説明

薬液注入ユニット、及び薬液注入ユニットの制御方法

【課題】除菌剤を安定して注入できる薬液注入ユニットを提供する。
【解決手段】送水管14内の流量に比例した量の薬液を送水管14内に注入する薬液注入ユニット16において、停止モードにおいて、流量センサ24からのパルス信号の単位時間当たりの発生回数Dに基づいて注入ポンプ30から薬液類を送水管14内に注入させ、更に運転モードを設定する第1制御手段26と、運転モードにおいて、パルス信号の分周処理により薬液類を送水管14内に注入させる第2制御手段27と、運転モードにおいて、流量センサ24からのパルス信号の単位時間当たりの発生回数Dに基づいて停止モードを設定する第3制御手段28とを備えて薬液注入ユニット16を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸水等を送水させた送水管内に、送水量に応じた除菌剤を注入し、除菌した井戸水等を飲料用水として給水する薬液注入ユニット、及び薬液注入ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、井戸水を水道水として給水する給水システムにおいては、送水ポンプと、濾過装置等を備え、送水ポンプで送水した井戸水に薬液注入ユニットから所定量の薬液(除菌剤等)を注入し、井戸水を除菌処理するとともに、井戸水中の不純物を濾過装置で濾過するようにしている。
【0003】
薬液注入ユニットは、薬液を貯留する貯留槽と、貯留槽から薬液を井戸水中に注入させる注入ポンプ等から構成されている。注入ポンプとしては、ダイヤフラムをソレノイドで駆動させるソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプが、小型で、薬液注入ユニット等に組み込み易く、少量の液体を正確に注入させる点等から広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
濾過装置は、セラミック製の濾過材と除マンガン用の濾過材等を有し、セラミック製の濾過材で井戸水中の浮遊物を濾過するとともに、鉄イオンを除菌剤である次亜塩素酸ナトリウムにより酸化させて不水溶性の水酸化第二鉄にして濾過したり、除マンガン用の濾過材に井戸水中のマンガンイオンを凝着させている。
【0005】
薬液注入ユニットは、送水量を検出する、例えば羽根車式の流量センサを有し、流量センサが所定流量ごとに発するパルス信号に基づき制御装置が注入ポンプを駆動させ、除菌剤の濃度が所定値となるように制御している。更に制御装置は、予め設定された分周比で流量センサからのパルス信号を分周し、注入ポンプの誤動作等を防止したりしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008―28083号公報
【特許文献2】特許第4312941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パルス信号を制御装置で分周処理して送水ポンプの作動を制御すると、送水量が減少した場合、送水ポンプを作動させるパルス信号が入力されるまでに時間がかかり、除菌剤の注入に時間的な遅れが生じることがある。薬液注入ユニットのソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプは作動が間欠的であるため、除菌剤の注入量が減少して作動パルスの出現に遅れが生じると、送水管内に除菌剤が注入されていない時間帯が発生し、その間に除菌されていない井戸水が通過して水道水として需要者に供給されるおそれがあった。
【0008】
一方、作動時間遅れを解消するため分周比を大きくしたり、倍率制御方式とすると、少ない数のパルス信号の入力で作動されるので、突然注入ポンプが作動してしまうことがある。又、外乱等でパルス信号が消失したり、あるいはパルス信号として誤認して、送水ポンプに誤った作動を起こさせるおそれがある。
【0009】
更に、流量比例制御運転の許可、禁止を選択して、時間遅れを解消しようとした場合、許可信号を入力するためのタイマ制御盤等を制御装置とは別に新たに用意する必要等が生じていた。
【0010】
本発明は上記課題を解決し、簡易な構成で、時間的な遅れが生じることなく適切に注入ポンプが作動し、又、ノイズ等により誤動作することがなく、更に流量が急激に増加あるいは減少しても、流量の変動に追従して注入ポンプを正確に作動させることができる薬液注入ユニット、及び薬液注入ユニットの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決し、目的を達成するため、薬液注入ユニット、及び薬液注入ユニットの制御方法を次のように構成した。すなわち、薬液注入ユニットは、送水管内の流量を検出し、所定流量ごとにパルス信号を発生する流量センサと、薬液類を送水管内に注入するソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプからなる注入ポンプと、流量センサからのパルス信号を処理して注入ポンプに作動指示を送出する制御装置とを備え、制御装置は、注入ポンプに対して停止モードと運転モードのいずれかを設定し、更に停止モードにおいて、パルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、パルス信号の単位時間当たりの発生回数が第1閾値を超えていないと判定すると、運転パルスカウント値を0として処理を再度行い、発生回数が第1閾値を超えていると判定すると、運転パルスカウント値に1を加えるとともに、運転パルスカウント値が第2閾値を超えたか否かを判定し、運転パルスカウント値が第2閾値を超えたと判定すると、注入ポンプに作動指示を送出し、薬液類を送水管内に注入させ、更に、停止モードを運転モードに設定を変更する第1制御手段と、運転モードにおいて、流量センサからのパルス信号を所定の比率で分周処理を行い、分周後のパルス信号数をカウントした分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したか否か判定し、分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したと判定すると、注入ポンプに作動指示を送出し、薬液類を送水管内に注入させる第2制御手段と、更に運転モードにおいて、流量センサから受信したパルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、発生回数が第3閾値以上であると判定したなら、停止パルスカウント値を0として処理を再度行い、パルス信号の発生回数が第3閾値以下であると判定したなら、停止パルスカウント値に1を加えるとともに、停止パルスカウント値が第4閾値を超えたか否かを判定し、停止パルスカウント値が第4閾値を超えたと判定すると、運転モードを停止モードに設定を変更する第3制御手段と、を備えて構成した。
【0012】
又、送水管内の流量を検出し、所定流量ごとにパルス信号を発生する流量センサと、ソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプからなり、薬液類を送水管内に注入する注入ポンプと、流量センサからのパルス信号を処理し、注入ポンプに作動指示を送出する制御装置と、を備えた薬液注入ユニットの制御方法において、注入ポンプに対して停止モードと運転モードのいずれかを設定し、更に停止モードにおいては、流量センサからパルス信号を受信すると、該パルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、パルス信号の発生回数が第1閾値を超えていないと判定すると、運転パルスカウント値を0として処理を再度行い、発生回数が第1閾値を超えていると判定すると、運転パルスカウント値に1を加えるとともに、運転パルスカウント値が第2閾値を超えたか否かを判定し、運転パルスカウント値が第2閾値を超えたと判定すると、注入ポンプに作動指示を送出して、薬液類を送水管内に注入し、停止モードを運転モードに設定を変更し、
運転モードにおいては、流量センサからのパルス信号を所定の比率で分周処理を行い、分周後のパルス信号数をカウントした分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したか否か判定し、分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したと判定すると、注入ポンプに作動指示を送出し、薬液類を送水管内に注入させ、
かつ運転モードにおいて、流量センサから受信したパルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、発生回数が第3閾値以上であると判定したなら、停止パルスカウント値を0として処理を再度行い、該パルス信号の発生回数が第3閾値以下であると判定したなら、停止パルスカウント値に1を加えるとともに、停止パルスカウント値が第4閾値を超えたか否かを判定し、停止パルスカウント値が第4閾値を超えたと判定すると、運転モードを停止モードに設定を変更することとして薬液注入ユニットの制御方法を構成した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で、時間的な遅れが生じることなく適切に注入ポンプが作動し、又、ノイズ等により誤動作することがなく、更に流量が急激に増加あるいは減少しても、流量の変動に追従して注入ポンプを正確に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる薬液注入ユニットを一部切除して示す側面図。
【図2】同薬液注入ユニットに用いられるソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプを示す断面図。
【図3】同薬液注入ユニットの第1制御手段の作動を示すフローチャート。
【図4】同薬液注入ユニットの第2制御手段の作動を示すフローチャート。
【図5】同薬液注入ユニットの第3制御手段の作動を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる薬液注入ユニット16について説明する。図1に、給水システム10の全体を示す。給水システム10は、送水ポンプ12と、送水管14と、薬液注入ユニット16と、濾過装置18等から構成されている。送水ポンプ12は、主制御装置19からの指示信号に従って作動し、井戸水を揚水し、揚水した井戸水を送水管14内に送水する。
【0016】
送水管14には、圧力センサ22と、流量センサ24が取り付けてあり、これら圧力センサ22及び流量センサ24は、信号線23、25を介して薬液注入ユニット16の制御装置20に接続している。圧力センサ22は、検出した送水管14内の圧力値を、流量センサ24は、送水管14内を所定流量の井戸水が流通する毎に発生したパルスを、それぞれ信号線23、25を介して制御装置20に送出する。
【0017】
濾過装置18は、セラミック製の濾過材や除マンガン用の濾過材(いずれも図示せず。)等を内装し、流量センサ24の下流に設けられている。セラミック製の濾過材は、薬液注入ユニット16から注入された次亜塩素酸ナトリウムにより、酸化された鉄イオンを濾過材に吸着させ、除マンガン用の濾過材は、次亜塩素酸ナトリウムにより活性化された水和二酸化マンガンにより、井戸水中に含まれるマンガン成分を表面に付着させる。
【0018】
薬液注入ユニット16は、注入ポンプ30と、薬液としての除菌剤を貯留する貯留槽32等を備えている。注入ポンプ30の一例を、図2に示す。注入ポンプ30は、ケース本体36と、ソレノイド38と、プランジャ40と、ダイヤフラム42等から構成されている。以下基本的に、ソレノイド38側から見て、ダイヤフラム42側を前方とし、その逆を後方として説明する。図2は、ダイヤフラム42が後退している状態である。
【0019】
ケース本体36は、円筒状で、金属材料、あるいは樹脂材等から形成されている。ケース本体36の内部には、ソレノイド38が固定されている。ケース本体36の後方には、裏蓋44が固定されている。ケース本体36の前方には、ポンプ本体46が液密に取り付けられている。
【0020】
ソレノイド38は円筒状のコイルで、中心にはプランジャ40が前後方向に沿って移動自在に設けられている。ソレノイド38の入力端子には、電力線39が制御装置20に接続されたアクチュエータ82を介して接続している。
【0021】
プランジャ40は、ソレノイド38の中心に設けられた孔48内に摺動自在に設けられている。プランジャ40は、所定位置まで前進すると、ソレノイド38の後面50に当接し前進動作が停止される。
【0022】
又、ソレノイド38には、戻しばね52が設けてあり、プランジャ40を所定のばね力で後方に付勢している。プランジャ40は、後退すると、調整ねじ54の前端に当接し、後退動作が停止される。調整ねじ54は、裏蓋44に対して回転させることにより、前端を任意の位置に設定し、注入ポンプ30の吐出量を調整できる。
【0023】
ダイヤフラム42は、弾性材料からなる板状部材で、ポンプ本体46に形成された圧送室56に臨ませて取り付けられている。ダイヤフラム42は、中心部分が軸58の先端に組み付けられ、外周部分がケース本体36の前端縁とポンプ本体46との間に液密に固定されている。ダイヤフラム42の形状、材質は特に問わない。
【0024】
ポンプ本体46は、圧送室56がほぼ中央に形成してあり、圧送室56の下方に流入口60が、又、上方に流出口62が設けられている。流入口60には流入用一方向ボール弁64が、又、流出口62には流出用一方向ボール弁66がそれぞれ設けられている。
【0025】
流入口60には、貯留槽32(図1参照。)からの吸引管70が連結している。流出口62には、注入管72が連結している。注入管72の他端は、送水管14(図1参照。)の混入部74に延びている。混入部74は、送水管14内に開口し、注入管72から送られてきた除菌剤を、送水管14内を流れる井戸水内に流出し混入させる。混入部74の下流側は、濾過装置18を介して、家庭用の蛇口等に接続されている。
【0026】
次に、制御装置20について説明する。
【0027】
制御装置20には、記憶部76と、入力装置78と、表示装置80等が接続されている。入力装置78からは、予め第1閾値から第4閾値の各閾値、希望する除菌剤の濃度、流量センサ24の分周比、除菌剤の成分濃度等が入力され、記憶部76にそれらの値が記憶されている。制御装置20は、薬液注入ユニット16の全体を制御するとともに、図1に示すように主に注入ポンプ30に関する制御を行う第1制御手段26と、第2制御手段27と、第3制御手段28とを備えている。又、制御装置20は、注入ポンプ30に関して運転モードと停止モードのいずれかの一方モードを設定して制御を行う。
【0028】
第1制御手段26は、停止モードにおいて流量センサ24から流量検出結果であるパルス信号を受けると、パルス信号の単位時間(例えば、1秒間)当たりの発生回数Dをカウントする。
【0029】
第1制御手段26は、流量センサ24から送られてきたパルス信号の単位時間当たりの発生回数Dを算出すると、発生回数Dと第1閾値とを比較する。発生回数Dが第1閾値を超えているときは、運転パルスカウント値Nに1を加える。一方、受信したパルス信号の発生回数Dが第1閾値を超えていないと判定されたときは、運転パルスカウント値Nを0とする。なお第1閾値は、除菌剤の注入が必要と判断される送水管14内の流量に相当するパルス信号の発生回数である。
【0030】
更に第1制御手段26は、運転パルスカウント値Nに1を加えた後、運転パルスカウント値Nが第2閾値を超えたか否かを判定し、運転パルスカウント値Nが第2閾値を超えていない判断すると、次の単位時間当たりのパルス信号の発生回数Dについて判定を行う。一方運転パルスカウント値Nが第2閾値を超えたと判定したなら、ソレノイド38を作動させ、注入ポンプ30により除菌剤を送水管14に注入させ、停止モードを運転モードに設定を変更する。
【0031】
第2制御手段27は、運転モードに設定されている状態において、流量センサ24が発したパルス信号を受けると、予め設定された分周比で分周し、分周したパルス信号をカウントして分周パルス信号数を求める。そして分周パルス信号数と所定値、具体的には「1/分周比×100/注入設定比率」から求められる値(注入必要パルス数)とを比較し、注入必要パルス数に達したか否かを判定する。
【0032】
第2制御手段27は、分周パルス信号数が、注入必要パルス数に達したと判定したなら、ソレノイド38に作動信号を送出し、注入ポンプ30を作動させて除菌剤を送水管14に注入する。同時に第2制御手段27は、分周パルス信号数を0とし、改めて、流量センサ24からのパルス信号を分周し、分周パルス信号数のカウントを行う。
【0033】
第3制御手段28は、運転モード中において、流量センサ24が発したパルス信号について、単位時間当たりの発生回数Dを算出し、発生回数Dと第3閾値とを比較する。そして発生回数Dが第3閾値以下であると判定したなら、停止パルスカウント値に1を加える一方、発生回数Dが第3閾値以上であると判定したなら、停止パルスカウント値を0とし、新たにパルス信号について停止パルスカウント値のカウントを行う。
【0034】
そして第3制御手段28は、停止パルスカウント値に1を加えた後、停止パルスカウント値が第4閾値を超えたか否かを判定し、停止パルスカウント値が第4閾値を超えたと判定したなら、運転モードを停止モードに設定を変更する。
【0035】
次に、薬液注入ユニット16の作用、及び効果について、図3〜図5に示すフローチャートを用いて説明する。図3は、主に第1制御手段26の作用、図4は、主に第2制御手段27の作用、図5は、主に第3制御手段28の作用を示す。
【0036】
薬液注入ユニット16は、入力装置78から、第1閾値から第4閾値の各閾値と、希望する井戸水の除菌剤の濃度と、分周制御におけるパルス信号の分周比と、除菌剤の成分濃度等の初期値が入力されると、それらの値を記憶部76に記憶し、初期値を設定する(S1)とともに、運転カウント値Nを0とする(S2)。
【0037】
次に第1制御手段26は、停止モードに設定されているか否かを判別し(S3)、停止モードであれば、流量センサ24からのパルス信号の1分間当たりの発生回数Dを算出する(S4)。一方停止モードでなく運転モードであれば、後述する第2制御手段27の制御フローに進む。
【0038】
停止モードにおいてパルス信号の発生回数Dを算出したなら、発生回数Dを第1閾値と比較する(S5)。発生回数Dが第1閾値未満であればステップS2に進む。一方発生回数Dが第1閾値を超えていれば、運転カウント値Nに1を加え(S6)、その値と第2閾値とを比較する(S7)。
【0039】
運転カウント値Nが第2閾値未満であれば、ステップS4に戻る。一方運転カウント値Nが第2閾値以上であれば、ソレノイド38に作動信号を送出し、注入ポンプ30を作動させて(S8)、除菌剤を送水管14に注入する。又、停止モードから運転モードに設定を変更し(S9)、ステップS2に戻る。
【0040】
ステップS2に戻ると、第1制御手段26は、運転カウント値Nを0とし(S2)、ステップS3で停止モードに設定されているか否かを判別する。ステップS9で運転モードに設定されているので、図4に示す第2制御手段27に制御が移行する。
【0041】
第2制御手段27は、分周パルスカウント値Pを0とし(S31)、停止判定を実行する(S32)。停止判定は、図5に示す制御であり、これは後に説明する。停止判定の後、停止モードか否かを判別する(S33)。第2制御手段27は、ステップS33で、停止モードに設定されていると判別すると、上述したステップS2に進む。
【0042】
一方ステップS33で、停止モードに設定されていないと判別されると、流量センサ24から発せられたパルス信号を予め定められた分周比で分周し(S34)、分周したパルス数をカウントする(S35)。分周パルスカウント値Pに1を加え(S36)、その分周パルスカウント値Pを注入必要パルス数と比較する(S37)。注入必要パルス数は、「1/分周比×100/注入設定比率」から求められる数値であり、ステップS37で、分周パルスカウント値Pが注入必要パルス数を超えていなければ、ステップS35に戻る。一方、分周パルスカウント値Pが注入必要パルス数を超えていると判別されたら、送水管14内を所定流量の井戸水が流れたと判断し、ソレノイド38に作動信号を送り、注入ポンプ30を作動させて(S38)、除菌剤を送水管14に注入する。注入ポンプ30を作動させて除菌剤を送水管14に注入したなら、ステップS31に戻る。
【0043】
注入設定比率は、流量センサ24が組み込まれた上記流量比例注入装置の例では、注入ポンプ30による除菌剤の注入濃度を使用者が調整するものであり、例えば50%に設定すると分周比が1/20のときでも、実際の分周比は1/40となる。
【0044】
次に、停止判定について図5に示すフローチャートを用いて説明する。停止判定ルーチンでは、第3制御手段28は、まず停止カウント値Qを0に設定し、そして、流量センサ24から受けたパルス信号の1分間当たりの発生回数Dを算出し(S52)、発生回数Dと第3閾値とを比較する(S53)。
【0045】
ステップS53で、発生回数Dが第3閾値以上でないと判別されると、ステップS51に戻る。ステップS51に戻ると、停止カウント値Qが0に設定され、再度ステップS52で、パルス信号の発生回数Dと第3閾値とが比較される。
【0046】
一方ステップS53で、発生回数Dが第3閾値以上であると判別されると、停止カウント値Qに1加え(S54)、その停止カウント値Qと第4閾値とを比較する(S55)。ステップS55で、停止カウント値Qが第4閾値を超えていないと判定されると、ステップS52に戻る。
【0047】
又、ステップS55で、停止カウント値Qが第4閾値を超えたと判定されると、運転モードを停止モードに設定を変更する(S56)。停止モードが設定された結果は、停止判定として図4のフローチャートのステップS33に送り出され、停止モードか否かの判別に利用される。
【0048】
次に、薬液注入ユニット16の作動について具体的な例を用いて説明する。例えば、分周比が1/20、起動流量が毎分2リットル、停止流量が毎分1リットル、運転カウント値が2回、停止カウント値が4回とする。すると、パルス信号を受信して1秒当たりの発生回数をカウントし、その発生回数Dが起動流量である毎分2リットルの発生回数を連続2回超えたと判別されると、運転モードに設定される。
【0049】
したがって分周比が1/20であっても、パルス信号の1秒当たりの発生回数をカウントして、運転モードに設定するので、注入ポンプ30の起動遅れが生じない。又、薬液注入ユニット16は、運転カウント値を積算するので、送水管14内の流量が急激に増減した場合であっても、それぞれの状況に応じて注入ポンプ30を適切に追従させることができる。
【0050】
そして、運転モード中は、分周比が1/20で、注入ポンプ30が作動される。給水システム10は、運転モード中、流量センサ24が発したパルス信号を分周処理するので、流量センサ24が多数のパルス信号を発しても、第2制御手段27により、薬液注入ユニット16を正確に、かつ簡易なシステムで制御できる。
【0051】
そして、運転モードで運転中に、発生回数Dが停止流量である毎分1リットルの発生回数を連続して4回下回ったことが判定された場合、停止モードに設定される。このように、分周処理しているときでも、流量の変動をパルス信号の1秒当たりの発生回数をカウントして検出し、的確に停止モードに設定できる。
【0052】
このように給水システム10は、停止モードにおいて、送水管14内の流量が増加し除菌剤を注入する必要が生じた時は、分周パルスではなく、パルス信号の単位時間当たりの発生回数Dから直ちにそれが検出でき、時間的に遅れが生じることなく送水管14に除菌剤を注入できる。又、注入設定比率を100%以下に設定して、実際の分周比が小さくなった場合であっても、分周比に関係なく判断がなされるので、作動遅れが生じない。
【0053】
そして、運転モードに設定した後、分周比でパルス信号を処理して、注入ポンプ30を適切に作動できる。更に運転モード中において、第3制御手段28が、流量センサ24が発した個々のパルス信号を、分周処理でなく、個々のパルス信号から単位時間当たりの発生回数Dを求め、停止モードの判定を行うことから、送水量の変化に迅速に対応し、時間的な遅れを生じさせることなく、又、誤動作することなく停止モードを設定して、少量の流量に対応することができる。しかも、条件を満たす発生回数Dが所定回数連続して発生したとき、除菌剤を注入する旨の決定を行うので、判断の誤りを防止できる。
【0054】
更に、上記例において、第1閾値と第3閾値の値を同じ値とした場合について説明する。例えば、起動流量と停止流量を同一の毎分1リットル、運転カウント値を2回、停止カウント値を4回に設定した場合、流量が毎分1リットル近辺で変動を繰り返し、毎分1リットル以上の流量が続くと、運転モードには、最も早い場合2秒後に設定される。そして、その後流量が毎分1リットルを下回ると停止モードには、最も早い場合4秒後に設定され、再び流量が上昇すれば、2秒後に運転モードに設定される。したがって、例えばボールタップの微小漏れ等により井戸水が小流量流れた場合でも、最短6秒間隔で注入ポンプ30を作動させることができ、除菌剤を送水管14内に安定して注入できる。
【0055】
上述したように、本実施の形態に係る薬液注入ユニット16によれば、簡易な構成で、時間的な遅れが生じることなく適切に注入ポンプ30が作動し、又、ノイズ等により誤動作することがなく、更に流量が急激に増加あるいは減少しても、流量の変動に追従して注入ポンプ30を正確に作動させることができる
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、変形可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、井戸水等に除菌剤を注入して水道水として給水する薬液注入ユニットに利用できる。
【符号の説明】
【0057】
10…給水システム、12…送水ポンプ、14…送水管、16…薬液注入ユニット、18…濾過装置、20…制御装置、22…圧力センサ、24…流量センサ、26…第1制御手段、27…第2制御手段、28…第3制御手段、30…注入ポンプ、38…ソレノイド、42…ダイヤフラム、46…ポンプ本体、60…流入口、62…流出口、70…吸引管、72…注入管、76…記憶部、78…入力装置、80…表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送水管内の流量を検出し、所定流量ごとにパルス信号を発生する流量センサと、
ソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプからなり、薬液類を前記送水管内に注入する注入ポンプと、
前記流量センサからのパルス信号を処理し、前記注入ポンプに作動指示を送出する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記注入ポンプに対して停止モードと運転モードのいずれかを設定し、更に前記停止モードにおいて、前記流量センサからパルス信号を受信すると、該パルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、前記パルス信号の発生回数が第1閾値を超えていないと判定すると、運転パルスカウント値を0として処理を再度行い、前記発生回数が第1閾値を超えていると判定すると、運転パルスカウント値に1を加えるとともに、前記運転パルスカウント値が第2閾値を超えたか否かを判定し、運転パルスカウント値が第2閾値を超えたと判定すると、前記注入ポンプに作動指示を送出し、薬液類を前記送水管内に注入させ、更に、前記停止モードを運転モードに設定を変更する第1制御手段と、
前記運転モードにおいて、前記流量センサからのパルス信号を所定の比率で分周処理を行い、分周後のパルス信号数をカウントした分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したか否か判定し、前記分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したと判定すると、前記注入ポンプに作動指示を送出し、薬液類を前記送水管内に注入させる第2制御手段と、
更に前記運転モードにおいて、前記流量センサから受信したパルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、前記発生回数が第3閾値以上であると判定したなら、停止パルスカウント値を0として処理を再度行い、該パルス信号の発生回数が第3閾値以下であると判定したなら、前記停止パルスカウント値に1を加えるとともに、前記停止パルスカウント値が第4閾値を超えたか否かを判定し、前記停止パルスカウント値が第4閾値を超えたと判定すると、前記運転モードを停止モードに設定を変更する第3制御手段と、を具備していることを特徴とする薬液注入ユニット。
【請求項2】
前記第1閾値と前記第3閾値の値が同じ値であることを特徴とする請求項1に記載の薬液注入ユニット。
【請求項3】
送水管内の流量を検出し、所定流量ごとにパルス信号を発生する流量センサと、
ソレノイド駆動式ダイヤフラムポンプからなり、薬液類を前記送水管内に注入する注入ポンプと、
前記流量センサからのパルス信号を処理し、前記注入ポンプに作動指示を送出する制御装置と、を備えた薬液注入ユニットの制御方法において、
前記注入ポンプに対して停止モードと運転モードのいずれかを設定し、
更に、前記停止モードにおいては、前記流量センサからパルス信号を受信すると、該パルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、前記パルス信号の発生回数が第1閾値を超えていないと判定すると、運転パルスカウント値を0として処理を再度行い、前記発生回数が第1閾値を超えていると判定すると、運転パルスカウント値に1を加えるとともに、前記運転パルスカウント値が第2閾値を超えたか否かを判定し、運転パルスカウント値が第2閾値を超えたと判定すると、前記注入ポンプに作動指示を送出して、薬液類を前記送水管内に注入し、前記停止モードを運転モードに設定を変更し、
前記運転モードにおいては、前記流量センサからのパルス信号を所定の比率で分周処理を行い、分周後のパルス信号数をカウントした分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したか否か判定し、前記分周パルスカウント値が注入必要パルス数に達したと判定すると、前記注入ポンプに作動指示を送出し、薬液類を前記送水管内に注入させ、
かつ前記運転モードにおいて、前記流量センサから受信したパルス信号の単位時間当たりの発生回数を算出し、前記発生回数が第3閾値以上であると判定したなら、停止パルスカウント値を0として処理を再度行い、該パルス信号の発生回数が第3閾値以下であると判定したなら、前記停止パルスカウント値に1を加えるとともに、前記停止パルスカウント値が第4閾値を超えたか否かを判定し、前記停止パルスカウント値が第4閾値を超えたと判定すると、前記運転モードを停止モードに設定を変更することを特徴とする薬液注入ユニットの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−10080(P2013−10080A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144796(P2011−144796)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)