴム栓29から構成される。ゴム栓29と容器本体25の内部は接続部材28を介して連通しており、ゴム栓29に輸液セットの瓶針等が刺通され、内部に収容された薬液が人体へ投与されることとなる。
【0035】
尚、ゴム栓29については、点滴時に薬液が漏出することのない材質であればよく、熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性体も使用可能である。また、薬液排出ポートとしては、ゴム栓29等のゴム状弾性体に輸液セットの瓶針を刺通するような形状に限定されず、コネクターで接続されるような形状にしてもよい。
【0036】
薬液注入ポート2は、前述の容器本体25内に薬液を無菌的に注入するためのポートで、シリンジに接続可能な薬液注入口部6を有する第一筒状部材と、閉鎖手段5を有する第二筒状部材との間に除菌フィルタ4が挟持され、さらに第二筒状部材が接続口30に固着されている。
【0037】
図3は、本発明の好ましい他の例の薬液注入ポート46を簡略化して示す断面図である。なお上述した薬液注入ポート2と同様の構成を有する部分には、図2と同一の参照符を付し、説明を省略する。図3に示す態様の薬液注入ポート46は、薬液注入口部47がルアーロック型(ロックネジが設けられた)シリンジに対応する形状、たとえばメス型ルアーロック構造を有するような形状に形成される。これにより図2に示したテーパ状に形成された薬液注入口部6と比較して、より強固に安定してシリンジと連結できる薬液注入口部47を実現でき、安定して混注操作を行うことができる。
【0038】
また本発明の薬液注入ポートは、滅菌方法によっては、上述した密封シール22に換えて、図3に示す例のようにゴムキャップ48を薬液注入口部47の開口に嵌め込むことによって、使用前の滅菌状態を保つ遮蔽手段としてもよい。なお図3の例では、図2の場合とは異なり、第一筒状部材51は周壁部を有さず、第二筒状部材14の周壁部20のみで筒体50の周壁10を形成するように実現される。このようなゴムキャップ48は、混注操作時には無論外すが、混注操作後にまた薬液注入口部47の開口に嵌め込み、混合薬液の逆流を防止させることもできる。
【0039】
図3に示す薬液注入ポート46は、第一筒状部材51と第二筒状部材14の嵌着からゴムキャップ48の嵌め込みまで無菌空間で組み立てられてもよいが、通常は、ゴムキャップ48を薬液注入口部47の開口に嵌め込んだ後、γ線滅菌がなされて組み立てられる。
【0040】
図4は、本発明の好ましいさらに他の例の薬液注入ポート56を簡略化して示す断面図である。なお上述した薬液注入ポート2と同様の構成を有する部分には、図2と同一の参照符を付し、説明を省略する。本発明の薬液注入ポート56は、遮蔽手段が、図4に示す例のようにその天面(ゴムキャップ57において、薬液注入口部47の開口に嵌め込まれる側とは反対側の面)57aに開口59を有する孔58が形成されたゴムキャップ(エラストマーキャップ)57を、薬液注入口部47の開口に嵌め込むことで実現されてもよい。
【0041】
ゴムキャップ57を形成する材料としては、ゴム状弾性を有するものであれば特に限定されるものではなく、たとえばエラストマー、通常の天然ゴム、ブチルゴム、ポリスチレン系樹脂などが挙げられるが、後述のガスフィルタ60や防水シート61の溶着性を考慮すると、たとえばスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)などのスチレン系の熱可塑性エラストマーや、エチレン−プロピレンブロックコポリマーなどのオレフィン系の熱可塑性エラストマーが好ましく採用できる。
【0042】
該ゴムキャップ57における孔58は、上述のように該ゴムキャップ57の天面57aにおいて開口59を有し、図4に示すようにゴムキャップ57が上記薬液注入口部47の開口に嵌め込まれた状態で、薬液注入ポート56の通路9と外部空間とを連通するように形成される。該孔58の径は、薬液注入口部47の外径より小さければ特に限定はないが、通常、直径1mm〜5mmの径が採用される。
【0043】
上記ゴムキャップ57に形成された孔58は、ガスフィルタ(除菌フィルタ)60によって、通気可能に塞がれる。図4には、たとえば、上記開口59を外側(天面57aの上側)から覆うようにして設けられたガスフィルタ60によって、孔58が通気可能に塞がれてなる例を示す。該ガスフィルタ60は、たとえばゴムキャップ57の天面57aに熱溶着されることによって設けられる。このガスフィルタ60としては、上述した除菌フィルタ4と同様の除菌性能を有するとともに、後述の高圧蒸気滅菌またはエチレンオキサイドガス滅菌(EOG滅菌)が可能な孔径(目の粗さ)を有するものであるのが好ましい。該ガスフィルタ60の孔径としては、たとえば、0.01μm〜1.0μm、より好ましくは0.01μm〜0.5μmが例示される。このようなガスフィルタ60の形成材料としては、特に限定はなく、たとえば通路9に設けられる除菌フィルタ4と同様の形成材料が挙げられる。また上記のようにガスフィルタ60を開口59を覆うようにして天面57aに熱溶着する場合には、たとえばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの熱溶着性の悪い材料に、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱溶着性のよい材料をラミネートしてなるフィルタを好ましく採用できる。
【0044】
なお、ガスフィルタ60は、孔58の途中に設けられることによって、孔58を通気可能に塞ぐように実現されてもよい。
【0045】
図4に示すゴムキャップ57によれば、ガスフィルタ60を通って気体が通過できるので、図3に示すゴムキャップ48を使用した場合に採用されていたγ線滅菌に限らず、高圧蒸気滅菌、EOG滅菌などの滅菌方法を採用することができる。
【0046】
上記の薬液注入ポート56は、薬液充填された薬液容器の接続口30に固着された後、再び高圧蒸気滅菌されることになる。この高圧蒸気滅菌において、滅菌後乾燥工程を設けない場合には、通路9に水滴が残存してしまう。該薬液注入ポート56においては、これを防ぐべくガスフィルタ60の外側に、防水シート(図4において二点鎖線で囲む部分61)を熱溶着などの方法で貼り付けておくのが好ましい。該防水シート61としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックや、アルミニウムとプラスチックとのラミネートフィルムなどが採用される。
【0047】
なお、図4に示す態様の薬液注入ポート56は、図2および図3に示した態様とは異なり、筒体62が、薬液注入口部47を有する第一筒状部材63と、薬液排出口部7および環状突出部11を有する第二筒状部材64と、フランジ部分8を有する第三筒状部材65とから構成され、第一筒状部材63と第二筒状部材64とが、除菌フィルタ4を挟持した状態で、第三筒状部材65を介して互いに嵌着されてなるような構成で実現される。図4に示す例の薬液注入ポート56では、第一筒状部材63および第二筒状部材64とが共に周壁部を有さず、第三筒状部材65の周壁部66のみで筒体62の周壁が形成される。
【0048】
また、図1に示した例において、本発明の薬液容器の薬液排出ポート部材が、周壁とこれに嵌り込むゴム栓とを有するように形成され、このゴム栓に輸液セットの瓶針などを刺通して薬液容器内の薬液を排出する形態であったけれども、これに限定されることはなく、たとえば薬液排出ポート部材がコネクタで接続されるような形状であってもよい。
【実施例】
【0049】
本発明をより詳細に説明するために、実施例を挙げるが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0050】
実施例1
図3に示す態様の本発明の薬液注入ポート46を作製した。除菌フィルタ4としては、孔径が0.2μmのナイロン製のフィルタを用いた。第一筒状部材51および第二筒状部材14の形成材料としては、高密度ポリエチレンを用いた。閉鎖手段5としては、ポリエチレンとポリプロピレンとのポリマーブレンドのフィルムを用いた。
【0051】
薬液注入口部47の開口には、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSEBS(スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー)製のゴムキャップを嵌め込んだ後、γ線滅菌を施した。
【0052】
実施例2
図4に示す態様の本発明の薬液注入ポート56を作製した。通路9に設けられる除菌フィルタ4としては、孔径が0.2μmのポリビニリデンジフルオライド製のフィルタを用いた。薬液注入口部47の開口には、SEBS製であり、孔径が2mmの孔58を有するゴムキャップ57を嵌め込んだ。当該ゴムキャップ57の天面57aに、孔58の開口59を覆うようにして、孔径が0.2μmのポリテトラフルオロエチレンと高密度ポリエチレンとをラミネートしてなるガスフィルタ60を熱溶着した。第一筒状部材63、第二筒状部材64および第三筒状部材65の形成材料としては、いずれも高密度ポリエチレンを用いた。閉鎖手段5としては、ポリエチレンとポリプロピレンとのポリマーブレンドのフィルムを用いた。
【0053】
ガスフィルタ60を熱溶着したゴムキャップ57を、エチレンオキサイドガスで滅菌した後、防水シート61としてポリエチレンシールを用いて、ガスフィルタ60を覆うようにして、天面57aに熱溶着して貼付した後、全体に高圧蒸気滅菌を施した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、コアリングが発生することなく薬液を無菌的に注入可能であり、部品数が少なくて従来より小型で簡略化した構造の薬液注入ポート、およびこの薬液注入ポートを備える薬液容器を提供することができる。
【0055】
本出願は日本で出願された特願2001−060438および特願2001−230530を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の端部にシリンジを連結可能な薬液注入口部が形成されるとともに他方側の端部に薬液容器に連結可能な薬液排出口部が形成され、薬液注入口部から薬液排出口部に連なる通路を有する筒体と、
該通路に設けられた除菌フィルタと、
該除菌フィルタと薬液排出口部との間に、通路を閉鎖し、かつ薬液が薬液注入口部から通路に注入されると通路を開放し得るように設けられた閉鎖手段とを備えることを特徴とする薬液注入ポート。
【請求項2】
前記筒体は、通路へ向けて突出する環状の突出部を有し、前記閉鎖手段が、環状突出部の薬液排出口部側に溶着されたフィルムであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の薬液注入ポート。
【請求項3】
前記筒体は、薬液注入口部を有する第一筒状部材と、薬液排出口部および環状突出部を有する第二筒状部材とからなり、第一筒状部材と第二筒状部材とが除菌フィルタを挟持した状態で互いに嵌着されてなることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の薬液注入ポート。
【請求項4】
薬液注入口部が、開封可能な遮蔽手段によって、使用前まで無菌的に遮蔽されてなることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の薬液注入ポート。
【請求項5】
遮蔽手段が薬液注入口部に嵌め込まれたゴムキャップであって、
該ゴムキャップは、その天面に前記通路に連通する孔の開口を有し、かつ該孔がガスフィルタにて通気可能に塞がれてなるものである請求の範囲第4項に記載の薬液注入ポート。
【請求項6】
請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の薬液注入ポートを備える薬液注入ポート付き薬液容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178584(P2009−178584A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120196(P2009−120196)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2002−571133(P2002−571133)の分割
【原出願日】平成14年3月5日(2002.3.5)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】